本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係るインプリントモールドの概略構成を示す切断端面図であり、図2は、第1の実施形態に係るインプリントモールドの凹状構造部の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
[インプリントモールド]
図1に示すように、第1の実施形態に係るインプリントモールド1は、第1面21及び当該第1面21に対向する第2面22を有する透明基材2と、透明基材2の第1面21側に形成されている凹状構造部3とを備える。なお、図1においては、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の説明・理解を容易にするために、1つの凹状構造部3を有する態様を図示しているが、本発明は、当然にこの態様に限定されるものではない。
透明基材2としては、インプリントモールド用基材として一般的なもの、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、バリウムホウケイ酸ガラス、アミノホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板等のガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、ポリメチルメタクリレート基板、ポリエチレンテレフタレート基板等の樹脂基板、これらのうちから任意に選択された2以上の基板を積層してなる積層基板等の透明基板等を用いることができる。なお、第1の実施形態において「透明」とは、透明基材2を介して照射された光により光硬化性樹脂を硬化させ得る程度であればよく、例えば、波長300〜450nmの光線の透過率が70%以上であるのが好ましく、より好ましくは90%以上である。
透明基材2の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略矩形状、略円形状等が挙げられる。透明基材2が光インプリント用として一般的に用いられている石英ガラス基板からなるものである場合、通常、透明基材2の平面視形状は略矩形状である。
透明基材2の大きさも特に限定されるものではないが、透明基材2が上記石英ガラス基板からなる場合、例えば、透明基材2の大きさは152mm×152mm程度である。また、透明基材2の厚さT2は、強度、取り扱い適性等を考慮し、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定され得る。
第1の実施形態において、凹状構造部3は、第1面21側から順に第1段部31、第2段部32及び第3段部33の3個の段部を含む。第1〜第3段部31〜33の平面視における形状は、特に限定されるものではないが、例えば略円形状、略方形状等が挙げられる。
第1〜第3段部31〜33の平面視における大きさに関し、第1段部31が最も大きく、第3段部33が最も小さく構成されている。第2段部32は、第1段部31に物理的に包含される大きさであり、第3段部33は、第2段部32に物理的に包含される大きさである。第1〜第3段部31〜33の平面視における大きさ(寸法)は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いて製造される凸状構造体10の用途等に応じて適宜設定され得る。例えば、凹状構造部3の平面視における大きさ(寸法)は、当該凹状構造部3に含まれる段部(図1に示す態様においては第1〜第3段部31〜33)の段数(図1に示す態様においては3段)と、各段部(第1〜第3段部31〜33)における略水平部分(底部311〜331)の幅W311〜W331(図2参照)とによって平面視における大きさが決定される。凹状構造部3に含まれる段部の数は、凸状構造体10の種類に応じて10段以上、数十段であってもよい。凹状構造部3に含まれる段部の略水平部分の幅は100〜1000nm程度の範囲で適宜設定され得る。
凹状構造部3の深さは、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いて製造される凸状構造体10の用途等に応じて適宜設定され得るが、凹状構造部3に含まれる段部(図1に示す態様においては第1〜第3段部31〜33)の段数(図1に示す態様においては3段)と、各段部(第1〜第3段部31〜33)における略垂直部分(側壁312〜332)の長さによって決定される。凹状構造部3に含まれる段部の数は、凸状構造体10の種類に応じて10段以上、数十段であってもよい。凹状構造部3に含まれる各段部の深さは50nm〜1μ程度の範囲で適宜設定され得る。
第1の実施形態における凹状構造部3の各段部31〜33の深さT31〜T33に関し、第3段部33の深さT33が最も大きく、第1段部31の深さT31が最も小さい。第2段部32の深さT32は、第1段部31の深さT31又は第3段部33の深さT33と実質的に同一であってもよいが、第3段部33の深さT33よりも小さく、第1段部31の深さT31よりも大きいのが好ましい。すなわち、第3段部33から第1段部31に向けて、段部の深さが徐々に小さくなるのが好ましい。各段部の深さが異なることで、後述するように、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いたインプリントリソグラフィーにより製造される凸状構造体10における凸状構造部11の各段部11a〜11cの高さを実質的に同一にすることができる。
第1〜第3段部31〜33の深さT31〜T33の関係、特に第1段部31の深さT31と第3段部33の深さT33との関係は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いたインプリントリソグラフィーにより凸状構造体10を製造する際に用いられる被転写材料(インプリント樹脂膜110を構成する樹脂材料)及び被転写基板100のエッチングレート(選択比)、インプリントモールド1の凹状構造部3(第1〜第3段部31〜33)の寸法等に応じ、凸状構造体10における凸状構造部11の各段部11a〜11cの高さが実質的に同一になるように適宜設定され得る。
例えば、凹状構造部3の各段部31〜33の深さT31〜T33は、以下のようにして設定され得る。
まず、各段部31〜33の深さT31〜T33が同一に設計されたテスト用インプリントモールドと、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いて凸状構造体10(図8(D)参照)を製造する際に使用される被転写基板100(図8(A)参照)を準備する。次に、当該テスト用インプリントモールドを用いたインプリント処理により、被転写基板100上に凸状パターンを形成する。そして、当該凸状パターンをマスクとしたエッチング処理により、仮凸状構造体を作製する。
続いて、仮凸状構造体の各段部の高さを測定する。各段部の高さの測定は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて行われ得る。このようにして測定された各段部の高さに基づき、インプリントモールド1における凹状構造部3の各段部31〜33の深さT31〜T33を算出する。
