JP2018035099A - プリオン病予防・治療剤 - Google Patents

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石橋 大輔
Daisuke Ishibashi
大輔 石橋
教行 西田
Noriyuki Nishida
教行 西田
岳大 中垣
Takehiro Nakagaki
岳大 中垣
剛 濱田
Takeshi Hamada
剛 濱田
岳志 石川
Takashi Ishikawa
岳志 石川
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Abstract

【課題】本発明は、末梢投与でプリオン病を予防又は治療することができる薬剤を提供する。【解決手段】式(I)又は(II)で表される化合物又はその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオン病予防又は治療剤。【選択図】図11

Description

本発明は下記式(I)もしくは(II)で表される化合物又はその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオン病予防又は治療剤に関する。
プリオン病は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ウシ海綿状脳症(BSE)、ヒツジのスクレイピーなど人獣共通感染症で、脳の海綿状変性を特徴とする致死性の神経変性疾患である。また100万人に1人が発症すると言われている希少性難治性疾患で、発症から約1.5年でほぼ100%の患者が死亡すると言われている。
病原体の正体は不明な点が多いが、異常型プリオンタンパク質(PrPSc)によって脳内に存在している正常型プリオンタンパク質(PrPC)が構造変換し、凝集体を形成して脳内に蓄積することが発病機構と考えられている。
またプリオン病はほぼ孤発性であり、孤発性はほとんどの場合、急速に進展し、まったく手の施しようがないことが知られている。いっぽう家族性(遺伝性)プリオン病については、抗体やいくつかの化合物が探索されているが(特許文献1)、どの化合物も治療効果は限定的で、特に末梢投与にて効果を示す薬剤は見つかっていない。
特開2009-13126号公報
本発明は、末梢投与で有効なプリオン病の予防・治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の化合物がプリオン病に有効であることを見出し、更なる研究の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の[1]〜[8]に関する。
[1]式(I):
[式中、
環Aは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
環Bは、置換基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環を示し、
環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
環Dは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
Metは、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、
Xは、結合手、又はCO−を示し、
Yは、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)を示し、
Zは、結合手、又は置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
で表される化合物、もしくは
式(II):
[式中、
環Eは、置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
及びXはそれぞれ、置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
で表される化合物又はそれらの薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオン病予防又は治療剤。
[2]式(I)において、
環Aが、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、
環Bが、オキソ基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環、
環Cが、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基をそれぞれ有していてもよいベンゼン環又は5又は6員の複素環、
環Dが、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、
Metが、C1−6アルキル基で置換されていてもよいトリアゾリルを有していてもよいメチレン基、
Xが、結合手、又はCO−、
Yが、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)、かつ
Zが(1)結合手、又は(2)5ないし6員単環式芳香族複素環基で置換されていてもよいモノ−又はジ−C1−6アルキル−カルバモイル基を有していてもよいC1−3アルキレン基
である[1]に記載の予防又は治療剤。
[3]式(I)で示される化合物が、3−{[ベンジル(フラン−2−イルメチル)アミノ][1−(2−メチルブタン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル]メチル}−8−メチル−1,2−ジヒドロキノリン−2−オン、2−[2−(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−[(4−メチルフェニル)メチル]アセトアミド]−N−tert−ブチル−2−(3−メトキシフェニル)アセトアミド、3−(3−クロロフェニル)−1−[(6−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)メチル]−1−[3−(モルホリン−4−イル)プロピル]ウレア及び2−[2−(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−(4−エチルフェニル)アセトアミド]−N−(フラン−2−イルメチル)−2−(ピリジン−3−イル)アセトアミドからなる群から選択される少なくとも1種である[1]又は[2]に記載の予防又は治療剤。
[4]式(II)において、
環Eが、5又は6員飽和複素環であり、かつ
及びXがそれぞれヒドロキシ基を有していてもよいC1−3アルキレン基
である[1]に記載の予防又は治療剤。
[5]式(II)で示される化合物が、1−[4−(2−ヒドロキシ−3−ナフタレン−1−イルオキシプロピル)ピペラジン−1−イル]−3−ナフタレン−1−イルオキシプロパン−2−オールである[1]又は[4]に記載の予防又は治療剤。
[6]プリオン病が家族性プリオン病である[1]〜[5]のいずれかに記載の予防又は治療剤。
[7]末梢投与用である[1]〜[6]のいずれかに記載の予防又は治療剤。
[8]式(I):
[式中、
環Aは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
環Bは、置換基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環を示し、
環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
環Dは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
Metは、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、
Xは、結合手、又はCO−を示し、
Yは、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)を示し、
Zは、結合手、又は置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
で表される化合物、もしくは
式(II):
[式中、
環Eは、置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
及びXはそれぞれ、置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
で表される化合物又はそれらの薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオンタンパク質構造変換抑制剤。
本発明によれば、脳内投与ではなく末梢投与でのプリオン病の予防又は治療を可能にし、患者の負担を減らすことができる。
図1は、プリオン病に有効な化合物の化学構造式、化学名及び分子量を示す。 図2はin silico 計算による、PrP(プリオンタンパク質)と候補化合物の相互作用を示す。(A)ドッキングシミュレーションによって選択された96の化合物の結合立体構造を示す。赤い棒は、化合物の立体構造を表し、青色の棒はGN8(2-pyrrolidin-1-yl-N-[4-[4-(2-pyrrolidin-1-yl-acetylamino)-benzyl]-phenyl]-acetamide)との強い相互作用を有することが報告されている4個のアミノ酸残基を表す。(B)PrP23-231を有する化合物の直接結合を示す。マウス又はヒトPrP23-231と結合するためのGN8及びNPR-056のセンサーグラムを示す。GN8濃度は下から0、0.98、1.95、3.91、7.81、15.6、31.3及び62.5μM、NPR-056の濃度は下から0、0.2、0.39、0.78、1.56、3.13、6.25、12.5、25及び50μMである。 図3は、SPR解析を用いたPrPに対する候補化合物の結合親和性スクリーニングを示す。マウス及びヒトPrP23-231の結合に対する計算された化合物の散布図を示す。ヒト(上)とマウス(下)のPrPに結合する場合の種々のNPRの化合物から得られた相対的反応(RU)をBiacore T200機器を使用して、抗プリオン化合物の一次スクリーニングからの結果として示す。化合物の濃度は、10μM。 図4は、SPR分析を用いたPrPに対する化合物の結合親和性の動力学的分析を示す。用量反応曲線は、Biocore T200機器を用いて、ヒト又はマウスのPrPに対するGN8及びNPR-056の結合親和能力の結果として示される。