JP2018020917A - 光学ガラス母材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高屈折で失透性が高いガラスであっても、ブツが析出しない柱状の光学ガラス母材の製造方法を提供する。【解決手段】屈折率が1.48以上であり、軟化点が600℃以下の光学ガラス母材3の製造方法であって、ガラス融液1を直接引き上げ成形することにより柱状に成形し、モル%で、P2O5:0.1%以上、SnO+SnF2:1%以上のSn−P系ガラス、モル%で、Bi2O3+TeO2:5%以上、B2O3:1%以上のBi−B系ガラスまたは質量%で、SiO2:10%〜70%以上、B2O3:0〜60%、Al2O3:0〜30%、MgO+CaO+SrO+Ba+ZnO:1〜50%、Na2O+K2O+Li2O:0.1〜30%を含有するSi−B系ガラスからなる光学ガラス母材3。【選択図】図1
Description
本発明は、光学レンズ等の光学素子を得るために使用される光学ガラス母材の製造方法に関する。
スズリン酸塩系ガラスやBi−B系ガラスは、その低屈伏点特性や高屈折、高分散特性を利用して、光学レンズ用ガラス等への適用が検討されている。また、Si−B系ガラスは金属酸化物等を含有することにより、高屈折特性を有する。これらガラスは、一般に、以下のようにして作製される。まず、所望の組成となるように調製した原料を溶融する。次に、溶融ガラスをノズルの先端から流出させ、液滴状に成形したり、溶融ガラスをカーボン型等に鋳込み成形後、所望の形状となるよう切削、研磨加工する。このようなガラス母材を金型でプレス成形し、各種の球面レンズや非球面レンズを作製する製造方法は、例えば、特許文献1で提案されている。ところで、柱状のガラス母材を作製できれば、より大型の光学素子を製造する上で有利である。そこで、柱状のガラス母材を作製する方法として、ガラスを鋳込み成形後、加熱による延伸成形を行う方法(リドロー成形)が提案されている。
高屈折ガラスは、金属酸化物等の高屈折成分を多く含むため、失透性が高い。そのため、高屈折ガラスの場合、リドロー成形でガラス母材を作製すると、ブツが析出しやすい。また、ブツが発生した光学ガラス母材をプレス成形すると、ブツが核形成剤となり白濁する傾向がある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高屈折で失透性が高いガラスであっても、ブツが析出しにくい柱状の光学ガラス母材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、屈折率が1.48以上である光学ガラス母材の製造方法であって、ガラス融液を直接引き上げ成形することにより柱状に成形することを特徴とする。リドロー成形は、昇温過程を通るため、光学ガラス母材にブツが析出しやすい。一方、本発明の方法では、リドロー成形とは異なり、ガラス融液から直接引き上げ成形することで柱状の光学ガラス母材を得るため、昇温過程がない。そのため、高屈折で失透性が高いガラスであっても、核形成が起りにくく、ブツの発生が抑制できる。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材の軟化点が600℃以下であることが好ましい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材が、Sn−P系ガラス、Bi−B系ガラスまたはSi−B系ガラスであることが好ましい。Sn−P系ガラス、Bi−B系ガラス及びSi−B系ガラスは、高屈折、低軟化点を達成しやすいため、本発明における光学ガラス母材として好適である。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材が、モル%で、P2O5 0.1%以上、SnO+SnF2 1%以上を含有することが好ましい。なお、「SnO+SnF2」は、SnOとSnF2の各成分の合量を意味する。両者を含有していてもよく、一方のみを含有していてもよい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材が、モル%で、Bi2O3+TeO2 5%以上、B2O3 1%以上を含有することが好ましい。なお、「Bi2O3+TeO2」は、Bi2O3とTeO2の各成分の合量を意味する。両者を含有していてもよく、一方のみを含有していてもよい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材が、質量%で、SiO2 10%〜70%以上、B2O3 0〜60%、Al2O3 0〜30%、MgO+CaO+SrO+Ba+ZnO 1〜50%、Na2O+K2O+Li2O 0.1〜30%を含有することが好ましい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材に含まれる、鉛、及び、ヒ素の各含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材の軟化点と結晶化温度の差が25℃以上であることが好ましい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、ガラス融液の引き上げ開始からガラスの表面温度が100℃まで冷却されるのに要する時間が10分以下であることが好ましい。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、光学ガラス母材がプレス成形用であることが好ましい。
