扉体がヒンジを中心に開閉自在となっているドア装置には、扉体が、例えば、不審者の侵入により異常作動したことを検出する扉体異常作動検出装置が設けられたものがあり、この扉体異常作動検出装置は、扉体に配置されたマグネットと、このマグネットの磁力を検知するマグネットセンサとを含んで構成されており、このドア装置において、マグネットセンサは、扉体が開閉する空間を内側に形成しているドア枠に外部に露出して配置されている。
扉体がガイドレールに案内されて開閉移動自在となっている引戸装置でも、扉体異常作動検出装置を設けることは防犯等のために有効であり、このために、扉体に配置されたマグネットの磁力を検知するマグネットセンサを、扉体が開閉移動する空間を内側に形成している枠体に外部に露出して配置したのでは、マグネットセンサが外力等の影響を受けて損傷するなどのおそれがあり、このため、このような問題を解消することが望まれる。
本発明の目的は、扉体異常作動検出装置のマグネットセンサを、外力等の影響を受けるおそれをなくして配置することができるようになる引戸装置を提供するところにある。
本発明に係る引戸装置は、ガイドレールに案内されて開閉移動自在となっている扉体と、この扉体が開閉移動する空間を内側に形成している枠体とを含んで構成される引戸装置において、前記扉体にマグネットが配置され、このマグネットの磁力を検知するセンサであって、前記扉体の異常作動を検出するための扉体異常作動検出装置を前記マグネットと共に構成しているマグネットセンサが前記枠体に配置され、この枠体に凹部が設けられているとともに、この凹部に前記マグネットセンサが収納配置されていることを特徴とするものである。
この引戸装置では、扉体が開閉移動する空間を内側に形成している枠体に凹部が設けられ、この凹部に扉体異常作動検出装置のマグネットセンサが収納配置されるため、マグネットセンサは外力等から保護された状態で枠体に配置されることになり、このため、マグネットセンサが外力等の影響を受けて損傷するなどのおそれをなくすることができる。
また、枠体に設けられた凹部に扉体異常作動検出装置のマグネットセンサが収納配置されることにより、引戸装置の外観性を向上させることができるとともに、不審者がマグネットセンサの存在を認識することを困難にできる。
以上の本発明において、マグネットセンサを収納配置する凹部は、枠体を構成する任意の部材に設けることができ、その一例は、凹部を、扉体の移動限位置に配置された縦枠部材に設けることである。
このようにマグネットセンサを収納配置する凹部を、扉体の移動限位置に配置された縦枠部材に設ける場合には、この縦枠部材の内部に、マグネットセンサから延びる電気配線であるリード線を縦枠部材の長さ方向である上下方向に配線してもよい。
また、マグネットセンサを収納配置する凹部を、扉体の移動限位置に配置された縦枠部材に設ける場合には、この縦枠部材は、扉体の開閉移動方向のうち、扉体の閉じ側である戸先側に配置された戸先側縦枠部材でもよく、扉体の開き側である戸尻側に配置された戸尻側縦枠部材でもよい。また、マグネットセンサを収納配置する凹部を設ける部材を、扉体の移動限位置に配置された縦枠部材とするのではなく、扉体の全閉位置と全開位置との間において、扉体から扉体の厚さ方向にずれて配置された竪額縁部材としてもよい。
そして、マグネットセンサを収納配置する凹部を戸先側縦枠部材に設ける場合には、この戸先側縦枠部材に前記凹部を戸先側へ窪ませて形成し、この凹部に扉体の戸先側の端部が侵入することにより、扉体が全閉位置に達するようにすることができる。
また、このように戸先側縦枠部材に戸先側へ窪んだ前記凹部を形成し、この凹部に扉体の戸先側の端部が侵入することにより、扉体が全閉位置に達するようにする場合には、戸先側縦枠部材に、この戸先側縦枠部材の凹部の戸先側の底部から戸尻側への突出量を有する突出体を配置し、この突出体とマグネットセンサとを、上下方向にずれた箇所において、戸先側縦枠部材の凹部に収納配置するようにしてもよい。
