JP2018043569A - 車両の運転支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】運転者が運転する能力を失っている状態にあるとき、運転者の身体が運転操作子を操作してしまうことによる異常判定時の処理が解除されることを回避すること。【解決手段】車両の走行中に運転者が異常状態にあると判定されたとき、アクチュエータを用いて車体が後方に傾くように車高を変化させる車体後傾制御と、シートクッションを車体に対し後退させる座面後退制御、シートクッションを車体に対して上昇させる座面上昇制御及びシートバックの傾倒角度を増大させる背もたれ傾倒角度増大制御と、を実行して、アクセルペダル、ブレーキペダル及び操舵ハンドルを含む運転操作子から運転者を遠ざける。これにより、運転者の手足が運転操作子に触れ難くなるので、実行されている自動退避走行が解除されることを回避することができる。【選択図】図8

Description

本発明は、運転者が車両を運転する能力を失っている異常状態に陥った場合にその運転者の手及び足等の身体が運転操作子を操作してしまう可能性を低減することが可能な車両の運転支援装置に関する。
従来から、運転者が車両を運転する能力を失っている状態(例えば、居眠り運転状態、意識低下状態及び心身機能停止状態等)に陥っていることを検出して同車両を自動退避走行させる(自動的に減速し安全な場所に停止させる)装置が知られている。この従来の装置は、自動退避走行中に運転者が車両を運転する能力を回復してアクセルペダル、ブレーキペダル及び操舵ハンドル等の運転操作子が操作された場合、運転者が車両を運転する能力を回復したと判定して、異常判定時の処理(例えば、自動退避走行)を解除する(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2014−44707号公報
ところが、車両を運転する能力を失っている運転者の手及び足等の身体が運転操作子を操作してしまう場合があり、その場合、従来の装置は、運転者が車両を運転する能力を回復したと判定して、異常判定時の処理を解除する。
本発明は上記問題に対処するために為されたものである。即ち、本発明の目的の一つは、運転者が車両を運転する能力を失っている状態にあるとき、運転者の手及び足等の身体が運転操作子を操作してしまうことにより、異常判定時の処理が解除されることを回避する車両の運転支援装置を提供することにある。
そこで、本発明の車両の運転支援装置(以下、「本発明装置」とも称呼する。)は、車両の各車輪(WH)を懸架するサスペンションであって、車高調整可能な作動装置である第1作動装置(51)を有するサスペンション(52)と、前記車両の車室内に配置され、座面(62b)の前後上下位置及び背もたれ(62a)の傾倒角度(θrec)を変更可能な作動装置である第2作動装置(61)を有する運転席(62)と、を備えた車両に適用される。
本発明装置は、前記運転席に着座している運転者(HM)が前記車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かの判定を行う異常判定手段(10,ステップ820)と、前記異常判定手段により前記車両の走行中に前記運転者が前記異常状態にあると判定されたとき、前記第1作動装置を用いて前記車両の車体が後方に傾くように前記車高を変化させる車体後傾制御と、前記第2作動装置を用いて前記座面を前記車体に対し後退させる座面後退制御と、前記第2作動装置を用いて前記座面を前記車体に対し上昇させる座面上昇制御と、前記第2作動装置を用いて前記背もたれの傾倒角度を増大させる背もたれ傾倒角度増大制御と、の少なくとも一つを実行して、アクセルペダル(11a)、ブレーキペダル(12a)及び操舵ハンドル(SW)を含む運転操作子から前記運転者を遠ざける制御手段(10,50,51,60,61,ステップ830,ステップ835)と、を備える。
このように、本発明装置は、運転者が異常状態にあると判定されたとき、運転者を運転操作子から遠ざけることによって運転者の手足等が運転操作子を操作してしまう可能性を低減し、もって異常判定時の処理が解除されることを回避することができる。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置の概略構成図である。 図2は、図1に示した車両に搭載されるエアサスペンション装置の概略構成図である。 図3は、図1に示した車両に搭載される運転席の概略構成図である。 図4は、図1に示した車両の運転支援装置による車体後傾制御を説明する模式図であり、図4(A)は当該制御開始前の状態、図4(B)は当該制御完了時の状態を示した図である。 図5は、図1に示した車両の運転支援装置によるシートバック傾倒制御を説明する模式図であり、図5(A)は当該制御開始前の状態、図5(B)は当該制御完了時の状態を示した図である。 図6は、図1に示した車両の運転支援装置によるシートスライド制御を説明する模式図であり、図6(A)は当該制御開始前の状態、図6(B)は当該制御完了時の状態を示した図である。 図7は、図1に示した車両の運転支援装置によるシートリフト制御を説明する模式図であり、図7(A)は当該制御開始前の状態、図7(B)は当該制御完了時の状態を示した図である。 図8は、図1に示した車両の運転支援装置の運転支援ECUのCPUが実行する「運転支援制御ルーチン」を示したフローチャートである。
(構成)
本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置(以下、「本支援装置」とも称呼される。)は、図1に示したように、車両(以下において、他の車両と区別するために、「自車両」と称呼される場合がある。)に適用される。
本支援装置は、運転支援ECU10、エンジンECU20、ブレーキECU30、ステアリングECU40、パワーシートECU50、エアサスペンションECU60、メータECU70、警報ECU80及びナビゲーションECU90を備えている。これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit、エレクトロニック・コントロール・ユニット)であり、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して相互に情報を送受信可能に接続されている。
本明細書において、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインタフェースI/F等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プロクラム及びルーチン等)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。
