JP2018024369A - エア有無検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マスタシリンダの加圧ピストンの後方の背面室に接続された背面液圧制御装置を含む上流側部と、加圧ピストンの前方の加圧室に接続されたホイールシリンダを含む下流側部とのエアの有無を区別して検出可能とする。
【解決手段】上流側のエア有無が検出された(S4)後、上流側部のサーボ圧遅れ時間Tsに基づいて下流側部のエア有無の検出に用いる下流側判定時間Twthが決定され(S5)、その決定された下流側判定時間Twthを用いて下流側部のエアの有無が検出される(S6)。サーボ圧遅れ時間は、上流側部にあるエアの量が多い場合は長くなる時間である。そのため、下流側部におけるエアの有無の検出に、下流側判定時間が用いられることにより、上流側部にあるエアの量を考慮して、下流側部のエアの有無を良好に検出することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、液圧ブレーキシステムにおけるエア有無の検出に関するものである。
特許文献1には、マスタシリンダと、そのマスタシリンダの加圧ピストンの後方の背面室に接続された背面液圧制御装置と、加圧ピストンの前方の加圧室に接続されたホイールシリンダとを含む液圧ブレーキシステムが記載されている。背面液圧制御装置は、背面室に接続された出力室の液圧を目標液圧に基づいて制御するものである。
特許文献2には、アキュムレータと、そのアキュムレータに電磁弁を介して接続されたホイールシリンダとを備えた液圧ブレーキシステムが記載されている。この液圧ブレーキシステムにおいて、電磁弁を閉から開に切り換えることにより、アキュムレータとホイールシリンダとを連通させた時点から、ホイールシリンダの圧力が設定圧増加するまでのアキュムレータの圧力の低下量に基づいてホイールシリンダのエアの有無が検出される。
特開2015−143060 特開2008−030545
本発明の課題は、ホイールシリンダと、マスタシリンダと、マスタシリンダの加圧ピストンの後方の背面室に接続された背面液圧制御装置とを含む液圧ブレーキシステムにおいて、背面液圧制御装置を含む上流側部と、ホイールシリンダを含む下流側部との各々におけるエアの有無を良好に検出可能とすることである。
課題を解決するための手段および効果
本発明に係るエア有無検出装置においては、背面液圧制御装置を含む上流側部とホイールシリンダを含む下流側部との各々において、上流側部、下流側部の各々における遅れ量が、それぞれ、上流側部、下流側部の判定しきい値より大きい場合にエアが有ると検出されるが、下流側部の判定しきい値が、上流側部の遅れ量に基づいて決定される。
上流側部については、上流側部の遅れ量と上流側部のしきい値との比較によりエアの有無が検出される。しかし、下流側部の遅れ量は、下流側部のエアおよび上流側部のエアの両方の影響を受ける。そのため、下流側部の遅れ量が大きい場合であっても、上流側部に有るエアに起因するのか、下流側部に有るエアに起因するのか区別が困難な場合がある。それに対して、本発明に係るエア有無検出装置においては、下流側部の判定しきい値が上流側部の遅れ量に基づいて決定される。例えば、上流側部の遅れ量が大きい場合は小さい場合より下流側の判定しきい値を大きい値に決定することができる。その結果、下流側部のエアの有無が、上流側部のエア量を考慮して検出されることになり、下流側部の遅れ量が下流側部の判定しきい値より大きい場合には、下流側部にエアが有ると検出することができる。
本発明の実施例1に係るエア有無検出装置によってエアの有無が検出される液圧ブレーキシステムの回路図である。 上記液圧ブレーキシステムのブレーキECUの周辺を概念的に示す図である。 上記ブレーキECUの記憶部に記憶された上流側部・下流側部エア有無検出等プログラムを表すフローチャートである。 上記プログラムの一部を示すフローチャートである(上流側部エア有無検出等)。 上記プログラムの別の一部を示すフローチャートである(下流側部エア有無検出等)。 (a)上記プログラムのさらに別の一部を示すフローチャートである(報知)。(b)上記液圧ブレーキシステムに含まれるディスプレイの表示を示す図である。 上記記憶部に記憶された上流側部エア抜きプログラムを表すフローチャートである。 上記記憶部に記憶されたサーボ圧制御プログラムを表すフローチャートである。 (a)上記上流側部にエアが有る場合の、目標液圧、サーボ圧の変化を示す図である。(b)上記上流側部におけるエア量に対応する時間を示す図である。 (a)下流側部にエアが有ると検出された場合の、目標液圧、ホイールシリンダ圧の変化を示す図である。(b) 下流側部にエアが無いと検出された場合の、目標液圧、ホイールシリンダ圧の変化を示す図である。(c)下流側部におけるエア量に対応する時間を示す図である。 (a)上記記憶部に記憶されたサーボ圧遅れ時間と上流側のエア量との関係を示す図である。(b)上記記憶部に記憶された下流側エア量対応時間と下流側のエア量との関係を示す図である。 上記記憶部に記憶されたサーボ圧遅れ時間と下流側判定時間との関係を示す図である。 (a)本発明の実施例2に係るエア有無検出装置によってエアの有無が検出される液圧ブレーキシステムの目標液圧、エアがない場合のサーボ圧の変化を示す図である。(b)上記液圧ブレーキシステムの記憶部に記憶された上流側判定時間と目標液圧の増加勾配との関係を示す図である。 上記記憶部に記憶されたエア量と増圧リニア弁への供給電流の増加量との関係を示す図である。
発明の実施形態
以下、本発明の一実施形態に係るエア有無検出装置を含む液圧ブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。
<液圧ブレーキシステムの構成>
図1に示すように、液圧ブレーキシステムは、(i)左右前輪2FL,2FRに設けられ
