JP2018043917A - 酸化物単結晶の育成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属製坩堝とこの周囲に設けられる保温用断熱部を収容するアルミナ製筒状容器にクラックが生じ難いタンタル酸リチウム等酸化物単結晶の育成方法の提供。【解決手段】底部1と側壁部2とが分割された構造を有有するアルミナ製筒状容器10と、アルミナ製筒状容器内10に収容され、且つ、底部3と側壁部4を有する金属製坩堝20と、金属製坩堝20とアルミナ製筒状容器10との間に設けられたフェルト状断熱材31及び中空球状のジルコニア・バブル32からなる断熱部から構成される坩堝集合体101において、坩堝集合体101をを高周波誘導加熱炉内に配置すると共に、高周波誘導により金属製坩堝20を発熱させて金属製坩堝10内の原料を融解させるチョクラルスキー法による酸化物単結晶の育成方法。【選択図】図1

Description

本発明は、高周波誘導加熱炉を用いたチョクラルスキー(以下、Czと略称する)法による酸化物単結晶の育成方法に係り、特に、金属製坩堝とこの周囲に設けられる保温用断熱部を収容するアルミナ製筒状容器にクラックが生じ難い酸化物単結晶の育成方法に関するものである。
タンタル酸リチウム(LiTaO3;以下、LTと略称する)単結晶およびニオブ酸リチウム(LiNbO3;以下、LNと略称する)単結晶から加工される酸化物単結晶基板は、主に移動体通信機器において電気信号ノイズを除去する表面弾性波素子(SAWフィルター)の材料として用いられている。
また、SAWフィルターの材料となるLT、LN等の酸化物単結晶は、産業的には主に上記Cz法によって育成されている。例えば、LT単結晶は、イリジウム(Ir)製坩堝を用い、窒素−酸素混合ガス雰囲気の高周波誘導加熱式電気炉(育成炉)中で育成されている。Cz法とは、Ir等金属製坩堝内の原料融液に種結晶となるLT等の単結晶片を接触させ、該単結晶片を回転させながら上方に引き上げることにより種結晶と同一方位の単結晶を育成する方法である。単結晶片の回転速度や引上速度は、育成する結晶の種類、育成時の温度環境に依存し、これ等の条件に応じて適切に選定する必要がある。育成後は、育成炉内において所定の冷却速度で冷却した後、育成炉から単結晶を取り出す。取り出された単結晶は、アニール、ポーリング工程を経た後、スライス、研磨工程によって厚さ数百ミクロン程度の単結晶基板に加工され、SAWフィルターの材料として用いられる。
また、Cz法でLT単結晶を育成する場合、通常、図5に示すような坩堝集合体を構成して結晶育成に最適な温度環境(保温環境)を作り込んでいる。すなわち、図5に示すように、底部1と側壁部2を有しこれ等が一体化されたアルミナ製筒状容器10と、該アルミナ製筒状容器10内に収容されかつ底部3と側壁部4を有する金属製坩堝20と、該金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間および金属製坩堝20の側壁部4外面とアルミナ製筒状容器10の側壁部2内面間の隙間に設けられる断熱部とで坩堝集合体30を構成して結晶育成に最適な温度環境(保温環境)を作り込んでいる(特許文献1参照)。また、上記断熱部は、通常、アルミナ製筒状容器10の側壁部2内面に設けられたフェルト状断熱材(例えば、SiO2を主成分とするフェルト状断熱材)31と、該フェルト状断熱材31と上記金属製坩堝20の側壁部4外面間の隙間および金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成されている。
尚、図5中、符号21は金属製坩堝20を支える坩堝台、符号22は金属製坩堝20底部3の温度を検出する熱電対40が組み込まれる孔部を示し、符号11はアルミナ製筒状容器10の底部1に開設されかつ上記坩堝台21孔部22と位置整合された連通孔をそれぞれ示す。また、LN単結晶を育成する場合は、上記Ir製坩堝に代えて白金(Pt)製坩堝が適用される以外は、上記坩堝集合体30と同様の構造である。
ところで、近年のスマートホン等の普及により移動体通信機器用のSAWフィルター市場は拡大を続けている。そして、これに伴って、SAWフィルターの材料となるLT、LN単結晶基板の需要も伸びており、かつ、SAWフィルター製造プロセスのコストダウンを図るため、LT、LN等の酸化物単結晶基板のサイズも、従来のφ3インチから、φ4インチ、φ6インチへと大面積化が進み、育成結晶が大型化している。
