以下、本発明に関するレーザーマーカー装置1を、レーザーマーカー装置1を含むレーザー加工システム100として具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<レーザー加工システムの概略構成>
本実施形態に係るレーザー加工システム100の概略構成について図1を用いて説明する。本実施形態に係るレーザー加工システム100は、レーザーマーカー装置1、PC(Personal Computer)7などを備え、レーザーマーカー装置1は、レーザーマーカー装置本体部2およびレーザーコントローラ5、電源ユニット6等により構成されている。レーザーマーカー装置1は、PC7から送信される情報に基づいて、レーザー光LをワークWの加工面WAに対して2次元走査して文字、記号、図形等をマーキングするレーザー加工を行う。以下の説明において、レーザー加工を印字と記載する場合がある。
PC7は、例えばノートPCなどで実現され、液晶ディスプレイ77、キーボードやマウスなどで構成される入力操作部76を備え、ユーザーからの加工命令を受け付ける。レーザーコントローラ5はコンピュータで実現され、レーザーマーカー装置本体部2およびPC7と双方向通信可能に接続されている。レーザーコントローラ5はPC7から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザーマーカー装置本体部2を制御する。
まず、レーザーマーカー装置本体部2の構成について説明する。尚、レーザーマーカー装置本体部2の説明において、図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザーマーカー装置本体部2の前方向、後方向、上方向、下方向である。また、レーザーマーカー装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザーマーカー装置本体部2の左右方向である。
レーザーマーカー装置本体部2は、本体ベース11と、レーザー光Lを出射するレーザー発振ユニット12と、光シャッター部13と、不図示の光ダンパーと、不図示のハーフミラーと、ガイド光部15と、不図示の反射ミラーと、光センサ17と、ガルバノスキャナ(走査部)18と、収束レンズ19等から構成され、略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
レーザー発振ユニット12は、レーザー発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザー発振器21は、CO2レーザー、YAGレーザー等で構成され、ワークWの加工面WAに加工を行うためのレーザー光Lを出力する。ビームエキスパンダ22は、レーザー光Lのビーム径を調整する(例えば、ビーム径を拡大する。)ものであり、レーザー発振器21と同軸に設けられている。取付台23は本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に複数の取付ネジ25で固定されている。また、レーザー光Lの光軸が調整可能に、レーザー発振器21が取付台23に取り付けられている。
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザー光Lの光路を遮る位置に回転された際には、レーザー光Lを光シャッター部13に対して右方向に設けられた不図示の光ダンパーへ反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたレーザー光Lの光路上に位置しないように回転された場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザー光Lは、光シャッター部13の前側に配置された不図示のハーフミラーに入射する。
不図示の光ダンパーは、シャッター27で反射されたレーザー光Lを吸収する。不図示のハーフミラーは、レーザー光Lの光路に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置される。不図示のハーフミラーは、後側から入射されたレーザー光Lのほぼ全部を透過する。また、不図示のハーフミラーは、後側から入射されたレーザー光Lの一部、例えば、レーザー光Lの1%を、反射ミラーへ45度の反射角で反射する。反射ミラーは、不図示のハーフミラーのレーザー光Lが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
