以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明において適宜図面を参照するが、図面に記載された態様は本発明の例示であり、本発明はこれらの図面に記載された態様に制限されない。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[第1の実施形態]
先ず、本発明の第1の実施形態を説明する。
<光学素子>
本発明の第1の実施形態に係る光学素子は、第1および第2領域を備える主面を有するレリーフ構造形成層と、前記レリーフ構造形成層の第2領域にのみ、または第1領域の一部および第2領域に設けられた反射層と、前記反射層上に順次設けられたエッチングマスク層および着色層とを含む。また、前記レリーフ構造形成層は、平面視で、第1の方向または第1の方向から左右に10度までの方向に延在している凹凸構造を有する第1領域と、平面視で、第1の方向に直交する第2の方向または第2の方向から左右に65度までの方向に延在している凹凸構造および/または平坦面を有する第2領域とを備える。さらに、前記反射層は、前記レリーフ構造形成層の表面形状に対応した表面形状を有している。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子を概略的に示す外観図であり、図1(b)は、図1(a)に示す光学素子の平面図であり、図1(c)は、図1(b)のIC−IC線断面図であり、図1(d)は、図1(b)のID−ID線断面図である。図1(a)〜図1(d)では、光学素子の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、光学素子の主面に垂直な方向をZ方向としている。
図1に例示する光学素子10は、第1領域R1および第2領域R2を備える主面を有するレリーフ構造形成層2と、レリーフ構造形成層2の第2領域R2に設けられた反射層4と、反射層4の上に順次設けられたエッチングマスク層6および着色層8を含む。本発明では、さらに、反射層4および反射層4の上に順次設けられたエッチングマスク層6および着色層8は、レリーフ構造形成層2の第1領域R1の一部に設けられていてもよい。また、反射層4、エッチングマスク層6、および着色層8は、レリーフ構造形成層2の第2領域R2全体に必ずしも設けられていなくてもよい。
以下に、光学素子10を構成するレリーフ構造形成層2、反射層4、エッチングマスク層6、および着色層8について説明する。
(レリーフ構造形成層)
レリーフ構造形成層2は、第1領域R1において、その一方の主面に微細な凹凸構造を備えている。
図1に示す光学素子10の例では、凹凸構造は、図1(b)でみられるように、第1領域R1において、第1の方向に延在している。本発明の光学素子10では、凹凸構造は、第1領域R1において、第1の方向のみに限られず、第1の方向から左右に10度までの方向に延在していてもよい。なお、第1の方向は、典型的には、後述する本発明の光学素子10の製造方法における工程(c)で規定するように第1積層体20の搬送方向と一致する。
また、凹凸構造は、第1領域R1において、1方向の延在に限られず、第1の方向または第1の方向から左右に10度までの方向であれば、2以上の方向に延在していてもよい。また、凹凸構造は、平面視で、クロスグレーティング構造(格子構造)であってもよい。さらに、凹凸構造は、不連続に延在していてもよい。
なお、本明細書において、凹凸構造の延在方向を規定する「左右にα度」の表現は、「±α度」と示し、「右にα度」の表現は、「+α度」または「α度」と示し、「左にα度」の表現は、「−α度」と示すこともある。また、ある延在方向と、当該延在方向に180度を加えた延在方向とは同一であるとする。
第1領域R1に設けられている凹凸構造は、凹構造及び/又は凸構造、典型的には、複数の凹構造及び/又は凸構造からなる。当該複数の凹部及び/又は凸部は、その周期が規則的であっても、不規則であってもよい。本明細書において、凹部の「周期」および凸部の「周期」とはそれぞれ、隣り合う凹部の中心間距離、および、隣り合う凸部の中心間距離を意味する。図1(c)では、一定の周期で配列した複数の凹部(溝)が設けられている例を示している。これら複数の凹部は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折構造を形成する。本発明の光学素子10において、第1領域R1における凹部又は凸部の周期は、例えば0.1μm〜3.0μmとすることができる。
凹凸構造の延在方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状、U字形状(サインカーブ状)、および台形状等の先細り形状とするか又は矩形状とすることができる。図1(c)には、その一例として、断面形状がU字形状である場合を描いている。
凹部の深さ又は凸部の高さは、例えば0.02μm〜1.5μmとすることができる。
凹部又は凸部の周期に対する深さ又は高さの比の平均値(以下、単に「アスペクト比」とも称する)は、例えば3.0以下とし、典型的には1.0〜0.15とすることができる。
以上、第1領域R1に設けられる凹凸構造について図1(b)および図1(c)を参照して説明したが、本発明では、図2〜図4に示すような構造も第1領域R1に設けられる凹凸構造として含まれる。
図2(a)は、直線状の複数の凹部(溝)が、第1の方向に延在しており、且つ、凹部の周期が一定ではない構造を概略的に示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIB−IIB線断面図である。図2(a)では、凹凸構造の理解を容易にさせるために、凹部(溝)を黒色で示している。
図2に示すような周期が一定ではない凹部を有する構造において、その周期は、特に制限するわけではないが、0.1〜3.0μmの範囲で、好ましくは0.4〜0.7μmの範囲で変動することができる。
また、隣り合う凹部間の距離は、凹部の幅の0.1倍以上、かつ10倍以下であることが好ましい。
凹部の深さは、例えば0.02〜1.5μmとすることができる。
凹部の周期に対する深さの比の平均値は、例えば3.0以下、典型的には1.0〜0.15とすることができる。
図3(a)は、第1の方向に延在している凹部(溝)が、ランダムに配置されている構造を概略的に示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIB−IIIB線断面図である。図3(a)では、凹凸構造の理解を容易にさせるために、凹部(溝)を黒色で示している。
各凹部の形状は、図3(a)の右端に示すように、平面視で、典型的には長方形であり、その長辺および短辺はそれぞれ、第1の方向および第2の方向に沿っている。ここで、短辺に対する長辺の長さの比は、2以上であることが好ましい。
また、図3(a)に示すように、平面視で長方形の凹部が部分的につながり、平面視で多角形の凹部を形成してもよい。この場合、多角形の外周に関して、第2の方向に沿う辺の長さの総和に対する、第1の方向に沿う辺の長さの総和が2倍以上となっていることが好ましい。ここで、当該多角形の外周とは、当該凹部を、その平均深さにおいてXY平面で切り取ったときに形成される凹部の外周を意味する。
図4(a)は、直線状の凹部(溝)が、第1の方向に不連続に(断続的に)延在している構造を概略的に示す平面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB線断面図である。図4(a)では、凹凸構造の理解を容易にさせるために、凹部(溝)を黒色で示している。
当該構造において、第2の方向における、凹部の周期は、0.1〜3.0μmの範囲で、好ましくは0.4〜0.7μmの範囲で、一定でも、一定でなくてもよい。
各凹部の形状は、図4(a)に示すように、平面視で、典型的には長方形であり、その長辺および短辺はそれぞれ、第1の方向および第2の方向に沿っている。ここで、短辺に対する長辺の長さの比は、2以上であることが好ましい。
また、第1の方向における、凹部の間隔は、凹部の幅(長方形の短辺)に対して十分に小さいことが好ましく、例えば、1/2以下である。また、凹部の間隔の下限値は、特に制限されないが、製造上の容易性から1/10以上とすることができる。
凹部の深さは、例えば0.02〜1.5μmとすることができる。
凹部の周期に対する深さの比の平均値は、例えば3.0以下、典型的には0.15〜1.0とすることができる。
以上の図2〜図4を参照した説明においては、凹部の延在方向は、第1の方向としているが、これに限られず、第1の方向から左右に10度までの方向に延在していてもよい。また、凹部の説明は凸部の説明として読み替えることができるものとする。
次に、レリーフ構造形成層2の第2領域R2について説明する。
レリーフ構造形成層2は、第2領域R2において、その一方の主面に微細な凹凸構造および/または平坦面を備えている。
図1(b)に示す光学素子10の例では、凹凸構造は、第2領域R2において、第1の方向に直交する第2の方向に延在している。本発明の光学素子10では、第2領域R2においては、凹凸構造は、第2の方向のみに限られず、第2の方向から左右に65度までの方向に延在していてもよい。
また、凹凸構造は、第2領域R2において、1方向の延在に限られず、第2の方向または第2の方向から左右に65度までの方向であれば、2以上の方向に延在していてもよい。また、凹凸構造は、平面視で、クロスグレーティング構造(格子構造)であってもよい。さらに、凹凸構造は、不連続に延在していてもよい。
第2領域R2に設けられている凹凸構造は、凹構造及び/又は凸構造、典型的には、複数の凹構造および/または凸構造からなる。当該複数の凹部及び/又は凸部は、その周期が規則的であっても、不規則であってもよい。図1(d)には、一定の周期で配列した複数の凹部が設けられている例を示している。これら複数の凹部は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折構造を形成する。第2領域R2における凹部又は凸部の周期は、例えば0.1μm〜3.0μmとすることができる。
凹凸構造の延在方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状、U字形状(サインカーブ状)、および台形状等の先細り形状とするか又は矩形状とすることができる。図1(d)には、一例として、上記の断面形状がU字形状である場合を描いている。
凹部の深さ又は凸部の高さは、例えば0.02μm〜1.5μmとすることができる。
第2領域R2に設けられている凹凸構造のアスペクト比は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下とすることができる。また、第1領域R1に設けられている凹凸構造のアスペクト比の2倍以下とすることもできる。
以上、第2領域R2に設けられる凹凸構造について図1(b)および図1(d)を参照して説明したが、本発明では、図5〜図7に示すような構造も第2領域R2に設けられる凹凸構造として含まれる。
図5(a)は、直線状の複数の凹部(溝)が、第2の方向に延在しており、且つ、凹部の周期が一定ではない構造を概略的に示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)のVB−VB線断面図である。図5(a)では、凹凸構造の理解を容易にさせるために、凹部(溝)を黒色で示している。
図5(a)および図5(b)に示すような周期が一定ではない凹部を有する構造において、その周期は、特に制限するわけではないが、0.1〜3.0μmの範囲で、好ましくは0.4〜0.7μmの範囲で変動することができる。
凹部の深さは、例えば0.02〜1.5μmとすることができる。
凹部の周期に対する深さの比の平均値は、例えば3.0以下、典型的には0.15〜1.0とすることができる。
