JP2018001965A - ブーム - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、ブーム本体は弾性を有する長尺の板材によって構成され、長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)に開断面形状に曲付けすると共に、一方で、長手方向に円筒状に巻き取った巻き取り形態に曲付けし、初期形態で、伸展形態と巻き取り形態のいずれかの形態で安定して保持される構成となっている。
巻き取り形態では、ブーム本体は、短手方向の開断面形状が直線状に延ばされており、開断面方向に戻ろうとする弾性復元力が巻き取られた円筒形状の剛性によって保持されている。また、伸展形態では、ブーム本体は短手方向の断面形状が開断面形状で、巻き取り方向の弾性復元力は開断面形状のブーム本体の長手方向の剛性によって保持される。
ブーム本体は伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では力学的に不安定で、弾性復元力によって伸展形態あるいは巻き取り形態に移行するようになっている。
また、伸展形態から巻き取り形態に自己収縮するように、伸展形態に復元する弾性復元力よりも巻き取り形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定すれば、伸展形態で安定しているブーム本体を、一部巻き取り形態とすると、伸展形態部が、巻き取り形態の境界部分から、ブーム本体の短手方向の断面形状が、弾性復元力によって、順次伸展状態から巻き取り状態に戻り、伸展形態から巻き取り形態へ移行して自己収縮するようになっている。
弾性を有する長尺の樹脂製板材によって構成され、長手方向と直交する方向には開断面形状に曲付けされた形態で、一方で、長手方向には円筒状に巻き取られた巻き取り形態に曲付けされた形態で、初期状態では、長手方向に延びる伸展形態と巻き取り形態のいずれかの形態で安定して保持されるブーム本体を備え、
ブーム本体は伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では力学的に不安定で、弾性復元力によって伸展形態あるいは巻き取り形態に移行するブームであって、
弾性を有する長尺の金属製板材によって構成される助勢部材を前記ブーム本体に沿って長手方向に相対移動自在に重ねて設け、
前記助勢部材の弾性復元力によって、前記ブーム本体の伸展形態あるいは巻き取り形態への移行を助勢する構成となっていることを特徴とする。
ブーム本体が巻き取り状態あるいは伸展状態で長期間経過し、応力緩和が生じたとしても、助勢部材の弾性復元力によって、伸展方向あるいは巻き取り方向に付勢され、ブーム本体を確実に自己伸展あるいは収縮させることができる。
前記助勢部材は、初期形態が伸展形態で、ブーム本体の巻き取り形態から伸展形態への移行を助勢する構成となっていれば、確実に自己伸展させることができる。
また、ブーム本体は、伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では、伸展形態から巻き取り形態に自己収縮するように、伸展形態に復元する弾性復元力よりも巻き取り形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定され、
前記助勢部材は、初期形態が巻き取り形態で、ブーム本体の伸展形態から巻き取り形態への移行を助勢する構成となっていれば、確実に自己収縮させることができる。
また、助勢部材は、一部は初期形態が伸展形態で、巻き取り形態から伸展形態への移行を助勢、他の部分は初期形態が巻き取り形態で、伸展形態から巻き取り形態への移行を助勢する構成となっていれば、部分的な巻き取り形態への移行でサンプルを採取したり、目標物をキャッチする動作も可能となる。
前記助勢部材は、長手方向に対して直交する方向の断面形状が湾曲断面としておけば、巻き取った状態から伸展する弾性復元力が大きくなり、自己伸展の確実性がより増大する。
前記ブーム本体には、助勢部材を摺動自在に保持する保持部材を設けておくことができる。保持部材を設ければ、ブーム本体に対する助勢部材の位置が安定する。
