以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1が示された正面図であり、図2はPETボトル1の上面図である。PETボトル1は、その軸方向に、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを順次有する。そして、例示されたPETボトル1は、胴部30に、複数の壁部31、及びPETボトル1の周方向で隣り合う壁部31をつなぐコーナー部32を有する略四角筒状のいわゆる角ボトルである。
なお、以下では、説明の便宜上、PETボトル1の軸方向が上下に延びるように正立された図1の状態において容器内への中身の充填が行われる口部10を上とする。PETボトル1は、底部40から口部10までの全高H1を有して形成されている。
口部10は、中身の充填口、及び注出口となり、口部10に、図示せぬ蓋が取り付けられることによってPETボトル1が密閉される。口部10は、高温での中身の充填に必要な耐熱性を有するようにいわゆる結晶化装置での加熱によって白く着色されるまで結晶化されていても良い。
肩部20は、その上側が口部10に連なり、一方で、その下側が胴部30に連なる。肩部20は、軸方向の上側から下側に向かってPETボトル1の径方向に広がる角錐台筒状に構成される。
PETボトル1は、肩部20と胴部30との間を周方向に延びる稜線21を有する。稜線21は、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収する機能を有する。稜線21は、軸方向にうねっており、コーナー部32において最も胴部30の側に位置する。コーナー部32の上の領域における肩部20はそのままでは、軸方向の荷重によって屈曲しやすい。しかしながら、稜線21が、コーナー部32において最も胴部30の側に位置する構成によって屈曲しやすい箇所に荷重が集中せずに分散し、PETボトル1の座屈強度が高まる。
肩部20には、平板状の複数のカット面が形成されている。そして、これらのカット面の境となる辺が主に、軸方向に延びることによって、PETボトル1の軸方向の荷重に対する支柱として機能している。
壁部31の上には、稜線21を底辺とした軸方向に長い二等辺三角形の領域がPETボトル1の外側に向けて突出する稜線22によって形成されている。更に、二等辺三角形の領域の内側ではPETボトル1の内側に向けて突出する3本の稜線23によって3つの三角形のパネルが形成されている。壁部31の上の領域における肩部20は、このように構成されることによって、PETボトル1の軸方向、及び径方向の荷重に対する強度が高まるとともに、PETボトル1の内部の圧力が変化した際にもいびつに変形することなくその形状が維持される。
更に、肩部20は、PETボトル1の外側に向けて突出し、コーナー部32における周方向の中心を起点に軸方向に延びる稜線24を有する。この稜線24は、押された際に、PETボトル1の内側に凹みやすい。更に、この稜線24の口部10の側と、稜線21における壁部31とコーナー部32との境との間にもPETボトル1の外側に向けて突出する稜線25が形成されている。したがって、コーナー部32の上の領域の肩部20には、中心角を二分する稜線24を有する扇形の沈みパネル26が形成されている。稜線25は、稜線24が押された際の変形が扇形の外の領域に波及することを防止する。
胴部30には、PETボトル1の中身の情報や、意匠性を高めるための模様等が印刷されたシュリンクラベルやロールラベル等のラベルが包装される。加熱収縮によって装着されるシュリンクラベルには熱収縮性の良い二軸延伸ポリスチレンフィルム等が用いられる。シュリンクラベルは、PETボトル1とは材料が異なるため、PETボトル1の使用後に再資源化される際には分離される。シュリンクラベルは主に、コーナー部32に引っかかって装着されているため、コーナー部32での引っかかりが取り除かれることではがしやすくなる。稜線24が押されると、コーナー部32の付近において、PETボトル1とラベルとの間に隙間ができてラベルがつかみやすくなるとともにコーナー部32の引っかかりが部分的に取り除かれ、ラベルを容易にはがすことができる。
図1等に例示の肩部20に形成されている複数のカット面は平板状に形成されており、PETボトル1の外側や内側には湾曲していない。しかしながら、肩部20、特に扇形の沈みパネル26は、PETボトル1の外側に湾曲するように構成されていると、PETボトル1と、ラベルとの間により広い隙間ができて、ラベルをより容易にはがすことができる。