運転支援ECU10は、以下に列挙するセンサ(スイッチを含む。)と接続され、それらのセンサの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。なお、各センサは、運転支援ECU10以外のECUに接続されていてもよい。その場合、運転支援ECU10は、各センサが接続されたECUからCANを介してそのセンサの検出信号又は出力信号を受信する。
アクセルペダル操作量センサ11は、自車両のアクセルペダル11aの操作量(アクセル開度)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力するようになっている。
ブレーキペダル操作量センサ12は、自車両のブレーキペダル12aの操作量(ストローク量)を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力するようになっている。
ストップランプスイッチ13は、ブレーキペダル12aが踏み込まれていないとき(ブレーキペダル操作量BPが所定値以下のとき)にローレベル信号を出力し、ブレーキペダル12aが踏み込まれたとき(ブレーキペダル操作量BPが所定値を超えたとき)にハイレベル信号を出力するようになっている。
操舵角センサ14は、自車両の操舵角を検出し、操舵角θswを表す信号を出力するようになっている。
操舵トルクセンサ15は、操舵ハンドルSWの操作により自車両のステアリングシャフトUSに加わる操舵トルクを検出し、操舵トルクTraを表す信号を出力するようになっている。
車速センサ16は、自車両の走行速度(車速)を検出し、車速SPDを表す信号を出力するようになっている。
周囲センサ17は、少なくとも自車両の前方の道路、及びその道路に存在する立体物に関する情報を取得するようになっている。立体物は、例えば、自動車、自転車及び歩行者等の移動物、並びに電柱、樹木及びガードレール等の固定物を表す。以下、これらの立体物は「物標」と称呼される場合がある。周囲センサ17は、例えば、レーダセンサ及びカメラセンサを備えている。
レーダセンサは、例えば、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する。)を少なくとも自車両の前方領域を含む自車両の周辺領域に放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射されたミリ波(反射波)を受信する。更に、周囲センサ17は、物標の有無及び自車両と物標との相対関係(即ち、自車両と物標との相対距離、及び自車両と物標との相対速度等)を演算して出力するようになっている。
より具体的に述べると、レーダセンサは演算処理部を備える。その演算処理部は、放射したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を放射してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて、検出した各物標(n)に対する、車間距離(縦距離)Dfx(n)、相対速度Vfx(n)、横距離Dfy(n)及び相対横速度Vfy(n)等を所定時間の経過毎に取得する。
車間距離Dfx(n)は、自車両と物標(n)(例えば、後続車両)との間の自車両の中心軸に沿った距離である。相対速度Vfx(n)は、物標(n)の速度Vsと自車両VAの速度Vjとの差(=Vs−Vj)である。物標(n)の速度Vsは自車両の進行方向における物標(n)の速度である。横距離Dfy(n)は、「物標(n)の中心位置(例えば、後続車両の車幅中心位置)」の、自車両の中心軸と直交する方向における同中心軸からの距離である。横距離Dfy(n)は「横位置」とも称呼される。相対横速度Vfy(n)は、物標(n)の中心位置(例えば、後続車両の車幅中心位置)の、自車両の中心軸と直交する方向における速度である。
カメラセンサは、ステレオカメラ及び演算処理部を備え、車両後方の左側領域及び右側領域の風景を撮影して左右一対の画像データを取得する。カメラセンサは、その撮影した左右一対の画像データに基づいて、物標の有無及び自車両と物標との相対関係等を演算して出力するようになっている。この場合、運転支援ECU10は、レーダセンサによって取得された自車両と物標との相対関係と、カメラセンサによって得られた自車両と物標との相対関係と、を合成することにより、自車両と物標との相対関係を決定する。
更に、カメラセンサは、その撮影した左右一対の画像データに基づいて、道路の左及び右の白線等のレーンマーカ(以下、単に「白線」と称呼する。)を認識し、道路の形状、及び道路と車両との位置関係を演算して出力するようになっている。
周囲センサ17によって取得された情報は物標情報と称呼される。周囲センサ17は、物標情報を運転支援ECU10に所定の周期にて繰り返し送信する。なお、周囲センサ17は、必ずしもレーダセンサ及びカメラセンサの両方を備える必要はなく、例えば、カメラセンサだけであってもよい。更に、自車両を走行する道路の形状、及び道路と自車両との位置関係を表す情報は、後述するナビゲーションシステムの情報を利用することもできる。
操作スイッチ18は、運転者により操作されるスイッチである。運転者は、操作スイッチ18を操作することにより、車線維持制御(LKA:Lane Keeping Assist)を実行するか否かを選択することができる。更に、運転者は、操作スイッチ18を操作することにより、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)を実行するか否かを選択することができる。
ヨーレートセンサ19は、自車両のヨーレートを検出し、実ヨーレートYRaを出力するようになっている。
運転支援ECU10は、LKA及びACCを実行することができるようになっている。更に、運転支援ECU10は、後述するように、運転者が車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かを判定するとともに、運転者がその異常状態にあると判定した場合に適切な処理を行うための各種制御を行うようになっている。適切な処理は、例えば、走行中のレーン内において車両を安全に減速して停止させる処理(自動停止処理)、及び所定の場所まで車両を走行させてから停止させる処理(自動退避処理)等であり、以下、「異常判定時処理」とも称呼する。
エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21に接続されている。エンジンアクチュエータ21は、内燃機関22の運転状態を変更するためのアクチュエータである。本例において、内燃機関22はガソリン燃料噴射・火花点火式・多気筒エンジンであり、吸入空気量を調整するためのスロットル弁を備えている。エンジンアクチュエータ21は、少なくとも、スロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、自車両の駆動力を制御し加速状態(加速度)を変更することができる。
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に電気的に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキペダル12aの踏力によって作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、左右前後輪に設けられる摩擦ブレーキ機構32との間の油圧回路に設けられる。摩擦ブレーキ機構32は、車輪に固定されるブレーキディスク32aと、車体に固定されるブレーキキャリパ32bとを備える。
ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じてブレーキキャリパ32bに内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整し、その油圧によりホイールシリンダを作動させることによりブレーキパッドをブレーキディスク32aに押し付けて摩擦制動力を発生させる。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって、自車両の制動力を制御することができる。
ステアリングECU40は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、モータドライバ41に接続されている。モータドライバ41は、転舵用モータ42に接続されている。転舵用モータ42は、車両の「操舵ハンドルSW、操舵ハンドルSWに連結されたステアリングシャフトUS及び図示しない操舵用ギア機構等を含むステアリング機構」に組み込まれている。転舵用モータ42は、モータドライバ41から供給される電力によってトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを加えたり、左右の操舵輪を転舵したりすることができる。
エアサスペンションECU50は、エアサスペンションアクチュエータ51に電気的に接続されている。エアサスペンション52は、車両のフロント右、フロント左、リア右及びリア左の各車輪をそれぞれ懸架している。エアサスペンションアクチュエータ51は各エアサスペンション52に接続されている。
より具体的に述べると、図2に示したように、エアサスペンション52は、フロント右サスペンション521、フロント左サスペンション522、リア右サスペンション523及びリア左サスペンション524を含む。
フロント右サスペンション521は、ダイヤフラムを含むエアスプリング(以下、「チャンバ」とも称呼する。)511及びショックアブソーバ521aを含む。
ショックアブソーバ521aは、ピストンロッドとオイルを封入したシリンダとにより構成され、ピストンロッドが伸縮すると、オイルがシリンダ内を移動する際の抵抗により減衰力を発生するようになっている。
フロント左サスペンション522、リア右サスペンション523及びリア左サスペンション524のそれぞれは、フロント右サスペンション521と実質的に同じ構造を有するので説明を省略する。なお、図面に付された符号のみをもって対応関係を記述すると、512、513及び514のそれぞれは511に対応するチャンバであり、522a、523a及び524aのそれぞれは521aに対応するショックアブソーバである。
エアサスペンションアクチュエータ51は、本発明における「第1作動装置」に相当する。エアサスペンションアクチュエータ51は、チャンバ511乃至514、モータ515a、コンプレッサ515b、逆止弁515c、フロント車高調整バルブ516、リア車高調整バルブ517、排気バルブ518及びエアドライヤ519を含む。
モータ515aはコンプレッサ515bを駆動する。モータ515aはエアサスペンションECU50により制御される。コンプレッサ515bはエアサスペンションECU50からの指示によって駆動されたとき空気を圧縮し、その圧縮された空気を空気配管PAに供給する。逆止弁515cは、コンプレッサ515bから空気配管PAへの空気の流れのみを許容し、その逆方向の空気の流れを阻止する。
フロント車高調整バルブ516は、フロント右用制御バルブ516Rと、フロント左用制御バルブ516Lと、を備える。フロント右用制御バルブ516Rは、連通位置及び遮断位置の何れか一方を択一的に選択する2位置電磁弁である。フロント右用制御バルブ516Rが連通位置にあるとき、空気配管PAと空気配管PFr及びチャンバ511とが連通される。一方、フロント右用制御バルブ516Rが遮断位置にあるとき、空気配管PAと空気配管PFr及びチャンバ511とは遮断される。フロント右用制御バルブ516Rは、エアサスペンションECU50により制御される。フロント左用制御バルブ516Lは、フロント右用制御バルブ516Rと同じ構造及び機能を有するので、説明を省略する。
リア車高調整バルブ517は、リア右用制御バルブ517Rと、リア左用制御バルブ517Lと、を備える。リア右用制御バルブ517Rはフロント右用制御バルブ516Rと同じ構造及び機能を有し、リア左用制御バルブ517Lはリア右用制御バルブ517Rと同じ構造及び機能を有するので、説明を省略する。
排気バルブ518は、連通位置及び遮断位置の何れか一方を択一的に選択する2位置電磁弁である。排気バルブ518が連通位置にあるとき、空気配管PAが大気に開放される。一方、排気バルブ518が遮断位置にあるとき、空気配管PAは大気に開放されない。排気バルブ518は、エアサスペンションECU50により制御される。エアドライヤ519はエアサスペンションアクチュエータ51内の湿度を所定値以下の値に維持する。
例えば、フロント右側の車高を上昇させる場合、エアサスペンションECU50はモータ515aを駆動し、フロント右用制御バルブ516Rを連通位置へと移動させ、且つ排気バルブ518を遮断位置に移動させる。これにより、モータ515a及びコンプレッサ515bによって圧縮された空気が、空気配管PA、フロント右用制御バルブ516R及び空気配管PFrを通ってチャンバ511へと供給される。その結果、フロント右側の車高が上昇する。その後、エアサスペンションECU50は、フロント右用制御バルブ516Rを遮断位置に移動させる。その結果、フロント右側の車高が維持される。
