JP7428456B1 - 表面処理炭酸カルシウムおよびそれを用いた樹脂組成物 - Google Patents

表面処理炭酸カルシウムおよびそれを用いた樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

本発明の表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムから構成されており、特定のBET比表面積(Sw)、単位面積当たりの熱減量(As)、明度の維持率(%)、水銀圧入法による特定の細孔分布において水銀圧入量が最大となる平均細孔直径(Dxp)、平均細孔径量[水銀圧入増加量の最大値(Dyp)/平均細孔直径(Dxp)]を満足する。

Description

本発明は、表面処理炭酸カルシウムおよびそれを用いた樹脂組成物に関する。
炭酸カルシウムは、シーラント、接着剤、塗料、プラスチゾルなどの用途において、体質顔料として用いられることが多い。一方、近年の輸入原料の供給不安や価格高騰に伴って有機系増粘剤やシリカの価格が高騰し、国産石灰石を原料とする炭酸カルシウムへの注目は高まっており、高い粘性およびチキソ性を付与する目的で微細で高度に分散したコロイド炭酸カルシウムが求められている。
加えて、例えば住宅用途においてシーリング材等は、従来の10年保証から30年、50年といった超長期保証を謳う製品が増えており、これに使用される樹脂組成物の貯蔵安定性はもちろん、施工、硬化後の超長期耐久性が求められている。また屋外建築物に用いられる塗料等においては、近年の夏場に連日猛暑日を超えるような高温、日照に対する、より高い耐久性が求められている。
このようなニーズに対し、例えば特許文献1は、樹脂組成物に高い粘性およびチキソ性を付与する微細で高度に分散したコロイド炭酸カルシウムでなる表面処理炭酸カルシウムを開示している。
しかし、この特許文献1に記載の表面処理炭酸カルシウムは、微細で高分散性を有する一方で、粉体の耐熱安定性に対してさらなる改善が所望されている。また、当該表面処理炭酸カルシウムを含有する樹脂組成物については、それ自体の貯蔵安定性や、施工後の超長期の耐久性を向上させることも所望されている。
特許第3650391号公報
本発明は上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、微細性および分散性が良好であり、優れた耐熱安定性を有し、かつ樹脂に配合した際の貯蔵安定性と施工後の耐久性とを向上させ得る、表面処理炭酸カルシウムおよびそれを用いた樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムから構成されている表面処理炭酸カルシウムであって、
該脂肪酸系表面処理剤が、脂肪酸および脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、かつ
以下の関係式(a)から(f)を満たす、表面処理炭酸カルシウムである。
(a)20≦Sw≦100 (m/g)
(b)1.0≦As≦7.5 (mg/m
(c)LC≧55 (%)
(d)0.003≦Dxp≦0.03 (μm)
(e)50≦Dyp/Dxp≦180
(f)0.03≦Is≦2.57 (μmol/m
ここで、
Sw :窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)
As :次式より与えられる単位表面積あたりの熱減量(mg/m
As=(該表面処理されている炭酸カルシウム1gあたりの200℃~500℃の熱減量(mg/g))/Sw(m/g)
LC :次式より与えられる明度の維持率(%)
LC=(160℃で12時間加熱した該表面処理されている炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)/(加熱前の該炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)×100
Dxp:水銀圧入法において、細孔範囲0.001~0.1μmの範囲おける細孔分布において、水銀圧入増加量(積算細孔容積増加量/log平均細孔直径)が最大値(Dyp)となる平均細孔直径(μm)
Dyp:水銀圧入増加量の最大値(mL/g)
Dyp/Dxp:平均細孔径量
Is :次式により算出される単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(μmol/m
Is=(該表面処理されている炭酸カルシウム1gあたりのアルカリ金属含有量(μmol/g))/{Sw(m/g)}
1つの実施形態では、上記脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムは、下記の式(g)および(h)を満たす:
(g)0.005≦Dxp≦0.025 (μm)
(h)60≦Dyp/Dxp≦150。
本発明はまた、上記表面処理炭酸カルシウムおよび樹脂を含む、樹脂組成物である。
1つの実施形態では、上記樹脂はシーラント用樹脂である。
1つの実施形態では、上記樹脂は接着剤用樹脂である。
1つの実施形態では、上記樹脂は塗料用樹脂である。
1つの実施形態では、上記樹脂はプラスチゾル用樹脂である。
本発明によれば、微細で高度な分散性を有し、かつ優れた耐熱安定性を有する表面処理炭酸カルシウムを効率良く得ることができる。本発明の表面処理炭酸カルシウムは、樹脂組成物中に配合された際に、高い粘性およびチキソ性を提供することに加え、貯蔵安定性も高めることができる。さらに、当該樹脂組成物を、例えばシーラントとして施工した後に超長期間に亘る耐久性および耐候性を発揮できる。
(表面処理炭酸カルシウム)
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、以下の関係式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)を満たすものである:
(a)20≦Sw≦100 (m/g)
(b)1.0≦As≦7.5 (mg/m
(c)LC≧55 (%)
(d)0.003≦Dxp≦0.03 (μm)
(e)50≦Dyp/Dxp≦180
(f)0.03≦Is≦2.57 (μmol/m )。
(a)窒素吸着法によるBET比表面積;Sw
関係式(a)におけるSwは、表面処理炭酸カルシウムの窒素吸着法によるBET比表面積である。Swは20m/g~100m/gであり、好ましくは30m/g~60m/g、より好ましくは30m/g~50m/gである。Swが20m/gを下回ると、得られた表面処理炭酸カルシウムを用いて高粘性の樹脂組成物を得ることが困難となる。Swが100m/gを上回ると、得られる表面処理炭酸カルシウムの分散性および経時の分散安定性が低下する。このようなSwは後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
Swは、本発明の表面処理炭酸カルシウムを製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Swを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような炭酸化反応で使用する石灰乳の濃度、炭酸化反応に採用される温度、使用する炭酸ガスの濃度、および炭酸化反応の際に使用する添加剤の種類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Swの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。
(b)単位表面積あたりの熱減量;As
関係式(b)におけるAsは、次式より与えられる単位表面積あたりの熱減量(mg/m)である。
As=(表面処理炭酸カルシウム1gあたりの200℃~500℃の熱減量(mg/g))/Sw
本発明において、Asは1.0mg/m~7.5mg/mであり、好ましくは1.5mg/m~5.0mg/m、より好ましくは2.0mg/m~4.0mg/mである。なお、Asは、表面処理炭酸カルシウムの単位表面積あたりの脂肪酸系表面処理剤の量(mg/m)に相当する。市販されている炭酸カルシウムには、上記関係式(a)を満足する1次粒子が微細なものがいくつか存在する。しかし、それらの炭酸カルシウムは1次粒子が凝集した2次粒子がさらに凝集した3次粒子を形成しているため、炭酸カルシウムを覆う表面処理剤量(熱減量)が1.0mg/mを下回っても十分な処理量である。
本発明の表面処理炭酸カルシウムは微細かつ高度に分散し、3次粒子が少なく、2次粒子の分散が極めて高い。そのため、炭酸カルシウムを覆う表面処理剤量(熱減量)が1.0mg/mを下回ると、炭酸カルシウムの表面を表面処理剤で十分に覆うことが困難である。さらに、処理不足のまま乾燥、粉末化した場合、未処理面同士で凝集し3次粒子を形成するため、本発明の目的である高粘性、高チキソ性の付与効果が得られない。一方、炭酸カルシウムを覆う表面処理剤量(熱減量)が7.5mg/mを上回ると、表面処理剤の過多により表面処理炭酸カルシウムの貯蔵安定性が低下し、樹脂組成物に配合した際に表面処理剤が樹脂成分や可塑剤成分と遊離して物性低下の原因となる。上記単位比表面積当りの熱減量(As)は後述の実施例に記載の方法により得ることができる。
