以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図1における上下方向)が示される。図3、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図3における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向である。
まず図1を参照して、部品実装装置1の全体構成を説明する。図1において、基台1aの上面には基板搬送部2がX方向に配設されている。基板搬送部2は上流側装置から受け渡されたキャリア3を搬送して、以下に説明する部品実装機構による実装作業位置に位置決めして保持する。キャリア3には、基材として主にプラスチック材料が使用され、薄くて柔軟性があるフレキシブル基板4が複数載置されている。すなわち、基板搬送部2はフレキシブル基板4(基板)を搬送して保持する。基板搬送部2の両側には、それぞれ部品供給部5が配置されている。部品供給部5には、複数のテープフィーダ6が並設して装着されている。テープフィーダ6は、部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、部品実装機構を構成する実装ヘッド9への供給位置に部品を位置させる。
基台1aの上面におけるX方向の一端部には、Y軸移動ビーム7がY方向に水平に配設されている。Y軸移動ビーム7には1対のX軸移動ビーム8がY方向にスライド自在に装着されている。X軸移動ビーム8はY軸移動ビーム7が備えたリニア駆動機構によりY方向に駆動される。それぞれのX軸移動ビーム8には、実装ヘッド9がX方向にスライド自在に装着されている。実装ヘッド9は複数のノズルユニット10を備えており、X軸移動ビーム8が備えたリニア駆動機構によりX方向に駆動される。
Y軸移動ビーム7、X軸移動ビーム8、実装ヘッド9を駆動することにより、実装ヘッド9はノズルユニット10に設けられた吸着ノズル18(図3参照)によってそれぞれの部品供給部5に配置されたテープフィーダ6から部品を真空吸引して取り出し、フレキシブル基板4に移送して実装する。すなわち、吸着ノズル18は、部品を真空吸着してフレキシブル基板4(基板)に実装する。上記構成において、Y軸移動ビーム7、X軸移動ビーム8は、実装ヘッド9を水平方向(X方向、Y方向)に移動させるヘッド移動機構11を構成する。また、Y軸移動ビーム7、X軸移動ビーム8、実装ヘッド9は、部品実装機構を構成する。
図1において、基台1aにおいて基板搬送部2とそれぞれの部品供給部5との間には、部品認識カメラ12が配設されている。部品供給部5から部品を取り出した実装ヘッド9が部品認識カメラ12の上方を移動することにより、部品認識カメラ12は実装ヘッド9において吸着ノズル18に保持された状態の部品を撮像する。
実装ヘッド9が取り付けられた結合プレート9aには、X軸移動ビーム8の下面側に位置して、実装ヘッド9と一体的に移動する基板認識カメラ13が撮像方向を下向きにした姿勢で配設されている。実装ヘッド9を基板搬送部2に保持されたキャリア3の上方に移動させることにより、基板認識カメラ13によってフレキシブル基板4の位置認識マーク(図示省略)などの基準点を撮像することができる。
部品認識カメラ12、基板認識カメラ13によって取得された撮像データを認識処理することにより、実装ヘッド9において吸着ノズル18に保持された状態の部品の位置ずれや、基板搬送部2に保持されたキャリア3上のフレキシブル基板4の位置ずれを検出することができる。部品実装機構による部品実装動作においては、これらの位置ずれを加味して実装ヘッド9による部品実装位置が補正される。
図1において、実装ヘッド9の一側方には、実装ヘッド9と一体的に移動するレーザ変位センサなどの高さセンサ14が配設されている。高さセンサ14は、レーザ光を下方に向けて投射するレーザ光源と、レーザ光源が投射したレーザ光の反射光を受光する受光素子を含んで構成される。高さセンサ14は、高さ計測制御部30b(図9参照)により制御されてレーザ光の投射・受光を行い、三角測量の原理でフレキシブル基板4の実装面など計測対象の高さを導出する。すなわち、高さセンサ14は、フレキシブル基板4(基板)の実装面の高さを計測する。
