JP2018012629A - 酸化亜鉛粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】顔料などの種々の用途に利用できる酸化亜鉛粉末であって、特に樹脂組成物に顔料として添加した場合に、高い補強性能を発揮できるとともに白色度を高めることができ、しかも安価に製造できる酸化亜鉛粉末を提供する。【解決手段】長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を含む。好ましくは、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を主体とする針状晶酸化亜鉛からなる(但し、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛のみからなる場合を含む。)。顔料として樹脂に添加した場合、白色度を高めることができるとともに、針状晶酸化亜鉛の長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有するため、アンカー効果による高い補強性能を発揮でき、特に優れた引っ張り強度が得られる。【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂組成物の顔料(白色顔料など)として好適な酸化亜鉛粉末及びその製造方法に関するものである。
酸化亜鉛は塗料、樹脂、ゴム、繊維などに混合する混練顔料として有用であり、古くから用いられている白色顔料である。また、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなども古くから白色顔料として用いられている。白色顔料の隠蔽性は、白色顔料の屈折率npと分散媒(樹脂など:屈折率1.4〜1.6)の屈折率n0との比np/n0値が大きいほど増加する。したがって、白色顔料の屈折率が大きいほど、分散媒の白色度が大きくなる。白色顔料として知られる酸化チタンと酸化亜鉛を比較すると、屈折率が酸化チタンは2.5〜2.7であるのに対し、酸化亜鉛は2.0と小さく、白色顔料としては酸化チタンの方が優れている。しかし、酸化チタンには光触媒活性の強さから樹脂を劣化させるという問題があり、使用するには表面へのコーティングなどが必要となる。
また、一般に樹脂中に無機粉体を添加すると、その強度特性(曲げ、圧縮、引っ張り)の劣化が生じ、構造体としての性能が低下することが知られている。
そこで、樹脂構造体の曲げ、引っ張り、圧縮といった外部応力に対する抵抗となる補強材を添加し、強度向上を図るようにしている。樹脂に添加する補強材としては、一般的に針状、ロッド状又は繊維状の物質(無機材料)が用いられ、なかでもガラス繊維が最も多く利用されている。また、磨り減り抵抗に特徴のあるチタン酸カリウムなども用いられることがある。また、膨張や収縮といった内部応力の緩和に対しては、シリカ、アルミナといった熱的に安定性の高い無機顔料がナノサイズで分散利用されている。
そこで、樹脂構造体の曲げ、引っ張り、圧縮といった外部応力に対する抵抗となる補強材を添加し、強度向上を図るようにしている。樹脂に添加する補強材としては、一般的に針状、ロッド状又は繊維状の物質(無機材料)が用いられ、なかでもガラス繊維が最も多く利用されている。また、磨り減り抵抗に特徴のあるチタン酸カリウムなども用いられることがある。また、膨張や収縮といった内部応力の緩和に対しては、シリカ、アルミナといった熱的に安定性の高い無機顔料がナノサイズで分散利用されている。
しかしながら、これらの補強用の無機材料を添加した樹脂は、酸化亜鉛や酸化チタンを添加したものに比べて白色度が低いという問題がある。特に、シリカナノ粒子やガラス繊維は、その屈折率が樹脂と同程度しかなく、白色度の向上には全く寄与しない。
先に述べたように、酸化亜鉛は白色顔料として古くから用いられており、また酸化チタンと比較して光触媒活性も低く、耐久性にも優れることから、適用できる樹脂の選択範囲が広い。したがって、酸化亜鉛について、白色度を低下させることなく補強性能を高めることができれば、非常に有用な顔料となることが期待できる。
従来、顔料として用いる酸化亜鉛について、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1は、粒子形状がテトラポット状あるいは針状微粒子の高白色度酸化亜鉛について記載しており、その製造法として、亜鉛蒸気を含むガスの噴出口の温度を950℃以上とし、反応器内にて亜鉛蒸気を酸化性ガスで酸化させることにより酸化亜鉛粒子を得る方法が示されている。
また、特許文献2には、亜鉛化合物と酢酸とグリコールを混合して加熱処理を行う、アルカリフリーでの酸化亜鉛粒子の製造方法が示されている。
また、特許文献2には、亜鉛化合物と酢酸とグリコールを混合して加熱処理を行う、アルカリフリーでの酸化亜鉛粒子の製造方法が示されている。
しかし、特許文献1、2の方法で製造される酸化亜鉛は、樹脂に適用した場合に強度と白色度を向上させる効果があまり期待できない。
また、本発明者らの知見によれば、特許文献1の製造方法では、酸素分圧を制御した反応器内で水分との反応によって反応物が集積し、連続操業が困難となる問題がある。また、テトラポット状酸化亜鉛のC軸の針状成長方向は面が折れやすく、補強性能は期待できない。
また、本発明者らの知見によれば、特許文献1の製造方法では、酸素分圧を制御した反応器内で水分との反応によって反応物が集積し、連続操業が困難となる問題がある。また、テトラポット状酸化亜鉛のC軸の針状成長方向は面が折れやすく、補強性能は期待できない。
