JP2018048853A - タイヤの転がり抵抗評価装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】加振振幅を得るための動力源の容量を小さくし、装置全体およびドラム構成部材の振動や疲労損傷を低減できるタイヤの転がり抵抗評価装置を提供する。【解決手段】タイヤ2が走行する路面を模擬した表面を有する負荷ロール44と、負荷ロール44を、タイヤ2に近接する方向である近接方向及びタイヤ2から離隔する方向である離隔方向に、交互に移動させるための移動機構と、荷重センサ38と、位置センサ37と、荷重センサ38及び位置センサ37からの信号に基づき荷重の変動と負荷ロール44の位置の変動との位相差を導出する位相差導出部48と、位相差導出部48が導出した位相差とを比較し、評価対象となるタイヤの転がり抵抗を評価する転がり抵抗評価49部とを備えたタイヤの転がり抵抗評価装置10において、並べて配置された2本以上の負荷ロール44がタイヤ2より小径である。【選択図】図6

Description

本発明は、タイヤの転がり抵抗評価装置に関する。
トラック、乗用自動車および他の車両用タイヤの性質および性能を測定するに当り、重要な測定項目の一つとして、タイヤの転がり抵抗がある。
このタイヤの転がり抵抗は、タイヤを地面上で転動させた際にタイヤと地面との間で発生する接線方向の力である。タイヤ試験機においては、試験用のタイヤと、このタイヤが接して回転する相手表面(例えば、負荷ドラムの表面)との間で発生する接線方向の力としてタイヤの転がり抵抗は計測される。つまり、タイヤと相手表面との間に、ある大きさの半径方向の力(負荷荷重Fz)を与えると、このタイヤの負荷荷重Fzに対応した転がり抵抗Fxが発生し、負荷荷重Fzと転がり抵抗Fxとの関係が測定される。
こうした転がり抵抗の計測方法は、ドラム式のタイヤ走行試験機による方法として、JIS D 4234(乗用車,トラック及びバス用タイヤ−転がり抵抗試験方法、2009年)で規定されている。
JIS規格の転がり抵抗試験機として、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。特許文献1の転がり抵抗測定装置は、円筒状に形成された負荷ドラム(走行ドラム)の外周面にタイヤを押圧接触させ、軸受を介してタイヤを支承するスピンドルの多分力検出器により、x,y,z軸方向に加わる力とトルク(モーメント)とを計測する構成となっている。この特許文献1の装置では、これらの分力同士の干渉に対する補正を行なった上で、タイヤの軸方向の荷重Fzと、転がり抵抗Fxとの関係を計測する構成となっている。
しかし特許文献1の転がり抵抗測定装置では、1本のタイヤの転がり抵抗を測定するために時間が掛かるため、生産したタイヤ全数の転がり抵抗を測定するには多大な時間を要する。
タイヤの転がり抵抗を測定する時間を削減するため、特許文献2においては、転がり抵抗係数を、タイヤの均一性を検査するタイヤユニフォ−ミティ試験機を利用して予測する手法が示されている。転がり抵抗はタイヤ走行時におけるタイヤゴム部材の変形時のエネルギ損失により生じ、タイヤゴム部材の減衰特性と相関が高いことが知られている。そこで、特許文献2では、タイヤユニフォ−ミティ試験機に備えられているドラムによりタイヤを加振して、ドラム変位と反力の位相差となって現れる減衰特性を計測することにより、転がり抵抗係数を予測する方法が考案されている。タイヤ全数の試験を行うユニフォーミティ計測工程において、各タイヤの減衰特性に相当する位相差を計測し、転がり抵抗係数値が基準範囲に入らない異常タイヤを選別することを特徴としている。異常タイヤの選別は、予め、転がり抵抗係数が基準値に入っている基準タイヤに対して特許文献2の方法により、前記基準タイヤでの位相を算出する。基準タイヤでの位相と生産タイヤでの計測位相との比較により、その差が許容値を上回る場合を不良タイヤと判別する。
特開2003−4598号公報 特開2015−232545号公報
