JP2018004430A - ガスセルの製造方法、磁気計測装置の製造方法、およびガスセル - Google Patents
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Abstract
【課題】セルの内壁に形成するコーティング材の膜を所望の膜厚で安定的に形成でき、高精度で計測可能なガスセルの製造方法および磁気計測装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ガスセル10の製造方法は、主室14と、主室14と連通するリザーバー16と、リザーバー16に設けられた開口18と、を有するセル12のリザーバー16にコーティング材32を含む保持部材30を配置する配置工程と、前記開口を封止部材で封止して前記セルを密封する封止工程と、保持部材30を加熱してセル12内でコーティング材32の蒸気を発生させる加熱工程と、セル12を冷却してセル12の内壁にコーティング材32を成膜する成膜工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図9
【解決手段】ガスセル10の製造方法は、主室14と、主室14と連通するリザーバー16と、リザーバー16に設けられた開口18と、を有するセル12のリザーバー16にコーティング材32を含む保持部材30を配置する配置工程と、前記開口を封止部材で封止して前記セルを密封する封止工程と、保持部材30を加熱してセル12内でコーティング材32の蒸気を発生させる加熱工程と、セル12を冷却してセル12の内壁にコーティング材32を成膜する成膜工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図9
Description
本発明は、ガスセルの製造方法、磁気計測装置の製造方法、およびガスセルに関する。
アルカリ金属ガスが封入されたガスセルに直線偏光を照射し、偏光面の回転角に応じて磁場を測定する光ポンピング式の磁気(磁場)計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、内壁をパラフィン等でコーティングしたセルの空洞にアルカリ金属物質を収容して空洞を密閉し、加熱反応等によりアルカリ金属ガスを発生させてセル内部に充満させるガスセルの構成およびその製造方法が開示されている。特許文献1の記載によれば、基板に形成された空洞にコーティング材料を配置し、その基板上に別の基板を配置して空洞を密閉する。そして、セル全体を加熱してコーティング材料を気化させ、その後冷却することにより、空洞の内壁にコーティング材料の層が形成される。
コーティング材料の層は、アルカリ金属原子がセルの内壁に直接衝突したときの挙動(例えば、スピン)の変化を抑制または低減する機能を有している。コーティング材料として好適に用いられるパラフィンは、一般に常温において軟らかい固体(蝋状)であるため、量の微調整やセル内への配置の際に取り扱いにくい。そのため、配置工程において配置する量にばらつきが生じるおそれや工数が増加するおそれがあるが、特許文献1にはコーティング材料の取り扱い方法や配置方法について言及されていない。
セル内に配置するコーティング材料の量がばらつくと、セルの内壁に形成するコーティング材料の膜が所望の膜厚にならなかったり、個体間でコーティング材料の膜厚にばらつきが生じたりすることとなる。そうすると、製造するガスセルの品質(感度、計測精度等)の低下や個体間での品質のばらつきを招いてしまうという課題がある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係るガスセルの製造方法は、第1室と、前記第1室と連通する第2室と、前記第2室に設けられた開口と、を有するセルの前記第2室にコーティング材を含む保持部材を配置する配置工程と、前記開口を封止部材で封止して前記セルを密封する封止工程と、前記保持部材を加熱して、前記セル内で前記コーティング材の蒸気を発生させる加熱工程と、前記セルを冷却して、前記セルの内壁に前記コーティング材を成膜する成膜工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例の製造方法によれば、配置工程においてコーティング材を保持部材に含まれた状態で取り扱うので、コーティング材のみの状態で取り扱う場合と比べて、保持部材の長さに基づいてコーティング材の量を容易に所望の量に調整でき、かつ、コーティング材を容易に第2室に配置できる。また、保持部材の長さを管理する(長さのばらつきを抑える)ことにより、各セルに配置するコーティング材の量のばらつきを抑えることができる。そのため、成膜工程においてセルの内壁に所望の膜厚でコーティング材の膜を安定的に形成でき、個体間でのコーティング材の膜厚のばらつきを小さく抑えることができる。これにより、品質(感度、計測精度等)の低下や個体間での品質のばらつきを抑えて安定的かつ効率的にガスセルを製造することができる。
[適用例2]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記保持部材は、耐熱性材料で形成されていることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、保持部材が耐熱性材料で形成されているので、加熱工程において保持部材を加熱する際に、熱による保持部材の変質や保持部材からのガスの発生を抑えることができる。これにより、保持部材の変質や保持部材からのガスの混入に起因するガスセルの品質(感度、計測精度等)の低下を抑えることができる。
[適用例3]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記保持部材は、非磁性材料で形成されていることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、保持部材が、磁場に置かれても磁化されにくい非磁性材料で形成されている。そのため、例えばガスセルを磁気の計測に用いる場合に、保持部材が磁化されることによる磁気の計測への影響を抑止できる。
[適用例4]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記保持部材は、管状の部材であることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、保持部材が、両端が開放された空洞を有する管状の部材である。そのため、コーティング材を保持部材の空洞に充填して保持できるので、コーティング材の取り扱いを容易にできる。そして、管状の保持部材の長さを適宜設定することで、保持部材に充填されるコーティング材の量の調整を容易に行うことができる。さらに、加熱工程でコーティング材の蒸気を発生させる際に、保持部材を加熱することにより、保持部材の空洞に充填されたコーティング材を開放された両端から容易に蒸発させることができる。
[適用例5]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記保持部材は、透光性材料で形成されていることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、保持部材が透光性材料で形成されている。そのため、コーティング材を保持部材の空洞に充填する際に、充填できたか否かを目視により容易に確認することができる。そして、加熱工程でコーティング材の蒸気を発生させる際に、充填されたコーティング材のすべてが蒸発したか否かを目視により容易に確認することができる。また、加熱工程で、保持部材を通してレーザー光をコーティング材に照射し、コーティング材を直接加熱することも可能となる。
