JP2018016821A - 銅合金線棒材およびその製造方法 - Google Patents

銅合金線棒材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度、導電率および切削性の特性をバランスよく向上させた銅合金線棒材およびその製造方法を提供する。【解決手段】3.0〜25.0質量%Ni、3.0〜9.0質量%Sn、0〜0.20質量%Fe、0〜0.10質量%Si、0〜0.30質量%Mg、0〜0.50質量%Mn、0〜0.10質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.10質量%Pを含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金線棒材であって、転位密度が1.0×1015m−2以上であり、線棒材の長手方向に垂直な断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度が0.1〜1.0個/μm2である組織とする銅合金線棒材。【選択図】図1

Description

本発明は、銅合金線棒材およびその製造方法に関し、特に電気電子部品や、精密機器、自動車等の金属部品として使用するのに好適な銅合金線棒材の改良に関する。
例えばコネクタ、スイッチ、ソケットなどの電気電子部品に使用される銅合金材料としては、りん青銅や黄銅等の固溶強化型合金が使用されていた。しかし、近年、電子部品の著しい軽薄・短小化に伴って、これらの材料では必要とされる強度を満足できない場合が多い。そのため、特に信頼性が要求される部品には、強度の高いベリリウム銅、チタン銅等の高強度型銅合金の需要が増えているが、ベリリウム銅は、ベリリウム化合物が毒性を有することや、コストが高いといった問題点があり、チタン銅は、耐食性が低く、塩水噴霧試験で容易に腐食するといった問題があり、例えば近年登場したスマートウォッチや眼鏡型端末といったウェアラブル機器などの、人体と接触し野外での使用が想定される製品の部品としては不適当である。従って毒性が無く、強度や耐食性に優れたCu−Ni−Sn系の銅合金があらためて注目されている。また、Cu−Ni−Sn系の銅合金は、時効処理による第二相の析出によって強度を向上させる時効硬化型合金として知られている(例えば特許文献1〜5等)。
特許文献1には、仕上げ加工前の組織調整を目的として、単相域となる800℃以上の温度での熱処理と、室温で2相の出現が可能となる600〜770℃の温度範囲での熱処理の2段熱処理で行うとともに、疲労特性をさらに向上させるために、加工率0〜60%の範囲で行なう仕上げ加工後に、350〜500℃の温度範囲で時効熱処理を行い、常温状態でマトリックス(第一相)中に第二相を均一に分散させた組織を得ることで、機械的特性および導電性を実用レベルに保ちながら、安価に成形性が良好で疲れ特性に優れたCu−Ni−Sn合金の製造方法が記載されている。
特許文献2には、最終仕上げ加工前に、730〜770℃の熱処理と、急冷処理と、55〜70%の冷間加工と、400〜500℃の熱処理とを順次施し、2相領域となる温度で熱処理を行うことで、引張強度、0.2%耐力、硬度および疲労強度のいずれの特性とも改善したCu−Ni−Sn系合金が記載されている。
特許文献3には、最終冷間圧延前の溶体化処理において、結晶粒径を微細化しつつ、第二相粒子の析出を抑えることにより、高強度で、良好な曲げ加工性を有するNi−Sn系銅合金が記載されている。
特許文献4には、圧延材を780〜900℃で加熱して急冷する溶体化処理を行う工程と、加工率6〜12%で圧延加工する工程と、270〜400℃で加熱する時効処理を行う工程とを備え、溶体化処理後の所定の断面における圧延材の平均結晶粒径を6μm未満とすることにより、高い強度と優れた曲げ加工性を得ることができる銅合金が記載されている。
特許文献5には、溶体化処理材を、300〜500℃の温度範囲で時効処理を行った後に、加工率が60%を超え99%以下の冷間加工を行ない、その後、300〜500℃の温度範囲で時効処理を行うことで、高密度の転位を固定化させ、機械的強度をより高め、耐熱性の劣化を抑制したCu−Ni−Sn系合金が記載されている。
特開平2−88750号公報 特開2002−266058号公報 特開2009−242895号公報 国際公開第2014/016934A1号パンフレット 国際公開第2014/196563A1号パンフレット
ところで、近年は、腕時計の方式で手首に装着できるウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ)や、モバイル機器の小型化・高機能化に伴って、使用部品についても小型化するとともに使用個数も増加する傾向にあり、従来から、Cu−Ni−Sn合金が用いられている部品にも、省スペース化のため細線化が求められるようになり、より高強度で曲げ加工性に優れた材料を開発することが必要になってきた。特許文献1〜4に記載のCu−Ni−Sn合金では、熱処理過程において、粒径微細化および第二相粒子の個数を規定することで、高強度化や曲げ加工性の向上を図っているが、転位密度の制御に関しては考慮が払われておらず、強度の向上が十分ではなかった。
一方、特許文献5では、強度向上のため、転位密度の制御に関する検討については行われているが、導電率や切削性との良好なバランスは図られていなかった。
すなわち、特許文献1〜5のいずれにおいても、Cu−Ni−Sn合金材の切削性に関し、何ら考慮は払われておらず、切削性の向上に寄与すると考えられる第二相粒子については、強度向上に不要なものとして、寧ろその発生を抑制されており、十分な切削性が得られていなかった。