また、前記助勢部材は、一部が前記ブーム本体に固定され、巻き取り状態と伸展状態におけるブーム本体と助勢部材の周長差が、固定部から自由端の間の助勢部材とブーム本体との相対摺動によって吸収する構成となっている。
一部を固定することにより、伸展状態への変形が、より安定して進行する。
前記助勢部材は、前記ブーム本体を巻き取った場合の巻き取り部の内径側の端部位置(巻き取り始端側)にて固定することができるし、ブーム本体を巻き取った場合の巻き取り部の外径側の端部位置(巻き取り終端側)にて固定することもできる。
また、前記助勢部材は、前記ブーム本体の長手方向中途部にて固定され、固定部に対して長手方向両側にブーム本体の巻き取り状態の巻取り部が形成される構成とすることもできる。
ブーム本体は、繊維基材に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂によって構成することができる。
前記繊維基材は、2軸織物組織であり、一方の長手方向に沿った長軸線に対して第1軸糸及び第2軸の糸は、互いに反対方向に所定角度傾斜する構成とすることができる。
前記繊維基材の構成する糸は、炭素繊維を用いることができる。
特に、繊維基材を構成する糸は、開繊糸とし、ブーム本体は、繊維基材に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数層積層した積層構造とすれば、層の数を変えることで、ブーム本体の特性を段階的に変えることができる。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施1に係るブームを示している。
すなわち、このブーム1は、図1に示すように、繊維強化樹脂によって構成される長尺のブーム本体10と、ブーム本体10の長手方向に沿って重ねられる金属製の助勢部材20とを備えている。
ブーム本体10は、弾性を有する長尺の樹脂製板材によって構成され、長手方向と直交する方向には開断面形状に曲付けされた形態で、一方で、長手方向には円筒状に巻き取られた巻き取り形態に曲付けされた形態となっており、外力が作用しない初期状態では、長手方向に延びる伸展形態と巻き取り形態のいずれかの形態で安定して保持される双安定性を有している。以下の説明では、ブーム本体10の巻き取り形態部については符号10A,伸展形態部については符号10Bを付して説明する。
巻き取り形態部10Aでは、ブーム本体10は、短手方向の開断面形状が直線状に延ばされており、開断面方向に戻ろうとする弾性復元力が巻き取られた円筒形状の剛性によって保持されている。また、伸展形態部10Bでは、ブーム本体10は短手方向の断面形状が開断面形状で、巻き取り方向の弾性復元力は開断面形状のブーム本体10の長手方向の剛性によって保持される。
ブーム本体10は伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では、図1(A)に示すように、巻き取り形態部10Aから伸展形態部10Bに移行する移行領域10Cが存在し、力学的に不安定で、弾性復元力によって伸展形態あるいは巻き取り形態に移行する。
この実施形態では、巻き取り形態から伸展形態に自己伸展するように、巻き取り形態に復元する弾性復元力よりも伸展形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定されている。すなわち、伸展形態部10Bと移行領域10Cに移行する境界位置10Dから、ブーム本体10の短手方向の断面形状が、弾性復元力によって、順次直線状態から開断
面形状に戻り、巻き取り形態部10Aから伸展形態部10Bへ移行して自己伸展するようになっている。
ブーム本体10は、図3に示すように、繊維強化樹脂シート(FRPシート)13を、複数枚積層した積層構造となっている。各繊維強化樹脂シート13は同一構成で、繊維基材11にマトリックス樹脂12を含浸させた構成である。
繊維基材11は、2軸織物組織であり、一方の長手方向に沿った長軸線N1に対して第1軸糸11a及び第2軸糸11bは、互いに反対方向に所定角度θ(配向角)だけ傾斜する構成となっている。配向角としては、45°としている。