Asは、本発明の表面処理炭酸カルシウムを製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Asを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような表面処理剤の使用量、および表面処理の際に採用される温度、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Asの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。
(c)明度の維持率;LC
関係式(c)におけるLCは、次式より与えられる明度(L値)の維持率(%)である。
LC=(160℃で12時間加熱した表面処理されている炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)/(加熱前の表面処理されている炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)×100 (c1)
本発明において、LCは、55%以上であり、好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。LCは得られる表面処理炭酸カルシウムの耐熱性の指標となり得る。LCが55%を下回ると、得られる表面処理炭酸カルシウム粉体の耐熱性が低く、当該表面処理炭酸カルシウムの製造工程において、乾燥時の熱劣化による物性にばらつきを生じたり、貯蔵安定性が低下する要因となる。さらに、該表面処理炭酸カルシウムをシーラント、接着剤、塗料、プラスチゾルに配合した際の貯蔵安定性低下、施工後の耐熱性、耐候性を悪化させることになる。
明度(L値)の維持率(LC)は後述の実施例に記載の方法により得ることができる。
LCは、本発明の表面処理炭酸カルシウムを製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。LCを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような表面処理剤の使用量、表面処理の際に採用される温度、および炭酸化反応の際に使用する添加剤の種類および使用量、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記LCの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。
(d)水銀圧入増加量が最大となる値の平均細孔直径;Dxp
関係式(d)におけるDxpは、水銀圧入法(ポロシメーター)にて測定した細孔範囲0.001μm~0.1μmの範囲における細孔分布において、水銀圧入増加量(積算細孔容積増加量/log平均細孔直径)が最大となる値(Dyp)の平均細孔直径(μm)である。Dxpは、表面処理炭酸カルシウム粒子間の隙間の細かさを意味し、当該表面処理炭酸カルシウムの分散状態の指標となる。
本発明において、Dxpは、上記関係式(a)の窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)で示される粒子の細かさではなく、1次粒子間の間隙の平均径を表す。Dxpは、0.003μm~0.03μmであり、好ましくは0.005μm~0.025μm、より好ましくは0.006μm~0.020μmである。Dxpが0.003μmを下回ると、1次粒子もしくは2次粒子が細か過ぎるため、得られる表面炭酸カルシウムの経時安定性を欠くことがある。Dxpが0.03μmを上回ると、1次粒子が大きすぎるか、もしくは1次粒子が強く凝集した2次粒子が多く存在していることになり、得られた表面処理炭酸カルシウムを用いて高粘性の樹脂組成物を得ることが困難となる。
ここで、「水銀圧入増加量」とは細孔容積増加量を意味し、「(積算細孔容積増加量/log平均細孔直径)」の計算式で求められ、単位はmL/gである。細孔直径が小さい程、細孔容積は小さくなるため、最大水銀圧入増加量(Dyp)は平均細孔直径(Dxp)に依存する。
Dxpは、本発明の表面処理炭酸カルシウムを製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Dxpを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような炭酸化反応で使用する石灰乳の濃度、炭酸化反応に採用される温度、使用する炭酸ガスの濃度、および炭酸化反応の際に使用する添加剤の種類に加えて、熟成の際に採用される炭酸カルシウムの濃度、熟成温度および熟成時間;表面処理剤の使用量;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Dxpの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。
(e)Dyp/Dxp
関係式(e)におけるDyp/Dxpは、式(d)の平均細孔直径を有する細孔の数を示し、本発明の目的である高粘性を示す指標である。上記のように、細孔径が小さいほど細孔容積も小さくなるため、最大水銀圧入増加量(Dyp)と、関係式(d)式の平均細孔直径(Dxp)とを用いて、当該平均細孔直径を有する細孔の数を導き出すことができる。Dyp/Dxpの数値が高い程、得られた表面処理炭酸カルシウムを配合した樹脂組成物は高粘性である。Dyp/Dxpもまた、表面処理炭酸カルシウムの分散状態の指標となる。
本発明において、Dyp/Dxpは50~180、好ましくは60~150、より好ましくは70~130である。Dyp/Dxpが50を下回ると、得られた表面処理炭酸カルシウムを用いて高粘性の樹脂組成物を得ることが困難となる。Dyp/Dxpが180を上回ると、平均細孔直径が極端に小さ過ぎるものとなるため、1次粒子もしくは2次粒子の経時安定性を欠くことがある。
なお、得られる表面処理炭酸カルシウムが、上記関係式(d)または(e)の範囲外にある場合、例えば当該炭酸カルシウムを配合した塗料組成物においてはチキソ性が低く、シーラント組成物においては強度低下等が生じることがある。
また、関係式(d)および(e)を範囲内であるか否かを測定するために使用される水銀圧入法(ポロシメータ)による測定は、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
Dyp/Dxpは、本発明の表面処理炭酸カルシウムを製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Dyp/Dxpを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような熟成の際に採用される炭酸カルシウムの濃度、熟成温度および熟成時間ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Dyp/Dxpの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。
(f)単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量;Is
関係式(f)におけるIsは、以下の式(f1)により算出される単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(μmol/m)である。
Is=(該表面処理炭酸カルシウム1gあたりのアルカリ金属含有量(μmol/g)/{Sw(m/g)} (f1)
本発明において、Isは0.03μmol/m~2.57μmol/mであり、好ましくは0.15μmol/m~2.2μmol/mであり、より好ましくは0.3μmol/m~2.0μmol/mである。Isが0.03μmol/mを下回ると、得られる表面処理炭酸カルシウムの表面処理状態が悪くなる傾向にあり、当該表面処理炭酸カルシウムの分散性が低下し、樹脂組成物に配合した際に十分な高粘性が付与されないことがある。一方、アルカリ金属化合物のうち、例えばナトリウム化合物は発熱反応性が高く系外の湿気と反応し易いことが知られている。このため、得られる表面処理炭酸カルシウム中にアルカリ金属化合物としてナトリウム化合物を含有し、その際のIsが2.57μmol/mを上回ると、例えばシーリング材の用途においては貯蔵安定性を低下させることがある。
ここで、上記式(f1)によりIsを算出するために用いられる「表面処理炭酸カルシウム1gあたりのアルカリ金属含有量(μmol/g)」は、例えば後述の実施例に記載の方法により測定され得る。
Isは、本発明の表面処理炭酸カルシウムを製造するために使用される原料、表面処理剤、および/または添加剤中のアルカリ金属含有量を適宜モニタリングし、それらの使用量を調節することにより制御することができる。Isは、例えば、表面処理前の炭酸カルシウムの比表面積に応じて表面処理剤の使用量を調節して制御することができる。このような使用量の調節が不十分であった場合は、上記Isの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。
(脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム)
上記関係式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)を満たす本発明の表面処理炭酸カルシウムは、有機酸系表面処理剤の1種である脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムから構成されている。すなわち、本発明の表面処理カルシウムは、炭酸カルシウムを主成分として含有する組成物の形態を有する。
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、微細で高度な分散性と優れた耐熱性とを有するものであれば、その製造方法は特に限定されない。
本発明の表面処理炭酸カルシウムの好ましい製造方法の一例を以下に具体的に説明する。
(1)炭酸化反応
まず、表面処理を行う前の炭酸カルシウムは、特に限定されないが、例えば、特開平10-72215号公報に記載されるような従来法を用いて、石灰乳に添加剤(例えば、カルシウム成分と錯形成を促す錯体形成剤、無機酸および/またはその塩)を加え、炭酸ガスを導入し、炭酸化反応を行って炭酸カルシウムスラリーを得、その後熟成することにより得ることができる。
錯体形成剤の例としては、特に限定されないが、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩;グルコン酸、酒石酸等のポリヒドロキシカルボン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩;イミノジ酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロトリ酢酸等のアミノポリカルボンとそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩;ヘキサメタ燐酸、トリポリ燐酸等のポリ酢酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル等のケトン類;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。
無機酸および/またはその塩の例としては、特に限定されないが、硫酸(例えば濃硫酸)、塩酸(例えば濃塩酸)、硝酸(例えば濃硝酸)、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸などの鉱酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。有毒性、刺激臭等に対する安全性が確保でき、かつ工業的利用が簡便であるとの理由から、硫酸(例えば濃硫酸)、硝酸(例えば濃硝酸)、リン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩;ならびにそれらの組み合わせが好ましい。
(1-1)炭酸化反応の条件
炭酸化反応に使用される石灰乳の濃度は、3.5質量%~10.2質量%に調製されていることが好ましい。なお、この石灰乳の濃度は併用する添加剤の種類によって変動し得る。
例えば、添加剤として錯体形成剤が使用される場合は、当該石灰乳の濃度は6.0質量%~8.0質量%に調製されていることがより好ましい。添加剤として無機酸および/またはその塩が使用される場合は、当該石灰乳の濃度は、4.0質量%~7.0質量%に調製されていることが好ましく、4.0質量%~6.0質量%に調製されていることがより好ましい。無機酸およびその塩を併用する場合は、炭酸化反応の開始直後から、分散した炭酸カルシウムを得ることができる。そのため、後述の熟成に要する時間を短縮することができ、所望でない粒子成長を抑制できるという利点がある。
炭酸化反応に使用される石灰乳の濃度が3.5質量%を下回ると、それ以上分散性の向上した炭酸カルシウムを得ることが期待できず、むしろコスト高になるおそれがある。炭酸化反応に使用される石灰乳の濃度が10.2質量%を上回ると、炭酸化反応後に一次粒子の凝集が起きやすくなり、熟成をしても分散性の向上した炭酸カルシウムを得ることが困難となるおそれがある。
添加剤の添加量は、使用する添加剤の種類にしたがって当業者により適宜選択され得る。
例えば、添加剤として錯体形成剤が使用される場合、上記石灰乳に添加された後の反応生成物の全量に基づいて、好ましくは0.5質量%~2.0質量%に相当する量が添加剤として石灰乳に添加される。ここで、添加剤として使用される錯体形成剤の添加量が0.5質量%を下回ると、微細で高度に分散した表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。添加剤として使用される錯体形成剤の添加量が2.0質量%を上回ると、得られる表面処理炭酸カルシウムは十分な耐熱性を有さないことがある。
添加剤として無機酸および/またはその塩が使用される場合、上記石灰乳に添加された後の反応物の全量に基づいて、好ましくは0.3質量%~9.0質量%に相当する量が添加剤として石灰乳に添加される。ここで、添加剤として使用される無機酸および/またはその塩の添加量が0.3質量%を下回ると、微細で高度に分散した表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。添加剤として使用される無機酸および/またはその塩の添加量が9.0質量%を上回ると、得られる表面処理炭酸カルシウムの微細さにはほとんど変化がなく、むしろ生産性を低下させることがある。
炭酸化反応に採用され得る温度は例えば5℃~30℃である。例えば、添加剤として無機酸および/またはその塩を用いる場合は、炭酸化直後のBET比表面積を増加させることができ、結果として一層微細な炭酸カルシウムが得られ、その後の分散のための熟成工程をより効率良く行うことができるという理由から、好ましくは5℃~20℃、より好ましくは5℃~15℃、さらに好ましくは5℃~12℃である。
炭酸化反応に採用され得る炭酸ガスは空気と混合されてもよく、空気との混合ガス全量に対する炭酸ガスの濃度に関しては、10体積%~50体積%となるように設定されていることが好ましい。炭酸ガスの濃度が10体積%を下回ると、反応後に得られる炭酸カルシウムの1次粒子が所望でないサイズにまで大きくなることがある。炭酸ガスの濃度が50体積%を上回ると、工業的に高コストになり生産性が低下することがある。さらに、炭酸化反応に採用され得る炭酸ガス流量は、上記空気との混合ガスの流量に換算すると、水酸化カルシウム1kg当たり、例えば300L/時間~3000L/時間である。この流量が300L/時間を下回る場合では、反応後に得られる炭酸カルシウムの一次粒子が所望でないサイズにまで大きくなることがある。この流量が3000L/時間を上回ると、工業的に高コストになり生産性が低下することがある。
(1-2)熟成の条件
熟成に採用され得る炭酸カルシウムの濃度は、使用した添加剤の種類に関わらず、炭酸カルシウムスラリーの全量に基づいて、好ましくは2.4質量%~13.0質量%、より好ましくは4.0質量%~11.0質量%、さらにより好ましくは5.0質量%~9.0質量%に調製されている。炭酸カルシウムの濃度が2.4質量%を下回ると、工業的に生産性が低下することがある。炭酸カルシウムの濃度が13.0質量%を上回ると、熟成を通じて分散性が向上した結果系内の構造粘性が上昇した場合に、系内を均一に撹拌することが困難となることがある。熟成のために採用される炭酸カルシウムの濃度は、得られる表面処理炭酸カルシウムの分散性を向上させるために重要である。例えば、微小な炭酸カルシウムの粒子を用いる場合、当該分散性の向上のためには、上記濃度範囲のうち可能な限り薄い濃度を採用することが好ましい。
熟成に採用され得る温度は、例えば30℃~70℃である。例えば、添加剤として無機酸および/またはその塩を用いる場合は、高温の熟成では粒子成長が促進され、また低温すぎると熟成効果が不十分となるという理由から、好ましくは25℃~45℃、より好ましくは25℃~40℃、さらにより好ましくは25℃~35℃である。
熟成に採用され得る時間は、分散性の指標として上記関係式(d)および(e)の範囲内を満足するまでの時間が採用され得る。これにより得られた表面処理炭酸カルシウムは、樹脂組成物中に配合された際に高い粘性を提供することができる。熟成のための時間は、上記の条件等により変動し得るため特に限定されないが、好ましくは24時間~120時間である。例えば、添加剤として無機酸および/またはその塩を使用する場合は、熟成による炭酸カルシウム粒子の過度な成長を抑制するために、より好ましくは30時間~100時間、さらにより好ましくは30時間~50時間が選択され得る。熟成のための時間が24時間を下回ると、分散性が良好な表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。熟成のための時間が120時間を上回ると、工業的にコスト高となることがある。
