JP6146691B2 - 光学ガラス - Google Patents

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本発明は、特にデジタルカメラやビデオカメラの光学レンズや光通信用レンズとして好適な光学ガラスに関する。
近年、デジタルカメラやビデオカメラの高性能化、具体的には、小型化、高倍率化、高精細化等がますます進んでいる。このような高性能化を達成するため、デジタルカメラやビデオカメラに使用される光学レンズ用ガラスには、高屈折率、高分散および異常分散等の特性が要求されることが多くなっている。
上記特性を満たすガラスとして、例えば、屈折率(nd)が1.75以上、アッベ数(νd)が30以下のSiO−Nb系ガラスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このガラスは、高屈折率、高耐侯性等の特性を利用して光通信用レンズに使用することができる。
ところで、デジタルカメラやビデオカメラ等に使用される光学レンズの作製方法として、一旦、溶融ガラスをインゴットに成形し、これから適当な大きさに切り出した硝材を研磨した後、モールドプレスする方法や、溶融ガラスをノズル先端から滴下して液滴状にする、いわゆる液滴成形により成形した硝材を研磨した後、あるいは研磨せずにモールドプレスする方法が知られている。
特開2009−179538号公報
従来のSiO−Nb系ガラスは所望の光学特性を有するものの、失透性が強く量産性に乏しいという問題があった。
以上の課題に鑑み、本発明は、所望の光学特性を有し、かつ、耐失透性が良好であり量産性に優れた光学ガラスを提供することを目的とする。
本発明は、ガラス組成として質量%で、SiO 0.1〜45%、Ta 2〜75%、Nb 0〜30%(ただし30%は含まない)、TiO 0〜30%、P 0〜10%およびLiO+NaO+KO 0.1〜40%を含有し、かつ、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラスに関する。
本発明者らの調査の結果、SiO−Nb系ガラスにおいて失透が発生する主な原因は、屈折率および分散を高めるための成分であるNbが多量に含有されていることにあることを突き止めた。そこで、Nbの含有量を極力少なくするとともに、同じく屈折率および分散を高める成分であるTaを必須成分として含むTa−RO(RはLi、NaまたはK)系ガラスであれば、高い屈折率および分散を達成しつつ、失透を抑制できることを見出した。また、耐候性も良好となり、製造工程や製品使用中において、物性の低下やガラス表面の変質等が生じにくくなる。また、Taを必須成分として含有することにより、異常分散性に優れた(すなわち、部分分散比(θg、F)の低い)ガラスを得ることが可能となる。
第二に、本発明の光学ガラスは、ガラス組成として質量%で、MgO+SrO+BaO+ZnO+ZrO 0〜10%を含有することが好ましい。
第三に、本発明の光学ガラスは、ガラス組成として質量%で、La+Gd+Bi+Y+Yb+TeO+GeO 0〜10%を含有することが好ましい。
第四に、本発明の光学ガラスは、質量比で、Nb/Taが15以下であることが好ましい。
第五に、本発明の光学ガラスは、屈折率が1.7〜1.95、アッベ数が15〜35であることが好ましい。
第六に、本発明の光学ガラスは、部分分散比が0.62以下であることが好ましい。
第七に、本発明の光学ガラスは、モールドプレス成形用であることが好ましい。
本発明によれば、所望の光学特性を有し、かつ、耐失透性が良好であり量産性に優れた光学ガラスを提供することが可能となる。
以下に、本発明の光学ガラスにおける各成分の含有量を上記のように限定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の説明において「%」は「質量%」を意味する。
SiOはガラス骨格を形成する成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特にガラス中のアルカリ金属酸化物等の成分が水へ選択的に溶出することを抑制する効果が高い。さらに、液相温度を低下させ、失透を抑制できる成分である。SiOの含有量は0.1〜45%、0.1〜40%、2.5〜37.5%、特に5〜35%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。SiOの含有量が多すぎると、溶融性が低下して未溶解による脈理や気泡がガラス中に残存しやすくなり、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなる可能性がある。