次に図2を参照して、キャリア3とキャリア3に載置されたフレキシブル基板4の構成について説明する。図2は、フレキシブル基板4に部品Pが実装された状態を示している。キャリア3は、アルミニウムやステンレス鋼など剛性のある金属板などで構成されている。キャリア3の上面には、フレキシブル基板4が複数(ここでは3枚)載置され、耐熱テープ15によってキャリア3に固定されている。耐熱テープ15は、作業者によって、実装される部品Pと干渉しないフレキシブル基板4の角など複数の位置に貼付される。
次に図3、図4を参照して、実装ヘッド9の構成を説明する。図3において、実装ヘッド9は結合プレート9aを介してX軸移動ビーム8に装着される。実装ヘッド9は複数のノズルユニット10を並設した構成となっている。それぞれのノズルユニット10は、ノズル駆動部10aからノズル軸16を下方に延出させた構成となっており、ノズル軸16の下端部に結合されたノズル装着部17には、吸着ノズル18が着脱自在に装着されている。
図4において、ノズル軸16はノズル装着部17を挿通して吸着ノズル18に連通しており、ノズル軸16を貫通して設けられた吸引孔(図示省略)は流量センサ19を介して真空供給源20に接続されている。真空供給源20によってノズル軸16の吸引孔を真空吸引することにより、吸着ノズル18は下端部の吸着保持面18aに実装対象の部品Pを真空吸着して保持する。真空供給源20による真空吸引を停止して吸着ノズル18の真空を開放すると、吸着保持面18aに保持されていた部品Pが開放される。流量センサ19は、吸着ノズル18より流入して真空供給源20に吸引されるエアの流量を計測する。すなわち、流量センサ19は、吸着ノズル18より流入するエアの流量を計測するセンサとなる。
図3においてそれぞれのノズル駆動部10aは、ノズル軸16と結合された昇降軸(図示省略)をリニアモータにより昇降させるノズル昇降機構、昇降軸の高さ位置を検出するリニアエンコーダなどのノズル高さ検出センサ10b(図9参照)、昇降軸に加わる荷重を計測するロードセルなどの荷重センサ10c(図9参照)を備えている。このノズル昇降機構を駆動することにより、ノズル装着部17に装着された吸着ノズル18は個別に昇降する。すなわち、ノズル駆動部10aは、吸着ノズル18を動作させるノズル駆動手段となっている。
ノズル駆動部10aにより吸着ノズル18を個別に昇降させる過程において、吸着ノズル18の高さ位置はノズル高さ検出センサ10bによって個別に検出される。この高さ検出結果に基づいてノズル駆動制御部30c(図9参照)がノズル駆動部10a(ノズル駆動手段)を制御することにより、吸着ノズル18の高さ位置、下降速度Vd、上昇速度Vuを制御することができる。また、昇降軸には、ノズル装着部17に装着された吸着ノズル18に加わる荷重が伝搬して加わる。そのため、荷重センサ10cによって、吸着ノズル18に加わる荷重を計測することができる。
次に図5〜8を参照して、部品実装装置1によるフレキシブル基板4への部品Pの実装工程について説明する。図5は、図2におけるキャリア3のAA断面を示している。図5(a)において、キャリア3の上面3aには、基板の厚さtsのフレキシブル基板4が載置されている。フレキシブル基板4の上面である実装面4aには、左側の部品実装位置S(1)に部品の厚さtp(1)の部品P(1)が、右側の部品実装位置S(2)に部品の厚さtp(2)の部品P(2)が、それぞれ吸着ノズル18によって実装される。
高さセンサ14によってフレキシブル基板4の実装面4aの高さが測定され、ノズル高さ検出センサ10bによって吸着ノズル18の高さ位置(吸着保持面18aの高さ)が計測される。以下、フレキシブル基板4の実装面4aの高さおよび吸着ノズル18の吸着保持面18aの高さの基準点(高さがゼロの高さ位置)をキャリア3の上面3aの高さ位置とし、それぞれの基準点からの高さを単に「実装面高さhs」および「吸着保持面高さhn」と称する。
