以下、本発明の一実施形態に係る吸着装置について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の吸着装置1は、図1に示すように、吸着対象物Sを吸着するための吸着部2と、吸着部2に接続され、吸着部2内の空気を吸引することで、吸着部2が吸着対象物Sを吸着する吸着力を発生させる吸引部7と、を備える。
図2に示すように、吸着部2には、空気が流通する空気流通室40が形成されている。吸着部2は、吸引部7が吸引状態にあるときに吸着対象物Sを吸着するように構成されている。吸着部2は、空気流通室40と吸着部2の外部とを仕切る隔壁Wを有する吸着本体3であって、空気流通室40と吸着部2の外部とを連通する連通孔Pが隔壁Wに形成された吸着本体3と、該吸着本体3と共に空気流通室40を形成する基台4と、吸着本体3を基台4に対して固定する固定部5と、連通孔Pを開閉するように構成された弁体6と、を備える。
吸着本体3は、吸着対象物Sに当接する部分である。吸着本体3は、吸着対象物Sに当接した状態で吸引部7が吸引状態となると、吸着対象物Sを吸着するように構成されている。本実施形態の吸着本体3は、空気流通室40を構成する本体部31と、該本体部31の開口端縁310から径外方向に延出するフランジ部32と、を有する。吸着本体3は、軟質樹脂によって形成されている。即ち、吸着本体3は、吸着対象物Sの表面形状に追従して変形可能な柔らかい材質によって形成されている。吸着本体3は、例えば、ゴム等によって形成されている。本実施形態の吸着本体3は、シリコーンゴムによって形成されている。しかしながら、吸着本体3の材質としては、シリコーンゴムに限られず、種々の軟質樹脂を採用することができる。吸着本体3は、軟質樹脂で形成されているので、吸着対象物Sの表面が凹凸形状を有していても該吸着対象物Sに対して密接に当接することができる。そのため、吸着本体3は、表面形状が平坦な、又は滑らかな吸着対象物Sに限らず、様々な表面形状を有する吸着対象物Sを吸着することができる。
本体部31は、有底筒状に形成されている。本実施形態の本体部31は、高さ方向の一端が開放され、他端が閉じられた直方体形状である。本体部31は、一端が基台4によって閉じられることで、空気流通室40を形成する。即ち、本実施形態の本体部31は、空気流通室40と吸着部2の外部とを仕切る隔壁Wを構成している。本体部31は、長方形板状の底部311と、該底部311の端縁から延出する側部312と、を有する。
底部311は、吸着対象物Sに当接する部分である。具体的には、底部311は、吸着対象物Sに当接する外側面311bと、空気流通室40の内周壁の一部を構成する内側面311aと、を有する。図3に示すように、底部311は、所定の厚みを有し、縦方向の長さが、横方向の長さよりも短い、長方形状に形成されている。本実施形態の底部311は、側部312よりも厚くなるように形成されている。
図2に示すように、底部311には、空気流通室40と吸着部2の外部とを連通する連通孔Pが形成されている。連通孔Pは、底部311を厚み方向に貫通することによって形成されている。本実施形態では、底部311には、複数の連通孔Pが形成されている。また、複数の連通孔Pは、同じ開口径となるように形成されている。図3及び図6に示すように、連通孔Pは、縦方向に沿って列を成し、該列が、横方向に数列並ぶように形成されている。具体的には、図3には後述する収容室30が示されているが、底面視で収容室30に重なる位置に、収容室30よりも小さく開口した連通孔Pが形成されており(図6参照)、3つの連通孔Pが形成されたB列と、4つの連通孔Pが形成されたD列とが交互に現れるように、B列及びD列が横方向に並んでいる。各列では、連通孔Pは、縦方向のピッチ間隔が同じとなるように配置されている。また、連通孔Pは、隣り合う列の連通孔Pの縦方向のピッチ間隔も同じとなるよう配置されている。連通孔Pは、隣り合う列における連通孔Pの中心同士が、横方向に対してずれるように配置されている。例えば、連通孔Pは、B列の連通孔Pの中心と、D列における縦方向に隣り合う連通孔Pの中心同士を結んだ線の中心とが、横方向に沿って並ぶように配置されている。本実施形態では、B列とD列とが交互に配置されることで49個の連通孔Pが形成されているが、連通孔Pの配列や数については特に限定されるものではなく、配列及び数については自由に設定可能である。