た液圧ブレーキ4FL,4FRのホイールシリンダ6FL,6FRおよび左右後輪8RL,8RRに設けられた液圧ブレーキ10RL,10RRのホイールシリンダ12RL,12RR、(ii)これらホイールシリンダ6FL,6FR,12RL,12RRに液圧を供給可能な液圧発生装置14、(iii)これらホイールシリンダ6FL,6FR,12RL,12RRと液圧発生装置14との間に設けられたスリップ制御弁装置16等を含む。液圧発生装置14、スリップ制御弁装置16等は、コンピュータを主体とするブレーキECU20(図2参照)によって制御される。
液圧発生装置14は、(i)ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24、(ii)マスタ
シリンダ26、(iii)マスタシリンダ26の背面室の液圧を制御する背面液圧制御装置2
8等を含む。
マスタシリンダ26は、ハウジング30に、互いに直列に、液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストン32,34および入力ピストン36等を含む。
加圧ピストン32,34の前方が、それぞれ、加圧室40,42とされる。加圧室40には液通路44を介して左右前輪2FL,2FRのホイールシリンダ6FL,6FRが接続され、加圧室42には液通路46を介して左右後輪8RL,8RRのホイールシリンダ12RL,12RRが接続される。ホイールシリンダ6FL,6FR,12RL,12RRの各々に液圧が供給されることにより液圧ブレーキ4FL,4FR,10RL,10RRが作動させられ、車輪2FL、2FR,8RL,8RRの回転を抑制する。
以下、本明細書において、液圧ブレーキ等につき、車輪位置を区別する必要がない場合等には、車輪位置を表すFL,FR,RL,RRを省略する場合がある。
また、加圧ピストン32,34は、リターンスプリングにより後退方向に付勢されるが、後退端位置において、加圧室40,42は、それぞれ、リザーバ52に連通させられる。
加圧ピストン34は、(a)前部に設けられた前ピストン部56と、(b)中間部に設けられ、半径方向に突出した中間ピストン部58と、(c)後部に設けられ、中間ピストン部58より小径の後小径部60とを含む。前ピストン部56と中間ピストン部58とは、ハウジング30にそれぞれ液密かつ摺動可能に嵌合され、前ピストン部56の前方が加圧室42とされ、中間ピストン部58の前方が環状室62とされる。
一方、ハウジング30には、円環状の内周側突部64が設けられ、中間ピストン部58の後方、すなわち、後小径部60が液密かつ摺動可能に嵌合される。その結果、中間ピストン部58の後方の、中間ピストン部58と内周側突部64との間に背面室66が形成される。
加圧ピストン34の後方に入力ピストン36が位置し、後小径部60と入力ピストン36との間が離間室70とされる。入力ピストン36の後部には、ブレーキペダル24がオペレイティングロッド72等を介して連携させられる。
環状室62と離間室70とは連結通路80によって連結され、連結通路80に連通制御弁82が設けられる。連通制御弁82は常閉の電磁開閉弁である。連結通路80の連通制御弁82より環状室62側の部分は、リザーバ通路84を介してリザーバ52に接続されるとともに、シミュレータ通路88を介してストロークシミュレータ90が接続される。リザーバ通路84には常開の電磁開閉弁としてのリザーバ遮断弁86が設けられる。
また、連結通路80のリザーバ通路84が接続された部分より環状室側の部分には、液圧センサ92が設けられる。液圧センサ92は、環状室62,離間室70が互いに連通させられ、かつ、リザーバ52から遮断された状態において、環状室62,離間室70の液圧を検出する。環状室62、離間室70の液圧は、ブレーキペダル24の操作力に応じた高さとなるため、液圧センサ92を操作液圧センサと称することができる。
背面室66には背面液圧制御装置28が接続される。
背面液圧制御装置28は、(a)高圧源96,(b)レギュレータ98,(c)入力液圧制御部
100等を含む。
高圧源96は、ポンプ104およびポンプモータ105を備えたポンプ装置106、ポンプ装置106から吐出された作動液を加圧した状態で蓄えるアキュムレータ108、アキュムレータ108に収容された作動液の液圧であるアキュムレータ圧を検出するアキュムレータ圧センサ109等を含む。アキュムレータ圧センサ109よって検出されるアキュムレータ圧が、予め定められた設定範囲内に保たれるようにポンプ装置106が制御される。
レギュレータ98は、(d)ハウジング110と、(e)ハウジング110に、軸線Lと平行な方向に、互いに直列に並んで設けられたパイロットピストン112および制御ピストン114とを含む。また、ハウジング110の制御ピストン114の前方には高圧室116が形成され、高圧源96に接続される。また、パイロットピストン112とハウジング110との間がパイロット圧室120とされ、制御ピストン114の後方が入力室122とされ、制御ピストン114の前方が出力室としてのサーボ室124とされる。また、サーボ室124と高圧室116との間に高圧供給弁126が設けられる。高圧供給弁126は常閉弁であり、常には、サーボ室124と高圧室116とを遮断する。
制御ピストン114の中央部には、軸線Lと平行に延びた低圧通路128が形成され、常時、リザーバ52に連通させられる。また、低圧通路128は、制御ピストン114の前端部に開口し、高圧供給弁126に対向する。そのため、制御ピストン114が後退端にある場合には、サーボ室124は高圧室116から遮断され、低圧通路128を介してリザーバ52に連通させられる。制御ピストン114の前進により、高圧供給弁126が開かれ、サーボ室124がリザーバ52から遮断され、高圧室116に連通させられる。
なお、パイロット圧室120はパイロット通路152を介して液通路46に接続される。そのため、パイロットピストン112には、マスタシリンダ26の加圧室42の液圧が作用する。