これによると、戸先側縦枠部材の凹部にマグネットセンサを収納配置しても、この凹部には、この凹部の戸先側の底部から戸尻側への突出量を有する突出体が収納配置され、この突出体はマグネットセンサから上下方向にずれた箇所に配置されているため、突出体の突出量を有効に利用し、かつこの突出体と干渉することをなくして、戸先側縦枠部材の凹部にマグネットセンサを有効に収納配置できるようになる。
上記突出体は、戸先側縦枠部材の凹部に、この凹部の戸先側の底部から戸尻側への突出量をもって収納配置されるものであれば任意のものでよく、例えば、扉体に錠前装置の鎌錠部材が配置される場合には、突出体を、鎌錠部材が係止するストライク部材が扉体の開閉移動方向に弾性的に遊動可能に設けられた対震ストライク装置の少なくとも一部としてもよい。
また、対震ストライク装置を扉体と対面する第1カバー部材を備えたものとし、マグネットセンサにおける扉体の開き側の箇所を第2カバー部材により覆うようにしてもよい。
これによると、対震ストライク装置を扉体等から第1カバー部材により保護できるとともに、マグネットセンサも扉体等から第2カバー部材により保護できることになる。
また、上述したように、対震ストライク装置を扉体と対面する第1カバー部材を備えたものとし、マグネットセンサにおける扉体の開き側の箇所を第2カバー部材により覆うようにする場合には、第1カバー部材に、扉体の戸先側の端部が当接することによりこの扉体が全閉位置に達する戸当り部材を設けてもよい。
これによると、第1カバー部材に設けられた戸当り部材により、扉体の全閉位置を規定することができる。
さらに、戸先側縦枠部材に、少なくとも2個の対震ストライク装置を上下方向に離して配置し、これらの対震ストライク装置の間において、マグネットセンサを戸先側縦枠部材の凹部に収納配置するようにしてもよい。
また、このようにする場合には、対震ストライク装置を扉体と対面するカバー部材を備えたものとし、このカバー部材を、それぞれの対震ストライク装置について共通する部材であって、マグネットセンサにおける扉体の開き側の箇所を覆う上下寸法の大きいものとし、このカバー部材を、それぞれの対震ストライク装置のストライク部材に結合するとともに、マグネットセンサをカバー部材に取り付けてもよい。
これによると、扉体に配置された錠前装置の鎌錠部材が戸先側縦枠部材に配置された対震ストライク装置のストライク部材に係止することにより、扉体が施錠されているときに、地震等により、戸先側縦枠部材を含んで構成されている前述の枠体が変形した場合において、ストライク部材は戸先側縦枠部材に対して弾性的に遊動して扉体との位置関係を扉体の開閉移動方向に一定又は略一定に維持しようとするため、それぞれの対震ストライク装置のストライク部材に上下寸法の大きいカバー部材を介して連結された状態になっているマグネットセンサは、扉体に配置されているマグネットとの位置関係を扉体の開閉移動方向に一定又は略一定に維持することになり、このため、地震等により枠体が変形しても、マグネットと、このマグネットの磁力を検知するマグネットセンサとを含んで構成される前記扉体異常作動検出装置の本来の機能や作動を確保できるという作用効果を得られる。
さらに、このように上下寸法の大きいカバー部材を用いることは、戸先側縦枠部材に、少なくとも1個の対震ストライク装置をマグネットセンサから上下方向に離して配置する場合にも適用することができる。
これについて具体的に説明すると、戸先側縦枠部材に、少なくとも1個の対震ストライク装置をマグネットセンサから上下方向に離して配置し、この対震ストライク装置を、扉体と対面するカバー部材を備えたものとし、このカバー部材を、マグネットセンサにおける扉体の開き側の箇所を覆う上下寸法の大きいものとし、このカバー部材を、対震ストライク装置のストライク部材に結合するとともに、マグネットセンサをカバー部材に取り付ける。
これによっても上述した作用効果を得られる。
上述したそれぞれの上下寸法の大きいカバー部材には、対震ストライク装置と対応する箇所において、扉体の戸先側の前記端部が当接することによりこの扉体が全閉位置に達する戸当り部材を設けてもよい。
