以下の詳細な説明および実施例は、本開示のある特定の実施形態を例示する。その範囲に包含されるこの開示の多数の変形および変更があることを、当業者は認める。したがって、ある特定の実施形態の記載は、本開示の範囲を限定すると考えるべきでない。
公開されたおよび未公開の出願、特許および参考文献を非限定的に含む本明細書中の全ての引用文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれ、これによりこの明細書の一部にされる。
定義
用語「改善する」および「処置する」は互換的に使用され、治療的処置を含む。両用語は、疾患(例えば、本明細書で正確に示した疾患または障害)または単独のもしくは群(例えば症候群)の疾患の症状の発達または進行を改善、減少、抑制、弱める、減らす、停止または安定させることを意味する。用語「処置する」は、本明細書において、対象で疾患の少なくとも1つの症状を軽減または緩和することを意味するために使用される。例えば、行動障害に関して、用語「処置する」は、激越および/もしくは攻撃性ならびに/または関連症状、ならびにその発現(例えば、パンチング、悪態、殴る、うろうろする、抵抗するなど)の任意の組合せおよび関連する行動(例えば被刺激性、不安など)を軽減または緩和することを意味することができる。本開示の意味の範囲内で、用語「処置する」は、発症を停止、遅らせること(すなわち、疾患の臨床症状発現の前の期間)、および/または疾患の発達もしくは悪化のリスクを低減することも表す。
「疾患」は、細胞、組織、器官または生物体の正常な機能を損傷するか妨害する、任意の状態または障害を意味する。
「認知症」という用語は、器質的または精神的な要因による一般的な精神荒廃を指し;見当識障害、記憶、判断および知性の障害、ならびに浅く、不安定な情動によって特徴付けられる。認知症は、本明細書において、血管認知症、虚血性血管認知症(IVD)、前頭側頭骨認知症(FTD)、レーヴィ小体認知症、アルツハイマー認知症などを含む。認知症の最も一般的な形態は、アルツハイマー病(AD)に関連する。
「アルツハイマー病(AD)」は、記憶喪失、錯乱および見当識障害を呈する進行性の精神荒廃を指し、一般的に人生の後半に始まり、5〜10年で一般的に死をもたらす。アルツハイマー病は、熟練した神経科医または臨床医が診断することができる。一実施形態では、ADを有する対象は、予想されるADの存在のためのNational Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke/Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association(NINCDS/ADRDA)の基準を満たす。
「類似体」または「誘導体」という用語は、本明細書において、参照分子(デキストロメトルファン、重水素化デキストロメトルファンまたはキニジンなど)に構造的に似ているが、参照分子の1つまたは複数の特定の置換基を代わりの置換基で置き換えるように目標を定めて、および制御された方法で改変されており、それによって参照分子と構造的に類似した分子を生成する分子を指すために、従来の薬学的な意味で用いられる。改善またはバイアスされた形質(特定の標的化受容体タイプでのより高い効力および/または選択性、哺乳動物の脳血液関門を透過するより大きな能力、より少ない副作用など)を有するかもしれない、公知の化合物のわずかに改変されたバージョンを同定するための類似体の(例えば、構造的および/または生化学的分析を使用した)の合成およびスクリーニングは、製薬化学で周知のドラッグデザインアプローチである。さらに、当業者に公知である方法を使用して、改善された治療的効能、すなわち、特定の標的化受容体タイプでのより高い効力および/または選択性、哺乳動物の脳血液関門を透過するより大きいまたはより低い能力(例えば、より高いかより低い脳血液関門透過速度)、より少ない副作用、対象中でのより長い存在などを有する、本開示の化合物の類似体および誘導体を作製することができる。
用語「激越」は、この開示で用いられるように、攻撃性、好戦性および活動過多を含む、ある範囲の行動に関する撹乱または障害を指すことができる包括用語である。この開示では、この定義は、Cummingsら、International Psychogeriatrics;27巻;01号;2015年1月、7〜17頁、によって記載される激越を含む。広義には、Cummingsらは、激越を以下のように定義する:1)認知障害または認知症症候群を有する患者で起こる;2)感情的な窮迫と一貫した行動を示す;3)過剰な運動活動、言葉による攻撃性または物理的攻撃性を呈する;および4)過剰な能力障害を引き起こし、別の障害(精神病学的、医学的または物質関連の)にだけ帰することができない行動を明白に示す。用語激越は、以下も含む:
1)内部の緊張の感情に関連した過剰な運動活動。この活動は通常非生産的で反復性であり、じっと座ることができない、うろうろする、手を握り締めるおよび服を引っ張るなどの行動からなる;
2)それ自体は必要性または錯乱によって説明されない、不適当な、言葉による、声によるまたは運動性の活動。それは、目的なしに徘徊する、うろうろする、悪態をつく、叫ぶ、噛むおよびけんかをするなどの行動を含む;
3)破壊的であり、安全でないか、特定の環境で介護サービスを妨害する、声によるか運動性の行動。それは、4つの行動性の領域、例えば発声、運動撹乱、攻撃性および介護に抵抗することを含む;
4)対象が興奮の不快な状態を経験していることを他に伝える、かつ、抵抗を管理し、嫌悪する身体的徴候を緩和し、蓄積したストレス源を減少させることによって内部または外部の刺激を低減する介入が実行された後にも残存する行動;ならびに
5)対象が協力することを拒否するか、人々が助けることをさせないか、扱いが困難である行動。
本明細書で用いる用語「関連症状」は、認知障害または認知症症候群(例えばAD、FTD、DLB、血管認知症、他の認知症、前認知症認知障害症候群、例えば軽度の認知障害、または他の認知障害)の基準を満たす患者に関連した症状を指す。関連症状には、例えば、感情的な苦悩の観察されるまたは推測される証拠(例えば気分の急変、被刺激性、突発)に関連する行動が含まれる。一部の場合には、行動は最低2週間の間持続するかまたは頻繁に再発し、患者の通常の行動からの変化を表す。用語「関連症状」には、過剰な運動活動(例には以下のものが含まれる:うろうろする、揺れ動く、身振りをする、指を指す、落ち着きがない、反復性の衒奇を実行する)、言葉による攻撃性(例えば、怒鳴る、極端に大きい声で話す、冒涜を用いる、叫ぶ、大声を出す)、物理的攻撃性(例えば、つかむ、押す、押し返す、抵抗する、他を殴る、物体または人々をける、ひっかく、噛む、物体を投げる、自己を殴る、ドアをバタンと閉める、物を裂く、および所有物を破壊する)も含まれる。
有効成分に適用される用語「組合せ」は、本開示の両薬物(すなわち、デキストロメトルファン化合物およびキニジン)を含む単一の医薬組成物(製剤)、または、共同で投与される、各々は本開示の単一の薬物(すなわち、デキストロメトルファン化合物またはキニジン)を含む2つの別々の医薬組成物(製剤)を規定するために本明細書で使用される。
本開示の意味の範囲内で、用語「共同投与」は、デキストロメトルファン化合物およびキニジンの1つの組成物で同時の、または異なる組成物で同時の、または逐次的な投与を指すために使用される。逐次的な投与が「共同」と考えられるために、デキストロメトルファン化合物およびキニジンは、対象で中枢神経系(CNS)障害と関連する行動障害を処置、予防、停止、その発症を遅らせる、および/またはそれを発症するリスクを低減する、その結果としての有益な効果を許す期間に分けて投与される。例えば、一部の実施形態では、デキストロメトルファン化合物およびキニジンは、同日中に投与される(例えば、各々1日1〜2回)。
本明細書で用いるように、全体のNPIスコアは、標準の12個のNPIドメインのスコアの複合である。NPIは、認知症を含む様々な疾患場面で精神病理を評価するための、検証された臨床装置である。NPIは、12個の神経精神医学的症状ドメインをカバーする後向き世話人−情報提供者インタビューである:妄想、幻覚、激越/攻撃性、身体違和感/うつ病、不安、陶酔/発揚状態、無感情/無関心、脱抑制、被刺激性/不安定性、異常な運動行動、夜間行動性撹乱および食欲/摂食撹乱。事前に準備されたNPIインタビューは、各症状ドメインについての複合スクリーニング質問、続いて、スクリーニング質問への陽性応答が導き出されるときに実施されるドメイン特異的行動に関する質問のリストを含む。ドメインの中の神経精神医学的発現症状は、頻度(0〜4)および重症度(1〜3)に関して世話人によって総合的に評価されて、陽性と承認された各ドメインについて1〜12の複合(頻度×重症度)症状ドメインスコアを与える。頻度および重症度評価スケールは、世話人応答の信頼性を増強するためにアンカー点を規定している。各陽性神経精神医学的症状ドメインについて、0(全く苦痛がない)から5(極度の苦痛)のスコアに固定されたスケールで、世話人苦痛が評価される。本明細書で用いるように、NPI4Aスコアは、NPI激越/攻撃性、異常運動行動、被刺激性/不安定性および不安ドメインを含む複合スコアである。本明細書で用いるように、NPI4Dスコアは、NPI激越/攻撃性、異常運動行動、被刺激性/不安定性および脱抑制ドメインを含む複合スコアである。
用量または量に適用される用語「治療的に有効である」は、それを必要とする対象への投与により所望の活性をもたらすのに十分である化合物または医薬組成物の量を指す。デキストロメトルファン化合物を含む医薬組成物に関して本明細書で用いるように、用語「治療的に有効な量/用量」は、用語「神経病学的に有効な量/用量」と互換的に使用され、対象への投与により、有効な神経学的応答、すなわち、CNS障害に関連した行動障害の改善をもたらすのに十分である化合物または医薬組成物の量/用量を指す。
本開示の組成物に関連して用いられるフレーズ「薬学的に許容される」は、対象(例えば、ヒト)に投与されるとき、生理的に許容され、厄介な反応を一般的に起こすことのない、そのような組成物の分子実体および他の成分を指す。一部の実施形態では、用語「薬学的に許容される」は、連邦もしくは州政府の規制機関に承認されること、または、哺乳動物、より詳細にはヒトでの使用について米国薬局方もしくは他の公認の薬局方に掲載されることを意味する。
本開示の医薬組成物に適用される用語「担体」は、活性化合物(例えば、デキストロメトルファン化合物またはキニジン)とともに投与される希釈剤、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、無菌の液体、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、および、石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであってもよい。適する医薬担体は、E. W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、18版に記載される。
本明細書で用いる用語「対象」には、哺乳動物(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯動物)が含まれる。一部の実施形態では、本用語は、CNS障害に関連した行動障害、例えば、激越および/または攻撃性を呈するヒトを指す。用語「対象」には、認知症の神経精神医学的症状または行動性の症状を呈するヒトも含まれる。
合成で使用される化学物質の起源によって、合成された化合物で天然同位体存在度の多少の変動が起こることが認知される。したがって、デキストロメトルファンの調製物は、少量の重水素化および/または13C含有同位体置換体を本来的に含有する。この変動にもかかわらず、天然に豊富に存在する安定した水素および炭素同位体の濃度は、この開示の化合物の安定した同位体置換の程度と比較して小さく、重要でない。例えば、Wada Eら、Seikagaku1994年、66巻:15頁;Ganes L Zら、Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol1998年、119巻:725頁を参照。この開示の化合物では、特定の位置が重水素を有すると指定されるとき、その位置での重水素の存在度は、一般的に約0.015%である重水素の天然の存在度より実質的に大きいものと理解される。重水素を有すると指定される位置は、前記化合物で重水素として指定される各原子で、少なくとも3000の最小同位体濃縮係数(45%の重水素組込み)を一般的に有する。
本明細書で用いる用語「同位体濃縮係数」は、同位体存在度と指定された同位体の天然の存在度の間の比を意味する。
他の実施形態では、この開示の化合物は、各指定された重水素原子について、少なくとも3500(各指定された重水素原子で52.5%の重水素組込み)、少なくとも4000(60%の重水素組込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素組込み)、少なくとも5000(75%の重水素組込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素組込み)、少なくとも6000(90%の重水素組込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素組込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素組込み)、少なくとも6600(99%の重水素組込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素組込み)の同位体濃縮係数を有する。
この開示の化合物では、特定の同位体として具体的に指定されないいずれの原子も、その原子の任意の安定同位体を表すものとする。特記しない限り、ある位置が「H」または「水素」として具体的に指定されるとき、その位置はその天然の存在度同位体組成で水素を有すると理解される。
用語「同位体置換体」は、1つまたは複数の位置での同位体組成、例えばH対Dを除いては、この開示の特定の化合物と同じ化学構造および式を有する種を指す。したがって、同位体置換体は、この開示の特定の化合物とは、その同位体組成が異なる。