大型結晶を育成するためには、当然のこととして、Ir、Pt等金属製坩堝20とその周囲に設けられるフェルト状断熱材31やジルコニア・バブル32群から成る断熱部についても大型化する必要があり、φ3インチ結晶育成の際は、高々数キログラム程度であった各部材の重量が、数十キログラムから百キログラム程度と増大している。
そして、上記坩堝集合体30を用いて結晶育成を繰り返した場合、Ir、Pt等の金属製坩堝20や断熱部(フェルト状断熱材31やジルコニア・バブル32群から成る)を収納する従来のアルミナ製筒状容器10においては、底部1と側壁部2が一体化された構造になっているため、高周波誘導により発熱したIr、Pt等金属製坩堝20の熱膨張に起因する応力や、アルミナ製筒状容器10内に生じる温度差に起因する応力によってアルミナ製筒状容器10にクラック(割れ)を生じることがあった。アルミナ製筒状容器10のクラック発生は、φ3インチのLT、LN結晶を育成する際には非常にまれな現象であったが、育成結晶サイズの大型化に伴って増加し、φ6インチのLT、LN結晶を育成する際には僅か数回の使用でアルミナ製筒状容器10が割れてしまうこともあった。
アルミナ製筒状容器10が割れてしまうと、Ir、Pt等の金属製坩堝20に対する保温性の軸対称性が悪化するため、結晶育成に適した温度環境(保温環境)を維持できなくなり、この結果、結晶育成の成功率(単結晶化率)が悪化してしまう。
更に、アルミナ製筒状容器10交換のためには、割れたアルミナ製筒状容器10内からLT、LNの原料が残存する金属製坩堝20やジルコニア・バブル32群等から成る断熱部を取り出し、かつ、アルミナ製筒状容器10を新品に交換した後、当該アルミナ製筒状容器10内に、坩堝台21を組み入れかつ金属製坩堝20や上記断熱部(フェルト状断熱材31やジルコニア・バブル32群から成る)を再度設置する必要があった。
これ等金属製坩堝20や断熱部(フェルト状断熱材31やジルコニア・バブル32群から成る)の取り出し、交換作業は、従来のように各部材の重量が数キログラム程度であれば、作業者一人で、短時間で容易に行うことが可能であった。
しかし、金属製坩堝20や上記断熱部の重量が数十キログラムから百キログラム程度になると、取り出しや交換作業のために、複数の作業者、機械設備、時間を必要とし、その間、結晶育成を停止することになるため非常に効率が悪かった。
加えて、育成結晶の大型化に伴って、上記単結晶化率を維持するための取り出し作業や交換作業のサイクルが短くなり、育成炉の稼働率を低下させ、生産性が低下し、コストアップを引き起こす要因になっていた。
特開2003−165796号公報(請求項1)
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、Ir、Pt等の金属製坩堝とこの周囲に設けられる保温用断熱部を収容するアルミナ製筒状容器にクラックが生じ難い酸化物単結晶の育成方法を提供することにある。
そこで上記課題を解決するため、本発明者は、上述した坩堝集合体におけるアルミナ製筒状容器の構造に着目し、その改変を試みた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
底部と側壁部を有するアルミナ製筒状容器と、該アルミナ製筒状容器内に収容されかつ底部と側壁部を有する金属製坩堝と、該金属製坩堝の底部外面とアルミナ製筒状容器の底部内面間の隙間および金属製坩堝の側壁部外面とアルミナ製筒状容器の側壁部内面間の隙間に設けられる断熱部とで坩堝集合体を構成し、かつ、該坩堝集合体を高周波誘導加熱炉内に配置すると共に、高周波誘導により上記金属製坩堝を発熱させて金属製坩堝内の原料を融解させるチョクラルスキー法による酸化物単結晶の育成方法において、
アルミナ製筒状容器の上記底部と側壁部が分割された構造を有することを特徴とするものである。
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載の酸化物単結晶の育成方法において、
アルミナ製筒状容器の上記側壁部が複数個の筒状体に分割された構造を有することを特徴とし、
第3の発明は、
第2の発明に記載の酸化物単結晶の育成方法において、
2個の筒状体に分割された上記アルミナ製筒状容器の側壁部における分割位置を、上記金属製坩堝における底部の位置と一致させることを特徴とし、
第4の発明は、
第2の発明に記載の酸化物単結晶の育成方法において、
3個以上の筒状体に分割された上記アルミナ製筒状容器の側壁部における分割位置の一つを、上記金属製坩堝における底部の位置と一致させることを特徴とするものである。
