JP2018018747A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる鉛蓄電池を提供することを目的とする【解決手段】鉛蓄電池は、正極板と負極板と電解液とを備える。負極板は、負極電極材料を備える。単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率で45%以上である。負極電極材料は、硫酸バリウム、及び有機防縮剤を含有し、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)は、3000μmol/gより大きい。【選択図】図2

Description

本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
鉛蓄電池の負極電極材料に、有機防縮剤(エキスパンダ)を添加する技術が開示されている(特許文献1参照)。そして、有機防縮剤を添加することにより、良好な低温高率放電性能が得られることが示されている。
国際公開 WO2015/181865号公報
ところで、サイクル使用による高率放電容量の減少を緩和するには、活物質量を増やして、負極電極材料の密度を増大させる方法が考えられていた。
しかしながら、負極電極材料の密度を増大させると、負極板内の電解液量が減少し、却って高率放電容量を制限してしまうおそれがあった。また、負極電極材料の密度を増大させると原価面で不利であった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる鉛蓄電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、新規な鉛蓄電池を開発した。
そして、この新規な鉛蓄電池は、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できるという事実を見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、
正極板と、
負極板と、
電解液と、を備えた鉛蓄電池であって、
前記負極板は、負極電極材料を備え、
単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率にて45%以上であり、
前記負極電極材料は、有機防縮剤を含有し、
前記負極電極材料は、硫酸バリウムを含有し、
前記有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000μmol/gより大きい鉛蓄電池である。
本発明の一側面によれば、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる鉛蓄電池を提供できる。
有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、電解液の理論容量/負極理論容量の比(%)と、試験パターン1による600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。 有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、電解液の理論容量/負極理論容量の比(%)と、試験パターン1による600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。 有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、電解液の理論容量/負極理論容量の比(%)と、試験パターン1による600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。 有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、電解液の理論容量/負極理論容量の比(%)と、試験パターン1による600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。 負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、硫酸バリウムの含有量と、試験パターン2による600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。 負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、硫酸バリウムの含有量と、試験パターン2による600サイクル目の5時間率容量(0.2C放電容量)との関係を示すグラフである。 負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、硫酸バリウムの含有量と、試験パターン2による600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。 負極電極材料の密度を変化させた鉛蓄電池において、硫酸バリウムの含有量と、試験パターン2による600サイクル目の5時間率容量(0.2C放電容量)との関係を示すグラフである。
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
1.鉛蓄電池
本発明の一態様の鉛蓄電池は、正極板と負極板と電解液とを備える。負極板は、負極電極材料を備える。単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率で45%以上である。負極電極材料は、有機防縮剤を含有する。負極電極材料は、硫酸バリウムも含有する。有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000mol/gより大きい。
なお、電極材料は、反応物質だけでなく、それ以外の添加剤も全て含めたものである。そして、負極板は、負極電極材料と集電体および場合により電極表面被覆材とからなる。よって、負極電極材料は、負極板から集電体および電極表面被覆材を除いた残り全てを意味する。
2.正極板
正極板の種類は特に限定されない。正極板として、例えば、クラッド式極板、ペースト式極板を用いることができる。クラッド式極板としては、例えば、ガラス繊維をチューブ状に編み上げ、その中に正極活物質である鉛粉を含む正極電極材料を充填した極板が用いられる。ペースト式極板は、例えば、エキスパンド、鋳造、パンチング等の集電体(格子体)に、正極活物質を含む正極電極材料のペーストを充填後、熟成乾燥して得られる。正極電極材料のペーストは、鉛粉等を水と希硫酸で練合して得ることができる。正極電極材料のペーストには、正極活物質の他に種々の添加物を添加してもよい。
3.負極板
3.1 極板の種類
負極板の種類は特に限定されない。負極板として、例えば、ペースト式極板を用いることができる。ペースト式極板としては、例えば、純鉛や鉛合金を鋳造して作製した鋳造、純鉛や鉛合金シートを加工して作製するエキスパンドやパンチング等の集電体(格子体)にペースト状にした負極電極材料を塗り込んだ極板が用いられる。
