以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、電池パックの製造の様子を示す斜視図である。また、図2は、電池パック10の一部拡大図である。なお、以下の説明では、電池セル18の積層方向を「X方向」、電池セル18の幅方向を「Y方向」、X方向およびY方向に直行する方向を「Z方向」と呼ぶ。また、図2では、エンドプレート16のX方向端面の形状を見易くするために、当該エンドプレート16のX方向端面と、収容空間56のX方向端面との間に間隙を設けているが、実際には、両端面の間には間隙はなく、エンドプレート16と収容空間56のX方向端面とは、互いに密着している。
電池パック10は、パックケース50と、当該パックケース50に収容される電池スタック12と、を備えている。なお、図1から明らかな通り、パックケース50に形成された収容空間56は、Z方向上端が開口されている。したがって、このZ方向が、本願請求項1における「第一方向」に該当する。また、Z方向に直交するX方向が、本願請求項1における「第二方向」に該当する。
図1、図2の例では、一つのパックケース50には、二つの電池スタック12が、平行かつY方向に隣接して配置されている。ただし、一つのパックケース50に収容される電池スタック12の数は、限定されず、一つでもよいし、三つ以上でもよい。また、パックケース50には、電池スタック12だけでなく、他の部材、例えば、冷却ファン70や冷却ダクト、ヒータ、ジャンクションボックス等(図示せず)が収容されてもよい。
図3は、電池スタック12の概略斜視図である。電池スタック12は、電池積層体14と、当該電池積層体14のX方向(積層方向)両側に配される一対のエンドプレート16と、を備えている。さらに、電池積層体14は、電池セル18と、樹脂からなるセパレータ20と、を厚み方向に交互に積層して構成される。
ここで、電池セル18は、充放電可能な二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池や、ナトリウムイオン二次電池等である。本実施形態の電池セル18は、電極体が扁平な直方体形状のセルケースに収容された角型電池である。かかる電池セル18は、パックケース50に収容した際に略長方形の電池セル18の全面に均等に圧力が付与されることが望ましい。付与される圧力に偏りがあると、電池セル18の内部で、金属の析出や、内部短絡、ガス発生、ひいては、電池ケースの変形等の意図しない劣化が起こり、電池パック10の信頼性が低下するおそれがあるからである。
電池セル18の上端面からは、略円筒形の正極端子22pおよび負極端子22nが突出している。この正極端子22pおよび負極端子22nは、幅方向に間隔をあけて配置されている。
電池セル18の上端面のうちY方向(幅方向)中央、すなわち、正極端子22pおよび負極端子22nの間には、ガス放出弁(図示せず)が設けられている。ガス放出弁は、電池セル18の異常反応時に、当該電池セル18の内部で発生したガスを放出する弁である。ガス放出弁は、電池セル18の内圧が一定未満の場合には、閉鎖しているが、内圧が一定以上になれば、開放され、ガスを外部に放出する。このガス放出弁は、例えば、電池セル18のケースのうちの一部を、一定以上の圧力を受けたときに破断するように薄肉に形成する等して構成される。ただし、ガス放出弁の構成は、これに限定されず、適宜、変更されてもよい。
複数の電池セル18は、厚み方向に積層される。このとき、複数の電池セル18は、正極端子22pと負極端子22nがX方向に交互に並ぶように、その向きを交互に替えて配される。すなわち、ある電池セル18を、向かって右側に正極端子22pが位置するように配置した場合には、次の電池セル18は、向かって右側に負極端子22nが位置するように配置する。そして、X方向に隣接する正極端子22pと負極端子22nをバスバ(図示せず)で順次、連結することで、複数の電池セル18が、電気的に直列に接続される。
電池セル18と電池セル18との間には、セパレータ20が配される。換言すれば、電池積層体14は、複数の電池セル18と複数のセパレータ20とを、交互に積層して成る。セパレータ20は、絶縁性材料からなり、略平板のベース部(図1では見えず)と、当該ベース部の周縁から厚み方向に張り出す枠部26と、ベース部の上端から突出するダクト片28と、を備えている。ベース部は、電池セル18の間に配される部分で、その表面には、冷媒流路を構成するためのリブが複数、間隔を開けて形成されている。