次に、本発明に係る第5の発明は、
第1の発明〜第4の発明のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成方法において、
上記断熱部が、アルミナ製筒状容器の側壁部内面に設けられたフェルト状断熱材と、該フェルト状断熱材と上記金属製坩堝の側壁部外面間の隙間および金属製坩堝の底部外面とアルミナ製筒状容器の底部内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル群とで構成されることを特徴とし、
第6の発明は、
第1の発明〜第5の発明のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成方法において、
上記酸化物単結晶がタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムであることを特徴とするものである。
本発明に係る酸化物単結晶の育成方法によれば、
金属製坩堝とこの周囲に設けられる保温用断熱部を収容するアルミナ製筒状容器の底部と側壁部が分割された構造になっているため、アルミナ製筒状容器にクラックを生じさせる応力(金属製坩堝の熱膨張に起因する応力やアルミナ製筒状容器内に生じる温度差に起因する応力等)を緩和させることが可能となる。
従って、結晶育成時におけるアルミナ製筒状容器のクラック(割れ)が抑制されるため、金属製坩堝の周囲に設けられるフェルト状断熱材やジルコニア・バブル群等から成る上記断熱部の取り出し作業や交換作業のサイクルを大幅に延長できる。また、アルミナ製筒状容器に生じたクラックに起因する温度分布の軸対称性のズレも防止できるため、結晶育成時の温度分布を安定して維持することができ、LT、LN等結晶育成の単結晶化率を安定化、向上させることが可能となる。
加えて、金属製坩堝やその周囲に設けられるジルコニア・バブル群等から成る断熱部をアルミナ製筒状容器から取り出す際の作業性や交換する際の作業性も、アルミナ製筒状容器の底部と側壁部が分割された構造になっているため大幅に改善され、短時間での取り出し、交換作業が可能になることから、育成炉の稼働率が向上し、生産性の向上やコストダウンを図ることが可能となる。
本発明方法で適用される第一実施の形態に係る坩堝集合体の概略構成断面図。 本発明方法で適用される第二実施の形態に係る坩堝集合体の概略構成断面図。 本発明方法で適用される第三実施の形態に係る坩堝集合体の概略構成断面図。 本発明方法で適用される第四実施の形態に係る坩堝集合体の概略構成断面図。 従来法で適用される坩堝集合体の概略構成断面図。 図6(A)は従来法で適用される坩堝集合体の概略構成断面図、図6(B)は当該坩堝集合体におけるアルミナ製筒状容器の側壁部に生じたクラック(割れ)とその部位を示す説明図。 図7(A)は従来法で適用される坩堝集合体の概略構成断面図、図7(B)は当該坩堝集合体におけるアルミナ製筒状容器の側壁部に生じたクラック(割れ)とその部位を示す説明図。
以下、本発明方法で適用される実施の形態に係る坩堝集合体について、従来例に係る坩堝集合体と比較しながら詳細に説明する。
[従来例]
図5に示したように、LT、LN等の結晶育成に最適な温度環境(保温環境)を形成する従来例に係る坩堝集合体30は、底部1と側壁部2を有しこれ等が一体化されたアルミナ製筒状容器10と、該アルミナ製筒状容器10内に収容されかつ底部3と側壁部4を有するIr、Pt等の金属製坩堝20と、該金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間および金属製坩堝20の側壁部4外面とアルミナ製筒状容器10の側壁部2内面間の隙間に設けられる断熱部(フェルト状断熱材31とジルコニア・バブル32群から成る)により構成されている。
そして、金属製坩堝20に原料が充填された上記坩堝集合体30を高周波誘導加熱炉内に配置し、高周波誘導により上記金属製坩堝20を発熱させて、Cz法によるLT、LN等の結晶育成がなされている。
