以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[光検出装置の構成]
図1に示されるように、光検出装置1は、パッケージ2を備えている。パッケージ2は、ステム3と、キャップ4と、を有するCANパッケージである。キャップ4は、側壁5及び天壁6によって一体的に構成されている。天壁6は、所定のラインLに平行な方向においてステム3と対向している。ステム3及びキャップ4は、例えば金属からなり、互いに気密に接合されている。
ステム3の内面3aには、配線基板7が固定されている。配線基板7の基板材料としては、例えば、シリコン、セラミック、石英、ガラス、プラスチック等を用いることができる。配線基板7には、光検出器8、及びサーミスタ等の温度補償用素子(図示省略)が実装されている。光検出器8は、ラインL上に配置されている。より具体的には、光検出器8は、その受光部の中心線がラインLに一致するように配置されている。光検出器8は、例えば、InGaAs等が用いられた量子型センサ、サーモパイル又はボロメータ等が用いられた熱型センサ等の赤外線検出器である。紫外、可視、近赤外の各波長域の光を検出する場合には、光検出器8として、例えば、シリコンフォトダイオード等を用いることができる。なお、光検出器8には、1つの受光部が設けられていてもよいし、複数の受光部がアレイ状に設けられたフォトダイオードアレイや、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどであってもよい。更に、複数の光検出器8が配線基板7に実装されていてもよい。
配線基板7上には、複数のスペーサ(支持部)9が固定されている。各スペーサ9の材料としては、例えば、シリコン、セラミック、石英、ガラス、プラスチック等を用いることができる。複数のスペーサ9上には、ファブリペロー干渉フィルタ10が例えば接着剤によって固定されている。ファブリペロー干渉フィルタ10は、ラインL上に配置されている。より具体的には、ファブリペロー干渉フィルタ10は、その光透過領域10aの中心線がラインLに一致するように配置されている。スペーサ9は、ファブリペロー干渉フィルタ10を光出射側(後述する第2層構造体16側)から支持している。なお、スペーサ9は、配線基板7と一体的に構成されていてもよい。この場合、配線基板7及びスペーサ9によって構成される部材が、ファブリペロー干渉フィルタ10を支持する支持部となる。また、ファブリペロー干渉フィルタ10は、複数のスペーサ9によってではなく、1つのスペーサ9によって支持されていてもよい。
ステム3には、複数のリードピン11が固定されている。より具体的には、各リードピン11は、ステム3との間の電気的な絶縁性及び気密性が維持された状態で、ステム3を貫通している。各リードピン11には、配線基板7に設けられた電極パッド、光検出器8の端子、温度補償用素子の端子、及びファブリペロー干渉フィルタ10の端子のそれぞれが、ワイヤ12によって電気的に接続されている。これにより、光検出器8、温度補償用素子、及びファブリペロー干渉フィルタ10のそれぞれに対する電気信号の入出力等が可能である。
パッケージ2には、開口2aが設けられている。より具体的には、開口2aは、その中心線がラインLに一致するようにキャップ4の天壁6に設けられている。天壁6の内面6aには、開口2aを塞ぐように光透過部材13が配置されている。光透過部材13は、天壁6の内面6aに気密に接合されている。光透過部材13は、少なくとも光検出装置1の測定波長範囲の光を透過させる。光透過部材13は、ラインLに平行な方向において互いに対向する光入射面13a及び光出射面13b、並びに側面13cを含む板状の部材である。光透過部材13は、例えば、ガラス、石英、シリコン、ゲルマニウム、プラスチック等からなる。
光透過部材13の光出射面13bには、バンドパスフィルタ14が設けられている。バンドパスフィルタ14は、例えば、蒸着、貼り付け等によって、光透過部材13の光出射面13bに配置されている。バンドパスフィルタ14は、光検出装置1の測定波長範囲の光を選択的に透過させる。バンドパスフィルタ14は、例えば、TiO2、Ta2O5等の高屈折材料と、SiO2、MgF2等の低屈折材料との組合せからなる誘電体多層膜である。
光検出装置1では、パッケージ2が、配線基板7、光検出器8、温度補償用素子(図示省略)、複数のスペーサ9、及びファブリペロー干渉フィルタ10を収容している。パッケージ2内では、光検出器8が、ラインL上においてファブリペロー干渉フィルタ10の光出射側に位置しており、開口2a及び光透過部材13が、ラインL上においてファブリペロー干渉フィルタ10の光入射側に位置している。