例えば、エッチング時間の経過に従い、被転写基板100のエッチングレートが低下するが、凸状パターン(レジストパターン)のエッチングレートは一定であると仮定する。この場合において、被転写基板100のエッチングレートSrate及び凸状パターン(レジストパターン)のエッチングレートRrateは、例えば、下記に示すように、時間(t)を変数とする2次の多項式(1),(2)により表され得る。
Srate=Ct2+Bt+A …(1)
Rrate=ct2+bt+a …(2)
式(1)及び(2)において、Aは「被転写基板100の構成材料及びエッチング条件により決定されるエッチングレート」を、aは「凸状パターン(レジストパターン)の構成材料及びエッチング条件により決定されるエッチングレート」を、B、C、b及びcは係数である。
ここで、凸状パターン(レジストパターン)のエッチングレートRrateは一定(Rrate=a)である。そのため、仮凸状構造体の各段部の高さの測定結果を、上記多項式(1)を用いてフィッティングして係数B,Cを算出し、凸状構造体10の各段部の高さ(各段部に対応した被転写基板100のエッチング深さE11a〜E11c)が均一となるように、各段部に対応する凸状パターン(レジストパターン)の高さ(厚さ)T111a〜T111cを決定する(図3参照)。このようにして決定された凸状パターン(レジストパターン)の高さ(厚さ)は、そのまま凹状構造部3の各段部31〜33の深さとして採用され得る。
なお、上記においては、エッチングレートSrate,Rrateを表す2次の多項式を用い、仮凸状構造体の各段部の高さの測定結果をフィッティングしているが、多項式の次数を増大させてもよい。多項式の次数を増大させることにより、凹状構造部3の各段部31〜33の深さをより高精度に求めることができる。なお、多項式の次数を増大させるほどに、各段部31〜33の深さを高精度に求めることができるものの、各段部31〜33の深さを求めるのに長時間を要するようになる。そのため、凹状構造部3を形成する際のエッチング精度、上記仮凸状構造体の各段部の高さの測定精度、第1の実施形態において製造される凸状構造体10(図8(D)参照)における各段部の高さの設計値等を考慮した上で、上記多項式の次数を適宜決定すればよい。
第1の実施形態において、凹状構造部3の第1〜第3段部31〜33の底部311〜331の周縁には、それぞれ環状の凹状溝部(第1〜第3凹状溝部41〜43)が形成されている。凹状溝部が形成されていない場合、インプリントモールド1を用いたインプリント処理により被転写基板100上に形成される凸状パターン111の各段部111a〜111cの角は、凹状構造部3の各段部31〜33の底部311〜331と側壁312〜332とに沿った形状となる。この凸状パターン111をマスクとして被転写基板100をエッチングすると、被転写基板100に形成される凸状構造部11の各段部11a〜11cの角が丸まってしまう。特に、凹状構造部3の段部の数が多くなり、凸状パターン111全体の高さが高くなると、凸状構造部11の各段部の角が顕著に丸まってしまう。しかしながら、凹状構造部3の第1〜第3段部31〜33の底部311〜331の周縁に、それぞれ第1〜第3凹状溝部41〜43が形成されていることで、凸状構造部11の各段部の角が丸まってしまうのを抑制することができる。また、凹状構造部3の第1〜第3段部31〜33の底部311〜331の周縁に、それぞれ第1〜第3凹状溝部41〜43が形成されていることで、後述する実施例から明らかなように、凸状構造部11の各段部の側壁角度がより垂直に近くなるようにすることができる。
第1〜第3凹状溝部41〜43の深さT41〜T43の関係につき、第3凹状溝部43の深さT43が最も大きく、第1凹状溝部41の深さT41が最も小さく構成されているのが好ましい。第2凹状溝部42の深さT42は、第1凹状溝部41の深さT41又は第3凹状溝部43の深さT43と実質的に同一であってもよいが、第3凹状溝部43の深さT43よりも小さく、第1凹状溝部41の深さT41よりも大きいのが好ましい。すなわち、第3凹状溝部43から第1凹状溝部41に向けて、凹状溝部の深さが徐々に小さくなるのが好ましい。各凹状溝部の深さが異なることで、凸状構造部11の各段部の角が丸まってしまうのをより効果的に抑制することができる。
第1〜第3凹状溝部41〜43の深さT41〜T43の関係、特に第1凹状溝部41の深さT41と第3凹状溝部43の深さT43との関係は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いたインプリントリソグラフィーにより凸状構造体10を製造する際に用いられる被転写材料(インプリント樹脂膜110を構成する樹脂材料)及び被転写基板100のエッチングレート(選択比)、インプリントモールド1の凹状構造部3(第1〜第3段部31〜33)の寸法等に応じ、凸状構造体10における凸状構造部11の各段部11a〜11cの角が丸まってしまわないように適宜設定され得る。
例えば、第1〜第3凹状溝部41〜43の深さT41〜T43は、それぞれ、第1〜第3段部31〜33のそれぞれの深さT31〜T33に対する2〜40%程度の範囲にて設定されるのが好ましく、3〜30%程度の範囲にて設定されるのがより好ましい。各凹状溝部41〜43の深さT41〜T43が各段部31〜33の深さT31〜T33の40%を超えると、インプリントモールド1を用いたインプリント処理における当該インプリントモールド1の剥離時に、第1〜第3凹状溝部41〜43に対応して形成される第1〜第3凸条部112a〜112c(図8(C)参照)が欠損してしまうおそれがある。
[インプリントモールドの製造方法]
次に、上記構成を有するインプリントモールド1の製造方法の一例を説明する。図4及び5は、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、第1面21及びそれに対向する第2面22を有する透明基材2を準備し、当該透明基材2の第1面21上にハードマスク層50を形成し、その上にレジスト膜60を形成する(図4(A)参照)。
ハードマスク層50は、例えば、クロム、窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系材料;タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル系材料等を単独で、又は任意に選択した2種以上を用い、スパッタリング、PVD、CVD等の公知の成膜法により形成され得る。なお、ハードマスク層50の厚さは、透明基材2を構成する材料とのエッチング選択比や、凹状構造部3の深さ等に応じ適宜設定され得る。
レジスト膜60を構成する樹脂材料(レジスト材料)としては、特に限定されるものではなく、電子線リソグラフィー処理、フォトリソグラフィー処理等において一般的に用いられるネガ型又はポジ型の電子線反応性レジスト材料、紫外線反応性レジスト材料等が挙げられる。
