JP2018008614A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】乾燥路面における操縦安定性を向上しながら、タイヤ重量および転がり抵抗を充分に低く維持することを可能にした空気入りタイヤを提供する。【解決手段】車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の車両内側における折り返し部4bの巻き上げ高さH1とカーカス層4の車両外側における折り返し部4bの巻き上げ高さH2とを異ならせて、これら巻き上げ高さH1およびH2がH1<H2の関係を満たすようにし、カーカス層4とインナーライナー層9との層間であってトレッド部1のセンター領域を除くタイヤ幅方向両側の領域のそれぞれに部分タイゴム層10を選択的に配置する。【選択図】図1
Description
本発明は、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、乾燥路面における操縦安定性を向上しながら、タイヤ重量および転がり抵抗を充分に低く維持することを可能にした空気入りタイヤに関する。
近年、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、車両に装着した際に車両に対して内側となる車両内側と車両に対して外側になる車両外側とでタイヤの構造を異ならせて所望のタイヤ性能を高めることが行われている(例えば、特許文献1を参照)。このように車両内側と車両外側とで構造を非対称に構成したタイヤでは、車両外側のサイドウォール部の曲げ剛性が高いほどコーナリングパワーを向上することができるため、例えば、車両外側のカーカス層の巻き上げ高さを高くすることで、乾燥路面における操縦安定性の向上を図ることができる。
しかしながら、カーカス層の巻き上げ高さが大きくなるほどカーカス層の使用量が増えて、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出るため、上述のようにカーカス層の巻き上げ高さを高くして操縦安定性の向上を図ることには限度があり、必ずしも充分な効果が得られないという問題があった。そのため、車両外側のカーカス層の巻き上げ高さを高くして操縦安定性の向上を図るにあたって、タイヤ重量および転がり抵抗を維持するための更なる改善が求められている。
本発明の目的は、乾燥路面における操縦安定性を向上しながら、タイヤ重量および転がり抵抗を充分に低く維持することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における該カーカス層の外周側に配置されたベルト層と、前記カーカス層に沿ってタイヤ内面に配置されたインナーライナー層とを有し、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、車両に装着した際に車両に対して内側となる側を車両内側とし、車両に装着した際に車両に対して外側となる側を車両外側としたとき、前記カーカス層の車両内側における折り返し部の巻き上げ高さH1と前記カーカス層の車両外側における折り返し部の巻き上げ高さH2とが異なっており、これら巻き上げ高さH1およびH2がH1<H2の関係を満たし、前記カーカス層と前記インナーライナー層との層間であって前記トレッド部のセンター領域を除くタイヤ幅方向両側の領域のそれぞれに部分タイゴム層が選択的に配置されたことを特徴とする。
本発明の空気入りタイヤでは、車両外側のカーカス折り返し部の巻き上げ高さH2が車両内側のカーカス折り返し部の巻き上げ高さH1よりも大きくなっているので車両外側のサイドウォール部の剛性を高めることができる。その結果、車両外側のサイドウォール部におけるコーナリングパワーを増大することができ、乾燥路面における操縦安定性を向上することができる。このとき、巻き上げ高さH2が大きい分カーカス層の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗への影響が懸念されるが、タイゴム層としてカーカス層とインナーライナー層との層間の全幅を覆うフルタイゴム層ではなく部分タイゴム層を採用してタイヤ重量を軽減し、転がり抵抗を低減しているので、巻き上げ高さH2が大きくカーカス層の使用量が増大してもタイヤ重量や転がり抵抗を良好に維持することができる。
本発明においては、巻き上げ高さH1およびH2の差が5mm〜30mmであることが好ましい。このように巻き上げ高さH1,H2の差を設定することで、タイヤ重量や転がり抵抗を悪化させることなく、車両外側のサイドウォール部の剛性を充分かつ適度に高めることができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。
本発明においては、部分タイゴム層のタイヤ赤道側の端部がベルト層のタイヤ幅方向最外側の端部からタイヤ幅方向内側に向かって0mm〜15mmの範囲に配置されていることが好ましい。このように部分タイゴム層のタイヤ赤道側の端部の位置を設定することで、カーカス層とインナーライナー層との層間の全幅を覆わない部分タイゴム層であってもタイゴム層としての機能(カーカスコードの喰い込み防止)を確実かつ高度に発揮することができ、タイヤ重量および転がり抵抗を低減するには有利になる。
