以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の好適な実施形態は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は以下の実施例により限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において他の種々の構成に置き換えることは可能である。
[実施の形態1]
<画像形成装置の全体構成>
図1を参照して、本発明に係る画像形成装置200を説明する。
図1は電子写真記録技術を用いた画像形成装置(本実施例ではフルカラープリンタ)200の一例の概略構成を示す断面図である。この画像形成装置200は、プロセススピード240mm/s、スループット40ppm(A4サイズ縦送り)である。
画像形成装置200において、記録材としての用紙Pにトナー画像を形成する画像形成部10は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4つの画像形成ステーションSa,Sb,Sc,Sdを有する。各画像形成ステーションは、像担持体としての感光ドラム2a,2b,2c,2dと、帯電部材3a,3b,3c,3dと、現像器1a,1b,1c,1dと、感光体ドラムをクリーニングするクリーナ5a,5b,5c,5dと、を有する。
更に、画像形成部10は、レーザースキャナ6と、転写部材4a,4b,4c,4dと、転写部材で各感光ドラムから転写したトナー画像を担持しつつ搬送するベルト7と、ベルトから用紙Pへトナー画像を転写する二次転写部材8と、を有する。以上の画像形成部10の動作は周知であるので詳細な説明は割愛する。
画像形成装置本体201内のカセット(記録材保持部)30に収納された用紙(記録材)Pはローラ31の回転によって1枚ずつ繰り出される。或いはトレイ(記録材保持部)33にセットされた用紙P(不図示)はローラ34の回転によって1枚ずつ繰り出される。その用紙Pはローラ35の回転によってベルト7と二次転写部材8とで形成された二次転写ニップ部に搬送される。二次転写ニップ部でトナー画像が転写された用紙Pは定着装置(定着部)20に送られ、トナー画像は定着装置で用紙に加熱定着される。定着装置20を出た用紙Pは、ローラ43の回転によってトレイ36に排出される。
これら一連の動作は、図9に示すように、画像形成装置200が有する制御部100によって制御がなされる。制御部100は、CPU(中央演算処理部)101と、ROM102、RAM103(記憶部)と、を有し、所定の方法で情報を処理して画像形成装置200全体の動作を制御する。
<定着装置の構成>
次に、定着装置20について、図2乃至図4を参照して説明する。
図2は定着装置20の概略構成を示す断面図である。図3は定着装置20のニップ部N、及びそのニップ部近傍の断面図である。図4は定着装置20を用紙Pの搬送方向の下流側(図2のC側)から見たときの図である。
定着装置20は、図2に示すように、筒状のフィルム(定着回転体)41と、加圧ローラ(加圧回転体)42と、ヒータ(加熱体)60と、ホルダ(支持部材)61と、加圧ステー(加圧部材)62と、を有する。
用紙Pの搬送方向に直交する幅方向について、耐熱性樹脂により形成されたホルダ61は、ホルダの平坦面に設けられた溝によってヒータ60を支持している。このホルダ61の溝とは反対側の平坦面には金属製の加圧ステー62が載置されている。ヒータ60を支持し、かつ加圧ステー628を載置したホルダ61には可撓性を有する耐熱性のフィルム41がルーズに外嵌されている。
フィルム41は、エンドレス状に形成した金属製(本実施の形態ではSUS)の基層41a(図3参照)の外周面に弾性層41bを形成し、その弾性層42bの外周面にPFA樹脂製の離型性層41cを形成したものである。弾性層41bとしては、たとえば高熱伝導シリコーンゴムをベースとしたものが用いられる。このフィルム41は、外径が24mm、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向の寸法が245mmである。
フィルム41の内面に摺接するヒータ60は細長い基板60aを有する。この基板60aは、アルミナや窒化アルミ等のセラミックからなる熱伝導性の絶縁性基板である。基板60aのフィルム41とは反対側の裏面(フィルム非摺動面)には、基板の長手方向に沿って抵抗発熱体層(発熱体)60bが設けられている。更に基板60aの裏面には、抵抗発熱体層に電気的に接続された導電パターン(不図示)と、この導電パターンに電気的に接続された電極(不図示)と、絶縁ガラス層60cが設けられている。
絶縁ガラス層60cは、抵抗発熱体層60bをオーバーコートし、外部導電性部材との絶縁性を確保する他、抵抗発熱体層について酸化等による抵抗値変化を防ぐための耐食機能、さらに機械的な損傷を防止する役割などをもつ。
一方、基板60aのフィルム41側の表面(フィルム摺動面)には、基板60aのフィルム41内面が摺動する領域に摺動層60dが設けられている。摺動層60dは、フィルム41内面との滑らかな摺動性を確保する役割をもつ。
加圧ローラ42は、図2に示すように、金属製の芯金42aの外周面に弾性層42bを形成し、弾性層の外周面に離型性層42cを被覆したものである。弾性層42bとしては、厚み約3mmの導電シリコーンゴム層が用いられ、離型性層42cとしては、厚み約50μmのPFAチューブが用いられる。加圧ローラ42は、外径が25mm、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向の寸法が230mmである。用紙Pの搬送方向に直交する幅方向について、加圧ローラ42の芯金42aの両端部は定着装置20の左右のフレームFL,FRに軸受43を介して回転可能に支持されている。
用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、フィルム41の両端部には、耐熱性樹脂により形成されたフランジ63(図4参照)がフィルムの回転方向の軌道、及びフィルムの移動を規制するように嵌合されている。つまり、左右のフランジ63は、フランジの外周面63aをフィルム41内面に摺接させることによってフィルムの回転方向の軌道を規制する。また左右のフランジ63は、フィルム41の端部が用紙Pの搬送方向に直交する幅方向に寄った場合にフランジの規制端面63bに突き当たることによってフィルムの移動を規制する。
上記の左右のフランジ63は、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、ホルダ61、及び加圧ステー62の両端部を支持している。そして各フランジ63は、定着装置20のフレームFL,FRに保持された左右一対の加圧バネ64によりフィルム41の母線方向に直交する垂直方向に加圧されている。
加圧バネ64の加圧力によって加圧ステー62はホルダ61を用紙Pの搬送方向に直交する幅方向に均等に加圧する。これによりホルダ61はヒータ60をフィルム41の内周面(内面)に加圧してフィルムの外周面(表面)を加圧ローラ42の外周面(表面)に圧接させる。これにより加圧ローラ42は、加圧ローラの弾性層42bが潰れて弾性変形し加圧ローラ表面とフィルム41表面とで所定幅のニップ部Nを形成する。
<温度検知部材>
図6に、用紙Pの通常搬送時のサーミスタ51a,51b,51cと用紙の位置関係を示す。
51cはヒータ60の大サイズ用紙と小サイズ用紙が通過する通過領域の温度を検知するサーミスタである。図2に示しように、ヒータホルダ61に支持されたサーミスタ51cは、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、ヒータ60(不図示)の中央に接触している。このサーミスタ51cはフィルム41の温度制御を目的としている。