肩部20は、上述された構成には限定されないものの、PETボトル1の強度や形状の維持機能、ラベルのはがしやすさ等の点で稜線21や、稜線24を有する構成であることが好ましい。
胴部30は、壁部31、及びコーナー部32からなる角筒部としての上側角筒部50u、及び下側角筒部50dと、上側角筒部50u、及び下側角筒部50dを軸方向に分断し、軸方向に直交する横断面が円形の円筒部60とを有する。
図3はPETボトル1の底面図である。図1や、図2、図3等に例示の上側角筒部50u、及び下側角筒部50dは各々、互いに同一の形状からなる4つの壁部31と、4つのコーナー部32とを有している。コーナー部32は径方向の外側に湾曲している。上側角筒部50u、及び下側角筒部50dはいずれも、上下で径方向の寸法が同一で、全体として略正四角筒の形状を有している。上側角筒部50u、及び下側角筒部50dは、外側に湾曲するコーナー部32を有することによって円筒に近い形状となり、その座屈強度が向上される。
上側角筒部50u、及び下側角筒部50dはいずれも、対角距離D1、及び対面距離D2を有して構成される。対角距離D1は、対面距離D2よりも大である。対角距離D1は例えば84.5 mmとされ、対面距離D2は例えば77.1 mmとされる。上側角筒部50u、及び下側角筒部50dの対面距離D2が同一に形成されることによって上側角筒部50u、及び下側角筒部50dの各々の壁部31が接地部位となって軸方向が水平の横向きでPETボトル1を安定して置くことができる。
上側角筒部50u、及び下側角筒部50dは、径方向の内側に向かってくぼんで壁部31、及びコーナー部32を周方向に横切る複数の環状の周溝51を有する。周溝51は、水平方向の断面形状が略角丸正方形とされており、鉛直方向の断面形状が平らな底面を有する略テーパ状とされている。ただし、周溝51の鉛直断面の形状は円弧状やV字状とされていても良い。周溝51は、径方向の荷重に耐える強度である側壁強度を高める機能を有する。そして、上側角筒部50uの側壁強度が高まることで、上側角筒部50uへのラベルの取り付けやすさが向上する。更に、周溝51は、軸方向の荷重に対してクッションの役割を果たし、胴部30の座屈を防止する機能を有する。
周溝51の深さは壁部31では略一定とされている。一方で、コーナー部32では周方向の中心で深さが最小となるように周溝51が形成されている。そして、周溝51の深さは、壁部31と、コーナー部32とでは異なり、コーナー部32より、壁部31での深さが大である。
このように構成される周溝51は、壁部31では、側壁強度を高め、かつ軸方向の荷重に対する座屈を防止し、コーナー部32では、軸方向の荷重に対する圧縮変形量を小さくする機能を有する。壁部31において側壁強度が高まるため、PETボトル1を安定して横向きで積載することができる。そして、周溝51は、コーナー部32への荷重の集中を防いで胴部30の座屈強度を高める機能を有する。更に、周溝51は、径方向において、PETボトル1の中心からの距離があるコーナー部32での深さが小であるため凹凸の激しい形状とはならずに賦形性が良好である。
周溝51は、周方向に一定の幅で形成されていても良いものの、壁部31の周方向における中心での幅が最大となるように形成されている。周溝51の幅は、大きすぎると、軸方向の荷重に対する強度が低下するとともに、圧縮変形量が増大してしまう。したがって、周溝51は、コーナー部32より壁部31での幅が大とされている。周溝51は、このように構成されることよって胴部30の剛性を高める機能を有する。更に、周溝51は、深さが大である壁部31での幅が大であるため凹凸の激しい形状とはならずに賦形性が良好である。
上側角筒部50uには、軸方向の上側から順に4本の周溝51a、51b、51c、及び51dが形成されている。下側角筒部50dには、軸方向の上側から順に2本の周溝51e、及び51fが形成されている。周溝51は、その深さ、及び幅の寸法の異なる3種類のものから構成されている。周溝51aと周溝51f、周溝51bと周溝51c、及び周溝51dと周溝51eとがそれぞれ同じ寸法とされている。そして、周溝51の深さは、周溝51d>周溝51a>周溝51bとされ、周溝51の幅は、周溝51d>周溝51a>周溝51bとされている。
周溝51aや、周溝51dによって、各溝の付近のみにとどまらず、周溝51aと、周溝51dとの間の領域まで、すなわち上側角筒部50uの側壁強度が高められる。したがって、周溝51b、及び周溝51cの深さ、及び幅の寸法を小とすることができる。そして、上側角筒部50uの凹凸が抑えられるため、例えば、シュリンクラベルが装着された際の外観不良が生じにくくなり、製造効率や、ラベルによるディスプレイ効果(宣伝効果)を向上させることができる。