図6(a)は、第2の方向に延在している凹部(溝)が、ランダムに配置されている構造を概略的に示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIB−VIB線断面図である。図6(a)では、凹凸構造の理解を容易にさせるために、凹部(溝)を黒色で示している。
各凹部の形状は、図6(a)の下端に示すように、平面視で、典型的には長方形であり、その短辺および長辺はそれぞれ、第1の方向および第2の方向に沿っている。ここで、短辺に対する長辺の長さの比は、1.5以上であることが好ましい。
また、図6(a)に示すように、平面視で長方形の凹部が部分的につながり、平面視で多角形の凹部を形成してもよい。この場合、多角形の外周に関して、第2の方向に沿う辺の長さの総和に対する、第1の方向に沿う辺の長さの総和が1.5倍以上となっていることが好ましい。ここで、当該多角形の外周とは、当該凹部を、その平均深さにおいてXY平面で切り取ったときに形成される凹部の外周を意味する。
図7(a)は、直線状の凹部(溝)が、第2の方向に不連続に(断続的に)延在している構造を概略的に示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIB−VIIB線断面図である。図7(a)では、凹凸構造の理解を容易にさせるために、凹部(溝)を黒色で示している。
当該構造において、第1の方向における、凹部の周期は、0.1〜3.0μmの範囲で、好ましくは0.4〜0.7μmの範囲で、一定でも、一定でなくてもよい。
凹部の深さは、例えば0.02〜1.5μmとすることができる。
凹部の周期に対する深さの比の平均値は、例えば3.0以下、典型的には1.0〜0.15とすることができる。
各凹部の形状は、図7(a)に示すように、平面視で、典型的には長方形であり、その短辺および長辺はそれぞれ、第1の方向および第2の方向に沿っている。ここで、短辺に対する長辺の長さの比は、1.5以上であることが好ましい。
以上の図5〜図7を参照した説明においては、凹部の延在方向は、第2の方向としているが、これに限られず、第2の方向から左右に65度までの方向に延在していてもよい。また、凹部の説明は凸部の説明として読み替えることができるものとする。
さらに、レリーフ構造形成層2は、第2領域R2において、以下に説明する平坦面を有していてもよい。
図8〜図10は、第2領域R2に設けられる平坦面の変形例を示す概略図である。図8(a)、9(a)、および10(a)では、凹部を黒色で示している。
図8(a)は、凹部を有する平坦面を概略的に示す平面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIB−VIIIB線断面図である。この例では、図8(a)に示すように、凹部の外形は、平面視で、正方形であるが、本発明では、これに制限されるものではなく、例えば、長方形、円形なども含まれる。凹部の外形が長方形である場合には、第2の方向に沿った辺に対する第1の方向に沿った辺の長さの比が0.66〜1.5であることが好ましい。
図8(a)の例では、隣り合う凹部の周期は、一定となっていないが、一定であってもよい。ここで、隣り合う凹部の周期は、0.2μm以上であることが好ましい。
凹部の深さは、例えば0.1〜5μmとすることができ、一定であっても、一定でなくてもよい。
凹部の周期に対する深さの比の平均値は、例えば1.0以下、典型的には0.5以下とすることができる。
図9(a)は、2種類の凹部の組み合わせを有する平坦面を概略的に示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXB−IXB線断面図である。
この例では、図9(a)に示すように、凹部の底面の外形は、大きさの相違する2種類の正方形で構成されており、一部において、2種類の正方形が重なり合って多角形が構成されている。本発明では、凹部の底面の外形は、大きさの相違する複数種の正方形、長方形、および円形の組み合わせから構成されていてもよい。
一部が重なり合って多角形を構成する場合には、その外周に関して、第2の方向に沿う辺の長さの総和に対する、第1の方向に沿う辺の長さの総和が、好ましくは0.66〜1.5倍であり、さらに好ましくは1倍である。ここで、当該多角形の外周とは、当該凹部を、その平均深さにおいてXY平面で切り取ったときに形成される凹部の外周を意味する。
また、凹部の外周が丸みを帯びた形状等となる場合には、第1の方向および第2の方向に沿う辺の長さを測定することが困難である。かかる場合には、凹部の外周により囲まれる部分を、当該部分の面積の1/100の面積を有する正方形で敷き詰め、これにより、第1の方向および第2の方向に沿う辺の長さの総和をそれぞれ近似的に算出すればよい。
図10(a)は、図8(a)の変形例を示す平面図であり、図10(b)は、図10(a)のXB−XB線断面図である。
図8(a)に示す例では、底面の外形が正方形である凹部が重なり合っていないのに対し、図10(a)に示す例では、凹部の一部が重なり合って多角形を構成している。本発明では、各凹部の底面の外形は、正方形だけでなく、長方形、円形であってもよい。
一部が重なり合って多角形を構成する場合には、その外周に関して、第2の方向に沿う辺の長さの総和に対する、第1の方向に沿う辺の長さの総和が0.66〜1.5倍であることが好ましく、さらに好ましくは、1倍である。ここで、当該多角形の外周とは、当該凹部を、その平均深さにおいてXY平面で切り取ったときに形成される凹部の外周を意味する。また、凹部の外周が丸みを帯びた形状となる場合には、外周により囲まれる部分を、当該部分の面積の1/100の面積を有する正方形で敷き詰め、これにより、第2の方向に沿う辺の長さの総和に対する、第1の方向に沿う辺の長さの総和の倍率を近似的に算出すればよい。
以上の図8〜図10を参照した説明において、凹部の説明は凸部の説明として読み替えることができるものとする。
レリーフ構造形成層2の膜厚は、3.0μm以下とすることができる。本明細書において、層の「膜厚」とは、当該層の一方の面上の各点と当該層の他方の面に下ろした垂線の足との間の距離の平均値を意味する。
なお、レリーフ構造形成層2の材料等については、後述する<光学素子の製造方法>で詳しく説明する。
(反射層)
反射層4は、レリーフ構造形成層2上に設けられた層であるが、レリーフ構造形成層2の全面ではなく、第2領域R2にのみ、または第1領域R1の一部および第2領域R2に設けられている。図1に示す光学素子10の例では、図1(c)および(d)にて示されるように、反射層4は、第2領域R2にのみ設けられている。
また、反射層4は、図1(c)および(d)にて示されるように、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応した形状をしている。
反射層4の膜厚は、レリーフ構造、反射率、光学効果等を考慮して適宜選択することができ、例えば、アルミニウムを用いて反射層を形成する場合には、20nm〜200nm程度とすることができる。
なお、反射層4の材料等については、後述する<光学素子の製造方法>で詳しく説明する。
(エッチングマスク層)
本発明の光学素子10は、反射層4の上にエッチングマスク層6が設けられている。エッチングマスク層6は、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応した表面形状を有していてもよいし、有していなくてもよい。
エッチングマスク層6の膜厚は、例えば、10nm〜300nm程度とすることができる。
なお、エッチングマスク層6の材料等については、後述する<光学素子の製造方法>で詳しく説明する。
(着色層)
本発明の光学素子10は、エッチングマスク層6の上に着色層8が設けられている。着色層8は、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応した表面形状を有していてもよいし、有していなくてもよい。
着色層8の膜厚は、例えば、100nm乃至5,000nm程度とし、典型的には500nm乃至2,000nm程度とすることができる。
なお、着色層8の材料等については、後述する<光学素子の製造方法>で詳しく説明する。
以上に説明した光学素子10は、高い位置精度で、反射層4、エッチングマスク層6、および着色層8が順次設けられた積層構造を備えている。また、光学素子10は、着色層8を備えているために、光学素子10を、表面側(レリーフ構造形成層2側)から観察する場合と、裏面側(着色層8側)から観察する場合において、OVD絵柄は、異なる色を呈する。これにより、光学素子の目視による真贋判定が容易となる。さらに、光学素子の意匠性も向上する。
<光学素子の製造方法>
次に、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
本発明の第1の実施形態に係る光学素子の製造方法は、(a)平面視で、第1の方向または第1の方向から左右に10度までの方向に延在している凹凸構造を有する第1領域と、平面視で、第1の方向に直交する第2の方向または第2の方向から左右に65度までの方向に延在している凹凸構造および/または平坦面を有する第2領域とを備えるレリーフ構造形成層を形成する工程と、(b)前記レリーフ構造形成層の第1および第2領域に、前記レリーフ構造形成層の材料とは相違する第1材料を堆積して、前記レリーフ構造形成層の表面形状に対応した表面形状を有する第1積層体を形成する工程と、(c)気相堆積装置において、工程(a)に記載の第1の方向と前記第1積層体の搬送方向が一致するように、前記第1積層体を配置する工程と、(d)前記配置した第1積層体を搬送するとともに、前記第1積層体の第1材料で堆積されている面に対して斜方から前記第1材料とは相違する第2材料を気相堆積して、第2積層体を形成する工程と、(e)前記第2積層体の第2材料を気相堆積した面上に着色材料層を形成して、第3積層体を形成する工程と、(f)前記第3積層体を、第1材料と反応する反応性ガスまたは液に曝す工程とを含む。
以下に、図11(a)〜(f)を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
図11(a)〜(f)は、図1(a)に示した光学素子の製造方法の各工程を順次示す概略的な断面図であり、図11(a)は、レリーフ構造形成層2を形成する工程を説明する断面図であり、図11(b)は、レリーフ構造形成層2の上に、第1材料層4’を形成して、第1積層体20を形成する工程を説明する断面図であり、図11(c)は、気相堆積装置において、工程(a)に記載の第1の方向と第1積層体20の搬送方向が一致するように、第1積層体20を配置する工程を説明する断面図であり、図11(d)は、第1積層体20を搬送するとともに、第1積層体20の第1材料で堆積されている面に対して斜方から第1材料とは相違する第2材料を気相堆積して、第2積層体30を形成する工程を説明する断面図であり、図11(e)は、第2積層体30の第2材料を気相堆積した面上に着色材料層8’を形成して、第3積層体40を形成する工程を説明する断面図であり、図11(f)は、第3積層体40を、第1材料と反応する反応性ガスまたは液に曝す工程を説明する断面図である。なお、図11(f)は、図1(d)に対応している。
(工程(a))
先ず、図11(a)に示すように、第1領域R1よび第2領域R2を備える主面を有するレリーフ構造形成層2を形成する。
レリーフ構造形成層2は、第1領域R1において、平面視で、第1の方向または第1の方向から左右に10度までの方向に延在している凹凸構造を有する。また、第2領域R2において、平面視で、第1の方向に直交する第2の方向または第2の方向から左右に65度までの方向に延在している凹凸構造および/または平坦面を有する。第1領域R1および第2領域R2における凹凸構造の詳細については、上記<光学素子>の(レリーフ構造形成層)の項で説明したとおりである。
