JP2018036131A - 構造複合体の状態推定方法及びシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】目的とする機能を発揮するために複数の部材から構成されてなる構造複合体を破壊検査して得られる複数の直接パラメータと、構造複合体を非破壊的に測定して得られる複数の間接パラメータとを含むデータベースを用意する。ここで、それぞれの直接パラメータは上記構造複合体の特定の性能を反映する1つの構造要因に対応し、それぞれの間接パラメータは上記各性能を間接的に規定する複数の構造要因に対応しており、これらの直接及び間接パラメータは相互に関連付けられている。対象となる構造複合体について複数の上記間接パラメータを測定し、上記データベースを用いて、測定された複数の間接パラメータを統計的に処理することにより、複数の性能によって示される構造複合体の状態を推定する。
【選択図】図1
Description
ステップS5では、推定の対象となる1つの構造複合体を選択する。続いてステップS6では、データベース化された間接パラメータと同じ非破壊的手段によりステップS5で選択された構造複合体について複数の間接パラメータを測定する。ここで、「複数の間接パラメータ」とは、1つの非破壊的手段により複数の構造複合体を測定したものであっても、複数の非破壊的手段により1又は複数の構造複合体を測定したものであってもよい。
透過型電子顕微鏡(TEM)による負極材料の断面形態観察
TEM観察は、電子線を数百kVに加速して試料に照射し、透過した電子を磁界型レンズで拡大し観察する。鮮明な像を得るためには、試料の膜厚は100nm以下まで薄くしなければならない。その試料作製法には、懸濁法、ウルトラミクロトーム法、イオンミリング法、FIB(集束イオンビーム)法などがある。
特に、大気非暴露で分析を行う場合は、不活性雰囲気のグローブボックスと雰囲気遮断ホルダーを併用した前処理方法が必要である。
TEMを用いた形態観察から、カーボン系負極材料の活物質表面に形成された被膜の形状や膜厚が、また、内部からは層状構造や隙間の様子なども分かる。膜厚の増加や被膜内に空孔が観察される場合には、充放電サイクルによる負極の劣化と直接対応させることができる。
SEM画像の解析より活物質の粒径やその分散状態、断面における活物質の面積率がわかる。活物質の形状や分散状態はリチウムイオンや電子のパスに影響するのでこれら状態は電池性能の理解に役立つ。正極はリチウムイオンや電子の源である活物質の他にこれらの通り道となる導電助剤やバインダなどから構成される。これらの形状や分布が変化することで電子やイオンの伝導パスの変化が起こるため、その状態を知ることで電池性能を推定することができる。また、充放電に伴うリチウムイオンの挿入、脱離により、活物質粒子間に空隙が、活物質粒子内に空隙や割れが生じることがある。その様子を知ることも、活物質の特性を把握して電池性能を推定する上で重要な情報である。
リチウムイオン二次電池の正極表面の電子状態は、1〜10nm程度の検出深さを持つX線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、以下、「XPS」と称することがある。)を用いて分析ができる。正極材の劣化は、活物質自身の結晶構造よりも、電解液に接している活物質表面がダメージを受ける場合が多いといわれている。負極にはSEIと呼ばれる安定被膜が形成されるが、正極には安定な被膜は存在せず、活物質表面が露出している。そのため、正極活物質表面では充電過程のたびに電解液が少しずつ酸化され、活物質表面がダメージを受けるからである。活物質表面はリチウムイオンおよび電子の伝導に直接関わるため、その劣化は電池の容量低下や出力低下の原因となる。XPS測定では、遷移金属の価数や、表面生成物などの状態がわかる。
その場XRDによる正極材料の結晶構造解析
リチウムイオン二次電池では、充放電に伴いリチウムイオンの出入りが生じる。電池設計上、リチウムイオンの脱離・挿入により、電極活物質の結晶構造が大きく変化しないことが求められるが、正極活物質は充放電過程において、リチウムイオンの挿入・脱離に伴い体積の膨張・収縮のみならず結晶構造変化(相変態)を生じやすいことが知られている。そのため充放電に伴う結晶構造変化を詳細にとらえることが重要である。XRDチャートでは、横軸に示す2θ(角度)が結晶の面間隔に対応し、ピーク強度は主に原子による散乱を表している。そのピーク位置は、リチウムイオンの挿入量に応じて変化する格子定数の変化を反映している。ピークの強度も同様にリチウムイオンの挿入量や結晶中で占有する特定サイトの占有率の変化を反映している。ピークの幅は結晶性を反映し、リチウムの挿入脱離によって生じる格子の乱れを反映している。また、リチウムの挿入脱離により積層欠陥が生じる場合は、明瞭ではないが幅広のピークを生じる場合もある。