[適用例6]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記配置工程では、前記保持部材とともに、アルカリ金属を含む固形物を前記第2室に配置し、前記成膜工程の後に、前記固形物にレーザー光を照射して前記アルカリ金属のガスを発生させるレーザー光照射工程をさらに含むことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、コーティング材を含む保持部材とともにアルカリ金属を含む固形物を第2室に配置して封止し、セルの内壁にコーティング材を成膜した後に固形物からアルカリ金属のガスを発生させる。そのため、成膜されたコーティング材の膜により、励起されたアルカリ金属原子がセルの内壁に直接衝突したときの挙動の変化を抑制または低減することができる。また、セルを仮封止して内壁にコーティング材を成膜した後に仮封止を外し、アルカリ金属を含む固形物を第2室に配置して封止する場合と比べて、封止する工程を一つにでき、コーティング材を成膜した後で外部から第2室内に不純物が侵入することを抑止できる。
[適用例7]本適用例に係る磁気計測装置の製造方法は、上記に記載のガスセルの製造方法を含むことを特徴とする。
本適用例の製造方法によれば、高品質でばらつきが少ないガスセルを備えた磁気計測装置を製造できるので、高性能な磁気計測装置を安定的に製造することができる。
[適用例8]本適用例に係るガスセルは、第1室と、前記第1室と連通する第2室と、前記第2室に設けられた開口と、を有するセルと、前記開口を封止して前記セルを密封する封止部材と、前記第2室に配置されたコーティング材を含む保持部材と、を備えることを特徴とする。
本適用例の構成によれば、第2室に配置されているコーティング材を含む保持部材を加熱すればセル内でコーティング材が蒸発し、その後にセルを冷却すればセルの内壁にコーティング材が成膜されるので、セルの内壁にコーティング材料の層が形成されたガスセルが得られる。ここで、コーティング材を第2室に配置する際には、保持部材に含まれた状態のコーティング材を取り扱うことができるので、コーティング材のみの状態で取り扱う場合と比べて、保持部材の長さに基づいてコーティング材の量を容易に調整でき、かつ、コーティング材を容易に第2室に配置できる。そのため、個体毎のばらつきを抑えてセル内にコーティング材をより均一に成膜できるとともに、コーティング材の取り扱いに起因する工数増を抑えることができる。これにより、性能のばらつきの少ないガスセルを効率的に得ることができる。
[適用例9]上記適用例に係るガスセルであって、前記保持部材は、耐熱性材料で形成されていることが好ましい。
本適用例の構成によれば、保持部材が耐熱性材料で形成されているので、保持部材の変質や保持部材からガスを発生させることなく保持部材を加熱してコーティング材を蒸発させることができる。
[適用例10]上記適用例に係るガスセルであって、前記保持部材は、非磁性材料で形成されていることが好ましい。
本適用例の構成によれば、保持部材が、磁場に置かれても磁化されにくい非磁性材料で形成されているので、例えばガスセルを磁気の計測に用いる場合に、保持部材が磁化されることによる磁気の計測への影響を抑止できる。
[適用例11]上記適用例に係るガスセルであって、前記保持部材は、管状の部材であることが好ましい。
本適用例の構成によれば、保持部材が、両端が開放された空洞を有する管状の部材であるため、コーティング材を保持部材の空洞に充填して保持できるので、コーティング材の取り扱いを容易にできる。そして、管状の保持部材の長さを適宜設定することで、コーティング材の量の調整を容易に行うことができる。さらに、保持部材を加熱することにより、保持部材の空洞に充填されたコーティング材を開放された両端から容易に蒸発させることができる。
[適用例12]上記適用例に係るガスセルであって、前記保持部材は、透光性材料で形成されていることが好ましい。
本適用例の構成によれば、保持部材が透光性材料で形成されているため、コーティング材を保持部材の空洞に充填する際に、充填できたか否かを目視により容易に確認することができる。そして、コーティング材の蒸気を発生させる際に、充填されたコーティング材のすべてが蒸発したか否かを目視により容易に確認することができる。また、保持部材を通してレーザー光をコーティング材に照射し、コーティング材を直接加熱することも可能となる。
[適用例13]上記適用例に係るガスセルであって、前記第2室に配置されたアルカリ金属を含む固形物をさらに備えることが好ましい。
本適用例の構成によれば、セルの内壁にコーティング材を成膜した後に、第2室に配置されているアルカリ金属を含む固形物を蒸発させれば、内壁にコーティング材料の層が形成されたセル内にアルカリ金属のガスが満たされたガスセルが得られる。アルカリ金属を含む固形物が予めコーティング材を含む保持部材とともに第2室に配置されているため、セルの内壁にコーティング材を成膜した後でアルカリ金属を含む固形物を第2室に配置する場合と比べて、外部から第2室内に不純物が侵入することを抑止できる。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
<磁気計測装置の構成>
本実施形態に係る磁気計測装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る磁気計測装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る磁気計測装置100は、非線形光学回転(Nonlinear Magneto-Optical Rotation:NMOR)を用いた磁気計測装置である。磁気計測装置100は、例えば、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)などの生体から発生される微小な磁場を測定する生体状態測定装置(心磁計または脳磁計など)に用いられる。磁気計測装置100は、金属探知機などにも用いることができる。
本実施形態に係る磁気計測装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る磁気計測装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る磁気計測装置100は、非線形光学回転(Nonlinear Magneto-Optical Rotation:NMOR)を用いた磁気計測装置である。磁気計測装置100は、例えば、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)などの生体から発生される微小な磁場を測定する生体状態測定装置(心磁計または脳磁計など)に用いられる。磁気計測装置100は、金属探知機などにも用いることができる。
図1に示すように、磁気計測装置100は、光源1と、光ファイバー2と、コネクター3と、偏光板4と、ガスセル10と、偏光分離器5と、光検出器(Photo Detector:PD)6と、光検出器7と、信号処理回路8と、表示装置9とを備えている。ガスセル10内には、アルカリ金属ガス(気体の状態のアルカリ金属原子)が封入されている。
アルカリ金属としては、例えば、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)などを用いることができる。例えば、セシウムは融点が28℃程度であるため、セシウムを用いると磁気計測装置100を室温に近い温度で動作させることが可能となる。以下では、アルカリ金属としてセシウムを用いる場合を例に取り説明する。
光源1は、セシウムの吸収線に応じた波長(例えばD1線に相当する894nm)のレーザービームを出力する装置、例えばチューナブルレーザーである。光源1から出力されるレーザービームは、連続的に一定の光量を有する、いわゆるCW(Continuous Wave)光である。
偏光板4は、レーザービームを特定方向に偏光させ、直線偏光にする素子である。光ファイバー2は、光源1により出力されたレーザービームを、ガスセル10側に導く部材である。光ファイバー2には、例えば、基本モードのみを伝播するシングルモードの光ファイバーが用いられる。コネクター3は、光ファイバー2を偏光板4に接続するための部材である。コネクター3は、ねじ込み式であり、光ファイバー2を偏光板4に接続する。
ガスセル10は、内部に空隙を有する箱(セル)であり、この空隙(図2に示す主室14)にはアルカリ金属の蒸気(図2に示すアルカリ金属ガス13)が封入されている。ガスセル10の構成については、後述する。