レリーフ構造形成層2は、例えば、微細な凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。これら凸部の形状は、第1領域R1および/または第2領域R2に設ける凹部の形状に対応する。
レリーフ構造形成層2は、例えば、基材上に熱可塑性樹脂を塗布し、これに上記の凸部が設けられた原版(金型)を、熱を印加しながら押し当てる方法により形成してもよい。上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物を使用することができる。
或いは、レリーフ構造形成層2は、基材上に熱硬化性樹脂を塗布し、これに上記の凸部が設けられた原版を押し当てながら熱を印加し、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。この場合、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物を使用することができる。なお、このウレタン樹脂は、例えば、反応性水酸基を有したアクリルポリオール及びポリエステルポリオール等に、架橋剤としてポリイソシアネートを添加して、これらを架橋させることにより得られる。
或いは、レリーフ構造形成層2は、基材上に放射線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら紫外線等の放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。或いは、レリーフ構造形成層2は、基材と原版との間に上記組成物を流し込み、放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。
放射線硬化樹脂は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を使用することができる。光ラジカル重合が可能な化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用することができる。或いは、光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、又は、ウレタン変性アクリル樹脂及びエポキシ変性アクリル樹脂等のポリマーを使用してもよい。
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用することができる。この光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン及びメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又は、ミヒラーズケトンを使用することができる。
或いは、重合性化合物として、光カチオン重合が可能な化合物を使用してもよい。光カチオン重合が可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマー若しくはポリマー、オキセタン骨格含有化合物、又は、ビニルエーテル類を使用することができる。
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光カチオン重合開始剤を使用することができる。この光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩又は混合配位子金属塩を使用することができる。
或いは、重合性化合物として、光ラジカル重合が可能な化合物と光カチオン重合が可能な化合物との混合物を使用してもよい。この場合、開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を使用することができる。或いは、この場合、光ラジカル重合及び光カチオン重合の双方の開始剤として機能し得る重合開始剤を使用してもよい。このような開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩又は芳香族スルホニウム塩を使用することができる。
なお、放射線硬化樹脂に占める開始剤の割合は、例えば、0.1乃至15質量%の範囲内とすることができる。
放射線硬化樹脂は、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、離型剤又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。また、放射線硬化樹脂には、その成形性を向上させるべく、非反応性の樹脂を更に含有させてもよい。この非反応性の樹脂としては、例えば、上記の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
レリーフ構造形成層2の形成に用いる上記の原版は、例えば、電子線描画装置又はナノインプリント装置を用いて製造することができる。こうすると、上述した複数の凹部又は凸部を高い精度で形成することができる。また、本発明では、レリーフ構造形成層2に設ける凹凸構造は、4μm2〜10000μm2の面積の単位構造を繰り返し面付けした構造とすることができる。この場合、単位構造を形成するパターンを繰り返し用いることができるため、描画に用いるデータ量を大幅に削減することができる。
レリーフ構造形成層2は、典型的には、基材と、その上に形成された樹脂層とを含んでいる。この基材としては、典型的には、フィルム基材を使用することができる。このフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルム等のプラスチックフィルムを使用することができる。或いは、基材として、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙を使用してもよい。なお、基材は、省略してもよい。例えば、レリーフ構造形成層2自体がフィルム状の成型体である場合、基材を省略することができる。
樹脂層は、例えば、上述した方法により形成される。樹脂層の厚みは、例えば0.1μm乃至10μmの範囲内とすることができる。この厚みが過度に大きいと、加工時の加圧等による樹脂のはみ出し及び/又は皺の形成が生じ易くなる。この厚みが過度に小さいと、所望の凹構造及び/又は凸構造の形成が困難となる場合がある。また、樹脂層の厚みは、その主面に設けるべき凹部又は凸部の深さ又は高さと等しくするか又はそれより大きくする。この厚みは、例えば、凹部又は凸部の深さ又は高さの1乃至10倍の範囲内とし、典型的には、その3乃至5倍の範囲内とすることができる。
なお、レリーフ構造形成層2のレリーフ構造(凹凸構造)形成は、例えば、特許第4194073号公報に開示されている「プレス法」、実用新案登録第2524092号公報に開示されている「キャスティング法」、又は、特開2007−118563号公報に開示されている「フォトポリマー法」を用いて行ってもよい。
(工程(b))
次に、図11(b)に示すように、レリーフ構造形成層2の第1領域R1および第2領域R2に、レリーフ構造形成層2の材料とは相違する第1材料を堆積させ、レリーフ構造形成層2上に、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応した表面形状を有する第1材料層4’を形成する。これにより、第1積層体20を形成する。
第1材料の堆積方法としては、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応するように第1材料を堆積させることが可能な公知の塗布法または気相堆積法を用いることができる。塗布法としては、例えば、スプレー塗布を挙げることができる。気相堆積法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法(CVD法)を挙げることができる。特に、第1材料の堆積法としては、後述する工程(c)および(d)による気相堆積法を用いることが好ましい。これは、当該気相堆積法を用いることにより、第1材料層4’に粗密部分が生じ、後述する工程(f)において、第1領域R1での反射層4、エッチングマスク層6、および着色層8の選択的除去がより容易になるためである。
第1材料は、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応するように堆積される。これにより、第1材料の堆積により形成した第1材料層4’は、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応した表面形状を有する。また、第1材料の堆積は、レリーフ構造形成層2の主面に平行な面内方向について均一な密度で行うことが好ましい。具体的には、この堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比とが、等しくなるように行われることが好ましい。
第1材料は、レリーフ構造形成層2の材料とは相違する材料である。
例えば、レリーフ構造形成層2の材料との屈折率の差が0.2以上である材料を使用することが好ましい。この差が小さいと、レリーフ構造形成層2と後述する反射層4との界面における反射が生じ難くなる場合がある。
このような第1材料の例としては、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag等の金属、ならびにこれら金属の化合物およびこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つの金属材料を挙げることができる。ここで、金属の化合物とは、金属酸化物、金属硫化物などの金属元素を含む化合物を意味する。
反射層に適した材料としては、透明性が比較的高い以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を第1材料として使用してもよい。
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3、Fe2O3、TiO2、CdS、CeO2、ZnS、PbCl2、CdO、WO3、SiO、Si2O3、In2O3、PbO、Ta2O3、Ta2O5、ZnO、ZrO2、MgO、SiO2、Si2O2、MgF2、CeF3、CaF2、AlF3、Al2O3、珪素酸化物(SiOx,1<X<2)、又はGaOを使用することができる。
有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンを使用することができる。
なお、上記材料をターゲットとして気相堆積させる場合に最終的な堆積膜の元素比率、酸化数等は変動してもよい。
(工程(c))
次に、気相堆積装置において、工程(a)に記載の第1の方向と第1積層体20の搬送方向が一致するように、第1積層体20を配置する(図11(c))。
ここで、「工程(a)に記載の第1の方向と第1積層体20の搬送方向が一致する」とは、後述する工程(d)における第2材料の気相堆積時に、第1の方向と第1積層体20の搬送方向が一致することを意味する。
気相堆積装置としては、第2材料を気相堆積するために必要な蒸着源、第1積層体20を搬送するための搬送手段等を備えた公知の装置を用いることができ、適用する気相堆積法により使用する装置を適宜選択すればよい。例えば、ロール式真空蒸着加工機を用いることができる。
蒸着源は、公知のものを使用することができ、例えば、蒸着材料を蒸発させるための加熱手段と、蒸着材料を収容するための坩堝等の容器を備えている。
また、蒸着源は、気化した蒸着材料の出口である開口部が、第1積層体20の幅方向(搬送方向に対して垂直方向)において、第1積層体20の長さに対応する長さに構成されていることが好ましい。或いは、蒸着源が、第1積層体20の幅方向(搬送方向に対して垂直方向)に沿って、第1積層体20の長さに対応するように複数配列されていてもよい。