以上のように構成された光検出装置1においては、外部から、開口2a、光透過部材13及びバンドパスフィルタ14を介して、ファブリペロー干渉フィルタ10の光透過領域10aに光が入射すると、所定の波長を有する光が選択的に透過させられる(詳細は後述する)。ファブリペロー干渉フィルタ10の光透過領域10aを透過した光は、光検出器8の受光部に入射して、光検出器8によって検出される。
[ファブリペロー干渉フィルタの構成]
図2、図3及び図4に示されるように、ファブリペロー干渉フィルタ10では、第1ミラー部と第2ミラー部との距離に応じた光を透過させる光透過領域10aがラインL上に設けられている。光透過領域10aは、例えば円柱状の領域である。光透過領域10aにおいては、第1ミラー部と第2ミラー部との距離が極めて精度良く制御される。つまり、光透過領域10aは、ファブリペロー干渉フィルタ10のうち、所定の波長を有する光を選択的に透過させるために第1ミラー部と第2ミラー部との距離を所定の距離に制御することが可能な領域であって、第1ミラー部と第2ミラー部との距離に応じた所定の波長を有する光が透過可能な領域である。
ファブリペロー干渉フィルタ10は、矩形板状の基板21を備えている。基板21は、互いに対向する第1表面21a及び第2表面21bを有している。第1表面21aは、光入射側の表面である。第2表面21bは、光出射側の表面である。第1表面21a上には、第1層構造体15が配置されている。第2表面21b上には、第2層構造体16が配置されている。
第1層構造体15は、反射防止層31、第1積層体32、第1中間層33及び第2積層体34がこの順で第1表面21a上に積層されることによって構成されている。第1積層体32と第2積層体34との間には、枠状の第1中間層33によって空隙(エアギャップ)Sが画定されている。基板21は、例えば、シリコン、石英又はガラス等からなる。基板21がシリコンからなる場合には、反射防止層31及び第1中間層33は、例えば、酸化シリコンからなる。第1中間層33の厚さは、例えば、数十nm〜数十μmである。
第1積層体32のうち光透過領域10aに対応する部分は、第1ミラー部41として機能する。第1ミラー部41は、反射防止層31を介して第1表面21aに配置されている。第1積層体32は、複数のポリシリコン層35と複数の窒化シリコン層36とが一層ずつ交互に積層されることによって構成されている。本実施形態では、ポリシリコン層35a、窒化シリコン層36a、ポリシリコン層35b、窒化シリコン層36b及びポリシリコン層35cが、この順で反射防止層31上に積層されている。第1ミラー部41を構成するポリシリコン層35及び窒化シリコン層36のそれぞれの光学厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。なお、第1ミラー部41は、反射防止層31を介することなく第1表面21a上に直接に配置されてもよい。
第2積層体34のうち光透過領域10aに対応する部分は、第2ミラー部42として機能する。第2ミラー部42は、第1ミラー部41に対して基板21とは反対側において空隙Sを介して第1ミラー部41と対向している。第2ミラー部42は、反射防止層31、第1積層体32及び第1中間層33を介して第1表面21aに配置されている。第2積層体34は、複数のポリシリコン層37と複数の窒化シリコン層38とが一層ずつ交互に積層されることによって構成されている。本実施形態では、ポリシリコン層37a、窒化シリコン層38a、ポリシリコン層37b、窒化シリコン層38b及びポリシリコン層37cが、この順で第1中間層33上に積層されている。第2ミラー部42を構成するポリシリコン層37及び窒化シリコン層38のそれぞれの光学厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。
なお、第1積層体32及び第2積層体34では、窒化シリコン層の代わりに酸化シリコン層が用いられてもよい。また、第1積層体32及び第2積層体34を構成する各層の材料としては、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム、フッ化カルシウム、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛等が用いられてもよい。
