JP2018006685A - インジウムターゲット部材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】母相を構成するインジウムの結晶粒径によらず成膜レートの安定性に優れたインジウムターゲット部材を提供する。【解決手段】銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなるインジウムターゲット部材であり、スパッタリングされる表面を観察したときのCu−In化合物粒子の平均粒子径が0.5〜8μmであるインジウムターゲット部材。【選択図】なし

Description

本発明はスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、より詳細にはインジウムターゲット部材及びその製造方法に関する。
インジウムは、Cu−In−Ga−Se系(CIGS系)薄膜太陽電池の光吸収層形成用のスパッタリングターゲットとして使用されている。
従来、インジウムターゲットは溶解鋳造法によって主に製造されている。溶解鋳造法によって製造されるインジウムターゲットの改良に関する先行文献はそれほど多くはないが、以下のような文献が挙げられる。
特許文献1(特開2010−024474号公報)においては、スパッタリングターゲット中の酸素含有量が多かったり、または局所的にターゲット中に酸化物や酸素量が多く存在したりすると、スパッタリング時に異常放電が起きやすいことから、バッキングプレートの外周部に堰を設けて鋳型を形成した後、加熱された鋳型にインジウム原料を投入して溶解し、酸化インジウムの皮膜を除去後、固化することでインジウムターゲットを作製している。特許文献2(特許第4837785号公報)では、鋳造されたインゴットに対して圧延を行うことで平均粒径を小さくすると、異常放電の抑制及び高いスパッタレートの両立に寄与することが記載されている。これらの文献では、純度4N又は5Nの高純度インジウムを使用することが記載されている。
また、特許文献3(特許第5254290号公報)ではインジウムへ銅を所定濃度範囲添加することによって、結晶粒径の成長が抑制されて結晶粒が小さくできる点に着目している。具体的には、インジウムと銅の合計原子数に対して0.5〜7.5at%の銅を含有し、残部インジウム及び不可避的不純物からなるインジウムターゲットであり、全体の平均結晶粒径が10mm以下、且つ、孔径50μm以上の空隙が1個/cm3以下のインジウムターゲットを提案している。特許文献3に記載の発明によれば、異常放電の原因となるターゲット内の空隙発生を防止するために溶解鋳造時の冷却速度を遅くしても、結晶粒の粗大化が抑制されるため、高いスパッタレートをもつターゲットが得られると記載されている。
また、特許文献4(特許第5074628号公報)では、インジウムターゲットはスパッタ中に表面にノジュール(以下、「突起」とも表現する)が発生し、全体がノジュールで埋め尽くされるまで成膜レートが安定しない旨が記載されている。そこで、特許文献4では、予め表面を粗化しておくことで、成膜レートが安定するまでの時間を短縮している。
一方、特許文献5(特開2012−172265号公報)には、溶解鋳造法ではなく、溶射によるインジウムターゲットの製造方法が記載されている。当該文献では、スパッタ材料のスパッタで粗くされる表面上のグレインの平均直径として測定される1mm未満(実施例では50〜500μm)の平均グレインサイズを有する微細構造を有し、該スパッタ材料が最大1質量%の銅および/またはガリウム部分を含むことを提案している。スパッタ材料の個々のグレインは、酸化物層により表面上で不動態化されていることが適切であり、スパッタ材料の酸素含有率は、スパッタ材料全体に対して50〜500ppmの範囲内、より好ましくは70〜300ppmの範囲内であってよいことも記載されている。
特開2010−024474号公報 特許第4837785号公報 特許第5254290号公報 特許第5074628号公報 特開2012−172265号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載のインジウムターゲットでは成膜レートの安定性について未だ改善の余地が残されている。
特許文献1及び2のような高純度のインジウムを材料とするターゲットでは、インジウムという原料の融点の低さからか、スパッタ中にエロージョン表面全域に200μmを超えるようなサイズの突起が多数成長する(図1に本発明で対象とする突起の二次電子像を示す)。そのため、スパッタを継続するとスパッタ表面には多数のミクロな凹凸が見られるようになるが、その凹凸のサイズや分布により、局所的に成膜速度が不安定となり、経時的な成膜レートの安定性が悪くなってしまう。このような問題は特許文献2に教示されているように、圧延を行うことにより改善は可能であるが、十分とは言えない。また、特許文献4に記載されているように、表面を粗化することにより安定までの時間は短くなるものの、成膜レートの安定性についての記述はなく、対応は十分ではない。特許文献3に記載のようにインジウムと銅の合計原子数に対して0.5〜7.5at%の銅を添加したインジウムターゲット組織を観察すると、デンドライト状又は針状の粗大なCu−In化合物が多数析出していることが分かった。そして、Cu−In化合物の不均一な析出が成膜レートを不安定化させる要因となっていることを見出した。このように、特許文献1〜4に記載のインジウムターゲットでは成膜レートが十分に安定でない。一方、特許文献5の教示に従ってインジウムの結晶粒径を微細化した場合には、成膜レートの安定性を高めることは可能である。しかしながら、特許文献5では、微細な結晶粒径を得るために溶射という特殊な方法を採用している。
