以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1〜図8を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
蓄電素子は、図1〜図5に示すように、電極体2と、電極体2に接続された集電体5と、第一面611と第一面611の反対側の第二面612とをY軸方向(第一方向)に有する(図2参照)と共に、Y軸方向(第一方向)に貫通した開口部又は切欠部を有し、電極体2と集電体5とを接続した接続部8(図4参照)が開口部又は切欠部と対応した位置に配置された状態で、少なくとも接続部8の周囲に第一面611が重ね合わされた第一絶縁部材61と、第一絶縁部材61の第二面612に重ね合わされ、開口部又は切欠部と対応した位置で接続部8を覆う第二絶縁部材62と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置されると共に電極体2と導通する外部端子4と、を備える。
図5に示すように、電極体2は、巻芯21と、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層されると共に巻芯21の周囲に巻回された積層体22と、を備える。電極体2においてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
巻芯21は、通常、絶縁材料によって形成される。巻芯21は、筒形状である。本実施形態の巻芯21は、偏平な筒形状である。本実施形態の巻芯21は、可撓性又は熱可塑性を有するシートを巻回することによって形成される。
正極23は、金属箔と、金属箔の上に形成された正極活物質層と、を有する。金属箔は帯状である。本実施形態の金属箔は、例えば、アルミニウム箔である。正極23は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層の非被覆部(正極活物質層が形成されていない部位)231を有する。正極23において正極活物質層が形成される部位を被覆部232と称する。
前記正極活物質層は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
前記正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiaCoyO2、LiaNixO2、LiaMnzO4、LiaNixCoyMnzO2等)、LiaMeb(XOc)d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFebPO4、LiaMnbPO4、LiaMnbSiO4、LiaCobPO4F等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2である。
前記正極活物質層に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
前記正極活物質層は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
負極24は、金属箔と、金属箔の上に形成された負極活物質層と、を有する。金属箔は帯状である。本実施形態の金属箔は、例えば、銅箔である。負極24は、帯形状の短手方向である幅方向の他方(正極23の非被覆部231と反対側)の端縁部に、負極活物質層の非被覆部(負極活物質層が形成されていない部位)241を有する。負極24の被覆部(負極活物質層が形成される部位)242の幅は、正極23の被覆部232の幅よりも大きい。
前記負極活物質層は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
前記負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、難黒鉛化炭素である。
負極活物質層に用いられるバインダーは、正極活物質層に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
前記負極活物質層は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層は、導電助剤を有していない。
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極23、負極24、及びセパレータ25の積層体22が巻回される。セパレータ25は、絶縁性を有する部材である。セパレータ25は、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を移動する。
セパレータ25は、帯状である。セパレータ25は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。セパレータ25は、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されてもよい。本実施形態のセパレータ25は、例えば、ポリエチレンによって形成される。セパレータの幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極24の被覆部242の幅より僅かに大きい。