本明細書で用いる用語「化合物」は、任意のその塩、溶媒和物または水和物も含むものとする。用語「デキストロメトルファン化合物」は、本出願で使用し易いように使用され、以下の用語を含む:デキストロメトルファン、または重水素化デキストロメトルファン、またはデキストロメトルファンの類似体もしくは誘導体、または重水素化デキストロメトルファンの類似体もしくは誘導体。
一般に、本開示のデキストロメトルファン化合物は、以下の通りに表される「モルフィナン」構造として公知である配置で4つの分子環を有する:
この描写では、炭素原子は示すように従来通りに番号付けされ、炭素原子9および13に結合したくさび形の結合は、モルフィナン構造中の3つの他の環の平面からそれらの結合が上にあることを示す。
この開示の化合物の塩は、酸と化合物の塩基性基、例えばアミノ官能基、または塩基と化合物の酸性基、例えばカルボキシル官能基の間で形成される。別の実施形態により、化合物は薬学的に許容される酸付加塩である。
薬学的に許容される塩を形成するために一般的に採用される酸には、無機酸、例えば二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸、ならびに有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連する無機および有機酸が含まれる。したがって、そのような薬学的に許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩(propiolate)、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩および他の塩が含まれる。一実施形態では、薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されるもの、ならびにマレイン酸などの有機酸で形成されるものが含まれる。
一部の実施形態では、薬学的に許容される塩には、アルカリ金属、リチウムの塩、ナトリウムの塩、カリウムの塩、アルカリ土類金属の塩、カルシウムの塩、マグネシウムの塩、リシンの塩、N,N’ジベンジルエチレンジアミンの塩、クロロプロカインの塩、コリンの塩、ジエタノールアミンの塩、エチレンジアミンの塩、メグルミンの塩、プロカインの塩、トリスの塩、遊離酸の塩、遊離塩基の塩、無機塩、硫酸塩、塩酸塩および臭化水素酸塩が含まれる。
特に明記しない限り、本明細書に記載される用量は、それぞれデキストロメトルファン化合物およびキニジンの臭化水素酸塩および硫酸塩の形態を指す。そのような情報に基づいて、当業者は、有効成分のそれぞれの遊離酸または遊離塩基の形態のために対応する投薬量を計算することができる。当業者は、デキストロメトルファンの塩の分子量およびデキストロメトルファンの遊離塩基の分子量を計算し、その比を使用して、遊離塩基ならびに塩のための適当な投薬量を計算することができる。例えば、15mgの臭化水素酸デキストロメトルファン(分子式C18H25NO.HBr.H2O)および9mgの硫酸キニジン(分子式(C20H24N2O2)2.H2SO4.2H2O)の用量を、投与または使用することができる(概ね11mgのデキストロメトルファンおよび7.5mgのキニジンに相当する)。他の投薬量には、例えば、23mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび9mgの硫酸キニジン(概ね17mgのデキストロメトルファンおよび概ね7.5mgのキニジンに相当する);20mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび10mgの硫酸キニジン(概ね15mgのデキストロメトルファンおよび8.3mgのキニジンに相当する);30mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび10mgの硫酸キニジン(概ね22mgのデキストロメトルファンおよび8.3mgのキニジンに相当する)が含まれる。
24mgのd6重水素化臭化水素酸デキストロメトルファン(分子式C18H19D6NO.HBr.H2O)および4.75mgの硫酸キニジン(分子式(C20H24N2O2)2.H2SO4.2H2O)の用量を、投与することができる(概ね18mgのデキストロメトルファンおよび3.96mgのキニジンに相当する)。d6重水素化デキストロメトルファンのための他の投薬量には、例えば、34mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.75mgの硫酸キニジン(概ね25.18mgのd6デキストロメトルファンおよび概ね3.96mgのキニジンに相当する);18mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね13.33mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当する);24mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね17.78mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当する);28mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね20.74mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当する);30mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね22.22mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当する);34mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね25.18mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当する)が含まれる。
本明細書で用いるように、「水和物」という用語は、非共有の分子間力によって結合される定比性または不定比性の量の水をさらに含む化合物を意味する。
本明細書で用いるように、用語「溶媒和物」は、非共有の分子間力によって結合される、水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2−プロパノールなどの、定比性または不定比性の量の溶媒をさらに含む化合物を意味する。
本開示の化合物(例えば、下記の式Iの化合物)は、不斉炭素原子を、例えば重水素置換その他の結果として含有することができる。このように、この開示の化合物は、個々の鏡像異性体として、または2つの鏡像異性体の混合物として存在することができる。したがって、本開示の化合物は、ラセミ混合物に加えて、別の可能な立体異性体が実質的に含まれない個々のそれぞれの立体異性体も含む。本明細書で用いられる用語「他の立体異性体が実質的に含まれない」は、他の立体異性体の25%未満、一部の実施形態では他の立体異性体の10%未満、一部の実施形態では他の立体異性体の5%未満、一部の実施形態では他の立体異性体の2%未満、または他の立体異性体の「X」%未満(ここで、Xは0から100までの数である)が存在することを意味する。所与の化合物のために個々の鏡像異性体を得るか合成する方法は当技術分野で周知であり、実行可能な場合、最終化合物または出発材料もしくは中間体に適用することができる。
本明細書で用いるように、用語「安定した化合物」は、それらの製造を可能にするのに十分な安定性を有し、本明細書に詳述される目的(例えば、治療生産品への製剤化、治療化合物の生産で使用するための中間体、分離可能または貯蔵可能な中間体化合物、治療剤に応答する疾患または状態の処置)のために有益なように十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
「D」は、重水素を指す。
「立体異性体」は、鏡像異性体およびジアステレオマーの両方を指す。
この明細書全体で、変数は一般的に(例えば、「各R」)または具体的に(例えば、R1またはR2)言及することができる。特記しない限り、変数が一般的に言及されるとき、それは、その特定の変数の全ての具体的な実施形態を含むものとする。
本明細書で用いられる用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する」または「特徴付けられる」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素も方法工程も排除しない。
本明細書で使用される成分量、反応条件その他を表す全ての数字は、全ての場合に用語「約」によって修飾されると理解するべきである。したがって、特に明記しない限り、本明細書で示される数字パラメータは、所望の特性によって異なってもよい近似値である。最低限でも、および均等の原則の適用を、本出願への優先権を主張するいかなる出願のいかなる請求項の範囲にも限定しようとするものではないが、各数字パラメータは有効桁数および通常の丸め処理法を考慮して解釈するべきである。
治療化合物
デキストロメトルファン(DM)、コデイン類似体レボルファノールの非オピオイドd−異性体は、般市販(OTC)鎮咳剤として約50年の間広く使用されてきた。DMは複合的薬理学を有し、いくつかの異なる受容体に結合親和性を有し、主要な活性は中枢神経系(CNS)にある。DMは、弱い不競合的N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(Ki=1500nM)としてその活性が周知であり(Tortellaら、Trends Pharmacol Sci.1989年;10巻(12号):501〜7頁;Chou YCら、Brain Res.1999年;821巻(2号):516〜9頁;Netzer Rら、Eur J Pharmacol.1993年;238巻(2〜3号):209〜16頁;Jaffe DBら、Neurosci Lett.1989年;105巻(1〜2号):227〜32頁)、抗グルタミン酸興奮活性の関連する能力を有する。DMは、強力なシグマ−1アゴニスト(Ki=200nM)でもあり(Zhou GZら、Eur J Pharmacol.1991年;206巻(4号):261〜9頁;Maurice Tら、Brain Res Brain Res Rev.2001年;37巻(1〜3号):116〜32頁;Cobos EJら、Curr Neuropharmacol.2008年;6巻(4号):344〜66頁)、セロトニン輸送体に高い親和性で結合する(SERT;Ki=40nM)。DMはノルエピネフリン輸送体に対し、強くないは親和性(Ki=13μM)しか有しないが、それはノルエピネフリンの取り込みを効果的に抑制する(Ki=240nM)(Codd EEら、J Pharmacol Exp Ther.1995年;274巻(3号):1263〜70頁)。DMはα3β4ニコチン性アセチルコリン受容体のアンタゴニストであり、0.7μMの報告されたIC50値(50%の阻害をもたらす濃度)を有する(Damajら、J Pharmacol Exp Ther.2005年;312巻(2号):780〜5頁)。
これらの相互作用の1つまたは複数の結果、DMはカリウムによって刺激されるグルタミン酸放出を減少させ(Annels SJら、Brain res.1991年;564巻(2号):341〜3頁)、モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン)神経伝達をモジュレートする(Codd EEら、J Pharmacol Exp Ther.1995年;274巻(3号):1263〜70頁;Maurice Tら、Pharmacol Ther.2009年;124巻(2号):195〜206頁;Maurice Tら、Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.1997年;21巻(1号):69〜102頁)。α3β4ニコチン性アセチルコリン受容体のDMの拮抗(Damaj MIら、J Pharmacol Exp Ther.2005年;312巻(2号):780〜5頁)は、ある特定のCNS運動障害および習慣性との関連性を有することがある(Silver AAら、J Am Acad Child Adolesc Psychiatry.2001年;40巻(9号):1103〜10頁)。単独で投与されるとき、DMは肝臓で主にデキストロルファン(DX)に急速に代謝され、極めて低い生物学的利用能をもたらし、したがってCNS曝露を制限する。DXはDMと同じ受容体のいくつかと、鍵受容体については異なる親和性で相互作用するが、それは、それが脳血液関門を通過することを大きく阻止する急速なグルクロン酸抱合を受け、このように処方された用量でCNSへの効果を低減する(Church Jら、Eur J Pharmacol.1985年;111巻(2号):185〜90頁;Franklin PHら、Mol Pharmacol.1992年;41巻(1号):134〜46頁)。
本開示は、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物および水和物を含む式Iの化合物を提供し:
式中、R1は、CH3、CH2D、CHD2およびCD3から選択され;R2は、CH3、CH2D、CHD2およびCD3から選択される。
少なくとも1つの重水素を有する式Iによる全ての化合物は、重水素化デキストロメトルファンと呼ばれる。一実施形態では、R1およびR2の両方はCD3である。この化合物は、d6−デキストロメトルファンまたはd6−DMとも呼ばれる。別の実施形態では、R1およびR2のうちの1つだけがCD3である。
さらに別の実施形態では、化合物は、表1に示す化合物のいずれか1つから選択される。
別のセットの実施形態では、上または下で示す実施形態のいずれでも重水素として指定されていない任意の原子が、その天然の同位体存在度で存在する。
別のセットの実施形態では、式Iの化合物は単離または精製されている、例えば、式Iの化合物は、存在する式Iの同位体置換体の全量のそれぞれ少なくとも50重量%(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%または99.9%)の純度で存在する。したがって、一部の実施形態では、式Iの化合物を含む組成物は、その化合物の同位体置換体の分布を含むことができるが、ただし、同位体置換体の少なくとも50重量%は列挙される化合物である。