本発明はこのような事情に鑑みて創作されたものであり、母相を構成するインジウムの結晶粒径によらず成膜レートの安定性に優れたインジウムターゲット部材を提供することを課題の一つとする。また、本発明はそのようなインジウムターゲット部材の製造方法を提供することを別の課題の一つとする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、インジウムへ添加する銅の濃度を特許文献3の教示よりもやや低濃度側にシフトし、溶解鋳造時の冷却速度を制御することにより、Cu−In化合物の成長が抑制されて微細なCu−In化合物粒子が分散することが分かった。これにより銅を添加することによる副作用が抑制されるため、スパッタ時の突起のサイズが小さくなり、高分散化されるため、安定な成膜レートが得られる。また、特許文献3においては異常放電につながる空隙の発生を抑えるために冷却速度を遅くしているが、冷却方向を制御することで冷却速度を比較的高めても空隙の発生を防止することができることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなるインジウムターゲット部材であり、スパッタリングされる表面を観察したときのCu−In化合物粒子の平均粒子径が0.5〜8μmであるインジウムターゲット部材である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は一実施形態において、前記Cu−In化合物粒子の平均粒子径が0.8〜5μmである。
本発明に係るインジウムターゲット部材は別の一実施形態において、前記Cu−In化合物粒子の最大粒子径が15μm以下である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、前記Cu−In化合物粒子の個数密度が0.02個/μm2以上である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、孔径0.5mm以上の空隙が1個/cm3以下である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、酸素濃度が30質量ppm以下である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、酸素濃度が10質量ppm以下である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、銅濃度が100質量ppm以上である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、更に、ガリウムを5000質量ppm以下含有する。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、円筒形状である。
本発明に係るインジウムターゲット部材は更に別の一実施形態において、平板状である。
本発明は別の一側面において、銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなる組成をもつインジウム合金を加熱溶解した後、溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を1.0×10-5℃/(min・cm3)以上として冷却する鋳造工程を含むインジウムターゲット部材の製造方法である。
本発明に係るインジウムターゲット部材の製造方法は一実施形態において、前記鋳造工程においては、一方向から冷却することを含む。
本発明に係るインジウムターゲット部材の製造方法は別の一実施形態において、前記加熱溶解は不活性ガス雰囲気下で、500℃以上に前記インジウム合金を加熱する条件で実施することを含む。
本発明に係るインジウムターゲット部材の製造方法は更に別の一実施形態において、前記鋳造工程において、インジウム合金が凝固する前に、不活性ガスによるバブリングを行うことを含む。
本発明に係るインジウムターゲット部材の製造方法は一実施形態において、前記鋳造工程が、外側面が円筒形のバッキングチューブとその周囲に同軸状に間隔を設けて配置された内側面が円筒形の鋳型の間にインジウムの溶湯を流し込むことを伴い、バッキングチューブの内側にインジウム溶湯以下の温度である、液体及び気体のいずれかの冷媒を一方向から導入することにより冷却することを含む。
本発明は別の一側面において、本発明に係るインジウムターゲット部材を用いてスパッタリングする工程を含むスパッタ膜の形成方法である。
本発明に係るインジウムターゲット部材を使用することで安定した成膜レートが得られる。また、本発明に係るインジウムターゲット部材ではスパッタ表面全体に生成する突起が小さくなるためスパッタ中も表面粗度が大きくなりにくい。このため、その粗さに到達するまでの時間が短縮されるので、成膜速度が安定化するまでに要する時間が短縮されるという効果も得られる。
従来技術に係るインジウムターゲット(比較例1)をスパッタした後のスパッタ面の二次電子像の例である。 本発明に係るインジウム合金ターゲット(実施例3)をスパッタした後のスパッタ面の二次電子像の例である。 Cu−In化合物粒子の形状例及び粒子径の求め方を示す模式図である。 WDSによりInとCuの面分析を行った際のマッピング像の例である。 実施例3、比較例1及び比較例3のインジウムターゲットをスパッタした後のスパッタ面の二次電子像である。 エロージョン深さと成膜レートの関係を示すグラフの一例である。
