以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
図1は、本実施形態に係る電池パックを模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る電池パックを模式的に示す分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る電池パックが備える電池モジュールの一例を模式的に示す斜視図である。図1及び図2に示される電池パック10は、例えばフォークリフト等の産業車両のバッテリーとして使用され得る。
電池パック10は、開口部2aを有する筐体2と、開口部2aを塞ぐと共に、複数の固定部材B(例えばボルト等の締結部材)によって筐体2に固定される蓋4と、筐体2内に収容される複数(例えば8つ)の電池モジュールMとを備える。図2では電池モジュールMが省略されている。
各電池モジュールMは、図3に示されるように、一方向に配列された複数の電池セル61を有する。各電池セル61は、枠体をなす電池ホルダ62によって保持されている。電池セル61は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であり、ケース内に電極組立体を収容している。電池セル61には、正極端子及び負極端子が設けられている。
各電池セル61は、極性の異なる端子が隣り合うように配列されており、バスバー63によって電気的に直列に接続されている。電池セル61の配列端には、複数の電池セル61を配列方向に拘束可能な一対のエンドプレート64がそれぞれ設けられている。各エンドプレート64には、電池モジュールMを筐体2又は蓋4に固定するためのブラケット65が設けられている。電池モジュールMは、例えばボルト等の締結部材により、ブラケット65を介して筐体2又は蓋4に固定される。各ブラケット65は、各エンドプレート64と一体でもよい。
以下、図1、図2、及び図4を参照して、電池パック10について詳述する。図4は、本実施形態に係る電池パックの筐体を模式的に示す平面図である。図1、図2、及び図4には、XYZ直交座標系が示されている。
上述のように、電池パック10は、筐体2と、複数の位置決め部材P(例えばボルト等の締結部材)によって筐体2に対して位置決めされると共に、複数の固定部材Bによって筐体2に固定される蓋4とを備える。筐体2は例えば有底筒状であり、筐体2には耐食性を向上するための塗装が施されている。例えば、筐体2には種々の電着塗装が施されており、約20μm〜30μmの厚さを有する塗装膜が設けられている。筐体2の開口部2aは、例えば多角形状(具体例としては、矩形形状)を呈している。電池パック10は、開口部2aと蓋4との間に配置されるシール部材を備えてもよい。シール部材は、例えば開口部2aを取り囲むリング形状を有する。シール部材は、例えば発泡体からなる。
筐体2は、底壁20と、複数の壁22,24,26,28を有する側壁21とを備え得る。底壁20は開口部2aに対向配置される。側壁21は、底壁20から立設しており、壁22,24は互いに対向配置されると共に、壁26,28は互いに対向配置される。底壁20及び側壁21のそれぞれは、例えば鉄板等の金属板である。すなわち、筐体2は、例えば金属製の筐体である。底壁20と各壁22,24,26,28との間は、溶接により接続される。隣り合う壁22,24,26,28同士も溶接により接続される。本実施形態において、複数の電池モジュールMは底壁20に固定されているが、側壁21に含まれる壁22,24,26,28のいずれかに固定されてもよい。
壁22は、本体部22bから壁24の反対側に突出する突出部22aを有している。本体部22bは、例えば互いに離間した2つの板状部材を有する。突出部22aはそれらの2つの板状部材間に配置される。突出部22aは、互いに対向配置されYZ平面に沿った2つの板状部材と、それらの2つの板状部材の間に配置されXY平面に沿った板状部材とを有する。突出部22a及び本体部22bに含まれる板状部材同士の間は、溶接により接続される。
