JP2018005968A - 磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法 Download PDF

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洋一 兒島
誠 米光
Makoto Yonemitsu
誠 米光
高太郎 北脇
Kotaro Kitawaki
高太郎 北脇
日比野 旭
Akira Hibino
旭 日比野
英之 畠山
Hideyuki Hatakeyama
英之 畠山
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光男 増田
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Abstract

【課題】クレーター欠陥およびピットの少ない磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】磁気ディスク用基板は、アルミニウム合金基板と、アルミニウム合金基板の表面に配置されたNi−P膜と、を備える。グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Spectroscopy:GDS)で、Ni−P膜とアルミニウム合金基板との間に存在しているFe原子およびZn原子の発光強度を測定し、Fe原子の最大発光強度を(IFe)、Zn原子の最大発光強度を(IZn)とし、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法に関する。
コンピュータやデータセンターの記憶装置として使用されるHDD(Hard Disk Drive)の磁気ディスクには、アルミニウム合金製の磁気ディスク用基板が用いられている。磁気ディスク用基板は、一般に、良好なめっき性を有するとともに機械的特性や加工性に優れるJIS5086に定められた組成(3.5mass%以上4.5mass%以下のMg、0.50mass%以下のFe、0.40mass%以下のSi、0.20mass%以上0.70mass%以下のMn、0.05mass%以上0.25mass%以下のCr、0.10mass%以下のCu、0.15mass%以下のTi、0.25mass%以下のZn、残部Al及び不可避不純物)を有するアルミニウム合金から形成される。磁気ディスク用基板は、このアルミニウム合金基板に無電解Ni−Pめっきを施した後、表面を平滑に研磨し、磁性体を付着させることにより製造されている。また、めっき前処理工程における金属間化合物の抜け落ちによるピットを削減することを目的に、一部の磁気ディスク用基板は、JIS5086に定められた組成中のFe、Si等の不純物の含有量を制限することで合金中の金属間化合物を小さくしたアルミニウム合金から形成されている。また、めっき性改善を目的にJIS5086に定められた組成の範囲内で、CuやZnの含有率を高く設定したアルミニウム合金が用いられることもある。
一般的な磁気ディスク用基板は、円環状のアルミニウム合金基板を作製し、このアルミニウム合金基板にめっきを施し、次いでこのアルミニウム合金基板の表面に磁性体を付着させることにより製造されている。
具体的には、磁気ディスク用基板は、以下の製造工程により製造される。まず、JIS5086に定められた組成を有するアルミニウム合金の鋳塊を鋳造する。次に、その鋳塊を熱間圧延し、次いで冷間圧延し、磁気ディスク用基板として必要な厚みの圧延材を作製する。冷間圧延の途中で、焼鈍処理を施してもよい。次に、この圧延材を円環状に打抜き、円環状のアルミニウム合金板を成形する。歪み等を除去するために、このアルミニウム合金板を積層し、両面から加圧しながら焼鈍する。
このようにして作製したアルミニウム合金基板に、切削加工、研削加工、脱脂処理、エッチング処理を施す。その後、めっき前処理として、1回目のジンケート処理(Zn置換処理)、脱ジンケート処理、2回目のジンケート処理を施す。次いで、アルミニウム合金基板に硬質非磁性金属であるNi−P膜を無電解めっきにより形成し、Ni−P膜の表面を研磨する。その後、スパッタリングにより磁性体膜を形成してアルミニウム合金製の磁気ディスクを得る。
近年、クラウドサービスの発展等に伴うデータセンターの記憶容量の増加、競合商品であるSSD(Solid State Drive)の記憶容量の増加、等に対処するために、HDDの記憶容量を増加させることが不可欠となっている。HDDの記憶容量を増加させるために、磁気ディスク1枚あたりの記憶容量を増加させることが求められている。Ni−P膜の表面にピット等の欠陥があると、欠陥の周辺部を除外してデータの読み書きを行わなければならず、磁気ディスク1枚あたりの記憶容量が低下するからである。
Ni−P膜の表面の欠陥を低減する技術が複数提案されている。例えば、特許文献1には、脱スマット工程と脱ジンケート工程とにおいて、溶液中の鉄イオン濃度と硝酸濃度を管理し、Ni−P膜の表面の欠陥を低減する技術が開示されている。また、特許文献2には、アルミニウム合金基板の組成を調整し、更に、Si−O系化合物の大きさを制御することにより、ジンケート性を向上させ、Ni−P膜の表面の欠陥を低減する技術が開示されている。また、特許文献3には、アルミニウム合金基板に超音波を印加しながらジンケート処理を実施し、Ni−P膜の表面の欠陥を低減する技術が開示されている。
最近では、より高精度の磁気ディスク用基板を作製するため、磁性体膜を形成する前に、研磨したNi−P膜の表面に対し酸性溶液を用いてより平滑にするエッチング工程が実施されている。エッチング工程において、Ni−P膜の表面にクレーター状の欠陥(以下、クレーター欠陥と呼ぶ)が発生することがある。クレーター欠陥が発生すると、Ni−P膜の表面の欠陥が増加し、磁気ディスク1枚あたりの記憶容量の増加が困難になってしまうという問題がある。クレーター欠陥は、従来ほとんど注目されていなかったため、発生原因および対策が不明であり、その発生を抑制するまでに至っていない。そのため、磁気ディスクの記憶容量を増加させるためには、Ni−P膜の表面にピット等の従来の欠陥に加えクレーター欠陥の発生を抑制することが求められる。
