JP2018036750A - 設計評価支援システム - Google Patents
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Abstract
【課題】マルチループ型加熱装置について装置設計を対象とするFD/FP機能を強化する。
【解決手段】設計評価支援システムは、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出する能力不足指標検出部1と、能力不足指標検出部1が検出した能力不足指標を、同じタイプの加熱装置毎に収集する能力不足指標収集部2と、能力不足指標収集部2が収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示すデータを算出して提示する能力不足比率提示部3とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】設計評価支援システムは、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出する能力不足指標検出部1と、能力不足指標検出部1が検出した能力不足指標を、同じタイプの加熱装置毎に収集する能力不足指標収集部2と、能力不足指標収集部2が収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示すデータを算出して提示する能力不足比率提示部3とを備える。
【選択図】 図1
Description
本発明は、複数のコントローラがそれぞれ対応する温度制御ゾーンの温度を制御するマルチループの温度制御系の加熱装置に係り、特に加熱装置の設計改善に繋がる情報を提供する設計評価支援システムに関するものである。
半導体製造装置では、EES(Equipment Engineering System)が実用段階へと移行してきている。EESは、半導体製造装置が正常に機能しているかどうかをデータでチェックし、装置の信頼性や生産性を向上させるシステムである。EESの主な目的は、装置自体を対象とする不具合検知(FD:Fault Detection)、不具合予知(FP:Fault Prediction)である。
FD/FPには、装置コントロールレベル、モジュールレベル、サブシステムレベル、I/Oデバイスレベルという階層化の捉え方がある。I/Oデバイスレベルの主体は、センサやアクチュエータである。アクチュエータのFD/FPに関しては、(0,1)のビット列のデータ(アクチュエータデータ)で済むシーケンス制御的な動作については、特に実用段階にあると言える。
一方で、センサのFD/FPに関しては、温度、圧力、流量などのプロセス量が対象データになる。これらのデータについては、msec.レベルで全てのデータを保存するのが合理的とは言えない。そこで、センサのデータを装置が管理する処理単位毎に、あるいは一定の期間毎に代表値化して、代表値化した値をチェックするEES対応の基板処理装置(特許文献1参照)などが提案されている。代表値とは、最大値、最小値、平均値などである。これらの代表値によりFD/FPが実現できれば、全てのデータを監視する場合と比較して通信量、必要メモリ量などを大幅に削減できるので効率的である。
ここで、サブシステムに相当する制御ループ(PID制御などを実行するコントローラレベル)については、特許文献2や特許文献3のように、加熱装置の温度制御応答の特徴を算出するものが提案されている。加熱装置は、例えば図13に示すように、処理対象の被加熱物を加熱する加熱処理炉100と、電気ヒータ101と、加熱処理炉100内の温度を計測する温度センサ102と、加熱処理炉100内の温度を制御する温調計103と、電力調整器104と、電力供給回路105と、加熱装置全体を制御するPLC(Programmable Logic Controller)106とから構成される。温調計103は、温度センサ102が計測した温度PV(制御量)が温度設定値SPと一致するように操作量MVを算出する。電力調整器104は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路105を通じて電気ヒータ101に供給する。
特許文献2に開示された技術は、例えば図13に示す加熱装置において、制御対象のプロセスゲインKpとプロセス時定数Tpの比Kp/Tpを算出するものであり、特許文献3に開示された技術は、制御量PVの最大変化率ΔPVmaxを算出するものである。これらの技術は、制御の不具合状態(例えば加熱装置のヒータ劣化)を把握するために、制御結果を代表値化するための技術である。
代表値を利用したFD/FPとしては、上記のように特許文献2、特許文献3に開示された技術などが知られている。これらは、制御状態自体を直接的に扱うFD/FP機能と言える。
しかしながら、制御状態自体を扱うFD/FP機能のみでは、制御の不具合の発生を削減するような効果は得られ難い。すなわち、制御の不具合の発生に繋がる装置設計の問題点として、装置設計自体を直接的に扱うFD/FP機能をさらに強化することが求められている。
