JP2018024590A - 標的認識型組成物及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 腫瘍組織や炎症患部組織といった疾病標的組織に対する移行性、浸透性、滞留性を向上させて薬理活性物質の作用を向上させることにより薬理活性効果を効率的に発揮させることができる高分子ミセル型DDS製剤を提供することを課題とする。【解決手段】 ポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質を含有し、標的結合部位がPEG部分に結合した標的結合性PEG脂質(A)、並びにポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体であって、平均分子量が2キロダルトン以上で15キロダルトン以下であるブロック共重合体(B)、を含有する標的認識型組成物。【選択図】図2

Description

本発明は、標的結合部位を有するPEG脂質、及びブロック共重合体を含む組成物であって、疾病標的組織に対する移行性、浸透性、滞留性を有し、並びに/若しくは、腎臓等における排泄性を有する標的認識型組成物、それらを用いた医薬品に関する。
医薬品において、有効成分である生理活性物質の薬物動態を制御して、生体内の特異的な作用部位に望ましい薬物濃度−作用時間で送達させるドラッグデリバリーシステム(DDS)が開発されている。非特許文献1は、ポリエチレングリコールセグメントとポリアミノ酸鎖を含有する疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体を薬剤運搬担体とするDDS製剤を開示している。このブロック共重合体は、ポリエチレングリコールの外殻と疎水性内核を有する粒径が20〜100nmの高分子ミセル形状を形成し、様々な種類の薬剤を化学結合又は物理的取込みにより安定に内核に包含する。
この高分子ミセル型DDS製剤は、EPR(正常の血管に比べて透過性が高い腫瘍部位や炎症部位近傍の血管において、100nm以下の粒子が特異的に集まるという現象)効果を持つこと、生体内に投与すると排泄が抑制されて体内滞留性が向上すること、受動的に腫瘍等の組織へ移行して集積して行くことが特徴である。これらの性質に基づき、高分子ミセル型DDS製剤は生理活性物質を生体内に長時間留め、有効成分の利用率を高めることができる。すなわち、高分子ミセル型DDS製剤は搭載薬と比較して、より強力な生理活性効果をもたらす。
特許文献1及び特許文献2はパクリタキセルを物理的に取り込んだ高分子ミセル型DDS製剤を開示している。特許文献3にはカンプトテシン誘導体が化学結合した高分子ミセル型DDS製剤、特許文献4にはレゾルシノール誘導体が化学結合した高分子ミセル型DDS製剤、特許文献5にはタキサン誘導体が化学結合した高分子ミセル型DDS製剤、特許文献6にはステロイド誘導体が化学結合した高分子ミセル型DDS製剤が記載されている。様々な薬剤が高分子ミセル型DDS製剤に適用可能であり、様々なブロック共重合体及び高分子ミセル型DDS製剤が知られている。
従来の高分子ミセル型DDS製剤は、内包薬剤の血中滞留性が向上するため、疾病組織のみならず、正常組織にも長時間、薬剤が作用してしまう可能性があった。例えば特許文献3で開示の抗腫瘍剤であるカンプトテシン誘導体が化学結合したブロック共重合体は、生体内においてカンプトテシン誘導体を徐放的に放出する。その結果、腫瘍組織だけでなく骨髄等の正常組織に対しても遊離したカンプトテシン誘導体が長期間に亘り作用することで、強力な抗腫瘍効果を発揮すると共に不可避的に好中球減少等の骨髄抑制を発現し、これが用量制限毒性(DLT;dose limiting toxity)となってしまっている(非特許文献2)。このように、従来の高分子ミセル型DDS製剤は、強力な薬理活性効果を発揮させることができるものの、その長期血中滞留性により正常組織においては副作用を発現させてしまうことがあった。
一方で、標的組織集積性を向上させる手法としてアクティブターゲット型の高分子ミセル型DDS製剤が使用されている。例えば、特許文献7では標的結合部位を有するブロックコポリマー成分(α)、及び薬剤を有するブロックコポリマー成分(β)を含有する組成物が開示されている。具体例として、トランスフェリンを標的結合部位として、ドセタキセルが化学結合したアクティブターゲット型の高分子ミセル型DDS製剤を開示している。ここではトランスフェリンの有無で体重減少は同等であるが、抗腫瘍効果を増強できることを記載している。
しかしながら、骨髄等の正常組織に対する長期薬剤暴露を抑制しつつ、腫瘍移行性、腫瘍浸透性、及び腫瘍滞留性を十分に達成した高分子ミセル型DDS技術は未だに十分に確立されておらず、更なる改良が求められている。
国際公開WO2004/082718号 国際公開WO2006/033296号 国際公開WO2004/039869号 国際公開WO2008/041610号 国際公開WO2007/111211号 国際公開WO2009/041570号 特許第4538666号
Advanced Drug Delivery Reviews,2008年,60巻,899〜914頁 Clinical Cancer Research,2010年,16巻,5058〜5066頁
本発明は、腫瘍組織や炎症患部組織といった疾病標的組織に対する移行性、浸透性、滞留性を向上させて薬理活性物質の濃度や作用時間を上昇させることにより薬理活性効果を効率的に発揮させ、一方で、積極的に腎排泄することで過度な血中滞留を回避し、骨髄等の正常組織に対する長期薬剤暴露を抑制することができる高分子ミセル型DDS製剤を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質を含有し、抗体分子や受容体結合性ペプチド等の標的結合部位がPEG部分に結合した標的結合性PEG脂質(A)と、標的結合部位を具備しないブロック共重合体(B)を組み合わせることで、予想外なことに、ブロック共重合体(B)単独でミセル様会合体を形成した場合に比較して、粒子径が小さい高分子ミセル様会合体を形成することを見出した。
この組成物が、標的疾患組織に対する移行性だけでなく、標的組織浸透性及び滞留性を有すること、腎臓からの排泄性を具備することから、従来の高分子ミセル型DDS製剤に比較して、有効性及び/又は安全性を向上させる薬物動態特性を有することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は次の[1]〜[15]に関する。
[1] ポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質を含有し、標的結合部位がPEG部分に結合した標的結合性PEG脂質(A)、並びにポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体であって、平均分子量が2キロダルトン以上で15キロダルトン以下であるブロック共重合体(B)、を含有する標的認識型組成物。
本発明は、抗体分子や受容体結合性ペプチド等の標的結合部位と称する機能性分子をPEG脂質に付与した部材(A)を用いることを特徴とし、これに標的結合部位を有しない両親媒性のブロック共重合体を組み合せて用いることを第1の特徴とする。更に、平均分子量2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質を含有し、標的結合部位がPEG部分に結合した標的結合性PEG脂質(A)と、両親媒性ブロック共重合体の平均分子量が2キロダルトン以上で15キロダルトン以下のブロック共重合体(B)を組み合せた組成物であることを第2の特徴とする。当該成分(A)及び成分(B)は、水溶液中で、疎水性相互作用に基づき会合体を形成することを特徴とする組成物であり、成分(A)が具備する標的結合部位により、当該組成物は標的部位を認識して効率的に薬剤等の生理活性物質を送達することができると共に、当該組成物を構成する標的結合部位を有しない担体ポリマー(A)の平均分子量が2キロダルトン以上10キロダルトン以下であり、担体ポリマー(B)の平均分子量が2キロダルトン以上15キロダルトン以下であることが、標的疾患組織への浸透性・滞留性及び/又は腎臓からの排泄性においてより好ましい異なる薬物動態特性をもたらす。
[2] 前記ブロック共重合体(B)の疎水性ポリマーセグメントが、疎水性置換基を側鎖に有するポリアミノ酸鎖である、前記[1]に記載の標的認識型組成物。
[3] 前記ブロック共重合体(B)が、PEG鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと、側鎖カルボキシ基にエステル結合及び/又はアミド結合にて疎水性官能基を有する、ポリアスパラギン酸セグメント、ポリグルタミン酸セグメント及びポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)鎖セグメントからなる群から選択される1種であるポリアミノ酸鎖である疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体であり、該疎水性置換基の質量含有率が5質量%以上で50質量%以下である、前記[1]又は[2]に記載の標的認識型組成物。
ブロック共重合体(B)において、疎水性ポリマーセグメントをポリアミノ酸で構築することが好ましい態様として挙げられる。アミノ酸は多様な側鎖置換基を備えることから、該疎水性ポリマーセグメントの疎水性の程度を調整することができる特に、疎水性ポリマーセグメントに、カルボン酸側鎖を有するポリアミノ酸を用いると、種々の疎水性置換基を容易に調整することができることから有利である。
[4] 前記ブロック共重合体(B)が、PEG鎖の平均分子量が1キロダルトン以上で6キロダルトン以下である前記[1]乃至[3]に記載の標的認識型組成物。
[5] ブロック共重合体(B)が、PEG鎖とポリアミノ酸鎖を合せた主鎖ポリマーの平均分子量が、2キロダルトン以上で10キロダルトン以下である、前記[1]乃[4]に記載の標的認識型組成物。
[6] 前記ブロック共重合体(B)が、一般式(1)
Figure 2018024590
[式中、R5aは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、taは20〜140の整数を示し、Aaは置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキレン基を示し、R2aは水素原子、炭素数(C1〜C6)アシル基及び炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される置換基を示し、R3aは、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のジアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基、水酸基及び/又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基からなる群から選択される1種以上の疎水性置換基の結合残基を1以上含み、残部は水酸基であり、Baは結合基を示し、naは1又は2を示し、x1a、x2a及びzaは、それぞれ独立して0〜20の整数を示し、x1a+x2aは1〜20の整数を示し、(x1a+x2a+za)は3〜20の整数を示し、前記R3aが結合している各構成ユニット並びに側鎖カルボニル基が分子内環化した構成ユニットは、それぞれ独立してランダムに配列した構造である。]で示される前記[1]乃至[5]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
[7] 前記標的結合性PEG脂質(A)の、PEG脂質分子当りの脂質部分の質量含有率が10質量%以上で40質量%以下である、前記[1]乃至[6]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
[8] 前記標的結合性PEG脂質(A)のPEG部分の平均分子量が、前記ブロック共重合体(B)のPEG部分の平均分子量より大きいことを特徴とする、前記[1]乃至[7]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
標的結合性PEG脂質(A)はPEG部分に標的結合部位が結合しているため、当該標的結合性PEG脂質(A)の親水性のバランスを調整するためPEG分子量の大きいPEG脂質を用いることが好ましい。また、標的結合部位の認識性を高めるために、PEG脂質(A)のPEG鎖長はブロック共重合体(B)のそれより長いことが好ましい。
[9] 前記標的結合性PEG脂質(A)と、ブロック共重合体(B)とが1:0.5〜50のモル比である、前記[1]乃至[8]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
[10] 前記標的結合性PEG脂質(A)の質量含有率が2質量%以上で70質量%以下である、前記[1]乃至[9]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
[11] 前記標的結合性PEG脂質(A)の質量含有率が2質量%以上で50質量%以下である、前記[1]乃至[10]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
[12] 生理活性物質を含有する、前記[1]乃至[11]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
本発明は、標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含む標的認識型組成物を疎水性の生理活性物質を内包して運搬する高分子ミセル型DDSキャリアとして用いても良く、本発明の態様の一つとして挙げることができる。
[13] 前記標的認識型組成物は、水溶液中において会合型複合体を形成し、該会合型複合体の平均粒径が30ナノメートル以下である、前記[1]乃至[12]の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
本発明は、アクティブターゲッティング機能を具備する標的結合性PEG脂質(A)、アクティブターゲッティング機能を有さないブロック共重合体(B)が、相互作用により会合して30ナノメートル以下のナノ粒子を形成する。そのナノ粒子は、標的組織における移行性・浸透性に優れると共に、腎臓等からの排泄性も併せ持ち、従来既知の高分子ミセル型DDS製剤とは明らかに異なる薬物動態特性を示すことが大きな特徴である。また、標的結合性PEG脂質(A)により標的組織に対するターゲッティング機能を有しており、標的疾患組織で長期間滞留することができる。
本願の組成物は医薬品に用いることができることから、医薬用途も本願の発明に含まれる。
[14] 前記[1]乃至[13]の何れか一項に記載の標的認識型組成物を有効成分とする医薬。
[15] 前記[1]乃至[13]の何れか一項に記載の標的認識型組成物を有効成分とする抗腫瘍剤。
本願は、前記標的結合性PEG脂質(A)と前記ブロック共重合体(B)を含有する組成物を用いる医薬としての用途も提供する。医薬用途の態様の一つとして当該標的結合性PEG脂質(A)及び当該ブロック共重合体(B)を含有する標的認識型組成物に生理活性物質を物理的に包含して高分子ミセル型DDS製剤を調製することができる。また、別の態様としてブロック共重合体(B)に疎水性置換基として生理活性物質を結合させたプロドラッグ型共重合体とすることで、化学結合型の高分子ミセル型DDS製剤を調製することができる。本願は前記生理活性物質として抗腫瘍性物質を適用させた抗腫瘍剤としての用途も併せて開示する。
本願発明のポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質に標的結合部位を結合させた標的結合性PEG脂質(A)と、平均分子量が2キロダルトン以上で15キロダルトン以下であるブロック共重合体(B)を含有する標的認識型組成物は、従来のブロック共重合体を用いた組成物と比較して小さな粒子径の高分子ミセル様会合体を形成する。該組成物は、生体内に投与された後、標的組織に移行性・浸透性・滞留性し、及び/又は腎臓等における排泄性が向上している。このため本発明に係る標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物は、従来の高分子ミセル型DDS製剤と比較して、標的組織に対する高い移行性、浸透性、滞留性を有することから、生理活性物質を標的組織の広範囲に亘り感作させ、効率的に薬理活性効果を発揮させることができる。並びに/若しくは、当該組成物は、腎臓等における排泄性が向上しているため、血中滞留性が抑えられて標的組織以外の正常組織への生理活性物質の感作を抑制することにより、正常組織の障害発現を回避させることができる。
特に生理活性物質として抗腫瘍剤を用いた場合、標的結合部位が結合しているPEG脂質を含有する組成物の腫瘍組織に対する移行性、浸透性、滞留性の向上、及び/又は腎排泄性の向上により、抗腫瘍効果の増強及び/又は骨髄抑制等の正常組織障害の乖離を達成することができる。
実施例1及び比較例1のHER2陽性SK−BR−3細胞内取り込み試験における蛍光顕微鏡観察像を示す。 実施例1及び比較例1のHER2陽性SK−BR−3細胞内取り込み量を示す。
本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質を含有し、標的結合部位がPEG部分に結合した標的結合性PEG脂質(A)、並びにPEG鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結した平均分子量が2キロダルトン以上で15キロダルトン以下であるブロック共重合体(B)を含有する標的認識型組成物である。本発明の組成物の構成ポリマー、並びに当該組成物について以下に説明する。
[標的結合性PEG脂質(A)]
本願において脂質とは、脂肪酸のエステルを含むがこれらに限定されず、水に不溶であるが多くの有機溶媒に可溶であることによって特徴付けられる有機化合物をいう。本発明のPEG脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した有機化合物をいう。PEG脂質としては、例えば、ジアシルグリセロールのPEG結合体(PEG−DAG)、ジアシルグルカミドのPEG結合体、ジアルキルオキシプロピルのPEG結合体(PEG−DAA)が挙げられる。またホスファチジルエタノールアミンのPEG結合体(PEG−PE)等のリン脂質のPEG結合体、セラミドのPEG結合体(PEG−Cer)、コレステロール誘導体のPEG結合体(PEG−Chol)、脂溶性ビタミンのPEG結合体(PEG−Vitamine)等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、又はそれらの混合物で用いても良い。すなわち、ジアシルグリセロールのPEG結合体(PEG−DAG)、ジアシルグルカミドのPEG結合体、ジアルキルオキシプロピルのPEG結合体(PEG−DAA)、ホスファチジルエタノールアミンのPEG結合体(PEG−PE)、セラミドのPEG結合体(PEG−Cer)、コレステロール誘導体のPEG結合体(PEG−Chol)、脂溶性ビタミンのPEG結合体(PEG−Vitamine)からなる群から選択される1種以上のPEG脂質を用いた標的結合性PEG脂質(A)であることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)におけるPEG部分は、次の構造式:−O−(CHCHO)n−、エチレンオキシ基単位の繰り返し構造を有するセグメントである。この場合、nは約5〜約200、好ましくは約22〜120の整数であり、その結果、PEG脂質のPEG部分の数平均分子量は約0.2キロダルトン〜約9キロダルトン、好ましくは約1キロダルトン〜約5キロダルトンとなる。