特許第5796963号公報 特開平11−315338号公報 特開昭62−256226号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、クレーター欠陥およびピットの少ない磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る磁気ディスク用基板は、
アルミニウム合金基板と、前記アルミニウム合金基板の表面に配置されたNi−P膜と、を備える磁気ディスク用基板において、
グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Spectroscopy:GDS)で、前記Ni−P膜と前記アルミニウム合金基板との間に存在しているFe原子およびZn原子の発光強度を測定し、前記Fe原子の最大発光強度を(IFe)、前記Zn原子の最大発光強度を(IZn)とし、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5である、
ことを特徴とする。
前記アルミニウム合金基板は、
Mg:2.5〜10.0mass%、
Cu:0.005〜0.200mass%、
Zn:0.05〜0.60mass%、
Be:0.00001〜0.00200mass%を含有し、
Cr:0.300mass%以下、Si:0.050mass%以下、Fe:0.050mass%以下、Cl;0.00500mass%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなるとよい。
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る磁気ディスク用基板の製造方法は、
1度目のジンケート処理、Zn剥離処理、2度目のジンケート処理を含み、1度目および2度目のジンケート処理において、ジンケート処理溶液のCl含有量が3.0mass%以下であり、比液量V(mL/cm)、アルミニウム合金基板の回転数R(rpm)、ジンケート処理溶液の温度T(℃)、ジンケート処理時間t(s)とし、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0であるめっき前処理と、
前記めっき前処理の後に、無電解Ni−Pめっきにより前記アルミニウム合金基板にNi−P膜を形成するNi−Pめっき処理と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、クレーター欠陥およびピットの少ない磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法を提供することができる。これにより、磁気ディスク1枚あたりの記憶容量を増加させることが可能な磁気ディスク用基板を提供することができる。
(A)〜(E)は、実施の形態に係る無電解Ni−Pめっきを説明する図である。 (A)は、実施の形態に係るジンケート処理装置の正面断面図であり、(B)は、図2(A)のA−A断面図である。 (A)は、実施の形態に係るジンケート処理装置の正面断面図であり、(B)は、図3(A)のB−B断面図である。
本願発明者らは、クレーター欠陥およびピットとジンケート処理の条件との関係、並びにピットとアルミニウム合金基板の組成との関係について鋭意研究を重ねた。その結果、ジンケート処理におけるディスクの回転数、比液量、温度、時間の各条件を制御し、ジンケート皮膜のFeとZnとの比を制御することで、クレーター欠陥およびピットの発生を抑制できることを見出した。更に、アルミニウム合金基板の組成において微量元素を制御することでピットの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を実施の形態に基づき詳細に説明する。
本実施の形態の特徴として、ジンケート皮膜のFeとZnとの比、ジンケート処理の条件、およびアルミニウム合金基板の組成が挙げられる。これらについてクレーター欠陥およびピットの発生メカニズムとともに述べる。
1.クレーター欠陥およびピットの発生メカニズム
1−1.クレーター欠陥の発生メカニズム
クレーター欠陥は、研磨されたNi−P膜(Ni−Pめっき膜)の表面を酸性溶液でエッチングする際に発生し、Ni−P膜の表面を凹凸にする。クレーター欠陥が発生する原因は、Ni−P膜の表面に耐酸性の異なる微小領域が存在するためであると考えられる。より詳細に説明すると、クレーター欠陥は、耐酸性に劣る半球状の異物が、Ni−P膜の表面領域に位置することにより引き起こされる。半球状の異物は、Ni−P膜の表面を研磨する際に、Ni−P膜中に埋まっていた球状の異物の上部が研磨されたものである。
球状の異物は、無電解Ni−Pめっき処理時の反応により発生するP濃度の低いNi−P粒子であると考えられる。以下、この球状の異物およびクレーター欠陥の発生メカニズムについて説明する。
まず、無電解Ni−Pめっき処理の前処理として、アルミニウム合金基板の表面にFeとZnとを含むジンケート皮膜を形成する。
次に、図1(A)に示すように、ジンケート皮膜110を表面に有するアルミニウム合金基板120を、NiおよびP(Ni2+およびHPO )を含む無電解Ni−Pめっき溶液130に浸漬する。これにより、図1(B)に示すように、ジンケート皮膜110に含まれるFeおよびZnを無電解Ni−Pめっき溶液130に含まれるNiおよびPに置換する反応が起こり、アルミニウム合金基板120にNi−P膜140が共析する。この時、HがHガスとして放出されるため、図1(C)に示すように、アルミニウム合金基板120の近傍で、H濃度が減少し、無電解Ni−Pめっき溶液130のpHが高くなる。pHが高くなると、無電界Ni−Pめっき溶液130中で核の生成が開始し、且つ、Ni−Pの共析反応が抑制される。このため、図1(D)に示すように、この核がP濃度の低いNi−P粒子150に成長し、図1(E)に示すように、Ni−P膜140の成長に巻き込まれることで、その中に取り込まれる。Ni−P膜140の表面の近傍に取り込まれたNi−P粒子150が、研磨により表面に露出した場合、その部分は、周囲よりも酸に溶解しやすく、酸性溶液でのエッチングにより、その部分が優先的に溶解しクレーター欠陥となる。
1−2.ピットの発生メカニズム
ピットは、Ni−P膜140の表面からアルミニウム合金基板120に伸びるアスペクト比の大きい欠陥である。