ペースト式極板は、例えば、集電体に負極電極材料のペーストを充填後、熟成乾燥して得られる。負極電極材料のペーストは、活物質の原料たる鉛粉等を水と希硫酸で練合して得ることができる。負極電極材料のペーストには、負極活物質の他に種々の添加物を添加してもよい。
3.2 負極電極材料の密度
本発明の一態様の鉛蓄電池では、負極電極材料の密度は特に限定されない。負極電極材料の密度は、好ましくは3.1g/cm以上4.2g/cm以下である。
本発明の一態様の鉛蓄電池では、密度を下げ、充放電を繰り返しても(例えば600サイクル目でも)、高率放電容量を確保することができる。
なお、負極電極材料の密度は化成後の満充電状態の負極電極材料のかさ密度の値を意味し、以下のようにして測定する。化成後の電池を満充電してから解体し、入手した負極板を、水洗と乾燥とを施すことにより負極板中の電解液を除く。次いで負極板から負極電極材料を分離して、未粉砕の測定試料を入手する。測定容器に試料を投入し、真空排気した後、0.5〜0.55psiaの圧力で水銀を満たして、負極電極材料のかさ容積を測定し、測定試料の質量をかさ容積で除すことにより、負極電極材料のかさ密度を求める。尚、測定容器の容積から、水銀の注入容積を差し引いた容積をかさ容積とする。
3.3 有機防縮剤
3.3.1 有機防縮剤の含有量
本実施形態の鉛蓄電池では、負極電極材料には、有機防縮剤が含有される。有機防縮剤の含有量は特に限定されない。有機防縮剤の含有量は、既化成で、満充電状態の負極電極材料100mass%に対して、好ましくは0.05mass%以上0.35mass%以下であり、より好ましくは0.1mass%以上0.25mass%以下である。有機防縮剤がこの範囲であると、高率放電容量が増加する傾向にある。
3.3.2 有機防縮剤の詳細
本実施形態における有機防縮剤の種類は、特に限定されない。有機防縮剤は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
有機防縮剤は、天然物由来の防縮剤と、合成防縮剤に分類される。
天然物由来の防縮剤としては、例えば、スルホン化リグニン等が挙げられる。
なお、リグニンのアルキル側鎖にスルホン酸基を導入する場合、このアルキル側鎖にスルホン酸基1個以上を導入することは難しい。このため、リグニンのアルキル側鎖に、スルホン酸基、スルホニル基を導入せずに、間接的に導入したリグニンを用いることもできる。すなわち、リグニンのフェニル基にスルホン酸基及び/又はスルホニル基を導入することができる。このようにリグニンにスルホン酸基及び/又はスルホニル基を導入すると、硫黄元素(S元素)の含有量を高めることができる。
また、有機防縮剤として、フェノール性水酸基を複数有する化合物とアルデヒド類との反応生成物、ナフタレン系化合物とアルデヒド類との反応生成物等が挙げられる。その他、ポリアクリル酸、アクリルアミド・ターシャリーブチル・スルホン酸Naの重合物(ATBSポリマー:ATBSは登録商標)、N,N´−(スルホニルジ−4,1−フェニレン)ビス(1,2,3,4−テトラヒドロ−6メチル−2,4−ジオキソピリミジン−5−スルホンアミド)を用いた縮合物も用いることができる。
ポリアクリルアミド・ターシャリーブチル・スルホン酸Naの重合物では、基本骨格とスルホン酸基量との比は、特に限定されないが、基本骨格とスルホン酸基量との比が1:1以上であることが好ましい。
フェノール性水酸基を複数有する化合物としては、フェノール性水酸基を有していれば特に限定されず、フェノール性水酸基を複数有していてもよい。これらの化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
フェノール性水酸基を複数有する化合物として、ビスフェノール類が好適に用いられる。ビスフェノール類とは、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
アルデヒド類としては、特に限定されない。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキシメチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。フェノール性水酸基を複数有する化合物との反応性が高いことから、ホルムアルデヒドが好適に用いられる。
また、フェノール性水酸基を複数有する化合物と、アルデヒド類との反応生成物にさらにスルホン酸基(スルホ基)を導入してもよい。スルホン酸基を導入することで、合成防縮剤中の硫黄元素(S元素)の量を高めることができる。
なお、スルホン酸基はフェノール性水酸基を複数有する化合物の芳香環(例えば、ビスフェノール類のフェニル基)に直接結合している必要はない。例えば芳香環にアルキル鎖が結合し、このアルキル鎖にスルホン酸基が結合してもよい。
また、S元素はスルホン酸基として含まれていても、あるいはスルホニル基として含まれていても、合成防縮剤としての性能はほぼ同じである。
本実施形態の一態様の鉛蓄電池では、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000μmol/gより大きく、好ましくは4000μmol/g以上であり、より好ましくは6000μmol/g以上であり、さらに好ましくは8000μmol/g以上である。
硫黄元素(S元素)をこの範囲とすると、特に良好な高率放電性能が得られる傾向にある。
なお、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量の上限値は、特に限定されないが、9000μmol/gを超えて硫黄含有量が増加しても、高率放電容慮の増加は見られない上、有機防縮剤の製造原価が上昇するため、9000μmol/gを上限の目安としている。
有機防縮剤の分子量は、特に限定されない。有機防縮剤の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上1000000以下であり、より好ましくは1000以上100000以下であり、さらに好ましくは1000以上20000以下である。この範囲内が有機物の合成の観点から好ましい。
なお、分子量の測定は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。分子量を求める際に使用する標準物質は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとする。
分子量の測定は以下の装置、条件を用いて測定できる。
GPC装置:ビルドアップGPCシステム
SD-8022/DP−8020/AS-8020/CO-8020/UV-8020 (東ソー製)
カラム :TSKgel G4000SWXL, G2000SWXL (7.8 mmI.D.×30cm) (東ソー製)
検出器 :UV検出器 λ=210nm
溶離液 :1mol/L NaCl : アセトニトリル(7:3)
流速 :1ml/min.
