JP2018016417A - 物品搬送装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】物品が予定していない方向に移動することを的確に防止した物品搬送装置を提供する。【解決手段】駆動対象振動系がZ方向振動系A3およびX方向振動系Z2であり、非駆動対象振動系がY方向振動系A2である制御モードにおいて、Y方向振動系A2に振動速度のフィードバックを行う閉ループ100を設け、Y方向振動系A2の固有周波数近傍の周波数を有するZ方向振動系A3及びX方向振動系A1の振動に起因した外乱に対し、Y方向振動系A2の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしたため、Z方向及びX方向に加振する際に干渉力がY方向に及んで物品が同方向に斜行することが防止される。【選択図】図2

Description

本発明は、物品が所望の移動方向と異なる方向に移動することを防止して搬送精度を向上させた物品搬送装置に関するものである。
従来より、楕円振動を利用して物品を搬送する物品搬送装置が知られている(例えば特許文献1)。
この種の搬送装置は、上下(Z)方向と水平(X、Y)方向の3方向の振動系を持っている。
X方向に搬送を行う場合、X方向とZ方向の振動を組み合わせてX−Z平面内に楕円軌道を発生させ、X方向への搬送を行う。Y方向も同様にY−Z平面内に楕円振動を発生させ、Y方向へ搬送を行う。このX方向とY方向への搬送を組み合わせれば、物品を平面上の任意方向に搬送することができる。
搬送に必要な振幅を得るため、上下(Z)方向、水平(X、Y)方向の共振を利用している。また各方向は一定の楕円振動を利用するため、同一周波数で駆動する。
その際、小さな加振力で効率よく振動させるために、各軸の共振周波数を駆動周波数と一致または近接させておくのが通例である。駆動周波数と共振周波数がずれると、大きな加振力が必要になるためである。
特開2013−121870
ところが、X方向へ搬送しようとした場合、搬送物がX軸方向からずれた方向に搬送され、Y方向へ搬送しようとした場合も搬送物がY軸方向からずれた方向に搬送されるという不都合がある。さらには、搬送の概念に垂直方向を含めて考えると、IC等の微小物品をテーブル上に流し込んでばらしたい場合はZ方向のみの振動を加える(Z方向に移動、搬送する)ことがあるが、物品が水平(X、Y)方向に移動してテーブルの端の方へ寄ってしまい、適切なばらしができないという不都合がある。
この現象を検証してみると、ある方向の振動が他の方向の振動系に対して加振力として作用する干渉が生じていることが明らかとなった。
すなわち、X、Y、Z各方向の振動系は、機械構造上連結している。このため、ある方向の振動が、それ以外の振動系に加振力として干渉してしまう。この加振力は小さくとも、その駆動周波数と各振動系の固有周波数が一致または近接しているため、所望方向以外の振動系に比較的大きな振幅の振動が発生してしまう。
例えば、テーブル上の搬送物をX軸に沿って搬送させたい場合には、X方向とZ方向の振動を組み合わせてX−Z平面に沿った楕円振動を発生させる。しかし、X方向とZ方向の振動が機械構造上の干渉のためY方向の振動系にも加振力として作用するため、Y方向に振動指令を与えていなくともY方向に振動が発生してしまう。このようになると、X−Z平面からZ軸回りにずれた方向の楕円振動が発生し、搬送物はX方向からずれた方向に搬送されてしまう。
これは、テーブル上の搬送物をY軸方向に沿って搬送すべく、Y方向とZ方向の振動を組み合わせてY−Z平面に沿った楕円振動を発生させた場合も同様で、X方向に振動指令を与えていなくともX方向に振動が発生し、搬送物はY方向からずれた方向に搬送されてしまう。
さらに、テーブル上の搬送物をZ方向に沿って運動させるべく、Z方向に沿った振動を加えた場合も同様で、Z方向の振動が機械構造上の干渉のために水平(X、Y)方向の振動系にも加振力として作用するため、水平(X、Y)方向に振動指令を与えていなくともX、Y方向に振動が発生してしまう。このようになると、搬送物がXの正又は負方向、Yの正又は負方向、あるいはこれらを組み合わせた平面上の一定方向に偏って搬送されてしまう。
本発明は、このような課題を主眼としてなされたものであって、物品が予定していない方向に移動することを的確に防止した物品搬送装置を提供することを目的としている。
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明の物品搬送装置は、可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送すべく、前記可動台を垂直方向に弾性支持する垂直方向振動系と、前記可動台を第1の水平方向に弾性支持する第1の水平方向振動系と、前記可動台を前記第1の水平方向と交差する第2の水平方向に弾性支持する第2の水平方向振動系とを備え、それぞれの振動系を加振源によって駆動する加振手段と、前記各振動系に位相差を有しつつ同一の周波数で同時に周期的振動を発生させ前記可動台に所定の振動軌跡を生じさせるように前記加振源に指令をなす振動制御手段とを含み、前記振動制御手段の制御モードとして、可動台上の物品に対し所定方向の移動を与えるために所定の駆動対象振動系の加振源に指令を入力し、移動方向と無関係な方向の非駆動振動系の加振源に指令を入力しないか若しくはゼロ指令を入力する制御モードを有するものを前提とする。
そして、前記非駆動振動系の振動速度を所定ゲインで増幅して当該非駆動振動系の加振源の入力側に負帰還させる閉ループを設け、前記制御モード中、当該非駆動振動系の前記閉ループを通じて、当該非駆動振動系の固有周波数付近の周波数を有する前記駆動対象振動系の振動に起因した外乱に対し、当該非駆動振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしたことを特徴とする。
