JP2018036080A - 自動分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】多様な粘性を有する試薬を使用する自動分析装置において、洗浄効率を高めることでキャリーオーバを回避する。【解決手段】試料を反応容器に分注する試料分注機構と、試薬を反応容器に分注する試薬分注機構と、試薬分注機構を洗浄する洗浄水を供給する洗浄水供給部と、洗浄水供給部から供給され、試薬分注機構に保持される洗浄水の温度を測定する温度測定部と、当該洗浄水供給部から供給された洗浄水を昇温する昇温部と、を備え、試薬の粘性に関する情報を予め記憶し、試薬分注機構が試薬を分注したのちに、当該記憶された情報に基づいて、試薬の粘性が所定の値以下となるために必要な目標温度を求め、当該求めた目標温度と、温度測定部によって測定された測定温度とを比較判定し、当該判定の結果に基づいて、洗浄水供給部から供給された洗浄水の温度を調整するように昇温部の動作を制御する。【選択図】図3

Description

本発明は、血液等の生体サンプルに含まれる成分を自動的に分析する自動分析装置に係り、特に、多様な粘性を有する試薬を分析に用いる場合においても効率良く洗浄を実行する装置に関する。
血液(血清や血漿など)、尿、髄液など、複数種別の生体試料を測定する自動分析装置では、試料間のキャリーオーバ、及び、試薬間のキャリーオーバを防止するための手段として、試料を分注するための分注ノズルや、試薬を分注するための分注ノズルに対し、分注後に水や洗剤等の洗浄液を用いて外壁や内壁の洗浄を行うことが一般的である。
一方で、自動分析装置においては、分析処理能力の向上がますます求められており、分析に要するトータルの時間を短縮するために、試料や試薬の分注動作だけでなく、これらの洗浄動作も迅速に行う必要がある。
洗浄時間を短縮するための技術に関し、特許文献1には、試料や試薬の分注ノズルの近傍、及びこれらの分注ノズルに通じる配管流路内の少なくとも一部に高温加熱手段を設けることで洗浄液を加熱、沸騰させ、強力に洗浄する構成について説明されている。
また、特許文献2には、クロスコンタミネーションを防ぐための技術に関し、反応容器内の混合液を予め定めた設定温度に調整し、測定後、この混合液の測定温度よりも高温の洗浄温度において、反応容器や試料、試薬の分注プローブを洗浄することが記載されている。ここで、本構成においては混合液及び洗浄液の温度をそれぞれ測定温度、洗浄温度に設定する共通の恒温部を備えており、恒温部は、水等の熱媒体を冷却する冷却器、熱媒体を加熱する加熱器、及び熱媒体を循環させるための循環ポンプから構成されることが説明されている。
特開平11−94843号公報 特開2007−047027号公報
近年、自動分析装置では、分析項目の多様化に伴い、1台の装置で様々な物性を有する試料や試薬を扱うことが必要とされている。
ここで、物性のうち、液体の粘性は特に洗浄のしやすさに影響し、粘度の高い試料や試薬を用いる場合には、キャリーオーバの可能性が高くなるため、より効果的に洗浄を行うことが重要となる。一方で、このような試料や試薬を用いない分析の場合には、キャリーオーバの可能性は比較的低いので、上述した分析処理能力の向上の観点から、洗浄時間を可能な限り短縮化することが望ましい。特に、血液の凝固能を評価する血液凝固分析においては、粘性の異なる種々の試薬を用いることが多い。
特許文献1に記載された手法によれば、洗浄液を高温に加熱することで洗浄能力を高めることができるが、本構成では、配管流路内に専用のガスバーナーや赤外線ヒータ、電磁誘導加熱装置等の熱源を有する高温加熱手段を設けているため配管の構成が複雑化する。さらに、このような高温加熱手段により常に洗浄液を沸騰するまで加熱しているため、高温水の生成及び維持のための時間及びコストがかかる。
また、特許文献2においても、上述の通り、恒温部には冷却フィン等の冷却器やヒータ等の加熱器、ポンプといった専用の構成を備える必要があり、装置の大型化、複雑化が避けられない。また、装置では常に分析と洗浄が繰り返し行われているため、熱媒体の加熱、冷却を繰り返す必要があり、温度調整には時間とコストを要する。
本発明では、上記課題に鑑み、予め記憶した試薬の粘性情報と昇温条件との関係に基づいて、分析のための試薬昇温機構や恒温槽を利用して、洗浄液を昇温して洗浄を実行することにより、装置を大型化、複雑化することなくキャリーオーバを回避し、高精度かつ高速な分析に寄与することに関する。