(2)表面処理
次いで、炭酸カルシウムは脂肪酸系表面処理剤による表面処理が行われる。
脂肪酸系表面処理剤は、当該技術分野における炭酸カルシウム粒子の表面処理に使用され得る脂肪酸および/または脂肪酸塩であれば特に限定されず、種々の脂肪酸系表面処理剤が使用され得る。
脂肪酸系表面処理剤は、例えば高級脂肪酸であり、好ましくはC6~C31の炭素数を有する脂肪酸、より好ましくはC9~C21の炭素数を有する脂肪酸である。あるいは、脂肪酸系表面処理剤は、例えば、動物または植物由来の変性または未変性の脂肪酸であってもよい。
このような脂肪酸系表面処理剤を構成する脂肪酸の例としては、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、2-エチル酪酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、牛脂ステアリン酸、パーム核脂肪酸、ヤシ脂肪酸、パーム脂肪酸、パームステアリン酸、牛脂脂肪酸、大豆脂肪酸、部分硬化パーム核脂肪酸、部分硬化ヤシ脂肪酸、部分硬化牛脂脂肪酸、部分硬化大豆脂肪酸、極度硬化パーム核脂肪酸、極度硬化ヤシ脂肪酸、極度硬化牛脂脂肪酸、極度硬化大豆脂肪酸などの飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸および飽和不飽和混合脂肪酸等の脂肪酸、ならびにそれらの組み合わせと、それらの塩が挙げられる。脂肪酸系表面処理剤を構成する脂肪酸塩の例としては、上記脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、およびアミン塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。コスト面や供給安定性の観点から、脂肪酸系表面処理剤は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、牛脂ステアリン酸、パーム核脂肪酸、部分硬化パーム脂肪酸、極度硬化パーム脂肪酸、ヤシ脂肪酸、部分硬化ヤシ脂肪酸、極度硬化ヤシ脂肪酸、パーム脂肪酸、パームステアリン酸、牛脂脂肪酸、部分硬化牛脂脂肪酸、極度硬化牛脂脂肪酸、大豆脂肪酸、部分硬化大豆脂肪酸、極度硬化大豆脂肪酸などの飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ならびにそれらの組み合わせとそれらの塩とが好ましい。
なお、本発明においては、得られる表面処理炭酸カルシウムが上記関係式(a)~(f)の各範囲を満たす限りにおいて、上記脂肪酸系表面処理剤と一緒に他の表面処理剤を使用してもよい。他の表面処理剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸およびその塩、ステアリルステアレートなどの脂肪酸エステル、アビエチン酸などの樹脂酸およびその塩、カルシウム石鹸などの金属石鹸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
表面処理量(脂肪酸系表面処理剤の使用量)に関しては、炭酸カルシウムの生地の比表面積によって左右されるため、上記関係式(b)の範囲内を満足する限りであえば特に限定されないが、処理前の炭酸カルシウムスラリー中の炭酸カルシウム固形分全量に基づいて、好ましくは3.5質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~40質量%、さらにより好ましくは7質量%~30質量%である。表面処理量が3.5質量%を下回ると、微細かつ高度な分散性を有する表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難となることがある。また、このような表面処理量の状態のまま乾燥および粉末化を行うと、得られた表面処理炭酸カルシウムは未処理面同士で凝集し易くなる。そのため、得られた表面処理炭酸カルシウムでは、樹脂組成物中に配合された際に高い粘性や高いチキソ性を提供することが困難となることがある。当該表面処理量が30質量%を上回ると、表面処理剤の過多により、得られる表面処理炭酸カルシウムの貯蔵安定性が低下し、樹脂組成物へ配合した際の樹脂成分や可塑剤成分への処理剤遊離を生じ物性低下の原因となることがある。
表面処理の方法は特に限定されないが、表面処理状態を良好にするためにも湿式下で行うことが好ましい。水スラリー中で表面処理する場合の表面処理温度については、表面処理剤として用いる脂肪酸および脂肪酸塩の融点以上の温度で表面処理するのが好ましく、好ましくは20℃~98℃、より好ましくは40℃~90℃、さらにより好ましくは60℃~80℃である。表面処理温度が20℃を下回ると、後述する脂肪酸系表面処理剤の炭酸カルシウムへの吸着結合が起こりにくくなり、表面処理が不均一になることがある。また、処理温度が98℃を上回ると、突沸する危険があり、耐圧性装置を別途必要とすることがある。
炭酸カルシウムに脂肪酸系表面処理剤を添加した後、より均一な表面処理を行うために所定時間撹拌することが好ましい。
1つの実施形態では、撹拌時間は例えば30分間~24時間である。ここで、例えば、添加剤として錯体形成剤が使用される場合、炭酸カルシウムへの脂肪酸系表面処理剤の吸着または結合が当該錯体形成剤に阻害され、得られる表面処理炭酸カルシウムの耐熱性を損なうことを防止または低減するため、撹拌時間は好ましくは6時間~24時間、より好ましくは12時間~24時間に設定される。
あるいは、撹拌時間は、使用する添加剤の種類にしたがって当業者により適宜選択されてもよい。例えば、添加剤として錯体形成剤を使用する場合は、好ましくは6時間~24時間、さらにより好ましくは12時間~24時間が選択され得る。撹拌時間が6時間を下回ると錯体形成剤による脂肪酸系表面処理剤の炭酸カルシウムへの吸着結合阻害作用のため、良好な表面処理状態が得られず表面処理が不均一になり、得られる表面処理炭酸カルシウムは十分な耐熱性を有さないことがある。撹拌時間が24時間を上回ると、表面処理炭酸カルシウムの製造に長時間を要することとなり、製造効率化低下しかつそのコストが上昇することがある。
上記表面処理の後、得られた粒子は、例えば常法に従って、脱水、乾燥、粉砕等の任意操作を経て粉末化されてもよい。
このようにして、脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムで構成されており、かつ上記関係式(a)~(f)を満たす、表面処理炭酸カルシウムを得ることができる。
(樹脂組成物)
上記表面処理炭酸カルシウムは、例えば、シーリング材、接着剤、塗料およびプラスチゾルのような樹脂組成物のための構成材料として有用である。
シーリング材は、本発明の表面処理炭酸カルシウムおよびシーラント用樹脂を含有する。シーラント用樹脂の例としては、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、ポリサルファイド樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、エポキシ樹脂、およびポリエステル樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明において、表面処理炭酸カルシウムとシーラント用樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて当業者により適宜決定され得る。1つの実施形態では、シーラントに含まれるシーラント用樹脂100質量部に対して、本発明の表面処理炭酸カルシウムの含有量は1質量部~100質量部である。シーラントには、必要に応じて着色剤、安定剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
接着剤は、本発明の表面処理炭酸カルシウムおよび接着剤用樹脂を含有する。接着剤用樹脂の例としては、特に限定されないが、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリエステル樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明において、表面処理炭酸カルシウムと接着剤用樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて当業者により適宜決定され得る。1つの実施形態では、接着剤に含まれる接着剤用樹脂100質量部に対して、本発明の表面処理炭酸カルシウムの含有量は1質量部~100質量部である。接着剤には、必要に応じて安定剤、可塑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