標的結合性PEG脂質(A)のPEG部分の平均分子量は、後述するブロック共重合体(B)におけるPEG部分の平均分子量より大きいPEG部分を採用することが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)におけるPEG部分は、次の構造:
−Y−(CHCHO)−CHCH−、
−Y−(CHCHO)−CHC(=Y)−Y−、
−Y−C(=Y)−(CHa2−Y−(CHCHO)−CHCH−Y−(CHa2−C(=Y)−Y及び
−Y−(CRa2−Y−(CHb2−O−(CHCHO)−(CHb2−Y−(CR)−Y
によって表されるPEG部分であることが好ましい。
この場合、式中Y及びYは、独立して、O、S、SO、SO、NR又は結合であり、Yは、O、S又はNRであり、R乃至Rは、独立して、水素原子、炭素数(C1〜C6)アルキル、炭素数(C2〜C6)アルケニル、炭素数(C2〜C6)アルキニル、炭素数(C3〜C19)分岐アルキル、炭素数(C3〜C8)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、炭素数(C1〜C6)ヘテロアルキル、炭素数(C1〜C6)アルコキシ、アリールオキシ、炭素数(C1〜C6)ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、炭素数(C2〜C6)アルカノイル、アリールカルボニル、炭素数(C2〜C6)アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、炭素数(C2〜C6)アルカノイルオキシ、及びアリールカルボニルオキシからなる群から選択される1種以上の官能基を示す。
なお、前記R乃至Rの官能基は任意の置換基を有していても良い。有していても良い置換基とは、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、メルカプト基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でも良い。
乃至Rは好ましくは水素、メチル基、エチル基又はプロピル基の中から選択される。
及びbは、独立して、0又は正の整数を示す。好ましくは0又は1〜6の整数であり、さらに好ましくは1又は2である。
エチレンオキシ基単位の繰り返し数であるnは5から200であり、好ましくは22〜120の整数である。
標的結合性PEG脂質(A)における前記PEG部分及び脂質部分は、非エステル含有リンカー部分又はエステル含有リンカー部分といった適当な連結基を介して結合している。
適当な非エステル含有リンカー部分としては、これらに限定されるものではないが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カーバメートリンカー部分、カーボネート(OC(=O)O)リンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、スクシニルリンカー部分が挙げられる。単一リンカー部分構造であってもそれらの組み合わせであっても良い。
適当なエステルリンカー部分としては、例えば、スクシノイルリンカー部分、リン酸エステル(−O−P(=O)(OH)−O−)リンカー部分、スルホネートエステルリンカー部分が挙げられる。単一リンカー部分構造であってもそれらの組み合わせであっても良い。
標的結合性PEG脂質(A)の好ましい実施形態として、ポリエチレングリコール‐ジアシルグリセロール(PEG−DAG)が挙げられる。適切なポリエチレングリコール‐ジアシルグリセロールとしては、独立して、炭素数(C4〜C30)、好ましくは、炭素数(C8〜C24)の飽和又は不飽和炭化水素鎖長を有するアシル基を有するジアシルグリセロール基が挙げられる。ジアシルグリセロールは、さらに1個又は複数の置換炭化水素基を含んでいてもよい。
ポリエチレングリコール−ジアシルグリセロール(PEG−DAG)におけるジアシルグリセロール(DAG)とは、グリセロールに2つの脂肪族炭化水素鎖;R11及びR12を有する脂質部分を意味する。DAGは、下記一般式(2)
Figure 2018024590
[式中、R11及びR12は、同一又は異なっていても良く、炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した飽和炭化水素基、若しくは炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基を示す。]で示される脂質部分である。
11及びR12における炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数(C8〜C24)の直鎖又は分岐した飽和炭化水素基である。好適な飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、パルミチル基(C16)、ステアリル基(C18)及びイコシル基(C20)が挙げられる。
また、炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基は、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を有する炭素数(C8〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基である。好適な不飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、炭素数18個中に不飽和2重結合1個を有するため、C18:1と略す。以下、同様に略記する。)、(E)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2、また、シス型2重結合に挟まれたメチレン基の個数が1個であるため(1)とする。以下、同様に略記する。)、10,13−ノナデカジエニル基(C19:2、(1))、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))、11,14−エイコサジエニル基(C20:2、(1))、8,11,14−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、11,14、17−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、5,8,11,14−エイコサテトラエニル基(アラキドニル基、C20:4、(3))、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニル基(C20:5、(4))、7,10,13,16,19−ドコサペンタエニル基(C22:5、(4))、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニル基(C22:6、(5))、13,16−ドコサジエニル基(C22:2、(1))、13,16,19−ドコサトリエニル基(C22:3、(2))、7,10,13,16−ドコサテトラエニル基(C22:4、(3))が挙げられる。
好ましくは、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、C18:1)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2)、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))である。
好ましい実施形態においては、R11及びR12は両方とも同一であることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)の好ましいポリエチレングリコール−ジアシルグリセロール(PEG−DAG)としては、PEG−ジラウリルグリセロール(C12)、PEG−ジミリスチルグリセロール(C14、DMG)、PEG−ジパルミトイルグリセロール(C16、DPG)又はPEG−ジステアリルグリセロール(C18、DSG)等が挙げられる。
標的結合性PEG脂質(A)の別の好ましい実施形態として、ポリエチレングリコール−ジアシルグリカミドが挙げられる。適切なポリエチレングリコール−ジアシルグリカミドとしては、独立して、炭素数(C4〜C30)、好ましくは、炭素数(C8〜C24)の飽和又は不飽和炭化水素鎖長を有するジアルキルグリカミド基が挙げられる。ジアルキルグリカミドは、さらに1個又は複数の置換炭化水素基を含んでいてもよい。
ポリエチレングリコール−ジアシルグリカミドにおけるジアシルグリカミドとは、2つの脂肪族炭化水素鎖;R21及びR22を有する下記一般式(3)
Figure 2018024590
[式中、R21及びR22は、同一又は異なっていても良く、炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した飽和炭化水素基、若しくは炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基を示す。]で示される脂質部分である。
21及びR22における炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数(C8〜C24)の直鎖又は分岐した飽和炭化水素基である。好適な飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、パルミチル基(C16)、ステアリル基(C18)、及びイコシル基(C20)が挙げられる。
また、炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基は、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を有する炭素数(C8〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基である。好適な不飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、炭素数18個中に不飽和2重結合1個を有するため、C18:1と略す。以下、同様に略記する。)、(E)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2、また、シス型2重結合に挟まれたメチレン基の個数が1個であるため(1)とする。以下、同様に略記する。)、10,13−ノナデカジエニル基(C19:2、(1))、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))、11,14−エイコサジエニル基(C20:2、(1))、8,11,14−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、11,14、17−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、5,8,11,14−エイコサテトラエニル基(アラキドニル基、C20:4、(3))、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニル基(C20:5、(4))、7,10,13,16,19−ドコサペンタエニル基(C22:5、(4))、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニル基(C22:6、(5))、13,16−ドコサジエニル基(C22:2、(1))、13,16,19−ドコサトリエニル基(C22:3、(2))、7,10,13,16−ドコサテトラエニル基(C22:4、(3))が挙げられる。
好ましくは、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、C18:1)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2)、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))である。好ましい実施形態においては、R21及びR22は両方とも同一であることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)の好ましいポリエチレングリコール−ジアシルグリカミドとしては、PEG−ジラウリルグリカミド(C12)、PEG−ジミリスチルグリカミド(C14)、PEG−ジパルミトイルグリカミド(C16)又はPEG−ジステアリルグリカミド(C18)等が挙げられる。
標的結合性PEG脂質(A)のさらに好ましい別の実施形態としては、ポリエチレングリコール−ジアルキルオキシプロピルコンジュゲート(PEG−DAA)が挙げられる。脂質部分である「ジアルキルオキシプロピル」とは、グリセロールに2つのアルキル鎖;R31及びR32を有する脂質部分である。ジアルキルオキシプロピル(DAA)は、下記一般式(4)
Figure 2018024590
[式中、R31及びR32は、同一又は異なっていても良く、炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐したアルキル基を示す。アルキル基は飽和であっても不飽和であっても良い。]で示される脂質部分である。
31及びR32における炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐したアルキル基は、好ましくは炭素数(C8〜C24)の直鎖又は分岐したアルキル基であり、飽和であっても不飽和であっても良い。好適な飽和アルキル基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、パルミチル基(C16)、ステアリル基(C18)、オレオイル基(C18)及びイコシル基(C20)が挙げられる。
また、不飽和アルキル基は、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を有する炭素数(C8〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和アルキル基である。好適な不飽和アルキル基としては、これらに限定されるものではないが、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、炭素数18個中に不飽和2重結合1個を有するため、C18:1と略す。以下、同様に略記する。)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2、また、シス型2重結合に挟まれたメチレン基の個数が1個であるため(1)とする。以下、同様に略記する。)、10,13−ノナデカジエニル基(C19:2、(1))、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))、11,14−エイコサジエニル基(C20:2、(1))、8,11,14−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、11,14、17−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、5,8,11,14−エイコサテトラエニル基(アラキドニル基、C20:4、(3))、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニル基(C20:5、(4))、7,10,13,16,19−ドコサペンタエニル基(C22:5、(4))、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニル基(C22:6、(5))、13,16−ドコサジエニル基(C22:2、(1))、13,16,19−ドコサトリエニル基(C22:3、(2))、7,10,13,16−ドコサテトラエニル基(C22:4、(3))が挙げられる。
好ましくは、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、C18:1)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2)、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))である。ある実施形態では、R31及びR32は同一であって、ミリスチル基(C14)、ステアリル基(C18)、オレオイル基(C18)から選択される1種である。また、別の実施形態においては、R31及びR32は異なっていても良く、R31がミリスチル基(C14)であり、R32がステアリル基(C18)である態様が挙げられる。
好ましい実施形態においては、R31及びR32は両方とも同一であることが好ましい。標的結合性PEG脂質(A)の好ましいポリエチレングリコール−ジアルキルオキシプロピルコンジュゲート(PEG−DAA)としては、PEG−ジラウリルオキシプロピルコンジュゲート(C12)、PEG−ジミリスチリルオキシプロピルコンジュゲート(C14)、PEG−ジパルミチルオキシプロピルコンジュゲート(C16)、PEG−ジステアリルオキシプロピルコンジュゲート(C18)等が挙げられる。
標的結合性PEG脂質(A)のさらに別の好ましい実施形態としては、ホスファチジルエタノールアミンとポリエチレングリコール(PEG)の結合体であるPEG−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)が挙げられる。当該PEG脂質に有用なホスファチジルエタノールアミンは、グリセロール骨格に炭素数(C4〜C30)の飽和又は不飽和脂肪酸を結合されたグリセロリン脂質である。好ましくは炭素数(C8〜C24)の飽和又は不飽和脂肪酸を含有し得る。不飽和脂肪酸としては、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を含んでいて良い。
PEG−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)におけるホスファチジルエタノールアミン(PE)とは、下記一般式(5)
Figure 2018024590
[式中、R41及びR42は、同一又は異なっていても良く、炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した炭化水素基を示す。炭化水素基は飽和であっても不飽和であっても良い。]で示されるリン脂質部分である。