本発明は、転位密度および第二相粒子の適正化を図り、転位密度の特性を有効に発揮させ、切削屑の起点となる第二相粒子を分散させることで、特に強度、導電率および切削性の特性をバランスよく向上させた銅合金線棒材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、中間熱処理、溶体化熱処理、時効熱処理およびこれら熱処理の間で行う冷間加工の各条件を適正に制御すると共に、溶体化処理後の冷間加工の途中で、強度がピークとなるより低い温度で時効処理を行い、前記第二相粒子を一部析出させることにより、析出せずに冷間加工した時よりも転位密度を大きくでき、また、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度を0.1〜1.0個/μmとすることによって切削性を向上できる、との知見を得て、これらの知見に基づき、Cu−Ni−Sn系合金材において、特に強度、導電率および切削性の特性をバランスよく向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1) 3.0〜25.0質量%Ni、3.0〜9.0質量%Sn、0〜0.20質量%Fe、0〜0.10質量%Si、0〜0.30質量%Mg、0〜0.50質量%Mn、0〜0.10質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.10質量%Pを含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金線棒材であって、
転位密度が1.0×1015−2以上であり、
前記線棒材の長手方向に垂直な断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度が0.1〜1.0個/μmであることを特徴とする、銅合金線棒材。
(2) 前記断面において、不連続析出セル組織の面積率が20〜80%である、上記(1)に記載の銅合金線棒材。
(3) 前記Fe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPからなる群から選ばれる少なくとも1成分の含有量の合計は、0.60質量%以下である、上記(1)または(2)に記載の銅合金線棒材。
(4) 引張強度が1250MPa以上である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金線棒材。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の銅合金線棒材の製造する方法であって、
前記銅合金線棒材を与える合金組成からなる銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、第1冷間加工[工程4]、中間熱処理[工程5]、第2冷間加工[工程6]、溶体化熱処理[工程7]、第3冷間加工[工程8]、第1時効処理[工程9]、第4冷間加工[工程10]、第2時効処理[工程11]をこの順に施し、
前記中間熱処理は、加熱温度が300〜850℃、該加熱温度での保持時間が10〜300秒間および平均冷却速度が50℃/秒以上であり、
前記第2冷間加工は、加工率が50〜90%であり、
前記溶体化熱処理は、溶体化温度が650〜900℃、該溶体化温度での保持時間が5〜300秒間および平均冷却速度が50℃/秒以上であり、
前記第1時効処理は、時効処理温度が200℃以上、300℃未満、および該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間であり、
前記第4冷間加工は、加工率が50〜98%であり、
前記第3冷間加工および前記第4冷間加工の総加工率が85〜99.9%であり、
前記第2時効処理は、時効処理温度が300〜500℃、該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間であることを特徴とする銅合金線棒材の製造方法。
本発明によれば、特に強度、導電率および切削性の特性をバランスよく向上させた銅合金線棒材を提供することが可能になった。この銅合金線棒材は、電気電子部品や、精密機器、自動車等に使用される金属部品に使用するのに適している。また、本発明に従う銅合金線棒材の製造方法によれば、上記銅合金線棒材を好適に製造することができる。
図1(a)は、本発明の銅合金線棒材の長手方向に垂直な断面をバフ研磨して酸化膜を除去した後、クロム酸:水=1:1の液にて数秒研磨面を腐食することで観察用試料を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面観察したときのSEM写真であり、図1(b)は、SEM写真を画像処理したものである。
以下、本発明の銅合金線棒材の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
本発明に従う銅合金線棒材は、3.0〜25.0質量%Ni、3.0〜9.0質量%Sn、0〜0.20質量%Fe、0〜0.10質量%Si、0〜0.30質量%Mg、0〜0.50質量%Mn、0〜0.10質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.10質量%Pを含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金線棒材であって、転位密度が1.0×1015−2以上であり、前記線棒材の長手方向に垂直な断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度が0.1〜1.0個/μmであることを特徴とする。
ここで、上記合金組成に含有範囲が挙げられている成分のうち、含有範囲の下限値が「0質量%」と記載されている成分はいずれも、必要に応じて任意に添加される任意添加成分を意味する。すなわち所定の添加成分が「0質量%」の場合、その添加成分は含まれないことを意味する。