一部の実施形態では、Dを有すると指定される式Iの化合物の任意の位置は、少なくとも45%(例えば、少なくとも52.5%、少なくとも60%、少なくとも67.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%または少なくとも99.5%)の最小重水素組込みを式Iの化合物の指定された位置(複数可)で有する。したがって、一部の実施形態では、式Iの化合物を含む組成物は、その化合物の同位体置換体の分布を含むことができるが、ただし、同位体置換体の少なくとも45%は指定された位置(複数可)にDを含む。
一部の実施形態では、式Iの化合物には、化合物の他の同位体置換体が「実質的に含まれない」、例えば、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満または0.5%未満の他の同位体置換体が存在する。
式Iの化合物の合成は、通常の技術を有する合成化学者が容易に達成することができる。関連する手法および中間体は、例えば、Kim H Cら、Bioorg Med Chem Lett 2001年、11巻:1651頁およびNewman A Hら、J Med Chem 1992年、35巻:4135頁に開示される。
そのような方法は、本明細書に正確に示した化合物を合成するために、対応する重水素化され、任意選択で他の同位体を含有する試薬および/または中間体を利用して、または化学構造に同位体原子を導入するための当技術分野で公知の標準合成プロトコールを実施することによって実行することができる。
重水素化(d6)−DM(d6−DM)(図1)は、重水素が特定の位置の6つの水素原子を置き換えたDMの重水素化同位体である。重水素は、水中を含めて、環境に遍在する、水素の安定した非放射性同位体である。安定した同位体は、医学研究で一般的に使用され、新生子から成人までのあらゆる年齢の個体で使用されてきた長い歴史がある。重水素は、トレーサレベルでのPKおよび代謝研究で最も一般的に使用される。重水素化治療薬の長期投与の間の予想される曝露レベルは、水などの天然の供与源からの毎日の曝露と比較してかなり小さいと予想される。例えば、d6−DMの30mg用量からもたらされるであろう曝露は、水の20mL(0.7オンス)に概ね同等であると推定される。これは、水における重水素の0.0156%の天然の存在度、および消費されたd6−DM(MW=277.43)の用量の全てがd3−デキストロルファン(d3−DX)に代謝され、重水素化水(MW=20.03)が放出されるだろうとの仮定に基づく。後者の仮定は、放出される重水素化水の量を過大評価するが、消費される重水素の比較量についての考えを提供する。
重水素化DMで発明者らによって実行された薬理学研究は、重水素化がDMの基本的な薬理学を変更しないことを実証した。PKおよび薬物代謝研究は、d6−DMがDMと同じ代謝経路によって代謝されることを示す。CYP2D6による代謝は、重水素による置換による阻害に最も感受性であった。in vitro代謝研究は、d6−DMおよびDMの(ヒトを含む様々な種による)代謝が同じ代謝産物を生成することも示し、すなわち、DMと比較してd6−DMの特異な代謝産物は特定されなかった。組織分布研究は、14C標識DM(14C−DM)のものと類似した14C標識d6−DM(14C−d6−DM)の放射性標識の分布を示した。d6−DMによる毒性研究は、同等の曝露において、d6−DMおよびDMの用量制限毒性(DLT)が同等であり、CNSへの効果と関連する有害な臨床徴候に基づくことを示した。比較のためにDM/Qの高用量を含んだd6−DM/Qによる13週毒性研究で調査された毒性測定は、非重水素化DM/Qと類似したd6−DM/Qの知見を示した。
例示的合成
式Iの化合物を合成するのに好都合な方法は、デキストロメトルファンの調製のために利用された合成方法での適当な重水素化中間体および試薬を交換する。これらの方法は、例えば米国特許第7,973,049号に記載されており、それは参照により完全に組み込まれる。式Iの化合物は、下に示す公知の中間体X、XIおよびXIIの1つから、ならびに公知の手法から容易に得られる関連中間体から調製することができる。
スキーム1は、式Iの化合物への一般経路を示す。
スキーム1は式Iの化合物を調製するための一般経路を示し、そこで、R1はCH3でない。HBr塩10は、NH4OHによる処理の後にN脱メチル化されて11を与える。クロロギ酸エチルを使用したアミン11のアシル化はカルバメート12を提供し、それは次にBBr3を使用してO脱メチル化されて、アルコール13を与える。塩基の存在下で適切に重水素化されたヨードメタンで化合物13が処理されて、エーテル14を与え、それは、重水素化リチウムアルミニウム(LAD)を使用して還元されてR2=CD3である式Iの化合物を与えるか、または、水素化アルミニウムリチウム(LAH)を使用して還元されてR2=CH3である化合物を与える。R1がCH3である化合物については、カルバメート12はLADで直接処理されて、R2がCD3である化合物を生成する。
上に示す具体的なアプローチおよび化合物は、限定することを目的としない。本明細書で、スキーム中の化学構造は、同じ変数名(すなわち、R1またはR2)によって特定されるかどうかにかかわらず、本明細書の化合物式中の対応する位置の化学的基の定義(部分、原子など)に相応して本明細書により規定される変数を表す。別の化合物の合成で使用するための化合物構造中の化学的基の適合性は、当業者の知識の範囲内である。
式Iの化合物および本明細書のスキームで明示的に示されていない経路の中のものを含むそれらの合成前駆体を合成する追加の方法は、当技術分野の化学者の手段の範囲内である。適用可能な化合物の合成で有益な合成化学変換および保護基の方法(保護および脱保護)は、当技術分野で公知であり、例えば、以下に記載されるものが含まれる:Larock R、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989年);Greene T Wら、Protective Groups in Organic Synthesis、3版、John Wiley and Sons(1999年);Fieser Lら、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994年);およびPaquette L編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995年);およびそれ以降の版。
この開示によって想定される置換基および変数の組合せは、安定した化合物の形成をもたらすものである。
重水素化デキストロメトルファンおよびデキストロメトルファンの類似体または誘導体。
この開示の方法および組合せで使用されるデキストロメトルファン化合物には、デキストロメトルファンおよび重水素化デキストロメトルファンの両方の類似体または誘導体が含まれることを理解すべきである。例えば、一実施形態では、この開示による組合せまたは方法は重水素化デキストロメトルファンを含み、別の実施形態では、組合せおよび方法は重水素化デキストロメトルファンの類似体または誘導体を含む。同様に、別の実施形態では、この開示による組合せまたは方法はデキストロメトルファンを含み、別の実施形態では、組合せまたは方法はデキストロメトルファンの類似体または誘導体を含む。
本明細書で用いるように、用語「アルキル」は、任意の非分枝状または分枝状の、置換型または非置換型の飽和炭化水素を意味する。アルキル部分は、分枝状または線状の鎖であってもよい。アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有することができる(それが本明細書に出現するときは、「1〜10」などの数値範囲は所与の範囲内の各整数を常に指す;例えば、「1〜10個の炭素原子」は、アルキル基が、1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子など、10個までの炭素原子からなることができることを意味するが、本定義は数値範囲が指定されていない用語「アルキル」の出現もカバーする)。
用語「置換型」は、関連技術分野からの多数の現代の特許で見出されるその通常の意味を有する。例えば、米国特許第6,509,331号;第6,506,787号;第6,500,825号;第5,922,683号;第5,886,210号;第5,874,443号;および第6,350,759号を参照;その全ては参照により本明細書に完全に組み込まれる。具体的には、置換型の定義は、それが、一部の実施形態では、アルコキシ、置換型アルコキシ、シクロアルキル、置換型シクロアルキル、シクロアルケニル、置換型シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換型アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、置換型チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換型アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO2−アルキル、−SO2−置換型アルキル、−SO2−アリールおよび−SO2−ヘテロアリールからなる群から選択される1〜5個の置換基、一部の実施形態では1〜3個の置換基を有する1〜10個の炭素原子のアルキル基を指すように用語「置換型アルキル」を定義する、米国特許第6,509,331号で提供されるものと同じくらい広い。他の上記の特許は、当業者によく理解されている用語「置換型」の標準の定義も提供する。
用語「シクロアルキル」は、一部の実施形態では環を構成する5〜12個の原子を有する、任意の非芳香族炭化水素環を指す。用語「複素環」または「複素環式」は、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄または窒素原子が少なくとも1つの炭素原子とともに環の中にある、非芳香族炭化水素環のいずれかを指す。
本明細書で用いるように、用語「アルケニル」は、2つの炭素の間に二重結合を含有する、任意の非分枝状または分枝状の、置換型または非置換型の不飽和炭化水素を意味する。本明細書で用いるように、用語「アルキニル」は、2つの炭素の間に三重結合を含有する、任意の非分枝状または分枝状の、置換型または非置換型の不飽和炭化水素を意味する。
本明細書で用いるように、用語「アリール」および「ヘテロアリール」は、一部の実施形態では環を構成する5、6または7つの原子を有し、他の実施形態では6つの原子を有する、芳香族炭化水素環を指す。「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄または窒素原子が少なくとも1つの炭素原子とともに環の中にある、芳香族炭化水素環を指す。用語「複素環」または「複素環式」は、1つまたは複数のヘテロ原子を含有する任意の環式化合物を指す。アリール、複素環およびヘテロアリールは、上記のものおよび当技術分野で公知のものを含む任意の置換基で置換されてもよい。
単独で、および数指定なしで出現する置換基「R」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通して結合した)およびヘテロアリシクリル(環炭素を通して結合した)からなる群から選択される置換基を指す。
用語「アミノアルキル」は、−RNR’R’’、−RNHR’および−RNH2からなる群から選択される置換基を指し、R、R’およびR’’は、独立してRが本明細書で定義される通りである。
本明細書で用いるように、用語「ハロゲン原子」は、元素の周期律表の第7カラムの放射安定原子、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のいずれか1つを意味する。
用語「アルコキシ」は、非分枝状または分枝状の、置換型または非置換型の飽和または不飽和のエーテル、例えばC1〜C6の非分枝状、飽和、非置換型のエーテル、メトキシおよびジメチル、ジエチル、メチル−イソブチルおよびメチル−tert−ブチルエーテルを指す。
デキストロメトルファンの代謝を遅くするか阻止することができる、デキストロメトルファンのいくつかの類似体が発見されている。一部の実施形態では、アリール環、R1の2位の水素は、よりかさばった基で置き換えることができる。
本明細書で用いるように、用語「かさばった」または「よりかさばった」は、水素より大きな円錐角を有する置換基を指す。適する置換基には、限定されずに、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C6〜C12アリール、C7〜C13アリールアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C2〜C10複素環、C3〜C10複素環アルキル、C3〜C12ヘテロアリール、C4〜C12ヘテロアリールアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノが含まれ、ここで、各水素は、低級のアルキル、アルコキシまたはハロゲンによって任意選択で置換される。
いかなる特定の理論にも束縛されることを欲しないが、よりかさばった基の導入は、デキストロルファンおよび他の代謝産物にデキストロメトルファン化合物を変換する触媒過程をCYP2D6が開始することをブロックすることができると考えられている。その結果、重水素化類似体を含むデキストロメトルファン類似体の急速な代謝を阻止することができるか、大幅に低減することができる。例えば、t−ブチルアルキル基は、その比較的大きな円錐角により、酸素に結合したメチル基を保護することができ、デキストロメトルファンまたは重水素化デキストロメトルファンのO−脱メチル化を阻止することができる。あるいは、かさばった基が塩基性窒素を含有する場合は、メトキシ基から5〜7オングストローム離れたそのような窒素の存在は、CYP2D6を阻害することによって酸化を阻止することができる。
2位のかさばった基を有する、適する類似体には、下に示す化合物(1−1)および(1−2)が含まれる。
他の実施形態では、3位のメトキシ基は、よりかさばった基OR2で置換されてもよい。