41及びR42における炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した炭化水素基は、好ましくは炭素数(C8〜C24)の直鎖又は分岐した炭化水素基であり、飽和であっても不飽和であっても良い。好適な飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、パルミチル基(C16)、ステアリル基(C18)及びイコシル基(C20)が挙げられる。
また、不飽和炭化水素基は、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を有する炭素数(C8〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基である。好適な不飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、炭素数18個中に不飽和2重結合1個を有するため、C18:1と略す。以下、同様に略記する。)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2、また、シス型2重結合に挟まれたメチレン基の個数が1個であるため(1)とする。以下、同様に略記する。)、10,13−ノナデカジエニル基(C19:2、(1))、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))、11,14−エイコサジエニル基(C20:2、(1))、8,11,14−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、11,14、17−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、5,8,11,14−エイコサテトラエニル基(アラキドニル基、C20:4、(3))、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニル基(C20:5、(4))、7,10,13,16,19−ドコサペンタエニル基(C22:5、(4))、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニル基(C22:6、(5))、13,16−ドコサジエニル基(C22:2、(1))、13,16,19−ドコサトリエニル基(C22:3、(2))、7,10,13,16−ドコサテトラエニル基(C22:4、(3))が挙げられる。
好ましくは、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、C18:1)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2)、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))である。
ある実施形態では、R41及びR42は同一であって、ミリスチル基(C14)、ステアリル基(C18)、オレオイル基(C18)から選択される1種である。また、別の実施形態においては、R41及びR42は異なっていても良く、R41がミリスチル基(C14)であり、R42がステアリル基(C18)である態様が挙げられる。
好ましい実施形態においては、R41及びR42は両方とも同一であることが好ましい。標的結合性PEG脂質(A)の好ましいホスファチジルエタノールアミンとしては、これらに限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)等が挙げられ、これのPEG結合体を用いることが好ましい。より好ましくは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられ、これらのPEG結合体を用いることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)のさらに別の好ましい実施形態としては、セラミドとポリエチレングリコール(PEG)の結合体であるPEG−セラミド(PEG−Cer)が挙げられる。セラミドはスフィンゴシンとアシル基の結合体であり、炭素数(C4〜C30)の飽和又は不飽和脂肪酸のアミド結合体を用いることが好ましい。不飽和脂肪酸としては、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を含んでいて良い。より好ましくは、炭素数(C8〜C24)の飽和又は不飽和脂肪酸のアミド結合体であり、これとPEG結合体である。
PEG‐セラミド(PEG−Cer)におけるセラミド(Cer)とは、下記一般式(6)
Figure 2018024590
[式中、R51は炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した炭化水素基を示す。炭化水素基は飽和であっても不飽和であっても良い。]で示される脂質部分である。
51における炭素数(C4〜C30)の直鎖又は分岐した炭化水素基は、好ましくは炭素数(C8〜C24)の直鎖又は分岐した炭化水素基であり、飽和であっても不飽和であっても良い。好適な飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、パルミチル基(C16)、ステアリル基(C18)及びイコシル基(C20)が挙げられる。
また、不飽和炭化水素基は、分子内に1個以上のシス型、トランス型、又は双方の不飽和2重結合を有する炭素数(C8〜C30)の直鎖又は分岐した不飽和炭化水素基である。好適な不飽和炭化水素基としては、これらに限定されるものではないが、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、炭素数18個中に不飽和2重結合1個を有するため、C18:1と略す。以下、同様に略記する。)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2、また、シス型2重結合に挟まれたメチレン基の個数が1個であるため(1)とする。以下、同様に略記する。)、10,13−ノナデカジエニル基(C19:2、(1))、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))、11,14−エイコサジエニル基(C20:2、(1))、8,11,14−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、11,14、17−エイコサトリエニル基(C20:3、(2))、5,8,11,14−エイコサテトラエニル基(アラキドニル基、C20:4、(3))、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニル基(C20:5、(4))、7,10,13,16,19−ドコサペンタエニル基(C22:5、(4))、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニル基(C22:6、(5))、13,16−ドコサジエニル基(C22:2、(1))、13,16,19−ドコサトリエニル基(C22:3、(2))、7,10,13,16−ドコサテトラエニル基(C22:4、(3))が挙げられる。
好ましくは、(Z)9−オクタデセニル基(オレイル基、C18:1)、(Z)9−オクタデセニル基(エライジ二ル基、C18:1)、9,12−オクタデカジエニル基(リノレイル基、C18:2)、9,12,15−オクタデカトリエニル基(α−リノレニル基、C18:3、(2))、6,9,12−オクタデカトリエニル基(γ−リノレニル基、C18:3、(2))である。
好ましくは、炭化水素基としてラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、パルミチル基(C16)、ステアリル基(C18)が挙げられ、これらのPEG結合体を用いることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)のさらに別の好ましい実施形態としては、コレステロール誘導体とポリエチレングリコール(PEG)の結合体であるPEG−コレステロール誘導体(PEG−Chol)が挙げられる。「コレステロール誘導体」という用語は、任意の置換基を有していても良いステロイド骨格を有するコレステロール構造を含有する。すなわちステロイド骨格を有するコレステロール類似体の結合残基を意味する。本明細書のコレステロール誘導体という用語は、ステロイドホルモン及び胆汁酸も含んでおり、これらの化合物の結合残基が脂質部分に相当する。したがって、PEG−コレステロール誘導体(PEG−Chol)とは、そのコレステロール誘導体とPEGの結合体を指す。
好ましいコレステロール誘導体としては、コレステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、コルチゾール、アルデステロン、プロゲステロン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、テストステロン、コール酸、グリココール酸、タウロコール酸、リトコール酸が挙げられ、水酸基やカルボキシ基といった結合性官能基から水素原子を除いた結合残基が脂質部分に相当し、そのPEG結合体を用いることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)のさらに別の好ましい実施形態としては、脂溶性ビタミンのPEG結合体(PEG−ビタミンVitamine)が挙げられる。「脂溶性ビタミン」という用語は、水に溶けにくく、油に溶けやすいビタミンを意味するが、その溶解性に限定はなく、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(トコフェロール)等を意味しており、これらの化合物の結合残基が脂質部分に相当する。ビタミンEとしては、α、β、γ及びδいずれであっても良い。標的結合性PEG脂質(A)の脂質構造として好適なビタミンとしては、これらに限定されるものではないが、好ましくは、ビタミンE(トコフェロール)が挙げられ、水酸基やカルボキシ基といった結合性官能基から水素原子を除いた結合残基が脂質部分に相当し、そのPEG結合体を用いることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)における、PEG部分の前記脂質部分が結合している末端基の反対のもう一方の末端基には、標的結合部位が結合している。該標的結合部位とは、生物学的な認識機能を有する部位、すなわち生体及びウイルスなどに由来する特異的な物質に対し選択的に結合して、当該物質と生物学的な結合対を形成し得る標的結合性分子種を意味する。生体及びウイルスに由来する物質としては、生体細胞、細菌、真菌、及びウイルスに存在する分子がそれに相当する。具体的には、腫瘍細胞、新生血管細胞、各種臓器を構成する細胞、血管内皮細胞、免疫担当細胞(例えばT細胞)、炎症細胞(例えば白血球)等が例示でき、当該標的結合部位は、このような細胞における特異的な物質と結合対を形成するタンパク質、ペプチド及び糖鎖といった化合物、若しくは結合対を形成する特異性を維持したままその構造の少なくとも一部が含有した状態で構成された化合物のことである。
標的結合部位に該当する分子種としては、生体及びウイルスに由来する物質と結合対を形成するタンパク質、ペプチド、アミノ酸又は糖鎖を例示できる。こうしたタンパク質としては、生体及びウイルスに由来する物質と結合する抗体及びその断片、トランスフェリンならびに上皮成長因子(EGF)を例示できる。抗体としては、がん細胞に代表される投薬対象物の表面に高発現する受容体や細胞表面の抗原である、EGFR、Her2、CD20、VEGFR、CD20及びCD33といった抗原を認識する抗体を例示できる。抗体はモノナール抗体であってもよいしポリクロナール抗体であってもよい。抗体の断片としては、抗原を特異的に認識できる長さを有しているものであればよく、(Fab’)2及びFabを例示できる。
前記ペプチドとしては、インスリン、LHRH、IGF、GE11、RGDペプチド及びそれらの誘導体を例示できる。ペプチド鎖を構成するアミノ酸はL体であってもD体であっても良く、また混合体であっても良い。またαアルキルアミノ酸に代表される非天然アミノ酸を含んでいても良い。
前記アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン及びそれらの誘導体を例示できる。アミノ酸はL体であってもD体であっても良い。
前記糖類としては、グルコース、マンノース、ガラクトース及びフコース残基を有する糖類を例示できる。標的結合部位を有する化合物は、それ自身が薬理活性を発揮し得る化合物、例えば、抗体医薬及びワクチンであってもよい。
該PEG部分と標的結合部位の結合様式としては、両者を化学結合により連結する基であれば、特に限定されるものではなく、PEGの末端基及び標的結合部位としての化学種の結合部位と、それぞれ結合できる官能基を具備した連結基であれば良い。好ましくは、末端基に結合官能基を有する炭素数(C1〜C6)アルキレン基である。ポPEGセグメントとの結合様式は、ポリオキシエチレン基;(CHCHO)の末端酸素原子によるエーテル結合が好ましく、PEG鎖セグメントのα末端に水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシ基、アルデヒド基、メルカプト基、マレイミド基を有する炭素数(C0〜C6)アルキレン基を反応性連結基とすることが挙げられる。
本発明で使用される標的結合部位と結合するための反応性連結基を有するPEG脂質の具体例としては、N−[N’−(3’−マレイミド−1’−オキソプロピル)アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル]−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が2キロダルトンのDSPE−PEG−MAL、PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−MAL又はPEG部分の平均分子量が5キロダルトンのDSPE−PEG−MAL)、N−(アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル)−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が2キロダルトンのDSPE−PEG−NH、PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−NH又はPEG部分の平均分子量が5キロダルトンのDSPE−PEG−NH)、N−[N’−(スクシニミジルオキシ グリタリル)アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル]−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が2キロダルトンのDSPE−PEG−NHS、PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−NHS又はPEG部分の平均分子量が5キロダルトンのDSPE−PEG−NHS)、N−(3’−(オキソプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル)−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−ALD)及びそれらの製薬上許容可能な塩(すなわちナトリウム塩)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
これらの反応性連結基を有するPEG脂質と、適宜選択されるタンパク質、ペプチド、アミノ酸又は糖鎖等の標的結合部位を反応させることで本発明に係る標的結合性PEG脂質(A)を調製することができる。
本発明の標的結合性PEG脂質(A)は、ポリエチレングリコール(PEG)構造部分と脂質部分からなるPEG脂質として、平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下であることを特徴とする。すなわち、タンパク質、ペプチド、アミノ酸又は糖鎖等の標的結合部位を含まないPEG脂質構造部分における平均分子量として、2キロダルトン以上で10キロダルトン以下である。
この平均分子量は、(1)PEG鎖の分子量、(2)脂質部分の分子量を合算した計算値を当該分子量とする。
(1)PEG鎖の平均分子量と脂質部分の分子量は、キロダルトン単位での精度による分子量規定でよい。したがって、前記各構成部分の分析方法は、当該PEG鎖のキロダルトン単位での分子量測定において、十分な精度の分析方法であれば良い。本発明における分子量の測定方法としては、PEG標準品を基準としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量を採用し、計算値としては100の位を四捨五入した値を使用する。或いは、内標準物質を添加したH−NMR測定の積分値から計算しても良い。
(2)脂質部分の分子量は、当該脂質部分の結合残基構造からの通常の分子量規定方法により算出される分子量を採用する。
本発明の標的結合性PEG脂質(A)は、標的結合部位を含まないPEG脂質分子当りの脂質部分の質量含有率が10質量%以上で40質量%以下であることが好ましい。脂質部分含量が10質量%より低い場合、当該(A)が疎水性相互作用を有さない懸念がある。また、脂質部分が40質量%より高い含有率である場合、当該(A)が充分な水溶性を具備できない可能性がある。標的結合部位を含まないPEG脂質分子当りの脂質部分の質量含有率が10質量%以上で30質量%以下であることがより好ましい。
[ブロック共重合体(B)]
ブロック共重合体(B)は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメント部分と、疎水性ポリマーセグメントが適当な結合基を介して連結してなるブロック共重合体を、担体ポリマーの主鎖構造とする。
ブロック共重合体(B)におけるPEG鎖を含有する親水性ポリマーセグメントは、エチレンオキシ基:(CHCHO)単位の繰り返し構造を有するセグメントである。好ましくはエチレンオキシ基単位重合度が10〜360ユニット、より好ましくは重合度が20〜140ユニットのPEG鎖を含むセグメント構造である。
すなわち該PEG鎖とは、PEG相当の分子量として0.4キロダルトン〜16キロダルトンのセグメント部であることが好ましく、より好ましくは分子量として0.8キロダルトン〜6キロダルトンの構造部分であり、特に好ましくは分子量として1キロダルトン〜6キロダルトンである。分子量が、1キロダルトン〜5キロダルトンのPEG鎖であることが、殊更好ましい。
前記PEG鎖の質量分子量率は、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。30質量%以上65質量%以下であることが殊更好ましい。
なお、本発明で用いるPEG鎖の分子量とは本発明のブロック共重合体を調製する際において、用いるPEG鎖構造化合物の、PEG標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量より求められる平均分子量を採用し、計算値としては100の位を四捨五入した値を使用する。
