JP2018030296A - 記録装置 - Google Patents

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智義 掛川
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Abstract

【課題】搬送される媒体に対して記録ヘッドを備えるキャリッジを往復移動させて記録を行う記録装置において、より適切に紙ジャムを検知できる記録装置を提供する。【解決手段】用紙Pに記録を行う記録ヘッド7を備え、媒体搬送方向と交差する方向に移動するキャリッジ8と、キャリッジ駆動モーター9と、用紙Pを搬送する搬送路15において用紙Pを検出する媒体センサー22と、キャリッジ駆動モーター9を制御するとともに媒体センサー22の検出信号を受ける制御手段10と、を備え、制御手段10は、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷に応じて変動する変動値としての駆動電流値Kと、駆動電流値Kに対する閾値Tと、を参照して用紙Pのジャムの有無を判定するジャム判定ステップS3を実行可能であるとともに、閾値Tを搬送路15における用紙Pの位置に応じて変更するプリンター1。【選択図】図8

Description

本発明は、搬送される媒体に記録を行う記録装置に関する。
インクジェットプリンターに代表される記録装置では、媒体を搬送する搬送ローラー対と、前記搬送ローラー対の搬送方向下流側において、前記搬送方向と交差する方向に往復移動可能なキャリッジに設けられ、前記媒体に液体(インク)を吐出する記録ヘッドと、によって構成されるものが多く使用されている。
このような記録装置において、前記搬送方向と交差する方向に前記キャリッジが往復移動する際に、前記記録ヘッドと対向する領域を搬送される媒体と接触する場合がある。そして、前記キャリッジが前記媒体に接触したまま移動すると、媒体が無理に押されることにより所謂「紙ジャム」が発生する。
より具体的には、媒体の先端が前記キャリッジの下流側に送られた際に、排出ローラー対に引っ掛るなどした状態で、上流側から更に媒体が送られることにより媒体の搬送方向中程にできる「撓み」や、媒体が前記搬送ローラー対と前記排出ローラー対のいずれか一方にだけニップされて両方にニップされていない場合に、当該媒体の先端或いは後端が反って浮き上がる「媒体端部の浮き」に、前記キャリッジが接触することにより前記紙ジャムが発生する。
これを回避するため、前記キャリッジの前記媒体への接触を検知する検知手段が設けられた記録装置がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
特開2012−61625号公報 特開2012−000888号公報
特許文献1では、キャリッジを駆動するモーターの負荷変動を検出することにより、前記媒体と前記キャリッジの接触による紙ジャムの発生を検知する検知手段が開示されている。具体的には、前記検知手段は、閾値以上の負荷を検出した場合に紙ジャムが発生したと判定する様になっている。
一方、特許文献2では、特許文献1と同じくモーターの負荷変動を利用した検知手段を用い、キャリッジの移動方向において、すなわち、媒体の幅方向において、前記閾値を変えることが開示されている。
前記紙ジャムは、前記媒体の幅方向の端部に前記キャリッジが接触することにより発生し易いので、前記媒体の端部をキャリッジが通過する際には、紙ジャムの判定基準となる前記閾値を下げて検知性を高めている。また、前記媒体の両端部以外の領域においては前記閾値を上げて検知性を低くし、この領域における誤検知が抑制されている。
ここで、ジャム検知性を向上させる為に閾値を下げる(感度を上げる)と、誤検知リスクが増大する。しかし、誤検知を回避する為に閾値を上げる(感度を下げる)と、用紙が前記搬送ローラー対と前記排出ローラー対とでニップされていない場合、即ち複数のローラーによって拘束されていない状態で生じる「媒体端部の浮き」に対してキャリッジが衝突したときにキャリッジが媒体から受ける力は、前記媒体の搬送方向中程にできる「撓み」にキャリッジが衝突したときにキャリッジが媒体から受ける力よりも小さいので、ジャムを検知できなる場合が出てくる。
特許文献1及び特許文献2では、この様な課題については考慮されていなかった。
このような状況に鑑み、本発明の目的は、搬送される媒体に対して記録ヘッドを備えるキャリッジを往復移動させて記録を行う記録装置において、より適切に紙ジャムを検知できる記録装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る記録装置は、媒体に記録を行う記録ヘッドを備えるとともに媒体搬送方向と交差する方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジの駆動源であるキャリッジ駆動モーターと、媒体を搬送する搬送路において媒体を検出する検出手段と、前記キャリッジ駆動モーターを制御するとともに前記検出手段の検出信号を受ける制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記キャリッジ駆動モーターの駆動負荷に応じて変動する変動値と、当該変動値に対する閾値と、を参照して媒体のジャムの有無を判定するジャム判定ステップを実行可能であるとともに、前記閾値を、前記搬送路における媒体の位置に応じて変更する、ことを特徴とする。
本態様によれば、前記制御手段は、前記キャリッジ駆動モーターの駆動負荷に応じて変動する変動値と、当該変動値に対する閾値と、を参照して媒体のジャムの有無を判定するジャム判定ステップを実行可能であるとともに、前記閾値を、前記搬送路における媒体の位置に応じて変更するので、媒体のジャムが生じ易い状況ではジャムを適切に検知し、また、媒体のジャムが生じ難い状況ではジャムの誤検知を抑制でき、即ち適切に媒体のジャムを検知できる。
本発明の第2の態様に係る記録装置は、第1の態様において、前記制御手段は、前記搬送路において媒体を送る送りローラーに対する媒体の位置に応じて、前記閾値を変更する、ことを特徴とする。