セパレータ25は、被覆部232同士が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部231と負極24の非被覆部241とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部231が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極24の非被覆部241が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部231の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極23、負極24、及びセパレータ25、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。正極23の非被覆部231又は負極24の非被覆部241のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。本実施形態の非被覆積層部26は、巻回された正極23、負極24、及びセパレータ25の巻回中心方向視において、中空部27(図2、図5参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部)261に区分けされる。
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の非被覆部231のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の非被覆部241のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
ケース3は、図1〜図3に示すように、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間33に収容する(図3参照)。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料によって形成されてもよい。
前記電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部34と、蓋板32の周縁部とが重ね合わされた状態で接合されることによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間33を有する(図3参照)。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部34と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
ケース本体31は、板状の閉塞部311であってケース3の内側を向く内面とケース3の外側を向く外面とを有する閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される胴部312であって、閉塞部311の内面側に延び且つ該内面を包囲する筒状の胴部312とを備える。
閉塞部311は、開口が上を向くようにケース本体31が配置されたときに、ケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向視において、矩形状である。
以下では、図2に示すように、閉塞部311の長辺方向をX軸方向とし、閉塞部311の短辺方向をY軸方向とし、閉塞部311の法線方向をZ軸方向とする。
本実施形態の胴部312は、角筒形状を有する。詳しくは、胴部312は、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐようにケース本体31に当接する。より具体的に、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接されることにより、ケース3が構成される。
蓋板32の輪郭は、Z軸方向視において、ケース本体31の開口周縁部34に対応した形状である。即ち、蓋板32は、Z軸方向視において、X軸方向に長い矩形状の板材である。
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。本実施形態のガス排出弁321は、X軸方向における蓋板32の中央部に設けられる。
具体的に、ガス排出弁321は、破断溝が形成された薄肉部を有する。ガス排出弁321の破断溝は、Z軸方向視において、例えば、Y字状である。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力(ガス圧)が所定の値よりも大きくなったときに薄肉部が破断溝から裂けることによって、ケース3の内部(内部空間33)と外部(外部空間)とを連通させる。これにより、ガス排出弁321は、ケース3の内部のガスを外部へ排出する。このようにして、ガス排出弁321は、上昇したケース3の内部圧力を下げる。
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
外部端子4は、バスバ等が溶接可能な面41を有する。本実施形態の面41は、平面であり、蓋板32に沿って拡がる。詳しくは、外部端子4の面41は、Z軸方向視において矩形状である。
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態では、集電体5と電極体2とが通電可能に直接接続される。即ち、電極体2と集電体5とは、電気的且つ物理的に接続されている。なお、集電体5と電極体2とは、例えば、非被覆積層部26をY軸方向において挟み込むクリップ部材等を介して間接に接続されてもよい。