ガイド光部15は、可視ガイド光として、例えば、赤色レーザー光を出射するガイド光出射部28と、ガイド光出射部28から出射された可視ガイド光Mを平行光に収束するレンズ群(図示せず)とから構成されている。可視ガイド光Mは、レーザー発振器21から出射されるレーザー光Lと異なる波長である。ガイド光部15は、ハーフミラーのレーザー光Lが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視ガイド光Mは、ハーフミラーのレーザー光Lが出射される略中央位置において、ハーフミラーの前側面にあたる反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でレーザー光Lの光路上に反射される。即ち、ガイド光出射部28は、可視ガイド光Mをレーザー光Lの光路上に出射する。
反射ミラーは、レーザー光Lの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラーの後側面において反射されたレーザー光Lの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラーは、反射面に対して45度の入射角で入射されたレーザー光Lを、45度の反射角で前側方向へ反射する。
光センサ17は、レーザー光Lの発光強度を検出するフォトディテクタ等で構成され、反射ミラーのレーザー光Lが反射される略中央位置に対して、前側方向に配置されている。この結果、反射ミラーで反射されたレーザー光Lが光センサ17に入射される。光センサ17は、入射されたレーザー光Lの発光強度に応じた信号をレーザーコントローラ5へ出力する。
ガルバノスキャナ18(走査部)は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔の上側に取り付けられ、レーザー発振器21から出射されたレーザー光Lと、ハーフミラーで反射された可視ガイド光Mとを下方へ2次元走査する。ガルバノスキャナ18は、ガルバノX軸モータ31と、ガルバノY軸モータ32と、本体部33により構成されており、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32は、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されて本体部33に取り付けられている。従って、当該ガルバノスキャナ18においては、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、レーザー光Lと可視ガイド光Mとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)である。
収束レンズ19は、下方に配置されたワークWの表面に対して、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザー光Lと可視ガイド光Mとを同軸に集光する。そして、当該収束レンズ19は、レーザー光Lや可視ガイド光M等を収束した焦点を、平面状の焦点面とすると共に、レーザー光Lや可視ガイド光Mの走査速度が一定になるように補正する。従って、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転を制御することによって、レーザー光Lと可視ガイド光Mが、ワークW表面上において、所望の加工パターンで前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)に2次元走査される。
次に、加工容器4の概略構成について、図2に基づいて説明する。図2に示すように、加工容器4は、前面側が開放された略箱体状の本体箱部35と、本体箱部35の前面側を覆う観音開きの各扉36と、ワークWを配置する為の載置面(不図示)等から構成されている。当該載置面は、加工容器4の本体箱部35内部において、上下方向(即ち、Z軸方向)へ移動可能に配設されており、当該レーザーマーカー装置1は、レーザーコントローラ5を介して、当該載置面の移動を制御することによって、載置面上に設置されたワークWに対する焦点位置を調整し得る。本体箱部35と各扉36は、ワークW上で反射されたレーザー光Lを遮光する鉄やステンレス等の材料で形成されている。
本体箱部35は、レーザーヘッド部3が設置される略矩形状の上面板部35Aと、奥側壁面部を形成する矩形状の背面板部35Bと、左右側壁部を形成する矩形状の各側面板部35Cと、四角枠状に形成された底面部35Dとから構成されている。底面部35Dは、各側面板部35Cよりも前方に、例えば、約30cm突出するように配置される。従って、本体箱部35は、本体箱部35の前面側であって、前方に突出した底面部35Dの上側に、開口部を有している。
各扉36は、本体箱部35前面側の開口部を左右対称に覆うと共に、各蝶番を介して、各側面板部35Cの前側縁部を回動軸として、それぞれ左右方向外側へ中心角度約180度回動する観音開きに取り付けられる。各扉36の前側上端部には、略コの字形の把手36Aが取り付けられている。各把手36Aの下側には、それぞれ一対の四角形状の透孔36Bが上下に隣接して形成されている。各一対の透孔36Bは、透明なガラスやアクリル板等で形成されて可視光を透過する透過板によって閉塞されている。