本態様によれば、前記制御手段は、前記搬送路において媒体を送る送りローラーに対する媒体の位置に応じ、即ち媒体のジャムの発生可能性の高低に応じて前記閾値を変更するので、適切に媒体のジャムを検知できる。
本発明の第3の態様に係る記録装置は、第2の態様において、前記搬送路において前記記録ヘッドにより記録を行う記録領域の上流側に、前記送りローラーとしての第1送りローラーを、前記記録領域の下流側に、前記送りローラーとしての第2送りローラーを、それぞれ備え、前記制御手段は、媒体の先端及び後端の少なくともいずれか一方が前記第1送りローラーから前記第2送りローラーに向かう間の少なくとも所定期間における前記閾値を、媒体の先端及び後端が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーとの間にない場合における前記閾値より低くする、ことを特徴とする。
媒体が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーの双方によってニップされていない場合、即ち、媒体の先端及び後端の少なくともいずれか一方が前記第1送りローラーから前記第2送りローラーの間にあるときは、媒体の拘束力が弱い為、前記キャリッジが媒体に衝突しても媒体から受ける力が弱く、ジャムを検知し難い。
そこで本態様においては、前記制御手段は、媒体の先端及び後端の少なくともいずれか一方が前記第1送りローラーから前記第2送りローラーに向かう間の少なくとも所定期間における前記閾値を、媒体の先端及び後端が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーとの間にない場合における前記閾値より低くするので、ジャムを検知し難い状況であっても、適切なジャム検知が期待できる。
本発明の第4の態様に係る記録装置は、第3の態様において、媒体の先端が前記第2送りローラーに到達した後、媒体の後端が前記第1送りローラーから抜ける迄の期間のうち、前半の期間における前記閾値を、後半の期間における前記閾値より低く、且つ前記所定期間における前記閾値より高くする、ことを特徴とする。
媒体の先端が前記第2送りローラーに到達した後、媒体の後端が前記第1送りローラーから抜ける迄の期間は、通常であれば、媒体が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーの双方によってニップされている期間である。しかし、媒体の先端が前記第2送りローラーに到達して直ちに前記第2送りローラーにニップされない場合もある。その場合、媒体の先端が前記第2送りローラーに当接した状態のまま上流側の第1送りローラーにより送り動作が行われる結果、媒体が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーとの間で撓み、その状態で前記キャリッジが動作すると、ジャムとなる虞がある。
そこで本態様においては、その様なジャムが生じる可能性が高い状況での前記閾値、即ち、媒体の先端が前記第2送りローラーに到達した後、媒体の後端が前記第1送りローラーから抜ける迄の期間のうち、前半の期間における前記閾値を、後半の期間による前記閾値より低くした。従って、ジャムが生じる可能性が高い状況で、適切なジャム検知が期待できる。
また、上記の前半の期間は、媒体が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーの双方によってニップされていると期待できる期間であり、この期間ではジャムの検知感度を上げてしまうと、誤検知の虞がある。そこで、上記の前半の期間における前記閾値を、前記所定期間における前記閾値、つまり、媒体が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーの双方によって拘束されない期間における前記閾値よりも高くし、即ちジャムの検知感度を下げた。これにより、上記の誤検知も抑制できる。
本発明の第5の態様に係る記録装置は、本発明の第1の態様から第4の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記変動値として前記キャリッジの速度変動値と前記キャリッジ駆動モーターの駆動電流値とを採用するとともに、前記速度変動値と前記駆動電流値との双方について前記閾値を有し、前記速度変動値及び前記駆動電流値のいずれかが、対応する前記閾値を超過した場合に、媒体のジャム有りと判定することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御手段は、前記変動値として前記キャリッジの速度変動値と前記キャリッジ駆動モーターの駆動電流値とを採用し、前記速度変動値及び前記駆動電流値のいずれかが、対応する前記閾値を超過した場合に、媒体のジャム有りと判定するので、より確実に、ジャムを検知できる。
本発明の第6の態様に係る記録装置は、本発明の第1の態様から第5の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記キャリッジを第1方向に移動させた際に前記変動値が前記閾値を超過した場合、前記キャリッジを前記第1方向とは逆の第2方向に移動させ、その結果前記変動値が前記閾値を超過した場合であって前記キャリッジの前記第1方向への移動の際の前記変動値の超過位置と前記第2方向への移動の際の前記変動値の超過位置とが対応しない場合、媒体のジャム無しと判定することを特徴とする。
仮に、現実にジャムが生じていれば、前記キャリッジを第1方向に動かした際の前記変動値の超過位置と、その逆の第2方向に動かした際の前記変動値の超過位置とは、対応する筈である。しかしながら、対応していなければ、現実にジャムが生じている可能性は低いと言える。そこで本態様ではその様な性質を利用し、前記キャリッジを第1方向に動かした際の前記変動値の超過位置と、その逆の第2方向に動かした際の前記変動値の超過位置とが対応しない場合、媒体のジャム無しと判定する。これにより、媒体のジャムの有無を、より正確に検知できる。
本発明の第7の態様に係る記録装置は、本発明の第1の態様から第6の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記キャリッジを第1方向に移動させた際に前記変動値が前記閾値を超過した場合、前記キャリッジを前記第1方向とは逆の第2方向に移動させ、その結果前記変動値が前記閾値を超過しない場合、媒体のジャム無しと判定することを特徴とする。