これによると、上下寸法の大きいカバー部材に設けられた戸当り部材により、扉体の全閉位置を規定することができる。
以上説明した本発明は、任意の場所に任意の用途で設置される引戸装置に適用することができ、本発明に係る引戸装置は、例えば、集合住宅等の玄関に設置されるものでもよく、あるいは、建物内の廊下と部屋を仕切るためのものでもよく、あるいは、建物内の部屋同士を仕切るためのものでもよい。
また、本発明に係る引戸装置の扉体は、上側に配設されたガイドレールから吊り下げられて、このガイドレールに案内されて開閉移動する上吊り式のものでもよく、あるいは、下側に配設されている下ガイドレールに案内されて開閉移動するものでもよく、あるいは、上吊り用のガイドレールと下ガイドレールの両方に案内されて開閉移動するものでもよい。
本発明によると、扉体異常作動検出装置のマグネットセンサを、外力等の影響を受けるおそれをなくして配置できるようになるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る引戸装置の全体正面図が示されており、この引戸装置は、例えば、集合住宅の玄関に設置されるものである。なお、以下の説明において、戸先側とは、扉体1の開閉移動方向のうち、閉じ側のことであり、また、戸尻側とは、扉体1の開閉移動方向のうち、開き側のことである。
図1において、扉体1は枠体2の内側に形成されている空間に開閉移動自在に配置され、この枠体2は、無目である上枠部材3と、戸先側に立設されている戸先側縦枠部材4と、戸尻側に立設されている戸尻側縦枠部材5とにより、三方枠状に構成され、これらの上枠部材3と戸先側縦枠部材4と戸尻側縦枠部材5は、建物躯体である壁6に取り付けられ、戸先側縦枠部材4と戸尻側縦枠部材5は、枠体2を構成する部材のうち、扉体1の移動限位置に配置された縦枠部材となっている。上枠部材3の内部には、扉体1の開閉移動方向への長さを有するガイドレール7が収納架設され、扉体1の上部にはブラケット8を介して吊り車であるローラ9が回転自在に取り付けられており、ローラ9はガイドレール7に転動自在に載置係合している。扉体1の下端部の内部には、床10に立設配置されたガイドローラ11が挿入されており、扉体1を把持部材12で開閉移動方向に操作すると、ガイドレール7から吊り下げられた扉体1は、上部がこのガイドレール7で案内されて、また、下部はガイドローラ11で案内されて、枠体2の内側に形成されている空間を開閉移動する。
本実施形態に係る引戸装置には、全閉位置に達している扉体1を施錠するための錠前装置20と、全閉位置に達している扉体1を、例えば、不審者が開き移動させたときに作動する扉体異常作動検出装置21とが設けられており、錠前装置20は、戸先側縦枠部材4の長さ方向である上下方向に2個配置されているため、2ロックタイプとなっており、これらの錠前装置20の上下の間に扉体異常作動検出装置21が配置されている。
図2には、扉体1の開閉移動方向のうち、閉じ側に配置された戸先側縦枠部材4の縦断面図が示されており、この縦断面図は、扉体1が全閉位置に達しているときの状態を示している。図4及び図5は、図2のS4−S4及びS5−S5線断面図である。これらの図4及び図5に示されているように、戸先側縦枠部材4には、前述の開き側である戸尻側へ向かって開口していて、戸先側へ窪んでいる凹部25が形成され、戸先側縦枠部材4の全長に渡る長さを有するこの凹部25の戸先側の端部は、凹部25の底部25Aとなっている。扉体1の戸先側の端部1Aが凹部25の内部に侵入することにより、扉体1は全閉位置に達することになり、凹部25における扉体1の厚さ方向両側の壁部25B,25Cには、全閉位置に達した扉体1と戸先側縦枠部材4との間の気密性を確保するための気密部材26が取り付けられている。