この実施形態では、第1軸糸11a、第2軸糸11bは炭素繊維が用いられ、特に、繊維束を扁平に束ねた開繊糸によって構成され、一枚の繊維強化樹脂シート13の厚さを薄く設定し、複数枚の繊維強化樹脂シート13を張り合わせてブーム本体10を構成している。この例では、この繊維強化樹脂シート13を3層張り合わせた3ply構成となっているが、2層構成、あるいは4層構成以上としてもよい。
また、マトリックス樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、PETやPBTなどポリエステル系樹脂、PEEKやPPSなどのエンジニアリングプラスチック、ポリイミド系などの耐熱性樹脂等を用いることができる。
なお、繊維基材11の基材組織は、織物組織に限定されるものではなく、組紐組織も適用可能であり、その他、編物組織、網組織等も適用可能である。
そして、ブーム本体10の巻き取りと共に弾性変形してブーム本体10の巻き取り形態に倣って巻き取られ、ブーム本体10が自己伸展する際に、助勢部材20の伸展形態への弾性復元力によって、ブーム本体10の伸展形態への移行、すなわち自己伸展を助勢する構成となっている。
助勢部材20の長手方向と直交方向の断面形状は、円弧状の湾曲する開断面形状である。助勢部材20の短手方向の幅は、ブーム本体10の短手方向の幅に比べて狭く、開断面形状のブーム本体10の凹面側の中央底部に沿って配設されている。また、助勢部材20の長手方向の長さは、ブーム本体10のほぼ全長に亘って設けられている。
助勢部材20を構成する金属材はばね鋼帯であり、ばね鋼帯の種類として、SK焼入れ鋼、ステンレス鋼(たとえば、SUS301,SUS304,SUS632等)、銅合金、ニッケル合金、チタン合金、形状記憶合金、ベリリウム銅合金等を用いることができる。
ブーム本体10には、助勢部材20を摺動自在に保持する保持部材としてのチューブ40が、ブーム本体10の長手方向に沿って貼り付け固定されており、このチューブ40に助勢部材20が相対摺動自在に保持されている。チューブ40には、助勢部材20とのすべりのよい樹脂フィルムやバイアスの織物や組紐等によって構成される。
助勢部材20は、この例では、ブーム本体10の巻き取り部の巻き取り始端側となる内径側端部の固定部21にて、ブーム本体10に固定され、他端の巻き取り終端側が自由状態となっており、巻き取り状態と伸展状態におけるブーム本体10と助勢部材20の周長差が、助勢部材20とブーム本体10との相対摺動によって吸収される。この実施形態では、ブーム本体10に対する助勢部材20の巻き取り終端側の端部位置が移動するようになっている。
巻き取り形態では、ブーム本体10は、短手方向の円弧状の開断面形状が直線状に延ばされており、開断面方向に戻ろうとする弾性復元力は、巻き取られた円筒形状の剛性によって保持されている。
ブーム本体10をすべて巻き取った状態では、助勢部材20はブーム本体10の巻き取り形態部10Aの剛性によって、ブーム本体10に倣った巻き取り形態に保持される。この助勢部材20は、長手方向に戻ろうとする弾性復元力が作用しているが、ブーム本体10の巻き取り形態の剛性によって巻き取り形態に安定して保持されている。
巻き取り形態で安定しているブーム本体10を、一部伸展形態とすると、巻き取り形態部10Aから伸展形態部10Bに移行する移行領域10Cにおいて、ブーム本体10の短手方向の断面形状が、短手方向に湾曲させようとする弾性復元力によって、順次直線状態から開断面形状に戻り、巻き取り形態部10Aが伸展形態に移行して自己伸展していく。自己伸展する際に、ブーム本体10には、助勢部材20の巻き戻し方向の弾性復元力が作用し、この弾性復元力によって、ブーム本体10の自己伸展が助勢される。
伸展形態する過程で、ブーム本体10と助勢部材20の接触部が滑り、周長差を吸収しながら伸展形態に遷移する。
なお、上記実施の形態では、助勢部材20を、ブーム本体10の巻き取り始端側S(巻き取り形態の内径側端部)において固定しているが、図2(A)に示すように、固定部21をブーム本体10の巻き取り終端側T(巻き取り形態の外径側端部)に固定してもよい。この場合には、助勢部材20の自由端20Fは、ブーム本体10の巻き取り始端側に配置されるが、巻き取り時の周長差を考慮して、助勢部材20の自由端20Fの位置を、ブーム本体10の巻き取り始端側の端部よりも短く設定される。