側壁21における開口部2a側の端(底壁20に接続される端とは反対側の端)には、開口部2aを画成する枠状のフランジ部30が設けられている。フランジ部30は、筐体2の内部に向かって突出する部材であり、例えば鉄板等の金属板である。フランジ部30と壁22,24,26,28との間は、溶接により接続されている。このため、フランジ部30は、筐体2の一部とみなすことができる。フランジ部30には、各位置決め部材Pが挿入される複数の第1貫通孔2bと、各固定部材Bが挿入される複数の第2貫通孔2cとが設けられている。第1貫通孔2b及び第2貫通孔2cについては、下記にて詳述する。なお、複数の第1貫通孔2bの一部は、第3貫通孔とも呼称され得る。
蓋4は、例えば鉄板等の金属板である。蓋4には複数の電池モジュールMが固定されている。蓋4には、複数の位置決め部材Pのそれぞれが挿入される第1穴部4aと、複数の固定部材Bのそれぞれが挿入される第2穴部4bとが設けられている。第1穴部4a及び第2穴部4bについては、下記にて詳述する。
以下、図1、図2、及び図4に加えて図5〜図7を参照して、第1貫通孔2b、第2貫通孔2c、第1穴部4a、第2穴部4b、位置決め部材P、及び固定部材Bについて詳述する。図5は、本実施形態に係る電池パックのフランジ部の要部断面図である。図6は、筐体に対する蓋の取り付け時を示す模式図である。図7は、位置決め部材が除かれた状態の第1貫通孔の拡大図である。
上述したように、フランジ部30には、複数の第1貫通孔2b及び複数の第2貫通孔2cが設けられている。第1貫通孔2bは、図4〜図6に示されるように、フランジ部30を貫通する略円柱形状の貫通孔である。第1貫通孔2bの内面は、筐体2の塗装と同時に塗装されている。すなわち、第1貫通孔2bの内面上には、約20μm〜30μmの厚さを有する塗装膜Tが設けられている。第1貫通孔2bの内面は、フランジ部30において第1貫通孔2bを画成する表面に相当する。また、第2貫通孔2cは、第1貫通孔2bと同様に、フランジ部30を貫通する略円柱形状の貫通孔である。第2貫通孔2cの内面は、第1貫通孔2bと異なり、実質的に塗装されていない。換言すると、第2貫通孔2cの内面上の90%以上、好ましくは95%以上には塗装膜Tが設けられていない。第2貫通孔2cの一部が塗装される場合、例えば第2貫通孔2cの一端部又は両端部のみが塗装される。
蓋4に設けられる複数の第1穴部4aのそれぞれは、略円柱形状を有する有底の穴である。蓋4が筐体2に固定されたとき、複数の第1穴部4aのそれぞれは、対応する第1貫通孔2bに重なるように設けられており、筐体2側の表面から窪む溝である。また、蓋4に設けられる複数の第2穴部4bのそれぞれは、蓋4を貫通する略円柱形状の貫通孔である。蓋4が筐体2に固定されたとき、複数の第2穴部4bのそれぞれは、対応する第2貫通孔2cに重なるように設けられている。各第2穴部4bの内面には、例えば雌ねじになるための溝が設けられてもよい。第1穴部4aの径は、第1貫通孔2bの径よりも大きく、第2穴部4bの径は、第2貫通孔2cの径と略同一である。なお、第1穴部4aは、貫通孔であってもよい。第1穴部4aが貫通孔である場合、蓋4による電池パック1の気密性を確保するため、第1穴部4aは、シール部材よりも外側(側壁21側)に位置する。
