JP2018018747A - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、負極電極材料の密度を増大させると、負極板内の電解液量が減少し、却って高率放電容量を制限してしまうおそれがあった。また、負極電極材料の密度を増大させると原価面で不利であった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる鉛蓄電池を提供することを目的とする。
そして、この新規な鉛蓄電池は、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できるという事実を見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
正極板と、
負極板と、
電解液と、を備えた鉛蓄電池であって、
前記負極板は、負極電極材料を備え、
単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率にて45%以上であり、
前記負極電極材料は、有機防縮剤を含有し、
前記負極電極材料は、硫酸バリウムを含有し、
前記有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000μmol/gより大きい鉛蓄電池である。
本発明の一態様の鉛蓄電池は、正極板と負極板と電解液とを備える。負極板は、負極電極材料を備える。単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率で45%以上である。負極電極材料は、有機防縮剤を含有する。負極電極材料は、硫酸バリウムも含有する。有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000mol/gより大きい。
なお、電極材料は、反応物質だけでなく、それ以外の添加剤も全て含めたものである。そして、負極板は、負極電極材料と集電体および場合により電極表面被覆材とからなる。よって、負極電極材料は、負極板から集電体および電極表面被覆材を除いた残り全てを意味する。
正極板の種類は特に限定されない。正極板として、例えば、クラッド式極板、ペースト式極板を用いることができる。クラッド式極板としては、例えば、ガラス繊維をチューブ状に編み上げ、その中に正極活物質である鉛粉を含む正極電極材料を充填した極板が用いられる。ペースト式極板は、例えば、エキスパンド、鋳造、パンチング等の集電体(格子体)に、正極活物質を含む正極電極材料のペーストを充填後、熟成乾燥して得られる。正極電極材料のペーストは、鉛粉等を水と希硫酸で練合して得ることができる。正極電極材料のペーストには、正極活物質の他に種々の添加物を添加してもよい。
3.1 極板の種類
負極板の種類は特に限定されない。負極板として、例えば、ペースト式極板を用いることができる。ペースト式極板としては、例えば、純鉛や鉛合金を鋳造して作製した鋳造、純鉛や鉛合金シートを加工して作製するエキスパンドやパンチング等の集電体(格子体)にペースト状にした負極電極材料を塗り込んだ極板が用いられる。
ペースト式極板は、例えば、集電体に負極電極材料のペーストを充填後、熟成乾燥して得られる。負極電極材料のペーストは、活物質の原料たる鉛粉等を水と希硫酸で練合して得ることができる。負極電極材料のペーストには、負極活物質の他に種々の添加物を添加してもよい。
本発明の一態様の鉛蓄電池では、負極電極材料の密度は特に限定されない。負極電極材料の密度は、好ましくは3.1g/cm3以上4.2g/cm3以下である。
本発明の一態様の鉛蓄電池では、密度を下げ、充放電を繰り返しても(例えば600サイクル目でも)、高率放電容量を確保することができる。
なお、負極電極材料の密度は化成後の満充電状態の負極電極材料のかさ密度の値を意味し、以下のようにして測定する。化成後の電池を満充電してから解体し、入手した負極板を、水洗と乾燥とを施すことにより負極板中の電解液を除く。次いで負極板から負極電極材料を分離して、未粉砕の測定試料を入手する。測定容器に試料を投入し、真空排気した後、0.5〜0.55psiaの圧力で水銀を満たして、負極電極材料のかさ容積を測定し、測定試料の質量をかさ容積で除すことにより、負極電極材料のかさ密度を求める。尚、測定容器の容積から、水銀の注入容積を差し引いた容積をかさ容積とする。
3.3.1 有機防縮剤の含有量
本実施形態の鉛蓄電池では、負極電極材料には、有機防縮剤が含有される。有機防縮剤の含有量は特に限定されない。有機防縮剤の含有量は、既化成で、満充電状態の負極電極材料100mass%に対して、好ましくは0.05mass%以上0.35mass%以下であり、より好ましくは0.1mass%以上0.25mass%以下である。有機防縮剤がこの範囲であると、高率放電容量が増加する傾向にある。