また、本発明でいう「銅合金線棒材」とは、「銅合金線材」および「銅合金棒材」の総称であり、その長手方向に垂直な径(直径、太さ)が0.3〜100mm程度の線状または棒状の銅合金材を指す。なお、以下説明を容易にするために、銅合金線棒材の長手方向に垂直な径は、銅合金線材および銅合金棒材の別にかかわらず、総称して「線径」と称する。また、本発明において銅合金線材は、線径が0.3〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましい。また、銅合金棒材は、線径が5〜100mmであることが好ましく、6〜50mmであることがより好ましい。
<合金組成>
本発明の銅合金線棒材の合金組成とその作用について示す。
(必須添加成分)
本発明の銅合金線棒材は、3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有している。
[3.0〜25.0質量%Ni]
Niは、Snとともに時効硬化能が高いため、強度を向上させるための作用を有する重要な元素である。かかる作用を発揮するには、Ni含有量は3.0質量%以上含有することが必要である。一方、Ni含有量が25.0質量%よりも多いと、金属間化合物が生成しやすくなり、生成した金属間化合物が残存すると、それが起点となって冷間加工時に割れが生じ、冷間加工性が著しく劣化する。このため、Ni含有量は、3.0〜25.0質量%の範囲とし、好ましくは9.0〜20.0質量%とした。
[3.0〜9.0質量%Sn]
Snは、Niとともに時効硬化能が高いため、強度を向上させるための作用を有する重要な元素である。かかる作用を発揮するには、Sn含有量は3.0質量%以上含有することが必要である。一方、Sn含有量が9.0質量%よりも多いと、金属間化合物が生成しやすくなり、生成した金属間化合物が残存すると、それが起点となって冷間加工時に割れが生じ、冷間加工性が著しく劣化する。このため、Sn含有量は、3.0〜9.0質量%の範囲とし、好ましくは5.0〜8.0質量%とした。
(任意添加成分)
本発明の銅合金線棒材は、NiおよびSnの必須の添加成分に加えて、さらに、任意添加元素として、0.02〜0.20質量%Fe、0.01〜0.10質量%Si、0.01〜0.30質量%Mg、0.01〜0.50質量%Mn、0.01〜0.10質量%Zn、0.01〜0.15質量%Zrおよび0.01〜0.10質量%Pからなる群から選ばれる少なくとも1成分を含有させることができる。
[0.02〜0.20質量%Fe]
Feは、導電率、強度、応力緩和特性、めっき性等の製品特性を改善する作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Fe含有量を0.02質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Feを0.20質量%より多く含有させても、効果が飽和するだけではなく、かえって導電率を低下させる傾向がある。このため、Fe含有量は、0.02〜0.20質量%とする。
[0.01〜0.10質量%Si]
Siは、半田付け時の耐熱剥離性や耐マイグレーション性を向上させる作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Si含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Si含有量が0.10質量%を超えると、導電性を低下させる傾向がある。このため、Si含有量は、0.01〜0.10質量%とする。
[0.01〜0.30質量%Mg]
Mgは、応力緩和特性を向上させる作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Mg含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Mg含有量が0.30質量%を超えると、導電性を低下させる傾向がある。このため、Mg含有量は、0.01〜0.30質量%とする。
[0.01〜0.50質量%Mn]
Mnは、母相に固溶して伸線などの加工性を向上させると共に、粒界反応型析出の急激な発達を抑制し、粒界反応型析出によって生じる不連続性析出セル組織の制御を可能にする効果を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Mn含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Mnを0.50質量%より多く含有させても、効果が飽和するだけではなく、導電率の低下や曲げ加工性への悪影響を及ぼす傾向がある。このため、Mn含有量は、0.01〜0.50質量%、好ましくは0.25〜0.50質量%とする。
[0.01〜0.10質量%Zn]
Znは、曲げ加工性を改善するとともに、Snめっきやはんだめっきの密着性やマイグレーション特性を改善する作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Zn含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Zn含有量が0.10質量%を超えると、導電性を低下させる傾向がある。このため、Zn含有量は、0.01〜0.10質量%とする。
[0.01〜0.15質量%Zr]
Zrは、主に結晶粒を微細化させて、銅合金線棒材の強度や曲げ加工性を向上させる作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Zr含有量を0.01質量以上とすることが好ましい。しかしながら、Zr含有量が0.15質量%を超えると、化合物を形成し、導電率及び銅合金線棒の伸線などの加工性が著しく低下する傾向がある。このため、Zr含有量は、0.01〜0.15質量%とする。