塗料は、本発明の表面処理炭酸カルシウムおよび塗料用樹脂を含有する。塗料用樹脂の例としては、特に限定されないが、アルキド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の溶剤系塗料用樹脂;アルキド樹脂、アクリル樹脂、ラテックス樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一般塗料用エマルジョン樹脂;アルキド樹脂、アミン樹脂、スチレン-アリルアルコール樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂等に代表される一般塗料用水溶性樹脂;一般塗料用エマルジョン樹脂と一般塗料用水溶性樹脂とをブレンドした塗料用ディスパージョン樹脂;架橋型水可溶性樹脂を乳化剤としたディスパージョン樹脂;およびアクリルハイドロゾル;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。
本発明において、本発明の表面処理炭酸カルシウムおよび塗料用樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて当業者により適宜決定され得る。1つの実施形態では、塗料に含まれる塗料用樹脂100重量部に対して、本発明の表面処理炭酸カルシウムの含有量は1質量部~100質量部である。塗料には、必要に応じて可塑剤、分散剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
プラスチゾルは、本発明の表面処理炭酸カルシウムおよびプラスチゾル用樹脂を含有する。プラスチゾル用樹脂の例としては、特に限定されないが、塩化ビニルゾル、アクリルゾル、水溶性アクリルゾル、およびウレタンゾル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明において、表面処理炭酸カルシウムとプラスチゾル用樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて当業者により適宜決定され得る。1つの実施形態では、プラスチゾルに含まれるプラスチゾル用樹脂100質量部に対して、本発明の表面処理炭酸カルシウムの含有量は1質量部~100質量部である。プラスチゾルは、必要に応じて安定剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
本発明の樹脂組成物には、上記表面処理炭酸カルシウムおよび各種樹脂以外に、粘性等の物性を調整するために、コロイド炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、コロイド状シリカ、タルク、カオリン、ゼオライト、樹脂バルーン、ガラスバルーン等の充填剤;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等の可塑剤;トルエン、キシレン等の石油系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、セロソルブアセテート等のエーテルエステル等の溶剤;およびシリコーンオイル、脂肪酸エステル変成シリコーンオイル等;種々の添加剤;着色剤;ならびにそれらの組み合わせ;がその他の成分として含有されていてもよい。本発明の樹脂組成物における当該その他の成分の含有量は特に限定されず、上記表面処理炭酸カルシウムおよび各種樹脂が奏する効果を損なわない範囲において適切な含有量が当業者によって適宜選択され得る。
本発明の樹脂組成物は、例えばシーラント、接着剤などの硬化型樹脂組成物である場合には、優れた粘性およびチキソ性と貯蔵安定性とを有し、耐熱安定性の高い硬化物を提供することができる。また、例えば塗料である場合は、少量で優れた粘性、チキソ性および防タレ性と貯蔵安定性とを有する。さらに、例えばプラスチゾル用樹脂組成物である場合、優れた粘性およびチキソ性を有し、それにより少量の配合による軽量化が実現でき、高い貯蔵安定性を有する。また、焼き付け硬化時や硬化後の耐熱安定性にも優れる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、特に断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
実施例および比較例で使用した測定機器は以下の通りであった:
(A)窒素吸着法によるBET比表面積(Sw)
BET比表面積計(Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)に、実施例または比較例で得られた表面処理炭酸カルシウムの試料200mg充填した測定用ガラスセルをセットし、窒素を導通させながら200℃で10分前処理しかつ4分間冷却した後に、1回測定法により測定した。
(B)単位比表面積当りの熱減量(As)
熱分析装置(ThermoPlusEVO2、株式会社リガク製)に、表面処理炭酸カルシウム20mgを充填した直径5mm、深さ5mmの円柱型試料パン(白金製)をセットし、昇温速度15℃/分で常温から510℃まで昇温させたときの200℃~500℃の熱減量を測定して、「表面処理炭酸カルシウム1g当たりの熱減量率(mg/g)」を算出した。これを上記BET比表面積値(Sw)で除することにより算出した。
(C)明度(L値)の維持率(LC)
得られた表面処理炭酸カルシウム50gをるつぼ(セラミック製)に充填し、電気炉内で160℃にて12時間加熱した。この加熱前または加熱後の表面処理炭酸カルシウムのそれぞれ10gと、ジイソノニルフタレート(DINP)20gとを100mLのPP(ポリプロピレン)カップに充填し、遊星式脱泡混練機(クラボウ株式会社製KK-1000W)にて、混練条件5-5-6で脱泡しカップ壁面の粉を掻き落とした後、混練条件5-5-18で脱泡しペーストを作製した。ここで、上記混練条件「a-b-c」は、aは公転条件を表し、bは自転条件を表し、cは時間(c×10秒間)を表す。
次いで、色差計(Color meter ZE 6000、日本電色工業株式会社製)に、上記で得られたペーストを反射測定用セル(直径3mm)にセル容量の8割程度充填し、反射測定で色差L、a、b値が測定され、色差測定で得られたL値が明度として採用した。その後、以下の式(c1)にしたがって百分率(%)として算出した。
LC=(160℃で12時間加熱した表面処理されている炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)/(加熱前の表面処理されている炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)×100 (c1)
(D)水銀圧入増加量が最大となる値の平均細孔直径(Dxp)
水銀ポロシメーター細孔分布測定装置(AutoPore IV、株式会社島津製作所製)を用いて、測定用セル(セル定数10.79ml/pF)に表面処理炭酸カルシウム約0.10gを充填し、水銀圧入増加量が最大となる値の平均細孔直径(Dxp)を測定した。ここで、この測定において、水銀は純度99.99%であり、表面張力は480dyns/cmであり、接触角は135°である測定条件を採用した。
(E)Dyp/Dxp
上記(D)で測定した水銀圧入増加量が最大となる値(Dyp)と、その平均細孔直径(μm)(Dxp)とを用いて算出した。
(F)単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(Is)
まず、実施例または比較例で得られた表面処理炭酸カルシウム0.5gをるつぼ(セラミック製)に充填し、電気炉内で300℃にて3時間焼成した。次いで、試料を放冷し200mLのビーカーに入れ、蒸留水60mL、61%硝酸7.5mLをこの順で添加し、時計皿で蓋をして電熱ヒーターで煮沸することにより炭酸カルシウムを完全に溶解した。これを常温で冷却させた後、メスフラスコで100mLまでメスアップし、濾過することにより測定サンプルを作製した。
次いで、この測定サンプルを用いて、原子吸光測定装置(偏光ゼーマン原子吸光光度計ZE3300、株式会社日立ハイテク製)により表面処理炭酸カルシウム1g当たりのアルカリ金属含有量(μmol/g)を測定した。その後、このアルカリ金属含有量(μmol/g)と、上記で得られたBET比表面積値(Sw)を用いて、以下の式(f1)にしたがって単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(μmol/m)を算出した。
Is=(該表面処理されている炭酸カルシウム1gあたりのアルカリ金属含有量(μmol/g))/{Sw(m/g)}) (f1)
(実施例1:表面処理炭酸カルシウム(E1)の作製)
温度10℃にて5%の濃度を有する石灰乳に濃硫酸を、当該石灰乳に含まれる水酸化カルシウムの質量に対して4.5%となるように添加し、これに水酸化カルシウム1kg当たり1700L/時間の割合で20体積%COガスを含有するCOと空気との混合ガスを導入し、濃度6.8%の炭酸カルシウムスラリーを作製した。次いで、この炭酸カルシウムスラリーを、30℃~35℃の温度で30時間撹拌することにより熟成を行った。その後、炭酸カルシウムスラリーに、温水に熱溶解させた10%牛脂脂肪酸ナトリウム(脂肪酸系表面処理剤)(ミヨシ油脂株式会社製FA-T、ナトリウム中和)水溶液を炭酸カルシウム固形分に対して牛脂脂肪酸ナトリウム固形分として14%添加し、2時間撹拌した後、脱水、乾燥、および粉末化することにより、BET比表面積(Sw)が45m/gである脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(E1)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(E1)の各物性値を表1に示す。