51a,51bはヒータ60の大サイズ用紙が通過し小サイズ用紙が通過しない非通過領域の温度を検知するサーミスタである。図2に示すように、ヒータホルダ61に支持されたサーミスタ51a(第1の温度検知部材)は、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、ヒータ60(不図示)の左側端部に接触している。図2に示すように、ヒータホルダ61に支持されたサーミスタ51b(第2の温度検知部材)は、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、ヒータ60(不図示)の右側端部に接触している。この2つのサーミスタ51a,51bはフィルム41の非通過領域の過昇温検知を目的としている。
サーミスタ51a,51bは、定着装置20の最大通紙幅のやや内側で、最大通紙幅近傍に位置している。すなわち、サーミスタ51a,51bは、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向の用紙両端部それぞれが通過する位置の近傍に配置される。具体的には、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、用紙の搬送基準位置からそれぞれ100mm外側の位置である。
LETTERサイズ紙(紙幅216mm)や、A4サイズ紙(紙幅210mm)が幅方向の中心を搬送基準位置に略一致させた状態に搬送される通常搬送の場合には、サーミスタ51a,51bは、所定の定着温度(目標温度)と略同等の検知温度を示す。一方、A4サイズ紙よりも小さいB5サイズ紙(紙幅182mm)や、A5サイズ紙(紙幅148mm)が連続して搬送されると、サーミスタ51a,51bは、所定の定着温度を超える過昇温(非通過部昇温)を検知する。この場合、その所定の定着温度を維持するように用紙Pのスループットをダウンする制御が行われる。
<加熱定着処理動作>
モータM(図2参照)の駆動力がギアG(図4参照)を介して加圧ローラ42の芯金42aに伝達され、これによって加圧ローラは図2に示す矢印方向へ回転する。フィルム41はフィルム内面がヒータ60の絶縁ガラス層60cに摺接しながら加圧ローラ42の回転に追従して図2に示す矢印方向へ回転する。
ヒータ60の電極に電源(不図示)から電力が供給されると、抵抗発熱体層60bが発熱してヒータは急速に昇温する。そしてサーミスタ50cが検出するフィルム41の検出温度を所定の定着温度に維持するようにヒータ制御部(不図示)がヒータ60への電力供給量を制御する。
未定着のトナー画像Tを担持する記録材Pはニップ部Nに導入される。この記録材Pはニップ部Nで搬送されつつヒータ60の熱によって加熱される。これによって記録材上のトナー画像Tは記録材に定着される。
<記録材の斜行・片寄せ>
カセット30、又はトレイ33から用紙Pの搬送を適切に行ううえで、ユーザは用紙の搬送方向に直交する幅方向に移動可能な規制板(不図示)を移動させて所定位置に用紙を保持させる必要がある。ところが、移動操作が不十分だったり、移動操作をし忘れたりすると、規制板が用紙Pに突き当たらない場合がある。あるいは、指定以上の量の用紙Pをカセット30やトレイ33にセットしようとして用紙の積載量が規制板の高さを越え、用紙が規制板に保持されない場合もある。
搬送開始時に、ローラ31や、ローラ34から用紙Pが受ける力は必ずしも搬送方向と一致するわけではなく、規制板の位置がずれていると、用紙の端部が保持されていないために、用紙は斜行し始めることがある。その他の例としては、用紙Pの過積載により、規制板による用紙端部の保持がなされない上に、想定外の位置に用紙の表面が摺擦し、用紙が斜行してしまうことがある。例えば、用紙Pの幅方向の片側のみ、用紙の表面が擦れて負荷を受けると、用紙に回転方向の力が加わるため、斜行となる。
搬送された用紙Pの斜行量が小さい場合にはローラ35で矯正されるが、当該ローラによる斜行の矯正量には限界がある。搬送開始時に用紙Pに大きな斜行が生じると、その斜行はローラ35で十分に矯正されず、用紙は搬送方向に対して傾いたまま二次転写ニップ部に搬送され、その後、定着装置20を通過してトレイ36上に排出される。斜行量がさらに大きい場合には、用紙Pは本来用紙が通過する領域をはみ出して搬送されるため、排出されるまでの間に搬送路中においてジャムとなったり、用紙の端部にダメージが生じる等の問題を生ずる可能性がある。
あるいは、規制板がずれることで用紙Pの幅方向の中心が搬送基準位置からずれてセットされると、いわゆる片寄せ搬送となることもある。片寄せ搬送の場合には、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、用紙が寄った側とは反対側においてフィルム41の非通過部昇温が大きくなり、期せずしてスループットが低下することがある。
また、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、フィルム41に温度差が生じると、フィルムの弾性層41bや、加圧ローラ42の弾性層42bに膨張差が起こる。すると、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向に関し、フィルム41は強い寄り力を受けてフランジ63に突き当たる。このような突き当たり現象が繰り返し起こるとフィルム41の基層41aの耐久性の低下を招くことがある。
また、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、フィルム41の温度差は、フィルムの弾性層41bや、加圧ローラ42の弾性層42bの劣化にもつながる。これらの弾性層41b,42bの劣化により、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、用紙Pの搬送性のバランスが崩れて用紙にしわなどが発生する可能性がある。
<斜行・片寄せ判別方法>
本実施の形態に係る画像形成装置の斜行・片寄せ等の搬送不良の判別方法について説明する。
本実施の形態では、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において、ヒータ60の左側端部と右側端部に接触させたサーミスタ51a,51bの検知結果を通じて、間接的にフィルム41の非通過領域の温度差の変化を検知し、用紙Pの斜行や片寄せを検知する。
図5は1枚のLETTERサイズの用紙P(最大通過幅216mm)をトレイ33に正しくセットして通常搬送した時のサーミスタ51a,51bの検知温度の推移を示す図である。この場合の用紙搬送時における定着装置20のフィルム41と用紙Pの位置関係を図6に示す。図6に示す用紙Pの搬送においては斜行が発生していないため、サーミスタ51a,51bの検知温度の差はわずかである。図5中のΔTbase、ΔTprintについては後述する。
次に、図7に、同じくLETTERサイズの用紙Pをトレイ33に過積載して用紙の幅方向の両端をフリーな状態でセットし、用紙が斜行して搬送された場合のサーミスタ51a,51bの検知温度の推移を示す。図8に、用紙Pの斜行搬送時のサーミスタ51a,51b,51cと用紙の位置関係を示す。合わせて図8に示すように、斜行量Sの定義は、用紙Pの先端E1に対し、用紙Pの後端E2がL側に寄った量とする。図示例では、斜行量Sは14mmとしている。
