以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
本実施形態における表面形状測定装置は、測定対象である被測定物の表面形状、特にいわゆるナノトポグラフィを好適に測定できる装置である。被測定物は、例えば、半導体ウェハ等の板状体であり、好適には、表面形状測定装置の1回の測定範囲よりも大きな面積の表面を持つ。このような本実施形態における表面形状測定装置は、光干渉計を用いて被測定物の形状に関する測定データを生成する光学測定系と、前記被測定物を保持し、前記被測定物と前記光学測定系とを相対的に移動する保持移動部と、前記保持移動部によって前記被測定物と前記光学測定系とを相対的に移動することによって、前記被測定物における互いに異なる複数の表面位置で前記光学測定系によって生成された複数の測定データに基づいて、前記被測定物における一方表面全体の表面形状を求める形状演算部とを備える。そして、前記形状演算部は、前記複数の測定データそれぞれについて、当該測定データに基づいて、所定の第1周期成分を抽出するように、前記第1周期成分よりも長周期な第2周期成分を除去するフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、前記複数の測定データに対応する前記フィルタ処理部による複数のフィルタ処理結果を、互いに隣接する表面位置間で接続する接続処理部とを備える。以下、より具体的に説明する。
図1は、実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図2は、前記表面形状測定装置に用いられる第1態様の保持移動部において、保持体および保持片を説明するための正面図である。図3は、前記第1態様の保持移動部において、保持片による被測定物の保持状態を説明するための保持片周辺の拡大図側面である。図4は、前記表面形状測定装置に用いられる第2態様の保持移動部を説明するための図である。図5は、前記第1および第2態様の各保持移動部それぞれにおいて、被測定物と測定範囲との関係を説明するための図である。図6は、前記表面形状測定装置に用いられる第3態様の保持移動部を説明するための図である。図7は、前記第3態様の保持移動部において、被測定物と測定範囲との関係を説明するための図である。
実施形態における表面形状測定装置Mは、例えば、図1に示すように、光学測定系1と、保持移動部7と、形状演算部22を持つ制御演算部2とを備え、図1に示す例では、さらに、記憶部3と、入力部4と、出力部5と、インターフェース部(IF部)6とを備える。
入力部4は、制御演算部2に接続され、例えば、被測定物SPの形状測定の開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば被測定物SPにおける識別子の入力等の形状を測定する上で必要な各種データを表面形状測定装置Mに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部5は、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、入力部4から入力されたコマンドやデータ、および、表面形状測定装置Mによって測定された被測定物SPの形状を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
なお、入力部4および出力部5からタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部4は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部5は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として形状測定装置Mに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い表面形状測定装置Mが提供される。
IF部6は、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS−232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。
光学測定系1は、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、光干渉計を用いて被測定物SPの形状に関する測定データを生成する装置である。光干渉計は、所定の波長を持つ測定光が入射され、前記測定光の入射位置から干渉位置までの間に2個の第1および第2光路を形成する複数の光学素子(例えば全反射ミラー、ハーフミラー、レンズ等)を備える装置である。前記光干渉計における前記第1および第2光路のうちの一方に、被測定物SPを配置することによって、前記第1光路の第1光学的距離と前記第2光路の第2光学的距離との間に、差が生じる。この差によって、前記測定光から分配された第1および第2光における前記第1光路を伝播した第1光と前記第2光路を伝播した第2光とは、前記干渉位置で干渉し、いわゆる干渉縞を生じる。このような光干渉計は、例えば、マイケルソン干渉計、トワイマングリーン干渉計、フィゾー干渉計等の種々の光干渉計を用いることができる。そして、この光干渉計による前記干渉縞を例えば2次元イメージセンサ等を備えるカメラによって撮像することで前記測定データがその一例として生成される。