側部312は、筒状に形成されている。本実施形態の側部312は、底部311の端縁形状に対応するように長方形状に開口した角筒状に形成されている。
図2に示すように、吸着本体3には、弁体6を収容する収容室30が形成されている。収容室30は、一端が吸着部2の外方に対して開放され、他端が連通孔Pを介して空気流通室40に連通するように形成されている。本実施形態では、収容室30は、吸着本体3の底部311に形成されている。具体的には、収容室30は、該底部311を外側面311bから厚み方向内側に窪むことで形成される凹部領域である。即ち、図4に示すように、収容室30は、底部311によって周壁302が構成され、連通孔Pは、底部311の内側面311aから収容室30の周壁302のうちの天井面302aに至るように底部311を貫通している。
収容室30は、周壁302のうちの側壁面302bが円周面を構成することで、吸着部2の外方に対して円形状に開口するように形成されている。これに伴い、収容室30は、天井面302aが円形状に形成されており、連通孔Pは、天井面302aの中央に配置されている。
図2に示すように、フランジ部32は、本体部31の一端側を向く上面32aと、他端側を向く下面32bとを有する。フランジ部32は、本体部31の開口端縁310(即ち、側部312の開口端縁)に沿って設けられている。
基台4は、吸着本体3の開口を閉鎖すると共に、吸引部7と空気流通室40とを連通させる部分である。本実施形態の基台4は略板状に形成されており、基台4には、中央部に、吸引部7と空気流通室40とを連通するための吸引孔43aが形成されている。本実施形態の基台4は、外径が小さい小径部41と、該小径部41に連設され、小径部41よりも外径が大きい大径部42と、該大径部42から突出する突出部43と、を有する。小径部41と突出部43とは、大径部42を挟んで反対側に位置している。そして、小径部41、大径部42、及び突出部43を貫通するように、吸引孔43aが形成されている。
基台4は、小径部41が本体部31に嵌るように構成されている。具体的には、小径部41は、本体部31における側部312の内周面に対して密接するように形成されている。また、基台4は、小径部41に対して外方に突出した大径部42の端縁部401がフランジ部32の上面32aに当接するように、フランジ部32に載置されている。即ち、基台4は、小径部41及び大径部42が、軟質樹脂によって形成された本体部31及びフランジ部32と共にシールを形成し、吸引部7が吸引状態にあるときに、空気流通室40内の密閉性を高めるように構成されている。
固定部5は、基台4を吸着本体3に対して固定する部分である。本実施形態の固定部5は、環状に形成されている。固定部5は、薄板状のベース部51と、該ベース部51の外側端縁から該ベース部51の厚み方向に延出し、該ベース部51よりも厚い壁部52と、を有する。固定部5は、壁部52とベース部51とによって形成される段差部50に、フランジ部32が嵌るように構成されている。
吸着部2は、基台4の大径部42がフランジ部32の上面32aに載置され、固定部5のベース部51がフランジ部32の下面32bを受けて段差部50にフランジ部32が嵌め込まれた状態で、基台4と固定部5とをボルト等の締結手段によって固定されることで構成されている。即ち、吸着部2は、フランジ部32が基台4と固定部5との間で圧接された状態で基台4と固定部5とが締結されることで、空気流通室40の密閉性を高めている。