濃度 :10mg/mL
注入量 :10μL
標準物質 :ポリスチレンスルホン酸Na
(Mw=275,000、35,000、12,500、7,500、5,200、1,680)
有機防縮剤としては、具体的には、スルホン酸基を導入したビスフェノールAのホルムアルデヒドによる縮合物、スルホン酸基を導入したビスフェノールSのホルムアルデヒドによる縮合物、β−ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒドによる縮合物を好適に用いることができる。なお、ビスフェノールSを用いた場合には、有機防縮剤内には、スルホン酸基、及びビスフェノールS内のスルホニル基(−SO−)構造に由来するS元素が存在することになる。
ビスフェノール類の縮合物は、常温より高い温度環境を経験しても、低温での性能が損なわれないので、常温より高い温度環境におかれる鉛蓄電池に適している。
ナフタレンスルホン酸の縮合物は、ビスフェノール類の縮合物に比べ、分極が小さくなりにくいので、減液特性が重要な鉛蓄電池に適している。
ここで、ビスフェノール類の縮合物の好適な合成方法の一例を示す。ビスフェノール類(ビスフェノールA、S、F等)、ホルムアルデヒド、亜硫酸塩を混合して、ビスフェノール類のホルムアルデヒド縮合物を得る。この際に、防縮剤のS量は、ビスフェノールSの量および亜硫酸塩の量を必要量に応じて、増減させて調整する。
ただし、亜硫酸塩とホルムアルデヒドは、略等モル含有して反応させることが好ましい。なお、アルカリ条件化では重合が進むため、pH調整剤として、NaOH等を使用し、pH=12程度(pH=10〜13)にすることが好ましい。
反応温度は、特に限定されず、好ましくは、140℃以上200℃以下である。反応の際には、攪拌しても攪拌しなくてもよい。
なお、予め温度・反応時間に対する重量平均分子量を求め、所望の重量平均分子量の縮合物となるように、温度・時間条件を調整することができる。特に好ましくは、重量平均分子量(Mw)が9000程度(6000〜13000)になるよう、温度・時間条件を調整して反応させることが好ましい。
有機防縮剤中のS元素の安定形態はスルホニル基あるいはスルホン酸基として含まれていることが多い。有機防縮剤のS元素含有量は、スルホン酸基及び/又はスルホニル基に含まれるS元素の量が主となる。
なお、上述のように、有機防縮剤中のS元素はスルホニル基あるいはスルホン酸基として含有されている事が多い。これらの基は極性が強い親水性基であり、これらの基同士の静電反発等のため、電解液中では、これらの基は、有機防縮剤が形成するコロイド粒子の表面に表れる傾向にある。これにより、有機防縮剤の会合が制限され、有機防縮剤が形成するコロイド粒子のサイズ、言い換えると有機防縮剤のコロイド粒子径が小さくなる。
有機防縮剤について、硫酸中での平均コロイド粒子径を小さくするには、例えば、フェノール性水酸基を複数有する有機防縮剤1gあたりの親水性官能基(スルホニル基、スルホン酸基、水酸基等)の量を多くすることが有効である。
有機防縮剤について、硫酸中での平均コロイド粒子径を小さくするには、例えば、フェノール性水酸基を複数有する化合物1分子当たりの親水性官能基(スルホニル基、スルホン酸基、水酸基等)の量を多くすることが有効である。
有機防縮剤の平均コロイド粒子径を測定するには、濃度が1〜10mg/mLの有機防縮剤の水溶液を、比重が1.26の硫酸により、容積比で20倍に希釈し、比重1.25の硫酸の溶液とする。硫酸で20倍希釈した試料を、例えば堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950V2を用い、25℃で、バッチ式のセルを用い、マグネチックスターラーで撹拌しながら測定し、体積基準の平均コロイド粒子径を求める。なお鉛イオン、アルミニウムイオン、ナトリウムイオン等の共存イオンは、平均コロイド粒子径の測定値にほとんど影響しない。
なお、有機防縮剤の水溶液は、例えば鉛蓄電池の負極板から電極材料を取り出し、水洗して硫酸を除いた後に、1.0MのNaOH水溶液等のアルカリに溶解して、有機防縮剤を抽出することにより得られる。
有機防縮剤のS元素含有量は、ビスフェノールS、ナフタレンスルホン酸等の化合物の使用割合、スルホン化の条件等によって調整することができる。
3.3.3 有機防縮剤の種類の特定
負極電極材料中の有機防縮剤種の特定は、以下の様にして行う。満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から活物質を含んだ負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液に負極電極材料を浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた溶液を脱塩した後、濃縮・乾燥して粉末試料を得る。脱塩には、脱塩カラムやイオン交換膜が用いられる。
このようにして得た有機防縮剤の粉末試料を用いて測定した赤外分光スペクトルや、粉末試料を蒸留水で希釈し紫外可視吸光度計で測定した紫外可視吸収スペクトル、重水等の所定の溶媒で希釈し、得られた溶液のNMRスペクトルなどから得た情報を組み合わせて用いて、有機防縮剤種を特定する。
なお、満充電状態にする補充電条件は以下の通りある。
(1)液式電池の場合、25℃、水槽中、0.2CAで2.5V/セルに達するまで定電流充電をおこなった後、さらに0.2CAで2時間、定電流充電をおこなう。