例えば加熱装置には、図14に示すように複数の温度制御ゾーンZ1〜Z8を有するトンネル炉200を用いるものがある。トンネル炉200は、具体的には半田リフロー炉、セラミック焼成炉、あるいはプリント乾燥炉であり、温度制御ゾーンZ1からZ8への方向へコンベアによりワークを流す炉である。このようなトンネル炉200を用いる加熱装置では、各ゾーンの設計を適切に行なったつもりであっても、あくまでもそれは設計段階の話であり、実用段階での環境や条件に応じて、ゾーン間で適切さにばらつきが生じ得る。
開放された入口に近いゾーンZ1や出口に近いゾーンZ8は、中央寄りのゾーンZ4やゾーンZ5に比べると放熱し易い構造であるから、理屈上はヒータによる加熱を多く必要とする。また、入口に近いゾーンZ1と出口に近いゾーンZ8を比較すると、常温で冷えた状態のワークが入るゾーンZ1は、高温のゾーンを通過した後のワークをゾーンZ7から受け取る形のゾーンZ8に比べると、理屈上はヒータによる加熱を多く必要とする。リフロー、焼成、乾燥という直列の一連の工程がトンネル炉200内で実施される場合、予備加熱、本加熱、降温という流れであれば、各ゾーンの設定温度が異なることになり、理屈上はヒータによる加熱は均一ではなくなる。
したがって、実用段階での環境や条件に応じて、設計の適切さは変わってくるものであり、仮に設計が不適切ということになれば、制御の不具合の発生に繋がる装置設計の問題点ということになる。ただし、この場合の問題点とは、ゾーン間のばらつきの大きさという性質の問題点になる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、マルチループ型加熱装置について装置設計を対象とするFD/FP機能を従来よりも強化することができる設計評価支援システムを提供することを目的とする。
本発明の設計評価支援システムは、各コントローラがそれぞれ対応する温度制御ゾーンの温度を制御するマルチループ型加熱装置を評価対象とし、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出する能力不足指標検出手段と、この能力不足指標検出手段が検出した能力不足指標を、同じタイプの加熱装置毎に収集する能力不足指標収集手段と、前記能力不足指標収集手段が収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータを算出して提示する能力不足比率提示手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例は、さらに、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の個々のコントローラから出力される操作量の時系列データに基づいて、操作量の履歴平均値を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出する平均操作量算出手段と、前記能力不足比率提示手段が提示する、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータと、前記履歴平均値から得られる、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第2のデータとの一致具合を提示する操作量確認提示手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例は、さらに、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の個々のコントローラから出力される操作量の時系列データに基づいて、操作量の履歴平均値を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出する平均操作量算出手段と、前記能力不足比率提示手段が提示する、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータと、前記履歴平均値から得られる、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第2のデータとの一致具合を提示する操作量確認提示手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例において、前記能力不足指標検出手段は、前記能力不足指標として、個々のコントローラから出力される操作量が所定の操作量上限値OHで飽和する操作量上限飽和状態の連続時間である上限飽和継続時間T_OHを検出することを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例において、前記能力不足比率提示手段は、前記能力不足指標収集手段が収集した上限飽和継続時間T_OHのうち最短値T_OH_minを同一の加熱装置内で抽出し、前記能力不足の度合を示す第1のデータとして可視化比率R=T_OH_min/T_OHを算出して提示する