本実施形態の吸着部2は、吸着対象物Sとしての後述するPTPシートS(図5参照)を吸着するために、収容室30の開口端縁301が上側シートS1の凸部S11の端縁よりも内側に位置する大きさで形成されている。例えば、図5に示すように、上側シートS1の凸部S11の上端面が平坦に形成されている場合には、吸着部2は、収容室30の開口面積が、該上端面の面積よりも小さくなるように構成されている。上側シートS1の凸部S11の上端面が厚み方向に湾曲して形成されている場合には、吸着部2は、収容室30の開口端縁301が該上端面に当接するように、開口端縁301が凸部S11の最外周における端縁よりも内側に位置するように構成されている。また、吸着部2は、略全ての収容室30がPTPシートSの吸着に寄与するように、該収容室30がPTPシートSの端縁よりも内側に位置するように構成されている。即ち、吸着部2は、吸着対象のPTPシートSのうち最大のものの大きさに合せて形成されており、平面視形状につき、PTPシートSと同様の大きさとなるように形成されている。これにより、1種類の吸着部2によって複数種類の大きさのPTPシートSを吸着することができる。しかしながら、収容室30の開口面積としては特に限定されるものではなく、自由に設定することができる。また、吸着部2の大きさについても特に限定されるものではなく、吸着対象物Sに対応した大きさとすることができる。
図5に示すように、弁体6は、吸引部7が吸引状態にあるときに、収容室30の一端側の開口端縁301が吸着対象物Sと当接した当接状態Jでは連通孔Pを開放し、且つ開口端縁301が吸着対象物Sと当接しない非当接状態Kでは連通孔Pを塞ぐように構成されている。弁体6は、吸着本体3と同じ材質(即ち、軟質樹脂)によって形成され、該吸着本体3と一体的に形成されている。これにより、例えば、吸着本体3と弁体6とを成形型で容易に形成することができる。また、弁体6には、非当接状態Kで連通孔Pを塞ぐ塞ぎ領域60aと、非当接状態Kで隔壁Wに対して当接する当接領域60bと、が形成されている(図6も参照)。本実施形態では、連通孔Pが収容室30の天井面302aで開放するように形成されているので、弁体6は、当接領域60bが天井面302aに当接することで連通孔Pを塞ぐように構成されている。
弁体6は、収容室30の周壁302から収容室30内に延出するように、該周壁302に接続されている。弁体6は、周壁302に接続される接続部61と、連通孔Pを開閉する開閉部62と、を有する。本実施形態の弁体6は、収容室30の周壁302のうちの側壁面302bに接続されている。具体的には、弁体6は、収容室30の一端と他端とを結ぶ高さ方向における側壁面302bの中央部から収容室30内に延出している。側壁面302bは、接続部61が接続された位置(高さ)における周方向で、接続部61が接続されている領域の周方向の長さが、接続部61が接続されていない領域の周方向の長さよりも短くなっている。これにより、弁体6は、非当接状態Kで適度に撓んで、連通孔Pを確実に塞ぐことができる。弁体6は、開閉部62が自由端となるように、側壁面302bに対して片持ち状態で接続されている。
弁体6は、所定の厚みを有する板状に形成されている。本実施形態の弁体6は、接続部61側の一端から、該一端とは反対側に位置する開閉部62側の他端に亘って、略同じ厚みとなるように形成されている。また、弁体6は、収容室30の開口径よりも小さく、全体が収容室30内に収まる大きさで形成されている。具体的には、図6に示すように、弁体6は、底面視で開閉部62が連通孔Pと重なるように側壁面302bから延出し、弁体6と側壁面302bとの間に、吸引部7が吸引状態となった際に、収容室30内の空気が連通孔Pを介して空気流通室40へ移動可能なように、空気通路Lを形成している。
図1に示すように、吸引部7は、吸着部2に接続され、空気流通室40内及び収容室30内の空気を吸引する部分である。吸引部7は、空気流通室40内及び収容室30内の空気を吸引する吸引手段72と、該吸引手段72に接続され、吸引手段72によって吸引された空気を流通させる吸引配管71と、を有する。本実施形態では、吸引状態における空気の流れを基準として、吸着部2側を上流、吸引手段72側を下流とする。本実施形態の吸引手段72は、真空ポンプ72である。また、吸引配管71は、吸引状態と非吸引状態とを切替え可能な開閉弁Vを有する。吸引配管71は、上流側の一端が基台4の突出部43に接続され、下流側の他端が吸引手段72に接続されている。
本実施形態に係る吸着装置1の説明は以上である。以下、本実施形態に係る吸着装置1によって吸着対象物Sを吸着する手順、及び吸着する際の弁体6の動作について説明する。ここでは、吸着対象物SとしてのPTPシートSを吸着する場合について説明する。