KD(MM)を、解離定数として示す。* P<0.05及び**はp <0.01対GN8。 図5は、持続的にプリオンに感染した細胞中のPrPScに対する候補化合物の効果を示す。N2a-FK(A)及び-22L(B)細胞における抗プリオン薬候補のスクリーニングを示す。すべての細胞は48時間10μMの化合物で処理;PrPScを、イムノブロッティング法により検出した。DMSO処理細胞を陰性コントロールとした。分子量(kDa)は各パネルの左側に示す。各パネルのレーン番号は、NPRシリーズの個々の候補化合物を示す。アスタリスクは、N2a-FK細胞内PrPScを減少させた化合物を示す。 図6は、プリオン感染細胞における抗プリオン化合物用量反応を示す。(A)FK-N2a細胞を異なる濃度のNPR-053と-056化合物(0、0.1、0.5、1、5及び10μM)で48時間処理した。PrPSc、総PrP及びβアクチン(ローディングとして)をイムノブロッティングにより検出した。(B)個々のNPR濃度によって処理したPrPScのバンド強度を、ネガティブコントロールの割合として示す。グラフの結果は少なくとも3〜5回の独立した実験からの平均±SDを示す。用量依存的なPrPSc減少曲線はBoltzmann curve fittingを使用してプロットした。(C)免疫蛍光染色を用いて、10μMのNPR-053又は-056で処理したN2a-FK細胞内のPrPScの局在を示す。PrPSc及び核はSAF61抗体(緑)及びDAPI(青)をそれぞれ使用して検出した。細胞を共焦点レーザー走査顕微鏡により可視化した。スケールバーは、10マイクロメートルを表す。 図7は、プリオン感染(N2a-FK)細胞中のPrPに低親和性化合物の用量反応を示す。(A)N2a-FK細胞を異なる濃度(0、0.1、0.5、1、5、10μM)の、GN8(陽性コントロール)、NPR-015、-050、及び-065の化合物で処理した。PrPScは、M20抗体を用いたイムノブロッティングにより検出した。(B)用量依存的PrPSc減少曲線は、Boltzmann curve fittingを使用してプロットした。グラフの結果は、少なくとも3〜5回の独立した実験からの平均±SDを表す。(C)図6のCと同様に、PrPScはNPR-015処理後のN2a-FK細胞における免疫蛍光染色によって可視化した。PrPScと細胞核をSAF61抗体(緑)及びDAPI(青)をそれぞれ使用して検出した。細胞を共焦点顕微鏡で可視化した。スケールバーは10マイクロメートルを表す。 図8は、NPR-053及び-056と各アミノ酸残基の相互作用エネルギーを示す。(A)アミノ酸残基とNPRの間のエネルギーは、FMO法を使用して計算した。4.0オングストローム以内に位置する残基の相互作用エネルギーが提供される。HFによって計算された静電気学電荷移動相互作用(青);MP2により算出されるファンデルワールス相互作用(赤色)。(B)NPR-053と-056の結合立体構造は、ドッキングシミュレーションから得た。ヒトPrPC(白管)及び化合物(赤棒)。化合物と大きな相互作用エネルギーを示すいくつかの残基は、棒モデルにより表される。参考のために、GN8と大きく相互作用する4つの残基の位置も示した(オレンジ)。 図9は、蛍光に基づくサーマルシフトアッセイを用いてNPRによる組換えPrPの安定化を示す。温度依存性の組換えPrPの変性プロフィールは、二相転移を示す。いくつかの化合物のPrP結合親和性は、展開する温度のシフトからアッセイし、PrPに安定化作用を有する潜在的な化合物を簡単に得ることができる。組換えPrPを0.5%DMSO、10μMのGN8、NPR又はバッファーのみ(PrP無し)の存在下でF-TSAによって分析した。図は各代表変性プロフィールを示す。実線:化合物無し(PrPのみ)、灰色の線:バッファーのみ。 図10は、非感染(N2a-58)細胞における正常な形のPrPCに及ぼす候補化合物の効果を示す。(A)イムノブロッティングにより決定されるように異なる濃度(0、0.1、0.5、1、5及び10μM)のNPR化合物で48時間処理したN2a-58細胞中のPrPCレベルを示す。データは、3〜5回の独立した実験を表す。(B)0.1%DMSO(ビヒクルコントロール)又は10μMの各化合物のいずれかを48時間処理した後の生存細胞を位相差顕微鏡を用いて可視化した。スケールバーは200マイクロメートルを表す。(C)細胞生存率(%)は、48時間10μMの化合物処理後の生存細胞の相対数を測定することによって決定した。 図11は、NPR-053と-056が110 d.p.i.でマウスの脳におけるPrPSc、空胞形成及びマイクログリオーシスを抑制することを示す。(A)マウスは110 d.p.i.で屠殺し、脳内のPrPScレベルを測定した。PrPSc蓄積(バンド強度)を一次抗体としてM20抗体を用いたウェスタンブロッティングによって分析した。(B)空胞形成の程度は、HE染色により比較した。各切片内の液胞占有面積を算出した。(C)マウスの脳におけるIba-1発現は、ウェスタンブロッティング及び免疫組織化学的染色により分析した。Iba-1/βアクチンの比率は、ウェスタンブロッティングによりバンド強度から計算した。(D)ミクログリア活性化は、免疫組織化学に続いてIba-1陽性細胞を定量することによって分析した。すべての棒グラフにおいて、白色、灰色及び黒のバーは、ビヒクル、NPR-053及び056グループをそれぞれ表す。組織学的分析では、全てのスケールバーは50マイクロメートルを表す。イムノブロッティングにおける統計的有意性は、両側スチューデントt検定を用い決定し、多重比較のためのチューキー・クレイマー検定による二元配置分散分析は、脳領域(皮質:Co、視床:Th、海馬:Hi、被殻:Pu及び脳橋:Po)における組織学的分析において使用した。* P <0.05及び** P <0.01。 図12は、プリオンバイオアッセイ系を使用した、NPR-053及び-056の評価を示す。(A)NPR-053又は-056のいずれかの接種後2日目(d.p.i.)からのFukuoka-1に感染したマウスでの生存曲線を示す。ビヒクル(円:N=11)、NPR-053(正方形:N=15)とNPR-056(三角形:N=16)を比較した。統計的有意性は、Log-rank検定を用いて分析した。NPRはFukuoka-1感染マウスの生存を延長することができなかった。(B)NPR処置マウス(海馬、被殻と脳橋)における空胞の変化の病理学的解析を示す。(C)NPR処置マウス(海馬、被殻と脳橋)におけるミクログリオーシスの病理学的解析を示す。 図13は、NPR処置後のプリオン感染細胞内のアグリソーム検出を示す。10μMのGN8、NPR-015、-053、又は-056化合物で48時間処理したN2a-FK細胞を、タンパク質凝集アッセイにかけた。細胞中のアグリソームはProteoStat(登録商標)(赤)を用いて検出した。細胞核はヘキスト33342(青)で対比染色した。細胞を共焦点レーザー走査顕微鏡によって視覚化し、全細胞を透過光を用いて微分干渉コントラスト(DIC)により可視化した。スケールバーは、10マイクロメートルを表す。
本発明は、式(I):
[式中、
環Aは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
環Bは、置換基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環を示し、
環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
環Dは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
Metは、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、
Xは、結合手、又はCO−を示し、
Yは、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)を示し、
Zは、結合手、又は置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
で表される化合物、又は
式(II):
[式中、
環Eは、置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
及びXはそれぞれ、置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
で表される化合物又はそれらの薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオン病予防又は治療剤に関する(以下本発明の予防・治療剤と略することもある)。
本発明における式(I)又は(II)の化合物は、自体公知の方法で作成することができるが、ASINEX社などから購入した市販品を使用してもよい。例えば本願において後述の化合物の(a)〜(e)の化合物はASINEX社で購入し、ASINEX社のコード番号は、(a)BAS04419618、(b)ASN05212389、(c)ASN05112616、(d)ASN05440222及び(e)BAS02556521である。
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチルが挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「モノ−又はジ−C1−6アルキル−カルバモイル基」としては、例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、N−エチル−N−メチルカルバモイルが挙げられる。
本明細書中、「5ないし14員芳香族複素環基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環基が挙げられる。
該「芳香族複素環基」の好適な例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5ないし6員単環式芳香族複素環基;ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、ナフト[2,3−b]チエニル、フェノキサチイニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2又は3環式)芳香族複素環基が挙げられる。