斜行が無ければ、図6に示すように、LETTERサイズの用紙Pの側縁E0(図6参照)とサーミスタ51a又は51bとの間の距離X(図6参照)は8mmであるが、斜行量Sが14mmにも及ぶ大きな斜行が生じると、用紙がL側に寄ってしまう。すると、搬送の途中から用紙Pの後端までの領域Yでは、R側のサーミスタ51bの位置において用紙Pがフィルム41の熱を奪わなくなる。その結果、R側ではフィルム41が昇温し、両端のサーミスタ51a−51b間で検知温度に差ΔT(ここでは7.8℃)が生じる。
先に例示した特許文献1では、この温度差を基に用紙Pの斜行や片寄せの検知を行っていたが、本発明者らの検討によれば、それだけでは高い精度の斜行・片寄せ検知ができない。その理由を以下に説明する。
図10に、一例として定着装置20が冷えた状態から、用紙Pを斜行なく連続して160枚搬送させた場合のサーミスタ51a,51bの検知温度の推移を示す。
斜行を生じずに搬送が行われても、わずか160枚の搬送中に、サーミスタ51a−51b間の検知温度差ΔTが約4℃変化することがわかる。ここでは、単一の連続通紙ジョブにおける短期間のサーミスタ51a−51b間の検知温度差の変化例を示したが、装置を長期間使用することによって生じるサーミスタ51a−51b間の検知温度差の変化もある。
サーミスタ51a−51b間の検知温度差は、フィルム41の非通過領域の過昇温ムラ、サーミスタの感度ばらつき、画像形成装置の部品や組み立てのばらつきに起因する用紙Pの片寄り、部材の耐久劣化に伴う検知温度の変動など様々な要因によって生じる。用紙Pの斜行に伴って生じる数℃の温度差によって斜行を正確に検知するためには、通常の搬送中において生じるフィルム41の非通過領域の温度差が数℃であっても無視できない。
つまり、正確に斜行を検知するため、搬送開始時の定着装置20の状態を把握する必要があり、そのために用紙Pの先端がニップ部Nに到達するタイミングのフィルム41の非通過領域の温度差を測定することとした。
そして、本実施の形態においては、前述した用紙Pの搬送前後のフィルム41の非通過領域の温度差の変化度合を基に用紙Pの斜行・片寄せを判別している。
以下、図11のフローチャートに従って、本実施の形態の画像形成装置200における用紙Pの斜行・片寄せ搬送の判別方法を詳細に説明する。
印刷開始(S1201)後、用紙Pの先端がニップ部Nに到達するタイミングで、サーミスタ51a,51bの検知温度から第1の検知温度差ΔTbaseを取得する(S1202)。
次に、用紙Pの後端がニップ部Nを通り抜けるタイミングで、サーミスタ51a,51bの検知温度から第2の検知温度差ΔTprintを取得する(S1203)。
ここで、用紙Pの先端がニップ部Nに到達するタイミングとは、用紙の先端がニップ部に到達する前後のタイミングであり、ニップ部でフィルムの熱が用紙に奪われる影響が、温度としてサーミスタ51a,51bに明確に検知される前のタイミングを指している。
同様に、用紙Pの後端がニップ部Nを抜けるタイミングとは、用紙の後端がニップ部を抜ける前後のタイミングであり、フィルムの熱が用紙に奪われた影響が、温度としてサーミスタ51a,51bの検知温度に最も大きく反映されるタイミングを示している。
本実施の形態では、用紙Pの先端がニップ部Nに到達するタイミングを、用紙の先端がニップ部に進入し始める前後所定時間、たとえば、0.3sec、合計0.6sec間と定める。その間にサーミスタ51a,51bが示すそれぞれの平均温度TLin、TRinを用いて、2つのサーミスタの温度差である第1の検知温度差ΔTbaseを、
ΔTbase=TLin−TRin (式1)
とする。
同じく、用紙Pの後端がニップ部Nを抜けるタイミングを、用紙の後端がニップ部を抜け出る時点から0.3秒後以降1.2sec後までの0.9sec間と定める。そして、その間にサーミスタ51a,51bが示すそれぞれの平均温度TLout、TRoutを用いて、2つのサーミスタの左右差である第2の検知温度差ΔTprintを、
ΔTprint=TLout−TRout (式2)
と定義する。
本実施の形態の画像形成装置200では、連続搬送で後続の用紙Pが印刷される場合、その用紙の後端がニップ部Nを通過した後、フィルム41が4回転程度、つまり約1.2secの間は斜行・片寄せに伴うフィルムの昇温の影響が大きく出ることがわかった。そのため、第2の検知温度差ΔTprintの測定タイミングを前記の通りとした。
本実施の形態では、第1の検知温度差ΔTbase、第2の検知温度差ΔTprintは所定期間の平均温度を基に算出しているが、サーミスタ51a,51bの温度差を表す指標であれば、例えば所定期間の最大値等、他の演算値を基に算出してもよい。
ここで、図5において、TLはサーミスタ51aの検知温度、TRはサーミスタ51bの検知温度を表し、用紙Pがニップ部Nに到達するタイミングの平均温度をTLin、TRinとする。また、用紙Pの後端がニップ部Nを抜けるタイミングの平均温度はTLout、TRoutである。
そして、前記した手順で求めた第1の検知温度差ΔTbaseと第2の検知温度差ΔTprintの差分|ΔTprint−ΔTbase|を演算し、演算された差分が予め設定された基準値である検知閾値Vと比較して搬送状態を判別する。
具体的には、次の条件式、
|ΔTprint−ΔTbase|≧V(例、5℃)
を満たすかどうかで判別している(S1204)。
この例では、検知閾値Vを5(℃)に設定し、上記条件式を満たした場合、すなわち、第1の検知温度差ΔTbaseと第2の検知温度差ΔTprintの差分が、検知閾値V(5℃)以上となると、用紙Pの搬送状態が異常であると判別する。すなわち、その用紙Pは、斜行・片寄せが生じているものと判別する(S1205)。
さらに、斜行・片寄せがあったものとして、カセット30、或いはトレイ33への用紙Pのセット状態が適切でない可能性があることをユーザに通知する(S1206)。
ユーザへの通知は、図9に示す制御部100から通知信号が出力され、たとえば、コントロールパネル104の表示部に表示される。もっとも、ユーザに報知できればよく、音が鳴るようにしてもよく、何らかの報知がなされればよい。
図7にも示したように、本実施の形態においては、用紙Pに斜行が発生し、斜行量Sが14mmの場合、ΔTbase=0.6、ΔTprint=7.8であったことから、
差分|ΔTprint−ΔTbase|=7.2℃となり、
用紙Pの斜行を検知することができる。
ここで用いた用紙Pは坪量が75g/m2の用紙、Xerox社製、商品名「business Multipurpose 4200」である。
上記の説明では、斜行量Sが14mmの時に生じるサーミスタ51a,51bの検知温度差の変化を例にとって用紙Pの斜行検知を説明した。本実施の形態の画像形成装置は、9mm以上の斜行が生じたときも用紙Pの斜行を検知可能であり、斜行量Sが大きいほど用紙の斜行を検知する頻度が高くなった。
<用紙サイズと判断基準>
前述したように斜行検知のし易さは、用紙Pの端部位置とサーミスタ51a,51bの位置の関係に依存しており、従って用紙のサイズによっても斜行検知のし易さには差がある。本実施の形態においては、LETTERサイズ紙を搬送する場合について説明しているが、用紙Pの斜行や片寄せ等の搬送不良を精度よく検知できるという効果は特定サイズの用紙を通紙した場合に限られるものではない。
たとえば、用紙サイズによらず、フィルム41の非通過領域の温度差の変化が所定の検知閾値以上となった場合に用紙Pの斜行を判断することが可能である。一例を挙げると、LETTERサイズ紙よりも約6mm幅が狭いA4サイズ紙では、6mm程度の斜行量でも斜行検知が可能であった。