[0.01〜0.10質量%P]
Pは、導電率を損なわずに強度、応力緩和特性等の製品特性を改善する作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、P含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、Pを0.10質量%より多く含有させても、特性を改善する効果が飽和するだけではなく、化合物を形成して、熱間加工性が低下する傾向がある。このため、P含有量は、0.01〜0.10質量%とする。
[Fe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPからなる群から選ばれる少なくとも1成分を合計で0.60質量%以下]
Fe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPからなる群から選ばれる少なくとも1成分の含有量の合計は、0.60質量%以下であることが好ましい。
上記任意添加成分の少なくとも1成分の含有量の合計が0.60質量%以下であれば、加工性や導電率の低下が生じにくい。このため、上記任意添加成分の含有量の合計は、0.60質量%以下とする。
[残部:Cuおよび不可避不純物]
上述した成分以外の残部は、Cuおよび不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を加味して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、S、Ag、Pb等が挙げられる。
<転位密度>
一般に、冷間加工を行うと転位密度が増加し、変形双晶が生じて組織の微細化が進み、機械的強度が増加することが知られている。例えば、特許文献5でも、時効処理後に冷間加工することで転位密度の向上が図られている。しかし、ピーク時効を行うと、冷間加工後の時効処理では、切削性の向上に寄与する第二相粒子が適切な条件で発達せず、切削性に劣る問題があった。
本発明者らは、Cu−Ni−Sn系合金に関し、強度、切削性および導電率をバランスよく向上させるため鋭意検討を行なったところ、溶体化処理後の冷間加工の途中で、強度がピークとなるより低い温度で時効処理を行い、第二相粒子を一部析出させることにより、析出せずに冷間加工した時よりも転位密度が大きくなることを見出した。
このような本発明の銅合金線棒材は、転位密度が1.0×1015−2以上であり、1.2×1015−2以上であることがより好ましい。
なお、転位密度の測定は、X線回折装置を用いて行うことができる。具体的には以下の通りである。まず、Cu管球、管電圧40kV、管電流200mAの条件のもとでX線回折測定を行い、Cu母相の格子定数を測定する。ここで、格子定数は、各面からの回折ピークより求めた格子定数の値をcos2θ/sinθの関数より外挿し、得られた値を最終的な格子定数とする。また、(111)、(220)、(311)反射面からの回折ピークの幅(半値幅)より、補正されたWilliamson−Hall法(T.Kunieda,M.Nakai,Y.Murata,T.Koyama,M.Morinaga:ISIJ Int.45(2005),1909−1914参照)を用いてひずみを求め、転位密度に換算する。
<第二相粒子>
本発明の銅合金線棒材は、その長手方向に垂直な断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度が0.1〜1.0個/μmであることが必要である。なお、本発明において「第二相粒子」とは、析出相γ((Cu,Ni)Sn)を指す。また、線棒材の長手方向は、線棒材を製造する際の加工方向に対応する。所定の粒径をもつ第二相粒子が、上記断面に所定量存在することにより、優れた切削性を実現できる。
なお、上記断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度の測定方法は、以下の方法で行うことができる。すなわち、線棒材の長手方向に垂直な断面をFIBにて切断することで、断面を露出した後、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。なお、観察視野30μm×30μmとする。個々の第二相粒子について、第二相粒子を取り囲む最小円の直径をそれぞれ写真上で測定し、粒径0.05〜1.0μmの第二相粒子の個数を測定し、その個数密度(個/μm)を算出する。
<不連続析出セル組織>
本発明の銅合金線棒材は、その長手方向に垂直な断面において、不連続析出セル組織の面積率が20〜80%であることが好ましく、より好ましく25〜60%である。なお、本発明において、「不連続析出セル組織」とは、析出相γ((Cu,Ni)Sn)と、溶質濃度の低下した母相とが形成した組織を指す。このような不連続析出セル組織は、切削性の向上に寄与するため、その面積率を上記範囲とすることにより、優れた切削性を実現できる。