ところで、従来例に係る坩堝集合体30を用いてLT、LN等の結晶育成がなされる場合、Ir、Pt等の金属製坩堝20や上記断熱部を収容する従来例に係るアルミナ製筒状容器10は、図5に示すように底部1と側壁部2が一体化された構造になっているため、高周波誘導により発熱した金属製坩堝20の熱膨張によって生ずる応力や、アルミナ製筒状容器10内に生じた温度差に起因する熱応力によって、アルミナ製筒状容器10に上述したクラック(割れ)を発生することがあった。アルミナ製筒状容器10におけるクラックの発生は、φ3インチのLT、LN結晶を育成する場合には非常にまれな現象であったが、育成結晶サイズの大型化に伴って増加し、φ6インチのLT、LN結晶を育成する際には僅か数回の使用でアルミナ製筒状容器10が割れてしまうこともあった。これは、結晶育成に用いる原料量が増加するに伴って原料を融解させるために必要な熱量が大きくなるため、Ir、Pt等金属製坩堝20の発熱量が増加するためと考えられる。
アルミナ製筒状容器10におけるクラック発生の要因は、上述したようにアルミナ製筒状容器10内に設置されているIr、Pt等の金属製坩堝20を始めとする各部材の熱膨張に起因した機械的な上記応力と、アルミナ製筒状容器10内に生じる上下方向の温度差および内壁と外壁の温度差に起因する上記熱応力が考えられる。
アルミナ製筒状容器10内に設置されている金属製坩堝20を始めとする各部材の熱膨張に起因する応力において、上記膨張量が大きな位置では、アルミナ製筒状容器10の側壁部2外周の接線方向に引張り応力が発生して「縦割れ」の原因となる。更に、アルミナ製筒状容器10内に設置されている金属製坩堝20を始めとする各部材には温度差があるため、膨張量の大きな部分と膨張量が小さな部分を生ずる結果、その境界部では、アルミナ製筒状容器10の半径方向にせん断応力が発生して「横割れ」の原因となる。
一方、アルミナ製筒状容器10自体の温度差に起因する熱応力では、アルミナ製筒状容器10に上下方向の温度差が発生すると高温部と低温部で膨張量に差異が生じるため、アルミナ製筒状容器10の半径方向にせん断応力が発生して「横割れ」の原因となる。また、アルミナ製筒状容器10の内壁と外壁の温度差の場合は、内壁部と外壁部とで膨張量に差が生じるため、アルミナ製筒状容器10の側壁部2外周の接線方向に引張り応力が発生して「縦割れ」の原因となる。
[従来例に係る坩堝集合体のアルミナ製筒状容器におけるクラック発生位置の調査]
上述した応力に係る技術分析に基づき、アルミナ製筒状容器10におけるクラック発生位置の調査を行ったところ、アルミナ製筒状容器10のクラックは、図6(A)(B)と図7(A)(B)に示すように、アルミナ製筒状容器10の側壁部2に上下方向へ伸びる「縦割れ」と、アルミナ製筒状容器10の側壁部2に水平方向へ伸びる「横割れ」の2種類があり、上記「横割れ」は、図6(B)に示すようにアルミナ製筒状容器10の底部1と側壁部2の境界p、および、図7(B)に示すように上記アルミナ製筒状容器10内に設置したIr、Pt等金属製坩堝20の底部3に相当する位置qに集中していることが判明した。
尚、上記「縦割れ」は、何れの場合も図6(B)と図7(B)に示す「横割れ」の位置で停止しており、「縦割れ」が「横割れ」よりも下側に伸びていることは無かった。
これ等調査からは、クラック発生の要因が、アルミナ製筒状容器10内に設置されている金属製坩堝20を始めとする各部材の熱膨張に起因した機械的な応力起因か、それとも、アルミナ製筒状容器10自体の温度差に起因した熱応力起因かを判別することはできなかったが、上記「縦割れ」が「横割れ」の位置で停止していることから考えると、アルミナ製筒状容器10のクラックは「横割れ」が発生した後に「縦割れ」が発生すると推定される。
従って、「横割れ」の発生を抑制すれば、アルミナ製筒状容器の寿命を大幅に改善できると考えられる。
[第一実施の形態]
第一実施の形態に係る坩堝集合体101は、図1に示すように底部1と側壁部2を有しこれ等が2分割されたアルミナ製筒状容器10と、該アルミナ製筒状容器10内に収容されかつ底部3と側壁部4を有するIr、Pt等の金属製坩堝20と、該金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間および金属製坩堝20の側壁部4外面とアルミナ製筒状容器10の側壁部2内面間の隙間に設けられる断熱部とで構成され、かつ、断熱部は、アルミナ製筒状容器10の側壁部2内面に設けられたSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と、該フェルト状断熱材31と上記金属製坩堝20の側壁部4外面間の隙間および金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成されている。また、アルミナ製筒状容器10における2分割された一方の底部1は円盤形状を有し、他方の側壁部2は筒体形状を有しており、かつ、底部1の外周縁近傍領域に凸条若しくは凹状部(図示せず)が設けられていると共に、筒体形状を有する側壁部2の一方の開放端面に上記底部1の凸条若しくは凹状部と嵌合する凹状部若しくは凸条(図示せず)が設けられており、これ等凸条若しくは凹状部が嵌合されて底部1と側壁部2が連結されている。尚、上記凸条若しくは凹状部については、連続した輪状形状に加工してもよいし、あるいは、不連続の間欠形状に加工してもよく、底部1と側壁部2が連結される形状なら任意である。