本明細書中、「3ないし14員非芳香族複素環基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環基が挙げられる。該「非芳香族複素環基」の好適な例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロイソチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、アゼピニル、オキセパニル、アゾカニル、ジアゾカニルなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環基;ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソチアゾリル、ジヒドロナフト[2,3−b]チエニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、4H−キノリジニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジニル、テトラヒドロベンゾアゼピニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロフェナントリジニル、ヘキサヒドロフェノチアジニル、ヘキサヒドロフェノキサジニル、テトラヒドロフタラジニル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラヒドロキナゾリニル、テトラヒドロシンノリニル、テトラヒドロカルバゾリル、テトラヒドロ−β−カルボリニル、テトラヒドロアクリジニル、テトラヒドロフェナジニル、テトラヒドロチオキサンテニル、オクタヒドロイソキノリルなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2又は3環式)非芳香族複素環基が挙げられる。
本明細書中、「5又は6員複素環」とは、5又は6員不飽和複素環、又は5又は6員飽和複素環を示す。
本明細書中、「5又は6員不飽和複素環」とは、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含有する5又は6員の不飽和複素環を示し、その具体例としては、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等の芳香族複素環;ジオキソール、ジヒドロトリアゾール、ピラン、ジヒドロピラン、チオピラン、ジヒドロチオピラン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、テトラヒドロピリミジン等の非芳香族不飽和複素環が挙げられる。
本明細書中、「5又は6員飽和複素環」とは、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含有する5又は6員の飽和複素環を示し、その具体例としては、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、オキサゾリジン、チアゾリジン、イミダゾリジン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロフラン、ピラゾリジン、テトラヒドロトリアゾール等の飽和複素環が挙げられる。
本明細書中、「C1−3アルキレン基」としては、例えば、−CH−、−CH−CH−、又はCH−CH−CH−が挙げられる。
環Aは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。環Aは、好ましくは、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、C1−6アルキル基を有していてもよいベンゼン環である。
環Bは、置換基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環を示す。環Bは、好ましくは、オキソ基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環であり、より好ましくは、トリアゾール環又はピリドン環である。
環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示す。環Cは、好ましくは、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基をそれぞれ有していてもよいベンゼン環又は5又は6員の複素環であり、より好ましくは、C1−6アルコキシ基を有していてもよいベンゼン環、又は5又は6員の複素環であり、さらに好ましくは、C1−6アルコキシ基を有していてもよいベンゼン環、ピリジン環、フラン環、又はモルホリン環である。
環Dは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。環Dは、好ましくは、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、ハロゲン原子又はC1−6アルキル基を有していてもよいベンゼン環である。
Metは、置換基を有していてもよいメチレン基を示す。Metは、好ましくは、C1−6アルキル基で置換されていてもよい5ないし14員芳香族複素環基を有していてもよいメチレン基であり、より好ましくは、C1−6アルキル基で置換されていてもよい5ないし6員単環式芳香族複素環基を有していてもよいメチレン基であり、さらに好ましくは、C1−6アルキル基で置換されていてもよいテトラゾリルを有していてもよいメチレン基である。
Xは、結合手、又はCO−を示す。
Yは、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)を示す。
Zは、結合手、又は置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。Zは、好ましくは、(1)結合手、又は(2)5ないし14員芳香族複素環基又は3ないし14員非芳香族複素環基で置換されていてもよいモノ−又はジ−C1−6アルキル−カルバモイル基を有していてもよいC1−3アルキレン基であり、より好ましくは、(1)結合手、又は(2)5ないし6員単環式芳香族複素環基で置換されていてもよいモノ−又はジ−C1−6アルキル−カルバモイル基を有していてもよいC1−3アルキレン基であり、さらに好ましくは、(1)結合手、又は(2)フリル基で置換されていてもよいモノ−又はジ−C1−6アルキル−カルバモイル基を有していてもよいC1−3アルキレン基である。
環Eは、置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示す。環Eは、好ましくは、5又は6員飽和複素環であり、より好ましくは、ピペラジン環である。
及びXはそれぞれ、置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。X及びXはそれぞれ好ましくは、ヒドロキシ基を有していてもよいC1−3アルキレン基である。
本明細書中、「置換基」としては、特に指定されていない限り、例えば、下記の置換基群から選ばれる置換基が挙げられる。
[置換基群]
(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ基、(3)シアノ基、(4)オキソ基、(5)ヒドロキシ基、(6)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルコキシ基、(7)C6−14アリールオキシ基(例、フェノキシ、ナフトキシ)、(8)C7−16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)、(9)5ないし14員芳香族複素環オキシ基(例、ピリジルオキシ)、(10)3ないし14員非芳香族複素環オキシ基(例、モルホリニルオキシ、ピペリジニルオキシ)、(11)C1−6アルキル−カルボニルオキシ基(例、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、(12)C6−14アリール−カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ、1−ナフトイルオキシ、2−ナフトイルオキシ)、(13)C1−6アルコキシ−カルボニルオキシ基(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ)、
(14)モノ−またはジ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ)、(15)C6−14アリール−カルバモイルオキシ基(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ)、(16)5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、(17)3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、モルホリニルカルボニルオキシ、ピペリジニルカルボニルオキシ)、(18)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ)、(19)C1−6アルキル基で置換されていてもよいC6−14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)、(20)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルチオ基、(21)C1−6アルキル基で置換されていてもよい5ないし14員芳香族複素環基、(22)C1−6アルキル基で置換されていてもよい3ないし14員非芳香族複素環基、(23)ホルミル基、(24)カルボキシ基、(25)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、(26)C6−14アリール−カルボニル基、(27)5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、(28)3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、(29)C1−6アルコキシ−カルボニル基、(30)C6−14アリールオキシ−カルボニル基(例、フェニルオキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、2−ナフチルオキシカルボニル)、(31)C7−16アラルキルオキシ−カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、(32)カルバモイル基、(33)チオカルバモイル基、(34)5ないし14員芳香族