さらに、サーボ室124にはサーボ通路154を介してマスタシリンダ26の背面室66が接続される。サーボ室124と背面室66とは直接接続されるため、サーボ室124の液圧であるサーボ圧と背面室66の液圧とは原則として同じ高さになる。なお、サーボ通路154にはサーボ圧センサ156が設けられ、サーボ圧が検出される。
入力室122には、常閉の電磁弁である増圧リニア弁(SLA)160と常開の電磁弁である減圧リニア弁(SLR)162とを含む入力液圧制御部100が接続される。増圧リニア弁160は、入力室122と高圧源96との間に設けられ、減圧リニア弁162は、入力室122とリザーバ52との間に設けられる。これら増圧リニア弁160のコイル,減圧リニア弁162のコイルへの供給電流の制御により、入力室122の液圧および液圧の変化勾配が制御される。例えば、増圧リニア弁160への供給電流が大きくされれば、開度が大きくされ、高圧源96から入力室122に供給される高圧の作動液の流入流量が大きくなり、入力室122の液圧である入力圧の増加勾配が大きくなる。
スリップ制御弁装置16は、ホイールシリンダ6FR,FL,12RR,RLの各々と加圧室40,42との間にそれぞれ設けられた電磁弁としての保持弁170FR,FL,RR,RLと、ホイールシリンダ6FR,FL,12RR,RLと減圧用リザーバとの間にそれぞれ設けられた電磁弁としての減圧弁172FR,FL,RR,RLとを含む。保持弁170FR,FL,RR,RL、減圧弁172FR,FL,RR,RLの個別の制御によりホイールシリンダ6FR,FL,12RR,RLの液圧が個別に制御され、車輪2FR,FL,8RR,RLの各々のスリップ状態が適正な状態に制御される。
ブレーキECU20は、図2に示すように、実行部220、記憶部222、入出力部224、タイマ226等を含むコンピュータを主体とするものである。ブレーキECU20には、上述の操作液圧センサ92,アキュムレータ圧センサ109,サーボ圧センサ156が接続されるとともに、ブレーキペダル24のストロークを検出するストロークセンサ200、ブレーキペダル24が踏み込まれた場合にONとなるブレーキスイッチ201、前後左右の各車輪2に対応して設けられ、それぞれ、車輪2の回転速度を検出可能な車輪速度センサ202、ホイールシリンダ6,12の各々の液圧を検出するホイールシリンダ圧センサ204、車両の減速度を検出する減速度センサ206、イグニッションスイッチ210等が接続される。また、連通遮断弁82、リザーバ遮断弁86、増圧リニア弁160、減圧リニア弁162、スリップ制御弁装置16、ポンプモータ105、報知装置、操作入力部としてのディスプレイ212等が接続される。ディスプレイ212はタッチパネルの機能を備えたものであり、ディスプレイ212上の予め定められた位置がタッチされることにより、その位置に関する情報が入力される。
<液圧ブレーキシステムにおける作動>
ブレーキペダル24が踏み込まれると、そのブレーキペダル24の操作状態に基づいて目標液圧Prefが決定される。背面液圧制御装置28において、入力液圧制御部100が目標液圧Prefに基づいて制御されることにより、入力圧が増加させられる。入力圧が設定圧以上になると、制御ピストン114が前進させられ、高圧供給弁126が開状態に切り換えられる。サーボ室124の液圧であるサーボ圧Psが高くなり、背面室66に供給される。入力圧とサーボ圧との間には、レギュレータ98の諸元で決まる関係が成立するが、本実施例においては、入力圧とサーボ圧とはほぼ同じ高さとなるよう設計されている。そのため、入力圧が目標液圧Prefに制御されることにより、サーボ圧が目標液圧Prefに近づけられる。
マスタシリンダ26において、背面室66の液圧に応じた前進力が、加圧ピストン34,32の摺動抵抗、リターンスプリングのばね力等より大きくなると、加圧ピストン34、32が前進させられ、加圧室40,42に液圧が発生させられ、ホイールシリンダ6,12に供給される。ホイールシリンダ6,12の液圧が高くなり、液圧ブレーキ4,10が作動させられる。それにより、車輪2の回転速度が低下し、車両が減速させられる。
図8のフローチャートで表されるサーボ圧制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ101(以下、S101と略称する。他のステップについても同様とする)において、ブレーキスイッチ201がONか否かが判定される。ONの場合には、S102において、ストロークセンサ200によってブレーキペダル24のストロークが検出され、操作液圧センサ92によってブレーキペダル24の操作力に対応する操作液圧が検出される。S103において、これらストロークと操作液圧との少なくとも一方に基づいて目標液圧Prefが取得される。S104において、入力圧が目標液圧Prefに近づくように、入力液圧制御部100の減圧リニア弁162、増圧リニア弁160への供給電流が制御される。
[エア有無検出]
本実施例においては、運転者によってブレーキペダル24が踏み込まれて、ブレーキスイッチ201がONになったことをトリガとしてエアの有無が検出される。車両は停止状態にあっても走行状態にあってもよいが、停止状態にある方が外乱が少ないため、精度よくエアの有無を検出することができる。また、ブレーキスイッチ201がONであり、上述のサーボ圧制御プログラムによりサーボ圧が制御されている間にエアの有無が検出される。
さらに、背面液圧制御装置28等を含む上流側部180と、加圧室40,42、ホイールシリンダ6,12等を含む下流側部182とで区別して検出される。
(1)上流側部180のエア有無の検出、エア量推定
目標液圧Prefが設定液圧Prefaより大きくなった時点から、サーボ圧センサ156の検出値が設定サーボ圧Psaに達するまでの時間であるサーボ圧遅れ時間Tsが取得され、サーボ圧遅れ時間Tsと上流側判定時間Tsthとの比較により、上流側部180のエアの有無が検出される。