保持移動部7は、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、被測定物SPを保持し、被測定物SPと光学測定系1とを相対的に移動する装置である。保持移動部7は、光学測定系1の1回の測定範囲SAよりも大きい被測定物SPを保持する。すなわち、保持移動部7は、光学測定系1の1回の測定範囲SAよりも大きい被測定物SPを保持するように構成される。保持移動部7は、例えば、被測定物SPを固定的に保持し、この固定的に保持された被測定物SPに対し光学測定系1を移動することで、被測定物SPと光学測定系1とを相対的に移動するように構成されて良く、また例えば、被測定物SPおよび光学測定系1それぞれを移動することで、被測定物SPと光学測定系1とを相対的に移動するように構成されて良い。本実施形態では、光学測定系1が図略の支持部材によって固定的に保持され、この固定的に保持された光学測定系1に対し被測定物SPを移動することで、被測定物SPと光学測定系1とを相対的に移動するように構成されている。このような本実施形態における保持移動部7として、例えば、第1ないし第3態様の保持移動部7のうちのいずれかが好適に用いられる。
第1態様の保持移動部7は、被測定物SPを縦置きで保持する保持部(第1保持部)と、前記保持部を、横方向の径方向(r方向)および周方向(θ方向)の2軸(rθ軸)で移動する移動部とを備える。この第1態様の保持移動部7は、以下でより詳しく説明する。このような第1態様の保持移動部7を用いた表面形状測定装置Mは、被測定物SPを縦置きで保持するので、被測定物SPの自重による撓みを低減できる。そして、このような表面形状測定装置Mは、前記保持部を横方向の径方向に移動するので、前記保持部を移動荷重の小さい方向で移動でき、前記移動部の小型化、ひいては表面形状測定装置Mの小型化を図れる。
第2態様の保持移動部7は、例えば、図4に示すように、被測定物SPを横置きで保持する第2保持部と、前記第2保持部を、径方向(r方向)および周方向(θ方向)の2軸(rθ軸)で移動する移動部とを備える。図4Aは、光学測定系1における測定範囲SAの中心位置と被測定物SPの中心位置とが互いに一致するように、被測定物SP(前記第2保持部)と光学測定系1とを相対的に移動させた後の様子を示し、図4Aは、光学測定系1における測定範囲SAが被測定物SPの一方端部に位置するように、被測定物SP(前記第2保持部)と光学測定系1とを相対的に移動させた後の様子を示す。例えば、第2態様の保持移動部7は、一方向に移動するステージと、前記ステージ上に設けられ、回転移動するターンテーブルと、前記ターンテーブル上に設けられた前記第2保持部とを備える。前記第2保持部は、第1態様の保持移動部7における前記保持部(前記第1保持部)と構造的には同様に構成されている。このような第2態様の保持移動部7は、例えば、図5に示すように、まず、移動部によって第2保持部を径方向および周方向で適宜に移動することで、光学測定系1における測定範囲SAの中心位置と被測定物SPの中心位置とを互いに一致させ、表面形状測定装置Mは、測定を行う。次に、第2態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することで径方向で隙間無く測定できる径方向の所定の位置に、光学測定系1に対して第2保持部を移動部によって移動する。この径方向の所定の位置において、第2態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することで周方向で隙間無く測定できる、周方向に並ぶ複数の測定範囲SAそれぞれに対応する複数の表面位置それぞれに位置するように、移動部によって第2保持部を周方向に移動し、表面形状測定装置Mは、前記複数の表面位置それぞれで測定を行う。そして、このような径方向の移動と周方向の移動および測定とが、被測定物SPの端部まで繰り返される。これによって被測定物SPの表面全体に亘って光学測定系1によって測定データが生成される。このような表面形状測定装置Mは、被測定物SPを横置きで保持するので、第2態様の保持移動部7の構造を簡素化できる。
第3態様の保持移動部7は、例えば、図6に示すように、被測定物SPを横置きで保持する第2保持部と、前記第2保持部を、線形独立な2方向の2軸で移動する第2移動部とを備える。図6Aは、光学測定系1における測定範囲SAの中心位置と被測定物SPの中心位置とが互いに一致するように、被測定物SP(前記第2保持部)と光学測定系1とを相対的に移動させた後の様子を示し、図4Aは、光学測定系1における測定範囲SAが被測定物SPの一方端部に位置するように、被測定物SP(前記第2保持部)と光学測定系1とを相対的に移動させた後の様子を示す。例えば、第3態様の保持移動部7は、互いに直交するX方向およびY方向それぞれに独立に移動するXYステージと、前記XYステージ上に設けられた前記第2保持部とを備える。このような第3態様の保持移動部7は、例えば、図7に示すように、まず、第2移動部によって第2保持部をX方向およびY方向で適宜に移動することで、光学測定系1の測定範囲SAを被測定物SPの或る一方の端部に位置に、光学測定系1に対して第2保持部を第2移動部によって移動し、表面形状測定装置Mは、測定を行う。次に、第3態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することでX方向(またはY方向)で隙間無く測定できる、X方向(またはY方向)に並ぶ複数の測定範囲SAそれぞれに対応する複数の表面位置それぞれに位置するように、第2移動部によって第2保持部をX方向に移動し、表面形状測定装置Mは、前記複数の表面位置それぞれで測定を行う。