そして、加工容器4は、本体箱部35の底面部35Dの下面の四隅に、脚部材37を有している。従って、レーザーヘッド部3及び加工容器4は、これら脚部材37を介して床等の上に配置される。又、左右両側の側面板部35Cにおける上端部には、把持部材38が、それぞれ、前後方向略中央部に嵌め込まれており、把持部材38は、横長四角形に開口されて内側に窪んでいる。従って、ユーザーは、各把持部材38を持ってレーザーヘッド部3及び加工容器4を運搬することができる。
さらに、レーザーマーカー装置1には、指標光出射部39が配設されており、収束レンズ19によって収束されたレーザー光Lの焦点位置に向かって、指標光出射部39から指標光Nを出射する。
そして、本発明では、さらに、指標光出射部39と載置面との間に配置され、指標光出射部39からの指標光Nを回折してワークWに指標パターンを形成する回折光学素子80を備えている。すなわち、指標光Nは、載置面に対して第1方向から収束レンズ19を介してガイドパターンを描写する可視ガイド光Mに対して、所定の傾斜角度から出射され、回折光学素子80を介することによってワークWに指標パターンが形成される。
回折光学素子80とは、周知のように、光の回折現象を利用した光学素子であり、例えば、複数のドットパターン又は目盛りからなり、このドットパターンが所定の大きさ、所定の間隔で形成され、又は、目盛りが所定の間隔で形成されているような、高さ調整用(Z軸方向調整用)のものが挙げられる。その他、ワークW上に形成した指標パターンを図示した図4(A)のような、ドットパターンの近傍に数字等が形成されているようなものも挙げられる。したがって、高さ調整用(Z軸方向調整用)のドットパターンの近傍に数字等が形成されているような回折光学素子80に指標光Nを入射させた場合には、図4(A)に示すように、ワークWの加工面WA上にドットパターンと数字が視認可能に形成(投影)される。
また、例えば、図4(B)で図示した格子状の回折格子や、図4(C)で図示した曲線状の回折部、いわゆるフレネルゾーンプレート等の、ワークWの位置合わせ用(XY軸方向調整用)のものも挙げられる。
回折光学素子80は、表面に指標光Nの波長と同程度のサイズの微細なパターンを有する。そして、各回折光学素子80は、指標光Nが入射された場合に、この微細なパターンに入射した指標光Nの干渉によって、ワークWの加工面WA上のマーキング(印字)可能な加工有効領域内に指標光Nを反射して、加工有効領域を示す指標パターンを形成する。
本発明の回折光学素子80としては、第1回折光学素子と第2回折光学素子が挙げられる。第1回折光学素子とは、収束レンズ19とワークWとの距離を調整するための指標パターンを形成可能な回折光学素子80である。すなわち、第1回折光学素子は、収束レンズ19とワークWの距離指標として用いられるものである。
例えば、ラメラー型回折光学素子等が挙げられる。これによる指標パターンとしては、ワークW上に目盛りとして利用可能な等間隔のドットパターン等が形成される。
次に、第2回折光学素子とは、載置面に対するワークWの位置合わせのための指標パターンを形成可能な回折光学素子80である。すなわち、第2回折光学素子は、XY軸方向のワークWの位置合わせ用として用いられるものである。例えば、ホログラム等が挙げられる。これによる指標パターンとしては、ワークW上に格子等が形成される。
また、レーザーマーカー装置1には、複数の回折光学素子80、又は、光学素子に複数の回折部81を有することができる。すなわち、レーザーマーカー装置1には、ユーザーが使用する回折光学素子80又は回折部81を切り替え可能に保持する保持部(不図示)を備えることができる。したがって、ユーザーは、複数のパターンを有する回折光学素子80又は回折部81を状況に応じて適宜選択して使用することができる。
複数の回折光学素子80を切り替える場合の具体的な保持部の構成としては、例えば、回折光学素子80を光路に対して挿脱可能なように、たとえば、スライドレール(不図示)に摺動自在に設けられるスライダー(不図示)に設置してもよい。又、回折光学素子80の一端を回転軸と回転可能にし、光路への挿脱を可能にしてもよい。なお、これらの切り替えに関しては、自動、又は、手動で行うことができる。
図5(A)では、1つの回折光学素子80に複数のパターン(ここではAパターン乃至Cパターン)の回折部81を備えており、この各パターンに区分けされた部分の適所に凹溝状の切欠き82を備えた回折光学素子80を図示している。この凹溝状の切欠き82でどのパターンの回折部81かを判別することができる。判別方法としては、例えば、スライドレールに摺動自在に設けられるスライダーに回折光学素子80を保持し、回折光学素子80をスライドさせて、切欠き82で機械的に判別する等によって行う。なお、切欠きの他、センサ、識別子等を備えることにより、同様の効果を奏することができる。