本発明においては、車両内側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx1と車両外側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx2とが異なり、これらペリフェリ長さx1およびx2がx1<x2の関係を満たし、これらペリフェリ長さx1およびx2の差が5mm〜30mmであることが好ましい。このように車両外側の部分タイゴム層のペリフェリ長さを大きくすることで、部分タイゴム層によっても車両外側のサイドウォール部の剛性を高めることができ、乾燥路面における操縦安定性を高めるには有利になる。このとき、ペリフェリ長さx1,x2の差を適度な範囲に設定しているので、タイヤ重量および転がり抵抗についても良好に維持することができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。尚、本発明において「ペリフェリ長さ」とは、タイヤ子午線断面において、各タイヤ構成要素(部分タイゴム層)の延長方向に沿って測定される長さである。
このとき、車両外側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx2が30mm〜120mmであり、車両外側の部分タイゴム層と車両外側の折り返し部とが重複し、その重複量D2が5mm〜20mmであることが好ましい。このように車両外側において部分タイゴム層と折り返し部とを重複させることで車両外側のサイドウォール部の剛性を更に高めることができる。また、ペリフェリ長さx2と重複量D2とを適度な範囲に設定しているのでタイヤ重量および転がり抵抗については良好に維持することができる。
本発明においては、車両内側の部分タイゴム層のゴム厚さt1と車両外側の部分タイゴム層のゴム厚さt2とが異なり、これらゴム厚さt1およびt2がt1<t2の関係を満たし、ゴム厚さt2がゴム厚さt1の120%〜200%であることが好ましい。このように車両外側の部分タイゴム層のゴム厚さを大きくすることで、部分タイゴム層によって車両外側のサイドウォール部の剛性の更なる向上を図ることができ、乾燥路面における操縦安定性を高めるには有利になる。このとき、ゴム厚さt1に対するゴム厚さt2の比率を適度な範囲に設定しているので、タイヤ重量および転がり抵抗についても良好に維持することができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。尚、本発明において「ゴム厚さ」とは、子午線断面において、各部分タイゴム層の断面積を各部分タイゴム層のペリフェリ長さで除して得た平均厚さである。
本発明においては、部分タイゴム層の厚さが0.1mm〜1.3mmであることが好ましい。このように部分タイゴム層の厚さを設定することで、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響を及ぼさずに部分タイゴム層による剛性向上の効果を充分に得ることができる。
本発明においては、車両内側の部分タイゴム層のゴム硬度h1と車両外側の部分タイゴム層のゴム硬度h2とが異なり、これらゴム硬度h1およびh2がh1<h2の関係を満たし、ゴム硬度h2がゴム硬度h1の105%〜150%であることが好ましい。このように車両外側の部分タイゴム層のゴム硬度を大きくすることで、部分タイゴム層によって車両外側のサイドウォール部の剛性の更なる向上を図ることができ、乾燥路面における操縦安定性を高めるには有利になる。このとき、ゴム硬度h1に対するゴム硬度h2の比率を適度な範囲に設定しているので、タイヤ重量および転がり抵抗についても良好に維持することができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。尚、本発明における「ゴムの硬度」とは、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度20℃で測定された硬さ(所謂、JIS‐A硬度)である。
本発明においては、部分タイゴム層を構成するゴムの硬度が50〜90であることが好ましい。このように部分タイゴム層の硬度を設定することで、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響を及ぼさずに部分タイゴム層による剛性向上の効果を充分に得ることができる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、図1において、CLはタイヤ赤道を示す。この空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定されている。具体的には、図のIN側が車両に装着する際に車両に対して内側にするように指定された側(以下、車両内側という)であり、図のOUT側が車両に装着する際に車両に対して外側にするように指定された側(以下、車両外側という)である。
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部4aと折り返し部4bとにより包み込まれている。カーカス層4の折り返し部4bについて、車両内側の折り返し部4bの巻き上げ高さをH1とし、車両外側の折り返し部4bの巻き上げ高さをH2としたとき、これら巻き上げ高さH1,H2は互いに異なっており、これら巻き上げ高さH1およびH2はH1<H2の関係を満たしている。即ち、車両外側の折り返し部4bの巻き上げ高さH2が車両内側の折り返し部4bの巻き上げ高さH1よりも大きくなっている。
