JP2018003230A - 着色ポリエチレン繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決することにある。すなわち、濃色に着色され、色落ちや色移りし難いポリエチレン繊維、さらには、ムラの少ない均一な染色と高い強度を両立した着色ポリエチレン繊維及びその製造方法を提供することにある。
そこで、さらに本発明の目的は、環境や生態系に配慮した、着色ポリエチレン繊維及びその製造方法を提供することである。
すなわち、本発明に係る着色ポリエチレン繊維は、
CIE−L*a*b*表色系によるL*値が80以下であり、摩擦に対する染色堅牢度が、乾燥状態及び湿潤状態のいずれについても3級以上であり、かつ、酸価が0.1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、ことを特徴とする着色ポリエチレン繊維である。
引張強度の変動係数(%)=(引張強度の標準偏差/引張強度の平均値)×100 (式1)
極限粘度[η]が5.0dL/g以上、25dL/g以下であり、その繰り返し単位が90モル%以上エチレンからなるポリエチレンを濃度0.5〜40質量%となるように有機溶媒に溶解させたポリエチレン溶液を紡糸してポリエチレン繊維状物を得る工程と、
20質量%未満の前記有機溶媒を含む前記ポリエチレン繊維状物を、着色材料と片末端に酸価が1mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の親水基を備えたポリオレフィンとを含み、温度が0℃以上、60℃未満の着色液と接触させる工程と、
前記着色液が付与され、繊維重量に対し25%未満の有機溶媒を含むポリエチレン繊維状物を110℃以上で10秒以上加熱する工程と、
前記ポリエチレン繊維状物を延伸する工程と、
を含むことを特徴とする。
CIE−L*a*b*表色系によるL*値が80以下であり、摩擦に対する染色堅牢度が、乾燥状態及び湿潤状態のいずれについても3級以上であり、かつ、酸価が0.1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、ところを特徴とする。
引張強度の変動係数(%)=引張強度の標準偏差/引張強度の平均値×100 (式1)
引張強度の変動係数(%)は9%以下であるのがより好ましく、さらに好ましくは8%以下であり、より一層好ましくは5%以下である。引張強度の変動係数(%)が上記範囲内であるポリエチレン繊維は、長さ方向における強度のバラツキが小さいので好ましい。
本発明では溶液形成法により着色ポリエチレン繊維を製造する。溶液形成法としては従来公知の方法を採用すればよく、特に制限はないが、例えば、デカリンやテトラリンなどの揮発性の有機溶媒やパラフィン等の非揮発性の有機溶媒にポリエチレンを溶解させてポリエチレンを繊維状に成形する溶液紡糸法を採用するのが好ましい。
ポリエチレン繊維状物から有機溶媒を除去する脱溶媒工程は、延伸工程とは別個の工程として実施してもよいし、延伸工程と同時に行ってもよい。
片末端に親水基を含むポリオレフィンとして、低分量の、酸価が1mgKOH/g以上150mgKOH/g以下のポリエチレンを着色液に添加するのが好ましい。
(1)色の測定(CIE−L*a*b*表色系)
測定条件として、JIS Z 8781−4 2013に準拠して測定を行った。SPECTROPHOTOMETER CM−3700d(コニカミノルタ株式会社製)を用い、データカラー・スペクトラフラッシュ(Datacolor Spectraflash)モデルSF−300比色計(ニュージャージー州、ローレンスビルのデータカラー・インターナショナル(Datacolor International))を用いてD65/10度光源を使用して行った。
測定用試料は、実施例、比較例、参考例で得られたポリエチレン繊維をステンレス製(SUS304)の板に出来るだけ隙間が生じ無いように巻きつけて作製した。
JIS L 0801(2000)に準じて試料を準備した。乾燥状態及び湿潤状態の試料について、摩擦試験機II形(学振形)を使用して、JIS L 0849(2013)に準じて摩擦に対する染色堅牢度の試験を行った。結果を、汚染用グレースケール(JIS L 0805(2005))を使用して視覚法により染色堅牢度の判定を行った。
なお、試料は、実施例、比較例及び参考例で得られたポリエチレン繊維の少なくとも1本を学振形摩擦試験機のサンプル台に固定して測定を行った。繊維の長さが十分ある場合は、繊維を複数本並べてサンプル台に固定して測定を行ってもよいし、サンプル台と同程度の大きさの長方形の板紙に、板紙の長辺の方向に平行して密に硬く巻きつけた試料を作製しこれを測定してもよいし、また筒編み等により布帛の状態として測定してもよい。サンプルが布帛の場合はそのまま用いてよい。
ポリエチレン繊維を長手方向の位置の異なる3箇所で各々50cmにカットし、その重量を測定し、その平均値を用いて糸の繊度を求めた。単糸繊度は、糸の繊度から算出することができる。
長手方向の繊度ムラは以下の方法で測定した。ポリエチレン繊維を10cm毎に連続で10本カットし、その重量を各々測定し以下の式2を用いて繊度ムラ(総繊度の変動係数)を求めた。
繊度ムラ(%) =(繊度の標準偏差/繊度の平均値)×100 (式2)