偏光分離器5は、入射したレーザービームを、互いに直交する2つの偏光成分のビームに分離する素子である。偏光分離器5は、例えば、ウォラストンプリズムまたは偏光ビームスプリッターである。光検出器6および光検出器7は、レーザービームの波長に感度を有する検出器であり、入射光の光量に応じた電流を信号処理回路8に出力する。光検出器6および光検出器7は、それ自体が磁場を発生すると測定に影響を与える可能性があるので、非磁性の材料で構成されることが望ましい。光検出器6および光検出器7は、ガスセル10からみて偏光分離器5と同じ側(下流側)に配置される。
磁気計測装置100における各部の配置を、レーザービームの経路に沿って説明すると、レーザービームの経路の最上流には光源1が位置し、以下、上流側から、光ファイバー2、コネクター3、偏光板4、ガスセル10、偏光分離器5、および光検出器6,7の順で配置されている。
光源1から出力されたレーザービームは、光ファイバー2に導かれて偏光板4に到達する。偏光板4を通過したレーザービームは、偏光度がより高い直線偏光になる。ガスセル10を透過しているレーザービームは、ガスセル10に封入されているアルカリ金属原子を励起(光ポンピング)する。このとき、レーザービームは、磁場の強さに応じた偏光面回転作用を受けて偏光面が回転する。ガスセル10を透過したレーザービームは偏光分離器5により2つの偏光成分のビームに分離される。2つの偏光成分のビームの光量は、光検出器6および光検出器7で計測(プロービング)される。
信号処理回路8は、光検出器6および光検出器7により計測されたビームの光量を示す信号をそれぞれから受け取る。信号処理回路8は、受け取った各信号に基づいて、レーザービームの偏光面の回転角を計測する。偏光面の回転角は、レーザービームの伝播方向の磁場の強さに基づく関数で表される(例えば、D.バドカー、外5名,「原子の共鳴非線形磁気光学回転効果」,レビュー・オブ・モダン・フィジクス誌,米国,米国物理学会,2002年10月,第74巻,第4号,p.1153−1201の数式(2)を参照。数式(2)は線形光学回転に関するものであるが、NMORの場合もほぼ同様の式を用いることができる)。信号処理回路8は、偏光面の回転角からレーザービームの伝播方向における磁場の強さを測定する。表示装置9は、信号処理回路8により測定された磁場の強さを表示する。
続いて、本実施形態に係るガスセルおよびガスセルに用いられるアンプルの構成について、図2、図3A、および図3Bを参照して説明する。
<ガスセルの構成>
図2は、本実施形態に係るガスセルの長手方向に沿った断面図である。図2において、ガスセル10の高さ方向をZ軸とし、上方側を+Z方向とする。Z軸と交差する方向であって、ガスセル10の長手方向をX軸とし、図2における右側を+X方向とする。そして、Z軸およびX軸と交差する方向であって、ガスセル10の幅方向をY軸とし、図2の紙面における手前から奥へ向う側を+Y方向とする。
図2は、本実施形態に係るガスセルの長手方向に沿った断面図である。図2において、ガスセル10の高さ方向をZ軸とし、上方側を+Z方向とする。Z軸と交差する方向であって、ガスセル10の長手方向をX軸とし、図2における右側を+X方向とする。そして、Z軸およびX軸と交差する方向であって、ガスセル10の幅方向をY軸とし、図2の紙面における手前から奥へ向う側を+Y方向とする。
図2に示すように、本実施形態に係るガスセル10は、セル12と封止部材19とを備えている。セル12は、内部に空隙を有する箱(セル)であり、例えば、石英ガラスなどからなる板状の部材により形成されている。セル12(板状の部材)の厚さは、1mm〜5mmであり、例えば、1.5mm程度である。
セル12は、内部の空隙として、第1室としての主室14と、X軸方向を長手方向とする第2室としてのリザーバー16とを有している。主室14とリザーバー16とは、X軸方向に沿って並ぶように配置されており、連通孔15を介して連通している。連通孔15は、主室14およびリザーバー16の上方側(+Z方向側)に設けられている。連通孔15は、例えば矩形状であるが、円形状であってもよい。連通孔15の断面積は、例えば、0.01mm2〜3mm2程度である。
セル12(主室14およびリザーバー16)の内部には、アルカリ金属が蒸発したガス(以下ではアルカリ金属ガスという)13が充填されている。主室14およびリザーバー16には、アルカリ金属ガス13の他に、希ガスなどの不活性ガスが存在していてもよい。
セル12(主室14およびリザーバー16)の内壁には、膜状のコーティング材32が配置されている。コーティング材32は、励起されたアルカリ金属原子がセル12(主室14)の内壁に直接衝突したときの挙動(例えば、スピン)の変化を抑制または低減する機能を有する。コーティング材32の詳細については後述する。
リザーバー16内には、アンプル20と保持部材30とが収納されている。アンプル20のガラス管22には、貫通孔(開口部)21が形成されている。アルカリ金属ガス13は、後述する製造工程において、アンプル20内に充填されていたアルカリ金属固体24(図3A参照)が蒸発(ガス化)したものである。保持部材30は、両端が開放された空洞を有する管状の部材である。膜状のコーティング材32は、後述する製造工程において、保持部材30内に充填されていたものが一旦蒸発した後冷却されて膜状になったものである。
なお、図2には、アンプル20と保持部材30とを、それぞれの長手方向がX軸に沿って一列に並ぶように図示しているが、アンプル20および保持部材30の配置はこのような形態に限定されるものではない。例えば、アンプル20および保持部材30のそれぞれの長手方向がX軸に沿っていなくてもよいし、アンプル20と保持部材30とが横に2列に並ぶように配置されていてもよい。アンプル20および保持部材30の詳細については後述する。
リザーバー16の長手方向における主室14および連通孔15の反対側(+X方向側)には、開口18が設けられている。開口18は、例えば円形状である。開口18の内径は、例えば、0.4mm〜1.5mm程度である。開口18は、セル12に接合された封止部材19で封止されている。これにより、セル12(主室14およびリザーバー16)が密封されている。
封止部材19は、例えば、平面形状が矩形状であるが、円形状など他の形状であってもよい。封止部材19の材料としては、セル12と同じガラス基材が用いられ、例えば石英ガラスが用いられる。封止部材19は、開口18の周囲に配置された低融点ガラスフリット等を介してセル12に接合されている。
<アンプルの構成>
図3Aは、本実施形態に係るアンプルの長手方向に沿った断面図である。図3Bは、図3AのA−A’線に沿った断面図である。図3Aに示すように、本実施形態に係るアルカリ金属を含む固形物としてのアンプル20は、長手方向を有している。図3Aには、アンプル20を、その長手方向がX軸方向に沿うように配置したときのX−Z断面を示している。アンプル20は、中空状のガラス管22で構成される。
図3Aは、本実施形態に係るアンプルの長手方向に沿った断面図である。図3Bは、図3AのA−A’線に沿った断面図である。図3Aに示すように、本実施形態に係るアルカリ金属を含む固形物としてのアンプル20は、長手方向を有している。図3Aには、アンプル20を、その長手方向がX軸方向に沿うように配置したときのX−Z断面を示している。アンプル20は、中空状のガラス管22で構成される。
ガラス管22は、例えば、ホウ珪酸ガラスにより形成されている。ガラス管22の材料が磁場に置かれても磁化されにくい非磁性材料であるので、ガスセル10を磁気計測装置100に用いる場合に、ガラス管22が磁気の計測に影響を与えることを抑止できる。ガラス管22は、長手方向に沿って延在しており、その両端部が溶着されている。これにより、内部が中空状のガラス管22は密封されている。なお、ガラス管22の両端部の形状は、図3Aに示すような丸い形状に限定されず、平面に近い形状や一部が尖った形状などであってもよい。
図3Aには、アンプル20(ガラス管22)が密封された状態を示している。ガラス管22の内部の空洞22aには、アルカリ金属固体(粒状や粉末状のアルカリ金属原子)24が充填されている。アンプル20は、真空に近い低圧環境下(理想的には真空中)において、管状のガラス管22の空洞22aにアルカリ金属固体24を充填し、ガラス管22の両端部をそれぞれ溶着し密封して形成される。アルカリ金属固体24としては、上述したように、セシウムの他に、ルビジウム、カリウム、ナトリウムなどを用いることができる。
