JP2018003058A - 被処理物の加熱方法、被処理物の熱処理方法、鋼板の熱処理方法、及び加熱促進コーティング層 - Google Patents

被処理物の加熱方法、被処理物の熱処理方法、鋼板の熱処理方法、及び加熱促進コーティング層 Download PDF

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Abstract

【課題】光照射手段を用いた加熱方法において、光照射手段による被処理物の加熱を促進し、被処理物の昇温速度を向上することができる、被処理物の加熱方法を提供する。【解決手段】被被処理物の表面の少なくとも一部に加熱促進コーティング層が配置されており、光を照射する光照射手段が、前記加熱促進コーティング層に対して光の照射を行い、前記加熱促進コーティング層が、前記被処理物を加熱する、被処理物の加熱方法を提供する。【選択図】図3

Description

本発明は、被処理物の加熱方法、被処理物の熱処理方法、鋼板の熱処理方法、及び加熱促進コーティング層に関する。
鋼板などの被処理物を熱処理するための熱処理装置としては、加熱手段として光照射手段を備えるものが知られている。例えば特許文献1および特許文献2には、鋼板等の被加熱材を近赤外線ランプによって加熱する加熱装置や、加熱方法が開示されている。特に、両特許文献では、照射線を遮蔽等するプレート材を、少なくとも部分的に被加熱材に近接して配置し、部分的に赤外線が遮られることで、部分的に高温に加熱する技術が開示されている。
係る加熱装置による加熱温度として、例えば特許文献1には、高温加熱部をオーステナイト化温度以上(約800°以上が好ましい)に加熱して焼き入する旨開示されている。
また、特許文献3には、鋼板をハロゲンランプによって900℃以上に加熱する熱処理装置及びランプ制御方法が開示されている。
特開2010−044875号公報 特開2013−124408号公報 特開2015−135313号公報
特許文献1〜3に開示された加熱装置や熱処理装置においては、近赤外線ランプ等の光照射手段により照射された光が被処理物に吸収されることで加熱が行われる。しかし、被処理物によっては光照射を行うと、大部分の光が反射されてしまうため、被処理物が加熱されにくいことがある。
ところで、生産性を高める観点から、また熱処理の条件等により、急速に被処理物を加熱することを求められる場合があった。しかしながら、上述のように光照射手段を用いた加熱方法では、光が反射されてしまうと、被処理物の加熱に寄与するエネルギーが少なくなるので光照射手段により被処理物を加熱する際の昇温速度を十分に速くすることができない場合があった。
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、光照射手段を用いた加熱方法において、光照射手段による被処理物の加熱を促進し、被処理物の昇温速度を向上することができる、被処理物の加熱方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
被処理物の表面の少なくとも一部に加熱促進コーティング層が配置されており、
光を照射する光照射手段が、前記加熱促進コーティング層に対して光の照射を行い、
前記加熱促進コーティング層が、前記被処理物を加熱する、被処理物の加熱方法を提供する。
本発明の一態様によれば、光照射手段を用いた加熱方法において、光照射手段による被処理物の加熱を促進し、被処理物の昇温速度を向上することができる、被処理物の加熱方法を提供することができる。
熱処理装置の断面を模式的に示した説明図。 図1の熱処理装置における熱処理部の構成を示す説明図。 実施例1、2、及び比較例1の熱処理工程における温度プロファイル。 実施例3、及び比較例2における、加熱促進コーティング層の位置と温度測定位置の説明図。 実施例3、及び比較例2の熱処理工程における温度プロファイル。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[被処理物の加熱方法]
本実施形態ではまず、被処理物の加熱方法の一構成例について説明する。
本実施形態の被処理物の加熱方法では、被処理物の表面の少なくとも一部に加熱促進コーティング層を配置しておくことができる。そして、光を照射する光照射手段が、加熱促進コーティング層に対して光の照射を行い、加熱促進コーティング層が、被処理物を加熱することができる。
ここで、本実施形態の被処理物の加熱方法に用いることができる、熱処理装置の一構成例について、図1、図2を用いて説明する。なお、図1、図2で同じ部材には同じ番号を付し、一部説明を省略している。
図1は、熱処理装置の断面図を模式的に示した説明図であり、図2は、図1に示す熱処理装置における熱処理部の構成を示す説明図である。
図1に示す熱処理装置10を用いて、被処理物Wを加熱、熱処理することができる。
図1に示した熱処理装置10は、光照射手段の複数の光照射手段21を備えた熱処理部20と、熱処理部20における光照射手段21に電力を供給する給電部31と、熱処理部20の光照射手段21への入力電圧を制御する制御部32とを有することができる。
そして、図2に示すように、熱処理部20においては、被処理物Wが配置される処理室Sを形成する処理室形成材22が設けられている。処理室S内には、被処理物Wを水平に支持する支持部材23が設けられている。