該ポリエチレングリコール(PEG)鎖の一方の末端基は、特に限定されるものではなく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)のアルキニル基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)アラルキル基等を挙げることができる。該アルキル基、アルキニル基、アラルキル基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖の一方の末端基において、置換基を有してもよい直鎖状アルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等を挙げることができる。置換基を有してもよい分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基等が挙げられる。置換基を有してもよい環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖の一方の末端基において、直鎖状アルキル基が有しても良い置換基とは、チオール基、水酸基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖の一方の末端基において、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)アルキニル基とは、例えば、2−プロピニル、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、5−ヘキシニル基等が挙げられる。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖の一方の末端基において、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)アラルキル基とは、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖又は分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。好ましくはベンジル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基である。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖のもう一方の末端基は、後述するポリアミノ酸鎖等の疎水性ポリマーセグメントと結合するための連結基である。PEG鎖を含む親水性ポリマーセグメントと後述する疎水性ポリマーセグメントの連結様式としては、2つのポリマーセグメントを化学結合により連結する基であれば、特に限定されるものではなく、PEG末端基及び疎水性ポリマーセグメントの末端基と、それぞれ結合できる官能基を具備した連結基であれば良い。
好ましくは、末端基に結合官能基を有する(C1〜C6)アルキレン基である。PEG鎖との結合様式は、ポリオキシエチレン基;(CHCHO)の末端酸素原子によるエーテル結合が好ましく、ポリアミノ酸鎖を含有する疎水性ポリマーセグメントとの結合様式はアミド結合又はエステル結合であることが好ましい。すなわち、連結基としては−(CH)s−NH−基(sは1〜6の整数である)又は−(CH)s−CO−基(sは1〜6の整数である)である。−(CH)s−CO−基(sは1〜6の整数である)としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、特にトリメチレン基が好ましい。
ブロック共重合体(B)における疎水性ポリマーセグメントは、ポリアミノ酸鎖、ポリグリコール酸鎖、ポリ乳酸鎖、ポリ(グリコール酸−乳酸)鎖、及びポリリンゴ酸鎖等を例示することができる。これらの何れのポリマー鎖を含有していても良く、前記ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと比して疎水性を示すポリマーセグメントであれば、特に限定されずに適用することができる。該ポリアミノ酸鎖及びポリリンゴ酸鎖を構成するアミノ酸及びリンゴ酸は特に限定されるものではなく、天然型アミノ酸及び天然型リンゴ酸、合成アミノ酸及び合成リンゴ酸、並びにその側鎖修飾体の何れを用いても良い。また、該ポリアミノ酸鎖、ポリ乳酸鎖、ポリ(グリコール酸−乳酸)鎖、ポリリンゴ酸鎖を構成するアミノ酸、乳酸、リンゴ酸はL体、D体及びラセミ体の何れを用いても良い。
ブロック共重合体(B)の平均分子量は、2キロダルトン以上で15キロダルトン以下であることを特徴とする。分子量が2キロダルトン以上で12キロダルトン以下であることが好ましい。
この平均分子量は、その構成部分の各構成分子量を合算した計算値を分子量として採用する。すなわち、(1)ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントの分子量、(2)疎水性ポリマーセグメント部分の分子量を合算した計算値を当該分子量とする。なお、ブロック共重合体(B)における標的結合部位は主鎖ポリマーに含まないため、分子量に考慮しない。
なお、平均分子量は、キロダルトン単位での精度による分子量規定でよい。したがって、前記各構成部分の分析方法は、キロダルトン単位での分子量測定において、十分な精度の分析方法であれば特に限定されるものではなく、様々な分析方法を適宜選択して良い。以下に、各構成部分における好ましい分析方法を挙げる。
(1)ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントの分子量とは本発明のブロック共重合体を調製する際において、用いるPEG鎖構造化合物の、PEG標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量より求められる平均分子量を採用し、計算値としては100の位を四捨五入した値を使用する。或いは、内標準物質を添加したH−NMRの積分値から算出された重合数を用いて計算することができる。
また、(2)の疎水性ポリマーセグメント部分の平均分子量は、PEG標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量を採用し、計算値としては100の位を四捨五入した値を使用する。或いは、内標準物質を添加したH−NMRの積分値から算出された重合数を用いて計算することができる。
ブロック共重合体(B)における疎水性ポリマーセグメントは、疎水性置換基を側鎖に有するアミノ酸を含有するポリアミノ酸鎖を用いることが好ましい。該ポリアミノ酸鎖には、例えばグリシン、アラニン、β−アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸の疎水性誘導体、グルタミン酸の疎水性誘導体、リシンの疎水性誘導体、アルギニンの疎水性誘導体、オルニチンの疎水性誘導体、システインの疎水性誘導体等の疎水性アミノ酸を含有させることが好ましい。特に側鎖が疎水性置換基で修飾されたアミノ酸を用いることが好ましく、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアルキルエステル、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアラルキルエステル、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアルキルアミド、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアラルキルアミド、Bocリシン等のアルキルオキシカルボニルリシン等を用いることが好ましい疎水性ポリマーセグメントにおける該ポリアミノ酸鎖は、これらのアミノ酸の何れか1種であっても良く、複数種類が混在してセグメントを構築していても良い。
該ポリアミノ酸鎖は、アミノ酸が2〜30ユニットで重合したセグメント構造であることが好ましい。3〜20ユニットの重合体であることがより好ましく、5〜20ユニットの重合体であることが殊更好ましい。
疎水性ポリマーセグメントにおけるポリアミノ酸鎖は、様々な疎水性置換基を制御して導入できることから、カルボン酸側鎖を有するアミノ酸であるアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含有するポリアミノ酸鎖とすることが好ましい。より好ましくは、アスパラギン酸のみで構築されたポリアスパラギン酸鎖、グルタミン酸のみで構築されたポリグルタミン酸鎖、若しくは、アスパラギン酸とグルタミン酸がランダムに混在して構成されたポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)鎖であることが好ましい。そして、疎水性置換基が所望の疎水性を示す程度に任意の割合で、側鎖カルボキシ基にエステル結合及び/又はアミド結合により導入されている態様が好ましい。これらの側鎖カルボキシ基を有するポリアミノ酸鎖は、α−アミド結合型重合体であっても、側鎖カルボキシ基とのアミド結合型重合体であっても、β(又はγ)−アミド結合型重合体であっても、その混合物であってもよい。また、ポリアミノ酸鎖は、直鎖状ポリアミノ酸であっても良く、側鎖を介した分岐型構造であっても良い。
疎水性ポリマーセグメントにおける側鎖カルボキシ基に付与させる疎水性置換基としては、例えば置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)アルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジ(C1〜C30)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基からなる群から選択される1種以上の置換基であることが好ましい。
これらの疎水性置換基は、ブロック共重合体(B)における含有率として5質量%以上で60質量%以下で含有されていることが好ましい。疎水性置換基の含有率が5質量%より低い場合、当該ブロック共重合体(B)の疎水性ポリマーセグメントの疎水性が弱く、疎水性相互作用に基づく十分な会合性が得られない懸念がある。一方、疎水性置換基の含有率が60質量%を超える場合、会合性は十分に具備するものの、疾患組織への浸透性・分布特性や、体外への排泄性において、満足できる薬物動態特性を奏しない懸念がある。当該疎水性置換基のブロック共重合体(B)における含有率として5質量%以上で50質量%以下であることが好ましい。
疎水性ポリマーセグメントにおける疎水性置換基として、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)アルコキシ基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C30)アルコキシ基が挙げられる。すなわち、側鎖カルボキシ基がエステル型誘導体となったものである。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
該炭素数(C1〜C30)アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−フェニルブトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イコシルオキシ基、ドコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基、ヘキサコシルオキシ基、オクタコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基が挙げられる。すなわち、側鎖カルボキシ基が、アルキルアミド型誘導体となったものである。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
該炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基、4−フェニルブチルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基、ヘキサデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イコシルアミノ基、ドコシルアミノ基、テトラコシルアミノ基、ヘキサコシルアミノ基、オクタコシルアミノ基、トリアコンチルアミノ基等が挙げられる。
該アルキルアミノ基としては、カルボキシ基を保護したアミノ酸、又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基も包含される。
該カルボキシ基を保護したアミノ酸としては、例えば、グリシンメチルエステル、グリシンベンジルエステル、β−アラニンメチルエステル、β−アラニンベンジルエステル、アラニンメチルエステル、ロイシンメチルエステル、フェニルアラニンメチルエステル等を用いても良い。
該アミノ基を有する蛍光物質としては、例えば、2−(2−アミノエトキシ)−9−(ジエチルアミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン、BODIPY(登録商標) TR Cadaverine、BODIPY(登録商標) FL Ethylene diamine、Alexa Fluor(登録商標) 594 Cadaverine、Texas Red(登録商標) Cadaverine、ATTO 594 amine等も含まれ、これらのアミド結合残基が含まれる。蛍光物質を導入することで、当該ブロック共重合体(B)の組織内分布や排泄性を確認するための指標とすることができる。
置換基を有していてもよいジ(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状のジ(C1〜C30)アルキルアミノ基が挙げられる。すなわち、側鎖カルボキシ基が、ジアルキルアミド型誘導体となったものである。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
該ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ジベンジルアミノ基、N−ベンジル−N−メチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジテトラデシルアミノ基、ジヘキサデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイコシルアミノ基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の(C1〜C8)アルキル基が置換したウレア型誘導体である。該アルキル基は同一種類であっても異なる種類であっても良い。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。置換基を有する場合ジアルキルアミノ基が好ましい。
置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノカルボニルメチルアミノ基、エチルアミノカルボニルエチルアミノ基、イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノカルボニルシクロヘキシルアミノ基、エチルアミノカルボニル(3−ジメチルアミノプロピル)アミノ基、(3−ジメチルアミノプロピル)アミノカルボニルエチルアミノ基等である。
また、当該疎水溶性置換基として、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質を用いることもできる。
疎水性置換基として用いることができる生理活性物質としては、特に限定されるものではないが、高分子ミセル型DDS製剤の適応疾病を考慮すると、悪性腫瘍疾患、炎症性疾患、感染症疾患等が挙げられ、これらの疾患の治療に用いられる医薬品の有効成分又は医薬有効成分候補化合物を適用すること、若しくはそれらを誘導体化又はプロドラッグ化した有効成分を適用することが好ましい。以下に、本発明に適用可能な生理活性物質の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
悪性腫瘍疾患に供せられる生理活性物質としては、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ノギテカン、9−アミノカンプトテシン等のカンプトテシン誘導体、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル等のタキサン誘導体、ガネテスピブ、ルミネスピブ等のHSP90阻害活性を有するレゾルシノール誘導体、ドキソルビシン、エピルビシン、アムルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン等のアントラサイクリン誘導体、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス等のラマパイシン誘導体、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、エノシタビン、シタラビンオクホスファート、エチニルシチジン、アザシチジン、デシタビン等のシチジン系代謝拮抗剤、メソトレキサート、ペメトレキセド、レボホリナート、ホリナート等の葉酸代謝拮抗剤、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン、クラドリビン等のプリン系代謝拮抗剤、ドキシフルリジン、カペシタビン、テフガール、フルオロウラシル、カルモフール等のフッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン等の白金含有化合物、マイトマイシンC等のマイトマイシン誘導体、ブレオマイシン、リブロマイシン等のブレオマイシン誘導体、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン等のビンカアルカロイド誘導体、エトポシド、テニポシド等のポドフィロトキシン誘導体、エリブリン等のハリコンドリン誘導体、レベカマイシン、UCN−01等のスタウロスポリン誘導体、レナリドミド、ポマリドミド等のサリドマイド誘導体、トレチノイン、タミバロテン等のビタミンA誘導体、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、コンブレタスタチンA4等のコンブレタスタチン誘導体、ビニメチニブ、コビメチニブ、トラメチニブ等のMEK阻害剤、ディナシクリブ、フラボピリドール、パルボシクリブ等のCDK阻害剤、ダブラフェニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ等のRafキナーゼ阻害剤、ボリノスタット、ベリノスタット、パナビノスタット、ロミデプシン等のHDAC阻害剤、サイトカラシン、ラトランクリン、ファロイジン等のアクチン重合阻害剤、ベリパリブ、ラキャパリブ、オラパリブ等のPARP阻害剤、クリゾチニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ルキソリチニブ、クリゾチニブ、イブルチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤、ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブルスファン、メルファラン等のナイトロジェンマスタード系アルキル化剤、ニムスチン、ラニムスチン、ロムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ダカルバジン、テモゾロミド、プロカルバジン、チオテパ等のアルキル化剤、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール等のアロマターゼ阻害剤、ヒドロキシフルタミド、フルタミド、ビカルタミド、エンザルタミド等の抗アンドロゲン剤、アビラテロン等のCYP17(リアーゼ)阻害剤、タモキシフェン、トレミフェン等の抗エストロゲン剤、エストラムスチン、プロゲステロン、ミトタン、メドロキシプロゲステロン等のホルモン剤が挙げられる。
