JP2018008335A - 連続体ロボット、その運動学の補正方法、および連続体ロボットの制御方法 - Google Patents
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Abstract
Description
実施例1では、湾曲可能部である湾曲区間を区分的に曲率を一定と仮定する運動学に加えて、複数の機構的要因により生ずる隣接湾曲区間の間の連成のモデルを導入して前記運動学を補正する方法を示す。そして、それによる連続体ロボットの駆動・制御を向上させる手法を示す。連続体ロボットの運動学は、湾曲区間の目標姿勢のデータを与えたときに、連続体ロボットの機構に基づいて該データから導かれるアクチュエータ(駆動部)の駆動量により如何なる湾曲区間の姿勢が実現されるかを呈示する。
1.1.1)運動学の導出
図1に、本実施例で用いる6つの湾曲区間101〜106を含む連続体ロボット100の概略図を示す。連続体ロボットは各湾曲区間の遠位端121〜126に駆動用のワイヤ111〜116がそれぞれ接続され、それらのワイヤを、ロボット基台部140に設置されたアクチュエータ131〜136でそれぞれ押し引きすることにより湾曲区間の姿勢が制御される。図1に示す例では、駆動用ワイヤが湾曲区間の遠位端に接続される位置が、中心軸を挟んで交互に反対側に移っているが、ワイヤの湾曲区間への接続位置はこの形態に限らない。ワイヤの押し引きにより湾曲区間の姿勢が制御できれば接続箇所の位置は問わない。基台部140はz軸方向に自由度を持ち、その移動変位が検出可能である。図2に第1湾曲区間101を取り上げ、湾曲区間の筐体とワイヤ111からなる構造の模式図を示す。図1と図2において、筐体の中心軸は破線ないし一点鎖線で示す。連続体ロボットは、不図示の制御部をさらに有し、制御部は、目標姿勢が入力されると、各湾曲区間によりその目標姿勢を達成するように、アクチュエータによるワイヤの駆動を制御する信号を出力する。つまり、制御部は、後述する運動学に基づいて第1および第2のワイヤの駆動を制御する。目標姿勢の入力は、ユーザが行っても良いし、不図示の目標姿勢入力部が、あらかじめ記憶されたプログラムに従って行っても良い。目標姿勢は、湾曲区間ごとの角度として入力されてもよい。制御部は、たとえばコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行するものであってもよいし、専用に設けられた回路(FPGAやASIC)として実現されても良い。
1.筐体およびワイヤは紙面内のみに変形する。
2.各湾曲区間において、筐体およびワイヤは曲率一定に変形する。
3.筐体およびワイヤのねじり変形は考慮しない。
4.筐体およびワイヤは長手方向に変形しない。
5.筐体にワイヤガイドが設けられ、筐体中心軸の円弧とワイヤによって作られる円弧との中心が常に等しい。
6.筐体とワイヤ間の摩擦は考慮しない。
前項では、仮定1〜5をおき運動学の導出を行ったが、ロボットの曲げ方向には柔軟で長手方向には高剛性となる筐体およびワイヤは構造設計が難しく、仮定3、4は厳密には成立しにくい。そのため、ワイヤ駆動変位に対する湾曲角度の上記関係式(6)が成立せず、制御後の実際の湾曲角度は目標角度から誤差が生じてしまう。さらに、この影響は、ワイヤを駆動する湾曲区間のみにとどまらず、他の区間の湾曲角度に誤差を生じさせ、連成問題の原因となる。そこで、本実施例では、湾曲区間の連成に対する以下の仮定を加え、運動学誤差を補正する。
前項で示した運動学補正係数を解析的に求めることは難しい。それは、湾曲角度の連成は、長手方向の圧縮・引張力により筐体およびワイヤが変形することにより生ずるが、その力は湾曲区間によってワイヤの通る本数が異なったり、筐体の剛性が湾曲角度により非線形に変動したりするためである。さらには、上記仮定1、2、5、6についても、実際は完全には成り立たず、湾曲角度の誤差の原因となる。そこで、本実施例では実験的に湾曲形状を測定し、測定値と運動学による値との誤差から、最適化の手法である最急降下法を用いて補正係数γを求める。このとき、補正係数γの最適化に好適な湾曲形状を一つ選ぶのは不可能であるため、本実施例ではa通り(aは複数)の代表形状を用いてh回(hは複数)の反復による最適化を行う。これを拡張最急降下法とよぶ。