これに対し、フロント右側の車高を低下させる場合、エアサスペンションECU50はモータ515aを停止し、フロント右用制御バルブ516Rを連通位置へと移動させ、且つ排気バルブ518を連通位置に移動させる。これにより、チャンバ511内の空気が空気配管PFr、フロント右用制御バルブ516R、空気配管PA及び排気バルブ518を通って大気に排出される。その結果、フロント右側の車高が低下する。その後、エアサスペンションECU50は、フロント右用制御バルブ516Rを遮断位置に移動させる。その結果、フロント右側の車高が維持される。
同様に、フロント左側の車高を調整する場合、モータ515a、フロント左用制御バルブ516L及び排気バルブ518が使用される。リア右側の車高を調整する場合、モータ515a、リア右用制御バルブ517R及び排気バルブ518が使用される。リア左側の車高を調整する場合、モータ515a、リア左側用制御バルブ517L及び排気バルブ518が使用される。それぞれの車高調整の制御方法は、前述したフロント右側の車高調整の方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
再び図1を参照すると、パワーシートECU60は、シートアクチュエータ61に電気的に接続されている。シートアクチュエータ61は、本発明における「第2作動装置」に相当する。シートアクチュエータ61は、シートバックアクチュエータ61a、シートスライドアクチュエータ61b及びシートリフトアクチュエータ61cを含んでいる。パワーシート(運転席)62は、シートバック(背もたれ)62a及びシートクッション(座面)62bを備えている。
より具体的に述べると、図3に示したように、車両の床部FLには車両の前後方向に延びる左右一対のロアレール63が設けられている。各ロアレール63には、それぞれ同ロアレール63上を相対移動可能なアッパレール64が装着されている。シートクッション62bは、各アッパレール64上に支持されている。相対移動可能に設けられたロアレール63及びアッパレール64によって、シートスライド装置65が構成される。
より具体的に述べると、本実施形態のシートスライド装置65は、シートクッション62bの内側(下部)に設けられたシートスライドアクチュエータ61bによりアッパレール64を前後移動させるパワーシートスライド装置として構成される。シートスライドアクチュエータ61bは、同様にシートクッション62bの内側に設けられたパワーシートECU60が供給する駆動電力を用いて、その駆動源である図示しないモータを回転させる。
シートスライド装置65を構成する各アッパレール64と運転席62との間には、シートリフト装置66が介装されている。
より具体的に述べると、本実施形態のシートリフト装置66は、シートクッション62b及び各アッパレール64に対して回動可能に連結された前後一対のリンク部材66a及び66bを備えた周知のリンク機構(パラレルリンク機構)を有している。シートクッション62bに対する各リンク部材66a及び66bの連結点X1及びX2は、アッパレール64に対する各リンク部材66a及び66bの連結点X3及びX4よりも車両後方側に配置されている。
シートリフト装置66は、このリンク機構により、アッパレール64に支持されるシート62(シートクッション62b)を昇降動作させることができる。
即ち、シートリフト装置66は、リンク機構を構成する各リンク部材66a及び66bがシートクッション62b及びアッパレール64に対してそれぞれ相対回動することによりシートクッション62bを上方又は下方に移動させる。より具体的に述べると、アッパレール64側の各連結点X3及びX4を回動中心として各リンク部材66a及び66bが反時計回りに回動することによって、シートクッション62bが前方移動を伴いつつ上方移動するように構成される。
一方、各リンク部材66a及び66bが時計回りに回動することによって、シートクッション62bが、後方移動を伴いつつ下方移動するように構成される。
本実施形態のシートリフト装置66もシートスライド装置65と同様に、シートクッションの内側(下部)に設けられたシートリフトアクチュエータ61cによってリンク機構を駆動するパワーシートリフト装置として構成される。このシートリフトアクチュエータ61cも、パワーシートECU60が供給する駆動電力を用いて制御される。
更に、シートバック62aの傾倒角度を調整可能なシートリクライニング装置67が設けられている。シートリクライニング装置67も、駆動源となる図示しないモータを有するパワーシートリクライニング装置として構成される。シートリクライニング装置67には、駆動源となるモータ及び減速機がリクライナと一体に設けられている。
再び図1を参照すると、メータECU70は、図示しないデジタル表示式メータに接続されるとともに、ハザードランプ71及びストップランプ72にも接続されている。メータECU70は、運転支援ECU10からの指示に応じて、ハザードランプ71を点滅させることができ、且つ、ストップランプ72を点灯させることができる。
警報ECU80は、ブザー81及び表示器82に接続されている。警報ECU80は、運転支援ECU10からの指示に応じてブザー81を鳴動させて運転者への注意喚起を行うことができ、且つ、表示器82に注意喚起用のマーク(例えば、ウォーニングランプ)を点灯させたり、運転支援制御の作動状況を表示したりすることができる。
ナビゲーションECU90は、自車両の位置を検出するためのGPS信号を受信するGPS受信機91、地図情報等を記憶した地図データベース92及びヒューマンマシンインタフェースであるタッチパネル式ディスプレイ93等と電気的に接続されている。ナビゲーションECU90は、GPS信号に基づいて現在の自車両の位置Pnow を特定するとともに、自車両の位置Pnow 及び地図データベース92に記憶されている地図情報等に基づいて各種の演算処理を行い、ディスプレイ93を用いて経路案内を行う。ナビゲーションEUC90、GPS受信機91、地図データベース92及びディスプレイ93はナビゲーションシステムを構成する。
地図データベース92に記憶されている地図情報には、道路情報が含まれている。道路情報には、その道路の区間毎における道路の形状(例えば、道路の曲がり方の程度)及び種類(例えば、トンネル内、橋梁上であるか否か)等が含まれている。
(作動の概要)
次に、本支援装置に係る運転支援ECU10(以下、単に「ECU10」とも称呼する。)の主たる作動について説明する。