図3には、図1及び図2で示されている錠前装置20が拡大されて示されている。上下2個設けられている錠前装置20のそれぞれは、扉体1に配置された鎌錠部材27と、戸先側縦枠部材4に配置された対震ストライク装置30とを含んで構成されており、扉体1の内部に没入していた鎌錠部材27は、扉体1に設けられているサムターン部材28の回動操作により、下側から上側へ回動して扉体1側から戸先側縦枠部材4側へ突出作動するようになっており、また、図5に示されているように、このサムターン部材28とは扉体1の厚さ方向反対側の面に設けられているキー挿入部29に挿入されるキーの回動操作によっても、鎌錠部材27は下側から上側へ回動して扉体1側から戸先側縦枠部材4側へ突出作動するようになっている。
図3に示されているように、対震ストライク装置30は、後述の説明で分かるように、戸先側縦枠部材4に取り付けられたストライク部材31を有し、このストライク部材31は、戸尻側の板状のベース部31Aと、このベース部31Aの戸先側の面から半円状に膨出している膨出部31Bとからなり、この膨出部31Bは、戸先側縦枠部材4の凹部25の底部25Aに形成されている開口部25Dに挿入されることにより、凹部25から底部25Aを越えて戸先側へ突出している。
ベース部31Aには、鎌錠部材27が出入りする孔32が形成されており、サムターン部材28やキーの操作で鎌錠部材27が扉体1から突出作動すると、この孔32から鎌錠部材27が膨出部31Bの内部の空洞部に侵入でき、膨出部31Bの戸尻側の上部には、膨出部31Bの内部の空洞部に侵入した鎌錠部材27の先部が係止する壁部31Cが形成されており、この壁部31Cに鎌錠部材27の先部が係止することにより、扉体1は、錠前装置20によって戸先側縦枠部材4に施錠されることになる。
また、ストライク部材31のベース部31Aにおける戸先側の面には、膨出部31Bの上下二箇所において、2個のガイド部材33が配置され、これらのガイド部材33は、戸尻側の板状の基部33Aと、この基部33Aから戸先側へ延出した円筒部33Bとからなる。それぞれのガイド部材33よりも戸先側には、上下方向の長さを有する板金製折り曲げ品の取付部材34が配置され、それぞれのガイド部材33の円筒部33Bは、この取付部材34に形成された孔34Aにスライド自在に挿入されており、取付部材34は、上下二箇所において、ビス等の止着具35により戸先側縦枠部材4の凹部25の底部25Aに止着され、この止着は、取付部材34が凹部25の内部に配置されて行われている。
それぞれのガイド部材33の円筒部33Bは、凹部25の底部25Aに形成されている開口部25Dを貫通し、凹部25から底部25Aを越えて戸先側へ突出している。また、それぞれの円筒部33Bの戸先側の端部には、言い換えると、それぞれの円筒部33Bの先端部には、ストップ部材36が配置されている。
さらに、ストライク部材31のベース部31Aの戸尻側の面には、板状の第1カバー部材37が配置され、上下両端部が傾斜角度をもって戸先側へ屈曲した屈曲部37A,37Bとなっているこの第1カバー部材37には、それぞれのガイド部材33と対応する箇所において、ビス等の止着具38の軸部38Aを挿入する孔が設けられ、ストライク部材31のベース部31Aとガイド部材33の基部33Aには、止着具38の軸部38Aが貫通する孔が設けられており、止着具38の軸部38Aは、ガイド部材33の円筒部33Bの内部のねじ孔にねじ込まれている。
また、それぞれのガイド部材33の円筒部33Bの戸先側の端部に配置されたストップ部材36には、ビス等の止着具39の軸部39Aが挿入する孔が設けられており、この軸部39Aが、円筒部33Bの内部のねじ孔にねじ込まれることにより、ストップ部材36がガイド部材33の円筒部33Bの戸先側の端部に固定されている。
止着具38,39の軸部38A,39Aをガイド部材33の円筒部33Bの内部のねじ孔にねじ込む作業を行う前に、この円筒部33Bの外周にコイルばね40を嵌合する作業が行われ、止着具38,39の軸部38A,39Aを円筒部33Bの内部のねじ孔にねじ込む作業を行うことにより、コイルばね40は、取付部材34とストップ部材36との間に圧縮されて又は圧縮されないで配置される。