処理室S内に配置された被処理物Wの下方位置には、放射温度計24が配置されている。この放射温度計24は、被処理物Wから放射される赤外線の強度を測定することによって当該被処理物Wの温度を測定するものである。
処理室Sの上方位置には、複数の光照射手段21を有する光源ユニット25が配置されている。この光源ユニット25においては、複数の光照射手段21が水平方向に沿って並ぶよう配置されている。
この際、光照射手段21は、赤外線領域の光を含む光を照射する手段であることが好ましい。すなわち、赤外線領域の光を含む光を発振できる手段であることが好ましい。光照射手段の具体的な構成は特に限定されないが、光照射手段としては、例えばハロゲンランプを用いることができる。
本実施形態の被処理物の加熱方法では、上述のように、光照射手段により、加熱促進コーティング層に対して光を照射し、被処理物の加熱を実施することができる。このため、例えば、ここまで説明したような、光照射手段を備えた熱処理装置を用いて被処理物を加熱する加熱工程を実施することができる。ただし、図1、図2に示したような熱処理装置に限定されるものではなく、加熱促進コーティング層を有する被処理物に対して、光を照射する光照射手段を備えた装置であれば良い。例えば、被処理物の両面を同時に加熱する場合には、図1、図2に示した熱処理装置において、被処理物Wの下面に対しても光を照射できるように、被処理物Wの下面側にさらに光照射手段を設け、被処理物の両面に対して光を照射して加熱するように構成することもできる。
そして、本実施形態の被処理物の加熱方法の加熱工程に供する被処理物は、該被処理物の表面の少なくとも一部に加熱促進コーティング層を設けておくことができる。加熱促進コーティング層は、本実施形態の被処理物の加熱方法において、加熱促進コーティング層形成工程を実施し、形成することもできるが、予め被処理物の表面に形成しておくこともできる。なお、ここでいう被処理物の表面とは、熱処理を行う際に、光照射手段による光が入射される表面を意味する。
加熱促進コーティング層は、光照射手段から照射された光を吸収し、被処理物を加熱するように構成することができる。このため、加熱促進コーティング層は、具体的には例えば、吸収した光を熱に変換する光吸収能を有する無機粒子を含有することができる。係る光吸収能を有する無機粒子は特に限定されないが、被処理物の加熱の観点から、赤外線の吸収能を有する無機粒子であることが、望ましい。
赤外線の吸収能を有する無機粒子としては特に限定されないが、例えばカーボンブラック粒子、窒化チタン粒子、(CuFeMn)で表される銅鉄マンガンスピネル化合物、インジウム錫酸化物粒子、アンチモン錫酸化物粒子、一般式W(W:タングステン、O:酸素、2.2≦y/x≦2.999)で表されるタングステン酸化物粒子、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選択される少なくとも1種類以上の元素である。)で表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含むことが好ましい。
赤外線の吸収能を有する無機粒子として挙げた上述の材料のうち、例えば、カーボンブラック粒子は可視光領域から赤外線領域まで幅広い波長域において吸収特性を有することができる。
また、インジウム錫酸化物粒子(ITO)や、アンチモン錫酸化物粒子(ATO)の場合、波長1400nm以上程度の比較的長波長の光に対して高い吸収特性を示す。
一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子の場合は波長1000nmから2000nm程度の比較的幅広い近赤外線領域において高い吸収特性を示す。
さらに、XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選択される少なくとも1種類以上の元素である。)で表される六ホウ化物粒子の場合は波長1000nm程度の近赤外線領域に高い吸収特性を有する。
赤外線の吸収能を有する無機粒子としては、上記無機粒子のうち、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、Kから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、LaBで表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含むことが特に好ましい。これは、加熱促進コーティング層が、赤外線の吸収能を有する無機粒子としてこれら粒子から選択された1種類以上を含有する場合、加熱促進コーティング層に対して光を照射して熱処理する際、加熱促進コーティング層を設けていない場合と比較して、同じ照射時間で被処理物の温度に150℃以上の温度差を生じさせることが可能だからである。すなわち、加熱促進コーティング層が、赤外線吸収能を有する無機粒子として、上述の複合タングステン酸化物粒子、および/または六ホウ化物粒子を含有する場合、他の赤外線吸収能を有する無機粒子を用いた場合と比較して、特に顕著な被処理物の加熱を促進する効果を得ることが可能になるからである。
そして、本実施形態の被処理物の加熱方法では、上述のように被処理物の表面の少なくとも一部に加熱促進コーティング層を設け、光照射手段により、該加熱促進コーティング層に対して、光を照射して加熱を実施することができる。