レジスト膜60の厚みは、特に制限されるものではない。後述する工程(図4(B),(C)参照)において、レジスト膜60をパターニングして形成されたレジストパターン611が、ハードマスク層50をエッチングする際のマスクとして用いられる。したがって、レジスト膜60の厚みは、ハードマスク層50を構成する材料や厚さ等を考慮し、ハードマスク層50のエッチング処理後にレジストパターン61が残存する程度に適宜設定される。
ハードマスク層50上にレジスト膜60を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば、ハードマスク層50上にレジスト材料を、スピンコーター、スプレーコーター等の塗工機を用いて塗布し又はハードマスク層50上に上記樹脂成分を含有するドライフィルムレジストを積層し、所望により所定の温度で加熱(プリベーク)する方法等が挙げられる。
次に、図4(B)に示すように、ハードマスク層50上の所望の位置に所定の開口部62を有するレジストパターン61を形成する。レジストパターン61は、例えば、電子線描画装置を用いた電子線リソグラフィー、所定の開口部及び遮光部を有するフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー等により形成され得る。
レジストパターン61における開口部62の形状は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の第1段部31の形状に応じて適宜設定されるものであって、特に制限されるものではなく、例えば、平面視略円形状、平面視略方形状等である。
開口部62の寸法は、上記形状と同様に、第1の実施形態において製造されるインプリントモールド1の第1段部31の寸法に応じて適宜設定されるものであって、特に制限されるものではないが、例えば、300nm〜100μm程度である。なお、開口部62の寸法とは、開口部62の形状が平面視略円形状である場合、開口部62の直径を意味する。
上記のようにして形成されたレジストパターン61をマスクとして用いてハードマスク層50をエッチングしてハードマスクパターン51を形成し、当該ハードマスクパターン51をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングすることで、第1段部31及び第1凹状溝部41が形成される(図4(D)参照)。
次に、ハードマスク層52を再度形成し(図5(A)参照)、第2段部32に対応する開口部64を有するレジストパターン63を形成した上で、ハードマスク層52をエッチングしてハードマスクパターン53を形成する。そして、当該ハードマスクパターン53をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングすることで、第2段部32及び第2凹状溝部42が形成される(図5(B)参照)。
続いて、ハードマスク層54を再度形成し(図5(C)参照)、第3段部33に対応する開口部66を有するレジストパターン65を形成した上で、ハードマスク層54をエッチングしてハードマスクパターン55を形成する(図5(D)参照)。そして、当該ハードマスクパターン55をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングすることで、第3段部33及び第3凹状溝部43が形成される(図5(D)参照)。このようにして、第1の実施形態に係るインプリントモールド1(図1参照)を製造することができる。
続いて、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の製造方法の他の例を説明する。図6及び7は、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、第1面21及びそれに対向する第2面22を有する透明基材2を準備し、当該透明基材2の第1面21上にハードマスク層50を形成し、その上にレジスト膜60を形成する(図6(A)参照)。
次に、図6(B)に示すように、ハードマスク層50上の所望の位置に所定の開口部62’を有するレジストパターン61’を形成する。レジストパターン61’における開口部62’の形状は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の第3段部33の形状に応じて適宜設定され得る。
続いて、レジストパターン61’をマスクとしてハードマスク層50をエッチングし、第3段部33に対応する開口部を有するハードマスクパターン51’を形成し(図6(C)参照)、当該ハードマスクパターン51’をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングすることで、段部33’及び凹状溝部43’が形成される(図6(D)参照)。なお、段部33’及び凹状溝部43’は、後のエッチング工程においてエッチングされることを考慮した上で形成される。
次に、第2段部32に対応する開口部64’を有するレジストパターン63’を形成し(図7(A)参照)、当該レジストパターン63’をマスクとして用い、残存するハードマスクパターン51’をエッチングして第2段部32に対応する開口部を有するハードマスクパターン53’を形成し、当該ハードマスクパターン53’をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングする。これにより、段部32’及び凹状溝部42’が形成されるとともに、段部33’及び凹状溝部43’もさらにエッチングされる(図7(B)参照)。なお、段部32’及び凹状溝部42’は、後のエッチング工程においてエッチングされることを考慮した上で形成される。
続いて、第1段部31に対応する開口部66’を有するレジストパターン65’を形成し(図7(C)参照)、当該レジストパターン65’をマスクとして用い、残存するハードマスクパターン53’をエッチングして第1段部31に対応する開口部を有するハードマスクパターン55’を形成し、当該ハードマスクパターン55’をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングする(図7(D)参照)。これにより、第1〜第3段部31〜33及び第1〜第3凹状溝部41〜43が形成される。このようにして、所定の深さT31〜T33の第1〜第3段部31〜33を含む凹状構造部3を備えるインプリントモールド1(図1参照)を製造することができる。
[凸状構造体の製造方法]
上述した構成を有するインプリントモールド1を用いた凸状構造体の製造方法について説明する。図8は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いた凸状構造体の製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。なお、第1の実施形態において製造される凸状構造体10としては、例えば、光学素子、配線回路、記録デバイス、ディスプレイパネル、医療検査用チップ、マイクロ流路等が挙げられ、それらに求められる凸状構造部11に対応する凹状構造部3がインプリントモールド1に備えられている。
