JP5994598B2 - 回折構造転写箔及びそれを用いた偽造防止媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性、キレ性を同時に有する転写箔形成が可能なUV硬化樹脂組成物を用いて形成した微細凹凸パターンを有する回折格子又はレリーフホログラム等のOVD転写箔と、それによって形成された偽造防止、及び個人認証用途の画像形成体、個人認証媒体、及びその製造方法に関する。
本発明に係る転写箔は、紙幣、パスポートや査証などの冊子、カード及び金券等に正当な所有者のものか否かを判断する偽造防止効果を付与するために設けるものであり、この偽造困難性を高めることを目的とするものである。
複数の微細な凹凸を並べてなる回折格子状の微細凹凸パターンを含むことにより、通常の印刷物とは異なる視覚効果を有する光学物品がエンボスホログラムとして知られている。この光学物品には、例えば、観察条件に応じて変化する像を表示させることや、立体像を表示させることができる。また、微細凹凸パターンが表現する虹色に輝く分光色は、通常の印刷技術では表現することができない。これらは、光学的に可変であるという意味でOVDとも呼ばれる(OVDは、Optical Variable Deviceの略)。微細凹凸パターンを含んだ光学物品は、偽造防止の対策が必要な物品に広く用いられている。
この光学物品では、複数の溝を形成してなるレリーフ型の回折格子を使用することが一般的である。
レリーフ型回折格子の製造では、原版として所望の凹凸構造が形成されている金属版を作成し、この金属版を母型として用いてレリーフ型の回折格子を、樹脂形成物として複製する方法が一般的である。
従来、連続的に樹脂成形物を大量複製するための代表的な手法として、以下のものが知られている。
(1)プレス法
加熱された母型を用いて押圧し、成形物を作製する手法である。しかし、プレス法は熱可塑性樹脂を用いているため、成型物の耐熱性は一般的に低い。また、角のある形状のパターンの場合、丸みを帯びてしまうことが多い。
(2)キャスティング法
溶融軟化した熱可塑性樹脂を、母型の凹凸形成面に塗布または注入し、前記樹脂を固化させて成型物を作製する手法である。しかし、キャスティング法は局所的な温度偏りが存在し、成形品に歪みやカールが起こりやすい。
(3)光硬化性樹脂法
プレス法やキャスティング法のような熱可塑性樹脂ではなく、光や電子線等に代表される電離放射線の照射によって硬化するタイプの樹脂を使用し、成型物を作製する手法である。通常、液状の未硬化樹脂を使用するので母型の細かな形状も再現できる。
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、上記でも紹介したように高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。これらOVDを物品に貼着するための手段として従来からOVDを転写箔構成にして転写形成するといった方法が採られてきた。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成されているレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次積層してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微少な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に加熱、押圧、露光等すると言う周知の方法により大量複製が行われている。
しかし、上述したように、細かな転写箔を作成する際には、光硬化性樹脂法が適していたものの、細かく深い構造を作るためには構造が複雑になるため、表面積が大きくなってしまい成型後の版離れが重くなるという課題がある。
これを解決するために、離型剤の添加で解決すると転写箔の後工程である反射層の密着に影響を与えることとなってしまう。
一方、転写箔は転写時に剥離が軽いことが求められる。特に破れやすい紙などに転写する際は、より一層軽いことが求められている。剥離の軽い箔に、複雑な金型で成型し、版離れの際に大きな力が加わる場合、剥離層から版に転写される不具合が生じる。
つまり、複雑な成型と軽い剥離は、相反するところとなり、複雑な転写箔を成型する際には、軽剥離の性能が犠牲にされてきた。
特開2009−042309
本発明は、上記課題に鑑みてなされた発明であり、複雑な成型物を作成する際に、安定したエンボス加工ができ、なおかつ、剥離が軽い転写箔を提供することを課題とする。より具体的には、樹脂の効果速度差を用いて、成形性と軽剥離を両立することを課題とする。
上記課題に鑑みて、本発明の請求項1の発明は、基材上の片面に少なくとも剥離保護層、UV成型層、光反射層、接着層を設けてなる回折構造転写箔において、前記剥離保護層及び前記UV成型層の重合方式が異なり、UV照射による反応速度が、前記剥離保護層より前記UV成型層の方が速いことを特徴とする回折構造転写箔である。
また、本発明の請求項2の発明は、前記剥離保護層は、開始剤を添加したカチオン重合樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の回折構造転写箔である。
また、本発明の請求項3の発明は、前記UV成型層は、開始剤を添加したラジカル重合樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の回折構造転写箔である。