次に、第3態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することでY方向(またはX方向)で隙間無く測定できるY方向(またはX方向)の所定の位置に、光学測定系1に対して第2保持部を第2移動部によって移動し、表面形状測定装置Mは、測定を行う。次に、このY方向(またはX方向)の所定の位置において、第3態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することでX方向(またはY方向)で隙間無く測定できる、X方向(またはY方向)に並ぶ複数の測定範囲SAそれぞれに対応する複数の表面位置それぞれに位置するように、第2移動部によって第2保持部をX方向に移動し、表面形状測定装置Mは、前記複数の表面位置それぞれで測定を行う。そして、このようなY方向(またはX方向)の移動とX方向(またはY方向)の移動および測定とが、被測定物SPの他方の端部まで繰り返される。これによって被測定物SPの表面全体に亘って光学測定系1によって測定データが生成される。好ましくは、第3態様の保持移動部7は、光学測定系1における測定範囲SAの中心位置と被測定物SPの中心位置とを互いに一致できるように構成される。このような表面形状測定装置Mは、被測定物SPを横置きで保持するので、第3態様の保持移動部7の構造を簡素化できる。
保持移動部7は、上述したように、これら第2および第3態様のうちのいずれかであっても良いが、本実施形態では、第1態様で構成されている。より詳しくは、第1態様の保持移動部7は、図1ないし図3に示すように、ステージ71と、傾斜立設機構72と、ターンテーブル73と、調節機構74(74−1〜74−3)と、保持体75と、保持片76(76−1〜76−3)とを備える。
ステージ71は、支持台座8上に設けられ、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、図1に示す例では紙面垂直方向の一方向に移動する装置である。
傾斜立設機構72は、ステージ71上に設けられ、後述するように、保持片76を介して保持体75で保持された被測定物SPが横置きとなる、図1に二点鎖線で示す待機姿勢から、前記被測定物SPが縦置きとなる、図1に実線で示す測定姿勢まで、保持体75の姿勢を変更する装置である。好ましくは、測定姿勢では、保持体75は、傾斜立設機構72によって、鉛直方向から所定の角度θだけ傾けて立設される。被測定物SPをその自重で安定させるためには、前記所定の角度(鉛直方向からの傾き角度)θは、より大きい方が好ましいが、前記所定の角度θを大きくすると自重によって撓み変形が被測定物SPに生じ、仕様で規定される光学測定系1の測定許容範囲を越えてしまう。このため、前記所定の角度θは、光学測定系1の測定許容範囲によって設定される。例えば、前記所定の角度θは、1度ないし10度の範囲のうちのいずれかの値である。より好ましくは、前記所定の角度θは、2度ないし5度の範囲のうちのいずれかの値である。一例では、光学測定系1の干渉計がフィゾー干渉計である場合に、前記フィゾー干渉計の性能として許容される測定面角度が0.5mrad以下であって被測定物SPが450mmの半導体ウェハである場合では、前記所定の角度θは、約3度に設定される。
このような傾斜立設機構72は、例えば、板状部材である傾斜立設機構本体と、前記傾斜立設機構本体の一方側面に固定的にその各一方端部で連結された1対の第1および第2アーム部材と、前記第1および第2アーム部材の各他方端部に固定的にその両端部で連結された円柱状部材であるアーム軸と、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、前記アーム軸を回転駆動する、例えば減速機を介して前記アーム軸に連結される電動モータ等を備える動力部とを備える。このような構成の傾斜立設機構72では、前記動力部によってアーム軸を回転駆動することで、図1に二点鎖線で示す前記待機姿勢から、図1に実線で示す前記測定姿勢まで、保持体75の姿勢を変更する。
ターンテーブル73は、傾斜立設機構72に設けられ(図1に示す例では、前記傾斜立設機構本体上に設けられ)、制御演算部2の制御に従って、周方向に回転する装置である。
調節機構74は、ターンテーブル73に対する保持体75の傾きを調節する装置である。本実施形態では、調節機構74は、ターンテーブル73に対し保持体75を3点支持するように、3個の第1ないし第3調節機構74−1〜74−3を備えて構成される。これら第1ないし第3調節機構74−1〜74−3は、ターンテーブル73の面上に、保持体75を3点で支持するような適宜な各配設位置に配設される。一例では、これら第1ないし第3調節機構74−1〜74−3の前記各配設位置を結ぶと、三角形が形成される。これら第1ないし第3調節機構74−1〜74−3は、柱状の部材であり、これら第1ないし第3調節機構74−1〜74−3のうちの2個、例えば第1および第2調節機構74−1、74−2は、その長さが伸縮するように構成され、残余の1個、この例では第3調節機構74−3は、その長さが固定であるように構成される。より具体的には、第1および第2調節機構74−1、74−2は、それぞれ、ロッドを、例えばサーボモータやステッピングモータ等の駆動モータによって本体から出し入れすることで、その長さを伸縮させる装置であり、例えばリニアアクチュエータ等を備えて構成される。第1および第2調節機構74−1、74−2における前記各ロッドの各先端は、保持体75に連結され、保持体75を支持する。そして、第3調節機構74−3は、先端がボールヘッドである柱状部材であり、前記ボールヘッドの先端で保持体75を支持する。このような第1ないし第3調節機構74−1〜74−3は、第1および第2調節機構74−1、74−2の各長さを調整することで、ターンテーブル73に対する保持体75の傾きを、光学測定系1の測定面と略平行となるように、2軸回りで調節できる。