しかし特許文献2の負荷ドラムを振動させてタイヤを加振する方法において、負荷ドラムの質量が大きい(タイヤ変形を通常の平坦の場合に近づけるために、従来より、タイヤ径よりも大きな負荷ドラムが使用されている)と、所定の加振振幅を得るためにはその動力源の容量を大きくする必要が生じる。また、ドラム構成部材に疲労損傷の問題や、装置全体の振動および疲労の問題が生じる。
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、負荷ドラムの加振振幅を得るための動力源としてのエアシリンダの容量を小さくし、装置全体およびドラム構成部材の振動や疲労損傷を低減できる転がり抵抗評価装置を提供することを目的とする。
本発明に係る転がり抵抗評価装置は、タイヤが走行する路面を模擬した表面を有する負荷ロールと、前記負荷ロールを、前記タイヤに近接する方向である近接方向及び前記タイヤから離隔する方向である離隔方向に、交互に移動させるための移動機構と、前記負荷ロールの前記表面が前記タイヤに接触した状態において前記タイヤに加わる荷重を検知するための荷重センサと、前記近接方向及び前記離隔方向に沿った方向における前記負荷ロールの位置を検知するための位置センサと、前記タイヤに加わる荷重が変動するように前記移動機構を制御し、前記荷重センサ及び前記位置センサからの信号に基づき前記荷重の変動と前記負荷ロールの位置の変動との位相差を導出する位相差導出部と、基準タイヤについて前記位相差導出部が導出した前記位相差と評価対象となるタイヤについて前記位相差導出部が導出した前記位相差とを比較し、前記評価対象となるタイヤの転がり抵抗を評価する転がり抵抗評価部と、を備えたタイヤの転がり抵抗評価装置であって、並べて配置された2本以上の前記負荷ロールが前記タイヤより小径である。
この発明では、タイヤより小径の負荷ロールを使うことにより、負荷ロールの質量を大幅に軽減することができる。これにより、負荷ロールが所定の加振振幅を得るための動力源の容量を小さくし、また、装置全体および移動機構の振動や疲労損傷を低減できる。2本以上の負荷ロールを並べて配置することによってタイヤを実際の接地状態に近づけ、タイヤの変形時の曲率を小さくすることができる。
前記負荷ロールが、前記タイヤを試験するタイヤ試験機とは別に設置されることが好ましい。タイヤ試験機と別に負荷ロールを設置することで、既設の試験機を改造することなく、または既設の試験機の簡単な改造でメーカーや型式が異なる各種試験機に、同一の仕様で容易にタイヤの転がり抵抗評価装置を設置できる。
前記負荷ロールが、前記タイヤ試験機の走行ドラムとは別に設置されることが好ましい。これにより、既設のタイヤ試験機、特にタイヤユニフォ−ミティ試験機を改造することなく、または既設のタイヤ試験機、特にタイヤユニフォ−ミティ試験機の簡単な改造でタイヤの転がり抵抗評価装置を設置できる。
前記負荷ロールが2本であり、前記負荷ロールそれぞれの中心点が、前記タイヤと接して前記タイヤの外径と同じ径を有する仮想の円の中心点を通過する、前記タイヤと外接する2本の直線の間に収まることが好ましい。
2本の負荷ロールの径方向寸法が大きくなると、2本の負荷ロールの中心間距離が大きくなり、負荷ロールとタイヤとの接触状態が、タイヤの実際の接地状態と大きく異なる。そこで、タイヤと接してタイヤの外径と同じ径を有する仮想の円の中心点を通過する、タイヤと外接する2本の直線の間に負荷ロールの中心点を収めることで、2本の負荷ロールの中心間距離を小さくし、タイヤを実際の接地状態に近づけることができる。
前記移動機構がエアシリンダを有し、
前記エアシリンダへの供給圧力を高圧と低圧とで切り替えることにより、前記負荷ロールが前記タイヤに加振力を与えても良い。
移動機構がエアシリンダを有することで、安価かつ簡単な動力源とすることができる。また、エアシリンダへの供給圧力を高圧と低圧とで切り替えることにより、負荷ロールは、安定した加振力をタイヤに与えることができる。