また、本発明の請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の回折構造転写箔を用いて被転写体に転写されたことを特徴とする偽造防止媒体である。
本発明によれば、剥離保護層及びUV成型層の重合方式が異なり、UV照射による反応速度が、剥離保護層よりUV成型層の方が速いことを利用しているので、複雑な成型物を作成する際に、安定したエンボス加工かでき、なおかつ、剥離が軽い転写箔を提供することが可能となる。ひいては、これにより紙用の高速転写機で高速転写が可能となり、量産性が高い転写が可能となる。
本発明の断面図を表した一例である。 本発明の、製造方法を現した一例である。 本発明の、回折構造転写箔を転写した偽造防止媒体の一例である。
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
回折構造転写箔は、図1に示したように、基材の一方の面に、剥離層、OVD層、光反射層、接着層を順に積層した構成になっている。また、図3はこの回折構造転写箔を被接着体に転写した後の偽造防止媒体を表し、一部または前面に設けている。
本発明の回折構造に用いられる複数の凸部又は凹部の形状としては、テーパ形状を用いることができるが、これに限定されるものではない。テーパ形状としては、例えば、半紡錘形状、円錐及び角錐などの錐体形状、又は切頭円錐及び切頭角錐などの切頭錐体形状を挙げることができる。また、回折構造に形成される複数の凸部又は凹部の側面形状としては、傾斜面のみで構成されていてもよく、階段状であってもよい。
本発明の、回折構造転写箔及び偽造防止媒体の作成方法としては、構造の細かくて深い構造の描画データを作成し、このデータを元にEBレジスト上に描画を行い、このレジストを現像することにより回折構造を作成する。次にスパッタで回折構造の表面に導通をとり、金型を作成する。
一方で、基材上にUVカチオン重合樹脂からなる剥離保護層、UVラジカル重合樹脂からなるUV成型層を塗布し、原版を作成し、この原版にエンボスを行い、さらにエンボス原版に反射層を形成する。そして、前述した反射層に対し接着剤を塗布し、回折構造転写箔を作成する。この回折構造転写箔に転写し、偽造防止媒体を得る。
次に各々の構成について具体的に説明していく。
基材の材料としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチックシート等のプラスチックシートが挙げられる。その厚みとしては、10〜100μm程度が一般的であるが、特にOVD転写箔20の基材は、転写性を向上させるため、薄い方が良く、特に10〜15μm程度であるとより好ましい。
剥離保護層の材料としては、カチオン重合する樹脂から選択される。カチオン重合は,一般的にUVを照射している間のみ重合が進行するラジカル重合と異なり,後硬化性を示す。
UVカチオン樹脂としては、材料がエポキシ化合物,オキセタン化合物,ビニルエーテル化合物などを使用することが可能である。
中でも反応開始が遅くUV成型層のラジカル重合樹脂との硬化速度差が設けやすく、より分子量の高いポリマーが得られるという観点からオキセタン化合物を用いるのが好ましい。
この剥離保護層は、未反応状態ではUV成型層の成型温度付近でタック性(粘着性)を持ち剥離を防ぐことが可能である。また、これはUV照射により反応を開始するが、反応がUV成型層より遅く、版からの離型後に反応が比較的ゆっくり進む。(図2のC以降)そして、反応後はタック性を失い、剥離が軽くなるという性質を有している。
光カチオン重合可能な化合物を使用する場合の光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等を使用することができる。光ラジカル重合と光カチオン重合を併用する、いわゆるハイブリッド型材料の場合、それぞれの重合開始剤を混合して使用することができ、また、一種の開始剤で双方の重合を開始させる機能をもつ芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等を使用することができる。
UV成型層の材料としては、ラジカル重合する以下の樹脂から選択される。ラジカル重合反応する樹脂としては、分子中にアクリロイル基を有するアクリル樹脂であり、エポキシアクリレート系,ウレタンアクリレート系,ポリエステルアクリレート系,ポリオールアクリレート系のオリゴマー、ポリマーと単官能・2官能・あるいは多官能重合性(メタ)アクリル系モノマー、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート,2ーヒドロキシエチルアクリレート,2ーヒドロキシー3ーフェノキシプロピルアクリレート,ポリエチレングリコールジアクリレート,ポリプロピレングリコールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリトリトールトリアクリレート,ペンタエリトリトールテトラアクリレートなどのモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの混合物が使用される。
上記UV成型材料は、上記した剥離保護層の樹脂よりもUV照射後の反応が早く進むことになる。これは、未反応状態では金型への追従性が大きく、高い成型率を示している。一方で、UV照射後は、速やかに反応が進行し、版からの離型前に反応が完了する。(図2−Cまで)そして反応後は熱や圧力に対する形状安定性が高まるという特徴を有している。
UV成型層に添加する光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン、メチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ミヒラーズケトン等を挙げることができる。