複素環基又は3ないし14員非芳香族複素環基で置換されていてもよいモノ−またはジ−C1−6アルキル−カルバモイル基、(35)C6−14アリール−カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、(36)5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル、チエニルカルバモイル)、(37)3ないし14員非芳香族複素環カルバモイル基(例、モルホリニルカルバモイル、ピペリジニルカルバモイル)、(38)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、(39)C6−14アリールスルホニル基、(40)5ないし14員芳香族複素環スルホニル基(例、ピリジルスルホニル、チエニルスルホニル)、(41)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルスルフィニル基、(42)C6−14アリールスルフィニル基(例、フェニルスルフィニル、1−ナフチルスルフィニル、2−ナフチルスルフィニル)、(43)5ないし14員芳香族複素環スルフィニル基(例、ピリジルスルフィニル、チエニルスルフィニル)、(44)アミノ基、(45)モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ)、(46)モノ−またはジ−C6−14アリールアミノ基(例、フェニルアミノ)、(47)5ないし14員芳香族複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ)、(48)C7−16アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ)、(49)ホルミルアミノ基、(50)C1−6アルキル−カルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ)、(51)(C1−6アルキル)(C1−6アルキル−カルボニル)アミノ基(例、N−アセチル−N−メチルアミノ)、(52)C6−14アリール−カルボニルアミノ基(例、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ)、(53)C1−6アルコキシ−カルボニルアミノ基(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノ)、(54)C7−16アラルキルオキシ−カルボニルアミノ基(例、ベンジルオキシカルボニルアミノ)、(55)C1−6アルキルスルホニルアミノ基(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、(56)C1−6アルキル基で置換されていてもよいC6−14アリールスルホニルアミノ基(例、フェニルスルホニルアミノ、トルエンスルホニルアミノ)、(57)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル基、(58)C2−6アルケニル基、(59)C2−6アルキニル基、(60)C3−10シクロアルキル基、(61)C3−10シクロアルケニル基、及び(62)C6−14アリール基。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1−6アルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、2,2―ジフルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシルが挙げられる。
本明細書中、「C2−6アルケニル基」としては、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニルが挙げられる。
本明細書中、「C2−6アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、4−メチル−2−ペンチニルが挙げられる。
本明細書中、「C3−10シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC3−10シクロアルキル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC3−10シクロアルキル基が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル、2,2−ジフルオロシクロプロピル、2,3−ジフルオロシクロプロピル、シクロブチル、ジフルオロシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
本明細書中、「C3−10シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルが挙げられる。
本明細書中、「C6−14アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリルが挙げられる。
本明細書中、「C7−16アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、フェニルプロピルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルコキシ基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1−6アルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、4,4,4−トリフルオロブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「C3−10シクロアルキルオキシ基」としては、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシが挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルチオ基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1−6アルキルチオ基が挙げられる。具体例としては、メチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、4,4,4−トリフルオロブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキル−カルボニル基」としては、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、3−メチルブタノイル、2−メチルブタノイル、2,2−ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1−6アルキル−カルボニル基が挙げられる。具体例としては、アセチル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイルが挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルコキシ−カルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルが挙げられる。
本明細書中、「C6−14アリール−カルボニル基」としては、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイルが挙げられる。
本明細書中、「C7−16アラルキル−カルボニル基」としては、例えば、フェニルアセチル、フェニルプロピオニルが挙げられる。
本明細書中、「5ないし14員芳香族複素環カルボニル基」としては、例えば、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイルが挙げられる。
本明細書中、「3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基」としては、例えば、モルホリニルカルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピロリジニルカルボニルが挙げられる。
本明細書中、「モノ−またはジ−C7−16アラルキル−カルバモイル基」としては、例えば、ベンジルカルバモイル、フェネチルカルバモイルが挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1−6アルキルスルホニル基が挙げられる。具体例としては、メチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、4,4,4−トリフルオロブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニルが挙げられる。
本明細書中、「C6−14アリールスルホニル基」としては、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニルが挙げられる。
式(I)で示される化合物の具体例としては、図1で示すように、(a)3−{[ベンジル(フラン−2−イルメチル)アミノ][1−(2−メチルブタン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル]メチル}−8−メチル−1,2−ジヒドロキノリン−2−オン、(b)2−[2−(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−[(4−メチルフェニル)メチル]アセトアミド]−N−tert−ブチル−2−(3−メトキシフェニル)アセトアミド、(c)3−(3−クロロフェニル)−1−[(6−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)メチル]−1−[3−(モルホリン−4−イル)プロピル]ウレア又は(d)2−[2−(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−(4−エチルフェニル)アセトアミド]−N−(フラン−2−イルメチル)−2−(ピリジン−3−イル)アセトアミドが挙げられ、なかでも(b)と(c)が好ましい。
式(II)で示される化合物の具体例としては、図1で示す構造式を有する、1−[4−(2−ヒドロキシ−3−ナフタレン−1−イルオキシプロピル)ピペラジン−1−イル]−3−ナフタレン−1−イルオキシプロパン−2−オールが挙げられる。