図9(a),(b)において、破線は目標液圧Prefの変化を示し、一点鎖線は上流側部180にエアがない場合のサーボ圧Psの変化を示す。上述のように、背面液圧制御装置28において、入力液圧制御部100が制御され、レギュレータ98が作動させられて、サーボ圧が高くなるため、上流側部180にエアがない場合にも、サーボ圧Psの増加が遅れるのであり、目標液圧Prefが設定液圧Prefaより大きくなった時点からサーボ圧遅れ時間Ts0が経過した後に、サーボ圧Psが設定サーボ圧Psaに達する。それに対して、上流側部180にエアが有る場合には、実線が示すようにサーボ圧Psが変化するのであり、サーボ圧遅れ時間Tsが長くなる。そこで、本実施例においては、サーボ圧遅れ時間Tsが上流側判定時間Tsthより長い場合に、上流側部180にエアが有ると判定される。
上流側判定時間Tsthは、予め定められた値であり、エアがない場合のサーボ圧遅れ時間Ts0より長く、エアに起因してサーボ圧Psの増加が遅れたと判定し得る値である。上流側判定時間Tsthは、予め実験により求めた値としたり、シミュレーションにより求めた値としたりすること等ができる。また、上流側判定時間Tsthは、車種毎に定めたり、車両毎に定めたりすること等ができる。例えば、車両を出荷する際に、上流側判定時間Tsthを取得して記憶させることができる。
設定サーボ圧Psaは、例えば、サーボ圧Psが確実に増加したとみなし得る大きさとすることができるが、加圧ピストン30,32が前進しない大きさとすることができる。換言すれば、上流側部180のエアの有無は、加圧ピストン34,32が後退端位置にある状態で検出される。
設定液圧Prefaは、例えば、ブレーキペダル24が確実に踏み込まれ、入力液圧制御部100の制御が開始されたとみなし得る大きさとすることができる。
上流側部180にエアが有ると検出された場合には、サーボ圧遅れ時間Tsに基づいて上流側部180に存在するエアの量Qsが推定される。
図9(b)において、上流側部180にエアがない場合にサーボ圧Psが設定サーボ圧Psaに達した時点から上流側部180にエアが有る場合にサーボ圧Psが設定サーボ圧Psaに達するまでの時間Tqs(Tqs=Ts−Ts0)は、上流側部180のエアの大部分を潰すのに要した時間であると考えることができる。そのため、この時間 (以下、上流側エア相当時間と称する)Tqsが、長い場合は短い場合より上流側部180に含まれるエアの量が多いと推定することができる。一方、エアがない場合のサーボ圧遅れ時間Ts0は、車両や車種毎で決まる一定の値であり、既知である。そのため、サーボ圧遅れ時間Ts(Ts=Tqs+Ts0)も、上流側部180に存在するエアの量が多い場合は少ない場合より、相対的に長くなると考えることができる。
以上のことから、本実施例においては、図11(a)に示すように、サーボ圧遅れ時間Tsと上流側部180に存在するエア量Qsとの関係が予め取得されて記憶され、その関係と実際に取得されたサーボ圧遅れ時間Tsとに基づいて上流側部180のエア量Qsが推定されるようにされている。
なお、上流側エア量相当時間Tqs(Tqs=Ts−Ts0)とエア量Qsとの関係を予め記憶させておき、その関係と実際に取得された上流側エア量相当時間Tqsとに基づいて上流側部180のエア量Qsが推定されるようにすることもできる。
また、エア量を推定する場合の設定サーボ圧は、エアの有無を検出する場合の設定サーボ圧Psaより大きい値とすることもできる。
(2)下流側部182のエア有無の検出、エア量推定
本実施例においては、目標液圧Prefが設定液圧Prefaより大きくなった時点から、ホイールシリンダ圧センサ204によって検出されたホイールシリンダ圧(以下、検出ホイールシリンダ圧と称する場合がある)が設定ホイールシリンダ圧Pwaに達するまでの時間であるホイールシリンダ圧遅れ時間Twが取得され、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twと下流側判定時間Twthとの比較により、下流側部182のエアの有無が検出される。
しかし、マスタシリンダ26の加圧室40,42の液圧、換言すれば、ホイールシリンダ6,12の液圧は、背面室66の液圧の増加に起因して増加するため、下流側部182にエアがある場合のみならず上流側部180にエアがあっても、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twが長くなる。そこで、本実施例においては、下流側判定時間Twthがサーボ圧遅れ時間Tsに基づいて決定されるようにされている。
図12に示すように、サーボ圧遅れ時間Tsが、上流側部180にエアがない場合のサーボ圧遅れ時間Ts0である場合に、下流側判定時間Twthが、基準値である基準下流側判定時間Twth0とされ、その後、サーボ圧遅れ時間Tsの増加に伴って、下流側判定時間Twthが長い値に決定される。換言すれば、下流側判定時間Twthは、上流側部180に存在するエア量が多い場合は少ない場合より、大きい値に決定されることになる。
基準下流側判定時間Twth0は、上流側部180にエアがない場合にホイールシリンダ圧遅れ時間Twが下流側部182のエアに起因して長くなったと判断し得る値であり、目標液圧Prefが設定液圧Prefaより大きくなった時点から、図10(a)、(b)の一点鎖線が示すように、上流側部180にも下流側部182にもエアがない場合にホイールシリンダ圧が設定ホイールシリンダ圧Pwaに達するまでの時間Tw0(図10参照)より大きい値である。基準下流側判定時間Twth0は、上流側判定時間Tsthと同様に車種毎または車両毎に、予め実験またはシミュレーション等により求めることができる。