また、固定部21を、図2(B)に示すように、ブーム本体10の長手方向中途部に固定してもよい。この場合にも、助勢部材20のブーム本体10の巻き取り始端側の自由端を、巻き取り時の周長差を考慮して、ブーム本体10の巻き取り始端側の端部よりも短く設定される。
また、上記実施形態では、助勢部材20を伸展形態のブーム本体10の凹面側の底部に沿って配置しているが、ブーム本体の凸面側に沿って設けてもよい。
また、助勢部材20の剛性を部分的に変化させるように、図2(C)に示すように、穴22を設けても良いし、図2(D)に示すように、部分的に幅に変化を付けた幅狭部23を設けてもよい。たとえば、伸展形態に移行する際に、最終伸展領域(内径側)の所定長さ分の剛性を小さくしておけば、伸展に移行する初期段階では早く伸展し、最終段階で弾性復元力が小さくなって、静かに伸展を終了させることができる。また、逆に、最終伸展領域(内径側)の所定長さ分の剛性を大きくしておいてもよい。このようにすれば、確実に伸展させることができる。たとえば、助勢部材20の幅を根元から先端にかけて逆テーパとすることにより、ゆっくりと伸展を開始し、伸展し難い先端部を伸展し切るように調整することができる。
また、助勢部材20としては、伸展状態を保持する伸展安定性を有するもので、長手方向の直交断面が円弧状となっていることが有利であるが、要するに巻き戻し方向に弾力性
を有していればよく、長手方向の直交断面が直線状であってもよい。
次に、図4を参照して、各伸展方式の巻き取り解舒機構について説明する。
(片端拘束先端巻き取り解舒式)
図4(A)に示す方式は、ブーム本体10の片端である巻き取り形態部10Aの外径側の端部を引き出して伸展状態とし、引き出された伸展形態部10Bが、収納具110の固定部111されている。また、助勢部材20の自由端20Fは、周長差分だけ、ブーム本体10よりも突出している。伸展形態部10Bが固定されているので、巻き取り形態部10Aに対して、図中左向きの自己伸展力Fが作用し、この自己伸展力Fが保持部112によって保持されている。
そして、保持部112を倒して巻き取り形態部10Aの拘束を解舒すると、巻き取り形態部10Aが連続的に巻き戻され、連続的に伸展形態に移行する。
図4(B)に示す方式は、ブーム本体10の中央が収納具120に固定され、部分的に伸展形態部10Bとなっている。この伸展形態部10Bの両側が互いに逆向きに巻き取られた巻き取り形態部10A、10Aとなっている。ブーム本体10と重ねて巻き取られた助勢部材20の固定部21もブーム本体10の中央部に固定され、収納具120に拘束されている。そして、収納具110の両端に設けられた起倒自在の保持部122、122によって、左右両側の巻き取り形態部10A,10Aが伸展しないように保持している。
この左右の保持部122,122の両方の拘束を解舒すれば、左右の巻き取り形態部10A,10Aが左右に伸展するし、片方だけを倒せば片側のみが伸展する。
図4(B)に示す方式は、ブーム本体10の巻き取り形態部10Aの内径側の端部が、収納具130に設けられた回転自在の巻き取り軸131に固定され、巻き取られている。ブーム本体10と重ねて巻き取られた助勢部材20も、ブーム本体10と共に巻き取られている。
この状態で先端部を引き出して伸展形態とすると、巻き取り形態部10Aが回転して順次伸展形態に移行し、伸展形態部10Bが、収納具120の底面121をガイドとして直線状に伸展する。
ブーム本体10のみの構成で、伸張助勢部材が無いものを比較例としてサンプル1、本発明の助勢部材20の幅が6mmの幅のものをサンプル2、助勢部材20の幅が8mmものをサンプル3として、自己伸展時間を比較した。
いずれも、ブーム径(直径)が19mm、開口角αが160°、ブーム本体の厚さが0.25mm、ブーム幅が33.2mm、ブーム長さが110mmである。
サンプル1の巻き取り部は、内径D0が18mm、外径D1が34mm、サンプル2の巻き取り部は、内径D0が22mm、外径D1が39mm、サンプル3の巻き取り部は、内径D0が30mm、外径D1が45mmである。