処理を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行うことを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例において、前記操作量確認提示手段は、前記平均操作量算出手段が算出した履歴平均値MVmのうち最小値MVm_minを同一の加熱装置内で抽出し、前記能力不足の度合を示す第2のデータとして可視化比率U=MVm_min/MVmを算出して、前記能力不足の度合を示す第1のデータと一緒に提示する処理を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行うことを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例において、前記能力不足比率提示手段は、前記能力不足指標収集手段が収集した上限飽和継続時間T_OHのうち最短値T_OH_minを同一の加熱装置内で抽出し、前記能力不足の度合を示す第1のデータとして可視化比率R=T_OH_min/T_OHを算出して提示する処理を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行うことを特徴とするものである。
また、本発明の設計評価支援システムの1構成例において、前記操作量確認提示手段は、前記平均操作量算出手段が算出した履歴平均値MVmのうち最小値MVm_minを同一の加熱装置内で抽出し、前記能力不足の度合を示す第2のデータとして可視化比率U=MVm_min/MVmを算出して、前記能力不足の度合を示す第1のデータと一緒に提示する処理を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出し、検出した能力不足指標を同じタイプの加熱装置毎に収集し、収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータを算出して提示することにより、装置設計の改善に繋がる情報を提供することができ、装置設計を対象とするFD/FP機能を強化することができる。
また、本発明では、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の個々のコントローラから出力される操作量の時系列データに基づいて、操作量の履歴平均値を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出し、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータと、履歴平均値から得られる、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第2のデータとの一致具合を提示することにより、装置設計の改善に繋がる情報として、より確信度の高い情報を提供することが可能となる。
[発明の原理1]
発明者は、個々の制御ループに与えられる指標であっても、複数の制御ループを対象とする場合は、複数の指標間の傾向を分析すると、装置設計の改善情報に繋がることに着眼した。
発明者は、個々の制御ループに与えられる指標であっても、複数の制御ループを対象とする場合は、複数の指標間の傾向を分析すると、装置設計の改善情報に繋がることに着眼した。
すなわち、例えば複数のセンサやヒータを備える装置内の制御系を対象にすると、どの辺りのセンサやコントローラ(例えば温調計)が能力不足情報を出すかなどについて、複数の同じタイプの装置から得られるデータを分析したときに、能力不足箇所の集中傾向が現れるならば、装置設計上の問題が内在する可能性が考えられる。これに基づき、制御系の構成要素の能力不足を検知する指標(例えば特開2015−090505号公報に開示された操作量MVの上限飽和継続時間)を用いて、複数の制御ループ、複数の装置を対象に能力不足の集中傾向を可視化することの有用性に想到した。
[発明の原理2]
操作量MVの上限飽和継続時間の長さが示す能力不足の傾向と高温維持時のヒータ出力(操作量MV)の高さが示す能力不足の傾向とが一致する場合、特にヒータ容量不足と判定できる。
したがって、高温維持時の操作量MV平均値を併せて可視化することが、より好適である。この可視化により、オペレータにとっては、より確信度の高い考察が可能になる。
操作量MVの上限飽和継続時間の長さが示す能力不足の傾向と高温維持時のヒータ出力(操作量MV)の高さが示す能力不足の傾向とが一致する場合、特にヒータ容量不足と判定できる。
したがって、高温維持時の操作量MV平均値を併せて可視化することが、より好適である。この可視化により、オペレータにとっては、より確信度の高い考察が可能になる。