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8(図1の例ではベルト層7の両端部をそれぞれ覆う一対のベルト補強層8)が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。タイヤ内面にはインナーライナー層9が設けられている。このインナーライナー層9は空気透過防止性能を有するブチルゴムを主体とするゴム組成物で構成され、タイヤ内に充填された空気がタイヤ外に透過することを防いでいる。
インナーライナー層9とカーカス層4との間には部分タイゴム層10(車両内側の部分タイゴム層11、車両外側の部分タイゴム層12)が配置されている。インナーライナー層9とカーカス層4との間に配置されるタイゴム層とは、タイヤ製造時に未加硫の空気入りタイヤをインフレートする際にカーカスコードがインナーライナー層9に喰い込むことを防止するための層であり、製造後のタイヤにおいては空気透過防止性や乾燥路面における操縦安定性に寄与するものであり、従来はカーカス層4とインナーライナー層9との層間の全域を覆うように設けられるもの(フルタイゴム層)であったが、本発明では、部分タイゴム層10として、トレッド部1のセンター領域とビード部3とを除く領域に選択的に設けられる。即ち、図1に示すように、タイヤ赤道CLのタイヤ幅方向両側において、トレッド部1のショルダー領域とサイドウォール部2とからなる領域内にそれぞれ部分タイゴム層10が設けられている。
このように、車両外側のカーカス層4の折り返し部4bの巻き上げ高さH2が車両内側のカーカス層の折り返し部4bの巻き上げ高さH1よりも大きくなっているので、車両外側のサイドウォール部2の剛性を高めることができる。その結果、車両外側のサイドウォール部2におけるコーナリングパワーを増大することができ、乾燥路面における操縦安定性を向上することができる。このとき、巻き上げ高さH2が大きい分カーカス層4の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗への影響が懸念されるが、タイゴム層としてフルタイゴム層ではなく部分タイゴム層10を採用してタイヤ重量を軽減し、転がり抵抗を低減しているので、巻き上げ高さH2が大きくなってカーカス層4の使用量が増大してもタイヤ重量や転がり抵抗を良好に維持することができる。
このとき、巻き上げ高さH1,H2が一致していたり、大小関係が逆転してH1>H2の関係になっていると、車両外側のサイドウォール部2の剛性を高めることができず、乾燥路面における操縦安定性を向上する効果が得られない。
巻き上げ高さH1,H2をH1<H2の関係に設定するにあたって、巻き上げ高さH1と巻き上げ高さH2との差を好ましくは5mm〜30mm、より好ましくは10mm〜20mmに設定するとよい。このように巻き上げ高さH1,H2の差を設定することで、タイヤ重量や転がり抵抗を悪化させることなく、車両外側のサイドウォール部の剛性を充分かつ適度に高めることができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。このとき、巻き上げ高さH1,H2の差が5mmよりも小さいと、車両外側のサイドウォール部2の剛性を充分に向上することができず、操縦安定性を高める効果が限定的になる。巻き上げ高さH1,H2の差が30mmよりも大きいと、カーカス層4の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。尚、巻上げ高さH1,H2は上述の関係や差を満たしていれば特に限定されないが、巻き上げ高さH1はタイヤ断面高さSHの例えば30%〜60%に設定するとよく、巻き上げ高さH2はタイヤ断面高さSHの例えば50%〜90%に設定するとよい。
部分タイゴム層10は車両内側と車両外側のそれぞれにおいてトレッド部1のショルダー領域とサイドウォール部2とからなる領域内に配置されるが、タイヤ製造時におけるカーカスコードのインナーライナー層9への喰い込みを確実に防止するために、部分タイゴム層10のタイヤ赤道CL側の端部がベルト層7のタイヤ幅方向最外側の端部からタイヤ幅方向内側に向かって好ましくは0mm〜15mm、より好ましくは5mm〜10mmの範囲に配置されているとよい。言い換えれば、部分タイゴム層10のタイヤ赤道CL側の端部がベルト層7のタイヤ幅方向最外側の端部位置またはそのタイヤ幅方向内側に位置して、部分タイゴム層10のタイヤ赤道CL側の端部とベルト層7のタイヤ幅方向最外側の端部とのタイヤ幅方向の距離L1,L2がそれぞれ好ましくは0mm〜15mm、より好ましくは5mm〜10mmであるとよい。このように部分タイゴム層10のタイヤ赤道CL側の端部の位置を設定することで、カーカス層4とインナーライナー層9との層間の全幅を覆わない部分タイゴム層10であってもタイゴム層としての機能(カーカスコードの喰い込み防止)を確実かつ良好に発揮することができ、タイヤ重量および転がり抵抗を低減するには有利になる。このとき、部分タイゴム層10のタイヤ赤道CL側の端部がベルト層7のタイヤ幅方向最外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置していると、カーカスコードの喰い込み防止の効果が充分に得られなくなる。距離L1,L2が15mmよりも大きいと、部分タイゴム層10の使用量が増大するためタイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