炎症性疾患に供せされる生理活性物質としては、タクロリムス等のタクロリムス誘導体、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイド誘導体、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス等のラマパイシン誘導体、シクロスポリン、フィンゴリモド、アザチオプリン、ミゾリビン、ミルコフェノール酸モフェチル、グスペリムス等の免疫抑制剤、ジフルニサル、チアラミド等のNSAIDs等が挙げられる。
感染症疾患に供せられる生理活性物質としては、アムホテリシンB、ナイスタチン等のポリエン系抗生物質、フルコナゾール、ボリコナゾール等のアゾール系誘導体、ミカファンギン等のキャンディン系誘導体、フルシトシン等のピリミジン誘導体等の抗真菌剤、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル等の抗ウイルス剤、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル等の抗ウイルス剤等が挙げられる。
疎水性ポリマーセグメントにおいて、前記の疎水性置換基を側鎖カルボキシ基に有する該アスパラギン酸及び/又はポリグルタミン酸のエステル誘導体及び/又はアミド誘導体は、同一種類でも、異なる種類が混在した態様であっても良い。また、側鎖カルボキシ基の一部は、前記疎水性置換基を具備せずに遊離酸又はその塩の態様が混在していても良い。
疎水性ポリマーセグメントにおけるポリアミノ酸鎖の一方の末端基は、前述のポリエチレングリコールセグメントと結合するための連結基である。そして、もう一方の末端基は当該ポリアミノ酸鎖のN末端基及びC末端基であって、無保護の遊離アミノ基及び遊離カルボン酸、並びにそれらの塩であっても良く、N末端基及びC末端基の適当な修飾体であっても良い。
N末端基の修飾体としては、アシルアミド型修飾体、アルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)、アルキルアミノカルボニルアミド型修飾体(ウレア型修飾体)等を挙げることができる。一方、該C末端基の修飾体としては、エステル型修飾体、アミド型修飾体、チオエステル型修飾体が挙げられる。
該N末端基及び該C末端基の修飾基は、任意の修飾基であって良く、好ましくは、N末端基及びC末端基に結合する適当な結合基を介して、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基等である末端修飾基を挙げることができる。
すなわち、N末端基は、適当なアシルアミド型修飾体又はアルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)であることが好ましく、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を介した前記置換基を有していても良い炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基であることが好ましい。
一方、C末端基としては、適当なアミド型置換基又はエステル型置換基であることが好ましく、アミド基又はエステル基を介した前記置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基であることが好ましい。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)芳香族基としては、フェニル基、ピリジル基、ナフチル基等が挙げられる。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基としては、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖又は分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
該ポリアミノ酸鎖の該末端基は、N末端基及びC末端基による修飾体であることが好ましい。
ブロック共重合体(B)のポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントとポリアミノ酸鎖を含有する疎水性ポリマーセグメントにおいて、疎水性置換基を控除した主鎖ポリマーの平均分子量は、分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下であることを特徴とする。分子量が2キロダルトン以上で8キロダルトン以下であることが好ましい。
このブロック共重合体(B)の主鎖ポリマーの平均分子量は、その構成部分の各構成分子量を合算した計算値を分子量として採用する。すなわち、(1)ポリエチレングリコール(PEG)鎖の分子量、(2)ポリアミノ酸鎖の主鎖部分の分子量を合算した計算値を当該分子量とする。
なお、PEG鎖とポリアミノ酸鎖を合せた主鎖ポリマーの平均分子量は、キロダルトン単位での精度による分子量規定でよい。したがって、前記各構成部分の分析方法は、当該ポリアミノ酸誘導体のキロダルトン単位での分子量測定において、十分な精度の分析方法であれば特に限定されるものではなく、様々な分析方法を適宜選択して良い。以下に、各構成部分における好ましい分析方法を挙げる。
前記(1)ポリエチレングリコール(PEG)鎖の分子量は、PEGセグメントを構築するPEG化合物の分子量測定値であり、PEG標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量を採用し、計算値としては100の位を四捨五入した値を使用する。
前記(2)ポリアミノ酸の主鎖部分の分子量は、疎水性ポリマーセグメントの中に含まれるポリアミノ酸鎖の重合モノマー単位の分子量にその平均重合数を乗じた計算値である。該重合数はポリアミノ酸の側鎖カルボキシ基を中和滴定により定量する方法や、H−NMRの積分値から算出された重合数を用いることができる。中和滴定法を用いることが好ましい。
本発明のブロック共重合体(B)は、一般式(1)
Figure 2018024590
[式中、R5aは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、taは20〜140の整数を示し、Aaは置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキレン基を示し、R2aは水素原子、炭素数(C1〜C6)アシル基及び炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される置換基を示し、R3aは、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のジアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基、水酸基及び/又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基からなる群から選択される1種以上の疎水性置換基の結合残基を1以上含み、残部は水酸基であり、Baは結合基を示し、naは1又は2を示し、x1a、x2a及びzaは、それぞれ独立して0〜20の整数を示し、x1a+x2aは1〜20の整数を示し、(x1a+x2a+za)は3〜20の整数を示し、前記R3aが結合している各構成ユニット並びに側鎖カルボニル基が分子内環化した構成ユニットは、それぞれ独立してランダムに配列した構造である。]で示されるブロック共重合体であることが好ましい。
前記R5aにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基とは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C6)アルキル基等が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記有していてもよい置換基とは、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、メルカプト基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でも良い。
該R5aとして、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、2,2−ジメトキシエチル基、2,2−ジエトキシエチル基、2−ホルミルエチル基が好ましい。特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
一般式(1)のtaは、ポリエチレングリコール(PEG)セグメントにおけるエチレンオキシ基の重合数を示す。該taは20〜140の整数である。すなわち、該PEGセグメントの分子量としては0.8キロダルトン〜60キロダルトンである。
該taが20より小さいと、ブロック共重合体(B)が十分な水溶性を具備せず、所望の体内動態を発揮しないおそれがある。一方、該taが140より大きい場合、相対的に疎水性を担うポリアミノ酸鎖を含有する疎水性ポリマーセグメントの含有量が低くなるため所望の自己会合性物性が得られず、これに伴う体内動態を発揮できない懸念がある。該taは22〜130の整数であることが好ましく、30〜120の整数であることがより好ましい。すなわち、該PEGセグメントの分子量としては1キロダルトン〜5.7キロダルトンであることが好ましく、1.3キロダルトン〜5.3キロダルトンであることより好ましい。
前記Aaにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等が挙げられる。有していてもよい置換基とは、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
該Aaとしては、特にエチレン基、n−プロピレン基がより好ましい。
前記R2aにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C6)アシル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
前記R2aの該炭素数(C1〜C6)アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基等が挙げられる。置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C4)アシル基がより好ましく、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基がより好ましい。
前記R2aにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。前記R2aの該炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(1)において、naは1又は2を示す。naが1のときポリアミノ酸鎖を構成するアミノ酸がアスパラギン酸である。一方、naが2のときポリアミノ酸鎖を構成するアミノ酸がグルタミン酸である。したがって、一般式(1)におけるポリアミノ酸鎖は、ポリアスパラギン酸鎖、ポリグルタミン酸鎖又はポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)鎖であることを示す。
一般式(1)におけるBaは、前記R3aに係る疎水性置換基の結合残基であって、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のジアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基、水酸基及び/又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基、並びに水酸基からなる群から選択される1種以上の置換基と、アスパラギン酸ユニット及び/又はグルタミン酸ユニットの側鎖カルボキシ基との結合基である。
該Baに係る結合基としては、前記疎水性置換基の水酸基及び/又はアミノ基とエステル結合及び/又はアミド結合し、前記アスパラギン酸鎖及び/又はグルタミン酸鎖の側鎖カルボキシ基とエステル結合、アミド結合又はチオエステル結合する結合基である。例えば、[R3a]−CO−(CH)x−O−[CO−polymer](xは1〜8の整数を示す)、[R3a]−CO−(CH)x−NH−[CO−polymer](xは1〜8の整数を示す)、[R3a]−CO−(CH)x−S−[CO−polymer](xは1〜8の整数を示す)である。Ba中のxとして好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1、2、3、又は5である。最も好ましいBaとしては[R3a]−CO−(CH)x−NH−[CO−polymer](x=1、2、3、又は5)である。
また、該Baに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いても良い。アミノ酸誘導体を結合基とする場合の結合基の使用態様としては、アミノ酸誘導体のN末アミノ基が前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、C末カルボキシ基が疎水性置換基の水酸基及び/又はアミノ基とエステル結合又はアミド結合する態様である。
該Baに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、天然型アミノ酸又は合成アミノ酸及びその側鎖修飾体の何れを用いても良い。またL体、D体及びラセミ体の何れを用いても良い。例えばグリシン、アラニン、β−アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、オルニチン、システイン等を挙げることができる。また、側鎖が修飾されたアミノ酸としては、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアルキルエステル、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアラルキルエステル、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアルキルアミド、アスパラギン酸又はグルタミン酸のアラルキルアミド、Bocリシン等のアルキルオキシカルボニルリシン等が挙げられる。
また、該結合基としてメチレン基を介して水酸基とカルボキシ基を配するグリコール酸誘導体を用いても良い。グリコール酸誘導体を結合基とする場合の結合基の使用態様としては、グリコール酸誘導体の水酸基が、前記側鎖カルボキシ基とエステル結合し、カルボキシ基が疎水性置換基の水酸基及び/又はアミノ基とエステル結合又はアミド結合する態様である。
グリコール酸誘導体としては、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。多価カルボン酸を用いる場合、一方のカルボキシ基に前記疎水性置換基が結合し、もう一方のカルボキシ基はエステル誘導体又はアミド誘導体であることが好ましい。
前記結合基は、単一種類の結合基であっても良く、複数種類の結合基が混在していても良い。
また、該Baは「結合」であってよい。「結合」とは特に結合基を介せず、前記アスパラギン酸鎖及び/又はグルタミン酸鎖の側鎖カルボキシ基と、前記疎水性置換基の水酸基及び/又はアミノ基が直接エステル結合又はアミド結合している態様を指す。
3aにおける疎水性置換基の結合残基は、前記ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の側鎖カルボキシ基にエステル型修飾基及び/又はアミド型修飾基が結合したものである。すなわち、該水酸基及び/又はアミノ基は結合性官能基であり、ここから水素原子が除かれた残基を示す。当該疎水性置換基は、特に限定することなく用いることができる。
一般式(1)におけるR3aは、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のジアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基、水酸基及び/又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基からなる群から選択される1種以上の疎水性置換基の結合残基を1以上含み、残部は水酸基である置換基を示す。
該R3aは、ブロック共重合体(B)の疎水性物性を制御する目的で導入する疎水性置換基である。すなわち、該R3aに疎水性基を導入することで、該ブロック共重合体(B)のポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の疎水性を高めることができる。疎水性の程度は、導入する疎水性置換基の疎水性度及び/又は導入率により制御することができる。したがって、該R3aは、全てが疎水性置換基であることは必須ではなく、残部が水酸基であって良い。また、該R3aは単一の種類であっても複数の種類の置換基であっても良い。
3aにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基は、前記ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の側鎖カルボキシ基に結合基Baを介してエステル型修飾基が結合したものである。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
前記R3aにおける該炭素数(C1〜C30)アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イコシルオキシ基、ドコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基、ヘキサコシルオキシ基、オクタコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基等が挙げられる。
3aにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基は、前記ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の側鎖カルボキシ基に結合基Baを介してアルキルアミド型修飾基が結合したものである。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