第2積層体34において空隙Sに対応する部分には、第2積層体34の第1中間層33とは反対側の表面34aから空隙Sに至る複数の貫通孔34bが形成されている。複数の貫通孔34bは、第2ミラー部42の機能に実質的に影響を与えない程度に形成されている。複数の貫通孔34bは、エッチングによって第1中間層33の一部を除去して空隙Sを形成するために用いられる。
第1ミラー部41には、光透過領域10aを囲むように第1電極22が形成されている。第1電極22は、ポリシリコン層35cに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。第1ミラー部41には、光透過領域10aを含むように第2電極23が形成されている。第2電極23は、ポリシリコン層35cに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。第2電極23の大きさは、光透過領域10aの全体を含む大きさであることが好ましいが、光透過領域10aの大きさと略同一であってもよい。
第2ミラー部42には、第3電極24が形成されている。第3電極24は、空隙Sを介して第1電極22及び第2電極23と対向している。第3電極24は、ポリシリコン層37aに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。
端子25は、光透過領域10aを挟んで対向するように一対設けられている。各端子25は、第2積層体34の表面34aから第1積層体32に至る貫通孔内に配置されている。各端子25は、配線22aを介して第1電極22と電気的に接続されている。
端子26は、光透過領域10aを挟んで対向するように一対設けられている。各端子26は、第2積層体34の表面34aから第1中間層33の内部に至る貫通孔内に配置されている。各端子26は、配線23aを介して第2電極23と電気的に接続されていると共に、配線24aを介して第3電極24と電気的に接続されている。一対の端子25が対向する方向と、一対の端子26が対向する方向とは、直交している(図2参照)。
第1積層体32の表面32aには、トレンチ27,28が設けられている。トレンチ27は、配線23aにおける端子26との接続部分を囲むように環状に延在している。トレンチ27は、第1電極22と配線23aとを電気的に絶縁している。トレンチ28は、第1電極22の内縁に沿って環状に延在している。トレンチ28は、第1電極22と第1電極22の内側の領域(第2電極23)とを電気的に絶縁している。各トレンチ27,28内の領域は、絶縁材料であっても、空隙であってもよい。
第2積層体34の表面34aには、トレンチ29が設けられている。トレンチ29は、端子25を囲むように環状に延在している。トレンチ29は、端子25と第3電極24とを電気的に絶縁している。トレンチ29内の領域は、絶縁材料であっても、空隙であってもよい。
第2層構造体16は、反射防止層51、第3積層体52、第2中間層53及び第4積層体54がこの順で第2表面21b上に積層されることによって構成されている。反射防止層51、第3積層体52、第2中間層53及び第4積層体54は、それぞれ、反射防止層31、第1積層体32、第1中間層33及び第2積層体34に対応するように構成されている。すなわち、反射防止層51及び第2中間層53は、それぞれ、反射防止層31及び第1中間層33と同一の材料によって同一の厚さに形成されている。第3積層体52及び第4積層体54は、それぞれ、基板21を基準として第1積層体32及び第2積層体34と対称の積層構造を有している。
具体的には、第3積層体52は、複数のポリシリコン層55と複数の窒化シリコン層56とが一層ずつ交互に積層されることによって構成されている。本実施形態では、ポリシリコン層55a、窒化シリコン層56a、ポリシリコン層55b、窒化シリコン層56b及びポリシリコン層55cが、この順で反射防止層51上に積層されている。第4積層体54は、複数のポリシリコン層57と複数の窒化シリコン層58とが一層ずつ交互に積層されることによって構成されている。本実施形態では、ポリシリコン層57a、窒化シリコン層58a、ポリシリコン層57b、窒化シリコン層58b及びポリシリコン層57cが、この順で第2中間層53上に積層されている。ポリシリコン層55,57及び窒化シリコン層56,58のそれぞれは、対応するポリシリコン層35,37及び窒化シリコン層36,38と同一の材料によって同一の厚さに形成されている。