上記課題を解決するための一態様として、試料と試薬とを混合し反応させるための反応容器が配置される反応容器保持部と、試料を反応容器に分注する試料分注機構と、試薬を反応容器に分注する試薬分注機構と、当該反応容器保持部に保持された反応容器内に分注された試料と試薬との混合液に光を照射する光源と、当該照射された光を検出する検出部と、前記試薬分注機構を洗浄する洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記洗浄水供給部から供給され、前記試薬分注機構に保持される洗浄水の温度を測定する温度測定部と、当該洗浄水供給部から供給された洗浄水を昇温する昇温部と、当該検出の結果に基づいて、試料を分析する制御部と、を備え、前記試薬の粘性に関する情報を予め記憶し、前記試薬分注機構が試薬を分注したのちに、当該記憶された情報に基づいて、前記試薬の粘性が所定の値以下となるために必要な目標温度を求め、当該求めた目標温度と、前記温度測定部によって測定された測定温度とを比較判定し、当該判定の結果に基づいて、前記洗浄水供給部から供給された洗浄水の温度を調整するように前記昇温部の動作を制御する装置、及び当該装置を用いた方法を提供する。
上記一態様によれば、予め記憶された粘性と洗浄条件との関係に基づいて洗浄を実施するため、多様な粘性を有する試薬に対しても最適な洗浄を行うことができ、高精度かつ高速な分析に寄与することができる。さらに、分析のための試薬昇温機構や恒温槽を利用して、洗浄の際の洗浄水を昇温しているため、装置を大型化、複雑化することなくキャリーオーバを回避することができる。
本実施の形態に係る自動分析システムの基本構成を示す図。 本実施の形態に係る自動分析システムにおける制御ブロック図を示す図。 本実施の形態に係る洗浄動作を含む分析処理を示すフローチャート。 本実施の形態に係る分析時における試薬分注機構の洗浄動作のタイミングを示すタイミングチャート。 本実施の形態に係る分注機構の基本構成を示す図。 本実施の形態に係る洗浄動作の条件を設定する条件設定画面(GUI)を示す図。 本実施の形態に係る検出ポートの基本構成を示す図。 本実施の形態(実施例2)に係る高温水供給のその他の例を示す図。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、全体を通して、各図における同一の機能を有する各構成部分については原則として同一の符号を付すようにし、説明を省略することがある。
〈装置の全体構成〉
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置のシステムの基本構成を示す図である。本図に示すように、自動分析システム1は、主として、血液凝固時間等を測定する自動分析装置2、自動分析装置2を制御する上位の制御部である制御装置3、制御装置3に接続された下位の制御部である反応容器移送機構制御部4、検体分注制御部5、試薬分注制御部6、及びA/D変換器7より構成される。ここで、反応容器移送機構制御部4、検体分注制御部5、試薬分注制御部6は、制御装置3の指示に基づいて、反応容器移送機構25、検体分注機構28、試薬分注機構26の動作をそれぞれ制御するように構成されている。
自動分析装置2は、主として、反応容器22を設置することができる複数の反応容器設置部20a(図7にて後述する)と、それぞれの反応容器設置部20aに対応して設けられた検出部21を有する検出ポート20、検出ポート20に供給するための複数の反応容器22を収容する反応容器供給部23、反応容器供給部23から検出ポート20へ反応容器22を移送する反応容器移送機構25、測定後の反応容器22を廃棄するための反応容器廃棄部27、複数の検体容器41を収容する検体ディスク40、検体ディスクに収容された検体容器41から反応容器22へ検体を分注する検体分注機構28、複数の試薬容器43を収容する試薬ディスク42、及び試薬ディスク42に収容された試薬容器43から反応容器22に試薬を分注するための試薬昇温機能付き試薬分注機構26を備える。
ここで、本実施の形態においては、反応容器22として、ディスポーザブル反応容器を用いることにより、検体間でのコンタミを防止している。特に、検体に対する分析項目として、血液凝固時間測定が含まれる場合では、反応容器22内にフィブリンによる血餅の固化が生じるため、反応容器22をディスポーザブル反応容器とすることが望ましい。なお、図1では検出ポート20に設置される反応容器22の数を一例として5個の場合を示しているが、これに限られるものではなく、検出ポート20への反応容器22の配置数を所望の個数に増減することもできる。また、図1では、検出ポート20は、複数の反応容器22を1ライン上に配置する構成を示すが、これに限られるものではなく、円環状に複数の反応容器22を配するディスク状の構成とすることもできる。
ここで、図7は、本実施の形態に係る検出ポートの基本構成を示す図である。(a)は上面断面図、(b)は(a)に示すX−X’面を正面とした場合の断面図である。検出ポート20には、反応容器22が設置される反応容器設置部20a、反応容器設置部20aに設置された反応容器22に光を照射する光源1001、光源1001から照射された光1002の散乱光1003を検出する検出部21が備えられる。光源1001としては、例えば、所望の波長の照射光を反応容器22に照射するLEDなどがある。ここで、本図においては検出部21が散乱光を検出する態様について説明したが、他の態様、例えば透過光を検出する態様にも適用可能である。また、光源1001と検出部21の配置構成は上述の例に限られず、例えば、光源1001を反応容器22の底面側から照射し、側面に検出部21を配置して光を検出する等、その他の構成も適用することができる。