前記R3aにおける該炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基、4−フェニルブチルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基、ヘキサデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イコシルアミノ基、ドコシルアミノ基、テトラコシルアミノ基、ヘキサコシルアミノ基、オクタコシルアミノ基、トリアコンチルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボキシ基が保護されたアミノ酸も、該置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基に包含される。該カルボキシ基を保護したアミノ酸としては、例えば、グリシンメチルエステル、グリシンベンジルエステル、β−アラニンメチルエステル、β−アラニンベンジルエステル、アラニンメチルエステル、ロイシンメチルエステル、フェニルアラニンメチルエステル等を用いても良い。
3aにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のジアルキルアミノ基は、前記ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の側鎖カルボキシ基に結合基Baを介してジアルキルアミド型修飾基が結合したものである。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
前記R3aにおける該ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ジベンジルアミノ基、N−ベンジル−N−メチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジテトラデシルアミノ基、ジヘキサデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイコシルアミノ基等が挙げられる。
3aにおける置換基を有していても良い炭素数(C1〜8)アルキルアミノカルボニル(C1〜8)アルキルアミノ基は、前記ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の側鎖カルボキシ基に結合基Baを介してウレア型修飾基が結合したものである。該アルキル基は同一種類であっても異なる種類であっても良い。置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。置換基を有する場合ジアルキルアミノ基が好ましい。
置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノカルボニルメチルアミノ基、エチルアミノカルボニルエチルアミノ基、イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノカルボニルシクロヘキシルアミノ基、エチルアミノカルボニル(3−ジメチルアミノプロピル)アミノ基、(3−ジメチルアミノプロピル)アミノカルボニルエチルアミノ基等である。
3aにおける水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基は、特に限定されるものではなく、医薬品の有効成分又は医薬有効成分候補化合物を適用すること、若しくはそれらを誘導体化又はプロドラッグ化した有効成分を適用することが好ましい。高分子ミセル型DDS製剤の適応疾病を考慮すると、悪性腫瘍疾患、炎症性疾患、感染症疾患等が挙げられ、これらの疾患の治療に用いられる医薬品の有効成分又は医薬有効成分候補化合物を適用すること、若しくはそれらを誘導体化又はプロドラッグ化した有効成分を適用することが好ましい。以下に、本発明に適用可能な生理活性物質の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
悪性腫瘍疾患に供せられる生理活性物質としては、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ノギテカン、9−アミノカンプトテシン等のカンプトテシン誘導体、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル等のタキサン誘導体、ガネテスピブ、ルミネスピブ等のHSP90阻害活性を有するレゾルシノール誘導体、ドキソルビシン、エピルビシン、アムルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン等のアントラサイクリン誘導体、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス等のラマパイシン誘導体、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、エノシタビン、シタラビンオクホスファート、エチニルシチジン、アザシチジン、デシタビン等のシチジン系代謝拮抗剤、メソトレキサート、ペメトレキセド、レボホリナート、ホリナート等の葉酸代謝拮抗剤、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン、クラドリビン等のプリン系代謝拮抗剤、ドキシフルリジン、カペシタビン、テフガール、フルオロウラシル、カルモフール等のフッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン等の白金含有化合物、マイトマイシンC等のマイトマイシン誘導体、ブレオマイシン、リブロマイシン等のブレオマイシン誘導体、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン等のビンカアルカロイド誘導体、エトポシド、テニポシド等のポドフィロトキシン誘導体、エリブリン等のハリコンドリン誘導体、レベカマイシン、UCN−01等のスタウロスポリン誘導体、レナリドミド、ポマリドミド等のサリドマイド誘導体、トレチノイン、タミバロテン等のビタミンA誘導体、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、コンブレタスタチンA4等のコンブレタスタチン誘導体、ビニメチニブ、コビメチニブ、トラメチニブ等のMEK阻害剤、ディナシクリブ、フラボピリドール、パルボシクリブ等のCDK阻害剤、ダブラフェニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ等のRafキナーゼ阻害剤、ボリノスタット、ベリノスタット、パナビノスタット、ロミデプシン等のHDAC阻害剤、サイトカラシン、ラトランクリン、ファロイジン等のアクチン重合阻害剤、ベリパリブ、ラキャパリブ、オラパリブ等のPARP阻害剤、クリゾチニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ルキソリチニブ、クリゾチニブ、イブルチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤、ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブルスファン、メルファラン等のナイトロジェンマスタード系アルキル化剤、ニムスチン、ラニムスチン、ロムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ダカルバジン、テモゾロミド、プロカルバジン、チオテパ等のアルキル化剤、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール等のアロマターゼ阻害剤、ヒドロキシフルタミド、フルタミド、ビカルタミド、エンザルタミド等の抗アンドロゲン剤、アビラテロン等のCYP17(リアーゼ)阻害剤、タモキシフェン、トレミフェン等の抗エストロゲン剤、エストラムスチン、プロゲステロン、ミトタン、メドロキシプロゲステロン等のホルモン剤が挙げられる。
炎症性疾患に供せされる生理活性物質としては、タクロリムス等のタクロリムス誘導体、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイド誘導体、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス等のラマパイシン誘導体、シクロスポリン、フィンゴリモド、アザチオプリン、ミゾリビン、ミルコフェノール酸モフェチル、グスペリムス等の免疫抑制剤、ジフルニサル、チアラミド等のNSAIDs等が挙げられる。
感染症疾患に供せられる生理活性物質としては、アムホテリシンB、ナイスタチン等のポリエン系抗生物質、フルコナゾール、ボリコナゾール等のアゾール系誘導体、ミカファンギン等のキャンディン系誘導体、フルシトシン等のピリミジン誘導体等の抗真菌剤、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル等の抗ウイルス剤、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル等の抗ウイルス剤等が挙げられる。
3aは水酸基及び/又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基であっても良い。したがって、該R3aが蛍光物質の結合残基である場合、前記水酸基及び又はアミノ基から水素原子が除去された蛍光物質の結合残基を指す。なお、R3aとして蛍光物質を適用する目的は、特に本発明の効果に影響するものではなく、組織移行性や排泄性の確認の指標に用いるためである。
該蛍光物質としては、アミノ基を有する蛍光物質が好ましく、例えば、2−(2−アミノエトキシ)−9−(ジエチルアミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン、BODIPY(登録商標) TR Cadaverine、BODIPY(登録商標) FL Ethylene diamine、Alexa Fluor(登録商標) 594 Cadaverine、Texas Red(登録商標) Cadaverine、ATTO 594 amine等が挙げられる。したがって、該R3aの蛍光物質の結合残基とは、これらのアミド結合残基が含まれる。
一般式(1)におけるR3aは、その一部が水酸基であっても良い。すなわちポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の側鎖カルボン酸が遊離カルボン酸である。この場合、側鎖カルボン酸は遊離酸の態様であってよく、また、医薬品として許容される任意のカルボン酸塩の形態であっても良い。前記カルボン酸塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができ、本発明に含まれる。
一般式(1)において、x1a、x2a及びzaは、それぞれブロック共重合体(B)のポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖におけるアスパラギン酸誘導体ユニット及び/又はグルタミン酸誘導体ユニットの構成単位の含有量を示し、それぞれ0〜20の整数である。
また、(x1a+x2a+za)は該ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の重合数を示し、3〜20の整数である。すなわち、ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖は平均重合数として、3〜20の重合体であることを示す。該(x1a+x2a+za)が3より小さいと、得られるブロック共重合体(B)は自己会合性を具備しない恐れがある。一方、重合数が20より大きい場合、得られるブロック共重合体(B)の主鎖の平均分子量が10キロダルトンを超える可能性があり、所望の薬物動態を奏しない懸念がある。すなわち、ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の重合数である(x1a+x2a+za)が3〜20の範囲を外れると、所望の薬物動態特性が奏功せずに、薬理作用効果の増強作用及び副作用の低減効果が得られない懸念がある。ポリアミノ酸誘導体の重合数は、ブロック共重合体の分子量を勘案して適宜設定することが好ましい。該(x1a+x2a+za)は好ましくは5〜20の整数である。
該ポリアミノ酸誘導体の重合数である(x1a+x2a+za)は、H−NMRによる測定や、R3aを結合する前の、ポリエチレングリコール−ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)ブロック共重合体を中和滴定することにより求めることができる。
一般式(1)において、(x1a+x2a)はR3aに係る疎水性置換基が結合したアスパラギン酸ユニット及び/又はグルタミン酸ユニットの総数を示す。該疎水性置換基が結合したユニットは必須の構成であり、該(x1a+x2a)は1〜20の整数である。好ましくは、該(x1a+x2a)は2〜20の整数であり、より好ましくは3〜15の整数である。ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の重合数である前記(x1a+x2a+za)に対する(x1a+x2a)の割合は4〜100%である。好ましくは10〜90%であり、20〜80%がより好ましい。
該(x1a+x2a)に係る疎水性置換基が結合したアスパラギン酸単位及び/又はグルタミン酸単位の含有数は、疎水性置換基の結合量とポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖の重合数から算出される。該疎水性置換基の結合量は、当該疎水性置換基が結合したブロック共重合体から該疎水性置換基を開裂させて、遊離する疎水性置換基を定量分析する方法により求めることができる。また、当該疎水性置換基が結合したブロック共重合体を製造する際の疎水性置換基の反応率から算出する方法を用いても良い。
本発明に係る一般式(1)で示される疎水性置換基が結合したブロック共重合体において、前記ポリ(アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)鎖は、側鎖カルボキシ基にR3aを具備するアスパラギン酸ユニット及び/又はグルタミン酸ユニット、並びに側鎖カルボキシ基が分子内環化した構造のアスパラギン酸ユニット及び/又はグルタミン酸ユニットが混在した重合体セグメントである。それぞれの構成ユニットは1ユニット以上で存在し、その配列は特に制御されておらず不規則に配列したランダムに配列したセグメント構造である。
一般式(1)で示される疎水性置換基が結合したブロック共重合体は、前記R3aで示される疎水性置換基の質量含有率が5質量%以上で50質量%以下であることが好ましい。該疎水性置換基含量が50質量%より低い場合、疎水性置換基の含量が50質量%より多い場合のいずれも、該疎水性置換基が結合したブロック共重合体の親水性−疎水性のバランスが大きく変化して適当な自己会合性を具備せず、所望の薬物動態を発揮しない懸念がある。該疎水性置換基の質量含有率は、好ましくは7質量%以上で50質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以上で40質量%以下である。
一般式(1)で示される疎水性置換基R3a、並びに結合基Baを除いたブロック共重合体におけるポリエチレングリコール(PEG)鎖とポリアミノ酸鎖を合せた主鎖ポリマーの平均分子量は、2キロダルトン以上で10キロダルトン以下であることを特徴とする。この平均分子量は、その構成部分の各構成分子量を合算した計算値を分子量として採用する。すなわち、(1)PEG鎖の分子量、(2)ポリアミノ酸鎖の主鎖部分の分子量を合算した計算値を当該分子量とする。
なお、PEG鎖とポリアミノ酸鎖を合せた主鎖ポリマーの平均分子量は、キロダルトン単位での精度でよい。以下に、各構成部分における好ましい分析方法を挙げるが、当該ポリアミノ酸誘導体のキロダルトン単位での分子量測定において十分な精度の分析方法であれば特に限定されるものではない。
前記(1)ポリエチレングリコール(PEG)鎖の分子量は、PEGセグメントを構築するPEG化合物の分子量測定値であり、PEG標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる分子量を採用し、計算値としては100の位を四捨五入した値を使用する。
前記(2)ポリアミノ酸の主鎖部分の分子量は、疎水性ポリマーセグメントの中に含まれるポリアミノ酸鎖の重合モノマー単位の分子量にその平均重合数を乗じた計算値である。該重合数はポリアミノ酸の側鎖カルボキシ基を中和滴定により定量する方法や、H−NMRの積分値から算出された重合数を用いることができる。中和滴定法を用いることが好ましい。
[標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含む組成物]
本発明は、高分子ミセル型DDS製剤に用いる生理活性物質のキャリアとして用いる技術であり、特に生体認識機能を有するアクティブターゲティング機能を具備した高分子ミセル型DDS製剤に関する。したがって、標的結合部位を具備するPEG脂質(A)と前記ブロック共重合体(B)を含む組成物を発明の態様とする。これは、水溶液中で標的結合性PEG脂質(A)の脂質部分と前記ブロック共重合体(B)の疎水性ポリマーセグメントの疎水性相互作用により会合性を有しナノ粒子を形成する。したがって、ナノ粒子様会合体の内核(コア)部に生理活性物質を化学結合若しくは物理的吸着作用により内包させ、外殻(シェル)部に標的結合部位を具備してアクティブターゲッティング機能を有した高分子ミセル型DDS製剤として利用することができる。
本発明の組成物は、標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)とは任意の適切な比率で存在し得る。アクティブターゲッティング機能とナノ粒子会合体の小サイズ化を担う評定結合性PEG脂質(A)が、本発明に係るナノ粒子会合体に1分子以上含まれていることが好ましい。
本発明に係る標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)はポリマー分子としてモル含量を算出することができ、本発明の組成物は、標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)のモル比で表すことが適当である。
標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を混合する好適なモル比は、1:0.1〜60の範囲である。より好ましくは、1:0.5〜50であり、1:1〜40で調製することが特に好ましい。また、本発明の組成物内に、標的結合性PEG脂質(A)、ブロック共重合体(B)のいずれでもないPEG脂質、ブロック共重合体は任意の適切な比率で存在し得る。例えば、標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)の製造において、不可避的に存在する未反応又は副生成・分解生成のPEG脂質やブロック共重合体である。これらは、本発明の組成物の物性を妨げない範囲において存在していて良い。その存在比率は、モル比(標的結合性PEG脂質(A)+ブロック共重合体(B)の合計モル量:その他のPEG脂質+その他のブロック共重合体の合計モル量)で、1:0〜2であり、好ましくは1:0〜0.5であり、より好ましくは1:0〜0.25で存在し得る。