(2)VRLA電池(制御弁式鉛蓄電池)の場合、25℃、気槽中、0.2CA、2.23V/セルの定電流定電圧充電をおこない、定電圧充電時の充電電流が1mCA以下になった時点で充電を終了する。
3.3.4 有機防縮剤の含有量の測定
負極電極材料中の有機防縮剤の含有量は以下の様にして測定する。
満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液300mLに負極電極材料100gを浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた後、紫外可視吸収スペクトルを測定し、予め作成した検量線を用いて負極電極材料中の有機防縮剤の含有量を測定する。
他社製の電池を入手して有機防縮剤の含有量を測定する際に、有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができないために検量線に同一の合成防縮剤が使用できない場合には、当該電池の負極から抽出した有機防縮剤と、紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、およびNMRスペクトルなどが類似の形状を示す、別途入手可能な有機防縮剤を使用して検量線を作成することで、紫外可視吸収スペクトルを用いて有機防縮剤の含有量を測定する。
3.3.5 有機防縮剤中のS元素含有量の測定
負極活物質中の有機防縮剤のS元素含有量(以下単に「S元素含有量」ともいう)は以下のようにして測定する。
満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液に負極電極材料を浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた溶液を脱塩した後、濃縮・乾燥して粉末試料を得る。脱塩には、脱塩カラムやイオン交換膜が用いられる。
酸素燃焼フラスコ法によって、0.1gの有機防縮剤中の硫黄元素を硫酸に変換する。このとき、吸着液を入れたフラスコ内で粉末試料を燃焼させることで、硫酸イオンが吸着液に溶け込んだ溶出液が得られる。そして、トリンを指示薬として溶出液を過塩素酸バリウムで滴定して、粉末試料0.1g中のS元素含有量を求める。このS元素含有量を1g当たりの数量に変換して、有機防縮剤中のS元素含有量とする。
3.4 硫酸バリウム
負極電極材料は、硫酸バリウムを含有する。硫酸バリウムを有機防縮剤とともに含有することで、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は特に限定されない。負極電極材料は、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有していることが好ましい。
また、負極電極材料の密度との関係では、含有量は次の範囲であることが好ましい。
化成後の満充電状態での負極電極材料の密度が3.1g/cm以上3.5g/cm以下である場合に、負極電極材料は、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.1mass%以下含有していることが好ましい。
また、化成後の満充電状態での負極電極材料の密度が3.5g/cm以上4.2g/cm以下である場合に、負極電極材料は、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有していることが好ましい。
3.5 その他の成分
負極電極材料には、上述の成分以外の他の成分を含有させても良い。例えばカーボンブラックやグラファイトや合成樹脂繊維等を含有させても良い。
4.電解液
電解液は希硫酸であることが好ましい。電解液の比重は特に限定されない。比重は、下記の添加剤が含まれない状態で1.15(硫酸濃度21.4重量%に相当)以上で1.35以下(同45.3%に相当)である。なお、電解液の比重は、20℃における値である。
電解液には、アルカリ金属イオン、アルミニウムイオン等のその他の成分が含有されていてもよい。
5.単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量の比
本発明の一態様の鉛蓄電池では、単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕は、百分率で45%以上である。単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比の上限値は、特に限定されないが、通常、百分率で56%である。
なお、単セル内の電解液の理論容量(Ah)とは、単セル内の総硫酸量(g)を3.656(g/Ah)で除した値である。
また、負極理論容量は以下の方法で算出する。
〔1〕満充電後の電池内の負極電極材料の総重量S(g)を測定する。
〔2〕この中から該負極電極材料を約5gとり、その重量aを秤量する。これを重量濃度10%の硝酸水溶液30cm中に投入し、加熱溶解する。冷却後、脱イオン水で100cmにして30分静置し上澄液を別ビーカーに移す。残りの沈殿物に酢酸アンモン20gと水30cmを加え、加熱溶解する。これを先のビーカー中に合し、更に5分間沸騰加熱する。その後1時間放置する。この溶液を重量既知のメンブレンフィルターでろ過し、充分に洗浄する。このメンブレンフィルターを110℃で2時間乾燥した後に、その重量を測定する。この際の質量増分を不溶残分重量bとする。その後、重量既知の磁製ルツボに入れ、灼熱灰化する。該ルツボをデシケーター中で室温まで冷却し、灼熱残分の重量cを求める。ここで、硫酸バリウムおよび有機防縮剤の双方を除く添加剤(カーボンや有機繊維など)の含有量A(重量%)を以下の式により算出する。