(実施例2:表面処理炭酸カルシウム(E2)の作製)
濃硫酸の添加量を3.0%、牛脂脂肪酸ナトリウムの添加量を12%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして脂肪酸系表面処理剤で表面処理した炭酸カルシウム(E2)を作製した。得られた表面処理炭酸カルシウム(E2)の各物性値を表1に示す。
(実施例3:表面処理炭酸カルシウム(E3)の作製)
温度10℃にて5%の濃度を有する石灰乳に、錯体形成剤としてクエン酸を水酸化カルシウムの質量に対し2.0%となるように添加し、これに20体積%COガスを含有するCOと空気との混合ガスを水酸化カルシウム1kg当たり1700L/時間の流量で導入し、濃度9.5%の炭酸カルシウムスラリーを作製した。次いで、この炭酸カルシウムスラリーを、45℃~50℃の温度で50時間撹拌することにより熟成を行った。その後、炭酸カルシウムスラリーに、温水に熱溶解させた10%牛脂脂肪酸ナトリウム(脂肪酸系表面処理剤)水溶液を炭酸カルシウム固形分に対して牛脂脂肪酸ナトリウム固形分として13%添加し、24時間撹拌して表面処理剤を炭酸カルシウム表面に十分吸着させた後、脱水、乾燥、および粉末化することにより、BET比表面積(Sw)=42m/gである脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(E3)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(E3)の各物性値を表1に示す。
(実施例4:表面処理炭酸カルシウム(E4)の作製)
脂肪酸系表面処理剤として牛脂脂肪酸ナトリウムの代わりにパーム脂肪酸ナトリウム(ミヨシ油脂株式会社製IPMD、ナトリウムケン化)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理されている炭酸カルシウム(E5)を作製した。得られた表面処理炭酸カルシウム(E4)の各物性値を表1に示す。
(実施例5:表面処理炭酸カルシウム(E5)の作製)
脂肪酸系表面処理剤として牛脂脂肪酸ナトリウムの代わりにオレイン酸ナトリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理されている炭酸カルシウム(E5)を作製した。得られた表面処理炭酸カルシウム(E5)の各物性値を表1に示す。
(比較例1:表面処理炭酸カルシウム(C1)の作製)
温度10℃にて8%の濃度を有する石灰乳に、錯体形成剤としてクエン酸を水酸化カルシウムの質量に対し3.0%となるように添加し、これに20体積%COガスを含有するCOと空気との混合ガスを水酸化カルシウム1kg当たり1700L/時間の流量で導入し、濃度10.8%の炭酸カルシウムスラリーを作製した。次いで、この炭酸カルシウムスラリーを、45℃~50℃の温度で50時間撹拌することにより熟成を行った。その後、炭酸カルシウムスラリーに、温水に熱溶解させた10%牛脂脂肪酸ナトリウム(脂肪酸系表面処理剤)水溶液を炭酸カルシウム固形分に対して牛脂脂肪酸ナトリウム固形分として13%添加し、2時間撹拌して、脱水、乾燥、および粉末化することにより、BET比表面積(Sw)=48m/gである脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(C1)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C1)の各物性値を表1に示す。
(比較例2:表面処理炭酸カルシウム(C2)の作製)
錯体形成剤としてクエン酸の代わりにリンゴ酸を用いたこと以外は、比較例1と同様にして脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(C2)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C2)の各物性値を表1に示す。
(比較例3:表面処理炭酸カルシウム(C3)の作製)
温度10℃にて5%の濃度を有する石灰乳に対して、特に錯体形成剤や無機酸および/またはその塩を添加することなく、そのまま20体積%COガスを含有するCOと空気との混合ガスを水酸化カルシウム1kg当たり1700L/時間の流量で導入し、濃度10.8%の炭酸カルシウムスラリーを作製した。次いで、この炭酸カルシウムスラリーを、30℃~35℃の温度で30時間撹拌することにより熟成を行った。その後、炭酸カルシウムスラリーに、温水に熱溶解させた10%牛脂脂肪酸ナトリウム(脂肪酸系表面処理剤)水溶液を炭酸カルシウム固形分に対して牛脂脂肪酸ナトリウム固形分として5%添加し、24時間撹拌することにより、表面処理剤を炭酸カルシウム表面に十分吸着させた後、脱水、乾燥、粉末化し、BET比表面積(Sw)=17m/gである脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(C3)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C3)の各物性値を表1に示す。
(比較例4:表面処理炭酸カルシウム(C4)の作製)
脂肪酸系表面処理剤として使用した牛脂脂肪酸ナトリウムの添加量を5%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(C4)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C4)の各物性値を表1に示す。
(比較例5:表面処理炭酸カルシウム(C5)の作製)
使用した濃硫酸の添加量を6.0%に変更しかつ石灰乳の濃度を12%に変更することにより、濃度16.28%の炭酸カルシウムスラリーを作製し、これを熟成させたこと以外は、実施例1と同様にして脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(C5)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C5)の各物性値を表1に示す。
(比較例6:表面処理炭酸カルシウム(C6)の作製)
脂肪酸系表面処理剤として使用した牛脂脂肪酸ナトリウムの添加量を25%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウム(C6)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C6)の各物性値を表1に示す。
(比較例7:表面処理炭酸カルシウム(C7)の作製)
脂肪酸系表面処理剤として使用したパーム脂肪酸ナトリウムの添加量5%に変更したこと以外は、実施例4と同様にして脂肪酸系表面処理剤表面処理されている炭酸カルシウム(C7)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C7)の各物性値を表1に示す。
(比較例8:表面処理炭酸カルシウム(C8)の作製)
脂肪酸系表面処理剤として牛脂脂肪酸ナトリウムの代わりにオレイン酸ナトリウムに変更して用いたこと以外は、比較例5と同様にして表面処理されている炭酸カルシウム(C8)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム(C8)の各物性値を表1に示す。
Figure 0007428456000001
(実施例6~10および比較例9~16:シーラントの作製と評価)
上記実施例1~5および比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)および(C1)~(C8)を用い、下記の配合に基づいて1成分形ポリウレタン系シーラントを作製し、各種特性を評価した。結果を表2および表3に示す。
(配合)
・ポリウレタン樹脂タケネートL-1036(三井武田ケミカル株式会社製)430部
・重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製スーパーS) 230部
・上記実施例または比較例で作製した表面処理炭酸カルシウム 150部
・ミネラルターペン 100部
(混練方法)
5リットルの万能混合撹拌機(ダルトン社製)にポリウレタン樹脂を投入し、予め105℃にて2時間以上乾燥させた、上記実施例または比較例で作製した表面処理炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムを同時に投入し、低速にて15分間かけて予備撹拌を行った。その後、混合撹拌機内に付着した配合物を掻き落とし、直ちに真空雰囲気下にて高速で30分間かけて混練した。最後にミネラルターペンを投入し真空雰囲気下で低速15分混合した。これをアルミニウム箔でラミネートコーティングされたカートリッジ内に充填し、金属プランジャーで密栓することにより、1成分形ポリウレタンシーラントを作製した。