また、用紙サイズ毎に異なる基準値である斜行検知値を設定し、用紙サイズに依らず同程度の斜行量Sの時に斜行検知をしても良い。例えば、LETTERサイズ紙の斜行を検知する斜行検知値が5℃の場合、A4サイズ紙の斜行検知値を7.5℃にし、A4サイズ紙においてもLETTERサイズ紙と同様に、約9mmの斜行が生じた場合に用紙Pの斜行を検知することができる。
<用紙の坪量と判断基準>
また、同じ斜行量でも、用紙Pの坪量によってもフィルム41の非通過領域の温度差の変化は異なり、坪量が大きいほど変化が大きく、小さいほど変化が小さい傾向にある。用紙Pの坪量や表面性等の要因によって、トナーを定着するために必要な熱量は異なる。用紙Pの坪量や種類によって画像形成のプロセススピードや、定着の制御温度(目標温度)を調整して、それぞれの用紙に対するトナーの定着性を確保するのが一般的である。
同一のプロセススピードで異なる坪量の用紙Pの定着性を確保する場合には、坪量の大きい用紙ほど制御温度を高くして与える熱量を確保しており、坪量の小さい用紙よりも大きい用紙に対しては単位面積、あるいは単位時間当たりに供給される熱量が大きくなる。
その結果、用紙Pが斜行、あるいは片寄せして搬送されると、フィルム41の非通過領域のサーミスタ51a,51bの位置に用紙が通過していないことから、坪量が大きな用紙を通紙した時ほど昇温が大きくなる。これは一般的な非通過部昇温で知られているのと同様の現象である。
従って、用紙Pの斜行に伴ってフィルム41の非通過領域の温度差が生じやすい坪量の大きな厚紙では、誤検知を防止するために、検知閾値Vを薄い紙よりも大きめにするなど、使用される用紙の坪量によっても検知閾値Vを調整する等してもよい。
<用紙の表面性と判断基準>
同様に、用紙Pの表面性もトナーの定着性に影響があり、表面性が粗い用紙Pでは制御温度を高くすることがある。前記の坪量の場合と同様に、表面性が粗い用紙Pでは検知閾値Vを大きく設定しても良い。坪量や表面性の判断は、ユーザによる設定値であっても、装置が有する不図示の用紙検知センサの検知結果等であっても良い。
<用紙種別による制御例>
本実施の形態における画像形成装置200の動作を説明する。
本実施の形態の画像形成装置200では、用紙Pの種類に応じて、通常紙プリント用モード、薄手通常紙プリント用モード、厚手通常紙プリント用モード、ボンド紙プリント用モードを有している。通常紙、薄手通常紙、厚手通常紙それぞれの想定坪量は、通常紙では75〜80g/m2、薄手通常紙では60g/m2前後、厚手通常紙では100g/m2前後である。
それぞれのプリントモード用の制御温度は、通常紙プリントモードに対し、薄手通常紙プリント用モードで(−15℃)、厚手通常紙プリント用モードでは(+15℃)である。また、ボンド紙プリント用モードでも、制御温度は通常紙プリント用モードに対し(+15℃)である。
本実施の形態では、坪量に依らず、同一サイズの用紙Pでほぼ同じ斜行量Sにて斜行を検知するために、それぞれのプリントモード毎に異なる判断基準値としての検知閾値Vを有する構成とした。前述のように、通常紙プリント用モードの斜行検知値は5℃とし、それぞれのモードの検知閾値Vを、薄手通常紙プリント用モードでは4℃、厚手通常紙プリント用モードでは6.5℃とする。さらに、ボンド紙プリント用モードでも6.5℃とすることで、LETTERサイズ用紙であれば9mmの斜行を検知することができる。
<第1の検知温度差ΔTbaseの測定タイミング>
本実施の形態における第1の検知温度差ΔTbaseの測定タイミングは、上記した通り、用紙Pがニップ部Nに到達するタイミング前後で、ヒータ60の温調制御がなされているタイミングとした。理由は、比較的、サーミスタ51a−51b間の温度差が安定しているためである。本実施の形態では、ヒータ60の温調開始は、ニップ部Nに用紙Pの先端が到達する0.3sec(およそフィルム41の1回転にかかる時間)前であり、第1の検知温度差ΔTbaseの測定開始点とした。
第1の検知温度差ΔTbaseの取得終了タイミングは、用紙Pの先端がニップ部Nに到達するタイミングとしても良いが、ヒータ60の温度が比較的安定している範囲で測定時間は長い方が望ましい。本実施の形態の画像形成装置200においては、用紙Pの先端がニップ部Nに到達後、フィルム41が約1回転した時点をΔTbaseの測定終了点とした。
フィルム41から用紙Pへの熱伝達は用紙の搬送方向の寸法約9mmのニップ部Nで局所的に行われる。用紙Pにフィルム41の熱が伝達されたか否かの影響がサーミスタ51a,51bの検知温度に現れるのは、用紙がニップ部Nに到達してからおおよそフィルム41一回転後以降である。そのため、ΔTbaseの測定終了タイミングは前記のとおりとした。
<ΔTprintの測定タイミング>
一方、第2の検知温度差ΔTprintの測定タイミングは、用紙Pのニップ部N通過がサーミスタ51a,51bの検知温度に影響しやすいタイミングとしている。用紙Pの斜行・片寄せの量は一定ではないため、フィルム41の昇温がサーミスタ51a,51bの検知温度に影響し始めるタイミングも一定ではない。
しかしながら、用紙Pがニップ部Nを通過し終えてからフィルム41が1回転(凡そ0.3sec)した後にはサーミスタ51a,51bの検知温度に用紙の斜行・片寄せの影響が出始める。また、次に搬送される用紙Pが斜行もしくは片寄せ搬送されていない場合でも、フィルム41が1回転する間は前の用紙搬送の昇温の影響が残る。さらに用紙Pの斜行や片寄せに伴うフィルム41の昇温がサーミスタ51a,51bの検知温度に反映されるまでには各部材の熱伝導性に起因するディレイもある。
これらの特性は、定着装置20の構成やその材質等に応じて変化する。しかしながら、上記の測定タイミングは、用紙Pがニップ部Nを通過する前後の第1、第2の検知温度差の変化を把握することが目的である。そのため、その目的が達せられる範囲で、構成や材質等に応じて第1、第2の検知温度差ΔTbase、ΔTprintの取得タイミングを決定することができる。
<制御ブロック構成>
図9は画像形成装置200の制御系を示すブロック図である。図11のフローチャートに基づく一連の動作は制御部100によって実行される。
各サーミスタ51a,51bは、画像形成装置200の動作を制御する制御部(判別手段)100に接続されている。斜行もしくは片寄せ搬送の検知に関して説明すると、サーミスタ51a,51bで検知された温度情報は、制御部100内部のCPU101によって、所定の演算がなされる。
演算結果はRAM103に一旦格納することができ、同じくCPU101内部のROM102にあらかじめ格納された斜行・片寄せを判断する基準値としての検知閾値Vと比較される。斜行もしくは片寄せと判断された場合には、制御部100から装置が有するコントロールパネル104、あるいはPC(パーソナルコンピュータ)105に対して信号を出力し、ユーザに用紙セットが適切でないことを報知することができる。一例の演算手順は、上記した図11のフローチャートの説明の通りであり、フローチャートに基づいて演算処理される。
また、信号を出力するだけでなく、斜行・片寄せ情報を、発生タイミング、画像形成装置200の使用状況を表すデータと共に、PC105や、画像形成装置内部のメモリに保存しておくこともできる。
本実施の形態においては、用紙1枚毎、すなわち用紙Pを1枚搬送する毎に、第1の検知温度差ΔTbaseと第2の検知温度差ΔTprintを求め、演算を行って、斜行や片寄せの搬送状態の判別を行う場合について述べてきた。しかしながら、第1、第2の検知温度差の測定タイミングや、斜行・片寄せの判断をする基準判断基準である検知閾値は、装置の構成に応じて定めるものである。
また、判断基準となる検知閾値は、前記の値に限られるものではなく、より判断の失敗を減らすように設定としても良い。
