しかしながら、特許文献1の植木鉢においては、鉢の色が濃く変わるほど収容物である土に水を含ませてしまうと、育成させる植物の根腐れなどを生じさせることがあり、一方、適正な量の水分量においては、乾燥による鉢の色の淡色化が分かりづらいとの問題がある。また、植木鉢を構成する素材が乾燥状態である程度濃い色を呈する場合、乾燥に伴った色の変化を判断し難いとの問題がある。
また、特許文献2の容器は、飲料を収容するものであるため容器本体が透水性にすることはできない。また、結露を利用するため収容する内容物は低温でなければならず、また周囲の温度や湿度も、結露を生じさせるに適した条件に限定される。
本発明の一態様に係る植木鉢は、上部が開口した有底筒状の植木鉢であって、側壁の少なくとも一部は透湿素材からなり、側壁外周面には着色部を有しており、着色部の少なくとも一部は湿分により透明化する表面層で被覆されている。
このよう植木鉢においては、水やり時期を確実に判定可能であるのみならず、美観に優れた外観の変化を容易に実現可能となる。
本発明の植木鉢においては、側壁は多孔質の透湿素材からなり、着色部は、透湿素材の孔の少なくとも一部について湿分が透過可能になるように、側壁外周面に配置されているようにすることが可能である。
このように孔の全てを着色部で塞がないようにすることで、植木鉢の側壁内周面から側壁外周面への湿分の移動が効率化するため、内容物の湿分含量の変化に敏感に反応して、外観の色彩が変化するようになる。
表面層は、ハイドロクロミック材料からなるようにすることができる。ハイドロクロミック材料を使用することで、表面層の加湿による透明化を迅速且つ確実に行うことができるため、植木鉢の色彩変化がより顕著となる。
本発明の植木鉢を利用して、水やり時期の判定が可能になる。すなわち、水やり時期の判定方法であって、栽培すべき対象物とこの対象物に水分を与える吸水性素材とを収容した、上記の植木鉢において、表面層を通して観察される着色部の色の濃淡に基づいて、水やり時期を判定する判定方法、が提供される。
本発明の植木鉢によれば、水やり時期を確実に判定可能であるのみならず、美観に優れた外観の変化を容易に実現可能である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
図1は実施形態に係る本発明の植木鉢を示す斜視図である。図1に示す植木鉢10は、上部が開口した有底筒状の植木鉢であり、側壁2の少なくとも一部は透湿素材からなり、側壁外周面には着色部4を有しており、着色部4は湿分により透明化する表面層6で被覆されている。
図2は実施形態に係る本発明の植木鉢の断面図である。すなわち、図2の(a)は図1に示す植木鉢10のII−II線に沿った断面図であり、(b)は(a)のAで示す部分の拡大図である。
図2(a)に示す植木鉢10は、側壁2の側壁外周面には着色部4を有しており、着色部4は湿分により透明化する表面層6で被覆されている。
上述した実施形態では、着色部4は側壁外周面の全面に形成されているが、着色部4は側壁外周面の一部に形成されていてもよい。本実施形態ではまた、表面層6は着色部4の全面に形成されているが、表面層6は着色部4の少なくとも一部を覆うように形成されていてもよい。
実施形態に係る植木鉢10は上記構成を有することから、栽培すべき対象物(例えば、植物)と、この対象物に水分を与える吸水性素材(例えば、土壌や湿分吸収性素材)とを収容した状態において、吸水性素材中の湿分(水分又は水蒸気を意味する。)が、透湿素材からなる側壁の内周面から外周面の方向に移動し、着色部4そのもの又は着色部4の配されていない部分等を通過して、表面層6に到達する。湿分が表面層6に到達すると、表面層6は透明化するため、表面層6を通して着色部4を観察できる。したがって、吸水性素材の水分含量が高い場合は、着色部4の色彩が見えることになる。
吸水性素材の水分含量が低下するにつれ、表面層6の透明度が下がるために、観察され得る着色部4の色彩が徐々に薄くなる。したがって、着色部4の色彩の濃淡に従って、吸水性素材の水分含量が判定できることになる。
本実施形態において、側壁2は多孔質の透湿素材からなり、着色部4は、透湿素材の孔の少なくとも一部について湿分が透過可能になるように、側壁外周面に配置されていることが好ましい。図2(b)はこのような形態を示す断面図である。
図2(b)に示すように、側壁2は孔(空隙)を有しており、着色部4はこの孔を塞がないように、側壁2の外周面と孔内部面とに形成されている。また、表面層6は着色部4を被覆するように形成されている。
このように孔の全てを着色部で塞がないようにすることで、植木鉢の側壁内周面から側壁外周面への湿分の移動が効率化するため、内容物の湿分含量の変化に敏感に反応して、外観の色彩(すなわち着色部4の見た目)が変化するようになる。
実施形態に係る植木鉢10は、透湿素材からなる植木鉢本体の表面に、着色剤を塗布して着色部4を形成させ、その上に、湿分により透明化する素材を塗布して表面層6を形成することで製造可能である。なお、透湿素材からなる植木鉢本体製造用の素材や、この素材に着色部を形成する材料を混ぜ込んだ素材に、湿分により透明化する素材を事前に混入しておき、その後成形することによって、植木鉢10を得てもよい。
植木鉢本体としては、上部が開口した有底筒状の植木鉢であって、水分又は水蒸気が透過可能な素材で少なくとも側壁の一部が形成されていればよい。なお、有底筒状の植木鉢の断面形状は任意であり、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状にすることができる。このような植木鉢本体としてはモルタル製の植木鉢が例示可能である。
使用可能な着色剤は制限ないが、好ましくは微細なスプレー粒子が形成可能なスプレー式着色剤が好ましい。スプレー粒子が微細であることにより、透湿素材が多孔質である場合、孔の全てを着色部4が塞ぐことなく、図2(b)に示すような構成を実現可能となる。このような着色剤としては、株式会社染めQテクノロジイ社製の「染めQエアゾール」が挙げられる。
湿分により透明化する素材としては、ハイドロクロミック材料が適用でき、このような材料としては、タナカケミカル株式会社製「ネオフレックスJ−11」、パイロットインキ株式会社製「水発色素材」が挙げられる。
ハイドロクロミック材料は典型的には水性溶液(水溶液又は水分散液)で提供されるが、着色部4の色彩に従って、適宜希釈して用いることが好ましい。例えば、水性溶液で提供されるハイドロクロミック材料2質量部に対して、水を8質量部程度添加して、希釈することができる。
上記のようにして製造し得る植木鉢10は、内容物の湿分含量に従って、美観に優れた外観の変化を容易に実現可能であるため、水やり時期を確実に判定可能できる。
図3(a)は収容した吸水性素材の水分含量が多いときの植木鉢の発色を示す図であり、(b)は(a)より吸水性素材の水分含量が少なくなったときの植木鉢の発色を示す図であり、(c)は(b)より吸水性素材の水分含量が少なくなったときの植木鉢の発色を示す斜視図である。
図3に示す色彩の濃淡の変化から明らかなように、栽培すべき対象物とこの対象物に水分を与える吸水性素材とを収容した植木鉢10において、表面層6を通して観察される着色部4の色の濃淡に基づいて、水やり時期を判定する判定方法が提供可能である。