図5(a)において、フレキシブル基板4は、上方に反ることなくキャリア3の上面3aに密着して載置されている。そのため、部品P(1)の部品実装位置S(1)の実装面高さhs(1)および部品P(2)の部品実装位置S(2)の実装面高さhs(2)は、共に、フレキシブル基板4の基板の厚さtsと一致している。
図5(b)において、フレキシブル基板4は、部品実装位置S(1)および部品実装位置S(2)が上方(凸に)に反るようにキャリア3の上面3aに載置されている。フレキシブル基板4は柔軟性があるため、作業者が耐熱テープ15によってキャリア3の上面3aに貼り付ける際に弛みがあったり、部品実装位置S(2)のように先端に耐熱テープ15を貼付できなかったりすると(図2も参照)、フレキシブル基板4はキャリア3の上面3aに密着せずに上方に反ることがある。この場合、高さセンサ14によって計測される実装面高さhs(1)および実装面高さhs(2)は、フレキシブル基板4の基板の厚さtsより大きく(高く)なる。
次に図6、図7を参照して、上方に反ったフレキシブル基板4の部品実装位置S(1)に吸着ノズル18によって部品P(1)を実装する工程を順に説明する。フレキシブル基板4の部品実装位置S(1)には、事前に印刷機などによってクリームはんだ(図示省略)が印刷されている。以下、部品P(1)を実装する前に高さセンサ14によって計測された部品実装位置S(1)の高さを実装面高さhs(1)とする。
図7(a)は、部品P(1)の実装工程における吸着保持面18aおよび実装面4aの高さ位置の時間Tの変移を示している。図7(b)は、部品P(1)の実装工程における吸着ノズル18および実装面4aのZ方向の移動速度(下降速度Vd、上昇速度Vu)の時間Tの変移を示している。
図6(a)において、部品P(1)を真空吸着する吸着ノズル18が、部品実装位置S(1)に向けて下降速度Vd1で下降(矢印b)している。図6(b)において、下降速度Vd1で下降(矢印c)している部品P(1)の下面が、時間T1において実装面高さhs(1)で部品実装位置S(1)に当接する。この時の吸着保持面高さhnを、第1の高さH1とする。すなわち、第1の高さH1は、実装面高さhs(1)に部品P(1)の部品の厚さtp(1)を加えた高さとなる(H1=hs(1)+tp(1))。
図6(c)において、下降速度Vd1で下降してきた吸着ノズル18は、フレキシブル基板4の下面がキャリア3の上面3aに密着してフレキシブル基板4の実装面4aが水平となる時間T2において停止する。この時の吸着保持面高さhnは、基板の厚さtsに部品の厚さtp(1)を加えた高さとなる(hn=ts+tp(1))。
すなわち、時間T1から時間T2の間、フレキシブル基板4の実装面4aは吸着ノズル18が保持する部品P(1)の下面によって継続して下方に押し下げられる。そのため、時間T1から時間T2の間、実装面4aの高さ位置は吸着保持面18aの高さ位置から部品の厚さtp(1)の差を維持して吸着ノズル18と同じ下降速度Vd1で下降する(図7(a)、図7(b)参照)。
下降を停止した時間T2から上昇を開始する時間T3の間に、吸着ノズル18は真空が開放されて部品P(1)の真空吸引を停止する。そして時間T3において、真空が開放された吸着ノズル18は第1の速度Vu1で上昇(図6(d)の矢印d)を開始する。これによって、部品P(1)が部品実装位置S(1)に実装される。図7(a)において、時間T3から時間T4の間、吸着ノズル18が上昇するに伴い、フレキシブル基板4の実装面4a(部品実装位置S(1))の高さ位置は上方に反っていたフレキシブル基板4の復元力によって上方に移動(復元)する。