JIS L1013 8.5.1に準拠して測定した。引張強度、弾性率は、株式会社オリエンテック製の「テンシロン万能材料試験機」を用い、試料長200mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分、雰囲気温度20℃、相対湿度65%の条件下で歪−応力曲線を測定し、破断点での応力と伸びから強度(cN/dtex)、伸度(%)、曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から弾性率(cN/dtex)を計算して求めた。測定時にポリエチレン繊維に印加する初荷重を繊度の1/10(cN/dtex)とした。なお、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
ポリエチレン繊維の長手方向の任意の10ヶ所で上述の強度試験を行い、下記(式1)により引張強度の変動係数(CV)(%)を求めた。なお、試料採取箇所は同一の繊維(糸)から採取する限り特に限定は無く、繊維長手方向で連続して採取してもよいし、1の試料を採取した後、間隔をおいて次の試料を採取してもよい。
引張強度の変動係数(%)=(引張強度の標準偏差/引張強度の平均値)×100 (式1)
135℃のデカリンにてウベローデ型毛細粘度管により、種々の希薄溶液の比粘度を測定し、その粘度の濃度に対するプロットの最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より極限粘度を決定した。なお、極限粘度は、原料ポリエチレンだけでなく、同様に、製造したポリエチレン繊維についても測定した。
残留溶媒濃度は、島津製作所製「ガスクロマトグラフィー」を用いて測定した。まず、試料として、ポリエチレン繊維10mgをガスクロマトグラフィー注入口のガラスインサートにセットし、続いて注入口を溶媒の沸点以上に加熱し、加熱により発生した溶剤を窒素パージでカラムに導入した。次に、カラム温度を40℃に設定し、溶媒を5分間トラップさせた。そして、カラム温度を80℃まで昇温させた後に測定を開始した。得られたピークより残留溶剤濃度を求めた。
ポリエチレン繊維のサンプル1〜2gを130℃に加熱した熱キシレン20mlに溶解後、フェノールフタレインを加え、0.1mol/Lカリウム・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行って、酸価を求めた。
極限粘度が17.0dL/gで、繰り返し単位の98%がエチレンである超高分子量ポリエチレンを原料ポリエチレンとし、これをデカヒドロナフタレンに分散させてポリエチレン濃度9質量%の分散液を調製した。この分散液を押出し機にて200℃で加熱して溶液とした後、オリフィス径φ1.0mm、30Hからなる紡糸口金からノズル面温度180℃、単孔吐出量2.0g/minで吐出した。吐出された糸条が固化するまでに8倍で変形し30℃の水冷バスで冷却しポリエチレン繊維状物(未延伸糸)を得た。
着色液に添加する添加ポリエチレンに、分子量が4000、酸価が30mgKOHであるものを用いたこと、および1段目の延伸時間を25秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。実施例2で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表1に示す。
着色液に添加する添加ポリエチレンに、分子量が3000、酸価が60mgKOHであるものを用いたこと、および、1段目の延伸時間を25秒、1段目の延伸倍率を3.5倍にしたこと以外は、実施例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。実施例3で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表1に示す。
着色液に添加する添加ポリエチレンに、分子量が5000、酸価が40mgKOHのものを、添加量を20質量%にして用いたこと、1段目の延伸時間を25秒、1段目の延伸倍率を3.5倍にしたこと以外は、実施例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。実施例4で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表1に示す。
極限粘度が18.5dL/gで、繰り返し単位の96%がエチレンである超高分子量ポリエチレンを原料ポリエチレンとし、これをデカヒドロナフタレンに分散させてポリエチレン濃度8質量%の分散液を調製した。この分散液を押出し機にて190℃で加熱して溶液とした後、オリフィス径φ0.8mm、30Hからなる紡糸口金からノズル面温度180℃、単孔吐出量2g/minで吐出した。吐出された糸条が固化するまでに16倍で変形し30℃の水冷バスで冷却しポリエチレン繊維状物(未延伸糸)を得た。
デカヒドロナフタレンに15質量%のC.I. Solvent Blue 35を溶解させた着色液(110℃)をガイドオイリング法により上記ポリエチレン繊維状物に接触させたこと、かつ、2段目の延伸を135℃のオーブン中で実施したこと以外は、比較例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。比較例2で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表2に示す。