また、従来例に係る坩堝集合体30と同様、図1中の符号21は金属製坩堝20を支える坩堝台、符号22は金属製坩堝20底部3の温度を検出する熱電対40が組み込まれる孔部、符号11はアルミナ製筒状容器10の底部1に開設されかつ上記坩堝台21の孔部22と位置整合された連通孔をそれぞれ示している。
そして、第一実施の形態に係る坩堝集合体101によれば、アルミナ製筒状容器10を構成する底部1と側壁部2が2分割されているため、水平方向に伸びる「横割れ」につながる応力を緩和することが可能となる。また、側壁部2が筒体形状になって底部1から分離された構造になったことで、側壁部2単独で膨張、収縮が可能になるため、上下方向に伸びる「縦割れ」につながる応力も緩和することが可能となる。
更に、従来のアルミナ製筒状容器は、交換作業においてアルミナ製筒状容器の側壁部を破壊しなければ当該容器内に設置されている金属製坩堝等を取り出すことができなかったが、第一実施の形態に係る坩堝集合体101によれば、底部1と側壁部2が2分割されているため金属製坩堝等の取り出し作業を簡略化させることが可能となる。
[第二実施の形態]
第二実施の形態に係る坩堝集合体102は、図2に示すように底部1と側壁部を有しこれ等が2分割されたアルミナ製筒状容器10と、該アルミナ製筒状容器10内に収容されかつ底部3と側壁部4を有するIr、Pt等の金属製坩堝20と、該金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間および金属製坩堝20の側壁部4外面とアルミナ製筒状容器10の側壁部内面間の隙間に設けられる断熱部とで構成され、かつ、断熱部は、アルミナ製筒状容器10の側壁部内面に設けられたSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と、該フェルト状断熱材31と上記金属製坩堝20の側壁部4外面間の隙間および金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成されており、更に、アルミナ製筒状容器10の側壁部自体も筒状の上側側壁部2aと下側側壁部2bに分割された構造になっている。また、アルミナ製筒状容器10における2分割された底部1は円盤形状を有し、かつ、側壁部は筒体形状を有しており、これ等底部1と側壁部の連結は第一実施の形態に係る坩堝集合体101と同様の構造になっている。また、2分割された筒状上側側壁部2aと下側側壁部2bの連結は、一方の筒体開放端面に凸条若しくは凹状部(図示せず)が設けられ、他方の筒体開放端面に上記凸条若しくは凹状部と嵌合する凹状部若しくは凸条(図示せず)が設けられた構造になっている。尚、上記凸条若しくは凹状部については、連続した輪状形状に加工してもよいし、あるいは、不連続の間欠形状に加工してもよく、2分割された筒状上側側壁部2aと下側側壁部2bが連結される形状なら任意である。
そして、第二実施の形態に係る坩堝集合体102によれば、アルミナ製筒状容器10の側壁部自体が筒状上側側壁部2aと下側側壁部2bに分割された構造になっているため、第一実施の形態に係る坩堝集合体101と比較してクラック抑制効果が更に改善され、かつ、アルミナ製筒状容器10の側壁部を簡単に取り外してクラックが発生した筒状上側側壁部2aまたは下側側壁部2bのみを交換できるため、従来のアルミナ製筒状容器が適用された場合に較べ交換作業時間を略1/3以下に短縮させることが可能となる。
[第三実施の形態]
第三実施の形態に係る坩堝集合体103は、図3に示すように底部1と側壁部を有しこれ等が2分割されたアルミナ製筒状容器10と、該アルミナ製筒状容器10内に収容されかつ底部3と側壁部4を有するIr、Pt等の金属製坩堝20と、該金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間および金属製坩堝20の側壁部4外面とアルミナ製筒状容器10の側壁部内面間の隙間に設けられる断熱部とで構成され、かつ、上記断熱部は、アルミナ製筒状容器10の側壁部内面に設けられたSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と、該フェルト状断熱材31と上記金属製坩堝20の側壁部4外面間の隙間および金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成されている。