ここで、第1の速度Vu1は、フレキシブル基板4の実装面4aが上方に向かって回復(復元)する速度(以下「回復速度Vr」と称する)より遅いとする。その場合、吸着ノズル18の吸着保持面18aは、部品P(1)の上面から離れずに、吸着保持面18aによって部品P(1)を規制しながら第1の速度Vu1で上方に移動する(図7(b)参照)。そのため、時間T3から時間T4の間、すなわち吸着ノズル18の吸着保持面18aが第1の高さH1に到達するまで、部品P(1)を実装面4aに押さえ込む力が働いて部品P(1)は実装面4aから離れない。
そして、時間T4で吸着保持面18aは、第1の高さH1に到達し(hn=H1)、その後、吸着ノズル18は部品P(1)をフレキシブル基板4の実装面4aに残して(実装して)上昇する。このように、第1の速度Vu1は、上昇する吸着ノズル18の吸着保持面18aが第1の高さH1に達するまで、吸着ノズル18の吸着保持面18aがフレキシブル基板4(基板)に実装された部品Pの上面から離れない速度となる。
このように、上昇速度Vuが回復速度Vrより遅い場合、部品P(1)はフレキシブル基板4の復元力によって吸着保持面18aに接した状態で元の実装面高さhs(1)まで上昇するため、部品P(1)がフレキシブル基板4の実装面4a上でバウンドして位置がずれたりフレキシブル基板4から外れたりすることはない。厳密に言えば、部品P(1)を実装すると部品P(1)の重さで生じるたわみによって実装面4aの高さは元の実装面高さhs(1)まで復元しないが、以下、部品P(1)の重さによるたわみ分は無視して説明する。
図8は、吸着ノズル18が保持する部品P(1)をフレキシブル基板4に当接させて真空を開放した後、回復速度Vrより速い第2の速度Vu2で吸着ノズル18を上昇させた場合を示している。時間T3までは、図7と同じであるため説明を省略する。図8(a)において、時間T3から時間T4の間、吸着保持面18aは、実装面4aの高さ位置に部品P(1)の部品の厚さtp(1)を加えた図中に2点鎖線eで示す高さより高い位置を上昇している。すなわち、時間T3以降、吸着ノズル18の吸着保持面18aは部品P(1)の上面から外れた状態で上昇している。
時間T3以降、フレキシブル基板4の実装面4aは、部品実装位置S(1)に部品P(1)を搭載した状態で自己の復元力によって上方に移動(復元)する。図8(b)において、実装面4aは時間T3より上昇を開始し、時間T3から時間T4の間に最大の上昇速度である回復速度Vrに到達した後、元の実装面高さhs(1)に近づくにつれて減速して実装面高さhs(1)に到達すると上昇を停止する。または、実装面4a(部品実装位置S(1))は、実装面高さhs(1)を一旦超えて振動しながら実装面高さhs(1)に停止する場合もある。
このように、部品P(1)はフレキシブル基板4に対して押さえつけられる力が働くことなく上昇するため、クリームはんだの粘着力を超える力が発生した場合に、部品P(1)が実装面4a上でバウンドして部品実装位置S(1)からずれたりフレキシブル基板4から外れたりするおそれがある。つまり、真空を開放した後、吸着ノズル18を回復速度Vrより大きな上昇速度Vu(例えば、第2の速度Vu2)で上昇させることで部品実装時間を短縮することができる反面、実装された部品P(1)が不安定になるおそれがある。
次に図9を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。部品実装装置1は、制御部30、記憶部31、基板搬送部2、部品供給部5、実装ヘッド9、ヘッド移動機構11、部品認識カメラ12、基板認識カメラ13、高さセンサ14、流量センサ19、真空供給源20、表示部32を備えている。実装ヘッド9は、ノズル駆動部10a、ノズル高さ検出センサ10b、荷重センサ10cを備えている。
制御部30はCPU機能を備える演算処理装置であり、内部処理機能として実装制御部30a、高さ計測制御部30b、ノズル駆動制御部30c、判断部30d、速度設定部30eを備えている。記憶部31は記憶装置であり、実装データ31a、実装面高さデータ31b、ノズル速度データ31c、回復速度データ31dなどを記憶する。実装データ31aには、キャリア3におけるフレキシブル基板4の位置、フレキシブル基板4における部品Pの部品実装位置S、実装される部品Pの種類、部品の厚さtpなどの情報が含まれる。ノズル速度データ31cには、部品実装時の吸着ノズル18の下降速度Vd、上昇速度Vu(第1の速度Vu1、第2の速度Vu2)などが含まれる。