なお、ここでは、上側角筒部50uに、4本の周溝51a、51b、51c、及び51dが形成されており、下側角筒部50dに、2本の周溝51e、及び51fが形成されている例が示された。しかしながら、その数は特に限定されるものではなく、上側角筒部50uや、下側角筒部50dの上下方向の幅や、溝の深さ、幅等によって適宜設計されるものである。更に、すべての周溝51の深さや幅が同一に設計されていても良い。
円筒部60は、くびれ部61を有する。くびれ部61は、胴部30が径方向に絞られてなる。くびれ部61は、胴回りが短いため握りやすい。したがって、くびれ部61は把持部として機能し、PETボトル1を持ちやすくすることができる。
くびれ部61は、軸方向に延びるリブ62を有する。リブ62は、PETボトル1の外側に向けて突出している。リブ62は、PETボトル1の軸方向、及び径方向の双方の荷重に対する支柱としての機能を有する。リブ62は、くびれ部61の周方向に複数配置される。複数のリブ62が配置されたくびれ部61は、強度が向上して変形しにくくなり、PETボトル1を持ちやすくすることができる。更に、リブ62は、握られた指にかかり、PETボトル1を持ちやすくすることができる。
くびれ部61の上端では、隣り合うリブ62が上辺63によって接続されている。上辺63は上側に向かって円弧状に湾曲している。同様に、くびれ部61の下端では、隣り合うリブ62が下辺64によって接続されている。下辺64は下側に向かって円弧状に湾曲している。上辺63、及び下辺64が形成されることによって円筒部60は変形しにくくなり、PETボトル1を持ちやすくすることができる。更に、湾曲した上辺63、及び下辺64は、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収し、座屈強度を高めることができる。そして、隣り合う2本のリブ62を対辺とし、この対辺と、上辺63と、下辺64とによって長円状のパネル65が形成されている。したがって、くびれ部61は、径方向の内側に湾曲したパネル65が周方向に複数連なって筒状に構成されている。
なお、上辺63よりも上側の領域、及び下辺64よりも下側の領域は上下同径の円筒状である。
リブ62を含めてパネル65は、上辺63、及び下辺64を起点として軸方向の中心に向かって径を縮小するように曲面状にそがれた形状を有している。そして、リブ62は、くびれ部61の軸方向に直交する任意の横断面において径方向の中心からの距離が最大となるように構成される。すなわち、くびれ部61の横断面は、リブ62を頂点とした多角形となる。このように構成されるPETボトル1は、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ持ちやすい。
なお、くびれ部61の横断面に形成される多角形の辺は、径方向の内側に向かって湾曲した曲線状であっても良く、直線状であっても良く、外側に向かって湾曲した曲線状であっても良い。しかしながら、くびれ部61の横断面の辺が内側に湾曲しているとPETボトル1がより持ちやすくなる。
図1等に例示されるようにリブ62は、周方向へのねじれを有していることが好ましい。リブ62がねじれを有していることによって握られた指に更にかかりやすくなり、PETボトル1がより持ちやすくなる。更に、リブ62がねじれを有していることによって軸方向の荷重が周方向に分散され、PETボトル1の座屈強度を高めることができる。
リブ62は、鉛直線Lに対して角度θtの傾きを有している。角度θtは、大きすぎると、リブ62の支柱としての機能が薄れる。したがって、角度θtは、持ちやすさを有しながらPETボトル1の強度を保つ観点で、0°以上、60°以下であることが好ましい。更に、持ちやすさをより向上させる観点において角度θtは、20°以上、40°以下であることがより好ましい。一方で、座屈強度をより向上させる観点において角度θtは、0°以上、35°以下であることがより好ましい。
なお、リブ62のねじれは、なくても構わず、反時計回りであっても良いものの、図1等に例示されるように時計回りであるとより持ちやすくて良い。
パネル65の個数が少なすぎるとPETボトル1の座屈強度が不足しやすくなってしまう。一方で、パネル65の個数が多すぎるとPETボトル1の持ちやすさが低下してしまう。したがって、PETボトル1の強度を保ちながら持ちやすさを高める観点からパネル65の個数は、5以上、12以下であることが好ましく、6以上、8以下であることがより好ましい。図1等に例示されるPETボトル1のパネル65は6つで構成されている。