本発明の光学素子の製造方法は、光学ガラス母材をプレス成形することが好ましい。
本発明の光学ガラス母材は、平均表面粗さが1μm以下の柱状ガラスであることが好ましい。
本発明によれば、高屈折で失透性が高いガラスであっても、ブツが析出しない柱状の光学ガラス母材を製造することができる。
本発明の光学ガラスの製造方法について説明する。まず、所望の組成を有するように調合したガラス原料を溶融し、ガラス融液とする。次に、ガラス融液を直接引き上げ成形に適した粘度になるよう冷却する。具体的には、ガラス融液が10〜107.5dPa・sの粘度になるように冷却することが好ましい。例えば、後述のSn−P系ガラス、Bi−B系ガラス、及び、Si−B系ガラスの場合、270〜600℃まで冷却することが好ましい。さらに、図1に示す通り、ガラス融液1をローラー2にて直接引き上げて柱状に成形し、冷却後、ガラスを切断することにより、光学ガラス母材3を得る。
こうして得られる光学ガラス母材3の屈折率は、1.48以上であり、1.50以上、1.55以上、1.60以上、1.65以上、1.75以上、特に1.80以上が好ましい。また、光学ガラス母材3は、ガラス融液から直接引き上げ成形されることにより、昇温過程を通らず急冷されるため、核形成が起りにくく、ブツが発生しにくい。ここで、ガラス融液1の引き上げ開始から100℃まで冷却する時間は、10分以下が好ましく、8分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。このようにすれば、さらに核形成が起りにくく、ブツが発生しにくくなる。その後、光学ガラス母材3を例えば、プレス温度150〜600℃でプレス成形し、光学ガラスを得る。ここで、必要であれば、プレス成形する前に光学ガラス母材に切断、研磨等を施し、所望の形状、大きさに加工してもよい。
次に、本発明の方法で作製する光学ガラス母材の特徴について説明する。本発明では、ガラス融液から直接引き上げ成形するため、低粘度で成形することができ、光学ガラス母材の表面粗さを小さくすることができる。具体的には、光学ガラス母材の平均表面粗さが1μm以下、0.9μm以下、特に0.8μm以下であることが好ましい。
また、結晶核やブツの形成が抑制されるため、柱状ガラス母材の軟化点と結晶化温度の差が大きくなりやすい。軟化点と結晶化温度の差が大きいと、プレス成形時において、結晶成長に起因する白濁を抑制することができる。具体的には、柱状ガラス母材の軟化点と結晶化温度の差は、25℃以上、35℃以上、特に45℃以上であることが好ましい。
光学ガラス母材は、軟化点が600℃以下、550℃以下、500℃以下、450℃以下、400℃以下、特に350℃以下であることが好ましい。軟化点が低いと、プレス温度の低下が可能になるため、ガラス成分の蒸発が抑制され、プレス金型の劣化が抑制される。
光学ガラス母材としては、低軟化点を達成しやすいSn−P系ガラス、Bi−B系ガラスまたはSi−B系ガラスであることが好ましい。特に、Sn−P系ガラス、Bi−B系ガラスは、高屈折率の光学特性を有する。具体的には、1.70以上、1.80以上、特に1.85以上の高屈折率を達成しやすい。
Sn−P系ガラスとしては、モル%で、P2O5 0.1%以上、SnO+SnF2 1%以上を含有するものが好ましい。以下に、各成分の含有量を上記のように特定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の成分含有量に関する説明において、「%」は「モル%」を意味する。
P2O5はガラス骨格の構成成分である。また、光透過率を高める効果を有し、特に紫外域付近の光透過率低下を抑制する効果が高い。特に、高屈折率のガラスの場合は、P2O5による光透過率向上の効果が得られやすい。また、失透を抑制する効果も有する。P2O5の含有量は、0.1%以上、1%以上、5%以上、10%、特に20%以上であることが好ましい。P2O5の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。また、耐失透性が低下する傾向がある。一方、P2O5の含有量の上限は特に限定しないが、P2O5の含有量が多すぎると、SnO+SnF2の含有量が相対的に少なくなって、屈折率が低下しやすくなったり、化学耐久性が低下しやすくなる。よって、P2O5の含有量は、50%以下、特に、40%以下であることが好ましい。
SnO及びSnF2は高屈折率かつ高分散の光学特性を達成し、化学耐久性を向上させるための成分であり、部分分散比を低下させる効果もある。SnO+SnF2の含有量は1%以上、10%以上、25%以上、40%以上、特に55%以上であることが好ましい。SnO+SnF2の含有量が少なすぎると、高屈折率特性を達成しにくくなり、また、耐侯性や化学耐久性が低下する傾向がある。一方、SnO+SnF2の含有量の上限は特に限定しないが、SnO+SnF2の含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなり、耐失透性が低下する傾向がある。よって、SnO+SnF2の含有量は、90%以下、特に85%以下であることが好ましい。なお、SnO、SnF2の各成分の含有量も上記範囲内であることが好ましい。