具体的には、Z軸方向の調整用として、回折光学素子80に、例えば、Aパターン(例えば、目盛りのみ表示)の回折部81、Bパターン(例えば、目盛り及び数字が表示)の回折部81を備えることとした場合、このAパターン、又はBパターンの回折部81に指標光Nが入射できるようにスライダーを手動でスライドさせる。又は、制御部によって判別し、自動でスライドさせることが考えられる。
また、XY軸方向の調整用として、回折光学素子80に、例えば、Cパターン(例えば、格子状)又は、Dパターン(例えば、同心円状)の回折部81を備えることとした場合、このAパターン、又はBパターンの回折部81に指標光Nが入射できるようにスライダーを手動でスライドさせる。又は、制御部によって判別し、自動でスライドさせることが考えられる。
このような構成により、スライダーによってAパターンの回折部81、Bパターンの回折部81、Cパターンの回折部81、Dパターンの回折部81を適宜切替えすることができる。
その他の保持部の例として、図5(B)では、平面視で円形の回転保持板85と、この回転保持板85の中心部と外周との間の領域に適宜間隔で配置された複数のパターン(ここではAパターン乃至Dパターン)の回折部81と、回転保持板85をその中心部を軸87に回転させる回転手段(不図示)とを含んだ構成を図示している。
この例では、複数個の回折部81のうちの1個だけが光路と重なる(すなわち、指標光Nが入射する)所定位置に配置され、それ以外の3個の回折部81は光路から外れた位置に配置されるように、レーザーマーカー装置1、又は、加工容器4内の適所に取り付けられている。そして、上記図5(B)の例では、回転保持板85が中心部を軸に90゜間隔で回転することによって切替えられるようになっている。この例でも手動で回転保持板85を回転させるか、又は、制御部によって判別し、自動で回転させてもよい。
また、保持部は、収束レンズ19に適合する回折光学素子80、又は、回折部81を保持することも可能である。焦点距離を変更させるため収束レンズ19を交換した場合に、収束レンズ19に適合した回折光学素子80、又は、回折部81に切り替えることができる。なお、この切替えも手動、又は、自動で行うことができる。具体的には、例えば、収束レンズ19(ここでは19Aとする)に対応する回折光学素子80(ここでは80Aとする)、又は、回折部81(ここでは81Aとする)を使用していたときに、収束レンズ19Aを別の収束レンズ19(ここでは19Bとする)に交換した場合には、回折光学素子80A、又は、回折部81Aから、別の収束レンズ19Bに対応する回折光学素子80(ここでは80Bとする)、又は、回折部81(ここでは81Bとする)に切替えて使用するようにする。
従来の可視ガイド光と指標光Nを使ったレーザー光の焦点調整は、図8(A)で図示したように、可視ガイド光Mの四角の枠の中に指標光Nが入るようにZ軸方向の位置合わせを行い、ガイド光の四角の枠の中に指標光Nが入ったところ、すなわち、集光ポイントのところがレーザーの強度が強い部分であるため、この部分を照射位置として焦点調整していた。
しかし、ワークWの材質(金属、樹脂等)によっては、レーザーの強度が弱い状態で加工したほうがよい場合もある。また、ワークWによっては、あまりに強い強度のレーザーを出射すると、内部の精密機械等に不具合を生じさせる場合がある。さらには、焦点位置をズラすことによって、ブラックマーキングや濃淡表現等、幅広い印字表現が可能となる場合もある。すなわち、レーザー光で集光ポイントの照射位置でブラックマーキングを行うと、掘り込んでしまうおそれがあるため、デフォーカス(焦点ポイントをズラす)してブラックマーキングを行うことが必要な場合がある。
本発明では、指標光Nを基準として載置面を上下動してレーザーの強度をコントロールすることによって、ワークWの印字の深さをコントロールすることができることにより、ワークWに幅広い印字が可能となる。また、走査部を走査して指標パターンを形成するのではなく、回折光学素子80を介して指標パターンを形成するので、指標パターンを明確にワークに表示できる。さらに、走査部を走査して指標パターンを形成させないので、走査部の走査のための駆動電力を低減できる。
図6(A)のように、回折光学素子80によって指標光Nを拡散させることができるため、複数の指標光Nがワークに出射される。具体的には、中心の指標光Nと、その他の拡散された指標光NがワークW上に明確に表示される。図6(B)で図示したように、回折光学素子80を介して出射された指標光N(ドットパターン)の間隔をデフォーカス間隔とし、光学的に指標を作り出すことができる。そして、図7、図8(B)で図示したように、載置面をZ軸方向に調整して、集光ポイントを+1、−1等の位置にすることができ、このような載置面の調整によって印字箇所をデフォーカスすることができる。
(電源ユニットの概略構成)