(工程(d))
次に、工程(c)で配置した第1積層体20を搬送するとともに、第1積層体20の第1材料で堆積されている面に対して斜方から第1材料とは相違する第2材料を気相堆積する。これにより、第1材料層4’の上に第2材料層6’を積層した第2積層体30を形成する(図11(d))。
第1積層体20を搬送する方法としては、第2材料の気相堆積時において、第1積層体20の第1領域R1における凹凸構造が延在している第1の方向と一致するように第1積層体20を搬送することができれば特に制限されない。例えば、第1積層体20を運搬用フィルムに固定して搬送する方法を用いてもよい。また、ロールツーロール方式にて第1積層体20を搬送する場合であって、第1積層体20が長く巻き取られたロール状である場合には、第1積層体20自体を搬送すればよい。
第1積層体20の搬送速度は、第2材料で形成される層の膜厚等を考慮して適宜設定すればよい。
第1積層体20を搬送するとともに、第1積層体20の第1材料で堆積されている面(すなわち、第1材料層4’の表面)に対して斜方から第2材料を気相堆積する方法としては、第1積層体20を蒸着源に接近するように移動させながら、および/または、第1積層体20を蒸着源から離れるように移動させながら第1積層体20の第1材料層4’の表面に対して斜め方向から第2材料を堆積させるあらゆる方法を用いることができる。
第2材料の堆積方法としては、気相堆積法を用いる。気相堆積法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法(CVD法)を挙げることができる。
第2材料の堆積は、レリーフ構造形成層2の主面に平行な面内方向について均一な密度で行うことが好ましい。具体的には、この堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第2材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比とが、等しくなるように行われることが好ましい。
第2材料は、第1材料とは相違する材料である。また、後述する工程(f)において用いる反応性ガスまたは液に対して反応しない(溶解しない)材料であることが好ましい。これは、このような第2材料からなる層が、第2領域R2において、当該反応性ガス等から第1材料層4’を保護するマスク層として機能し、当該反応性ガス等による第1材料層4’の侵食を防止することができるからである。
第2材料の例としては、第1材料をアルミニウムとした場合、珪素酸化物(SiOx、1<X<2)、フッ化マグネシウム(MgF2)を挙げることができる。珪素酸化物(SiOx、1<X<2)は、酸性およびアルカリ性の溶液に対する耐性が高く、また斜方蒸着によって柱状構造や空隙構造を形成することができるため第2材料として好適である。
工程(d)における第2材料の気相堆積について、図12を参照して、より詳細に説明する。
図12(a)は、第1積層体20が配置された蒸着装置の一例を示した概略的な断面図である。
図12(a)に示す例では、第1材料層4’が蒸着源120側に向くように搬送フィルム130上に配置された第1積層体20は、(1)、(2)、(3)の位置を順に通過するように搬送される。一方、蒸着源120から蒸発した第2材料は、遮蔽板110の開口部を介して(1)、(2)、(3)の位置に到達する。
先ず、第1積層体20が蒸着源120に接近するように(1)の位置にまで搬送されると、蒸着源120から蒸発した第2材料が、第1材料層4’の表面上に達する。この際、第2材料は、第1材料層4’の表面に対して斜め方向から接近して第1材料層4’の表面上に堆積する。その結果、第1材料層4’の表面に対し第2材料が斜方に堆積される。
次に、第1積層体20がローラー100の周面上に達し、(2)の位置に搬送されると、第2材料は、第1積層体20の堆積面に対し垂直方向から接近して、堆積する。このため、(2)の位置では斜方蒸着は行われない。このように、工程(d)において、斜方蒸着されない堆積法が含まれていてもよい。
その後、第1積層体20が蒸着源120から離れるように搬送されると、第2材料は、第1積層体20の表面に対し斜めから接近して、その面上に堆積する。
図12(b)は、図12(a)において、第1積層体20が(1)、(2)、(3)の位置を通過する際の、第1積層体20の第1領域R1における堆積面の様子を示す概略図である。図12(c)は、図12(a)において、第1積層体20が(1)、(2)、(3)の位置を通過する際の、第1積層体20の第2領域R2における堆積面の様子を示す概略図である。
図12(b)に示す例では、第1積層体20の第1領域R1における堆積面の凹凸構造は、第1の方向に延在しており、その延在方向と第1積層体20の搬送方向とは一致している。一方、図12(c)に示す例では、第2領域R2における堆積面の凹凸構造は、第2の方向に延在しており、その延在方向と第1積層体20の搬送方向とは直交している。このように、第1領域R1と第2領域R2とでは、搬送方向に対して凹凸構造の延在方向が相違するため、堆積面における第2材料の堆積形状に違いが生じる。
この堆積形状の違いについて、理論に拘束されるわけではないが、本発明者らは、以下のように考察している。
上記のとおり、図12(b)に示す例では、第1領域R1において、第1材料層4’の表面に形成された凹凸構造の延在方向が第1積層体20の搬送方向と一致している。このような表面構造を有する第1材料層4’に、当該層の表面に対して第2材料が斜めから接近し、堆積し始める。この過程で、第2材料が入り込めない影が生じ、最終的に空隙を伴う柱状の構造が形成される。その結果、第1領域R1において、第2材料により形成される膜の密度が低くなる。当該考察に基づいた、第1領域R1における、第2材料の堆積形状の断面推測図を図13(a)に示す。
これに対し、図12(c)に示す例では、第2領域R2において、第1材料層4’の表面に形成された凹凸構造の延在方向が第1積層体20の搬送方向と直交している。このため、第1領域R1の場合と比較し、第2材料が入り込めない影が生じ難くなる。この結果、第2領域R2では、第2材料が堆積されない空隙をほとんど形成することなく、第2材料により形成される膜の密度が高くなる。当該考察に基づいた、第2領域R2における、第2材料の堆積形状の断面推測図を図13(b)に示す。
(工程(e))
次に、工程(d)で形成した第2積層体30の第2材料を気相堆積した面上に着色材料層8’を形成して、第3積層体40を形成する(図11(e))。
着色材料層8’の形成方法としては、着色材料層8’を構成する材料を、第2材料層6’の上に堆積することが可能なあらゆる公知の塗布法を用いることができる。塗布法としては、例えば、グラビア印刷法、スプレー法、スピンコート法等を挙げることができる。
着色材料層8’を構成する材料としては、バインダー、多孔性フィラー、および着色剤を混合したものを用いることができる。ここで、こられの材料は、後述する工程(f)において用いる反応性ガスまたは液に対して反応しない(溶解しない)材料であることが好ましい。さらに、こられの材料により形成される着色材料層8’は、反応性ガスまたは液を浸透することが好ましい。
バインダーとしては、例えば、シランカップリング剤、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体などの樹脂を用いることができる。
多孔性フィラーとしては、SiO2フィラー、Al2O3フィラーなどを用いることができる。
着色剤としては、例えば、染料、顔料を用いることができる。染料の例としては、直接染料、分散染料などを用いることができる。
使用する着色剤により、光学素子10を着色層8側から観察した際に呈する色が変化する。例えば、反射層およびエッチングマスク層6の材料としてそれぞれアルミニウムおよび珪素酸化物(SiOx)を用いる場合に、黄色またはオレンジ色の着色剤を用いれば、着色層8側から光学素子10を観察した際に金色を呈する。茶色の着色剤を用いれば、銅色を呈する。
着色材料層8’の膜厚は、例えば100nm乃至5,000nmの範囲内とし、典型的には500nm乃至2,000nmの範囲内とすることができる。なお、図11(e)に示す例では、着色材料層8’は、レリーフ構造形成層2の表面形状に対応した表面形状を有しているが、これに限るものではない。例えば、着色材料層8’の表面形状は平坦であってもよい。この場合には、後述する工程(f)により製造される光学素子10は、表面形状が平坦である着色層を有する。
(工程(f))
次に、第3積層体40を、第1材料と反応する反応性ガスまたは液に曝す。これにより、第2領域R2にのみ反射層4と、エッチングマスク層6、着色層8とをこの順で含む光学素子10(図11(f))、または第1領域R1の一部および第2領域R2に、反射層4と、エッチングマスク層6、着色層8とをこの順で含む光学素子10(図示せず)を製造する。
第1材料と反応する反応性液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液等のアルカリ性溶液、または塩酸、硝酸、硫酸及び酢酸等の酸性溶液を使用することができる。第1材料と反応する反応性ガスとしては、第1材料を気化させ得るエッチングガスを使用することができる。なお、反応性ガス又は液は、第2材料および着色材料層8’を構成する材料を溶解させないものを選択する。
エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等は、用いる材料等により適宜調整することができる。本発明は、第1領域R1の一部に反射層4と、エッチングマスク層6と、着色層8とがこの順で含まれている光学素子10を含有する。この光学素子10を製造する場合には、第1領域R1における第1材料層4’が完全に除去される前にエッチングを中止すればよい。
第3積層体40のエッチングの様子を第1領域および第2領域毎に説明する。
第3積層体40をエッチング処理に供した場合、着色材料層8’は多孔性の層であるため、反応性ガス又は液が、多孔性の着色材料層8’を通過する。そして、上記工程(d)において説明したとおり、第1領域R1では、第2材料層6’に空隙が生じている(図13(a))ために、着色材料層8’を通過した反応性ガスまたは液は、エッチングマスク層6中に進入して、第1材料層4’に接触する。第1領域R1において、反応性ガス又は液が第1材料層4’に接触すると、第1材料層4’のエッチングは、面内方向に進行する。その結果、第1領域R1において、第1材料層4’が、その層上に設けられている第2材料層6’および着色材料層8’と共に除去される。
他方、第2領域R2では、ほとんど空隙が存在しない(図13(b))と考えられるため、着色材料層8’を通過した反応性ガス又は液は、エッチングマスク層6中に進入することができない。このため、第2領域R2では、第1材料層4’、第2材料層6’および着色材料層8’はエッチング処理により除去されずに残存する。
なお、反応性ガスまたは液に曝すことのみにより、第1材料層4’、第2材料層6’および着色材料層8’の除去が適切に行えない場合には、ラビング、ワイピング、シャワーなどの物理的な力を加えて、不要な層の除去を行ってもよい。
以上の工程(a)〜(f)により、第1領域R1および第2領域R2を備える主面を有するレリーフ構造形成層2と、レリーフ構造形成層2の第2領域R2にのみ、または第1領域R1の一部および第2領域R2に設けられた反射層4と、反射層の上に順次設けられたエッチングマスク層6および着色層8とを含む光学素子10を製造することができる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
