JP2018042522A - 発泡性タブレット - Google Patents

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俊雄 羽賀
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【課題】打錠して製造されるところの菓子の発泡性タブレットであって長期放置後でも安定して発泡性を保持できる発泡性タブレットが望まれる。【解決手段】あらかじめ調製されたキャンディチップ4と残余の原材料とを打錠してなる菓子としての発泡性タブレット1であって、喫食時に口中で発泡感を奏するための発泡剤としての炭酸塩3と酸味料2を含み、かつ前記炭酸塩は前記キャンディチップ4内に含まれており、前記酸味料2は前記残余の原材料に含まれる構造の発泡性タブレット1とその製法の提供。【選択図】図2

Description

本発明は、菓子としての発泡性タブレットおよびその製法に関する。
喫食時に口中で発泡感が感じられる菓子として、発泡性のキャンディやタブレットがある。
発泡感は、たとえば重曹などの炭酸塩とクエン酸などの酸味料からなる発泡剤が口中で唾液(水)に溶けて反応し、炭酸ガスが発生することにより感じることができる。
重曹とクエン酸により炭酸ガスを発生する機構は以下の式による。
3NaHCO+C→Na+3HO+3CO
この発泡剤を利用する発泡性タブレット菓子は、砂糖、ブトウ糖、水飴などからなる主要原材料に、重曹や炭酸カルシウムなどの炭酸塩の粉末、結晶またはこれらを含む顆粒と、クエン酸やリンゴ酸などの酸味料の粉末、結晶、またはそれらを含む顆粒とを混合し、均一化させたのち、常法により打錠してタブレットに成形するものである。
すなわち、このような従来例の発泡性タブレットの構造は図1に示され、図1において1はタブレットを示し、酸味料2や炭酸塩3がタブレット1内にランダムに配合され、必要に応じてさらにその他の原材料が混合され、これらが打錠されてなる構造である。
一方、打錠しないで形成されるところの、ハードキャンディ内に発泡剤を分散させた発泡性の菓子もあり、これは例えば、特許文献1において、所定形状の発泡剤粒子(炭酸塩粒子)を配合するハードキャンディとして紹介されている。
さらに、特許文献2では、発泡剤の炭酸塩をマイクロカプセル化した食品も知られている。
特開2004−113017 特開2014−171416
炭酸塩として最も一般的に使用される重曹は、熱や空気中の湿気の存在により分解し、水と炭酸ガスが生成する。この反応式としては下式となる。
2NaHCO→NaCO+HO+CO
さらに、空気中の湿気は、近接してタブレットあるいはハードキャンディ中に存在する重曹と酸味料の反応を促進して水と炭酸ガスを生成し、同じく湿気による重曹の分解により生成する水の発生とも相まって、加速度的に炭酸ガスが発生し、長期に放置されると、場合によっては、タブレットあるいはハードキャンディを封入する包材が、膨張することがあり、ひいては包材の破裂すら起こり得る。
このような暴走反応は炭酸塩の消費をもたらし、結果として発泡感の喪失につながり、さらには食品を密封封入した包材が膨張することによるイメージダウンの影響も大である。
一般的な食品製造施設において、湿気が存在しない環境下でタブレットやキャンディを製造することは困難であり、それ故炭酸塩の分解を抑制する必要があることになる。
しかしながら、炭酸塩の分解それ自体は、炭酸塩自体の経時変化等で起こる故に、基本的には防ぎようがないので、一旦分解して発生する水が促進する炭酸塩と酸味料との反応を抑制する必要があるが、これは発泡反応そのものを抑制することになり、発泡食品では自己矛盾となりかねない。
同様に、炭酸塩をマイクロカプセル化する特許文献2の技術では、発泡食品中のマイクロカプセルの周囲には酸味料が存在し、平均粒径100μm以下のマイクロカプセルではその膜厚は薄いために、周囲に存在する酸味料の拡散等により、結局は炭酸塩と接触し反応する確率が高くなる。
要は、発泡までの間は、炭酸塩と酸味料の接触の確率を可能な限り下げておき、発泡させる際には、接触の確率を上げることにより十分に発泡させることが肝要となるのである。
一方で、発泡剤として炭酸塩と酸味料の組み合わせを用いないで、発泡感を奏する方法もあり、これはガスとしての炭酸ガスをキャンディチップに一旦封入し、これを別途キャンディに分散させる「ポッピングキャンディ」がある。これは口中でキャンディチップが唾液で溶ける際に内蔵の炭酸ガスが破裂して、快音を発するものである。