次に、レーザーマーカー装置1における電源ユニット6の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源ユニット6は、励起用のレーザー光出射部40と、レーザードライバ51と、電源部52と、冷却ユニット53とを、ケーシング55内に有している。電源部52は、励起用のレーザー光出射部40を駆動する駆動電流を、レーザードライバ51を介して励起用のレーザー光出射部40に供給する。レーザードライバ51は、レーザーコントローラ5から入力される駆動情報に基づいて、励起用のレーザー光出射部40を直流駆動する。
励起用のレーザー光出射部40は、光ファイバFによってレーザー発振器21に光学的に接続されている。励起用のレーザー光出射部40は、レーザードライバ51から入力されるパルス状の駆動電流に対して、レーザー光を発生する閾値電流を超えた電流値に比例した出力の波長のレーザー光である励起光を、光ファイバF内に出射する。従って、レーザー発振器21には、励起用のレーザー光出射部40からの励起光が光ファイバFを介して入射される。励起用のレーザー光出射部40には、例えば、GaAsを用いたバー型半導体レーザーを用いることができる。
冷却ユニット53は、電源部52及び励起用のレーザー光出射部40を、所定の温度範囲内に調整する為のユニットであり、例えば、電子冷却方式により冷却することで、励起用のレーザー光出射部40の温度制御を行っており、励起用のレーザー光出射部40の発振波長を微調整する。尚、冷却ユニット53は、水冷式の冷却ユニットや、空冷式の冷却ユニット等を用いるようにしてもよい。
(レーザーマーカー装置1の制御系)
次に、レーザー加工システム100を構成するレーザーマーカー装置1の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、レーザーマーカー装置1は、レーザーマーカー装置1の全体を制御するレーザーコントローラ5と、レーザードライバ51と、ガルバノコントローラ56と、ガルバノドライバ57と、可視ガイド光ドライバ58と、指標光ドライバと、等を有して構成されている。レーザーコントローラ5には、レーザードライバ51と、ガルバノコントローラ56と、光センサ17と、可視ガイド光ドライバ58と、指標光ドライバ59等が電気的に接続されている。
レーザーコントローラ5は、レーザーマーカー装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ64等を備えている。又、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ64は、バス線(不図示)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や描画パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、PC7から送信された描画データに基づいて描画パターンのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
そして、CPU61は、ROM63に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、PC7から入力された描画データに基づいて算出した描画パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ56に出力する。又、CPU61は、PC7から入力された描画データに基づいて設定した励起用のレーザー光出射部40の励起レーザー光出力、励起レーザー光の出力期間等の励起用のレーザー光出射部40の駆動情報をレーザードライバ51に出力する。又、CPU61は、描画パターンのXY座標データ、ガルバノスキャナ18の動作を指示する制御信号等をガルバノコントローラ56に出力する。
レーザードライバ51は、レーザーコントローラ5から入力されたレーザー発振器21のレーザー出力、レーザー光Lのレーザーパルス幅等のレーザー駆動情報と、レーザー発振器21のレーザー出力制御信号等に基づいて、レーザー発振器21を駆動する。また、可視ガイド光ドライバ58は、レーザーコントローラ5から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、ガイド光出射部28を点灯又は、消灯する。
ガルバノコントローラ56は、レーザーコントローラ5から入力された描画パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。
ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザー光Lを2次元走査する。
可視ガイド光ドライバ58は、レーザーコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、ガイド光出射部28を含むガイド光部15の制御を行い、例えば、制御信号に基づいて、ガイド光出射部28から出射される可視ガイド光Mの光量を制御する。指標光ドライバ59は、レーザーコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、レーザーマーカー装置1、又は、加工容器4における本体箱部35内部に配設された指標光出射部39の制御を行い、指標光Nの出射制御を行う。