以上の作業により、取付部材34には、第1カバー部材37と、ストライク部材31のベース部31Aと、上下2個のガイド部材33と、これらのガイド部材33の戸先側の端部に配置されたストップ部材36と、コイルばね40とが取り付けられることになり、そして、取付部材34は止着具35により戸先側縦枠部材4に止着されているため、前述した対震ストライク装置30の構成部材となっているこれらの第1カバー部材37とストライク部材31と上下2個のガイド部材33とストップ部材36とコイルばね40は、取付部材34を介して戸先側縦枠部材4に取り付けられることになり、この取付状態では、本実施形態において、ガイド部材33の基部33Aに設けられた屈曲端部33Cが取付部材34に当接している。また、第1カバー部材37は、止着具38により、ストライク部材31とガイド部材33に結合されている
そして、上記取付状態では、前述した対震ストライク装置30の一部は、具体的には、この対震ストライク装置30を構成しているストライク部材31のベース部31Aや、ガイド部材33の基部33A、さらには、第1カバー部材37は、突出体となって戸先側縦枠部材4の凹部25の底部25Aから戸尻側へ突出しており、この突出体の戸尻側への突出量は、凹部25の深さ、すなわち、扉体1の開閉移動方向における凹部25の寸法よりも小さくなっている。
前述したように、ストライク部材31の膨出部31Bの内部の空洞部に侵入した鎌錠部材27の先部がストライク部材31に設けられている壁部31Cに係止すると、扉体1は錠前装置20により戸先側縦枠部材4に施錠されることになり、この施錠時において、戸先側縦枠部材4に、扉体1と戸先側縦枠部材4を互いに離反させる方向への荷重が作用したときには、鎌錠部材27を介して扉体1に連結されているストライク部材31は、戸先側縦枠部材4に対して戸尻側へ移動することになる。ストライク部材31のベース部31Aが戸尻側へ移動すると、第1カバー部材37は戸尻側へ押圧され、また、止着具38で第1カバー部材37と結合されているガイド部材33にも戸尻側への移動力が生じ、そして、ガイド部材33の円筒部33Bは、戸先側縦枠部材4に止着具35で止着されている取付部材34に形成された前述の孔34Aにスライド自在に挿入されているため、ガイド部材33は戸尻側へ移動する。
これにより、図7に示されているように、ガイド部材33の円筒部33Bの外周に配置されているコイルばね40は、ストップ部材36と取付部材34との間で圧縮され、このようにコイルばね40を圧縮しながら、扉体1と戸先側縦枠部材4は互いに離反する方向に移動し、この移動は、ストップ部材36の屈曲端部36Aが取付部材34に当接まで行うことが可能である。
また、扉体1と戸先側縦枠部材4を互いに離反する方向に移動させる上述の荷重が消滅したときには、圧縮されたコイルばね40の弾発力により、ストライク部材31や第1カバー部材37、ガイド部材33等は、図3に示されている初期の状態に復帰する。
以上の説明で分かるように、戸先側縦枠部材4に配置されている対震ストライク装置30の構成部材となっているストライク部材31は、コイルばね40により扉体1の開閉移動方向に弾性的に遊動可能となっており、このようなストライク部材31の壁部31Cに扉体1の鎌錠部材27が係止することにより、この扉体1は、鎌錠部材27や対震ストライク装置30で構成されている前述の錠前装置20により戸先側縦枠部材4に施錠されることになる。
対震ストライク装置30のストライク部材31が図3の位置から図7の位置へ移動するときは、地震の発生等により、戸先側縦枠部材4を含んで構成された前述の枠体2が、図1で示す正面視において、ひし形に変形したときである。すなわち、図3は、地震の発生前の状態を示し、図7は、地震の発生後の状態を示し、枠体2がひし形に変形したときには、扉体1の開閉移動方向に弾性的に遊動可能となっているストライク部材31は、図7で示したように、鎌錠部材27を介して扉体1に連結されているため、このストライク部材31は、戸先側縦枠部材4に対して戸尻側へ移動することになる。このため、ストライク部材31が戸先側縦枠部材4に固定的に配置されている場合と比較すると、前述のサムターン部材28やキーを戻し回動操作することにより、鎌錠部材27を、ストライク部材31の壁部31Cから容易に離脱させて扉体1の内部に没入させることができ、これにより、地震等のために枠体2がひし形に変形していても、錠前装置20で行われている扉体1の戸先側縦枠部材4に対する施錠を容易に解除することができる。