Taは高屈折化および高分散化を達成するための成分であり、また、部分分散比を低下させる効果の高い成分である。さらに、高屈折化を達成できる成分の中で、比較的液相温度を上昇させにくい(失透が発生しにくい)成分である。Taの含有量は2〜75%、1〜70%、2.5〜72.5%、特に3〜70%であることが好ましい。Taの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、Taの含有量が多すぎると、液相温度が上昇してTaを主成分とした結晶が析出しやすくなり、ガラス化が困難になる傾向がある。
Nbは高屈折化および高分散化を達成するための成分であり、また、部分分散比を低下させる効果も有する。ただし、その含有量が多すぎると、液相温度が上昇してNbを主成分とした結晶が析出しやすくなり、ガラス化が困難になる傾向がある。したがって、Nbの含有量は0〜30%(ただし30%は含まない)、0.1〜29%、0.5〜28%、特に1〜27.5%であることが好ましい。
TiOは高屈折化および高分散化を達成するための成分であり、また、部分分散比を低下させる効果も有する。また、紫外光によるガラスの着色を抑制できる。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下してガラス化が困難になる傾向がある。また、可視域透過率が低下しやすくなる。したがって、TiOの含有量は0〜30%、0.1〜29%、0.5〜28%、特に1〜27.5%であることが好ましい。
なお、本発明の光学ガラスにおいて、低い部分分散比(例えば0.62以下)を達成するため、NbとTa、TiOとTa、さらにSiOとTaのそれぞれの含有量の比を適宜調整することが好ましい。具体的には、質量比で、Nb/Taが15以下、12以下、特に10以下であることが好ましい。また、質量比で、TiO/Taが300以下、150以下、特に17.5以下であることが好ましい。さらに、質量比で、SiO/Taが20以下、17.5以下、特に15以下であることが好ましい。Nb/Ta、TiO/TaおよびSiO/Taのいずれかが上記範囲より大きすぎると、低い部分分散比を得られにくくなる。
本発明の光学ガラスにおいて、低い部分分散比(例えば0.62以下)と良好な耐失透性を達成するため、TiOとTaの合量を適宜調整することが好ましい。具体的には、TiO+Taは好ましくは18以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。
はガラス骨格を形成する成分であり、失透を抑制するとともに耐候性を向上させる効果がある。またアッベ数を高める効果がある。ただし、Pの含有量が多すぎると、かえって耐候性が低下する傾向がある。また、屈折率が低下したり、軟化点が上昇して低温でのモールドプレス成形が困難になる傾向がある。さらに、部分分散比が不当に上昇する傾向がある。したがって、Pの含有量は0〜10%、特に0〜5%であることが好ましい。
LiO、NaOおよびKOは部分分散比を低下させる成分である。また、軟化点を低下させたり、ガラス化を容易にする効果がある。LiO+NaO+KOの含有量は0.1〜40%、0.5〜37.5%、1〜35%、1.5〜32.5%、特に2〜30%であることが好ましい。LiO+NaO+KOの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が多すぎると、化学的耐久性が低下しやすくなる。また、高屈折かつ高分散なガラスが得られにくくなる。
なお、LiO、NaOおよびKOの各成分の含有量の好ましい範囲は、0〜40%、0.1〜37.5%、0.5〜35%、1〜32.5%、特に1.5〜30%である。
本発明の光学ガラスにおいて、低い部分分散比(例えば0.62以下)と良好な耐失透性を達成するため、LiOとNbの合量を適宜調整することが好ましい。具体的には、LiO+Nbは好ましくは45以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。
本発明の光学ガラスにおいて、低い部分分散比(例えば0.62以下)と良好な耐失透性を達成するため、TiOとTaの合量と、LiOとNbの合量の比を適宜調整することが好ましい。具体的には、(TiO+Ta)/(LiO+Nb)は好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは5以上である。
本発明の光学ガラスには、上記成分以外にも、下記の成分を含有させることが可能である。
MgO、SrO、BaO、ZnOおよびZrOは、アッベ数をほとんど低下させずに屈折率を高めることができる成分である。また、中間酸化物としてガラス骨格を形成するため、耐失透性を改善したり、化学的耐久性を向上させたりする効果もある。ただし、これらの成分は部分分散比を上昇させるため、その含有量が多すぎると所望の光学特性が得られにくくなる。したがって、MgO+SrO+BaO+ZnO+ZrOの含有量は0〜10%、0〜8%、0.1〜7、5%、特に0.5〜6.5%であることが好ましい。