<前方車両位置検出>
更に、運転支援ECU10は、自車両の前方を走行する車両(以下、「前方車両」と称呼する。)の有無を判定し、前方車両がある場合、自車両と前方車両との間の相対距離(以下、「車間距離」とも称呼する。)Dfv(Dfx(n))を算出する。より具体的に述べると、運転支援ECU10は前方レーダ及び/又は前方カメラ等の周囲センサ17を用いて自車両の前方に存在する物標を探索する。この探索によって物標が検出された場合、ECU10は検出された物標の相対位置及び相対速度から前方車両であるか否かを推定する。ECU10は、周囲センサ17がカメラセンサである場合、更に、画像認識技術を用いて検出された物標が前方車両であるか否かを推定してもよい。
<車線維持制御(LKA)>
車線維持制御(LKA)は、自車両の位置が「その自車両が走行しているレーン(走行車線)」内の目標走行ライン付近に維持されるように、操舵トルクをステアリング機構に付与して運転者の操舵操作を支援する制御である。LKAは周知であり(例えば、特開2008−195402号公報及び特開2009−190464号公報等を参照。)、以下、簡単に説明する。
運転支援ECU10は、操作スイッチ18の操作によってLKAが要求される場合、又は運転者が運転不能異常状態であるときLKAを実行する。運転支援ECU10は、目標ヨーレートYRc*と、ヨーレートセンサ19により検出された実ヨーレートYRaと、に基づいて目標ヨーレートYRc*を得るための目標操舵トルクTr*を所定の演算周期にて演算する。
より具体的に述べると、先ず、運転支援ECU10は、周囲センサ17からの情報に基づいて認識された自車両の目標走行ラインの方向と、自車両の進行方向とのずれ角であるヨー角及び道路曲率等に基づいて目標ヨーレートYRc*を演算する。運転支援ECU10は、目標ヨーレートYRc*と実ヨーレートYRaとの偏差と目標操舵トルクTr*との関係を規定したルックアップテーブルを予め記憶している。そこで、次に、運転支援ECU10は、このテーブルに目標ヨーレートYRc*と実ヨーレートYRaとの偏差を適用することにより目標操舵トルクTr*を演算する。そして、運転支援ECU10は、実際の操舵トルクTraが目標操舵トルクTr*に一致するように、ステアリングECU40を用いて転舵用モータ42を制御する。
<追従車間距離制御(ACC)>
追従車間距離制御(ACC)は、物標情報に基づいて、自車両の直前を走行している先行車と自車両との車間距離を所定の距離に維持しながら、自車両を先行車に追従させる制御である。ACCは周知であり(例えば、特開2014−148293号公報及び特開2006−315491号公報等を参照。)、以下、簡単に説明する。
運転支援ECU10は、操作スイッチ18の操作によってACCが要求されている場合、ACCを実行する。より具体的に述べると、運転支援ECU10は、ACCが要求されている場合、周囲センサ17により取得した物標情報に基づいて追従対象車両を選択する。例えば、運転支援ECU10は、検出した物標(n)の相対位置が追従対象車両エリア内に所定時間(所定存在時間)にわたって存在する場合にその物標(n)を追従対象車両として選択する。
更に、運転支援ECU10は、追従対象車両に追従して走行するための目標加速度Gtgtを追従対象車両の車間距離から目標車間距離を減じることにより得られる車間偏差と、追従対象車両の相対速度と、に基づいて算出する。
なお、追従対象車両エリアに物標(n)が存在しない場合、運転支援ECU10は、自車両の車速SPDが「目標車間時間Ttgtに応じて設定される目標速度」に一致するように、目標速度と車速SPDに基づいて目標加速度Gtgtを決定する。
運転支援ECU10は、車両の加速度が目標加速度Gtgtに一致するように、エンジンECU20を用いてエンジンアクチュエータ21を制御するとともに、必要に応じてブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御する。
<運転不能異常状態検出>
運転支援ECU10は「運転者が車両を運転する能力を失っている異常状態(以下、「運転不能異常状態」と称呼する。)」にあるか否かを判定する。例えば、運転支援ECU10は、自車両の車速SPDが所定車速SPDth以上である場合に、「アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP及び操舵トルクTra」の何れも変化しない無操作状態(運転操作があると認められない状態)が異常判定閾値時間以上継続するか否かを判定(監視)する。そして、運転支援ECU10は、この無操作状態が異常判定閾値時間以上継続したとき、運転者が運転不能異常状態にあると仮判定する(運転者が運転不能異常状態に陥っている可能性があるとの判定を行う。)。或いは、運転支援ECU10は、LKA及びACCが実行されている場合に操舵トルクTraが変化しない手放し状態が異常判定閾値時間以上継続したとき、運転者が運転不能異常状態にあると仮判定する。
運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態にあると仮判定したとき、運転者異常仮判定フラグXkariの値を「1」に設定し、運転モードを「運転者異常仮判定モード」へと移行する。運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態にあると仮判定した時点から、後述する所定待機時間が経過するまでの間に、アクセルペダル11a、ブレーキペダル12a及び操舵ハンドルSWの何れにも入力がないとき、運転者が運転不能異常状態に陥っているとの判定を確定する。
このとき、運転支援ECU10は、運転者異常検出フラグXijoの値を「1」に設定するとともに運転者異常仮判定フラグXkariの値を「0」に設定する。一方、運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態にあると仮判定した時点から、所定待機時間が経過するまでの間に、アクセルペダル11a、ブレーキペダル12a及び操舵ハンドルSWの何れかに入力があったときは、運転者が運転不能異常状態にあるとの仮判定を取り消す。即ち、このとき運転者異常仮判定フラグXkariの値は「1」から「0」に変更される。
<誤操作回避制御>
運転者がLKA及びACCの運転支援を受けて運転しているモードである「自動運転モード」にて車両が走行している場合において、運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態にあると仮判定すると、運転モードを「自動運転モード」から「運転者異常仮判定モード」へと移行させる。