本発明では、タイヤより小径の負荷ロールを使うことにより、負荷ロールの質量を大幅に軽減することができる。これにより、負荷ロールが所定の加振振幅を得るための動力源の容量を小さくし、また、装置全体および移動機構の振動や疲労損傷を低減できる。2本以上の負荷ロールを並べて配置することによってタイヤを実際の接地状態に近づけ、タイヤの変形時の曲率を小さくすることができる。
本発明の実施形態に係るタイヤの転がり抵抗評価装置およびタイヤユニフォ−ミティ試験機の概略図である。 タイヤの転がり抵抗評価装置を側方から見た断面図である。 タイヤの転がり抵抗評価装置の平面図である。 タイヤの転がり抵抗評価装置の正面図である。 エアシリンダを駆動する空気回路図である。 負荷ロールとタイヤとの関係を示す平面断面図である。 負荷ロールをタイヤに押し付けた状態を示す平面断面図である。 タイヤの転がり抵抗の評価装置の電気的構成を示すブロック図である 負荷ロールの変位と荷重振幅との位相差を模式的に示したグラフである。 外形寸法が小さいタイヤに転がり抵抗評価装置を適用した側面図である。 外形寸法が大きいタイヤに転がり抵抗評価装置を適用した側面図である。 変形例1に係るタイヤの転がり抵抗評価装置の側面図である。 変形例1に係るタイヤの転がり抵抗評価装置の正面図である。 外形寸法が小さいタイヤに変形例2に係るタイヤの転がり抵抗評価装置を適用した側面図である。 外形寸法が大きいタイヤに変形例2に係るタイヤの転がり抵抗評価装置を適用した側面図である。
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の転がり抵抗評価装置10(以下、単に「評価装置」と称す)は、タイヤ2の周方向の均一性を検査するタイヤユニフォ−ミティ試験(JIS D4233)を行うタイヤユニフォ−ミティ試験機(TUM:Tire Uniformity Machine)1に付設されている。評価装置10は、タイヤユニフォ−ミティ試験機1と一体ではなく別に設置されているので、後述する負荷ロール44(44A,44B)がタイヤユニフォ−ミティ試験機1の走行ドラム4と別に設置されている。評価装置10は、タイヤユニフォ−ミティ試験機1とタイヤ2を間にして反対側に設置されている。タイヤ2は円環状であり、鉛直方向に延びるタイヤ軸3に回転可能に支持されている。なお評価装置10の設置場所は、タイヤユニフォ−ミティ試験機1、特にタイヤユニフォ−ミティ試験機1が有する走行ドラム4と干渉しない場所であれば、特に限定されない。
評価装置10は、タイヤが走行する路面を模擬した表面(外周面)を有する負荷ロール44(図2参照)をタイヤ2に接触させることで、タイヤ2の転がり抵抗を評価する。評価装置10は、基礎5に鉛直方向に設置された固定部材6に固定されている。
評価装置10は、固定部材6に鉛直方向(図2中、上下方向)に固定された立壁11と、立壁11と直交する水平方向(図2中、左右方向)に延びるベースフレーム26と、ベースフレーム26上を水平方向に移動するハウジング30とを備えている。
図3を併せて参照すると、立壁11のハウジング30側には、先端部がハウジング30の突出壁部35に連結され、立壁11とハウジング30の突出壁部35とを接続するエアシリンダ13が固定されている。エアシリンダ13は、負荷ロール44がタイヤ2の中心付近に荷重を与えられる位置に配置するのが望ましい。またエアシリンダ13は、負荷ロール44の高さ方向の中央部付近に配置され、このエアシリンダ13が移動機構を構成する。
移動機構(エアシリンダ13)はハウジング30を介して負荷ロール44を、タイヤ2に近接する方向(図3中、右方向)である近接方向及びタイヤ2から離隔する方向である離隔方向(図3中、左方向)に、交互に移動させる。エアシリンダ13は、ピストン14によって画定されたハウジング30側の圧力室15を有し、この圧力室15の圧力が切り換えられることで、ピストンロッド16を介してハウジング30を移動させる。なお、エアシリンダ13に付随して、立壁11のハウジング30側には、立壁11とハウジング30の背面壁34とを接続する2つのスプリング12が配設されている。2つのスプリング12は、エアシリンダ13による負荷ロール44の移動を阻害することなく、立壁11に向かってハウジング30を付勢している。