図9において、実装制御部30aは、実装データ31aに基づいて、基板搬送部2、部品供給部5、実装ヘッド9、ヘッド移動機構11、真空供給源20を制御して、吸着ノズル18によるフレキシブル基板4への部品Pの実装を制御する。高さ計測制御部30bは、ヘッド移動機構11、高さセンサ14を制御して、フレキシブル基板4の部品実装位置Sにおける実装面4aの高さ(実装面高さhs)の計測を制御する。計測結果は、実装面高さデータ31bとして記憶部31に記憶される。
ノズル駆動制御部30cは、ノズル速度データ31cに基づいて、ノズル駆動部10a、ノズル高さ検出センサ10b、真空供給源20を制御して、部品実装における吸着ノズル18の動作、第1の速度Vu1の計測における吸着ノズル18の動作を制御する。
より具体的には、部品実装において、ノズル駆動制御部30cは、部品Pを真空吸着する吸着ノズル18を下降させ、部品Pがフレキシブル基板4(基板)の実装面4aに当接してからさらに所定量下降させる。そして、ノズル駆動制御部30cは、吸着ノズル18の真空を開放した後、少なくとも吸着ノズル18を下降させる前に計測したフレキシブル基板4の実装面4aの高さ(実装面高さhs)に部品の厚さtpを加えた第1の高さH1まで第1の速度Vu1で吸着ノズル18を上昇させる。その後、ノズル駆動制御部30cは、第1の速度Vu1よりも速い第2の速度Vu2で吸着ノズル18を上昇させる。
図10(b)に、ノズル駆動制御部30cによって制御された部品実装における吸着ノズル18のZ方向の移動速度(下降速度Vd、上昇速度Vu)を示す。また、図10(a)に、図5(b)に示す上方に反った部品実装位置S(1)に部品P(1)を実装する場合の部品実装における吸着ノズル18の吸着保持面18aとフレキシブル基板4の実装面4a(部品実装位置S(1))の高さ位置を示す。ノズル駆動制御部30cは、時間T6まで部品P(1)を真空吸着する吸着ノズル18を下降速度Vd1で下降させる(図6(a)も参照)。下降の途中、時間T5において部品P(1)の下面がフレキシブル基板4実装面4aに当接する(図6(b)も参照)。
ノズル駆動制御部30cは、時間T5から時間T6にかけて、部品P(1)の下面が実装面4aを押し下げてフレキシブル基板4の実装面4aが水平になるまで(所定量)下降させる(図6(c)も参照)。なお、ここで下降させる所定量は実装面4aが水平になる下降量(hs(1)−ts)に限定されることなく、固定値などを任意に設定してもよい。ノズル駆動制御部30cは、時間T6から時間T7の間に吸着ノズル18の真空を開放する。その後、ノズル駆動制御部30cは、時間T7から時間T8の間、第1の速度Vu1で吸着ノズル18を上昇させる。時間T8において、吸着保持面18aが第1の高さH1に到達する。その後、ノズル駆動制御部30cは、時間T8より第2の速度Vu2で吸着ノズル18を初期の高さ位置まで上昇させる。
このように、吸着保持面18aが第1の高さH1に到達するまでは回復速度Vrより遅い第1の速度Vu1で吸着ノズル18を上昇させることにより、部品P(1)を実装面4a上に安定して実装させることができる。また、吸着保持面18aが部品P(1)の上面より離れる第1の高さH1以降は、より速い第2の速度Vu2(例えば、ノズル駆動部10aの最大上昇速度)で吸着ノズル18を上昇させることで、部品実装時間を減少させることができる。このように、吸着ノズル18を制御することで、上方に凸に反っているフレキシブル基板4(基板)であっても安定して部品Pを実装することができる。
図9において、第1の速度Vu1の計測において、ノズル駆動制御部30cは、部品Pを真空吸着する吸着ノズル18を下降させ、部品Pがフレキシブル基板4(基板)の実装面4aに当接してからさらに所定量下降させる。ノズル駆動制御部30cは、吸着ノズル18の真空を開放した後、第1の高さH1を超える高さまで吸着ノズル18を上昇させる動作を異なる複数の上昇速度Vuで繰り返し実行させる。