以下、ピットの発生メカニズムについて説明する。
ジンケート皮膜110の膜厚が不均一であると、アルミニウム合金基板120が露出する場合がある。この場合、無電解Ni−Pめっき処理時に、露出しているアルミニウム合金基板120の表面に存在する金属間化合物(後述するMg−Si系化合物等)が溶解し、または、金属間化合物とアルミニウム合金基板120との電池反応によりアルミニウム合金基板120が溶解する。これにより、ジンケート皮膜110とNi−Pとの置換反応が起こる領域と起こらない領域が生じ、局部的にガスが連続的に発生することによりピットが発生する。また、アルミニウム合金基板120の近傍における溶液のpHが低くなることでも、Ni−Pの置換反応が起こる領域と起こらない領域が生じ、局部的にガスが発生することによりピットが発生する。
2.ジンケート皮膜110中のFeとZnとの構成比
次に、クレーター欠陥およびピットの発生を抑制するジンケート皮膜110中のFeとZnとの構成比について説明する。クレーター欠陥の発生メカニズムによれば、無電解Ni−Pめっき処理において、アルミニウム合金基板120の近傍で、溶液のpHが高くなければ、Ni−P粒子150は生成されにくく、クレーター欠陥の発生が抑制される。また、アルミニウム合金基板120の近傍で、溶液のpHが低くならなければ、ピットは発生しにくい。ジンケート皮膜110中のFeは、溶液のpHを下げる作用があり、Znは、溶液のpHを上げる作用がある。これらのことから、ジンケート皮膜110に含まれるFeとZnとの構成比を規定することで、クレーター欠陥およびピットを少なくすることが可能であると考えられる。
無電解Ni−Pめっき処理前であれば、ジンケート皮膜110中のFeとZnとの構成比を直接分析することも考えられる。製造した磁気ディスクにクレーター欠陥およびピットの多いものを発見した際、その原因を特定する必要が生じる場合がある。この場合、FeおよびZnの大部分は、NiおよびPに置換され、ジンケート被膜110そのものは残っていない。このため、ジンケート被膜110そのものを分析して、FeとZnとの構成比を特定することはできない。無電解Ni−Pめっき処理を実施した後に、ジンケート皮膜110に含まれていたFeとZnとの構成比を特定するために、以下の方法を採用する。グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Spectroscopy:GDS)を用いて、Ni−P膜140とアルミニウム合金基板120との間に置換されずに存在(残存)するFe原子およびZn原子の発光強度を測定する。この測定で、Fe原子の最大発光強度(IFe)と、Zn原子の最大発光強度(IZn)と、の値を得る。この(IFe)と(IZn)との比は、ジンケート皮膜110に含まれていたFeとZnとの構成比に対応するものと考えられる。このため、ジンケート皮膜110に含まれるFeとZnとの構成比は、(IFe)/(IZn)で表される値として特定される。このようにすることで、磁気ディスクを製造した後でも、ジンケート被膜110に含まれていたFeとZnとの構成比を分析することができ、磁気ディスクの品質管理等の向上に寄与する。
(IFe)/(IZn)の値が0.2よりも小さい場合、ジンケート皮膜110中のFeが少ないので、アルミニウム合金基板120の近傍で溶液のpHが高くなる。この結果、Ni−P粒子150が大量に生成するため、クレーター欠陥が増加すると考えられる。一方、(IFe)/(IZn)の値が1.5より大きい場合、ジンケート皮膜110中のFeが多いので、アルミニウム合金基板120の近傍における溶液のpHが低くなる。この結果、Ni−Pの置換反応が不均一となり、局部的なガス発生によりピットが発生すると考えられる。従って、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5の条件を満たす場合、クレーター欠陥およびピットの発生原因が取り除かれる。この結果、クレーター欠陥およびピットが少なくなる。好ましくは、0.3≦(IFe)/(IZn)≦1.0である。なお、GDSは、グロー放電領域内で試料を高周波スパッタリングし、スパッタされた原子から放出される発光線を分光することにより、試料の深さ方向の元素分布を測定するものである。
3.ジンケート処理溶液のCl含有量
次に、ピットの発生を抑制するジンケート処理溶液のCl含有量について説明する。ジンケート処理では、アルミニウム合金基板120の表面にまずFeが析出し、FeにZnが析出することで、表面にジンケート皮膜110が形成される。1度目のジンケート処理で形成したジンケート皮膜110を硝酸で溶解し、2度目のジンケート処理を行うと、Zn析出の起点となるFeの析出が促進され、緻密なジンケート皮膜110を形成することができる。ジンケート処理溶液は、ZnとFeを含み、水酸化ナトリウムによりアルカリ性に調整されたものである。Znは、例えば酸化亜鉛で添加される。Feは、例えば塩化第二鉄や硝酸鉄等の鉄化合物で添加される。ジンケート溶液は、添加される化合物に含有される不純物により、Clを含有することがある。Clを含有するジンケート溶液中では、AlやZnなどに孔食が発生し、またはClにより析出させられたZnが腐食により溶解し、ピットの原因となる。そのためジンケート溶液中のCl含有量は、3.0mass%以下が好ましく、より好ましくは0.1mass%以下である。
4.ジンケート処理条件
次に、ジンケート処理条件(比液量V、回転数R、温度T、および時間t、並びにこれらの最適条件)について説明する。以下に説明するジンケート処理条件でジンケート処理を実施することで、クレーター欠陥およびピットの発生を抑制するジンケート皮膜110を作製することができる。
4−1.アルミニウム合金基板120に対するジンケート処理溶液の比液量V(mL/cm
ジンケート処理を行うアルミニウム合金基板120の単位面積あたりのジンケート処理溶液の体積を比液量Vとする。比液量Vは、5〜30mL/cmとすることが好ましい。この理由は、比液量Vが5mL/cm以上の場合、FeとZnとの量が十分であるため均一な膜厚のジンケート皮膜110を生成できるからである。一方、比液量Vが5mL/cm未満の場合、ジンケート皮膜110の生成に必要なFeとZnとが短時間で消費され、アルミニウム合金基板120の表面にFeとZnとの供給が健全に行われず、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となるからである。比液量Vの上限は、特に限定されるものではないが、比液量Vを30mL/cmより大きくすると、一度に処理できるアルミニウム合金基板120の数量が少なくなり、生産効率が低下する。