アンプル20が製造された段階ではガラス管22は密封された状態であるが、ガスセル10が完成した段階では、ガラス管22に貫通孔21(図2参照)が形成され密封が破られる。これにより、アンプル20内のアルカリ金属固体24が蒸発してガスセル10内に流出し、セル12の空隙がアルカリ金属ガス13で満たされる(図2参照)。なお、アンプル20内からアルカリ金属固体24が蒸発して流出し易くなるように、アンプル20の上面とセル12の内面との間には、例えば+Z方向に1.5mm程度の隙間が設けられている(図2参照)。
図3Bに、アンプル20の長手方向と交差する方向におけるY−Z断面を示す。図3Bに示すように、ガラス管22のY−Z断面の形状は、例えば略円形であるが、他の形状であってもよい。ガラス管22の外径φaは、0.3mm≦φa≦1.2mmである。ガラス管22の肉厚Taは、0.1mm≦Ta≦0.5mmであり、概ね外径φの20%程度であることが好ましい。ガラス管22の肉厚Taが0.1mm未満であるとガラス管22が破損し易くなり、ガラス管22の肉厚Taが0.5mmを超えると、ガラス管22に貫通孔21を形成する加工(詳細は後述する)が困難となる。
<保持部材の構成>
図4Aは、本実施形態に係る保持部材の長手方向に沿った断面図である。図4Bは、図3AのB−B’線に沿った断面図である。図4Aに示すように、本実施形態に係るコーティング材32を含む保持部材30は、長手方向を有している。図4Aには、保持部材30を、その長手方向がX軸方向に沿うように配置したときのX−Z断面を示している。
図4Aは、本実施形態に係る保持部材の長手方向に沿った断面図である。図4Bは、図3AのB−B’線に沿った断面図である。図4Aに示すように、本実施形態に係るコーティング材32を含む保持部材30は、長手方向を有している。図4Aには、保持部材30を、その長手方向がX軸方向に沿うように配置したときのX−Z断面を示している。
図4Aには、保持部材30の空洞30aにコーティング材32が充填された状態を示している。保持部材30は、管状の細管である。保持部材30は、長手方向(X軸方向)に沿って延在しており、その両端は開放されている。保持部材30は、非磁性材料であって、耐熱性と透光性とを有する材料からなる。保持部材30は、例えば、ガラスや石英等の無機材料で形成されている。保持部材30が磁場に置かれても磁化されにくい非磁性材料で形成されているので、ガスセル10を磁気計測装置100に用いる場合に、保持部材30が磁気の計測に影響を与えることを抑止できる。
保持部材30の空洞30aには、コーティング材32が充填されている。コーティング材32は、パラフィンなどの鎖式飽和炭化水素で構成されている。コーティング材32の材料としては、鎖式飽和炭化水素の化学式(CnH2n+2)において、炭素原子数nが20〜100のものが好ましい。鎖式飽和炭化水素の一例として、例えば、化学式(C50H102)で示されるペンタコンタンを好適に用いることができる。
コーティング材32は、真空に近い低圧環境下において、融点以上の温度に加熱し溶融した状態で保持部材30の空洞30aに充填される。例えば、コーティング材32にペンタコンタンを用いる場合、2×10-6Torr程度に減圧された低圧環境下で、150℃〜200℃程度の温度に加熱することで、保持部材30の空洞30aに充填できる。後述するが、保持部材30の空洞30aに充填されたコーティング材32は、リザーバー16内で加熱されて蒸発した後、冷却されてセル12(主室14およびリザーバー16)の内壁に成膜される(図2参照)。
保持部材30が耐熱性を有する材料で形成されているので、コーティング材32を溶融した状態で充填する際、および、コーティング材32を蒸発させる際に、保持部材の変質や保持部材からガスを発生させることなくコーティング材を蒸発させることができる。また、保持部材30が透光性を有する材料で形成されているので、コーティング材32を溶融した状態で充填する際に充填できたか否かを、そして、コーティング材32を蒸発させる際にコーティング材32のすべてが蒸発したか否かを、目視により容易に確認することができる。
図4Bに、保持部材30の長手方向と交差する方向におけるY−Z断面を示す。図4Bに示すように、保持部材30のY−Z断面の形状は、例えば略円形であるが、他の形状であってもよい。保持部材30の空洞30aの内径φtは、0.1mm≦φt≦0.2mmである。保持部材30にコーティング材32を充填する際に、毛細管現象を利用するとコーティング材32を効率良く保持部材30の空洞30aに導入できるので、内径φtは0.1mm≦φt≦0.15mmであることが好ましい。保持部材30の肉厚Ttは、例えば、0.1mm〜0.5mm程度であるが、特に限定されない。
図4Aに示す保持部材30の長手方向の長さLtは、例えば0.5mm〜15mm程度であるが、これに限定されず、セル12(主室14およびリザーバー16)の内壁を覆う膜を形成するために必要となるコーティング材32の量(体積)に応じて適宜設定される。換言すれば、保持部材30の長さLtの設定により、セル12に配置するコーティング材32の量を容易に調整することができる。
<ガスセルの製造方法>
次に、本実施形態に係るガスセルの製造方法を図5、図6、図7、図8、図9、および図10を参照して説明する。図5、図6、図7、図8、図9、および図10は、本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図である。なお、図5、図7、図8、図9、および図10は、図2に対応するガスセルの断面図である。図6は、ガスセルの斜視図である。
次に、本実施形態に係るガスセルの製造方法を図5、図6、図7、図8、図9、および図10を参照して説明する。図5、図6、図7、図8、図9、および図10は、本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図である。なお、図5、図7、図8、図9、および図10は、図2に対応するガスセルの断面図である。図6は、ガスセルの斜視図である。
まず、セル12を組み立てる。図5に、組み立てられた状態のセル12を示す。なお、図5には、後述する配置工程で、セル12のリザーバー16内に、アンプル20と、コーティング材32を含む保持部材30とが配置された状態を示している。
図5に示すように、セル12は、例えば、石英ガラスからなるガラス板部材11を組み合わせて構成されている。図示を省略するが、石英ガラスからなるガラス板を切断して、セル12を構成する各壁面に対応するガラス板部材11を準備する。そして、これらのガラス板部材11を組み立て、ガラス板部材11同士を接着剤または溶着により接合して、図5に示すような主室14とリザーバー16とを有するセル12を得る。この段階では、セル12の開口18は開放されている。
図6に、本実施形態の実施例におけるセル12の寸法を示す。本実施形態の実施例では、主室14の幅(Y軸方向における長さ)Wm、長さ(X軸方向の長さ)Lm、高さ(Z軸方向の長さ)Hmを、それぞれ18mm、18mm、16.5mmとし、リザーバー16の幅Wr、長さLr、高さHrを、それぞれ4mmとした。
また、図示しない別工程で、アンプル20とコーティング材32を含む保持部材30とを用意する。アンプル20は、真空に近い低圧環境下(理想的には真空中)において、管状のガラス管22の内部の空洞22aにアルカリ金属固体24を充填し、ガラス管22の両端部をそれぞれ溶着し密封して形成される(図3Aおよび図3B参照)。アルカリ金属固体24として用いられるセシウムなどのアルカリ金属は、反応性に富み大気中で取り扱うことができないため、低圧環境下でアンプル20内に密封された状態でセル12に収納される。
保持部材30は、空洞30aを有する管状のガラス管である(図4Aおよび図4B参照)。保持部材30が管状であるので、真空に近い低圧環境下において融点以上の温度に加熱し溶融したコーティング材32を、毛細管現象を利用して容易に空洞30aに充填できる。そして、保持部材30が透光性を有するので、コーティング材32を空洞30aに充填する際に、充填できたか否かを目視により容易に確認することができる。