図5にエアシリンダ13を駆動する空気回路20を示す。エアシリンダ13の圧力室15は、圧力源21に接続された空気回路20によって圧力が切り換えられる。空気回路20は、圧力源21と、エアシリンダ13に接続された第2電磁弁25との間に並列に接続された高圧側の高圧レギュレータ22と、低圧側の低圧レギュレータ23とから構成されている。高圧レギュレータ22と第2電磁弁25との間には第1電磁弁24が接続され、第1電磁弁24をオフからオンに切り換えることで、エアシリンダ13の圧力室15に高圧または低圧の空気を供給する状態となる。
第1電磁弁24をオンにした状態で、第2電磁弁25をオフにすることで圧力室15に高圧の空気が供給される。第1電磁弁24をオンにした状態で、第2電磁弁25をオンにすることで圧力室15に低圧の空気が供給される。第1電磁弁24と第2電磁弁25とをオンからオフにすると圧力室15への空気の供給が停止し、圧力室15が大気圧になる。
図2に戻って、ベースフレーム26の上面には、ベースフレーム26の立壁11側端部からタイヤ2側端部(図2中、右側端部)まで直線状に延びる一対のリニアガイド27のレール28が固定されている。
ハウジング30は、負荷ロール44を回転可能に支持し、リニアガイド27に沿って負荷ロール44を一定振動数でタイヤ2に対して往復移動させる。図4を併せて参照すると、ハウジング30は正面(図4中、手前側)が開口した縦長の箱形状であり、底壁31と上壁32と側壁33と背面壁34(図3参照)と突出壁部35とを備えている。
底壁31の下面には、リニアガイド27のレール28に沿って摺動するスライダ29が設けられている。ハウジング30はリニアガイド27を介してベースフレーム26に取り付けられているので、ハウジング30、すなわち負荷ロール44が傾くのを防止できる。なお、リニアガイド27に沿って移動するハウジング30の変位量は、立壁11に固定された位置センサ37により計測される。言い換えれば、位置センサ37は、ハウジング30の変位量を計測することで、タイヤ2への近接方向及び離隔方向に沿った方向における負荷ロール44の位置を検知する。なお、本実施形態では位置センサ37として非接触のレーザ変位計を用いるが、接触式の変位計や渦変位計を用いても良い。
底壁31の下面および上壁32の上面にはそれぞれ、負荷ロール44の表面がタイヤ2に接触した状態においてタイヤ2に加わる荷重を検知する荷重センサであるロードセル38が配設されている。上側のロードセル38には、2本のロールシャフト41の上端を固定する上側のロール固定部材42が取り付けられており、下側のロードセル38には、2本のロールシャフト41の下端を固定する下側のロール固定部材42が取り付けられている。2本のロールシャフト41はそれぞれ、ベアリング43を介して負荷ロール44を回転可能に支持している。これらの構成により、負荷ロール44をタイヤ2のトレッド面に圧着させた際にはロールシャフト41およびロール固定部材42を介してロードセル38に荷重が伝わり、このロードセル38によってタイヤ2に加わる負荷荷重が計測される。2本の負荷ロール44に作用する荷重は全てロードセル38に作用するため、精度良く荷重を計測できる。
負荷ロール44は鉛直方向に延びる軸心を有する円筒状の部材であり、この負荷ロール44の外周面がタイヤ試験用の模擬路面とされている。図6は、負荷ロール44をタイヤ2に接触させた状態の負荷ロール44とタイヤ2との関係を示す平面断面図である。2本の負荷ロール44A,44Bは並べて配置されており、個々の負荷ロール44A,44Bの外径はタイヤ2の外径より小径である。負荷ロール44の外径の最小径は、荷重に対する負荷ロール44の強度によって決定される。本実施形態では、タイヤ2の外径と負荷ロール44A,44Bの外径との比が5:1となっている。なお、2つの負荷ロール44A,44Bは外形寸法が同じ(同一形状)であり、負荷ロール44の外径寸法の具体的な数値は特に限定されない。