なお、錠前装置20により扉体1を戸先側縦枠部材4に施錠すること、及びこの施錠を解除することは、前述したように、扉体1の戸先側の端部1Aが戸先側縦枠部材4の凹部25の内部に侵入することでこの扉体1が全閉位置に達しているときに行われるが、図3及び図7に示されているように、対震ストライク装置30を構成している部材のうち、最も戸尻側に配置されている部材となっていて、扉体1と対面する部材となっている第1カバー部材37には、戸尻側へ突出した戸当り部材41が取り付けられており、この戸当り部材41に扉体1の戸先側の端部1Aが当接することにより、扉体1が全閉位置に達することになる。
図6は、図2のS6−S6線矢視図である。この図6に示されているように、第1カバー部材37には、扉体1の厚さ方向に2個の戸当り部材41が配置されており、また、この第1カバー部材37には、扉体1の鎌錠部材27が出入りするための開口部37Cが形成されている。
図2で示した扉体異常作動検出装置21は、扉体1の内部に配置された永久磁石によるマグネット45と、戸先側縦枠部材4の凹部25に収納配置されているマグネットセンサ46とを含んで構成されており、扉体1が全閉位置に達しているときに、マグネット45の磁力をマグネットセンサ46が検知できるようにするため、マグネット45は、扉体1の戸先側の端部1Aに配置されている。また、マグネットセンサ46は、ビス等の止着具47により中間部材を介して又は介さずに凹部25の底部25Aに止着されており、このマグネットセンサ46のうち、扉体1の開閉移動方向のうちの開き側の箇所は、第2カバー部材48より覆われている。板金の折り曲げ品となっているこの第2カバー部材48は、ビス等の止着具49により凹部25の底部25Aに止着された上下両端部48A,48Bと、これらの端部48A,48Bの中間部から戸尻側へ突出している矩形突出部48Cとからなり、この矩形突出部48Cと凹部25の底部25Aとの間にマグネットセンサ46は収納された状態で配置されている。
このため、戸先側縦枠部材4の凹部25には、マグネットセンサ46と第2カバー部材48とが収納配置されているが、第2カバー部材48を含むマグネットセンサ46についての底部25Aから戸尻側への突出量は、凹部25の深さ、すなわち、扉体1の開閉移動方向における凹部25の寸法よりも短くなっている。また、第2カバー部材48を含むマグネットセンサ46についての底部25Aから戸尻側への突出量は、前述したように凹部25に一部が収納配置されている前記対震ストライク装置30についての底部25Aから戸尻側への突出量よりも小さくなっている。このため、図2に示されているように、扉体1が対震ストライク装置30の第1カバー部材37に設けられた戸当り部材41に当接して全閉位置に達したときに、第2カバー部材48と扉体1の戸先側の端部1Aとの間に隙間が生ずるようになっている。
マグネット45とマグネットセンサ46と第2カバー部材48は、図4にも示されている。この図4には、マグネットセンサ46から延びるリード線50も示されており、このリード線50は、図6に示されているように、戸先側縦枠部材4の内部に軸方向を縦方向にして収納されている案内管51の内部に挿入されることにより、戸先側縦枠部材4の内部でマグネットセンサ46から上方へ配線されている。