判断部30dは、第1の速度Vu1の計測において、部品Pが吸着ノズル18に接しているか否かを判断する。より具体的には、判断部30dは、真空を開放した吸着ノズル18が上昇して吸着保持面18aが第1の高さH1に到達する間に再び真空供給源20より真空吸引させ、その間に流量センサ19によって吸着ノズル18から流入するエアの流量を計測する。
そして判断部30dは、エアの流量の最大値が所定値より小さければ(もしくはゼロであれば)部品Pが吸着ノズル18に接していたと判断し、所定値より大きければ部品Pが吸着ノズル18に接していなかったと判断する。つまり、吸着ノズル18が部品Pより速く上昇して吸着保持面18aが部品Pの上面より離れると、吸着保持面18aよりエアが流入することを流量センサ19によって検出する。
また、判断部30dは、真空を開放した吸着ノズル18が上昇して吸着保持面18aが第1の高さH1に到達する間に、荷重センサ10cによって吸着ノズル18に加わる荷重を計測する。そして判断部30dは、吸着ノズル18に加わる荷重の最大値が所定値より大きければ部品Pが吸着ノズル18に接していたと判断し、所定値より小さければ(もしくはゼロであれば)部品Pが吸着ノズル18に接していなかったと判断する。つまり、吸着ノズル18が部品Pより速く上昇して吸着保持面18aが部品Pの上面より離れると、部品Pから吸着ノズル18に加わる上向きの荷重がなくなることを荷重センサ10cによって検出する。
図9において、速度設定部30eは、第1の速度Vu1の計測において、ノズル駆動制御部30cが繰り返し実行した複数の上昇速度Vuの中で、判断部30dによって部品Pの上面が第1の高さH1まで吸着ノズル18の吸着保持面18aに接していると判断された上昇速度Vuを第1の速度Vu1として設定する。もし、部品Pの上面が第1の高さH1まで吸着ノズル18の吸着保持面18aに接していると判断された上昇速度Vuが複数存在する場合には、最も速い上昇速度Vuを設定するのが好ましい。
図11に、第1の速度Vu1の計測において、上昇速度Vuを上昇速度Vu(1)、Vu(2)、・・・と増加させながら流量センサ19によってエアの最大流量を(図11(a))、荷重センサ10cによって最大荷重を(図11(b))、それぞれ計測した結果を模式的に示す。図11(a)において、上昇速度Vu(5)までほぼゼロであったエアの最大流量が上昇速度Vu(6)で急増しているため、判断部30dは、上昇速度Vu(5)と上昇速度Vu(6)の間に回復速度Vrがあって、この間に部品Pが吸着ノズル18に接しなくなったと判断する。速度設定部30eは、判断部30dによる判断の結果より、例えば回復速度Vrより遅い上昇速度Vu(5)を第1の速度Vu1として設定する。設定された第1の速度Vu1は、ノズル速度データ31cとして記憶部31に記憶される。
図11(b)において、上昇速度Vu(5)まで吸着ノズル18に加わっていた最大荷重が上昇速度Vu(6)でほぼゼロになっているため、判断部30dは、上昇速度Vu(5)と上昇速度Vu(6)の間に回復速度Vrがあって、この間に部品Pが吸着ノズル18に接しなくなったと判断する。速度設定部30eは、判断部30dによる判断の結果より、例えば回復速度Vrより遅い上昇速度Vu(5)を第1の速度Vu1として設定する。設定された第1の速度Vu1は、ノズル速度データ31cとして記憶部31に記憶される。
なお、回復速度Vrは、部品実装位置Sに実装される部品Pの重さ、上方に反っているフレキシブル基板4に加わる張力などに依存して変動する。そのため、計測される第1の速度Vu1は部品実装位置Sによって異なる。速度設定部30eは、部品実装位置S毎に第1の速度Vu1をノズル速度データ31cに記憶させても良いし、複数の部品実装位置Sの第1の速度Vu1の中で最小の第1の速度Vu1を全ての部品実装位置Sのノズル速度データ31cとして記憶させてもよい。