被処理物の表面に加熱促進コーティング層を設け、加熱促進コーティング層に対して、光照射手段により光を照射すると、加熱促進コーティング層は、光照射手段からの光を吸収して熱に変換する。また、加熱促進コーティング層を透過した光を被処理物が吸収すると、被処理物が光を熱に変換する。このため、被処理物の表面のうち、加熱促進コーティング層を配置した部分については、加熱促進コーティング層が変換する熱と、被処理物が光を吸収して変換する熱により、被処理物の加熱を促進し(加熱促進効果)、昇温速度を向上させることができる。
被処理物が、鋼板のように高い割合で光を反射する物質の場合、被処理物の表面では光の吸収と反射が発生するので、従来のように加熱促進コーティング層を設けていない場合、照射された光が熱に変換させる効率は低かった。これに対して、本実施形態の被処理物の加熱方法によれば、被処理物の表面には光を吸収し熱に変換する加熱促進コーティング層が設けられているため、被処理物の表面での光の反射を抑制し、被処理物の表面においても、光の吸収を促進することができる。
なお、加熱促進コーティング層を設けた被処理物に光を照射する際、例えば加熱促進コーティング層を設けていない部分では、光照射手段は被処理物の表面に対して直接光を照射することになる。また、加熱促進コーティング層を設けた部分についても、上述のように加熱促進コーティング層を透過した光が、被処理物の表面に照射されることになる。従って、加熱促進コーティング層に対して光を照射する際、同時に被処理物の表面に対しても光を照射することになる。
ところで、光吸収能を有する物質、特に赤外線の吸収能を有する物質としては、有機化合物の物質も知られている。具体的には例えば、ポリメチン骨格を伸ばしたシアニン色素、アルミニウムや亜鉛を中心に持つフタロシアニン色素、各種ナフタロシアニン化合物、平面四配位構造を有するニッケルジチオレン錯体、スクアリウム色素,キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等が知られている。
加熱促進コーティング層に含まれる、光吸収能を有する物質を、このような有機化合物の物質で構成した場合、被処理物を200℃を超えた温度に昇温させると、200℃を超えた温度域では、加熱促進コーティング層に含まれる光吸収能を有する物質が分解し、加熱促進コーティング層の機能が失われ、被処理物の加熱を促進できなくなる。
このため、加熱促進コーティング層に含まれる、光吸収能を有する物質としては、既述のように、光吸収能を有する無機粒子、特に赤外線の吸収能を有する無機粒子を用いることが好ましい。
特に、本実施形態の加熱促進コーティング層に用いる光吸収能を有する無機粒子は、400℃以上の温度でも変質しない光吸収能を有する無機粒子を含有することが好ましく、500℃以上の温度でも変質しない光吸収能を有する無機粒子を含有することがより好ましい。
このように、加熱促進コーティング層に含まれる光吸収能を有する無機粒子として、400℃以上に加熱されても変質しない材料を用いた場合、加熱促進コーティング層内の該光吸収能を有する無機粒子が、少なくとも400℃に加熱されるまでは、被処理物の加熱を促進するので、目標温度への到達を早めることができ、好ましい。
なお、加熱促進コーティング層の効果として、ここまで被処理物の昇温速度を向上する効果について説明してきたが、係る効果に限定されるものではない。例えば、被処理物として、鋼板等の金属材料を用い、1000℃等の高温で熱処理をする場合、加熱促進コーティング層を設けると、加熱促進コーティング層により保護され、加熱促進コーティング層を設けた部分の被処理物の表面の酸化を抑制することもできる。
次に、本実施形態の被処理物の加熱方法において用いる、加熱促進コーティング層の製造方法(形成方法)について以下に説明する。
加熱促進コーティング層の製造方法は、被処理物表面に膜としての形態を維持できる程度の強度のコーティング層を得ることができる方法であれば良く、特に限定されない。例えば、光吸収能を有する無機粒子を含有する加熱促進コーティング層を形成するには、光吸収能を有する無機粒子を分散させたコーティング液を被処理物表面に塗布する等の方法が挙げられる。以下に当該コーティング液の作製方法について述べる。
光吸収能を有する無機粒子の分散液であるコーティング液は、光吸収能を有する無機粒子、溶媒、その他分散剤等の添加剤を必要に応じて加えて混合したスラリーを媒体撹拌ミルなどで処理することによって製造することができる。
上記無機粒子としては、光吸収能を有する無機粒子であれば特に限定されないが、光の中でも特に赤外線を吸収する無機粒子を好適に用いることができる。具体的には例えば、既述の赤外線の吸収能を有する無機粒子を好適に用いることができる。
すなわち、無機粒子は、カーボンブラック粒子、窒化チタン粒子、(CuFeMn)で表される銅鉄マンガンスピネル化合物、インジウム錫酸化物粒子、アンチモン錫酸化物粒子、一般式W(W:タングステン、O:酸素、2.2≦y/x≦2.999)で表されるタングステン酸化物粒子、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、SrまたはCaから選択される少なくとも1種類以上の元素である。)で表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含むことが好ましい。これらは赤外線の吸収能を有するのみでなく、比較的少ない添加量で高い吸収特性を得ることができる。