本態様によれば、前記キャリッジを第1方向に動かした際に前記変動値が超過した場合であっても、その逆の前記第2方向に前記キャリッジを移動して前記変動値が超過しなければ、媒体のジャム無しと判定するので、媒体のジャムの有無を、より正確に検知できる。
本発明の第8の態様に係る記録装置は、本発明の第1の態様から第7の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記閾値を、媒体の種別に応じて変更することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御手段は、前記閾値を、媒体の種別に応じて変更するので、媒体のジャムの有無を、より適切に検知できる。
本発明に係るプリンターの一例を示す外観斜視図。 本発明に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。 プリンターの制御系統を示すブロック図。 プリンターにおける記録動作を表すフローチャート。 搬送路における用紙の位置と閾値を変更するタイミングの関係を説明する図。 搬送路における用紙の位置と閾値を変更するタイミングの関係を説明する図。 搬送路における用紙の位置に応じた閾値の変化を示す図。 ジャム判定ステップの流れを示すフローチャート。
[実施例1]
まず、本発明の一実施例に係る記録装置の概略について説明する。本実施例において、記録装置の一例としてインクジェットプリンター1(以下、単にプリンター1と称する)を例に挙げる。
図1は、本発明に係るプリンターの一例を示す外観斜視図である。図2は、本発明に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図である。図3は、プリンターの制御系統を示すブロック図である。図4は、プリンターにおける記録動作を表すフローチャートである。図5は、搬送路における用紙の位置と閾値を変更するタイミングの関係を説明する図である。図6は、搬送路における用紙の位置と閾値を変更するタイミングの関係を説明する図である。図7は、搬送路における用紙の位置に応じた閾値の変化を示す図である。図8は、ジャム判定ステップの流れを示すフローチャートである。
尚、各図において示すX−Y−Z座標系は、X方向が記録ヘッドの移動方向、Y方向が記録装置の奥行き方向及び媒体搬送方向、Z方向が装置高さ方向を示している。尚、各図において+Y方向を装置前面側とし、−Y方向側を装置背面側とする。
また、プリンターにおいて用紙が搬送されていく方向を「下流」といい、これと反対の方向を「上流」という。
<プリンターの全体構成について>
以下、主に図1を参照しつつ、プリンター1の全体構成について概説する。
本発明に係るプリンター1(図1)は、「媒体」としての用紙に記録を行う記録ヘッド7を備える装置本体2の上部に、スキャナー部3を備えており、即ちインクジェット記録機能に加えてスキャナー機能を備える複合機として構成されている。
まず、原稿の画像を読み取るスキャナー部3の概要について説明する。スキャナー部3は、上面に原稿を載置する原稿台3aを備えた読み取り機構部3bと、読み取り機構部3bに対して閉じた姿勢と開いた姿勢とを切換え可能な給送機構部3cとを備えている。本実施例において給送機構部3cは装置背面側の端部を回動支点として読み取り機構部3bに対して回動可能に構成されている。
そして、給送機構部3cを読み取り機構部3bに対して開いた姿勢にすることにより、原稿台3aに原稿をセットすることが可能である。
また、読み取り機構部3b内には原稿台3aにセットされた原稿の被読み取り面を読み取り可能な読み取り手段(不図示)が設けられている。また、給送機構部3cは原稿セット部3dにセットされた原稿を原稿排出トレイ3eに向けて搬送可能に構成されており、原稿の搬送途中で原稿の被読み取り面を読み取り手段により読み取り可能に構成されている。
続いて装置本体2側の説明に戻り、装置本体2の外側には、インクを収容するインク収容体(不図示)を格納するインク収容体格納ケース4a、4bを備えている。
図1において、インク収容体格納ケース4a、4bは、装置幅方向(X軸方向)の両側に設けられており、装置幅方向右側に位置するインク収容体格納ケース4aには、マゼンタ、イエロー、シアンの各色のインクにそれぞれ対応する複数のインク収容体が格納され、装置幅方向左側に位置するインク収容体格納ケース4bには黒色のインクを収容するインク収容体が格納されている。そして各インク収容体から、不図示のインクチューブを介して後述する記録ヘッド7に対してインクが供給可能に構成されている。
記録ヘッド7は、装置本体2内において、後述する用紙Pの搬送方向と交差する方向(図1におけるX軸方向)に移動可能に構成されるキャリッジ8に搭載され、記録ヘッド7と対向する領域に送られる記録用紙に対してインクを吐出することにより記録が行われるように構成されている。
キャリッジ8は、駆動源としてのキャリッジ駆動モーター9(図3)から駆動力を受けて移動する様に構成されている。キャリッジ8の移動には、例えば、キャリッジ駆動モーター9の駆動軸に取り付けられた図示を省略する駆動プーリー及び従動プーリーに掛け回した無端ベルトにキャリッジ8を固定して、前記無端ベルトを回動させることによりキャリッジ8を移動する公知のベルト機構を用いることができる。
また、キャリッジ8の移動方向における位置を検出するエンコーダー31(図3)が設けられ、エンコーダー31から送られるキャリッジ8の位置情報に基づいてキャリッジ駆動モーター9が制御され、キャリッジ8を一定の速度で移動させるようになっている。
更に、プリンター1は、キャリッジ駆動モーター9を制御するとともに、後述する媒体センサー22の検出信号を受ける制御手段10を備えている。制御手段10については後で更に説明する。
<プリンターの用紙搬送経路について>