A=100×(b−c)/a
〔3〕上記〔2〕のろ液をメスフラスコにとり、脱イオン水を加えて250cmとし、この液より原子吸光法で、Air−C炎で553.6nmのスペクトル線を選び、原子吸光度を測定する。標準濃度のBa塩溶液により作成した検量線を基に上記吸光度から、可溶性硫酸バリウムの含有量B(重量%)を以下の式で算出する。
B= 100×1.699×(検量線より求めたバリウム元素重量(mg)/a)
〔4〕上記〔2〕の灼熱残分量cより、不溶性硫酸バリウム含有量C(重量%)を以下の式で算出する。
C= 100×c/a
〔5〕該負極電極材料の有機防縮剤の含有量D(重量%)を、段落〔0032〕の方法で測定する。
〔6〕負極電極材料中の金属鉛の含有量E(重量%)を以下の式で算出する。
E= 100−A−B−C―D
〔7〕電池内の負極電極材料中の金属鉛(負極活物質)の理論容量Q(Ah)を、以下の式で算出する。この理論容量Q(Ah)が負極理論容量である。
= (S×E/100)/3.866

なお、満充電状態での負極電極材料中の硫酸バリウム含有量(重量%)は、上記〔3〕,〔4〕でそれぞれ算出したBとCとの合計である。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成処理は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
なお、この明細書における満充電状態にする補充電条件は以下の通りある。
(1)液式電池の場合、25℃、水槽中、0.2CAで2.5V/セルに達するまで定電流充電をおこなった後、さらに0.2CAで2時間、定電流充電をおこなう。
(2)VRLA電池(制御弁式鉛蓄電池)の場合、25℃、気槽中、0.2CA、2.23V/セルの定電流定電圧充電をおこない、定電圧充電時の充電電流が1mCA以下になった時点で充電を終了する。
この明細書における1CAは電池の公称容量を1時間で放電する電流値であり、例えば公称容量が30Ahの電池であれば1CAは30Aであり、1mCAは30mAである。
本発明の一態様は、負極活物質を削減する技術である。電解液の理論容量を、負極理論容量(負極活物質の理論容量)の45%以上にする設計により、所定の放電条件下で負極活物質の実質的な利用率は40%以上に到達する。本発明の一態様は、この放電時の高い負極利用率の下で、サイクル使用に耐える鉛蓄電池を提供するものである。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
1.鉛蓄電池の作製
正極板にクラッド式正極板を用いた。正極板にクラッド式正極板を用いた。具体的には、正極板には幅145mmのクラッド式正極板を3枚用意した。この時、この正極板は、外径10ミリ、活物質充填部の高さ350mm、のチューブを用いて作製した。負極板にペースト式極板で、充填部の高さ360mm、幅145mm、厚み4.3mmの負極板〔1〕を2枚と、負極板〔1〕と高さ,幅が同じで厚みが3.0mmの負極板〔2〕を2枚準備した。これらの正極板、負極板をタンク化成の後にセパレータを介して積層し、サンプル電池を作製した。
その際、原則として、負極板〔1〕を極群の内部に、負極板〔2〕を極群の外側に配置した。ただし、サンプル電池G2には内側の負極板2枚に、平面の寸法は負極板〔1〕と同じで厚みが3.9mmである負極板〔3〕を使用した。正極板の合計の活物質量は二酸化鉛に換算して3600gであり、その理論容量は807Ahである。各サンプル電池の電解液は濃度37.4重量%の希硫酸である。なお、各サンプル電池の電解液/負極理論容量比を30〜56%まで変化させる方法は、電解液濃度は変えず、電槽内寸を変えて極板群の外側に保持される電解液の量を増減させて行った。各サンプル電池の電解液量は表1ないし4に、20℃にて測定した体積値で表示した。
これらの電池の公称容量は、表1〜4の各サンプル電池系列の中の、電解液/負極理論容量比が45%の物で、いずれも210Ah(5時間率)である。(また、他のサンプル電池は前記サンプル電池とは電解液量が異なるが、極板の内容と枚数が同じなので、これらの5時間率定格容量も210Ahとする。)
また有機防縮剤は満充電された負極電極材料100mass%に対して0.1mass%、カーボンは同じく0.2mass%含有するように調整した。これらのサンプル電池を、同種類の電池を3個ずつ作製した。
なお、負極電極材料の密度は、島津製作所製、自動ポロシメータ、オートポアIV9505を用い、化成後の電池を満充電してから解体して、前述の方法を用いて測定した。(自動ポロシメータの、接触角、表面張力の入力値はかさ容積とは関係がなく、測定値に影響を与えない。 装置の都合で接触角、表面張力の入力が必要な場合には、任意の値を入力して操作を実施する。)満充電条件は、前述の通りである。
負極電極材料に占める有機防縮剤の量の比率においては、製作した電池から取り出した負極から前述の方法で分離して定量して求めた値は、電極作製時に混合した比率からいくぶん異なった値となる。本発明の実施例において、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量(μmol/g)が、600、3000、4000、6000、8000の電池のそれぞれ各一つにおいて、次の比率Rを求めた。