本実施形態における有機防縮剤の種類は、特に限定されない。有機防縮剤は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
有機防縮剤は、天然物由来の防縮剤と、合成防縮剤に分類される。
天然物由来の防縮剤としては、例えば、スルホン化リグニン等が挙げられる。
なお、リグニンのアルキル側鎖にスルホン酸基を導入する場合、このアルキル側鎖にスルホン酸基1個以上を導入することは難しい。このため、リグニンのアルキル側鎖に、スルホン酸基、スルホニル基を導入せずに、間接的に導入したリグニンを用いることもできる。すなわち、リグニンのフェニル基にスルホン酸基及び/又はスルホニル基を導入することができる。このようにリグニンにスルホン酸基及び/又はスルホニル基を導入すると、硫黄元素(S元素)の含有量を高めることができる。
ポリアクリルアミド・ターシャリーブチル・スルホン酸Naの重合物では、基本骨格とスルホン酸基量との比は、特に限定されないが、基本骨格とスルホン酸基量との比が1:1以上であることが好ましい。
フェノール性水酸基を複数有する化合物として、ビスフェノール類が好適に用いられる。ビスフェノール類とは、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
なお、スルホン酸基はフェノール性水酸基を複数有する化合物の芳香環(例えば、ビスフェノール類のフェニル基)に直接結合している必要はない。例えば芳香環にアルキル鎖が結合し、このアルキル鎖にスルホン酸基が結合してもよい。
また、S元素はスルホン酸基として含まれていても、あるいはスルホニル基として含まれていても、合成防縮剤としての性能はほぼ同じである。
硫黄元素(S元素)をこの範囲とすると、特に良好な高率放電性能が得られる傾向にある。
なお、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量の上限値は、特に限定されないが、9000μmol/gを超えて硫黄含有量が増加しても、高率放電容慮の増加は見られない上、有機防縮剤の製造原価が上昇するため、9000μmol/gを上限の目安としている。
なお、分子量の測定は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。分子量を求める際に使用する標準物質は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとする。
分子量の測定は以下の装置、条件を用いて測定できる。
GPC装置:ビルドアップGPCシステム
SD-8022/DP−8020/AS-8020/CO-8020/UV-8020 (東ソー製)
カラム :TSKgel G4000SWXL, G2000SWXL (7.8 mmI.D.×30cm) (東ソー製)
検出器 :UV検出器 λ=210nm
溶離液 :1mol/L NaCl : アセトニトリル(7:3)
流速 :1ml/min.
濃度 :10mg/mL
注入量 :10μL
標準物質 :ポリスチレンスルホン酸Na
(Mw=275,000、35,000、12,500、7,500、5,200、1,680)
ナフタレンスルホン酸の縮合物は、ビスフェノール類の縮合物に比べ、分極が小さくなりにくいので、減液特性が重要な鉛蓄電池に適している。
ただし、亜硫酸塩とホルムアルデヒドは、略等モル含有して反応させることが好ましい。なお、アルカリ条件化では重合が進むため、pH調整剤として、NaOH等を使用し、pH=12程度(pH=10〜13)にすることが好ましい。
なお、上述のように、有機防縮剤中のS元素はスルホニル基あるいはスルホン酸基として含有されている事が多い。これらの基は極性が強い親水性基であり、これらの基同士の静電反発等のため、電解液中では、これらの基は、有機防縮剤が形成するコロイド粒子の表面に表れる傾向にある。これにより、有機防縮剤の会合が制限され、有機防縮剤が形成するコロイド粒子のサイズ、言い換えると有機防縮剤のコロイド粒子径が小さくなる。
有機防縮剤について、硫酸中での平均コロイド粒子径を小さくするには、例えば、フェノール性水酸基を複数有する化合物1分子当たりの親水性官能基(スルホニル基、スルホン酸基、水酸基等)の量を多くすることが有効である。
有機防縮剤の平均コロイド粒子径を測定するには、濃度が1〜10mg/mLの有機防縮剤の水溶液を、比重が1.26の硫酸により、容積比で20倍に希釈し、比重1.25の硫酸の溶液とする。硫酸で20倍希釈した試料を、例えば堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950V2を用い、25℃で、バッチ式のセルを用い、マグネチックスターラーで撹拌しながら測定し、体積基準の平均コロイド粒子径を求める。なお鉛イオン、アルミニウムイオン、ナトリウムイオン等の共存イオンは、平均コロイド粒子径の測定値にほとんど影響しない。