(銅濃度)
本発明は、インジウムターゲット部材中に銅を添加し、微細なCu−In化合物粒子を分散させる点に特徴の一つがあり、当該特徴によりスパッタ中の突起発生を抑制する効果が期待できる。特許文献3においては銅を比較的多く添加することを教示しているが、多量添加はCu−In化合物粒子の粗大化による、スパッタ表面の不安定化につながるため好ましくない。本発明者の検討結果によれば、特許文献3に記載されているような高濃度のCuを添加すると、成膜レートが不安定になってしまうことが分かっており、品質安定性が低下してしまう。
本発明者の検討結果によれば、微細なCu−In化合物粒子を分散させるという観点からは、インジウムターゲット部材中の銅濃度は50質量ppm以上とすることが望ましい。インジウムターゲット部材中の銅濃度は安定化までのエロージョン深さを短縮できるという利点も得られることから好ましくは100質量ppm以上であり、より好ましくは1000質量ppm以上である。但し、銅濃度は多すぎると母相に分散するCu−In化合物粒子が粗大化する傾向にあるため、インジウムターゲット部材中の銅濃度は2500質量ppm未満とすべきであり、2300質量ppm以下が好ましく、2000質量ppm以下とするのがより好ましい。
(酸素濃度)
一般的に、金属ターゲットにおいて、酸化物が含まれていると、スパッタ中にチャージアップが生じ、異常放電の原因となる。そのため、酸素濃度が少ないターゲットの方が、スパッタリング中安定となる。本発明に係るインジウムターゲット部材においては、酸素濃度を50質量ppm未満とすることができ、好ましくは30質量ppm以下とすることができ、より好ましくは20質量ppm以下とすることができ、更により好ましくは10質量ppm以下とすることができ、例えば1〜30質量ppmとすることができ、5〜20質量ppmとすることもできる。
したがって、本発明に係るインジウムターゲット部材の組成は一実施形態において、銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなる。
(ガリウム濃度)
また、インジウムターゲット部材はCIGS系薄膜太陽電池の光吸収層形成用のスパッタリングターゲットとして使用することができるため、微量のガリウムが入っていてもよい。具体的には、インジウムターゲット部材中のガリウム濃度はターゲット組織に影響を与えないように、5000質量ppm以下にすることが好ましく、2500質量ppm以下とすることがより好ましい。
したがって、本発明に係るインジウムターゲット部材の組成は別の一実施形態において、銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、ガリウム濃度が5000質量ppm以下であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなる。
不可避的不純物というのは原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするもので、本来は不要なものであるが、微量であり、ターゲット部材の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物である。不可避的不純物の含有量は合計で200質量ppm以下とすることが好ましく、100質量ppm以下とすることがより好ましい。
(Cu−In化合物粒子)
インジウムターゲット部材中に析出するCu−In化合物粒子は微細であることが重要である。デンドライト状又は針状に成長して粗大化したCu−In化合物粒子は、分散状態が悪く、スパッタ中に生成する突起の粗大化抑制効果が小さく、また、スパッタ中の表面状態を不均一化する要因となり、成膜速度を不安定にするからである。Cu−In化合物粒子が微細であると、このような副作用はなく、突起抑制効果が効果的に発揮されるので、成膜レートが安定化する。また、インジウムターゲットでは、特許第5074628号公報(特許文献4)に記載されるように、スパッタ初期に成膜レートが徐々に低下し、安定するまでに使用するターゲットのロスが多くなる。この要因は、スパッタ中に表面の突起が成長し、全面が突起で埋め尽くされ、定常状態となるまでに長時間を要するためである。本発明ではスパッタ中に生成する突起サイズを小さく制御することが可能であるため、安定な表面が得られるまでのターゲットのロスが少なくて済み、ターゲットを効果的に膜生産に使うことができ、使用効率が向上する。また、成膜速度の安定化までの時間も短縮される。本発明に係るターゲット(実施例3)に対してスパッタした後のスパッタ面の二次電子像の例を図2に示す。
具体的には、インジウムターゲット部材のスパッタリングされる表面を観察したときのCu−In化合物粒子の最大粒子径が20μm以下であることが好ましく、16μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更により好ましい。ただし、Cu−In化合物粒子の最大粒子径は、過度に小さくなると効果の増加量が小さくなるのに対し、冷却時間短縮のためのコストの増加が大きく増えることから、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更により好ましい。