空洞30aに充填するコーティング材32の量は、保持部材30の長さLtおよび空洞30aの内径φtの設定(すなわち、空洞30aの容積)により調整できる。本実施形態の実施例に係る保持部材30としては、上述した実施例のセル12(主室14およびリザーバー16)の寸法に対して、長さLt(図4A参照)を10mm、内径φt(図4B参照)を0.1mmとした。
本実施形態の実施例に係るコーティング材32としては、ペンタコンタン(C50H102)を使用した。2×10-6Torr程度に減圧された低圧環境下において、上述した組成のコーティング材32を150℃〜200℃程度の温度に加熱し、毛細管現象を利用して保持部材30の空洞30aに充填した。
なお、保持部材30にコーティング材32を充填する際は、予め所望の長さLtに切断した保持部材30にコーティング材32を充填してもよいし、所望の長さLtよりも長い保持部材30の母材にコーティング材32を充填した後に、母材をコーティング材32とともに所望の長さLtに切断して保持部材30に個片化してもよい。
ここで、一般にパラフィンなどの鎖式飽和炭化水素は、常温において軟らかい固体(蝋状)であるため、コーティング材32単独では取り扱いにくい。コーティング材32単独で取り扱う場合、例えば、ニードルなどを用いてコーティング材32を少量ずつセル12内に配置する方法が上げられる。しかしながら、このような方法では、セル12内に配置するコーティング材32の量が所望の量に対してばらついてしまうおそれや、セル12内へ配置する工数が増加するおそれがある。
セル12内に配置するコーティング材32の量がばらつくと、セル12(主室14およびリザーバー16)の内壁に形成するコーティング材32の膜が所望の膜厚にならなかったり、複数のセル12において個体間でコーティング材32の膜厚にばらつきが生じたりすることとなる。そうすると、製造するガスセル10の品質(感度、計測精度等)の低下やガスセル10の個体間での品質のばらつきを招いてしまう。
本実施形態では、保持部材30の長さLtおよび内径φtを適宜設定することにより、充填するコーティング材32の量を所望の量に合わせて容易に調整できる。そして、保持部材30の長さLtを管理する(長さLtのばらつきを抑える)ことにより、各セル12に配置するコーティング材32の量のばらつきを抑えることができる。そのため、セル12の内壁に所望の膜厚でコーティング材32の膜を形成できるとともに、セル12毎に成膜されるコーティング材32の膜厚のばらつきを小さく抑えることができる。これにより、ガスセル10の品質の低下やガスセル10の個体間での品質のばらつきを抑えて効率的に製造することができる。
次に、図5に示すように、セル12のリザーバー16に、アンプル20とコーティング材32を含む保持部材30とを配置する(配置工程)。まず、5×10-6Torr以下に減圧された低圧環境下において、セル12を400℃程度に加熱して、セル12の主室14およびリザーバー16の脱気(脱ガス)を行う。そして、セル12を室温まで冷却した後、図5に矢印で示すように、アンプル20と保持部材30とを、開口18から長手方向(X軸方向)に沿ってリザーバー16内に挿入する。リザーバー16内でのアンプル20および保持部材30の配置位置は特に限定されない。
本実施形態では、配置工程において、コーティング材32を保持部材30に充填された状態で取り扱うので、コーティング材32単独で取り扱う場合と比べて、コーティング材32を容易にリザーバー16に配置できる。これにより、コーティング材32単独で取り扱う場合と比べて、配置工程におけるコーティング材32の取り扱いに起因する工数増を抑えることができる。
次に、図7に示すように、開口18を封止部材19で封止してセル12を密封する(封止工程)。封止工程では、2×10-6Torr程度まで減圧した環境下でセル12内の脱気を十分に行い、主室14およびリザーバー16に不純物が極めて少ない状態とする。そして、セル12および封止部材19の少なくとも一方における開口18の周囲に低融点ガラスフリット(図示しない)を配置し、セル12と封止部材19とを固着して封止することにより、セル12が密封される。この半完成状態のガスセルを、ガスセル10Aとする。
セル12と封止部材19とを固着する際は、例えば、セル12をその長手方向が鉛直方向に沿うとともに開口18が鉛直方向の下方側となるようにして、封止部材19の上に配置してもよい。このように配置すれば、鉛直方向の下方に位置する封止部材19側から低融点ガラスフリットを加熱しながら、上方に位置するセル12に荷重を付加してセル12と封止部材19とを密着させることにより、効率良く封止を行うことができる。
次に、図8に示すように、保持部材30を加熱して、セル12内でコーティング材32の蒸気31を発生させる(加熱工程)。加熱工程では、図7に示すガスセル10Aの状態で、セル12(リザーバー16)を、例えば230℃程度に加熱する。リザーバー16を加熱することで、保持部材30が加熱され、空洞30aに充填されていたコーティング材32が加熱されて蒸発する。
加熱工程では、保持部材30が両端が開放された管状の部材であるので、空洞30aに充填されたコーティング材32を保持部材30の両端から容易に蒸発させることができる。そして、保持部材30が透光性材料で形成されているので、空洞30aに充填されたコーティング材32のすべてが蒸発したか否かを目視により容易に確認することができる。
また、保持部材30が透光性材料であるので、加熱工程で保持部材30を通してレーザー光をコーティング材32に照射して加熱することも可能となる。このようにすれば、セル12(リザーバー16)を加熱することなく、コーティング材32を局所的に加熱することができる。
さらに、保持部材30が耐熱性材料で形成されているので、加熱工程において、熱による保持部材30の変質や保持部材30からのガスの発生を抑えることができる。これにより、保持部材30の変質や保持部材30からのガスの混入に起因するガスセル10の品質(感度、計測精度等)の低下を抑えることができる。
図8に示すように、コーティング材32が蒸発してリザーバー16に流出した蒸気31は、リザーバー16から連通孔15を通って主室14に流入し、セル12内全体に拡散する。この蒸気31が主室14およびリザーバー16の内壁に付着すると、コーティング材32の薄膜となる。
次に、図9に示すように、セル12を冷却して主室14およびリザーバー16の内壁にコーティング材32を成膜する(成膜工程)。加熱工程でコーティング材32が蒸発したら、セル12を、例えば200℃程度で10分程度加熱した後徐々に冷却して、主室14およびリザーバー16の内壁に形成されるコーティング材32の薄膜の膜厚を均一化させる。これにより、主室14およびリザーバー16の内壁を覆うように、コーティング材32の膜が形成される。
成膜工程では、コーティング材32の薄膜の膜厚をより均一化させるため、上述の加熱および徐冷に加えて、さらにセル12を80℃〜200℃程度の温度で1時間から10時間程度加熱した後徐冷してもよい。この場合、連続してセル12を加熱し徐冷してもよいし、複数回に分けて加熱と徐冷とを繰り返すようにしてもよい。
次に、図10に示すように、アンプル20にレーザー光を照射してアルカリ金属のガスを発生させる(レーザー光照射工程)。レーザー光としては、パルスレーザー光40を用いる。レーザー光照射工程では、パルスレーザー光40を集光レンズ42で集光して、リザーバー16内に配置されたアンプル20のガラス管22に照射する。パルスレーザー光40は、セル12を間に介して、アンプル20(ガラス管22)の上面で焦点を結ぶように照射する。
これにより、図2に示すように、ガラス管22に貫通孔21が形成され、リザーバー16内でアンプル20内のアルカリ金属固体24(図10参照)が蒸発してアルカリ金属ガス13となる。リザーバー16内に流出したアルカリ金属ガス13は、連通孔15を通ってセル12の主室14に流入し拡散する。この結果、図2に示すように、セル12の空隙がアルカリ金属ガス13で満たされる。