なお、昇温時に操作量MVが飽和しない場合(操作量上限値OHに到達しない場合)には、ヒータ容量不足を疑う余地はない。また、ヒータ容量不足か否かは、装置ユーザの実用時の温度設定値SPに依存するので、装置メーカのみで評価することは難しい。このような背景からも、操作量MVの上限飽和継続時間と操作量MV平均値のユーザ稼働時の実績は、単純明快かつ希少な評価指標と言える。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る設計評価支援システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応する例である。本実施の形態は、簡易型のコントローラ(温調計)を活用して実現する例として説明する。また、制御系の構成要素の能力不足を検知する指標の例として、前述の操作量MVの上限飽和継続時間(すなわちヒータの能力不足の指標)を取り上げて説明する。この場合、公知の能力不足指標を検出(算出)する機能は温調計側に実装され、その他の機能は温調計の上位システムに実装されるのが一般的である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る設計評価支援システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応する例である。本実施の形態は、簡易型のコントローラ(温調計)を活用して実現する例として説明する。また、制御系の構成要素の能力不足を検知する指標の例として、前述の操作量MVの上限飽和継続時間(すなわちヒータの能力不足の指標)を取り上げて説明する。この場合、公知の能力不足指標を検出(算出)する機能は温調計側に実装され、その他の機能は温調計の上位システムに実装されるのが一般的である。
本実施の形態の設計評価支援システムは、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出する能力不足指標検出部1と、能力不足指標検出部1が検出した能力不足指標を、同じタイプの加熱装置毎に収集する能力不足指標収集部2と、能力不足指標収集部2が収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示すデータを算出して提示する能力不足比率提示部3とを備えている。
本発明は、図14に示したようなマルチループ型の加熱装置を評価対象の装置とする。図14において、温度センサS1〜S8は、それぞれヒータH1〜H8によって加熱される温度制御ゾーンZ1〜Z8の温度PV1〜PV8を測定する。温調計C1〜C8は、それぞれ温度センサS1〜S8によって測定された温度PV1〜PV8が温度設定値SPと一致するように操作量MV1〜MV8を算出する。電力調整器P1〜P8は、それぞれ温調計C1〜C8から出力された操作量MV1〜MV8に応じた電力をヒータH1〜H8に供給する。図14においては、各温調計C1〜C8がそれぞれ対応する温度制御ゾーンZ1〜Z8の温度PV1〜PV8を独立に制御する温度制御系が8個形成されていることになる。
本実施の形態では、図14に示したような温度制御系(制御ループ)が8個のマルチループ型加熱装置を加熱装置A、温度制御系が12個のマルチループ型加熱装置を加熱装置B、温度制御系が14個のマルチループ型加熱装置を加熱装置Cと呼ぶこととする。
以下、本実施の形態の設計評価支援システムの動作を図2を参照して説明する。能力不足指標検出部1は、複数の加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出する(図2ステップS100)。本実施の形態では、加熱装置の構成要素の能力不足指標、具体的にはヒータの能力不足指標として、操作量MVが所定の操作量上限値OHで飽和する操作量上限飽和状態の連続時間(開始から終了までの時間)である上限飽和継続時間T_OHを用いる。
上記のとおり、加熱装置の各温調計は、操作量MVを算出する。そして、各温調計には操作量上限値OHが予め設定されている。各温調計は、算出した操作量MVを操作量上限値OH以下の値に制限する上限リミット処理を行って出力する。したがって、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温調計毎(温度制御系毎)に上限飽和継続時間T_OHを検出することが可能である。なお、個々の温度制御系において、操作量上限飽和状態が複数回発生した場合、これらの操作量上限飽和状態の連続時間のうちの最長値をその温度制御系の上限飽和継続時間T_OHとすればよい。
次に、能力不足指標収集部2は、能力不足指標検出部1が検出した能力不足指標(上限飽和継続時間T_OH)を、同じタイプ(同型)の加熱装置毎に収集して記憶する(図2ステップS101)。ここで、同じタイプの加熱装置とは、基本的には設計や仕様が同一の加熱装置という意味であり、典型的には装置メーカが同一の型番を付与した加熱装置のことを言う。本実施の形態では、評価対象の加熱装置が6台あり、1号炉と4号炉が加熱装置A、2号炉と5号炉が加熱装置B、3号炉と6号炉が加熱装置Cであるとする。
能力不足比率提示部3は、能力不足指標収集部2が収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す定量化されたデータを加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出して提示する(図2ステップS102)。