強化繊維樹脂の繊維基材は、いずれも東レ株式会社の炭素繊維織物、CO6343(T300−3K使用)、マトリックス樹脂は、いずれもJXエネルギー 社のNM35である。
伸展実験を行った結果、サンプル3共に、巻き取り状態と伸展状態を安定して保持する双安定性を有している。
3つのサンプルは、いずれも、双安定性を有しているが、自己伸展時間を測定したところ、助勢部材が無いブーム本体10のみのサンプル1では、伸展途中で停止した。本発明のサンプル2とサンプル3では、いずれも最後まで自己伸展したが、伸展開始から伸展完
了までの時間が、サンプル2では、0.4[sec/m]、サンプル3では、0.33[sec/m]であった。
次に、図5を参照して、本発明の実施形態2について説明する。以下の説明では、主として上記実施形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
上記実施形態1では、ブーム本体が自己伸展する構成で、助勢部材220が伸展を助勢するようになっているが、この実施形態2では、ブーム本体10が自己収縮する形態で、助勢部材220が巻き取りを助勢するようになっている点で相違している。
すなわち、この実施形態では、ブーム本体10は、図5(A)に示す伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では、伸展形態から巻き取り形態に自己収縮するように、伸展形態に復元する弾性復元力よりも巻き取り形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定されている。
そして、助勢部材220は、図5(B)に示すように、初期形態が巻き取り形態に曲付けされている以外は、その構造は実施形態1の助勢部材20と同じで、弾性を有する長尺の薄肉金属製板材によって構成され、ブーム本体10に沿って長手方向に相対移動自在に重ねて設けられる。この巻き取り形態は、ブーム本体10の巻き取り形態に倣った曲率で巻き取られている。
助勢部材220の長手方向と直交方向の断面形状は、円弧状の湾曲する開断面形状であり、短手方向の幅は、ブーム本体10の短手方向の幅に比べて狭く、開断面形状のブーム本体10の凹面側の中央底部に沿って配設されている。また、助勢部材220の長手方向の長さは、ブーム本体10のほぼ全長に亘って設けられている。助勢部材220を構成する金属材としては、ばね用ステンレス鋼帯(たとえば、SUS301,SUS304,SUS632等)、ベリリウム銅合金等を用いることができることも実施形態1と同様である。
本実施形態2では、初期形態では、助勢部材220はブーム本体10と共に巻き取り形態となっており、伸展させる際には、ブーム本体10及び助勢部材220の巻き取り方向の弾性復元力に抗して伸展させておく。伸展形態は、ブーム本体10の形状剛性によって保持される。そして、ブーム本体10の一部を巻き取り状態とすると、伸展形態から巻き取り形態に順次移行して自己収縮すると同時に、助勢部材220がブーム本体10の伸展形態から巻き取り形態への移行を助勢し、確実に巻き取ることができる。
この実施形態3では、実施形態1又は実施形態2の開断面形状のブーム本体10の長手方向に沿って延びる両側縁部に、ゴム状弾性を有する軟質樹脂材を備えた補強材30を、全長に縄って被覆したものである。基本的な構成は実施形態1、2と同様であり、同一の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
補強材30は、図2(A),(B)に拡大して示すように、ゴム状弾性を有する軟質樹
脂よりなる本体部31と、本体部31の表面を覆う低摩擦特性を有する樹脂材よりなる表面層32とを備えた積層構造となっている。
本体部31は、ブーム本体10の側縁部が差し込まれる溝部31aが開いた断面U字形状で、ブーム本体10の側縁部の内側面に接着される内側片31bと、外側面に接着される外側片31cと、内側片と外側片を連結して側縁部の端面に接着される連結部31dとを備えている。