レーザー光は指向性や収束性に優れているので、パルスレーザー光40を照射することにより、ガラス管22に容易に貫通孔21を形成することができる。パルスレーザー光40のエネルギーは、例えば、20μJ/pulse〜200μJ/pulseとする。パルスレーザー光40のパルス幅は、例えば、10ナノ秒〜50ナノ秒とし、30ナノ秒程度であることが好ましい。パルスレーザー光40の繰り返し周波数は、例えば、50kHz程度とし、パルスレーザー光40の照射時間は、例えば、100msec程度とする。
また、アンプル20のガラス管22に確実に貫通孔21を形成するためには、アンプル20に対するパルスレーザー光40の照射位置を、パルスレーザー光40の焦点がアンプル20の幅方向(図3BのY軸方向)における中央部に位置するように設定することが好ましい。パルスレーザー光40の焦点がアンプル20の幅方向における中央部からずれると、深さ方向の加工が進まなくなりガラス管22を貫通させることができなくなる場合がある。
レーザー光照射工程では、セル12に損傷を与えることなく、アンプル20のガラス管22に貫通孔21を形成する必要がある。そこで、セル12が石英ガラスで形成されガラス管22がホウ珪酸ガラスで形成されている場合、例えば、紫外線領域の波長のパルスレーザー光40を用いる。紫外線領域の波長の光は、石英ガラスを透過するが、ホウ珪酸ガラスには僅かに吸収される。これにより、セル12や保持部材30に損傷を与えることなく、アンプル20のガラス管22を選択的に加工して貫通孔21を形成することができる。
なお、レーザー光照射工程では、アンプル20内からアルカリ金属固体24が蒸発して流出すればよいので、貫通孔21の形成に限定されず、例えば、ガラス管22に亀裂を生じさせてアンプル20を分断してもよいし、ガラス管22を破壊してもよい。
以上で、本実施形態に係るガスセル10が完成する。本実施形態に係る磁気計測装置100の製造方法は、上述したガスセル10の製造方法を含んでいる。本実施形態に係る磁気計測装置100を製造する工程は、ガスセル10を製造する工程以外の工程では公知の方法を用いることができるため、その説明を省略する。
以上述べたように、本実施形態に係るガスセル10の製造方法および磁気計測装置100の製造方法によれば、以下の効果が得られる。
(1)配置工程においてコーティング材32を保持部材30に含まれた状態で取り扱うので、コーティング材32のみの状態で取り扱う場合と比べて、保持部材30の長さLtに基づいてコーティング材32の量を容易に所望の量に調整でき、かつ、コーティング材32を容易にリザーバー16に配置できる。また、保持部材30の長さLtを管理する(長さLtのばらつきを抑える)ことにより、各セル12に配置するコーティング材32の量のばらつきを抑えることができる。そのため、成膜工程においてセル12の内壁に所望の膜厚でコーティング材32の膜を安定的に形成でき、個体間でのコーティング材32の膜厚のばらつきを小さく抑えることができる。これにより、品質(感度、計測精度等)の低下や個体間での品質のばらつきを抑えて安定的かつ効率的にガスセル10を製造することができる。
(2)保持部材30が耐熱性材料で形成されているので、加熱工程において保持部材30を加熱する際に、熱による保持部材30の変質や保持部材30からのガスの発生を抑えることができる。これにより、保持部材30の変質や保持部材30からのガスの混入に起因するガスセル10の品質(感度、計測精度等)の低下を抑えることができる。
(3)保持部材30が、磁場に置かれても磁化されにくい非磁性材料で形成されている。そのため、例えばガスセル10を磁気の計測に用いる場合に、保持部材30が磁化されることによる磁気の計測への影響を抑止できる。
(4)保持部材30が、両端が開放された空洞30aを有する管状の部材である。そのため、コーティング材32を保持部材30の空洞30aに充填して保持できるので、コーティング材32の取り扱いを容易にできる。そして、管状の保持部材30の長さLtを適宜設定することで、保持部材30に充填されるコーティング材32の量の調整を容易に行うことができる。さらに、加熱工程でコーティング材32の蒸気31を発生させる際に、保持部材30を加熱することにより、空洞30aに充填されたコーティング材32を開放された両端から容易に蒸発させることができる。
(5)保持部材30が透光性材料で形成されている。そのため、コーティング材32を保持部材30の空洞30aに充填する際に、充填できたか否かを目視により容易に確認することができる。そして、加熱工程でコーティング材32の蒸気31を発生させる際に、充填されたコーティング材32のすべてが蒸発したか否かを目視により容易に確認することができる。また、加熱工程で、保持部材30を通してレーザー光をコーティング材32に照射し、コーティング材32を直接加熱することも可能となる。
(6)コーティング材32を含む保持部材30とともにアンプル20をリザーバー16に配置して封止し、セル12の内壁にコーティング材32を成膜した後にアンプル20からアルカリ金属のガス13を発生させる。そのため、成膜されたコーティング材32の膜により、励起されたアルカリ金属原子がセル12の内壁に直接衝突したときの挙動の変化を抑制または低減することができる。また、セル12を仮封止して内壁にコーティング材32を成膜した後に仮封止を外し、アンプル20をリザーバー16に配置して封止する場合と比べて、封止する工程を一つにでき、コーティング材32を成膜した後で外部からリザーバー16内に不純物が侵入することを抑止できる。
(7)高品質でばらつきが少ないガスセル10を備えた磁気計測装置100を製造できるので、高性能な磁気計測装置100を安定的に製造することができる。
上記実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(変形例1)
上記実施形態に係るガスセルの製造に用いるアルカリ金属を含む固形物は、アンプル20に限定されず、他の形態であってもよい。変形例1は、上記実施形態に対して、アルカリ金属を含む固形物がアンプルではなくピルである点が異なるが、セルの構成はほぼ同じである。変形例1に係るガスセルおよびガスセルに用いられるピルの構成について、図11および図12を参照して説明する。なお、上記実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
上記実施形態に係るガスセルの製造に用いるアルカリ金属を含む固形物は、アンプル20に限定されず、他の形態であってもよい。変形例1は、上記実施形態に対して、アルカリ金属を含む固形物がアンプルではなくピルである点が異なるが、セルの構成はほぼ同じである。変形例1に係るガスセルおよびガスセルに用いられるピルの構成について、図11および図12を参照して説明する。なお、上記実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
<ピルの構成>
まず、変形例1に係るアルカリ金属を含む固形物としてのピルの構成を説明する。図11は、変形例1に係るピルの斜視図である。図11に示すように、変形例1に係るピル26は、例えば略円筒形である。ピル26の円筒形の径φpは、例えば1mm程度であり、ピル26の円筒形の高さHpは、例えば1mm程度である。なお、ピル26の外形形状は略円筒形に限定されず、直方体や球体など他の形状であってもよい。
まず、変形例1に係るアルカリ金属を含む固形物としてのピルの構成を説明する。図11は、変形例1に係るピルの斜視図である。図11に示すように、変形例1に係るピル26は、例えば略円筒形である。ピル26の円筒形の径φpは、例えば1mm程度であり、ピル26の円筒形の高さHpは、例えば1mm程度である。なお、ピル26の外形形状は略円筒形に限定されず、直方体や球体など他の形状であってもよい。
ピル26は、アルカリ金属化合物と吸着剤とを含む。ピル26は、レーザー光を照射するとアルカリ金属化合物が加熱され活性化されることでアルカリ金属27が生成され、その際に放出される不純物や不純ガスは吸着剤28に吸着される(図12参照)。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属27としてセシウムを用いる場合、例えば、モリブデン酸セシウム、塩化セシウムなどのセシウム化合物を用いることができる。吸着剤28としては、例えば、ジルコニウム粉末、アルミニウムなどを用いることができる。