リード線50は、全体が図1で示されている引戸装置の外部まで延設されていて、この引戸装置が設置されている建物等に設けられた警報装置まで延びている。図1で示した壁6には、この警報装置のオン、オフを手動で切り替え操作するための操作装置52が配設されている。操作装置52の操作で警報装置がオフからオンに切り替えられているときに、例えば、不審者が、全閉位置に達している扉体1を戸先側縦枠部材4に施錠していた錠前装置20を破損等し、扉体1を開き移動させた場合には、扉体1のマグネット45の磁力を戸先側縦枠部材4に配置されているマグネットセンサ46が検知しなくなるため、言い換えると、上述の扉体異常作動検出装置21が扉体1の異常作動を検出するため、警報装置は、扉体1が開き移動したことを音や光等により報知する。
以上説明した本実施形態によると、扉体1の異常作動を検出するための扉体異常作動検出装置21は、扉体1に配置されたマグネット45と、戸先側縦枠部材4に配置されたマグネットセンサ46とを含んで構成されているとともに、マグネットセンサ46は、戸先側縦枠部材4に戸先側へ窪んで形成された凹部25に収納配置されているため、マグネットセンサ46を外力等から保護された状態で戸先側縦枠部材4に配置できることになり、このため、マグネットセンサ46が外力等の影響を受けて損傷するなどのおそれをなくすることができる。また、凹部25にマグネットセンサ46を収納配置することにより、引戸装置の外観性を向上させることができるとともに、不審者がマグネットセンサ46の存在を認識することを困難にできる。
また、本実施形態では、前述したように対震ストライク装置30の一部となっているストライク部材31のベース部31Aや、ガイド部材33の基部33A、第1カバー部材37は、戸先側縦枠部材4の凹部25の底部25Aから戸尻側へ突出した突出体となっており、マグネットセンサ46は、この突出体と上下方向にずれた箇所において、戸先側縦枠部材4の凹部25に収納配置されているため、戸先側縦枠部材4の凹部25にマグネットセンサ46を収納配置することを、突出体の突出量を有効に利用して行え、また、突出体と干渉することをなくして行うことができる。
さらに、対震ストライク装置30は、戸先側縦枠部材4に上下方向に離れて2個配置され、これらの対震ストライク装置30の間にマグネットセンサ46が配置されているため、突出体の突出量を有効に利用して行う戸先側縦枠部材4の凹部25へのマグネットセンサ46の収納配置を、さらに一層有効に行うことができる。
また、対震ストライク装置30を構成する部材のうち、最も戸尻側に配置された部材は扉体1と対面する第1カバー部材37となっており、また、マグネットセンサ46における扉体1の開き側の箇所は、第2カバー部材48により覆われているため、対震ストライク装置30とマグネットセンサ46をこれらのカバー部材37,48により扉体1等から保護できるようになる。
さらに、扉体1と対面する第1カバー部材37には戸当り部材41が設けられているため、この戸当り部材41に扉体1の戸先側の端部1Aを当接させることにより、扉体1の全閉位置を規定することができる。
図8は、カバー部材についての別実施形態を示し、図9は、図8のS9−S9線矢視図である。この実施形態でも、戸先側縦枠部材4には、図8に示されているように、一部がこの戸先側縦枠部材4の凹部25の底部25Aから戸尻側への突出量を有する突出体となっている対震ストライク装置30が上下に離れて2個配置され、したがって、鎌錠部材27と対震ストライク装置30からなる錠前装置20の個数は2個であり、上下2個の対震ストライク装置30の間において、マグネットセンサ46が戸先側縦枠部材4の凹部25に収納配置されている。そして、この実施形態では、扉体1と対面するカバー部材60は、上下2個の対震ストライク装置30について共通する部材となっており、また、このカバー部材60は、前記実施形態の第2カバー部材48と同様に、マグネットセンサ46における扉体1の開き側の箇所を覆うものとなっている。