枠部26は、電池セル18の周面に沿う形状をしており、電池セル18の面方向への移動を規制する。セパレータ20の上端、かつ、Y方向中央には、ダクト片28が設けられている。ダクト片28は、セパレータ20のベース部の上端から突出形成されており、電池セル18の上端面に向かって開口した略U字形状となっている。このダクト片28の上面は、電池セル18のガス放出弁と対向している。また、ダクト片28は、セパレータ20のベース部よりも厚み方向に張り出しており、隣接する他のセパレータ20のダクト片28と密着する。複数のダクト片28が互いに密着することで、電池積層体14には、X方向に延びるトンネルが形成される。このトンネルは、ガス放出弁から放出されたガスが流れる排煙ダクトとなる。
電池セル18およびセパレータ20からなる電池積層体14のX方向両側には、一対のエンドプレート16が配される。この電池積層体14および一対のエンドプレート16で構成される積層体が、電池スタック12である。この電池スタック12に含まれるセパレータ20は、厚み方向に微小収縮可能な弾性を有している。そのため、電池スタック12全体は、X方向に所定のバネ定数を有した伸縮体となっている。
エンドプレート16は、絶縁性と断熱性とを備えるとともに、適度な強度を有した材料、例えば、ABS樹脂等からなる板材である。本実施形態では、このエンドプレート16のうち、X方向外側面に、Z方向に延びる複数の溝を形成している。この溝は、上端、下端、および、X方向外側端が開口したスタック側開口部30として機能する。このスタック側開口部30は、後述する搬送装置の把持部材80が挿入可能な大きさとなっているが、これについては後述する。
パックケース50は、アルミニウム等の金属からなる箱部材で、電池スタック12を収容するための収容空間56が形成されている。このパックケース50は、ロアケース52と、アッパーカバー(図示せず)と、に大別される。ロアケース52は、電池スタック12を収容する収容ケースとして機能するものである。
ロアケース52には、電池スタック12を収容する収容空間56が形成されている。収容空間は、上部が開口した空間で、この上部開口から電池スタック12を挿入することができる。収容空間56は、電池スタック12が収容可能な空間である。ただし、収容空間56のX方向長さDcは、無負荷状態における電池スタック12のX方向長さDs1(図5、図8参照)より僅かに小さい。そのため、収容空間56に収容された電池スタック12は、当該収容空間56の内壁により押圧されて、X方向の圧縮力を受けることになる。
アッパーカバーは、ロアケース52の上部を覆う。このアッパーカバーは、ロアケース52に電池スタック12や、必要な他部材(例えば冷却ファン70等)を収容した後、ロアケース52の上側に配され、ロアケース52と締結される。
こうした電池パック10を製造する際には、予め、電池スタック12を、ロアケース52とは別の箇所で組み立てた後、当該電池スタック12をロアケース52の収容空間56に搭載する。このとき、電池スタック12は、比較的、重量がある(例えば、数キロ〜数十キロ)ため、人の手で迅速に搬送することは、難しい。また、本実施形態では、無負荷状態における電池スタック12のX方向長さDcを、収容空間56のX方向長さDs1より大きくしている。そのため、電池スタック12を収容空間56に収容するためには、電池スタック12に、X方向の圧縮力を付与して、電池スタック12のX方向長さを、収容空間56のX方向長さDcよりも小さくする必要がある。しかし、こうした電池スタック12を収縮させる力を人の手で付与することは極めて困難であった。そこで、電池スタック12をロアケース52に搭載するときには、搬送装置を用いる。
搬送装置は、電池スタック12を搬送するための装置で、当該電池スタック12を挟持する一対の把持部材80を有している。図4は、把持部材80の概略的な正面図および側面図である。図1、図4に示すように、把持部材80は、略ブロック状のヘッド82と、当該ヘッド82の下端から下方に延びる複数(図示例では四つ)の脚部84と、を備えている。ヘッド82は、図示しない駆動機構に連結されており、二つのヘッド82は、互いに独立して、水平方向および垂直方向に直線移動できる。また、各ヘッド82は、直線移動に加えて、鉛直軸回りや、水平軸回りでの回転移動ができてもよい。