更に、アルミナ製筒状容器10の側壁部自体も筒状の上側側壁部2aと下側側壁部2bに分割された構造になっており、かつ、図3に示すように筒状上側側壁部2aと下側側壁部2bの分割位置が上記金属製坩堝20における底部3の位置と一致させた構造になっている。
また、アルミナ製筒状容器10における2分割された底部1は円盤形状を有し、側壁部は筒体形状を有しており、かつ、これ等底部1と側壁部の連結は第二実施の形態に係る坩堝集合体102と同様の構造になっており、更に、アルミナ製筒状容器10の2分割された筒状上側側壁部2aと下側側壁部2bの連結についても第二実施の形態に係る坩堝集合体102と同様の構造になっている。
そして、第三実施の形態に係る坩堝集合体103によれば、アルミナ製筒状容器10における筒状上側側壁部2aと下側側壁部2bの分割位置が金属製坩堝20における底部3の位置と一致させた構造になっているため、第二実施の形態に係る坩堝集合体102と比較して「横割れ」の起因となる応力をより緩和でき、かつ、第二実施の形態に係る坩堝集合体102と同様、アルミナ製筒状容器10の側壁部を簡単に取り外してクラックが発生した筒状上側側壁部2aまたは下側側壁部2bのみを交換できるため、従来のアルミナ製筒状容器が適用された場合に較べ交換作業時間を略1/3以下に短縮させることが可能となる。
[第四実施の形態]
第四実施の形態に係る坩堝集合体104は、図4に示すように底部1と側壁部を有しこれ等が2分割されたアルミナ製筒状容器10と、該アルミナ製筒状容器10内に収容されかつ底部3と側壁部4を有するIr、Pt等の金属製坩堝20と、該金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間および金属製坩堝20の側壁部4外面とアルミナ製筒状容器10の側壁部内面間の隙間に設けられる断熱部とで構成され、かつ、上記断熱部は、アルミナ製筒状容器10の側壁部内面に設けられたSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と、該フェルト状断熱材31と上記金属製坩堝20の側壁部4外面間の隙間および金属製坩堝20の底部3外面とアルミナ製筒状容器10の底部1内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成されている。
更に、上記アルミナ製筒状容器10の側壁部自体も、筒状の上側側壁部2a、中間側壁部2cおよび下側側壁部2bに3分割された構造になっており、かつ、図4に示すように筒状中間側壁部2cと下側側壁部2bの分割位置が上記金属製坩堝20における底部3の位置と一致させた構造になっている。
また、アルミナ製筒状容器10における2分割された底部1は円盤形状を有し、側壁部は筒体形状を有しており、かつ、これ等底部1と側壁部の連結は第三実施の形態に係る坩堝集合体103と同様の構造になっており、更に、アルミナ製筒状容器10の3分割された筒状上側側壁部2a、中間側壁部2cおよび下側側壁部2bの各連結についても第三実施の形態に係る坩堝集合体103と同様の構造になっている。
そして、第四実施の形態に係る坩堝集合体104によれば、アルミナ製筒状容器10における筒状中間側壁部2cと下側側壁部2bの分割位置が金属製坩堝20における底部3の位置と一致させた構造になっているため、第二実施の形態に係る坩堝集合体102と比較して「横割れ」の起因となる応力をより緩和でき、かつ、アルミナ製筒状容器10の側壁部が筒状の上側側壁部2a、中間側壁部2cおよび下側側壁部2bに3分割された構造になっており、アルミナ製筒状容器10の側壁部を簡単に取り外してクラックが発生した筒状上側側壁部2a、中間側壁部2c、下側側壁部2bのいずれかのみを交換できるため、他の実施の形態に係るアルミナ製筒状容器が適用された場合に較べ交換作業を更に簡便化することが可能となる。
次に、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