図1、図3に示すように、レーザーコントローラ5には、PC7が双方向通信可能に接続されており、PC7から送信された加工内容を示す描画データ、レーザーマーカー装置本体部2の制御パラメータ、ユーザーからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。
(PCの制御系)
続いて、レーザー加工システム100を構成するPC7の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、PC7は、PC7の全体を制御する制御部70と、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77と、CPU71の命令に基づいて、CD−ROM79に記憶されているデータの読み出し、および、CD−ROM79へのデータの書き込みなどを行う、CDドライブ装置78等から構成されている。
制御部70は、PC7の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71と、RAM72と、ROM73と、時間を計測するタイマ74と、HDD75等を備えている。又、CPU71と、RAM72と、ROM73と、タイマ74は、バス線(図示せず)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。又、CPU71とHDD75は、入出力インターフェース(図示せず)を介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM72は、CPU71により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM73は、各種の制御プログラムやデータテーブルを記憶させておくものである。
そして、HDD75は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する記憶装置であり、例えば、曲面を有するワークWの一例である円柱状のワークWをレーザー光Lで加工する為の曲面描画処理プログラム等や、当該曲面描画処理プログラムにおける各サブルーチン等を記憶している。
そして、CDドライブ装置78は、アプリケーションプログラム、各種データテーブル等のデータ群を、CD−ROM79から読み込む、又は、CD−ROM79に対して書き込む。即ち、PC7は、CDドライブ装置78を介して、曲面描画処理プログラムや、各種サブルーチンをCD−ROM79から読み込み、HDD75に格納する。
尚、各種描画処理プログラムや、当該各種描画処理プログラムにおける各サブルーチンは、ROM73に記憶されていても良いし、CD−ROM79等の記憶媒体から読み込まれても良い。又、インターネット等のネットワーク(図示せず)を介して、ダウンロードされてもよい。
そして、PC7には、入出力インターフェース(図示せず)を介して、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77等が電気的に接続されている。従って、PC7は、入力操作部76や、液晶ディスプレイ77を用いて、レーザー光Lによる描画を行う際の各種設定を行う際に利用される。
<加工処理>
次に、上記のように構成されたレーザーマーカー装置1が実行する処理であって、ワークWの加工面WAに印字パターンをマーキング(印字)する「加工処理」の印字処理プログラムについての一例を図9に基づいて説明する。
ワークWを載置面に載置し、レーザーマーカー装置1の電源がONされ、PC7にて加工処理のためのアプリケーションが起動されると、PC7は受付画面を液晶ディスプレイ77に表示する。ユーザーは受付画面にて、加工したい文字、記号、図形などの情報およびワークWの材質などの印字情報を入力する。PC7は入力された印字情報に基づくレーザー加工処理を加工ジョブとして処理する。PC7は、加工したい文字、記号、図形などの情報については、例えば、レイアウト画面(不図示)にて、受け付ける。
図9のS1においては、CPU71は、ワークWの印字情報(ワーク情報)を入力するレイアウト画面の各設定部に対する操作信号に基づいて、ワーク情報の入力を受け付けたか否かを判断する。ワーク情報の入力を受け付けた場合(S1:YES)、CPU71は、S2に処理を移行する。一方、ワーク情報の入力を受け付けていない場合(S1:NO)、CPU71は、ワーク情報の入力を受け付けるまで、処理を待機する。