図1に戻り、次に、自動分析装置2の動作について説明する。検出ポート20に測定可能な空ポートが存在すると、反応容器移送機構25は、反応容器移送機構制御部4からの指令に応じて、未使用の複数の反応容器22を収容する反応容器供給部23上を2次元的に移動する。反応容器移送機構25は、所望の未使用の反応容器22の直上に到達すると、一旦停止し、続いて当該反応容器22を把持するために下方へと下降する(図1において奥行方向へ移動)。未使用の反応容器22を把持した後、反応容器移送機構25は、上昇し再び2次元的に移動して把持した反応容器22を検体分注ポジション24に設置する。その後、反応容器移送機構24は、所定の待機位置へと戻る。なお、図1では、反応容器移送機構25がロボットアームで構成される場合を示すが、これは、反応容器供給部23が複数の反応容器22をX,Y方向に2次元配列し収容する構成であることによる。従って、この構成に代えて、円環状に未使用の複数の反応容器22を収容する反応容器供給部23を用いる場合には、後述する検体分注機構28と同様に円弧状の軌道に沿って回動するよう反応容器移送機構25を構成しても良い。
検体分注ポジション24に反応容器22が設置されると、検体分注機構28は、検体ディスク40に収容される複数の検体容器41の中から、測定対象となる検体を収容する検体容器41の直上へ、検体分注制御部5の指令に応じて、図1の破線円弧に示される軌道に沿って回動する。その後、検体分注機構28は、所定量の検体を吸引し、検体分注ポジション24に設置された反応容器22の直上へと回動し、当該反応容器22内へ所定量の検体を吐出する。
検体が分注された反応容器22は、反応容器移送機構25により検出部21を有する検出ポート20のうち、空いている反応容器設置部20aへ移送される。検出ポート20は、図示しない昇温機構を備えており、検出ポート20に移送された反応容器22内の検体は37℃まで昇温される。また、試薬分注機構26は、試薬分注制御部6の指令に応じて、上記検出ポート20へ移送された検体に対する分析項目に応じた試薬を収容する試薬容器42の直上へと移動する。ここで、試薬分注機構26は、図5にて後述する試薬昇温機能を備えており、試薬容器42より所定量の試薬を吸引した後、試薬を37℃にプリヒート(昇温)する。
試薬分注機構26により、吸引され、37℃にプリヒートされた試薬は、検出ポート20に移送され、37℃まで昇温された検体を収容する反応容器22へ吐出される。このとき、試薬の吐出の勢い、すなわち、試薬分注機構26による試薬吐出圧により、反応容器22内の検体と試薬は攪拌され混合される。
ここで、例えば、反応容器22内で試薬と混合された検体に対する分析項目が、血液凝固時間測定である場合、上述した光源1001と検出部21により血液凝固時間測定が開始される。
検出部21により測定された散乱光は、A/D変換器7によってデジタル信号に変換され、測定値として制御装置3へ送信される。制御装置3では、測定値に基づいて演算部52によって血液凝固時間を求め、記憶部51に記憶する。
上記の演算により、分析が依頼された検体についての血液凝固時間測定が完了すると、反応容器移送制御部4の指令により、反応容器移送機構25は、待機位置から、検出ポート20中の血液凝固時間測定が完了した反応容器22の直上へと移動する。その後、反応容器移送機構25は、測定完了後の反応容器22を把持し、反応容器廃棄部27へと移動し、当該反応容器22を廃棄する。測定完了後の反応容器22が廃棄されると、検出ポート20には空きの反応容器設置部20aが確保されるため、この空いている反応容器設置部20aを用いて次の検体に対する分析が実行される。
操作部50は、主としてディスプレイ等の表示部53、キーボードやマウス等の入力部54、メモリ55を備えるパーソナルコンピュータ等から構成されている。
ここで、試薬の粘性に関する情報の取得方法について説明する。試薬の粘性に関する情報は、装置の記憶部51やメモリ55に予め記憶・登録される。このとき、既に記憶・登録されている情報以外に、新規の試薬の追加や試薬内容の変更等に伴い、新たに取り込む必要がある情報については、CDやUSB等の記憶媒体から読み取る、あるいはオンライン上のデータベースから検索して取り込むことで、記憶部51あるいはメモリ55に新規登録、追加登録することができる。また、操作部50を介して分析条件の設定、被検体情報の入力、測定項目の選択、キャリブレーションの設定といった種々の操作が可能である。