4−2.ジンケート処理中のアルミニウム合金基板120の回転数R(rpm)
均一な膜厚のジンケート皮膜110を形成するために、アルミニウム合金基板120の表面にFeとZnとを均一に供給する必要がある。このためには、アルミニウム合金基板120の表面に対して、平行な液流(層流)を発生させることが好ましい。そのために、図2(A)および図2(B)に示すように、ジンケート処理溶液を入れる容器10と回転治具20とを備えるジンケート処理装置100を使用し、容器10にジンケート処理溶液を入れて、アルミニウム合金基板120を回転させるとよい。
回転治具20は、複数の溝31が等間隔に設けられた軸30と、軸30を回転可能に軸支する軸受け40と、モータ50と、モータ50の軸に配置されたプーリ60と、プーリ60と軸30とに掛け渡されたベルト70を備える。モータ50がプーリ60を回転させると、ベルト70を介して軸30が回転する。溝31の径は、アルミニウム合金基板120の中心に設けられた円形の穴の径より小さい。アルミニウム合金基板120は、その穴に差し込まれた軸30の溝31に置かれる。このとき、アルミニウム合金基板120の穴の最上部で溝31と接触する。また、アルミニウム合金基板120の中心は、軸30の中心軸より下に位置する。軸30が回転すると、アルミニウム合金基板120は、溝31と接触している部分で力をうけて回転する。外径が2.5〜3.5インチである場合、アルミニウム合金基板120の回転数Rは、5〜60rpmとすることが好ましい。回転数Rが5rpmより小さい場合、FeおよびZnの供給が少なくなり、ジンケート皮膜110の膜厚が不均一になる。回転数Rが60rpmより大きい場合、乱流となってしまいアルミニウム合金基板120毎にジンケート皮膜110の膜厚が異なってしまう。なお、表面に対して平行な液流を発生させるためには、アルミニウム合金基板120の間隔を2mm以上とするとよい。上限は特に限定されないが、この距離が大きくなると一度にジンケート処理できるアルミニウム合金基板120の数が少なくなり生産性が落ちるため、生産効率に応じて調整すればよい。
また、回転治具20は、アルミニウム合金基板120を回転させられるものであれば特に限定されず、複数の軸30を備えてもよい。例えば、図3(A)および図3(B)に示すように、複数の従軸32が主軸34を中心として公転しながら自転する回転治具21を用いてもよい。回転治具21は、歯車を有する複数の従軸32と、従軸32の歯車と歯合する固定歯車33と、固定歯車33を固定する主軸34と、主軸34に回転可能に軸支される回転盤35と、主軸34を固定する軸受け41と、モータ50と、プーリ60と、プーリ60と回転盤35とに掛け渡されたベルト70と、を備える。従軸32は、主軸34を中心とした回転盤35の円周に回転可能に軸支されている。また、従軸32には、複数の溝31が等間隔に設けられている。また、アルミニウム合金基板120は、溝31に置かれる。モータ50がプーリ60を回転させると、ベルト70を介して回転盤35が回転する。回転盤35が回転すると、従軸32が主軸34を中心として公転する。従軸32が公転すると、固定歯車33に歯合した従軸32の歯車に力が加わり、従軸32が自転(回転)する。従軸32が公転しながら自転すると、それに伴って、従軸32の溝31に置かれたアルミニウム合金基板120も公転しながら自転する。
アルミニウム合金基板120の自転の回転数Rが、公転の回転数の5倍程度となるように、従軸32の歯車と固定歯車33とのギア比を決定するとよい。自転の回転数Rが公転の5倍程度であると、公転がアルミニウム合金基板120の表面に対して平行な液流を発生させることに影響を与えることはほとんど無く、自転の回転数Rを制御するだけで良い。この場合、アルミニウム合金基板120の外径が2.5〜3.5インチである場合、回転数Rは、5〜60rpmとすることが好ましい。また、アルミニウム合金基板120の間隔も、回転治具20の場合と同様に2mm以上とするとよい。
4−3.ジンケート処理溶液の温度T(℃)
ジンケート処理溶液の温度Tは、反応速度に影響する。ジンケート処理溶液の温度Tが15℃より低い場合には、反応速度が遅くなるため処理時間を長くする必要があり、生産効率が低下する。温度をさらに低くすると、反応が起こらなくなり、ジンケート皮膜110の生成ができなくなる。ジンケート処理溶液の温度Tが高い場合には、反応速度が速くなるため、処理時間を短くすることが可能である。ジンケート処理溶液は強アルカリ性であるため、温度Tが30℃より高くなると、アルミニウム合金基板120が溶解する。または、生成したジンケート皮膜110のZnが溶解し、ジンケート皮膜110の膜厚が不均一となる。このため、ジンケート処理溶液の温度Tは、15〜30℃であることが好ましい。
4−4.ジンケート処理時間t(s)
ジンケート処理時間tは、ジンケート皮膜110の膜厚の均一性に影響する。ジンケート処理時間tが15sより短い場合には、反応時間が不十分であるため不均一な膜厚のジンケート皮膜110となる。一方、ジンケート処理時間tが60sより長い場合には、ジンケート皮膜110のZnが強アルカリにより溶解されることで、膜厚が不均一なジンケート皮膜110となってしまう。このため、ジンケート処理時間tは、15〜60sであることが好ましい。
4−5.ジンケート処理条件の最適条件
上述した4つのジンケート処理条件(比液量V、回転数R、温度T、および時間t)は、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0を満たすように規定される。
このように規定した理由を以下に示す。