保持体75は、被測定物SPを保持するための部材であり、例えば、図1ないし図3に示すように、平面視にて矩形形状の、平面を持つ板状体である。保持体75は、変形を防止するために、比較的高い剛性を有する剛体板(力に対する変形の小さい板状体)で形成される。保持体75は、例えば、ステンレス鋼およびアルミニウム等の金属材料(合金を含む)によって形成される。
保持片76は、保持体75の平面に配設され、被測定物SPの一方面と保持体75の前記平面とを所定の間隔を空けるように、被測定物SPの縁部を介して被測定物SPを保持する部材である。これによって被測定物SPにおける前記一方面(表面)に対向する他方面(裏面)が保持体75に当接することが無く、被測定物SPの他方面の汚損を防止できる。好ましくは、保持片76は、被測定物SPの前記一方面と保持体75の前記平面とを前記所定の間隔を空けて平行となるように、被測定物SPを保持する。保持片76は、例えば、階段状の断面(略L字状の断面)を持ち、保持体75の前記平面から前記階段状における段部までの高さ(厚さ)が前記所定の間隔に相当し、そして、前記階段状における段部の内周形状の大きさが被測定物SPの外周形状の大きさと略同一または若干大きい円筒形状の部材であっても良いが、本実施形態では、保持片76は、図1および図3に示すように、階段形状の断面(略L字状の断面)を持つ3個の部材(第1ないし第3保持片76−1〜76−3)を備えて構成されている。これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3は、これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3における前記階段状における各段部で形成される内周形状の大きさが被測定物SPの外周形状の大きさと略同一または若干大きくなるように、所定の間隔を空けて、保持体75の前記平面上に配設されている。被測定物SPが例えば半導体ウェハの一般的な形状である円板形状である場合には、これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3は、図2に示すように、これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3における前記階段状における各段部で形成される内周形状の大きさが被測定物SPの外周形状の大きさと略同一または若干大きくなるような円周上であって、周方向に120度の等間隔で、保持体75の前記平面上に配設されている。これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3は、それぞれ、保持体75の前記平面から前記階段状における段部までの高さが前記所定の間隔に相当するように形成されている。例えば、これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3は、それぞれ、前記所定の間隔に相当する厚さを持つ板状片を、その途中位置で約90度に折り曲げて略L字状とすることで形成される。このような構成の保持片76では、図1ないし図3に示すように、これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3における前記階段状における各段部に、被測定物SPが載置されることで、これら第1ないし第3保持片76−1〜76−3は、互いに協働して、被測定物SPの縁部を介して被測定物SPを保持する。
このような構成の第1態様の保持移動部7は、前記測定姿勢において、ステージ71によって、保持体75を横方向の径方向(r方向)に移動でき、ターンテーブル73によって、保持体75を周方向(θ方向)に移動できる。そして、この第1態様の保持移動部7は、上記第2態様の保持移動部7と同様に、例えば、図5に示すように、まず、ステージ71およびターンテーブル73によって保持体75を径方向および周方向で適宜に移動することで、光学測定系1における測定範囲SAの中心位置と被測定物SPの中心位置とを互いに一致させ、表面形状測定装置Mは、保持体75上に保持片76を介して保持された被測定物SPの測定を行う。次に、第3態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することで径方向で隙間無く測定できる径方向の所定の位置に、光学測定系1に対して保持体75をステージ71によって移動する。この径方向の所定の位置において、第3態様の保持移動部7は、測定範囲SAの大きさ等を考慮することで周方向で隙間無く測定できる、周方向に並ぶ複数の測定範囲SAそれぞれに対応する複数の表面位置それぞれに位置するように、ターンテーブル73によって保持体75を周方向に移動し、表面形状測定装置Mは、前記複数の表面位置それぞれで、保持体75上に保持片76を介して保持された被測定物SPの測定を行う。そして、このような径方向の移動と周方向の移動および測定とが、被測定物SPの端部まで繰り返される。これによって被測定物SPの表面全体に亘って光学測定系1によって測定データが生成される。