本実施の形態では、能力不足の度合を示すデータを、ベストループが1.0で最大になるように定量化する。具体的には、能力不足比率提示部3は、能力不足指標収集部2が収集した上限飽和継続時間T_OHのうちの最短値T_OH_minを同一の加熱装置内で抽出し、この最短値T_OH_minを分子、各上限飽和継続時間T_OHを分母とする可視化比率Rを当該加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出する。すなわち、能力不足の度合を示すデータとなる可視化比率Rは次式のようになる。
R=T_OH_min/T_OH ・・・(1)
R=T_OH_min/T_OH ・・・(1)
能力不足比率提示部3は、式(1)の算出を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎(ヒータ毎)に行い、算出した可視化比率Rを例えばグラフ表示する。
こうして、設計評価支援システムの処理が完了する。設計評価支援システムは、以上のような処理を定期的に、もしくはユーザから要求があったときに実施する。
こうして、設計評価支援システムの処理が完了する。設計評価支援システムは、以上のような処理を定期的に、もしくはユーザから要求があったときに実施する。
図3は加熱装置Aのタイプに属する1号炉と4号炉の上限飽和継続時間T_OHおよび可視化比率Rの数値例を示す図、図4は図3の可視化比率Rをグラフ表示した例を示す図である。図4に示すグラフには、1号炉の各ヒータの比率Rを示す棒41と、4号炉の各ヒータの比率Rを示す棒42とが表示されている。比率Rは、値が小さいほど温度制御系の構成要素(具体的にはヒータ)の能力不足の度合が高いことを示している。
図5は加熱装置Bのタイプに属する2号炉と5号炉の上限飽和継続時間T_OHおよび可視化比率Rの数値例を示す図、図6は図5の可視化比率Rをグラフ表示した例を示す図である。図6に示すグラフには、2号炉の各ヒータの比率Rを示す棒61と、5号炉の各ヒータの比率Rを示す棒62とが表示されている。
図7は加熱装置Cのタイプに属する3号炉と6号炉の上限飽和継続時間T_OHおよび可視化比率Rの数値例を示す図、図8は図7の可視化比率Rをグラフ表示した例を示す図である。図8に示すグラフには、3号炉の各ヒータの比率Rを示す棒81と、6号炉の各ヒータの比率Rを示す棒82とが表示されている。
図3〜図8の数値例は、説明を簡易にするため、各装置タイプで2台の装置としているが、図4、図6、図8によると、加熱装置AのタイプではヒータH4とヒータH5の能力が不足し、加熱装置BのタイプではヒータH6の能力が不足し、加熱装置CのタイプではヒータH6の能力が不足している、という傾向が認識できる。ゆえに、これらのヒータ自体あるいはヒータ条件などが、装置設計の改善情報として利用できることになる。
以上のように、本実施の形態では、マルチループ型加熱装置の能力不足指標を同じタイプの加熱装置毎に収集し、能力不足の度合を示すデータを加熱装置毎およびヒータ毎に算出して提示することにより、装置設計の改善に繋がる情報を提供することができる。
本実施の形態では、1台の加熱装置ではなく、同じタイプの複数の加熱装置の能力不足指標を収集することが重要である。1台の加熱装置についてのみ能力不足指標を収集した場合には、能力不足の度合を示すデータをヒータ毎に提示したとしても、ヒータの能力不足が加熱装置の個体差に由来するものなのか、装置設計に由来するものなのかを判断することが難しい。これに対して、同じタイプの複数の加熱装置の能力不足指標を収集して、能力不足の度合を示すデータを加熱装置毎およびヒータ毎に提示すれば、各加熱装置に共通する能力不足の傾向を可視化することができるので、能力不足が集中している箇所については装置設計に由来する可能性が高いと判断することができる。
なお、可視化の具体的な方法は、図3、図5、図7のような表形式や図4、図6、図8のようなグラフ形式には限らない。例えば能力不足比率提示部3は、式(1)の算出を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎(ヒータ毎)に行い、同じタイプの加熱装置について能力不足の度合を示すデータ(比率R)の平均値を、加熱装置内の位置が同一の温度制御系毎に算出して提示するようにしてもよい。例えば図3の例で言えば、1号炉と4号炉のヒータH1の比率Rの平均値を算出して提示する、といったような動作となる。
また、上限飽和継続時間T_OHの最短値T_OH_min=0の場合は、ヒータとしてはむしろ能力過剰と言える。したがって、能力不足比率提示部3は、能力不足指標収集部2が収集した1台の加熱装置の上限飽和継続時間T_OHの中にT_OH=0が存在する場合には、このT_OH=0を除外した上で最短値T_OH_minを当該加熱装置内で抽出し、この最短値T_OH_minを分子、各上限飽和継続時間T_OHを分母とする可視化比率Rを当該加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出する。このような算出を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行えばよい。