(粘度測定方法)
23℃で1日間静置した上記シーラントをカートリッジガンにて100mLのPP(ポリプロピレン)カップへ詰め、TV型粘度計(VISCOMETER TV-100BH、東機産業株式会社製)を用いて1rpmおよび10rpmの粘度を測定し、これをシーラントの初期粘度とした(レンジAH、スピンドルNo.H7)。1rpmは3分後の値を、10rpmは1分後の値を粘度値とし、1rpm粘度値を10rpm粘度値で割った値をTI値とした。
打ちで、シーラントを詰めたカートリッジを50℃で7日間静置したものを、23℃で3時間放冷した後、上記と同様にして粘度測定を行い、シーラントの貯蔵後の粘度値およびTI値とした。
(シーラント粘度の判定基準)
TI値(1rpm粘度値/10rpm粘度値)に応じて、以下の基準にて判定した。
A:6.0以上
B:5.5以上6.0未満
C:5.0以上5.5未満
D:5.0未満
(貯蔵安定性試験)
23℃で1日間経過後に測定した初期粘度値と、50℃にて7日間経過後(その後23℃にて3時間放冷)で測定した貯蔵後粘度値とを用い、次式に基づいて粘度変化割合およびTI値変化割合を算出し、貯蔵安定性(変化の割合%)を評価した。
(1)1rpm粘度変化率=[(貯蔵後1rpmでの粘度値)/(初期1rpmでの粘度値)]×100
(2)10rpm粘度変化率=[(貯蔵後10rpmでの粘度値)/(初期10rpmでの粘度値)]×100
(3)TI値変化率=[(貯蔵後TI値)/(初期TI値)]×100
(貯蔵安定性の判定基準)
粘度変化率およびTI値変化率に基づいて以下の基準にて判定した。
A:粘度変化率が120%未満でありかつTI値変化割合が95%以上であった
B:粘度変化率が120%以上140%未満でありかつTI値変化割合が90%以上95%未満であった。
C:粘度変化率が140%以上150%未満でありかつTI値変化割合が80%以上90%未満であった。
D:粘度変化率が150%以上でありかつTI値変化割合が80%未満であった。
(引張試験方法)
アルミニウム板(50mm×50mm×3mm)表面に、プライマーを塗布し、60分間乾燥させた後、上記シーラントを充填(形状12mm×12mm×50mm)し、JIS A 1439建築用シーリング材 5.12.2耐久性、試験体の作製に基づいて、H型試験体を作製した。
この試験体を23℃にて14日間および35℃にて14日間養生し、23℃にて1日間経過した後に引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG-1)を用いて測定し、初期の引張試験値とした。
また、表3中の各評価項目は以下の通りであった:
「50%引張応力」:1分間に50mmの速度で引張り、伸び率50%(6mm)伸長させた時の荷重をシーラントの断面積(600mm)で割った値を表す。
「最大強度」:1分間に50mmの速度で引張り、最も大きい荷重をシーラントの断面積で割った値を表す。
「伸び率」:最大強度測定時の変位量を、充填時の形状(12mm)で割って、100倍した値を表す。
「接着性(初期)」:23℃にて14日間および35℃にて14日間養生し、23℃にて1日間経過した後、引張試験を行った時に破壊したアルミニウム板に残存するシーラントの接着面積の割合で判定した。
(引張試験の判定基準)
「50%引張応力」
A:0.20N/mm未満であった。
B:0.20N/mm以上であった。
「最大強度」
A:1.00N/mm以上であった。
B:0.80N/mm以上1.00N/mm未満であった。
C:0.70N/mm以上0.80N/mm未満であった。
D:0.70N/mm未満であった。
「伸び率」
A:800%以上であった。
B:700%以上800%未満であった。
C:600%以上700%未満であった。
D:600%未満であった。
「接着性」
アルミ接着面にシーラントが残った状態を凝集破壊の割合(残存する接着面積の割合;CF%)で表し、下記の基準にて評価した。
A:シーラントが100%残った状態で破壊(CF100%)した。
B:シーラントが80%以上100%未満残った状態で破壊(CF50%~CF99%)した。
C:シーラントが80%未満残った状態(CF<80%)、もしくは剥がれた状態(AF)であった。
(加熱後の引張試験方法)
上記引張試験と同様にしてH型試験体を作製し、23℃にて14日間および35℃にて14日間養生した後、100℃にて14日間で高温処理し、23℃にて1日間放冷した後に同様の引張試験を行い、加熱後の引張試験値とした。
(耐熱安定性試験)
初期の引張試験値および加熱後の引張試験値に基づいて、次式により変化割合を算出し、耐熱安定性(変化の割合%)を評価した。
(1)50%引張応力変化率=[(加熱後の50%引張応力)/(初期の50%引張応力)]×100
(2)最大強度変化率=:[(加熱後の最大強度)/(初期の最大強度)]×100
(3)伸び変化率=[(加熱後の伸び率)/(初期の伸び率)]×100
(耐熱安定性の判定基準)
50%引張応力変化率、最大強度変化率および伸び変化率に基づいて以下の基準にて判定した。
A:50%引張応力変化率および最大強度変化率が140%未満でありかつ伸び変化率が85%以上であった。
B:50%引張応力変化率および最大強度変化率が140%以上180%未満でありかつ伸び変化率が80%以上85%未満であった。
C:50%引張応力変化率および最大強度変化率が180%以上220%未満でありかつ伸び変化率が70%以上80%未満であった。
D:50%引張応力変化率および最大強度変化率が220%以上でありかつ伸び変化率が70%未満であった。
Figure 0007428456000002
Figure 0007428456000003
表2に示すように、実施例1~5で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)を用いたシーラント(実施例6~10)はいずれも、比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(C1)~(C8)を用いたシーラント(比較例9~16)と比較して、初期および貯蔵後のいずれのシーラント粘度も良好であり、貯蔵安定性に優れていたことがわかる。
また、表3に示すように、実施例1~5で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)を用いたシーラント(実施例6~10)はいずれも、比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(C1)~(C8)を用いたシーラント(比較例9~16)と比較して、加熱後の引張試験においても十分な伸び率を有しており、耐熱安定性に優れるものであったことがわかる。
(実施例11~15および比較例17~24:プラスチゾルの作製と評価)
上記実施例1~5および比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)および(C1)~(C8)を用い、下記の配合に基づいてプラスチゾル(塩化ビニルペーストゾル)を作製し、各種特性を評価した。結果を表4に示す。
(配合)
・塩化ビニルペーストレジンPCH-843(株式会社カネカ製) 250部
・ポリアミド(株式会社ヘンケル製) 15部
・ジイソノニルフタレート(DINP) 250部
・生石灰(富士フイルム和光純薬株式会社製) 15部
・ターペン 37部
・上記実施例または比較例で作製した表面処理炭酸カルシウム 160部
・重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製スーパーS) 90部
(混練方法)
それぞれの配合物を5リットル万能混合撹拌機(ダルトン社製)に投入して3分間混練し、一旦撹拌機の蓋を開けて壁面に付着している配合物を掻き落とし、再度真空雰囲気下で10分間混練した。混練後のゾルを遊星式脱泡混練機(クラボウ株式会社製KK-1000W)にて、混練条件5-5-18で脱泡し、塩ビゾルを作製した。なお、上記混練条件「a-b-c」は、aが公転条件を表し、bが自転条件を表し、cが時間(c×10秒間)を表すことを意味する。
(粘度測定)
混練後のプラスチゾルを100mLのPP(ポリプロピレン)カップに詰め、23℃にて3日静置後、TV形粘度計(VISCOMETER TV-100BH、東機産業株式会社製)を用いて(レンジAH、スピンドルNo.H7)2rpmおよび20rpmの粘度を初期粘度として測定した。
2rpm粘度は2分後の値を、20rpmは1分後の値をそれぞれ粘度値とした。また、TI値は、2rpm粘度値を20rpm粘度値で割った値で表した。さらに、混練後のプラスチゾルを100mLのPPカップに詰め、40℃にて3日間静置したものを、23℃にて3時間放冷した後、2rpmおよび20rpmの粘度を貯蔵後粘度、2rpm/20rpmの数値を貯蔵後のTI値として測定した。
(ゾル粘度の判定基準)
TI値(2rpm粘度/20rpm粘度)に応じて以下の基準にて判定した。
A:6.00以上であった。