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。図3に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、外部端子4と電極体2とを通電可能に接続する。具体的に、集電体5は、図2に示すように、外部端子4と通電可能に接続される第一接続部51と、電極体2と通電可能に接続される第二接続部52と、第一接続部51と第二接続部52とを接続する屈曲部53と、を有する。集電体5では、屈曲部53がケース3内の蓋板32と短壁部314との境界近傍に配置され、第一接続部51が屈曲部53から蓋板32に沿って延びると共に、第二接続部52が屈曲部53から短壁部314に沿って延びる。即ち、集電体5は、L字状に形成される。本実施形態の集電体5は、所定形状に裁断された板状の金属材料を曲げ加工することによって形成される。
第一接続部51は、外部端子4に通電可能に接続される部位である。具体的に、第一接続部51は、ケース3(詳しくは蓋板32)と絶縁された状態でケース3(蓋板32)の内面に沿って屈曲部53から延びる。第一接続部51は、板状の部位である。第一接続部51の先端部には、外部端子4が接続される。
第二接続部52は、電極体2(本実施形態では、電極体2の非被覆積層部26)に導通可能に接続される。具体的に、第二接続部52は、ケース3(詳しくは短壁部314)と絶縁された状態でケース3(短壁部314)の内面に沿って屈曲部53から延びる。第二接続部52は、短壁部314の近傍から非被覆積層部26に向けて延びると共に第二接続部52と同方向に延びる、少なくとも一つの接合片55を有する。接合片55は、電極体2と接合される。本実施形態の接合片55は、例えば、超音波接合によって電極体2と接合される。
第二接続部52は、二つの接合片55,55を有する。具体的に、第二接続部52は、Y軸方向の中央に設けられた開口56を画定するように該開口56の両側においてZ軸方向に延びる二つの接合片55を有する。即ち、第二接続部52は、各非被覆積層部26における二分された非被覆積層部263のうちの一方に接合される接合片55と、前記二分された非被覆積層部263のうちの他方に接合される接合片55と、を有する。開口56及び二つの接合片55は、例えば、第二接続部52を形成する前の帯板に、Z軸方向(長手方向)の切れ込みを入れ、前記切れ込みの両側を捻ることによって形成される。
以上のように構成される集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、ケース3内において、集電体5は、電極体2の正極非被覆積層部26と、負極非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。
正極の集電体5と負極の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
電極体2と集電体5とは、少なくとも一箇所で接続される。これにより、電極体2と集電体5との接続部8は、少なくとも一つ設けられる。本実施形態では、電極体2と集電体5とが複数個所で接続されることにより、接続部8が複数設けられている。具体的に、接続部8は、二つの接合片55それぞれに二つずつ設けられている。このように、本実施形態の蓄電素子1では、接続部8は、合計八つ設けられている。接続部8が複数設けられることにより、電極体2と集電体5(本実施形態では接合片55)とを安定的に接続することができる。本実施形態の蓄電素子1では、各接合片55に設けられる二つの接続部8が、Z軸方向(接合片55の長尺方向)に並んで配置されている。
電極体2と集電体5とは、超音波接合、レーザー溶接、抵抗溶接等により接合される。本実施形態では、電極体2と集電体5とは、超音波接合により接合される。
電極体2と集電体5とが超音波接合により接合されるため、接続部8の表面は粗面81を含む。本実施形態では、図7、図8に示すように、接続部8における外表面が粗面81である。
蓄電素子1は、電極体2とケース3とを絶縁する絶縁体6等を備える。図2、図3に示すように、絶縁体6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。絶縁体6は、第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62を備える。第一絶縁部材61は、図7に示すように、第一面611と第一面611の反対側の第二面612とをY軸方向(第一方向)に有するとともに、Y軸方向(第一方向)に貫通した開口部又は切欠部を有する。第二絶縁部材62は、第一絶縁部材61の第二面612に重ね合わされる。本実施形態の蓄電素子1では、電極体2と集電体5とを接続した接続部8が、開口部又は切欠部と対応する位置に配置された状態において、第一絶縁部材61の第一面611は、少なくとも接続部8の周囲に重ね合わされている。ここでいう「接続部8が開口部又は切欠部と対応する位置に配置される」とは、「接続部8が開口部又は切欠部とY軸方向(第一方向)に重なるよう配置されること」を言う。また、第二絶縁部材62は、開口部又は切欠部(本実施形態では開口部610)と対応する位置で接続部8を覆う。
第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62は、絶縁性を有する部材によって形成される。本実施形態の第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62は、シート状の部材によって構成される。また、本実施形態の第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62は、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂によって形成される。
本実施形態の第一絶縁部材61は、複数の開口部610を有する。本実施形態の開口部610は、矩形状であり、例えば、正方形状である。また、本実施形態の開口部610は、接続部8と同じ数だけ存在している、即ち、各接続部8に一対一で対応して存在している。本実施形態の開口部610は、八つ存在している。