記憶部3は、制御演算部2に接続され、制御演算部2の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、表面形状測定装置Mの各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、被測定物SPにおける互いに異なる複数の表面位置で光学測定系1によって生成された複数の測定データに基づいて、被測定物SPにおける一方表面全体の表面形状を求める形状演算プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記形状演算プログラムは、前記複数の測定データそれぞれについて、当該測定データを用いた位相回復計算によって位相画像を求める位相画像演算プログラムや、前記複数の測定データそれぞれについて、当該測定データに基づいて、所定の第1周期成分を抽出するように、前記第1周期成分よりも長周期な第2周期成分を除去するフィルタ処理を行うフィルタ処理プログラムや、前記複数の測定データに対応する前記フィルタ処理プログラムによる複数のフィルタ処理結果を、互いに隣接する表面位置間で接続する接続処理プログラム等を含む。前記フィルタ処理プログラムは、測定範囲SAの端部における当該測定データに対しフィルタ処理を行う場合に、フィルタ処理のフィルタサイズに足りないデータを、当該測定データの測定範囲SAに隣接する表面位置の測定範囲SAにおける測定データで補う補完プログラムや、前記補完プログラムによる補完後の測定データに対し前記フィルタ処理を行うフィルタプログラムや、前記フィルタプログラムによるフィルタ処理結果から、前記補完プログラムで補われたデータに対応する部分を除去する除去プログラム等を含む。前記各種の所定のデータには、光学測定系1で生成された前記複数の測定データや、求められた被測定物SPの表面形状や、被測定物SPを特定し識別するための識別子(被測定物ID、サンプル名、シリアル番号等)等の各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。記憶部3は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。記憶部3は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御演算部2のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
制御処理部2は、表面形状測定装置Mの各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、被測定物SPの表面形状を求めるものである。制御演算部2には、前記制御処理プログラムを実行することによって、機能的に、制御部21および形状演算部22が構成され、形状演算部22には、位相画像演算部221、フィルタ処理部222および接続処理部223が機能的に構成され、そして、フィルタ処理部222には、補完部2221、フィルタ部2222および除去部2223が機能的に構成される。
制御部21は、表面形状測定装置Mの各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するものである。
形状演算部22は、被測定物SPにおける互いに異なる複数の表面位置で光学測定系1によって生成された複数の測定データに基づいて、被測定物SPにおける一方表面全体の表面形状を求めるものである。
この被測定物SPの表面形状を求める際に、位相画像演算部221は、前記複数の測定データそれぞれについて、当該測定データを用いた、公知のいわゆる位相回復計算によって位相画像を求めるものである。前記測定データは、好ましくは、干渉縞画像であり、前記位相画像は、被測定物SPの撓み変形や反り等による比較的長周期な形状による成分を含む被測定物SPの表面形状を表す。
被測定物SPの表面形状を求める際に、フィルタ処理部222は、前記複数の測定データそれぞれについて、当該測定データに基づいて、所定の第1周期成分を抽出するように、前記第1周期成分よりも長周期な第2周期成分を除去するフィルタ処理を行うものである。このようなフィルタ処理部222は、好ましくは、所定の遮断周波数以上の周波数帯の成分を透過するように濾波するハイパスフィルタ、または、所定の周波数帯域の成分を透過するように濾波するバンドパスフィルタである。好ましくは、前記第1周期成分は、ナノトポグラフィの周期成分に相当する成分である。
そして、前記フィルタ処理の際に、補完部2221は、測定範囲SAの端部における当該測定データに対しフィルタ処理を行う場合に、フィルタ処理のフィルタサイズに足りないデータ(当該測定データに対する不足データ)を、当該測定データの測定範囲SA(当該測定範囲SAa)に隣接する表面位置の測定範囲SA(隣接測定範囲SAb)における測定データ(補完データ)で補うものである。前記フィルタ処理の際に、フィルタ部2222は、補完部2221による補完後の測定データに対し前記フィルタ処理を行うものである。前記フィルタ処理の際に、除去部2223は、フィルタ部2222によるフィルタ処理結果から、補完部2221で補われたデータ(前記補完データ)に対応する部分を除去するものである。
上記被測定物SPの表面形状を求める際に、接続処理部223は、前記複数の測定データに対応するフィルタ処理部222による複数のフィルタ処理結果を、互いに隣接する表面位置間で接続するものである。
