JP2018052129A - スクライビングホイール及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイールを用いて、ガラス基板より硬質なセラミック基板等の分断を行った場、より長寿命となるスクライビングホイール、ホルダユニット、スクライブ装置、スクライビングホイールの製造方法及びスクライブ方法を提供する。【解決手段】刃42が単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイール40であって、刃先43が半径0.8〜3μmのR面取り加工されているスクライビングホイール40を用いることで、R面取り加工されていないスクライビングホイールに比べ、刃先の欠けを大幅に減少させることができる。【選択図】図5

Description

本発明は、セラミック基板、サファイア基板、シリコン基板等、一般的な非晶質のガラス基板よりも硬質な脆性材料基板の表面にスクライブラインを形成するのに好適なスクライビングホイール及びその製造方法に関する。
液晶パネル等に用いられる非晶質のガラス基板を分断する際、一般的に、特許文献1に記載されているような超硬合金からなるスクライビングホイールや、超硬合金よりも硬質である多結晶ダイヤモンド焼結体からなるスクライビングホイールが用いられている。なお、この多結晶ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド粒子(含有量75〜90vol%)と結合材(コバルト等)を混合したものを、高温高圧下で焼結したものである。
しかしながら、例えばガラス基板よりも硬質なアルミナ等のセラミック基板を分断する場合、特許文献1に開示されている超硬合金からなるスクライビングホイールや、多結晶ダイヤモンド焼結体からなるスクライビングホイールでは、直ぐに刃先が欠けたり摩耗したりしてしまい、数十m程度でクラックが形成されなくなってしまう。そのため、超硬合金からなるスクライビングホイールや、多結晶ダイヤモンド焼結体からなるスクライビングホイールを用いてガラス基板よりも硬質なセラミック基板等の分断を行うことは現実的ではない。
そのため、セラミック基板のような硬質な基板を分断する場合、超硬合金や多結晶ダイヤモンド焼結体よりも硬質な多結晶ダイヤモンドや単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイールを用いて行うことが検討されている。
実開昭55−106635号公報
多結晶ダイヤモンドや単結晶ダイヤモンドのように、ダイヤモンドのみからなるスクライビングホイールを用いて、セラミック基板の分断を行うと、超硬合金や多結晶ダイヤモンド焼結体からなるスクライビングホイールに比べると、はるかに長く分断に必要なクラックを形成することはできた。
しかしながら、ダイヤモンドのみからなるスクライビングホイールであっても、セラミック基板は非常に硬質であるため、刃先の欠けや摩耗を完全に防ぐことはできない。したがって、刃先の欠けや摩耗をできるだけ防ぎ、スクライビングホイールを少しでも長く使用することが望まれている。
本発明は、刃がダイヤモンドのみからなるスクライビングホイールを用いて、ガラス基板より硬質であるセラミック基板等の分断を行った場合、より長寿命となるスクライビングホイール及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のスクライビングホイールは、単結晶ダイヤモンドからなる円板状のスクライビングホイールであって、外周に円環状に形成された刃と、刃の先端に設けられた刃先とを有し、前記刃先が、円周上に結晶方位により硬度の異なる部分を有し、前記刃先は、円周全体に対して半径0.8〜3μmのR面取り加工されていることを特徴とする。
本発明のスクライビングホイールによれば、単結晶ダイヤモンドの結晶方位により硬度の異なる部分を有する刃先がR面取り加工により丸くなっているため、セラミック基板等の分断に用いたとしても、R面取り加工されていないスクライビングホイールに比べ、単結晶ダイヤモンドの結晶方位による強度への影響を低減させながら、刃先の欠けを大幅に減少させることができ、スクライビングホイールの寿命を長くすることができる。
また、本発明のスクライビングホイールは、セラミック、サファイア及びシリコンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脆性材料基板の分断用であることを特徴とする。
本発明のスクライビングホイールによれば、液晶パネル等に用いられる一般的な非晶質のガラス基板よりも硬質な脆性材料基板に対して、長い距離を良好に切断することができる。