まず、シリコンウェハ、石英ガラスウエハ、無アルカリガラス等のガラス基板等の被転写基板100と、第1の実施形態に係るインプリントモールド1とを準備する。そして、被転写基板100上にインプリント樹脂110の液滴をインクジェット法により滴下し、インプリントモールド1とインプリント樹脂110の液滴とを接触させることで、インプリントモールド1と被転写基板100との間にインプリント樹脂110を展開させ、凹状構造部3にインプリント樹脂110を充填させる(図8(A)参照)。インプリント樹脂110としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられるが、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いるのが好ましい。
被転写基板100上のインプリント樹脂110にインプリントモールド1を押し当てた状態で、インプリント樹脂110を硬化させる(図8(B)参照)。インプリント樹脂110を硬化させる方法としては、インプリント樹脂110を構成する樹脂材料の硬化特性に応じて適宜選択すればよく、例えば、インプリント樹脂110が紫外線硬化性樹脂により構成される場合、インプリント樹脂110にインプリントモールド1を押し当てた状態で紫外線を照射することで、当該インプリント樹脂110を硬化させることができる。
硬化したインプリント樹脂110からインプリントモールド1を剥離する。これにより、インプリントモールド1の凹状構造部3(第1〜第3段部31〜33)に対応する凸状パターン111が形成される(図8(C)参照)。かかる凸状パターン111は、第1〜第3段部31〜33に対応する第1〜第3凸状パターン111a〜111cを含み、各凸状パターン111a〜111cの角には、第1〜第3凹状溝部41〜43に対応する第1〜第3凸条部112a〜112cが形成されている。
続いて、凸状パターン111をマスクとして用いて被転写基板100をエッチングする。これにより、第1〜第3段部11a〜11cを含む凸状構造部11を備える凸状構造体10が製造される。
第1の実施形態に係るインプリントモールド1は、第1〜第3段部31〜33の深さT31〜T33がそれぞれ異なり、第1段部31から第3段部33に向けて深さが徐々に大きく構成されていることで、凸状構造体10に備えられる凸状構造部11の第1〜第3段部11a〜11cの高さが実質的に同一となる。また、インプリントモールド1の第1〜第3段部31〜33の底面311〜331の周縁に第1〜第3凹状溝部41〜43が形成されていることで、凸状構造体10に備えられる凸状構造部11の第1〜第3段部11a〜11cの角が丸まることがない。よって、第1の実施形態によれば、高さが実質的に均一な複数の段部を有する凸状構造部を含む凸状構造体を製造することができる。
〔第2の実施形態〕
図9は、第2の実施形態に係るインプリントモールドの概略構成を示す切断断面図であり、図10Aは、第2の実施形態に係るインプリントモールドの凹状構造部の第1段構造群の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図10Bは、第2の実施形態に係るインプリントモールドの凹状構造部の第2段構造群の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図10Cは、第2の実施形態に係るインプリントモールドの凹状構造部の第3段構造群の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
第2の実施形態に係るインプリントモールド1’は、第1面21及び当該第1面21に対向する第2面22を有する透明基材2と、透明基材2の第1面21側に形成されている凹状構造部3とを備える。なお、図9においては、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’の説明・理解を容易にするために、1つの凹状構造部3を有する態様を図示しているが、本発明は、当然にこの態様に限定されるものではない。
凹状構造部3は、第1面21側から第2面22側に向けて順に位置する第1段構造群31G、第2段構造群32G及び第3段構造群33Gを含む。第1段構造群31G〜第3段構造群33Gのそれぞれは、複数の連続する段部を含む。各段構造群31G〜33Gに含まれる複数の連続する段部には、直上の段部又は直下の段部と極端に深さT31G〜T33Gの異なる段部、例えば、直上の段部又は直下の段部の深さT31G〜T33Gの40%以下又は160%以上の深さの段部が含まれていてもよい。
図10A〜図10Cに示すように、第2の実施形態において、第1段構造群31Gは第1段部31a〜第7段部31gを含み、第2段構造群32Gは第8段部32a〜第14段部32gを含み、第3段構造群33Gは第15段部33a〜第21段部33gを含む。第2の実施形態における凹状構造部3は、21個の段部(第1段部31a〜第21段部33g)を含み、第1段構造群31G〜第3段構造群33Gのそれぞれは、凹状構造部3に含まれる21個の段部のうちの一部(7個)の段部を含む。
第1段構造群31Gに含まれる第1段部31a〜第7段部31gは、いずれも実質的に同一の深さT31Gを有する。第2段構造群32Gに含まれる第8段部32a〜第14段部32gは、いずれも実質的に同一の深さT32Gを有する。第3段構造群33Gに含まれる第15段部33a〜第21段部33gは、いずれも実質的に同一の深さT33Gを有する。第2の実施形態において、深さが実質的に同一であるとは「対象とする段部の深さのバラツキが、概ねその深さの平均値±4%以内であること」を意味するものとする。
第1段構造群31Gに含まれる第1段部31a〜第7段部31gのうち、第1段部31a、第3段部31c、第5段部31e及び第7段部31gは、いずれも同一の深さT31Gを有し、第2段部31b及び第6段部31fは、互いに同一の深さT31Gを有するのが好ましい。なお、第2段構造群32Gに含まれる第8段部32a〜第14段部32gにおいても同様に、第8段部32a、第10段部32c、第12段部32e及び第14段部32gは、いずれも同一の深さT32Gを有し、第9段部32b及び第13段部32fは、互いに同一の深さT32Gを有するのが好ましい。また、第3段構造群33Gに含まれる第15段部33a〜第21段部33aにおいても同様に、第15段部33a、第17段部33c、第19段部33e及び第21段部33gは、いずれも同一の深さT33Gを有し、第16段部33b及び第20段部33fは、互いに同一の深さT33Gを有するのが好ましい。すなわち、凹状構造部3に含まれる各段構造群が、2n−1個(nは2以上の整数である。)の段部を有する場合において、当該各段構造群において第1面21側から数えて奇数番目の段部はいずれも同一の深さを有するのが好ましい。