このとき、運転支援ECU10は、車体BDが後傾するようにエアサスペンション52の長さを変化させる「車体後傾制御」、運転席62のシートバック(背もたれ)62aの傾倒角度(リクライニング角度)を増大させる「背もたれ傾倒角度増大制御」、シートクッション(座面)62bを車体BDに対し後退させる「座面後退制御」及びシートクッション(座面)62bを車体BDに対し上昇させる「座面上昇制御」、を実行する。以下、これらの制御については、「誤操作回避制御」と総称されることがある。この誤操作回避制御は前述の所定待機時間が経過するまでの間に実行される。以下、誤操作回避制御について、より具体的に説明する。
<車体後傾制御>
運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態であると仮判定すると、図4に示したように、エアサスペンションECU50によりエアサスペンションアクチュエータ51を制御してチャンバ511及び512に圧縮空気を供給し、フロント右側及びフロント左側の車高を高くする。即ち、運転支援ECU10は、フロント右サスペンション521及びフロント左サスペンション522の長さをLF0からLF1(LF0<LF1)に変更する。更に、運転支援装置ECU10は、エアサスペンションECU50によりエアサスペンションアクチュエータ51を制御してチャンバ513及び514から排気してリア右側及びリア左側の車高を低くする。即ち、運転支援ECU10は、リア右サスペンション523及びリア左サスペンション524の長さをLR0からLR1(LR0>LR1)に変更する。その結果、図4に示したように、車体BDが後方にφ1だけ傾く(後傾する)。
この結果、運転者の前方にある運転操作子に運転者の手足が触れ難く、或いは運転者の荷重がかかり難くなる。更に、運転者が居眠りをしている場合には、車体BDが後傾となる違和感により、運転者が覚醒することが期待される。
<背もたれ傾倒角度増大制御>
運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態であると仮判定すると、パワーシートECU60に、運転席62のシートバック62aを車両後方に傾倒させる旨の指示を出力する。この指示を受けたパワーシートECU60はシートバックアクチュエータ61aを用いて、図5に示したように、運転席62のシートバック62aを標準位置NP1から傾倒角度(リクライニング角度)θrecだけ傾倒させる(傾倒位置EP1)。
この結果、運転者の前方にある操作子に運転者の荷重がかかり難くなる。更に、運転者が居眠りをしている場合には、シートバック62aが後傾となる違和感により、運転者が覚醒することが期待される。
<座面後退制御>
運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態であると仮判定して、上述の背もたれ傾倒角度増大制御を開始すると、パワーシートECU60に、運転席62のシートクッション62bを後退させる旨の指示を出力する。この指示を受けたパワーシートECU60はシートスライドアクチュエータ61bを用いて、図6に示したように、運転席62のシートクッション62bを標準位置NP2から所定長L1だけ後退させる(後退位置EP2)。
<座面上昇制御>
運転支援ECU10は、運転者が運転不能異常状態であると仮判定して、上述の背もたれ傾倒角度増大制御を開始すると、パワーシートECU60に、運転席62のシートクッション62bを上昇させる旨の指示を出力する。この指示を受けたパワーシートECU60はシートリフトアクチュエータ61cを用いて、図7に示したように、運転席62のシートクッション62bを標準位置NP3から所定長L2だけ上昇させる(上昇位置EP3)。
<自動退避制御>
上記「誤操作回避制御」が完了した後、即ち、仮判定があってから所定待機時間が経過すると、運転者が運転不能異常状態にあるとの判定が確定する(本判定がなされる)。本判定がなされると、運転支援ECU10はLKA及びACCを終了して、以下に説明する「自動退避制御」を実行する。自動退避制御は、自車両を減速させて停止させる制御である。自動退避走行制御は周知であり(例えば、特開2003−63373号公報及び特開2016−88180号公報等を参照。)、以下、簡単に説明する。
運転支援ECU10は、先ず、運転者が運転不能異常状態にあるとの判定が確定した時点(異常判定時点)から自車両の車速SPDが所定の第1車速SPD1th以下に低下するまで自車両を一定減速度Decにて減速させる。
運転支援ECU10は、自車両の車速SPDが第1車速SPD1th以下に低下したとき、自車両を更に一定減速度Decにて減速させた場合の自車両の停止位置を求め、その停止位置が曲線路及びトンネル内等の停止不可位置であるか否かを判定する。そして、運転支援ECU10は、その停止位置が停止不可位置でない場合、自車両をそのまま一定減速度Decにて減速させて停止させる。
これに対し、その停止位置が停止不可位置であると、運転支援ECU10は自車両の車速(即ち、SPD1th)を維持するように自車両を定速走行させる。更に、運転支援ECU10は一定時間が経過した時点から一定減速度Decにて減速させた場合の自車両の停止位置を求め、その停止位置が停止不可位置であれば更に一定時間だけ自車両を定速走行させ、その停止位置が停止不可位置でなければ、自車両を一定減速度Decにて減速させて停止させる。このように、本支援装置によれば、自車両は見通しが良好でない曲線路の途中及び停車位置として適切でないトンネル内等にて停止せず、例えば、見通しが良好な直線路にて停止する。
(具体的作動)
運転支援ECU10のCPUは、所定時間が経過する毎に図8にフローチャートにより示した運転支援制御ルーチンを実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進み、運転者異常検出フラグXijoの値が「0」であるか否かを判定する。
<運転者が正常である場合>
運転者に運転能力がある(運転不能異常状態でない)場合、運転者異常検出フラグXijoの値は「0」である。従って、このときCPUはステップ805にて「Yes」と判定してステップ810に進み、運転者異常仮判定フラグXkariの値が「0」であるか否かを判定する。運転者に運転能力がある場合、運転者異常仮判定フラグXkariの値も「0」である。従って、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ815に進み、LKA及びACCが実行中であるか否か、即ち、自動運転モードであるか否かを判定する。