また、本実施の形態においては、ユーザに対して用紙Pのセット状態が適切でない可能性を通知するが、ユーザに通知せず画像形成装置200のメモリに残すだけにしても良い。あるいは、通知だけでなく、用紙Pの画像不良やジャムのリスクがあるため強制的に印刷を停止しても良い。
<用紙サイズと端部サーミスタ51a、51bの位置関係>
本実施の形態においては、ヒータ60に対するサーミスタ51a,51bの配設位置を定着装置20の最大通紙幅に対し所定量X(たとえば8mm)中央寄りとしたが、その配設位置はこれに限られない。
本実施の形態で述べた斜行・片寄せ検知は、サーミスタ51a,51bの配設位置でフィルムの熱量が用紙に奪われるか否か、或いは用紙が搬送基準位置からずれたことによる非通過部昇温の差によって生じるフィルムの非通過領域の温度差に基づいて行われる。そのため、斜行・片寄せ検知の観点では、対象とする用紙Pの幅方向端部位置に近い方が、検知感度が高くなる。つまり、用紙Pの斜行・片寄せ時に生じるフィルム41の非通過領域の検知温度差が大きくなり、斜行量が小さくても斜行判断が可能になる。
一方、サーミスタ51a,51bの配設目的は、小サイズ用紙搬送時の非通過部昇温検知にあり、非通過部昇温検知を目的としたサーミスタ51a,51bの配設位置とのバランスで配設位置を決定すると良い。
本実施の形態においては、A4サイズより幅が小さい用紙Pを搬送した際の非通過部昇温を精度良く検知するため、A4用紙幅よりも中央寄りにサーミスタ51a,51bを配設している。A4サイズ以上の幅広の用紙Pでは非通過部昇温を検知することが困難であるため、ヒータ60の長さを調整してA4やLETTERなど幅広の用紙Pにおいては端部の定着性を確保しつつ、非通過部昇温も最小限に抑えられる構成としている。
また、本実施の形態においては、サーミスタ51a,51bをヒータ60のフィルム非摺動面側に接触させる構成について説明してきたが、サーミスタの配設位置はこれに限らない。サーミスタ51a,51bをフィルム41内面に当接させる、あるいは、フィルム41表面側から非接触でフィルムの温度を測定する等の構成でもよい。
つまり、セラミックヒータ以外の熱源を用いる定着装置、例えばハロゲンヒータを用いた従来公知の熱ローラ方式や、定着部材の外周面を直接加熱する方式、あるいは誘導加熱方式などの定着装置に対しても適用させることが可能である。定着装置の構成によってフィルム41や加圧ローラ42等の温度が温度検知手段の検知温度に反映されるまでの時間は異なるため、構成毎に測定タイミングを調整すれば良い。
サーミスタ51a,51bの配置について、用紙Pの搬送基準位置を中心として対称である場合を例に説明したが、用紙Pの搬送前後の温度差を比較する本実施の形態の構成であれば、配置位置は対称に限られるものではなく、非対称であってもよい。
本実施の形態ではΔTbaseを、搬送される用紙Pの1枚毎に取得したが、例えばフィルム41の温度を直接検知するようにしてもよい。直接検知する場合にはΔTbaseの温度測定時間が短くなる可能性があり、ΔTbaseの測定がやや不安定になる。そのような場合にはΔTbaseを直近の数枚の平均値としてもよい。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2においては、第1の検知温度差と前記第2の検知温度差の差分を連続する複数枚の用紙Pの搬送にわたって演算・保持し、複数枚分の差分を予め定めた手順で処理して得られる差分情報から用紙の斜行・片寄せの搬送状態を判別する。すなわち、複数枚の通紙で得られた差分データを取得して記憶し、所定の方法、たとえば統計的な手法で演算して得られた差分情報を基に、用紙Pの斜行・片寄せの搬送状態を判別し、用紙のセット状態が適切でない可能性があることをユーザに通知する。
図12は本実施の形態2に係る定着装置20の概略構成を示す断面図である。
サーミスタ51a,51bは、フィルム41表面に当接しており、より直接的に用紙Pの搬送に伴うフィルムの非通過領域の温度変化を検知可能な構成となっている。本実施の形態においては、サーミスタ51a,51bとフィルム41の摺擦によるフィルム表面上の摺擦傷が画質に影響を与えないよう、サーミスタb51a,51bの配置は装置の最大通紙幅の端部近傍で、用紙Pの搬送基準位置から106mmの位置とした。
つまり、LETTERサイズの用紙Pを通紙しても、通常の印刷物には両端に5mmずつの余白を持って印刷が行われるよう制御されているため、画質に影響を与えることはほとんどない。また、画像形成プロセス方向においては、図12に示すように、用紙Pの搬送方向において、ニップ部Nの後端から下流側の方向に所定角度だけ離れた位置となっている。本実施の形態では約40°(=θ)の位置としている。これは用紙Pの搬送の妨げとなることなく、ニップ部Nの用紙Pの搬送方向の下流側直後の温度を測定可能な位置である。
それ以外の装置構成は、実施の形態1と同様であり、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明は省略する。
本実施の形態2においては、フィルム41の表面温度の変化を直接かつ適時測定している。
また、用紙Pの一枚毎の搬送で得られるデータは、実施の形態1と同様に、第1の検知温度差ΔTprintと第2の検知温度差ΔTbaseの差分(ΔTprint−ΔTbase)である。用紙Pの複数枚に渡る傾向から斜行・片寄せの搬送状態を判断することで、用紙のセット状態をより正確に判断することができる。この方法によれば、単発の現象の検知はできない一方、斜行や片寄せの誤検知によってユーザに不必要な通知をすることが少なくなるため、ユーザにとってバランスの良い装置を提供することができる。
例えば、カセット30や、トレイ33上への用紙Pのセットの状態が適切でない場合、用紙毎に搬送状態がばらつくことがある。つまり用紙Pを搬送する毎に斜行となる用紙もあれば、斜行しない用紙もある。したがって、本実施の形態2においては、所定の頻度以上に差分|ΔTprint−ΔTbase|が基準値を超えた場合にのみ、ユーザに対して用紙Pのセット状態が適切でない可能性を通知する方法を採用した。
すなわち、制御部100は、複数枚の用紙一枚毎、すなわち搬送される用紙Pの1枚毎に、差分|ΔTprint−ΔTbase|が、予め設定された基準値である仮検知閾値以上になると、搬送状態が異常と仮検知する。そして仮検知の回数が複数枚の用紙Pの搬送中に予め設定された回数以上の頻度で検知された場合に、搬送状態を異常、すなわち、斜行・片寄せが生じていると判別する。
具体的には、仮検知閾値Vを4℃とし、差分|ΔTprint−ΔTbase|が4℃以上かどうかを判断し、4℃以上の場合には、斜行・片寄せ状態であると仮検知する。そして、直近の10枚以下の搬送中に3回以上の頻度で斜行・片寄せ状態を仮検知した場合に、斜行・片寄せ検知の判断を確定させ、搬送状態の異常、すなわち仮斜行・片寄せ状態が検知されたものと判断し、ユーザに通知を行う。
本実施の形態では、複数枚の用紙Pの搬送傾向を把握すること、さらに、検知失敗に伴うユーザビリティの低下のリスクは実施の形態1よりも低いことから、基準値としての仮検知仮閾値を実施の形態1の検知閾値よりも小さくしている。
本実施の形態の画像形成装置200は、前述したように実施の形態1とはサーミスタ51a,51bの配置が異なる。サーミスタ51a,51bは、ニップ部Nの用紙Pの搬送方向の下流側直後で、かつフィルム41の表面に当接している。本構成では、実施の形態1と比較してフィルム41の温度変化をサーミスタ51a,51bが検知するまでの時間が短くなるので、実施の形態1とはΔTbase及びΔTprintの取得タイミングを異ならせている。