赤外線の吸収能を有する無機粒子としては、上記無機粒子のうち、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、Kから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、LaBで表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含むことが特に好ましい。
また、分散液に用いる溶媒としては、水、有機溶媒、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
なお、有機溶媒を用いる場合、特に限定されず、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系など、種々のものを選択することが可能である。有機溶媒としては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジメチルケトンなどのケトン系溶媒;3−メチル−メトキシ−プロピオネート、酢酸n−ブチルなどのエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも極性の低い有機溶媒が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、コーティング液には、既述のように分散剤を添加することもできる。好適に用いることのできる分散剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤、アミン基を有する高分子分散剤などが挙げられる。
分散剤を添加する場合、当該分散剤の添加量は、無機粒子100重量部に対し0.1重量部以上200重量部以下の範囲であることが望ましく、より好ましくは0.1重量部以上50重量部以下の範囲である。分散剤の添加量が上記範囲にあれば、無機粒子が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
その他の添加剤としては、各種のバインダー、エラストマー、着色顔料、防腐剤、硬化剤、可塑剤、沈降防止剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、pH調整剤、架橋剤などを分散処理の前後を問わず加えることができる。
分散処理の方法は、当該無機粒子が均一に溶媒を含む液状媒体中へ分散する方法であれば公知の方法から任意に選択でき、たとえばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。
上述したコーティング液(無機粒子分散液)中における無機粒子の含有量は0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましい。0.01質量%以上であれば、加熱促進効果を発揮するために十分な量の無機粒子を含んでいるため、加熱促進コーティング層の形成に好適に用いることができ、50質量%以下であれば分散液中で凝集等が起こることを抑制し、工業的な生産が容易である。コーティング液中における無機粒子の含有量は、さらに好ましくは1質量%以上35質量%以下である。
また、コーティング液中の無機粒子の平均分散粒子径は、コーティング液の塗布ができる程度に細かければよく、特に限定されないが、例えば10μm以下が望ましく、1μm以下がさらに望ましい。なお、上述のように、コーティング液中の無機粒子の平均分散粒子径は細かい方が好ましいため、分散液中の無機粒子の平均分散粒子径の下限値は特に限定されないが、コーティング液中で無機粒子が凝集し、沈殿を生じないように、例えば1nm以上が好ましい。
なお、平均分散粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。また、加熱促進コーティング層は、上述のように光吸収能を有する無機粒子を分散させたコーティング液を被処理物表面に塗布することで形成できる。このため、加熱促進コーティング層中に含まれる無機粒子についても、用いたコーティング液と同様の平均分散粒子径を有することができる。
次にコーティング液の塗布方法について説明する。
コーティング液の塗布方法は、被処理物の表面に塗布可能な方法であれば特に限定されない。また、必要に応じて被処理物表面に選択的にコーティングが可能な方法であることが望ましい。
例えば、コーティング液中に被処理物を浸漬させたのちに引き上げ、その後乾燥させることによって、被処理物の表面に加熱促進コーティング層を形成することができる。
また、被処理物に対してコーティング液をスプレー状に噴霧し、乾燥させることで加熱促進コーティング層を形成することもできる。
加熱促進コーティング層は、被処理物の表面のうち、加熱促進効果を付与したい部分のみに、選択的に形成することもできる。そこで、加熱促進コーティング層による加熱促進効果を付与したくない箇所においては、コーティング液によるコーティング前にその箇所を覆っておく等のマスキング処置を施すことで、加熱促進コーティング層を被処理物表面に選択的に形成することができる。