LKA及びACCが実行中でない場合、CPUはステップ815にて「No」と判定してステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、前述の誤操作回避制御は実行されない。
一方、LKA及びACCが実行中である場合、CPUはステップ815にて「Yes」と判定してステップ820に進み、運転者が運転不能異常状態であるか否かを判定する。運転者は正常であるから、CPUはステップ820にて「No」と判定してステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、LKA及びACCが実行中であって運転者に運転能力がある限り、所定時間が経過する毎にCPUはステップ805、ステップ810、ステップ815、ステップ820、ステップ895のルーチンを繰り返し、前述の誤操作回避制御は実行されない。
<運転者が異常となった場合>
LKA及びACCが実行中であって、これまで運転能力を有していた運転者が運転不能異常状態であると判定される状態となった場合、CPUはステップ805、ステップ810及びステップ815にて「Yes」と判定してステップ820に進むと「Yes」と判定してステップ825に進み、運転者異常仮判定フラグXkariの値を「1」に設定する。なお、運転者が異常状態であると判定されるのは、手放し運転が検出されたとき(操舵トルクセンサ15により検出される操舵トルクTraの値が「0」の状態が異常判定閾値時間以上継続したと判定したとき)である。この異常判定閾値時間は例えば5秒である。
CPUはステップ830に進むと、エアサスペンションECU50を介してエアサスペンションアクチュエータ51に「サスペンション長」を変更する旨の指示信号を送信するとともに、パワーシートECU60を介してシートバックアクチュエータ61に「背もたれ傾倒角度θrec」を変更する旨の指示信号を送信する。
CPUからの「サスペンション長」を変更する旨の指示信号を受信すると、エアサスペンションアクチュエータ51は、フロント側サスペンション521及び522を標準長LF0から標準長LF0よりも長い目標長LF1に向けて変位させる。このときの変位に要する時間(フロントサスペンション変位時間tf)は、例えば1分程度である。更に、エアサスペンションアクチュエータ51は、リア側サスペンション523及び524を標準長LR0から標準長LR0よりも短い目標長LR1に向けて変位させる。このときの変位に要する時間(リアサスペンション変位時間tr)は、例えば1分程度である。
CPUからの「背もたれ傾倒角度」を変更する旨の指示信号を受信したシートバックアクチュエータ61aは通常の背もたれ角度(標準角度)から所定の角度θrecだけシートバック62aを後方に傾倒させる。このときの変位に要する時間(シートバック傾倒時間tsb)は、例えば30秒程度である。
次いで、CPUはステップ835に進むと、パワーシートECU60を介してシートスライドアクチュエータ61bに「シート位置」を変更する旨の指示信号を送信する。CPUからの「シート位置」を変更する旨の指示信号を受信したシートスライドアクチュエータ61bはシートクッション62bを通常の位置(標準位置)から所定の長さL1だけ後退(アッパレール64を車両後方にスライド)させる。このときの変位に要する時間(シートスライド時間tss)は、例えば30秒程度である。
更に、CPUはパワーシートECU60を介してシートリフトアクチュエータ61cに「シート高さ」を変更する旨の指示信号を送信する。CPUからの「シート高さ」を変更する旨の指示信号を受信したシートリフトアクチュエータ61cはシートクッション62bを通常の高さ(標準高さ)から所定の高さL2だけ上昇(リートリフト装置66の各リンク部材66a及び66bを所定角度だけ反時計回りに回動)させる。このときの変位に要する時間(シートリフト時間tsl)は、例えば30秒程度である。
次いで、CPUはステップ840に進むと、カウンタcの値を1つインクリメントしてステップ845に進み、KLA及びACCに対する割り込みが無いか否かを判定する。KLA及びACCに対する割り込みとは、運転者の手足等がアクセルペダル11a、ブレーキペダル12a及び操舵ハンドルSW等の運転操作子を操作することである。従って、この割り込みは、運転能力を回復した(運転不能異常状態でなくなった)運転者が運転操作子を意図的に操作する場合を含む。
運転者による割り込みが無い場合、CPUはステップ845にて「Yes」と判定してステップ850に進み、カウンタcの値が最大値cmax以上であるか否かを判定する。最大値cmaxは各アクチュエータにより作動が完了する時間、即ち、フロントサスペンション変位時間tf、リアサスペンション変位時間tr、シートバック傾倒時間tsb、シートスライド時間tss及びシートリフト時間tslのすべてが経過するまでの時間に対応する値として予め定められている。つまり、仮判定時点から運転不能異常状態を確定する(本判定する)までの時間(所定待機時間)は、少なくとも最大値cmaxに対応する時間よりも長い時間に設定される。現時点において、カウンタの値cは最大値cmaxに達していないとすると、CPUはステップ850にて「No」と判定してステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
所定時間が経過すると再びCPUはステップ800から処理を開始してステップ805に進み、「Yes」と判定してステップ810に進む。前回のルーチンにて運転者異常仮判定フラグXkariの値が「1」に設定されたので、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ840に直接進み、カウンタcの値を1つインクリメントしてステップ845に進む。
運転者による割り込みがなければ、CPUはステップ845にて「Yes」と判定してステップ850に進む。現時点において、カウンタcの値は最大値cmaxに達しておらず、CPUはステップ850にて「No」と判定してステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