このため、カバー部材60は上下寸法の大きいものとなっている。このカバー部材60は、図3で示した第1カバー部材37と同様に、ビス等の止着具38により対震ストライク装置30のガイド部材33に結合されており、したがって、カバー部材60は、対震ストライク装置30のストライク部材31に結合されており、この結合を行っている止着具38は、図9に示されている。また、図8に示されているように、カバー部材60の上下中間部には、戸尻側へ突出している矩形突出部60Aが形成され、この矩形突出部60Aと凹部25の底部25Aとの間にマグネットセンサ46が配置されている。
この実施形態では、図2及び図4の実施形態において、マグネットセンサ46を戸先側縦枠部材4に止着している止着具47は用いられておらず、この止着具47の代わりに、図8及び図9に示されているように、マグネットセンサ46をカバー部材60に止着するためのビス等に止着具61が用いられている。このため、マグネットセンサ46は上下寸法の大きいカバー部材60に取り付けられている。そして、図9に示されているように、このカバー部材60には、扉体1の鎌錠部材27が出入りするための開口部60Aが形成されている。
この実施形態では、上述したように上下寸法の大きいカバー部材60は、上下2個の対震ストライク装置30に共通の部材となっていて、これらの対震ストライク装置30のストライク部材31に結合されているとともに、マグネットセンサ46がこのカバー部材60に取り付けられているため、扉体1の錠前装置20の鎌錠部材27が戸先側縦枠部材4に配置された対震ストライク装置30のストライク部材31に係止することにより、扉体1が施錠されているときに、地震等により、戸先側縦枠部材4を含んで構成されている前述の枠体2が変形した場合において、ストライク部材31は戸先側縦枠部材4に対して弾性的に遊動して扉体1との位置関係を扉体1の開閉移動方向に一定又は略一定に維持しようとするため、それぞれの対震ストライク装置30のストライク部材31に上下寸法の大きいカバー部材60を介して連結された状態になっているマグネットセンサ46は、扉体1に配置されているマグネット45との位置関係を扉体1の開閉移動方向に一定又は略一定に維持することになる。このため、地震等により枠体2が変形しても、マグネット45と、このマグネットの磁力を検知するマグネットセンサ46とを含んで構成される扉体異常作動検出装置21の本来の機能や作動を確保できることになる。
また、この実施形態のカバー部材60には、図8及び図9に示されているように、それぞれの対震ストライク装置30と対応する箇所において、扉体1の戸先側の端部1Aが当接することによりこの扉体1が全閉位置に達する戸当り部材41が設けられている。このため、この実施形態でも、扉体1の全閉位置を戸当り部材41により規定することができる。
以上説明した図8及び図9の実施形態では、錠前装置20の個数が2個であったが、この個数が1個で、この錠前装置20の対震ストライク装置30から上下にずれた箇所において、マグネットセンサ46を戸先側縦枠部材4に配置する場合にも、図8及び図9の実施形態と同様のカバー部材を用いてもよい。すなわち、対震ストライク装置30からマグネットセンサ46まで延びる上下寸法の大きいカバー部材を用い、このカバー部材を対震ストライク装置30のストライク部材31に結合するとともに、マグネットセンサ46をこのカバー部材に取り付けてもよい。これによっても地震等により枠体2が変形したときに、扉体異常作動検出装置21の本来の機能や作動を確保できる。
なお、このようなカバー部材を用いる場合にも、このカバー部材における対震ストライク装置30と対応する箇所には、扉体1の全閉位置を規定するための戸当り部材を設けてもよい。
図10は、戸先側縦枠部材4の凹部25に、この凹部25の底部25Aから戸尻側への突出量をもって配置された突出体についての別実施形態を示す。この突出体は、扉体1の全閉位置を規定するための戸当り部材62である。
この実施形態から分かるようにマグネットセンサ46を戸先側縦枠部材4の凹部25に有効に収納配置できるようにするために、凹部25の底部25Aから戸尻側への突出量を有している突出体は、前述した対震ストライク装置30でもよく、対震ストライク装置30以外のものでもよい。