本体部31を構成する軟質樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)等のエラストマーが好適である。TPUは柔軟性や接着性に優れると共に、双安定性ブーム端末部の引裂き強度を高め、繊維強化樹脂CFRPの繊維配向方向への亀裂を防止する効果がある。
TPUは、柔軟性に優れるので、ブームの収納や伸展特性への悪影響を抑えることがで
きる。ただし、タック性があるのでTPU同士が接触すると滑りが悪くなることがある。そこで、滑りを良くするために、低摩擦特性を有する樹脂材からなる表面層32で被覆している。
表面層32は、低摩擦で耐摩耗性を備えた樹脂材、たとえば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)で構成される。特に、低摩擦特性の他に、柔軟性、剥がれ難さを兼ね備える材料が好ましく、たとえば、中興化成工業株式会社製の薄膜のPTFE粘着テープ(品番:ASF−116T)等を用いることができる。このテープは、総厚43μm(PTFE基材厚21μm,粘着材厚22μm)のテープである。このように本体部31を、低摩擦の表面層32によって被覆することで、双安定性ブーム端末部の摩擦抵抗を減らし、収納および伸展がスムーズになる効果がある。また、薄膜なので、質量増加を抑えると共に、剥離し難い性質がある。
もちろん、表面層32の材料としては、四フッ化エチレン樹脂に限定されるものではなく、低摩擦特性と柔軟性、剥がれ難さを兼ね備える材料であればよい。
ブーム本体10の巻き取り状態から伸展状態、あるいは伸展状態から巻き取り状態への移行領域の境界付近において、巻き取り状態における短手方向の曲げ応力が解放され、境界付近に大きなせん断力が作用するが、補強材30の本体部31のゴム状弾性によってせん断力が分散、緩和され、裂け目の発生が阻止される。特に、ブーム本体10が繊維強化樹脂シート13の積層構造とする場合、各シートの繊維基材11の糸の位相が重なっていると、重なった糸に沿って裂け目が生じやすいが、補強材30を被覆することで、裂け目を防止することができる。
さらに、補強材30の表面は低摩擦の表面層32によって覆われているので、巻き取った際に補強材30同士が接触しても、接触面が滑り、スムーズに巻き取り形態と伸展形態との形態移行が進行する。
また、補強材30が側縁部のみを覆っているだけなので、巻き取り、伸展への変形に対する抵抗が小さく、補強材30の表面の平滑性と相まって、巻き取り形態と伸展状態との形態の移行が円滑に進行する。
また、上記実施形態では、助勢部材20は自己伸展助勢か、自己巻き取り収納助勢かの一方のみとなっているが、また、助勢部材20の一部は初期形態が伸展形態で、巻き取り形態から伸展形態への移行を助勢、他の部分は初期形態が巻き取り形態で、伸展形態から巻き取り形態への移行を助勢する構成としてもよい。例えば根元から先端近くにかけては自己伸展助勢、先端部は自己巻取り収納にすることにより、サンプルを採取したり、目標物をキャッチする動作が可能となる。サンプルを採取する場合には、伸展形態の部分はモータ等によって収納形態に巻き取ることが可能である。
この場合、ブーム本体については、伸展形態と巻き取り形態が混在する状態で、弾性復元力によっては、伸展形態あるいは巻き取り形態のいずれにも移行しない形態移行途中の状態で保持されるように、弾性復元力の大きさを設定しておくことが望ましい。このようにすれば、助勢部材による部分的な形態移行の進行が容易となる。
もっとも、ブーム本体の、助勢部材の初期形態が伸展形態に対応する部分は、巻き取り形態から伸展形態に自己伸展するように、伸展形態から巻き取り形態に復元する弾性復元力よりも巻き取り形態から伸展形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定し、助勢部材の初期形態が巻き取り形態に対応する部分は、伸展形態から巻き取り形態に自己収縮するように、伸展形態から巻き取り形態に復元する弾性復元力よりも巻き取り形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定しておいてもよい。
また、本発明の伸展構造物は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
10 ブーム本体