まず、PTPシートSについて説明する。図5に示すように、PTPシートSは、例えば、薬局や病院等で提供されるような、複数の錠剤Cを1錠ずつ別々に収容するように構成された所定の厚みを有するシート状の包装体である。PTPシートSは、例えば、処方箋に応じた数の錠剤Cを患者等の錠剤服用者に提供する際に用いられるものである。PTPシートSは、錠剤Cを収容する錠剤収容室Qが複数形成された上側シートS1と、該上側シートS1に重ね合わされて、錠剤収容室Qを塞ぐ下側シートS2と、を有する。上側シートS1は、錠剤収容室Qを形成する凸部S11と、下側シートS2に対して張り付けられ、凸部S11に対して相対的に凹んでいる凹部S12と、を有する。上側シートS1は、凸部S11及び凹部S12が交互に配置されることによって、PTPシートSの外側を向く外面が凹凸形状となっている。上側シートS1は、例えばポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリ塩化ビニル(PVC)等で形成されている。下側シートS2は、PTPシートSの外側を向く外面が略平坦に形成されている。下側シートS2は、例えばアルミ箔である。PTPシートSは、下側シートS2を下側にして平坦面に載置されると、上側シートS1における凸部S11が上方に向けて突出し、凹部S12が厚み方向に窪むので、上側に凹凸形状が現れる。
PTPシートSは、例えば、複数枚が重ね合わされた状態で取り扱われる。PTPシートSは、例えば、下側シートS2を下側にして平坦面に載置されたPTPシートSを下PTPシートSとして、該下PTPシートSの上に重ねられるPTPシートSを上PTPシートSとすると、下PTPシートSと上PTPシートSとは、上側シートS1同士が対向した状態で重ね合わされる。この場合、上PTPシートSと下PTPシートSとが重ねわされた状態で省スペースに収まるように(重ねた状態の厚みを抑えるために)、上PTPシートSと下PTPシートSとは、上PTPシートSの凸部S11が下PTPシートSの凹部S12に収まるように重ね合わされる。この状態の下PTPシートS及び上PTPシートSを1セットとして、各セット同士は、下側シートS2同士が対向するように重ね合わされる。複数枚のPTPシートSは、一般的には、上記のように重ね合わされてメーカーや卸業者等から薬局や病院等に配送される。
上記のように重ね合わされたPTPシートSを、配送及び保管等に用いる収容箱等から取り出し、取り出した状態のまま吸着位置に設置しておく。
本実施形態の吸着装置1は、通常は、吸引手段72としての真空ポンプ72が停止しており、連通孔Pを介して、収容室30と空気流通室40とが連通した状態となっている(図4の状態)。即ち、弁体6は、収容室30の天井面302aから離間し(天井面302aとの間に隙間が形成される位置にあり)、連通孔Pを開放した状態となっている。
PTPシートSを吸着する場合には、吸着部2をPTPシートSの上方からPTPシートSに対して当接させる(図5の状態)。この場合、複数枚のPTPシートSが重ね合わされた状態における最上層で下側シートS2が上方を向いている場合には、吸着部2を下側シートS2に当接させる。また、最上層で上側シートS1が上方を向いている場合には、吸着部2を上側シートS1に当接させる。即ち、PTPシートSの表裏を反転させることなく、吸着位置に設置されたままの状態で吸着部2をPTPシートSに当接させる。
図5に示すように、吸着部2を、上方を向いている上側シートS1に当接させた場合、吸着部2には、PTPシートSに当接する領域である第1領域R1と、PTPシートSに当接しない領域である第2領域R2とが形成される。即ち、PTPシートSの上側シートS1には、凸部S11及び凹部S12が形成されているため、吸着部2のうちの凸部S11に対向する領域は、第1領域R1となる。この場合、吸着部2は、第1領域R1に位置する収容室30の開口端縁301がPTPシートSに当接することで、第1領域R1が当接状態Jとなる。また、吸着部2のうちの凹部S12に対向する領域は、第2領域R2となる。この場合、吸着部2は、第2領域R2に位置する収容室30の開口端縁301がPTPシートSに当接しないことで、第2領域R2が非当接状態Kとなる。即ち、第1領域R1に位置する収容室30は、一端がPTPシートSによって塞がれ、密閉状態となる。第2領域R2に位置する収容室30は、一端が開放され、吸着部2の外方に対して開放状態となる。