また、特許文献2の製造方法では、亜鉛化合物の濃度は最大でも20質量%であり、生産性が高いとは言いがたい。また、この製造方法では高温(100〜180℃)での合成が必要であり、設備としてオイルバスの使用や防爆対策などが必要となる。また、特許文献2で得られる酸化亜鉛の形状は三角錐、球状、棒状であり、これらの形状では、樹脂の強度を高める補強性能は期待できない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、顔料などの種々の用途に利用できる酸化亜鉛粉末であって、特に、樹脂などに顔料として添加した場合に高い補強性能を発揮できるとともに白色度を高めることができ、しかも安価に製造することができる酸化亜鉛粉末とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、(i)硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応で得られた特定の前駆体(塩基性硝酸亜鉛又は塩基性硝酸亜鉛と水酸化亜鉛からなる前駆体)を水熱処理することにより、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした特有の結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛が得られること、(ii)この針状晶酸化亜鉛は、樹脂などに顔料として添加した場合に高い白色度が得られるとともに、その特有の結晶構造によって高い補強性能(特に引っ張り強度)を発揮すること、を見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を含むことを特徴とする酸化亜鉛粉末。
[2]上記[1]の酸化亜鉛粉末において、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を主体とする針状晶酸化亜鉛からなる(但し、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛のみからなる場合を含む。)ことを特徴とする酸化亜鉛粉末。
[1]長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を含むことを特徴とする酸化亜鉛粉末。
[2]上記[1]の酸化亜鉛粉末において、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を主体とする針状晶酸化亜鉛からなる(但し、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛のみからなる場合を含む。)ことを特徴とする酸化亜鉛粉末。
[3]上記[1]又は[2]の酸化亜鉛粉末の製造方法であって、硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応によって、塩基性硝酸亜鉛又は塩基性硝酸亜鉛と水酸化亜鉛からなる前駆体を得る工程(i)と、該工程(i)で得られた前記前駆体を、水熱反応により針状晶酸化亜鉛に転換する工程(ii)を有することを特徴とする酸化亜鉛粉末の製造方法。
[4]上記[1]又は[2]の酸化亜鉛粉末を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[5]上記[4]の樹脂組成物において、さらに他の無機顔料の少なくとも1種を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[4]上記[1]又は[2]の酸化亜鉛粉末を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[5]上記[4]の樹脂組成物において、さらに他の無機顔料の少なくとも1種を含むことを特徴とする樹脂組成物。
本発明の酸化亜鉛粉末は、顔料をはじめとする種々の用途に利用でき、特に、樹脂などに顔料として添加した場合に、高い補強性能を発揮できるとともに白色度を高めることができ、しかも安価に製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、そのような優れた性能を有する酸化亜鉛粉末を安定して且つ低コストに製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、そのような優れた性能を有する酸化亜鉛粉末を安定して且つ低コストに製造することができる。
本発明の酸化亜鉛粉末は、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛(以下、説明の便宜上、この結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を「針状晶酸化亜鉛(A)」という)を含むこと、好ましくは、針状晶酸化亜鉛(A)を主体とする(すなわち50質量%以上含む)針状晶酸化亜鉛からなることを特徴とする。したがって、酸化亜鉛粉末は、針状晶酸化亜鉛(A)のみからなる場合が最も好ましい。
図1は、針状晶酸化亜鉛(A)を撮影したSEM画像であり、この針状晶酸化亜鉛(A)は長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造(複数の小径針状部に枝分かれした結晶構造)を有している。詳細には、この針状晶酸化亜鉛(A)は、針状晶長手方向の中間部(ほぼ中央部分)である幹状結晶部(a)と、この幹状結晶部の両端を基端部として箒状に枝分かれした枝状結晶部(b1),(b2)とからなる。換言すると、この長手方向両端側の枝状結晶部(b1),(b2)は、複数本の小針状結晶を放射状に束ねたような形態を有している。