B:5.50以上6.00未満であった。
C:5.00以上5.50未満であった。
D:5.00未満であった。
(貯蔵安定性試験)
23℃にて3日間経過した後に測定した初期粘度値と、40℃にて3日間経過した後(その後23℃で3時間放冷)で測定した貯蔵後粘度値を用いて、次式により粘度変化割合およびTI値変化割合を算出し、貯蔵安定性(変化の割合%)を評価した。
粘度変化割合=[(貯蔵後各回転数での粘度値)/(初期各回転数での粘度値)]×100
TI値変化割合=[(貯蔵後TI値/初期TI値 )]×100
(貯蔵安定性の判定基準)
粘度変化割合およびTI値変化割合に応じて以下の基準にて判定した。
A:粘度変化割合が105%未満でありかつTI値変化割合が95%以上であった。
B:粘度変化割合が105%以上110%未満でありかつTI値変化割合が90%以上95%未満であった。
C:粘度変化割合が110%以上120%未満でありかつTI値変化割合が85%以上90%未満であった。
D:粘度変化割合が120%以上でありかつTI値変化割合が85%未満であった。
(電着板密着性試験方法)
混練後のプラスチゾルを、十分に磨き仕上げした70mm×150mmの鋼板に、3mmの厚さになるように塗布し、100℃の恒温槽で30分焼き付け硬化させ、15分間常温に曝して冷却させた後、さらに130℃で30分間、常温冷却下で15分間配置し、これ2回繰り返した後、それぞれ冷却後に硬化塗膜を爪で剥がし、硬化塗膜が電着板に残った状態を凝集破断の割合(残存する接着面積の割合;CF%)で密着性を確認し、以下の基準で判定した。
(電着板密着性の判定基準)
A:密着性に極めて優れ、剥がそうとすると硬化塗膜が電着板にすべて残った状態で破断(CF100%)した。
B:密着性に優れているが剥がした際に硬化塗膜が電着板に70%以上100%未満残った状態で破断(70%≦CF<100%)した。
C:容易に剥がれ、剥がした際に硬化塗膜が電着板に70%未満しか残らない状態で破断(CF<70%)した。
Figure 0007428456000004
表4に示すように、実施例1~5で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)を用いたプラスチゾル(実施例11~15)はいずれも、比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(C1)~(C8)を用いたプラスチゾル(比較例17~24)と比較して、初期および貯蔵後のいずれのゾル粘度も良好であり、貯蔵安定性に優れ、かつ電着板への密着性が良好であったことがわかる。
(実施例16~20および比較例25~32:塗料組成物の調製と評価)
上記実施例1~5および比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)および(C1)~(C8)を用い、下記の配合に基づいて塗料組成物を作製し、各種特性を評価した。結果を表5に示す。
(配合)
・ミネラルスピリット 90部
・長油型アルキッド樹脂(油長65%/NV70) 240部
・酸化チタン 140部
・上記実施例または比較例で作製した表面処理炭酸カルシウム 25部
・混合ドライヤー 5部
・皮張り防止剤 1部
・ガラスビーズ 500部
(調製方法)
上記配合物を、粒ゲージにて10μm以下になるまでSGミルで分散させた後、ガラスビーズを取り除いた塗料組成物を塗料缶(200mL)に入れて密栓し、23℃で1日間静置した後、下記の方法にしたがって各種物性を測定および評価した。
(KU値)
塗料缶に入った塗料組成物をクレプストーマー粘度計(株式会社上島製作所社製STOMER’S VISCOMETER)にてKU値を測定した。
(チキソ性)
塗料缶に入った塗料組成物をTV型粘度計(VISCOMETER TV-100BH、東機産業株式会社製)を用いて6rpmおよび60rpmの粘度を測定し、これを初期粘度とした(レンジAH、スピンドルNo.H7)。6rpmおよび60rpmはともに1分後の値を粘度値とし、6rpm粘度値を60rpm粘度値で割った値をTI値とした。
(チキソ性の判定基準)
得られたTI値(6rpm粘度値/60rpm粘度値)に応じて、以下の基準にて判定した。
A:3.0以上であった。
B:2.5以上3.0未満であった。
C:2.0以上2.5未満であった。
D:2.0未満であった。
(タレ性)
各塗料組成物をKU粘度値が70になるようにミネラルスピリットを加えて調整し、250μm、200μm、150μmおよび100μmのアプリケーターを用いて、全黒測定用紙に塗布し、塗布後直ちに塗布面が垂直になるように立てかけて、常温にて24時間放置し、塗布した塗料のタレの状態を下記の基準で評価した。
A:タレていなかった。
B:タレていた。
(塗料組成物の貯蔵安定性)
上記KU粘度値が70になるようにミネラルスピリットを用いて調整した塗料組成物を塗料缶(200mL)に入れて密栓し、オーブンで50℃にて4週間貯蔵した後に塗料缶の底を静かに薬さじで掬い、堆積した沈降物の有無を目視にて確認した。
(貯蔵安定性の判定基準)
50℃で加熱貯蔵した後の貯蔵安定性について以下の基準で判定した。
A:沈降物がなかった。
B:沈降物があった。
Figure 0007428456000005
表5に示すように、実施例1~5で作製した表面処理炭酸カルシウム(E1)~(E5)を用いた塗料組成物(実施例16~20)はいずれも、比較例1~8で作製した表面処理炭酸カルシウム(C1)~(C8)を用いた塗料組成物(比較例25~32)と比較して、チキソ性、タレ性および貯蔵安定性のいずれについても良好であったことがわかる。
本発明によれば、例えば、樹脂成形分野、建築・住宅分野、塗料分野、ならびにこれらに関連する広範な技術分野において有用である。

Claims (7)

  1. 脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムから構成されている表面処理炭酸カルシウムであって、
    該脂肪酸系表面処理剤が、脂肪酸および脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、かつ
    以下の関係式(a)から(f)を満たす、表面処理炭酸カルシウム。
    (a)20≦Sw≦100 (m/g)
    (b)1.0≦As≦7.5 (mg/m
    (c)LC≧55 (%)
    (d)0.003≦Dxp≦0.03 (μm)
    (e)50≦Dyp/Dxp≦180
    (f)0.03≦Is≦2.57 (μmol/m
    ここで、
    Sw :窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)
    As :次式より与えられる単位表面積あたりの熱減量(mg/m
    As=(該表面処理されている炭酸カルシウム1gあたりの200℃~500℃の熱減量(mg/g))/Sw(m/g)
    LC :次式より与えられる明度の維持率(%)
    LC=(160℃で12時間加熱した該表面処理されている炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)/(加熱前の該炭酸カルシウムとジイソノニルフタレートとを1対2の質量比で混合したペーストのL値)×100
    Dxp:水銀圧入法において、細孔範囲0.001~0.1μmの範囲おける細孔分布において、水銀圧入増加量(積算細孔容積増加量/log平均細孔直径)が最大値(Dyp)となる平均細孔直径(μm)
    Dyp:水銀圧入増加量の最大値(mL/g)
    Dyp/Dxp:平均細孔径量
    Is :次式により算出される単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(μmol/m
    Is=(該表面処理されている炭酸カルシウム1gあたりのアルカリ金属含有量(μmol/g))/{Sw(m/g)}
  2. 前記脂肪酸系表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムが、下記の式(g)および(h)を満たす、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
    (g)0.005≦Dxp≦0.025 (μm)
    (h)60≦Dyp/Dxp≦150
  3. 請求項1または2に記載の前記表面処理炭酸カルシウムおよび樹脂を含む、樹脂組成物。
  4. 前記樹脂がシーラント用樹脂である、請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記樹脂が接着剤用樹脂である、請求項3に記載の樹脂組成物。
  6. 前記樹脂が塗料用樹脂である、請求項3に記載の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂がプラスチゾル用樹脂である、請求項3記載の樹脂組成物。
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