(V/R)×(T/t)で表される値が0.1未満の場合、ジンケート皮膜110中でZn量に対するFe量が少なくなる。このため、アルミニウム合金基板120の近傍で無電解Ni−Pめっき溶液130のpHが高くなり、Ni−P粒子150が生成され、クレーター欠陥が発生するためである。一方、(V/R)×(T/t)で表される値が4.0を超える場合、ジンケート皮膜中においてZn量に対するFe量が多くなる。このため、アルミニウム合金基板120の近傍における無電解Ni−Pめっき溶液130のpHが低くなり、局部的なガス発生により、ピットが発生するためである。従って、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0を満たす場合、クレーター欠陥およびピットの発生を抑制するジンケート皮膜を生成することができる。また、0.3≦(V/R)×(T/t)≦1.0とすることがより好ましい。
5.アルミニウム合金基板120の組成
本実施の形態のアルミニウム合金基板120は、Mg:2.5〜10.0mass%、Cu:0.005〜0.200mass%、Zn:0.05〜0.60mass%、Be:0.00001〜0.00200mass%を含有し、Cr:0.300mass%以下、Si:0.050mass%以下、Fe:0.050mass%以下、Cl;0.00500mass%以下に規制され、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなることが好ましい。
このようにすることで、クレーター欠陥およびピットの少ない磁気ディスク用基板を得ることができる。この理由は、後述する各元素の説明で述べる。以下、アルミニウム合金基板120に含まれる各元素(Mg、Cu、Zn、Be、Cr、Si、Fe、Cl)の作用、効果およびこれらの好ましい含有率について説明する。
Mgは、一般にアルミニウム合金基板120の強度を向上させる効果を有する。また、Mgは、ジンケート処理時のジンケート皮膜110を均一に薄く、かつ、緻密に付着させる作用を有するので、無電解Ni−Pめっき工程においてピットの発生を抑制し、Ni−P膜140の表面の平滑性を向上させる。Mgの含有量は、好ましくは2.5〜10.0mass%である。この理由は、Mgの含有量が2.5mass%未満では、アルミニウム合金基板120の強度が不十分になる虞があるためである。また、10.0mass%を超えると、粗大なMg−Si系化合物が生成し、ジンケート処理時の反応が不均一になり、切削や研削加工時にこのMg−Si系化合物が脱落することで、ピットが発生する虞がある。その結果、Ni−P膜140の表面の平滑性が低下する虞があるためである。より好ましいMg含有量は、強度と製造の容易さの兼合いから4.0〜6.0mass%である。
Cuは、ジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させる効果を有する。その結果、無電解Ni−Pめっき工程においてピットの発生を抑制し、Ni−P膜140の表面を平滑にする作用がある。Cuの含有量は、好ましくは0.005〜0.200mass%である。この理由は、Cu含有量が0.005mass%未満では、上記効果が十分に得られない虞があるためである。また、Cu含有量が0.200mass%を超えると、粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成し、ジンケート処理時の反応が不均一になることでピットを発生させる虞がある。更に、材料自体の耐食性を低下させ、ジンケート皮膜110の膜厚が不均一となる虞があるためである。より好ましいCu含有量は、0.010〜0.100%である。
Znは、Cuと同様にジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜110の膜厚を均一に、薄く、緻密に付着させる効果を有する。その結果、無電解Ni−Pめっき工程で、ピットの発生が抑制され、Ni−P膜140の表面の平滑性が向上する。Znの含有量は、好ましくは0.05〜0.60mass%である。この理由は、Zn含有量が、0.05mass%未満では、上記効果が十分に得られない虞があるためである。また、0.60mass%を超えると、粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成し、ピットを発生させる虞がある。更に、材料自体の耐食性が低下し、ジンケート皮膜110の膜厚が不均一となる虞がある。さらに、材料自体の加工性や耐食性を低下させる虞があるためである。より好ましいZn含有量は、0.10〜0.350mass%である。
Beは、鋳造時に、Mgの溶湯酸化を抑制する効果を有する。しかしながら、BeはAlよりも卑な金属であるため、アルミニウム合金基板120の表面にBe濃縮相が形成されると、Be濃縮相とアルミニウム合金基板120とで電池が形成される。Be濃縮相が溶解することでNi−Pの置換反応が不均一となり、局部的なガスが連続的に発生することによりピットが発生すると考えられる。Be含有量が0.00001mass%未満では鋳造時にMgの溶湯酸化を抑制する効果が弱くなり、鋳造が困難となる虞がある。一方、Be含有量が0.00200mass%を超えると、Be濃縮相が多く形成され、ピットが発生する虞がある。このため、Beの含有量は、好ましくは0.00001〜0.00200mass%であり、より好ましくは0.00003〜0.00100mass%である。
Crは、鋳造時に微細な金属間化合物を生成し、一部はマトリックスに固溶して強度向上に寄与する。また切削性と研削性とを高め、更に再結晶組織を微細にして、Ni−P膜140の密着性を向上させる効果を有する。Crの含有量は、好ましくは0.300mass%以下である。この理由は、Cr含有量が0.300mass%を超えると、鋳造時において過剰分が晶出すると同時に、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成し、ジンケート処理時の反応の不均一および切削や研削加工時に脱落することでピット発生の原因となる虞があるためである。より好ましいCr含有量は、0.200mass%以下である。
Siは、Mgと結合し、Ni−P膜140で欠陥となる金属間化合物を生成する。このため、アルミニウム合金中にSiが含有されることは好ましくない。具体的には、Siの含有量が0.050mass%を超えると、粗大なMg−Si系金属間化合物が生成してピットなどの発生原因になる虞がある。従って、Si含有量を0.050mass%以下に規制することが好ましく、0.025mass%未満に規制するのがより好ましく、0mass%がさらに好ましい。