なお、上記断面において、不連続析出セル組織の面積率の測定方法は、以下の方法で行うことができる。すなわち、各試験片について、試験片である線棒材の長手方向に垂直な断面を、湿式研磨、バフ研磨により鏡面に仕上げた後、クロム酸:水=1:1の液で数秒研磨面を腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)の二次電子像を用いて、400〜1000倍の倍率で写真を撮影する。撮影した画像を、画像寸法計測ソフト(Pixs2000_Pro、株式会社イノテック製)を用い、Rmaxの値を150に設定して、2値化して画像を作成し、これを解析して、母相の面積値を算出する。図1は、本発明の銅合金線棒材を、SEMを用いて断面観察したときの一例である。図1(a)は、SEM写真であり、図1(b)は、SEM写真を画像処理したものである。図1(a)の黒色部は時効処理後の母相であり、白色部は析出相γ((Cu、Ni)Sn)と溶質濃度の低下した母相とで形成された不連続析出セル組織である。母相の面積を算出する際には、上記画像寸法計測ソフトを用いて、図1(a)のSEM写真の黒色部を2値化して、図1(b)に示すように赤色部とし、赤色部を母相として計測し、それ以外の領域をセル組織の面積として求める。画像全体の面積値と赤色部の面積値との差分値を、不連続析出セル組織の面積値とし、差分値と画像全体の面積値の比率を、不連続析出セル組織の面積率として算出する。不連続析出セル組織は切削性の向上に寄与するが、強度への寄与は小さいため、観察視野における面積率は20〜80%の範囲であることが望ましい。
[銅合金線棒材の製造方法]
次に、本発明の銅合金線棒材の好ましい製造方法について説明する。
本発明の銅合金線棒材は、3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有させ、さらに必要に応じて、任意添加成分であるFe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPについては適宜含有させ、残部がCuと不可避不純物から成る合金組成を有する銅合金素材を用意し、この銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、第1冷間加工[工程4]、中間熱処理[工程5]、第2冷間加工[工程6]、溶体化熱処理[工程7]、第3冷間加工[工程8]、時効処理[工程9]、第4冷間加工[工程10]、第2時効処理[工程11]をこの順に施すことによって製造される。特に本発明の銅合金線棒材を製造するには、中間熱処理[工程5]、第2冷間加工[工程6]、溶体化熱処理[工程7]、第3冷間加工[工程8]、時効処理[工程9]、第4冷間加工[工程10]および第2時効処理[工程11]の各条件を厳しく管理することが好ましい。
Cu、NiおよびSnの原料を、鋳造機内部(内壁)が好ましくは炭素製の、例えば黒鉛坩堝にて、溶解し鋳造する[工程1]。溶解するときの鋳造機内部の雰囲気は、酸化物の生成を防止するために真空もしくは窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。鋳造方法には特に制限はなく、例えば横型連続鋳造機やアップキャスト法などを用いることができる。そして、鋳塊時に生じた凝固偏析や晶出物は粗大なので均質化熱処理[工程2]でできるだけ母相に固溶させて小さくし、可能な限り無くすことが望ましい。これは曲げ割れの防止に効果があるからである。具体的には、鋳造工程の後に、800〜1000℃に加熱して1〜24時間均質化熱処理を行い、続いて熱間加工[工程3]を実施するのが好ましい。均質化熱処理後の熱間加工は省略可能であるが、例えば、処理温度850℃程度、総加工率50%以上で行ってもよい。また、熱間加工後の材料は水冷する。このようにして、直径8〜35mmφ程度の荒引線を製造する。さらに、必要に応じて、銅合金線棒材の表皮の酸化皮膜や変質層を除去するための面削工程を設けてもよい。これは通常公知の方法により行うことができる。なお、熱間加工については、伸線加工、もしくは押出加工のどちらでも特に制限は無い。
熱間加工後、第1冷間加工[工程4]を行う。これにより、直径12.0mmφ以下の細線に加工する。この第1冷間加工の加工率は70%以上であることが好ましい。なお、加工率R(%)は下記(1)式で定義される(以下において同じ。)
R=(r −r)/r ×100 ・・(1)
上記(1)式中、rは加工前の直径(線径)であり、rは加工後の直径(線径)である。
また、冷間加工については、伸線加工、押出加工、三方ロール等を用いた圧延加工のいずれでも特に制限は無いが、好ましくは伸線加工である。なお、以下で説明する冷間加工についても同様である。
本発明の銅合金線棒材は、第1冷間加工[工程4]と溶体化熱処理[工程7]の間に、加熱温度が300〜850℃、保持時間が10〜300秒間および平均冷却速度が50℃/秒以上の中間熱処理[工程5]に続いて、加工率が50〜90%の第2冷間加工[工程6]を行なう。中間熱処理は、溶体化熱処理温度より低い温度で熱処理を行うと共に、冷却速度を50℃/秒以上とすることにより、粗大な析出物の発生を抑制しつつ、材料を完全に再結晶させず、部分的に再結晶させた亜焼鈍組織を得ることができる。第2冷間加工では、90%以下の比較的低い加工率の加工によって、微視的に不均一な歪みを材料に導入することができる。しかしながら、第2冷間加工の加工率が50%未満である場合には、再結晶組織の発達が遅く所望の再結晶組織を得ることが出来ず、90%超の場合には、再結晶粒成長が著しく、時効硬化能を有するNi、Snの十分な固溶と結晶粒微細化の両立が困難となる。そのため、第2冷間加工の加工率50〜90%とする。このような2つの工程を第1冷間加工と溶体化熱処理の間で行うことによって、溶体化熱処理時にNi、Snを十分に固溶させるとともに、再結晶粒成長を抑制することが可能になり、時効処理で微細な結晶粒を維持しつつ、高い強度を得ることができる。中間熱処理のより好ましい範囲は600〜750℃で15秒〜45秒間である。第2冷間加工の加工率のより好ましい範囲は55〜85%、更に好ましい範囲は60〜80%である。
従来、上記中間熱処理のような熱処理は、次工程の加工での荷重を低減するために材料を再結晶させて強度を落とすために行われていた。また、加工は線径を細くすることが目的であり、通常の加工機の能力であれば90%を超える加工率を採用するのが一般的である。本発明における中間熱処理および第2冷間加工を行なう目的は、これら一般的な内容とは異なり、Ni、Snの時効硬化能を最大限に発揮させるためである。