車両内側の部分タイゴム層11および車両外側の部分タイゴム層12の構造はタイヤ赤道CLに対して線対称であってもよいが、車両内側の部分タイゴム層11のペリフェリ長さx1と車両外側の部分タイゴム層12のペリフェリ長さx2とが互いに異なり、これらペリフェリ長さx1およびx2がx1<x2の関係を満たしていることが好ましい。このように車両外側の部分タイゴム層12のペリフェリ長さx2を大きくすることで、部分タイゴム層10によっても車両外側のサイドウォール部2の剛性を高めることができ、乾燥路面における操縦安定性を高めるには有利になる。このとき、ペリフェリ長さx1とペリフェリ長さx2との差は好ましくは5mm〜30mm、より好ましくは15mm〜25mmであるとよい。このようにペリフェリ長さx1,x2の差を適度な範囲に設定することで、タイヤ重量および転がり抵抗についても良好に維持することができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。このとき、ペリフェリ長さx1,x2の差が5mmよりも小さいと、車両外側のサイドウォール部2の剛性を充分に向上することができず、操縦安定性を高める効果が限定的になる。ペリフェリ長さx1,x2の差が30mmよりも大きいと、部分タイゴム層10(特に車両外側の部分タイゴム層12)の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
このように車両内側の部分タイゴム層11と車両外側の部分タイゴム層12とを非対称にしたとき、車両外側の部分タイゴム層12のペリフェリ長さx2を好ましくは30mm〜120mm、より好ましくは60mm〜100mmに設定し、車両外側の部分タイゴム層12と車両外側のカーカス層4の折り返し部4bとを重複させて、その重複量D2を好ましくは5mm〜20mm、より好ましくは8mm〜12mmにするとよい。このように車両外側において部分タイゴム層10とカーカス層4の折り返し部4bとを重複させることで車両外側のサイドウォール部2の剛性を更に高めることができる。また、ペリフェリ長さx2と重複量D2とを適度な範囲に設定しているのでタイヤ重量および転がり抵抗については良好に維持することができる。このとき、ペリフェリ長さx2が30mmよりも小さいと、車両外側の部分タイゴム層12自体が小さくなるため、タイゴム層としての機能(カーカスコードの喰い込み防止)が充分に得られず、また部分タイゴム層10による剛性向上効果も限定的になる。ペリフェリ長さx2が120mmよりも大きいと、車両外側の部分タイゴム層12の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。重複量D2が5mmよりも小さいと、部分タイゴム層10とカーカス層4の折り返し部4bとを重複させることによる剛性向上の効果が充分に得られなくなる。重複量D2が20mmよりも大きいと、部分タイゴム層10および/またはカーカス層4の折り返し部4bの使用量が大きくなるので、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
車両内側の部分タイゴム層11のペリフェリ長さx1は特に限定されないが、少なくともタイゴム層としての機能(カーカスコードの喰い込み防止)を充分に発揮するために、例えば30mm〜70に設定するとよい。車両内側においては部分タイゴム層10とカーカス層4の折り返し部4bとが重複している必要はなく、寧ろ車両内側と車両外側のサイドウォール部2の剛性バランスを鑑みて、図示のように、部分タイゴム層10のタイヤ径方向内側端部とカーカス層4の折り返し部4bのタイヤ径方向外側端部とが離間しているとよい。部分タイゴム層10のタイヤ径方向内側端部とカーカス層4の折り返し部4bのタイヤ径方向外側端部との離間距離をD1とすると、離間距離D1は好ましくは5mm〜20mmであるとよい。尚、車両内側において部分タイゴム層10とカーカス層4の折り返し部4bとが重複する場合には、その重複量が車両外側における重複量D2よりも小さいことが好ましい。
車両内側の部分タイゴム層11と車両外側の部分タイゴム層12とを非対称にして、車両外側のサイドウォール部2の剛性を高めるにあたって、上述のように部分タイゴム層10のペリフェリ長さx1,x2を調整する代わりに、車両内側の部分タイゴム層11のゴム厚さt1と車両外側の部分タイゴム層12のゴム厚さt2とを異ならせて、これらゴム厚さt1およびt2がt1<t2の関係を満たすようにしてもよい。このように車両外側の部分タイゴム層のゴム厚さを大きくすることでも、部分タイゴム層によって車両外側のサイドウォール部の剛性の更なる向上を図ることができ、乾燥路面における操縦安定性を高めるには有利になる。このとき、ゴム厚さt2はゴム厚さt1の好ましくは120%〜200%、より好ましくは140%〜180%であるとよい。このようにゴム厚さt1に対するゴム厚さt2の比率を適度な範囲に設定することで、タイヤ重量および転がり抵抗についても良好に維持することができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。このとき、ゴム厚さt2がゴム厚さt1の120%よりも小さいと、車両外側のサイドウォール部2の剛性を充分に向上することができず、操縦安定性を高める効果が限定的になる。ゴム厚さt2がゴム厚さt1の200%よりも大きいと、部分タイゴム層10(特に車両外側の部分タイゴム層12)の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