G=製作した電池から取り出した負極から前述の方法で分離して定量した合成防縮剤の負極電極材料に対する重量比(mass%)
H=電池作製時に混合した合成防縮剤の負極電極材料に対する重量比(mass%)
R=G/H
表1〜5に記載の負極電極材料中の合成防縮剤の含有量(mass%)は、各電池における電池作製時の負極電極材料に対する、混合した合成防縮剤の重量比(mass%)に、合成防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量が同じ電池について求めた上記のRをかけたものである。
有機防縮剤中のS元素量(μmol/g)については、
負極電極材料として混合する前と、電池から解体して抽出し測定した値には差がないことを確認した。(そのため、表1〜5に記載の合成防縮剤中のS元素量(μmol/g)については、負極電極材料として混合する前の有機防縮剤のそれぞれにおいて測定して求められた値が記載されている。)
なお、硫酸バリウムは、満充電状態の負極電極材料100mass%に対し、後述の表1〜5に示す組成になるように調整した。なお、満充電状態での負極電極材料中の硫酸バリウム含有量(重量%)は、前述の方法〔3〕,〔4〕でそれぞれ算出したBとCとの合計である。
満充電状態の負極電極材料に占める硫酸バリウムの比率は、製作時に混合した比率と製作した電池から取り出した負極から前述の方法で分離して定量して求めた値とは、若干差がある。化成後の満充電状態の負極電極材料に占める硫酸バリウムの比率に0.95をかけた比率で製作時に混合することで、表1〜5の組成になるよう調整した。例えば、化成後の満充電状態の負極電極材料に1mass%含有させる場合には作製時に負極電極材料に対して0.95mass%含有させる。
2.性能評価試験(試験パターン1)
2.1 600サイクル目高率放電容量試験
電解液/負極理論容量比を30〜56%まで変化させたサンプル電池を3個ずつ準備し、30℃、電流40Aで端子間電圧が1.70Vに達するまで放電し、放電量の125%を電流30Aで充電する充放電サイクルを600回繰り返した。その後、満充電状態から各サンプル電池を30℃、210Aで放電し、その際の同一種類のサンプル電池3個の放電容量の平均値を高率放電容量として、表1〜4に記した。
3.結果
3.1 有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度の検討
各サンプル電池の構成、及び性能評価の結果を表1〜4に示し、表1〜4から導き出されたグラフを図1〜4に示す。なお、図1は表1に対応し、図2は表2に対応し、図3は表3に対応し、図4は表4に対応している。
Figure 2018018747
Figure 2018018747
Figure 2018018747
Figure 2018018747
図1〜4は、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量、及び負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、電解液の理論容量/負極理論容量の比(%)と、600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。
硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gより大きい各サンプル電池(図2のB2系列、C2系列、D2系列、G2系列、図3のB3系列、C3系列、D3系列、G3系列、図4のB4系列、C4系列、D4系列、G4系列)は、電解液の理論容量/負極理論容量が45%以上の場合に、硫黄元素(S元素)の量が600μmol/gのサンプル電池(G0系列)と比較して、600サイクル目の高率放電容量を高い水準で維持できた。他方、これらの硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gより大きいサンプル電池に比べて、硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gの各サンプル電池(図1のB1系列、C1系列、D1系列、G1系列)は、電解液の理論容量/負極理論容量が45%以上の場合に、600サイクル目の高率放電容量の水準が低くなった。
以上の結果から、負極電極材料が有機防縮剤及び硫酸バリウムを含有し、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)が3000μmol/gより大きい場合には、600サイクル目の高率放電容量を高い水準で維持できることが確認された。
特に、硫黄元素(S元素)の量が3000μmol/gより大きい各サンプル電池の中でも、負極電極材料の密度が、3.1g/cm以上4.2g/cm以下の各サンプル電池(図2のC2系列、D2系列、G2系列、図3のC3系列、D3系列、G3系列、図4のC4系列、D4系列、G4系列)は、600サイクル目の高率放電容量を非常に高い水準で維持できることが確認された。
これらの電池の600サイクル目の高率容量は、電解液の理論容量/負極板理論容量の比(%)を45%以上にした場合に、電極材料の密度を下げても、硫黄元素(S元素)の量が600μmol/gの鉛蓄電池(G0系列)の電解液の理論容量/負極板理論容量の比(%)を45%にした場合に比べると、同等か、かなり大きい値になっている。
3.2 硫酸バリウムの含有量及び負極電極材料の密度の検討