吸着部2を上側シートS1の外面に当接させた状態で、開閉弁Vを開けると共に、真空ポンプ72を駆動する。
第1領域R1に位置する収容室30は密閉状態となっているため、該密閉状態の収容室30内に位置する弁体6は、収容室30内の空気が吸引されることで一時的に天井面302a側に撓んで天井面302aに接近する。その後、収容室30内の空気が全て吸引された時点で、収容室30内と空気流通室40内とが同圧となり、弁体6は、自重によって、又は弁体6自体の復元力によって元の状態に復元する。尚、収容室30を小さく形成することで、収容室30内の空気が吸引される際に、弁体6が撓む(変形する)のを抑制してもよい。
第2領域R2に位置する収容室30は開放状態となっているため、該開放状態の収容室30内に位置する弁体6は、収容室30を介して吸着部2の外部の空気が吸引されるのに伴って天井面302a側に吸い付けられるように変形し、連通孔Pを塞ぐ。真空ポンプ72が駆動している状態では、空気流通室40内の圧力が吸着部2の外部の圧力よりも低いので、この圧力差によって弁体6が吸い付けられた状態が維持される(即ち、連通孔Pが塞がれた状態が維持される)。
吸着部2がPTPシートSを吸着した状態で吸着部2を移動させて、PTPシートSを梱包位置等の目的位置に移動させる。PTPシートSを目的位置に移動させた後、真空ポンプ72を停止するか、又は空気流通室40内に陽圧をかけることで吸引状態を解除して吸着部2からPTPシートSを外す。このように、吸着部2を吸着位置と目的位置との間を往復させることで、PTPシートSを1枚ずつ移動させることができる。
以上のように、上記実施形態では、弁体6は、吸引部7が吸引状態にあるときに、収容室30の一端側の開口端縁301が吸着対象物Sと当接した当接状態Jでは連通孔Pを開放するので、吸着対象物Sによって塞がれた収容室30内の空気が吸引されて、吸着対象物Sが吸着部2に吸着する。また、弁体6は、吸引部7が吸引状態にあるときに、収容室30の一端側の開口端縁301が吸着対象物Sと当接しない非当接状態Kでは連通孔Pを塞ぐので、連通孔Pからの空気漏れを防止する。また、吸着本体3と弁体6とは、軟質樹脂によって一体的に形成されている。このように、上記構成の吸着装置1は、吸着対象物Sを吸着するための構造が簡易であると共に、吸着本体3と弁体6とが軟質樹脂で形成されているので吸着部2を軽量にすることができる。
また、上記実施形態では、弁体6は、開閉部62が自由端となるように構成されているので、弁体6は、吸着本体3に対して片持ち状態で接続されることとなり、製造時において吸着本体3及び弁体6を成形型によって容易に成形することができる。即ち、弁体6が吸着本体3に対して片持ち状態で接続されることにより、成形型から抜けやすくなっている。
上記実施形態では、収容箱等から取り出したPTPシートSの吸着位置へのセッティング作業が容易となると共に、吸着装置1は、セッティングされたPTPシートSを1枚ずつ確実に搬送することができる。即ち、収容箱等から取り出されたPTPシートSは、上側シートS1同士、又は下側シートS2同士が対向した状態で重ね合わされているので、例えば、従来使用されているようなPTPシート払出機のように、PTPシートSを押し出し等によりピッキングすることで搬送する機械では、重ね合された状態のPTPシートSをそのままピッキングすると、2枚同時にピッキングしてしまう。そのため、従来のPTPシート払出機を使用する場合には、ユーザーは、収容箱等から取り出した複数枚のPTPシートSを、全て、上側シートS1と下側シートS2とが対向するように反転させてから機械にセッティングする必要があり、PTPシートSのセッティング作業が非常に煩雑なものであった。しかしながら、上記実施形態の吸着装置1は、PTPシートSを上下の向きに関係なく吸着して搬送するように構成されているため、収容箱等から取り出されたPTPシートSを反転することなくそのまま機械にセッティングすることができるので、ユーザーの作業負担を低減しつつ、PTPシートSを1枚ずつ搬送することができる。