10A 巻き取り形態部
10B 伸展形態部
10C 移行領域
11 繊維基材
11a 第1軸糸、11b 第2軸糸
13 繊維強化樹脂シート
12 マトリックス樹脂
20 助勢部材
21 固定部、22 穴、23 幅狭部
30 補強材
40 チューブ
S 巻き取り始端側 T 巻き取り終端側
Claims (13)
- 弾性を有する長尺の樹脂製板材によって構成され、長手方向と直交する方向には開断面形状に曲付けされた形態で、一方で、長手方向には円筒状に巻き取られた巻き取り形態に曲付けされた形態で、初期状態では、長手方向に延びる伸展形態と巻き取り形態のいずれかの形態で安定して保持されるブーム本体を備えたブーム本体は伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では力学的に不安定で、弾性復元力によって伸展形態あるいは巻き取り形態に移行するブームであって、
弾性を有する長尺の金属製板材によって構成される助勢部材を前記ブーム本体に沿って長手方向に相対移動自在に重ねて設け、
前記助勢部材の弾性復元力によって、前記ブーム本体の伸展形態あるいは巻き取り形態への移行を助勢する構成となっていることを特徴とするブーム。 - ブーム本体は、伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では、巻き取り形態から伸展形態に自己伸展するように、巻き取り形態に復元する弾性復元力よりも伸展形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定され、
前記助勢部材は、初期形態が伸展形態で、ブーム本体の巻き取り形態から伸展形態への移行を助勢する構成となっている請求項1に記載のブーム。 - ブーム本体は、伸展形態と巻き取り形態の2形態を有する状態では、伸展形態から巻き取り形態に自己収縮するように、伸展形態に復元する弾性復元力よりも巻き取り形態に復元する弾性復元力の方が大きくなるように設定され、
前記助勢部材は、初期形態が巻き取り形態で、ブーム本体の伸展形態から巻き取り形態への移行を助勢する構成となっている請求項1に記載のブーム。 - 助勢部材は、一部は初期形態が伸展形態で、巻き取り形態から伸展形態への移行を助勢、他の部分は初期形態が巻き取り形態で、伸展形態から巻き取り形態への移行を助勢する構成となっている請求項1に記載のブーム。
- 前記助勢部材は、長手方向に対して直交する方向の断面形状が湾曲断面である請求項1乃至4のいずれかの項に記載のブーム。
- 前記ブーム本体には、助勢部材を摺動自在に保持する保持部材が設けられている請求項1乃至5のいずれかの項に記載のブーム。
- 前記助勢部材は、一部が前記ブーム本体に固定され、巻き取り状態と伸展状態におけるブーム本体と助勢部材の周長差が、固定部から自由端の間の助勢部材とブーム本体との相対摺動によって吸収する構成となっている請求項1乃至6のいずれかの項に記載のブーム。
- 前記助勢部材は、前記ブーム本体の巻き取り状態における内径側端部位置にて固定される請求項7に記載のブーム。
- 前記助勢部材は、前記ブーム本体の巻き取り状態における外径側端部位置にて固定される請求項7に記載のブーム。
- 前記助勢部材は、前記ブーム本体の長手方向中途部にて固定され、固定部に対して長手方向両側にブーム本体の巻き取り状態の巻取り部が形成される請求項7に記載のブーム。
- ブーム本体は、繊維基材に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂によって構成される請求項1
乃至10のいずれかの項に記載のブーム。 - 前記繊維基材は、2軸織物組織であり、一方の長手方向に沿った長軸線に対して第1軸糸及び第2軸の糸は、互いに反対方向に所定角度傾斜する構成となっている請求項11に記載のブーム。
- 前記繊維基材を構成する糸は開繊糸であり、繊維基材に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数層積層した積層構造である請求項12に記載のブーム。
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