例えば、図10(a)、(b)において、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twは同じであるが、図10(a)の場合には、下流側判定時間Twthより短いため下流側部182にエアはないと検出され、図10(b)の場合には、下流側判定時間Twthより長いため下流側部182にエアがあると検出される。図10(a)の場合には、上流側部180にあるエアに起因して、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twが長くなったと推測される。
また、下流側部182にエアが有ると検出された場合には、エアの量が推定される。図10(c)において、上流側部180にも下流側部182にもエアがない場合(一点鎖線で示す)にホイールシリンダ圧が設定ホイールシリンダ圧Pwaに達した時点から上流側部180と下流側部182との両方にエアがある場合(実線で示す)にホイールシリンダ圧が設定ホイールシリンダ圧Pwaに達するまでの時間Tdw(=Tw−Tw0)は、上流側部180と下流側部182との両方にあるエアを潰すのに要した時間であると推定することができる。したがって、時間Tdwは、上流側部180のエア量Qsと、下流側部182のエア量Qwとの合計(Qs+Qw)が多い場合は少ない場合より相対的に長くなると考えられる。そして、上述のように、上流側部180のエア量Qsは、上流側エア量相当時間Tqsに対応するため、時間Tdwから上流側エア量相当時間Tqsを引いた時間Tqwは、下流側部182のエア量Qwに相当する時間(下流側エア量相当時間)であると考えることができる。
Tqw=Tdw−Tqs=(Tw−Tw0)−Tqs
一方、上流側部180にも下流側部182にもエアがない場合のホイールシリンダ圧遅れ時間Tw0は、車両または車種毎に決まる一定の値であり、既知である。そのため、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twから上流側エア量相当時間Tqsを引いた時間(Tw−Tqs)、すなわち、下流側エア量相当時間Tqwにエアがない場合のホイールシリンダ圧遅れ時間Tw0を加えた時間(Tqw+Tw0)は、下流側部182にあるエアの量が多い場合は少ない場合より長くなると考えることができる。
以上のことから、本実施例においては、図11(b)に示すように、上述の時間(Tw−Tqs)と下流側部182のエア量Qwとの関係が予め取得されて、記憶されていて、その関係と、実際に取得されたホイールシリンダ圧遅れ時間Twから上流側エア量相当時間Tqsを引いた時間(Tw-Tqs)とに基づいて、下流側部182にあるエアの量Qwが推定される。上流側部180にエアがない場合には、上流側エア量相当時間Tdsは0または非常に小さい値となる。
なお、下流側エア量相当時間Tqwと下流側部182のエア量Qwとの関係を予め取得しておき、記憶させることもできる。その場合には、この関係と、下流側エア量相当時間Tqwとに基づいて、下流側部182のエア量Qwが推定されることになる。
(3)報知および処理
上流側部180、下流側部182の各々におけるエア有無の検出結果、推定されたエア量Qs,Qw等がディスプレイ212に表示される。
また、上流側部180にエアがあると検出された場合には、上流側部180のエア抜きが自動で行われる。それに対して、下流側部182のエア抜きはメンテナンス工場で行われるのが普通である。そのため、推定された下流側部182のエア量Qwが設定エア量Qwth(例えば、エア抜きが必要であると考えられる値とすることができる)より多い場合には、「下流側エア抜き要」が報知される。
ブレーキECU20において、図3のフローチャートで表される上流側部・下流側部エア有無検出等プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S1,2において、ブレーキスイッチ201がONになったか否かが判定され、目標液圧Prefが設定液圧Prefaより大きくなったか否かが判定される。S1,2の判定がいずれもYESの場合には、S3において、上流側検出済フラグがONであるか否かが判定され、判定がNOである場合には、S4において、上流側部180についてエアの有無の検出、エア量の推定等が行われる。S5において、S4において取得されたサーボ圧遅れ時間Tsに基づいて下流側判定時間Twthが決定され、S6において、S5において決定された下流側判定時間Twthを利用して下流側部182のエアの有無の検出、エア量の推定が行われる。その後、S7において、エア有無の検出結果、推定されたエア量等がディスプレイ212に表示される。上流側検出済フラグがONである場合には、S4,5が実行されることなく、S6が実行される。
上述のS4の実行(上流側部180のエア有無検出、エア量推定)を図4のフローチャートで表す。
S11において、検出中フラグがONであるか否かが判定され、判定がNOである場合には、S12において、タイマ226による時間の計測が開始され、S13において、検出中フラグがONにされる。目標液圧Prefが設定液圧Prefaより大きくなった時点からの時間の計測が開始されるのである。
そして、S14において、サーボ圧センサ156によりサーボ圧Psが検出され、S15において、設定サーボ圧Psaに達したか否かが判定される。検出サーボ圧Psが設定サーボ圧Psaより小さい場合には、以下、S1〜3,11,14,15が繰り返し実行される。そのうちに、検出サーボ圧Psが設定サーボ圧Psaに達すると、S16において、サーボ圧遅れ時間Tsが取得され、記憶される。そして、S17において、サーボ圧遅れ時間Tsが上流側判定時間Tsthより長いか否かが判定され、上流側判定時間Tsthより長い場合には、S18において、上流側部180にエアが有ると判定され(上流側エア有フラグがONとされ)、S19において、上述のようにエア量Qsが推定される。また、S20において、エア量Qsが設定エア量Qsthより多いか否かが判定され、判定がYESの場合には、S21において、上流側エア抜き要フラグがONとされる。設定エア量Qsthは、エア抜きが必要であると考え得る値であるが、車種毎に定めたり、車両毎に定めたりすることができる。例えば、エア量が少なくてもサーボ圧遅れ時間Tsが長い特性を有する車種があり、それら車種については、そうでない車種に比較して、設定エア量Qsthを小さい値に設定することができる。