上記実施形態では、吸引部7が吸引状態にあるときに、第2領域R2に位置する収容室30内の連通孔Pが弁体6によって塞がれるので、吸着対象物Sが当接していない部分での無駄な吸引を防止できる。そのため、上記実施形態の吸着装置1は、吸引のための空気を節約でき、低能力の吸引手段72でも、吸着対象物Sを確実に吸着することができる。
尚、本発明の吸着装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
他の実施形態として、図7に示すように、弁体6の当接領域60bに、隔壁W側に突出する突起Tが形成されていてもよい。弁体6の当接領域60bに突起Tが形成されていることで、吸引部7による吸引力が強くても、当接状態Jでは、突起Tが隔壁Wに当接することで(図7における当接状態Jの弁体6であって、実線で表された弁体6)、隔壁Wと弁体6との間に流路が確保されるので、弁体6が連通孔Pを完全に塞いでしまうことを防止することができる。一方、非当接状態Kでは、吸引力により弁体6が撓んで、連通孔Pを確実に閉鎖することができる(図7における非当接状態Kの弁体6であって、実線で表された弁体6)。このように、上記構成の吸着装置1は、連通孔Pを確実に開閉することができ、収容室30内の空気を確実に吸引することができる。尚、図7では、真空ポンプ72が停止している状態の弁体6が、二点鎖線で表されている。
また、図8に示すように、開口端縁301は、吸着部2の外方に対して拡径する末広がり形状となるように形成されていてもよい。この構成により、吸着対象物Sを吸引する吸引面積を拡大することができるので、吸着部2は、吸着対象物Sを強固に吸着することができる。この場合、例えば、収容室30から吸着部2の外方に延出するように吸盤等の吸着手段を収容室30の側壁面302bに取り付けることで、末広がり形状を形成してもよい。該吸着手段は、底部311と一体であってもよいし、図8に示すように、底部311と別体であってもよい。別体の場合、吸着手段が軟質樹脂等の軟質材料から形成されていてもよい。吸着手段を軟質材料で形成することで吸着手段が変形可能となり、PTPシートSへの追随が良いものとなる。
更に、図9に示すように、弁体6の接続部61は、開閉部62よりも厚く形成されていてもよい。この構成により、弁体6と収容室30の周壁302との接続部分の剛性が高くなる。そのため、吸引部7による吸引力が強くても、当接状態Jで、弁体6の過度な撓みを抑制することができる。このように、上記構成の吸着装置1は、連通孔Pを確実に開放することができ、収容室30内の空気を確実に吸引することができる。この場合、弁体6は、接続部61から開閉部62に向けて徐々に薄くなるように、縦断面形状がテーパー状に形成されていてもよい。
上記実施形態では吸着対象物Sとして、PTPシートSを吸着する場合について説明したが、吸着対象物SとしてはPTPシートSに限られず、タイルやカーペットであってもよい。更に、扁平な物体に限られず、球体等の立体形状を有する物体であってもよい。また、吸着対象物Sの重量に応じた能力の吸引手段72を用いることで、軽い吸着対象物Sから重い吸着対象物Sまで種々の吸着対象物Sを吸着することができる。
上記実施形態では、弁体6の開閉部62が自由端であり、周壁302に対して片持ち状態で接続されている場合について説明したが、弁体6は、両端が収容室30の周壁302に接続されていてもよい。この場合、当接状態Jにて、弁体6の中央部が変形して、連通孔Pを塞ぐ。
上記実施形態では、弁体6は、周壁302のうちの側壁面302bに接続されている場合について説明したが、弁体6は、天井面302aに接続されていてもよい。要は、弁体6は、吸引部7が吸引状態にあるときに、収容室30の一端側の開口端縁301が吸着対象物Sと当接した当接状態Jでは連通孔Pを開放し、且つ開口端縁301が吸着対象物Sと当接しない非当接状態Kでは連通孔Pを塞ぐように構成されていればよい。