第3積層体52、第2中間層53及び第4積層体54には、光透過領域10aを含むように開口50aが設けられている。開口50aは、光透過領域10aの大きさと略同一の径を有している。開口50aは、光出射側に開口しており、開口50aの底面は、反射防止層51に至っている。開口50aの中心線は、ラインLに一致している。第4積層体54の光出射側の表面には、遮光層61が形成されている。遮光層61は、例えばアルミニウム等からなる。遮光層61の表面及び開口50aの内面には、保護層62が形成されている。保護層62は、例えば酸化アルミニウムからなる。なお、保護層62の厚さを1〜100nm(好ましくは、40nm程度)にすることで、保護層62による光学的な影響を無視することができる。
図3及び図4に示されるように、第2層構造体16には、4つの分離領域64が形成されている。各分離領域64は、第2表面21bに沿った方向における一方の側と他方の側とに第2層構造体16の少なくとも一部を分離している。
第2表面21bに垂直な方向から見た場合(平面視)における4つの分離領域64の形状及び位置関係は、次の通りである。各分離領域64は、基板21の各辺と交差する方向に直線状に延在している。4つの分離領域64は、ラインLを通り基板21の一辺と直交するラインA、及びラインLを通りラインAと直交するラインBのそれぞれに対して線対称となるように配置されている。4つの分離領域64は、ラインLを中心として放射状に配置されている。各分離領域64は、開口50aの外縁と基板21の外縁との間に配置されている。本実施形態では、各分離領域64の一端は、開口50aの外縁に至り、他端は、基板21の角部に至っている。すなわち、各分離領域64は、第2層構造体16において光透過領域10aとは異なる領域に設けられている。これにより、分離領域64の幅に依らずに、分離領域64による光透過特性への影響を抑制することができる。本実施形態では、4つの分離領域64は、開口50aを挟んで互いに対向する分離領域64の対を2つ含んでいる。一方の分離領域64の対が対向する方向と、他方の分離領域64の対が対向する方向とは、直交している。
分離領域64は、第3積層体52、第2中間層53、第4積層体54、遮光層61及び保護層62に渡るように形成されている。分離領域64は、第2表面21bに沿った方向における一方の側と他方の側とに第3積層体52、第2中間層53、第4積層体54、遮光層61及び保護層62を分離している。分離領域64における基板21側の端部は、反射防止層51に至っている。分離領域64における基板21とは反対側の端部は、第2層構造体16における基板21とは反対側の表面16aに至っている。すなわち、分離領域64における基板21とは反対側の端部は、外部に露出している。
本実施形態では、分離領域64は、断面矩形状の溝65として構成されている。溝65は、第2層構造体16の表面16aに開口している。溝65において、第2表面21bに沿った方向における一方の側の内面65aと他方の側の内面65bとは、離間している。溝65の底面65cは、反射防止層51に至っている。溝65内の領域は、空隙である。
以上のように構成されたファブリペロー干渉フィルタ10においては、端子25,26を介して第1電極22と第3電極24との間に電圧が印加されると、当該電圧に応じた静電気力が第1電極22と第3電極24との間に発生する。当該静電気力によって、第2ミラー部42が、基板21に固定された第1ミラー部41側に引き付けられ、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離が調整される。このように、ファブリペロー干渉フィルタ10では、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離が可変とされている。
ファブリペロー干渉フィルタ10を透過する光の波長は、光透過領域10aにおける第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離に依存する。したがって、第1電極22と第3電極24との間に印加する電圧を調整することで、透過する光の波長を適宜選択することができる。このとき、第2電極23は、第3電極24と同電位である。したがって、第2電極23は、光透過領域10aにおいて第1ミラー部41及び第2ミラー部42を平坦に保つための補償電極として機能する。
ファブリペロー干渉フィルタ10では、例えば、ファブリペロー干渉フィルタ10に印加する電圧を変化させながら(すなわち、ファブリペロー干渉フィルタ10において第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を変化させながら)、ファブリペロー干渉フィルタ10の光透過領域10aを透過した光を光検出器8によって検出することで、分光スペクトルを得ることができる。