続いて、図2を参照しつつプリンター1の用紙搬送経路について説明する。装置本体2の下部には、複数の用紙Pを収容部6aに収容する用紙トレイ6(図1も参照)が設けられている。用紙Pは用紙トレイ6から給送ローラー12(ピックアップローラーとも言う)によってピックアップされ、不図示の駆動源により回転駆動されて用紙Pを搬送する搬送駆動ローラー13と、搬送駆動ローラー13に従動回転可能な分離ローラー14とによりニップされて一旦装置背面側(−Y方向)に送られ、中間ローラー16によって構成される湾曲搬送経路17を通って装置前面側(+Y方向)の搬送路15に送られるようになっている。
続いて、記録ヘッド7による記録領域(記録ヘッド7と対向する領域)の媒体搬送方向上流側(装置背面側、−Y方向)には、搬送路15において媒体を送る「送りローラー」であるとともに「第1送りローラー」としての搬送ローラー対18が設けられており、搬送ローラー対18によって用紙Pが記録ヘッド7の下へと送られる。
装置前面側に送られる用紙Pは、支持部材19に支持されつつ記録ヘッド7の下方を通り、キャリッジ8に搭載されて移動する記録ヘッド7から吐出されるインクにより記録が行われる。
記録ヘッド7による記録領域の媒体搬送方向下流側(装置前面側、+Y方向)には、搬送路15において媒体を送る「送りローラー」であるとともに「第2送りローラー」としての排出ローラー対20が設けられており、記録後の用紙Pは、装置前面側に設けられる排出トレイ5に排出される。
また、搬送路15には、搬送される用紙Pを検出する「検出手段」としての媒体センサー22が設けられている。本実施例において媒体センサー22は、媒体搬送方向において搬送ローラー対18とほぼ同じ位置に設けられている。媒体センサー22としては、例えば、用紙Pに対して光を照射し、用紙Pからの反射光を受光する受発光部を備える光センサーや、搬送される用紙Pの検出レバーへの接触を検知するレバー式のセンサー等を用いることができる。
<プリンターにおける制御系統について>
次に、図3を用い、本実施例のプリンター1における制御系統について説明する。
プリンター1において、前述した制御手段10には、プリンター1の全体の制御を司るCPU23が設けられている。CPU23は、システムバス24を介して、CPU23が実行する各種制御プログラム等を格納したROM25と、データを一時的に格納可能なRAM26と、接続されている。
また、CPU23は、システムバス24を介して、記録ヘッド7からのインクの吐出を行うヘッド駆動部27と接続されている。
また、CPU23は、システムバス24を介して、キャリッジ8を移動させるためのキャリッジ駆動モーター9と、搬送ローラー対18の駆動ローラー18a(図2も参照)の駆動源である搬送モーター28と、排出ローラー対20の駆動ローラー20a(図2も参照)の駆動源である排出モーター29と、を駆動させるためのモーター駆動部30と接続されている。
さらに、CPU23は、システムバス24を介して入出力部36と接続されている。入出力部36は媒体センサー22と、キャリッジ8の移動方向における位置を検出するエンコーダー31と、キャリッジ駆動モーター9の駆動電流値を測定する電流測定部32と接続されており、媒体センサー22及びエンコーダー31による検出結果と電流測定部32による測定結果は入出力部36に信号で送られるようになっている。
尚、入出力部36は、記録データ等をプリンター1に入力する外部装置であるコンピューター33と接続することもできる。
<制御手段について>
制御手段10は、キャリッジ8を移動させて記録ヘッド7によるインクの吐出動作を制御するものであり、CPU23からの指令に従い、キャリッジ駆動モーター9を駆動してキャリッジ8を動かし、ヘッド駆動部27を駆動して記録ヘッド7によるインクの吐出動作を行う。
ここで、キャリッジ8をX軸方向に移動させて記録を行うにあたり、キャリッジ8が搬送される用紙Pに接触する場合がある。キャリッジ8が用紙Pに接触して移動すると、用紙Pがキャリッジ8の移動方向に押されて紙ジャムが発生する。これを回避するため、制御手段10は、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷の変動をもってキャリッジ8と用紙Pとの接触に起因する紙ジャムを検知する。
より具体的には、制御手段10は、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷に応じて変動する変動値Sと、変動値Sに対する閾値と、を参照して用紙Pのジャムの有無を判定するジャム判定ステップS3(図4)を実行可能である。
変動値Sとしては、例えば、キャリッジ駆動モーター9の駆動電流値Kやキャリッジ8の速度変動値Jを用いることができる。
以下において、プリンター1における記録動作の一連の流れを説明した後に、ジャム判定ステップS3について詳細に説明する。
<記録動作について>
図4を参照するに、記録動作をスタートすると用紙トレイ6から用紙Pが給紙される(ステップS1)。用紙Pは図2に示す湾曲搬送経路17を通過して搬送路15に搬送され、記録ヘッドと対向する記録開始位置まで搬送される(ステップS2)。記録開始位置に用紙Pが位置すると、キャリッジ8を動かして行うジャム判定ステップS3が行われる。尚、ジャム判定ステップS3においてキャリッジ8を動かす際には、記録のため記録ヘッド7からインクを吐出していてもよい。
ジャム判定ステップS3を実行後、ジャム判定ステップS3における判定結果がジャム有りの場合(ステップS4においてYES)、ステップS5に進み記録が停止される。記録の停止後、用紙Pを排出する動作を実行する。また、例えばエラー表示を出す、警告音を鳴らす等により、ユーザーにジャムの発生が知らされる。
一方、ステップS4においてジャム無し(NO)の場合、次の記録データがあるか否かを判定するステップS6を実行する。次の記録データがある場合(YES)、搬送ローラー対18を駆動して用紙Pを送る(ステップS7)。紙送り後、ステップS3に戻り、次の記録データの記録を行う。
ステップS6において、次の記録データが無い場合(NO)には、排出ローラー対20を駆動して用紙を排出し、記録を終了する。
<ジャム判定ステップについて>
次に、ジャム判定ステップS3について更に説明する。
ジャム判定ステップS3では、前述したように、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷に応じて変動する変動値Sと、変動値Sに対する閾値と、を参照して用紙Pのジャムの有無を判定する。