脚部84は、このヘッド82の下端から延びる角棒状部位である。各脚部84は、スタック側開口部30に挿入可能な大きさとなっている。すなわち、脚部84の幅は、スタック側開口部30の幅よりも小さく、また、脚部84の厚み(X方向長さ)は、スタック側開口部30の厚みよりも小さい。また、複数の脚部84の配置ピッチは、エンドプレート16に設けられたスタック側開口部30の配置ピッチと等しい。したがって、把持部材80を、電池スタック12のエンドプレート16に対して適切に位置決めすることで、複数の脚部84を、複数のスタック側開口部30に挿入することができる。
電池スタック12を搬送する際には、この複数の脚部84を、スタック側開口部30に挿入する。その状態で、一対の把持部材80を互いに近づける方向に移動させ、電池スタック12を圧縮しながら挟持する。電池スタック12を挟持した後、把持部材80を移動させることで、電池スタック12が所望の位置に搬送される。
図5〜図9は、電池スタック12の搬送の様子を示す概略図である。図5〜図9において、上段は、電池スタック12周辺をXZ平面で切断した概略断面図であり、下段は、切断線A−A〜E−E線での概略断面図である。
電池スタック12は、既述した通り、電池セル18とセパレータ20とを交互に積層した電池積層体14と、当該電池積層体14のX方向両側に配された一対のエンドプレート16と、で構成される。この電池スタック12は、パックケース50とは離れた個所において、組み付けられる。電池スタック12の組み付けが終われば、この電池スタック12を搬送装置を用いてロアケース52の収容空間56へと搬送する。なお、組み付け前の状態、すなわち、無負荷状態において、電池スタック12のX方向長さは、図5に示すように、Ds1である。
この搬送の際には、図5に示すように、搬送装置の把持部材80を、電池スタック12のエンドプレート16の真上、より具体的には、複数の脚部84が、スタック側開口部30の真上に位置するように移動させる。脚部84をスタック側開口部30の真上に位置決めできれば、続いて、把持部材80を降下させ、脚部84をスタック側開口部30に挿入する。
脚部84がスタック側開口部30に挿入できれば、続いて、一対の把持部材80を互いに近づける方向に移動させ、一対の把持部材80で、電池スタック12に積層方向の圧縮力を加える。そして、把持部材80は、最終的に、電池スタック12のX方向長さが、収容空間56のX方向長さDcよりも十分に小さいDs2(図6参照)になるまで、電池スタック12を圧縮する。この状態になれば、図6に示すように、把持部材80を上昇させた後、水平移動させ、電池スタック12を所望の位置へと移動させる。
図7は、搬送装置により、電池スタック12が収容空間56の真上まで搬送された状態を示している。この状態になれば、把持部材80は、図8に示す通り、降下して、電池スタック12を収容空間56に収容する。このとき、電池スタック12のX方向長さは、把持部材80からの圧縮力を受けて、収容空間56のX方向長さDcよりも十分に小さい、Ds2であるため、電池スタック12は、収容空間56に、容易に収容できる。
収容後、一対の把持部材80は、互いに離間する方向に僅かに移動して、電池スタック12の挟持を解除する。そして、その後、図9に示すように、脚部84がスタック側開口部30から完全に離脱する高さ位置まで、把持部材80が上昇する。ここで、把持部材80が電池スタック12から離間することで、電池スタック12は、X方向に伸長する。その結果、電池スタック12のX方向両端は、収容空間56のX方向端部の内壁に密着する。ただし、収容空間56のX方向長さXcは、電池スタック12の無負荷状態でのX方向長さXs1よりも小さい。そのため、把持部材80による圧縮力が解除されたとしても、電池スタック12は、収容空間56の内壁から、圧縮力を引き続き受けることになる。
このように、電池スタック12に圧縮力を付与するのは、電池セル18の性能低下を防止するためである。すなわち、角型の電池セル18の表面に付与される圧力が無かったり、付与される圧力に偏りがあったりすると、電池セル18の内部で、金属の析出や、内部短絡、ガス発生、ひいては、セルケースの変形等の意図しない劣化が起こる。こうした意図しない劣化を抑制するために、従来は、金属製の板材である拘束バンドを用意し、当該拘束バンドの両端を電池スタック12の両端に配されるエンドプレート16に固定して、電池スタック12に、積層方向圧縮の力を付与していた。しかし、こうした拘束バンドを用いる形態の場合、部品点数の増加や、組み付け工数の増加という別の問題を招いていた。