以上説明したように、ファブリペロー干渉フィルタ10では、基板21の第1表面21aに第1層構造体15が配置されており、第1表面21aと対向する第2表面21bに第2層構造体16が配置されている。これにより、基板21の第1表面21a側と第2表面21b側との間の応力バランスが向上し、基板21の変形(反り等)が抑制される。更に、ファブリペロー干渉フィルタ10では、基板21の第2表面21bに沿った方向における一方の側と他方の側とに第2層構造体16の少なくとも一部を分離する分離領域64が第2層構造体16に形成されている。これにより、基板の第1表面側と第2表面側との間の応力バランスが更に向上すると共に、例えば温度変化に起因する第2層構造体16の変形の影響が第1層構造体15に伝わることが抑制される。以上により、ファブリペロー干渉フィルタ10によれば、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。
また、ファブリペロー干渉フィルタ10では、分離領域64が、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に基板21の各辺と交差する方向に延在している。これにより、第2層構造体16に剥がれ等の損傷が生じることを抑制することができる。また、例えば、ファブリペロー干渉フィルタ10に対応する部分を複数含むウェハに切断起点を形成し、エキスパンドテープを拡張させることで、ファブリペロー干渉フィルタ10に対応する部分ごとにウェハを切断するような場合でも、分離領域64を起点として割れが伸展してファブリペロー干渉フィルタ10に損傷が生じるようなことが防止される。
また、ファブリペロー干渉フィルタ10では、第1層構造体15が、第1ミラー部41を含む第1積層体32と、第2ミラー部42を含む第2積層体34と、空隙Sを画定する第1中間層33と、を有しており、第2層構造体16が、第1積層体32に対応するように構成された第3積層体52と、第2積層体34に対応するように構成された第4積層体54と、第1中間層33に対応するように構成された第2中間層53と、を有している。そして、分離領域64が第3積層体52及び第2中間層53の両方に渡るように形成されている。これにより、基板の第1表面側と第2表面側との間の応力バランスがより効果的に向上すると共に、例えば温度変化に起因する第2層構造体16の変形が第1層構造体15に伝わることがより確実に抑制される。より具体的には、応力バランスの変化に寄与し易い第2中間層53に分離領域64が形成されているので、基板21の第1表面21a側と第2表面21b側との間に応力の偏りが生じることを効果的に抑制することができる。更に、第3積層体52及び第2中間層53の両方に渡るように分離領域64が形成されているので、第2層構造体16のファブリペロー干渉フィルタ10における内部応力への寄与を一層低減することができる。第2中間層53が内部応力の増加に寄与し易いのは、第2中間層53が第3積層体52及び第4積層体54を構成する各層と比べて厚く形成され易いためである。
また、ファブリペロー干渉フィルタ10では、分離領域64が溝65として構成されている。これにより、上述したような分離領域64の作用及び効果が確実に奏される。
また、ファブリペロー干渉フィルタ10では、分離領域64における基板21とは反対側の端部が、第2層構造体16における基板21とは反対側の表面16aに至っている。これにより、上述したような分離領域64の作用及び効果が確実に奏される。
また、光検出装置1は、ファブリペロー干渉フィルタ10と、ファブリペロー干渉フィルタ10を透過した光を検出する光検出器8と、ファブリペロー干渉フィルタ10を第2層構造体16側から支持するスペーサ9と、を備えている。光検出装置1では、ファブリペロー干渉フィルタ10を備えているので、上述したように、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。更に、スペーサ9が、分離領域64が形成された第2層構造体16側からファブリペロー干渉フィルタ10を支持しているので、例えば温度変化に起因するスペーサ9の変形の影響が第1層構造体15に伝わることが抑制される。このことからも、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。
[ファブリペロー干渉フィルタの製造方法]