適する置換基には、限定されずに以下のものが含まれる:R1は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C6〜C12アリール、C7〜C13アリールアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C2〜C10複素環、C3〜C10複素環アルキル、C3〜C12ヘテロアリール、C4〜C12ヘテロアリールアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択され、ここで、各水素は、低級のアルキル、アルコキシまたはハロゲンによって任意選択で置換され;R2は、C2〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C6〜C12アリール、C7〜C13アリールアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C2〜C10複素環、C4〜C10複素環アルキル、C3〜C12ヘテロアリール、C4〜C12ヘテロアリールアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択され、ここで、各水素は、低級のアルキル、アルコキシまたはハロゲンによって任意選択で置換される。デキストロメトルファンおよびデキストロルファンを排除するために、R1が水素であるときは、R2は水素でもメチルであってもならない。
3位のかさばった−OR2基を有する、適する類似体には、下に示す化合物(II−1)〜(II−4)が含まれる。
さらに他の実施形態では、3位のメトキシ基は、硫黄原子を含むよりかさばった基で置換されてもよい。
適する置換基には、限定されずに以下のものが含まれる:各R1は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C6〜C12アリール、C7〜C13アリールアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C2〜C10複素環、C3〜C10複素環アルキル、C3〜C12ヘテロアリール、C4〜C12ヘテロアリールアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から独立して選択され、ここで、各水素は、低級のアルキル、アルコキシまたはハロゲンによって任意選択で置換され;R2は、−SR1、
からなる群から選択される。
3位の含硫のかさばった基を有する、適する類似体には、下に示す化合物(III−1)〜(III−3)が含まれる。
いかなる特定の理論にも束縛されることを欲しないが、3位における酸素または硫黄原子を含有するよりかさばった基の導入は、デキストロメトルファンまたは重水素化デキストロメトルファンの半減期(t1/2)を改善することができると考えられている。半減期を増加させることによって、それがデキストロルファンに代謝される前により長い期間にわたって、血液中のデキストロメトルファン類似体の濃度を増加させることができる。代替の置換基および置換も、本発明の範囲の精神の範囲内である。詳細には、1つまたは複数の重水素原子を含む置換基および置換、例えばd6DMは、この開示の範囲内である。当業者は、重水素化デキストロメトルファン類似体を提供するために、本発明のデキストロメトルファン類似体を改変する方法を知るだろう。
J Med Chem.1992年10月30日;35巻(22号):4135〜42頁でNewmanらによって記載される化合物も、この開示の範囲内に含まれる。これらの化合物は、Newmanによって、痙攣作用の様々なin vitroおよびin vivoモデルで鎮痙活性を示すことが確認された。
CYP2D6阻害剤
本開示は、キニジンなどのCYP2D6阻害剤と一緒のデキストロメトルファン化合物の使用を想定する。同時投与のためにキニジンが最も一般的に使用されるが、他の抗酸化剤、例えばInabaら、Drug Metabolism and Disposition.1985年;13巻:443〜447頁、Forme−Pfisterら、Biochem. Pharmacol.1988年;37巻:3829〜3835頁、およびBrolyら、Biochem. Pharmacol.1990年;39巻:1045〜1053頁に記載されるものも、その代謝を低減するためにデキストロメトルファン化合物と同時投与することができる。Inabaらで報告されているように、50マイクロモルまたはそれより低いKi値(ミカエリス−マントン阻害値)を有するCYP2D6阻害剤には、ノルトリプチリン、クロルプロマジン、ドンペリドン、ハロペリドール、ピパンペロン、ラベタロール、メタプロロール、オクスプレノロール、プロプラノロール、チモロール、メキシレチン、キニーネ、ジフェンヒドラミン、アジマリン、ロベリン、パパベリンおよびヨヒンビンが含まれる。特に強力な阻害活性を有する化合物には、ヨヒンビン、ハロペリドール、アジマリン、ロベリンおよびピパンペロンが含まれ、それらは4から0.33μMの範囲のKi値を有する。上で報告される抗酸化剤に加えて、商品名Prozac(登録商標)の下でEli Lilly and Co.によって販売されるフルオキセチンが、一部の人々の血液中のデキストロメトルファン濃度を増加させるのに有効であることも見出された。さらに、CYP2D6を阻害するために、以下の化合物のいずれも使用することができる:テルビナフィン、シナカルセト、ブプレノルフィン、イミプラミン、ブプロピオン、リトナビル、セルトラリン、デュロキセチン、チオリダジン、メトクロプラミド、パロキセチンまたはフルボキサミン。他の抗酸化剤の投薬量はその抗酸化剤によって異なり、個体に基づいて決定される。
アルツハイマー病の激越および/または攻撃性を患っている対象が、有意な治療効果を提供するのに必要であるとこれまで考えられていた最小量よりかなり低い量のキニジンと組み合わせたデキストロメトルファン化合物で処置することができることが予想外にも発見された。
デキストロメトルファンまたはその重水素化形態の代謝は、デキストロメトルファンと一緒のCYP2D6阻害剤の同時投与によってさらに回避することができる。キニジンは強力なCYP2D6阻害剤であり、この使用で特に研究されている(Smithへの米国特許第5,206,248号)。キニジンの化学構造は、以下の通りである:
キニジン同時投与は、少なくとも2つの異なる有益な効果を有する。第1に、それは、血液中を循環するデキストロメトルファン化合物の量を大きく増加させる。さらに、それは、より一貫して予測可能なデキストロメトルファン濃度を与える。デキストロメトルファンまたはキニジンおよびデキストロメトルファンの同時投与に関係する研究、および血漿中濃度に及ぼすキニジンの効果は、特許文献に記載されている(例えば、米国特許第5,166,207号、米国特許第5,863,927号、米国特許第5,366,980号、米国特許第5,206,248号、米国特許第5,350,756号および米国特許第7,973,049号を参照)。
キニジン投与は、高代謝型の表現型の対象を低代謝型の表現型に変換することができる(Inabaら、Br. J. Clin. Pharmacol.1986年;22巻:199〜200頁)。キニジンとの同時投与によりデキストロメトルファンの血中レベルはデキストロメトルファンの用量に比例して増加するが、デキストロメトルファンだけを与えられたほとんどの対象では、高い用量でさえ検出不能である(Zhangら、Clin. Pharmac. & Therap.1992年;51巻:647〜55頁)。したがって、キニジンと同時投与されたデキストロメトルファンの後に迅速代謝型で観察された血漿レベルは、低代謝型で観察される血漿レベルに良く似る。したがって、低代謝型である可能性がある対象にキニジンを投与することについて、医師は慎重であるべきである。
医薬組成物
開示される方法および組合せの特性の1つは、それらが、アルツハイマー病の対象で激越および/または攻撃性を低減する働きをすることである。一部の場合には、この低減は、意識や覚醒を鎮静させるかさもなければ有意に干渉することなしに、および/または重大な有害作用のリスクを増加させることなしに達成される。本明細書で用いるように、「有意な干渉」は、臨床レベルで(例えば、それらが医師または心理学者で特異的懸念を引き起こす)、または個人もしくは社会的レベルで(例えば、自動車を運転する人の能力を損なうのに十分に重度の嗜眠状態を引き起こすことによって)有意であろう、有害事象を指す。対照的に、推奨された投薬量で使用されるときに、デキストロメトルファン含有咳止めシロップなどの般市販薬物が引き起こすことができる種類の非常にマイナーな副作用は、有意な干渉として考えられていない。
アルツハイマー病の対象での激越および/または攻撃性の急性または慢性的管理における、キニジンと組み合わされるデキストロメトルファン化合物の治療的用量の大きさは、状態の特定の原因、状態の重症度および投与経路などの因子によって異なってもよい。用量および/または投与頻度は、個々の対象の年齢、体重および応答によって異なることもある。
一実施形態では、デキストロメトルファン化合物およびキニジンは、組合せ用量または別個の用量で投与される。別個の用量は、実質的に同時に投与することができる。一実施形態では、デキストロメトルファン化合物対キニジンの重量比は、約1:1またはそれ未満である。一部の実施形態では、重量比は、約1:1、1:0.95、1:0.9、1:0.85、1:0.8、1:0.75、1:0.7、1:0.65、1:0.6、1:0.55または1:0.5またはそれ未満である。同様に、ある特定の実施形態では、投与量は、約1:0.5未満、例えば、約1:0.45、1:0.4、1:0.35、1:0.3、1:0.25、1:0.2、1:0.15または1:0.1、1:0.09、1:0.08、1:0.07、1:0.06、1:0.05、1:0.04、1:0.03、1:0.02、または1:0.01、あるいはそれ未満のデキストロメトルファン化合物対キニジンの重量比を有する。重量比は、例えば、約1:0.75、約1:0.68、約1:0.6、約1:0.56、約1:0.5、約1:0.44、約1:0.39、約1:0.38、約1:0.31、約1:0.30、約1:0.29、約1:0.28、約1:0.27、約1:0.26、約1:0.25、約1:0.24、約1:0.23、約1:0.22、約1:0.21、約1:0.20、約1:0.19、約1:0.18、約1:0.17、1:0.16、約1:0.15、約1:0.14、約1:0.13、約1:0.12、約1:0.11および約1:0.10であり得る。一部の実施形態では、デキストロメトルファンの遊離塩基対キニジンの遊離塩基の重量比は、約1:0.68、約1:0.56、約1:0.44、約1:0.38である。ある特定の別の実施形態では、d6−重水素化デキストロメトルファンの遊離塩基対キニジンの遊離塩基の重量比は、約1:0.30、約1:0.22、約1:0.19、約1:0.18、約1:0.16、および約1:0.15である。
ある特定の実施形態では、デキストロメトルファン化合物およびキニジンが1:1またはそれ未満の重量比で投与されるとき、50mg未満のキニジンが任意の時点で投与される。例えば、ある特定の実施形態では、キニジンは、約30、25または20mgまたはそれ未満で投与される。他の実施形態では、キニジンは、約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.0またはそれ未満で投与される。別の実施形態では、キニジンは、約5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、または0.05、あるいはそれ未満で投与される。
一部の実施形態では、1:1またはそれ未満の重量比の組合せ用量(または同時に投与される別個の用量)は、1日当たりある特定の投薬量レベルを対象に供給するように、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、またはより頻繁に投与される、例えば:2用量で提供される1日当たり60mgのキニジンおよび60mgのデキストロメトルファン化合物であって、各用量は30mgのキニジンおよび30mgのデキストロメトルファン化合物を含有する;2用量で提供される1日当たり50mgのキニジンおよび50mgのデキストロメトルファン化合物であって、各用量は25mgのキニジンおよび25mgのデキストロメトルファン化合物を含有する;2用量で提供される1日当たり40mgのキニジンおよび40mgのデキストロメトルファン化合物であって、各用量は20mgのキニジンおよび20mgのデキストロメトルファン化合物を含有する;2用量で提供される1日当たり30mgのキニジンおよび30mgのデキストロメトルファン化合物であって、各用量は15mgのキニジンおよび15mgのデキストロメトルファン化合物を含有する;または2用量で提供される1日当たり20mgのキニジンおよび20mgのデキストロメトルファン化合物であって、各用量は10mgのキニジン(すなわち、約9mgのキニジン遊離塩基)および10mgのデキストロメトルファン化合物を含有する。一部の実施形態では、組合せ用量中のデキストロメトルファン化合物およびキニジンの全量は、1:1またはそれ未満の重量比を維持しつつ、対象に適する日全投薬量を提供するために、1日当たりに投与される用量の数によって調整することができる。
一部の実施形態では、アルツハイマー病の対象での激越および/または攻撃性の処置のための、キニジンと組み合わされるデキストロメトルファン化合物の全日用量は、約0.05mgまたはそれ未満から最高約60mgまたはそれを超えるキニジンと組み合わされる約10mgまたはそれ未満から最高約200mgまたはそれを超えるデキストロメトルファン化合物である。一部の実施形態では、アルツハイマー病の対象で激越および/または攻撃性を処置するための日用量は、単一または分割用量の、約2.5mgから約60mgのキニジンと組み合わされる約10mgから約90mgのデキストロメトルファン化合物である。一部の実施形態では、デキストロメトルファン化合物の全日用量は、約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、または0.05mgまたはそれ未満のキニジンと組み合わされる、約15、16、17、18、19または20mgである。