本実施形態に係る光学素子は、第1の実施形態において、第2領域が複数のサブ領域を含む点に特徴を有する。ここで、相違するサブ領域間では、凹凸構造の延在する方向、周期、または深さ(高さ)の少なくとも1つが相違する。
図14は、本発明の第2の実施形態に係る光学素子10を示す概略的な平面図である。図14に示す光学素子10では、第1領域R1は、第1の方向に対して左に8度(−8度)の方向に延在している凹凸構造を有している。第2領域は、凹凸構造の延在する方向が相違する2つのサブ領域を含む。すなわち、第2の方向に対して右に45度(+45度)の方向に延在している凹凸構造を有している第2サブ領域R2−1と、第2の方向に対して左に45度(−45度)の方向に延在している凹凸構造を有している第2サブ領域R2−2とを含む。
本実施形態では、図14に示す凹凸構造の延在方向に限られず、第1の実施形態で説明したように、第1領域R1において、凹凸構造の延在方向は、第1の方向または第1の方向から左右に10度までの方向であればよい。また、第2領域(第2サブ領域)においても、凹凸構造の延在方向は、第2の方向または第2の方向から左右に65度までの方向であればよい。
また、図14では、第2領域において、凹凸構造の延在する方向が相違するサブ領域を例示しているが、本実施形態では、凹凸構造の延在する方向、周期、または深さ(高さ)の少なくとも1つが相違するサブ領域を含むことができる。
さらに、図14に示す例においては、第2領域は、2つのサブ領域を含んでいるが、2つに限らず、3つ以上のサブ領域を含んでいてもよい。
以上のように本実施形態の光学素子10では、第2領域に複数のサブ領域を設けて複雑に構成することができる。
第2の実施形態に係る光学素子10は、上記<光学素子の製造方法>で説明した方法により製造することができる。具体的には、工程(a)において、第1領域R1よび第2領域R2に、所望の凹凸構造を有するようにレリーフ構造形成層を形成して、その後、工程(b)〜(f)を実施すればよい。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
本実施形態に係る光学素子は、第1の実施形態において、第1領域および第2領域の双方が複数のサブ領域を含む点に特徴を有する。ここで、相違するサブ領域間では、凹凸構造の延在する方向、周期、または深さ(高さ)の少なくとも1つが相違する。
図15は、本発明の第3の実施形態に係る光学素子10を示す概略的な平面図である。図15に示す光学素子10では、第1領域および第2領域はそれぞれ、2つのサブ領域を含む。
図15に示す光学素子10では、第1領域は、延在する方向が同一であるが、周期、深さ、およびアスペクト比が相違する凹凸構造を有している2つのサブ領域を含む。具体的には、第1の方向に延在しており、周期600nm、深さ150nm、アスペクト比が0.25である凹凸構造を有する第1サブ領域R1−1と、第1の方向に延在しており、周期400nm、深さ400nm、アスペクト比が1.00である凹凸構造を有する第1サブ領域R1−2とを含む。
本実施形態では、図15に示す凹凸構造の延在方向に限られず、第1の実施形態で説明したように、第1領域(第1サブ領域)は、凹凸構造の延在方向が、第1の方向または第1の方向から左右に10度までの方向であればよい。また、凹凸構造の周期、深さ、アスペクト比についても、第1の実施形態で説明したものを採用することができる。
図15では、第2領域は、延在する方向が相違する凹凸構造を有している2つのサブ領域を含む。具体的には、第2の方向に対して右に45度(+45度)の方向に延在している凹凸構造を有している第2サブ領域R2−1と、第2の方向に対して左に45度(−45度)の方向に延在している凹凸構造を有している第2サブ領域R2−2とを含む。
本実施形態では、図15に示す凹凸構造の延在方向に限られず、第1の実施形態で説明したように、第2領域(第2サブ領域)において、凹凸構造の延在方向は、第2の方向または第2の方向から左右に65度までの方向であればよい。
また、図15では、第2領域において、凹凸構造の延在する方向が相違するサブ領域を例示しているが、本実施形態では、凹凸構造の延在する方向、周期、または深さ(高さ)の少なくとも1つが相違するサブ領域を含むことができる。
さらに、図15においては、第1領域および第2領域ともに、2つのサブ領域を含んでいるが、2つに限らず、3つ以上のサブ領域を含んでいてもよい。
本発明では、図15に示す光学素子10のように、サブ領域R1-2に設けられた凹凸構造の深さを深くしてもよい。これにより、当該凹凸構造を挟む上下二層の密着性は、アンカー効果(楔効果)により向上する。また、高アスペクト比の凹凸構造を用いなくとも断面形状を矩形とすることによっても同様のアンカー効果を得ることも可能である。
本発明の光学素子10では、このようなアンカー効果を有する構造を部分的に設けることで、高い密着性を確保することも可能である。
第3の実施形態に係る光学素子10は、上記<光学素子の製造方法>で説明した方法により製造することができる。具体的には、工程(a)において、第1領域R1よび第2領域R2に、所望の凹凸構造を有するようにレリーフ構造形成層を形成して、その後、工程(b)〜(f)を実施すればよい。
以上において説明した種々の実施の形態は、組み合わせて適用されてもよい。
本発明の光学素子は、粘着ラベルの一部として使用してもよい。この粘着ラベルは、光学素子と、光学素子の背面上に設けられた粘着層とを備えている。
或いは、本発明の光学素子は、転写箔の一部として使用してもよい。この転写箔は、光学素子と、光学素子を剥離可能に支持した支持体層とを備えている。
本発明の光学素子は、物品に支持させて使用してもよい。例えば、本発明の光学素子は、プラスチック製のカード等に支持させてもよい。或いは、本発明の光学素子は、紙に漉き込んで使用してもよい。本発明の光学素子は、燐片状に破砕して、顔料の一成分として使用してもよい。
本発明の光学素子は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、玩具、学習教材、装飾品としても使用することができる。
[参考実施形態]
目視による真贋判定を容易にさせることもできる光学素子としては、以下の参考実施形態を挙げることができる。
[第1の参考実施形態]
まず、第1の参考実施形態の光学素子について説明する。
本参考実施形態の光学素子は、
第1および第2領域を備える主面を有するレリーフ構造形成層と、
前記レリーフ構造形成層の第2領域に設けられた反射層と、
前記反射層上に設けられた着色層と、
を含み、
前記レリーフ構造形成層は、第1領域に、凹凸構造を有し、第2領域に、凹凸構造および/または平坦面を有し、第1領域は、第2領域と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きく、
前記反射層は、前記レリーフ構造形成層の表面形状に対応した表面形状を有している。
図16は、第1の参考実施形態に係る光学素子の製造方法の工程を示す概略的な断面図であって、(a)は、レリーフ構造形成層上に、反射材料層および着色フォトレジスト層を順次形成する工程を説明する断面図であり、(b)は、反射材料層を介して、着色フォトレジスト層を露光する工程と、(c)は、(b)で露光した着色フォトレジスト層を現像して、パターニングされた着色フォトレジスト層を形成する工程と、(d)は、(c)でパターニングされた着色フォトレジスト層をエッチングマスクとして、反射材料層をエッチングして、光学素子を得る工程を説明する断面図である。
以下、図16を参照して第1の参考実施形態に係る光学素子の製造方法の概略を説明する。
(工程(a))
本工程は、レリーフ構造形成層2上に、反射材料層4’および着色フォトレジスト層8’を順次形成する工程である。
まず、レリーフ構造形成層2の第1領域R1および第2領域R2に設けられた凹凸構造について説明する。
第1領域R1は、凹構造及び/又は凸構造である凹凸構造が設けられている。これら凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図16(a)には、第1領域R1に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状、U字形状(サインカーブ状)、および台形状等の先細り形状とするか又は矩形状とすることができる。図16(a)には、一例として、上記の断面形状がU字形状である場合を描いている。
第1領域R1は、第2領域R2と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。なお、ここで、領域の「見かけ上の面積」とは、当該領域に平行な平面への当該領域の正射影の面積、即ち、凹構造及び凸構造を無視した当該領域の面積を意味する。また、領域の「表面積」とは、凹構造及び凸構造を考慮した当該領域の面積を意味する。
第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、第1領域R1の複数の凹部又は凸部は、典型的には、第2領域R2の複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい。
第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば100nm乃至5,000nmの範囲内とすることができる。また、これら複数の溝の深さは、例えば50nm乃至1,000nmの範囲内とすることができる。領域R1及びR2の双方に複数の溝が設けられている場合、第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、第2領域R2に設けた複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値と比較してより大きくする。第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば0.1乃至2の範囲内とし、典型的には0.2乃至0.5の範囲内とすることができる。この値が過度に大きいと、レリーフ構造形成層2の生産性が低下する場合がある。
第2領域R2は、凹凸構造および/または平坦面が設けられている。ここで、凹凸構造は、凹構造及び/又は凸構造である。凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、この場合、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図16(a)には、第2領域R2に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。これら複数の溝は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを形成している。
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、例えば、V字形状、U字形状(サインカーブ状)、および台形状等の先細り形状とするか又は矩形状とすることができる。図16(a)には、一例として、上記の断面形状がU字形状である場合を描いている。
第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば100nm乃至5,000nmの範囲内とすることができる。また、これら複数の溝の深さは、例えば50nm乃至1,000nmの範囲内とすることができる。これら複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば2以下とし、典型的には0.2乃至0.5の範囲内とすることができる。
レリーフ構造形成層2の形成方法および材料は、上記[第1の実施形態]で説明したとおりである。
次に、レリーフ構造形成層2上に、反射材料層4’を形成する方法について説明する。