次に、図5、図6及び図7を参照しつつ、ファブリペロー干渉フィルタ10の製造方法の一例を説明する。まず、図5(a)に示されるように、基板21に対応する部分Rを複数含むウェハ20を用意し、第1ミラー部41を含む第1積層体32と、第1積層体32に対応するように構成された第3積層体52とを、ウェハ20の基板21に対応する部分Rごとに形成する(第1ステップ)。ウェハ20は、例えばシリコンウエハである。ウェハ20において、部分Rは、例えば、互いに隣接するように2次元マトリクス状に配置されている。部分R同士の境界上には、ダイシングラインDが設定されている。
第1ステップでは、まず、部分Rの第1表面21a上に反射防止層31を形成し、これと同時に、部分Rの第2表面21b上に反射防止層51を形成する。続いて、反射防止層31上に、第1積層体32を構成するポリシリコン層35a、窒化シリコン層36a、ポリシリコン層35b、窒化シリコン層36b及びポリシリコン層35cをこの順序で積層する。この第1積層体32の積層と同時に、反射防止層51上に、第3積層体52を構成するポリシリコン層55a、窒化シリコン層56a、ポリシリコン層55b、窒化シリコン層56b及びポリシリコン層55cを積層する。また、第1積層体32の積層と並行して、ポリシリコン層35b,35cを不純物ドープによって部分的に低抵抗化し、第1電極22及び第2電極23を形成する。続いて、エッチングによってトレンチ27,28を形成する。
続いて、図5(b)に示されるように、空隙Sに対応する除去予定部70を含む第1中間層33と、第1中間層33に対応するように構成された第2中間層53とを、部分Rごとに形成する(第2ステップ)。第2ステップでは、まず、第1積層体32上に第1中間層33を形成し、これと同時に、第3積層体52上に第2中間層53を形成する。続いて、図4の配線23a及び端子25,26に対応する部分にエッチングによって空隙を形成する。
続いて、図6(a)に示されるように、第2ミラー部42を含む第2積層体34と、第2積層体34に対応するように構成された第4積層体54とを、部分Rごとに形成する(第3ステップ)。
第3ステップでは、まず、第1中間層33上に、第2積層体34を構成するポリシリコン層37a、窒化シリコン層38a、ポリシリコン層37b、窒化シリコン層38b及びポリシリコン層37cをこの順序で積層する。一方、第2積層体34の積層と同時に、第2中間層53上に、第4積層体54を構成するポリシリコン層57a、窒化シリコン層58a、ポリシリコン層57b、窒化シリコン層58b及びポリシリコン層57cをこの順序で積層する。また、第2積層体34の積層と並行して、ポリシリコン層37aを不純物ドープによって部分的に低抵抗化し、第3電極24を形成する。続いて、端子25,26を形成する。
続いて、第2積層体34を部分的にエッチングすることにより、第2ミラー部42の表面34aから除去予定部70に至る貫通孔34bを形成する。続いて、第4積層体54上に遮光層61を形成する。続いて、第3積層体52、第2中間層53、第4積層体54及び遮光層61にエッチングによって開口50aを形成する。続いて、遮光層61の表面及び開口50aの内面に、保護層62を形成する。続いて、図6(b)に示されるように、第3積層体52、第2中間層53、第4積層体54、遮光層61及び保護層62に渡る溝65(分離領域64)をエッチングによって形成する。
続いて、図7(a)に示されるように、貫通孔34bを介したエッチングによって除去予定部70を除去することにより、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間に位置する空隙Sを、部分Rごとに形成する(第4ステップ)。第4ステップでは、貫通孔34bを介した気相エッチングによって除去予定部70を除去する。この気相エッチングには、例えばフッ酸ガスが用いられる。なお、溝65は、第4ステップの後に形成されてもよい。
続いて、図7(b)に示されるように、ダイシングラインDにおいてウェハ20を切断し、ファブリペロー干渉フィルタ10を得る(第5ステップ)。第5ステップにおいては、例えば、第1表面21a側からのレーザ光の照射によって、ダイシングラインDに沿ってウェハ20の内部に改質領域を形成し、テープエキスパンド等によって改質領域からウェハ20の厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、ウェハ20を切断する。なお、ブレードダイシング等の他のダイシング方法によってウェハ20を切断してもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、図8に示される第1変形例に係るファブリペロー干渉フィルタ10Aのように構成されてもよい。第1変形例の分離領域64Aは、割れ66として構成されている。割れ66において、第2表面21bに沿った方向における一方の側の内面と他方の側の内面とは、離間していてもよいし、接触していてもよい。例えば、上記第3ステップにおいて、第2層構造体16に対してアニール処理(加熱処理)を行うことにより、割れ66を形成することができる。