また、本発明のスクライビングホイールの製造方法は、単結晶ダイヤモンドからなる円板状部材の外周結晶方位により硬度の異なる部分を有する刃を形成する工程と、前記刃の刃先の円周全体半径0.8〜3.0μmのR面取り加工する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明のスクライビングホイールの製造方法によれば、結晶方位により硬度の異なる部分を有する刃を形成した後で、刃先のR面取り加工を行うため、刃の表面の欠けを防止でき、スクライビングホイールの寿命をより長くすることができる。また、刃を形成した後で、刃先のR面取り加工を行うため、目標とする刃先半径へ比較的容易に加工することができる。
また、本発明のスクライビングホイールの製造方法は、前記刃を形成する工程が、前記刃の傾斜面が鏡面状になるまで研磨する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明のスクライビングホイールの製造方法によれば、結晶方位により硬度の異なる部分を有する刃の表面を十分に削ることにより刃の表面粗さを小さくし、刃の表面の欠けを防止でき、スクライビングホイールの寿命をより長くすることができる。
実施形態におけるスクライブ装置の概略図である。 実施形態におけるホルダジョイントの正面図である。 実施形態におけるホルダユニットの斜視図である。 図4(A)は実施形態におけるスクライビングホイールの側面図であり、図4(B)はスクライビングホイールの正面図である。 図5(A)は実施形態における刃先のR面取り加工前の正面図であり、図5(B)は刃先のR面取り加工後の正面図である。 図6(A)はR面取り加工の一つの方法を示した概念図であり、図6(B)はR面取り加工の他の方法を示した概念図である。 図7(A)は実施形態におけるスクライビングホイールの撮影ポイントを示した説明図であり、図7(B)は実施形態におけるスクライビングホイールの刃先の写真である。 比較のためのスクライビングホイールの刃先の写真である。 図9(A)は実施形態のスクライビングホイールに関するグラフであり、図9(B)は比較のためのスクライビングホイールに関するグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例を示すものであり、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態にも適応できるものである。
図1は、本発明の一実施形態に係るスクライブ装置10の概略図である。スクライブ装置10は、移動台11を備えている。移動台11は、ボールネジ13と螺合されており、モータ14の駆動によりこのボールネジ13が回転することで、一対の案内レール12a、12bに沿ってy軸方向に移動するようになっている。
移動台11の上面には、モータ15が設置されている。モータ15は、上部に位置するテーブル16をxy平面で回転させて所定角度に位置決めする。分断(スクライブ)対象物としての脆性材料基板17は、テーブル16上に載置され、図示しない真空吸引手段等によって保持される。
この脆性材料基板17は、低温焼成セラミックスや高温焼成セラミックスからなるセラミック基板、シリコン基板、サファイア基板等であり、セラミック、サファイア及びシリコンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脆性材料基板で、液晶パネルの基板等に一般的に用いられる非晶質のガラス基板よりも硬質である脆性材料基板である。
スクライブ装置10は、テーブル16に載置された脆性材料基板17の上方に、この脆性材料基板17の表面に形成されたアライメントマークを撮像する二台のCCDカメラ18を備えている。移動台11とその上部のテーブル16とを跨ぐように、ブリッジ19がx軸方向に沿うようにして支柱20a、20bに架設されている。
ブリッジ19にはガイド22が取り付けられており、スクライブヘッド21はこのガイド22に案内されてx軸方向に移動するように設置されている。スクライブヘッド21には、ホルダジョイント23を介してホルダユニット30が取り付けられている。
図2はホルダユニット30が取り付けられたホルダジョイント23の正面図である。また、図3はホルダユニット30の斜視図である。
ホルダジョイント23は略円柱状をしており、回転軸部23aと、ジョイント部23bを備えている。スクライブヘッド21にホルダジョイント23が装着された状態においては、回転軸部23aが二つのベアリング24a、24bに円筒形のスペーサ24cを介して取り付けられ、このホルダジョイント23は回動自在に保持される。