実施例1に係る坩堝集合体は、図1に示した第一実施の形態に係る坩堝集合体101を具体化したもので、底部1と側壁部2が分割されたφ400mm、高さ300mmのアルミナ製筒状容器10内に、坩堝台21を介してφ190mm、高さ190mmのIr製坩堝20を設置し、かつ、アルミナ製筒状容器10とIr製坩堝20間の隙間にSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成される保温用断熱部が設けられたものである。
そして、実施例1に係る坩堝集合体101を高周波誘導加熱式電気炉(育成炉)内に配置し、φ6インチLT単結晶の育成を繰り返し行った。
すなわち、同一のアルミナ製筒状容器10を用いて50回の育成を実施したところ、アルミナ製筒状容器10は、50回目の育成時に、側壁部2の上端から上記金属製坩堝20における底部3の位置に対応する位置までの間で「縦割れ」が発生していた。
尚、50回の育成間に上記LT単結晶を46本得ており、その単結晶化率は92.0%であった。
また、50回使用後のアルミナ製筒状容器10を新品に交換し、育成作業を再開するまでの作業は2名で行い、作業時間は3時間であった。
[実施例2]
実施例2に係る坩堝集合体は、図2に示した第二実施の形態に係る坩堝集合体102を具体化したもので、底部1と側壁部が分割されかつ側壁部も2分割されたφ400mm、高さ300mmのアルミナ製筒状容器10内に、坩堝台21を介してφ190mm、高さ190mmのIr製坩堝20を設置し、かつ、アルミナ製筒状容器10とIr製坩堝20間の隙間にSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成される保温用断熱部が設けられたものである。
そして、実施例2に係る坩堝集合体102を高周波誘導加熱式電気炉(育成炉)内に配置し、φ6インチLT単結晶の育成を繰り返し行った。
すなわち、同一のアルミナ製筒状容器10を用いて84回の育成を実施したところ、アルミナ製筒状容器10は、84回目の育成時に、側壁部の上端から上記金属製坩堝20における底部3の位置に対応する位置までの間で「縦割れ」が発生していた。
尚、84回の育成間に上記LT単結晶を78本得ており、その単結晶化率は92.9%であった。
また、84回使用後のアルミナ製筒状容器10を新品に交換し、育成作業を再開するまでの作業は2名で行い、作業時間は3時間であった。
[実施例3]
実施例3に係る坩堝集合体は、図3に示した第三実施の形態に係る坩堝集合体103を具体化したもので、底部1と側壁部が分割され、側壁部も2分割されると共に、該側壁部の分割位置が金属製坩堝20における底部3の位置と一致させたφ400mm、高さ300mmのアルミナ製筒状容器10内に、坩堝台21を介してφ190mm、高さ190mmのIr製坩堝20を設置し、かつ、アルミナ製筒状容器10とIr製坩堝20間の隙間にSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成される保温用断熱部が設けられたものである。
そして、実施例3に係る坩堝集合体103を高周波誘導加熱式電気炉(育成炉)内に配置し、φ6インチLT単結晶の育成を繰り返し行った。
すなわち、同一のアルミナ製筒状容器10を用いて90回の育成を実施したところ、アルミナ製筒状容器10は、90回目の育成時に、側壁部の上端から上記金属製坩堝20における底部3の位置に対応する位置までの間で「縦割れ」が発生していた。
尚、90回の育成間に上記LT単結晶を85本得ており、その単結晶化率は94.4%であった。
また、90回使用後のアルミナ製筒状容器10を新品に交換し、育成作業を再開するまでの作業は2名で行い、作業時間は2時間であった。
[実施例4]
実施例4に係る坩堝集合体は、図4に示した第四実施の形態に係る坩堝集合体104を具体化したもので、底部1と側壁部が分割され、側壁部も3分割されると共に、上から2段目の中間側壁部2cと上から3段目の下側側壁部2bの分割位置が金属製坩堝20における底部3の位置と一致させたφ400mm、高さ300mmのアルミナ製筒状容器10内に、坩堝台21を介してφ190mm、高さ190mmのIr製坩堝20を設置し、かつ、アルミナ製筒状容器10とIr製坩堝20間の隙間にSiO2を主成分とするフェルト状断熱材31と中空球状のジルコニア・バブル32群とで構成される保温用断熱部が設けられたものである。
そして、実施例4に係る坩堝集合体103を高周波誘導加熱式電気炉(育成炉)内に配置し、φ6インチLT単結晶の育成を繰り返し行った。