一部の実施形態では、アルツハイマー病の対象における激越および/または攻撃性の処置のための1日用量は、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせ;あるいは約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせ;あるいは約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせ;あるいは約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせ;あるいは約60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、もしくは70mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせ;あるいは約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79もしくは80mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせ;あるいは約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90mgのデキストロメトルファン化合物の約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、もしくは0.05mgまたはそれ未満のキニジンとの組み合わせであり;単一用量または分割用量である。
一部の実施形態では、デキストロメトルファン化合物およびキニジンの日用量は、30mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび30mgの硫酸キニジンである。他の投薬量には、例えば、15mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび9mgの硫酸キニジン(概ね11mgのデキストロメトルファンおよび概ね7.5mgのキニジンに相当する);23mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび9mgの硫酸キニジン(概ね17mgのデキストロメトルファンおよび概ね7.5mgのキニジンに相当する);20mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび10mgの硫酸キニジン(概ね15mgのデキストロメトルファンおよび8.3mgのキニジンに相当する);30mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび10mgの硫酸キニジン(概ね22mgのデキストロメトルファンおよび8.3mgのキニジンに相当する)が含まれる。
30mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファン(分子式C18H19D6NO.HBr.H2O)および30mgの硫酸キニジン(分子式(C20H24N2O2)2.H2SO4.2H2O)の用量を、投与または使用することができる(概ね22.22mgのデキストロメトルファンおよび25mgのキニジンに相当する)。d6デキストロメトルファンについての他の投与量として、例えば、24mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.75mgの硫酸キニジン(概ね18mgのd6デキストロメトルファンおよび概ね3.96mgのキニジンに相当);34mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.75の硫酸キニジン(概ね25.18mgのd6デキストロメトルファンおよび概ね3.96mgのキニジンに相当);18mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9の硫酸キニジン(概ね13.33mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);24mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9の硫酸キニジン(概ね17.78mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);28mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね20.74mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);30mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね22.22mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);34mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9の硫酸キニジン(概ね25.18mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);が挙げられる。
一部の実施形態では、療法はより低い日用量、例えば1日当たり約2.5から10mgのキニジンと組み合わされる約18または30mgのデキストロメトルファン化合物で開始され、対象の大局的応答によって、約10から20mgのキニジンと組み合わされる約90mgまたはそれを超えるデキストロメトルファン化合物まで増加される。一部の実施形態では、小児、児童、65歳を超える対象、および腎臓または肝臓の機能障害のある者は低い用量を最初に受けるが、それは、個体の応答(複数可)および血中レベル(複数可)に基づいて滴定することができる。一般的に、18から90mgのデキストロメトルファン化合物および4.75から20mgのキニジンの日投薬量が、ほとんどの対象によって十分に耐えられる。
当業者にとって明らかになるように、これらの開示された範囲の外の投薬量が、一部の場合には投与されることがある。さらに、通常の技術の臨床医または処置にあたる医師は、個体の応答を考慮して療法をどのようにおよびいつ中断し、調整し、または終了するべきかを知ることに注意する。
アルツハイマー病の対象で激越および/または攻撃性を処置するための、キニジンとの組合せでデキストロメトルファン化合物の有効薬量を対象に提供するために、任意の適する投与経路を採用することができる。例えば、経口、直腸、経皮、非経口(皮下、筋肉内、静脈内)、クモ膜下、局所、吸入および類似の投与形態を採用することができる。適する剤形には、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁剤、溶液、カプセル剤、貼付剤などが含まれる。本明細書に記載される化合物から調製される医薬品の投与は、化合物を血流に導入することが可能な任意の適する方法によることができる。一部の実施形態では、製剤は、活性化合物と当業者に公知である薬学的に許容される担体または希釈剤との混合物を含有することができる。
本明細書に開示される医薬組成物は、有効成分としてキニジンなどのCYP2D6阻害剤との組合せでデキストロメトルファン化合物、またはデキストロメトルファン化合物および/もしくはキニジンの薬学的に許容される塩を含み、また、薬学的に許容される担体、および任意選択で他の治療成分を含有することもできる。
用語「薬学的に許容される塩」または「薬学的に許容されるその塩」は、薬学的に許容される無毒の酸または塩基から調製される塩を指す。適する薬学的に許容される塩には、金属塩、例えばアルミニウム、亜鉛の塩;アルカリ金属塩、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩;有機塩、例えば、リシン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、プロカインおよびトリスの塩;遊離の酸および塩基の塩;無機塩、例えば、硫酸塩、塩酸塩および臭化水素酸塩;ならびに、現在広範囲にわたって医薬として使用されており、Merck Indexなどの当業者に周知である情報源に掲載されている他の塩が含まれる。
それが無毒であり、所望の活性に実質的に干渉しないならば、本明細書で議論される活性薬物の塩を作製するために、任意の適する構成成分を選択することができる。塩に加えて、化合物の薬学的に許容される前駆体および誘導体を採用することができる。本明細書に開示される組成物および方法で使用するために、重水素化デキストロメトルファンおよび/またはキニジンの薬学的に許容されるアミド、低級アルキルエステルおよび保護された誘導体が適することもできる。ある特定の実施形態では、重水素化デキストロメトルファンは、重水素化臭化水素酸デキストロメトルファンの形態で投与され、デキストロメトルファンは臭化水素酸デキストロメトルファンとして投与され、キニジンは硫酸キニジンの形態で投与される。
組成物は、任意の所望の形態、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、注射剤、懸濁剤、サッシェ、カシェ剤、貼付剤、溶液、エリキシル剤およびエアゾールで調製することができる。経口固体調製物では、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体を使用することができる。ある特定の実施形態では、組成物は経口固体調製物(散剤、カプセル剤および錠剤など)として調製される。ある特定の実施形態では、組成物は経口液体調製物として調製される。一部の実施形態では、経口固体調製物は、錠剤である。所望により、錠剤は、標準の水性または非水性の技術によってコーティングされてもよい。
上に示す剤形に加えて、本明細書に開示される化合物は、持続的放出、遅延放出または制御放出の組成物および/または送達デバイス、例えば、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;および第4,008,719号に記載されるもので投与されてもよい。
経口投与に適する医薬組成物は、有効成分の所定量を各々含有するカプセル剤、カシェ剤、サッシェ、貼付剤、注射剤、錠剤およびエアゾール噴霧剤などの個別の単位として、散剤もしくは顆粒剤として、または水性液体、非水性液体、水中油型乳剤もしくは油中水型液体乳剤中の溶液もしくは懸濁剤として提供することができる。そのような組成物は、従来の調剤方法のいずれかによって調製することができるが、ほとんどの方法は有効成分を1つまたは複数の成分を構成する担体と合わせるステップを一般的に含む。一般に、組成物は、有効成分を液体担体、微粉固体担体または両方と均一におよび緊密に混合し、次に、任意選択で生成物を所望の提供品に成形することによって調製される。
例えば、錠剤は、任意選択で1つまたは複数の追加の成分と一緒の、圧縮または成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性または分散剤と任意選択で混合した、粉末または顆粒などの易流動性の形態の有効成分を適する機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を適する機械の中で成形することによって作製することができる。
一部の実施形態では、各錠剤は、約30mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび30mgの硫酸キニジンを含有する。錠剤は、例えば、15mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび9mgの硫酸キニジン(概ね11mgのデキストロメトルファンおよび概ね7.5mgのキニジンに相当);23mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび9mgの硫酸キニジン(概ね17mgのデキストロメトルファンおよび概ね7.5mgのキニジンに相当);20mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび10mgの硫酸キニジン(概ね15mgのデキストロメトルファンおよび概ね8.3mgのキニジンに相当);30mgの臭化水素酸デキストロメトルファンおよび10mgの硫酸キニジン(概ね22mgのデキストロメトルファンおよび概ね8.3mgのキニジンに相当);を含み得る。
錠剤は、30mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファン(分子式C18H19D6NO.HBr.H2O)および30mgの硫酸キニジン(分子式(C20H24N2O2)2.H2SO4.2H2O)(概ね22.22mgのデキストロメトルファンおよび25mgのキニジンに相当する)を含むことができる。錠剤は、他の投与量、例えば、24mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.75mgの硫酸キニジン(概ね18mgのd6デキストロメトルファンおよび概ね3.96mgのキニジンに相当);34mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.75の硫酸キニジン(概ね25.18mgのd6デキストロメトルファンおよび概ね3.96mgのキニジンに相当);18mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9の硫酸キニジン(概ね13.33mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);24mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9の硫酸キニジン(17.78mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);28mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね20.74mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);30mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね22.22mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);34mgのd6臭化水素酸デキストロメトルファンおよび4.9mgの硫酸キニジン(概ね25.18mgのd6デキストロメトルファンおよび4.08mgのキニジンに相当);を含み得る。