また、式(I)又は(II)の化合物の薬学上許容しうる塩としては、特に制限はなく、例えば、有機酸又は無機酸との塩が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられ、有機酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸、ピバリン酸、ジエチル酸、コハク酸、ピメリン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、アジピン酸又はナフタリンジスルホン酸等があげられる。
「プリオン病」は、孤発性、家族性(遺伝性)及び獲得性(感染性)に分類されるが、本発明の化合物は、家族性プリオン病及び獲得性プリオン病に好ましく投与され、家族性プリオン病により好ましく投与される。
またプリオン病としては、羊のスクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性消耗病、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症などが挙げられ、本発明の化合物はクロイツフェルト・ヤコブ病等に好適である。
本明細書において「治療」とは、症状の改善、重症化の防止、寛解の維持、更には再発の防止も含む。
本発明の予防・治療剤の投与対象としては、ヒト、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)等が挙げられる。なお、ヒト以外の哺乳動物に適応する場合、本発明の予防・治療剤の摂取量は、動物の体重もしくは大きさに応じて適宜加減すればよい。
本発明の予防・治療剤において、成人1日あたりの投与量は、性別、年齢、体重、その症状、投与経路、剤型等によって適宜調整が必要であるが、成人1日あたりの投与量は、経口剤の場合には、通常10mg/kg体重〜100mg/kg体重の範囲であり、10mg/kg体重〜20mg/kg体重の範囲が好ましい。
非経口剤の場合には、通常1mg/kg体重〜10mg/kg体重の範囲であり、2mg/kg体重〜5mg/kg体重の範囲が好ましい。
本発明の予防・治療剤において、上記1日あたりの量を一度にもしくは数回に分けて投与することができる。食前、食後、食間を問わない。
また投与間隔は特に限定されないが、毎日でも、隔日でも、間欠投与であってもよい。
投与期間は特に限定されないが、長期投与が可能である。治療前に投与する場合には、通常100〜150日間、好ましくは30〜60日間、さらに好ましくは治療直前〜1日間に投与する。治療後に投与する場合には、通常治療直後から、好ましくは治療直後から7日間〜30日間投与する。また治療前後のいずれに投与しても良く、治療中に投与するのも好ましい。
本発明の予防・治療剤は経口的又は静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、筋肉内、経鼻、直腸内、口腔内、眼内、耳内、舌下等の非経口的に全身又は局所へ末梢投与することができる。本発明において、末梢投与とは脳内投与以外の投与ルートを意味し、末梢投与のなかでも静脈内および腹腔内投与が好ましい。また、本発明の薬剤は、脳室内ポンプによって脳へ直接的に投与することもできる。なかでも第三脳室内の投与が好ましい。
経口的に投与する場合には、食前、食後、食間を問わない。
剤形としては、例えば、水、生理食塩水等の希釈液又は分散媒に有効量の化合物を溶解、分散、乳化させた注射剤、クリーム、軟膏、飲料剤、エアロゾル、皮膚ゲル、点眼剤、点鼻剤等の液剤;錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、錠剤、徐放剤、坐薬等の固形剤などを用いることができ、これらは有効成分がリポソームや徐放性材料等に封入された封入体や担体に担持された担持体などの形態であってもよい。
本発明の予防・治療剤はその剤型に格別の制限はなく、経口製剤、非経口製剤のいずれでもよい。
経口剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、チュワブル剤、液剤、乳剤、マイクロカプセル剤、懸濁剤、エリキシル剤、シロップ剤、徐放性製剤等が挙げられ、これらは有効成分がリポソームや徐放性材料等に封入された封入体や担体に担持された担持体などの形態であってもよい。なかでも錠剤、カプセル剤、徐放性製剤が好ましい。
非経口剤としては、水、生理食塩水等の希釈液又は分散媒に有効量の化合物を溶解、分散、乳化させた注射剤、輸液、クリーム、軟膏、エアロゾル、皮膚ゲル、点眼剤、点鼻剤等の液剤が挙げられる。あるいは、経皮パッチ剤、ローション剤、軟膏剤、パップ剤又は坐剤の形態であってもよい。なかでも、経皮吸収型製剤等が好ましい。
注射剤としては、例えば、皮下、静脈内又は筋肉内投与用注射剤として使用する場合には、適切な分散剤又は浸潤剤及び懸濁化剤を使用し、公知の方法に従って調製する。
本発明の予防・治療剤は、必要に応じて、担体、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、流動性改善剤、甘味剤、香味剤、防腐剤、乳化剤、被覆剤等を含有することができる。
本発明の予防・治療剤において、含有することができる具体的な成分としては、例えばトラガント、アラビアゴム、コーンスターチ及びゼラチンのような結合剤;微晶性セルロース、結晶セルロースのような賦形剤;コーンスターチ、前ゼラチン化デンプン、アルギン酸、デキストリンのような膨化剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;微粒二酸化ケイ素、メチルセルロースのような流動性改善剤;ショ糖、乳糖及びアスパルテームのような甘味剤;パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤;ペパーミント、バニラ香料及びチェリー又はオレンジのような香味剤;モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどの乳化剤;グリセリン脂肪酸エステルのような被覆剤等が挙げられる。
また、種々の他の材料を、調剤単位の物理的形態を変化させるために含有させることができる。錠剤の被覆剤としては、例えば、シェラック、砂糖又はその両方などが挙げられる。シロップ剤又はエリキシル剤は、例えば、甘味剤としてショ糖、防腐剤としてメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素及びチェリー又はオレンジ香味等などを含有することができる。その他、各種ビタミン類、各種アミノ酸類を含有しても良い。
腸溶製剤とするときは、例えばヒドロキシメチルセルロースの水溶液を被覆前処理剤とし、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの水溶液及びポリアセチンの水溶液を被覆剤として常法により腸溶製剤とすればよい。
本発明の予防・治療剤は他の薬物と併用して使用することができる。
併用に際しては、本発明の予防・治療剤と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明の予防・治療剤と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
そのような併用薬としては、例えば、キナクリン、フルピリチン、ドキシサイクリン、ペントサン、(2-ピロリジン-1-イル-N-[4-[4-(2-ピロリジン-1-イル-アセチルアミノ)-ベンジル]-フェニル]-アセトアミド)(GN8)、2−ピロリジン−1−イル−N−[4−{4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル}−フェニル]−プロピオンアミド(5G-C-5LA)などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適且組み合わせて用いることができる。
本発明において上記併用剤の投与量は、副作用が問題とならない範囲でどのような量を設定することも可能である。併用薬物としての1日投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、感受性差、投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類などによって異なり、特に限定されない。
本発明の別の態様としては、式(I)又は(II)で示される化合物又はその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオンタンパク質構造変換抑制剤が挙げられる。
「プリオンタンパク質構造変換抑制」とは、正常型プリオンタンパク質から異常型プリオンタンパク質への構造変換を抑制することを意味する。「正常型プリオンタンパク質」とは、正常な細胞に発現している感染性を有しないプリオンタンパク質(PrPC)を意味しており、「異常型プリオンタンパク質」とは、正常型プリオンタンパク質とアミノ酸配列は同一であるが、立体構造が異なり、感染性を有するプリオンタンパク質(PrPSc)を意味している。また、「プリオンに感染する」とは、異常型プリオンタンパク質に感染している状態を意味している。
プリオンタンパク質構造変換抑制剤の投与量やその他定義は既述に準ずる。
以下の実施例によって本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
<材料と方法>
1.試薬及び抗体
本願の実施例の詳細は、EBioMedicine, Vol. 9, p238-249, Published online: June 8, 2016に記載された方法等に準じる。
in silico計算により同定されたすべての候補化合物(NPR-015、-050、-053、-056及び-065)はASINEX社から購入した(図1)。岐阜大学から提供されたGN8(2-pyrrolidin-1-yl-N-[4-[4-(2-pyrrolidin-1-yl-acetylamino)-benzyl]-phenyl]-acetamide、分子量420)を、抗プリオン薬のポジティブコントロールとして使用した(Kuwata et al. (2007). Proc Natl Acad Sci U S A 104, 11921-11926)。これらの化合物は、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に完全に溶解しストック溶液として10mMに調製した。化合物のストック溶液は、滅菌水、培地、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、アッセイに使用した。PrPに特異的な抗体(サンタクルスバイオテクノロジー、M20; SPI-Bio、SAF61)、Iba-1(WAKO、019-19741(IHC)と016-20001(WB))及びβアクチン(MBL)は市販のものを使用した。またホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗ヤギ(Jackson ImmunoResearch)と抗マウス(GE Healthcare Life Sciences)IgG抗体をイムノブロッティングに使用した。