このような制御演算部2、記憶部3、入力部4、出力部5およびIF部6は、例えば、デスクトップ型コンピュータや、ノート型コンピュータ等のコンピュータによって構成できる。
次に、本実施形態の動作について説明する。図8は、前記表面形状測定装置の動作を示すフローチャートである。図9は、前記表面形状測定装置において、測定範囲の端部におけるフィルタ処理を説明するための図である。図10は、前記表面形状測定装置において、測定範囲の端部とフィルタ処理のフィルタサイズとの関係を説明するための図である。図11は、前記表面形状測定装置におけるフィルタ処理を説明するための図である。図11Aは、フィルタ処理前を示し、図11Bは、フィルタ処理後を示す。図11Aおよび図11Bにおいて、横軸は、被測定物SPにおける或る径方向に沿った表面位置を示し、その縦軸は、データ値を示す。図12は、前記表面形状測定装置における小型化を説明するための図である。図12Aは、本実施形態の場合を示し、図12Bは、比較例の場合を示す。図13は、前記表面形状測定装置における高精度化を説明するための図である。
このような構成の表面形状測定装置Mにおいて、まず、図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置Mが起動され、制御演算部2によって必要な各部の初期化が行われ、制御演算部2には、制御処理プログラムが実行されることによって、機能的に、制御部21および形状演算部22が構成される。そして、形状演算部22には、機能的に、位相画像演算部221、フィルタ処理部222および接続処理部223が構成され、フィルタ処理部222には、機能的に、補完部2221、フィルタ部2222および除去部2223が構成される。
被測定物SPの測定を始める際には、表面形状測定装置Mは、待機姿勢であり、オペレータ等のユーザは、待機姿勢の保持移動部7に被測定物SPを載置する。そして、測定開始が指示されると、表面形状測定装置Mは、制御演算部2の制御部21によって、保持移動部7を待機姿勢から測定姿勢へ移動し、被測定物SPを光学測定系1に正対させ、調節機構74によって、被測定物SPが光学測定系1の測定面と略平行となるように、調節する。被測定物SPが光学測定系1の測定面と略平行であるか否かの判定は、第1ないし第3調節機構74−1〜74−3それぞれの近傍に第1ないし第3距離センサをさらに設け、前記第1ないし第3距離センサによって検出された被測定物SPまでの各距離によって実施されても良いが、本実施形態では、光学測定系1によって生成された測定データを用いて実施される。より詳しくは、測定データの干渉縞が最も疎な状態(干渉の少ない状態、干渉縞の個数が最も少ない状態)となるように、調節機構74が駆動され、測定データの干渉縞が最も疎な状態が、被測定物SPが光学測定系1の測定面と略平行である状態と判定される。
このような測定の準備が終了すると、図8において、まず、表面形状測定装置Mは、制御演算部2の制御部21によって、図5を用いて上述したように、ステージ71およびターンテーブル73によって保持体75を径方向および周方向で移動することで、光学測定系1における測定範囲SAの中心位置と被測定物SPの中心位置とを互いに一致させて測定し、さらに、径方向の移動と周方向の移動および測定とを繰り返し実行し、これによって被測定物SPの表面全体に亘って各表面位置での複数の測定データを光学測定系1によって生成し、各測定データを記憶部3に記憶する(S1)。光干渉計を用いた光学測定系1によって生成される前記測定データは、例えば、干渉縞の画像のデータである。
次に、表面形状測定装置Mは、制御演算部2の形状演算部22によって、前記複数の測定データそれぞれについて、当該測定データに基づいて、所定の第1周期成分を抽出するように、前記第1周期成分よりも長周期な第2周期成分を除去するフィルタ処理を行い、前記複数の測定データに対応する前記フィルタ処理による複数のフィルタ処理結果を、互いに隣接する表面位置間で接続する。
より具体的には、表面形状測定装置Mは、制御演算部2の形状演算部22によって、前記複数の測定データのうちから1個の測定データを選択し、形状演算部22の位相画像演算部221によって、この選択した測定データ(干渉縞画像FP)を用いて、公知のいわゆる位相回復計算によって位相画像HPを求める(S2)。
次に、表面形状測定装置Mは、形状演算部22におけるフィルタ処理部222の補完部2221によって、この選択した測定データから求められた位相画像HPに対し、次処理S4のフィルタ処理におけるフィルタサイズに足りないデータ(当該測定データに対する不足データ(本実施形態では位相画像での不足データ))を、当該位相画像HPに対応する測定データの測定範囲SA(当該測定範囲SAa)に隣接する表面位置の測定範囲SA(隣接測定範囲SAb)における測定データ(補完データ(本実施形態では位相画像での不足データ))で補う(S3)。