第2の実施形態における凹状構造部3において、第1段構造群31Gに含まれる第1段部31a〜第7段部31gのそれぞれの深さT31G、第2段構造群32Gに含まれる第8段部32a〜第14段部32gのそれぞれの深さT32G及び第3段構造群33Gに含まれる第15段部33a〜第21段部33gのそれぞれの深さT33Gは、下記式に表される関係を有するのが好ましい。
T31G<T32G<T33G
第1段構造群31G〜第3段構造群33Gのそれぞれに含まれる段部の深さが異なることで、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’を用いたインプリントリソグラフィーにより製造される凸状構造体における凸状構造部の各段部の高さを実質的に同一にすることができる。
なお、第2の実施形態における凹状構造部3においては、第3段構造群33Gに含まれる各段部の深さT33Gが最も大きく、第1段構造群31Gに含まれる各段部の深さT31Gが最も小さければよい。そのため、第2段構造群32Gに含まれる各段部の深さT32Gは、第1段構造群31Gに含まれる各段部の深さT31Gよりも大きく、第3段構造群33Gに含まれる各段部の深さT33Gよりも小さいのが好ましいが、第1段構造群31Gに含まれる各段部の深さT31G又は第3段構造群33Gに含まれる各段部の深さT33Gと実質的に同一であってもよい。
第1段構造群31G〜第3段構造群33Gのそれぞれに含まれる各段部の深さT31G〜T33Gの関係、特に第1段構造群31Gに含まれる各段部の深さT31Gと第3段構造群33Gに含まれる各段部の深さT33Gとの関係は、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’を用いたインプリントリソグラフィーにより凸状構造体を製造する際に用いられる被転写材料及び被転写基板のエッチングレート(選択比)、インプリントモールド1’の凹状構造部3の寸法等に応じ、凸状構造体における凸状構造部の各段部の高さが実質的に同一になるように適宜設定され得る。
第2の実施形態に係るインプリントモールド1’を用いたインプリントリソグラフィーにより製造される凸状構造体において、凸状構造部の各段部の略水平部分の幅が実質的に同一であることが必要である場合、第1段構造群31Gに含まれる第1段部31a〜第7段部31gにおける略水平部分(底部311a〜317a)のそれぞれの幅W31G、第2段構造群32Gに含まれる第8段部〜第14段部の略水平部分(底部321a〜327a)のそれぞれの幅W32G及び第3段構造群33Gに含まれる第15段部33a〜第21段部33gの略水平部分(底部331a〜337a)のそれぞれの幅W33Gは、下記式に表される関係を有するのが好ましい。
W31G>W32G>W33G
第1段構造群31G〜第3段構造群33Gのそれぞれに含まれる段部の底部の幅が異なることで、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’を用いたインプリントリソグラフィーにより製造される凸状構造体における凸状構造部の各段部の略水平部分の幅を実質的に同一にすることができる。
第2の実施形態における凹状構造部3においては、第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの略水平部分(底部331a〜337a)の幅W33Gが最も小さく、第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの略水平部分(底部311a〜317a)の幅W31Gが最も大きければよい。そのため、第2段構造群32Gに含まれる各段部32a〜32gの略水平部分(底部321a〜327a)の幅W32Gは、第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの略水平部分(底部311a〜317a)の幅W31Gよりも小さく、第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの略水平部分(底部331a〜337a)の幅W33Gよりも大きいのが好ましいが、第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの略水平部分(底部311a〜317a)の幅W31G又は第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの略水平部分(底部331a〜337a)の幅W33Gと実質的に同一であってもよい。
第1段構造群31G〜第3段構造群33Gのそれぞれに含まれる各段部31a〜33gの略水平部分(底部311a〜337a)の幅W31G〜W33Gの関係、特に第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの略水平部分(底部311a〜317a)の幅W31Gと第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの略水平部分(底部331a〜337a)の幅W33Gとの関係は、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’を用いたインプリントリソグラフィーにより凸状構造体を製造する際に用いられる被転写材料及び被転写基板のエッチングレート(選択比)、インプリントモールド1’の凹状構造部3の寸法等に応じ、凸状構造体における凸状構造部の各段部の略水平部分の幅が実質的に同一になるように適宜設定され得る。
第2の実施形態において、凹状構造部3の第1〜第21段部31a〜33gの底部311a〜337aの周縁には、それぞれ環状の凹状溝部(図示省略)が形成されている。凹状溝部が形成されていない場合、インプリントモールド1’を用いたインプリント処理により被転写基板上に形成される凸状パターンの各段部の角は、凹状構造部3の各段部31a〜33gの底部311a〜337aと側壁311b〜337bとに沿った形状となる。この凸状パターンをマスクとして被転写基板をエッチングすると、被転写基板に形成される凸状構造部の各段部の角が丸まってしまう。特に、凹状構造部3の段構造群の数や、各段構造群に含まれる段部の数が多くなり、凸状パターン全体の高さが高くなると、凸状構造部の各段部の角が顕著に丸まってしまう。しかしながら、凹状構造部3の第1〜第21段部31a〜33gの底部311a〜337aの周縁に凹状溝部が形成されていることで、凸状構造部の各段部の角が丸まってしまうのを抑制することができる。また、凹状構造部3の第1〜第21段部31a〜33gの底部311a〜337aの周縁に凹状溝部が形成されていることで、凸状構造部の各段部の側壁角度をより直角に近くなるようにすることができる。なお、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’において、第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの底部311a〜317aの周縁に形成されている凹状溝部の深さが最も小さく、第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの底部331a〜337aの周縁に形成されている凹状溝部の深さが最も大きいのが好ましい。第2段構造群32Gに含まれる各段部32a〜32gの底部321a〜327aの周縁に形成されている凹状溝部の深さは、第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの底部311a〜317aの周縁に形成されている凹状溝部の深さ又は第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの底部331a〜337aの周縁に形成されている凹状溝部の深さと実質的に同一であってもよいが、第1段構造群31Gに含まれる各段部31a〜31gの底部311a〜317aの周縁に形成されている凹状溝部の深さよりも大きく、第3段構造群33Gに含まれる各段部33a〜33gの底部331a〜337aの周縁に形成されている凹状溝部の深さよりも小さいのが好ましい。