尚、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷に応じて変動する変動値Sの測定に際し、制御手段10は、例えばプリンター1の電源投入時に、キャリッジ駆動モーター9に作用する回転負荷と変動値Sとの関係を測定するメジャーメント処理を行う。 変動値Sにおいて、キャリッジ駆動モーター9に対して負荷がかかっていない通常状態における値(以下、基準値という)は、キャリッジ駆動モーター9の個体差、プリンター1における組付けのばらつき、プリンター1の使用環境、経年劣化等の種々の要因により変動する。例えば、キャリッジ駆動モーター9の経年劣化により前記基準値が上がると、前記基準値と、前記基準値が上がる前に設定された閾値との差は小さくなり、ジャムが発生していないのに変動値Sが前記閾値を超えてしまう場合がある。 このため、制御手段10は、前記メジャーメント処理を行うことにより変動値Sにおける前記基準値を求め、前記基準値に基づいて閾値を設定するようになっている。前記メジャーメント処理は、上述の様にプリンター1の電源投入時のほか、記録ジョブ毎に行うこともでき、或いは、前回のメジャーメント処理から一定期間を超えた際に行うようにすることもできる。
本実施例では、変動値Sとして駆動電流値Kを用いる場合を例に挙げ、駆動電流値Kに対する閾値を閾値Tとして説明する。キャリッジ駆動モーター9の駆動電流値Kは、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷が大きくなると上がり、電流測定部32(図3)で測定された駆動電流値Kが所定の値(閾値T)を超えると紙ジャムがあると判定するようになっている。
更に本実施例において、制御手段10は、ジャム判定ステップS3に用いる閾値Tを、搬送路15における用紙Pの位置に応じて変更するように構成されている。
より具体的には、制御手段10は、搬送路15において媒体を送る搬送ローラー対18に対する用紙Pの位置に応じて閾値Tを変更する。
以下において、用紙Pの位置に応じた閾値Tの変更について図5〜図7を参照して説明する。
用紙Pが搬送路15を搬送されてくると、媒体搬送方向において搬送ローラー対18とほぼ同じ位置に設けられた媒体センサー22によって用紙Pが検出される。用紙Pの先端P1が媒体センサー22によって検出された時からの搬送ローラー対18による送り量により、これ以降の用紙Pの先端P1の位置を制御手段10において把握することができる。
図5の一番上の図及び図5の上から二番目の図のように、用紙Pが搬送ローラー対18にニップされているが、排出ローラー対20にはニップされていない状態では、用紙Pの先端P1が上方に反ってしまう場合がある。
しかし、図5の一番上の図のように、搬送ローラー対18のニップ部34から用紙Pの先端P1までが短く、キャリッジ8に接触しない場合には、キャリッジ8と用紙Pとの接触に起因する紙ジャムの発生の虞が低い。したがって、用紙Pの先端P1が、図5の一番上の図に示す位置Y1に至るまでの期間A(図7)は、高い閾値T0(図7)に設定し、紙ジャムの検知性(感度)を下げる。
続いて、図5の上から二番目の図のように、用紙Pの先端P1が位置Y1を超えて、その先端P1が排出ローラー対20にニップされるまでの期間B(図7)は、上方に反った先端P1がキャリッジ8に接触する虞があるので、低い閾値T1(図7)に設定し、紙ジャムの検知性(感度)を上げる。特に、この用紙Pの先端P1が排出ローラー対20にニップされていないフリーの状態では、後に説明する用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対20にニップされている状態よりも、キャリッジ8が接触した際にキャリッジ駆動モーター9における負荷変動が少なく、駆動電流値Kがそれほど高くならない。したがって、より低い閾値T1に設定することにより、前記紙ジャムを精度高く検出することができる。
続いて、用紙Pの先端P1が排出ローラー対20に到達した後(図5の一番下の図を参照)、用紙Pの後端P2が搬送ローラー対18から抜ける迄(図6の一番上の図の状態迄)の期間、すなわち、用紙Pの先端P1が位置Y2より下流側にあって位置Y3に達するまでの期間(図7における期間C)は、通常であれば、用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対20の双方によってニップされている期間である。
二つのローラー対(搬送ローラー対18と排出ローラー対20)によって用紙Pがしっかりとニップされているこの期間Cでは、閾値Tを下げてジャムの検知感度を上げてしまうと、ジャムにはならない程度の少しの接触でも駆動電流値Kが上がり、誤検知の虞がある。そこで、先端P1が位置Y2より下流側にあって位置Y3に達するまでの期間C(図7)における閾値(図7に示す閾値T2及び閾値T3)を、先端P1が位置Y1より下流側にあって位置Y2に達するまでの期間B、つまり、用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対の双方によって拘束されず、用紙Pの先端P1がフリーの状態となる期間Bにおける閾値T1よりも高くし、即ちジャムの検知感度を下げる。これにより、搬送ローラー対18と排出ローラー対の双方によって用紙Pがニップされている期間Cにおける上記の誤検知を抑制できる。
ところで、用紙Pの先端P1が排出ローラー対20に到達して直ちに排出ローラー対20にニップされない場合もある。その場合、用紙Pの先端P1が排出ローラー対20に当接した状態のまま上流側の搬送ローラー対18により送り動作が行われる結果、図5の一番下の図に示すように用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対20との間で撓み、その状態でキャリッジ8が動作するとジャムとなる虞がある。
一方、先端P1が排出ローラー対20のニップ部35にニップされていると、先端P1は排出ローラー対20によって送られて、搬送ローラー対18と排出ローラー対20との間における前記撓みの発生の虞は低減する。