また、インジウムターゲット部材のスパッタリングされる表面を観察したときのCu−In化合物粒子の平均粒子径が8μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。ただし、Cu−In化合物粒子の平均粒子径が過度に小さくなると効果の増加量が小さくなるのに対し、冷却時間短縮のためのコストの増加が大きくなることから、0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることが更により好ましく、2.5μm以上であることが更により好ましく、5.0μm以上であることが更により好ましい。
各Cu−In化合物粒子の粒子径は当該粒子(針状の単結晶であったり、針状の粒子が組み合わさった不定形の多結晶であったりする)を取り囲むことのできる最小円の直径と定義する。図3に例示的に図示する。最大粒子径及び平均粒子径の測定方法は後述する。
突起抑制効果をより効果的に発揮する上では、インジウムターゲット部材中に分散するCu−In化合物粒子の個数密度を制御することが望ましい。具体的には、インジウムターゲット部材のスパッタリングされる表面のCu−In化合物粒子の個数密度が0.02個/μm2以上であることが好ましく、0.025個/μm2以上であることがより好ましく、0.05個/μm2以上であることが更により好ましい。Cu−In化合物粒子の個数密度に上限は特に設定されないが、インジウムターゲット部材のスパッタリングされる表面のCu−In化合物粒子の個数密度は一般に0.5個/μm2以下であり、典型的には0.45μm2以下であり、より典型的には0.4個/μm2以下である。
特許文献5においては、銅が最大1質量%含有し得ることを開示するものの、銅をインジウムと共に溶融し、溶射すると本発明で規定する微細なCu−In化合物粒子を形成することはできるが、原料粉由来の酸素濃度が高くなり、また、密度が低く空隙が存在した組織となる。そのため、アーキングが発生し、安定的なスパッタリングができない。
本発明において、インジウムターゲット部材中のCu−In化合物粒子の平均粒子径、最大粒子径、個数密度は以下の方法で測定する。スパッタリングされる表面を硝酸とメタノールの混合溶液(2:1)で電解研磨し、凹凸や加工変質層を除去する。その後、当該表面を弱酸で軽くエッチングすることでCu−In化合物粒子を見やすくした後、走査型電子顕微鏡で観察を行う。WDS(wavelength dispersive X−ray spectrometry:波長分散型X線分析)により、InとCuの面分析を行えば、図4のようなマッピング像を得ることができ、ここからCu−In化合物粒子を特定して粒子径を計測する。Cuの添加量や冷却条件によりCu−In化合物粒子のサイズや分散状態は異なる。ターゲットのスパッタリングされる表面の任意の100μm×100μmの範囲を1視野当たりの測定対象領域として、各視野において測定可能なすべてのCu−In化合物粒子の粒子径を測定する。平均粒子径は任意の10視野以上のCu−In化合物粒子の粒子径の平均である。最大粒子径は1視野毎にCu−In化合物粒子の最大の粒子径を求め、任意の10視野以上における各最大粒子径の平均値を測定値とする。個数密度は上記測定対象領域に存在するCu−In化合物粒子の個数(N)を、10000μm2で除すことにより算出する。
(インジウム結晶粒)
一方で、インジウム結晶粒のサイズは、インジウムターゲット部材の鋳造サイズ等により影響を受けるが、特許文献3に記載されているような10mm以下でなくても問題なく、それ以上であっても、Cu−In化合物粒子のサイズ次第で、同様の効果を確認できる。つまり、本発明によれば、インジウム結晶粒の大きさにかかわらず、成膜レートの安定性を高めることが可能である。従って、本発明に係るインジウムターゲット部材の一実施形態においては、インジウムの平均結晶粒径を10〜500000μmとすることができ、典型的には40〜200000μmとすることができる。ただし、成膜レート安定性は、インジウム結晶粒が微細化されていた方がわずかながら向上するため、インジウム結晶粒の平均結晶粒径は1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが更により好ましく、100μm以下であることが更により好ましく、50μm以下であることが更により好ましい。本発明において、インジウムの平均結晶粒径は以下の手順で測定する。ターゲットのスパッタリングされる表面を弱酸で軽くエッチングして結晶粒界を見やすくした後、任意の結晶粒50個以上の粒径を計測し、その平均値を平均結晶粒径とする。各結晶粒の粒径は当該結晶を取り囲むことのできる最小円の直径と定義する。
(孔径0.5mm以上の空隙)
ターゲット内部に存在する空隙、とりわけ孔径0.5mm以上の大きな空隙はスパッタ中に異常放電を発生させる原因となるために極力少なくすることが望ましい。本発明に係るインジウムターゲット部材は好ましい実施形態において、孔径0.5mm以上の空隙が存在しないようにすることができる。空隙を少なくするためには、溶解鋳造時の冷却方向を制御してインジウムターゲット部材を製造することが好ましく、溶解鋳造後に冷間圧延を組み合わせてインジウムターゲット部材を製造することがより好ましい。