このようにすれば、物品をある方向に加振している際の干渉力が加振していない方向に及んで物品が意図しない方向に移動することが防止される。
具体的には、Z方向に加振する際に干渉力がX、Y方向に及んで物品が同方向に偏って搬送されることを防止するためには、駆動対象振動系が垂直方向振動系であり、非駆動振動系が第1、第2の水平方向振動系であって、前記制御モード中、当該第1、第2の水平方向振動系の前記閉ループを通じて、当該第1、第2の水平方向振動系の固有周波数近傍の周波数を有する前記垂直方向振動系の振動に起因した外乱に対し、当該第1、第2の水平方向振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしていることが好ましい。
或いは、Z方向及びX方向に加振する際に干渉力がY方向に及んで物品が同方向に斜行することを防止し、或いは、Z方向及びY方向に加振する際に干渉力がX方向に及んで物品が同方向に斜行することを防止するためには、駆動対象振動系が垂直方向振動系および第1又は第2の水平方向振動系であり、非駆動対象振動系が第2又は第1の水平方向振動系であって、前記制御モード中、当該第2又は第1の水平方向振動系の前記閉ループを通じて、当該第2又は第1の水平方向振動系の固有周波数近傍の周波数を有する前記垂直方向振動系及び第1又は第2の水平方向振動系の振動に起因した外乱に対し、当該第2又は第1の水平方向振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしていることが好ましい。
また、他の構成からなる本発明の物品搬送装置は、可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送すべく、前記可動台を垂直方向に弾性支持する垂直方向振動系と、前記可動台を第1の水平方向に弾性支持する第1の水平方向振動系と、前記可動台を前記第1の水平方向と交差する第2の水平方向に弾性支持する第2の水平方向振動系とを備え、それぞれの振動系を加振源によって駆動する加振手段と、前記各振動系に位相差を有しつつ同一の周波数で同時に周期的振動を発生させ前記可動台に所定の振動軌跡を生じさせるように前記加振源に指令をなす振動制御手段とを含むものを前提とする。
そして、少なくとも前記第1及び第2の水平方向振動系の振動速度を所定ゲインで増幅して当該第1及び第2の水平方向振動系の加振源の入力側に負帰還させる閉ループを設け、これらの閉ループを通じて、第1又は第2の水平方向振動系の固有周波数付近の周波数を有する前記垂直方向振動系及び第2又は第1の水平方向振動系の振動に起因した外乱に対し、当該第1又は第2の水平方向振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしていることを特徴とする。
このようにすれば、X、Y、Z方向に加振する際の干渉力がX、Y方向に及んで物品を平面内で搬送する際に搬送方向にズレが生じることが防止される。
以上において、閉ループを設けたことで指令通りの搬送に支障を来たすことを防止するためには、閉ループ帰還位置よりも上流にゲイン補償部を設け、このゲイン補償部において、閉ループを設けたときの指令値に対する伝達率低下を補完するようにしていることが望ましい。
以上説明した本発明によれば、物品が予定していない方向に移動することを的確に防止して搬送精度を高めた物品搬送装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係り、閉ループを設けた場合の指令、応答及び外乱の関係を1軸に着目して示す制御ブロック図。 図1の構成を3軸に展開した制御ブロック図。 同実施形態の指令及び機械特性を概念的に示すブロック図。 同実施形態における閉ループ無しの場合の指令、応答及び外乱の関係を1軸に着目して示す制御ブロック図。 図4の構成を3軸に展開した制御ブロック図。 指令に対する応答特性を示すボード線図。 閉ループ無しの状態でZ方向に加振した際の振動波形を示す図。 閉ループ無しの状態でX、Z方向に加振した際の振動波形を示す図。 閉ループを設けた状態でX、Z方向に加振した際の振動波形を示す図。 閉ループ無しの状態で振動系が固有振動数と同じ振動数で加振されたときの時間応答を示す図。 閉ループ無しの状態で振動系が固有振動数に近い振動数で加振されたときの時間応答を示す図。 閉ループ有りの状態で振動系が固有振動数に近い振動数で加振されたときの時間応答を示す図。 閉ループ無しの状態でX、Z方向に加振された場合のX、Z方向の楕円振動の様子を示す図。 閉ループを設けた状態でX、Z方向に加振された場合のX、Z方向の楕円振動の様子を示す図。 閉ループ無しの状態でX、Z方向に加振された場合のY、Z方向の楕円振動の様子を示す図。 閉ループを設けた状態でX、Z方向に加振された場合のY、Z方向の楕円振動の様子を示す図。 物品搬送装置を構成する加振手段の基本構成を一部破砕して示す斜視図。 図17の一部を省略した斜視図。 図18の構成に振動制御手段を加えた物品搬送装置のシステム構成図。 同加振手段の加振方向を示す概念図。 同振動手段における各方向への周期的加振力間の位相差と物品の搬送速度との関係を示す図。 本発明の変形例を示す図2に対応した制御ブロック図。 本発明の他の変形例を示す図2に対応した制御ブロック図。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態の物品搬送装置は、図17〜図19に示すように、可動台62が振動することで可動台62上に載せられた物品を搬送すべく、第3の板状バネ部材73を主体として可動台62を垂直方向に弾性支持する垂直方向振動系A3と、第1の板状バネ部材71を主体として可動台62を第1の水平方向であるX方向に弾性支持する第1の水平方向振動系(X方向振動系)A1と、第2の板状バネ部材72を主体として可動台62をX方向と交差(直交)する第2の水平方向たるY方向に弾性支持する第2の水平方向振動系(Y方向振動系)A2とを備え、それぞれの振動系A1〜A3を加振源である圧電素子81〜83によって駆動する加振手段2と、各振動系A1〜A3に位相差を有しつつ同一の周波数で同時に周期的振動を発生させ可動台62に所定の振動軌跡を生じさせるように圧電素子81〜83に指令をなす振動制御手段3とを含んだ平面搬送装置である。