なお、有機防縮剤の水溶液は、例えば鉛蓄電池の負極板から電極材料を取り出し、水洗して硫酸を除いた後に、1.0MのNaOH水溶液等のアルカリに溶解して、有機防縮剤を抽出することにより得られる。
負極電極材料中の有機防縮剤種の特定は、以下の様にして行う。満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から活物質を含んだ負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液に負極電極材料を浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた溶液を脱塩した後、濃縮・乾燥して粉末試料を得る。脱塩には、脱塩カラムやイオン交換膜が用いられる。
このようにして得た有機防縮剤の粉末試料を用いて測定した赤外分光スペクトルや、粉末試料を蒸留水で希釈し紫外可視吸光度計で測定した紫外可視吸収スペクトル、重水等の所定の溶媒で希釈し、得られた溶液のNMRスペクトルなどから得た情報を組み合わせて用いて、有機防縮剤種を特定する。
なお、満充電状態にする補充電条件は以下の通りある。
(1)液式電池の場合、25℃、水槽中、0.2CAで2.5V/セルに達するまで定電流充電をおこなった後、さらに0.2CAで2時間、定電流充電をおこなう。
(2)VRLA電池(制御弁式鉛蓄電池)の場合、25℃、気槽中、0.2CA、2.23V/セルの定電流定電圧充電をおこない、定電圧充電時の充電電流が1mCA以下になった時点で充電を終了する。
負極電極材料中の有機防縮剤の含有量は以下の様にして測定する。
満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液300mLに負極電極材料100gを浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた後、紫外可視吸収スペクトルを測定し、予め作成した検量線を用いて負極電極材料中の有機防縮剤の含有量を測定する。
他社製の電池を入手して有機防縮剤の含有量を測定する際に、有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができないために検量線に同一の合成防縮剤が使用できない場合には、当該電池の負極から抽出した有機防縮剤と、紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、およびNMRスペクトルなどが類似の形状を示す、別途入手可能な有機防縮剤を使用して検量線を作成することで、紫外可視吸収スペクトルを用いて有機防縮剤の含有量を測定する。
負極活物質中の有機防縮剤のS元素含有量(以下単に「S元素含有量」ともいう)は以下のようにして測定する。
満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液に負極電極材料を浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた溶液を脱塩した後、濃縮・乾燥して粉末試料を得る。脱塩には、脱塩カラムやイオン交換膜が用いられる。
酸素燃焼フラスコ法によって、0.1gの有機防縮剤中の硫黄元素を硫酸に変換する。このとき、吸着液を入れたフラスコ内で粉末試料を燃焼させることで、硫酸イオンが吸着液に溶け込んだ溶出液が得られる。そして、トリンを指示薬として溶出液を過塩素酸バリウムで滴定して、粉末試料0.1g中のS元素含有量を求める。このS元素含有量を1g当たりの数量に変換して、有機防縮剤中のS元素含有量とする。
負極電極材料は、硫酸バリウムを含有する。硫酸バリウムを有機防縮剤とともに含有することで、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は特に限定されない。負極電極材料は、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有していることが好ましい。
また、負極電極材料の密度との関係では、含有量は次の範囲であることが好ましい。
また、化成後の満充電状態での負極電極材料の密度が3.5g/cm3以上4.2g/cm3以下である場合に、負極電極材料は、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有していることが好ましい。
負極電極材料には、上述の成分以外の他の成分を含有させても良い。例えばカーボンブラックやグラファイトや合成樹脂繊維等を含有させても良い。