次処理S4のフィルタ処理は、例えば図10に示すように、位相画像HPに対し、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを行う画像フィルタFSを作用させることで、実施される。このフィルタ処理を行う場合に、端部で位相画像HP(言い換えれば、位相画像HPを求める際に用いられた測定データ)の不足が生じ、フィルタ処理の対象のデータ不足による誤差が生じてしまう。このため、位相画像HP全体からフィルタ処理後の有効なデータを生成することができず、位相画像HP全体から求められたフィルタ処理後のデータは、フィルタ処理の対象のデータが不足せずに、前記データ不足による前記誤差を含まないフィルタ処理後のデータから成る有効領域FDeと、この有効領域FDeの周囲に、フィルタ処理の対象のデータが不足し、前記データ不足による前記誤差を含むフィルタ処理後のデータから成る非有効領域FDiとから成る。すなわち、有効領域FDeは、位相画像HP全体に較べて、画像フィルタのフィルタサイズに応じた、フィルタ処理の対象の不足データ分だけ小さな領域になる。このため、本実施形態では、次処理S4のフィルタ処理が実施される前に、本処理S3の補完処理が実施される。
より詳しくは、本実施形態では、例えば、図9に示すように、測定範囲SAは、正六角形の形状であり、前記処理S1における各表面位置での測定では、互いに隣接する表面位置は、その測定範囲SAの一部が互いに重なって重なり領域SAsが生じるように設定される。前記処理S2における位相画像HPの演算では、このような正六角形の測定範囲SAの測定データ(正六角形の干渉縞画像)から、周囲に(各辺で)重なり領域HPsを持つ正六角形の位相画像HPが生成される。そして、前記処理S3における補完処理では、このような正六角形の位相画像HPに対し、次処理S4のフィルタ処理における画像フィルタFSのフィルタサイズに足りないデータが、当該位相画像HPに対応する測定データの測定範囲SA(当該測定範囲SAa)に隣接する表面位置の測定範囲SA(隣接測定範囲SAb)における測定データ(補完データ(本実施形態では位相画像での不足データ))で補われ、この補われた測定データから求められた位相画像HPcが、当該位相画像HPに接続されて付加される。例えば図10に示す例では、図10の中央に位置する正六角形の第0測定範囲SA−0には、各辺に隣接して、その一部同士が重なって重なり領域SAsを形成するように、第1ないし第6測定範囲SA−1〜SA−6が設けられている。一例では、第0測定範囲SA−0と、この第0測定範囲SA−0に紙面右辺に隣接する第1測定範囲SA−1とでは、所定の長さで重なる重なり領域SAs−01が形成されている。そして、この第0測定範囲で測定されて生成された測定データ(干渉縞画像)から求められた第0位相画像HP−0には、次処理S4のフィルタ処理のために、各辺それぞれに隣接する第1ないし第6測定範囲SA−1〜SA−6それぞれで測定されて生成された各測定データそれぞれから、画像フィルタFSのフィルタサイズに足りないデータ分だけ抽出されて各位相画像HPcが求められ、各辺それぞれに接続されて付加される。一例では、第0測定範囲SA−0における紙面右辺に重なり領域SAs−01で重なって隣接する第1測定範囲SA−1から、画像フィルタFSのフィルタサイズに足りないデータ分(不足分)だけ抽出されて位相画像HPc−01が求められ、第0位相画像HP−0における紙面右辺に位相画像HPc−01が接続されて付加される。この接続では、公知の常套手法によって、その接続境界部分で互いに隣接するデータ間における高さ方向の調整(オフセット調整)や面傾きの調整が実施される。この接続境界部分の長さは、たかだか画像フィルタFSのフィルタサイズに相当する長さであるので、測定範囲SA全体の測定データ同士を接続する場合における接続境界部分の長さより短い。そして、測定範囲SA全体の測定データ同士の接続では、長い境界部分と2つの調整とにより、接続開始点から距離が離れるほど調整不足に起因する誤差が大きくなるが、この処理S3の補間処理での接続では、1回の接続だけであるので、前記誤差が大きくなることもない。そして、前記重なり領域SAs(HPs)は、この接続の際の、いわゆる糊代として用いられる。前記重なり領域SAs(HPs)では、接続されるデータは、辺に向かって重み付けが小さくなるように重み付けされ、一方、接続するデータは、前記辺に向かって重み付けが大きくなるように重み付けされ、これら重み付けされた各データが重み付け加算され、重なり領域SAs(HPs)のデータとされる。一例では、重なり領域SAs−01(HPs−01)では、接続される第0測定範囲SA−0のデータは、辺に向かって重み付けが小さくなるように重み付けされ、一方、接続する第1測定範囲SA−1のデータは、前記辺に向かって重み付けが大きくなるように重み付けされ、これら重み付けされた各データが重み付け加算され、重なり領域SAs−01(HPs−01)のデータとされる。
なお、上述では、測定範囲は、正六角形であったが、これに限定されるものではなく、重なり領域SAsを設けない場合に隙間無く敷き詰めてタイリング可能な、例えば正三角形や正方形等の正多角形であって良い。
このような補間処理の次に、表面形状測定装置Mは、フィルタ処理部222のフィルタ部2222によって、この補完部2221による補完後の位相画像HPに対し、画像フィルタFSを作用させ、フィルタ処理を実行する(S4)。これによって、例えば、図11Aに示すように、被測定物SPの撓み変形や反り等による比較的長周期な形状による成分のデータに、いわゆるナノトポグラフィのように比較的短周期な形状による成分のデータが重畳したデータから、図11Bに示すように、前記比較的短周期な形状による成分のデータが抽出される。なお、この処理S4のフィルタ処理において、測定範囲SAの端部ではなく、被測定物SP自体の端部(被測定物SPの外縁周辺部分)では、補完に用いるデータ自体が無いので、被測定物SPのエッジに向けて画像フィルタFSのフィルタサイズを徐々に縮小する、いわゆるシュリンク処理や、被測定物SPのエッジを対称軸としてその内側のデータを外側に折り返して擬似的にデータを生成する、いわゆる折り返し補間処理等の、公知の常套手法が用いられる。