図9において、ノズル駆動制御部30c、高さ計測制御部30b、速度設定部30eは、次のように連携しながら第1の速度Vu1を設定することもできる。すなわち、ノズル駆動制御部30cは、部品Pを真空吸着させずに吸着ノズル18を下降させ、吸着ノズル18がフレキシブル基板4(基板)の実装面4aに当接してからさらに所定量下降させた後、フレキシブル基板4の実装面4aの高さを高さセンサ14によって計測しながら第2の速度Vu2で吸着ノズル18を上昇させる(図8の時間T3以降も参照)。
高さ計測制御部30bは、高さセンサ14を制御して上方に回復する実装面4aの高さの時間推移を計測させる。そして速度設定部30eは、高さセンサ14が計測しているフレキシブル基板4の実装面4aの高さが、吸着ノズル18を下降させる前に計測したフレキシブル基板4の実装面4aの高さ(実装面高さhs(1))まで回復する回復速度Vr以下の速度を第1の速度Vu1として設定する。設定された第1の速度Vu1は、ノズル速度データ31cに記憶される。
次に図12のフローに則して、図5、図6、図10を参照しながら部品実装装置1における部品実装方法について説明する。ここでは、図5(b)に示す上方に凸状に反った部品実装位置S(1)に部品P(1)を実装する場合を例に説明する。図12において、まず、高さ計測制御部30bは高さセンサ14によって、フレキシブル基板4(基板)の実装面4aの高さ(実装面高さhs(1))を計測する(ST1:実装面高さ計測工程)(図5(b)参照)。
次いでノズル駆動制御部30cは、部品P(1)を真空吸着する吸着ノズル18を下降させ(図6(a)参照)、部品P(1)がフレキシブル基板4の実装面4aに当接してから(図6(b)、図10の時間T5参照)さらに所定量下降させ(ST2:ノズル下降工程)、吸着ノズル18の下降を停止させる(ST3:下降停止工程)(図6(c)、図10の時間T6参照)。次いでノズル駆動制御部30cは、吸着ノズル18の真空を開放させる(ST4:真空開放工程)。
図12において、次いでノズル駆動制御部30cは、少なくとも高さセンサ14が計測したフレキシブル基板4の実装面4aの高さ(実装面高さhs(1))に部品の厚さtp(1)を加えた第1の高さH1まで第1の速度Vu1で吸着ノズル18を上昇させる(ST5:第1上昇工程)(図10の時間T7から時間T8参照)。その後、ノズル駆動制御部30cは、第1の速度Vu1よりも速い第2の速度Vu2で吸着ノズル18を上昇させる(ST6:第2上昇工程)(図6(d)、図10の時間T8以降参照)。次いでノズル駆動制御部30cは、初期の高さ位置で吸着ノズル18の上昇を停止させる(ST7:上昇停止工程)。
次に図13のフローに則して、図11を参照しながら部品実装装置1における第1の速度設定方法の第1の実施例について説明する。以下、前述の部品実装方法と同じ工程については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。図13において、ノズル駆動制御部30cは、上昇速度Vuを初期値である上昇速度Vu(1)に設定する(ST11)。次いで実装面高さ計測工程(ST1)が実行されてフレキシブル基板4(基板)の実装面4aの高さ(実装面高さhs)が計測され、ノズル下降工程(ST2)が実行されて部品Pを真空吸着する吸着ノズル18を下降させ、部品Pがフレキシブル基板4の実装面4aに当接してからさらに所定下降させる。
次いで下降停止工程(ST3)、真空開放工程(ST4)が実行されて吸着ノズル18の真空が開放される。次いでノズル駆動制御部30cは、設定された上昇速度Vu(1)で第1の高さH1を超える高さまで吸着ノズル18を上昇させる(ST12)。次いで判断部30dは、流量センサ19による吸着ノズル18より流入するエアの流量の計測結果、または、荷重センサ10cによる吸着ノズル18に加わる荷重の計測結果を基に、第1の高さH1まで部品Pが吸着ノズル18に接しているか否かを判断する(ST13)。