そして、搬送時に意図しない方向への物品の斜行や誤った方向への搬送を防止する対策を講じている。
先ず、加振手段2及び振動制御手段3の構成について具体的に説明した後、斜行・誤った方向への搬送に対する防止機能について説明する。
図18は図19の加振手段2を拡大したものであり、図17はその加振手段2に取り付けられる可動台62およびカバー42を併記した図である。加振手段2はその内部でX、Y、Zの3軸方向に対して弾性的に支持された直方体状のブロックとしての可動台座61を有しており、当該可動台座61に矩形プレート状の可動台62が連結されている。
この加振手段2はベース40に対して、可動台座61をX、Y、Zの3方向に弾性支持するように構成されており、剛体部分としてのベース40、第1中間台51、51、第2中間台52および可動台座61を順次接続するようにして、第1の板状バネ部材71、71、第2の板状バネ部材72、72および第3の板状バネ部材73、73を設けている。
さらに、可動台座61をX、Y、Zの3方向に振動させるための加振源としての第1〜第3圧電素子81〜83を備えている。
ベース40上、四隅付近には取付ブロック41が設けられ、Y方向に対をなして隣接する取付ブロック41、41間に第1の板状バネ部材71、71がX方向を板厚方向として設けられている。
そして、第1の板状バネ部材71、71の長手方向中心付近に取付部71c〜71cを介して第1中間台51、51がY方向を延在方向として取り付けられている。
そして、XZ面内において第1中間台51、51の間に第2の板状バネ部材72、72が板厚方向をY方向として取り付けられている。この第2の板状バネ部材72、72の長手方向中心付近には取付部72c〜72cを介して、第2中間台52が取り付けられている。
第2中間台52は、矩形の枠体として構成されている。
矩形の枠体をなす第2中間台52の上面と下面にはそれぞれ、2個ずつ計4個の第3の板状バネ部材73〜73が板厚方向をZ方向として取り付けられている。
また、上下2対の第3の板状バネ部材73、73にはバネ間ブロック73eが取り付けられており、このバネ間ブロック73eの上方には、第2中間台52の上面に接続される第3の板状バネ部材73、73を挟んだ状態で、上述した可動台座61が取り付けられている。
上記のように、本実施形態の加振手段2では、ベース40に対して第1中間台51、51が第1の板状バネ部材71、71を用いてX方向に弾性的に支持され、第1中間台51、51に対して第2中間台52が第2の板状バネ部材72を用いてY方向に弾性的に支持され、第2中間台52に対して可動台座61が第3の板状バネ部材73を用いてZ方向に弾性的に支持される構成とされている。これにより、可動台座61はベース40に対してX、Y、Zの各方向に弾性的に支持され、X方向振動系A1、Y方向振動系A2、Z方向振動系A3が構成されている。
さらに、本実施形態の加振手段では、X、Y、Z方向に独立した加振源として第1〜第3の圧電素子81〜83を有している。
まず、X方向への加振源は、2個の第1の板状バネ部材71、71の表面にそれぞれ2個ずつ貼設された合計4個の第1圧電素子81〜81から構成される。この第1圧電素子81〜81は、電圧を印加されることによって、Y方向に伸びまたは縮みを生じ、第1の板状バネ部材71、71に曲げを生じさせることによってX方向の変位を生じさせることが可能なバイモルフ型のものである。
また、Y方向への加振源は、2個の第2の板状バネ部材72、72の表面にそれぞれ2個ずつ貼設された合計4個の第2圧電素子82〜82から構成される。この第2圧電素子82〜82は上記と同様の動作によってY方向の変位を生じさせることが可能なバイモルフ型のものである。
さらに、Z方向への加振源は、上下に2個ずつ設けられている板状バネ部材73〜73のうち上側の2個の板状バネ部材73、73の表面にそれぞれ2個ずつ貼設された合計4個の第3圧電素子83〜83から構成される。この第3圧電素子83〜83は上記と同様の動作によってZ方向の変位を生じさせることが可能なバイモルフ型のものである。
上記のように、X、Y、Zの各方向に変位を与えることのできる電圧を各々正弦波状に変化させることによって、可動台座61に対して各方向に周期的な加振力を付与することができる。
上記のようにして構成した加振手段2に対して、図19に示す振動制御手段3は、第1圧電素子81、第2圧電素子82および第3圧電素子83に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、X、Y、Zの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせる。