第1貫通孔2bは、図2及び図4に示されるように、例えばフランジ部30において開口部2aの角を画成する部分(角部)に設けられる。第1貫通孔2bの少なくとも一つは、第2貫通孔2cよりも側壁21側に設けられることが好ましい。例えば、フランジ部30において壁24に沿って設けられる部分30aに、第1貫通孔2b及び第2貫通孔2cの両方が設けられる場合、当該第1貫通孔2bは、当該第2貫通孔2cよりも壁24側に設けられることが好ましい。また、第1貫通孔2bの少なくとも一つは、第2貫通孔2cよりも、壁22,24,26,28のうちいずれか二つによって画成される角側に設けられることが好ましい。例えば、第1貫通孔2bの少なくとも一つは、全ての第2貫通孔2cよりも、壁22,28によって画成される角23側に設けられることが好ましい。なお、図4にも示されるように、第1貫通孔2bの径は、第2貫通孔2cの径よりも大きくなっているが、これに限られない。
第1貫通孔2b及び第1穴部4aのそれぞれには、例えば頭部及び円柱状の金属軸部を有する位置決め部材Pが挿入されている。本実施形態では、図6に示されるように、各位置決め部材Pは締結部材であり、対応する第1貫通孔2bに螺合されて挿通している。また、各位置決め部材Pの先端は、対応する第1穴部4aに係止するように、フランジ部30から筐体2外へ突出している。上述したように、第1穴部4aの径は第1貫通孔2bの径よりも大きいため、位置決め部材Pは第1穴部4aと螺合しない。これにより、筐体2上に配置された蓋4の位置決め部材Pの軸方向への移動は、位置決め部材Pによって完全には規制されない。位置決め部材Pの機能は、その先端が筐体2外へ突出することにより発揮される。このため、位置決め部材Pは、第1貫通孔2bに良好に挿入される必要はないので、当該第1貫通孔2bの内面が塗装されていても問題ない。
なお、位置決め部材Pとして締結部材が用いられる場合、図7に示されるように、第1貫通孔2bの内面には、雌ねじになるための溝が設けられてもよい。位置決め部材Pが第1貫通孔2bに螺合される場合、第1貫通孔2bの内面において、位置決め部材Pに接触する部分の塗装膜Tが剥がれることがある。このとき、図7に示されるように、第1貫通孔2bの内面の少なくとも一部が塗装された状態になる。
第2貫通孔2c及び第2穴部4bのそれぞれには、例えば頭部及び円柱状の金属軸部を有する固定部材Bが挿入されている。本実施形態では、図6に示されるように、各固定部材Bは、対応する第2穴部4b及び対応する第2貫通孔2cに螺合されて挿通している。このとき、各固定部材Bの先端が筐体2の内部に入り込むように、当該固定部材Bが蓋4側から筐体2に挿入されている。固定部材Bは、第2貫通孔2c及び第2穴部4bの両方を良好に挿通していることが望ましい。このため、第2貫通孔2cの内面の径が設計時と変化しないように、当該内面は塗装されないことが好ましい。
以下、図8を参照して、本実施形態の電池パックの製造方法の一例を説明する。図8は、本実施形態の電池パックの製造方法を示すフローチャートである。
図8に示されるように、まず第1工程として、筐体2を準備する(ステップS1)。第1工程では、上述した第1貫通孔2b及び第2貫通孔2cが設けられたフランジ部30を有する筐体2を準備する。また、第1工程では、筐体2の他に、固定部材B、位置決め部材P、蓋4、及び電池モジュールMを準備する。
次に、第2工程として、筐体2を塗装する(ステップS2)。第2工程では、まず各第2貫通孔2cに例えばゴム栓を押し込むことにより、各第2貫通孔2cを封止する。次に、第1貫通孔2bを封止せず、第2貫通孔2cを封止した状態にて、筐体2を電着塗料内に浸漬する。筐体2を電着塗料に浸漬させた後、当該筐体2を電着塗料内から取り出す。そして筐体2の内部に溜まった電着塗料を、第1貫通孔2b(及び第3貫通孔)を介して排出した後、筐体2を乾燥する。筐体2の乾燥後、ゴム栓を第2貫通孔2cから抜くことにより、筐体2における第2貫通孔2cの内面以外の部分に電着塗装を施す。
次に、第3工程として、塗装後の筐体2内に電池モジュールMを収容する(ステップS3)。第3工程では、電池モジュールMを筐体2内に収容した後、当該筐体2に電池モジュールMを固定する。電池モジュールMの一部が蓋4に固定されている場合、蓋4に固定されていない電池モジュールMをまず筐体2内に収容する。これらの電池モジュールMを固定した後、蓋4に固定された電池モジュールMを筐体2内に収容するように、筐体2に蓋4を被せる。