第1の高さH1まで部品Pが吸着ノズル18に接していると判断された場合(ST13においてYes)、ノズル駆動制御部30cは、上昇速度Vuを所定だけ増加させて上昇速度Vu(2)に設定する(ST14)。次いでノズル下降工程(ST2)に戻って、吸着ノズル18を上昇速度Vu(2)で上昇させながら第1の高さH1まで部品Pが吸着ノズル18に接しているか否かを判断する。図11の例では、上昇速度Vu(6)において第1の高さH1まで部品Pが吸着ノズル18に接していないと判断され(ST13においてNo)、速度設定部30eは、第1の高さH1まで部品Pが吸着ノズル18に接している上昇速度Vu(5)を第1の速度Vu1に設定する(ST15)。
このように、第1の高さH1を超える高さまで吸着ノズル18を上昇させる一連の動作を、異なる複数の上昇速度Vuで繰り返し実行し、複数の上昇速度Vuの中で、第1の高さH1まで部品Pが吸着ノズル18に接している上昇速度Vuを第1の速度Vu1として設定している。このように、専用のセンサ、計測装置を追加することなく、部品実装装置1で第1の速度Vu1を計測・設定することができる。
次に図14のフローに則して、図8を参照しながら部品実装装置1における第1の速度設定方法の第2の実施例について説明する。第1の速度設定方法の第2の実施例は、高さセンサ14を用いた一度の計測によって第1の速度Vu1を設定しているところが第1の実施例と異なる。以下、前述の部品実装方法と同じ工程については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図14において、実装面高さ計測工程(ST1)が実行されてフレキシブル基板4(基板)の実装面4aの高さ(実装面高さhs)が計測され、ノズル下降工程(ST2)が実行されて部品Pを真空吸着しない吸着ノズル18が下降され、部品Pがフレキシブル基板4の実装面4aに当接してからさらに所定下降される。次いで下降停止工程(ST3)が実行されて吸着ノズル18の下降が停止される。次いで高さ計測制御部30bが高さセンサ14によってフレキシブル基板4の実装面4aの高さを計測させながら、ノズル駆動制御部30cが第2の速度Vu2で吸着ノズル18を上昇させる(ST21)。
次いで高さ計測制御部30bは、高さセンサ14の計測結果を基に回復速度Vrを算出し(ST22)、速度設定部30eは回復速度Vrに基づいて第1の速度Vu1を設定する(ST23)。すなわち、速度設定部30eは、高さセンサ14が計測しているフレキシブル基板4の実装面4aの高さが、吸着ノズル18を下降させる前に計測したフレキシブル基板4の実装面4aの高さ(実装面高さhs)まで回復する回復速度Vr以下の速度を第1の速度Vu1として設定している。このように、本実施例では一度の計測で第1の速度Vu1を設定することができる。
上記説明したように、本実施の形態の部品実装装置1は、基板搬送部2と、吸着ノズル18と、ノズル駆動部10a(ノズル駆動手段)と、ノズル駆動制御部30cと、高さセンサ14とを備えている。そして、ノズル駆動制御部30cは、部品Pを真空吸着する吸着ノズル18を下降させ、部品Pがフレキシブル基板4(基板)の実装面4aに当接してからさらに所定量下降させている。そして、吸着ノズル18の真空を開放した後、少なくとも吸着ノズル18を下降させる前に計測したフレキシブル基板4の実装面4aの高さ(実装面高さhs)に部品の厚さtpを加えた第1の高さH1まで第1の速度Vu1で吸着ノズル18を上昇させ、その後、第1の速度Vu1よりも速い第2の速度Vu2で吸着ノズル18を上昇させている。
これによって、上方に反っているフレキシブル基板4(基板)であっても、部品Pが実装面4a上でバウンドして位置がずれたりフレキシブル基板4から外れたりすることなく、安定して部品Pを実装することができる。
なお上記では、フレキシブル基板4に部品Pを実装する場合を用いて説明したが、実装対象の基板はフレキシブル基板4に限定されることはない。例えば、基板搬送部2に保持したプリント基板に部品Pを実装する際に、プリント基板が上方に反っている場合にも適用することができる。