円柱形のジョイント部23bには、下端側に円形の開口25を備えた内部空間26が設けられている。この内部空間26の上部にマグネット27が埋設されている。そして、マグネット27によって着脱自在なホルダユニット30が、この内部空間26に挿入されて取り付けられている。
ホルダユニット30は、ホルダ31と、スクライビングホイール40と、ピン(図示せず)とが一体となったものである。ホルダ31は、図3に示すように略円柱形をしており、磁性体金属で形成されている。ホルダ31の上部には、位置決め用の取付部32が設けられている。この取付部32は、ホルダ31の上部を切り欠いて形成されており、傾斜部32aと平坦部32bを備えている。
ホルダ31の取付部32側を、開口25を介して内部空間26へ挿入する。その際、ホルダ31の上端側がマグネット27によって引き寄せられ、取付部32の傾斜部32aが内部空間26を通る平行ピン28と接触することで、ホルダジョイント23に対するホルダユニット30の位置決めと固定が行われる。また、ホルダジョイント23からホルダユニット30を取り外す際には、ホルダ31を下方へ引くことで容易に外すことができる。
なお、スクライビングホイール40は、消耗品であるため、定期的な交換が必要になる。本実施形態においては、ホルダユニット30の着脱が容易に行えるため、ホルダユニット30そのものを交換することで、ホルダユニット30を構成するスクライビングホイール40の交換を行うようになっており、スクライビングホイール40の交換を迅速に行うことができる。
ホルダ31の下部には、ホルダ31を切り欠いて形成された保持溝33が設けられている。この保持溝33を設けるために切り欠いたホルダ31の下部には、保持溝33を挟んで支持部34a、34bが位置している。この保持溝33には、スクライビングホイール40が回転自在に配置されている。また、支持部34a、34bには、スクライビングホイール40を回転自在に保持するためのピンが挿入される支持孔35がそれぞれ形成されている。
次に、脆性材料基板17を分断するためのスクライビングホイール40の詳細について説明を行う。図4(A)はホルダ31の先端に取り付けられるスクライビングホイール40の側面図であり、図4(B)はスクライビングホイール40の正面図である。
図4に示すように、スクライビングホイール40は円板状であり、ホイール本体部41と、刃42と、刃先43と、を備える。
ホイール本体部41の中心付近には、このホイール本体部41を回転軸方向に貫通する貫通孔44が形成されている。貫通孔44にピンが挿入されることで、スクライビングホイール40はこのピンを介してホルダ31に回転自在に保持される。
刃42は、ホイール本体部41の外周に円環状に形成されている。刃42は正面視で略V字状となっており、回転軸方向に対する刃42の厚さが、刃先43に向かうに従って徐々に小さくなっている。
そして、刃先43は、通常のスクライビングホイールの刃先とは異なっており、刃42の先端に後述するR面取り加工が施されており、最外周部に沿って丸くなっている。
次に、スクライビングホイール40の製造方法について図面を用いて説明する。図5は図4(B)の円Aで示す刃42の先端の拡大図であり、図5(A)は加工前の刃先43の正面図であり、図5(B)は加工後の刃先43の正面図である。
スクライビングホイール40は、多結晶ダイヤモンドや単結晶ダイヤモンドのように、結合材を含まずダイヤモンドのみで形成されている。そして本実施形態では、スクライビングホイール40が単結晶ダイヤモンドで形成されている。
単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイール40は、まず、単結晶ダイヤモンドからなる円板状の部材を形成する。具体的には、単結晶ダイヤモンドは、人工的に合成されたものであり、高温高圧合成法や化学気相蒸着法により製造されたものである。そして、この単結晶ダイヤモンドをレーザ等によって所望する半径となる円板に切り出す。
そして、円板状の単結晶ダイヤモンドは、円板の円周部の両面側をそれぞれ削ることにより、図5(A)に示すような先端が尖った形状の刃先43を持った刃42を形成する。なお、この時の刃先43の稜線部を符号43aで示している。また、この状態が一般的なスクライビングホイールである。このとき、単結晶ダイヤモンドは従来のPCDや超硬合金と比較してより表面粗さを小さくすることができ、その結果、刃先稜線部もより鋭利になる。
次に、刃42の刃先43に対してR面取り加工を行い、稜線部43aから削っていくことで、図5(B)に示すように最外周部に沿って正面視において刃先43の先端を丸くする。