そこで制御手段10においては、用紙Pの先端P1が図5及び図6に示す位置Y2より下流側にあって位置Y3に達するまでの期間C、言い換えると、用紙Pの先端P1が排出ローラー対20に到達した後、用紙Pの後端P2が搬送ローラー対18から抜ける迄の期間Cのうち、用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対20との間で撓む虞のある前半の期間C1(図7)の閾値T2を、後半の期間C2における閾値T3より低くする。
このことによって、期間Cのうち、ジャムが生じる可能性が高い状況となる前半の期間C1における適切なジャム検知が期待できる。
尚、前半の期間C1は、搬送ローラー対18による送り量にもよるが、用紙Pの先端P1が排出ローラー対20(位置Y2)に到達した後、キャリッジ8のX軸方向への往復移動を1パスとした時の数パス分(例えば2〜3パス分)の期間であり、後半の期間C2は、前半の期間C1の後から用紙Pの後端P2が搬送ローラー対18から抜けて先端P1が位置Y3に到達する迄の期間である。
続いて、図6の上から二番目の図に示すように、用紙Pの後端P2が搬送ローラー対18のニップ部34から外れると、フリーの状態となった後端P2が上方に反ってキャリッジ8に接触する虞がある。
図5の上から二番目の図に示す先端P1の場合と同様に、フリーの状態となった後端P2にキャリッジ8が接触した場合のキャリッジ駆動モーター9における負荷変動は小さい。したがって、用紙Pの後端P2がキャリッジ8に接触する虞がある期間、すなわち、先端P1が位置Y3を超えて後端P2が搬送ローラー対18のニップ部34から外れ、先端P1が位置Y4に達するまでの期間Dにおいては、期間Bと同様の低い閾値T1に設定する。これにより、期間Dにおけるジャムを精度高く検出することができる。
尚、位置Y4は、用紙Pの先端P1が達したときに後端P2がキャリッジ8に接触する虞がほぼない状態になる位置である。
続いて、図6の一番下の図のように、位置Y4に用紙Pの先端P1が達すると、上述の通り用紙Pの後端P2がキャリッジ8に接触する虞がほぼない位置にくるので、用紙Pのジャムは生じ難い状況となる。したがって、用紙Pの先端P1が位置Y4に到達した以降の期間Eにおいて、制御手段10は閾値Tを高い閾値T0(図7)に戻し、紙ジャムの検知性(感度)を下げる。このことによって、期間Eにおける誤検知の虞を低減することができる。
以上のように、制御手段10が、ジャム判定ステップS3に用いる閾値Tを、搬送路15における用紙Pの位置に応じて変更することにより、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、用紙Pのジャムが生じ易い状況ではジャムを適切に検知し、また、用紙Pのジャムが生じ難い状況ではジャムの誤検知を抑制でき、即ち適切に紙ジャムを検知できる。
その際、制御手段10は、搬送路15において用紙Pを送る送りローラー(本実施例では搬送ローラー対18)に対する用紙Pの位置に応じ、即ち用紙Pのジャムの発生可能性の高低に応じて閾値Tを変更するので、より適切に紙ジャムを検知できる。
特に、図5の上から二番目の図及び図6の上から二番目の図のように、用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対20の双方によってニップされていない場合、即ち、用紙Pの先端P1及び後端P2の少なくともいずれか一方が搬送ローラー対18から排出ローラー対20の間にあるときは、用紙Pの拘束力が弱い為、キャリッジ8が用紙Pに衝突しても用紙Pから受ける力が弱い。したがって、キャリッジ駆動モーター9における負荷変動が小さく、ジャムを検知し難い。
制御手段10は、ジャムを検知し難い期間である、用紙Pの先端P1及び後端P2の少なくともいずれか一方が搬送ローラー対18と排出ローラー対20に向かう間の少なくとも所定期間(本実施例においては、図7に示す期間B或いは期間D)における閾値T1を、他の期間(図7に示す期間A、期間C、及び期間E)の閾値(T0、T2、或いはT3)よりも低く設定するので、ジャムを検知し難い状況であっても、適切なジャム検知が期待できる。
尚、本実施例では、図5の一番上の図のように用紙Pの先端P1が、搬送ローラー対18のニップ部34を超えているが先端P1がキャリッジ8には接触しない位置Y1に達するまでを期間Aとしたが、用紙Pの先端P1がニップ部34に到達するまでを期間Aとしてもよい。また、本実施例において期間Eは、図6の一番下の図のように用紙Pの後端P2がキャリッジ8には接触しなくなった状態、すなわち、先端P1が位置Y4を超えてからとしたが、後端P2が排出ローラー対20のニップ部35に到達した時からを期間Eとしてもよい。
言い換えると、用紙Pの先端P1及び後端P2の少なくともいずれか一方が搬送ローラー対18から排出ローラー対20に向かう間の少なくとも所定期間(期間B或いは期間D)における閾値T1が、用紙Pの先端P1及び後端P2が搬送ローラー対18と排出ローラー対20との間にない場合における閾値より低くされていればよい。
また、用紙Pが搬送ローラー対18と排出ローラー対20の双方によってニップされている期間Cにおいては、用紙Pの拘束力が強く、閾値Tを下げてジャムの検知感度を上げてしまうと誤検知の虞があるが、期間Cの閾値(T2、T3)を、ジャムの発生する虞の低い期間A及び期間Eの閾値T0よりも低く、ジャムを検知し難い期間B及び期間Dの閾値T1よりも高くすることにより、適切な紙ジャムの検知と誤検知の回避を両立することができる。
更に、その期間Cのうち、搬送ローラー対18と排出ローラー対20との間で生じる撓みによってジャムが発生しやすい状況にある前半の期間C1の閾値T2を、後半の期間C2の閾値T3よりも低くすることにより、より精度の高いジャム検出を行うことができる。
ここで、用紙Pのジャムの有無の判定は、駆動電流値Kが用紙Pの位置に応じて設定された閾値Tを一度超過したときに、「ジャム有り」と判定することもできるが、図8のフローチャートに示すように、キャリッジ8を第1方向(+X方向及び−X方向のいずれか)に移動させた際に駆動電流値Kが閾値Tを超過した場合、続けてキャリッジ8を前記第1方向とは逆の第2方向に移動させた際に駆動電流値Kが閾値Tを超過するかどうかを見て判定すると、判定の確実性が増す。