被処理物の表面に選択的に加熱促進コーティング層を形成すると、加熱促進コーティング層を設けた部分の昇温速度が速くなるので、加熱促進コーティング層を設けた部分を早く目標の温度にすることができる。その結果、被処理物は、例えば加熱促進コーティング層を設けた部分を目標の温度とし、加熱促進コーティング層を設けていない部分を目標の温度より低い温度とすることができる。このため、例えば、被処理物に鋼板を用いれば、加熱促進コーティング層を設けた部分だけ選択的な焼き入れや熱間プレス加工が可能となる。
本実施形態の被処理物の加熱方法における被処理物の材料は特に限定されず、例えば鋼板等の金属材料や、ガラス、セラミック等を用いることができる。なお、被処理物は1種類の材料から構成されている必要はなく、2種類以上の異なる材料を含んでいても良い。
本実施形態の被処理物の加熱方法を鋼板等の金属材料の被処理物に適用した場合、短時間で目標温度まで昇温できるため、生産性良く焼き入れ等の加熱処理を実施できる。また、上述のように部分的に選択的な焼き入れや、熱間プレス加工が可能になる。
本実施形態の被処理物の加熱方法をガラスやセラミック等の被処理物に適用した場合でも、短時間で目標温度まで昇温できるため、生産性良く加熱処理を実施できる。また、被処理物のうち、加熱促進コーティング層が配された箇所の加熱が促進され昇温速度が速くなるので、加熱促進コーティング層を配した部分だけ、結晶系を変えたり、結晶を析出させたりすることができる。
本実施形態の被処理物の加熱方法によれば、ここまで説明したように、光照射手段による被処理物の加熱を促進し、被処理物の昇温速度を向上することができる。さらには、被処理物の表面のうち、加熱促進コーティング層で覆われている部分について、被処理物の表面の酸化を抑制することもできる。
[被処理物の熱処理方法、鋼板の熱処理方法]
次に、被処理物の熱処理方法、及び鋼板の熱処理方法の一構成例について説明する。
本実施形態の被処理物の熱処理方法は、既述の被処理物の加熱方法により、被処理物の加熱を行うことができる。
本実施形態の被処理物の熱処理方法は、既述の被処理物の加熱方法により、被処理物の加熱を行う、加熱工程(加熱ステップ)を含む熱処理工程を有していればよく、その他の工程については特に限定されるものではない。
本実施形態の被処理物の熱処理方法の熱処理工程は、例えば、さらに冷却工程(冷却ステップ)等を有することができる。冷却工程において、被処理物を冷却する条件は特に限定されるものではなく、被処理物に要求される熱処理条件に応じて選択することができる。
このため、冷却工程では、例えば加熱終了後、光照射手段からの光の照射量を徐々に低減し、徐冷する工程とすることができる。
また、冷却工程では、加熱終了後、光照射手段からの光の照射量を0とし、急冷する工程とすることもできる。なお、冷却工程で、被処理物を急冷する場合、光照射手段からの光の照射量を0とすることに加えて、例えば被処理物に気体を吹き付ける等して、冷却することもできる。
加熱工程については、被処理物に要求される熱処理条件等に応じて、既述の被処理物の加熱方法と同様にして実施できるため、ここでは説明を省略する。
被処理物の熱処理方法で用いる被処理物の材料については、特に限定されるものではなく、例えば鋼板等の金属材料や、ガラス、セラミック等を用いることができる。なお、被処理物は1種類の材料から構成されている必要はなく、2種類以上の異なる材料を含んでいても良い。
特に鋼板は自動車部品等、各種用途に用いられており、用途に応じて焼き入れや、熱間プレス加工を行うことが求められ、熱処理を要する場合がある。
そして、本実施形態の被処理物の熱処理方法によれば、被処理物の表面に加熱促進コーティング層を設けることで、容易に昇温速度を向上させることができるため、生産性良く熱処理を実施することができる。また、加熱促進コーティング層を配置する場所を選択することにより、容易に、部分的に高温に加熱することができる。さらには、被処理物の表面のうち、加熱促進コーティング層で覆われている部分について、被処理物の表面の酸化を抑制することもできる。
このため、本実施形態の被処理物の熱処理方法の被処理物として鋼板を好適に用いることができる。そして、被処理物が鋼板の場合、既述の被処理物の加熱方法により、被処理物である鋼板の加熱を行う、鋼板の熱処理方法とすることができる。
鋼板の熱処理方法においても、既述の被処理物の熱処理方法の場合と同様に、既述の被処理物の加熱方法により、鋼板の加熱を行う、加熱工程(加熱ステップ)を含む熱処理工程を有していればよく、その他の工程については特に限定されるものではない。例えば既述の被処理物の熱処理方法の場合と同様に、冷却工程等を有することができる。
なお、被処理物の材料としては、鋼板等の金属材料以外に、ガラス、セラミック等を用いることもでき、本実施形態の被処理物の熱処理方法は、被処理物がガラス等の場合にも適用することができる。被処理物がガラスや、セラミック等の場合、被処理物のうち加熱促進コーティング層が配された箇所の加熱を促進することができるため、加熱促進コーティング層を配置した部分だけ結晶系を変えたり、結晶を析出させたりすることもできる。
[加熱促進コーティング層]
次に、加熱促進コーティング層の一構成例について説明する。
本実施形態の加熱促進コーティング層は、既述のように、被処理物の表面の少なくとも一部に配置される加熱促進コーティング層であって、加熱促進コーティング層は、赤外線の吸収能を有する無機粒子を含有し、光の照射を受けた前記加熱促進コーティング層は、被処理物のうち、加熱促進コーティング層が配置された箇所を加熱することができる。