2本の負荷ロール44のうち、一方の負荷ロール44Aの中心点C2とタイヤ2の中心点C1との間の距離L3は、他方の負荷ロール44Bの中心点C3とタイヤ2の中心点C1との間の距離L4と等しい。すなわち、負荷ロール44Aの中心点C2と負荷ロール44Bの中心点C3とは、ダイヤ2と同心円上に位置する。また、一方の負荷ロール44Aの中心点C2と他方の負荷ロール44Bの中心点C3とを結ぶ線L5の中点C5は、タイヤ2の中心点C1と後述する仮想の円46の中心点C4とを結ぶ線L6上に位置する。
更に、一方の負荷ロール44Aの中心点C2と他方の負荷ロール44Bの中心点C3とは、タイヤ2と接して同じ径を有する仮想の円46の中心点C4を通過する、タイヤ2と外接する2本の直線L7の間に収まるように配置されている。2本の負荷ロール44A,44Bは、それぞれの外周面が互いに離れる様に配置されている。
評価装置10は更に、位相差導出部48と転がり抵抗評価部49とを備えている。図8に示すように、前述した移動機構のエアシリンダ13と位置センサ37とロードセル38とは位相差導出部48に接続され、位相差導出部48が転がり抵抗評価部49に接続されている。位相差導出部48は、タイヤ2に加わる荷重が変動するようにエアシリンダ13を制御し、ロードセル38及び位置センサ37からの信号に基づき荷重の変動と負荷ロール44の位置の変動との位相差を導出する。転がり抵抗評価部49は、基準タイヤについて位相差導出部48が導出した位相差と評価対象となるタイヤ2について位相差導出部48が導出した位相差とを比較し、評価対象となるタイヤ2の転がり抵抗を評価する。
次に、本実施形態の評価装置10を用いたタイヤ2の転がり抵抗の評価方法について説明する。なお、転がり抵抗の評価試験は、走行ドラム4を用いたタイヤユニフォーミティ試験の後、タイヤ2から走行ドラム4を後退させてから行う。
本発明の評価装置10では、タイヤゴムの減衰特性を表すtanδというパラメータを用いてタイヤ2を評価している。例えば、タイヤの転がり抵抗の要因としては、荷重で変形したタイヤゴムが回転により繰り返し歪むことによるエネルギーロス(ヒステリシスロス)による抵抗が大きく影響する。このヒステリシスロスは、tanδで評価できる。このtanδのδは、タイヤゴムに周期的な外力を作用したときに発生する歪と応力の位相差に相当する。tanδの値が大きいほど、タイヤのたわみによるエネルギーロスが大きく、その結果として転がり抵抗も大きくなる。
具体的には、このtanδのδ(位相差)は、前述した負荷ロール44をタイヤ2に対して近接する方向および隔離する方向に交互に移動(加振)させることにより計測される。つまり、負荷ロール44を交互に移動させると、この負荷ロール44の位置の変動よりやや進んでタイヤ2に作用する負荷荷重の変動が観察される。そのため、この負荷ロール44の位置の変動と負荷荷重の変動とを比較し、両者の位相のズレを算出すれば、この位相のズレのtanが上述したtanδに相当する。本実施形態の評価装置10では、このようにして算出されたtanδの値が予め定められた閾値を超えるかどうかで、タイヤ2の転がり抵抗を評価している。
評価装置10でタイヤ2の転がり抵抗を評価する際には、タイヤ2に押し付けられた負荷ロール44をタイヤ2に対して移動させることにより、タイヤ2に加振力を与える必要がある。負荷ロール44を近接する方向および隔離する方向に交互に移動させるために、負荷ロール44を駆動するエアシリンダ13への供給圧力を高圧と低圧とで切り替える。これにより、負荷ロール44がタイヤ2に加振力を与え、タイヤ2に作用する負荷荷重を大小に変動させる。