運動学補正係数は、ロボットの運動学を補正し、その湾曲形状を算出するのみではなく、湾曲形状の制御に適用可能である。第n湾曲区間に対する目標角度θrefnからなる目標湾曲形状ベクトルθrefを下記の式(27)とし、第n湾曲区間に対する補正目標角度θmodnからなる補正湾曲形状ベクトルθmodを下記の式(28)と定義する。
本節では、第2、第3節で示した運動学の補正係数γを用いる運動学補正および湾曲形状制御の有効性を示す。実験で用いるロボットのパラメタは、アーム筐体の長さl1〜l6=0.010m、ロボットの湾曲区間数e=6である。また、第n湾曲区間のアーム筐体の中心軸からワイヤまでの変位はr1=r3=1.32*10-3m、r2=r4=-1.32*10-3m、r5=1.4*10-3m、r6=-1.4*10-3mである。実験では、図7に示すように、連続体ロボット100の湾曲区間の遠位端にマーカ201〜206を設け、各湾曲区間の遠位端の変位(下記の式(30)で表す)を画像撮影装置210によって取得する。拡張最急降下法では、評価点数c=60とする。そのため、湾曲区間の遠位端以外の評価点は、湾曲区間が一定曲率であると仮定し補間により求める。代表湾曲姿勢として、下記の式(31)、式(32)のような、全ての湾曲区間が一様に湾曲する形状と2つの変曲点を持つ形状とのk=2通りの姿勢を選ぶ。
実施例2では、本発明を先頭追従制御へ適用する。先頭追従制御とは、図12に示すように、最遠位端の湾曲区間が通る経路と同じ経路を後続の湾曲区間が通るように制御することである。これにより、連続体ロボットは狭小な空間をすり抜けるように進むことができる。
先頭追従制御は、予め経路を定められていることは必須ではなく、最遠位端の湾曲角度を後続の湾曲区間に時間差をもって連続的に伝播させれば良い。しかし、図12に破線で示すように経路の全体が予め設定されているときは、基台部のz方向の変位に応じて湾曲形状を最適化することで制御が可能である。これにより、連続体ロボットでは、湾曲角度を伝播させる先頭追従制御よりも経路誤差を少なくすることができる。以下に手順を示す。
先頭追従制御では、取りうる経路は様々であるが、ただ一つの経路に対しても基台の進行に伴い目標湾曲形状が変動する。その中から好適な一つの湾曲形状を代表形状として選ぶのは難しく、また、全てを代表形状とすると最適化にかかる時間が膨大となる。そこで、先頭追従制御においても実施例1と同様に、a通りの代表形状を用いる拡張最急降下法により運動学補正係数γを最適化する。
先頭追従制御では、2.1節で求めた湾曲目標角度行列Θrefから、基台変位zbに応じて、目標湾曲形状ベクトルθrefζを取り出し、実施例1と同様に補正行列Γの逆行列を用い、補正湾曲形状ベクトルを求め、ワイヤ駆動変位を求めればよい。また、先頭追従制御においても、湾曲形状の追加目標ベクトルθcomを目標湾曲形状ベクトルに加算することにより、実時間の操作による湾曲形状の制御にも適用することができる。制御系のブロック線図を図14に示す。
2.4.1)運動学補正評価
拡張最急降下法による運動学補正アルゴリズムの先頭追従制御に対する有効性を検証する。経路は、C字状とS字状の経路を対象とし、図15(a)、(b)に破線で示す。湾曲区間数e=6とし、下記の式(35)の最適化により求められる、基台変位に対する全ての湾曲形状を灰色の線で重ねて表示している。灰色の領域と破線との偏差が機構的誤差となり、経路の入り口である座標(0,nl)付近で最大の機構的誤差が現れることが分かる。拡張最急降下法に用いる代表形状は実施例1と同様に式(31)、式(32)の二通りを用いる。そのため、補正係数ベクトルγは実施例1と同様である。