次に、表面形状測定装置Mは、フィルタ処理部222の除去部2223によって、フィルタ部2222によるフィルタ処理結果から、補完部2221で補われたデータに対応する部分を除去する(S5)。図9に示す例では、一例では、フィルタ処理結果から、補完部2221で補われた位相画像HPc−01に対応する部分が除去される。
次に、表面形状測定装置Mは、フィルタ処理部222によって、全ての測定データについて、処理S2ないし処理S5の各処理を実行したか否かを判定する(S6)。この判定の結果、全ての測定データについて各処理を実行していない場合(No)には、フィルタ処理部222は、処理を処理S2に戻し、一方、前記判定の結果、全ての測定データについて各処理を実行している場合(Yes)には、フィルタ処理部222は、次の処理S7を実行する。
この処理S7では、表面形状測定装置Mは、形状演算部22の接続処理部223によって、前記複数の測定データに対応する複数のフィルタ処理結果を、互いに隣接する表面位置間で接続し、被測定物SPの表面形状を求める。この接続では、前記誤差の主因である前記比較的長周期な形状による成分のデータが除去されているので、前記2つの調整を行わずに単に接続すればよく、接続の情報処理が簡素化される。
そして、表面形状測定装置Mは、制御演算部2の制御部21によって、このように求めた被測定物SPの表面形状を出力部5から出力し(S8)、処理を終了する。なお、必要に応じて、表面形状測定装置Mは、IF部6から、被測定物SPの表面形状を出力しても良い。
なお、上述では、1つの測定データが選択され、この選択された1つの測定データに対し、位相画像HPが求められ、補完処理では、補完の測定データを抽出して補完の位相画像HPcが求められたが、複数の測定データそれぞれに対応する複数の位相画像HPが求められ、補間処理では、補完の測定データに対応する補完の位相画像HPcが抽出されて補完されても良い。あるいは、1つの測定データが選択され、この選択された1つの測定データに対し、補完の測定データが抽出されて補完され、この補完後の測定データから位相画像HPが求められても良い。あるいは、1つの測定データが選択され、この選択された1つの測定データ、および、この1つの測定データにその測定範囲SA(表面位置)で隣接する各測定データそれぞれに対し、位相画像HPが求められ、補間処理では、補完の測定データに対応する補完の位相画像HPcが抽出されて補完されても良い。
以上説明したように、本実施形態における表面形状測定装置Mおよびこれに実装された表面形状測定方法は、例えば図5や図12Aに示すように、保持移動部7によって被測定物SPと光学測定系1とを相対的に移動することによって、被測定物SPの一方表面を、被測定物SPにおける互いに異なる複数の表面位置で光学測定系1によって測定するので、図12Bに示すように比較的大きな被測定物SPを1回で測定するために光学測定系1Aを大型化せずに、その1回の測定範囲SA(例えば直径100mmや直径150mm等)よりも大きな被測定物SP(例えば直径300mmや直径450mm等)の表面形状を測定でき、当該表面形状測定装置Mをより小型化できる。そして、図13に破線で示すフローのように、仮に、前記複数の測定データを、互いに隣接する表面位置間で接続した後に、前記フィルタ処理を行う場合では、前記接続の際に、その接続境界部分で互いに隣接する測定データ間における高さ方向の調整(オフセット調整)や面傾きの調整を行う必要がある。特に、例えば反り、厚さ分布、ロールオフ等の形状に関する複数の測定項目を測定できる測定装置では、このようなフローで処理することが多い。このため、比較的大きな被測定物SPでは、長い境界部分(例えば大型半導体ウェハでは300mm以上)と2つの調整とにより、接続開始点から距離が離れるほど調整不足に起因する誤差が大きくなってしまう。これは、自重撓み、被測定物SPの移動、大気圧差、振動等による、測定回ごとの被測定物SPの変形に起因し、数〜数十ミクロンメートルオーダーとなり、求めたい形状、特にナノトポグラフィの形状に較べて桁違いに大きい。しかしながら、上記表面形状測定装置Mおよび表面形状測定方法は、図13に一点鎖線で示すフローのように、前記複数の測定データを接続する前に、フィルタ処理を行うことで、前記誤差の主因である第2周期成分を除去するので、前記複数の測定データに対応するフィルタ処理部222による複数のフィルタ処理結果を、より高精度で接続できる。したがって、上記表面形状測定装置および表面形状測定方法は、1回の測定範囲SAよりも大きな被測定物SPの表面形状を測定でき、より小型化しつつより高精度(例えばナノメートルオーダー等)で測定できる。特に、上記表面形状測定装置および表面形状測定方法は、前記第1周期成分を、ナノトポグラフィの周期成分に相当する成分に設定することにより、ナノポトグラフィを好適に測定できる。
上記表面形状測定装置Mおよび表面形状測定方法は、フィルタ処理の際における測定データの不足分を、測定範囲SAで隣接する測定データで補うので、フィルタ処理の対象のデータ不足による誤差を低減できる。
上記表面形状測定装置Mおよび表面形状測定方法は、補完部2221で補われたデータに対応する部分を除去するので、前記補うことによって生じる前記接続(前記調整)に伴う誤差を低減できる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。