すべての元素は、特定の波長のX線を吸収する特性を持つ。試料に照射したX線(入射X線)の強度と、試料を透過したX線(透過X線)或いは試料から発生した蛍光X線の比から算出したX線吸収率を入射X線のエネルギ(波長)に対してプロットすると、吸収原子の化学形態を反映したスペクトル(XAFSスペクトル)が得られる。図4は、XAFSスペクトルの一例を示したグラフである。XAFSスペクトルは、XANES(X-ray Absorption Near-Edge Structure:X線吸収端近傍構造)領域とEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure:広域X線吸収微細構造)とからなる。XANES領域を解析することで、その物質の酸化数などの化学状態を知ることができる。一方、EXAFS領域を解析することで、着目した原子の周囲に存在する原子の種類、その原子までの距離、その原子の配位数に関する情報が得られる。正極では、充放電に伴うリチウムイオンや電子の出入りにより、活物質内の遷移金属に状態変化が生じるため、これらのXAFSスペクトルから活物質の電子状態(価数)や結晶構造の変化(対称性、近接原子との原子間距離など)を解析することが可能である。
X線は、電子により散乱されるため、原子番号の順に散乱が大きくなり、一般的に軽元素が検出されにくいという課題がある。これに対し、中性子は原子核により散乱されるため、散乱は原子番号とは関連がなく、リチウムイオン電池に含まれる軽元素に対しても感度が高くなる。このため、活物質中のリチウムの状態解析には有効である。図7に中性子線回折スペクトルの一例を示した。
以下に、データベース構築例を説明する。非破壊検査によって取得したデータは、スペクトルデータ、画像データなどその形状を問わないが、SIFT法、HOG法、SURF法、MC−DCNN法などによりその特徴を抽出する。その特徴を、解体検査により得られる直接パラメータ及び電池状態と関連付け、データベースを構築する。これにより間接パラメータと直接パラメータを関連付け、間接パラメータから、電池の状態を推定できるようになる。多数測定点を統計的に扱うため、複数の性能からなる状態を推定するための間接パラメータの総数が、当該性能を反映する直接パラメータの総数よりも少なくても、同等あるいはそれ以上の精度が得られることが特徴である。
電池の状態と直接パラメータ、及び間接パラメータとを関連付けるデータベースを構築した後、リチウムイオン二次電池の経時変化に対して、多数の間接パラメータを取得し、新たなデータベースを構築することで、電池の寿命を含む経時変化を予測する方法を構築することができる。この工程を、機械学習法を用いて、高精度化することが可能である。経時変化を伴わないデータベースを用いることでも、上記寿命予測を含む経時変化予測は可能であるが、時系列データを加えることで推定の精度を増すことができる。
本発明はまた、上記構造複合体の状態推定方法を実行するための装置又はシステムに関する。図6を参照して、本発明の1つの実施形態に係る状態推定装置は、破壊的検査手段61を用いて得られた直接パラメータをデータベース66に入力する直接パラメータ入力部62と、非破壊的測定手段63を用いて測定された間接パラメータをデータベース66に入力する間接パラメータ入力部64とを備える。これらの直接パラメータと間接パラメータはデータベースにおいて相互に関連付けられている。推定対象となる任意の構造複合体について測定した複数の間接パラメータを入力すると、相関性解析部65はデータベース66を参照して、上記測定された複数の間接パラメータを統計的に処理することにより、複数の性能によって示される構造複合体の状態を推定し、推定状態出力部67より出力する。
0〜500サイクルまで充放電サイクルの異なる複数のリチウムイオン電池(Mn、Co及びNiの三元系正極を有する)について、その場XAFS分析を行って各遷移金属のK端XAFSスペクトルからMn、Co及びNiの価数及び局所構造の変化を示唆するデータを取得した。その一例を以下の表1〜3に示す。その後、これらを解体し、正極材のSEM画像を測定して、活物質の割れや活物質粒子間の空隙、正極の厚さなどの変化を観察した。これらのデータを関連付けてデータベースに保存した。