パネル65が奇数で構成されると、くびれ部61の径方向の両端においてリブ62と、パネル65の面とが対向することになる。一方で、パネル65が偶数であると、パネル65の面同士が対向することとなる。パネル65の面同士が対向すると、くびれ部61の直径方向の長さがより短くなって持ちやすくなる。したがって、パネル65は偶数で構成されることが好ましい。
なお、PETボトル1への荷重に対する応力がくびれ部61の特定の箇所に集中すること、及び持ちやすさが低下することを防止する観点から複数のパネル65は同一形状とされることが好ましい。
更に、PETボトル1の軽量性が問題とならない場合においてはパネル65が軸方向に2分割で構成されていても構わない。
くびれ部61の軸方向の距離H2は、第二指から第五指までの手の幅に基づいて設計されると良い。手の平全体がくびれ部61を覆うことによってPETボトル1を安定して持つことができる。くびれ部61の軸方向の距離H2が短すぎるとくびれ部61から指がはみ出てPETボトル1の持ちやすさが低下してしまう。一方で、くびれ部61の軸方向の距離H2が長すぎるとPETボトル1の強度を保つのが難しくなる。したがって、PETボトル1の持ちやすさを有しながら強度を保つ観点で、くびれ部61は、軸方向の距離H2が50 mm以上、100 mm以下であることが好ましく、55 mm以上、85 mm以下であることがより好ましい。
PETボトル1は、くびれ部61の軸方向の距離H2を充分に有して構成される。このように構成されるくびれ部61は、把持部として取り扱われるように誘導するための強い手がかりを示している。したがって、PETボトル1は、説明なしで、くびれ部61を把持部として取り扱うことができるように構成されている。
PETボトル1の全高H1に対するくびれ部61の軸方向の距離H2の比の値(H2/H1)が小さすぎると把持部が小さくなってPETボトル1が持ちづらくなってしまう。一方で、H2/H1が大きすぎると上側角筒部50uが小さくなってラベルを表示する面積が狭くなってしまう。更に、H2/H1が大きすぎると、PETボトル1の強度を保つことが難しくなってしまう。したがって、くびれ部61は、PETボトル1の全高H1に対するくびれ部61の軸方向の距離H2の比の値(H2/H1)が0.15以上、0.45以下であることが好ましい。
くびれ部61は、円筒部60と同径の最大胴径D3に対して最小胴径D4となるように径が絞られて形成されている。ブロー成形によってPETボトル1が形成される際にくびれ部61は、PETボトル1の径方向のより内側とされることによってその肉厚をより厚くすることができる。くびれ部61は、厚肉であるほど強度が高まり、その構造を維持することができる。そして、くびれ部61の肉厚は0.15 mm以上、0.50 mm以下であることが好ましい。
くびれ部61の最大胴径D3に対する最小胴径D4の比の値(D4/D3)は、0.65以上、0.95以下であることが好ましく、0.70以上、0.85以下であることがより好ましい。このような構成とされることで、PETボトル1の持ちやすさを向上させることができるとともに座屈強度を効果的に高めることができる。最大胴径D3に対する最小胴径D4の比の値(D4/D3)が大きすぎるとPETボトル1の持ちやすさが向上されにくくなってしまう。一方で、最大胴径D3に対する最小胴径D4の比の値(D4/D3)が小さすぎるとPETボトル1の軸方向の荷重に対する応力が最小胴径D4の付近に集中しすぎてしまって充分な座屈強度が得られない。
PETボトル1は、径の絞られたくびれ部61と、軸方向に延びるリブ62とを有することで、座屈強度を充分に確保しながら持ちやすさを向上するように構成される。
くびれ部61の最大胴径D3と、上側角筒部50u、及び下側角筒部50dの対面距離D2との大小関係に制限はない。しかしながら、PETボトル1の積載効率等の観点から円筒部60は、上側角筒部50u、及び下側角筒部50dの内接円であることが好ましい。すなわち、対面距離D2と、最大胴径D3とが同じ長さを有していることが好ましい。
上側角筒部50u、及び下側角筒部50dに対する円筒部60の軸方向の位置は図1等に示された構成には限定されない。例えば、円筒部60は、図1等に示された位置よりも上側角筒部50uの側に配置されていても良い。このように構成されることによって、ラベルの貼りつけられる面積が狭くなるものの、中身がより注出しやすくなる。