次に、第4工程として、蓋4を筐体2に固定する(ステップS4)。第4工程では、まず、各位置決め部材Pを対応する第1貫通孔2bに固定する。次に、蓋4をフランジ部30上に配置する。次に、位置決め部材Pによって筐体2に対して蓋4を位置決めした後、蓋4によって開口部2aを塞ぐ。そして各固定部材Bを対応する第2貫通孔2c及び第2穴部4bに挿入し、当該固定部材Bによって蓋4を筐体2に固定する。以上の第1工程〜第4工程を経ることによって、本実施形態の電池パック10を製造する。
本実施形態の製造方法によって製造される電池パック10によれば、塗装の際に筐体2内部に溜まる電着塗料を、固定部材Bが挿入される第2貫通孔2cから排出せず、位置決め部材Pが挿入される第1貫通孔2bから排出することができる。これにより、電着塗料を排出する際に、第2貫通孔2cの内面を実質的に塗装せず、第1貫通孔2bの内面を塗装することができる。このようにして第2貫通孔2cの内面に実質的に塗装を施さないことにより、当該第2貫通孔2cに固定部材Bを良好に挿入できる。このため、当該固定部材Bによって筐体2と蓋4とを確実に固定できる。加えて、位置決め部材Pが挿入される第1貫通孔2bを、電着塗料を排出するための貫通孔と兼用することにより、筐体2の製造におけるコストアップを抑制しつつ、安定して塗装された筐体2を有する電池パック10を提供できる。
さらには、本実施形態では第1貫通孔2bの内面が塗装されることにより、当該内面の耐食性を向上できる。したがって、第1貫通孔2bに起因したフランジ部30の錆及び腐食の発生を抑制できる。
フランジ部30には、第1貫通孔2bが複数設けられてもよい。例えば、フランジ部30には、1つの第1貫通孔2bだけでなく、当該第1貫通孔2bと同様の第3貫通孔が設けられてもよい。この場合、複数の貫通孔を介して筐体2内に溜まる電着塗料を良好に排出できる。加えて、複数の位置決め部材Pを用いることによって、筐体2に対する蓋4の位置を、精度よく定められる。
第1貫通孔2bは、第2貫通孔2cよりも筐体2の側壁21側に設けられてもよい。この場合、筐体2の側壁21とフランジ部30とがなす角に溜まる塗料が、第1貫通孔2bによって良好に排出される。
図9(a)は、本実施形態の変形例に係る筐体の要部拡大平面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線断面図である。図9(a),(b)に示されるように、少なくとも一つの第1貫通孔2bの内面の一部は、筐体2の側壁21の一部によって構成されている。具体的には、当該第1貫通孔2bの内面の一部は、壁24の一部によって構成されている。この場合、筐体2内部に溜まる塗料が、フランジ部30に遮られることなく、側壁21の一部を伝って第1貫通孔2bから良好に排出される。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態及び上記変形例に限定されない。
例えば、上記実施形態及び上記変形例において、筐体2の開口部2aは、多角形状を呈しなくてもよい。例えば、開口部2aは、略円形状を呈してもよい。この場合であっても、上述したような第1貫通孔及び第2貫通孔をフランジ部に設けることにより、上記実施形態及び上記変形例と同様の作用効果が奏される。
また、上記実施形態及び上記変形例において、筐体2は電着塗装されているが、これに限られない。例えば、筐体2には種々の溶剤等を用いた浸漬塗装が施されてもよい。
また、上記実施形態及び上記変形例において、蓋4には、筐体2と同様に電着塗装が施されてもよい。この場合、第1穴部4aの内面は塗装され、第2穴部4bの内面は実質的に塗装されないことが好ましい。