レリーフ構造形成層2の材料とは屈折率が異なる第1材料を、領域R1及びR2の全体に対して気相堆積させる。これにより、レリーフ構造形成層2の領域R1及びR2を含んだ主面上に、反射材料層4’を形成する。
この第1材料としては、例えば、レリーフ構造形成層2の材料との屈折率の差が0.2以上である材料を使用することが好ましい。
第1材料としては、典型的には、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つの金属材料を使用することができる。
或いは、透明性が比較的高い第1材料として、以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を使用してもよい。なお、以下に示す化学式又は化合物名の後に記載した括弧内の数値は、各材料の屈折率を意味している。
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)又はGaO(2)を使用することができる。
有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)又はポリスチレン(1.60)を使用することができる。
第1材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又は化学蒸着法(CVD法)を用いて行うことができる。
この気相堆積は、レリーフ構造形成層2の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
また、この気相堆積では、典型的には、レリーフ構造形成層2の主面が平坦面のみからなると仮定した場合の膜厚(以下、設定膜厚という)を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、反射材料層4’が以下の要件を満足するようにして定める。
第1に、反射材料層4’のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図16(a)に示す例では、この部分は、第2領域R2に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
第2に、反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図16(a)には、一例として、前者の場合を描いている。即ち、図16(a)に示す例では、この部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
なお、上述したように、第1領域R1は、第2領域R2と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、反射材料層4’が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分は、第2領域R2に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。層の「平均膜厚」とは、当該層の一方の面上の各点と当該層の他方の面に下ろした垂線の足との間の距離の平均値を意味する。
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第2領域R2に対応した部分では第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第1領域R1に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口した反射材料層4’を形成することができる。
反射材料層4’の設定膜厚は、典型的には、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。
具体的には、反射材料層4’の設定膜厚は、例えば20nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には40nm乃至100nmの範囲内とすることができる。
反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、例えば20nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には40nm乃至100nmの範囲内とすることができる。
反射材料層4’のうち第2領域R2に対応した部分の平均膜厚は、例えば20nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には40nm乃至100nmの範囲内とすることができる。
次に反射材料層4’上に着色フォトレジスト層8’を形成する方法について説明する。
着色フォトレジスト層8’の形成方法としては、着色フォトレジスト層8’の材料を、反射材料層4’の上に堆積することができる公知の塗布法を用いることができる。塗布法としては、例えば、グラビア印刷法、スプレー法、スピンコート法等を挙げることができる。
着色フォトレジスト層8’を構成する材料としては、ポジ型フォトレジストに、着色剤を混合したものを用いることができる。
着色剤としては、例えば、染料、顔料を用いることができる。染料の例としては、直接染料、分散染料などを用いることができる。ここで、反射材料層4’の材料としてアルミニウムが用いられる場合には、黄色またはオレンジ色の着色剤を用いれば、着色層側から光学素子10を観察した際に金色に見える。
着色フォトレジスト層8’の平均膜厚は、例えば1,000nm乃至10,000nmの範囲内とし、典型的には2,000nm乃至5,000nmの範囲内とすることができる。
(工程(b))
本工程は、反射材料層4’を介して、着色フォトレジスト層8’を露光する工程である(図16(b))。
上記のとおり、反射材料層4’の第1領域R1は、第2領域R2と比較して膜厚が小さい。このため、反射材料層4’に光を当てると、第1領域R1では、光を透過し(透過し易くなり)、第2領域R2では、光を透過しない(透過し難くなる)。したがって、図16(b)に示すように、レリーフ構造形成層2側から、反射材料層4’を介して、紫外線などの光を着色フォトレジスト層8’に照射すると、第1領域R1では、光を透過する(透過し易くなる)が、第2領域R2では光を透過しない(透過し難くなる)。したがって、第1領域R1においてのみ選択的に露光することとなる。
(工程(c))
本工程は、工程(b)で露光した着色フォトレジスト層8’を現像して、パターニングされた着色フォトレジスト層8’を形成する工程である(図16(c))。
すなわち、本工程では、工程(b)で、露光された第1領域R1における着色フォトレジスト層8’が現像により除去される。
(工程(d))
本工程は、工程(c)でパターニングされた着色フォトレジスト層8’をエッチングマスクとして、反射材料層4’をエッチングし、光学素子10を得る工程である(図16(d))。
エッチングは、酸、アルカリ等の化学溶液を用いるウェットエッチングでもよいし、プラズマ中の反応種(イオン、高速中性粒子、ラジカル、ガスなど)を用いるドライエッチングでもよい。
[第2の参考実施形態]
次に、第2の参考実施形態の光学素子について説明する。
本参考実施形態の光学素子は、
第1および第2領域を備える主面を有するレリーフ構造形成層と、
前記レリーフ構造形成層の第1領域に設けられた反射層と、
前記反射層上に設けられた着色層と、
を含み、
前記レリーフ構造形成層は、第1領域に、凹凸構造を有し、第2領域に、凹凸構造および/または平坦面を有し、第1領域は、第2領域と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きく、
前記反射層は、前記レリーフ構造形成層の表面形状に対応した表面形状を有している。
本参考実施形態の光学素子は、レリーフ構造形成層の第1領域に、反射層および着色層が順次形成されている点でのみ第1の参考実施形態と相違する。
第1の参考実施形態では、着色フォトレジスト層の材料として、ポジ型フォトレジストを使用したが、これをネガ型フォトレジストに代えることにより本参考実施形態の光学素子を製造することができる。
[第3の参考実施形態]
次に、第3の参考実施形態の光学素子について説明する。
本参考実施形態の光学素子は、
第1および第2領域を備える主面を有するレリーフ構造形成層と、
前記レリーフ構造形成層の第2領域に設けられた反射層と、
前記反射層上に順次設けられたエッチングマスク層および着色層と、
を含み、
前記レリーフ構造形成層は、第1領域に、凹凸構造を有し、第2領域に、凹凸構造および/または平坦面を有し、第1領域は、第2領域と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きく、
前記反射層は、前記レリーフ構造形成層の表面形状に対応した表面形状を有している。
図17は、第3の参考実施形態に係る光学素子の製造方法の工程を示す概略的な断面図であって、(a)は、レリーフ構造形成層上に、反射材料層、エッチングマスク材料層、および着色材料層を順次形成して、積層体を形成する工程を説明する断面図であり、(b)は、積層体をエッチングして、光学素子を得る工程を説明する断面図である。
以下、図17を参照して第3の参考実施形態に係る光学素子の製造方法の概略を説明する。
(工程(a))
本工程は、レリーフ構造形成層2上に、反射材料層4’、エッチングマスク材料層6’、および着色材料層8’を順次形成して、積層体を形成する工程である。
まず、レリーフ構造形成層2の第1領域R1および第2領域R2に設けられた凹凸構造について説明する。
第1領域R1は、凹構造及び/又は凸構造である凹凸構造が設けられている。これら凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図17には、第1領域R1に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状、U字形状(サインカーブ状)、および台形状等の先細り形状とするか又は矩形状とすることができる。図17(a)には、一例として、上記の断面形状がU字形状である場合を描いている。
第1領域R1は、第2領域R2と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。なお、ここで、領域の「見かけ上の面積」とは、当該領域に平行な平面への当該領域の正射影の面積、即ち、凹構造及び凸構造を無視した当該領域の面積を意味する。また、領域の「表面積」とは、凹構造及び凸構造を考慮した当該領域の面積を意味する。
第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、第1領域R1の複数の凹部又は凸部は、典型的には、第2領域R2の複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい。
第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば200nm乃至2,000nmの範囲内とすることができる。また、これら複数の溝の深さは、例えば50nm乃至1,000nmの範囲内とすることができる。領域R1及びR2の双方に複数の溝が設けられている場合、第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、第2領域R2に設けた複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値と比較してより大きくする。第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば0.1乃至2.0の範囲内とし、典型的には0.2乃至0.5の範囲内とすることができる。この値が過度に大きいと、レリーフ構造形成層2の生産性が低下する場合がある。