それに対して、サーボ圧遅れ時間Tsが上流側判定時間Tsth以下の場合には、S22において、上流側部180にエアがないと判定される(上流側エア有フラグがOFFとされる)。そして、いずれの場合であっても、S23において、検出中フラグがOFFとされ、上流側検出済フラグがONとされる。
次に、S6の実行(下流側部182のエア有無検出、エア量推定)を図5のフローチャートで表す。
S31において、ホイールシリンダ圧センサ204によりホイールシリンダ圧が検出され、S32において、検出ホイールシリンダ圧Pwが設定ホイールシリンダ圧Pwaに達したか否かが判定される。判定がNOである場合には、S1〜3,31,32が繰り返し実行される。判定がYESとなると、S33において、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twが取得され、記憶される。S34において、ホイールシリンダ圧遅れ時間TwがS5において求められた下流側判定時間Twthと比較される。下流側判定時間Twthより長い場合には、S35,36において、下流側エア有フラグがONとされて、エア量Qwが推定される。それに対して、下流側判定時間Twth以下の場合には、S37において、下流側エア有フラグがOFFにされる。
次に、S7(報知)の実行を図6(a)のフローチャートで表す。
S51において、下流側部182のエア量Qwが読み込まれ、設定エア量Qwthより多いか否かが判定される。設定エア量Qwh以下である場合には、S52において、上流側部180、下流側部182の各々のエアの有無の検出結果と、推定されたエア量とがディスプレイ212に表示されて、報知される。ディスプレイ212の一例を図6(b)に示す。それに対して、下流側部182のエア量Qwが設定エア量Qwthより多い場合には、S53において、エアの有無の検出結果、推定されたエア量が表示されるのに加えて、「下流側部エア抜き要」の前の□にチェックが入れられる。本実施例においては、上流側エア有フラグのON・OFF,下流側エア有フラグのON・OFFに基づいて、(i)上流側部180、下流側部182の両方においてエアがない場合、(ii)上流側部180、下流側部182の両方にエアが有る場合、(iii)上流側部180にエアがあり、下流側部182にエアがない場合、(iv)下流側部182にエアがあり、上流側部180にエアがない場合に区別して表示される。
一方、上流側エア抜き要フラグがONである場合には図7のフローチャートで表される上流側部エア抜きプログラムが実行される。
S71において、イグニッションスイッチ210がOFFからONに切り換えられたか否かが判定され、イグニッションスイッチ210がONに切り換えられた場合には、S72において、ブレーキスイッチ201がOFFからONに切り換えられるのが待たれる。S71,72の判定がいずれもYESとなった場合、すなわち、イグニッションスイッチ210がOFFからONに切り換えられて、最初にブレーキペダル24が踏み込まれた場合には、S73において、エア抜きを行うかどうかの問い合わせ、例えば、「エア抜き実行可」、「エア抜き実行不可」のいずれかが選択可能にディスプレイ212に表示される。乗員は、ディスプレイ212の所定の位置をタッチすることにより、エア抜き実行可・不可のいずれかを選択することができる。S74において、エア抜き実行可が選択されたか否かが判定され、S75において、設定時間が経過したか否かが判定される。設定時間の間、乗員がディスプレイ212をタッチするのが待たれるのである。設定時間の間に、エア抜き実行可が選択された場合には、S76において上流側部180のエア抜きが行われるが、エア抜き実行不可が選択された場合、または、設定時間が経過してもエア抜き実行可が選択されなかった場合には、エア抜きが行われることはない。また、エア抜きが行われた後に、S77において、上流側エア抜き要フラグがOFFとされる。
上流側部180のエア抜きにおいて、増圧弁160を開、減圧弁162を閉として、入力室122の液圧を高くして、制御ピストン114を前進させた後に、増圧弁160を閉、減圧弁162を開として、入力室122をリザーバ52に連通させることにより、後退させて、制御ピストン114を複数回往復移動させる。それにより、入力室122、入力液圧制御部100の周辺のエアをリザーバ52に排出させ、出力室124の周辺のエアを通路128を経てリザーバ52へ排出させることができる。なお、この場合に、保持弁170を閉とすることが望ましい。加圧ピストン30,32の前進を抑制し、上流側部180のエア抜きを効率よく行うことができる。
このように、本実施例においては、イグニッションスイッチ210がOFFからONに切り換えられて、ブレーキペダル24が踏み込まれた場合、すなわち、車両が停止状態にあり、かつ、パーキングブレーキが作用状態にある場合に、エア抜きが行われるのであり、安全性が確保された状態でエア抜きを行い得る。また、運転者が承知した後にエア抜きが行われるため、運転者が不用意に車両を発進させることを良好に回避することができる。
なお、イグニッションスイッチ210がOFFからONに切り換えられて、最初にブレーキペダル24が踏み込まれた場合に限らず、車両が停止状態にあり、かつ、パーキングブレーキが作動状態にある場合に、エア抜き実行の問い合わせがされるようにすることもできる(S73)。