比較例1と同じ原料ポリエチレン分散液中に、C.I. Solvent Blue 35を濃度が0.05質量%となるように添加したこと、かつ、未延伸糸と着色液との接触を行わなかった(染色を行わなかった)こと以外は、比較例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。比較例3で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表2に示す。
デカヒドロナフタレンに20質量%のC.I. Solvent Blue 58を溶解させた着色液を用いたこと、かつ、90℃の窒素の熱風で5秒間熱処理した後、同温度で2倍の延伸を行った(1段目)後、90℃のオーブン中で1段延伸後のポリエチレン繊維状物を4倍延伸した(2段目)こと以外は、比較例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。比較例4で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表2に示す。
デカヒドロナフタレンに20質量%のC.I. Solvent Blue 58を溶解させた着色液を用いて、ポリエチレン繊維状物の質量に対し12質量%の付着量となるように付着させ、かつ、2段目の延伸を135℃のオーブン中で実施したこと以外は、比較例1と同様にして着色ポリエチレン繊維を製造した。比較例5で採用した製造条件と、得られた着色ポリエチレン繊維の物性とを表2に示す。
着色材料としてC.I. Solvent Blue35(10質量%)を用い、溶媒として精製水を用い、添加ポリエチレンを用いることなく、着色液を作製した。この着色液は、均一溶液とならず、着色材料が水中に分散した状態となった。この着色液を用いた以外は実施例4と同様にしてポリエチレン繊維を製造した。しかしながら、着色材料は繊維表面に付着したのみで、該ポリエチレン繊維を着色することができなかった。比較例6で採用した製造条件と得られたポリエチレン繊維の物性とを表2に示す。
未延伸糸と着色液との接触を行わなかった(染色を行わなかった)こと、かつ、1段目の延伸では、3.5倍の延伸を行ったこと以外は、比較例1と同様にしてポリエチレン繊維を製造した。参考例で採用した製造条件と、得られたポリエチレン繊維の物性とを表2に示す。
Claims (15)
- CIE−L*a*b*表色系によるL*値が80以下であり、摩擦に対する染色堅牢度が、乾燥状態及び湿潤状態のいずれについても3級以上であり、かつ、酸価が0.1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、ことを特徴とする着色ポリエチレン繊維。
- 油溶性染料である着色材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の着色ポリエチレン繊維。
- 長手方向の任意の10箇所で測定した引張強度について下記式1で定義される変動係数が10%以下である請求項1または2に記載の着色ポリエチレン繊維。
引張強度の変動係数(%)=(引張強度の標準偏差/引張強度の平均値)×100 (式1) - 長手方向の繊度ムラが10%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維。
- 引張強度が18cN/dtex以上である請求項1〜4いずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維。
- 含有する単糸の繊度が1dtex以上、80dtex以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維を少なくとも1本含むことを特徴とする組紐。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維を含む釣糸。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維を含む手袋。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維を含むロープ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維を含むネット。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色ポリエチレン繊維を含む織物又は編物。
- 極限粘度[η]が5.0dL/g以上、25dL/g以下であり、その繰り返し単位が90モル%以上エチレンからなるポリエチレンを濃度0.5〜40質量%となるように有機溶媒に溶解させたポリエチレン溶液を紡糸してポリエチレン繊維状物を得る工程と、
前記ポリエチレン繊維状物を、着色材料と片末端に親水基を備えたポリオレフィンとを含み、温度が0℃以上、60℃未満の着色液と接触させる工程と、
前記着色液が付与されたポリエチレン繊維状物を110℃以上で10秒以上加熱する工程と、
前記ポリエチレン繊維状物を延伸する工程と、
を含むことを特徴とする着色ポリエチレン繊維の製造方法。 - 前記着色液と接触させる前記ポリエチレン繊維状物の温度が50℃以下である請求項13に記載の着色ポリエチレン繊維の製造方法。
- 前記ポリエチレン繊維を前記着色液と接触させる工程の後、2倍以上の延伸倍率で延伸する工程を含む請求項13または14に記載の着色ポリエチレン繊維の製造方法。
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