このとき、最短値T_OH_minの抽出から除外したT_OH=0の温度制御系について式(1)の算出を行ってしまうと、最短値T_OH_minを0で割るエラーが発生してしまうので、T_OH=0の温度制御系については、比率Rの算出・提示から除外し、能力過剰であることを知らせる情報を別途提示することが望ましい。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は本発明の第2の実施の形態に係る設計評価支援システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応する例である。なお、本実施の形態では、加熱装置Aのタイプについてのみ表示例を示すが、加熱装置B,Cについても、第1の実施の形態と同様に適用対象になることは言うまでもない。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は本発明の第2の実施の形態に係る設計評価支援システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応する例である。なお、本実施の形態では、加熱装置Aのタイプについてのみ表示例を示すが、加熱装置B,Cについても、第1の実施の形態と同様に適用対象になることは言うまでもない。
本実施の形態の設計評価支援システムは、能力不足指標検出部1と、能力不足指標収集部2と、能力不足比率提示部3と、評価対象のマルチループ型加熱装置の個々の温調計から操作量MVの時系列データを取得する操作量取得部4と、操作量MVの時系列データに基づいて、操作量MVの履歴平均値MVmを加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出する平均操作量算出部5と、能力不足比率提示部3が提示する、能力不足の度合を示すデータと、履歴平均値MVmから得られる、能力不足の度合を示すデータとの一致具合を提示する操作量確認提示部6とを備えている。
次に、本実施の形態の設計評価支援システムの動作を図10を参照して説明する。能力不足指標検出部1と能力不足指標収集部2の動作(図10ステップS100,S101)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
操作量取得部4は、評価対象の各加熱装置の個々の温調計から操作量MVの時系列データを取得する(図10ステップS103)。なお、操作量MVの取得期間は、例えば設計評価支援システムが図10の処理を開始してから一定時間が経過するまでの期間とすればよい。このとき、図14に示したようなトンネル炉200では、例えばリフロー、焼成、乾燥といった一連の工程が実施されるので、これら全ての工程が含まれるように、操作量MVの取得期間を設定することが好ましい。
平均操作量算出部5は、操作量取得部4が取得した操作量MVの時系列データに基づいて、履歴平均値MVm(平均操作量)を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎(ヒータ毎)に算出する(図10ステップS104)。
能力不足比率提示部3の動作(図10ステップS102)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
能力不足比率提示部3の動作(図10ステップS102)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
操作量確認提示部6は、能力不足比率提示部3が提示する、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示すデータ(可視化比率R)と、履歴平均値MVm(平均操作量)から得られる、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示すデータとの一致具合を提示する(図10ステップS105)。
履歴平均値MVmについては、ベストループが1.0で最大になるように定量化して、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示すデータにすることが好ましい。そこで、操作量確認提示部6は、平均操作量算出部5が算出した履歴平均値MVmのうち最小値MVm_minを同一の加熱装置内で抽出し、この最小値MVm_minを分子、各履歴平均値MVmを分母とする可視化比率Uを当該加熱装置内の個々の温度制御系毎(ヒータ毎)に算出する。すなわち、能力不足の度合を示すデータとなる可視化比率Uは次式のようになる。
U=MVm_min/MVm ・・・(2)
U=MVm_min/MVm ・・・(2)