表5は、サンプル電池の構成、及び性能評価の結果を示している。なお、図5〜8は表5から導いたものである。なお、この実験に供したサンプル電池は、各サンプル電池系列の中でも電解液/負極理論容量比を45%とした物を選び、それぞれ3個ずつ製作した。これらのサンプル電池の公称容量は、210Ah(5時間率)である。
次にこれらのサンプル電池を、次に示す性能評価試験(試験パターン2)にて評価した。この試験の目的は、負極利用率を同一にして、硫酸バリウム含有量の影響を調べることである。
表5に示すサンプル電池を、30℃で、表5に示す各負極理論容量の41%を5時間で放電する際の電流値で、5時間または端子間電圧が1.70Vに達するまでの時間の短い方の時間にて放電し、充電は各サイクルの放電量の125%を7時間かけて行う充放電サイクルを600回繰り返した。その最後のサイクルの各サンプル電池3個の放電容量の平均値をそれぞれ図6、図8に、5時間率容量として示す。
次にこれらの電池を満充電後、さらに30℃にて210Aで放電した。その際に該サンプル3個の、端子間電圧が1.7Vに低下するまでの放電容量の平均値をそれぞれ図5、図7に、高率放電容量として示す。
Figure 2018018747
図5は、負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、硫酸バリウムの含有量と、600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。
図6は、負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、硫酸バリウムの含有量と、600サイクル目の5時間率容量との関係を示すグラフである。
図5及び図6の結果から、負極電極材料の密度が3.1g/cm以上であり、かつ、負極板が、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.1mass%以下含有していると、600サイクル目の高率放電容量及び600サイクル目の5時間率容量が良好であることが確認された。
図7は、負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、硫酸バリウムの含有量と、600サイクル目の高率放電容量との関係を示すグラフである。
図8は、負極電極材料の密度を変化させたサンプル電池において、硫酸バリウムの含有量と、600サイクル目の5時間率容量との関係を示すグラフである。
図7及び図8の結果から、負極電極材料の密度が3.5g/cm以上4.2g/cm以下であり、かつ、負極板が、既化成の満充電された負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有していると、600サイクル目の高率放電容量及び600サイクル目の5時間率容量が良好であることが確認された。
4.考察
鉛蓄電池の容量とサイクル寿命性能を維持しつつ、負極活物質を削減する技術が求められている。発明者は、防縮剤を工夫することでこの技術を達成しようとするものである。防縮剤の工夫による、その期待する効果は、第1に、負極活物質の比表面積を大きくし、負極板の放電容量、特に高率放電容量を向上させることである。
第2に、充放電を繰り返すサイクル使用において、負極板の充電受入性能を向上させ、その寿命を維持、向上させることである。
第3に、フォークリフトや電気自動車など動力用電源では、サイクル使用の中で特に劣化が著しい高率放電容量を維持することが期待される。
上記第1の効果について説明する。負極の放電容量、特に、高率放電容量は負極板内の電解液量に影響されるとともに、負極活物質の表面積に概ね比例して増減する。負極活物質の表面積を増加させるためには、活物質量を増やすか、または活物質の比表面積を増大させればよい。しかしながら、前者は原価面で不利になる。さらに、負極活物質量を増やすためには負極板を厚くするか、負極活物質を主成分とする負極電極材料の密度を増大させる必要がある。しかしながら、限られた単セルの寸法の中で負極板の厚みを増やすことには限界があり、また負極電極材料の密度を増大させると負極板内の電解液量が減少し、高率放電容量を制限する側面が現れるので、いずれも電池設計上の限界がある。そこで、防縮剤の第1の効果は、負極活物質量を削減しても、その比表面積を増大させることで放電容量を維持、向上させることである。
次に、上記第2の効果について説明する。負極板を放電すると負極活物質たる金属鉛の微粒子が硫酸鉛に変化する。この硫酸鉛の結晶が充電する際に金属鉛に還元されず硫酸鉛結晶のまま残ることがあり、この硫酸鉛結晶が負極板に蓄積するとその放電容量が低下し、負極板および電池の寿命を迎える。また、硫酸鉛の結晶は時間とともに体積増加し、その分比表面積が小さく充電されにくい結晶に変化する。さらに、負極活物質の削減により、負極活物質の理論容量に対する放電量の比率(「負極活物質の利用率」と定義する)を大きくすると、言い換えれば利用率を高くすると、放電終了時に負極板に生じている硫酸鉛の体積割合が大きくなり、これが負極活物質の充電経路を断ち切り、充電を妨げるよう作用する。防縮剤の第2の効果は、この現象に関わるものである。第2の効果は、硫酸鉛の結晶を微細化し充電されやすい硫酸鉛の結晶形状を維持すること、および充電時の導電経路を確保することによる以下の効果である。すなわち、負極活物質を削減してその利用率を高めても、負極活物質の充電受入性能を維持、向上させることである。なお、硫酸鉛の結晶を微細化することは、還元後の金属鉛の比表面積を増大させる上でも有効である。