ジャム判定ステップS3(図8)が開始されると、用紙Pの先端が媒体センサー22によって検出された時からの搬送ローラー対18による送り量に基づき用紙Pの先端P1の位置が算出され(ステップS11)、先端P1の位置に対応する閾値Tが制御手段10において設定される(ステップS12)。
続いて、第1方向(例えば+X方向)にキャリッジ8を移動させ(ステップS13)、その移動の間に駆動電流値K(変動値)がステップS12で設定した閾値Tを超えたかどうかを判定する(ステップS14)。
ステップS14において駆動電流値Kが閾値Tを超過しない場合、用紙Pのジャム無しと判定する(ステップS15)。
一方、ステップS14において駆動電流値Kが閾値Tを超過した場合、すなわち、キャリッジ8を前記第1方向に移動させた際に駆動電流値Kが閾値Tを超過した場合、前記第1方向(+X方向)とは逆の第2方向(−X方向)にキャリッジ8を移動させ(ステップS16)、その移動の間に駆動電流値K(変動値)がステップS12で設定した閾値Tを超えたかどうかを判定する(ステップS17)。
このステップS17において駆動電流値Kが閾値Tを超過しない場合、用紙Pのジャム無しと判定する(ステップS15)。
現実にジャムが生じていれば、ステップS17においても駆動電流値Kは閾値Tを超過するはずである。したがって、一度目(ステップS14)は超過したが二度目(ステップS17)は超過しない場合に用紙Pのジャム無しと判定することにより、より正確なジャム検知を行うことができる。
続いて、ステップS17において駆動電流値Kが閾値Tを超過した場合、すなわち、キャリッジ8を第1方向に移動させた際のステップS14と、キャリッジ8を第2方向に移動させた際のステップS17の両方において駆動電流値Kが閾値Tを超過した場合は、ステップS14における駆動電流値Kの超過位置とステップS17における駆動電流値Kの超過位置とが対応するかどうかを判定する(ステップS18)。
ステップS14における駆動電流値Kの超過位置とステップS17における駆動電流値Kの超過位置とが対応しない場合、すなわち、キャリッジ8の移動方向(X軸方向)における一度目の超過位置と二度目の超過位置が対応しない場合は、用紙Pのジャム無しと判定する(ステップS15)。
現実にジャムが生じていれば、ステップS14における駆動電流値Kの超過位置と、ステップS17における駆動電流値Kの超過位置は対応した位置になるはずであり、これが対応していない場合にはジャムが生じている可能性は低いと言える。したがって、ステップS14における一度目の超過とステップS17における二度目の超過のキャリッジ8の移動方向(X軸方向)における位置が対応しない場合に、用紙Pのジャム無しと判定することにより、より正確なジャム検知を行うことができる。
尚、「位置が対応する」とは、ステップS14における駆動電流値Kの超過位置と、ステップS17における駆動電流値Kの超過位置が完全に一致する場合に限られず、両ステップにおける超過位置が多少の誤差を考慮した所定の範囲にある場合を含むものとする。
ステップS14における駆動電流値Kの超過位置と、ステップS17における駆動電流値Kの超過位置が、キャリッジ8の移動方向(X軸方向)において対応した位置である場合には、ジャム有りと判定する(ステップS19)。
ジャム無し(ステップS15)又はジャム有り(ステップS19)の判定が行われたことをもって、ジャム判定ステップS3は終了する。
ジャム判定ステップS3が終了すると、ステップS15或いはステップS19の判定結果に基づいて、前述したステップS4(図4)が行われる。
以上のように、キャリッジ8を前記第1方向に移動させた際に駆動電流値Kが閾値Tを超過した場合には、続けてキャリッジ8を前記第2方向に移動させることにより、ジャム検知の正確性を高めることができる。
また更に、キャリッジ8を前記第2方向に移動させた際に駆動電流値Kが閾値Tを超過しなかった場合、すなわち、ステップS17においてNOと判定された場合、もう一度キャリッジ8を前記第1方向に移動させ、対応する位置において駆動電流値Kが閾値Tを超過したか否かをチェックすることも可能である。例えば、用紙Pに生じたジャムの状態によっては、キャリッジ8が前記第1方向に移動する場合にはキャリッジ駆動モーター9に負荷がかかるが、前記第2方向に移動する場合には負荷がかからない場合がある。
一度目の前記第1方向へのキャリッジ8の移動時に駆動電流値Kが閾値Tを超過したが、逆の前記第2方向へのキャリッジ8の移動時には駆動電流値Kが閾値Tを超えない場合に、二度目の前記第1方向へのキャリッジ8の移動を行い、前記第1方向への移動時に2回連続して同じ位置で駆動電流値Kが閾値Tを超過したことをもってジャム有りと判定するようにすることにより、キャリッジ8が前記第1方向に移動する場合にのみ負荷がかかるような状態のジャムも検知することができる。したがって、一層正確なジャム検知を行うことができる。
更に、制御手段10は、駆動電流値Kの閾値Tを用紙Pの種別に応じて変更するようにすることもできる。例えば、剛性が高い用紙の場合には閾値Tを高く設定して感度を下げ、剛性が低い用紙の場合には閾値Tを低く設定して感度を上げるようにする。このことにより、紙ジャムの有無をより適切に検知できる。
<実施例1の変更例>
本実施例においては、制御手段10において、キャリッジ駆動モーター9の駆動負荷に応じて変動する変動値Sとしてキャリッジ駆動モーター9の駆動電流値Kを採用したが、キャリッジ8の速度変動値Jとキャリッジ駆動モーター9の駆動電流値Kの双方を採用することもできる。キャリッジ8の速度変動値Jは、エンコーダー31によって得られる位置情報から算出される。
速度変動値Jと駆動電流値Kの双方を採用する場合、駆動電流値Kに対する閾値Tと、速度変動値Jに対する閾値Uとを設定する。速度変動値Jに対する閾値Uも、駆動電流値Kに対する閾値Tと同様に、用紙Pの先端P1の搬送ローラー対18からの位置に応じて閾値U0〜閾値U2の間で変更されるようになっている(図7)。
そして、駆動電流値K及び速度変動値Jのいずれかが、対応する閾値T或いは閾値Uを超過した場合に、用紙Pのジャム有りと判定する。