そのために、振動制御手段3は、正弦電圧を生じさせる発振機31を備えており、この正弦電圧をZ軸を基準にしてX方向、Y方向の位相差調整器32(図面には各方向を表わす添字が付してある。以下同様。)と、振幅調整器33とを介して、各圧電素子81、82、83に出力する。なお、発振機31により生じさせる振動の周波数は、X、Y、Z方向のいずれかの振動系と共振する周波数とすることで、効率良い加振状態を実現する。
上記のように構成した物品搬送装置1は、具体的には次のように動作し、振動台63に載せた物品9の搬送を行う。
ここで、図20の模式図に示すように簡略化して、振動台63がベース40に対してX、Y、Zの各方向に弾性体74、75、76により弾性的に支持するとともに、各方向の加振源84、85、86を設けている場合を想定する。このように構成することで、X、Y、Zの三方向に設けた加振源84、85、86によって振動台63を三方向に動作させることが可能とされている。図20の模式図における弾性体74〜76は、第1〜第3の板状バネ部材71〜73(図18参照)に相当するとともに、加振源84〜86はそれぞれ第1〜第3圧電素子81〜83(図18参照)に相当する。
図20に示すモデルの振動台63に対して、Z方向にZ=Z×sinωtで表される周期的な振動変位を与える。ここで、ZはZ方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、X、Y方向にもそれぞれZ方向と同一周波数の振動を、X=X×sin(wt+φx)、Y=Y×sin(wt+φy)の式のように与えることとする。ここで、X、YはそれぞれX方向、Yの振幅を、φx、φyはそれぞれX方向、Z方向の振動のZ方向の振動に対する位相差を示す。
このように、X、Y、Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、振動台63にはこれらが合成された三次元的な振動を生じさせることができる。例えば、Z方向の振動成分に対してφx、φyの位相差を持たせてX、Y方向の振動を生じさせたとき、二次元的にはXZ平面上で右側を上にした楕円軌道を有する振動が生じ、YZ平面上で右側を下にした楕円軌道を有する振動が生じる。そして、さらにこの2つを合成することで、図中右下に示すように三次元空間上での楕円軌道が生じる。
そして、各方向の振動変位の振幅および位相を変えることにより、XZ平面、YZ平面内の二次元の楕円軌道の大きさや向きを変更することができ、対応して三次元空間上の楕円軌道の大きさや向きを自由に変更することができる。なお、このように各方向への周期的な振動変位を付与するために、制御上は各方向への周期的加振力を付与することで対応を行っている。
以上のように、振動台63が楕円軌道を描きつつ振動することによって、振動台63の上に載せられた物品9は移動を行う。そして、この移動のうちX方向への移動速度成分は上記XZ平面内の楕円軌道によって制御でき、Y方向への移動速度成分は上記YZ平面内の楕円軌道によって制御できる。すなわち、Z方向への振動成分を基準としてX方向、Y方向のそれぞれの振動の振幅と位相差を変化させることで、X、Y方向への移動速度成分を変化させ、平面上を任意の方向に搬送させることが可能となる。
具体的には移動速度の変更は次のようにして行う。
図20を参照しつつ図21を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化する。そのため、Z方向の振動成分に対するX方向の振動成分の位相差を図20におけるφ12に設定したときにはXが正となる方向に物品9は搬送されていく。また、位相差をφ14に設定したときには、Xが負となる方向に物品9は搬送されていく。これらに対して、位相差をφ11、φ13と設定したときには、移動速度Vxは0になって、物品9はX方向に静止した状態となる。さらに、φ11〜φ13の間またはφ13〜π(-π)〜φ11の間で位相差を変化させることによって、それぞれ正の方向、負の方向に対する速度を増減させることができる。こうした関係は、X方向だけでなくY方向にも成り立ち、同様にZ方向の振動成分に対する位相差を設定することで移動方向と移動速度を変化させることができる。
このように、X、Y各方向の振動成分の振幅X、Yと、Z方向振動成分に対する位相差φx、φyとを変化させることによって、X、Y方向への移動速度Vx、Vyを変化さることができる。
以上のような、一方向への搬送速度および向きの制御を、二方向に展開することで、XY平面内で自由に移動させることが可能となる。すなわち、水平方向の振動をX、Yの2方向にして、Z方向の振動とそれぞれ組み合わせることで、XZ平面内の楕円振動、YZ平面内の楕円振動をそれぞれ作り出し、これらを合成した三次元的な楕円振動を発生させ、この楕円振動の向きや大きさを三次元的に切り替えることで、より詳細に物品9の移動方向や移動速度を制御できる。そして、Z方向の制御電圧によって生じる周期的加振力を基準として、X方向、Y方向の制御電圧によって生じる周期的加振力の振幅や位相をそれぞれ変更することによって、XZ平面内の楕円振動成分とYZ平面内の楕円振動成分をそれぞれ変更すれば、上述の図20の関係に従ってそれぞれX方向、Y方向の移動速度成分を物品9に与えることが可能となる。
図3は、図17の指令及び機械特性を含めたブロック図である。Z方向に関しては、発振機31からの信号は、振幅調整器33zを通ってZ方向指令として圧電素子83に入力され、Z方向振動系A3が加振される。X、Y方向に関しては、発振機31からの信号は、位相調整器32x、32yおよび振幅調整器33x、33yを通ってX方向指令及びY方向指令として圧電素子81、82に入力され、X方向振動系A1およびY方向振動系A2が加振される。