具体的には初期状態では、第1電磁弁24と第2電磁弁25とがオフであり、エアシリンダ13の圧力室15の圧力は大気圧となっている。このとき、スプリング12がハウジング30を立壁11に向かって付勢しているので、負荷ロール44がタイヤ2と離れた状態にある。この状態から第2電磁弁25はオフのまま、第1電磁弁24をオンに切り換えることで圧力室15に高圧が導入され、エアシリンダ13がスプリング12の付勢力に抗してハウジング30をタイヤ2に向かって押圧する。これにより、ロードセル38で計測される負荷荷重が所定の負荷荷重となるように、負荷ロール44が前進してタイヤ2に押し付けられる(図7参照)。
次に第1電磁弁24はオンのまま、第2電磁弁25をオフからオンに切り換えることで圧力室15に低圧が導入され、タイヤ2からの反力により負荷ロール44が後退する。すなわち負荷ロール44をタイヤ2に押し付けた状態から、負荷ロール44を反押付方向に後退させて負荷荷重を減らす。
この後、第1電磁弁24はオンのまま、所定の周波数で第2電磁弁25のオン、オフを切り換えることにより、負荷ロール44とタイヤ2との接触状態を維持しつつ負荷ロール44がタイヤ2に変動荷重を与える。
このとき、負荷ロール44の位置の変動を位置センサ37で計測すると共に、負荷荷重の変動をロードセル38で計測している。このようにして計測された負荷ロール44の位置の経時的な変動と負荷荷重の変動を、フィルタ等により加振周波数成分のみを抽出してプロットすると、図9に示すような曲線が得られる。
図9に示すように、タイヤに加えられた押付方向のロール変位の変化曲線に対して、負荷荷重の変化曲線は、タイヤゴムの減衰特性により位相差δだけ進んで記録される。そこで位相差導出部48では、ロール変位の変化曲線と、負荷荷重の変化曲線との水平方向に沿った位相差δを算出する。一般には、2つの信号波形の位相差は、FFT解析による伝達関数を求めて算出する場合が多い。
このようにして算出された位相差δを元にしてtanδを算出し、算出されたtanδが予め定めた閾値を超えるかどうかでタイヤ2の転がり抵抗を評価する。具体的には、最初に性状や特性に異常がない基準タイヤに対して位相差δを計測する。次に、評価対象となるタイヤの位相差δを計測する。基準タイヤの位相差δの値に比して、許容範囲以上の差がある場合、言い換えれば位相差δが所定の閾値を超える場合には、タイヤの転がり抵抗が規格値より大きくなっていると判断できる。そのため転がり抵抗評価部49では、位相差δが所定の閾値を超える場合には、試験されたタイヤが転がり抵抗に異常のあるタイヤであると評価し、必要に応じて該当するタイヤを排除する。
また、算出されたtanδが予め定めた閾値以下(言い換えれば、tanδが基準タイヤの位相差δの値に比して所定範囲内の値)である場合には、転がり抵抗評価部49が、評価対象となるタイヤが転がり抵抗の正常なタイヤであると評価し、製品規格を満足するタイヤとして扱うことになる。
転がり抵抗の評価試験が終了すると、第1電磁弁24および第2電磁弁25をオンからオフに切り換えて圧力室15の圧力を抜く。これにより、圧力室15が大気圧になり、スプリング12がハウジング30を立壁11に向かって付勢して移動させることで、負荷ロール44がタイヤ2から離れる。
上述した評価装置10を用いれば、タイヤの転がり抵抗に相関が高いtanδを求めることができ、求められたtanδに基づいてタイヤの転がり抵抗を簡単に評価することが可能となる。その結果、転がり抵抗に異常があるタイヤを短時間で精度良く選別することが可能となり、多数製造される製品タイヤに対して転がり抵抗を全数検査することが可能となる。
[本実施形態のタイヤの転がり抵抗評価装置の特徴]
本実施形態の評価装置10には以下の特徴がある。
本実施形態の評価装置10では、タイヤ2より小径の負荷ロール44を使うことにより、負荷ロール44の質量を大幅に軽減することができる。これにより、負荷ロール44が所定の加振振幅を得るための動力源の容量を小さくし、また、装置全体および移動機構の振動や疲労損傷を低減できる。2本以上の負荷ロール44を並べて配置することによってタイヤ2を実際の接地状態に近づけ、タイヤ2の変形時の曲率を小さくすることができる。