<ガスセルの構成>
図12は、変形例1に係るガスセルの長手方向に沿った断面図である。図12に示すように、変形例1に係るガスセル50は、上記実施形態に係るガスセル10と同様のセル12と封止部材19とを備えている。ガスセル50が完成した状態では、リザーバー16内にピル26(図11参照)のアルカリ金属化合物からアルカリ金属27(例えば、セシウム)が生成され、アルカリ金属27が蒸発したアルカリ金属ガス13で主室14およびリザーバー16が満たされている。リザーバー16内に、不純ガスを吸着した吸着剤28や不純物などが残留していてもよい。
図12は、変形例1に係るガスセルの長手方向に沿った断面図である。図12に示すように、変形例1に係るガスセル50は、上記実施形態に係るガスセル10と同様のセル12と封止部材19とを備えている。ガスセル50が完成した状態では、リザーバー16内にピル26(図11参照)のアルカリ金属化合物からアルカリ金属27(例えば、セシウム)が生成され、アルカリ金属27が蒸発したアルカリ金属ガス13で主室14およびリザーバー16が満たされている。リザーバー16内に、不純ガスを吸着した吸着剤28や不純物などが残留していてもよい。
<ガスセルの製造方法>
変形例1に係るガスセルの製造方法は、上記実施形態と同様の工程を有するが、アンプル20がピル26に置き換わることにより、処理方法の一部が上記実施形態と異なる。以下では、図示を省略し、上記実施形態と異なる点を説明する。
変形例1に係るガスセルの製造方法は、上記実施形態と同様の工程を有するが、アンプル20がピル26に置き換わることにより、処理方法の一部が上記実施形態と異なる。以下では、図示を省略し、上記実施形態と異なる点を説明する。
まず、セル12にコーティング材32を含む保持部材30を配置する配置工程では、セル12のリザーバー16内に、アンプル20に代わり、ピル26を収納する。
レーザー光照射工程では、パルスレーザー光40に代わり、連続発振レーザー光をピル26に照射する。連続発振レーザー光として、例えば、赤色から赤外線領域(680nm〜1200nm程度)の波長で連続発振するLD(Laser Diode)レーザーを用いることができる。連続発振レーザー光の波長は、800nm程度であることが好ましい。連続発振レーザー光の出力は、例えば、1W〜10W程度とし、2W〜5W程度であることが好ましい。連続発振レーザー光の照射時間は、例えば、10秒〜5分程度とし、30秒〜90秒程度であることが好ましい。
連続発振レーザー光を照射することにより、ピル26が加熱されてピル26に含まれるアルカリ金属化合物が活性化され、アルカリ金属27が生成される。そして、アルカリ金属27が蒸発しアルカリ金属ガス13となってリザーバー16内に流出し、連通孔15を通ってセル12の主室14に流入し拡散する。この結果、図12に示すように、セル12の空隙がアルカリ金属ガス13で満たされる。アルカリ金属化合物から放出された不純物や不純ガスは、吸着剤28に吸着される。
変形例1に係るガスセル50の製造方法および磁気計測装置100の製造方法においても、セル12の内壁に成膜するためのコーティング材32を保持部材30に充填された状態で取り扱うので、上記実施形態と同様の効果が得られる。
(変形例2)
上記実施形態に係るガスセルを適用可能な装置は、磁気計測装置100に限定されない。上記実施形態および変形例に係るガスセルは、例えば、原子時計などの原子発振器にも適用できる。図13は、変形例2に係る原子発振器の構成を示す概略図である。また、図14Aおよび図14Bは、変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図である。
上記実施形態に係るガスセルを適用可能な装置は、磁気計測装置100に限定されない。上記実施形態および変形例に係るガスセルは、例えば、原子時計などの原子発振器にも適用できる。図13は、変形例2に係る原子発振器の構成を示す概略図である。また、図14Aおよび図14Bは、変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図である。
<原子発振器>
図13に示す変形例2に係る原子発振器(量子干渉装置)101は、量子干渉効果を利用した原子発振器である。図13に示すように、原子発振器101は、上記実施形態に係るガスセル10(またはガスセル50)と、光源71と、光学部品72,73,74,75と、光検出部76と、ヒーター77と、温度センサー78と、磁場発生部79と、制御部80とを備えている。
図13に示す変形例2に係る原子発振器(量子干渉装置)101は、量子干渉効果を利用した原子発振器である。図13に示すように、原子発振器101は、上記実施形態に係るガスセル10(またはガスセル50)と、光源71と、光学部品72,73,74,75と、光検出部76と、ヒーター77と、温度センサー78と、磁場発生部79と、制御部80とを備えている。
光源71は、ガスセル10内のアルカリ金属原子を励起する励起光LLとして、後述する周波数の異なる2種の光(図14Aに示す共鳴光L1および共鳴光L2)を射出する。光源71は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)などの半導体レーザーなどで構成される。光学部品72,73,74,75は、それぞれ、光源71とガスセル10との間における励起光LLの光路上に設けられ、光源71側からガスセル10側へ、光学部品72(レンズ)、光学部品73(偏光板)、光学部品74(減光フィルター)、光学部品75(λ/4波長板)の順に配置されている。
光検出部76は、ガスセル10内を透過した励起光LL(共鳴光L1,L2)の強度を検出する。光検出部76は、例えば、太陽電池、フォトダイオードなどで構成されており、後述する制御部80の励起光制御部82に接続されている。ヒーター77(加熱部)は、ガスセル10内のアルカリ金属をガス状に(アルカリ金属ガス13として)維持するために、ガスセル10を加熱する。ヒーター77(加熱部)は、例えば、発熱抵抗体などで構成される。
温度センサー78は、ヒーター77の発熱量を制御するために、ヒーター77またはガスセル10の温度を検出する。温度センサー78は、サーミスター、熱電対などの公知の各種温度センサーで構成される。磁場発生部79は、ガスセル10内のアルカリ金属の縮退した複数のエネルギー準位をゼーマン分裂させる磁場を発生させる。ゼーマン分裂により、アルカリ金属の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器101の発振周波数の精度を高めることができる。磁場発生部79は、例えば、ヘルムホルツコイルやソレノイドコイルなどで構成される。
制御部80は、光源71が射出する励起光LL(共鳴光L1,L2)の周波数を制御する励起光制御部82と、温度センサー78の検出結果に基づいてヒーター77への通電を制御する温度制御部81と、磁場発生部79から発生する磁場が一定となるように制御する磁場制御部83とを有する。制御部80は、例えば、基板上に実装されたICチップに設けられている。
原子発振器101の原理を簡単に説明する。図14Aは原子発振器101のガスセル10内におけるアルカリ金属のエネルギー状態を説明する図であり、図14Bは原子発振器101の光源71からの2つの光の周波数差と光検出部76での検出強度との関係を示すグラフである。図14Aに示すように、ガスセル10内に封入されているアルカリ金属(アルカリ金属ガス13)は、3準位系のエネルギー準位を有しており、エネルギー準位の異なる2つの基底状態(基底状態S1、基底状態S2)と、励起状態との3つの状態をとり得る。ここで、基底状態S1は、基底状態S2よりも低いエネルギー状態である。