次いで、第2冷間加工後に、溶体化温度が650〜900℃、該溶体化温度での保持時間が5〜300秒間および平均冷却速度が50℃/秒以上である溶体化熱処理[工程7]を行う。溶体化熱処理では、NiやSnの濃度によって必要な温度条件が変わるため、NiおよびSnの濃度に応じて適切な温度条件を選択する必要がある。溶体化温度が650℃以上であると、時効処理工程において十分な強度が得られ、また、溶体化温度が900℃以下であれば、材料が必要以上に軟化せず形状制御が適正に行うことができる。なお、溶体化熱処理[工程7]後の結晶粒が粗大であると、第1の時効処理[工程9]において結晶粒界に生じる不連続析出セルが十分に分散しないため、切削性が低下する傾向にある。従って、溶体化熱処理[工程7]後(好ましくは、第3冷間加工前[工程8])の結晶粒径は100μm以下であることが好ましく、更に好ましくは80μm以下である。
溶体化処理の後に、第3冷間加工[工程8]を行う。この第3冷間加工は、加工による転位の導入で強度を高くするとともに、後述する第2時効処理[工程11]後の強度も高くするために行う。このような第3冷間加工は、後述する第4冷間加工[工程10]との関係で、加工率を調節することが好ましく、第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率は、85〜99%とする。
第3冷間加工後に、時効処理温度が200℃以上、300℃未満であり、該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間である第1時効処理[工程9]を行う。なお、本発明者らが調査を行ったところ、十分な時効硬化を行った後に冷間加工を行うと、強度が低下することを確認しており、時効処理における強化機構が冷間加工で崩れてしまうためと推測した。第1時効処理の処理温度が300℃以上であると、時効硬化して強度は向上するが、後述する第4冷間加工[工程10]で上記のように強度が低下し、また既に時効硬化が生じているため、第2時効処理[工程11]では大きな強度向上が得られず、結果として最終的に十分な強度が得られない。また、第1時効処理の処理温度を300℃未満とすることで、時効硬化はほとんど起きないが、第二相粒子の一部が析出するため、第4冷間加工で転位密度の向上に寄与すると共に、第2時効処理で時効硬化が促進されるので、得られる銅合金線棒材の強度を向上できる。しかし、第1時効処理の処理温度が200℃未満であると、第二相粒子がほぼ析出しないため、第4冷間加工における転位密度の向上が期待できず、十分な強度が得られない傾向がある。
さらに、第1時効処理後に、加工率が50〜98%の第4冷間加工[工程10]を行い、その後、さらに時効処理温度が300〜500℃および該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間である第2時効処理[工程11]を行う。従来は、最終の溶体化処理後に冷間加工、時効処理を行うことが一般的であった。しかし、本発明では、冷間加工を第3冷間加工と第4冷間加工に分け、その間に上記第1時効処理を行い、第4冷間加工後に第2時効処理を行うことで、第二相粒子の個数密度を所定の範囲に維持しつつ、更に高い強度を得ることが出来る。すなわち、第1時効処理後に、高い加工率の第4冷間加工を施し、転位を高密度化し、さらに第2時効処理を施すことで、従来の時効硬化による強度向上に加えて、高密度化した転位の周囲にコットレル雰囲気ができ、これにより転位が固定化されることによって機械的強度をさらに向上できる。特に、第4冷間加工の加工率は50%以上であり、好ましくは70%以上である。第4冷間加工の加工率が50%未満であると、転位の蓄積が不十分であるため、第2時効処理で可動転位の固着による強度増加を得ることが出来ない。なお、第4冷間加工の加工率が98%を超えると、更なる強度向上が望めない一方、曲げ加工性が劣化する傾向にある。また、第2時効処理の処理温度は300〜500℃である。第2時効処理の処理温度が300℃未満だと時効硬化がほとんど起きないため強度が大きく向上せず、500℃超だと強度に寄与しない不連続析出セルが増えすぎて、強度が低下する傾向がある。
なお、本発明では、溶体化処理後の冷間加工を、第3冷間加工と第4冷間加工に分け、その間に第1時効処理を行うが、このとき第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率は85〜99.9%とする。第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率が85%未満の場合には、第2時効処理後に所望の強度が得られない。また、第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率は、第2時効処理における第二相粒子、および第二相粒子と溶質濃度の低下した母相とが形成した不連続析出セル組織の発達に影響を与える。特に、本発明では、時効処理において十分な時効硬化を発現させつつ、第二相粒子の個数密度を所定の範囲に維持し、好ましくはさらに所定の不連続析出セル組織を形成するために、第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率は、85%以上とし、好ましくは90%以上とする。また、第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率は、99.9%を超えると、更なる強度が望めない一方、曲げ加工性が劣化する傾向にある。なお、ここでいう、第3冷間加工および第4冷間加工の総加工率は、上記(1)式中、roが第3冷間加工の加工前の直径(線径)であり、rは第4冷間加工の加工後の直径(線径)として、算出される加工率である。