次に、2.3)節で示した補正行列Γを用いる先頭追従制御系(以下、提案先頭追従制御系と略す)による応答を示す。経路は前項と同様に、図15(a)、(b)に破線で示すC字状とS字状の経路とする。図17の実線、破線は次の通りである。実線は、図15(a)の経路に対して提案先頭追従制御系で算出される、基台変位zbに対応する各湾曲区間の補正目標角度θmod1,...,mod6を示す。破線は、補正を行わない制御系(以下、従来先頭追従制御系と略す)により得られる目標角度θref1,...,ref6を示す。例えば、第3湾曲区間では、zb=0.02mで第4湾曲区間が経路侵入により湾曲を開始すると、第3湾曲区間はその湾曲に連成し正方向に湾曲するため従来先頭追従制御系では経路誤差が生ずる。この誤差を低減するため、提案先頭追従制御系はzb=0.03m〜0.04において第3湾曲区間の湾曲角度が負になるように目標角度を補正していることが分かる。
実施例2では、経路は変曲点を持っていたが、曲率は一定としていた。本実施例では、曲率を一定としない経路に対する先頭追従制御を行う。上記実施例で用いる隣接区間連成モデルは、補正係数は湾曲角度の変動に対して一定であるが、実際は湾曲区間の連成は湾曲角度に応じて非線形に変動し、その連成の影響は湾曲角度の増加に対して飽和する傾向にある。そのため、曲率が大きい箇所がある経路では、補正が過剰となってしまうことがある。そこで、本実施例では、図20に示すように、運動学補正に用いる行列の逆行列Γ-1に追加ゲインGmを乗ずる制御系を示す。
Claims (16)
- 湾曲可能に構成された第1の湾曲可能部と、
前記第1の湾曲可能部と隣接して設けられるとともに、湾曲可能に構成された少なくとも1つの第2の湾曲可能部と、
前記第1の湾曲可能部に接続された第1のワイヤと、
前記第2の湾曲可能部に接続された第2のワイヤと、
前記第1および第2のワイヤの駆動を制御することにより、前記第1および第2の湾曲可能部の湾曲を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1の湾曲可能部を湾曲させるべく前記第1のワイヤを駆動することに伴う前記第2の湾曲可能部の湾曲および前記第2の湾曲可能部を湾曲させるべく前記第2のワイヤを駆動することに伴う前記第1の湾曲可能部の湾曲を考慮した運動学に基づいて、前記第1および第2のワイヤの駆動を制御する、
ことを特徴とする連続体ロボット。 - 湾曲可能に構成された第1の湾曲可能部と、
前記第1の湾曲可能部と隣接して設けられるとともに、湾曲可能に構成された少なくとも1つの第2の湾曲可能部と、
前記第1の湾曲可能部に接続された第1のワイヤと、
前記第2の湾曲可能部に接続された第2のワイヤと、
前記第1および第2のワイヤの駆動を制御することにより、前記第1および第2の湾曲可能部の湾曲を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1の湾曲可能部の湾曲目標値を、前記第1および第2の湾曲可能部のそれぞれの湾曲量の和によって達成するように前記第1および第2のワイヤの駆動を制御する、
ことを特徴とする連続体ロボット。 - 前記制御部は、先頭追従制御を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の連続体ロボット。 - 湾曲可能に構成された第1の湾曲可能部と、前記第1の湾曲可能部と隣接して設けられるとともに、湾曲可能に構成された少なくとも1つの第2の湾曲可能部と、前記第1の湾曲可能部に接続された第1のワイヤと、前記第2の湾曲可能部に接続された第2のワイヤと、を含む連続体ロボットの運動学の補正方法であって
前記第1の湾曲可能部を湾曲させるべく前記第1のワイヤを駆動することに伴う前記第2の湾曲可能部の湾曲および前記第2の湾曲可能部を湾曲させるべく前記第2のワイヤを駆動することに伴う前記第1の湾曲可能部の湾曲を考慮したモデルを用いて運動学を補正する、
ことを特徴とする補正方法。 - 湾曲可能に構成された第1の湾曲可能部と、前記第1の湾曲可能部と隣接して設けられるとともに、湾曲可能に構成された少なくとも1つの第2の湾曲可能部と、前記第1の湾曲可能部に接続された第1のワイヤと、前記第2の湾曲可能部に接続された第2のワイヤと、を含む連続体ロボットの運動学の補正方法であって