上側角筒部50u、及び下側角筒部50dと、円筒部60とはそれぞれ、径方向にくぼんで周方向に延びる連接溝70、及び連接溝75を介して接続されることが好ましい。連接溝70、及び連接溝75は、軸方向の荷重をクッションとして受け止め、連接部分の屈曲を防ぐ機能を有する。更に、連接溝70、及び連接溝75は、連接部分の付近の側壁強度を高める機能を有する。連接溝70、及び連接溝75は、水平方向の断面形状が円形とされており、鉛直方向の断面形状が平らな底面を有する略テーパ状とされている。連接溝70、及び連接溝75は、鉛直方向の断面形状が円弧状やV字状とされていても良い。
連接溝70、及び連接溝75は、その深さが浅すぎると、側壁強度を高めにくくなってしまう。一方で、連接溝70、及び連接溝75は、その深さが深すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下しやすくなってしまう。連接溝70、及び連接溝75の深さは、最大胴径D3に対する比の値が0.005以上、0.07以下であることが好ましく、0.03であることがより好ましい。
連接溝70、及び連接溝75の幅が広すぎると、側壁強度を高めにくくなってしまう。一方で、連接溝70、及び連接溝75の幅が狭すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下しやすくなってしまう。連接溝70、及び連接溝75の幅は、連接溝70、及び連接溝75の深さに対する比の値が0.5以上、5.0以下であることが好ましい。
なお、連接溝70の上側角筒部50uの側、及び連接溝75の下側角筒部50dの側における面の傾斜が一様なので、この面が、コーナー部32において、ちょうど面取りしたような形状となっている。したがって、屈曲しやすいコーナー部32に軸方向の荷重が集中せずに分散し、PETボトル1の座屈強度が高まる。
図4は、PETボトル1の底部40が拡大された正面図である。底部40は、胴部30の下側角筒部50dの下側に連なる。底部40は、コーナー部41と、底壁42と、ドーム43とを有している。コーナー部41は、PETボトル1の軸方向の下側、及び径方向の外側に向かって湾曲している。略平板環状の底壁42は、胴部30に対して垂直方向に延び、PETボトル1の接地面となる。ドーム43は、PETボトル1の内側(軸方向の上側)に向けて湾曲する中空半球状に形成されている。ドーム43は、PETボトル1の中身の温度や、内部の圧力の変化による変形を防ぐ機能を有する。
ドーム43は、接地面に対して傾斜を有する。ドーム43の周端における傾斜の角度θdが小さすぎると変形を防ぐことが難しくなってしまう。一方で、ドーム43の傾斜の角度θdが大きすぎるとPETボトル1の成形時の賦形性が低下しやすくなる。したがって、圧力等を効果的に分散して変形を防止し、かつ賦形性を良好とする観点で、ドーム43の傾斜の角度θdが8°以上、18°以下であることが好ましい。
ドーム43は、リブ44を更に有する。図3に例示されるリブ44は4つであり、それぞれが、底面視で、中心から壁部31の方に向かって、すなわち上側角筒部50u、及び下側角筒部50dの対面の方向に放射状に延びている。リブ44は、ドーム43を補強する機能を有する。リブ44は、ドーム43とは傾斜の角度を異ならせることで形成することができる。このとき、ドーム43の周端の側でより急傾斜でリブ44を形成すると、過延伸による白化や、PETボトル1の賦形性の低下が起こりやすくなってしまう。したがって、リブ44は、ドーム43の周端の側でより緩傾斜であることが好ましい。
このように、底部40は、正面視で、山状のドーム43と谷状のリブ44とがそれぞれ、4方向に形成されている。特に、山状のドーム43が、PETボトル1の対角の方向に放射状に延びている。これによって、PETボトル1がブロー成形される際に薄肉となりやすい対角の方向にも樹脂が充分に行きわたる。更に、例示された底部40は、リブ44を有する構成でありながら、ドーム43の中心には、ゲートの受け部が設けられる領域を有している。これによって、PETボトル1がブロー成形される際に芯ずれが生じにくい。したがって、底部40は、このように構成されることによって、底壁42や、ドーム43、及びリブ44の肉厚にむらを生じにくくすることができる。
底部40は、外周側に位置する底壁42からドーム43の周端に向けて、ドーム43の傾斜よりも大で延びる環状の立ち上がり部45を有する。立ち上がり部45は、PETボトル1の外部から大きな圧力がかかった際に底部40が、接地面よりも出っ張ってしまうことを防ぐ機能を有する。例えば、充填システムの中を搬送されるPETボトル1が他のPETボトル1と衝突する等して圧力がかかり、底部40が出っ張ってしまった場合には、PETボトル1が軸方向に伸びてしまって詰まりの原因となる。これは、PETボトル1が軽量化されてその肉厚が薄くなるほど対策の必要の度合いが上がる。