本実施形態の加熱促進コーティング層は、被処理物の加熱方法で説明した加熱促進コーティング層と同様の構成とすることができるため、既に説明した内容については、一部説明を省略する。
本実施形態の加熱促進コーティング層は、例えば被処理物の加熱方法で説明したコーティング液を被処理物の表面に塗布、乾燥等することにより製造することができる。このため、本実施形態の加熱促進コーティング層は、コーティング液由来の各成分を含有することができる。
なお、コーティング液は既述のように、例えば、光吸収能を有する無機粒子、溶媒、その他分散剤等の添加剤を含むことができる。
上記無機粒子としては、光吸収能を有する無機粒子であれば特に限定されないが、光の中でも特に赤外線を吸収する無機粒子を好適に用いることができる。具体的には例えば、既述の赤外線の吸収能を有する無機粒子を好適に用いることができる。
すなわち、無機粒子としては、カーボンブラック粒子、窒化チタン粒子、(CuFeMn)で表される銅鉄マンガンスピネル化合物、インジウム錫酸化物粒子、アンチモン錫酸化物粒子、一般式W(W:タングステン、O:酸素、2.2≦y/x≦2.999)で表されるタングステン酸化物粒子、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選択される少なくとも1種類以上の元素である。)で表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含むことが好ましい。
上記無機粒子のうち、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、Kから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、LaBで表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含むことが特に好ましい。これは、既述のように加熱促進コーティング層が、赤外線の吸収能を有する無機粒子としてこれら粒子から選択された1種類以上を含有する場合、加熱促進コーティング層に対して光を照射して熱処理する際、加熱促進コーティング層を設けていない場合と比較して、同じ照射時間で被処理物の温度に150℃以上の温度差を生じさせることが可能だからである。すなわち、加熱促進コーティング層が、赤外線吸収能を有する無機粒子として、上述の複合タングステン酸化物粒子、および/または六ホウ化物粒子を含有する場合、他の赤外線吸収能を有する無機粒子を用いた場合と比較して、特に顕著な被処理物の加熱を促進する効果を得ることが可能になるからである。
溶媒や、各種添加剤については既に説明したので、ここでは説明を省略する。なお、溶媒等については、被処理物にコーティング液を塗布後、乾燥を行う際に、その成分の少なくとも一部は除去される。このため、加熱促進コーティング層は、コーティング液に含まれる成分のうち、乾燥の際に除去される成分は含有していることになる。
本実施形態の加熱促進コーティング層を、被処理物の表面の少なくとも一部に設け、加熱促進コーティング層含有被処理物を製造し、該加熱促進コーティング層含有被処理物に対して、例えば、図1、図2に示した熱処理装置により光を照射し、加熱、熱処理することで、被処理物の加熱、熱処理を行うことができる。
そして、加熱促進コーティング層は光吸収能を有する無機粒子を含有することから、光照射手段から、加熱促進コーティング層に対して照射された光を吸収し、加熱促進コーティング層を配置した箇所の被処理物の加熱を促進することができる。また、光照射手段から照射した光のうち、加熱促進コーティング層を透過した光を被処理物が吸収し、加熱することができる。
上述のように、加熱促進コーティング層を設けることで、光照射手段による被処理物の加熱を促進し、被処理物の昇温速度を向上させることができる。具体的には、被加熱物に加熱促進コーティング層を設けた場合は、加熱促進コーティング層を設けない場合に比べて、昇温速度が向上する。
このため、生産性良く加熱、熱処理を実施することができる。また、加熱促進コーティング層を配置する場所を選択することにより、容易に、部分的に高温に加熱することができる。結果的には、被処理物の表面の一部に加熱促進コーティング層を設けた部分と設けない部分とで、100℃以上の温度差が生じるので、被処理物は部分的な加熱促進による熱処理ができるのである。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により、被処理物である鋼板の加熱、熱処理を実施した。
まず、以下の手順により、被処理物の表面に加熱促進コーティング層を形成した(加熱促進コーティング層形成工程)。
無機粒子であるLaB粉末を10重量部、溶媒であるイソプロピルアルコール90重量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。
上記スラリーをビーズと共に媒体撹拌ミルに投入し、スラリーを循環させて、10時間粉砕分散処理を行った。使用した媒体撹拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)であり、ベッセル内壁とローター(回転撹拌部)の材質はZrOとした。また、上記ビーズには、直径0.3mmのYSZ(Yttria−Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は13m/秒とし、スラリー流量1kg/分にて粉砕した。