ここで、刃先43の先端を丸くするR面取り加工の具体的な方向について、図面を用いて説明する。例えば、一つの方法として、図6(A)に示すように、スクライビングホイール40の貫通孔44に支持用のピン51を挿入し、スクライビングホイール40を回転させながら、回転軸52aを中心に回転している円板状の砥石52の平面52bに対して、垂直に刃先43を当接させるとともに、ピン51を矢印で示した方向に交互に揺動させる。これにより、刃先43の先端を丸くすることができる。
また、他の方法として、図6(B)に示すように、スクライビングホイール40の貫通孔44に支持用のピン51を挿入し、スクライビングホイール40を回転させながら、回転軸53aを中心に回転している柔軟性のある軟質な砥石53の平面53bに対して、垂直に刃先43を当接させる。この時、砥石53の平面53bに対して沈み込むことになり、刃先43の先端を丸くすることができる。
以上のような方法によって、刃42の刃先43が丸いスクライビングホイール40を製造することができる。また、本実施形態では、図5(A)に示すように、刃先43の先端を丸くする前に、円板の円周部の両面側をそれぞれ削り、先端が尖った傾斜面を先に形成している。したがって、刃42の傾斜面が鏡面状になるまでしっかり削ることができ、刃42の表面粗さを最小にすることで、より一層刃42の寿命を長くすることができる。また、刃42の傾斜面を先に仕上げてから、刃先43のR面取り加工を行うため、目標とするR半径へ比較的容易に加工することができる。
次に、スクライビングホイール40の寸法について説明する。スクライビングホイール40の外径は1.0〜10.0mm、好ましくは1.0〜5.0mm、さらに好ましく1.0〜3.0mmの範囲である。スクライビングホイール40の外径が1.0mmより小さい場合には、スクライビングホイール40の取り扱い性が低下する。一方、スクライビングホイール40の外径が10.0mmより大きい場合には、スクライブ時の垂直クラックが脆性材料基板17に対して十分に深く形成されないことがある。
スクライビングホイール40の厚さは、0.4〜1.2mm、好ましくは0.4〜1.1mmの範囲である。スクライビングホイール40の厚さが0.4mmより小さい場合には、加工性及び取り扱い性が低下することがある。一方、スクライビングホイール40の厚さが1.2mmより大きい場合には、スクライビングホイール40の材料及び製造のためのコストが高くなる。また、貫通孔44の孔径は、例えば0.8mmである。
刃42の刃先角は通常鈍角であり、80〜160°、好ましくは90〜150°の範囲である。
また、先端の丸い刃先43に関して、R面取り加工のR半径は、0.8μmより小さければ、刃先の先端に荷重が集中し、局所的に圧力がかかることから刃先の欠けや磨耗が生じやすくなる。一方、R半径があまり大き過ぎるとスクライブの際の荷重が大幅に増えてしまい、分断後の基板の断面品質が低下してしまう。そこで、R半径は、0.8〜5μmの範囲であり、好ましくは3μm以下がより望ましい。R半径が0.8〜5μmの範囲であれば、接触面積が大きくなることにより適度に荷重が分散し、局所的な圧力を抑えて刃先の欠けや磨耗を防止することができる。
また、通常、脆性材料基板17におけるアルミナ基板等は、焼結されたアルミナの粒子の粒径に由来して表面が粗く、例えば、後述するアルミナ基板の表面粗さRaを計測したところ、表面粗さRaが0.296μmになっていた。したがって、刃先43のR半径は、分断対象となる脆性材料基板17の表面粗さを考慮し、十分に大きな値にしておくことで、基板の凹凸による欠け等を防止する効果が大きいと考えられる。
次に、実際に刃先43がR面取り加工され丸くなっているスクライビングホイール40と、刃先43にR面取り加工を行っていないスクライビングホイール140と、を用いて脆性材料基板17の分断を行った結果について具体的に説明する。分断条件は次のとおりである。
単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイール40は、外径2mm、刃先角120°である。また、R面取り加工により、刃先43のR半径は1.0μmとなっている。一方、スクライビングホイール140は、スクライビングホイール40とR面取り加工の有無だけが異なっており、単結晶ダイヤモンドからなる外径2mm、刃先角120°のスクライビングホイールである。なお、R面取りがされていないスクライビングホイール40の先端R半径を測定したところ、0.17μmとなった。
分断を行った脆性材料基板17は、板厚0.635mmのアルミナ基板(京セラ株式会社製、材料コード:A476T)である。
切断速度は100mm/secであり、クラックの浸透量が120μmとなることを目標にスクライブ荷重等を調整して切断を行った。