20 リチウムイオン二次電池
21 正極
22 負極
23 セパレータ
24 リチウムイオン
25 電解液
61 破壊的検査手段
62 直接パラメータ入力部
63 非破壊的測定手段
64 間接パラメータ入力部
65 相関性解析部
66 データベース
67 推定状態出力部
Claims (8)
- 目的とする機能を発揮するために複数の部材から構成されてなる構造複合体の状態を推定する方法であって、
前記構造複合体を破壊検査して得られる複数の直接パラメータと、前記構造複合体を非破壊的に測定して得られる複数の間接パラメータとを含むデータベースであって、前記それぞれの直接パラメータは前記構造複合体の特定の性能を反映する1つの構造要因に対応し、前記それぞれの間接パラメータは前記各性能を間接的に規定する複数の構造要因に対応し、これらの直接及び間接パラメータを相互に関連付けたデータベースを用意し、
対象となる構造複合体について複数の間接パラメータを測定する工程と、
前記データベースを用いて、前記測定された複数の間接パラメータを統計的に処理することにより、複数の性能によって示される前記構造複合体の状態を推定する工程と、
を含むことを特徴とする構造複合体の状態推定方法。 - 前記複数の性能からなる状態を推定するために必要な間接パラメータの総数が、当該状態を反映する直接パラメータの総数よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の構造複合体の状態推定方法。
- 前記1つの非破壊的測定手段により得られる間接パラメータを、複数のサブパラメータに分解し、各サブパラメータと前記直接パラメータとを関連づけることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造複合体の状態推定方法。
- 前記データベースが、1つの構造複合体の稼働中における複数の時点で測定された複数の間接パラメータを含み、前記稼働中に変化する構造複合体の性能と関連する前記サブパラメータを抽出することを特徴とする請求項3に記載の構造複合体の状態推定方法。
- 前記データベースが、稼働時間又は稼働状態の異なる複数の構造複合体について測定された複数の間接パラメータを含み、対象となる任意の構造複合体の現在の状態から将来の状態を予測することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の構造複合体の状態推定方法。
- 前記構造複合体が、2次電池又は蓄電池を含む電気化学的装置であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の構造複合体の状態推定方法。
- 前記破壊検査手段が、走査型若しくは透過型電子顕微鏡による画像解析、透過型電子顕微鏡による構造解析、オングストロームビーム電子線回折、赤外分光測定、核磁気共鳴測定、近赤外分光、紫外蛍光分光、ラマン分光測定、オージェ電子分光、元素分析、熱分析、ガス成分分析、走査型プローブ電子顕微鏡、ナノインデンテーション、DCB(Double cantilever beam)、X線散乱法及びX線光電子分光測定からなる群より選択される1つ以上の手段を含み、前記非破壊的測定手段が、ラマン分光測定、X線回折測定、X線小角散乱測定、中性子線回折測定、中性子小角散乱測定、及びX線吸収微細構造測定からなる群より選択される1つ以上の手段を含む請求項1〜6の何れか一項に記載の構造複合体の状態推定方法。
- 目的とする機能を発揮するために複数の部材から構成されてなる構造複合体を破壊検査して得られる複数の直接パラメータと、前記構造複合体を非破壊的に測定して得られる複数の間接パラメータとを含むデータベースであって、前記それぞれの直接パラメータは前記構造複合体の特定の性能を反映する1つの構造要因に対応し、前記それぞれの間接パラメータは前記各性能を間接的に規定する複数の構造要因に対応し、これらの直接及び間接パラメータを相互に関連付けたデータベースと、
対象となる構造複合体について複数の間接パラメータを測定する非破壊的測定手段と、
前記データベースを用いて前記測定された複数の間接パラメータを統計的に処理することにより、複数の性能によって示される前記構造複合体の状態を推定する相関性解析部と、
を含むことを特徴とする構造複合体の状態推定システム。
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