部分タイゴム層10の厚さt1,t2は、上記のように車両内側と車両外側とで異ならせる場合であっても異ならせない場合であっても、少なくともタイゴム層としての機能(カーカスコードの喰い込み防止)を充分に発揮するために、共に0.1mm〜1.3mmであることが好ましい。特に、上記のように車両内側の部分タイゴム層11のゴム厚さt1と車両外側の部分タイゴム層12のゴム厚さt2とを異ならせる場合には、t1を0.3mm〜0.7mm、t2を0.7mm〜1.1mmに設定することが好ましい。このように部分タイゴム層10の厚さを設定することで、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響を及ぼさずに部分タイゴム層10による剛性向上の効果を充分に得ることができる。このとき、部分タイゴム層10の厚さが0.1mmよりも小さいと、部分タイゴム層10による補強効果が充分に得られなくなる。部分タイゴム層10の厚さが1.3mmよりも大きいと、部分タイゴム層10(特に車両外側の部分タイゴム層12)の使用量が増大するため、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
車両内側の部分タイゴム層11と車両外側の部分タイゴム層12とを非対称にして、車両外側のサイドウォール部2の剛性を高めるにあたって、上述のように部分タイゴム層10のペリフェリ長さx1,x2やゴム厚さt1,t2を調整する代わりに、車両内側の部分タイゴム層11のゴム硬度h1と車両外側の部分タイゴム層12のゴム硬度h2とを異ならせて、これらゴム硬度h1およびh2がh1<h2の関係を満たすようにしてもよい。このように車両外側の部分タイゴム層のゴム硬度を大きくすることで、部分タイゴム層によって車両外側のサイドウォール部の剛性の更なる向上を図ることができ、乾燥路面における操縦安定性を高めるには有利になる。このとき、ゴム硬度h2はゴム硬度h1の好ましくは105%〜150%、より好ましくは115%〜135%であるとよい。このようにゴム硬度h1に対するゴム硬度h2の比率を適度な範囲に設定することで、タイヤ重量および転がり抵抗についても良好に維持することができ、乾燥路面における操縦安定性の向上とタイヤ重量および転がり抵抗の低減とをバランスよく両立するには有利になる。このとき、ゴム硬度h2がゴム硬度h1の105%よりも小さいと、車両外側のサイドウォール部2の剛性を充分に向上することができず、操縦安定性を高める効果が限定的になる。ゴム硬度h2がゴム硬度h1の150%よりも大きいと、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
部分タイゴム層10の硬度h1,h2は、上記のように車両内側と車両外側とで異ならせる場合であっても異ならせない場合であっても、少なくともタイゴム層としての機能(カーカスコードの喰い込み防止)を充分に発揮するために、共に50〜90であることが好ましい。特に、上記のように車両内側の部分タイゴム層11のゴム硬度h1と車両外側の部分タイゴム層12のゴム硬度h2とを異ならせる場合には、h1を55〜65、h2を70〜80に設定することが好ましい。このように部分タイゴム層10の硬度を設定することで、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響を及ぼさずに部分タイゴム層10による剛性向上の効果を充分に得ることができる。このとき、部分タイゴム層10の硬度が50よりも小さいと、部分タイゴム層10による補強効果が充分に得られなくなる。部分タイゴム層10の硬度が90よりも大きいと、タイヤ重量や転がり抵抗に悪影響が出て、これら性能を充分に維持することが難しくなる。
車両内側の部分タイゴム層11と車両外側の部分タイゴム層12とを非対称にして、車両外側のサイドウォール部2の剛性を高める構造として、上記のように、部分タイゴム層11,12のペリフェリ長さx1,x2を異ならせた構造、部分タイゴム層11,12のゴム厚さt1,t2を異ならせた構造、部分タイゴム層11,12のゴム硬度h1,h2を異ならせた構造を示したが、これら構造は互いに組み合わせることができ、組み合わせることによって車両外側のサイドウォール部2の剛性をより高めることができ、乾燥路面における操縦安定性を向上するには有利になる。