図2は、本実施の形態に係る自動分析システムにおける制御ブロック図を示す。
制御装置3は、主として記憶部51と演算部52を備えている。操作部50は記憶部51やメモリ55にある分析および登録情報を読み出したり、新たな情報を書き込んだり編集することができる。また、操作部50を介して演算部52に分析開始の指示をすることにより、分析動作を開始することができる。演算部52は操作部50から指示を受け取ると、記憶部51に記憶された情報を読み取り、これらの情報に基づいて分析部を構成する各ユニットを制御する。また、自動分析システム1の一連の分析動作の完了後に測定データを演算し(反応過程グラフ作成、血液凝固時間の取得、標準偏差、平均値等の計算)、記憶部51に保存する。ここで、演算部52から自動分析システム1に各機構を制御するための指示を出し、かつ、各機構の制御の状態を示す信号を受信することでフィードバックも行っている。
試薬分注制御部6は、試薬分注機構26における、分注ノズルで吸引した試薬を昇温するための昇温部56、分注ノズルで吸引した試薬の温度を測定する温度測定部57、分注ノズルへシステム水を供給して分注ノズル内を洗浄する内洗機構58で構成される。
A/D変換器7は温度測定部57で取得したアナログ値を演算部52へ伝達するためにデジタル値へ変換している。
なお、本図では、本実施の形態に係る洗浄動作に関係する制御ブロック図について図示して説明したが、当然のことながら自動分析システム全体としては本図に示さないその他の機構の動作に関する制御ブロックを有している。
〈昇温部を備えた分注機構の基本構成〉
ここで、図5は本実施の形態に係る昇温部を備えた分注機構の基本構成を示す。なお、ここでは、図1に示した試薬分注機構26に適用する場合について説明するが、これに限られるものではなく、検体分注機構28にも同様に適用することができる。本図に示すように、試薬分注機構26は、主として、試薬の吸引、吐出を行う分注ノズル501、本図には図示しない内洗機構58、内洗機構58により供給される洗浄水を昇温する昇温部56、内洗機構58と分注ノズル501とを接続する流路502から構成される。内洗機構58は、流路502を介して分注ノズル501に洗浄水を供給する、例えばシリンジ機構等から構成される洗浄水供給部として機能する。ここで、試薬分注機構26の昇温部56は図示しない電源に接続されており、電流、電圧等が供給されることにより熱を生じて温度が上昇する。
図5(a)では、昇温部56を流路502上に設けた構成を示し、図5(b)では、昇温部56を分注ノズル501に設けた構成を示している。ここで、前者の構成によれば、分注ノズル501は交換を要する部品であることから、交換時の部品の単価のコストを抑えることができる。また、後者の構成によれば、昇温部56は、分注ノズル501で吸引した試薬を昇温する機構としても適用できるほか、昇温部56の劣化時に、分注ノズル501自体の交換をも要する前者と比較して、容易に交換できるという利点がある。
〈洗浄動作を含む分析処理の基本フロー〉
次に、図3を用いて本実施の形態に係る洗浄動作のフローを説明する。まず、装置を起動し、スタンバイ状態(S301)としたのちに分析を開始する(S302)。分析開始の直後に、制御部3は、依頼・登録内容を確認するに際し、予め取得され、装置内に記憶されている試薬の粘性情報があるかどうかについても確認する(S303)。さらに本ステップにおいて、試薬の粘性情報が存在する場合であっても、この情報が最新版の状態であるかどうかを判断するステップを実行することもできる。ステップ303における確認の結果、試薬粘性情報が取得されていなければ、ステップ304にて試薬粘性情報未登録としてアラームを付加し(S304)、ステップ301のスタンバイ状態へ移行する。スタンバイ状態において、ユーザは、図6にて後述する画面において、試薬の粘性情報を取得し、登録するか、あるいは通常の洗浄モードを選択することができる。また、一旦取得・登録された試薬の粘性情報は、自動的に装置内に記憶され、次回以降、同様の試薬を分注した場合の洗浄の際に読み出すことができる。
一方、ステップ303における確認の結果、試薬粘性情報が取得されている場合には、試薬の吸引、吐出を実行したのちに、分注ノズル501に洗浄用のシステム水を供給して分注ノズル501内を満たす(S305)。
ここで、ステップ306では、取得された試薬粘性情報に基づいて、試薬を通常の洗浄時間と同等の水量で洗浄可能な粘度(例えば、粘度η=1程度)とするために必要な温度を目標温度TAとして演算部52により求める(S306)。また、このときにステップ305にて分注ノズル501内に満たされたシステム水(内洗水)の実際の温度TBを温度測定部57により測定する(S307)。温度測定は、例えば温度変化を電気抵抗の大きさとして検知することができるセンサであるサーミスタを分注ノズル501内に内蔵すること等によって行われる。