一方、本実施形態のように、電池スタック12を収容する収容空間56を、無負荷状態における電池スタック12より小さくしておけば、当該収容空間56に収容することで、電池スタック12には、自動的に、圧縮力を付与することができる。換言すれば、本実施形態によれば、拘束バンドを用いることなく、電池スタック12に圧縮力を付与できるため、部品点数や組み付け工数を低減できる。
ところで、これまでの説明で明らかな通り、本実施形態では、電池スタック12のエンドプレート16にスタック側開口部30を設けている。かかるスタック側開口部30を設ける理由について従来技術と比較して説明する。図10は、従来技術の一例を示す図である。従来でも、電池スタック12でも、電池積層体14のX方向両側には、エンドプレート16が配されていた。しかし、従来のエンドプレートは、厚みが一定の平板状であり、搬送装置の脚部84を収容するスタック側開口部30が無かった。そのため、従来の電池スタック12を一対の把持部材80で、挟持して搬送しようとした場合、脚部84が、電池スタック12のX方向端面より外側に突出することになる。この場合、収容空間56には、図10に示す通り、この脚部84を逃がすための空間である逃げ部59を形成する必要があり、ロアケース52、ひいては、電池パック10の大型化を招いていた。また、こうした逃げ部59には、応力が集中しやすく、変形が生じやすい。そのため、こうした逃げ部59を設けた場合には、当該逃げ部59の変形を防止するための補強等が必要であり、更なる工数の増加等を招いていた。
本実施形態では、既述した通り、脚部84の逃げ部として機能するスタック側開口部30を、エンドプレート16に設けている。そのため、収容空間56側に脚部84との干渉を避ける逃げ部を設ける必要がなく、収容空間56、ひいては、電池パック10の小型化が可能となる。また、逃げ部59がないため、ロアケース52に専用の補強部材を設ける必要がなく、組み付け工程をより簡易化できる。
また、本実施形態によれば、エンドプレート16は、収容空間56の内壁に接触する。このエンドプレート16は、絶縁性および断熱性を有した材料からなる。そのためエンドプレート16を、収容空間56の内壁に接触させたとしても、エンドプレート16を介しての電熱、伝導が阻害される。結果として、エンドプレート16が、収容空間56の内壁に接触したとしても、電池セル18の性能への悪影響を防止できる。
なお、これまで説明した構成は、一例であり、適宜、変更されてもよい。例えば、本実施形態では、エンドプレート16の表面において、高さ方向に延びる溝を、スタック側開口部30として用いている。しかし、スタック側開口部30は、把持部材80の少なくとも一部が挿入できるのであれば、他の形態、例えば、エンドプレート16の上端面から、下方に延びる穴を、スタック側開口部30として用いてもよい。
また、本実施形態では、収容空間56の内壁で、電池スタック12に圧縮力を付与する構成としている。しかし、電池スタック12への圧縮力は、他の部材で付与されてもよい。例えば、予め長さが調節された金属製の拘束バンドの両端を、一対のエンドプレート16に締結することで、電池スタック12に圧縮力を付与する構成としてもよい。この場合、電池スタック12のX方向端面と収容空間56のX方向端面とは、必ずしも、密着する必要はない。しかし、電池パック10の小型化のためには、電池スタック12と収容空間56との間隙は、小さいほうが望ましい。そして、電池スタック12にスタック側開口部30を設けておけば、電池スタック12のX方向端面と収容空間56のX方向端面とを接触または近接させつつ、把持部材80とロアケース52との干渉を防止できる。そして、結果として、電池パック10を小型化できる。
さらに、本実施形態で例示した電池セル18やセパレータ20の形状や個数は、全て一例であり、電池セル18が角型であるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。また、本実施形態では、複数の電池セル18を直列接続しているが、複数の電池セル18は、並列接続されてもよい