従来一般的な冷間加工では、85%未満の加工率を採用しており、この場合には、時効ピークで均一に分散した第二相粒子および不連続析出セル組織が発生しないため、所望の切削性を得ることが出来ない。これに対し、本発明においては、従来技術とは異なり、第2時効処理前の材料組織の形態を加工組織とすることで、第2時効処理によって強度低下を招かない範囲で不連続析出セル組織を均一に発生させ、時効硬化による銅合金線棒材の強度向上を行いつつ、切削性を向上できる。なお、本発明における「加工組織」とは、再結晶組織ではない、総加工率85%以上の冷間加工(すなわち第3冷間加工と第4冷間加工)が施された金属組織である。
<銅合金線棒材の特性>
本発明の銅合金線棒材は、例えば軸受部品として使用する場合には、引張強度が1250MPa以上であることが好ましく、1300MPa以上がより好ましく、更に好ましくは1350MPa以上である。
また、本発明の銅合金線棒材は、銅合金線として、または該銅合金線にすずめっきを施しためっき線として、または複数本の銅合金線やめっき線を撚り合わせて得られる撚線として使用することができるとともに、さらに、それらにエナメルを塗布したエナメル線や、さらに樹脂被覆した被覆電線として使用することもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1〜13および比較例1〜22)
まず、DC(Direct Chill)法により、表1に示す合金組成を有する銅合金を溶解して、これを鋳造して、直径が200mmの荒引線を得た。次にこれら荒引線を900℃に加熱し均質化処理を行い、この温度で2時間保持後、直径30mmに熱間伸線し、速やかに冷却した。次いで表面を1mm研削して酸化被膜を除去した後、第1冷間加工として加工率80%以上の冷間伸線を施した。この後、表2に示す条件で中間熱処理、第2冷間加工、溶体化熱処理、第3冷間加工、第1時効処理、第4冷間加工および第2時効処理をこの順に施し、銅合金線棒材(直径1〜3mm)を製造した。なお、各時効処理はいずれも、不活性ガス雰囲気中で行った。
このようにして製造した銅合金線棒に対して、各実施例および各比較例とも、以下に示す試験及び評価を実施した。なお、下記評価1については、溶体化処理[工程7]後で、第3冷間加工[工程8]の前の銅合金線棒材から切り出した試料を使用し、下記評価2〜7については、最後の第2時効処理[工程11]後の銅合金線棒から切り出した試料を使用して、それぞれ試験及び評価を実施した。また、結晶粒の平均結晶粒径、線棒材の長手方向の断面における第二相粒子の個数密度および不連続析出セル組織の面積率の測定、転位密度の測定、ならびに銅合金線棒材の引張強度、導電率および切削性に関する特性評価については、以下の方法で行なった。
1.平均結晶粒径
線棒材の長手方向に垂直な断面を湿式研磨、バフ研磨により鏡面に仕上げた後、クロム酸:水=1:1の液で数秒間、研磨面を腐食した後、SEMの二次電子像を用いて400〜1000倍の倍率で写真を撮り、断面の平均結晶粒径(μm)をJIS H0501−1986の切断法に準じて測定した。撮影には、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、SEMEDX TypeM)を用いた。この測定を、任意の5つの断面で行い、その平均値(N=5)を求めた。結果を表3に示す。
2.第二相粒子の個数密度
線棒材の長手方向に垂直な断面をFIBにて切断することで、断面を露出した後、鏡面仕上げをした断面をSEM観察し、観察視野30μm×30μmを撮影した。撮影には、走査型電子顕微鏡(同上)を用いた。個々の第二相粒子について、第二相粒子を取り囲む最小円の直径をそれぞれ写真上で測定し、粒径0.05〜1.0μmの第二相粒子の個数を測定し、粒径0.05〜1.0μmの第二相粒子の個数密度(個/μm)を算出した。この測定を、任意の5つの断面で行い、その平均値(N=5)を求めた。結果を表3に示す。
3.不連続析出セル組織の面積率
線棒材の長手方向に垂直な断面を切断し、湿式研磨、バフ研磨により鏡面に仕上げた後、クロム酸:水=1:1の液で数秒研磨面を腐食した後、SEMの二次電子像を用いて400〜1000倍の倍率で写真を撮影した。撮影には、走査型電子顕微鏡(同上)を用いた。撮影した画像を、画像寸法計測ソフト(Pixs2000_Pro、株式会社イノテック製)を用い、Rmaxの値を150に設定して、図1(a)に示すような画像処理後の画像を作成し、これを解析して、母相である黒色部の面積値を算出した。画像全体の面積値と黒色部の面積値との差分値を、不連続析出セル組織の面積値とし、差分値と画像全体の面積値の比率を、不連続析出セル組織の面積率(%)として算出した。この測定を、任意の5つの断面で行い、その平均値(N=5)を求めた。結果を表3に示す。
4.転位密度
線棒材の長手方向に垂直な断面を、湿式研磨、バフ研磨した後、X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2500)を用いて、Cu管球、管電圧40kV、管電流200mAの条件のもとでX線回折測定を行い、以下の方法でCu母相の格子定数及び転位密度を求めた。各面からの回折ピークより求めた格子定数の値をcos2θ/sinθの関数より外挿し、得られた値を最終的な格子定数として採用した。この格子定数は、実施例及び比較例の全てにおいて、約0.3616nmであった。また、(111)、(220)、(311)反射面からの回折ピークの幅(半値幅)より、補正されたWilliamson−Hall法(T.Kunieda,M.Nakai,Y.Murata,T.Koyama,M.Morinaga:ISIJ Int.45(2005),1909−1914参照)を用いてひずみを求め、転位密度(m−2)に換算した。