本発明において、孔径0.5mm以上の空隙の数は電子走査式超音波探傷器で測定する。ターゲット部材を上記探傷器の水槽内にセットして、周波数帯域1.5〜20MHz、パルス繰返し周波数5KHz、スキャンスピード60mm/minで測定し、得られる像イメージから、孔径0.5mm以上の空隙をカウントして、測定対象ターゲット部材の体積から空隙の個数割合を求める。ここで、孔径とは像イメージの孔を取り囲む最小円の直径で定義される。
(製法)
次に、本発明に係るインジウムターゲット部材の製造方法の好適な例を順を追って説明する。まず、原料であるインジウム及び所定量の銅を鋳型に入れる。使用する原料インジウムや銅は、不純物が含まれていると、その原料によって作製される太陽電池の変換効率が低下してしまうという理由により高い純度を有していることが望ましく、例えば、99.9質量%以上、好ましくは99.99質量%以上の純度の原料を使用することができる。原料中の酸素濃度は50質量ppm未満とすることが望ましい。鋳型は、高温でもインジウムと反応しないという点から、カーボン製のものを使用することができる。原料を完全に融解させるという観点からは300℃以上に加熱することが好ましい。溶け残りを防ぐため、500℃以上とすることがさらに好ましい。また、原料が溶解するまでにCuやインジウムの表面酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気や減圧下で鋳造することが好ましい。その後、室温まで冷却して、インジウム合金インゴットを形成する。このあと、所定のターゲット形状の鋳型等を使用して、再度鋳造し直す際に急冷工程を設ける。
Cu−In化合物粒子の大きさや分散状態は当該インジウム合金が溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度によって大きく左右されることから、凝固点付近となる145〜165℃付近における冷却速度が非常に重要である。具体的には、微細なCu−In化合物粒子を分散させる上では当該インジウム合金が溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を1.0×10-5℃/(min・cm3)以上として冷却することが好ましく、2.0×10-5℃/(min・cm3)以上として冷却することがより好ましく、1.0×10-4℃/(min・cm3)以上として冷却することが更により好ましく、1.0×10-3℃/(min・cm3)以上として冷却することが更により好ましく、1.0×10-2℃/(min・cm3)以上として冷却することが更により好ましい。
冷却速度の調整は、冷却速度を小さくする場合は、鋳型をヒーター等で加熱制御し、保温することで、逆に、冷却速度を大きくする場合は、鋳型の周辺に冷媒を供給することによる方法で行うことができる。当該インジウム合金が溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度は、(165−145[℃])/(インジウム合金の少なくとも一部が最初に165℃にまで低下した時点からインジウム合金全体が145℃以下に冷却されるまでにかかった時間[min])/(インジウム合金の体積[cm3])で計算される。
冷却方向の制御は、鋳型の一面(例えば鋳型の下面)に冷媒を設置することで一方向から冷却することにより実施することができる。インゴットが一方向凝固することで空隙の発生を抑制することが可能である。
凝固前に、溶体中に溶解している酸素成分を除去するため、窒素、希ガス(アルゴン等)などの不活性ガスによるバブリングを行うことが好ましい。
得られたインゴットに対して冷間圧延することにより、成形しても良い。
したがって、本発明に係るインジウムターゲット部材の製造方法の一実施形態においては、50質量ppm以上2500質量ppm未満の銅を含有し、残部インジウム及び不可避的不純物からなる組成をもつインジウム合金を加熱溶解し、次いで、当該インジウム合金が溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を1.0×10-5℃/(min・cm3)以上として冷却することを含むインゴットの鋳造工程を含む。鋳造後、冷間圧延はしなくてもよいが、結晶粒を微細化させることでより成膜レートが安定しやすくなるという利点が得られるため、また、鋳造時に発生した空隙を除去できるため、冷間圧延したほうが好ましい。
その後、必要に応じて形状加工や表面切削してインジウムターゲット部材とすることができる。ターゲット部材の形状は特に制約はないが、例えば円筒形状の他、矩形や円盤形などの平板状とすることができる。
ターゲット部材の厚みは特に制限はなく、使用するスパッタ装置や成膜使用時間等に応じて適宜設定すればよいが、通常3〜20mm程度であり、典型的には6〜18mm程度である。
このようにして得られたインジウムターゲット部材はバッキングプレートとボンディング材を介して貼り合わせ、スパッタリングターゲットとすることができる。また、溶解鋳造時に溶解したインジウムをバッキングプレート上に流し込んで冷却すればボンディング材は不要となる。このようにして得られたスパッタリングターゲットは、CIGS系薄膜太陽電池用光吸収層形成用のスパッタリングターゲットとして好適に使用することができる。例えば、Cu−Ga合金のスパッタ後、本発明に係るインジウムターゲット部材を用いたスパッタリングターゲットをスパッタして得られる膜をセレン化して、太陽電池に使用される銅−インジウム−ガリウム−セレン(Cu−In−Ga−Se)系(以下、CIGSと略記)膜を形成することから、インジウムターゲット部材中に銅が含まれていても問題はない。