〔インプリントモールドの製造方法〕
次に、上記構成を有するインプリントモールド1’の製造方法の一例を説明する。図11〜図13は、第2の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、第1面21及びそれに対向する第2面22を有する透明基材2を準備し、当該透明基材2の第1面21上にハードマスク層50を形成し(図11(A)参照)、その上にレジスト膜60を形成する(図11(B)参照)。次に、ハードマスク層50上に、第1段構造群31Gに含まれる複数の段部(第1段部31a〜第7段部31g)に対応する凹部611及び凸部612、並びに第2段構造群32G及び第3段構造群33Gを形成する予定の領域に対応する開口部を613含むレジストパターン610を形成する(図11(C)参照)。
レジストパターン610に含まれる凹部611及び凸部612の寸法は、インプリントモールド1’の第1段構造群31Gの各段部(第1段部31a〜第7段部31g)の寸法に応じて適宜設定されるものであって、特に制限されるものではない。開口部613の寸法も同様に、第2段構造群32G及び第3段構造群33Gを形成可能な程度に適宜設定されるものであって、特に制限されるものではない。
続いて、上記のようにして形成されたレジストパターン610をマスクとして用いてハードマスク層50をエッチングしてハードマスクパターン510を形成し(図12(A)参照)、当該ハードマスクパターン510をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングすることで、複数の凹凸構造を含む第1凹凸パターン70を形成する(図12(B)参照)。
第1凹凸パターン70に含まれる複数の凹凸構造は、それぞれ、第1段構造群31Gに含まれる複数の段部(第1段部31a〜第7段部31g)を形成するための基礎となるものである。第1凹凸パターン70に含まれる凹部701(701a,701c,701e,701g)の深さにより、第1面21側から数えて奇数番目の段部(第1段部31a、第3段部31c、第5段部31e及び第7段部31g)の深さT31Gが規定される。すなわち、各凹部701(701a,701c,701e,701g)を同一深さで形成することにより、第1面21側から数えて奇数番目の段部(第1段部31a、第3段部31c、第5段部31e及び第7段部31g)の深さT31Gが同一となる。また、第1凹凸パターン70に含まれる凹部701の底面の寸法及び凸部702の頂面の寸法により、第1段部31a〜第7段部31gの略水平面(底部311a〜317a)の幅W31Gが規定される。
次に、第1凹凸パターン70が形成された透明基材2の第1面21上にハードマスク層を形成し、第1段部31aの基礎となる凹部701a、並びに第4段部31dの基礎となる凸部702d及び第5段部31eの基礎となる凹部701eを被覆するレジストパターン80を形成し、レジストパターン80をマスクとしてハードマスク層をエッチングしてハードマスクパターン520を形成する(図12(C)参照)。そして、当該ハードマスクパターン520をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングする(図13(A)参照)。これにより、第1段部31a〜第3段部31cと、第4段部32d〜第7段部32gの基礎となる階段状凹凸構造81とが、透明基材2の第1面21に形成される。このハードマスクパターン520をマスクとしたエッチング深さにより、第2段部31b及び第6段部31fの深さT31Gが規定される。すなわち、第2段部31b及び第6段部31fの深さT31Gが同一となる。したがって、当該エッチング深さを適宜調整することで、第1段部31a〜第3段部31c及び第5段部31e〜第7段部31gの深さT31Gを実質的に同一にすることができる。
続いて、第1段部31a〜第3段部31cと階段状凹凸構造81とが形成された透明基材2の第1面21上にハードマスク層を形成し、第1段部31a〜第3段部31cを被覆するレジストパターン90を形成し、レジストパターン90をマスクとしてハードマスク層をエッチングしてハードマスクパターン530を形成する(図13(B)参照)。そして、当該ハードマスクパターン530をマスクとして用いて透明基材2の第1面21側をエッチングする(図13(C)参照)。これにより、第1段部31a〜第7段部32gを含む第1段構造群31Gが透明基材2の第1面21側に形成される。このハードマスクパターン530をマスクとしたエッチング深さにより、第4段部31dの深さT31Gが規定される。したがって、当該エッチング深さを適宜調整することで、第1段部31a〜第7段部31gの深さT31Gを実質的に同一にすることができる。
上述した第1段構造群31Gを形成する工程(図11〜図13)と同様の工程を繰り返して行うことで、第2段構造群32G及び第3段構造群33Gを形成する。このようにして、第2の実施形態に係るインプリントモールド1’(図9参照)を製造することができる。このようにして製造されるインプリントモールド1’は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1と同様に、凸状構造体10の製造に用いることができる(図8参照)。
第2の実施形態に係るインプリントモールド1’は、第1段構造群31Gに含まれる段部(第1段部31a〜第7段部31g)の深さT31G、第2段構造群32Gに含まれる段部(第8段部32a〜第14段部32g)の深さT32G及び第3段構造群33Gに含まれる段部(第15段部33a〜第21段部33g)の深さT33Gがいずれも異なり、第1段構造群31Gから第3段構造群33Gに向けてそれらに含まれる段部の深さが徐々に大きく構成されていることで、凸状構造体10に備えられる凸状構造部の各段部の高さが実質的に同一となる。また、第1段構造群31Gに含まれる段部(第1段部31a〜第7段部31g)の略水平部分(底部311a〜317a)の幅W31G、第2段構造群32Gに含まれる段部(第8段部32a〜第14段部32g)の略水平部分(底部321a〜327a)の幅W32G及び第3段構造群33Gに含まれる段部(第15段部33a〜第21段部33g)の略水平部分(底部331a〜337a)の幅W33Gがいずれも異なり、第1段構造群31Gから第3段構造群33Gに向けて当該幅が徐々に小さく構成されていることで、凸状構造体10に備えられる凸状構造部の各段部の頂面の幅が実質的に同一となる。さらに、インプリントモールド1’の各段部の底面の周縁に凹状溝部が形成されていることで、凸状構造体10に備えられる凸状構造部11の各段部の角が丸まることがない。よって、第2の実施形態によれば、高さ及び幅が実質的に均一な複数の段部を有する凸状構造部を含む凸状構造体を高精度に製造することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