光反射層の材料としては、透明被膜もしくは、金属被膜等を用いることができる。また、金属被膜である場合、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、銅等の中から選択される単体又はそれらの混合物、合金等を用いることができる。こちらは、膜厚は50nm〜100nmが好ましい。なお透明材料の場合として使用できる材料の例を以下に挙げる。以下に示す化学式または化合物名の後に続くカッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスとしては、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)、GaO(2)などが挙げられる。有機ポリマーとしては、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)などが挙げられるがこの限りでない。
反射層3は、溶解、腐食、又は変質により反射率、又は透明性に変化を生じさせる事によってパターン形成することを考慮し、前記材料の中から適宜選択すればよい。場合によっては複数の材料を使用しても良い。 溶解により反射率、又は透過率に変化を生じさせる方法としては、公知の金属、及び金属酸化物などをウェットエッチング処理する方法が挙げられる。エッチングに使用する処理剤は、公知の酸やアルカリ、有機溶剤や酸化剤、還元剤などを使用して良い。また、反射層3の素材によっては、ドライエッチング法を利用しても良い。
変質により反射率、又は透過率に変化を生じさせる方法としては、銅を酸化剤により酸化させて酸化第一銅に変化させることや、アルミニウムを酸化剤によって酸化させてベーマイトに変化させることが挙げられるがこの限りでない。
また、溶解特性や変質特性以外にも、屈折率、反射率、透過率などの光学特性や、耐候性、層間密着性などの実用耐久性に基づいて適宜選択され、薄膜の形態で形成される。なお、反射層3は、レリーフ形成層2の平面に対して均一な表面密度で薄膜形成する必要が有ることから、ドライコーティング法が好ましく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜使用することができる。また、膜厚は50nm〜100nmが好ましい。
接着層としては、アクリル樹脂、プロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いる。透明被膜材料や、その他樹脂との密着力、加刷性のあるものであれば、特に限定はしない。また、熱転写の際の箔キレ性も無ければならないので、上記樹脂にシリカ等の無機材料を含めるとなお良い。膜厚も特に限定は無いが、被転写体の表面粗さや染み込みに応じて、0.5μm〜10μm程度であると好ましい。
本実施例においては、実施形態で説明した構成のうち図1の構成を代表例として説明する。
まず、構造の細かくて深い無反射構造の描画データを作成し、このデータを元にEBレジスト上に描画を行い、このレジストを現像することにより回折構造を作成する。次にニッケルスパッタで回折構造の表面に導通をとり、ニッケル電鋳で金型を作成した。
上記金型を利用し、次の手順で複製を行った。まず、PET基材上に、UVカチオン重合樹脂からなる剥離保護層、UV樹脂からなるUV成型層をグラビアコーティング法でそれぞれ1μmの厚さで塗布し、原版を作成した。ここで金型で100℃の熱と1MPaの圧力で前記原版にエンボスを行い、さらにエンボス原版にアルミ蒸着を50nmの厚さで形成した。そして、アクリル系樹脂からなる接着剤をグラビアコーティング法でアルミ蒸着面に2μmの厚さで塗布し、回折構造転写箔を作成した。
この回折構造転写箔に150℃の刻印を10MPaの圧力で光透過性のある被転写用紙に押し付け接着後、基材を剥離し、回折構造転写箔を転写した偽造防止媒体を得た。
本発明によれば、剥離保護層及び前記UV成型層の重合方式が異なり、かつ、UV照射による反応速度が、剥離保護層よりUV成型層の方が速いことを利用しているので、成形性及び剥離性に優れた偽造防止構造体を提供する事が可能である事から、有価証券やブランド品、証明書、個人認証媒体等に利用する事が可能である。
1・・・回折構造転写箔
2・・・基材
3・・・剥離保護層
4・・・UV成型層
5・・・反射層
6・・・接着層
7・・・版
8・・・圧胴
9・・・UVランプ

Claims (4)

  1. 基材上の片面に少なくとも剥離保護層、UV成型層、光反射層、接着層を設けてなる回折構造転写箔において、前記剥離保護層及び前記UV成型層の重合方式が異なり、UV照射による反応速度が、前記剥離保護層より前記UV成型層の方が速いことを特徴とする回折構造転写箔。
  2. 前記剥離保護層は、開始剤を添加したカチオン重合樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の回折構造転写箔。
  3. 前記UV成型層は、開始剤を添加したラジカル重合樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の回折構造転写箔。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の回折構造転写箔を用いて被転写体に転写されたことを特徴とする偽造防止媒体。
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