本発明に係るインジウムターゲット部材では突起が成長しにくいため、スパッタ中も表面粗度が小さい状態が維持される。一般に、インジウムターゲットでは、スパッタ開始直後の成膜速度はもっとも高く、突起の発生により表面が粗くなるとともに徐々に成膜速度が低下し、やがて定常状態に到達する。しかしながら、本発明に係るインジウムターゲット部材では定常状態における表面粗さが小さいため、その粗さに到達するまでの時間が短縮されるので、成膜速度が安定化するまでに要する時間が短縮されるという効果も得られる。これは、換言すれば成膜速度が安定化するのに必要なターゲットのエロージョン量(プレスパッタロス)が少なくて済むということを意味する。
したがって、本発明に係るインジウムターゲット部材の一実施形態においては、当該ターゲット部材を用いてスパッタした場合の成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さを1.0mm以下とすることが可能であり、好ましくは0.20mm以下とすることが可能である。インジウムターゲットの成膜レートは、図6に示すような変化を示す。大きく分けて2ゾーン存在し、初期の傾きが大きいゾーンと傾きがほぼゼロになる(=安定化)ゾーンである。本発明においては、この二つのゾーンの接線の交点のエロージョン深さが、成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さと定義する。従って、本発明において、成膜速度安定化までのエロージョン深さは、エロージョン深さ(mm)と成膜レート(Å/min)の実測データから図6のようなグラフを作成し、スパッタ開始時の速度の傾きを示す接線と安定時の速度の傾きを示す接線の交点におけるエロージョン深さを求めることで計測することができる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
<実施例1〜12、16及び17、比較例1〜5、8:円盤状の鋳造ターゲット>
原料となるインジウム(純度4N)、銅(純度4N)及びガリウム(純度4N)を用意した。原料中の酸素濃度は不活性ガス融解法で測定したところ、何れも50質量ppm未満であった。これらの原料を銅濃度及びガリウム濃度が表1に記載の値となるように成分調整したインジウム、銅及び随意的なガリウムの混合物をカーボン製のるつぼに入れ、Ar雰囲気で、500℃、5時間加熱して溶解し、インジウム合金を作製した。このインジウム合金を、200℃で再溶解し、この溶体から、以下の手順でインゴットを作製した。
後工程で圧延する場合は、縦250mm、横160mm、深さ80mm(内寸)のSUS製の鋳型に、深さ30mm(圧下率80%の場合)又は8.6mm(圧下率30%の場合)までインジウム合金の溶体を流し込んだ。その後、表1中にN2バブリング「有」と記載されている例においては、N2を鋳型下部から注入して10分間バブリングした。バブリングを実施することで酸化物をスラグとして浮かせることができるので、バブリングは酸素濃度を低減する方法として有効である。その後、溶湯表面の酸化物スラグを除去し、鋳型の下面に冷媒を設置することで一方向から冷却することにより、溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を表1に記載の値でそれぞれ冷却して、インジウム合金インゴットをそれぞれ作製した。冷却にかかった時間は、インゴットの下面が165℃になった時点をスタートとし、上面が145℃になった時点を終了とした。
後工程で圧延しない場合は、内径210mm、深さ80mmのSUS製の鋳型に、深さ30mmまでインジウム合金の溶体を流し込んだ。その後、表1中にN2バブリング「有」と記載されている例においては、N2を鋳型下部から注入して10分間バブリングした。その後、溶湯表面の酸化物スラグを除去し、鋳型の下面に冷媒を設置することで一方向から冷却することにより、溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を表1に記載の値でそれぞれ冷却して、インジウム合金インゴットをそれぞれ作製した。冷却にかかった時間は、インゴットの下面が165℃になった時点をスタートとし、上面が145℃になった時点を終了とした。冷却速度に関して、表中に例えば「1.6E−02」とあるのは1.6×10-2のことである。
溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度は、冷却速度を小さくする場合は、鋳型をヒーター等で加熱制御することで、逆に、冷却速度を大きくする場合は、鋳型の下面に冷媒を供給することによる方法で行うことができる。温度は、インジウム合金中に熱電対を接触させることで測定した。
続いて、圧延する場合は、得られたインゴットを厚さ30mmから6mmまで(圧下率80%の場合)、又は、厚さ8.6mmから6mmまで(圧下率30%の場合)段階的に冷間圧延し、ターゲット部材となるタイルを作製した。このタイルを多角柱状に切断し、直径226mm、厚さ5mmの銅製のバッキングプレートにボンディングし、旋盤によりターゲット部分を直径203.2mm×厚み5mmの円盤状に加工し、表1に記載の各インジウムターゲット部材を作製した。
圧延しない場合は、得られた内径210mmのインゴットを直径226mm、厚さ5mmの銅製のバッキングプレートにボンディングし、旋盤によりターゲット部分を直径203.2mm×厚み5mmの円盤状に加工し、表1に記載の各インジウムターゲット部材を作製した。なお、ロウ材にはインジウムスズ合金(重量比1:1)を用いた。