ところで、かかる物品搬送装置の不具合として、前述したように、X、Y、Z各方向の振動系が機械構造上連結しているため、各方向の振動系A1〜A3の振動が、それ以外の振動系A1〜A3に加振力として干渉してしまう。この加振力は小さくとも、その駆動周波数と各振動系A1〜A3の固有周波数が一致または近接しているため、所望方向以外の振動系に比較的大きな振幅の振動が発生してしまう。具体的には、X方向へ搬送しようとする動作モードを設定しても、搬送物がX軸方向からずれた方向に搬送され、Y方向へ搬送しようとする動作モードを設定しても、搬送物がY軸方向からずれた方向に搬送されるという斜行が生じる。さらには、ICチップ等の微小物品をテーブル上に流し込んで重なりがない状態(ばらした状態)にしたい場合はZ方向のみの振動を加えることがあるが、物品が水平(X、Y)方向に移動してテーブルの端の方へ寄ってしまい、適切なばらしができないという誤った方向への搬送が生じる。
そこで本実施形態は、1軸分に着目して示す図4の従来構成に対し、同じく1軸分に着目して示す図1のように、各振動系A1〜A3の振動速度Vを検出して、これを増幅器101(フィードバックゲインKc)で増幅して加振源であるアクチュエータゲインA0の入力側に負帰還させる閉ループ(速度フィードバックループ)100を構成するとともに、帰還位置の上流にゲイン補償部102(ゲインK1)を設けている。アクチュエータゲインA0は、図3に示す振幅調整器33のゲインに相当する。振動速度検出は、図1に示すように、適宜位置に速度検出器70xを設けてもよいし、適宜位置に変位検出器70yを設けて検出値を微分器70zに通してもよい。図中sは、ラプラス演算子を表しているが、ここでは便宜上、1/sは積分要素、sは微分要素を表すものとして説明する。
図1の構成をX軸、Y軸、Z軸それぞれに展開したものを図2に示す。図1の符号に対して、X、Y、Zの添字が付いたものが各振動系A1、A2、A3に対応している。すなわち、振動系A1では、図1及び図4に示したように、その質量m、すなわち可動部の質量mが加速度d2X/dt2で振動しているとき、1/sの積分要素を介すると、速度dX/dtとなり、これに振動系A1の減衰率cをかけたものが質量mに作用する。また、速度dX/dtが積分要素を介すると応答すなわち変位Xとなり、これに振動系A1のばね定数k1をかけたものが復元力として作用する。これは、他の振動系A2、A3についても同様である(図2、図5参照)。
このとき、閉ループ100を構成した図2の場合とこれを構成していない図5の場合とでは、指令信号および外乱に対する応答特性が異なってくる。
先ず、閉ループを構成しない図5の場合の指令信号および外乱(他の振動系からの干渉力)に対する応答(振動変位)特性を示す。
図5において右上の破線で囲った部分は、ある方向の振動系A1〜A3のモデルを示しており、mは質量、kはばね定数、cは減衰係数であり、1/sは積分を表していることは既述のとおりである。この振動系に、駆動加振力と外乱(他の振動系からの干渉力)が作用している。左下の破線で囲った部分はコントローラ・アクチュエータであり、図19の振動制御手段3と圧電素子81〜83を含む概念である。駆動加振力としては、指令信号に基づいたアクチュエータゲインA0が振動系A1〜A3に入力される。この時の指令に対する応答の伝達特性Giは、1軸に着目した図4において、
=A/(ms+cs+k)
また、外乱に対する応答の伝達特性は、
=A/(ms+cs+k)
となる。
ここで、A=1.0、m=1.0、k=1.0、c=0.01とする。この時のシミュレーション結果を以下に示す。
指令信号に対する応答の特性をボード線図で表すと、図6の線aのようになる。共振周波数で駆動すると、40dB(100倍)の振幅ゲインが得られることがわかる。一方、これよりも低い周波数や高い周波数側では、得られる振幅は急激に小さくなる。
次に、外乱に対する応答の特性を図6の線bで示す。この場合にも、共振周波数に等しい周波数の外乱力が作用すると、応答も大きくなることがわかる。
可動台62を駆動する際、振動系A1〜A3の共振周波数またはその近傍で駆動することになる。他の方向の振動が干渉力として、当該振動系A1〜A3に伝達してくると、その外乱力により、当該振動系A1〜A3の応答にも大きく影響してしまうことを示している。
次に、図1に1軸として示した閉ループ100を有する系について考える。この時の指令に対する応答の伝達特性は、
i1=K・A/{ms+(c+A・K)s+k}
また、外乱に対する応答の伝達特性は、
=1/{ms+(c+A・K)s+k}
となる。
ここで、速度フィードバックを行わない場合と同様、A=1.0、m=1.0、k=1.0、c=0.01とする。
また、フィードバックゲインは、トータルの減衰係数を0.5とするためにK=0.49、また、調整ゲインをK=(c+K)/c=50とする。こうすることで、振動系の共振周波数での指令信号に対する応答のゲインを閉ループ100を設けない図4の場合の値に一致させ、減衰を補償することができる。
この時の指令信号に対する応答の特性をボード線図で表すと、図6の線cのようになる。共振周波数付近の応答特性は、周波数が変化しても大きな変動がなくなっていることがわかる。次に外乱に対する応答の様子を図6の線dに示す。共振周波数においても、外乱に対しての感度が小さくなっていることがわかる。
次に、2次元搬送装置を駆動する場合の駆動波形についてシミュレーションにより示す。Z、X、Y各方向の振動系の固有振動数をそれぞれ1.0rad/sec、0.99rad/sec、1.01rad/secとする。
速度フィードバック制御を行わずに、Z方向の振動系を固有振動数と等しい1.0rad/sec、1Vの指令信号にて駆動した場合の、定常状態での振動波形を図7に示す。Z方向の振動系は、振幅100[m]で振動することがわかる。X方向、Y方向においても、固有振動数にて振幅1の指令信号を入力すると、振動系の振幅は100[m]となる。また、共振周波数で駆動しているため、指令信号に対して変位は90°の位相遅れとなる(図6の線a)。