Feは、アルミニウム合金中には殆ど固溶せず、Al−Fe系金属間化合物としてアルミニウム合金中に含まれる。このAl−Fe系金属間化合物は、Ni−P膜140において欠陥となるため、アルミニウム合金中にFeが含有されることは好ましくない。Feの含有量が0.050mass%を超えると、粗大なAl−Fe系金属間化合物が生成してピットなどを発生させる虞がある。従って、Fe含有量を0.050mass%以下に規制することが好ましく、0.025mass%未満に規制するのがより好ましく、0mass%がさらに好ましい。
Clの含有量が多いとMgと結合し、一部はMg−Cl系化合物として存在する。Cl系化合物は、溶解性が極めて高いため、水溶液に触れると容易に溶解する。溶解に伴いClが放出されると、局部的にCl濃度が大きくなる。これによりアルミニウム合金基板120の主面に孔食が発生し、アルミニウム合金基板120が溶解する虞がある。無電解Ni−Pめっき初期でアルミニウム合金基板120の主面に孔食が発生すると、アルミニウム合金基板120が溶解し、ピットが発生する虞がある。一方、Cl含有量が少ないと、Mg−Cl系化合物が含まれないため、上記のようなピットは発生しない。このため、Clの含有量は、好ましくは0.00500%以下、より好ましくは0.00200%以下に規制する。
その他の元素
本実施の形態に係るアルミニウム合金の残部は、アルミニウムと不可避的不純物とからなる。ここで、不可避的不純物(例えばMn等)は、各々が0.03mass%以下で、かつ、合計で0.15mass%以下であれば、本実施の形態で得られるアルミニウム合金基板120としての特性を損なうことはない。
6.磁気ディスク用のアルミニウム合金基板120の製造方法
次に、本実施の形態に係るアルミニウム合金基板120の製造方法について説明する。まず、所定の合金組成に調製されたアルミニウム合金溶湯を、半連続鋳造(DC鋳造)法などの常法に従って鋳造し、鋳塊を得る。鋳造時の冷却速度を0.1℃/秒以上とするのが好ましい。この理由は、冷却速度が0.1℃/秒未満の場合、粗大な金属間化合物が生成し、切削や研削の加工時において、これらの金属間化合物が連続して脱落し大きな窪みが発生し、めっき表面の平滑性が低下する虞があるためである。なお、冷却速度の上限値は、特に限定されるものではなく、鋳造装置の能力によって自ずと決定される。冷却速度は、例えば0.5℃/秒である。
得られた鋳塊に、必要に応じて均質化処理を施す。均質化処理は、好ましくは350〜550℃の温度で、1〜5時間加熱することにより実施される。鋳造後又は均質化処理後に、鋳塊を熱間圧延する。その条件は、特に限定されるものではなく、例えば、熱間圧延を開始するときの温度を350〜500℃とし、熱間圧延を終了するときの温度を260〜380℃とする。
熱間圧延の終了後、冷間圧延によって、所望の製品板厚に仕上げる。冷間圧延の条件は、特に限定されるものではなく、製品に必要な強度や板厚に応じて定めれば良く、例えば圧延率を20〜90%とする。冷間圧延の前又は冷間圧延の途中において、冷間圧延を実施するときの加工性を確保するために、好ましくは280〜450℃で、好ましくは0時間超10時間以下で焼鈍を施してもよい。以上のようにして、アルミニウム合金基板120を得る。
7.磁気ディスクの製造方法
以上のようにして得たアルミニウム合金基板120を用いて、磁気ディスクを製造する。まず、アルミニウム合金基板120を円環状に打ち抜き、円環状のアルミニウム合金基板120を作製する。次いで、このアルミニウム合金基板120に加圧焼鈍を行なって、平坦化したディスクブランクを作製する。このディスクブランクに切削加工、研削加工を施す。その後、歪みを除去するために、好ましくは300〜400℃、5〜15分の加熱処理を施して、磁気ディスク用基板を得る。次いで、この磁気ディスク用基板に、後述する脱脂処理、エッチング処理、めっき前処理、無電解Ni−Pめっき処理及びスパッタリングによる磁性体膜の形成をこの順序で行い磁気ディスクを作製する。
脱脂処理は、例えば、脱脂液にAD−68F(上村工業製)を用い、比液量5〜30mL/cm、回転数5〜60rpm、温度40〜70℃、処理時間3〜10分、濃度200〜800mL/Lの条件で実施される。エッチング処理は、例えば、エッチング液にAD−107F(上村工業製)を用い、比液量5〜30mL/cm、回転数5〜60rpm、温度50〜75℃、処理時間0.5〜5分、濃度20〜100mL/Lの条件で実施される。なお、エッチング処理と後述のジンケート処理との間に、通常のデスマット処理を行なってもよい。
めっき前処理は、1度目のジンケート処理と、Zn剥離処理と、2度目のジンケート処理と、を含む。
1度目のジンケート処理では、水酸化ナトリウム5〜15mass%、酸化亜鉛0.5〜2mass%、酒石酸0.5〜2mass%、鉄化合物(例えば、塩化第二鉄や硝酸鉄)0.1〜3mass%を含み、塩化物濃度3mass%以下に規制し、pH=12〜15になるように調製したジンケート処理液を用い、比液量V5〜30mL/cm、回転数R5〜60rpm、温度T15〜30℃、処理時間t15〜60秒の条件で実施することが好ましい。また、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0を満たすように比液量V、回転数R、温度T、および処理時間tを設定するとより好ましい。
Zn剥離処理では、10〜60vol%HNO水溶液(室温)を用いて、5〜60秒間、一度目のジンケート処理で形成されたジンケート層を剥離するとよい。
2度目のジンケート処理では、1度目のジンケート処理の条件と同様の条件で実施するとよい。
無電解Ni−Pめっき処理では、無電解Ni−Pめっき溶液130を用い、比液量5〜30mL/cm、回転数5〜60rpm、温度80〜95℃、処理時間30〜180分、Ni濃度3〜10g/Lの条件で、行うことが好ましい。無電解Ni−Pめっき処理の後、表面にNi−P膜140が配置された磁気ディスク用基板を得る。最後に、Ni−P膜140の表面にスパッタリングによって磁性体膜を形成し、磁気ディスクを得る。