このキャンディにガスを封入する作業には高圧の封入機が必要であり、さらにはガスを封入したキャンディはいわば空洞を持ったチップであり、それ故耐圧性が低下し、タブレットに混合して打錠しようとすると、打錠工程の高圧に耐えられずに、この段階で破壊してしまう恐れがある。
したがって、打錠して製造されるところの菓子の発泡性タブレットにおいて、長期放置でも安定して発泡性を保持できる発泡性タブレットが望まれている。
本発明においては、ハードキャンディに発泡剤の一方の成分である炭酸塩を、いわば封じ込めることにより、発泡剤の両成分である炭酸塩と酸味料が離隔して存在することになり、その結果、炭酸塩の分解が例え惹起しても生成する水は依然として封入され、また空気中の湿気の影響が及ぶことが少なく、いずれも実質的に前記両成分が反応することが避けられるため発泡の不安定性に至ることを回避することが可能となる。
すなわち本発明の第1は、あらかじめ調製されたキャンディチップと残余の原材料とを打錠してなる菓子としてのタブレットであって、喫食時に口中で発泡感を奏するための発泡剤としての炭酸塩と酸味料を含み、
かつ前記炭酸塩の発泡剤としての実質的な部分は前記キャンディチップ内に含まれており、
前記酸味料の発泡剤としての実質的な部分は前記残余の材料に含まれていることを特徴とする発泡性タブレットに関する。
本発明の第2は、以下の工程からなることを特徴とする、喫食時に口中で発泡感を奏するための発泡剤としての炭酸塩と酸味料を含む、発泡性が安定した発泡性タブレットの製造方法に関する。
1)前記発泡剤としての炭酸塩を含むキャンディチップを調製する工程、
2)前記炭酸塩を含むキャンディチップ、発泡剤としての前記酸味料及びその他の原材料を混合後、打錠してタブレットを製造する工程。
打錠して製造されるところの菓子の発泡性タブレットにおいて、安定して発泡性を保持できる。
打錠によるので、熱履歴が比較的少なく、それ故発泡剤としての炭酸塩の熱分解を比較的抑制できるという利点があるものの、混入空気に起因する前記炭酸塩の早期劣化の恐れがある。さらに打錠では、打錠時の圧力により、先の先行特許文献2のカプセル化では、打錠によりカプセルが破壊や変形する可能性もあり、必ずしも安定した発泡性が発揮できるものではない。
しかるに前記したように、本願発明ではキャンディチップを利用することにより、たとえ打錠によるとも、混入空気による水分や打錠時の衝撃の影響を心配することなく、安定して発泡性を保持できる、発泡性タブレットが得られるのである。
従来例の発泡性タブレット1の内部を示す図 本発明に係る発泡性タブレット1の内部を示す図である。
本発明の発泡剤は、キャンディ等の菓子に配合される炭酸塩と酸味料とを組み合わせてなる、たとえば重曹とクエン酸とを組み合わせてなり前記した式によって発泡するものである。
ここで、このような炭酸塩とは、炭酸イオンの塩を含むほか炭酸水素イオンの塩をも含むと定義され、カチオン成分としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のほかカルシウム等のアルカリ土類金属が例示される。いずれにしろ、酸との反応により炭酸が遊離・分解し炭酸ガスを発生する塩ならばいずれのものも使用でき、例えば、具体的には重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸カルシウムなどである。しかしながら、食品の範疇ではおのずと制限され、通常は効能も含めて重曹が好ましい。
ここでいう酸味料は、上記炭酸塩と反応して炭酸ガスを発生させる酸であるが、同時に菓子の酸味料としても配合されることのあるものであるのが好ましい。具体的には例えばリン酸などの無機酸も例示されるが、好ましくはクエン酸やリンゴ酸等の有機酸であり、特にクエン酸が例示される。これらの酸も、適宜に粉砕品や顆粒加工品等を使用することができる。また、適宜に表面を被覆処理した酸味料であることもでき、かかる酸味料としては、クエン酸カルシウムで表面処理したクエン酸顆粒が例示される。
十分な発泡性を発現するための炭酸塩と酸味料の割合は、選択する炭酸塩と酸味料の種類により異なるが、重曹とクエン酸の場合は、重量比で重曹100に対してクエン酸75〜100の範囲が適当である。
そして、十分なる発泡感を得るためには、キャンディチップ中には、炭酸塩が1〜40重量%を含むのが好ましく、酸味料の合計は、前記した当該炭酸塩に対する比率に加え、更に酸味を感じさせるのに必要な量を加えて含有される。
炭酸塩はあらかじめキャンディチップに配合し、このキャンディチップと、酸味料を含む他の原材料とを混合して金型内に入れて、これを打錠することにより本願のタブレットが製造される。かくして図2に示すような構造の本発明に係る発泡性のタブレットが得られる。