第1の実施形態においては、第1〜第3段部31〜33を含む凹状構造部3を有するインプリントモールド1を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、複数の段部、すなわち第1〜第N段部(Nは2以上の整数である。)を含む凹状構造部3を有していればよい。この場合において、第1段部の深さが、第N段部の深さよりも小さく構成されていればよく、各段部の深さは、透明基材2の第1面21の最近傍に位置する第1段部から第N段部に向けて徐々に大きくなるように構成されているのが好ましい。
第1の実施形態においては、第1〜第3段部31〜33のそれぞれの底部311〜331の周縁に第1〜第3凹状溝部41〜43が形成されているインプリントモールド1を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、少なくとも第3段部33、すなわち透明基材2の厚さ方向において第1面21の最遠位に位置する第N段部の底部の周縁に凹状溝部が形成されていればよい。
第2の実施形態においては、第1〜第3段構造群31G〜33Gを含む凹状構造部3を有するインプリントモールド1’を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、複数の段構造群、すなわち第1〜第X段構造群(Xは2以上の整数である。)を含む凹状構造部3を有していればよい。この場合において、第1段構造群の各段部の深さが、第X段構造群の各段部の深さよりも小さく構成されていればよく、第Y段構造群(Yは1以上X−1以下の整数である。)の各段部の深さが、第Y+1段構造群の各段部の深さよりも小さいのが好ましく、凹状構造部3に含まれる各段部の深さは、透明基材2の第1面21の最近傍に位置する第1段構造群の各段部から第X段構造群の各段部に向けて徐々に大きくなるように構成されているのが特に好ましい。
第2の実施形態においては、第1〜第3段構造群31G〜33Gのそれぞれに含まれる各段部311〜337の底部311a〜337aの周縁に凹状溝部が形成されているインプリントモールド1’を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、少なくとも第3段構造群33Gに含まれる段部331〜337、すなわち透明基材2の厚さ方向において第1面21の最遠位に位置する段構造群に含まれる各段部の底部の周縁に凹状溝部が形成されていればよい。
第1の実施形態において、凹状構造部3には、第1面21側に位置する段部の深さよりも第2面22側に位置する段部の深さの方が小さい段部が含まれていてもよい。すなわち、凹状構造部3に含まれる複数の段部の深さが、全体として、第1面21側から第2面22側に向かって徐々に大きくなるような傾向を有していればよく、インプリントモールド1を用いたインプリント処理を通じて形成される凸状構造部11の各段部の高さを均一にすることができる限りにおいて、段部の深さの関係が逆転する部分が存在していてもよい。
第2の実施形態において、各段構造群の境界部分に、第1面21側に位置する段構造群に含まれる段部よりも深さの小さい段部又は第2面22側に位置する段構造群に含まれる段部よりも深さの大きい段部が含まれていてもよい。例えば、第1面21側に位置する第1段構造群31Gとそれよりも第2面22側に位置する第2段構造群32Gとの境界部分に、第1段構造群31Gに含まれる各段部(第1〜第7段部311〜317)の深さT31Gよりも小さい深さの段部が存在していてもよいし、第2段構造群32Gに含まれる各段部(第8段部321〜第14段部327)の深さT32Gよりも大きい深さの段部が存在していてもよい。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等により何ら限定されるものではない。
〔比較例1〕
[インプリントモールドの作製]
金属クロムからなるハードマスク層(厚さ:10nm)が第1面に形成された透明基材としての石英ガラス基板(152mm×152mm×6.25mm)を準備した。当該ハードマスク層上に開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理によりハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理(Reactive Ion Etching,RIE)により第1段部を形成した(図4(A)〜(D)参照)。なお、かかるドライエッチング処理(RIE)におけるエッチング条件は、第1凹状溝部が形成されない程度の条件に設定された。
次に、ハードマスク層(厚さ:10nm)を再度形成し、ハードマスク層上に開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理によりハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理(RIE)により第2段部を形成した(図5(A),(B)参照)。なお、かかるドライエッチング処理(RIE)におけるエッチング条件も同様に、第2凹状溝部が形成されない程度の条件に設定された。
続いて、ハードマスク層(厚さ:10nm)を再度形成し、ハードマスク層上に開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理によりハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理(RIE)により第3段部を形成した(図5(C),(D)参照)。なお、かかるドライエッチング処理(RIE)におけるエッチング条件も同様に、第3凹状溝部が形成されない程度の条件に設定された。
最後に、ハードマスク層(厚さ:10nm)を再度形成し、ハードマスク層上に開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。当該レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理によりハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第4段部を形成した。なお、かかるドライエッチング処理(RIE)におけるエッチング条件も同様に、第4凹状溝部が形成されない程度の条件に設定された。