ここで、幹状結晶部(a)の長さ、枝状結晶部(b1),(b2)の長さや本数は、製造条件により種々の形態を採り得るが、通常、「幹状結晶部(a)の長さ」<「枝状結晶部(b1),(b2)の各長さ」であり、また、各枝状結晶部(b1),(b2)の本数は、最少で2〜3本、最多で20〜30本程度である。
また、針状晶酸化亜鉛(A)(微粒子)のサイズも製造条件により異なるが、通常、長さ(長径方向での最大長さ部の長さ)が1〜10μm程度、幅(短径方向での最大幅部の幅)が0.1〜2μm程度、アスペクト比(長径方向での最大長さ部の長さ/短径方向での最大幅部の幅)が4以上程度のサイズとなる(これらの測定方法は実施例の記載を参照)。
また、針状晶酸化亜鉛(A)(微粒子)のサイズも製造条件により異なるが、通常、長さ(長径方向での最大長さ部の長さ)が1〜10μm程度、幅(短径方向での最大幅部の幅)が0.1〜2μm程度、アスペクト比(長径方向での最大長さ部の長さ/短径方向での最大幅部の幅)が4以上程度のサイズとなる(これらの測定方法は実施例の記載を参照)。
本発明の酸化亜鉛粉末を顔料(白色顔料)として各種樹脂に添加した場合、高い補強性能を発揮できるとともに白色度を高めることができる。とりわけ、針状晶酸化亜鉛(A)に特有の結晶構造(長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造)により、引き抜き作用に対応できる高いアンカー効果が得られ、このため、特に引っ張り強度が大きくなる。
具体的には、同体積の酸化チタン、酸化亜鉛球状晶、硫酸バリウムなどの従来の白色顔料を添加した場合と較べて、樹脂組成物の強度が大幅に向上し、白色度も酸化チタンと同等となる。また、同体積のガラス繊維を添加した場合と較べて、白色度が大幅に向上し、強度もほぼ同等かそれ以上となり、特に引っ張り強度が向上する。
具体的には、同体積の酸化チタン、酸化亜鉛球状晶、硫酸バリウムなどの従来の白色顔料を添加した場合と較べて、樹脂組成物の強度が大幅に向上し、白色度も酸化チタンと同等となる。また、同体積のガラス繊維を添加した場合と較べて、白色度が大幅に向上し、強度もほぼ同等かそれ以上となり、特に引っ張り強度が向上する。
上述したように、本発明の酸化亜鉛粉末は針状晶酸化亜鉛(A)のみからなることが最も好ましいが、製造条件により針状晶酸化亜鉛(A)以外の針状晶酸化亜鉛(以下、説明の便宜上「異相の針状晶酸化亜鉛」という)が不可避的に含まれる場合がある。図2(ア),(イ)は、そのような異相の針状晶酸化亜鉛のSEM画像であり、このうち、図2(ア)の針状晶酸化亜鉛はロッド状(六角柱状)の形態、図2(イ)の針状晶酸化亜鉛は図2(ア)よりもサイズが小さい小針状の形態をそれぞれ有している。製造条件によっては、針状晶酸化亜鉛(A)に加えて、上記のようなロッド状(六角柱状)の針状晶酸化亜鉛、小針状の針状晶酸化亜鉛のいずれか若しくは両方が含まれる場合がある。このような異相の針状晶酸化亜鉛が混じると、その分、針状晶酸化亜鉛(A)による補強作用が低下するため、混入量はできるだけ少ない方が好ましい。このため、本発明の酸化亜鉛粉末は、針状晶酸化亜鉛(A)を50質量%以上含むことが好ましく、針状晶酸化亜鉛(A)を70質量%以上含むことがより好ましい。
本発明の酸化亜鉛粉末は種々の用途に適用でき、特に、補強性能を有する白色顔料として各種樹脂に添加することにより、さきに述べたように樹脂組成物の強度と白色度を高めることができる。
本発明の酸化亜鉛粉末の用途としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)リフレクター(反射材)用の樹脂組成物
リフレクター(反射材)用の樹脂組成物に補強材(顔料)として配合することにより、リフレクターの強度を高めるとともに、反射率を向上させることができる。リフレクター用樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、シリコーン系樹脂などが用いられ、これらに酸化亜鉛粉末を配合し、リフレクター(反射材)用の樹脂組成物とする。
本発明の酸化亜鉛粉末の用途としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)リフレクター(反射材)用の樹脂組成物
リフレクター(反射材)用の樹脂組成物に補強材(顔料)として配合することにより、リフレクターの強度を高めるとともに、反射率を向上させることができる。リフレクター用樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、シリコーン系樹脂などが用いられ、これらに酸化亜鉛粉末を配合し、リフレクター(反射材)用の樹脂組成物とする。
(2)各種樹脂製品
内装用パネル、水周り用機器の筐体、電子部材用パッケージ材、調理器具(まな板など)、食料品用容器、医療品用容器などのような樹脂製品用の樹脂組成物に顔料(白色顔料など)として配合することにより、樹脂製品の白色度と強度を高めることができる。また、酸化亜鉛には抗菌性があるため、特に抗菌性能が要求される部材(水周り用機器の筐体や調理器具などの水回り用の部材)に好適である。樹脂製品用としては、例えば、熱可塑性ナイロン、熱硬化性ポリイミド、シリコーンなどが用いられ、これらに酸化亜鉛粉末を配合し、樹脂製品用の樹脂組成物とする。