2.In silicoスクリーニング
抗プリオン化合物候補を得るために、約21万個の化合物を含むオリジナル化合物ライブラリーを用いて、ドッキングシミュレーションを行った。各化合物の三次元構造をOpen Babel software(O'Boyle et al., (2011). Open Babel: An open chemical toolbox. J Cheminform 3, 33.)により産出し、GAFF(Generalized Amber Force Field)(Wang, et al., (2004). J Comput Chem 25, 1157-1174)を使用してエネルギー最小化を行った。ドッキングシミュレーションにおいて、ヒトPrPC(124-230番アミノ酸残基)の球状ドメインの構造を、受容体として使用した。その原子座標を核磁気共鳴(NMR)構造から調製した(蛋白質データバンドコード:2LSB)。立方スペース(64×64×64A)は、ドッキングシミュレーションのための探索領域として使用し、標的タンパク質の表面全体との結合を調べた。またグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)として設計されたオリジナルドッキングシュミレーションプログラムを採用した。本願においては、長崎アドバンスドコンピューティング・センターのDEGIMA(DEstination for Gpu Intensive MAchine)スーパーコンピュータ(100以上のGPUで構築)をドッキングシミュレーションに用いた。
3.フラグメント分子軌道計算
ドッキングシミュレーションから得た結合コンフォメーションを分析するために、FMO計算を行った。FMO計算のための信頼性の高い原子座標を準備するために、水素原子をドッキング構造に添加し、G124のN末端を-COCH3でキャップした。エネルギー古典力場(AMBER99SB)とGAFFを用いたエネルギー最小化をAMBER 10のプログラムを用いて行い、エネルギー最小化構造を、FMO計算のために使用した。アミノ酸残基及び化合物を、C179及びC214(ジスルフィド結合を持っているのでひとつのフラグメントになる)を除いて、単一のフラグメントとして処理した。相互作用エネルギーをCC-pVDZの基本セットを用い同定近似の解決法(Ishikawa, T., and Kuwata, K. (2009). Chemical Physics Letters 474, 195-198)で、Hartree-Fock(HF)レベルと2次Moller-Plesset perturbation (MP2)レベルにおいて、計算した。FMO計算は、PAICSプログラム(Ishikawa et al. (2009) J Comput Chem 30, 2594-2601)を用いて行った。
4.表面プラズモン共鳴(SPR)分析
組換えPrPと化合物との間の相互作用は、前述のようにBiacore T200 system(GEヘルスケア)を用いて評価した(Nakagaki et al.(2013) Autophagy 9, 1386-1394)。ヒト又はマウスのPrP(23−231)をpETベクターを用いたタンパク質発現系において大腸菌により合成し、タンパク質をNTAカラム中でイミダゾールにより精製した(Atarashi et al. (2011) Nat Med 17, 175-178)。組換えPrP溶液を、ランニングバッファー(10mMのHEPES、pHが7.4、150mMのNaCl、0.05%ツイーン20(シグマアルドリッチ)及び5%DMSOを含む))で10μg/mlに希釈し、リガンドをアミンカップリングキット(GE、BR-1000-50)を用いてCM5センサーチップ(GE、BR-100530)上に固定した。PrPの固定化は2000 RUの平均値を用いて行った。様々な濃度の化合物を、同じランニングバッファーで希釈し、30 mL /分の流速で2分間順番に注入することによって評価し、その後ランニングバッファーのみを結合した化合物をウォッシュアウトするために同じ流速でさらに20分間注入した。データは、コントロールとしてブランクセンサーチップを用いて補正した。各化合物をDMSOに溶解し、ランニングバッファーで5%に希釈した。
5.細胞培養
マウス神経芽細胞腫ニューロ2a細胞を、American Type Culture Collection(CCL 131)から入手した。N2a-58細胞は、PrPCを過剰発現するN2a細胞から樹立され、ニューロ2a細胞でのマウスPRNP遺伝子を統合する。N2a-58細胞から樹立されたN2A-FK細胞を、Fukuoka-1 (mouse-adapted Gerstmann-Straussler-Scheinker strain)株で感染させた。N2A-22L細胞は、マウス適合スクレイピー22Lに感染したN2a-58細胞から樹立した。上記細胞を、5%CO2中37℃で、ダルベッコ改変イーグル培地(和光)(4,500ミリグラム/mLのグルコース、10%熱不活性化ウシ胎児血清、100単位/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(ナカライテスク)を含む)中で増殖させた。細胞生存率は、ルナ自動細胞計数器(Logos Biosystems)を用いて生菌を計数することによって決定し、細胞形態は顕微鏡で可視化した。
6.イムノブロッティング
イムノブロッティングはHomma, T.(Sci Rep 4, 4504(2014))の方法により行った。PrPScの検出のため、溶解物を30分間37℃、20μg/mLのプロテイナーゼK(PK;Nakarai Tesuque)で消化させた。SDS−試料緩衝液の添加後、試料を15%SDS-PAGEゲルに適用し、続いてPVDF膜に移す。PrPScを検出するために、M20を一次抗体(1:1000)として、抗ヤギIgG-HRPを二次抗体(1:5000)としてそれぞれ供した。バンドをChemi-Lumi One (ナカライテスク社製)又はECLプライムウェスタンブロッティング検出キット(GEヘルスケア)を使用して可視化した。バンド強度は、Image J software (National Institutes of Health)を用いて定量した。
7.免疫蛍光分析
プリオン感染細胞において、免疫蛍光染色は、以下のように行った。細胞をDMSO又は10μM GN8又は各NPRでチャンバースライド(BD Falcon)中で48時間処理した。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、その後室温で30分間、4%ホルムアルデヒドで固定した。0.5%トリトンX-100を用いて透過処理した後、スライドを室温で1時間5%スキムミルク中でインキュベートした。PrPScの検出のため、スライドを室温で5分間、3Mグアニジンチオシアネートを用いてインキュベートした。その後細胞をPrPScの検出のためSAF61特異的一次抗体(1:200)において4℃で一晩、その後Alexa Fluor(登録商標)488結合抗マウスIgG(Invitrogen)(1:500)において37℃で1時間インキュベートした。核をDAPI (Vector Laboratories)含有Vectashield mounting mediumで染色した。すべての画像は、共焦点レーザー走査顕微鏡LSM700(カールツァイス)を用いて視覚化した。
8.蛍光に基づくサーモシフトアッセイ(F-TSA)
蛍光に基づくサーマシフトアッセイを組換えヒトのPrP及び化合物の間の相互作用(温度変化として明らかになる)を測定するために使用した。これらの変化は、LightCycler(登録商標)480システム(Roche Diagnostics)及びSYPROオレンジ(Life Technologies)を用いて検出した(470nmで最大励起及び570nmで最大発光)。反応混合物は以下を含有する:96ウェル白色プレート(Roche Diagnostics)中、100μg/mLの組換えPrP、150mMのNaCl、25mMのPIPES(pH7.0)で1000倍に希釈したSYPROオレンジ、添加又は無添加の10μMの化合物。
PrPの安定化は、各温度での光学密度を測定することにより評価した。温度を37℃から90℃まで徐々に上昇させ、蛍光スキャンを連続で483/610nmの波長フィルタを伴うLightCycler(登録商標)480機器を使用して1℃刻みで測定した。各タンパク質の解離曲線からの蛍光強度を、各熱点に対してプロットし、Origin 8.5ソフトウェアを使用して、Boltzmann sigmoidal equationにあてはめた。それぞれのTm(融解温度)値をそれぞれの融解の一次導関数曲線の最大値から算出した。少なくとも3つの実験の結果から得られた平均±標準偏差(SD)をデータ解析のために使用した。
9.タンパク質凝集アッセイ
細胞中のタンパク質凝集は、ProteoStat(登録商標) Aggresome Detection Kit (Enzo Life Science)を使用して評価した。Proteostatは、選択的にアグリソーム形成と同様のβシートに富んだ構造を有するタンパク質と相互作用し、蛍光色素として500nmで最大励起及び600nmで最大発光を有する。すべてのキット試薬とコンポーネントは、マニュアルに従って調製した。細胞を10μMのGN8又はNPR化合物で48時間処理した後、細胞をPBSで洗浄し、3mMのEDTAを含有する0.5%トリトンX-100を用いて30分間氷上で透過処理した。PBSで洗浄した後、細胞をデュアル検出試薬(1:2000 ProteoStat、核染色のための1:1000 Hoechst 33342)を用いて暗所で室温30分間インキュベートした。ProteoStat陽性細胞は、次いで、LSM700共焦点顕微鏡を用いて観察した。
10.In vivo注入実験