5.引張強度
JIS Z 2241:2011に準じて3本測定し、その平均値(MPa)を表3に示す。なお、本実施例では1250MPa以上を合格レベルとした。
6.導電率
導電率は、JIS H0505−1975に基づく四端子法を用いて、20℃(±1℃)に管理された恒温槽中で、各試験片の2本について導電率を測定し、その平均値(%IACS)を表3に示す。このとき端子間距離は100mmとした。なお、本実施例では6.5%IACS以上を合格レベルとし、7.0%IACS以上をより良好と評価した。
7.切削性
汎用旋盤を用いて切削実験を行い、切削屑の形態を観察した。切削屑が10mm未満の長さで分断されるものは良「◎」、切削屑が10mm以上の長さで分断されるものは可「○」、切削屑が分断されず、螺旋状につながっているものは不良「×」とした。結果を表3に示す。実用上問題が生じないのは良および可であるため、本実施例では「◎」および「○」を合格レベルとした。なお切削条件は、切削速度30m/min、送り速度0.1mm/rev、切り込み代0.2mm、とした。バイトは超硬製のものを用い、切削油は不使用とした。
表3に示す結果から、実施例1〜13に係る銅合金線棒材は、所定の合金組成を有し、転位密度が1.0×1015−2以上であり、線棒材の長手方向に垂直な断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度が0.1〜1.0個/μmであるため、引張強度、導電率および切削性の全ての特性がバランスよく優れていることが確認された。
また、実施例2および4〜12に係る銅合金線棒材は、その長手方向に垂直な断面において、不連続析出セル組織の面積率が20〜80%であるため、切削屑の分断性に優れ、特に良好な切削性が得られることが確認された。
また任意添加元素成分の総和が0.6質量%以下である実施例1〜12に係る銅合金線棒材は更に導電率が優れていることが確認された。
これに対し、比較例1〜22に係る銅合金線棒材は、合金組成、転位密度および線棒材の長手方向に垂直な断面においける粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度の少なくとも一つが適正範囲外であるため、実施例1〜13に係る銅合金線棒材に比べて、引張強度、導電率および切削性のいずれか1つ以上の特性が劣っており、これらの特性のバランスが十分でないことが確認された。
なお、実施例1〜13に係る銅合金線棒材は、塩水噴霧試験による耐食性についても問題がないことを確認した。

Claims (5)

  1. 3.0〜25.0質量%Ni、3.0〜9.0質量%Sn、0〜0.20質量%Fe、0〜0.10質量%Si、0〜0.30質量%Mg、0〜0.50質量%Mn、0〜0.10質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.10質量%Pを含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金線棒材であって、
    転位密度が1.0×1015−2以上であり、
    前記線棒材の長手方向に垂直な断面において、粒径が0.05〜1.0μmの第二相粒子の平均個数密度が0.1〜1.0個/μmであることを特徴とする、銅合金線棒材。
  2. 前記断面において、不連続析出セル組織の面積率が20〜80%である、請求項1に記載の銅合金線棒材。
  3. 前記Fe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPからなる群から選ばれる少なくとも1成分の含有量の合計は、0.60質量%以下である、請求項1または2に記載の銅合金線棒材。
  4. 引張強度が1250MPa以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金線棒材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金線棒材の製造する方法であって、
    前記銅合金線棒材を与える合金組成からなる銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、第1冷間加工[工程4]、中間熱処理[工程5]、第2冷間加工[工程6]、溶体化熱処理[工程7]、第3冷間加工[工程8]、第1時効処理[工程9]、第4冷間加工[工程10]、第2時効処理[工程11]をこの順に施し、
    前記中間熱処理は、加熱温度が300〜850℃、該加熱温度での保持時間が10〜300秒間および平均冷却速度が50℃/秒以上であり、
    前記第2冷間加工は、加工率が50〜90%であり、
    前記溶体化熱処理は、溶体化温度が650〜900℃、該溶体化温度での保持時間が5〜300秒間および平均冷却速度が50℃/秒以上であり、
    前記第1時効処理は、時効処理温度が200℃以上、300℃未満、該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間であり、
    前記第4冷間加工は、加工率が50〜98%であり、
    前記第3冷間加工および前記第4冷間加工の総加工率が85〜99.9%であり、
    前記第2時効処理は、時効処理温度が300〜500℃、該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間であることを特徴とする銅合金線棒材の製造方法。
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