また、上記実施例においては、ホイールシリンダ圧センサ204によってホイールシリンダ圧が検出されるようにされていたが、車輪の回転減速度、車両の減速度に基づいて推定されるようにすることもできる。例えば、車輪速度センサ202の検出値に基づいて車輪の回転減速度を取得し、その回転減速度が設定回転減速度に達した場合、または、減速度センサ206によって検出された車両減速度が設定減速度に達した場合に、「ホイールシリンダ圧が設定ホイールシリンダ圧に達した」と推定することができる。このように、車輪の回転減速度、車両の減速度に基づいてホイールシリンダ圧が推定される場合には、ホイールシリンダ圧センサによってホイールシリンダ圧が検出される場合より、設定ホイールシリンダ圧(Pwa)を大きい値とすることが望ましい。
さらに、ホイールシリンダ圧センサ204を用いる場合には、エア有無の検出を車両の停止中に実行することも可能であるが、車輪の回転減速度、車両減速度を用いる場合には、車両の走行中にエア有無が検出されることになる。
また、サーボ圧遅れ時間Ts、ホイールシリンダ圧遅れ時間Twの計測の始点を、増圧リニア弁160が開、減圧リニア弁162が閉に切り換えられた時点とすることもできる。
以上のように、本実施例においては、タイマ226、サーボ圧センサ156、ブレーキECU20の図3のフローチャートで表される上流側部・下流側部エア有無検出等プログラムのS4を記憶する部分、実行する部分等により上流側検出装置が構成され、タイマ226、ホイールシリンダ圧センサ204、ブレーキECU20のS6を記憶する部分、実行する部分等により下流側検出装置が構成され、ブレーキECU20のS5を記憶する部分、実行する部分等により下流側判定時間決定部が構成される。また、ブレーキECU20の図8のフローチャートで表されるサーボ圧制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等によりサーボ圧制御部が構成される。
本実施例においては、目標液圧Prefの増加勾配に基づいて上流側判定時間Tsthと基準下流側判定時間Twth0とが決定される。
ブレーキ操作開始時において、目標液圧Prefの増加勾配が大きい場合は小さい場合より、増圧リニア弁160への供給電流値が大きくされる場合において、ブレーキ操作開始時の増圧リニア弁160への供給電流値が小さい場合には、供給電流値が大きい場合より、入力室122への高圧の作動液の流入流量が小さく、入力圧の増加勾配が小さくなる。そのため、目標液圧Prefの増加勾配が小さい場合(Ts0x)には大きい場合(Ts0y)より、図13(a)に示すように、サーボ圧遅れ時間が長くなる(Ts0x>Ts0y)。
仮に、エアがない場合のサーボ圧遅れ時間Ts0が長い場合と短い場合とで、上流側判定時間Tsthが同じである場合には、上流側部180のエアの有無を正確に検出することが困難となる。そこで、本実施例においては、図13(b)に示すように、目標液圧Prefの増加勾配が小さい場合は大きい場合より上流側判定時間Tsthが長い時間に決定される。その結果、ブレーキ操作開始時における、入力圧の増加勾配の違いに起因する上流側部180のエア有無の誤判定を良好に防止することができる。
また、基準下流側判定時間Twth0についても同様であり、目標液圧Prefの増加勾配が小さい場合は大きい場合より長い時間に決定される。
一方、上流側部180と下流側部182との少なくとも一方にエアが有ると検出された場合には、サーボ圧Psの増加とホイールシリンダ圧Pwの増加との少なくとも一方が遅れるため、ブレーキの効き遅れが大きくなる。そこで、本実施例においては、上流側部180と下流側部182との少なくとも一方にエアが有ると検出された場合には、次回のブレーキペダル24の操作時における増圧リニア弁160への供給電流値が大きくされる。
具体的には、上流側部180と下流側部182との少なくとも一方にエアがある場合には、増圧リニア弁160への供給電流値が増加量ΔIだけ大きくされるが、この増加量ΔIが、図14に示すように、上流側部180における推定エア量Qsと下流側部182における推定エア量Qwとの合計(Qs+Qw)が多い場合は少ない場合より大きな値とされる。その結果、ブレーキ操作開始時の入力圧の増加勾配が、エア量が多い場合は少ない場合より大きくされるため、エアに起因するブレーキの効き遅れを抑制することができる。
なお、増圧リニア弁160への供給電流値の増加量ΔIは、上流側部180に存在するエア量Qsに基づいて決まる値とすることもできる。
6,12:ホイールシリンダ 20:ブレーキECU 26:マスタシリンダ 28:背面液圧制御装置 66:背面室 98:レギュレータ 122:入力室 124:サーボ室 126:高圧供給弁 160:増圧リニア弁 162:減圧リニア弁 200:ストロークセンサ 202:車輪速度センサ 204:ホイールシリンダ圧センサ 206:減速度センサ204:パーキングスイッチ 212:ディスプレイ 226:タイマ
特許請求可能な発明
以下、本願において特許請求が可能と認識されている発明、あるいは、発明の特徴点について説明する。
(1)車輪に設けられ、ホイールシリンダの液圧により作動させられ、前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストンと、その加圧ピストンの後方に設けられた背面室と、前記加圧ピストンの前方に設けられ、前記ホイールシリンダに接続された加圧室とを備えたマスタシリンダと、
前記背面室に接続された出力室を有し、その出力室の液圧であるサーボ圧を入力室の液圧に応じた大きさに制御可能なレギュレータを備えた背面液圧制御装置と、
前記入力室の液圧を目標液圧に基づいて制御することにより前記サーボ圧を制御するサーボ圧制御部と
を含む液圧ブレーキシステムにおけるエアの有無を検出するエア有無検出装置であって、
前記目標液圧が設定液圧より大きくなった時点から前記サーボ圧が予め定められた設定サーボ圧に達するまでの時間であるサーボ圧遅れ時間が、上流側判定時間より長い場合に、前記背面液圧制御装置を含む上流側部にエアが有ると検出する上流側検出装置と、