底部40は、薄肉になりすぎると、PETボトル1の内部の圧力が変化した際等にその構造を維持することが難しくなる。一方で、厚肉になりすぎると、PETボトル1の軽量化が妨げられてしまう。したがって、PETボトル1の軽量化を実現しつつ底部40の構造を維持する観点で、底部40の肉厚は0.10 mm以上、0.35 mm以下であることが好ましい。
底部40が出っ張ってしまう原因の一つとして、ドーム43の周端の付近が屈曲することによって接地面よりも出っ張るように反転することがある。しかしながら、立ち上がり部45は、傾斜が大であることによって、圧力がかかった際の変形方向を軸方向から径方向へと分散させる。更に、立ち上がり部45は、接地面から軸方向の距離が長くなることによって、仮に変形したとしても接地面よりも出っ張らない範囲に止める。そして、立ち上がり部45は、ドーム43と傾斜が不連続となることによって強度を高める。立ち上がり部45は、これらの機能を有することによって、底部40が出っ張ってしまうことを効果的に防ぐ。
ここで、立ち上がり部45の傾斜の角度θrが大きすぎると、過延伸による白化や、PETボトル1の賦形性の低下が起こりやすくなってしまう。したがって、立ち上がり部45の傾斜の角度θrは30°以上、65°以下であることが好ましい。
更に、立ち上がり部45の軸方向の距離H3が大きすぎると逆に、立ち上がり部45が屈曲点となってしまう。したがって、立ち上がり部45の軸方向の距離H3は4 mm以上、9 mm以下であることが好ましい。
なお、PETボトル1は、立ち上がり部45を有することによって、ドーム43の形状の設計自由度が高まり、例えばリブ44を有していなくても良い。しかしながら、底部40は、図3等に例示されるような正面視で、山状のドーム43と谷状のリブ44とがそれぞれ、4方向に形成される構成であることが、賦形性を良好とすること、及び底部40の反転を防止することができる点でより好ましい。この構成では特に、肉厚にむらを生じにくくすることができるためPETボトル1の軽量化が図られてより薄肉となった場合にも上述された効果が存分に発揮される。したがって、このような構成によれば、軽量性と、底部40の外力に対する高い強度とを併有した大型のPETボトル1を提供することができる。
ここで、ドーム43から底壁42に架けて径方向に放射状に延びる溝等が設けられることでドーム43の形状維持機能を高めることもできる。しかしながら、充填システムとして多用されている底部40が吸引されて搬送される方式には底壁42に隙間を有するPETボトル1を適用することができない。
これに対し、底壁42が平面で構成され、軸方向の上側に向かってくぼんだ溝等を有していないPETボトル1は底部40が吸引されて搬送される方式にも適用可能であり、高い汎用性を有している。したがって、PETボトル1は、軽量性、及び高い汎用性を併有しつつ、底部40の構造を維持することができる。
なお、底部40は、図3等の例示に限らず、熱によって変形しやすい状態で陽圧化しても下側に変形しにくく構成されていれば良い。これによって、PETボトル1の満注容量が増え、内圧の変化がより大となることを防止することができる。ドーム43は、熱によって仮に変形したとしても少なくともPETボトル1の接地面よりも高く維持されるように設計される。これによって、底部40が、底壁42より外側(下側)に突出することが防止され、PETボトル1のがたつきや、転倒を防止することができる。
以上のように、PETボトル1は、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを有し、胴部30は、複数の壁部31、及び周方向で隣り合う壁部31をつなぐコーナー部32からなる上側角筒部50u、及び下側角筒部50dと、上側角筒部50u、及び下側角筒部50dを軸方向に分断し、軸方向に直交する横断面が円形の円筒部60とを有し、円筒部60は、胴部30が径方向に絞られてなるくびれ部61を有し、くびれ部61は、径方向の外側に凸で軸方向に延びるリブ62を有し、リブ62は、くびれ部61の任意の横断面において径方向の中心からの距離が最大となるように構成される。このような構成によれば、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ持ちやすい大型で角型のPETボトル1を提供することができる。