例えば、搬送される用紙Pの剛性が低い薄紙の場合、キャリッジ8がその薄紙に接触したとしてもキャリッジ駆動モーター9にかかる負荷が少ないので、キャリッジ8の速度が落ちない様に制御手段10(モーター駆動部30)がキャリッジ駆動モーター9を制御することができ、キャリッジ8の移動速度の変化が表れにくくなる(速度変動値Jによるジャム検知がし辛い)場合がある。駆動電流値Kは、剛性が低い薄紙にキャリッジ8が接触した場合でも数値変動が速度変動値Jに比べて顕著であり、ジャム検出がし易い。
一方、搬送される用紙Pの剛性が高い厚紙の場合には、キャリッジ8の速度変動値Jによるジャム検出は鋭敏である。したがって、駆動電流値K及び速度変動値Jの両方を用いることにより、多様な種類の用紙(媒体)に対して精度の高いジャム検出を行うことができる。
尚、変動値Sとしては、上述したキャリッジ駆動モーター9の駆動電流値K、キャリッジ8の速度変動値Jの他、キャリッジ駆動モーター9の電圧変動値やキャリッジ駆動モーター9を駆動する電源の電圧変動値等を用いることができる。また、キャリッジ駆動モーター9の動力をキャリッジ8に伝える動力伝達機構にトルクセンサーを設け、当該トルクセンサーの検出値を変動値Sとすることもできる。前記動力伝達機構は、本実施例において説明したベルト機構に限られるものではない。
また、本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
1…インクジェットプリンター(記録装置)、2…装置本体、
3…スキャナー部、3a…原稿台、3b…読み取り機構部、
3c…給送機構部、3d…原稿セット部、3e…原稿排出トレイ、
4a、4b…インク収容体格納ケース、5…排出トレイ、
6…用紙トレイ、7…記録ヘッド、8…キャリッジ、
9…キャリッジ駆動モーター、10…制御手段、
12…給送ローラー、13…搬送駆動ローラー、
14…分離ローラー、15…搬送路、16…中間ローラー、17…湾曲搬送経路、
18…搬送ローラー対(送りローラー、第1送りローラー)、19…支持部材、
20…排出ローラー対(送りローラー、第2送りローラー)、22…媒体センサー、
23…CPU、24…システムバス、25…ROM、26…RAM、
27…ヘッド駆動部、28…搬送モーター、29…排出モーター、
30…モーター駆動部、31…エンコーダー、32…電流測定部、
33…コンピューター(PC)、34…ニップ部、35…ニップ部、
36…入出力部、P…用紙、P1…先端、P2…後端

Claims (8)

  1. 媒体に記録を行う記録ヘッドを備えるとともに媒体搬送方向と交差する方向に移動するキャリッジと、
    前記キャリッジの駆動源であるキャリッジ駆動モーターと、
    媒体を搬送する搬送路において媒体を検出する検出手段と、
    前記キャリッジ駆動モーターを制御するとともに前記検出手段の検出信号を受ける制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記キャリッジ駆動モーターの駆動負荷に応じて変動する変動値と、当該変動値に対する閾値と、を参照して媒体のジャムの有無を判定するジャム判定ステップを実行可能であるとともに、前記閾値を、前記搬送路における媒体の位置に応じて変更する、
    ことを特徴とする記録装置。
  2. 請求項1に記載の記録装置において、前記制御手段は、前記搬送路において媒体を送る送りローラーに対する媒体の位置に応じて、前記閾値を変更する、
    ことを特徴とする記録装置。
  3. 請求項2に記載の記録装置において、前記搬送路において前記記録ヘッドにより記録を行う記録領域の上流側に、前記送りローラーとしての第1送りローラーを、前記記録領域の下流側に、前記送りローラーとしての第2送りローラーを、それぞれ備え、
    前記制御手段は、媒体の先端及び後端の少なくともいずれか一方が前記第1送りローラーから前記第2送りローラーに向かう間の少なくとも所定期間における前記閾値を、媒体の先端及び後端が前記第1送りローラーと前記第2送りローラーとの間にない場合における前記閾値より低くする、
    ことを特徴とする記録装置。
  4. 請求項3に記載の記録装置において、媒体の先端が前記第2送りローラーに到達した後、媒体の後端が前記第1送りローラーから抜ける迄の期間のうち、前半の期間における前記閾値を、後半の期間における前記閾値より低く、且つ前記所定期間における前記閾値より高くする、
    ことを特徴とする記録装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の記録装置において、前記制御手段は、前記変動値として前記キャリッジの速度変動値と前記キャリッジ駆動モーターの駆動電流値とを採用するとともに、前記速度変動値と前記駆動電流値との双方について前記閾値を有し、
    前記速度変動値及び前記駆動電流値のいずれかが、対応する前記閾値を超過した場合に、媒体のジャム有りと判定する、
    ことを特徴とする記録装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の記録装置において、前記制御手段は、前記キャリッジを第1方向に移動させた際に前記変動値が前記閾値を超過した場合、前記キャリッジを前記第1方向とは逆の第2方向に移動させ、その結果前記変動値が前記閾値を超過した場合であって前記キャリッジの前記第1方向への移動の際の前記変動値の超過位置と前記第2方向への移動の際の前記変動値の超過位置とが対応しない場合、媒体のジャム無しと判定する、
    ことを特徴とする記録装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の記録装置において、前記制御手段は、前記キャリッジを第1方向に移動させた際に前記変動値が前記閾値を超過した場合、前記キャリッジを前記第1方向とは逆の第2方向に移動させ、その結果前記変動値が前記閾値を超過しない場合、媒体のジャム無しと判定する、
    ことを特徴とする記録装置。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の記録装置において、前記制御手段は、前記閾値を、媒体の種別に応じて変更する、
    ことを特徴とする記録装置。
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