本発明の組成物は、標的結合性PEG脂質(A)を任意の適切な比率で混合し得る。標的結合部位の結合量に依存してアクティブターゲッティング機能とナノ粒子会合体の平均粒径は変化し得るため、標的結合性PEG脂質(A)が、本発明に係る標的結合部位を有するナノ粒子会合体に、質量含有率として2%以上含まれていることが好ましい。
標的結合性PEG脂質(A)を混合する好適な重量分率は、2〜70%である。より好ましくは、2〜60%であり、2〜50%で調製することが特に好ましい。
また、本発明の組成物内に、標的結合性PEG脂質(A)、ブロック共重合体(B)のいずれでもないPEG脂質やブロック共重合体が、任意の適当な質量含有率で存在していても良い。例えば、標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)の製造において、不可避的に存在する未反応又は副生成・分解生成に基づく標的結合部位を具備しないPEG脂質や、ブロック共重合体の類縁物質である。これらは、本発明の組成物の物性を妨げない範囲において存在していて良い。その存在比率は、質量含有率として0〜30%であり、好ましくは0〜20%であり、より好ましくは0〜10%で存在していても良い。
なお本発明の標的認識組成物において、標的結合性PEG脂質(A)は、当該PEG部分の平均分子量が前記ブロック共重合体(B)におけるPEG部分の平均分子量より大きいPEG部分を具備する標的結合性PEG脂質(A)を採用して該ブロック共重合体(B)と組み合わせて調製した組成物であることが好ましい。すなわち、標的結合性PEG脂質(A)はPEG部分に標的結合部位が結合しているため、当該標的結合性PEG脂質(A)の親水性のバランスを調整するためPEG分子量の大きいPEG脂質を用いることが好ましい。また、標的結合部位の認識性を高めるために、ブロック共重合体(B)のPEG鎖より長いPEG鎖長であることが好ましい。
本発明のブロック共重合体を含む組成物は、例えば、以下の2つの組み合せの態様を挙げることができる。
(組成物1)標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)
(組成物2)標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)と生理活性物質
これらの組成物は、ブロック共重合体間の相互作用により会合性の組成物となる。例えば、以下の3種類の調製方法を挙げることができる。
(1)水性溶液中で混合しミセル状に自己組織化させる方法。
(2)有機溶媒に溶解後、透析する方法。
(3)有機溶媒に溶解し、混合して均一化された溶液を減圧留去して得られるポリマーのフィルムに水を加えて混合し、ミセル状に自己組織化させる方法。
また標的結合性PEG脂質(A)は、当該組成物調製時に併せて合成して当該組成物を形成させても良い。すなわち、
(前駆体組成物1)標的結合性PEG脂質(A)の前駆体とブロック共重合体(B)
(前駆体組成物2)標的結合性PEG脂質(A)の前駆体とブロック共重合体(B)と生理活性物質
上記の(前駆体組成物1)乃至(前駆体組成物2)の溶液調製を行い、例えば、以下の2通りの調製方法を挙げることができる。
(ア)(前駆体組成物1)乃至(前駆体組成物2)を有機溶媒に溶解し、混合して均一化された溶液を減圧留去してポリマーのフィルムを得る。これに水を加えて混合し、ミセル状に自己組織化させる。その後、標的結合部位を有する化合物を、標的結合性PEG脂質(A)の前駆体(標的結合部位を有する化合物と反応する前のPEG脂質)に結合させて本発明に係る組成物を調製する方法。
(イ)(前駆体組成物1)乃至(前駆体組成物2)を水性溶液中で混合させ、ミセル状に自己組織化させる。その後、標的結合部位を有する化合物を標的結合性PEG脂質(A)前駆体(標的結合部位を有する化合物と反応する前のPEG脂質)に結合させて本発明に係る組成物を調製する方法。
上記の組成物を調製するための有機溶媒としては、例えば、メタノール、アセトン、アセトニトリル、及びジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
上記の組成物を調製するための水性溶液は、例えば、エタノール及びジメチルスルホキシドといった水混和性有機溶媒と、公知の緩衝剤とを精製水に添加することによって形成できる。
本発明の標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物は、水溶液中において自己会合性を示し、粒径(平均粒径)は30nm以下であることが好ましい。より好ましくは3nm以上30nm以下である。
本発明においてナノ粒子の粒径(平均粒径)の測定は、例えば、誘導回折格子法により測定される。誘導回折格子法は、(1)本発明の標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物の0.1〜2.5mg/mL水溶液にレーザー光を照射し、誘電泳動により回折格子を形成させる、(2)誘電泳動させていた外力を停止し、拡散による回折格子の消滅速度を計測する、(3)消滅速度をストークス−アインシュタインの関係式に当てはめ、粒子径を求める、という方法である。例えば株式会社島津製作所製シングルナノ粒子径測定装置IG−1000で測定することができる。
本発明の標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物は、親水性のPEG鎖と、疎水性である生理活性物質、脂質部分、疎水性側鎖による疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体を含有する組成物であるため、水溶液中では、脂質部分とブロック共重合体の疎水性ポリマーセグメントが疎水性相互作用に基づき会合すると考えられる。結果として、脂質部分と疎水性ポリマーセグメントからなる疎水性部を内核(コア部)とし、その周りを親水性のPEG鎖が覆い外殻層(シェル部)を形成したコア−シェル構造のミセル様会合体を形成し、これが前記のナノ粒子として観測されるものと推測される。疎水性の生理活性物質を別途用いた場合は、該ナノ粒子の内核(コア部)に内包されて一体のナノ粒子を形成するものと考えられる。
次に、本発明に係るブロック共重合体(B)の製造方法について説明する。
これは、親水性ポリマーセグメントであるポリエチレングリコール(PEG)鎖と、疎水性ポリマーセグメントの主鎖構成であるアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含むポリアミノ酸鎖が連結したブロック共重合体を合成し、これに生理活性物質及び/又は疎水性置換基を含む化合物を縮合反応により製造する方法が挙げられる。また、PEG鎖を含む親水性ポリマーセグメントと、生理活性物質及び/又は疎水性置換基が結合したポリアミノ酸を結合させてブロック共重合体を構築する方法等を挙げることができる。前者のPEGセグメントとポリアミノ酸セグメントが連結したブロック共重合体を予め合成し、これに生理活性物質や疎水性置換基を縮合反応することにより製造する方法が好ましい。
PEG鎖とポリアミノ酸鎖が連結したブロック共重合体の製造方法としては、PEGセグメントを含む化合物に対して、アミノ酸−N−カルボキシ無水物を用いて逐次重合させることによりポリアミノ酸鎖を構築する方法や、PEGセグメントとポリアミノ酸誘導体を結合させる方法等が挙げられる。アミノ酸−N−カルボキシ無水物の反応性が高いこと、ポリアミノ酸の重合数が制御しやすいことから、前者の方法を用いることが好ましい。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖とポリアミノ酸誘導体鎖が連結したブロック共重合体を予め合成し、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質や疎水性置換基を結合させて本発明に係るブロック共重合体を得る製造方法の一態様を説明する。
始めに、末端がアミノ基であるPEG誘導体(例えば、メトキシポリエチレングリコール−1−プロピルアミン)に、アミノ酸の側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸−N−カルボキシ無水物を順次反応させて、逐次重合によりPEGセグメントとポリアミノ酸セグメントが連結したブロック型共重合体骨格を構築する。この場合、該アミノ酸−N−カルボキシ無水物として、適当な側鎖カルボキシ基保護したアスパラギン酸−N−カルボキシ無水物及び/又はグルタミン酸−N−カルボキシ無水物を含むことにより、ポリアミノ酸セグメントにアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含めることができる。その後、適当な脱保護反応を施し、側鎖カルボキシ基が脱保護されたアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含む当該ブロック共重合体を調製することができる。脱保護反応としては、側鎖カルボキシ基がベンジルエステルである場合、アルカリ条件下での加水分解や、加水素分解反応により脱保護基反応をすることができる。
このポリエチレングリコール(PEG)−ポリアミノ酸ブロック共重合体に対し、アミノ基及び/又は水酸基を有する生理活性物質質や疎水性置換基を、適当な反応溶媒中で縮合反応条件にて反応させればよい。
該PEG−ポリアミノ酸ブロック共重合体と生理活性物質や疎水性置換基の縮合反応において、用いることができる溶媒は両化合物が溶解する溶媒であれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等の水溶性有機溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いても、これらの混合溶媒として用いても良い。また、前記溶媒と他の有機溶媒による混合溶媒であっても良い。
また、用いる縮合剤は、カルボン酸と水酸基を脱水縮合反応によりエステル反応及び/又はカルボン酸とアミノ基を脱水縮合反応によりアミド反応させる通常の脱水縮合剤であれば、特に問題なく用いることができる。該縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、等のカルボジイミド系の縮合剤、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリウム クロライド n−ハイドレート(DMT−MM)等のトリアジン系縮合剤、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、二炭酸ジ−tert−ブチル(BocO)等を用いることができる。該縮合反応の際に、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)や、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等の反応補助剤を用いてもよい。カルボジイミド系縮合剤を用いると、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基を生理活性物質や疎水性置換基と同時に導入することができる。
反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは5〜100℃の温度で行えばよい。
ポリアミノ酸鎖に、前記炭素数(C1〜C30)アルコキシ基、前記炭素数(C1〜C30)アルキルアミノ基又は前記ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基のような疎水性置換基は、本発明のブロック共重合体の自己会合性を調整する目的で導入する。その方法としては、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリアミノ酸共重合体のカルボキシ基を縮合剤の添加により活性化してから、導入したい疎水性置換基に相当する化合物を所望の当量で反応させる方法、若しく疎水性置換基に相当する化合物を活性化させてから該共重合体のポリアミノ酸セグメントに反応させる方法等が挙げられる。
この場合、疎水性置換基を導入してから、生理活性物質を導入しても良く、その逆であっても良く、該生理活性物質と該疎水性置換基を同時に導入しても良い。
該疎水性置換基は、単一種類の置換基であっても、複数種類の置換基であっても良い。
ポリエチレングリコール(PEG)−ポリアミノ酸ブロック共重合体に、生理活性物質及び任意の疎水性置換基を導入した後、任意に通常の分離操作や精製操作を行うことにより、本発明のブロック共重合体を製造することができる。
次に、一般式(1)で示される標的結合性PEG脂質(A)の製造方法を以下に説明する。
標的結合性PEG脂質(A)は、PEG末端に反応性官能基を有するPEG脂質を使用して製造できる。具体的には、N−[N’−(3’−マレイミド−1’−オキソプロピル)アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル]−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が2キロダルトンのDSPE−PEG−MAL、PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−MAL又はPEG部分の平均分子量が5キロダルトンのDSPE−PEG−MAL)、N−(アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル)−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が2キロダルトンのDSPE−PEG−NH、PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−NH又はPEG部分の平均分子量が5キロダルトンのDSPE−PEG−NH)、N−[N’−(スクシニミジルオキシ グリタリル)アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル]−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が2キロダルトンのDSPE−PEG−NHS、PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−NHS又はPEG部分の平均分子量が5キロダルトンのDSPE−PEG−NHS)、N−(3’−(オキソプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル)−1、2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(PEG部分の平均分子量が3.4キロダルトンのDSPE−PEG−ALD)及びそれらの製薬上許容可能な塩(すなわちナトリウム塩)が挙げられる。
例えば、標的結合部位を導入するためにPEG脂質のPEG構造部分の末端アミノ基とGMBS(N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシイミド)とアミド結合させる。こうして得られたマレイミド基に、必要であればタンパク質、ペプチド及び糖鎖といった化合物に存在するジスルフィド結合を還元させ、スルフヒドリル基を介して結合させることで、標的結合性PEG脂質(A)を製造できる。
標的結合性PEG脂質(A)を製造する方法は上記方法に限らず、PEG脂質のPEG構造部分の末端アミノ基に、末端チオール基を保護した(チオ)カルボン酸誘導体をアミド結合させ、続けて末端チオール基の保護基を脱保護する。一方で、タンパク質、ペプチド及び糖鎖といった化合物に存在するリジンなどのアミノ基と、末端マレイミド基を有するカルボン酸とをアミド結合させ、得られた化合物のマレイミド基に前記の(末端チオール基の保護基を脱保護して得られた)チオール化合物を付加反応させる方法でも製造することができる。
その他にも、タンパク質、ペプチド及び糖鎖といった化合物に存在するリジンのアミノ基に対し、α‐ハロアミド基をもつPEG構造部分の末端と反応させる方法、タンパク質、ペプチド及び糖鎖といった化合物とPEG構造部分の末端にアジド基やアセチレン基を導入し、クリック反応を使用する方法等を用いて製造できる。標的結合部位とPEGを結合させた後は、必要であれば、未反応の活性反応基を消失(例えば活性反応基であるマレイミド基をシステインと反応)させたり、標的化合物が脱離するレトロ‐マイケル反応を避けるために、積極的に環状イミド基を開環させることにより標的化合物との結合安定性を図ったり、精製工程を経由して製造してもよい。
本発明の生理活性物質を内包した標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物は、生体内に投与された後、徐々に内包した生理活性物質を遊離する物性である。遊離した生理活性物質は薬理効果を発揮させることができる。このため、生理活性物質を内包した標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物は、該生理活性物質を有効成分とする医薬品として使用することができる。
本発明の生理活性物質を内包した標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物を医薬品として用いる場合、経口的、非経口的の何れの投与経路で用いても良い。非経口的な注射による投与経路により処方されることが好ましい。注射による投与は静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、腫瘍部内投与、等によって行われる。
本発明の生理活性物質を内包した標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物の製剤化に当たっては、通常使用されている薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、増量剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化、溶剤、可溶化剤、懸濁化剤、色素、香料剤及び等張化剤等が使用できる。
注射液剤の場合は、通常溶剤を使用する。溶剤としては、例えば水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール液、水溶性有機溶剤、例えばグリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモホール等、及びそれらの混合液、並びに水と該水溶性有機溶媒の混合液等が挙げられる。これらの製剤用添加剤を用いて、投与可能な医薬製剤に調製して用いることが好ましい。
本発明の生理活性物質を内包した標的結合性PEG脂質(A)とブロック共重合体(B)を含有する組成物は、結合させる生理活性物質の種類、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更されうるが、非経口的に、通常、成人1日当たり、活性成分として0.01〜500mg/m、好ましくは0.1〜250mg/mを投与することが好ましい。