更に、PETボトル1の底部40に、PETボトル1の内側に向けて湾曲する中空半球状のドーム43を有し、底部40は、外周側に位置する底壁42からドーム43の周端に向けて、ドーム43の傾斜よりも大で延びる環状の立ち上がり部45を有する。このような構成によれば、軽量性と、底部40の外力に対する高い強度とを併有した大型のPETボトル1を提供することができる。
更に、肩部20と胴部30との間を周方向に延びる稜線21を有し、稜線21は、コーナー部32において最も胴部30の側に位置する。このような構成によれば、軽量性と、肩部20における高い強度とを併有したPETボトル1を提供することができる。
本実施形態に係るPETボトル1にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。しかしながら、より大型のボトルであると、本実施形態に係るPETボトル1の構成による効果がより発揮されて好ましい。例えば、PETボトル1の内容積が680 ml以上、2500 ml以下であることが好ましく、900 mlから2000 mlであることがより好ましい。PETボトル1の全高H1は190 mm以上、320 mm以下であっても良く、胴部30の対面距離D2は65 mm以上、100 mm以下であっても良い。
更に、本実施形態に係るPETボトル1は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。PETボトル1の質量は例えば、1000 mlに対しては20 g以上、30 g未満、2000 mlに対しては25 g以上、35 g未満であると良い。そして、特に、軽量性を有し、内圧の変化の吸収量を高めながらPETボトル1の強度を保つ観点から、PETボトル1の内容積に対する質量の比の値が0.0125 g/ml以上、0.0300 g/ml以下であることが好ましい。
PETボトル1が例示されたプラスチックボトルの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々のプラスチックを用いることができる。しかしながら、プラスチックボトルは、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
PETボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、90℃以下であり、融点(Tm)が200℃以上、275℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
上述された材料が射出成形されたプリフォームがブロー成形されることによってプラスチックボトルを作製することができる。そして、材料として、ポリエチレンテレフタレートが用いられることによって、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1が作製される。そして、PETボトル1と、充填される液体とによって充填体が構成される。充填体は、PETボトル1の口部10から飲料や調味料等の液体が充填され、口部10に装着される図示せぬ蓋によって密封されることによって製造される。
次に、変形例に係るプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。図5は、変形例に係るPETボトル100が示された正面図である。PETボトル100は、PETボトル1のリブ62とは異なるリブ162を有する以外はPETボトル1と同様の構成である。すなわち、PETボトル100は、その軸方向に、口部10と、肩部20と、胴部130と、底部40とを順次有する。更に、胴部130は、上側角筒部50u、及び下側角筒部50dと、上側角筒部50u、及び下側角筒部50dを軸方向に分断し、軸方向に直交する横断面が円形の円筒部160とを有する。そして、円筒部160は、くびれ部161を有する。
くびれ部161は、軸方向に延びるリブ162を有する。リブ162は、PETボトル100の外側に向けて突出している。リブ162は、PETボトル100の軸方向、及び径方向の双方の荷重に対する支柱としての機能を有する。リブ162は、くびれ部161の周方向に複数配置される。複数のリブ162が配置されたくびれ部161は、強度が向上して変形しにくくなり、PETボトル100を持ちやすくすることができる。更に、リブ162は、握られた指にかかり、PETボトル100を持ちやすくすることができる。