ワーク情報の入力を受け付け、S2に移行すると、CPU71は、入力操作部76からの所定の操作信号に基づいて、載置面上に配置されたワークW表面と、レーザー光Lの焦点に関してZ軸方向へ位置調整を行う旨の操作を受け付けたか否かを判断する。Z軸方向位置調整に関する操作を受け付けた場合(S2:YES)、CPU71は、S3に処理を移行する。一方、Z軸方向位置調整に関する操作を受け付けていない場合(S2:NO)、CPU71は、Z軸方向位置調整に関する操作を受け付けるまで、処理を待機する。
S3においては、CPU71は、Z軸方向調整処理を実行し、本体箱部35内の載置面に対して鉛直なZ軸方向に関して、載置面上に配置されたワークWと、レーザー光Lの焦点位置との位置関係を調整する。この場合、CPU71は、Z軸方向調整処理プログラムを実行することで、S3に関する処理を実行する。以下、Z軸方向調整処理プログラムについて簡単に説明する。
S4においては、ワークWの加工面WA上にガイド光出射部28から可視ガイド光Mを出射させる。具体的には、下記のとおりである。
CPU61は、可視ガイド光Mを入射させるためのガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32のそれぞれの角度位置をROM63から読み出し、ガルバノコントローラ56へ送信する。尚、可視ガイド光Mを入射させるためのガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32のそれぞれの角度位置は、ROM63に予め記憶されている。
ガルバノコントローラ56は、受信したガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32のそれぞれの角度位置まで回転させる駆動角度を算出して、駆動角度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を回転させ、回転した位置で静止した状態を維持する。
CPU61は、ガイド光出射部28の点灯開始を指示するオン信号を可視ガイド光ドライバ58に出力する。可視ガイド光ドライバ58は、制御部70から入力されたオン信号に基づいて、ガイド光出射部28を点灯駆動して可視ガイド光Mを出射する。これにより、ガイド光出射部28から出射された可視ガイド光Mは、ガルバノスキャナ18及び収束レンズ19を経て、ワークWの加工面WA上のマーキング(印字)可能な加工有効領域内に可視ガイド光Mを出射して、ガイドパターンを描写する。
ワークWにガイドパターンが描写されると、次に、ワークWの加工面WA上に指標光出射部39から指標光Nを出射させる(S5)。具体的には、下記のとおりである。
CPU71は、指標光ドライバ59を介して、指標光出射部39を制御して、指標光出射部39から指標光Nを出射する。指標光Nに対する可視ガイド光Mの位置を相対的に移動させて、収束レンズ19とワークWの間隔を調整して焦点位置を決めることもできる。
この指標光Nの出射方向には回折光学素子80が配置され、指標光出射部39からの指標光Nを回折する。この回折光学素子80は、載置面に対し傾斜方向から出射される指標光Nを拡散させるものであり、照射された指標光Nの間隔をデフォーカス間隔とし、光学的な指標を作ることができる。すなわち、ワークWに対して明確に指標パターンを投射でき、また、デフォーカスの位置確認もしやすくなる。ここでの回折光学素子80としては、例えば、収束レンズとワークとの距離を調整するための第1指標パターンを形成可能な第1回折光学素子等による。
なお、回折光学素子80を介して指標光Nを拡散させても、入射光の中心軸に一番近い0次が一番強く光り、中心としての認識は可能であるため、回折光学素子80を介してもフォーカシングさせることは可能である。
指標光Nを出射しワークWに指標パターンが形成されると、ユーザーは、図8のように可視ガイド光Mの光点と、ワークW上の指標光Nの光点とを一致、または、ズラすように、例えば、載置面をZ軸方向に移動させる。具体的には、載置面としてワークWの下に高さ調整のための台を置いて台の高さを変えるなどして、ワークWの高さを調整して載置面をZ軸方向に移動させる。
ユーザーがZ軸方向の位置合わせを終了し、液晶ディスプレイ77上にワークWの位置合わせ完了を示すOKボタンが表示され、このOKボタンをクリックすると入力操作部76からの操作信号に基づいてCPU71が位置合わせ完了と判断して次の処理へ進む。
S6においては、CPU71は、入力操作部76からの操作信号に基づいて、載置面に対して垂直なZ軸方向への調整(即ち、レーザー光Lの焦点位置の調整)を完了したか否かを判断する。Z軸方向への調整を完了している場合(S6:YES)、CPU71は、Z軸方向調整処理プログラムを終了し、印字処理プログラムのS7に処理を移行する。一方、Z軸方向への調整を完了していない場合(S6:NO)、CPU71は、Z軸方向への調整を完了するまで、処理を待機する。