このようにして作製されたインプリントモールドにおいて、石英ガラス基板をドライエッチングする際の各エッチング条件を、第1〜第4段部の深さが略同一となるように設定した。
[凸状構造体の作製]
上記インプリントモールドと被転写基材としての石英ガラス基板とを準備し、石英ガラス基板の第1面上にインクジェット法にて滴下されたインプリント樹脂(紫外線硬化性樹脂)にインプリントモールドを押し当ててインプリントモールドと石英ガラス基板との間にインプリント樹脂を展開させた。その状態で、インプリント樹脂に紫外線を照射して硬化させ、その後インプリントモールドを剥離することで、インプリントモールドの凹状構造部に対応する凸状パターンを石英ガラス基板上に形成した(図8(A)〜(C)参照)。続いて、凸状パターンをマスクとして石英ガラス基板をドライエッチングすることで、第1〜第4段部を含む凸状構造部を備える凸状構造体を製造した。
かかる凸状構造体の第1〜第4段部のそれぞれの高さ及び側壁角度を、原子間力顕微鏡(AFM,Veeco社製)を用いて測定した。また、同様に、インプリントモールドの第1〜第4段部のそれぞれの深さも、AFMを用いて測定した。結果を表1に示す。なお、表1において、凸状構造体の側壁角度は、第1〜第4段部のそれぞれの側壁角度の算術平均値である。
表1において、インプリントモールド及び凸状構造体の第1〜第4段部の深さ及び高さは、第1段部の深さ及び高さを1としたときの比(相対値)で表されている。また、表1における「平均」は、凸状構造体の各段部の高さ(相対値)の算術平均値であり、「レンジ」は、凸状構造体の各段部の高さ(相対値)のバラツキを意味する。
表1に示すように、インプリントモールドの各段部の深さ(高さ)を実質的に同一とすると、当該インプリントモールドを用いたインプリントリソグラフィーを経て得られる凸状構造体の各段部の高さが不均一になることが確認された。
〔実施例1〕
比較例1の凸状構造体の各段部の高さの測定結果を、下記多項式(1)を用いてフィッティングして係数B,Cを算出し、凸状構造体10の各段部の高さ(各段部に対応した被転写基板100のエッチング深さ)が均一となるように、各段部に対応する凸状パターン(レジストパターン)の高さ(厚さ)、すなわちインプリントモールドにおける凹状構造部の各段部の深さを決定した。
Srate=Ct2+Bt+A …(1)
そして、凹状構造部の各段部の深さが、上記のようにして決定した深さになるように石英ガラス基板のエッチング時間を調整するとともに、各段部の底部周辺に凹状溝部が形成されるように、かつ各凹状溝部の深さが第1凹状溝部から第4凹状溝部に向けて徐々に深くなるように、各段部をドライエッチング処理(RIE)により形成する際のRIEのバイアスパワーを調整した。その他は、比較例1と同様にしてインプリントモールドを作製し、当該インプリントモールドを用いたインプリントリソグラフィー処理により凸状構造体を製造した。
かかる凸状構造体の第1〜第4段部のそれぞれの高さ及び側壁角度を、原子間力顕微鏡(AFM,Veeco社製)を用いて測定した。また、同様に、インプリントモールドの第1〜第4段部のそれぞれの深さも、AFMを用いて測定した。結果を表2に示す。なお、表2において、凸状構造体の側壁角度は、第1〜第4段部のそれぞれの側壁角度の算術平均値である。
〔実施例2〕
[インプリントモールドの作製]
金属クロムからなるハードマスク層(厚さ:10nm)が第1面に形成された透明基材としての石英ガラス基板(152mm×152mm×6.25mm)を準備した。当該ハードマスク層上に第4段部に対応する開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第4段部に対応する開口部を有するハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第4段部及び第4凹状溝部を形成した(図6(A)〜(D)参照)。
次に、残存するハードマスクパターン上に第3段部に対応する開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第3段部に対応する開口部を有するハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第3段部及び第3凹状溝部を形成した(図7(A),(B)参照)。
続いて、残存するハードマスクパターン上に第2段部に対応する開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第2段部に対応する開口部を有するハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第2段部及び第2凹状溝部を形成した(図7(C),(D)参照)。
最後に、残存するハードマスクパターン上に第1段部に対応する開口部を有するレジストパターンを、電子線描画装置を用いて形成した。当該レジストパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第1段部に対応する開口部を有するハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしたドライエッチング処理により第1段部及び第1凹状溝部を形成した。
なお、石英ガラス基板の各ドライエッチング処理に際して、凹状構造部の各段部及び各凹状溝部の深さが、実施例1において決定した深さになるように石英ガラス基板のエッチング条件を設定した。
[凸状構造体の作製]
上記のようにして作製したインプリントモールドを用いた以外は、比較例1と同様にしてインプリントリソグラフィー処理を行い、凸状構造体を製造した。
かかる凸状構造体の第1〜第4段部のそれぞれの高さ及び側壁角度を、原子間力顕微鏡(AFM,Veeco社製)を用いて測定した。また、同様に、インプリントモールドの第1〜第4段部のそれぞれの深さも、AFMを用いて測定した。結果を表2に示す。なお、表2において、凸状構造体の側壁角度は、第1〜第4段部のそれぞれの側壁角度の算術平均値である。
表2において、インプリントモールド及び凸状構造体の第1〜第4段部の深さ及び高さは、第1段部の深さ及び高さを1としたときの比(相対値)で表されている。また、表2における「平均」は、凸状構造体の各段部の高さ(相対値)の算術平均値であり、「レンジ」は、凸状構造体の各段部の高さ(相対値)のバラツキを意味する。
表1及び表2に示すように、インプリントモールドの凹状構造部に含まれる第4段部の深さを最も大きく、かつ第1段部の深さを最も小さくするように、各段部の深さを調整することで、当該インプリントモールドを用いたインプリントリソグラフィーにより得られる凸状構造体の凸状構造部に含まれる各段部の高さを略均一にすることができることが確認された。また、インプリントモールドの各段部に凹状溝部を形成することで、当該インプリントモールドを用いたインプリントリソグラフィーにより得られる凸状構造体の凸状構造部に含まれる各段部の側壁角度を、より垂直に近くすることができると考えられる。