本実施の形態2における第1の検知温度差ΔTbaseのデータ取得タイミングは、用紙Pの先端がニップ部Nに到達する前の0.3sec間である。また、第2の検知温度差ΔTprintのデータ取得タイミングは、用紙Pの後端がニップ部Nを通過した直後から0.3sec間である。
第1の検知温度差ΔTbaseのデータ取得タイミングは、用紙Pの先端がニップ部Nに到達する直前の、フィルム41の表面温度が最も安定する期間である。また、第2の検知温度差ΔTprintのデータ取得タイミングは、用紙Pがニップ部Nを通過してフィルム41に及ぼした影響を、外乱を受けずに検知できるタイミングとした。
表1に、トレイ33に用紙Pを過積載し、10枚連続で搬送を行った実験結果を示す。
2枚目、8枚目、10枚目で判断基準値以上となる大きな斜行・片寄せが起きており、10枚中3回の頻度で仮斜行・片寄せを示しているので、斜行・片寄せ検知条件を満たしている。そこで、斜行・片寄せ検知の判断を確定し、用紙Pのセットが適切でない可能性をユーザに通知する。
次に、図13のフローチャートに従い、本実施の形態2の制御について、実施の形態1との差異を中心に、その制御フローを説明する。
画像形成装置200が用紙Pの搬送を開始する(S1401)。
すると、制御部100は実施の形態1と同様に、各用紙Pの搬送毎に第1の検知温度差ΔTbase、第2の検知温度差ΔTprintを取得し(S1402、S1403)、その差分|ΔTprint−ΔTbase|を算出する。
本実施の形態2の特徴として、直近10枚の搬送で得られた差分|ΔTprint−ΔTbase|をRAM103に保持する。そして、10通紙中における差分データについて、|ΔTprint−ΔTbase|≧4に該当する頻度である通紙数をカウントする(S1404)。
このようにして得られた直近10通紙中に斜行・片寄せが生じていると仮検知された開通(頻度)が、ROM102に保持する検知閾値、たとえば3回に達した場合(S1405)に、異常検知を確定させ(S1406)、ユーザに通知をおこなう(S1407)。
この方法によれば、実施の形態1と比較すると即時性は劣るものの、各用紙Pの搬送に対しては検知の感度を低下させることなく、より精度の高い情報をユーザに与えることが可能となる。つまり、検知失敗に伴うユーザビリティの低下を招くことがより少ない装置をユーザに提供することができる。
本実施の形態では、サーミスタ51a,51bはフィルム41に接触する構成としたが、接触式のサーミスタを用いると前記したように配置が制限される。温度検知手段として非接触式のサーモパイル等を用いると、コストアップにはなるものの、フィルム41の非通過領域の温度検知手段の配設位置に制限が無く、装置毎の設定の自由度が高いというメリットがある。
また、複数枚の用紙Pの搬送で得られた差分データの処理方法は、上記に限らない。本実施の形態では直近10枚以下の搬送中3回以上、閾値を越える場合にユーザ通知をおこなう構成としたが、一枚毎の判断よりも精度を高めることが目的であるので、より即時性を求める場合には直近5枚以下の搬送中2回、等としても良い。
その他の例では、前記した差分|ΔTprint−ΔTbase|の値を、搬送数枚に渡って測定、及び記憶しておく。そして差分|ΔTprint−ΔTbase|の標準偏差を求め、ばらつき具合から用紙Pのセットの状態が適切でないことを通知してもよい。また、その他の判断条件として、所定枚数中の頻度ではなく、連続して差分|ΔTprint−ΔTbase|が予め設定した基準値を越えることなど、としてもよい。
また、複数枚の搬送に渡って測定及び記憶した差分|ΔTprint−ΔTbase|の合計値が、予め設定した基準値を超えるかどうかを判断条件としても良い。
本実施の形態でも、実施の形態1と同様、サーミスタ51a,51bの配設位置は斜行もしくは片寄せの検知の対象となる用紙Pの端部からやや中央寄りとしているが、用紙の端部よりも外側(フィルム端部側)であってもよい。斜行もしくは片寄せにより、サーミスタ51a,51bの配設位置においてフィルム41から用紙への熱供給の差、あるいはフィルムの非通過領域に非通過部昇温による温度差が生じるために、前記した方法により斜行・片寄せ検知が可能である。
[実施の形態3]
本実施の形態3も、実施の形態2と同様に、第1の検知温度差と前記第2の検知温度差の差分を連続する複数枚の用紙Pの搬送にわたって演算・保持し、複数枚分の差分から搬送状態を判別する処理方法の一例である。装置の構成は実施の形態2と同様である。
本実施の形態3では、カセット30や、トレイ33への用紙Pのセットが適切でない場合の特徴である、用紙の搬送状態のばらつきに着目し、フィルム41の非通過領域の温度差の変化である前記の差分の平均値と分散を用いて、斜行の検知を行う。ここで、差分とは、|ΔTprint−ΔTbase|の値である。
データのばらつきの指標としては、統計量として分散や標準偏差を用いるのが一般的であり、本実施の形態において分散を算出する構成としたのは、制御部100内部のCPU101が四則演算のみに対応しているためである。ばらつき具合を算出できる指標であれば、斜行の検知基準は、標準偏差や分散に限られるものではない。
データが正規分布に従う場合には、平均値(N)±標準偏差(σ)×3の範囲内に99.7%のデータ、つまりほとんど全ての値が含まれることが知られている。本実施の形態においては、前記したように用紙Pのセットが適切でないことによる斜行にはばらつきがあり、その斜行量は正規分布を示す。従って斜行に伴うサーミスタ151a,151bの検知温度差の変化量である差分|ΔTprint−ΔTbase|もばらつきを有し正規分布を示す。
実施の形態1においては、基準値としての検知閾値Vを5℃とし、用紙Pの搬送によってフィルム41の非通過領域の温度差が5℃以上変化する場合に当該用紙が斜行・片寄せしていることを判断する方法を示した。一方で、1枚の用紙Pの搬送では温度差が閾値を越えず、実施の形態1では斜行・片寄せの検知にかからない場合であっても、前記したように用紙のセットが適切でない場合にはフィルム41の非通過領域の温度差の変化がばらつくことがある。このような場合、実施の形態3で示すように、標準偏差σを導入することにより、斜行・片寄せを検知し、用紙Pのセット状態を予測できる。
具体的には、以下の式3のように、前述した正規分布に従うデータである差分|ΔTprint−ΔTbase|の範囲を、差分データ|ΔTprint−ΔTbase|の平均値、標準偏差を用いて表す。そして、平均値、及び標準偏差で規定されるデータ範囲の最大値が、予め設定された基準値である検知閾値Vを越える場合には、用紙Pのセット状態が好ましくないと判断しユーザに通知することができる。ここで用紙Pの斜行を検知するための、フィルム41の非通過領域の温度差の変化閾値は実施の形態1同様に5℃とした。
すなわち、判別式は、次式によって示される。
|ΔTprint−ΔTbase|の平均値+3×|ΔTprint−ΔTbase|の標準偏差(σ)≧5 (式3)
ただし、前記したように本実施の形態3では標準偏差σの代わりに分散σ2を扱うため、式3を変形して、
|ΔTprint−ΔTbase|の分散(σ2)
≧{(5−|ΔTprint−ΔTbase|平均値)/3}^2 (式4)
の時に斜行を検知する。
表2に、斜行が含まれていない場合(A)と斜行を含む場合(B)について、10枚連続印字した場合の差分データ|ΔTprint−ΔTbase|の各測定値を示す。ここで、斜行を含む場合のデータは、実施の形態2に用いたものと同一である。
用紙Pのセットに問題が無い場合には、