<実施例13〜15:円筒形状の鋳造ターゲット>
円筒ターゲットの場合、外径133mm、長さ2000mmのSUS製の円筒形のバッキングチューブを、内径169mm、長さ2000mmの円筒形の内側面をもつSUS製の縦型の鋳型に同軸状に組込み、鋳型内部をN2置換した後、昇温し、インジウム合金を注入した。その後、N2を鋳型下部から注入し、10分間バブリングした後、溶湯表面の酸化物スラグを除去し、バッキングチューブ内に下方から冷却水を注入することによって、溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を表1に記載の値でそれぞれ冷却して、インジウム合金−バッキングチューブ接合体を作製した。なお、冷却に掛かった時間は、下端が165℃になった時点をスタートとし、上端が145℃になった時点を終了とした。
<比較例6、7:円筒形状の溶射ターゲット>
250℃に溶融したインジウム(純度4N)をノズルに供給し、アルゴンガスでバッキングチューブに吹き付けることで円筒形状の溶射ターゲットを作製した。
上記のようにして得られたターゲットについて、以下の分析を行った。結果を表2に示す。
(酸素濃度)
ターゲット部材中の酸素濃度は不活性ガス融解法で測定した。
(Cu−In化合物粒子)
Cu−In化合物粒子の最大粒子径、平均粒子径、及び個数密度は先述した方法に従って測定した。測定に使用した分析装置は日本電子株式会社製の型式JXA8500Fとした。
(孔径0.5mm以上の空隙の有無)
孔径0.5mm以上の空隙の有無を、先述した方法に従って、日本クラウトクレーマー株式会社製の電子走査式超音波探傷システムPA−101を使用して測定した。
(スパッタ特性の評価)
次に、実施例1〜12、16、17及び比較例1〜5、8のインジウムターゲットを、スパッタ開始前のチャンバー内の到達真空度圧力を1×10-4Paとし、アルゴンガスを5sccmでフローさせ、スパッタ時の圧力を0.5Pa、スパッタパワー1.3W/cm2で、コーニング社製#1737ガラスを基板として、基板加熱を行わずに、10分間プレスパッタを実施した。その後、一旦チャンバーを開け、デプスゲージを使用して、エロージョン最深部の深さを測定した。基板を入れ替え、再度チャンバーを閉じ、上記条件で1分間プレスパッタした後、5分間の本成膜を行い、この5分間の成膜レートを算出した。その後、30分間プレスパッタした後、チャンバーを開放してエロージョン最深部の深さを測定、基板を入れ替えてチャンバーを閉じ、上記条件で1分間プレスパッタした後、5分間の本成膜を行い、この5分間の成膜レートを算出するというサイクルを繰り返し、エロージョン深さと成膜レートの関係をグラフ化した。
実施例13〜15および比較例6、7の円筒ターゲットもスパッタパワーを2kW/mとした以外は、上記と同条件にてスパッタを実施した。なお、本試験は、キヤノンアネルバ製スパッタ装置SPF−313Hを使用して実施した。
(成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さ)
上記スパッタ試験において、成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さを、先述した方法に基づいて算出した。結果を表3の「安定化までのエロージョン深さ」の列に示す。
(成膜レート変動率)
上記スパッタ試験において、エロージョン最深部の深さが1.0mmに到達した時点から2.0mmに到達した時点までに得られた成膜レートの測定値全てから算出した標準偏差σの3倍を変動率として記載した。結果を表3の「成膜レート変動率」の列に示す。
(成膜レート)
実施例1及び比較例6、7、8について、エロージョン最深部の深さが1.0mm時点における成膜レートを比較した。その結果、実施例1は1450Å/min、比較例6は987Å/min、比較例7は920Å/min、比較例8は660Å/minであった。これにより、溶射により作製されたターゲットは、成膜レートが低いことがわかった。また、Cu量が35000質量ppmと過剰であると、成膜レートが低いことがわかった。本発明に係るインジウム合金ターゲットは溶射ターゲットよりも成膜レートが高く、生産性が高いことが示唆される。また、過剰な銅の添加も、成膜レートが低くなることが確認された。
(表面粗度)
実施例3、比較例1及び比較例3について、スパッタした後のスパッタ面の二次電子像を図5に示す。本発明に係るインジウム合金ターゲットは、スパッタ後も表面粗度が小さく維持されていることがわかる。スパッタ前および安定化時点(成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さ)におけるスパッタ面の算術平均粗さRaをJIS B0601(1994)に準拠してレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−9700、測定倍率10倍)により測定した結果を表3に示す。
(Ga濃度の影響)
GaはIn中に固溶されるため、5000質量ppmまでは、混入していても、スパッタ特性に大きな影響は与えないことを実施例16及び17により確認した。
表1〜3より以下のことが分かる。実施例1〜17に係るインジウムターゲットは、成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さが小さく、成膜レートの変動率が小さかった。