第2領域R2は、凹凸構造および/または平坦面が設けられている。ここで、凹凸構造は、凹構造及び/又は凸構造である。凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、この場合、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図17(a)には、第2領域R2に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。これら複数の溝は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを形成している。
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状、U字形状(サインカーブ状)、および台形状等の先細り形状とするか又は矩形状とすることができる。図17(a)には、一例として、上記の断面形状がU字形状である場合を描いている。
第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば200nm乃至2,000nmの範囲内とすることができる。また、これら複数の溝の深さは、例えば50nm乃至1,000nmの範囲内とすることができる。これら複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば2以下とし、典型的には0.2乃至0.5の範囲内とすることができる。
レリーフ構造形成層2の形成方法および材料は、上記[第1の実施形態]で説明したとおりである。
次に、レリーフ構造形成層2上に、反射材料層4’を形成する方法について説明する。
レリーフ構造形成層2の材料とは屈折率が異なる第1材料を、領域R1及びR2の全体に対して気相堆積させる。これにより、レリーフ構造形成層2の領域R1及びR2を含んだ主面上に、反射材料層4’を形成する。
この第1材料としては、例えば、レリーフ構造形成層2の材料との屈折率の差が0.2以上である材料を使用することが好ましい。
第1材料としては、典型的には、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つの金属材料を使用することができる。
或いは、透明性が比較的高い第1材料として、以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を使用してもよい。なお、以下に示す化学式又は化合物名の後に記載した括弧内の数値は、各材料の屈折率を意味している。
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)又はGaO(2)を使用することができる。
有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)又はポリスチレン(1.60)を使用することができる。
第1材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又は化学蒸着法(CVD法)を用いて行うことができる。
この気相堆積は、レリーフ構造形成層2の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
また、この気相堆積では、典型的には、レリーフ構造形成層2の主面が平坦面のみからなると仮定した場合の膜厚(以下、設定膜厚という)を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、反射材料層4’が以下の要件を満足するようにして定める。
第1に、反射材料層4’のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図17(a)に示す例では、この部分は、第2領域R2に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
第2に、反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図17(a)には、一例として、前者の場合を描いている。即ち、図17(a)に示す例では、この部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
なお、上述したように、第1領域R1は、第2領域R2と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、反射材料層4’が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分は、第2領域R2に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。層の「平均膜厚」とは、当該層の一方の面上の各点と当該層の他方の面に下ろした垂線の足との間の距離の平均値を意味する。
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第2領域R2に対応した部分では第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第1領域R1に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口した反射材料層4’を形成することができる。
反射材料層4’の設定膜厚は、典型的には、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。
具体的には、反射材料層4’の設定膜厚は、例えば20nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には40nm乃至100nmの範囲内とすることができる。
反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、例えば20nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には40nm乃至100nmの範囲内とすることができる。
反射材料層4’のうち第2領域R2に対応した部分の平均膜厚は、例えば20nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には40nm乃至100nmの範囲内とすることができる。
次に反射材料層4’上にエッチングマスク材料層6’を形成する方法について説明する。
当該方法は、反射材料層4’の材料とは異なる第2材料を、反射材料層4’に対して気相堆積させることにより実施することができる。
第2材料としては、典型的には、無機物を使用する。この無機物としては、例えば、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、Ni、Cu、Au、Ag、TiO2、MgO、SiO2 及びAl2O3が挙げられる。
或いは、第2材料として、有機物を使用してもよい。この有機物としては、例えば、重量平均分子量が1500以下の有機物を使用する。このような有機物としては、例えば、アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の重合性化合物が挙げられる。或いは、このような有機化合物として、これら重合性化合物と開始剤とを混合し、放射線硬化樹脂として気相堆積した後に、放射線照射によって重合させたものを使用してもよい。
或いは、第2材料として、金属アルコキシドを使用してもよい。或いは、第2材料として、金属アルコキシドを気相堆積した後、これを重合させたものを使用してもよい。この際、気相堆積の後、重合させる前に、乾燥処理を行ってもよい。
第2材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又はCVD法を用いて行うことができる。
この気相堆積は、レリーフ構造形成層2の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第2材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
また、この気相堆積では、エッチングマスク材料層6’の設定膜厚を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、エッチングマスク材料層6’が以下の要件を満足するようにして定める。
第1に、エッチングマスク材料層6’のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図17(a)に示す例では、この部分は、第2領域R2に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
第2に、エッチングマスク材料層6’のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図17(a)には、一例として、後者の場合を描いている。即ち、図17(a)に示す例では、この部分は、反射材料層4’の上で、第1領域R1に設けられた複数の溝の配置に対応して部分的に開口した不連続膜を形成している。
なお、上述したように、第1領域R1は、第2領域R2と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、エッチングマスク材料層6’が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、エッチングマスク材料層6’のうち第1領域R1に対応した部分は、第2領域R2に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第2領域R2に対応した部分では第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第1領域R1に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口したエッチングマスク材料層6’を形成することができる。
エッチングマスク材料層6’の設定膜厚は、典型的には、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第2領域R2に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。そして、エッチングマスク材料層6’の設定膜厚は、典型的には、反射材料層4’の設定膜厚と比較してより小さくする。この設定膜厚が過度に小さいと、エッチングマスク材料層6’のうち第2領域R2に対応した部分の平均膜厚が過度に小さくなり、反射材料層4’のうち第2領域R2に対応した部分のエッチングマスク材料層6’による保護が不十分となる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分のエッチングマスク材料層6’による保護が過剰となる場合がある。
次にエッチングマスク材料層6’上に着色材料層8’を形成する方法について説明する。
着色材料層8’の形成方法としては、着色材料層8’の材料を、反射材料層4’の上に堆積することができるあらゆる公知の塗布法を用いることができる。塗布法としては、例えば、グラビア印刷法、スプレー法、スピンコート法等を挙げることができる。
着色材料層8’を構成する材料としては、バインダー、多孔性フィラー、および着色剤を混合したものを用いることができる。ここで、こられの材料は、後述する工程(b)において用いる反応性ガスまたは液に対して反応しない(溶解しない)材料であることが好ましい。さらに、こられの材料により形成される着色材料層8’は、反応性ガスまたは液を浸透することが好ましい。