本実施形態の第一絶縁部材61は、ケース3内で電極体2全体を覆う絶縁袋であり、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成される。なお、第一絶縁部材61は、シート状の部材を単に折り曲げて袋状に形成せずに、シート状の部材を、例えば、融着又は溶着して袋状に形成してもよい。また、第一絶縁部材61は、初めから袋状に形成した部材であってもよい。
本実施形態の蓄電素子1では、図8に示すように、第一絶縁部材61のY軸方向(第一方向)における厚さ寸法αが、接続部8の表面(粗面81)におけるY軸方向(第一方向)の起伏の高低差βよりも大きい。なお、図8において、粗面81の形状は、模式的に表されている。接続部8における第一方向の起伏の高低差とは、接続部8の粗面81のうち内側から最も突出している部分と最も没入している部分との距離を言う。第一絶縁部材61の厚さ寸法αが接続部8における起伏の高低差βよりも大きく、且つ、第二絶縁部材62が第一絶縁部材61に重ねられているため、粗面81のうち最も没入している部分が、Z軸方向において第一絶縁部材61の内表面と一直線上に並ぶように配置されていても、第二絶縁部材62と接続部8との第一方向における距離γが確保される。距離γとは、粗面81のうち内側から最も突出している部分と第二絶縁部材62の内表面との距離を言う。また、「距離γが確保される」とは、第二絶縁部材62のいずれの部位も、接続部8と接触しないことを言う。
第二絶縁部材62は、少なくとも一つ存在する。本実施形態の第二絶縁部材62は、複数存在する。本実施形態の第二絶縁部材62は、例えば、八つ存在する。本実施形態において、各第二絶縁部材62は、矩形状である。第二絶縁部材62が第一絶縁部材61に重ね合わせられた状態において、第二絶縁部材62の面積は、第一絶縁部材61の開口部610の面積よりも大きい。なお、開口部610とは、開口周縁部613により囲まれた内側の空間である。第二絶縁部材62の面積が第一絶縁部材61の開口部610の面積よりも大きいため、第二絶縁部材62は、第一絶縁部材61の開口部610全体を覆うことができる。これにより、第二絶縁部材62は、粗面81との間に少なくとも距離γをあけた状態で、接続部8を覆うことになる。なお、本実施形態では、接続部8が第二絶縁部材62により覆われた状態で、第二絶縁部材62における第一絶縁部材61と重なる部分は第一絶縁部材61に接着される。
本実施形態の蓄電素子1では、袋状の第一絶縁部材61に収容されると共に、接続部8が第二絶縁部材62で覆われた状態の電極体2及び集電体5が、ケース3内に収容される。
なお、本実施形態の蓄電素子1の製造は、例えば、図9のフローチャート図で示す工程を経て、以下のように行われる。まず、蓋板32に、外部端子4と集電体5が組みつけられる。そして、電極体2に対して、集電体5が配置される(S01)。次に、第一絶縁部材61の第一面611が電極体2又は集電体5の接続対象部位の周辺に重ね合わせられ、開口部又は切欠部と対応する位置に接続対象部位が配置される(S02)。その後、電極体2及び集電体5の互いの接続対象部位が接続される(S03)。さらに、第二絶縁部材62が第一絶縁部材61の第二面612に重ね合わせられ、電極体2及び集電体5のそれぞれの接続対象部位を接続した接続部8が第二絶縁部材62により覆われた状態で、第二絶縁部材62の周縁部は第一絶縁部材61と接着等される(S04)。最後に、第一絶縁部材61等が組みつけられた電極体2をケース本体31に収納し(S05)、ケース本体31と蓋板32とを接合することで、ケース3を密閉する(S06)。
以上の蓄電素子1によれば、第一絶縁部材61の開口部又は切欠部と対応する位置に接続部8が配置されるため、接続部8の表面に粗面81が含まれていたとしても、粗面81は第一絶縁部材61に接触しない。また、第二絶縁部材62が、第一絶縁部材61の開口部又は切欠部と対応する位置において、第一絶縁部材61の厚み分、接続部8から離れた状態で接続部8を覆っているため、粗面81は第二絶縁部材62に接触しにくい。
従って、第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62の粗面81への接触が抑制され、第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62の損傷による接続部8及びその周囲の絶縁性の低下を防ぐことができる。
本実施形態の蓄電素子1では、絶縁袋である第一絶縁部材61がケース3内で電極体2全体を覆うため、電極体2とケース3との絶縁性が確保される。
本実施形態の蓄電素子1では、第一絶縁部材61の厚さ寸法αが、接続部8における起伏の高低差βよりも大きいことで、第二絶縁部材62と接続部8との距離が確保され、これにより、第二絶縁部材62が接続部8とより接触しにくくなる。
本実施形態の蓄電素子1の製造方法によれば、完成した蓄電素子1において、第一絶縁部材61の開口部又は切欠部と対応する位置に接続部8が配置されるため、粗面81は第一絶縁部材61に接触しない。さらに、第二絶縁部材62が、第一絶縁部材61の開口部又は切欠部と対応する位置において、第一絶縁部材61の厚み分、接続部8から離れた状態で接続部8を覆うため、粗面81は第二絶縁部材62と接触しにくい。従って、第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62の粗面81への接触が抑制され、これにより、第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62の損傷による接続部8及びその周辺の絶縁性の低下を防ぐことができる。