操作量確認提示部6は、式(2)の算出を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎(ヒータ毎)に行い、算出した可視化比率Uを、能力不足比率提示部3が提示する、能力不足の度合を示すデータ(可視化比率R)と一緒に提示する。
図11は加熱装置Aのタイプに属する1号炉と4号炉の可視化比率R,U、履歴平均値MVmの数値例を示す図、図12は図11の可視化比率R,Uをグラフ表示した例を示す図である。図12に示すグラフには、1号炉の各ヒータの比率Rを示す棒41と、4号炉の各ヒータの比率Rを示す棒42と、1号炉の各ヒータの比率Uを示す折れ線43と、4号炉の各ヒータの比率Uを示す折れ線44とが表示されている。
履歴平均値MVmは、値が大きいほど温度制御系の構成要素(具体的にはヒータ)の能力不足の度合が高いことを意味する変数になる。したがって、可視化比率Uとしては、値が小さいほど温度制御系の構成要素の能力不足の度合が高いことになる。一方で、可視化比率Rも値が小さいほど能力不足の度合が高いことを示すので、可視化比率RとUを同時に提示することで、能力不足指標に基づくデータ(可視化比率R)と履歴平均値MVmに基づくデータ(可視化比率U)の一致具合が把握し易くなる。すなわち、マルチループ型加熱装置の設計改善に繋がる情報として、操作量MVがヒータ系の能力不足を示していることを確認しやすくなる。
第1、第2の実施の形態で説明した設計評価支援システムの能力不足指標検出部1を除く構成は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。また、能力不足指標検出部1は、上記のとおりマルチループ型加熱装置内の個々の温調計毎に設けられている。温調計は、周知のとおりコンピュータとプログラムによって実現することができる。
本発明は、マルチループ型加熱装置の設計を支援する技術に適用することができる。
1…能力不足指標検出部、2…能力不足指標収集部、3…能力不足比率提示部、4…操作量取得部、5…平均操作量算出部、6…操作量確認提示部。
Claims (5)
- 各コントローラがそれぞれ対応する温度制御ゾーンの温度を制御するマルチループ型加熱装置を評価対象とし、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の能力不足指標を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に検出する能力不足指標検出手段と、
この能力不足指標検出手段が検出した能力不足指標を、同じタイプの加熱装置毎に収集する能力不足指標収集手段と、
前記能力不足指標収集手段が収集した能力不足指標に基づき、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータを算出して提示する能力不足比率提示手段とを備えることを特徴とする設計評価支援システム。 - 請求項1記載の設計評価支援システムにおいて、
さらに、評価対象の複数のマルチループ型加熱装置の個々のコントローラから出力される操作量の時系列データに基づいて、操作量の履歴平均値を加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に算出する平均操作量算出手段と、
前記能力不足比率提示手段が提示する、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第1のデータと、前記履歴平均値から得られる、温度制御系の構成要素の能力不足の度合を示す第2のデータとの一致具合を提示する操作量確認提示手段とを備えることを特徴とする設計評価支援システム。 - 請求項1または2記載の設計評価支援システムにおいて、
前記能力不足指標検出手段は、前記能力不足指標として、個々のコントローラから出力される操作量が所定の操作量上限値OHで飽和する操作量上限飽和状態の連続時間である上限飽和継続時間T_OHを検出することを特徴とする設計評価支援システム。 - 請求項3記載の設計評価支援システムにおいて、
前記能力不足比率提示手段は、前記能力不足指標収集手段が収集した上限飽和継続時間T_OHのうち最短値T_OH_minを同一の加熱装置内で抽出し、前記能力不足の度合を示す第1のデータとして可視化比率R=T_OH_min/T_OHを算出して提示する処理を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行うことを特徴とする設計評価支援システム。 - 請求項2記載の設計評価支援システムにおいて、
前記操作量確認提示手段は、前記平均操作量算出手段が算出した履歴平均値MVmのうち最小値MVm_minを同一の加熱装置内で抽出し、前記能力不足の度合を示す第2のデータとして可視化比率U=MVm_min/MVmを算出して、前記能力不足の度合を示す第1のデータと一緒に提示する処理を、加熱装置毎および加熱装置内の個々の温度制御系毎に行うことを特徴とする設計評価支援システム。
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