本明細書で用いるように、「最小有効治療量」は、体からのデキストロメトルファン化合物の急速な排除の満足できる程度の阻害を提供し、一方では、有害作用をもたらさないかまたは許容される程度および性質の有害事象だけしかもたらさない量である。より具体的には、一部の実施形態では、有効治療量は、1日当たり約9、10、18、20、25または30mgから約90mgの範囲のデキストロメトルファン化合物および約50mg未満のキニジンである。一部の実施形態では、有効治療量は、1日当たり約20または30mgから約90mgの範囲のデキストロメトルファン化合物および約0.5mgから約30mgのキニジンである。一部の実施形態では、その量は、デキストロメトルファン化合物の血漿中半減期に基づいて分割用量で投与される。例えば、一実施形態では、血漿1mL当たりのμgで指定されるレベルの重水素化デキストロメトルファンの目標濃度を達成するために、重水素化デキストロメトルファンおよびキニジンは指定されるmg増分で投与され、重水素化デキストロメトルファンおよびキニジンの最大の指定投薬量は体重に基づく。一部の実施形態では、目標用量は、12時間おきに投与される。一部の実施形態では、目標用量は1日1回投与される。一部の実施形態では、キニジンのレベルは最小にされ、キニジンの高い投薬量で観察される副作用は最小にされるかまたは排除され、より高いレベルのキニジンとの組合せでデキストロメトルファン化合物を含有する組成物と比較して有意な恩恵を提供する。
一部の実施形態では、他の治療剤が、デキストロメトルファン化合物およびキニジンと組み合わせて投与される。例えば、デキストロメトルファン化合物およびキニジンは、うつ病または不安を処置する化合物と組み合わせて投与されてもよい。
一部の実施形態では、デキストロメトルファン化合物およびキニジンは、アルツハイマー病の症状を処置するための公知の治療剤へのアジュバントとして投与される。アルツハイマー病の症状を処置するための薬剤には、限定されずに、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンおよびタクリン、メマンチンならびにビタミンEが含まれる。
(実施例1)
アルツハイマー病における激越(agitation)および攻撃性についての臨床試験
デキストロメトルファンとキニジンの組合せが、アルツハイマー病を有する対象における激越および/または攻撃性を低減させるのに有効であるかどうかを決定するために、臨床試験を行った。
この調査は、ほぼ確実なアルツハイマー病および臨床的に有意な激越を有する対象における経口のデキストロメトルファン/キニジンの有効性についての10週の無作為化ダブルダミープラセボ対照多施設試験であった。この試験は、アルツハイマー病の外来診療所ならびに介護付き住宅および介護施設を含む米国の42か所で行った。
適格な参加者は、50から90歳であり、ほぼ確実なアルツハイマー病(2011年の米国国立老化研究所−Alzheimer Associationの基準)および以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、まとまりが悪く無意味な精神運動活動の状態として定義される臨床的に有意な激越を有する:攻撃的な言葉(例えば、絶叫、悪口);攻撃的な物理的挙動(例えば、物の破壊、つかむこと、争い);および攻撃的でない物理的挙動(例えば、徘徊、不穏)。適格な参加者は、スクリーニング前の7日以内に(間欠的にまたは常に)激越を有し、激越の症状は、日常業務および正当な薬理学的処置を妨害するほどに重症でなければならなかった。適格な参加者は、激越についての臨床全般重症度尺度(Clinical Global Impression of Severity of Illness scale)(CGIS)で4以上(中等度)のスコアでもあり、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア8から28を有していた。安定用量のアルツハイマー病の医薬(2カ月以上;メマンチンおよび/もしくはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤)、ならびに抗うつ剤、抗精神病薬、または催眠剤(1カ月以上;短期作用型ベンゾジアゼピンおよび非ベンゾジアゼピンを含む)が許可された;投薬は試験全体を通して安定なままであった。治験責任医師によって必要であると考えられた場合、試験中に、激越のための「レスキュー」薬として、経口ロラゼパム(7日間で、最大1.5mg/日および最大3日間)が許可された。
除外基準は、非アルツハイマー病型認知症、アルツハイマー病に続発しない激越、精神保健施設での入院、重度のうつ病(コーネル認知症抑うつ尺度[CSDD]≧10)、統合失調症、統合失調感情障害もしくは双極性障害、重力筋無力症(キニジンの使用が禁忌であるため)、または臨床的に有意な/不安定な全身性疾患;完全心ブロック、QT間隔(QTc)延長の補正変化もしくはトルサード・ド・ポワントの履歴;先天的QT延長の家族歴;昨年中の起立性失神もしくは原因不明の失神の履歴;または3年以内の薬物乱用/アルコール乱用であった。第一世代抗精神病薬、三環系およびモノアミン酸化酵素阻害抗うつ剤は許可されなかった。
10週の治験は、2連続の二重盲検5週のステージ(ステージ1およびステージ2)を有した(図2)。参加者は、3:4(アクティブ:プラセボ)の比でステージ1に無作為化された。ステージ1における無作為化は、ベースラインの認知機能(MMSE>15対≧15)および激越の重症度(CGIS4〜5対6〜7)によって層別化され、ブロック別無作為化によって、各層の処置のバランスが保証された。ステージ1の最初の7日間(1〜7日目)、アクティブ処置群は、午前中にAVP−923−20(20mgのデキストロメトルファンおよび10mgのキニジン)および夕方にプラセボを受け、プラセボ群はプラセボを1日に2回受けた。ステージ1の次の2週間(8〜21日目)、AVP−923群はAVP−923−20を1日に2回受け、プラセボ群はプラセボを1日に2回受けた。22日目に、AVP群に対して、医薬の用量をAVP−923−30(30mgのデキストロメトルファンおよび10mgのキニジン)を1日に2回まで増加させた。AVP群は、ステージ1の残りの2週間(22〜35日目)、AVP−923−30を1日に2回受け続け、プラセボを受けている参加者は、プラセボを1日に2回受け続けた。
ステージ2では、ステージ1でAVP−923を受けた参加者は、全5週の期間、AVP−923を毎日2回受け続けた。ステージ1でプラセボを受けた参加者は、ステージ1の終わり(来院4)に、激越の臨床全般重症度尺度(CGIS)のスコアおよび神経精神症状評価(NPI)激越/攻撃性ドメインのスコアによって評価された臨床反応により、2つの亜群に層別化された。激越に対するCGISのスコアが3未満(軽症)であり、NPI激越/攻撃性ドメインのスコアがベースラインから25%またはそれ超減少した場合に、参加者は「レスポンダー」とみなされた。これらの基準に合致しなかった参加者は「ノンレスポンダー」とみなされた。次いで、各プラセボの亜群(レスポンダーおよびノンレスポンダー)は、1:1の比で再無作為化され、AVP−923またはマッチングするプラセボのいずれかを受けた。ステージ1の間にプラセボを受け、ステージ2でAVP−923に再無作為化された参加者は、試験の最初の7日間(ステージ2、36〜42日目)に、午前中にAVP−923−20および夕方にマッチングするプラセボを受けた。43日目に始まり、参加者は2週連続して(ステージ2、43〜56日目)AVP−923−20を1日に2回受け、57日目に始まり、参加者は、試験が完了するまでの残りの2週間(ステージ2、57〜70日目)AVP−923−30を1日に2回受けた。
参加者は、スクリーニング時、ベースライン(1日目)、ならびに8、22、36、43、57、および70日目(来院2〜7)に来診した。スクリーニング相を含め、この試験における各参加者の参加の長さはおよそ14週であった。血漿中の薬物レベルの測定のための血液試料は、36日目(来院4)および70日目(来院7)に収集された。チトクロームP450−2D6(CYP2D6)の遺伝子型判定のための血液試料は、1日目(ベースラインの来院)に収集された。
治験責任医師または治験依頼者は、併発疾患、有害事象、参加者の健康もしくはウェルビーイングに関する他の理由、または協力関係の欠如、ノンコンプライアンス、プロトコール違反、もしくは他の管理上の理由の場合に、参加者に試験を中止させることができた。さらに、無作為化後の任意の時点で、QTc間隔(Bazett補正QT(QTcB)もしくはFridericia補正QT(QTcF))>500ミリ秒(心室ペーシングによらない限り)またはスクリーニング心電図(ECG)結果からのQTc間隔の変化>60ミリ秒を表した参加者は、試験から退いた。QTc値を臨床的有意性について評価し、記録した。試験完了前に退いた参加者に、来院7(試験の終わり)の評価を完了させるために、診療所に戻るよう依頼した。参加者が完了前に試験を退くまたは中止させられた場合、参加者のアウトカムを文書化するためにあらゆる努力がなされた。参加者が試験から退き、世話人および/または参加者の代理人によって、未来の情報開示に対する同意が取り下げられた場合、さらなる評価は実施せず、追加のデータは収集しなかった。
参加者および世話人には、参加者は試験薬をおよそ12時間±4時間毎(午前および夕方)に、水とともに経口摂取しなければならないことを指示した。AVP−923およびプラセボを、同一の外観のカプセル剤として提供し、チャイルドレジスタンスキャップを有する85ccの白色プラスチックボトルであって、一方のボトルは午前の投薬のための白色ラベルを有し、一方のボトルは夕方の投薬のために青色ラベルを有するボトルに詰めた。AVP−923およびプラセボカプセル剤の組成を表2に示す。
参加者および世話人には、8、22、36、43、57、および70日目(来院2〜7)に、いかなる未使用の試験薬も空の容器も持ってくるよう指示した。この試験のために、コンプライアンスを、参加者が計画された用量の少なくとも80%摂取する場合と規定した。世話人には日誌カードを渡し、摂取したカプセル剤数と投与の時間を毎日記録するよう指示した。日誌カードは、8、22、36、43、57、および70日目(来院2〜7)に、または早期の試験中止の時点で回収した。
有効性
主要有効性評価項目は、激越/攻撃性NPIドメインにおける改善であった。副次的有効性評価項目は、激越/攻撃性、異常な運動行動、および易刺激性/不安定性ドメインと不安(NPI4A)または脱抑制(NPI4D)とを含むNPI総スコア(範囲:1〜144)、個々のNPIドメインのスコア、およびNPI複合スコアのベースラインからの変化を含んだ。それぞれ積極的に推奨されたNPIドメインに対して、NPI世話人の苦悩スコア(NPI−CDS;0〜5、全くない〜非常に重度)を獲得した。世話人によって判定されたアルツハイマーズ・ディジーズ・コーオペレイティブ・スタディ−変化の臨床全般印象(ADCS−CGIC;1〜7、顕著な改善〜顕著な悪化)および変化に対する患者の全般的印象(PGI−C)(1〜7、とても改善〜とても悪化)のスコアを、5週目と10週目に評価し、臨床的意義の尺度を与えた。追加の副次的評価項目は、ADCS−日常生活動作表(ADCS−ADL;0〜54、より高いスコアはより良好な機能を意味する);CSDD(0〜38;より高いスコアはより重度のうつ病を意味する);世話人の負担指標(CSI;0〜13、より高いスコアはより高いストレスレベルを意味する);生活の質−アルツハイマー病(QOL−AD;13〜52、より高いスコアはより良好なQOLを意味する);および向精神薬の変化/ロラゼパムのレスキュー使用を含んだ。認知力を、MMSE(0〜30、より低いスコアはより高度な認知障害を意味する)およびアルツハイマー病評価スケール−認知サブスケール(ADAS−cog;0〜70、より高いスコアはより高度な認知障害を意味する)を使用して評価した。安全性のアウトカムは、有害事象(AE)、バイタルサイン、臨床検査の結果、およびECGの結果を含んだ。QT間隔の結果を心拍数の変動に対して補正し、QTcF(QT/3√[RR])の計算値を使用した。
上述の有効性のパラメータを試験中、以下の時点で評価した:CSIおよびNPIドメインの全てをベースラインならびに1、3、5、6、8、および10週目に評価し;ADCS−CGIC激越、QOL−AD(世話人)、およびADAS−cogをベースラインならびに5および10週目に評価し;CSDDおよびMMSEをスクリーニング時ならびに5および10週目に評価し;ならびにPGI−Cを5および10週目に評価した。
主要および副次的有効性評価項目を、最小二乗法(OLS)を使用して1:1で重み付けした5週ステージの両方からのデータを解析し、ステージ1の全ての参加者とステージ2の再無作為化したプラセボのノンレスポンダー(図2)のみを含む、公開された逐次並行比較デザイン(SPCD)法に基づき解析した(Favaら、Psychother. Psychosom.2003年;72巻(3号):115〜127頁;Chenら、Contemp. Clin. Trials.、2011年;32巻(4号):592〜604頁)。主要試験評価項目の解析を事前に指定した;副次的評価項目の多様性に取り組むために補正を行わなかった。デキストロメトルファン/キニジンおよびプラセボ群をアルファ=有意性の0.05レベルでの両側検定を使用して比較した。さらに、共変量として、固定効果としての処置およびベースラインに関する共分散分析(ANCOVA)を使用して、各ステージと各来院における処置群平均を別々に比較した。最後に、10週の並行群デザインをシミュレートするために(図2に示されるように)、全10週の治験の間にデキストロメトルファン/キニジンのみ(n=93)またはプラセボのみ(n=66)を受けるように無作為化された参加者の間で(レスポンダーのステータスにかかわらず)、NPI激越/攻撃性スコアの事前に指定された比較を行った。全ての統計解析は、バージョン9.1またはそれより上位のSAS(登録商標)(SAS Institute、Cary、NC、USA)を使用して実行した。