また、第一絶縁部材61の第一面611を接続対象部位の周辺に重ね合わせた状態で、開口部に配置された接続対象部位を接続(加工)することにより、加工に起因する金属粉等が発生しても、第一絶縁部材61が存在するため、金属粉等が接続対象部位の周囲(電極体或いは集電体)に付着することを抑制できる。
尚、本発明の蓄電素子1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
上記実施形態においては、第一絶縁部材61が絶縁袋であり、各第二絶縁部材62が1つの開口部610を覆う矩形のシート状である場合について説明したが、第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62の形状は任意である。
例えば、図10に示すように、絶縁体160は、絶縁袋である第一絶縁部材61と、複数の開口部を覆う帯状の第二絶縁部材162とを備えてもよい。本実施形態の第二絶縁部材162は、Z軸方向に延びる二つの長尺部163と、二つの長尺部163を接続すると共にY軸方向に延びる湾曲部164とで構成される。また、本実施形態の第二絶縁部材162は、二つ存在する。
各第二絶縁部材162は、その長尺部163が第一絶縁部材61において第一方向(電極体2の巻回中心軸方向に直交する方向)に並んで設けられた二つの開口部610を覆うように配置されている。また、第二絶縁部材162が第一絶縁部材61に重ね合わせられた状態において、第二絶縁部材162の長尺部163の幅(長尺部163の長尺方向と交差する方向の幅)は、第一絶縁部材61の開口部610の幅(長尺部163の長尺方向と交差する方向の幅)よりも広い。そのため、第二絶縁部材162は、第一絶縁部材61の開口部610全体を覆うことができる。これにより、第二絶縁部材162は、接続部8を覆うことになる。
また、図11に示すように、絶縁体260は、長尺状の第一絶縁部材261と、絶縁袋である第二絶縁部材262とを備えてもよい。本実施形態の第一絶縁部材261は、四つ存在する。本実施形態の各第一絶縁部材261には、それぞれ二つの開口部2610が設けられている。第二絶縁部材262は、絶縁袋であるため、第一絶縁部材261の開口部2610全体を覆うことができる。これにより、第二絶縁部材262は、接続部8を覆うことになる。
これらのような絶縁体160,260であっても、第一絶縁部材61,261及び第二絶縁部材162,262の粗面81への接触が抑制され、第一絶縁部材61,261及び第二絶縁部材162,262の損傷による接続部8及びその周囲の絶縁性の低下を防ぐことができる。
なお、第一絶縁部材261の幅(第一絶縁部材261の長尺方向と直交する方向の幅)は、図11に示すように、電極体2の非被覆積層部26の幅(電極体2の巻回中心軸方向の幅)よりも広くてもよい。即ち、第一絶縁部材261は、電極体2におけるセパレータ25と非被覆積層部26との境界を覆っていてもよい。かかる構成によれば、電極体2と集電体5との接続対象部位を接続(加工)することにより、加工に起因する金属粉等が発生しても、セパレータ25と電極23,24との間の隙間に入り込むことを抑制できる。
上記実施形態においては、開口部610が設けられた第一絶縁部材61について説明したが、図12に示すように、第一絶縁部材361には、それぞれ1つの接続部8と対応する位置に切欠部3610が設けられていてもよい。なお、ここでいう切欠部とは、第一絶縁部材361における少なくとも一辺まで延びたスリット状の空間を言う。本実施形態の切欠部3610は、第一絶縁部材361においてX軸方向に延びている。
絶縁体360は、第一絶縁部材361と、第二絶縁部材62とを備える。切欠部3610が設けられた第一絶縁部材361に対して、第二絶縁部材62が切欠部3610を覆うように配置されることで、第一絶縁部材361及び第二絶縁部材362の粗面81への接触が抑制され、第一絶縁部材361及び第二絶縁部材362の損傷による接続部8及びその周囲の絶縁性の低下を防ぐことができる。
上記実施形態では、絶縁体6が第一絶縁部材61及び第二絶縁部材62という二種類の絶縁部材を備えていたが、三種類以上の絶縁部材を備えてもよい。例えば、図13に示すように、絶縁体460が、帯状の第一絶縁部材461、矩形状の第二絶縁部材462、及び絶縁袋である第三絶縁部材463を備えてもよい。第一絶縁部材461には、開口部4610が設けられている。接続部8は、開口部4610と対応する位置に配置されている。第二絶縁部材462は、第一絶縁部材461の開口部4610を覆った状態で第一絶縁部材461に接着されている。第三絶縁部材463は、蓋板32、第一絶縁部材461、及び第二絶縁部材462が取り付けられた電極体2全体を覆っている。
このような絶縁体460であっても、第一絶縁部材461及び第二絶縁部材462の損傷による接続部8及びその周囲の絶縁性の低下を防ぐことができる。また、第三絶縁部材463により電極体2の全体が覆われるため、電極体2とケース3との絶縁性が確保される。
また、上記実施形態においては、各開口部610が各接続部8に一対一で対応して設けられる場合について説明したが、例えば、各開口部が、二つ以上の接続部8に対応して設けられていてもよい。即ち、複数の接続部8が、一つの開口部と対応する位置に(一つの開口部と重なるように)配置されてもよい。
上記実施形態においては、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
蓄電素子(例えば電池)は、図14に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。