本発明の光学ガラスにおいて、低い部分分散比(例えば0.62以下)を達成するため、MgO、SrO、BaO、ZnOおよびZrOの合量とTaの含有量の比を適宜調整することが好ましい。具体的には、(MgO+SrO+BaO+ZnO+ZrO)/Taは好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下である。当該比率が大きすぎると、低い部分分散比が得られにくくなる。
La、Gd、Bi、Y、Yb、TeOおよびGeOは屈折率を高める成分である。ただし、これらの成分は部分分散比を上昇させるため、その含有量が多すぎると所望の光学特性が得られにくくなる。したがって、La+Gd+Bi+Y+Yb+TeO+GeOの含有量は0〜10%、0〜9%、0.1〜8%、特に0.5〜5%であることが好ましい。
WOは高屈折化および高分散化を達成するための成分であり、また、部分分散比を低下させる効果も有する。また、紫外光によるガラスの着色を抑制できる。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下してガラス化が困難になったり、紫外域透過率が低下する傾向がある。また、プレス金型との親和性が増大して、モールドプレス成形時にガラスが金型と融着しやすくなる傾向がある。したがって、WOの含有量は0〜30%、0.1〜29%、0.5〜28%、特に1〜27.5%であることが好ましい。
はSiOとともにガラス骨格を形成することが可能な成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特にガラス中の成分が水へ選択的に溶出することを抑制する効果が高い。Bの含有量は0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、部分分散比が上昇する傾向がある。また、高屈折率かつ高分散な光学特性が得られにくくなる。
AlもSiOとともにガラス骨格を形成することが可能な成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特にガラス中の成分が水へ選択的に溶出することを抑制する効果が高い。Alの含有量は0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましい。Alの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。また、溶融性が低下して脈理や気泡がガラス中に残存し、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなる可能性がある。
清澄剤として、例えばSb、SnO、CeO、NOまたはSOを含有させることができる。Sbは微量であれば可視域透過率を向上させる効果も有する。ただし、上記清澄剤の含有量が多すぎると、望まない着色が発生するおそれがあるため、これらの成分の含有量はそれぞれ1%以下とすることが好ましい。
鉛成分(例えばPbO)、ヒ素成分(例えばAs)およびフッ素成分(例えばF)は環境への負荷が大きく、また、ガラスへの着色が懸念されるため、実質的に含有しない(具体的には各々0.1%未満)ことが好ましい。
本発明の光学ガラスをレンズとして使用する場合、屈折率を高めるほど薄型化が可能となり、光学デバイスを小型化する上で有利となる。よって、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は1.7以上、1.75以上、1.775以上、1.785以上、特に1.8以上であることが好ましい。一方、ガラスの屈折率を向上させるためには、Nb等のガラスを不安定にさせる成分を多く含有させる必要があるため、ガラスの安定性を考慮して屈折率の上限を規定する必要がある。具体的には、本発明の光学ガラスの屈折率は1.95以下、特に1.9以下であることが好ましい。
本発明の光学ガラスのアッベ数は、高分散特性を達成するため、35以下、30以下、26以下、特に24以下であることが好ましい。なお、アッベ数が低いほど、光学設計上、他のレンズとの組み合わせにおける色収差の低減に有利となるが、一方で、屈折率が低下したり、ガラスが不安定になる傾向がある。そのため、本発明の光学ガラスのアッベ数は20以上、21以上、特に22以上であることが好ましい。
光学デバイスにおいて色収差の補正をおこなうため、低分散ガラスと高分散ガラスを組み合わせて使用するのが一般的である。ここで、高分散ガラスとして部分分散比の小さいガラスを使用することにより、色収差の補正がより効果的に行なえることがわかっている。そこで、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は0.62以下、特に0.615以下であることが好ましい。