すなわち、図2においてタブレット1内にはキャンディチップ4と酸味料2が配合されてなり、炭酸塩3はキャンディチップ4内に含まれる構造となる。炭酸塩3はキャンディチップ4の製造時にその内部に封じ込められることになるが、酸味料2は実質上チップ4内部には含まれない。キャンディチップ自体の形状は、その製造方法に依存し、例えば図2では円形であるが。後記する本願実施例では粉砕してチップを製造するので、断面粉砕形状となる。
発泡剤のタブレット中の含有量は、十分な発泡性を得るところから、タブレット中、炭酸塩と酸味料の合計で5〜60重量%、さらに好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
そこで、以下では、初めにキャンディチップの製造を説明し、次いで酸味料を含む顆粒の製造を説明し、最後にこれらを混合して打錠したタブレットを得るまでを説明する。
(キャンディチップ)
キャンディのベース生地として、砂糖、水飴、各種の糖アルコール等の糖質から1種類以上を適宜選択し、これに炭酸塩を加える。
炭酸塩は、チップ内に多くとも30重量%、好ましくは重量1〜20重量%の範囲で加える。あまり少ないとタブレットにしたときに発泡性が不足するし、また反対に多いと、チップを後記の顆粒等と混合すると、あるいは成形品として長期放置の際に、いずれも発泡の可能性があり好ましくない。
その他、適宜に香料や着色料など他の原材料を加えることができる。香料などは、キャンディチップ、次に述べる顆粒等のいずれの部位にも適宜に配合することができる。
(製造)
炭酸塩以外の糖質などの原料を釜に入れて煮詰め、その後所定温度に冷却してから炭酸塩を加える。混合してさらに冷却固化しキャンディとした後、適宜の手段でこれを粉砕し、チップ化する。ここで、得られたキャンディは、ドロップ、飴等のいわゆるハードキャンディであるので、一定の硬度もあり、その組織も緻密な組織であって、キャンディ内の炭酸塩成分は容易には外部成分、例えば酸味料と接触する確率が低い。
チップ化したキャンディは適宜に篩分けし、粒径としてはメッシュの目開きで0.1mm〜5mmの範囲に入る程度が適当である。この範囲内の粒径であれば、チップは細かいので口中内において発泡反応が起こりやすく、結果として発泡感が達成されやすい。一方、あまりに径が小さいと重量当たりの表面積が増大し、その結果吸湿による融解が起こりやすくなり結果として炭酸塩の離隔化が達成され難いので好ましくない。反対に粒径が大きすぎると、先に述べたように口中内での発泡反応が惹起しがたく、その結果発泡感が達成しがたいので好ましくない。
かくして、炭酸塩自体はハードキャンディ内に離隔しているので、たとえ炭酸塩が自己分解しても発生する水分の影響が避けられる。さらには酸味料とは離隔しているのでやはり相互に反応しづらい。よって、発泡の安定性が図られる。なお、これより小さい粉末状はいずれにしろ反応しやすいので配合することなく廃棄又はリサイクルする。このように炭酸塩を含むキャンディチップをあらかじめ調整しておく。
(顆粒)
砂糖、ブドウ糖、各種の糖アルコールなどの糖質に前記の酸味料を配合し顆粒化する。造粒機と原材料の滑沢性向上のため、乳化剤を配合してもよい。
(顆粒製造)
糖質、酸味料、乳化剤に適宜の量の水を加えて、練り合わせ、これを造粒して、十分に乾燥し、顆粒とする。
(打錠)
打錠は、キャンディチップ、顆粒およびその他の材料を適宜に混合し、型に入れて常法により打錠してタブレットを製造する。タブレットの大きさ等は喫食に適する程度の大きさとすることができる。
上記その他の材料としては、酸味料をさらに加えることができる。またそれに合わせて香料も加えることができる。
酸味料の存在位置は、キャンディチップ内には存在させないが、前記顆粒にのみ存在させる、上記のその他の材料にのみ存在させる及びその両方に存在させるという態様のいずれかを採用することができる。
各材料をあらかじめ十分混合した後に、これを型に入れて、常法により適宜の温度、圧力で打錠する。打錠は短時間ではあるが、かなりの圧力で行うものである。その結果、混合時には顆粒、キャンディチップ等は別異の固体で配合されて打錠の結果少なくとも目視では全体がタブレット状に一体化するものの、キャンディチップの内容物は破壊、漏出することはない。したがって、該チップ内の炭酸塩は、打錠後のタブレット内でも所定の内容物内に隔離保存が確保され、その安定化の向上が図れることになる。