差分データ|ΔTprint−ΔTbase|の平均値は0.34、分散は0.54である。前記式4の右辺は2.41であることから、斜行・片寄せの検知条件に当たらない。
一方、用紙のセットに問題があり、連続搬送中に斜行・片寄せが含まれる場合には、
|ΔTprint−ΔTbase|の平均値は2.41、分散は2.49である。前記式4の右辺は0.75となり、その結果前記条件式を満たすことから、斜行・片寄せを検知し、ユーザに報知する。
本実施の形態3においては、差分データ|ΔTprint−ΔTbase|の平均値及び分散を用いたが、分散のみを用いて分散の大きさによって斜行検知を行っても良い。また、本実施の形態においてはばらつきが±3σの場合を例に説明したがその限りではなく、目的に応じてばらつき範囲を設定することができる。
[実施の形態4]
本実施の形態4においては、実施の形態2同様に複数枚の用紙Pの搬送で得られた情報を分析し、1枚の搬送では斜行や片寄せが判断できない場合であっても、比較的少ない搬送枚数で斜行・片寄せを正確に検知し、ユーザに通知する方法について示す。
従来、判断基準に対して片寄せされた用紙Pが搬送された場合には、ユーザビリティ(スループット保持)を重視し、比較的大きな温度差が生じるまでスループットダウンせずに搬送を続けるのが一般的であった。
しかしながら、フィルム41の非通過領域の温度差が生じたままで搬送を続けることで、フィルム41が想定以上の高温にさらされる。またフィルム41の非通過領域の温度差によりフィルムに寄り力が生じ、フィルムの端部が繰り返し応力を受けるため、定着寿命の低下を招きかねない。従って、ユーザには比較的早い段階で用紙Pのセットの状態が好ましくないことを通知した方が良いという考え方がある。
規制板による用紙Pの端部の保持が不十分でない場合に起きる片寄せ搬送では、片寄せ量が小さい場合、フィルム41の非通過領域の温度差は少しずつ広がっていくため、一枚毎の搬送では用紙のセットの状態を検知できないことがある。
本実施の形態4においては、差分(ΔTprint−ΔTbase)の変化の傾向から斜行もしくは片寄せを判断する方法について説明する。
実施の形態1乃至3とは異なり、第1の検知温度差と第2の検知温度差の差分(ΔTprint−ΔTbase)が、連続する複数枚の用紙Pの搬送中に増加又は減少傾向を示した場合に、用紙の搬送状態に異常があると判別するものである。
すなわち、片寄せ搬送では、カセット30あるいはトレイ33上において、用紙Pが用紙の幅方向の左側及び右側の何れか一方に寄せてセットされていることを想定している。そのため、差分(ΔTprint−ΔTbase)の符号が変わらない状態、つまりフィルム41の非通過領域の温度差が単調増加または単調減少することを検知して、用紙Pの片寄せ搬送を判断する。
本実施の形態4においては、連続的に搬送された複数枚の用紙Pの差分(ΔTprint−ΔTbase)の移動平均によって、用紙の片寄せ搬送を判断する。具体的には、用紙Pを3枚搬送する毎に差分(ΔTprint−ΔTbase)を平均化し、その平均値が5回に渡り連続して符号が変わらない、つまり5回とも全て正、または全て負の場合を片寄せ搬送と判断している。
用紙Pが用紙の幅方向の左側及び右側の何れか一方に片寄ると、用紙が寄った側では非通通過部昇温が起きにくい一方、用紙が寄らなかった側では非通過部昇温が大きくなり、徐々にフィルム41の非通過領域の温度差が拡大していく。つまり、このように片寄せ搬送が続く間は、搬送毎の差分データ(ΔTprint−ΔTbase)は正、または負の値がほぼ連続することになる。
しかしながら、温度検知のばらつき等の要因により、極性の逆転も起き得るため、本実施の形態4では、より温度差の拡大傾向を正しく把握するため、統計量として、データの移動平均値を基に片寄せの判断をおこなう構成とした。
表3に用紙Pの搬送基準位置から2〜3mm片寄せした状態で用紙を連続搬送した場合の結果を示す。
表3の(A)に示す実験では、差分データ(ΔTprint−ΔTbase)の値は正の値を示す傾向があるものの、6枚目のように差が0となる場合、あるいは別のケースでは負の値を示す場合もあった。
しかしながら、表3の(B)で示すように移動平均を測定することにより、温度検知のばらつきを抑えた精度の高い測定が可能となる。平均点数や取得したデータの演算は本実施の形態の限りではなく、例えば平均点数はさらに多い方が傾向の把握をしやすい。ただし、平均点数を増やすことで片寄せ検知にかかる時間が長くなることから、本実施の形態では3枚の通紙から得られるΔTprint−ΔTbase値の平均値を用いた。
本実施の形態の方法によれば、片寄せ搬送だけでなく、比較的小さな斜行が続いた場合等にも用紙Pのセット状態が好ましくないことを判断できる。また、前記演算とは別に、特許文献1のようにフィルム41の非通過領域の温度差の絶対値の閾値も持っておくことで、早い段階での片寄せ検知ができなくても、従来並みのタイミングでは片寄せ検知をすることができる。このように、二つの判断基準を持つことで少なくとも斜行や片寄せを精度よく検知する構成としてもよい。
[実施の形態5]
本実施の形態5においては、用紙Pに印字された画像情報に基づいて制御パラメータを調整することにより用紙の斜行や片寄せを精度よく検知する方法について、実施の形態1乃至4との差異のみを説明する。
用紙Pの搬送方向に直交する幅方向について、用紙Pに形成されるトナー画像Tのトナー量(画像濃度)に差がある場合、用紙がニップ部Nを通過する際には見かけ上用紙の幅方向における熱容量に差が生じた状態となる。そのため、フィルム41の非通過領域で温度差が生じる原因となる。
この課題を解決するため、以下に本実施の形態の画像形成装置200の特徴である、画像データからの画像Tの濃度情報の取得方法と、それに応じた用紙の斜行・片寄せの判断方法を説明する。
本実施の形態の画像形成装置200は、以下に説明する行程により、画像データから濃度情報を取得することによって用紙Pの斜行・片寄せの判断精度を向上させることができる。
まず、サーミスタ51aと用紙Pに印字される画像位置について、2つの実験結果を示す。いずれの実験も用いた用紙Pは坪量が75g/m2で、LETTERサイズの普通紙である。
1つ目の実験はサーミスタ位置と画像幅について調査したものである。図14(a)のように、画像形成プロセス方向に細長いベタ画像を、その画像幅方向中心とサーミスタ51aの位置が重なるように形成して1枚印刷を行った。複数の画像幅について同様の印刷を行った際の、画像幅とサーミスタ51aの検知温度の低下量との関係を図14(b)に示す。
前記の細長いベタ画像の幅が0(画像が無い)の場合のサーミスタ51aの検知温度を基準温度とする。この実験における画像のトナー量は1.00mg/cm2である。
図14(b)からわかるように、サーミスタ51aの検知温度は画像幅が6mm程度までは、画像幅の拡大にほぼ比例して検知温度が低下し、1枚の用紙Pの搬送中の温度低下量は画像幅6mmで4.0℃であった。一方、それ以上での画像幅ではほとんど画像幅の影響を受けないことがわかった。
次に、1つ目の実験と同じ手順で、画像形成プロセス方向の画像位置とサーミスタ51aの検知温度の低下量の関係を調査した。実験にはトナー量は同じで、ベタ画像の位置のみが異なる、図15(a)−1と(a)−2に示す2つの画像を用いた。その結果を図15(b)に示す。
この2つ目の実験においても、画像のトナー量は1つ目の実験同様1.00mg/cm2である。また、画像幅は6mmとした。図15(b)に示すように、画像が画像形成プロセス方向の上流半分の領域にある場合、1枚の搬送中にサーミスタ51aの検知温度は1.8℃低下し、画像が画像形成プロセス方向の下流半分にある場合、2.2℃の低下量となり、ほぼ同程度の低下量であった。