なお、既述の特性以外に、本発明の光学ガラスは低ガラス転移点を満たすことが好ましい。それにより、モールドプレス成形時の金型との融着を抑制でき、量産性を向上させることができる。また、ガラス転移点が低いほど、モールドプレス成形時にガラス成分が揮発しにくくなり、成形精度の低下や金型の劣化または汚染といった問題が生じにくくなる。具体的には、本発明の光学ガラスのガラス転移点は700℃以下、特に650℃以下であることが好ましい。
次に本発明の光学ガラスを用いた、デジタルカメラやビデオカメラ等に使用される光学レンズを作製する方法を説明する。
まず所望の組成となるように調合したガラス原料を溶融する。次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して液滴状に成形(液滴成形)して硝材を得る。得られた硝材を研磨した後、あるいは研磨することなくモールドプレス成形し、所定形状の光学レンズを得る。なお、液滴成形を行う代わりに、溶融ガラスをインゴット状に成形し、適当な大きさに切り出した硝材を研磨した後、モールドプレス成形する方法を採用することもできる。
本発明の光学ガラスから作製された光学レンズは、金属部品とアセンブリされたレンズキャップとして使用することもできる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
表1〜5は本発明の実施例(試料No.1〜40、46〜55)および比較例(試料No.41〜45)を示している。
各試料は次のようにして調製した。まず表に示す各組成になるようにガラス原料を調合し、白金ルツボを用いて1500℃で2時間溶融した。得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、アニール後、各測定に適した試料を作製した。
得られた試料について、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、部分分散比(θg,F)を測定した。結果を表1〜6に示す。
屈折率はヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で示した。
アッベ数は、ヘリウムランプのd線の屈折率と、水素ランプのF線(486.1nm)およびC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)={(nd−1)/(nF−nC)}の式から算出した。
部分分散比は、水素ランプのF線、C線およびg線(435.8nm)の屈折率の値を用い、部分分散比(θg,F)={(ng−nF)/(nF−nC)}の式から算出した。
表1〜6から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜40、46〜55の各試料は失透せずにガラス化し、かつ、屈折率が1.7560〜1.9182、アッベ数が24.0〜29.6、部分分散比が0.5948〜0.6199であり、所望の光学特性を有していた。
一方、比較例であるNo.41および45の試料はガラス化しなかった。また、No.42〜44の試料は部分分散比が0.6255以上と高かった。
本発明の光学ガラスは、モールドプレス成形用硝材や研磨加工用硝材として、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、その他一般のカメラの撮影用レンズや光通信用レンズ等に好適である。

Claims (6)

  1. ガラス組成として質量%で、SiO 0.1〜45%、Ta 5.9〜75%、Nb 0〜19.8%、TiO 0〜30%、P 0〜10%、LO+NaO+KO 0.1〜22.5、MgO+SrO+BaO+ZnO+ZrO 0〜10%及びLa +Gd +Bi +Y +Yb +TeO +GeO 0〜10%を含有し、かつ、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラス。
  2. ガラス組成として質量%で、Ta 10〜75%を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
  3. 質量比で、Nb/Taが15以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラス。
  4. 屈折率が1.7〜1.95、アッベ数が15〜35であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  5. 部分分散比が0.62以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  6. モールドプレス成形用であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学ガラス。
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