四週齢のddY系雄性マウスはSLC(浜松、日本)から購入した。該マウスの脳内に、FK-1株に感染した末期のマウスから調製した脳ホモジネートの10-1希釈液20μLを接種した。各種化合物を0.25%DMSO含有生理食塩水に溶解し、マウスに一日おきに1.0mgの化合物/kg/日を腹腔内投与した。0.25%DMSO含有生理食塩水を腹腔内に接種したマウスをコントロールとした。マウスは、疾患の末期まで、又は屠殺まで一日おきにモニターした。臨床的発症は、油ぎった及び/又は黄色がかった髪、hunchback(後弯)、体重減少、黄色陰毛、失調性歩行及び非平行後肢などの2つ以上の症状の存在が見られた場合と定義した。マウスは、臨床的発症(110 d.p.i.)又は末期で屠殺し、脳及び脾臓を取り出した。脳の右半球及び脾臓切片を、直ちに凍結し、PBS中で20%(重量/体積)中でホモジナイズした。イムノブロッティング分析のために、全タンパク質を当量の2×溶解緩衝液(300mMのNaCl、1%トリトンX-100、1%デオキシコール酸ナトリウム及び100 mM Tris-HCl; pHは7.5)で混合し抽出した。残りの脳及び脾臓を10%中性緩衝ホルマリンで固定した。
11.病理学的分析
固定組織は、パラフィンに包埋し、3μmの厚さの切片に切断した。海綿体の変化を評価するために、切片をヘマトキシリン(WAKO、131−09665)及びエオシン(WAKO、056−06722)で染色した。Iba-1染色のために、脱パラフィン及び再水和後、切片をTarget Retrieval Solution, Citrate pH 6(DAKO、S2369)中で20分間抗原を賦活させるために煮沸した。ブロックされた切片を0.3%水素ペルオキシダーゼ(WAKO、086−07445)のメタノール(林純薬、130−02069)溶液で30分間処理し、内因性ペルオキシダーゼを不活性化した後、3%脱脂粉乳(Megmilk雪印、FA-08)含有トリス緩衝生理食塩水(0.1%Tween20(TBST)を含む)中で60分間室温でインキュベートした。一次抗体(抗Iba-1抗体、WAKO、019−19741)を用いて室温で一晩、次いでEnVision(登録商標)ポリマーホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ラビットIgG(DAKO、K4002)を用いて室温で60分間インキュベートした。免疫染色は、3,3-ジアミノベンジジン(DAB;同仁化学研究所、D006)を用いて視覚化した。加水分解のオートクレーブとPrPSc染色のためのギ酸法は、Ishibashi, D.et al., (2012) J Virol 86, 4947-4955に記載の方法に従った。
12.統計分析
グラフの結果は、少なくとも3つの独立した実験からの平均±SDを表す。全てのデータの統計分析は、Excel and GraphPad Prism software のStatcel 2を用いて実施した。スチューデントt検定は、2つのグループ間の比較のために行い、Tukey-Kramer検定による1ウェイ又は2ウェイ分散分析は多重比較のために使用した。Log-rank検定はプリオン感染マウスの死亡率を分析するために使用した。
<結果>
1.In silicoスクリーニング
ヒトPrPCとの結合親和性に関連するドッキングスコアは、化学化合物ライブラリー内のすべての化合物のシミュレーションから得た。ドッキングスコア及び化学構造の類似性の分析により、抗プリオン薬の候補として96の化合物を選択した。図2のAに示すように、96個の選択された化合物のドッキングコンフォメーションは、GN8の結合に重要であることが報告されている4個のアミノ酸残基(N159、Q160、K194及びE196)と一緒に示されている。93個の化合物はN159及びQ160の近くに位置するが、K194及びE196からはやや離れて位置していた。他の3つの化合物は、ポケットからは全く異なる位置に配置されていた。これらの候補化合物を「NPR」と称し、抗プリオン効果を示すかどうかを検討した。
2.表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用したPrPCと候補化合物との間の結合親和性の評価
NPRとのPrPCとの間の相互作用を評価するために、直接結合を分析した。リフォールディングされた組換えのPrPに対するNPRの直接結合親和性を分析した。ハイスループットスクリーニングを使用し、結合親和性を測定し、10μMのNPRを順次、固相ヒト又はマウスのPrPC(Biacore(登録商標))を伴うセンサーチップを使用したSPR分析に供した。NPR内の領域がヒトとマウスのPrPCに対する高結合能を有していることを確認した。具体的には、NPR-056の結合相対反応(RU)は、少なくとも他より3倍大きいと推定された(図3)。NPR-056のセンサーグラムの勾配を示す動態解析は、GN8(陽性コントロール)と同様の用量依存性反応することを示した。解離定数として示すKDは、NPR-056の値は、GN8(図2のB、図4)と比較して有意に小さかった。これらの結果は、PrPCに結合する有用な化合物は、DEGIMAスーパーコンピュータを使用したナガサキドッキングシステムによって計算された推定NPR化合物の中から、SPR分析によって適切に選択されたことを示唆している。
3.候補化合物による持続的にプリオンに感染した細胞中でのPrPScの減少
PrPScに及ぼすNPRの効果を調べるために、10μM-NPRで処理された持続的にプリオンに感染した細胞を用いてウエスタンブロッティング(WB)分析を行った。結果は、DMSOで処理した細胞に比べて、NPR 処理後48時間インキュベートした持続的Gerstmann-Straussler-Scheinker syndrome由来のFukuoka−1プリオン感染細胞(N2a-FK)におけるPrPScタンパク質レベルを有意に減少させたことを確認した(NPR-005、- 014、-015、-020、-030、-050、-053、-056及び-065)(図5のA)。これらNPRもスクレイピー由来22Lプリオン感染細胞(N2a-22L)(図5のB)にも同様の効果があった。それぞれのIC50濃度の決定に対して、NPRで処理した細胞中でのPrPScレベルが用量依存的(0.1、0.5、1、5及び10μM NPR)に減少した(図6A及びB)(図7A及びB)。NPR-053、-056、-015、-050及び065におけるPrPScを50%減少するのに有効な濃度(IC50)は3.72と7.68μMの間であった。特に、NPR-056と-065は、GN8に比較して有意に低い濃度であった(表1)。
これらの結果は、NPR候補化合物(ドッキングシステムによって計算され、PrPC結合親和性によって確認された)は、GN8と同様に有効的に持続的にプリオンに感染した細胞中のPrPScを減少させたことを示唆する。興味深いことに、PrPC結合低親和性グループ(NPR-015、-050及び-065)も抗プリオン効果を示した。これらの結果をサポートするため、続いて免疫蛍光分析を使用してPrPScを可視化した。PrPScを選択的に検出するために、持続的プリオン感染細胞を抗PrPのモノクローナル抗体でインキュベートし、グアニジンチオシアネートで処理した後で細胞中の凝集したPrPScを明らかにした。結果としては、NPR-053と-056処理後のN2a-FK細胞におけるPrPScの有意な減少を確認した(図6のC)。PrPC結合低親和性グループのひとつであるNPR-015も、細胞において同様のPrPSc減少を示した(図7のC)。
4.フラグメント分子軌道計算を使用してのPrPC-NPRの相互作用の解析
アミノ酸残基及びNPR-053と-056の間の相互作用エネルギーをドッキングシミュレーションから結合構造を用いるFMO法を用いて計算した。図8に示すように、計算されたエネルギーは、化合物の4.0オングストローム内に位置する残基のために提供される。参考として、GN8結合に重要な4残基の相互作用エネルギーも列挙する。負の相互作用エネルギーは、化合物との優れた相互作用を示す。HF法によって得られたエネルギーは主に、極性相互作用(すなわち、静電的及び電荷移動相互作用)を含み、水素結合相互作用の主要な成分である。逆に、MP2法を用いて得られたエネルギーは、ファンデルワールス相互作用(又は非極性相互作用)を含んでいた。このように、HFとMP2エネルギーの差は、ファンデルワールスエネルギーであると考えられた。大きな負の相互作用エネルギーを有する残基はHFの結果では認められなかった。このことは重要な水素結合相互作用が存在しないことを示している。逆に、いくつかの残基のMP2エネルギーは大きな負の値になる。これらの結果は、ファンデルワールス相互作用は、NPR-053と-056のPrPCとの結合において主要な役割を果たしていることを示唆した。
5.熱変化を伴う組換えのPrPの安定化に及ぼすNPRの影響
一般に、ハイスループットスクリーニングは、TSAを用いて、化学化合物のような低分子量リガンドが標的タンパク質と相互作用をするかどうかを決定するために行う。TSAは、化合物とプログレッシブタンパク質の変性の間の直接的な相互作用の定量化を可能にする。蛍光ベースのTSA(F-TSA)は、SYPRO(登録商標)オレンジなどの蛍光色素を使用し、タンパク質内の疎水性領域に結合させる;この低コスト、簡単かつ容易に測定しうる方法は広く使用され迅速にデータが得られる。化合物が温度上昇に応じてPrPC変性を中断することができたかどうかを調べた。基質として組み換えのPrPCを含有するサンプルの蛍光強度レベルは熱融解曲線(37℃から約70℃まで徐々に昇温)として明らかにした。最終的には、蛍光強度のレベルは測定可能な最大限の時間(約90℃)まで緩やかに減少したが、基質のラインには至らなかった(図9)。 GN8とNPR処理後のF-TSAのタンパク質安定性プロファイルは、熱融解曲線の一次導関数曲線における最大値に対する反応度を表す特徴的なTm値を明らかにした。化合物処理と未処理の間の差をΔTmとして計算した。NPR-053の処理は2.692±0.189度のΔTm を示し、GN8処理と比べて有意に高いことが明らかになった。またNPR-053がPrPCに結合することによってPrPCを安定化させる可能性があることを示唆している。これらの結果は、NPR-056では観察されなかった。PrPC発現及び細胞性細胞傷害に及ぼすNPRの効果を確認するために、PrPC(N2a-58)を過剰発現しているマウス神経芽細胞腫細胞を異なる濃度のNPR-015、-053及び056で48時間処理し、PrPCレベルと細胞生存率を検討した。その結果、いずれのNPRもN2a-58細胞におけるPrPCレベルと細胞生存率に影響を与えなかった(図10)。