バインダーとしては、例えば、シランカップリング剤、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体などの樹脂を用いることができる。
多孔性フィラーとしては、SiO2フィラー、Al2O3フィラーなどを用いることができる。
着色剤としては、例えば、染料、顔料を用いることができる。染料の例としては、直接染料、分散染料などを用いることができる。
着色材料層8’の平均膜厚は、例えば100nm乃至5,000nmの範囲内とし、典型的には500nm乃至2,000nmの範囲内とすることができる。
(工程(b))
本工程は、工程(a)で形成した積層体をエッチングして、光学素子10を得る工程である(図17(b))。
すなわち、本工程では、工程(a)で形成した積層体を、反射材料層4’の材料と反応が生じる反応性ガス又は液に曝す。そして、第1領域R1の位置で、反射材料層4’の材料との上記反応を生じさせる。
ここでは、反応性ガス又は液として、反射材料層4’の材料を溶解可能なエッチング液を使用する場合について説明する。このエッチング液としては、典型的には、水酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液等のアルカリ性溶液を使用する。或いは、エッチング液として、塩酸、硝酸、硫酸及び酢酸等の酸性溶液を使用してもよい。
積層体をエッチング処理に供した場合、着色材料層8’は多孔性の層であるため、エッチング液が、多孔性の着色層8を通過する。そして、上記工程(a)において説明したとおり、エッチングマスク材料層6’のうち第2領域R2に対応した部分は連続膜を形成しているのに対し、第1領域R1に対応した部分は、部分的に開口した不連続膜を形成している。反射材料層4’のうちエッチングマスク材料層6’によって被覆されていない部分は、反射材料層4’のうちエッチングマスク材料層6’によって被覆された部分と比較して、反応性ガス又は液と接触し易い。
反射材料層4’のうちエッチングマスク材料層6’によって被覆されていない部分が除去されると、反射材料層4’には、エッチングマスク材料層6’の開口に対応した開口が生じる。エッチングを更に続けると、反射材料層4’のエッチングは、各開口の位置で面内方向に進行する。その結果、第1領域R1では、反射材料層4’とともに、その上のエッチングマスク材料層6’および着色材料層8’が除去される。
従って、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図17(b)に示すように、反射材料層4’のうち第1領域R1に対応した部分のみを除去することができる。これにより、光学素子10が得られる。
なお、反応性ガスまたは液に曝すことのみにより、反射材料層4’、エッチングマスク材料層6’および着色材料層8’の除去が行えない場合には、ラビング、ワイピング、シャワーなどの物理的な力を加えて、不要な層の除去を行ってもよい。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
まず、レリーフ構造形成層の形成工程で用いる金型を以下のようにして作製した。
最初に、平滑なガラス基板上に感光性レジスト材料(ゼオン社製zep7000)を塗布し、均一な膜厚のレジスト材料層を形成した。次いで、電子線描画装置により、以下の凹凸構造パターンを有する絵柄をレジスト材料層に描画した。
凹凸構造のパターン
・第1の領域:第1の方向に延在した複数の凹部から構成される回折格子(周期500nm、深さ100nm)
・第2の領域:第1の方向に直交する方向に延在した複数の凹部から構成される回折格子(周期500nm、深さ100nm)
その後、このレジスト材料層を現像処理に供して、凹凸構造を有する構造体を得た。
次に、この構造体の表面に、ニッケルスパッタリングにより金属薄膜を設けた後、これをニッケル電鋳に供して、金型を作製した。
次に、この金型を用いて光学素子を以下のように製造した。
まず、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、ウレタン型樹脂(関西ペイント社製パワーMレタンEX)を乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコーティング法によって塗工した。
次いで、この塗工面に、上記の作製した金型を、1MPaのプレス圧力、120℃のプレス温度にて押し当ててエンボス加工を実施し、レリーフ構造形成層を形成した。
その後、ロール式真空蒸着加工機のフィルム搬送方向(MD方向)と、第1領域における凸部の延在する方向とが一致するようにレリーフ構造形成層を蒸着加工機に配置した。
次いで、平均膜厚が70nmとなるように、レリーフ構造形成層の全面にアルミニウムを真空斜方蒸着して第1積層体を形成した。
更に、ロール式真空蒸着加工機のフィルム搬送方向(MD方向)と、第1領域における凸部の延在する方向(第1の方向)とが一致するように第1積層体をロール式真空蒸着加工機に配置した。その後、平均膜厚が70nmとなるように、第1積層体の第1材料層全面に珪素酸化物(SiOx)を真空斜方蒸着して第2積層体を形成した。
続いて、第2積層体の蒸着面に、アルカリ水溶液に不溶性の黄色染料(オリエント化学工業社製VALIFAST1201)、SiO2フィラー(富士シリシア化学社製サイロホービック100)およびシランカップリング剤バインダー(信越シリコン社製EBM1003)からなるインキを、平均膜厚が1μmとなるようにグラビア印刷して、着色層を形成し、第3積層体を得た。
次いで、第3積層体を、質量濃度が2%の水酸化ナトリウム水溶液中に50℃、1分間浸漬して、レリーフ構造形成層の第2領域のみに反射層、エッチングマスク層、着色層をこの順で含む光学素子を製造した。
得られた光学素子の表面と裏面をそれぞれ観察すると、一方の面では、第2領域の絵柄(OVD絵柄)がアルミニウムに由来する銀色を呈し、他方の面では黄色染料を用いた着色層に由来する金色を呈した。また、第1領域の絵柄(ディメタ絵柄)は透明であった。
また、当該光学素子において、第2領域の絵柄(OVD絵柄)および第1領域の絵柄(ディメタ絵柄)は、完全に位置合わせされていた。
以上により、得られた光学素子は、目視による真贋判定が容易であるとともに、高い偽造防止効果を有していることが確認できた。
(参考例1)
まず、レリーフ構造形成層の形成工程で用いる金型を以下のようにして作製した。
最初に、平滑なガラス基板上に感光性レジスト材料(ゼオン社製zep7000)を塗布し、均一な膜厚のレジスト材料層を形成した。次いで、電子線描画装置により、以下の凹凸構造パターンを有する絵柄をレジスト材料層に描画した。
凹凸構造のパターン
・第1の領域:第1の方向および第1の方向に直交する方向に周期333nmで配置され、深さが300nmである凹部から構成される交差格子
・第2の領域:第1の方向に延在した複数の凹部から構成される回折格子(周期1μm、深さ100nm)
その後、このレジスト材料層を現像処理に供して、凹凸構造を有する構造体を得た。
次に、この構造体の表面に、ニッケルスパッタリングにより金属薄膜を設けた後、これをニッケル電鋳に供して、金型を作製した。
次に、この金型を用いて光学素子を以下のように製造した。
まず、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、ウレタン型樹脂(関西ペイント社製パワーMレタンEX)を乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコーティング法によって塗工した。
次いで、この塗工面に、上記の作製した金型を、1MPaのプレス圧力、120℃のプレス温度にて押し当ててエンボス加工を実施し、レリーフ構造形成層を形成した。
その後、平均膜厚が50nmとなるように、レリーフ構造形成層の全面にアルミニウムを真空蒸着して反射材料層を形成した。
次いで、この積層体の反射材料層の全面に、黄色のフォトレジスト材料(JSR社製THB)を、平均膜厚が1μmの厚さとなるようにグラビア印刷して、着色フォトレジスト層を形成した。
次いで、この積層体のPET基材側から、1J/cm2の照度で全面に紫外線を照射し、現像した。
その後、得られた積層体を、質量濃度が2%の水酸化ナトリウム水溶液中に50℃、1分間浸漬して、レリーフ構造形成層の第2領域のみに反射層および着色層をこの順で含む光学素子を製造した。
得られた光学素子の表面と裏面をそれぞれ観察すると、一方の面では、第2領域の絵柄(OVD絵柄)がアルミニウムに由来する銀色を呈し、他方の面では黄色染料を用いた着色層に由来する金色を呈した。また、第1領域の絵柄(ディメタ絵柄)は透明であった。
また、当該光学素子において、第2領域の絵柄(OVD絵柄)および第1領域の絵柄(ディメタ絵柄)は、完全に位置合わせされていた。
以上により、得られた光学素子は、目視による真贋判定が容易であるとともに、高い偽造防止効果を有していることが確認できた。
(参考例2)
まず、レリーフ構造形成層の形成工程で用いる金型を以下のようにして作製した。
最初に、平滑なガラス基板上に感光性レジスト材料(ゼオン社製zep7000)を塗布し、均一な膜厚のレジスト材料層を形成した。次いで、電子線描画装置により、以下の凹凸構造パターンを有する絵柄をレジスト材料層に描画した。
凹凸構造のパターン
・第1の領域:第1の方向および第1の方向に直交する方向に周期333nmで配置され、深さが300nmである凹部から構成される交差格子
・第2の領域:第1の方向に延在した複数の凹部から構成される回折格子(周期1μm、深さ100nm)
その後、このレジスト材料層を現像処理に供して、凹凸構造を有する構造体を得た。
次に、この構造体の表面に、ニッケルスパッタリングにより金属薄膜を設けた後、これをニッケル電鋳に供して、金型を作製した。
次に、この金型を用いて光学素子を以下のように製造した。
まず、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、ウレタン型樹脂(関西ペイント社製パワーMレタンEX)を乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコーティング法によって塗工した。
次いで、この塗工面に、上記の作製した金型を、1MPaのプレス圧力、120℃のプレス温度にて押し当ててエンボス加工を実施し、レリーフ構造形成層を形成した。
その後、平均膜厚が70nmとなるように、レリーフ構造形成層の全面にアルミニウムを真空蒸着して積層体を形成した。
次に、積層体の蒸着面に、フッ化マグネシウム(MgF2)を真空蒸着して、エッチングマスク材料層を形成した。
次いで、積層体のエッチングマスク材料層の全面に、アルカリ水溶液に不溶性の黄色染料(オリエント化学工業社製VALIFAST1201)、SiO2フィラー(富士シリシア化学社製サイロホービック100)およびシランカップリング剤バインダー(信越シリコン社製EBM1003)からなるインキを、平均膜厚が1μmとなるようにグラビア印刷して、着色材料層を形成した。
着色材料層を形成した積層体を、質量濃度が2%の水酸化ナトリウム水溶液中に50℃、1分間浸漬して、レリーフ構造形成層の第2領域のみに反射層、エッチングマスク層、着色層をこの順で含む光学素子を製造した。
得られた光学素子の表面と裏面をそれぞれ観察すると、一方の面では、第2領域の絵柄(OVD絵柄)がアルミニウムに由来する銀色を呈し、他方の面では黄色染料を用いた着色層に由来する金色を呈した。また、第1領域の絵柄(ディメタ絵柄)は透明であった。
また、当該光学素子において、第2領域の絵柄(OVD絵柄)および第1領域の絵柄(ディメタ絵柄)は、完全に位置合わせされていた。
以上により、得られた光学素子は、目視による真贋判定が容易であるとともに、高い偽造防止効果を有していることが確認できた。