次に、速度フィードバック制御を適用しない図4のモデルを3次元に展開した図5の場合において、この2次元搬送装置モデルにてX方向へワーク搬送することを考え、Z方向とX方向のみ加振する制御モードを考える。駆動対象振動系が垂直方向振動系であるZ方向振動系A3および第1の水平方向振動系であるX方向振動系A1であり、非駆動対象振動系が第2の水平方向振動系であるY方向振動系A2である。2次元搬送装置のZ、X、Y各方向の振動系の固有振動数をそれぞれ1.0rad/sec、0.99rad/sec、1.01rad/secで、先の例と同様とする。この時の駆動指令は、周波数は0.995rad/sec、振幅1の正弦波信号とした。一般に楕円振動搬送では搬送の目的にあわせて、垂直方向(Z方向)と水平方向(ここではY方向)に位相差をもたせるが、ここでは速度フィードバックの効果を見る目的で、2方向に同位相で指令信号を入力した。また、Z方向とX方向の加振力の0.1%が干渉力としてY方向へ作用するようにモデル化している。この時の定常駆動状態での時間波形を図8に示す。
駆動中のZとXの振幅が100とならないのは、駆動周波数が固有振動数と一致していないためである。また、Z方向とX方向は固有振動数が異なるため、指令に対する位相特性が異なる。このため、同一の信号で加振しても応答の波形は位相差を持つ。搬送面上のワークは、このXとZ方向の駆動により、X方向への速度が発生し、搬送される。
さらに、直接駆動していないY方向の振動系が干渉力により加振され、振動していることがわかる。このようにY方向にも振動を発生すると、搬送面上のワークはX方向だけでなく、Y方向にも速度を持つため、X方向からずれた方向に斜行することになる。
次に、2次元搬送装置の振動モデルである図5に先に示した速度フィードバック制御を適用した図2のモデルを考える。同図では、X方向、Y方向、Z方向にそれぞれ増幅器101を有する閉ループ100を構成し、負帰還位置の上流にゲイン補償器102を置いている。各固有振動数、干渉力、駆動周波数などの条件は速度フィードバック制御を行わない場合と同様である。またこのとき、Y方向の指令信号は0指令であるが、閉ループ100を通じた速度フィードバック制御は作動している制御モードとする。この時の振動波形を図9に示す。X、Zの振幅が100[m]となり、X方向とZ方向の位相差も0に近づいている。さらに、X、Zからの干渉によるY方向の振動も抑制されている。この結果、搬送面の振動はZ-X平面内振動となる。
このように、駆動対象振動系が垂直方向振動系であるZ方向振動系A3および第1の水平方向振動系であるX方向振動系A1であり、非駆動対象振動系が第2の水平方向振動系であるY方向振動系A2であって、前記制御モード中、当該Y方向振動系A2の閉ループ100を通じて、当該Y方向振動系A2の固有周波数近傍の周波数を有するZ方向振動系A3及びX方向振動系A1の振動に起因した外乱に対し、当該Y方向振動系A2の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしている。このため、Z方向及びX方向に加振する際に干渉力がY方向に及んで物品が同方向に斜行する現象が防止される。これはZ方向及びY方向に加振する際も同様で、それによる干渉力がX方向に及んで物品が同方向に斜行することが防止される。
一方、駆動対象振動系が垂直方向振動系であるZ方向振動系A3のみであり、非駆動振動系が第1、第2の水平方向振動系であるX方向振動系A1及びY方向振動系A2である制御モードにおいては、X方向振動系A1及びY方向振動系A2の閉ループ100において、当該X方向振動系A1及びY方向振動系A2の固有周波数近傍の周波数を有するZ方向振動系A3の振動に起因した外乱に対し、当該X方向振動系A1及びY方向振動系A2の固有周波数近傍での減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくすることになる。このため、Z方向に加振する際に干渉力がX、Y方向に及んで、物品がX、Y方向に誤って搬送される現象が防止される。)
勿論、X、Y、Z方向が同時に加振される制御モードにおいても、X方向の指令に混在する外乱に対する減衰が大きくなり、Y方向の指令に混在する外乱に対する減衰が大きくなるため、X、Z方向に加振する際の干渉力がYに及び、またY、Z方向に加振する際の干渉力がXに及んで、物品をXY平面内で搬送する場合に搬送方向にズレが生じるという現象も防止される。また、X方向とZ方向、Y方向とZ方向、X方向とY方向とZ方向等を同時に駆動する場合、お互いの加振力が干渉しあい、それぞれの振幅や位相が影響を受ける場合もある。このような場合においても、各駆動軸に速度フィードバック制御を追加することで、その影響の程度を低く抑えることができる。
なお、上記のように可動台62の駆動周波数とX、Y、Z各方向の振動系の固有振動数が一致していると、効率よく振幅を得ることができる。しかし、X、Y、Zの各方向の固有周波数をまったく同一周波数に一致させることは困難である。このため、可動台62の駆動周波数と各方向の固有振動数には差が生じてしまう。この周波数差が原因で、駆動周波数と固有振動数で発生する自由振動の干渉が発生し、装置の駆動開始直後に搬送方向が安定しない場合がある。