内装用パネル、水周り用機器の筐体、電子部材用パッケージ材、調理器具(まな板など)、食料品用容器、医療品用容器などのような樹脂製品用の樹脂組成物に顔料(白色顔料など)として配合することにより、樹脂製品の白色度と強度を高めることができる。また、酸化亜鉛には抗菌性があるため、特に抗菌性能が要求される部材(水周り用機器の筐体や調理器具などの水回り用の部材)に好適である。樹脂製品用としては、例えば、熱可塑性ナイロン、熱硬化性ポリイミド、シリコーンなどが用いられ、これらに酸化亜鉛粉末を配合し、樹脂製品用の樹脂組成物とする。
(3)その他
床材、壁材などの樹脂コート用の樹脂組成物(塗料なども含む)に抗菌性を有する補強材(顔料)として配合することにより、樹脂コート層の抗菌性と強度を高めることができる。また、建築材料や自動車部品(エアフィルターなど)用の樹脂組成物に抗菌性を有する補強材(顔料)として配合することにより、それらの抗菌性と強度を高めることができる。
床材、壁材などの樹脂コート用の樹脂組成物(塗料なども含む)に抗菌性を有する補強材(顔料)として配合することにより、樹脂コート層の抗菌性と強度を高めることができる。また、建築材料や自動車部品(エアフィルターなど)用の樹脂組成物に抗菌性を有する補強材(顔料)として配合することにより、それらの抗菌性と強度を高めることができる。
本発明の酸化亜鉛粉末を顔料として樹脂に添加する場合、酸化チタン、ガラス繊維、シリカ微粒子など他の機能性無機顔料の少なくとも1種と複合添加することにより、顔料の添加効果(樹脂組成物の強度と白色度の改善効果)をさらに向上できること判った。例えば、酸化チタンとガラス繊維を配合したエポキシ樹脂に対して、さらにガラス繊維と同体積の本発明材(酸化亜鉛粉末)を添加することにより、強度を低下させることなく、白色度が向上する。
さらに、本発明の酸化亜鉛粉末で酸化チタンの一部、あるいは全部を同体積置換することにより、白色度を維持した上で、さらなる強度の向上と光触媒作用に起因する樹脂の劣化の抑制(酸化チタンには光触媒作用があるため樹脂を劣化させる)を図ることも可能となる。
なお、本発明の酸化亜鉛粉末を樹脂に配合する場合、その配合量は、必要な白色度、強度および樹脂組成物の用途に応じて適宜決定される。
なお、本発明の酸化亜鉛粉末を樹脂に配合する場合、その配合量は、必要な白色度、強度および樹脂組成物の用途に応じて適宜決定される。
次に、本発明の酸化亜鉛粉末の製造方法について説明する。
本発明の酸化亜鉛粉末の製造方法は、硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応によって、塩基性硝酸亜鉛又は塩基性硝酸亜鉛と水酸化亜鉛からなる前駆体を得る工程(i)と、この工程(i)で得られた前記前駆体を、水熱反応により針状晶酸化亜鉛に転換する工程(ii)を有する。
本発明の酸化亜鉛粉末の製造方法は、硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応によって、塩基性硝酸亜鉛又は塩基性硝酸亜鉛と水酸化亜鉛からなる前駆体を得る工程(i)と、この工程(i)で得られた前記前駆体を、水熱反応により針状晶酸化亜鉛に転換する工程(ii)を有する。
酸化亜鉛の製造方法では、亜鉛源として硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などを用いることができ、これらの亜鉛塩のいずれかを含む亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液など)の沈殿反応によって生成する水酸化亜鉛及び/又は塩基性亜鉛塩(塩基性硝酸亜鉛、塩基性塩化亜鉛、塩基性硫酸亜鉛、塩基性酢酸亜鉛など)を前駆体とし、この前駆体を水熱処理することによって酸化亜鉛を得ることができる。しかし、本発明者らが各種前駆体の水熱反応による酸化亜鉛への転換について調査、検討した結果、針状晶酸化亜鉛(A)(長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛)が得られるのは、亜鉛源として硝酸亜鉛を用い且つアルカリ水溶液としてアンモニア水溶液を用いて得られた前駆体に限られることが判った。例えば、亜鉛源として塩化亜鉛や硫酸亜鉛を用いた場合には俵状の酸化亜鉛しか得られず、また、亜鉛源として酢酸亜鉛を用いた場合には、アスペクト比の小さい6角柱状ないし6角板状の酸化亜鉛しか得られない。このため、本発明では亜鉛源として硝酸亜鉛を用い、工程(i)において硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応によって前駆体(塩基性硝酸亜鉛又は塩基性硝酸亜鉛と水酸化亜鉛からなる前駆体)を得るようにする。
工程(i)では、0.4〜1.6モル/Lの硝酸亜鉛水溶液を用い、この硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液をpH6〜11、80℃以下の条件で沈殿反応(アルカリ沈殿反応)させることが好ましい。
硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応において沈殿生成物として得られる前駆体は、下記(1)式で表されるが、反応させる溶液の濃度やpHなどの条件により、沈殿生成物の組成が変化し、水熱処理を経て得られる針状晶酸化亜鉛の結晶形態にも影響を与える。
Znx(NO3)y(OH)z …(1)
硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応において沈殿生成物として得られる前駆体は、下記(1)式で表されるが、反応させる溶液の濃度やpHなどの条件により、沈殿生成物の組成が変化し、水熱処理を経て得られる針状晶酸化亜鉛の結晶形態にも影響を与える。