すなわち、同一のアルミナ製筒状容器10を用いて112回の育成を実施したところ、アルミナ製筒状容器10は、112回目の育成時に、上から2段目の中間側壁部2cに「縦割れ」が発生していた。
尚、112回の育成間に上記LT単結晶を107本得ており、その単結晶化率は95.5%であった。
また、112回使用後のアルミナ製筒状容器10を新品に交換し、育成作業を再開するまでの作業は2名で行い、作業時間は2時間であった。
[比較例1]
比較例1に係る坩堝集合体は、図5に示した従来例に係る坩堝集合体30を具体化したもので、アルミナ製筒状容器10の底部1と側壁部2が分割されずに一体となっている点を除き実施例1に係る坩堝集合体101と同様である。
そして、比較例1に係る坩堝集合体30を高周波誘導加熱式電気炉(育成炉)内に配置し、φ6インチLT単結晶の育成を繰り返し行ったところ、育成回数13回目にアルミナ製筒状容器10にクラックが発生した。
その後、育成回数20回まで同一のアルミナ製筒状容器10を用いて育成を行ったところ、育成回数12回目までは11本のLT単結晶を得ることができたが、育成回数13回目から20回目までの8回の育成では4本のLT単結晶しか得ることができず、育成20回合計の単結晶化率は75%であった。
また、20回使用後のアルミナ製筒状容器10を新品に交換する作業は3名で行い、育成作業を再開するまでに7時間を要した。
本発明に係る酸化物単結晶の育成方法によれば、金属製坩堝とこの周囲に設けられる保温用断熱部を収容するアルミナ製筒状容器の底部と側壁部が分割された構造になっているため、アルミナ製筒状容器にクラックを生じさせる応力が緩和されて結晶育成時におけるアルミナ製筒状容器のクラック(割れ)を抑制することが可能となる。このため、高周波誘導加熱炉を用いたチョクラルスキー法によるタンタル酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶の育成方法に用いられる産業上の利用可能性を有している。
p 境界
q 位置
1 底部
2 側壁部
2a 上側側壁部
2b 下側側壁部
2c 中間側壁部
3 底部
4 側壁部
10 アルミナ製筒状容器
11 連通孔
20 金属製坩堝
21 坩堝台
22 孔部
30 坩堝集合体
31 フェルト状断熱材
32 ジルコニア・バブル
40 熱電対
101 坩堝集合体
102 坩堝集合体
103 坩堝集合体
104 坩堝集合体

Claims (6)

  1. 底部と側壁部を有するアルミナ製筒状容器と、該アルミナ製筒状容器内に収容されかつ底部と側壁部を有する金属製坩堝と、該金属製坩堝の底部外面とアルミナ製筒状容器の底部内面間の隙間および金属製坩堝の側壁部外面とアルミナ製筒状容器の側壁部内面間の隙間に設けられる断熱部とで坩堝集合体を構成し、かつ、該坩堝集合体を高周波誘導加熱炉内に配置すると共に、高周波誘導により上記金属製坩堝を発熱させて金属製坩堝内の原料を融解させるチョクラルスキー法による酸化物単結晶の育成方法において、
    アルミナ製筒状容器の上記底部と側壁部が分割された構造を有することを特徴とする酸化物単結晶の育成方法。
  2. アルミナ製筒状容器の上記側壁部が複数個の筒状体に分割された構造を有することを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶の育成方法。
  3. 2個の筒状体に分割された上記アルミナ製筒状容器の側壁部における分割位置を、上記金属製坩堝における底部の位置と一致させることを特徴とする請求項2に記載の酸化物単結晶の育成方法。
  4. 3個以上の筒状体に分割された上記アルミナ製筒状容器の側壁部における分割位置の一つを、上記金属製坩堝における底部の位置と一致させることを特徴とする請求項2に記載の酸化物単結晶の育成方法。
  5. 上記断熱部が、アルミナ製筒状容器の側壁部内面に設けられたフェルト状断熱材と、該フェルト状断熱材と上記金属製坩堝の側壁部外面間の隙間および金属製坩堝の底部外面とアルミナ製筒状容器の底部内面間の隙間にそれぞれ充填された中空球状のジルコニア・バブル群とで構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成方法。
  6. 上記酸化物単結晶がタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成方法。
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