このような第1変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。なお、割れ66は、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に断続的に形成されていてもよい。
また、図9に示される第2変形例に係るファブリペロー干渉フィルタ10Bのように構成されてもよい。第2変形例の分離領域64Bにおける基板21とは反対側の端部は、第2層構造体16の内部に位置している。分離領域64Bは、第2表面21bに沿った方向における一方の側と他方の側とに第3積層体52及び第2中間層53を分離している。分離領域64Bにおける基板21とは反対側の端部は、第2中間層53と第4積層体54との境界に位置している。分離領域64Bは、断面矩形状の溝67として構成されている。溝67において、第2表面21bに沿った方向における一方の側の内面67aと他方の側の内面67bとは、離間している。溝67の底面67cは、反射防止層51に至っている。溝67内には、第4積層体54を構成するポリシリコン層57a及び窒化シリコン層58aが入り込んでいる。例えば、上記第2ステップにおいて、第2中間層53における配線23a及び端子25,26に対応する部分にエッチングによって空隙を形成するのと同時に、エッチングによって溝67を形成することができる。
このような第2変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。更に、第2変形例では、分離領域64Bにおける基板21とは反対側の端部が、第2層構造体16の内部に位置している。これにより、分離領域64Bが外部に露出することが回避されているので、第2層構造体16の強度を確保することができる。その結果、使用時等に第2層構造体16に割れ等が生じることを抑制することができる。また、例えば、ファブリペロー干渉フィルタ10に対応する部分を複数含むウェハに切断起点を形成し、エキスパンドテープを拡張させることで、ファブリペロー干渉フィルタ10に対応する部分ごとにウェハを切断するような場合でも、分離領域64を起点として割れが伸展してファブリペロー干渉フィルタ10に損傷が生じるようなことが防止される。
また、図10に示される第3変形例に係るファブリペロー干渉フィルタ10Cのように構成されてもよい。第3変形例の分離領域64Cは、割れ68として構成されている。その他の点については第2変形例の分離領域64Bと同様である。割れ68において、第2表面21bに沿った方向における一方の側の内面と他方の側の内面とは、離間していてもよいし、接触していてもよい。例えば、上記第2ステップにおいて、第3積層体52及び第2中間層53に対してアニール処理(加熱処理)を行うことにより、割れ68を形成することができる。
このような第3変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。
また、図11(a)に示される第4変形例に係るファブリペロー干渉フィルタ10Dのように構成されてもよい。第4変形例では、第2層構造体16には、1つの分離領域64Dが形成されている。分離領域64Dは、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に光透過領域10aを囲むように環状に延在している。ここでの分離領域64Dは、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に円環状に延在している。分離領域64Dは、分離領域64Dの半径方向における一方の側と他方の側とに(例えば、内側と外側とに)第2層構造体16を分離している。