図9に示すように、Z軸方向調整処理(S6)を終了し、S7に移行すると、CPU71は、入力操作部76からの所定の操作信号に基づいて、載置面上に対して任意に設定された印字位置と、載置面上に配置されたワークWに関してXY軸方向へ位置調整を行う旨の操作を受け付けたか否かを判断する。XY軸方向位置調整に関する操作を受け付けた場合(S7:YES)、CPU71は、S8に処理を移行する。一方、XY軸方向位置調整に関する操作を受け付けていない場合(S7:NO)、CPU71は、XY軸方向位置調整に関する操作を受け付けるまで、処理を待機する。
S8においては、CPU71は、XY軸方向調整処理を実行し、本体箱部35内の載置面上のXY軸方向に関して、載置面上の印字位置に対して、ワークWの位置を調整する。この場合、CPU71は、XY軸方向調整処理プログラムを実行することで、S8に関する処理を実行する。以下、XY軸方向調整処理プログラムについて簡単に説明する。
ここでは、例えば、XY軸方向のワークWの位置合わせ用として用いられるものである第2回折光学素子(例えば、ホログラム等)によって、指標光出射部39からの指標光Nを回折してワークWに指標パターン(第2指標パターン)を形成する。これによる指標パターンとしては、ワークW上に格子等が形成される。載置面上のワークWの印字位置に指標パターンが形成されると、ユーザーは、この指標パターンを基準として、載置面のXY軸方向に関して、ワークWの位置を調整する。
ユーザーがXY軸方向の位置合わせを終了し、液晶ディスプレイ77上にワークWの位置合わせ完了を示すOKボタンが表示され、このOKボタンをクリックすると入力操作部76からの操作信号に基づいてCPU71が位置合わせ完了と判断して次の処理へ進む。
S9においては、CPU71は、入力操作部76からの操作信号に基づいて、印字位置に対するワークWのXY軸方向への調整を完了したか否かを判断する。印字位置への位置調整を完了している場合(S9:YES)、CPU71は、XY軸方向調整処理プログラムを終了し、印字処理プログラムのS10に処理を移行する。一方、印字位置PAへの位置調整を完了していない場合(S9:NO)、CPU71は、印字位置への調整を完了するまで、処理を待機する。
印字位置への位置調整を完了し(S9:YES)、S10に移行すると、CPU71は、入力操作部76からの操作信号に基づいて、ワークW表面に対するレーザー加工の実行を指示する加工実行操作が行われたか否かを判断する。加工実行操作が行われた場合(S10:YES)、CPU71は、S11に処理を移行する。一方、加工実行操作が行われていない場合(S10:NO)、CPU71は、加工実行操作が行われるまで、処理を待機する。
S11に移行すると、CPU71は、加工実行処理を実行し、印字位置に設置されたワークW表面に対して、レーザー光Lによるレーザー加工を実行する。具体的には、CPU71は、レーザーコントローラ5を介して、レーザー光Lをワーク情報に基づいて走査することで、ワークWに対して文字や記号等を印字する。加工実行処理(S11)を終了した後、CPU71は、印字処理プログラムを終了する。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
ここで、本発明における載置面は、ワークWを載置することができればどのような台でもよく、レーザーマーカー装置1と別体の構成であってもよい。また、載置面を調整手段によって上下動させることも可能である。例えば、調整手段であるハンドルを回転させると載置面が上下動する構成であってもよい。
加工対象物であるワークWは、平板上のワークWや、曲面を有するような円柱状のワークW、球面上のワークW等であっても、印字可能であればどのような形状であってもよい。
載置面に対してガイドパターンを描写する可視ガイド光Mは、垂直方向からの出射の他、水平方向からの出射等、様々な方向から出射することも可能である。
指標光Nを回折するその他の例としては、例えば、格子状のパターンによる回折を利用して干渉縞を作るために用いられる回折素子等が挙げられる。回折光学素子80は、指標光出射部39と載置面との間に配置されるが、指標光出射部39と載置面との間であればどの位置であってもよい。また、1つの回折光学素子80にXY軸方向の調整用の保持部とZ軸方向の調整用の保持部を混在する構成であってもよい。
保持部に関しては、スライダーや回転保持板85について説明したが、これらに限定されるものではない。
加工処理においては、その一例を説明した。例えば、ガイド表示のためのパターン表示、ガイドパターンの描写、指標パターンの形成の順序等、一例を示したものであり、これらの説明に拘泥されるものではない。また、XY軸方向調整処理プログラムや、Z軸方向調整処理プログラムに関してもこれらに拘泥されるものではない。
ワークW上に形成するドットパターンの指標パターンの場合、ドットパターンの近傍に形成される数字はどのような数であってもよい。例えば、−1、−2・・・、−10・・・、−20・・・、+1、+2・・・、+10・・・、+20・・・等が挙げられる。また、ドットパターンの近傍に数字等が形成されない指標パターンであってもよい。