ステップ308では、目標温度TAと実際の温度TBとの比較を行う(S308)。比較の結果、試薬の粘度を1とするのに必要な目標温度TAが内洗水の実際の温度TBよりも高い場合には昇温部56をONにして分注ノズル501内の内洗水を昇温し(S309)、ステップ308に戻る。
一方、それ以外の場合、すなわち目標温度TAが実際の温度TBと同じもしくはこれよりも低い場合には昇温部56をOFFにして昇温を停止し(S310)、内洗水による分注ノズル501の内側の洗浄を行う(S311)。その後、外洗水により分注ノズル501の外側の洗浄を行う(S312)。ここで、ステップ311における内側の洗浄、ステップ312における外側の洗浄の順序に関して、本フローでは前者を先に実行する例について説明したが、後者を先に実行するように順序を入れ替えてもよいし、また、両者を同時に実施するようにしてもよい。
分注ノズル501の外側の洗浄後、ステップ313にて登録されている検体全てに対しての分注が完了したかどうかを判定し(S313)、完了していない場合にはステップ305に戻って次の検体に対する試料の分注を行う。登録されている全ての検体に対して分注が完了している場合には、測定結果を出力し(S314)、分析を終了する。
〈目標温度の求め方〉
上述の洗浄動作のフローにおける目標温度の算出方法について説明する。本実施の形態では、目標温度を求めるためにアンドラーデの粘度式を用いる場合について述べる。アンドラーデの粘度式は、以下の数式1のように示される。
Figure 2018036080
A:定数
E:活性化エネルギー
R:気体定数
η:粘度[mPa・s]
T:絶対温度[K]
特定試薬の定数AとE/Rと絶対温度の値は実験値またはメーカ値により定まる(このパラメータは、装置に内部データとして予め記憶されている、または新たに登録する必要がある場合には上述の通りUSBやCD等の記憶媒体、あるいはオンライン上のデータベースから取得することができ、記憶部51あるいはメモリ55に試薬の粘性情報として登録される)。
E/Rは温度の逆数と粘度の結果をグラフにし、プロットした値を直線状に結んだ線の傾きである(その際、ln(A)が切片となる)。
Figure 2018036080
試薬分注機構26を内洗水で満たしている状態で実際の温度TBを測定し、絶対温度Tのパラメータとして記憶する(この時の絶対温度をTBとする)。プロットされたグラフまたは数式2に基づき、絶対温度Tから粘度ηを算出することができる。
目標温度を求める場合には、同式を用いて、粘度η=1(常温水で洗浄可能な粘度の値を1と設定した場合)を代入することで絶対温度Tを求める(この時の絶対温度をTAとする)。この結果、上述の通り、絶対温度TAがTBより高い場合は昇温部56をONにして動作させ、反対にTAがTBより低いまたは同じ値の場合には、昇温部56をOFFにして停止する。
〈試薬A、Bを用いた洗浄動作〉
ここでは、より具体的な洗浄動作のフローについて試薬A、Bを用いた場合の例を図3のフローチャートに対応付けて説明する。ここでは、試薬Aは内洗水の昇温が必要な場合、試薬Bは内洗水の昇温が不要な場合とする。また、図4は、本実施の形態に係る分析時における試薬A、Bについての試薬分注機構の洗浄動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
〈試薬A(昇温部による内洗水の昇温が必要な場合)の洗浄動作〉
本例では、ステップ303にて内部データとして試薬A、Bの粘性情報を予め取得している状態である場合について説明するので、ステップ305に進み、分析開始後、試料分注を実施する。その後、試薬Aを分注(吸引および吐出)した後に、試薬分注機構26の分注ノズル501内を内洗水で満たす。次に、ステップ307で実際の内洗水の温度TBを測定した結果、TBは20℃であったとする。
ステップ306にて、試薬Aの粘度が温度20℃の条件にて1.61mPa・sであるとした場合、試薬Aを通常の水量および洗浄時間で充分に洗浄するには、この粘性情報から上述の数式2により計算される目標温度TAは39℃である(ステップ306)ので、この温度まで内洗水を昇温してから洗浄しなければならない。そのため、目標温度TAを39℃と設定してステップ309にて昇温部56をONにし、+19℃昇温するように内洗水を加熱する。
次に、目標温度TAである39℃を超えたときに、ステップ310にて昇温部56をOFFとしてステップ311にて内洗水を吐出し、試薬分注機構26の分注ノズル501内を洗浄する。その後にステップ312にて外洗水でノズルの外側を洗浄する。なお、本形態では外洗水の水温はコントロールしていないが、同様に、外洗水の温度を調整した上で外洗を実行するように構成することで、より洗浄効果を高めることもできる。粘性の高い試薬を使用した場合、分注ノズル501の外側にも試薬が付着することがあり、同様の温度調整を行うことで粘度を弱めた状態で外洗動作を実行することができるためである。