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
標的結合部位(分子)として、Trastuzumab(Roche社製、分子量148キロダルトン)を使用した。
合成例、及び実施例のブロック共重合体、Trastuzumab、及びそれらを含む組成物のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定は、株式会社島津製作所製のHPLCシステムに、SECカラム(SuperdexTM 200 Increase 100/300、GEヘルスケア社製)を接続し、溶離液として50mM−硝酸ナトリウム水溶液を0.75mL/minで流した。
Trastuzumab及びスルフヒドリル基を有するTrastuzumabの定量は、Trastuzumabを基準物質として、UV検出における280nmのピーク面積より行った。
合成例、及び実施例のブロック共重合体及びそれらを含む組成物の平均粒径の測定は、株式会社島津製作所製シングルナノ粒子径測定装置IG−1000(測定温度:25℃、t=0における光強度:100〜200)にて行った。平均粒径測定用のサンプルは、超純水中で0.1〜2.5mg/mLとなるように調製し、0.45μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いた。
[合成例1]
ポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量2キロダルトン、ポリグルタミン酸重合数7.8)の合成
片末端メトキシ基、片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT M89506、日油社製、平均分子量2キロダルトン、5.0g)をDMSO(90mL)に溶解後、γ−ベンジル L−グルタメート N−カルボン酸無水物(5.27g)を加え、30℃で21時間撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(1800mL)及びエタノール(200mL)混合液中に2時間かけて滴下し、室温にて2時間撹拌した。その後、上澄み除去し、ジイソプロピルエーテル(900mL)及びエタノール(100mL)混合溶液を加え,撹拌した後、析出物を濾取し、減圧下で乾燥し、重合物(8.0g)を得た。
得られた重合物(7.8g)をDMF(94mL)に溶解し、無水酢酸(1.56mL)を加えて20℃にて18時間撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(846mL)及び酢酸エチル(94mL)混合液中に2時間かけて滴下し、室温にて1.5時間撹拌した。その後、上澄み除去し、ジイソプロピルエーテル(450mL)及び酢酸エチル(50mL)混合溶液を加え,1時間撹拌した後、析出物を濾取し、減圧下で乾燥することによりアセチル化ポリマー(7.2g)を得た。
得られたアセチル化ポリマー(7.0g)をDMF(140mL)に溶解し、10%パラジウム−炭素(1.4g)を加えた。その後、反応雰囲気を水素置換し、30℃、1気圧下にて加水素分解を行った。24時間後、更に10%パラジウム−炭素(1.4g)を加え、同様に23時間加水素分解を行った。10%パラジウム−炭素触媒を濾別後(洗い込みに酢酸エチル60mL使用)、濾液をヘプタン(700mL)及び酢酸エチル(630mL)混合液中に滴下し、室温にて3時間撹拌した。その後、上澄み除去し、ヘプタン(350mL)及び酢酸エチル(350mL)混合液を加え,1時間撹拌した後、析出物を濾取し、減圧下で乾燥した。
この析出物(1.5g)を超純水(150mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを約11に調整後、分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー(HP−20)、続いてイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー(Dowex 50)を用いて精製した。溶出した溶液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することでポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体(合成例1 1.3g)を得た。
合成例1は、0.1N水酸化カリウムを用いた電位差滴定法により、グルタミン酸の重合数7.8と算出した。これより、ポリエチレングリコール鎖とポリアミノ酸鎖を合せた主鎖ポリマーの平均分子量は3053≒3.1キロダルトンと算出された。
[合成例2]
ポリエチレングリコール(2キロダルトン)−ポリグルタミン酸(7.8重合体)ブロック共重合体のバリンベンジルエステル及びAlexa Fluor(登録商標) 594 dye結合体の合成
合成例1(99.3mg)、Alexa Fluor(登録商標)594 Cadaverine(ThermoFisher Scientific社製、5.0mg)及びジメチルアミノピリジン(DMAP 30.9mg)をDMF(2.5mL)に溶解し、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI 2.0μL)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、バリンベンジルエステル塩酸塩(43.0mg)、ジイソプロピルエチルアミン(29.0μL)及びジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI 77.0μL)を加え1晩撹拌後、さらにDIPCI(30.0μL)を加え、3.75時間撹拌した。反応液をMWCO2000の透析膜に移液し、外液をアセトニトリルとして透析を行った。2.5時間後、外液を超純水に置換し、更に24時間透析した。透析終了後、アセトニトリル(3.0mL)を加え、イオン交換樹脂(Dowex 50)を加えて室温にて0.5時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾別後にアセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥することにより標記ブロック共重合体(合成例2 131mg)を得た。
上記反応において、Alexa Fluor(登録商標) 594 Cadaverine及びバリンベンジルエステル塩酸塩の消費を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて追跡した結果、Alexa Fluor(登録商標) 594 dye及びバリンベンジルエステル塩酸塩ともに定量的に反応した。従って、合成例2におけるAlexa Fluor(登録商標) 594 dye結合量は0.19分子、バリンベンジルエステル結合量は5.30分子と算出された。これらの値より、合成例2のブロック共重合体総分子量は5106≒5.1キロダルトンと算出された。
[合成例3]
スルフヒドリル基を有するTrastuzumabの合成
Trastuzumab(8.80mg)をHEPES緩衝液(pH7.4)に溶解し、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)/DMSO溶液(20mM、12μL)を添加して室温で30分間撹拌した。脱塩カラム(PD−10)により未反応の低分子成分を除去した後、ヒドロキシルアミン/5mM−EDTA含有HEPES緩衝液(pH7.5、0.5M、100μL)を添加し、室温で2間撹拌した。再度、PD−10により低分子成分を除去することで、スルフヒドリル基を有するTrastuzumab(合成例3、3.0mL)を得た。
合成例3は、SEC分析により、Trastuzumab基準で2.34mg/mLであった。
[実施例1]
Trastuzumabを標的結合部位として有するPEG脂質(A1)及びブロックコポリマー(B1)を含有する組成物(モル比A1:B1=1:36)(A1の重量含有率=44.0%)
N−[N’−(3’−マレイミド−1’−オキソプロピル)アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル]−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン、ポリエチレングリコール(2キロダルトン)−ポリグルタミン酸(7.8重合体)ブロック共重合体のバリンベンジルエステル及びAlexa Fluor(登録商標) 594 dye結合体、及びスルフヒドリル基を有するTrastuzumabを、モル比12:68:2(重量比15:85:83)で混合及び反応させることで、標記実施例1に係る標的認識型組成物を調製した。
合成例2(4.25mg)、及びN−[N’−(3’−マレイミド−1’−オキソプロピル)アミノプロピルポリオキシエチレン オキシカルボニル]−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール−3−フォスフォエタノールアミン(SUNBRIGHT DSPE−034MA、日油社製、平均分子量4.2キロダルトン、0.75mg)を、DMF(0.25mL)に溶解し、強撹拌したHEPES緩衝液(pH7.0、10mL)に滴下した。3分間超音波照射したのち、限外濾過フィルター(Vivaspin、MWCO3,000)を使用して濃縮したのち、1.67mg/mLになるように上記HEPES緩衝液を加え、0.45μmフィルター濾過することで表記実施例1の前駆体ナノ粒子を調製した。
続いて前駆体ナノ粒子(2.0mL、3.34mg)に対して、合成例3(1.2mL、2.81mg)を添加し、30℃で1時間30分振とう撹拌した。N−エチルマレイミド/HEPES緩衝液(pH7.0、0.5mM、0.2mL)を添加し30分振とう撹拌した後、L−システイン/5mM−EDTA含有HEPES緩衝液(pH7.5、5mM、0.1mL)を添加することで、未反応のスルフヒドリル基及びマレイミド基を不活化処理した。限外濾過フィルター(Vivaspin、MWCO3,000)を使用して未反応の低分子成分を除去した後、5.0mLとなるようにHEPES緩衝液(pH7.5)を加え、0.45μmフィルター濾過することで表記実施例1の組成物を調製した(1.23mg/mL)。
上記反応において、合成例3の消費をSECにて追跡した結果、反応率は94%と良好だった。従って、実施例1の組成物におけるTrastuzumabを標的結合部位として有するPEG脂質(A1)及びブロックコポリマー(B1)のモル比は、A1:B1=2×0.94:68=1:36となった。ここから計算される(A1)の重量含有率は44.0%である。
実施例1の組成物を、限外濾過により超純水へ置換し、IG−1000により粒径測定したところ、平均粒径は24nm(2.0mg/mL)であった。
[比較例1]
ポリエチレングリコール(2キロダルトン)−ポリグルタミン酸(7.8重合体)ブロック共重合体のバリンベンジルエステル及びAlexa Fluor(登録商標) 594 dye結合体の水中分散体
合成例2(3.7mg)を、超純水(0.74mL)中で10分間超音波照射したのち、0.456mL分取して超純水で4.0mLとした。0.45μmフィルター濾過することで、表記比較例1の組成物を調製した(0.57mg/mL)。
比較例1の組成物を、IG−1000により粒径測定したところ、平均粒径は28nm(0.11mg/mL)であった。
[試験例1]
HER2陽性SK−BR−3における実施例1及び比較例1の細胞内取り込み比較試験
実施例1のHER2に対する結合能を測定するために、HER2陽性SK−BR−3細胞における細胞内取り込み量を、競合阻害剤であるTrastuzumab及び競合阻害を示さないヒトIgG存在下で比較した。また、比較例1でも同様に試験を実施した。
HER2陽性SK−BR−3を2.5×10個ずつ1mLのボリュームで24ウェルに播種し、一晩培養した。その後、ヒトIgG(50μg/mL)又はTrastuzumab(50μg/mL)を、それぞれ独立のウェルに添加した。更に、AlexaFluor(登録商標)594換算で0.5μg/mLの実施例1及び比較例1を、それぞれ独立のウェルに添加し、4時間培養した。
各ウェルをPBS(−)で洗浄し、蛍光顕微鏡下にてAlexaFluor(登録商標)594の蛍光を観察した。ヒトIgG存在下及びTrastuzumab存在下の各ウェルの蛍光顕微鏡観察像を図1に示す。
更に、観察後の細胞は0.25%トリプシンを用いて剥離回収し、1mLのPBS(−)で懸濁してLSRII(BD社)にてAlexaFluor(登録商標)594の蛍光強度をPE−TxRedフィルターを用いて測定した。蛍光強度の各測定値は無処置における蛍光強度からの相対値として図2に表示した。
図1及び図2で示されるように、実施例1のHER2陽性細胞SK−BR−3への細胞内取り込みは、Trastuzumab共存下で15%阻害された。このことから、Trastuzumabが結合した標的結合性PEG脂質(A)を含有する実施例1の組成物は、HER2を認識することで、SK−BR−3細胞を認識していることが示された。一方で、標的結合部位を有さない比較例1は、Trastuzumab共存下でも細胞内取込み阻害はされなかった。したがって、比較例1はHER2非依存的に細胞内取込みがなされており、細胞選択的取込み作用を有しないことが示された。
以上の結果から、標的結合部位(Trastuzumab)を有するPEG脂質を含有する組成物である実施例1は、効果的に標的を認識できる作用を有することが示された。

Claims (15)

  1. ポリエチレングリコール(PEG)部分と脂質部分が結合した平均分子量が2キロダルトン以上で10キロダルトン以下のPEG脂質を含有し、標的結合部位がPEG部分に結合した標的結合性PEG脂質(A)、並びにポリエチレングリコール(PEG)鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体であって、平均分子量が2キロダルトン以上で15キロダルトン以下であるブロック共重合体(B)、を含有する標的認識型組成物。
  2. 前記ブロック共重合体(B)の疎水性ポリマーセグメントが、疎水性置換基を側鎖に有するポリアミノ酸鎖である、請求項1に記載の標的認識型組成物。
  3. 前記ブロック共重合体(B)が、PEG鎖を含有する親水性ポリマーセグメントと、側鎖カルボキシ基にエステル結合及び/又はアミド結合にて疎水性官能基を有する、ポリアスパラギン酸セグメント、ポリグルタミン酸セグメント及びポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)鎖セグメントからなる群から選択される1種であるポリアミノ酸鎖である疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック共重合体であり、該疎水性置換基の質量含有率が5質量%以上で50質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の標的認識型組成物。
  4. 前記ブロック共重合体(B)が、PEG鎖の平均分子量が1キロダルトン以上で6キロダルトン以下である請求項1乃至請求項3に記載の標的認識型組成物。
  5. ブロック共重合体(B)が、PEG鎖とポリアミノ酸鎖を合せた主鎖ポリマーの平均分子量が、2キロダルトン以上で10キロダルトン以下である、請求項1乃至請求項4に記載の標的認識型組成物。
  6. 前記ブロック共重合体(B)が、一般式(1)
    Figure 2018024590
    [式中、R5aは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、taは20〜140の整数を示し、Aaは置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキレン基を示し、R2aは水素原子、炭素数(C1〜C6)アシル基及び炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される置換基を示し、R3aは、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C30)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のジアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の結合残基、水酸基及び/又はアミノ基を有する蛍光物質の結合残基からなる群から選択される1種以上の疎水性置換基の結合残基を1以上含み、残部は水酸基であり、Baは結合基を示し、naは1又は2を示し、x1a、x2a及びzaは、それぞれ独立して0〜20の整数を示し、x1a+x2aは1〜20の整数を示し、(x1a+x2a+za)は3〜20の整数を示し、前記R3aが結合している各構成ユニット並びに側鎖カルボニル基が分子内環化した構成ユニットは、それぞれ独立してランダムに配列した構造である。]で示される請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  7. 前記標的結合性PEG脂質(A)の、PEG脂質分子当りの脂質部分の質量含有率が10質量%以上で40質量%以下である、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  8. 前記標的結合性PEG脂質(A)のPEG部分の平均分子量が、前記ブロック共重合体(B)のPEG部分の平均分子量より大きいことを特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  9. 前記標的結合性PEG脂質(A)と、ブロック共重合体(B)とが(A):(B)=1:0.5〜50のモル比である、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  10. 前記標的結合性PEG脂質(A)の質量含有率が、2質量%以上で70質量%以下である、請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  11. 前記標的結合性PEG脂質(A)の質量含有率が、2質量%以上で50質量%以下である、請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  12. 生理活性物質を含有する、請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  13. 前記標的認識型組成物は、水溶液中において会合体を形成し、該会合体の平均粒径が30ナノメートル以下である、請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の標的認識型組成物。
  14. 請求項1乃至請求項13の何れか一項に記載の標的認識型組成物を有効成分とする医薬。
  15. 請求項1乃至請求項13の何れか一項に記載の標的認識型組成物を有効成分とする抗腫瘍剤。

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