電解液は希硫酸であることが好ましい。電解液の比重は特に限定されない。比重は、下記の添加剤が含まれない状態で1.15(硫酸濃度21.4重量%に相当)以上で1.35以下(同45.3%に相当)である。なお、電解液の比重は、20℃における値である。
電解液には、アルカリ金属イオン、アルミニウムイオン等のその他の成分が含有されていてもよい。
本発明の一態様の鉛蓄電池では、単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕は、百分率で45%以上である。単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比の上限値は、特に限定されないが、通常、百分率で56%である。
なお、単セル内の電解液の理論容量(Ah)とは、単セル内の総硫酸量(g)を3.656(g/Ah)で除した値である。
また、負極理論容量は以下の方法で算出する。
〔1〕満充電後の電池内の負極電極材料の総重量S(g)を測定する。
〔2〕この中から該負極電極材料を約5gとり、その重量aを秤量する。これを重量濃度10%の硝酸水溶液30cm3中に投入し、加熱溶解する。冷却後、脱イオン水で100cm3にして30分静置し上澄液を別ビーカーに移す。残りの沈殿物に酢酸アンモン20gと水30cm3を加え、加熱溶解する。これを先のビーカー中に合し、更に5分間沸騰加熱する。その後1時間放置する。この溶液を重量既知のメンブレンフィルターでろ過し、充分に洗浄する。このメンブレンフィルターを110℃で2時間乾燥した後に、その重量を測定する。この際の質量増分を不溶残分重量bとする。その後、重量既知の磁製ルツボに入れ、灼熱灰化する。該ルツボをデシケーター中で室温まで冷却し、灼熱残分の重量cを求める。ここで、硫酸バリウムおよび有機防縮剤の双方を除く添加剤(カーボンや有機繊維など)の含有量A(重量%)を以下の式により算出する。
A=100×(b−c)/a
〔3〕上記〔2〕のろ液をメスフラスコにとり、脱イオン水を加えて250cm3とし、この液より原子吸光法で、Air−C2H2炎で553.6nmのスペクトル線を選び、原子吸光度を測定する。標準濃度のBa塩溶液により作成した検量線を基に上記吸光度から、可溶性硫酸バリウムの含有量B(重量%)を以下の式で算出する。
B= 100×1.699×(検量線より求めたバリウム元素重量(mg)/a)
〔4〕上記〔2〕の灼熱残分量cより、不溶性硫酸バリウム含有量C(重量%)を以下の式で算出する。
C= 100×c/a
〔5〕該負極電極材料の有機防縮剤の含有量D(重量%)を、段落〔0032〕の方法で測定する。
〔6〕負極電極材料中の金属鉛の含有量E(重量%)を以下の式で算出する。
E= 100−A−B−C―D
〔7〕電池内の負極電極材料中の金属鉛(負極活物質)の理論容量Q−(Ah)を、以下の式で算出する。この理論容量Q−(Ah)が負極理論容量である。
Q− = (S×E/100)/3.866
なお、満充電状態での負極電極材料中の硫酸バリウム含有量(重量%)は、上記〔3〕,〔4〕でそれぞれ算出したBとCとの合計である。
なお、この明細書における満充電状態にする補充電条件は以下の通りある。
(1)液式電池の場合、25℃、水槽中、0.2CAで2.5V/セルに達するまで定電流充電をおこなった後、さらに0.2CAで2時間、定電流充電をおこなう。
(2)VRLA電池(制御弁式鉛蓄電池)の場合、25℃、気槽中、0.2CA、2.23V/セルの定電流定電圧充電をおこない、定電圧充電時の充電電流が1mCA以下になった時点で充電を終了する。
この明細書における1CAは電池の公称容量を1時間で放電する電流値であり、例えば公称容量が30Ahの電池であれば1CAは30Aであり、1mCAは30mAである。
正極板にクラッド式正極板を用いた。正極板にクラッド式正極板を用いた。具体的には、正極板には幅145mmのクラッド式正極板を3枚用意した。この時、この正極板は、外径10ミリ、活物質充填部の高さ350mm、のチューブを用いて作製した。負極板にペースト式極板で、充填部の高さ360mm、幅145mm、厚み4.3mmの負極板〔1〕を2枚と、負極板〔1〕と高さ,幅が同じで厚みが3.0mmの負極板〔2〕を2枚準備した。これらの正極板、負極板をタンク化成の後にセパレータを介して積層し、サンプル電池を作製した。
その際、原則として、負極板〔1〕を極群の内部に、負極板〔2〕を極群の外側に配置した。ただし、サンプル電池G2には内側の負極板2枚に、平面の寸法は負極板〔1〕と同じで厚みが3.9mmである負極板〔3〕を使用した。正極板の合計の活物質量は二酸化鉛に換算して3600gであり、その理論容量は807Ahである。各サンプル電池の電解液は濃度37.4重量%の希硫酸である。なお、各サンプル電池の電解液/負極理論容量比を30〜56%まで変化させる方法は、電解液濃度は変えず、電槽内寸を変えて極板群の外側に保持される電解液の量を増減させて行った。各サンプル電池の電解液量は表1ないし4に、20℃にて測定した体積値で表示した。