〈試薬B(昇温部による加熱が不要な場合)の洗浄動作〉
試薬Aの洗浄後、ステップ305に戻り引き続き試薬Bを吸引および吐出後、同様に分注ノズル501内を内洗水で満たす。ステップ307にて、分析後の分注ノズル501内の内洗水の実際の温度TBは、試薬Aの洗浄前と同様に20℃であったとすると、試薬Bの粘度が温度20℃の条件にて0.92mPa・sであるとした場合、この粘性情報からステップ306にて上述の数式2により求められる目標温度TAは17℃である。よって、TBは既に目標温度TA以上の温度であるためステップ310にて昇温部56をOFFとして停止する。
続いて、ステップ311にて昇温部56が停止した状態で内洗水を吐出し、分注ノズル501の内側を洗浄し、その後にステップ312にて外洗水で分注ノズル501の外側を洗浄する。
〈洗浄設定画面〉
図6は、本実施の形態に係る洗浄動作の条件を設定する条件設定画面(GUI)である。(a)に示すように、分析設定画面600には各種設定を行うためのボタンが含まれており、ユーザにより洗浄条件ボタン601が選択されると、(b)の洗浄条件設定画面602に遷移し、上述した試薬の粘性に応じた温度調整を実行する高粘度試薬洗浄モード603、あるいはこのような洗浄動作を行わない通常洗浄モード604を選択することができる。また、新たに試薬の粘性情報を取得し、登録する必要がある場合には、ユーザにより(a)の分析設定画面600にて試薬情報取得ボタン605が選択されると、(c)の試薬情報取得設定画面606に遷移し、上述の通りCDやUSB、あるいはオンライン上のデータベース等のツールを選択し、実行ボタン607を押すと、選択されたツールを介して試薬の粘性を含む情報を取り込み、登録することができる。ここで、CDまたはUSBが選択される場合には、実行前に予め装置にこれらの媒体をセットする必要がある。なお、試薬情報取得設定画面606はポップアップ表示とし、試薬情報の取得、登録が完了すると自動的にクローズするように構成することもできる。
本実施の形態では、生化学分析部、血液凝固分析部を備えた複合型の自動分析装置において、分注ノズル501内の内洗水として、反応ディスクに収容された反応容器を恒温するための恒温水を利用する構成について説明する。
図8は、本実施の形態に係る高温水供給の例を示す。本図においては、生化学分析部のうち、恒温槽を備える反応ディスクのみを示し、その他の生化学分析部の構成については省略する。本図に示すように、通常動作時には常温水を供給する流路を使用し、洗浄動作時には、給水部806から給水され、反応ディスクの恒温槽805にて恒温されている恒温水を、上述の方法で求めた目標温度TAに到達するまで昇温部804により加熱したのちに、分注ノズル501に供給することで内側の洗浄を行うことができる。ここで、反応ディスク(恒温槽)805には、生化学分析に用いられる図示しない反応セル(第2の反応容器)、及び光源と検出部からなる光度計をその円周上に備えている。本態様によれば、恒温槽805において約37℃にあたためられた恒温水を利用するため、目標温度までに要する昇温時間を短縮することができ、より洗浄効率を高めることができる。また、恒温水に界面活性剤等の洗剤が含まれている場合には、さらに洗浄効果の向上が期待できる。
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1・・・自動分析システム
2・・・自動分析装置
3・・・制御装置
4・・・反応容器移送機構制御部
5・・・検体分注制御部
6・・・試薬分注制御部
7・・・A/D変換器
20・・・検出ポート
20a・・・反応容器設置部(反応容器保持部)
21・・・検出部
22・・・反応容器
23・・・反応容器供給部
24・・・凝固時間検体分注ポジション
25・・・反応容器移送機構
26・・・試薬分注機構
27・・・反応容器廃棄部
28・・・検体分注機構
40・・・検体ディスク
41・・・検体容器
42・・・試薬ディスク
43・・・試薬容器
50・・・操作部
51・・・記憶部
52・・・演算部
53・・・表示部
54・・・入力部
55・・・メモリ
56・・・昇温部(ヒータ)
57・・・温度測定部
58・・・内洗機構(洗浄水供給部)
501・・・分注ノズル
502・・・流路
600・・・分析設定画面
601・・・洗浄条件ボタン
602・・・洗浄条件設定画面
603・・・高粘度試薬洗浄モード
604・・・通常洗浄モード
605・・・試薬情報取得ボタン
606・・・試薬情報取得設定画面
607・・・実行ボタン
801・・・三方電磁弁
802・・・保温タンク
803・・・電磁弁
804・・・昇温部
805・・・反応ディスク(恒温槽)
806・・・給水部
1001・・・光源
1002・・・照射光
1003・・・散乱光

Claims (17)