タイヤサイズが195/65R15であり、図1に示す基本構造を有し、カーカス層の折り返し部の巻き上げ高さの大小関係、タイヤ断面高さに対する車両内側の折り返し部の巻き上げ高さの比H1/SH、タイヤ断面高さに対する車両外側の折り返し部の巻き上げ高さの比H2/SH、巻き上げ高さの差H2−H1、タイゴム層の構造、車両内側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx1、車両外側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx2、ペリフェリ長さの差x2−x1、ベルト層のタイヤ幅方向最外側端部と部分タイゴム層のタイヤ赤道側端部との距離L1,L2、車両外側の折り返し部と部分タイゴム層との重複量D2、車両内側の部分タイゴム層のゴム厚さt1、車両外側の部分タイゴム層のゴム厚さt2、ゴム厚さt1に対するゴム厚さt2の比率t2/t1×100%、車両内側の部分タイゴム層のゴム硬度h1、車両外側の部分タイゴム層のゴム硬度h2、ゴム硬度h1に対するゴム硬度h2の比率h2/h1×100%をそれぞれ表1〜2のように設定した従来例1、比較例1〜2、実施例1〜22の25種類の空気入りタイヤを作製した。
尚、表1〜2の「タイゴム層の構造」の欄について、タイゴム層がフルタイゴム層である場合は「フル」、部分タイゴム層である場合は「部分」と記載した。タイゴム層がフルタイゴム層である従来例1および比較例1では、タイゴム層の車両内側の部分と車両外側の部分とが連続しているので、表1の「ペリフェリ長さx2」、「差x2−x1」、「距離L1」、「距離L2」、「重複量D2」の欄は空欄とし、フルタイゴム層全体のペリフェリ長さを参考のために「ペリフェリ長さx1」の欄に示した。
これら25種類の空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、タイヤ重量、転がり抵抗、乾燥路面における操縦安定性(操縦安定性)を評価し、その結果を表1〜2に併せて示した。
タイヤ重量
各試験タイヤの重量を測定した。評価結果は、従来例1の測定値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどタイヤ重量が小さいことを意味する。
各試験タイヤの重量を測定した。評価結果は、従来例1の測定値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどタイヤ重量が小さいことを意味する。
転がり抵抗
各試験タイヤを、リムサイズ15×6Jのホイールに組み付け、ISO28580に準拠して、ドラム径1707.6mmのドラム試験機を用い、空気圧210kPa、荷重4.82kN、速度80km/hの条件で転がり抵抗を測定した。評価結果は、従来例1の測定値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗が低いことを意味する。
各試験タイヤを、リムサイズ15×6Jのホイールに組み付け、ISO28580に準拠して、ドラム径1707.6mmのドラム試験機を用い、空気圧210kPa、荷重4.82kN、速度80km/hの条件で転がり抵抗を測定した。評価結果は、従来例1の測定値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗が低いことを意味する。
操縦安定性
各試験タイヤをリムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、空気圧を210kPaとして排気量1.5Lの試験車両に装着し、乾燥路面からなるテストコースにて、テストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどドライ操縦安定性に優れることを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、空気圧を210kPaとして排気量1.5Lの試験車両に装着し、乾燥路面からなるテストコースにて、テストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどドライ操縦安定性に優れることを意味する。
表1〜2から明らかなように、実施例1〜22はいずれも、従来例1に対して、タイヤ重量および転がり抵抗を維持・低減しながら、操縦安定性を向上した。
一方、比較例1は、車両外側の巻き上げ高さが高いため操縦安定性を向上することはできるが、タイゴム層としてフルタイゴム層が用いられているため、タイヤ重量および転がり抵抗を充分に維持することができなかった。比較例2は、車両内側の巻き上げ高さが大きいため、車両外側のサイドウォール部の剛性を高めることができず、操縦安定性を向上することができなかった。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4a 本体部
4b 折り返し部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
9 インナーライナー層
10 部分タイゴム層
11 車両内側の部分タイゴム層
12 車両外側の部分タイゴム層
CL タイヤ赤道
IN 車両内側
OUT 車両外側
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4a 本体部
4b 折り返し部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
9 インナーライナー層
10 部分タイゴム層
11 車両内側の部分タイゴム層
12 車両外側の部分タイゴム層
CL タイヤ赤道
IN 車両内側
OUT 車両外側
Claims (9)
- タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における該カーカス層の外周側に配置されたベルト層と、前記カーカス層に沿ってタイヤ内面に配置されたインナーライナー層とを有し、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