Znx(NO3)y(OH)z …(1)
ここで、本発明の酸化亜鉛粉末に含まれる針状晶酸化亜鉛(A)(長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛)が得られる前駆体は、下記(2)式で示されるものである。一方、図2(ア)に示すようなロッド状(六角柱状)の針状晶酸化亜鉛が得られる前駆体は、下記(3)式で示されるものであり、図2(イ)に示すような小針状の針状晶酸化亜鉛が得られる前駆体は、下記(4)式で示されるものである。
NH4Zn5(OH)8(NO3)n・mH2O …(2)
Zn5(OH)8(NO3)2・mH2O …(3)
Zn(OH)2 …(4)
工程(i)において反応させる溶液の濃度やpHなどの条件によっては、上記(2)式の前駆体に加えて、上記(3)式のような前駆体、上記(4)式のような前駆体のいずれか若しくは両方が含まれる場合がある。
NH4Zn5(OH)8(NO3)n・mH2O …(2)
Zn5(OH)8(NO3)2・mH2O …(3)
Zn(OH)2 …(4)
工程(i)において反応させる溶液の濃度やpHなどの条件によっては、上記(2)式の前駆体に加えて、上記(3)式のような前駆体、上記(4)式のような前駆体のいずれか若しくは両方が含まれる場合がある。
硝酸亜鉛水溶液の濃度が0.4モル/L未満では、低濃度であるために生産性が低下する。一方、1.6モル/Lを超える高濃度では、アンモニア水溶液との混合時に析出物の量が多くなり、溶液の粘性が急激に上昇して撹拌が不十分となりやすくなるため、不均一な析出物が生成されやすくなる。また、このような観点からより好ましい濃度は0.8〜1.2モル/Lである。
また、沈殿反応時(前駆体の合成時)のpHが6未満では亜鉛の沈殿歩留まりが低くなり、経済性が低下する。一方、pHが11を超えると沈殿物は酸化亜鉛となってしまい、上述したような前駆体が得られない。このような観点から、より好ましいpHは6〜9.5である。
また、沈殿反応時の温度が80℃を超えると粒状若しくは針状の酸化亜鉛の析出が認められ、水熱処理と同様の現象が起こる。また、沈殿反応時の温度が50℃を超えると前駆体である反応沈殿物が大型化するとともに、(2)式で示されるNH4の歩留まりが低下(蒸発)することで、針状晶酸化亜鉛(A)の回収量が低下するため、より好ましい温度は50℃以下である。
また、沈殿反応時の温度が80℃を超えると粒状若しくは針状の酸化亜鉛の析出が認められ、水熱処理と同様の現象が起こる。また、沈殿反応時の温度が50℃を超えると前駆体である反応沈殿物が大型化するとともに、(2)式で示されるNH4の歩留まりが低下(蒸発)することで、針状晶酸化亜鉛(A)の回収量が低下するため、より好ましい温度は50℃以下である。
工程(i)の沈殿反応は、撹拌手段を備えた容器で行われる。容器の構成や材質は特に制限はないが、耐アルカリ性、耐酸性の容器であることが好ましい。沈殿反応では、沈殿物がゲル化した場合にアンモニア水溶液の不均一性により不純物層ができやすくなるため、溶液は常に撹拌状態にあることが望ましい。アンモニア水溶液の硝酸亜鉛溶液への投入速度は特に限定しないが、撹拌しながら短時間に混合することが好ましい。
沈殿反応で生成した前駆体は、通常、吸引濾過により固液分離した後、純水で洗浄し、乾燥させる。この乾燥は、60℃以上の加熱乾燥では、水熱反応が起こり、一部が酸化亜鉛となることがあるので、真空乾燥するのが好ましい。
沈殿反応で生成した前駆体は、通常、吸引濾過により固液分離した後、純水で洗浄し、乾燥させる。この乾燥は、60℃以上の加熱乾燥では、水熱反応が起こり、一部が酸化亜鉛となることがあるので、真空乾燥するのが好ましい。
工程(ii)において前駆体を酸化亜鉛に転換する水熱反応(水熱処理)では、亜鉛塩が溶解した後、酸化亜鉛が再析出すると考えられ、形状やサイズをコントロールするには保持温度、保持時間、前駆体/水の質量比が重要なパラメーターとなる。このため工程(ii)では、水熱反応を前駆体/水の質量比1/100〜1/1、保持温度50℃以上100℃未満、保持時間6〜48時間の条件で行うことが好ましい。
水熱処理は、水中で前駆体を溶解、再析出させることにより酸化亜鉛に変換(合成)する処理である。100℃以上で水熱処理を行う場合には、高温高圧状態になるため圧力容器などの専用容器が必要であるが、100℃未満の水熱処理では圧力容器は必要ない。すなわち、100℃未満の耐熱性を有する容器を用いて実施することができる。なお、使用する容器は、反応時に閉じることができる蓋を有する容器であることが望ましい。また、水熱処理時は撹拌は必要としないので、撹拌手段も不要である。
前駆体/水の質量比が1/100より小さいと生産効率が著しく低くなり、一方、1/1より大きいと未反応物の残存が認められる。このような観点から、より好ましい前駆体/水の質量比は1/40〜1/5である。
また、保持温度が50℃未満では反応の進行が極端に遅くなり、未反応物の残存が認められる。一方、保持温度が100℃以上では、反応は速やかに進行するが、水が沸騰するため高圧容器など特殊な設備が必要になる。このような観点から、より好ましい保持温度は60〜100℃未満であり、特に好ましい保持温度は90〜95℃である。
また、保持温度が50℃未満では反応の進行が極端に遅くなり、未反応物の残存が認められる。一方、保持温度が100℃以上では、反応は速やかに進行するが、水が沸騰するため高圧容器など特殊な設備が必要になる。このような観点から、より好ましい保持温度は60〜100℃未満であり、特に好ましい保持温度は90〜95℃である。