すなわち、打錠に際しては、目視ではタブレットとして一体化させるのではあるが、キャンディチップが破壊し、その内容が漏れて周囲と混合することのないように、温度、圧力を調整して打錠する。その結果、打錠後には目視で一体化したタブレットが得られ、特にキャンディチップの粒子の境界は目視では確認できないものの、後記する実施例が示すように、炭酸塩の安定化が図られており、炭酸塩の離隔化がなされていることが確認できる。
得られたタブレットは、常法により適宜の包材に包装されて市販に供される。
以下に実施例により本発明を更に説明する。
(キャンディチップ)
処方
成分 重量部
砂糖 53
トレハロース 5
水飴 57
重曹 10
計125
(キャンディチップ製造)
全体を混合後、153℃まで煮詰めた後、混合できる程度に冷却してから重曹を添加し、更に混合した。
冷却固化後に、粉砕して篩分けし、8meshを通過し26mesh上に残ったものを打錠に使用した。
キャンディチップ中の重曹の含有量は、9重量%である。
(顆粒)
処方
成分 重量部
砂糖 100
クエン酸 2.1
乳化剤 0.05
水飴 0.08
計 102.23
(顆粒製造)
加水後に、練合、造粒し、さらにこれを乾燥させて顆粒を得た。顆粒の径は、0.5〜2.0mmである。顆粒の水分値は、0.2〜0.4%の範囲であった。
(打錠)
配合 重量部
実施例・顆粒 100
キャンディチップ 100
クエン酸 20
乳化剤 4.4
香料 1.6
計226
(タブレット製造)
上記配合で撹拌後、打錠機で打錠し、径が約2cmの発泡性タブレットを製造した。このタブレットの構造は、図2に示されるように、タブレット1の内部にはキャンディチップ4と酸味料2が配合されているが、炭酸塩はキャンディチップ4に含まれる構造となっている。
[比較例]
(顆粒)
処方
成分 重量部
砂糖 100
乳化剤 0.05
水飴 0.08
計 100.13
(顆粒製造)
実施例と同様にして顆粒を製造し、その径、水分値も同様であった。
(打錠)
配合 重量部
比較例・顆粒 288
ステアリン酸Ca 25
重曹 14.5
酸味料 32
香料 2.5
計362
(製造)
実施例と同様にして打錠し比較例のタブレットを製造した。その構造は先の図1のものである。
なお、ここで、実施例、比較例とも、タブレット全体として平均すると、重曹の含有量は4.0重量%であり、酸味料としてのクエン酸の含有量は8.8%でありそれぞれ同一であった。
耐性試験
実施例、比較例で得られたタブレットの包材包装での室内放置試験を行い、当該タブレットにおける長期にわたる発泡性の安定性を試験した。
試験条件
タブレットをアルミニウム包材で密封包装した後、40℃x30日間および30℃x60日間それぞれ放置した。
その後包材の外観を観察したほか、開封し実際に中身のタブレットを喫食し、発泡感を確認した。
結果は次表に示す。
Figure 2018042522
評価基準
炭酸ガス抑制 ○:包材の膨張なし
×:包材の膨張あり
発泡感 ○:十分にシュワシュワした発泡感が感じられる。
△:わずかにシュワシュワした発泡感がある
×:発泡感がほとんど感じられない
結果
比較例のタブレットは予想通り、ガスが密封包材を膨張させた。
一方、実施例のタブレットでは、包材の膨張は認められなかった。
また、長期放置後のそれぞれのタブレットを喫食したところ、比較例では発泡感が不足し、一方実施例では確実に発泡感が感じられた。これは、比較例では長期放置の結果炭酸塩が自己分解して消費された結果、喫食時には不足し、発泡感が足りなくなったことによると考えられる。
1 タブレット
2 酸味料
3 炭酸塩
4 キャンディチップ

Claims (2)

  1. あらかじめ調製されたキャンディチップと残余の原材料とを打錠してなる菓子としてのタブレットであって、
    喫食時に口中で発泡感を奏するための発泡剤としての炭酸塩と酸味料を含み、
    かつ前記炭酸塩は前記キャンディチップ内に含まれていて、
    そして前記酸味料は前記残余の原材料に含まれている、
    ことを特徴とする発泡性タブレット。
  2. 以下の工程からなることを特徴とする、喫食時に口中で発泡感を奏するための発泡剤としての炭酸塩と酸味料を含む、発泡性が安定した発泡性タブレットの製造方法。
    1)前記発泡剤としての炭酸塩を含むキャンディチップを調整する工程、
    2)前記炭酸塩を含むキャンディチップ、発泡剤としての前記酸味料及びその他の原材料を混合後、打錠してタブレットを製造する工程。
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