このようなアルカリ金属ガス13に対して周波数の異なる2種の共鳴光L1,L2を照射すると、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)に応じて、共鳴光L1,L2のアルカリ金属ガス13における光吸収率(光透過率)が変化する。そして、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態S1と基底状態S2とのエネルギー差に相当する周波数と一致したとき、基底状態S1,S2から励起状態への励起がそれぞれ停止する。このとき、共鳴光L1,L2は、いずれも、アルカリ金属ガス13に吸収されずに透過する。このような現象をCPT現象または電磁誘起透明化現象(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)と呼ぶ。
光源71は、ガスセル10に向けて、上述したような周波数の異なる2種の光(共鳴光L1および共鳴光L2)を射出する。ここで、例えば、共鳴光L1の周波数ω1を固定し、共鳴光L2の周波数ω2を変化させていくと、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態S1と基底状態S2とのエネルギー差に相当する周波数ω0に一致したとき、光検出部76の検出強度は、図14Bに示すように急峻に上昇する。このような急峻な信号をEIT信号と呼ぶ。このEIT信号は、アルカリ金属の種類によって決まった固有値をもっている。したがって、このようなEIT信号を基準として用いることにより、高精度な原子発振器101を実現することができる。
上記実施形態のガスセルの製造方法によれば、セル12内にコーティング材32の膜を所望の膜厚で安定的に形成できるので、高精度の原子発振器101に好適に用いることができる高品質のガスセル10を安定的に製造することができる。
(変形例3)
本発明に係るガスセルは、上記実施形態に係るガスセルの製造方法により完成した状態のガスセル10,50に限定されず、半完成状態のガスセル10Aであってもよい。変形例3に係る半完成状態のガスセル10Aの構成を、図7を参照して説明する。
本発明に係るガスセルは、上記実施形態に係るガスセルの製造方法により完成した状態のガスセル10,50に限定されず、半完成状態のガスセル10Aであってもよい。変形例3に係る半完成状態のガスセル10Aの構成を、図7を参照して説明する。
<ガスセルの構成>
変形例3に係る半完成状態のガスセル10Aは、図7に示すように、上記実施形態において封止工程までの処理が行われた状態のものである。すなわち、ガスセル10Aのセル12は、内部が減圧され不純物が極めて少ない状態で、開口18が封止部材19で封止されて密封されている。そして、密封されたセル12(リザーバー16)内に、アルカリ金属ガス13を発生させるためのアルカリ金属固体24がアンプル20内に密封された状態で配置され、セル12の内壁に成膜するためのコーティング材32が保持部材30の空洞30aに充填された状態で配置されている。
変形例3に係る半完成状態のガスセル10Aは、図7に示すように、上記実施形態において封止工程までの処理が行われた状態のものである。すなわち、ガスセル10Aのセル12は、内部が減圧され不純物が極めて少ない状態で、開口18が封止部材19で封止されて密封されている。そして、密封されたセル12(リザーバー16)内に、アルカリ金属ガス13を発生させるためのアルカリ金属固体24がアンプル20内に密封された状態で配置され、セル12の内壁に成膜するためのコーティング材32が保持部材30の空洞30aに充填された状態で配置されている。
ガスセル10Aは、内部が減圧され不純物が極めて少ない状態で密封されているので、品質を損なうことなく保存したり移動させたりすることができる。また、ガスセル10Aに対して、上記実施形態の加熱工程からレーザー光照射工程までの処理を行うことで、ガスセル10を完成させることができる。なお、ガスセル10Aにおいて、リザーバー16内に、アンプル20の代わりに変形例1に係るピル26が配置されていてもよい。
(変形例4)
<保持部材>
本発明に係る保持部材は、上記実施形態に係る管状の保持部材30に限定されず、毛細管現象を利用してコーティング材32を保持でき、非磁性材料で形成されている部材であれば、他の形態であってもよい。例えば、保持部材として、繊維を撚り合わせた糸状の部材であってもよいし、糸を編んだ布状の部材であってもよい。保持部材がこのような部材であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
<保持部材>
本発明に係る保持部材は、上記実施形態に係る管状の保持部材30に限定されず、毛細管現象を利用してコーティング材32を保持でき、非磁性材料で形成されている部材であれば、他の形態であってもよい。例えば、保持部材として、繊維を撚り合わせた糸状の部材であってもよいし、糸を編んだ布状の部材であってもよい。保持部材がこのような部材であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
10,10A,50…ガスセル、12…セル、13…アルカリ金属ガス(アルカリ金属のガス)、14…主室(第1室)、16…リザーバー(第2室)、18…開口、19…封止部材、20…アンプル(アルカリ金属を含む固形物)、26…ピル(アルカリ金属を含む固形物)、30…保持部材、32…コーティング材、40…パルスレーザー光(レーザー光)、100…磁気計測装置。
Claims (13)
- 第1室と、前記第1室と連通する第2室と、前記第2室に設けられた開口と、を有するセルの前記第2室にコーティング材を含む保持部材を配置する配置工程と、
前記開口を封止部材で封止して前記セルを密封する封止工程と、
前記保持部材を加熱して、前記セル内で前記コーティング材の蒸気を発生させる加熱工程と、
前記セルを冷却して、前記セルの内壁に前記コーティング材を成膜する成膜工程と、
を含むことを特徴とするガスセルの製造方法。 - 請求項1に記載のガスセルの製造方法であって、
前記保持部材は、耐熱性材料で形成されていることを特徴とするガスセルの製造方法。 - 請求項1または2に記載のガスセルの製造方法であって、
前記保持部材は、非磁性材料で形成されていることを特徴とするガスセルの製造方法。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法であって、
前記保持部材は、管状の部材であることを特徴とするガスセルの製造方法。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法であって、
前記保持部材は、透光性材料で形成されていることを特徴とするガスセルの製造方法。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法であって、
前記配置工程では、前記保持部材とともに、アルカリ金属を含む固形物を前記第2室に配置し、
前記成膜工程の後に、前記固形物にレーザー光を照射して前記アルカリ金属のガスを発生させるレーザー光照射工程をさらに含むことを特徴とするガスセルの製造方法。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法を含むことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
- 第1室と、前記第1室と連通する第2室と、前記第2室に設けられた開口と、を有するセルと、
前記開口を封止して前記セルを密封する封止部材と、
前記第2室に配置されたコーティング材を含む保持部材と、
を備えることを特徴とするガスセル。 - 請求項8に記載のガスセルであって、
前記保持部材は、耐熱性材料で形成されていることを特徴とするガスセル。 - 請求項8または9に記載のガスセルであって、
前記保持部材は、非磁性材料で形成されていることを特徴とするガスセル。 - 請求項8から10のいずれか一項に記載のガスセルであって、
前記保持部材は、管状の部材であることを特徴とするガスセル。 - 請求項8から11のいずれか一項に記載のガスセルであって、
前記保持部材は、透光性材料で形成されていることを特徴とするガスセル。 - 請求項8から12のいずれか一項に記載のガスセルであって、
前記第2室に配置されたアルカリ金属を含む固形物をさらに備えることを特徴とするガスセル。
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