上記成分以外にも、B2O3 0〜40%、SiO2 0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 0〜40%、Al2O3 0〜10%、ZrO2 0〜10%を含有させることができる。
Bi−B系ガラスとしては、モル%で、Bi2O3+TeO2 5.0%以上、B2O3 1%以上を含有するものが好ましい。以下に、各成分の含有量を上記のように特定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の成分含有量に関する説明において、「%」は「モル%」を意味する。
Bi2O3及びTeO2は高屈折率かつ高分散の光学特性を達成し、化学耐久性を向上させるための成分であり、部分分散比を低下させる効果もある。Bi2O3+TeO2の含有量は5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、特に25%以上であることが好ましい。Bi2O3+TeO2の含有量が少なすぎると、高屈折率特性を達成しにくくなり、また、耐侯性や化学耐久性が低下する傾向がある。一方、Bi2O3+TeO2の含有量の上限は特に限定しないが、Bi2O3+TeO2の含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなったり、耐失透性が低下する傾向がある。よって、Bi2O3+TeO2の含有量は、60%以下、特に50%以下であることが好ましい。なお、Bi2O3、TeO2の各成分の含有量も上記範囲内であることが好ましい。
B2O3はガラス骨格の構成成分である。また、光透過率を高める効果を有し、特に紫外域付近の光透過率低下を抑制する効果が高い。特に、高屈折率のガラスの場合は、B2O3による光透過率向上の効果が得られやすい。また、失透を抑制する効果も有する。B2O3の含有量は、1%以上、10%以上、25%以上、40%、特に60%以上であることが好ましい。B2O3の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。また、耐失透性が低下する傾向がある。一方、B2O3の含有量の上限は特に限定しないが、B2O3の含有量が多すぎると、Bi2O3+TeO2の含有量が相対的に少なくなって、屈折率が低下しやすくなったり、化学耐久性が低下しやすくなる。よって、B2O3の含有量は、90%以下、特に80%以下であることが好ましい。
上記成分以外にも、SiO2 0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 0〜40%、Al2O3 0〜10%、ZrO2 0〜10%を含有させることができる。
Si−B系ガラスとしては、質量%で、SiO2 10〜70%、B2O3 0〜60%、Al2O3 0〜30%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 0〜50%、Na2O+K2O+Li2O 0.1〜30%を含有するものが好ましい。以下に、各成分の含有量を上記のように特定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の成分含有量に関する説明において、「%」は「質量%」を意味する。
SiO2は、ガラスの骨格を構成する成分であり、耐候性を向上させる成分である。SiO2の含有量は10〜70%が好ましく、20〜62%がより好ましく、30〜60%がさらに好ましく、40〜60%が特に好ましい。一方、SiO2の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。SiO2の含有量が多すぎると、高温粘性が高くなる。また、屈折率が低く、軟化点が高くなる傾向にある。
B2O3は、ガラスの高温粘性を下げる効果が顕著であり、高温粘度の低いガラスを得ることを容易にする。B2O3の含有量は0〜60%が好ましく、5〜40%がより好ましく、10〜30%がさらに好ましく、15〜25%が特に好ましい。一方、B2O3の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。B2O3の含有量が多すぎると耐水性、耐酸性が低下する傾向にある。
Al2O3は、SiO2と共にガラスの骨格を構成する成分であり、耐候性を向上させる効果がある。Al2O3の含有量は0〜30%が好ましく、5〜25%がより好ましく、10〜20%が特に好ましい。Al2O3の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、Al2O3の含有量が多すぎると、ガラスの高温粘性が高くなる。また屈折率が低くなる傾向や、軟化点が高くなる傾向がある。
Li2O、Na2O及びK2Oは、溶融温度や軟化点を低下させ、作業性を高める効果を有する。これらの合量は、0.1〜30%が好ましく、1〜18%がより好ましく、8〜18%が特に好ましい。これらの合量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、これらの合量が多すぎると、耐候性が悪化する傾向にある。