レーザー回折法による粒度分布計(大塚電子製 型式:ELSZ−1000S)を用い、得られた分散液中のLaB粒子の平均分散粒子径を測定したところ120nmであった。
次に、更に得られた分散液100重量部に対して、分散剤(アミン基を有する高分子分散剤)を2重量部、バインダー(アクリル樹脂)を5重量部加え、超音波撹拌を1時間実施することでLaB粒子が分散したコーティング液を得た。
なお、分散剤、バインダーを添加後は超音波により分散したのみであるため、得られたコーティング液においても、LaB粒子の平均分散粒子径は120nmであるといえる。
次いで、被処理物である鋼板の試験サンプル(50mm×50mm、t=2mm)を、作製したコーティング液に浸漬し、引き上げてから5分間保持し、乾燥することで、被処理物の表面全体に、加熱促進コーティング層を形成し、加熱促進コーティング層含有被処理物である、試験サンプルを得た。
次に、得られた試験サンプルについて、光照射手段として赤外線領域の光を含む光を照射できるハロゲンランプを用い、赤外線領域の光を含む光を加熱促進コーティング層に照射することで、被処理物を加熱し、温度が1000℃を超える温度まで加熱した。(熱処理工程)。
熱処理工程における加熱は、試験サンプルの両面に、すなわち試験サンプルの上方、及び下方にそれぞれ略平行で距離50mm離れた位置に配される2つの光照射手段により、試験サンプルの両面に光を照射した。
なお、光照射手段としては上述のようにハロゲンランプを用い、ランプ定格出力が360V、ランプ電力が2900W、発光長が410mm、全長が約700mm、バルブ径が13mmとした。また、光照射手段の総数は48本(上下各24本)とした。
熱処理工程における室温から1000℃に達するまでの時間、及び本実施例の昇温速度の、後述する比較例1との比を表1に示す。また、熱処理工程における温度プロファイルを図3に示す。
ここで、昇温速度とは、室温から最高温度1000℃に到達するまでの時間で、室温から1000℃の温度差を割った値である。後述する、加熱促進コーティング層を有していない点以外は、本実施例と同様の条件で熱処理を実施した比較例1と比較して、昇温速度がおよそ1.4倍となり、加熱促進コーティング層による、加熱促進効果が確認された。
[実施例2]
以下の手順により、被処理物である鋼板の加熱、熱処理を実施した。
まず、以下の手順により、被処理物の表面に加熱促進コーティング層を形成した(加熱促進コーティング層形成工程)。
無機粒子であるCs0.33WO粉末を20重量部、溶媒である純水を70重量部、さらに分散剤(アクリル系高分子分散剤)10重量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。
上記スラリーをビーズと共に媒体撹拌ミルに投入し、スラリーを循環させて、5時間粉砕分散処理を行った。このとき、上記ビーズには直径0.1mmのYSZ(Yttria−Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用し、媒体撹拌ミルの稼働条件は実施例1と同様にした。レーザー回折法による粒度分布計(大塚電子製 型式:ELSZ−1000S)を用い、得られた分散液中のCs0.33WO粒子の平均分散粒子径を測定したところ90nmであった。
更に得られた分散液100重量部に対して、湿潤剤を2重量部加え、超音波撹拌を1時間実施することでCs0.33WO粒子が分散したコーティング液を得た。
なお、湿潤剤を添加後は超音波により分散したのみであるため、得られたコーティング液についても、Cs0.33WO粒子の平均分散粒子径は90nmであるといえる。
次いで、被処理物である鋼板の試験サンプル(50mm×50mm、t=2mm)を、作製したコーティング液に浸漬し、引き上げてから100℃に設定された乾燥機中に5分間保持することで乾燥し、被処理物の表面全体に、加熱促進コーティング層を形成し、加熱促進コーティング層含有被処理物である、試験サンプルを得た。
次に、得られた試験サンプルを、実施例1と同様に加熱し、1000℃まで加熱した(熱処理工程)。
熱処理工程における室温から1000℃に達するまでの時間、及び本実施例の昇温速度の、後述する比較例1との比を表1に示す。また、熱処理工程における温度プロファイルを図3に示す。
後述する比較例1と比較して、昇温速度がおよそ1.3倍となり、加熱促進コーティング層による、加熱促進効果が確認された。
[比較例1]
被処理物である鋼板の試験サンプル(50mm×50mm、t=2mm)に加熱促進コーティング層を形成することなく、該被処理物を試験サンプルとした。
試験サンプルを、実施例1と同様に光照射手段としてハロゲンランプを用い、赤外線領域の光を含む光を被処理物に照射することで、加熱し、1000℃まで加熱した(熱処理工程)。
熱処理工程における室温から1000℃に達するまでの時間を表1に示す。また、熱処理工程における温度プロファイルを図3に示す。
本比較例では、被処理物に加熱促進コーティング層を設けていないため、加熱促進コーティング層を設けた実施例1、2と比較して、昇温速度が劣っていることが確認された。
Figure 2018003058