これらの電池の公称容量は、表1〜4の各サンプル電池系列の中の、電解液/負極理論容量比が45%の物で、いずれも210Ah(5時間率)である。(また、他のサンプル電池は前記サンプル電池とは電解液量が異なるが、極板の内容と枚数が同じなので、これらの5時間率定格容量も210Ahとする。)
また有機防縮剤は満充電された負極電極材料100mass%に対して0.1mass%、カーボンは同じく0.2mass%含有するように調整した。これらのサンプル電池を、同種類の電池を3個ずつ作製した。
なお、負極電極材料の密度は、島津製作所製、自動ポロシメータ、オートポアIV9505を用い、化成後の電池を満充電してから解体して、前述の方法を用いて測定した。(自動ポロシメータの、接触角、表面張力の入力値はかさ容積とは関係がなく、測定値に影響を与えない。 装置の都合で接触角、表面張力の入力が必要な場合には、任意の値を入力して操作を実施する。)満充電条件は、前述の通りである。
負極電極材料に占める有機防縮剤の量の比率においては、製作した電池から取り出した負極から前述の方法で分離して定量して求めた値は、電極作製時に混合した比率からいくぶん異なった値となる。本発明の実施例において、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量(μmol/g)が、600、3000、4000、6000、8000の電池のそれぞれ各一つにおいて、次の比率Rを求めた。
G=製作した電池から取り出した負極から前述の方法で分離して定量した合成防縮剤の負極電極材料に対する重量比(mass%)
H=電池作製時に混合した合成防縮剤の負極電極材料に対する重量比(mass%)
R=G/H
表1〜5に記載の負極電極材料中の合成防縮剤の含有量(mass%)は、各電池における電池作製時の負極電極材料に対する、混合した合成防縮剤の重量比(mass%)に、合成防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量が同じ電池について求めた上記のRをかけたものである。
有機防縮剤中のS元素量(μmol/g)については、
負極電極材料として混合する前と、電池から解体して抽出し測定した値には差がないことを確認した。(そのため、表1〜5に記載の合成防縮剤中のS元素量(μmol/g)については、負極電極材料として混合する前の有機防縮剤のそれぞれにおいて測定して求められた値が記載されている。)
なお、硫酸バリウムは、満充電状態の負極電極材料100mass%に対し、後述の表1〜5に示す組成になるように調整した。なお、満充電状態での負極電極材料中の硫酸バリウム含有量(重量%)は、前述の方法〔3〕,〔4〕でそれぞれ算出したBとCとの合計である。
満充電状態の負極電極材料に占める硫酸バリウムの比率は、製作時に混合した比率と製作した電池から取り出した負極から前述の方法で分離して定量して求めた値とは、若干差がある。化成後の満充電状態の負極電極材料に占める硫酸バリウムの比率に0.95をかけた比率で製作時に混合することで、表1〜5の組成になるよう調整した。例えば、化成後の満充電状態の負極電極材料に1mass%含有させる場合には作製時に負極電極材料に対して0.95mass%含有させる。
2.1 600サイクル目高率放電容量試験
電解液/負極理論容量比を30〜56%まで変化させたサンプル電池を3個ずつ準備し、30℃、電流40Aで端子間電圧が1.70Vに達するまで放電し、放電量の125%を電流30Aで充電する充放電サイクルを600回繰り返した。その後、満充電状態から各サンプル電池を30℃、210Aで放電し、その際の同一種類のサンプル電池3個の放電容量の平均値を高率放電容量として、表1〜4に記した。
3.1 有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度の検討
各サンプル電池の構成、及び性能評価の結果を表1〜4に示し、表1〜4から導き出されたグラフを図1〜4に示す。なお、図1は表1に対応し、図2は表2に対応し、図3は表3に対応し、図4は表4に対応している。
硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gより大きい各サンプル電池(図2のB2系列、C2系列、D2系列、G2系列、図3のB3系列、C3系列、D3系列、G3系列、図4のB4系列、C4系列、D4系列、G4系列)は、電解液の理論容量/負極理論容量が45%以上の場合に、硫黄元素(S元素)の量が600μmol/gのサンプル電池(G0系列)と比較して、600サイクル目の高率放電容量を高い水準で維持できた。他方、これらの硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gより大きいサンプル電池に比べて、硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gの各サンプル電池(図1のB1系列、C1系列、D1系列、G1系列)は、電解液の理論容量/負極理論容量が45%以上の場合に、600サイクル目の高率放電容量の水準が低くなった。
以上の結果から、負極電極材料が有機防縮剤及び硫酸バリウムを含有し、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)が3000μmol/gより大きい場合には、600サイクル目の高率放電容量を高い水準で維持できることが確認された。
これらの電池の600サイクル目の高率容量は、電解液の理論容量/負極板理論容量の比(%)を45%以上にした場合に、電極材料の密度を下げても、硫黄元素(S元素)の量が600μmol/gの鉛蓄電池(G0系列)の電解液の理論容量/負極板理論容量の比(%)を45%にした場合に比べると、同等か、かなり大きい値になっている。
表5は、サンプル電池の構成、及び性能評価の結果を示している。なお、図5〜8は表5から導いたものである。なお、この実験に供したサンプル電池は、各サンプル電池系列の中でも電解液/負極理論容量比を45%とした物を選び、それぞれ3個ずつ製作した。これらのサンプル電池の公称容量は、210Ah(5時間率)である。
表5に示すサンプル電池を、30℃で、表5に示す各負極理論容量の41%を5時間で放電する際の電流値で、5時間または端子間電圧が1.70Vに達するまでの時間の短い方の時間にて放電し、充電は各サイクルの放電量の125%を7時間かけて行う充放電サイクルを600回繰り返した。その最後のサイクルの各サンプル電池3個の放電容量の平均値をそれぞれ図6、図8に、5時間率容量として示す。
次にこれらの電池を満充電後、さらに30℃にて210Aで放電した。その際に該サンプル3個の、端子間電圧が1.7Vに低下するまでの放電容量の平均値をそれぞれ図5、図7に、高率放電容量として示す。
図6は、負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、硫酸バリウムの含有量と、600サイクル目の5時間率容量との関係を示すグラフである。
図8は、負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、硫酸バリウムの含有量と、600サイクル目の5時間率容量との関係を示すグラフである。
鉛蓄電池の容量とサイクル寿命性能を維持しつつ、負極活物質を削減する技術が求められている。発明者は、防縮剤を工夫することでこの技術を達成しようとするものである。防縮剤の工夫による、その期待する効果は、第1に、負極活物質の比表面積を大きくし、負極板の放電容量、特に高率放電容量を向上させることである。
Claims (3)
- 正極板と、
負極板と、
電解液と、を備えた鉛蓄電池であって、
前記負極板は、負極電極材料を備え、
単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率にて45%以上であり、
前記負極電極材料は、有機防縮剤を含有し、
前記負極電極材料は、硫酸バリウムを含有し、
前記有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000μmol/gより大きい鉛蓄電池。 - 化成後の満充電状態の前記負極電極材料の密度が、3.1g/cm3以上4.2g/cm3以下である請求項1に記載の鉛蓄電池。
- 次の要件A又は要件Bを満たす請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
(要件A)
化成後の満充電状態の前記負極電極材料の密度が3.1g/cm3以上3.5g/cm3以下であり、かつ、
化成後の満充電状態の前記負極板は、既化成負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.1mass%以下含有している。
(要件B)
化成後の満充電状態の前記負極電極材料の密度が3.5g/cm3以上4.2g/cm3以下であり、かつ、
前記負極板は、化成後の満充電状態の負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有している。
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