  1. 試料と試薬とを混合し反応させるための反応容器が配置される反応容器保持部と、
    試料を反応容器に分注する試料分注機構と、
    試薬を反応容器に分注する試薬分注機構と、
    当該反応容器保持部に保持された反応容器内に分注された試料と試薬との混合液に光を照射する光源と、当該照射された光を検出する検出部と、
    前記試薬分注機構を洗浄する洗浄水を供給する洗浄水供給部と、
    前記洗浄水供給部から供給され、前記試薬分注機構に保持される洗浄水の温度を測定する温度測定部と、
    当該洗浄水供給部から供給された洗浄水を昇温する昇温部と、
    当該検出の結果に基づいて、試料を分析する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を予め記憶する記憶部と、
    前記試薬分注機構が試薬を分注したのちに、当該記憶された情報に基づいて、前記試薬の粘性が所定の値以下となるために必要な目標温度を求め、当該求めた目標温度と、前記温度測定部によって測定された測定温度とを比較判定する演算部と、を有し、
    当該判定の結果に基づいて、前記洗浄水供給部から供給された洗浄水の温度を調整するように前記昇温部の動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
  2. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記制御部は、
    当該判定の結果、前記目標温度が、前記測定温度よりも高い場合には、前記洗浄水供給部から供給された洗浄水の温度を上昇させるように前記昇温部の動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
  3. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記制御部は、
    当該判定の結果、前記目標温度が、前記測定温度以下である場合には、前記試薬分注機構に保持された洗浄水を吐出することで洗浄することを特徴とする自動分析装置。
  4. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を、外部からの記録媒体によって取得し、前記記憶部に記憶することを特徴とする自動分析装置。
  5. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記制御部は、
    前記試薬分注機構による試薬の分注前に、前記記憶部に前記試薬の粘性に関する情報が予め記憶されているかどうかを判定し、当該判定の結果、前記試薬の粘性に関する情報が記憶されていない場合には、アラームを付与することを特徴とする自動分析装置。
  6. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記試薬分注機構は、前記洗浄水を保持する分注ノズルを有し、
    前記昇温部は、前記分注ノズルに接続されていることを特徴とする自動分析装置。
  7. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記試薬分注機構は、前記洗浄水を保持する分注ノズルと、前記洗浄水供給部と前記分注ノズルとの間に設けられた流路を有し、
    前記昇温部は、前記流路上に形成されていることを特徴とする自動分析装置。
  8. 請求項1に記載された自動分析装置であって、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を、オンライン上のデータベースから取り込み、前記記憶部に記憶することを特徴とする自動分析装置。
  9. 試料と試薬とを混合し反応させるための第1の反応容器が配置される反応容器保持部と、
    試薬を第1の反応容器に分注する試薬分注機構と、
    当該反応容器保持部に保持された第1の反応容器内の試料と試薬との混合液に光を照射する光源と、当該照射された光を検出する検出部と、
    当該検出の結果に基づいて、試料を分析する制御部と、
    試料と試薬とを混合し反応させるための第2の反応容器が円周状に配置される、回転可能な反応ディスクと、当該反応ディスクに配置される第2の反応容器内の試料と試薬との混合液の温度を保つための恒温水を保持する恒温槽と、
    前記試薬分注機構に供給される洗浄水の温度を測定する温度測定部と、
    前記試薬分注機構に供給される洗浄水を昇温する昇温部と、を備え、
    前記試薬分注機構と、前記恒温槽とは、流路を介して接続され、
    前記昇温部は、当該試薬分注機構と恒温槽とを接続する流路上に設けられ、
    前記恒温槽は、前記流路を介して前記試薬分注機構を洗浄するための洗浄水として前記恒温水を前記試薬分注機構に供給し、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を予め記憶する記憶部と、