例えば、X方向に可動台62を駆動する際、X方向とZ方向の振動系に所定の加振指令を入力する。加振指令の入力直後にはX、Y各方向に入力指令と等しい周波数の振動と、加振指令を入力したことによる衝撃で発生する各固有振動数の自由振動が混在した状態となる。このため、発生する楕円振動の形状や回転方向が安定せず、所望の搬送方向とは逆方向に搬送されてしまう等の影響がある。このような現象は指令信号の入力直後のみ発生し、時間経過とともに解消される。しかし、搬送物の微小な位置調整のために行うインチング動作の場合等には所定方向に搬送できないという課題がある。
これらの課題も、上記のような閉ループ100を設けることで改善される。以下、時間応答にてその効果を示す。
定常状態にて、X方向にワークを搬送する制御モードを仮定する。このとき、前述したようにZ方向とX方向のみ振動駆動し、Y方向は振幅が0であることが望ましい。
先ず、速度フィードバックを行わない図5の構成の下での時間応答を示す。
ある方向の振動系が1rad/secの固有振動数をもつとき、これと等しい指令信号が入力された場合の振動の様子を、図10に示す。なお、この図10から後述する図12まではわかり易くするために目盛に対して波形の周期を2倍にして表記してある。図10において、振動指令の指令信号は時刻0[sec]から入力している。このとき、振動は、900秒程度かけて振幅が100となる。
次に、この振動系に0.995rad/secの振動が入力された場合の時間応答を図11に示す。固有振動数成分が励起されるため、加振開始直後に振動にうなりが生じることがある。この影響により、振幅は一度大きくなるが、自由振動の影響が小さくなるに従い、振幅は定常値になる。定常状態での振動振幅は70程度までにしかならない。
一方、速度フィードバック制御を行った図2の構成の下での結果を示す。
図11の場合と同様に、固有振動数1.0rad/secの振動系に0.995rad/secの加振指令を入力した。この際の応答波形を、図12に示す。このときのフィードバックゲインはK=0.5、振幅調整ゲインKは50とした。この時、振動の振幅は、3周期(20秒程度)で100まで立ち上がり、うなり現象も発生していない。
次に、楕円振動の立ち上がり特性について示す。
ここではZ方向の固有振動数を1.0rad/sec、X方向の固有振動数を0.99rad/secの場合を考える(またY方向の固有振動数は1.01rad/secを仮定)。このとき、加振指令として周波数0.995rad/sec、振幅1の正弦波信号をX方向とY方向に同相で与える場合について示す。停止状態の時刻0sで振動指令の入力を開始し、その後1000秒間の楕円振動波形を示す。
速度フィードバックを行わない図5の場合の楕円振動の様子を図13に示す。同図はX方向とZ方向の楕円振動の波形である。徐々に振幅が大きくなるとともに、Z-X間の位相差が変化することで楕円振動の波形が変化している。楕円振動による搬送は、垂直方向と水平方向の振動振幅の大きさと位相差により、その搬送速度や搬送方向が変化する。振幅は、主に搬送速度の大きさに、位相は搬送方向の正負に主に影響を与える。図13のように振幅や位相差が変化すると搬送速度や搬送方向の正負が変化し、所望方向への搬送ができない。
次に速度フィードバック制御を適用した図2の場合の楕円振動波形を図14に示す。図12と同様、1000秒間の波形である。この場合には、立ち上がりの2〜3周期程度で定常の楕円振動となっている。開始直後、振幅の変化はあるものの、楕円形状の変化は小さく、搬送方向は安定しているといえる。
参考として、速度フィードバックなしの図5の場合と速度フィードバックありの図2の場合の、Z-Y方向の楕円振動波形をそれぞれ図15、16に示す。定常状態の場合で示したのと同様に、速度フィードバックなしの場合には、Y方向への振動指令が0であるにも関わらずZ、X方向からの干渉力により、Z方向だけでなくY方向にも振動し、立ち上がりにも時間が掛かっていることがわかる。この場合、ワークはY方向にも移動してしまう。一方、速度フィードバックを行っている図16では、Y方向への振動が現れずY方向へはワークは移動しないうえに、図14も読み併せると短時間で振動が立ち上がっている。
以上のように、本実施形態においては、以下の効果が奏される。
(1)閉ループ100を用いた速度フィードバック制御を行うことで、外乱に対する応答を小さく抑えることができる。この結果、他の振動系から伝わってくる加振力の影響を受けて発生する振動の振幅も小さく抑えられる。例えば、物品をX方向に移動させたい場合を考える。このときZ方向とX方向のみに振動を発生させ、Z-X平面内のみで楕円振動を発生させる必要がある。このためにZ方向とX方向に所定の振動指令を与え、Y方向は振幅が必要ないので、0の指令を与える。
このとき本実施形態の制御を行うことで、Z方向とX方向の振動系は、それぞれの影響を受けることなく指令通りの振動を発生することができる。さらにY方向の振動系については、Z、X方向それぞれから伝わってくる加振力に対して応答することがなく、Z-X面に対する面外振動(Y方向振動)は発生しない。このため、Y軸方向に斜行することなく、ワークをX軸方向に搬送することができる。さらに、Y方向にも加振指令を与え、X軸に対して所定の角度でワークを搬送させたい場合においても、振動系相互の干渉を受けることがないため、正確に所望方向へのワーク搬送を行うことができる。
勿論、Z方向のみの加振を行いたい場合にも、X、Y方向に誤走が生じることが解消できる。
(2)振動指令を入力した直後に発生する自由振動を、閉ループ100を通じた速度フィードバックにより抑制することができる。この結果、振動指令を入力した直後から、振動系間の位相差がほぼ一定に保たれることから、搬送方向の正負も一定に定まる。この結果、ワークの細かな位置調整に必要なインチング動作なども安定する。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、図22に示すように、ゲイン補償部102はゲイン調整機能を有する可変型のものであってもよい。このようにすれば、適切なゲイン補完を行うことができる。