本実施形態の評価装置10では、タイヤユニフォ−ミティ試験機、タイヤバランサおよび走行試験機を含めたタイヤの性質または性能を試験する各タイヤ試験機と別に負荷ロール44を設置することで、既設の試験機を改造することなく、または既設の試験機の簡単な改造で、メーカーや型式が異なる各種試験機に、同一の仕様で容易に評価装置10を設置できる。
本実施形態の評価装置10では、負荷ロール44が、タイヤ試験機の中でも特にタイヤユニフォ−ミティ試験機1の走行ドラム4とは別に設置されたので、既設のタイヤユニフォ−ミティ試験機1を改造することなく、または既設のタイヤユニフォ−ミティ試験機1の簡単な改造で評価装置10を設置できる。
本実施形態の評価装置10では、2本の負荷ロール44の径方向寸法が大きくなると、2本の負荷ロール44の中心間距離が大きくなり、負荷ロール44とタイヤ2との接触状態が、タイヤ2の実際の接地状態と大きく異なる。そこで、タイヤ2と接して同じ径を有する仮想の円46の中心点を通過する、タイヤ2と外接する2本の直線の間に2本の負荷ロール44の中心点を収めることで、2本の負荷ロール44の中心間距離を小さくし、タイヤ2を実際の接地状態に近づけることができる。
本実施形態の評価装置10では、移動機構がエアシリンダ13を有することで、安価かつ簡単な動力源とすることができる。また、エアシリンダ13への供給圧力を高圧と低圧とで切り替えることにより、負荷ロール44は、安定した加振力をタイヤ2に与えることができる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
前記実施形態では、評価装置10はタイヤユニフォ−ミティ試験機1に付設されたが、例えばタイヤバランサや走行試験機などタイヤの性質または性能を試験する種々のタイヤ試験機に付設されても同様の効果を得ることができる。
前記実施形態では2本の負荷ロール44を用いたが、例えば負荷ロール44が3本など、複数本である限り具体的な本数は特に限定されない。また負荷ロール44の外径寸法に関して、タイヤ2の外径寸法より小さければ、負荷ロール44の具体的な外径寸法は特に限定されない。
前記実施形態では2つの負荷ロール44の外形寸法は同じであるが、外形寸法が異なる複数の負荷ロールを採用しても良い。また前記実施形態では、一方の負荷ロール44Aの中心点C2とタイヤ2の中心点C1との間の距離L3は、他方の負荷ロール44Bの中心点C3とタイヤ2の中心点C1との間の距離L4と等しい。しかしこれに限定されず、距離L3と距離L4とが異なっても良い。
前記実施形態では、負荷ロール44およびタイヤ2に加振力を与えるためにエアシリンダ13を用いたが、これに限定されない。例えば、油圧シリンダと油圧回路、ボールねじとサーボモータの組み合わせでも同様の効果を得ることができる。なお、ボールねじとサーボモータを用いた例を後述する変形例2として説明する。
本発明に係る評価装置10は、外径寸法が異なる種々のタイヤ2に適用できる。図10に、前記実施形態で用いたタイヤ2より外形寸法が小さいタイヤ2に評価装置10を適用した側面図を示す。このとき、エアシリンダ13のピストン14をタイヤ2側に移動することでエアシリンダ13のストロークを伸ばし、負荷ロール44をタイヤ2に押し付けている。図11に、図10で用いたタイヤ2より外形寸法が大きいタイヤ2に評価装置10を適用した側面図を示す。このとき、エアシリンダ13のピストン14を固定部材6側に移動することでエアシリンダ13のストロークを短くし、負荷ロール44をタイヤ2に押し付けている。
<変形例1>
前記実施形態では、負荷ロール44をタイヤ2のトレッド面に押し付けた際に、タイヤ2に加わる負荷荷重を計測する荷重センサとしてロードセルを用いた。しかし、図12および図13に示す変形例1に係る評価装置10では、ロードセルに代えて荷重センサとして歪ゲージ51を用いた。これ以外の評価装置10の構成は前記実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