上記の分断条件により脆性材料基板17の表面にスクライブラインを形成したことによる刃先の状態について、撮影した写真等を用いて説明する。図7はスクライビングホイール40に関する分断結果であり、図7(A)は撮影したポイントを示す説明図であり、図7(B)は刃先43を撮影した写真とクラックの浸透量である。図8はスクライビングホイール140の刃先を撮影した写真とクラックの浸透量である。図9は走行距離における刃先の欠けの発生量を示すグラフであり、図9(A)はスクライビングホイール40に関するグラフであり、図9(B)はスクライビングホイール140に関するグラフである。
図7(A)に示すように、刃先43の撮影は、スクライビングホイール40の任意のポイントP1を決めておき、そのポイントP1を基準にして、約45°刻みでP2、P3、P4、P5を決め、P1〜P5の各ポイントでスクライビングホール40の正面から行った。なお、図8のスクライビングホイール140の刃先に関しても、スクライビングホイール40と同様のポイントで撮影を行った。
また、図9では、刃先にできた欠けの大きさ(幅)が、10〜50μmのものを個数a、50〜100μmのものを個数b、100μm〜のものを個数cの棒グラフで示している。また、図7(B)と図8に示したクラックの浸透量(μm)をdの折れ線グラフで示している。
図9からわかるように、刃先43が丸くなっているスクライビングホイール40は、刃先が丸くなっていないスクライビングホイール140と遜色のないクラックの浸透量を有している。したがって、刃先43にR面取り加工を行ったとしても、浸透量の低下は生じなかった。
一方、刃先の欠けに関しては、スクライビングホイール140では、刃先の走行距離が500mを超えたあたりから、刃先の欠けが急増し、特に100μm以上の大きな欠けが発生した。しかし、スクライビングホイール40では、刃先の走行距離が1000程度までは刃先43にほとんど変化がなく、1500mまで行っても100μm以上の大きな欠けは発生しなかった。
このように、スクライビングホイール40のように刃先43にR面取り加工を行い、刃先43を丸くすることにより、刃先43の欠けを大幅に減少させることができ、スクライビングホイール40の寿命を長くすることができる。特に、単結晶ダイヤモンドの場合、図5(A)の状態では刃先43の先端が非常に鋭利な形状になるため、アルミナ基板の分断に用いると刃先43が非常に欠けやすい。しかしながら、刃先43を丸くすることにより、単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイール40であっても、刃先43の欠けを大幅に減少させることができる。
ところで、図8に示した刃先にR面取り加工が施されていないスクライビングホイール140の刃先の写真をみると、撮影ポイントのP4、P5では大きな欠けが生じている一方で、P1、P2ではあまり欠けが生じていないことがわかる。
これは、スクライビングホイール140が単結晶ダイヤモンドからなり、単結晶ダイヤモンドは結晶方位があるとともに、この結晶方位により硬度が大きく異なるためである。したがって、多結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイールであれば、刃先の位置による欠けの発生の違いはあまり生じることはなく、刃先全体で同じように欠けが発生することになる。一方、単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイールの場合、図8に示すように、通常であれば単結晶ダイヤモンドの結晶方位により、刃先の位置により欠けの発生状況が大きく異なってしまうことになる。
しかしながら、本実施形態の単結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイール40のように、刃先43のR面取り加工を行い、刃先43を丸くしておくことにより、図7(B)に示すように、刃先43のどのポイントにおいても大きな欠けの発生を抑えることができるため、単結晶ダイヤモンドの結晶方位による強度への影響を低減することができる。また、単結晶ダイヤモンドの結晶方位によって、図5(A)に示すような先端の尖った刃先43の形状を、スクライビングホイール40の円周全体に対して均一に加工することは非常に難しい。しかしながら、図5(B)のような刃先43のR面取り加工を行うため、図5(A)の刃先43のような加工を、円周全体に対して均一に要求されることはない。