    前記試薬分注機構が試薬を分注したのちに、当該記憶された情報に基づいて、前記試薬の粘性が所定の値以下となるために必要な目標温度を求め、当該求めた目標温度と、前記温度測定部によって測定された測定温度とを比較判定する演算部と、を有し、
    当該判定の結果に基づいて、前記洗浄水供給部から供給された洗浄水の温度を調整するように前記昇温部の動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
  10. 試料と試薬とを混合し反応させるための反応容器が配置される反応容器保持部と、
    試料を反応容器に分注する試料分注機構と、
    試薬を反応容器に分注する試薬分注機構と、
    当該反応容器保持部に保持された反応容器内の試料と試薬との混合液に光を照射する光源と、当該照射された光を検出する検出部と、
    前記試薬分注機構を洗浄する洗浄水を供給する洗浄水供給部と、
    前記洗浄水供給部から供給され、前記試薬分注機構に保持される洗浄水の温度を測定する温度測定部と、
    当該洗浄水供給部から供給される洗浄水を昇温する昇温部と、
    当該検出の結果に基づいて、試料を分析する制御部と、を備えた自動分析装置における前記試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を予め記憶し、
    前記試薬分注機構が試薬を分注したのちに、当該記憶された情報に基づいて、前記試薬の粘性が所定の値以下となるために必要な目標温度を求め、
    当該求めた目標温度と、前記温度測定部によって測定された測定温度とを比較判定し、
    当該判定の結果に基づいて、前記洗浄水供給部から供給された洗浄水の温度を調整するように前記昇温部の動作を制御することを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  11. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記制御部は、
    当該判定の結果、前記目標温度が、前記測定温度よりも高い場合には、前記試薬分注機構に保持される洗浄水の温度を上昇させるように前記昇温部の動作を制御することを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  12. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記制御部は、
    当該判定の結果、前記目標温度が、前記測定温度以下である場合には、前記試薬分注機構に保持された洗浄水を吐出することで洗浄することを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  13. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を、外部からの記録媒体によって取得し、記憶することを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  14. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記制御部は、
    前記試薬分注機構による試薬の分注前に、前記試薬の粘性に関する情報が予め記憶されているかどうかを判定し、当該判定の結果、前記試薬の粘性に関する情報が記憶されていない場合には、アラームを付与することを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  15. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記試薬分注機構は、前記洗浄水を保持する分注ノズルを有し、
    前記昇温部は、前記分注ノズルに接続されていることを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  16. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記試薬分注機構は、前記洗浄水を保持する分注ノズルと、前記洗浄水供給部と前記分注ノズルとの間に設けられた流路を有し、
    前記昇温部は、前記流路上に形成されていることを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
  17. 請求項10に記載された試薬分注機構の洗浄方法であって、
    前記制御部は、
    前記試薬の粘性に関する情報を、オンライン上のデータベースから取り込み、記憶することを特徴とする試薬分注機構の洗浄方法。
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