変形例1では、ロールシャフト41の上下両端部に切欠き52(52a,52b)が設けられている。上端部および下端部の一方の切欠き52aはハウジング30の背面壁34と対向し、他方の切欠き52bは、ロールシャフト41の中心を間にして一方の切欠き52aと反対側に設けられている。これらの各切欠き52に歪ゲージ51を張り付けることで、タイヤ2に加わる負荷荷重を計測できる。
<変形例2>
前記実施形態では、評価装置10を固定部材6に直接固定した。しかしこれに限定されず、評価装置10をタイヤ2に対して移動可能に固定部材6に設置しても良い。具体的には図14および図15に示すように、固定部材6に固定された基部56にリニアガイド27を介して評価装置10を設置している。このとき評価装置10は、固定部材6に固定されたサーボモータ57に駆動されるボールねじ58によって、タイヤ2に対して移動される。これにより、異なる外形寸法を有する種々のタイヤ2に評価装置10を適用できる。
1 タイヤユニフォ−ミティ試験機
2 タイヤ
10 転がり抵抗評価装置
12 スプリング(移動機構)
13 エアシリンダ(移動機構)
37 位置センサ
38 ロードセル(荷重センサ)
44 負荷ロール
46 仮想の円
48 位相差導出部
49 転がり抵抗評価部

Claims (5)

  1. タイヤが走行する路面を模擬した表面を有する負荷ロールと、
    前記負荷ロールを、前記タイヤに近接する方向である近接方向及び前記タイヤから離隔する方向である離隔方向に、交互に移動させるための移動機構と、
    前記負荷ロールの前記表面が前記タイヤに接触した状態において前記タイヤに加わる荷重を検知するための荷重センサと、
    前記近接方向及び前記離隔方向に沿った方向における前記負荷ロールの位置を検知するための位置センサと、
    前記タイヤに加わる荷重が変動するように前記移動機構を制御し、前記荷重センサ及び前記位置センサからの信号に基づき前記荷重の変動と前記負荷ロールの位置の変動との位相差を導出する位相差導出部と、
    基準タイヤについて前記位相差導出部が導出した前記位相差と評価対象となるタイヤについて前記位相差導出部が導出した前記位相差とを比較し、前記評価対象となるタイヤの転がり抵抗を評価する転がり抵抗評価部と、
    を備えたタイヤの転がり抵抗評価装置であって、
    並べて配置された2本以上の前記負荷ロールが前記タイヤより小径であることを特徴とするタイヤの転がり抵抗評価装置。
  2. 前記負荷ロールが、前記タイヤを試験するタイヤ試験機とは別に設置されたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの転がり抵抗評価装置。
  3. 前記負荷ロールが、前記タイヤ試験機の走行ドラムとは別に設置されたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤの転がり抵抗評価装置。
  4. 前記負荷ロールが2本であり、前記負荷ロールそれぞれの中心点が、前記タイヤと接して前記タイヤの外径と同じ径を有する仮想の円の中心点を通過する、前記タイヤと外接する2本の直線の間に収まることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタイヤの転がり抵抗評価装置。
  5. 前記移動機構がエアシリンダを有し、
    前記エアシリンダへの供給圧力を高圧と低圧とで切り替えることにより、前記タイヤに加振力を与えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタイヤの転がり抵抗評価装置。
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