Na2Oはガラスの高温粘性を低下させて清澄性を向上させる成分である。また溶融温度や軟化点を低下させ、作業性を高める効果を有する。Na2Oの含有量は、0〜12%が好ましく、0.1〜10%が特に好ましい。Na2Oの含有量が多すぎると、ガラス溶融時のB2O3‐Na2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長する傾向にある。
Li2Oは、ガラスの高温粘性を下げて清澄性を上げる成分である。また軟化点を低下させ、作業性を高める効果がある。Li2Oの含有量は0〜12%が好ましく、0.1〜10%が特に好ましい。Li2Oの含有量が多すぎると、液相温度が高くなり、作業性が悪くなる。
K2Oは、Li2OやNa2Oと同様にガラスの高温粘性を下げて清澄性を上げる成分であり、また溶融温度や軟化点を低下させ、作業性を高める効果を有する。K2Oの含有量は12%以下、特に10%以下であることが好ましい。K2Oの含有量が多すぎるとガラス溶融時のB2O3‐K2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長する傾向にある。
MgO、SrO、BaO、CaO及びZnOは、ガラスの高温粘性を下げるのに効果的である。また、耐候性を高める成分でもある。これらの合量は、0〜50%、5〜45%、10〜40%、特に15〜35%が好ましい。これらの合量が多すぎると、成形時に失透を生じやすくなる。
CaOは、アルカリ金属酸化物に次いで軟化点を下げる効果が大きいため、アルカリ金属成分と置換することで耐候性や耐酸性を高めることのできる成分である。また、屈折率を高める効果を有する。CaOの含有量は0〜40%が好ましく、特に1〜30%が好ましい。CaOの含有量が多すぎると、耐候性が悪化する傾向にある。
BaOは、耐候性を高め、屈折率を高める成分であるとともに、ガラスの液相温度を低下させて、作業性を向上させる成分である。BaOの含有量は、0〜40%が好ましく、特に1〜30%が好ましい。BaOの含有量が多すぎると、耐候性が悪化する傾向にある。
SrOは、BaOと同様に耐候性を高め、屈折率を高める成分であるとともに、ガラスの液相温度を低下させて、作業性を向上させる成分である。SrOの含有量は、0〜40%が好ましく、特に1〜30%が好ましい。SrOの含有量が多すぎると、耐候性が悪化する傾向にある。
MgOは、耐候性を高めるとともに、屈折率を高めるために30%まで添加することができる。MgOの含有量は30%以下、20%以下、特に10%以下が好ましい。MgOの含有量が多すぎると、分相する傾向が強く、また液相温度を高める傾向がある。
ZnOは、屈折率を高めるとともに、耐候性を向上させるため添加する成分であり、30%まで含有することができる。ただし、ZnOの含有量が多すぎると、失透傾向が強くなり、均質なガラスが得られにくくなるため、その含有量は20%以下であることが好ましい。
ZrO2は、屈折率を高めるとともに、耐候性を向上させるために添加する成分である。ただし、ZrO2の含有量が多すぎると、失透傾向が強くなり、均質なガラスが得られなくなるため、その含有量は3%以下であることが好ましく、特に0.1%未満であることが好ましい。
La2O3は、屈折率を高める効果がある。ただし、La2O3の含有量が多すぎると、失透する傾向にあるため、その含有量は2.5%以下が好ましく、1%未満が特に好ましい。
Bi2O3は、屈折率を高めるために添加することができる。ただし、Bi2O3の含有量が多すぎると、ガラスが着色する傾向があるため、その含有量は、5%以下が好ましく、特に0.1%未満が特に好ましい。
P2O5は、液相温度を低下させるために添加する成分である。ただし、P2O5の含有量が多すぎると、ガラスが分相しやすくなる傾向にあるため、その含有量は5%以下が好ましく、0.1%未満が特に好ましい。
TiO2、Nb2O5及びTa2O5は、屈折率を高めるために有効な成分であるが、一方で失透傾向が強くなる傾向があるため、TiO2、Nb2O5及びTa2O5の含有量は、それぞれ15%以下が好ましく、11%以下であることが特に好ましい。
Fe2O3、NiO及びCoOは光透過率を低下させる成分である。よって、これら成分の含有量はそれぞれ0.1%未満であることが好ましい。Ce、Pr、Nd、Eu、Tb及びEr等の希土類成分も光透過率を低下させるおそれがあるため、これらの成分の含有量は酸化物換算でそれぞれ0.1%未満であることが好ましい。In及びGaは光透過率を低下させるおそれがあり、また高価であるため、酸化物換算でそれぞれ0.1%未満であることが好ましい。
なお、環境上の理由から、鉛成分、及び、ヒ素成分はそれぞれ0.01質量%以下であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1及び2は、本発明の実施例(No.1〜5、9〜11)及び比較例(No.6〜8、12〜13)を示している。