SPCD方法論を使用した場合、主要解析からの所見に保証を与えるために、主要評価項目のさらなる試験的感度解析を実行した。ステージ2の欠測データの潜在効果および再無作為化されたプラセボ「レスポンダー」の排除を試験するために、Dorosら(Dorosら、Stat. Med. 2013年;32巻(16号):2767〜2789頁)によって記載された反復測定モデル(MMRM、事前に指定されている)を使用した。このモデルでは、NPI激越/攻撃性ドメインに対する入手可能なデータ全てが使用された。3つの別々のモデルを使用して、中間の来院からのデータの入力を可能にする一般モデルに関して、ベースライン、ステージ1の終わり、およびステージ2の終わりに収集された処置効果と入力データを評価した。FDAの推奨に基づき、OLS法の代わりに、SPCDにおける見かけ上無関係な回帰(Seemingly Unrelated Regression)(SUR)法(Dorosら、Stat. Med.2013年;32巻(16号):2767〜2789頁;Zellnerら、J. Am. Stat. Assoc.1962年;57巻(298号):348〜368頁;TamuraおよびHuang、Clin. Trials.2007年;4巻(4号):309〜317頁)を使用して、試験の盲検解除後に、主要評価項目の第2の感度解析を行い、欠測データがランダムでない欠測であり得るかどうかを扱った。上記に加えて、主要解析について上述した同じSPCD方法論を使用するが、ステージ2で再無作為化されたプラセボレスポンダーとノンレスポンダーの両方を含む主要評価項目の事前に指定された試験的解析を行った。
激越についての公開された処置試験において、標準偏差(SD)は、3.1から5.2ポイントの範囲のNPI激越/攻撃性スコアの変化を見積もっている(Herrmannら、CNS Drugs.2011年;25巻(5号):425〜433頁;Mintzerら、Am. J. Geriatr. Psychiatry.2007年;15巻(11号):918〜931頁;Herrmannら、Dement. Geriatr. Cogn. Disord.2007年;23巻(2号):116〜119頁)。SDが5.0ポイントと仮定し、5%有意水準での独立試料からの平均の両側、2試料比較に基づき、196人の参加者の試料サイズを計算して、2.5ポイントの平均差を検出する90%の検出力を得た。アルツハイマー病を有する対象の激越の処置におけるSPCD試験に対する先例がないので、試料サイズの計算は並行群間比較に基づいた。
安全性解析集団は、少なくとも1用量の試験薬を摂取した全ての参加者を含んだ。有効性に対する修正処置企図(modified intention−to−treat)(mITT)解析集団は、ステージ1において、ベースライン後のNPI激越/攻撃性評価を有する全ての参加者を含んだ。欠測データは、最終観察繰越法(last observation carried forward)を使用して入力した。
220人の全ての無作為化された参加者(126人の女性、94人の男性)は安全性解析集団に含まれ、218人の参加者が有効性に対するmITT解析集団を構成し、194人(88.2%)が試験を完了した(図3)。ステージ2にエントリーしたプラセボ群のSPCDおよび再無作為化について、合計152人の参加者がデキストロメトルファン/キニジンを受け(93人がステージ1から始め、ステージ2でプラセボから追加の49人が再無作為化された)、127人の参加者がプラセボを受け、プラセボ(週当たり911人の患者)に対するよりもデキストロメトルファン/キニジン(週当たり1153人の患者)に対する方がおよそ26.7%多い曝露を生じた。17人の参加者(11.2%)がデキストロメトルファン/キニジンを受けている間に、9人(7.1%)がプラセボを受けている間に中止し、そのうちAEはそれぞれ8人(5.3%)および4人(3.1%)であった。参加者の特性は、処置群全体でバランスが取れており、表3および表4に示した(mITT有効性集団)。ステージ2で再無作為化された群もバランスが取れていた。mITT SPCDで再無作為化されたプラセボ群の特性は表5に示す。
デキストロメトルファン/キニジンは、mITT集団における主要SPCD解析(OLS Z−統計:−3.95;P<.001)においてプラセボと比較して、NPI激越/攻撃性スコアを有意に改善した。各ステージに対する結果も、プラセボに対しデキストロメトルファン/キニジンが好ましかった(表6)。ステージ1では、最小二乗(LS)平均(95%CI)の処置差が−1.5(−2.3、−0.7)で、平均(95%CI)NPI激越/攻撃性スコアが、デキストロメトルファン/キニジンで7.1(6.6、7.6)から3.8(3.1、4.5)まで、プラセボで7.0(6.6、7.4)から5.3(4.7、5.9)まで低下した(P<.001)。反応差は1週目で記録した(−0.8[−1.5、−0.03];P=.04;図4。ステージ2(デキストロメトルファン/キニジンまたはプラセボのいずれかに再無作為化されたプラセボノンレスポンダー)では、平均(95%CI)NPI激越/攻撃性スコアは、LS平均(95%CI)の処置差が−1.6[−2.9、−0.3]で、デキストロメトルファン/キニジンで5.8(4.9、6.7)から3.8(2.9、4.7)まで、プラセボで6.7(5.9、7.5)から5.8(4.7、6.9)まで低下した(P=.02);図5)。NPI激越/攻撃性ドメインの改善は、6週目(ステージ2の間)を除いて、1週目および試験終了までのあらゆる時点で統計的に有意であった。治験の全10週の間に、デキストロメトルファン/キニジンのみ(n=93)またはプラセボのみ(n=66)を受けるよう無作為化された参加者の間のNPI激越/攻撃性スコアの事前に指定された比較も(図2に示すように、並行群デザインをシミュレートするレスポンダーのステータスにかかわらず)、プラセボに対しデキストロメトルファン/キニジンが好ましかった(LS平均処置差[95%CI]が−1.8[−2.8、−0.7];表6、図6)。プラセボと比較したデキストロメトルファン/キニジンに対する反応は、病期によって異ならなかったようである。ベースラインMMSEスコア(>15対≦15)およびベースラインCGIS(4または5対6または7)による層別無作為化によって、激越および認知機能の両方に対してバランスのとれた処置群が得られた。これらの因子の潜在的な影響を評価するために行われた追加解析では、反応の差が示唆されなかったが、これらの解析におけるいくつかの層のサイズは小さく、この観察はより大きな治験での確認を要した。
事前に指定された副次的アウトカムのSPCD解析(表6)により、全般評価スコア(PGI−CおよびCGIC)、NPI全体、NPI異常な運動行動および易刺激性/不安定性ドメイン、NPI4Aおよび4Dの混合、NPI世話人の苦悩(激越/攻撃性ドメインと全体の両方)、CSI、ならびにCSDDについて、デキストロメトルファン/キニジンが好ましい、有意な改善が示された。QOL−AD、ADCS−ADL、MMSE、およびADAS−cogの変化に対する結果(試験的アウトカム)は、プラセボに対して有意ではなかった。事後解析により、併用のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、メマンチン、抗うつ剤、または抗精神病薬を摂取している参加者では、これらの薬剤を受けていない参加者と比較して、デキストロメトルファン/キニジンを用いたNPI激越/攻撃性スコアにおいて同様の改善が示された。デキストロメトルファン/キニジンおよびプラセボを受けながら、ロラゼパムレスキューを、それぞれ152人中10人(6.6%)および125人中13人(10.4%)の参加者で使用した。10週の処置の終わりに、プラセボのみを摂取した参加者(n=59)の27.1%に対し、デキストロメトルファン/キニジンのみで処置された参加者(n=82)の45.1%が、「非常に改善された」または「とても改善された」と判断された。
安全性および忍容性
デキストロメトルファン/キニジンは、一般的に、複数の併用医薬を受けているこの集団において忍容性が良好で、認知障害を伴わなかった。処置下で発現した有害事象(TEAE)は、発生時の処置の割振りに基づくものであった。デキストロメトルファン/キニジンまたはプラセボを用いた処置の間に、TEAEは、それぞれ152人中93人(61.2%)および127人中55人(43.3%)の参加者(安全性集団)により報告された。最も一般的に起こるTEAE(>3%)は、デキストロメトルファン/キニジン対プラセボについてそれぞれ、転倒(8.6%対3.9%)、下痢(5.9%対3.1%)、尿路感染(5.3%対3.9%)、めまい(4.6%対2.4%)および激越(3.3%対4.7%)であった。重大な有害事象(SAE)は、デキストロメトルファン/キニジンを受けている参加者の12人(7.9%)およびプラセボを受けている6人(4.7%)で生じた。デキストロメトルファン/キニジンを受けている参加者のSAEは、腰痛(n=2)、貧血、急性心筋梗塞(投薬終了の2日後に起こる)、徐脈、腎感染、大腿骨骨折、脱水、結腸がん、脳血管障害、攻撃性、および血尿(それぞれn=1)を含んだ。プラセボを受けている参加者のSAEは、特発性血小板減少性紫斑病、空間識失調、肺炎、胃腸炎、挫傷、一過性脳虚血発作、および激越(それぞれn=1)を含んだ。デキストロメトルファン/キニジンを受けている8人(5.3%)の参加者とプラセボを受けている4人(3.1%)が、AEにより処置を中止し、そのうちSAEは、それぞれ4人(2.6%)および2人(1.6%)であった。試験中に死亡は起こらなかった。
デキストロメトルファン/キニジンを受けている間に転倒した13人の参加者のうち、9人が以前の転倒歴を有した。両方の例で、3人が試験完了の2から4日後に転倒し、1人の参加者は、ロラゼパムレスキューを受けてから24時間以内に2回転倒した;プラセボを受けている間に転倒した参加者は、転倒歴を有さなかった。2回の転倒は、重大なAE(SAE)を伴い、デキストロメトルファン/キニジンで大腿骨骨折、プラセボで挫傷であった。
ECGパラメータにおいて臨床的に重要な群間差は観察されなかった。平均(SD)QTcFは、最終の来院で、デキストロメトルファン/キニジン(n=138)およびプラセボ(n=60)を受けている参加者に対して、それぞれ5.3(14.06)および−0.3(12.96)ミリ秒であった。AVP923を受けている15人(10.3%)およびプラセボを受けている8人(6.7%)が、任意の来院で、QTcF変化≧30ミリ秒を有し、プラセボの1人の参加者はQTcF変化>60ミリ秒を有した。参加者は、QTcF>500ミリ秒を有さなかった。
表6ならびに図4、図5、および図6に示されているデータから、デキストロメトルファンとキニジンの組合せは、プラセボと比較して、ほぼ確実なアルツハイマー病を有する患者における激越および攻撃性を処置するのに有意に有効であることが明らかである。さらに、この組合せは、一般的に、年配者集団において忍容性が良好で、認知障害、鎮静作用、または臨床的に有意なQTc延長を伴わなかった。
(実施例2)
アルツハイマー病における激越の処置に対してAVP−786を試験するための根拠
AVP−786は、チトクロームP450(CYP)肝臓アイソザイム2D6(CYP2D6)によるd6−DM代謝の阻害剤として使用される、重水素化(d6)−臭化水素酸デキストロメトルファン(d6−DM)、中枢神経系(CNS)−活性成分、および硫酸キニジン(Q)の組合せ製品である。AVP−786は、アルツハイマー病(AD)を有する対象における激越の処置に対して臨床上の利益をもたらすことができる。
d6−DMは、CNS治療薬にとって重要であり得るグルタミン酸、モノアミン、シグマ−1、およびニコチン性コリン作動経路の調整を担う受容体に結合する。本発明者らによって行われた、d6−DMに関する薬理学的試験により、重水素化はDMの基礎薬理学を変更しないことが実証された。また、薬物動態(PK)および薬物代謝試験によって、d6−DMは、DMと同じ代謝経路によって代謝されるが、重水素化によってCYP2D6による代謝速度の低下が生じることが示されている。
本発明者らによって行われた最近の第2相試験は、主要有効性評価項目に合致し、プラセボと比較して、AVP−923を受けている患者における激越の明らかな改善を示した。この試験は、ADを有する220人の患者における激越の処置に対するAVP−923の有効性、安全性、および忍容性を評価するための、10週の無作為化二重盲検プラセボ対照2ステージ逐次並行比較デザイン(SPCD)試験であった。AVP−923を受けた患者では、神経精神症状評価(NPI)の激越/攻撃性ドメインによって測定した場合、プラセボを受けた患者と比較して、激越が有意に低減した(p<0.001)。試験された副次的評価項目の大半(例えば、NPI−全体、NPI−激越/攻撃性ドメインの世話人の苦悩、変化の臨床全般印象[CGIC]−激越、臨床全般重症度尺度[CGIS]−激越、および変化に対する患者の全般印象[PGIC])も、統計的に有意であった。臨床医と患者/世話人の両者の変化の印象は、激越において観察された改善の臨床的意義を強めた。ミニメンタルステート検査(MMSE)およびアルツハイマー病評価スケール−認知サブスケール(ADAS−cog)によって測定された認知における数値的に好ましい反応が観察されたが、どちらも統計的有意性を達成しなかった。
本発明者らによって行われたさらなる試験によって、デキストロメトルファン(DM)のd6−重水素修飾によってCYP2D6の代謝速度が低減され、その結果、かなり低い用量のキニジン(AVP−923に含有されたQの量が50%未満)との組合せが、それぞれAVP−786およびAVP−923におけるDMに対するd6−DMの生物学的同等性に十分であることが示された。AVP−786中のQの量が少ないと、他のCYP2D6基質との相互作用が低減し、CYP3A4阻害剤の存在下でもQレベルを制限し、心臓の再分極およびQTc間隔における効果を低減させる場合がある。
(実施例3)
アルツハイマー型認知症を有する患者における激越の処置に対するAVP−786(重水素化[d6]−臭化水素酸デキストロメトルファン[d6−DM]/硫酸キニジン[Q])の有効性、安全性、および忍容性を評価するための第3相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験