その後、本ルーチンが繰り返され、カウンタcの値が最大値cmaxに達すると、CPUはステップ850にて「Yes」と判定してステップ855に進み、運転者異常検出フラグXijoの値を「1」に設定するとともに運転者異常仮判定フラグXkariの値を「0」に設定する。次いで、CPUはステップ860に進み、自動退避走行制御を開始してステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、LKA及びACCが実行されている状態において、運転者による割り込みが有った場合、CPUはステップ845にて「No」と判定してステップ865に進む。このとき、CPUはシートクッション62bの位置を元の位置(標準位置)に、シートバック62aの傾倒角度を元の角度(標準角度)に、及びエアサスペンション装置521〜524の長さを元の長さ(標準長LF0、LR0)に戻す指示をシートアクチュエータ61及びエアサスペンションアクチュエータ51に与える。上記指示を受信すると、CPUは例え、エアサスペンション521〜524及び運転席62を所定の長さ、所定の角度に変位をするように制御している途中であっても、その制御を中止する。そして、CPUはサスペンション長、シートバック62aの傾倒角度及びシートクッション62bの位置をそれぞれ標準長LF0,LR0、標準傾倒位置NP1及び標準位置NP2,NP3に戻す制御を実行する。
次いで、CPUはステップ870に進むと、カウンタcの値を「0」に設定するとともに運転者異常仮判定フラグの値を「0」に設定してステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
なお、CPUはステップ805にて「No」と判定すると、ステップ860に直接進んで自動退避走行を実施し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、本支援装置は、車両の走行中に運転者が異常状態にあると判定されたとき、エアサスペンションアクチュエータ(第1作動装置)51を用いて車両の車体BDが後方に傾くように車高を変化させる車体後傾制御を実行する。更に、本支援装置は、このとき、シートアクチュエータ(第2作動装置)61を用いてシートクッション(座面)62bを車体BDに対し後退させる座面後退制御と、シートアクチュエータ(第2作動装置)61を用いてシートクッション62bを車体BDに対し上昇させる座面上昇制御と、シートアクチュエータ(第2作動装置)61を用いてシートバック(背もたれ)62aの傾倒角度を増大させる背もたれ傾倒角度増大制御と、を実行する。これにより、本支援装置は、アクセルペダル11a、ブレーキペダル12a及び操舵ハンドルSWを含む運転操作子から運転者を遠ざけることができる。
このようにして本支援装置は、運転者の手足等が運転操作子を操作してしまう可能性を低減することにより異常判定処理が解除されることを回避することができる。
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、以下に述べるように、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
CPUはステップ860にて実施する自動退避走行に代えて自動停止処理を実施してもよい。
本支援装置は、第1作動装置(エアサスペンションアクチュエータ)51を用いた車体後傾制御と、第2作動装置61(シートスライドアクチュエータ61b)を用いた座面後退制御と、第2作動装置61(シートリフトアクチュエータ61c)を用いた座面上昇制御と、第2作動装置61(シートバックアクチュエータ61a)を用いた背もたれ傾倒角度増大制御と、の少なくとも一つを実行するように構成されてもよい。
例えば、本支援装置は、第1作動装置51を用いた車体後傾制御を実行せず、第2作動装置61を用いた座席位置変更制御(座面後退制御、座面上昇制御及び背もたれ傾倒角度増大制御)のみを実行してもよい。或いは、本支援装置は、第1作動装置51を用いた座席位置変更制御を実行せず、第2作動装置61を用いた車体後傾制御のみを実行してもよい。
更に、本支援装置は、第1作動装置51を用いた車体後傾制御及び第2作動装置61を用いた背もたれ傾倒角度増大制御を実行せず、第2作動装置61を用いた座面後退制御及び座面上昇制御のみを実行するようにしてもよい。
居眠りにより運転不能となっている運転者が車体後傾制御及び/又は背もたれ傾倒角度増大制御によって違和感を覚え、覚醒することが期待される。そこで、本支援装置は、第1作動装置51を用いた車体後傾制御及び第2作動装置61を用いた背もたれ傾倒角度増大制御の実行を開始した後、第2作動装置61を用いた座面後退制御及び座面上昇制御の実行を開始するまでの間に時間差を設けてもよい。或いは、本支援装置は、車体後傾制御及び背もたれ傾倒角度増大制御が完了してから座面後退制御及び座面上昇制御の実行を開始してもよい。
本支援装置は、エアサスペンション52に代えて油圧式の車高調整機構を備えたサスペンションを用いてもよい。
10…運転支援ECU、11…アクセルペダル操作量センサ、12…ブレーキペダル操作量センサ、12a…ブレーキペダル、13…ストップランプスイッチ、14…操舵角センサ、15…操舵トルクセンサ、16…車速センサ、17…周囲センサ、19…ヨーレートセンサ、20…エンジンECU、30…ブレーキECU、40…ステアリングECU、50…エアサスペンションECU、51…エアサスペンションアクチュエータ、52…エアサスペンション、60…パワーシートECU、61…シートアクチュエータ、62…運転席、70…メータECU、80…警報ECU、90…ナビゲーションECU。

Claims (1)

  1. 車両の各車輪を懸架するサスペンションであって、車高調整可能な作動装置である第1作動装置を有するサスペンションと、
    前記車両の車室内に配置され、座面の前後上下位置及び背もたれの傾倒角度を変更可能な作動装置である第2作動装置を有する運転席と、
    を備えた車両に適用される運転支援装置であって、
    前記運転席に着座している運転者が前記車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かの判定を行う異常判定手段と、
    前記異常判定手段により前記車両の走行中に前記運転者が前記異常状態にあると判定されたとき、前記第1作動装置を用いて前記車両の車体が後方に傾くように前記車高を変化させる車体後傾制御と、前記第2作動装置を用いて前記座面を前記車体に対し後退させる座面後退制御と、前記第2作動装置を用いて前記座面を前記車体に対し上昇させる座面上昇制御と、前記第2作動装置を用いて前記背もたれの傾倒角度を増大させる背もたれ傾倒角度増大制御と、の少なくとも一つを実行して、アクセルペダル、ブレーキペダル及び操舵ハンドルを含む運転操作子から前記運転者を遠ざける制御手段と、
    を備えた車両の運転支援装置。
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