くびれ部161の上端、及び下端では、隣り合うリブ162を接続するPETボトル1の上辺63、及び下辺64に相当する構成を有していない。しかしながら、リブ162を有するPETボトル100は、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ持ちやすく、PETボトル1と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態に係るPETボトル1では、底部40以外については上述されたものとは異なる構成とされても良い。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
24 gのポリエチレンテレフタレート製で満注容量が950 mlの図1等に示されるPETボトル1が用いられた。PETボトル1には920 mlの水が充填された。実施例1に係るPETボトル1は、底部40が、外周側に位置する底壁42からドーム43の周端に向けて、ドーム43の傾斜よりも大で延びる環状の立ち上がり部45を有する等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
[比較例1]
比較例1では、図6の正面図、及び図7の底面図で示されるPETボトル200が用いられた以外は実施例1と同様であった。PETボトル200の底部240には、底壁242に直接連結してドーム243が形成されていた。PETボトル200は、PETボトル1の立ち上がり部45に相当する構成を有していなかった。したがって、比較例1に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例2]
比較例2では、28 gであること以外は比較例1と同様であった。したがって、比較例2に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
<評価方法>
(軽量性)
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各PETボトルの質量によって軽量化が達成できているか否かが判定された。軽量化の判定には、24 gより大か、以下かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける軽量性の評価の結果が示され、○:軽量性あり、×:軽量性なし、で表記されている。
(耐圧性能試験)
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各充填体の耐圧性能が測定された。口部10に、穿孔針が差し込まれた上で水が更に注入され、各PETボトルの底が接地面より凸になった時点での注入量が耐圧性能の指標とされた。耐圧性能の判定には、30 ml以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における耐圧性能の評価の結果が示され、○:耐圧性能あり、×:耐圧性能不足、で表記されている。
(落下耐久性能試験)
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各充填体の落下耐久性能が測定された。各PETボトルは、その軸方向が水平の状態で50 cmの高さから落下された。各PETボトルが10本ずつ落下され、底が反転するか否かが判定された。落下耐久性能の判定には、1本でも反転したものがあるか否かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける落下耐久性能の評価の結果が示され、○:落下耐久性能あり、×:落下耐久性能なし、で表記されている。
(総合評価)
上述された軽量性、耐圧性能試験、及び落下耐久性能試験に基づいて、実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各PETボトル(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。実施例1に係るPETボトル1(充填体)では、軽量性を有して構成されていながら、底部40が圧力によって変形することが防止された。
一方で、比較例1では、軽量化されていたものの、底部240の強度が不足し、圧力に伴う出っ張りを抑えられなかった。これは、比較例2のように軽量化がやや不足する場合にも同様であった。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体では、軽量化されてもなお、底部40は、強度を充分に有し、形状維持機能を充分に有していることが示された。したがって、本実施形態では、軽量性と、底部40の外力に対する高い強度とを併有した大型のPETボトル1、及び充填体を提供することができることが示された。