保持時間が6時間未満では水熱反応が十分に進行せず、一方、保持時間が48時間を超えても転換反応は変化が見られない。このような観点から、より好ましい保持時間は6〜24時間である。
水熱処理で生成した酸化亜鉛は、通常、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、乾燥させて粉末とする。この乾燥は、60℃以上の加熱乾燥でもよいが、加熱乾燥では乾燥凝集が強くなることから、真空乾燥するのが好ましい。
水熱処理で生成した酸化亜鉛は、通常、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、乾燥させて粉末とする。この乾燥は、60℃以上の加熱乾燥でもよいが、加熱乾燥では乾燥凝集が強くなることから、真空乾燥するのが好ましい。
[実施例1]
・本発明材1
反応容器に入れた1Mの硝酸亜鉛水溶液400mlに1.45Mのアンモニア水溶液を400ml加え、pH7.0、25℃で10分間撹拌して沈殿反応させた。次いで、沈殿物をろ過・洗浄し、30℃の真空乾燥機で16時間乾燥させ、前駆体を得た。この前駆体に前駆体/水の質量比が1/20となるように純水を加え、密閉容器に入れて8℃/分で昇温させ、95℃で12時間の水熱処理を行うことにより、前駆体を針状晶酸化亜鉛に転換し、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、30℃の真空乾燥により乾燥させて本発明材1の酸化亜鉛粉末(乾燥粉末)を得た。この本発明材1の酸化亜鉛粉末をSEMで観察した結果、図2(ア)に示すような異相の針状晶酸化亜鉛がごく少量観察されたが、それ以外はすべて針状晶酸化亜鉛(A)であった。図1は、この本発明材1のSEM画像である。
・本発明材1
反応容器に入れた1Mの硝酸亜鉛水溶液400mlに1.45Mのアンモニア水溶液を400ml加え、pH7.0、25℃で10分間撹拌して沈殿反応させた。次いで、沈殿物をろ過・洗浄し、30℃の真空乾燥機で16時間乾燥させ、前駆体を得た。この前駆体に前駆体/水の質量比が1/20となるように純水を加え、密閉容器に入れて8℃/分で昇温させ、95℃で12時間の水熱処理を行うことにより、前駆体を針状晶酸化亜鉛に転換し、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、30℃の真空乾燥により乾燥させて本発明材1の酸化亜鉛粉末(乾燥粉末)を得た。この本発明材1の酸化亜鉛粉末をSEMで観察した結果、図2(ア)に示すような異相の針状晶酸化亜鉛がごく少量観察されたが、それ以外はすべて針状晶酸化亜鉛(A)であった。図1は、この本発明材1のSEM画像である。
・本発明材2
反応容器に入れた0.8Mの硝酸亜鉛水溶液400mlに1.45Mのアンモニア水溶液を400ml加え、pH8.0、25℃で10分間撹拌して沈殿反応させた。次いで、沈殿物をろ過・洗浄し、30℃の真空乾燥機で16時間乾燥させ、前駆体を得た。この前駆体に前駆体/水の質量比が1/20となるように純水を加え、密閉容器に入れて8℃/分で昇温させ、95℃で12時間の水熱処理を行うことにより、前駆体を針状晶酸化亜鉛に転換し、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、30℃の真空乾燥により乾燥させて本発明材2の酸化亜鉛粉末(乾燥粉末)を得た。この本発明材2の酸化亜鉛粉末をSEMで観察した結果、図2(ア)、(イ)に示すような異相の針状晶酸化亜鉛が約30%程度の割合で観察されたが、それ以外はすべて針状晶酸化亜鉛(A)であった。
反応容器に入れた0.8Mの硝酸亜鉛水溶液400mlに1.45Mのアンモニア水溶液を400ml加え、pH8.0、25℃で10分間撹拌して沈殿反応させた。次いで、沈殿物をろ過・洗浄し、30℃の真空乾燥機で16時間乾燥させ、前駆体を得た。この前駆体に前駆体/水の質量比が1/20となるように純水を加え、密閉容器に入れて8℃/分で昇温させ、95℃で12時間の水熱処理を行うことにより、前駆体を針状晶酸化亜鉛に転換し、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、30℃の真空乾燥により乾燥させて本発明材2の酸化亜鉛粉末(乾燥粉末)を得た。この本発明材2の酸化亜鉛粉末をSEMで観察した結果、図2(ア)、(イ)に示すような異相の針状晶酸化亜鉛が約30%程度の割合で観察されたが、それ以外はすべて針状晶酸化亜鉛(A)であった。
・本発明材3
反応容器に入れた0.5Mの硝酸亜鉛水溶液400mlに1.2Mのアンモニア水溶液を400ml加え、pH10.0、25℃で10分間撹拌して沈殿反応させた。次いで、沈殿物をろ過・洗浄し、30℃の真空乾燥機で16時間乾燥させ、前駆体を得た。この前駆体に前駆体/水の質量比が1/20となるように純水を加え、密閉容器に入れて8℃/分で昇温させ、95℃で12時間の水熱処理を行うことにより、前駆体を針状晶酸化亜鉛に転換し、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、30℃の真空乾燥により乾燥させて本発明材3の酸化亜鉛粉末(乾燥粉末)を得た。この本発明材3の酸化亜鉛粉末をSEMで観察した結果、図2(ア)、(イ)に示すような異相の針状晶酸化亜鉛が約70%程度の割合で観察されたが、それ以外はすべて針状晶酸化亜鉛(A)であった。