表1に記載の各ガラスは、次の方法で作製した。まず表中の組成となるように原料を調合した。この調合原料を石英坩堝を用い、950℃で10分保持することによりガラス融液を得た後、450℃まで冷却した。その後、試料No.1〜5については、ガラス融液を直接引き上げ成形し、冷却後切断することで2mmφ×10mmの柱状の光学ガラス母材を得た。また、試料No.6〜8については、ガラス融液を円柱状にインゴット成形し、得られたインゴットを軟化点−20℃でリドロー成形し、冷却後切断することで2mmφ×10mmの柱状の光学ガラス母材を得た。次に、得られた光学ガラス母材を軟化点にてプレス成形し光学ガラス素子を得た。その後、得られた光学ガラス母材について、軟化点、結晶化温度、及び、ブツの有無を評価した。また、得られた光学素子について、屈折率、及び、外観の変化を評価した。結果を表1に示す。
表2に記載の各ガラスは、次の方法で作製した。まず表中の組成となるように原料を調合した。この調合原料を石英坩堝を用い、1250℃で1時間保持することによりガラス融液を得た後、550℃まで冷却した。その後、試料No.9〜11については、ガラス融液を直接引き上げ成形し、冷却後切断することで2mmφ×10mmの柱状の光学ガラス母材を得た。また、試料No.12〜13については、ガラス融液を円柱状にインゴット成形し、得られたインゴットを軟化点−20℃でリドロー成形し、冷却後切断することで2mmφ×10mmの柱状の光学ガラス母材を得た。次に、得られた光学ガラス母材を軟化点にてプレス成形し光学ガラス素子を得た。その後、得られた光学ガラス母材について、軟化点、結晶化温度、及び、ブツの有無を評価した。また、得られた光学素子について、屈折率、及び、外観の変化を評価した。結果を表2に示す。
表1、2から明らかなように、実施例であるNo.1〜5、9〜11の試料は光学ガラス母材にブツがなく、光学ガラス母材をプレス成形することにより得られた光学ガラスも白濁することはなかった。一方、比較例であるNo.6〜8、12〜13は、光学ガラス母材にブツが析出しており、光学ガラスも白濁していた。
なお、屈折率はヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で示した。軟化点、結晶化温度はマクロ型示差熱分析計を用いて1000℃まで測定して得られたチャートにおいて第四の変曲点の値を軟化点、強い発熱ピークを結晶化温度とした。
ブツの有無は、試料を目視で評価し、ブツの存在が認められなかったものを「〇」、認められたものを「×」とした。
外観は、試料を目視で評価し、プレス前後にて変化のないものを「○」、プレス後、白濁しているものを「×」とした。
本発明の光学ガラス母材の製造方法は、封着ロッド材料の製造にも好適である。
1 ガラス融液
2 ローラー
3 光学ガラス母材
2 ローラー
3 光学ガラス母材
Claims (12)
- 屈折率が1.48以上である光学ガラス母材の製造方法であって、ガラス融液を直接引き上げ成形することにより柱状に成形することを特徴とする光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材の軟化点が600℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材が、Sn−P系ガラス、Bi−B系ガラスまたはSi−B系ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材が、モル%で、P2O5 0.1%以上、SnO+SnF2 1%以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材が、モル%で、Bi2O3+TeO2 5%以上、B2O3 1%以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材が、質量%で、SiO2 10%〜70%以上、B2O3 0〜60%、Al2O3 0〜30%、MgO+CaO+SrO+Ba+ZnO 1〜50%、Na2O+K2O+Li2O 0.1〜30%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材に含まれる、鉛、及び、ヒ素の各含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材の軟化点と結晶化温度の差が25℃以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- ガラス融液の引き上げ開始からガラスの表面温度が100℃まで冷却されるのに要する時間が10分以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 光学ガラス母材がプレス成形用であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学ガラス母材の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の方法により製造された光学ガラス母材をプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
- 平均表面粗さが1μm以下の柱状ガラスからなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光学ガラス母材。
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