本実施の形態に係る磁気ディスク用基板によれば、製造工程中で成形されるジンケート皮膜110に含まれるFeとZnとの構成比が好適である場合、クレーター欠陥およびピットが少なくなる。また、磁気ディスク用基板をGDSで測定し、測定した値が0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5の条件を満たす場合、製造工程中で成形されるジンケート皮膜110に含まれるFeとZnとの構成比が好適であったことが判り、このことによりクレーター欠陥およびピットが少なくなったことを確認できる。従って、製造した磁気ディスクにクレーター欠陥およびピットの多いものが発見された際、GDSを用いて分析することで、その原因が、製造工程中でのジンケート皮膜110中のFeとZnとの構成比に起因するものかを特定できる。また、本実施の形態に係る磁気ディスク用基板の製造方法によれば、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0の条件を満たすことで、クレーター欠陥およびピットの発生を抑制するジンケート皮膜110を作製することができる。これにより、クレーター欠陥およびピットの発生が少ない磁気ディスク用基板を製造できる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、表1に示す成分組成の各アルミニウム合金(A1〜A29)を常法に従って溶解し、アルミニウム合金(A1〜A29)溶湯を溶製した。なお、アルミニウム合金(A1〜A29)の残部は、Al及び不可避不純物である。次に、アルミニウム合金(A1〜A29)溶湯をDC鋳造法により鋳造し、鋳塊を作製した。この鋳塊の両面15mmを面削し、510℃で3時間の均質化処理を施した。次に、この鋳塊に熱間圧延の開始時の温度460℃、熱間圧延の終了時の温度340℃で熱間圧延を行ない、板厚3.0mmの熱間圧延板を得た。中間焼鈍を行なわずに、熱間圧延板を、板厚1.0mmになるように、冷間圧延(圧延率67%)し、最終圧延板を得た。このようにして得た最終圧延板を、外径96mm、内径24mmの円環状に打抜き、円環状のアルミニウム合金(A1〜A29)板を作製した。
Figure 2018005968
上記のようにして得た円環状のアルミニウム合金(A1〜A29)板に、1.5MPaの圧力下において400℃で3時間の加圧焼鈍を施し平坦化したディスクブランクを得た。更に、このディスクブランクに切削加工を施して外径95mm、内径25mmとし、更に、表面を10μm研削する研削加工を行った。次に、350℃で、10分の歪取り加熱処理した。
その後、脱脂液(AD−68F(上村工業製))を用いて、60℃で5分の脱脂を行った。その後、エッチング液(AD−107F(上村工業製))を用いて、65℃で3分のエッチングを行い、更に30%HNO水溶液(室温)で50秒間デスマットを行なった。
その後、水酸化ナトリウム10mass%、酸化亜鉛1.5mass%、酒石酸1mass%を添加し、硝酸鉄(塩化物濃度0mass%)または塩化第二鉄で鉄含有率0.1mass%、塩化ナトリウムで表2に示す塩化物濃度になるように、ジンケート処理液を調製した。このジンケート処理液を用いて、表2および表3に示す条件で、1度目のジンケート処理を行った。ジンケート処理後に、30%HNO水溶液(室温)で60秒間ジンケート層の剥離を行った。その後、1度目のジンケート処理と同じ条件で2度目のジンケート処理を行った。2度目のジンケート処理の後、無電解Ni−Pめっき処理液(ニムデンHDX(上村工業製))を用いてNi−P膜を17μm厚さに無電解めっきし、次いで、羽布により仕上げ研磨(研磨量4μm)を行い、磁気ディスク用基板を得た。
Figure 2018005968
Figure 2018005968
(IFe)/(IZn)の算出
仕上げ研磨後の磁気ディスク用基板について、GDS(JY5000RF、HORIBA製)の設定をガス圧力400Pa、出力30Wとし、300s測定した。測定後、Ni−P膜とアルミニウム合金板との間に存在するFe原子の最大発光強度(IFe)とZn原子の最大発光強度(IZn)とを測定し、測定した値から(IFe)/(IZn)を算出した。
Ni−P膜表面の評価
仕上げ研磨後の磁気ディスク用基板を50℃の50vol%硝酸に3分間浸漬し、Ni−P膜の表面をエッチングした。エッチングの後にSEM(Scanning Electron Microscope)(JSM−6460LA、JEOL製)を用い、5000倍の倍率で5視野撮影した。5視野撮影した写真からクレーター欠陥とピットの個数を数えた。クレーター欠陥の個数とピットの個数の合計が5個未満/視野であれば優良◎、5個以上10個未満/視野であれば良好○、10個以上/視野であれば不良×とした。評価結果を表2および表3に示す。
評価結果
実施例1−51では、クレーター欠陥とピットの個数の合計が10個未満/視野(良好○)または5個未満/視野(優良◎)であった。これは、Ni−P膜とアルミニウム合金板との間に存在するFe原子の最大発光強度(IFe)とZn原子の最大発光強度(IZn)との値が、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5を満たしたためと考えられる。
実施例1−51で、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5を満たしていた理由は、ジンケート処理の条件が好適範囲に設定されていたためと考えられる。
ジンケート処理の条件の好適範囲は、ジンケート処理液のCl含有量が3.0mass%以下であり、比液量V5〜30mL/cm、回転数R5〜60rpm、温度T15〜30℃、処理時間t15〜60秒の条件を満たし、且つ比液量V、回転数R、温度T、および時間tが0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0を満たす範囲である。
また、実施例1、実施例25−37、実施例48、実施例50で、クレーター欠陥とピットの個数の合計が5個未満/視野(優良◎)となった理由は、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5を満たしていたことに加えて、アルミニウム合金板が、Mg:2.5〜10.0mass%、Cu:0.005〜0.200mass%、Zn:0.05〜0.60mass%、Be:0.00001〜0.00200mass%を含有し、Cr:0.300mass%以下、Si:0.050mass%以下、Fe:0.050mass%以下、Cl;0.00500mass%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなるものであったためである。なお、実施例48、実施例50は、Si、Feの含有量を限りなく少なくしたものである。