上記の2つの実験より、画像形成プロセス方向の位置に依らず、所定範囲内の濃度情報に基づきサーミスタ51a,51bの検知温度の低下量が推定できるため、それを補正することで、斜行検知精度を向上させることが可能であることがわかる。
具体的には、本実施の形態においては、サーミスタ51a,51b近傍、具体的には用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において画像形成中心から−103〜−97mm、及び+97〜+103mmの範囲内において濃度情報を算出する。ここで、濃度情報とは、−103〜−97mm、及び+97〜+103mmの2つの濃度算出範囲内の平均濃度、積算トナー量、又は平均トナー量などをいう。そしてその濃度情報に基づき、サーミスタ501a,51bの検知温度の補正を行う。
図16に、前記2つの濃度算出範囲を示す。
図16に示すように、前記2つの濃度算出範囲を、濃度算出範囲A、Bとする。また、本実施の形態においては、濃度情報として濃度算出範囲内の平均濃度を用いた。濃度算出範囲A、Bの幅は本実施の形態においては各6mmであるが、装置の構成によってその幅は変わり得る。
次に、本実施の形態における画像情報の取得方法を説明する。
図9に示すビデオコントローラ(画像処理手段)106は、ホストコンピュータ等の外部装置(不図示)から画像データを受信すると、制御部100にプリント信号を送信するとともに、受信した画像データを画像形成のためのビットマップデータに変換する。そして、このビットマップデータ由来の画像形成用の画像信号を生成し、この画像信号に応じて制御部100はレーザースキャナ6より各感光ドラム1a,1b,1c,1dに対してレーザー光を走査させる。
ここで、本実施の形態の画像形成装置200は、ビデオコントローラ106内でビットマップデータに変換された画像データから用紙Pに形成するための画像の濃度情報を取得する。より具体的には、CMYK画像データに変換された画像データからC,M,Y,K各色の濃度情報をビデオコントローラ106内で検出する。
以下、濃度情報の検出からサーミスタの検知温度補正までの流れを図17に示すフローチャートに基づいて説明する。
ビデオコントローラ106内でのビットマップデータ変換の終了を検出すると、ビデオコントローラ106は本制御フローをS1801よりスタートする。
S1802の濃度情報検出は、例えば図18のように用紙P上へ形成しようとしている画像印字領域を破線で示される複数のエリアに分割し、エリア毎に画像データの濃度情報を検出して、それを隙間なく用紙1ページ分全域で繰り返す。
本実施の形態では1ページ分全域において濃度情報を検出するが、対象とする最小限のエリアのみを対象に濃度情報を検出しても良い。分割された個々のエリアは、用紙Pの搬送方向に長さyを有し、用紙の搬送方向に直行する幅方向に長さxを有する。本実施の形態では、x、yはともに600dpi画素で18dotとした。各エリアのサイズが小さいほど精度の高い濃度情報が得られる一方、濃度算出にかかる総演算時間が長くなるので、ビデオコントローラ106等、装置の能力に応じて、x、yの値は適宜選択することができる。
ビデオコントローラ106内での画像情報は8ビット信号であり、トナー単色当たりの濃度データは最小濃度00h〜最大濃度FFhの範囲で表す。
次に前述した各濃度算出範囲A、Bの平均濃度を算出するために、それぞれの範囲に含まれる各エリアの濃度平均値(以下、Ave−dとする)を各色毎に算出する。
画像全域についてこれらの動作が終了すると(S1803)、S1804で記録材Pの各濃度算出範囲で各色の平均濃度Ave−dを算出して足し合わせ(C(Ave−d)+M(Ave−d)+Y(Ave−d)+K(Ave−d))、その合計値をD値とする。このD値は2バイトの8ビット信号となる。続いてS1805でそのD値を制御部100へ送信する。
ここまでのS1801からS1805の処理がビデオコントローラ106での制御フローになり、S1806からS1810の処理が制御部100での制御フローになる。
S1806にてビデオコントローラ106より送信されるD値を8ビット信号から制御部100にて濃度情報として扱う値(D´値)に変換する。具体的にはトナー単色当たりの最小濃度00hを0%、最大濃度FFhを100%とする。この%の値は実際の用紙P上のトナー量と相関するもので、本実施の形態では用紙上トナー量0.50mg/cm2=100%としている。
またD値は複数のトナー色の平均濃度値の合計である。そのため、D´値は100%を超える場合もあるが、本実施の形態の画像形成装置200では用紙P上のトナー量を全ベタ画像で1.00mg/cm2(D´値で200%相当)を上限となるよう画像制御される。
続いてS1807にて各濃度算出範囲A、Bの平均濃度D´(A)、D´(B)に応じて、用紙Pの斜行・片寄せ検知に用いるサーミスタ51a,51bの検知温度の温度補正量を決定する。平均濃度が0%の時補正温度を0℃、200%の時補正温度を+4.0℃として温度補正を行い、0〜200%間の補正温度は線形補間する。印刷が続く間はこの動作を繰り返し、S1808にて次ページの印刷が無いと判断した場合にはフローは終了となる(S1809)。
上記説明したように、実施の形態1乃至4で説明した構成において、さらに本実施の形態で説明した方法で補正されたサーミスタ51a,51bの検知温度を用いれば、用紙Pに印字される画像に依らず、高精度に用紙の斜行や片寄せを検知することが可能となる。
本実施の形態においては、画像情報に基づきサーミスタ51a,51bの検知温度を補正する場合を例に説明したが、そのサーミスタの検知温度ではなく、用紙Pの斜行・片寄せを検知する検知閾値(判断基準)を補正しても良い。
本実施の形態では、1枚の用紙Pが搬送される際の温度変化を例に説明したが、用紙が連続して搬送される場合には、その用紙枚数や、定着装置20の暖まり具合に応じて、さらにサーミスタ15a,15bの検知温度の補正量を調整すると良い。
前記画像情報として、具体的には濃度情報に基づくサーミスタ51a,51bの検知温度の補正について説明してきたが、濃度と相関のある情報であれば前記説明した内容に限られるものではない。例えば、本実施の形態では、ビデオコントローラ106で扱う画像情報の平均濃度D値(画像データ)を制御部100で扱う濃度情報D´に変換しているが、これに限らず画像情報Dをそのまま濃度情報として用いても良い。
また、ここまで用紙Pの搬送前後のサーミスタ51a,51bの検知温度の温度差の変化に基づく用紙の斜行・片寄せ検知について説明してきたが、本実施の形態はより簡易にサーミスタの温度差に基づいて行う用紙の斜行・片寄せ検知にも適用することができる。
サーミスタ51a,51bの感度ばらつきや、フィルム41の耐久劣化に伴う幅方向の温度差が小さい画像形成装置200においては、サーミスタの検知温度差に基づいて用紙の搬送状態を判断することが可能である。つまり、そのような装置においては、実施の形態1乃至4で説明したようなフィルム41の非通過領域の温度差変化を検知する必要がない。しかしながら、そのような装置においても、用紙P上のトナー量に応じてサーミスタ15a,15bの検知温度の低下は生じるため、画像情報に基づいてサーミスタの検知温度を補正することにより、さらに高精度に用紙の斜行や片寄せを判断することができる。
本発明に係る画像形成装置は、実施の形態1乃至5に示した画像形成装置(フルカラープリンタ)に限られず、ファクス、モノクロプリンタ、複写機、複合機など、定着装置20を備える画像形成装置に対して広く適用可能である。