リグニンスルフォン酸やビスフェノール類などの有機物(有機防縮剤)は、負極板に添加されて、第1の効果を発揮するものと推測される。また、硫酸バリウムにも硫酸鉛の結晶を微細化することで、第1の効果を発揮するものと推測される。第2の効果のためには、硫酸バリウムとカーボンとの混合物等が添加される方が好ましい。この混合物のうち、硫酸バリウムの作用は硫酸鉛の結晶を微細化し維持することであると推測される。
第3の効果について説明する。サイクル使用中に負極活物質の比表面積は縮小することがある。たとえば有機防縮剤としてリグニンを採用した場合、程度の差はあるが、サイクル中にリグニンが活物質から溶出、分解し、効果が低減する場合がある。硫酸バリウムは溶出、分解の恐れがないので、リグニンを補う防縮剤として採用できる。
〔1〕放電容量を増加させること、〔2〕負極板の寿命を向上させること、及び〔3〕活物質の利用率向上により活物質を削減すること、すなわち原価を低減すること、は相反する性質を有する。従って、負極板の設計上の自由度を上げるため、従来、より有効な負極防縮剤が求められてきた。特に、サイクル使用による高率放電容量の減少を緩和するには、鉛活物質量を増やすことが従来の主な対策であった。しかし、この対策では、原価面の問題に加え、その効果には限度があり、より有効な負極防縮剤が求められてきた。本実施例の一態様の鉛蓄電池はこの要請に応えるものである。
すなわち、本実施例の一態様の鉛蓄電池は、サイクル寿命、及び高率放電容量を維持しつつ、負極活物質の利用率を、従来に比べて高めて、負極活物質の量を削減することを可能としているのである。
有機防縮剤に期待される作用として、次の作用が挙げられる。すなわち、期待される作用は、〔1〕負極活物質の表面積を維持、増大させること、〔2〕利用率40%を繰り返す深い放電においても、負極活物質の充電受入、すなわち硫酸鉛還元の電気化学的過程を円滑に進めることである。前者のために既述の有機防縮剤が有効であり、後者のためには硫酸バリウムが有効であると推測される。さらに、カーボンの適切な配合も有効である。
しかしながら、例えば、硫酸バリウムは負極活物質の比表面積増大と充電受入性能の向上に寄与する一方で、過剰に含有させると充電時の導電経路を遮断し還元(充電)過程を妨げるおそれがある。導電経路を形成するカーボンも、これを過剰に含有させると負極電極材料ペーストの充填を妨げ製造工程に支障をもたらす場合がある。従って、負極電極材料の密度と、添加剤の含有量を適切に選択することも重要な場合がある。
なお、有機防縮剤としては、β−ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒドによる縮合物等のナフタレン系防縮剤を用いた場合であっても、(1)単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率にて45%以上であり(2)負極電極材料は、有機防縮剤を含有し、(3)負極電極材料は、硫酸バリウムを含有し、(4)有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、4000μmol/g以上であると、ビスフェノール系防縮剤を用いた場合と同様の効果が得られる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではない。
本発明は、負極電極材料の密度を下げても、サイクル使用した場合の高率放電容量を高い水準で維持できる鉛蓄電池に広く適用することができる。

Claims (3)

  1. 正極板と、
    負極板と、
    電解液と、を備えた鉛蓄電池であって、
    前記負極板は、負極電極材料を備え、
    単セル内の電解液の理論容量の、単セル内の負極理論容量に対する比〔単セル内の電解液の理論容量/単セル内の負極理論容量〕が百分率にて45%以上であり、
    前記負極電極材料は、有機防縮剤を含有し、
    前記負極電極材料は、硫酸バリウムを含有し、
    前記有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、3000μmol/gより大きい鉛蓄電池。
  2. 化成後の満充電状態の前記負極電極材料の密度が、3.1g/cm以上4.2g/cm以下である請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 次の要件A又は要件Bを満たす請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。

    (要件A)
    化成後の満充電状態の前記負極電極材料の密度が3.1g/cm以上3.5g/cm以下であり、かつ、
    化成後の満充電状態の前記負極板は、既化成負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.1mass%以下含有している。

    (要件B)
    化成後の満充電状態の前記負極電極材料の密度が3.5g/cm以上4.2g/cm以下であり、かつ、
    前記負極板は、化成後の満充電状態の負極電極材料100mass%に対し、硫酸バリウムを1.5mass%以上2.5mass%以下含有している。
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