6.NPRによって処理されたプリオン病モデルマウスを用いたバイオアッセイ
NPRが、プリオン病の動物モデルにおいて効果的であったかどうかを解明するために、Fukuoka-1脳ホモジネートを接種したCD-1マウスに、NPR-053又はNPR-056のいずれかを、接種後2日(d.p.i.)から1週間に3回、屠殺まで投与した。110 d.p.i.(マウスが発症した時点)でのマウスの脳におけるPrPScと組織学的変化を分析した。NPR処理された脳におけるPrPScレベルは、疾患発症時のビヒクル処理脳におけるレベルの20から30パーセント以下だった(図11のA)。NPR-056の処理はビヒクル処理脳に比べて大幅に皮質中の液胞面積を縮小した。しかし、NPR-053処理では、皮質の変化は明らかではなかった(図11のB)。発症時にNPRで処理したマウスの脳内グリオーシスのレベルも評価した。110 d.p.i.では、NPR-056の処理は、EFハンドタンパク質と活性化ミクログリアのマーカーであるIba-1タンパク質(同種移植炎症因子1としても知られている:AIF1)の発現を有意に減少させた(Ito, D.et al., (1998) Brain Res Mol Brain Res 57, 1-9他)(図11のC)。免疫組織化学染色は、Iba-1陽性細胞によって占有された細胞が皮質、視床及び海馬において有意に減少したことを明らかにした(図11のD)。しかし、処理群の生存期間は、ビヒクル処理群と比べて変わらなかった(図12)。これらの結果は、NPR-056がPrPScの蓄積やニューロン細胞の死及びミクログリオーシスなどの病理学的変化を阻害したことを示し、NPR-056がプリオン病の候補薬物として有用であることを示唆した。
7.N2a-FK細胞内アグリソームに及ぼすNPRの効果
アグリソームは、不必要な種々のタンパク質の凝集によって樹立され、コンフォメーション病の病理学的組織や細胞培養モデルにおけるリン酸化タウの蓄積やα-シヌクレインと共存する細胞内封入体である。アグリソームは、分解に対する耐性を示す異常なタンパク質の大きな複合体であり、それゆえ封入体として隔離されている。隔離されたアグリソームはオートファジーシステムによって分解することができると考えられている。最近の報告では、アグリソームが、持続的にプリオンに感染した細胞においてP62とPrPSc形を含む;P62はPrPScと密接に相互作用し、オートファジーシステムを介して分解を促進する上で重要であることが報告されている。NPRが持続的にプリオンに感染した細胞におけるアグリソームのレベルに影響を与えるかどうか調べるために、Proteostatとしてアグリソーム検出プローブを使用した。多くのアグリソームは、DMSOのみで処理されたN2a-FK細胞の細胞質で検出された。PrPScを抑制することを示す抗プリオン化合物(GN8、NPR-015、-053及び-056)は、それぞれ10μMで48時間処理後にN2a-FK細胞における細胞内アグリソームの数を有意に減少させた(図13)。これらの結果は、NPRがPrPSc及び細胞質中の機能不全で不要なタンパク質の除去を促進する可能性を示した。
本発明によれば、末梢投与で簡便にプリオン病の予防又は治療が可能になる。

Claims (8)

  1. 式(I):
    [式中、
    環Aは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
    環Bは、置換基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環を示し、
    環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
    環Dは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
    Metは、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、
    Xは、結合手、又はCO−を示し、
    Yは、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)を示し、
    Zは、結合手、又は置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
    で表される化合物、もしくは
    式(II):
    [式中、
    環Eは、置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
    及びXはそれぞれ、置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
    で表される化合物又はそれらの薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオン病予防又は治療剤。
  2. 式(I)において、
    環Aが、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、
    環Bが、オキソ基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環、
    環Cが、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基をそれぞれ有していてもよいベンゼン環又は5又は6員の複素環、
    環Dが、ハロゲン原子、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、
    Metが、C1−6アルキル基で置換されていてもよいトリアゾリルを有していてもよいメチレン基、
    Xが、結合手、又はCO−、
    Yが、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)、かつ
    Zが(1)結合手、又は(2)5ないし6員単環式芳香族複素環基で置換されていてもよいモノ−又はジ−C1−6アルキル−カルバモイル基を有していてもよいC1−3アルキレン基
    である請求項1に記載の予防又は治療剤。
  3. 式(I)で示される化合物が、3−{[ベンジル(フラン−2−イルメチル)アミノ][1−(2−メチルブタン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル]メチル}−8−メチル−1,2−ジヒドロキノリン−2−オン、2−[2−(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−[(4−メチルフェニル)メチル]アセトアミド]−N−tert−ブチル−2−(3−メトキシフェニル)アセトアミド、3−(3−クロロフェニル)−1−[(6−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)メチル]−1−[3−(モルホリン−4−イル)プロピル]ウレア及び2−[2−(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−(4−エチルフェニル)アセトアミド]−N−(フラン−2−イルメチル)−2−(ピリジン−3−イル)アセトアミドからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の予防又は治療剤。
  4. 式(II)において、
    環Eが、5又は6員飽和複素環であり、かつ
    及びXがそれぞれヒドロキシ基を有していてもよいC1−3アルキレン基
    である請求項1に記載の予防又は治療剤。
  5. 式(II)で示される化合物が、1−[4−(2−ヒドロキシ−3−ナフタレン−1−イルオキシプロピル)ピペラジン−1−イル]−3−ナフタレン−1−イルオキシプロパン−2−オールである請求項1又は4に記載の予防又は治療剤。
  6. プリオン病が家族性プリオン病である請求項1〜5のいずれか1項に記載の予防又は治療剤。
  7. 末梢投与用である請求項1〜6のいずれか1項に記載の予防又は治療剤。
  8. 式(I):
    [式中、
    環Aは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
    環Bは、置換基を有していてもよい5又は6員不飽和複素環を示し、
    環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
    環Dは、置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、
    Metは、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、
    Xは、結合手、又はCO−を示し、
    Yは、結合手、メチレン基、又は−NH−CO−**は環Dとの結合部位、**はNとの結合部位を示す。)を示し、
    Zは、結合手、又は置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
    で表される化合物、もしくは
    式(II):
    [式中、
    環Eは、置換基を有していてもよい5又は6員複素環を示し、
    及びXはそれぞれ、置換基を有していてもよいC1−3アルキレン基を示す。]
    で表される化合物又はそれらの薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するプリオンタンパク質構造変換抑制剤。
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WO2021090911A1 (ja) 2019-11-08 2021-05-14 セントラル硝子株式会社 タンパク質凝集塊を含有する細胞を選択的に死滅させる方法、そのキット、タンパク質ミスフォールディング病治療薬及び血液製剤からのタンパク質凝集塊除去製剤

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WO2021090911A1 (ja) 2019-11-08 2021-05-14 セントラル硝子株式会社 タンパク質凝集塊を含有する細胞を選択的に死滅させる方法、そのキット、タンパク質ミスフォールディング病治療薬及び血液製剤からのタンパク質凝集塊除去製剤

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