車両に装着した際に車両に対して内側となる側を車両内側とし、車両に装着した際に車両に対して外側となる側を車両外側としたとき、前記カーカス層の車両内側における折り返し部の巻き上げ高さH1と前記カーカス層の車両外側における折り返し部の巻き上げ高さH2とが異なっており、これら巻き上げ高さH1およびH2がH1<H2の関係を満たし、前記カーカス層と前記インナーライナー層との層間であって前記トレッド部のセンター領域を除くタイヤ幅方向両側の領域のそれぞれに部分タイゴム層が選択的に配置されたことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記巻き上げ高さH1およびH2の差が5mm〜30mmであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記部分タイゴム層のタイヤ赤道側の端部が前記ベルト層のタイヤ幅方向最外側の端部からタイヤ幅方向内側に向かって0mm〜15mmの範囲に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 車両内側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx1と車両外側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx2とが異なり、これらペリフェリ長さx1およびx2がx1<x2の関係を満たし、これらペリフェリ長さx1およびx2の差が5mm〜30mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記車両外側の部分タイゴム層のペリフェリ長さx2が30mm〜120mmであり、前記車両外側の部分タイゴム層と前記車両外側の折り返し部とが重複し、その重複量D2が5mm〜20mmであることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
- 車両内側の部分タイゴム層のゴム厚さt1と車両外側の部分タイゴム層のゴム厚さt2とが異なり、これらゴム厚さt1およびt2がt1<t2の関係を満たし、ゴム厚さt2がゴム厚さt1の120%〜200%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記部分タイゴム層の厚さが0.1mm〜1.3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 車両内側の部分タイゴム層のゴム硬度h1と車両外側の部分タイゴム層のゴム硬度h2とが異なり、これらゴム硬度h1およびh2がh1<h2の関係を満たし、ゴム硬度h2がゴム硬度h1の105%〜150%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記部分タイゴム層を構成するゴムの硬度が50〜90であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016139178A JP2018008614A (ja) | 2016-07-14 | 2016-07-14 | 空気入りタイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016139178A JP2018008614A (ja) | 2016-07-14 | 2016-07-14 | 空気入りタイヤ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018008614A true JP2018008614A (ja) | 2018-01-18 |
Family
ID=60993626
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016139178A Pending JP2018008614A (ja) | 2016-07-14 | 2016-07-14 | 空気入りタイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018008614A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023276186A1 (ja) * | 2021-06-30 | 2023-01-05 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ |
-
2016
- 2016-07-14 JP JP2016139178A patent/JP2018008614A/ja active Pending
Cited By (1)
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WO2023276186A1 (ja) * | 2021-06-30 | 2023-01-05 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ |
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