或いは、図23に示すように、検出する変位と振幅指令とを入力して偏差が0になるようにゲイン補償部102をフィードバック制御するゲイン指令生成部103を設ければ、減衰による指令の低下を自動的に補う構成が可能となる。位相差調整器104は、Z方向の変位信号と、X方向およびY方向それぞれの変位信号から振動の位相差を検出し、この検出した位相差をもとに指令信号の位相を調整する。これにより、Z−X、X−Yの位相差を所望の値に調整することができる。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
例えば、上記実施形態ではZ方向にも所定ゲインで増幅して負帰還させる閉ループを構成しているが、本発明の趣旨からすれば、X方向やY方向に対してのみ閉ループを構成すれば足り、Z方向については必須なものではない。ただ、Z方向にも閉ループを設けることで、X方向やY方向からZ方向への干渉力の影響を防ぎ、Z方向の振動が乱れることを防いで、的確な搬送速度や搬送効率、振動の立ち上がりを担保することが可能となる。
2…加振手段
3…振動制御手段
62…可動台
81、82、83…加振源(圧電素子)
100…閉ループ
101…増幅器
102…ゲイン補償部
A1…第1の水平方向振動系(X方向振動系)
A2…第2の水平方向振動系(Y方向振動系)
A3…垂直方向振動系(Z方向振動系)

Claims (5)

  1. 可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送すべく、
    前記可動台を垂直方向に弾性支持する垂直方向振動系と、前記可動台を第1の水平方向に弾性支持する第1の水平方向振動系と、前記可動台を前記第1の水平方向と交差する第2の水平方向に弾性支持する第2の水平方向振動系とを備え、それぞれの振動系を加振源によって駆動する加振手段と、
    前記各振動系に位相差を有しつつ同一の周波数で同時に周期的振動を発生させ前記可動台に所定の振動軌跡を生じさせるように前記加振源に指令をなす振動制御手段とを含み、
    前記振動制御手段の制御モードとして、可動台上の物品に対し所定方向の移動を与えるために所定の駆動対象振動系の加振源に指令を入力し、移動方向と無関係な方向の非駆動振動系の加振源に指令を入力しないか若しくはゼロ指令を入力する制御モードを有するものにおいて、
    前記非駆動振動系の振動速度を所定ゲインで増幅して当該非駆動振動系の加振源の入力側に負帰還させる閉ループを設け、
    前記制御モード中、当該非駆動振動系の前記閉ループを通じて、当該非駆動振動系の固有周波数付近の周波数を有する前記駆動対象振動系の振動に起因した外乱に対し、当該非駆動振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしたことを特徴とする物品搬送装置。
  2. 駆動対象振動系が垂直方向振動系であり、非駆動振動系が第1、第2の水平方向振動系であって、前記制御モード中、当該第1、第2の水平方向振動系の前記閉ループを通じて、当該第1、第2の水平方向振動系の固有周波数近傍の周波数を有する前記垂直方向振動系の振動に起因した外乱に対し、当該第1、第2の水平方向振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしている請求項1に記載の物品搬送装置。
  3. 駆動対象振動系が垂直方向振動系および第1又は第2の水平方向振動系であり、非駆動対象振動系が第2又は第1の水平方向振動系であって、前記制御モード中、当該第2又は第1の水平方向振動系の前記閉ループを通じて、当該第2又は第1の水平方向振動系の固有周波数近傍の周波数を有する前記垂直方向振動系及び第1又は第2の水平方向振動系の振動に起因した外乱に対し、当該第2又は第1の水平方向振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしている請求項1に記載の物品搬送装置。
  4. 可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送すべく、
    前記可動台を垂直方向に弾性支持する垂直方向振動系と、前記可動台を第1の水平方向に弾性支持する第1の水平方向振動系と、前記可動台を前記第1の水平方向と交差する第2の水平方向に弾性支持する第2の水平方向振動系とを備え、それぞれの振動系を加振源によって駆動する加振手段と、
    前記各振動系に位相差を有しつつ同一の周波数で同時に周期的振動を発生させ前記可動台に所定の振動軌跡を生じさせるように前記加振源に指令をなす振動制御手段とを含むものにおいて、
    少なくとも前記第1及び第2の水平方向振動系の振動速度を所定ゲインで増幅して当該第1及び第2の水平方向振動系の加振源の入力側に負帰還させる閉ループを設け、
    これらの閉ループを通じて、第1又は第2の水平方向振動系の固有周波数付近の周波数を有する前記垂直方向振動系及び第2又は第1の水平方向振動系の振動に起因した外乱に対し、当該第1又は第2の水平方向振動系の減衰を大きくして固有周波数近傍での伝達率を小さくするようにしたことを特徴とする物品搬送装置。
  5. 閉ループ帰還位置よりも上流にゲイン補償部を設け、このゲイン補償部において、閉ループを設けたときの指令値に対する伝達率低下を補完するようにしている請求項1〜4の何れかに記載の物品搬送装置。

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