反応容器に入れた0.5Mの硝酸亜鉛水溶液400mlに1.2Mのアンモニア水溶液を400ml加え、pH10.0、25℃で10分間撹拌して沈殿反応させた。次いで、沈殿物をろ過・洗浄し、30℃の真空乾燥機で16時間乾燥させ、前駆体を得た。この前駆体に前駆体/水の質量比が1/20となるように純水を加え、密閉容器に入れて8℃/分で昇温させ、95℃で12時間の水熱処理を行うことにより、前駆体を針状晶酸化亜鉛に転換し、遠心分離法により固液分離した後、純水で洗浄し、30℃の真空乾燥により乾燥させて本発明材3の酸化亜鉛粉末(乾燥粉末)を得た。この本発明材3の酸化亜鉛粉末をSEMで観察した結果、図2(ア)、(イ)に示すような異相の針状晶酸化亜鉛が約70%程度の割合で観察されたが、それ以外はすべて針状晶酸化亜鉛(A)であった。
本発明材1の酸化亜鉛粉末と、樹脂組成物用フィラー材としてよく知られている酸化チタン(比較材1)、ガラス繊維(比較材2)、シリカナノ粒子(比較材3)、亜鉛華(酸化亜鉛,比較材4)、ジルコニア(比較材5)、アルミナ(比較材6)について、それらの粒子サイズ、BET比表面積、屈折率を表1に示す。
なお、本発明材1及び比較材1〜6の粒子サイズの測定は次のようにして行った。SEM画像から任意に選択した150個の粒子について、市販の画像解析ソフト(旭化成(株)製の「画像解析ソフトA像くん」)を用いて長さ(長径方向での最大長さ部の長さ)と幅(短径方向での最大幅部の幅)を測定し、150個の粒子の平均値を粒子の長さ及び幅とした。また、測定された長さ(長径方向での最大長さ部の長さ)と幅(短径方向での最大幅部の幅)から各粒子のアスペクト比(長さ/幅)を計算し、150個の粒子の平均値を粒子のアスペクト比とした。
なお、本発明材1及び比較材1〜6の粒子サイズの測定は次のようにして行った。SEM画像から任意に選択した150個の粒子について、市販の画像解析ソフト(旭化成(株)製の「画像解析ソフトA像くん」)を用いて長さ(長径方向での最大長さ部の長さ)と幅(短径方向での最大幅部の幅)を測定し、150個の粒子の平均値を粒子の長さ及び幅とした。また、測定された長さ(長径方向での最大長さ部の長さ)と幅(短径方向での最大幅部の幅)から各粒子のアスペクト比(長さ/幅)を計算し、150個の粒子の平均値を粒子のアスペクト比とした。
[実施例2]
フィラー材として上記本発明材1と比較材1〜6を配合(混合)した樹脂組成物を調製し、これら本発明例と比較例の樹脂組成物の白色度を評価した。本発明材1と比較材1〜6を、それぞれエポキシ樹脂に10体積%、20体積%の割合で混合した樹脂組成物を硬化させて白色度測定用のシート状の樹脂サンプルとし、各樹脂サンプルについて日本電色工業株式会社製「測色色差計ZE−2000」を用いてL値を測定(基準白色度は硫酸バリウム)し、その値を白色度(指数)とした。その結果を表2に示す。また、図3に、各フィラー材を20体積%配合した樹脂サンプルの外観を示す。
フィラー材として上記本発明材1と比較材1〜6を配合(混合)した樹脂組成物を調製し、これら本発明例と比較例の樹脂組成物の白色度を評価した。本発明材1と比較材1〜6を、それぞれエポキシ樹脂に10体積%、20体積%の割合で混合した樹脂組成物を硬化させて白色度測定用のシート状の樹脂サンプルとし、各樹脂サンプルについて日本電色工業株式会社製「測色色差計ZE−2000」を用いてL値を測定(基準白色度は硫酸バリウム)し、その値を白色度(指数)とした。その結果を表2に示す。また、図3に、各フィラー材を20体積%配合した樹脂サンプルの外観を示す。
各フィラー材を配合した樹脂サンプルの白色度は、概ね、酸化チタン(比較材1)>本発明材1>亜鉛華(比較材4)>アルミナ(比較材6)>ジルコニア(比較材5)>シリカナノ粒子(比較材3)>ガラス繊維(比較材2)であるが、フィラー材を20体積%配合した樹脂サンプルでは、本発明材1は酸化チタン(比較材1)とほぼ同等の白色度が得られている。本発明材1が酸化チタンよりも屈折率が小さい(表1)にも関わらず、このように酸化チタンと同等の白色度が得られるのは、粉末状の酸化チタンに比べて本発明材1が比較的大型の針状であることによるものと推定される。なお、エポキシ樹脂は屈折率1.5であり、シリカナノ粒子の屈折率(表1)はこれとほぼ同等であることから、図3に示すようにシリカナノ粒子(比較材3)を配合した樹脂サンプルの外観は透明であった。
[実施例3]
フィラー材として上記本発明材1と比較材1〜6を配合(混合)した樹脂組成物を調製し、これら本発明例と比較例の樹脂組成物の強度と白色を評価した。その結果を表3に示す。
この試験では、本発明材1と比較材1〜6を、酸化チタン粉末20体積%とともに、エポキシ樹脂に対してそれぞれ10体積%(以下、「10体積%配合材」という)、20体積%(以下、「20体積%配合材」という)となるように添加して混合した。したがって、比較材1(酸化チタン)を用いた比較例aの10体積%配合材はトータルの酸化チタン配合量が30体積%、同じく20体積%配合材はトータルの酸化チタン配合量が40体積%となる。
フィラー材として上記本発明材1と比較材1〜6を配合(混合)した樹脂組成物を調製し、これら本発明例と比較例の樹脂組成物の強度と白色を評価した。その結果を表3に示す。
この試験では、本発明材1と比較材1〜6を、酸化チタン粉末20体積%とともに、エポキシ樹脂に対してそれぞれ10体積%(以下、「10体積%配合材」という)、20体積%(以下、「20体積%配合材」という)となるように添加して混合した。したがって、比較材1(酸化チタン)を用いた比較例aの10体積%配合材はトータルの酸化チタン配合量が30体積%、同じく20体積%配合材はトータルの酸化チタン配合量が40体積%となる。