このような第4変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。更に、第4変形例では、分離領域64Dが、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に環状に延在している。これにより、第2層構造体16に剥がれ等の損傷が生じることを抑制することができる。また、例えば、ファブリペロー干渉フィルタ10Dに対応する部分を複数含むウェハに切断起点を形成し、エキスパンドテープを拡張させることで、ファブリペロー干渉フィルタ10Dに対応する部分ごとにウェハを切断するような場合でも、分離領域64Dを起点として割れが伸展してファブリペロー干渉フィルタ10Dに損傷が生じるようなことが防止される。特に、第4変形例のように、分離領域64Dが第2表面21bに垂直な方向から見た場合に円環状に延在している場合、バランスが向上され、第2層構造体16に剥がれ等の損傷が生じることを好適に抑制することができる。更に、第4変形例では、分離領域64Dが、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に光透過領域10aを囲むように環状に延在しているため、スペーサ9上に接着剤を介してファブリペロー干渉フィルタ10Dを固定する場合に、接着剤の光透過領域10aへの流れ込みを抑制することができる。なお、第4変形例において、分離領域64Dは、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に環状に延在していればよく、例えば矩形環状に延在していてもよい。
また、図11(b)に示される第5変形例に係るファブリペロー干渉フィルタ10Eのように構成されてもよい。第5変形例では、4つの分離領域64Eは、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に光透過領域10aを囲むように格子状に配置されている。4つの分離領域64Eのうち、互いに対向する2つの分離領域64Eは、基板21の互いに対向する二辺と直交する方向に延在している。4つの分離領域64Eのうち、互いに対向する残りの2つの分離領域64Eは、基板21の互いに対向する他の二辺と直交する方向に延在している。各分離領域64Eの両端部は、基板21の辺部に至っている。
このような第5変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、第1ミラー部41と第2ミラー部42との間の距離を精度良く制御することが可能となり、良好な光透過特性を得ることができる。更に、第5変形例では、分離領域64Eが、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に光透過領域10aを囲むように格子状に配置されている。これにより、スペーサ9上に接着剤を介してファブリペロー干渉フィルタ10Eを固定する場合に、接着剤の光透過領域10aへの流れ込みを抑制することができる。特に、第5変形例では、各分離領域64Eの端部が基板21の辺部に至っているので、接着剤が分離領域64E内で広がり易く、接着剤の光透過領域10aへの流れ込みを効果的に抑制することができる。
また、上記実施形態において、分離領域64は、第2層構造体16の少なくとも一部を分離していればよい。また、例えば、分離領域64における基板21側の端部は、反射防止層51に至らずに第3積層体52の内部に位置していてもよいし、第2表面21bに至っていてもよい。また、基板21は、多角形板状であればよく、例えば五角形板状であってもよい。また、上記第2及び第3変形例において、分離領域64B,64Cは、第3積層体52、第2中間層53及び第4積層体54に渡るように形成されていてもよい。この場合、分離領域64B,64Cにおける基板21とは反対側の端部は、第4積層体54の内部に位置する。また、分離領域64B,64Cは、第2中間層53のみに形成されていてもよいし、第3積層体52のみに形成されていてもよいし、或いは、第4積層体54のみに形成されていてもよい。
また、上記実施形態において、第2表面21bに垂直な方向から見た場合に、分離領域64は次の通りに構成されてもよい。分離領域64は、少なくとも1つ形成されていればよく、例えば、ラインAに対して線対称となるように一対配置されていてもよい。分離領域64は、ラインA及びラインBの少なくとも一方に対して非線対称となるように配置されていてもよい。また、分離領域64の一端が基板21の一辺に至り、分離領域64の他端が基板21の他辺に至っていてもよい。また、分離領域64の端部は、基板21の各辺に至らずに基板21の内側に位置していてもよい。また、分離領域64は、開口50aの内側を通るように形成されていてもよい。すなわち、分離領域64は、第2層構造体16において光透過領域10aを含む領域に設けられていてもよい。この場合、分離領域64の幅を中心透過波長の1/4以下にすることで、分離領域64による光透過特性への影響を低減することができる。また、分離領域64同士が交差していてもよい。また、分離領域64は任意の形状であってよく、例えば、曲線状に延在していてもよい。