前記目標液圧が設定液圧より大きくなった時点から前記ホイールシリンダの液圧が設定ホイールシリンダ圧に達するまでの時間であるホイールシリンダ圧遅れ時間が、下流側判定時間より長い場合に、前記ホイールシリンダを含む下流側部にエアが有ると検出する下流側検出装置と、
前記サーボ圧遅れ時間に基づいて前記下流側判定時間を決定する下流側判定時間決定部と
を含むことを特徴とするエア有無検出装置。
レギュレータの構造は問わない。例えば、ポペット弁を含むものとしたり、スプールを含むものとしたりすること等ができる。
また、サーボ圧制御部による入力室の液圧制御が、目標液圧が設定液圧より大きくなった場合に開始される場合には、サーボ圧制御部による制御開始時点が、目標液圧が設定液圧より大きくなった時点とほぼ同じ時となる。
さらに、ホイールシリンダの液圧は、車輪の回転減速度や車両の減速度に基づいて推定することができる。これらホイールシリンダの液圧、車輪の回転減速度、車両の減速度は、1対1に対応する物理量であると考えることができる。
なお、サーボ圧遅れ時間、ホイールシリンダ圧遅れ時間が、遅れ量に対応し、上流側判定時間、下流側判定時間が、それぞれ、上流側判定しきい値、下流側判定しきい値に対応する。
(2)前記下流側検出装置が、前記上流側検出装置によるエア有無の検出が終了した後に、前記下流側部のエア有無の検出を開始するものである(1)項に記載のエア有無検出装置。
(3)前記上流側検出装置が、前記サーボ圧遅れ時間に基づいて前記上流側部のエアの量を推定する上流側エア量推定部を含み、
前記下流側検出装置が、前記ホイールシリンダ圧遅れ時間と、前記上流側エア量推定部によって推定された前記上流側部のエアの量とに基づいて、前記下流側部のエアの量を推定する下流側エア量推定部を含む(1)項または(2)項に記載のエア有無検出装置。
サーボ圧遅れ時間、ホイールシリンダ圧遅れ時間が長い場合は短い場合より、相対的にエアの量が多いと推定することができる。また、ホイールシリンダ圧遅れ時間は、上流側部のエアと下流側部のエアとの両方の影響を受ける。そのため、ホイールシリンダ圧遅れ時間と、上流側部のエア量とに基づけば、下流側部のエア量を推定することができる。
(4)当該エア有無検出装置が、前記上流側部、下流側部の各々のエアの有無の検出結果を報知する報知部を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のエア有無検出装置。
報知部は、その他、推定されたエアの量を報知したり、エア抜きが必要である場合にそのことを報知したりするものとすることができる。
(5)当該エア有無検出装置が、前記目標液圧の増加勾配が小さい場合は大きい場合より、前記上流側判定時間と前記下流側判定時間との少なくとも一方を長い時間に設定する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のエア有無検出装置。
(6)前記背面液圧制御装置が、前記入力室と高圧源との間に設けられた常閉の電磁弁を含み、
前記サーボ圧制御部が、前記エア有無検出装置によって、前記上流側部と下流側部との少なくとも一方にエアが有ると検出された場合にエアがないと検出された場合より、前記電磁弁への供給電流値を大きくして、前記高圧源から前記入力室への作動液の流入流量を大きくする流量制御部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のエア有無検出装置。
入力室への高圧源の作動液の流入流量が大きくされることにより、入力圧の増加勾配を大きくすることができる。それによって、エアに起因するサーボ圧の遅れを抑制し、ブレーキの効き遅れを抑制することができる。
なお、電磁弁への供給電流値はエア量が多い場合は少ない場合より大きくすることができる。

Claims (1)

  1. 車輪に設けられ、ホイールシリンダの液圧により作動させられ、前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
    ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストンと、その加圧ピストンの後方に設けられた背面室と、前記加圧ピストンの前方に設けられ、前記ホイールシリンダに接続された加圧室とを備えたマスタシリンダと、
    前記背面室に接続された出力室を有し、その出力室の液圧であるサーボ圧を入力室の液圧に応じた大きさに制御可能なレギュレータを備えた背面液圧制御装置と、
    前記入力室の液圧を目標液圧に基づいて制御することにより、前記サーボ圧を制御するサーボ圧制御部と
    を含む液圧ブレーキシステムにおけるエアの有無を検出するエア有無検出装置であって、
    前記目標液圧が設定液圧より大きくなった時点から前記サーボ圧が予め定められた設定サーボ圧に達するまでの時間であるサーボ圧遅れ時間が、上流側判定時間より長い場合に、前記背面液圧制御装置を含む上流側部にエアが有ると検出する上流側検出装置と、
    前記目標液圧が設定液圧より大きくなった時点から前記ホイールシリンダの液圧が設定ホイールシリンダ圧に達するまでの時間であるホイールシリンダ圧遅れ時間が、下流側判定時間より長い場合に、前記ホイールシリンダを含む下流側部にエアが有ると検出する下流側検出装置と、
    前記サーボ圧遅れ時間に基づいて前記下流側判定時間を決定する下流側判定時間決定部と
    を含むことを特徴とするエア有無検出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020104641A (ja) * 2018-12-27 2020-07-09 株式会社アドヴィックス 車両用制動装置

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