以上の実施例1、2、及び比較例1の結果から、光吸収能、特に赤外線吸収能を示す無機粒子を含む加熱促進コーティング層を、被処理物である鋼板の表面に配置することで、加熱促進コーティング層を設けていない場合と比較して、同じ条件で光照射を行っているにも関わらず、昇温レートが1.3〜1.4倍となる加熱促進効果が確認できた。
[実施例3]
実施例1で作製したコーティング液を大きさ100mm×200mm、厚み2mmの鋼板に図4(a)に示すように塗布し、乾燥した。すなわち、鋼板の長手方向の半分の裏面も含む表面全体に加熱促進コーティング層部401を設け、残り半分の裏面も含む表面全体には加熱促進コーティング層を設けない、鋼板が露出した領域402とした試験サンプル40を用意した。
次に、得られた試験サンプル40について、実施例1と同様に加熱し、1000℃まで加熱する熱処理を行った(熱処理工程)。なお、試験サンプル40の温度測定位置は、図4(a)に示す通り、加熱促進コーティング層部401の温度測定位置がTC1、加熱促進コーティング層を設けていない、鋼板が露出した領域402内の温度測定位置がTC2である。
熱処理工程におけるTC1、TC2で測定した温度が、室温から1000℃に達するまでの時間、及び各測定点での昇温速度の、後述する比較例2との比を表2に示す。また、熱処理工程におけるTC1、TC2で測定した温度プロファイルを図5に示す。
[比較例2]
実施例3との比較の為、図4(b)に示すように、加熱促進コーティング層を設けていない大きさ100mm×200mm×、厚み2mmの鋼板を比較サンプル41として用意した。
次に、比較サンプル41について、実施例1と同様に加熱し、1000℃まで加熱する熱処理を行った(熱処理工程)。なお、比較サンプル41の温度測定位置は、図4(b)に示す通り、TC3である。
熱処理工程における室温から1000℃に達するまでの時間を表2に示す。また、熱処理工程におけるTC3で測定した温度プロファイルを図5に示す。なお、図5中では比較例2として示している。
Figure 2018003058
表2および図5より試験サンプルの加熱促進コーティング層を設けることにより、該加熱促進コーティング層を設けた部分は、設けていない部分と比較して昇温速度が上昇することを確認できた。また、加熱促進コーティング層を設けていない部分は、加熱促進コーティング層がない比較例2の比較サンプルと昇温速度は同じになることが確認できた。
21 光照射手段

Claims (8)

  1. 被処理物の表面の少なくとも一部に加熱促進コーティング層が配置されており、
    光を照射する光照射手段が、前記加熱促進コーティング層に対して光の照射を行い、
    前記加熱促進コーティング層が、前記被処理物を加熱する、被処理物の加熱方法。
  2. 前記光照射手段が、赤外線領域の光を含む光を照射する手段である請求項1に記載の被処理物の加熱方法。
  3. 前記加熱促進コーティング層が、赤外線の吸収能を有する無機粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の被処理物の加熱方法。
  4. 前記無機粒子が、カーボンブラック粒子、窒化チタン粒子、(CuFeMn)で表される銅鉄マンガンスピネル化合物、インジウム錫酸化物粒子、アンチモン錫酸化物粒子、一般式W(W:タングステン、O:酸素、2.2≦y/x≦2.999)で表されるタングステン酸化物粒子、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選択される少なくとも1種類以上の元素である。)で表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含む請求項3に記載の被処理物の加熱方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の被処理物の加熱方法により、被処理物の加熱を行う被処理物の熱処理方法。
  6. 前記被処理物が鋼板であり、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の被処理物の加熱方法により、被処理物の加熱を行う、鋼板の熱処理方法。
  7. 被処理物の表面の少なくとも一部に配置される加熱促進コーティング層であって、
    前記加熱促進コーティング層は、赤外線の吸収能を有する無機粒子を含有し、
    光の照射を受けた前記加熱促進コーティング層は、前記被処理物のうち、前記加熱促進コーティング層が配置された箇所を加熱する、加熱促進コーティング層。
  8. 前記無機粒子が、カーボンブラック粒子、窒化チタン粒子、(CuFeMn)で表される銅鉄マンガンスピネル化合物、インジウム錫酸化物粒子、アンチモン錫酸化物粒子、一般式W(W:タングステン、O:酸素、2.2≦y/x≦2.999)で表されるタングステン酸化物粒子、一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表され、かつ六方晶の結晶構造をもつ複合タングステン酸化物粒子、XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選択される少なくとも1種類以上の元素である。)で表される六ホウ化物粒子から選択される1種類以上を含む請求項7に記載の加熱促進コーティング層。
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