以上のように、刃42がダイヤモンドのみからなるスクライビングホイール40であって、刃先43が半径0.8〜5μmのR面取り加工によって丸くなっているスクライビングホイール40は、セラミック、サファイア及びシリコンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脆性材料基板17の分断に用いたとしても、R面取り加工されていないスクライビングホイールに比べ、刃先43の欠けを大幅に減少させることができ、スクライビングホイール40の寿命を長くすることができる。
なお、本実施形態においては、スクライビングホイール40全体が単結晶ダイヤモンドからなるものを示したが、例えば、刃42だけを単結晶ダイヤモンドで構成し、ホイール本体部41を超硬合金で構成し、ホイール本体部41と刃42を接着等により固定したスクライビングホイール40や、スクライビングホイール40の円周上の傾斜面のうち、少なくとも脆性材料基板と接触する刃42部分が単結晶ダイヤモンドのみで形成されているスクライビングホイールに対しても本発明は適用可能である。このような構成のスクライビングホイールであれば、高価な単結晶ダイヤモンドの使用を減らし、安価なスクライビングホイールを提供することができる。
また、本実施形態においては、スクライビングホイール40として単結晶ダイヤモンドを用いて説明したが、刃42が多結晶ダイヤモンドからなるスクライビングホイール40でも構わない。多結晶ダイヤモンドには、微細な結晶粒組織、または非晶質を有するグラファイト型炭素物質を出発物質として、超高圧高温下で直接的にダイヤモンドに変換焼結されたものや、化学気相成長(CVD)法により合成されたダイヤモンドがある。多結晶ダイヤモンドにおいては、上述した刃先円周における結晶方位による硬度の差異はないが、刃先を形成するダイヤモンド粒子の脱落によって欠けが生じる場合がある。本発明はこのような多結晶ダイヤモンドを用いたスクライビングホイール40の欠けの防止にも有効である。
また、これらの単結晶ダイヤモンド及び多結晶ダイヤモンドは実質的にダイヤモンドのみからなるものであり、結合材としての鉄系金属を含まないが、ダイヤモンド結晶内に意図的にホウ素やリン等の微量の不純物を添加されたものを含む。このように不純物を添加することで、ダイヤモンドに導電性を与えたり、耐熱性を高めることができる。
また、本実施形態のスクライブ装置10は、スクライビングホイール40を保持するホルダ31をスクライブヘッド21に取り付ける際に、ホルダジョイント23を介して取り付ける構成となっている。しかしながら、スクライブ装置10は、スクライブヘッド21に直接ホルダ31を取り付ける構成であってもよい。
また、本実施形態のスクライブ装置10として、スクライブヘッド21を移動させるためのガイド22やブリッジ19が設けられていたり、脆性材料基板17が載置されるテーブル16を回転させる移動台11が備わっていたりするものを示したが、このようなスクライブ装置10に限定されるものではない。例えば、ホルダ31が取り付けられたスクライブヘッド21をユーザが握れるようにするために、スクライブヘッド21の一部形状が柄の形状をしており、ユーザがこの柄を持って移動させることで脆性材料基板17の分断を行う、いわゆる手動式のスクライブ装置であっても適用可能である。
10…スクライブ装置
30…ホルダユニット
31…ホルダ
40、140…スクライビングホイール
41…ホイール本体部
42…刃
43…刃先
43a…稜線部

Claims (4)

  1. 単結晶ダイヤモンドからなる円板状のスクライビングホイールであって、
    外周に円環状に形成された刃と、刃の先端に設けられた刃先とを有し、
    前記刃先が、円周上に結晶方位により硬度の異なる部分を有し、
    前記刃先は、円周全体に対して半径0.8〜3μmのR面取り加工されていることを特徴とするスクライビングホイール。
  2. セラミック、サファイア及びシリコンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脆性材料基板の分断用であることを特徴とする請求項1記載のスクライビングホール。
  3. スクライビングホイールの製造方法であって、
    単結晶ダイヤモンドからなる円板状部材の外周に、結晶方位により硬度の異なる部分を有する刃を形成する工程と、
    前記刃の刃先の円周全体半径0.8〜3.0μmのR面取り加工する工程と、
    を備えることを特徴とするスクライビングホイールの製造方法。
  4. 前記刃を形成する工程は、前記刃の傾斜面が鏡面状になるまで研磨する工程をさらに含む、請求項3に記載のスクライビングホイールの製造方法。
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