各フィラー材とエポキシ樹脂の混合物に硬化剤を所定量添加し、減圧下でさらに混合した後、押し出し成形にて樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、ISO294−1に従って射出成形し、強度測定用サンプル(試験片)を作製した。また、樹脂組成物を加熱台盤上でバーコーターを用いて厚さ250μmのシート状に成形し、白色度測定用サンプルを作製した。また、エポキシ樹脂に酸化チタン粉末20体積%と硬化剤のみを配合した「基準比較例」の樹脂組成物を上記に準じた方法で調製し、この樹脂組成物から、上記と同様にして、強度測定用サンプルと白色度測定用サンプルを作製した。
白色度の評価については、白色度測定用サンプルを用い、[実施例2]と同様に行った。また、強度の評価については、強度測定用サンプルを用い、ISO178に従い曲げ強度を、ISO604に従い圧縮強度を、ISO527に従い引っ張り強度を、それぞれ測定した。なお、本発明例、比較例a〜fの強度は、酸化チタン20体積%のみを配合した基準比較例を100とした時の指数で示した。
白色度を酸化チタン20体積%のみを配合した基準比較例と対比した場合、比較材1である酸化チタンを配合した比較例aのように、酸化チタンをベースの20体積%に対して、さらに10体積%、20体積%と付加しても白色度があまり変わらない。また、基準比較例と対比した本発明例の白色度は、10体積%配合材では同等であるが、20体積%配合材はやや向上している。一方、比較材2〜6を配合した比較例b〜fの場合には、程度の違いはあるが基準比較例に対して一様に白色度が低下している。
酸化チタン20体積%のみを配合した基準比較例と対比した場合、比較材1である酸化チタンを配合した比較例aのように、酸化チタンをベースの20体積%に対して、さらに10体積%、20体積%と付加すると曲げ強度、圧縮強度、引っ張り強度はいずれも低下している。同様に、比較材3〜6であるシリカナノ粒子、亜鉛華、ジルコニア、アルミナをそれぞれ配合した比較例c〜fでも、一様に強度は低下している。これに対して、本発明例と比較材2であるガラス繊維を配合した比較例bでは強度の向上が見られるが、本発明例の20体積%配合材では、曲げ強度、圧縮強度、引っ張り強度ともに、ガラス繊維を配合した比較例bを大きく上回っており、なかでも引っ張り強度の向上が顕著である。これは、本発明材1である針状晶酸化亜鉛(A)に特有の結晶構造(長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造)により高いアンカー効果が得られるためであると考えられる。
表3の結果から、フィラー材として比較材1〜6を配合した樹脂組成物では、少なくとも白色度と強度のいずれか一方が向上しないのに対して、フィラー材として本発明材を配合した樹脂組成物は白色度と強度がともに向上しており、高い強度と良好な外観性を兼ね備えた樹脂製品が得られることが判る。
Claims (5)
- 長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を含むことを特徴とする酸化亜鉛粉末。
- 長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛を主体とする針状晶酸化亜鉛からなる(但し、長手方向両端側の部分が箒状に枝分かれした結晶構造を有する針状晶酸化亜鉛のみからなる場合を含む。)ことを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛粉末。
- 請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粉末の製造方法であって、
硝酸亜鉛水溶液とアンモニア水溶液との沈殿反応によって、塩基性硝酸亜鉛又は塩基性硝酸亜鉛と水酸化亜鉛からなる前駆体を得る工程(i)と、
該工程(i)で得られた前記前駆体を、水熱反応により針状晶酸化亜鉛に転換する工程(ii)を有することを特徴とする酸化亜鉛粉末の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粉末を含むことを特徴とする樹脂組成物。
- さらに他の無機顔料の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016143854A JP2018012629A (ja) | 2016-07-22 | 2016-07-22 | 酸化亜鉛粉末及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2018012629A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108689427A (zh) * | 2018-06-08 | 2018-10-23 | 广州科城环保科技有限公司 | 一种从碱式氯化锌生产母液中回收饲料级氧化锌的方法及其应用 |
CN112209426A (zh) * | 2020-10-23 | 2021-01-12 | 深圳市环保科技集团有限公司 | 碱式氯化锌及其制备方法 |
CN112864497A (zh) * | 2021-01-21 | 2021-05-28 | 辽宁大学 | 一种基于阳光促进策略的可充电锌空气电池及其制备方法 |
-
2016
- 2016-07-22 JP JP2016143854A patent/JP2018012629A/ja active Pending
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