また、実施例9〜11の比較から、鋳造時の冷却速度を高めるに従い、微細なCu−In化合物粒子がターゲット部材のマトリクス中に高分散化すると共に、成膜レート変動率が改善することが分かる。
一方、比較例1では銅を添加しなかったことで、スパッタにより突起が大きく成長したために、成膜速度が安定化するまでのエロージョン深さが大きくなり、成膜レートの変動率が大きくなった。
比較例2では銅を添加したものの、その添加量が少なかったために、突起の成長を抑制する効果が不十分となり、実施例ほどの改善は得られなかった。
比較例3及び比較例4は銅の添加量は適切であるが、鋳造時の冷却速度が遅かったことで、Cu−In化合物粒子が大きく成長した。安定化までのエロージョン深さは短縮されたが、成膜レート変動率は実施例に比べて大きくなった。
比較例5、8は銅を添加したものの、その添加量が過剰であったために、Cu−In化合物粒子が大きくなった。安定化までのエロージョン深さは短縮されたが、成膜レート変動率は実施例に比べて大きくなった。
比較例6は溶射によって微細な結晶粒をもつターゲットを作製した例である。結晶粒が微細であるため、成膜レートの安定性は実施例に匹敵した。ただし、酸素を多く含むことから成膜レート自体が低かった。また、酸素による膜品質への影響が懸念される。
比較例7は原料中に銅を混ぜて溶射によって微細な結晶粒をもつターゲットを作製した例である。微細なCu−In化合物粒子の形成はあり、結晶粒が微細であるため、成膜レートの安定性は実施例に匹敵した。ただし、酸素を多く含むことから成膜レート自体が低かった。また、酸素による膜品質への影響が懸念される。

Claims (17)

  1. 銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなるインジウムターゲット部材であり、スパッタリングされる表面を観察したときのCu−In化合物粒子の平均粒子径が0.5〜8μmであるインジウムターゲット部材。
  2. 前記Cu−In化合物粒子の平均粒子径が0.8〜5μmである請求項1に記載のインジウムターゲット部材。
  3. 前記Cu−In化合物粒子の最大粒子径が15μm以下である請求項1又は2に記載のインジウムターゲット部材。
  4. 前記Cu−In化合物粒子の個数密度が0.02個/μm2以上である請求項1〜3の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  5. 孔径0.5mm以上の空隙が1個/cm3以下である請求項1〜4の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  6. 酸素濃度が30質量ppm以下である請求項1〜5の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  7. 酸素濃度が10質量ppm以下である請求項1〜5の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  8. 銅濃度が100質量ppm以上である請求項1〜7の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  9. 更に、ガリウムを5000質量ppm以下含有する請求項1〜8に記載のインジウムターゲット部材。
  10. 円筒形状である請求項1〜9の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  11. 平板状である請求項1〜9の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材。
  12. 銅濃度が50質量ppm以上2500質量ppm未満であり、酸素濃度が50質量ppm未満であり、残部インジウム及び不可避的不純物からなる組成をもつインジウム合金を加熱溶解した後、溶融状態から凝固状態に変化するまでの冷却速度を1.0×10-5℃/(min・cm3)以上として冷却する鋳造工程を含むインジウムターゲット部材の製造方法。
  13. 前記鋳造工程においては、一方向から冷却することを含む請求項12に記載のインジウムターゲット部材の製造方法。
  14. 前記加熱溶解は不活性ガス雰囲気下で、500℃以上に前記インジウム合金を加熱する条件で実施することを含む請求項12又は13に記載のインジウムターゲット部材の製造方法。
  15. 前記鋳造工程において、インジウム合金が凝固する前に、不活性ガスによるバブリングを行うことを含む請求項12〜14の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材の製造方法。
  16. 前記鋳造工程が、外側面が円筒形のバッキングチューブとその周囲に同軸状に間隔を設けて配置された内側面が円筒形の鋳型の間にインジウムの溶湯を流し込むことを伴い、バッキングチューブの内側にインジウム溶湯以下の温度である、液体及び気体のいずれかの冷媒を一方向から導入することにより冷却することを含む請求項12〜15の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材の製造方法。
  17. 請求項1〜11の何れか一項に記載のインジウムターゲット部材を用いてスパッタリングする工程を含むスパッタ膜の形成方法。
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