これに対して、比較例1−10では、クレーター欠陥とピットの個数の合計が10個以上/視野(不良×)となった。
比較例1、比較例3−10で、クレーター欠陥とピットの個数が10個以上/視野(不良×)となった理由は、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5が満されていなかったためと考えられる。比較例2で、クレーター欠陥とピットの個数が10個以上/視野(不良×)となった理由は、(IFe)/(IZn)の値が好適範囲の下限値に近く、比液量Vが好適範囲より小さかったため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。
次に、比較例1、比較例3−10で、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5を満たしていなかった理由をそれぞれ分析する。
比較例1では、溶液中のCl含有量が3.0mass%より多かったためジンケート皮膜のZnが溶解し、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。比較例3では、アルミニウム合金板を静止したため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。比較例4では、(V/R)×(T/t)の値が4より大きいため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったと考えられる。比較例5、比較例6では、ジンケート処理溶液の温度Tが好ましい範囲より大きかったため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。比較例7では、(V/R)×(T/t)の値が0.1より小さいため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。比較例8では、(V/R)×(T/t)の値が4より大きいため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。比較例9では、アルミニウム合金板の回転数Rが好ましい範囲より大きかったため、ジンケート皮膜が不均一となったためと考えられる。比較例10では、ジンケート処理溶液の温度Tが好ましい範囲より小さかったため、ジンケート皮膜の膜厚が不均一となったためと考えられる。
上記の結果から、実施例1〜51に係る磁気ディスク用基板の製造方法によれば、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0の条件を満たすことで、ジンケート皮膜中のFeとZnとの構成比が0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5の条件を満たすことが判った。また、実施例1〜51に係る磁気ディスク用基板によれば、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5の条件を満たす場合、クレーター欠陥およびピットが少ないことが判った。また、無電解Ni−Pめっき処理後であっても、GDSを用いて、磁気ディスク用基板の製造工程中でのジンケート皮膜110中のFeとZnとの構成比を分析できることが判った。
本発明に係る磁気ディスク用基板および磁気ディスク用基板の製造方法によれば、クレーター欠陥およびピットを少なくできる。これにより、磁気ディスク1枚あたりの記憶容量を増加させることが可能となる。
10 容器
20、21 回転治具
30 軸
31 溝
32 従軸
33 固定歯車
34 主軸
35 回転盤
40、41 軸受け
50 モータ
60 プーリ
70 ベルト
100 ジンケート処理装置
110 ジンケート皮膜
120 アルミニウム合金基板
130 無電解Ni−Pめっき溶液
140 Ni−P膜
150 Ni−P粒子

Claims (3)

  1. アルミニウム合金基板と、前記アルミニウム合金基板の表面に配置されたNi−P膜と、を備える磁気ディスク用基板において、
    グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Spectroscopy:GDS)で、前記Ni−P膜と前記アルミニウム合金基板との間に存在しているFe原子およびZn原子の発光強度を測定し、前記Fe原子の最大発光強度を(IFe)、前記Zn原子の最大発光強度を(IZn)とし、0.2≦(IFe)/(IZn)≦1.5である、
    ことを特徴とする磁気ディスク用基板。
  2. 前記アルミニウム合金基板は、
    Mg:2.5〜10.0mass%、
    Cu:0.005〜0.200mass%、
    Zn:0.05〜0.60mass%、
    Be:0.00001〜0.00200mass%を含有し、
    Cr:0.300mass%以下、Si:0.050mass%以下、Fe:0.050mass%以下、Cl;0.00500mass%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用基板。
  3. 1度目のジンケート処理、Zn剥離処理、2度目のジンケート処理を含み、1度目および2度目のジンケート処理において、ジンケート処理溶液のCl含有量が3.0mass%以下であり、比液量V(mL/cm)、アルミニウム合金基板の回転数R(rpm)、ジンケート処理溶液の温度T(℃)、ジンケート処理時間t(s)とし、0.1≦(V/R)×(T/t)≦4.0であるめっき前処理と、
    前記めっき前処理の後に、無電解Ni−Pめっきにより前記アルミニウム合金基板の表面にNi−P膜を形成するNi−Pめっき処理と、
    を備えることを特徴とする磁気ディスク用基板の製造方法。
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