前記第1の湾曲可能部の湾曲目標値を、前記第1および第2の湾曲可能部のそれぞれの湾曲量の和によって達成するように前記第1および第2のワイヤの駆動を制御するモデルを用いて運動学を補正する、
ことを特徴とする補正方法。 - 前記湾曲可能部の目標姿勢のデータと、前記連続体ロボットの機構に基づいて前記データから導出される前記第1および第2のワイヤの駆動変位による前記湾曲可能部の姿勢と、の関係を呈示する運動学を補正するための補正値を、前記連続体ロボットに所定の姿勢を取らせるときの前記湾曲可能部の目標姿勢のデータと前記湾曲可能部の実際の姿勢に係わる測定値との誤差を減少すべく最適化手法を用いるアルゴリズムにより求める、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の補正方法。 - 前記連続体ロボットの第一の所定の代表姿勢のデータに基づく前記ワイヤの駆動変位により制御された前記湾曲可能部の測定変位を取得し、前記測定変位と前記第一の所定の代表姿勢のデータと補正係数の初期値とを用いて、最急降下法により前記第一の所定の代表姿勢に対する補正係数を求め、この手法を、第二の所定の代表姿勢に対しても同様に用いて前記第二の所定の代表姿勢に対する補正係数を求めることで、複数の所定の代表姿勢に対してそれぞれ補正係数を取得して、前記補正値を求める、
ことを特徴とする請求項6に記載の補正方法。 - 前記第二の所定の代表姿勢に対する最急降下法の補正係数の初期値に、前記第一の所定の代表姿勢に対して得られた補正係数を用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載の補正方法。 - 前記最適化手法を反復的に用い、各回の補正係数の初期値に、一つ前の回で得られる補正係数を用いる、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の補正方法。 - 全ての前記補正係数の平均値を求め、これを前記補正値とする、
ことを特徴とする請求項7から9の何れか1項に記載の補正方法。 - 第iの湾曲可能部の湾曲相対角度に係数γp[i]を乗じた角度を、隣接する第i-1の湾曲可能部の湾曲相対角度に加算し、前記第iの湾曲可能部の湾曲相対角度に別の係数γd[i]を乗じた角度を、隣接する第i+1の湾曲可能部の湾曲相対角度に加算し、前記第iの湾曲可能部の湾曲相対角度からは、これに(γp[i]+γd[i])を乗じた角度を減算するモデルを用いて前記補正値を求める(ただし、iは2以上で、前記湾曲可能部の数より1少ない数以下)、
ことを特徴とする請求項6から10の何れか1項に記載の補正方法。 - 前記補正値は補正行列である、
ことを特徴とする請求項11に記載の補正方法。 - 前記補正行列では、
i行i列を1-γd[i]-γp[i]とし、i行i-1列をγd[i-1]とし、i行i+1列をγp[i+1]とする、
ことを特徴とする請求項12に記載の補正方法。 - 湾曲可能に構成された第1の湾曲可能部と、前記第1の湾曲可能部と隣接して設けられるとともに、湾曲可能に構成された少なくとも1つの第2の湾曲可能部と、前記第1の湾曲可能部に接続された第1のワイヤと、前記第2の湾曲可能部に接続された第2のワイヤと、を含む連続体ロボットの制御方法であって
請求項6に記載の補正方法を利用し、前記補正値の逆値を前記湾曲可能部の目標姿勢のデータに乗じて補正された目標姿勢を求め、前記補正された目標姿勢に基づいて演算される前記ワイヤの駆動変位により前記湾曲可動部を制御する、
ことを特徴とする制御方法。 - 湾曲形状の追加目標値を前記目標姿勢のデータに加算することにより、予め設定された湾曲形状のみではなく、実時間の操作による湾曲形状の制御を行う、
ことを特徴とする請求項14に記載の制御方法。 - 前記補正値の逆値に追加ゲインを乗ずることにより、曲率を一定としない経路に対する先頭追従制御を行う、
ことを特徴とする請求項14または15に記載の制御方法。
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