この試験は、アルツハイマー型認知症を有する対象における激越の処置に対するAVP−786の有効性、安全性、および忍容性を評価するためにデザインされている。
AVP−786処置期間の根拠
12週の処置期間は、有効性を評価するために最適な処置期間であると考えられ、AVP−923に関する試験12−AVR−131からのデータの精査に基づく(Papakostas GIら、Am J Psychiatry.2012年;169巻(12号):1267〜1274頁;Marshall R、Leigh−Pemberton R、Memisoglu Aら Opioid modulation:a novel mechanism for the treatment of depression:results of the ALKS 5461 phase 2 study.2004年;2巻:5461頁)。全12週の試験の間同じ処置を与えられた患者には、より長い期間にわたる処置反応の評価も可能である。
試験集団
患者の数:およそ380人の患者が、米国のおよそ60の施設で登録される。
状態/疾患:アルツハイマー型認知症に続発する激越を有する患者。ほぼ確実なアルツハイマー病の診断は、米国国立老化研究所(NIA)−アルツハイマー病協会(AA)のワークグループによって発行された「2011 Diagnostic Guidelines for Alzheimer’s Disease」に基づく(McKhann GMら、Alzheimers Dement.2011年;7巻(3号):263〜269頁)。激越の診断は、国際老年精神医学会(IPA)のAgitation Definition Work Groupによって開発された、認知障害を有する患者における激越についての仮の共通定義に基づく(Cummings Jら、Int Psychogeriatr.2014年:1〜11頁)。
選択基準(key inclusion criteria):スクリーニングの時点で、かつ無作為化前の少なくとも2週間の臨床的に有意な中等度/重度の激越であって、日常業務を妨げ、かつ治験責任医師の意見で処方薬が必要である激越を有する患者。スクリーニングおよびベースライン時における臨床全般重症度尺度(CGIS)の激越スコア≧4(中等度)が試験の参加に必要である。適格な患者は、試験の途中で、いかなる禁止医薬も投与しないことを含み、試験の手順に従うことができ、かつ進んで従う信頼できる世話人を有さなければならない。
除外基準(key exclusion criteria):主として非アルツハイマー型の認知症(例えば、血管性認知症、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、物質誘発性認知症)を有する患者およびアルツハイマー病に続発しない(例えば、疼痛、他の精神障害、またはせん妄に続発する)激越を有する患者は適格ではない。
試験デザイン
構造:これは、第3相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験である。
期間:患者は、およそ16週間の試験に登録し、4週間のスクリーニング期間と12週間の処置期間を有する。
試験処置:治験製品はAVP−786(重水素化[d6]−臭化水素酸デキストロメトルファン[d6−DM]/硫酸キニジン[Q])である。2用量のAVP−786が評価されることになり、d6−DM 28mg/Q 4.9mgおよびd6−DM 18mg/Q 4.9mgであり、以下、それぞれAVP−786−28/4.9およびAVP−786−18/4.9と称する。
AVP−786の組成:2用量のIPおよびプラセボの定性的および定量的組成を以下の表7に列挙する。
対照:試験薬と同一の外観のプラセボカプセル剤を対照として使用する。
無作為化/層別化:適格な患者は、AVP−786−28/4.9のカプセル剤、AVP−786−18/4.9のカプセル剤、またはマッチングするプラセボカプセル剤のいずれかを受けるための試験に無作為化される。無作為化は、神経精神症状評価(NPI)激越/攻撃性ドメインのスコア(≦6対>6)、転倒のリスク評価(正常/軽度対中等度/重度)、および抗精神病薬の併用(はい対いいえ)によって層別化される。
用法:適格な患者は、ベースラインの来院時に、AVP−786またはマッチングするプラセボカプセル剤を受けるように無作為に割り振る。AVP−786−28/4.9を受けるよう無作為化された患者は、試験の最初の7日間は、午前中にAVP−786−18/4.9を1日に1回および夕方にプラセボから開始する。8日目から、患者は、14日間、AVP−786−18/4.9BIDを受ける。22日目から、患者は、試験の残りの9週間、AVP−786−28/4.9BIDを受ける。AVP−786−18/4.9を受けるよう無作為化された患者は、試験の最初の7日間は、午前中にAVP−786−18/4.9を1日に1回および夕方にプラセボから開始する。8日目から、患者は、試験の残りの11週間、AVP−786−18/4.9BIDを受ける。患者は、試験中のある時点で、AVP−786を受ける機会を少なくとも50%有する。試験薬は、試験全体を通して、1日に2回(BID、午前中に1カプセル剤および夕方に1カプセル剤をおよそ12時間離して)経口投与する。
評価および来院
患者は、スクリーニング時、ベースライン時(1日目)、ならびに8日目(1週目)、22日目(3週目)、43日目(6週目)、64日目(9週目)、および85日目(12週目)に来診する。安全性を追跡するための電話の呼び出しを29日目(4週目)および71日目(10週目)に行う。試験の手順を、各来院時に、評価および来院のスケジュールに概説したように実行する(表8)。評価は、可能な限り、試験全体を通して同じ評価者によって実行するべきである。
反応の尺度
有効性の主要尺度:主要有効性を神経精神症状評価(NPI)の激越/攻撃性ドメインを使用して評価する。
有効性の副次的尺度:副次的有効性尺度は、変化の臨床全般印象(CGIC)激越、NPI−激越/攻撃性ドメインの世話人の苦悩スコア、NPI−異常な運動行動ドメイン、ザリット介護負担尺度(ZBI)、NPI−易刺激性/不安定性ドメイン、変化に対する患者の全般的印象(PGIC、世話人によって判定される)、認知症の生活の質(DEMQOL)、コーネル認知症抑うつ尺度(CSDD)、Resource Utilization in Dementia(RUD)、全体のNPI、CGIS激越、アルツハイマー病評価スケール−認知サブスケール(ADAS−cog)、全般的健康尺度(GMHR)、およびEuroQol 5−Dimension 5−Level(EQ−5D−5L)を含む。
薬物動態:d6−DMの血漿濃度、その代謝産物、およびQを測定する。
安全性および忍容性:AVP−786の安全性および忍容性を、報告された有害事象(AE)、身体検査および神経学的検査、バイタルサイン、臨床検査評価、安静時12誘導心電図(ECG)、シーハン自殺念慮追跡スケール(S−STS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、およびTimed Up and Go(TUG)検査によって評価する。妊娠検査は、出産の可能性がある女性に対して行う。
一般的な統計方法と解析のタイプ
有効性解析:試験の主要有効性評価項目は、NPI激越/攻撃性ドメインのスコアにおける、ベースラインから12週目(85日目)までの変化である。処置効果は、観察されたデータに関する尤度に基づく線形混合効果反復測定モデル(MMRM)を使用して見積もる。ゲートキーピング手順を使用して、2つの主要な比較:AVP−786−28/4.9対プラセボとAVP−786−18/4.9対プラセボに対して両側α=0.05で全体の第一種過誤を制御する。副次的有効性評価項目は、以下の有効性尺度に対するベースラインから12週目(85日目)までの変化を含む:CGIC激越、NPI−激越/攻撃性ドメインの世話人の苦悩スコア、NPI−異常な運動行動ドメイン、ZBI、NPI−易刺激性/不安定性ドメイン、PGIC、DEMQOL、CSDD、RUD、全体のNPI、CGIS激越、ADAS−cog、GMHR、およびEQ−5D−5L。
安全性解析:安全性の尺度は処置群ごとにまとめる。
試料サイズの計算:検出力の計算を、AVP−786−28/4.9(高用量)対プラセボに関する主要有効性評価項目に対する2変量正規分布を仮定して実行した。完了した第2相試験の結果に基づき、処置差は−2.1であり、標準偏差は4.7である(効果量−0.45)と仮定される。全体の累積ドロップアウト率は20%である。計画された380人の患者の登録では、両側α=0.05レベルでの第一種過誤率で、AVP−786−28/4.9対プラセボの比較において帰無仮説を棄却する検出力がおよそ93%となる。0.05レベルでの全体の第一種過誤率を制御するために、高用量についての帰無仮説が棄却される場合のみ、低用量AVP−786−18/4.9についての帰無仮説を検査する。
(実施例4)
アルツハイマー型認知症を有する患者における激越の処置に対するAVP−786(重水素化[d6]−臭化水素酸デキストロメトルファン[d6−DM]/硫酸キニジン[Q])の有効性、安全性、および忍容性を評価するための第3相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験
試験の目的は、アルツハイマー型認知症を有する患者における激越の処置に対して、プラセボと比較したAVP−786の有効性、安全性、および忍容性を評価することである。
慢性状態を処置するために開発された薬物は、効果の持続を示す必要がある。12週の処置期間は、一般的に、専門家およびレギュレーターによって、慢性使用に対する化合物の急性および慢性効果ならびに安全性を評価するために妥当な時間枠と考えられる。忍容性を保証するために、試験処置(AVP−786)に割り当てた患者は、徐々に高用量に曝露される:1週間の低用量(AVP−786−18/4.9)の1日1回投与から始め、続いて低用量の1日2回投与を2週間、次いで高用量(AVP−786−28/4.9)の1日2回投与を残りの9週の試験期間。さらに、低用量への1回の減量が、高用量で忍容性の問題を示した患者に許可される。
試験集団
患者の数:およそ325人の患者が、米国のおよそ50の施設で登録される。
状態/疾患:アルツハイマー型認知症に続発する激越を有する患者。ほぼ確実なアルツハイマー病の診断は、米国国立老化研究所(NIA)−アルツハイマー病協会(AA)のワークグループによって発行された「2011 Diagnostic Guidelines for Alzheimer’s Disease」に基づく(McKhann GMら、Alzheimers Dement.2011年;7巻(3号):263〜269頁)。激越の診断は、国際老年精神医学会(IPA)のAgitation Definition Work Groupによって開発された、認知障害を有する患者における激越についての仮の共通定義に基づく(Cummings Jら、Mintzer J、Brodaty HらAgitation in cognitive disorders:International Psychogeriatric Association provisional consensus clinical and research definition. Int Psychogeriatr.2014年:1〜11頁)。
選択基準:スクリーニングの時点で、かつ無作為化前の少なくとも2週間の臨床的に有意な中等度/重度の激越であって、日常業務を妨げ、かつ治験責任医師の意見で処方薬が必要である激越を有する患者。スクリーニングおよびベースライン時における臨床全般重症度尺度(CGIS)の激越スコア≧4(中等度)が試験の参加に必要である。適格な患者は、試験の途中で、いかなる禁止医薬も投与しないことを含み、試験の手順に従うことができ、かつ進んで従う信頼できる世話人を有さなければならない。
除外基準:主として非アルツハイマー型の認知症(例えば、血管性認知症、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、物質誘発性認知症)を有する患者およびアルツハイマー病に続発しない(例えば、疼痛、他の精神障害、またはせん妄に続発する)激越を有する患者は適格ではない。
試験デザイン
構造:これは、第3相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験である。
期間:患者は、およそ16週間の試験に登録し、4週間のスクリーニング期間と12週間の処置期間を有する。
試験処置:治験製品はAVP−786(重水素化[d6]−臭化水素酸デキストロメトルファン[d6−DM]/硫酸キニジン[Q])である。用量設定による評価を2通りの用量のAVP−786について行う:d6−DM 28mg/Q 4.9mgおよびd6−DM 18mg/Q 4.9mgであり、以下、それぞれAVP−786−28/4.9およびAVP−786−18/4.9と称する。
AVP−786の組成:2用量のIPおよびプラセボの定性的および定量的組成を以下の表9に列挙する。
対照:試験薬と同一の外観のプラセボカプセル剤を対照として使用する。
無作為化/層別化:適格な患者は、AVP−786またはマッチングするプラセボカプセル剤のいずれかを受けるための試験に無作為化される。無作為化は、神経精神症状評価(NPI)激越/攻撃性ドメインのスコア(≦6対>6)、転倒のリスク評価(正常/軽度対中等度/重度)、および抗精神病薬の併用(はい対いいえ)によって層別化される。
用法:適格な患者は、ベースラインの来院時に、AVP−786またはマッチングするプラセボカプセル剤を受けるように無作為に割り振る。試験薬を、試験全体を通して、1日に2回(BID、午前中に1カプセル剤および夕方に1カプセル剤をおよそ12時間離して)経口投与する。AVP−786を受けるよう無作為化された患者は、試験の最初の7日間は、午前中にAVP−786−18/4.9を1日に1回および夕方にプラセボから開始する。8日目から、患者は、14日間、AVP−786−18/4.9BIDを受ける。22日目から、患者は、試験の残りの9週間、AVP−786−28/4.9BIDを受ける。治験責任医師によって必要と思われた場合、AVP−786−18/4.9への1回の用量の下方調整が、来院3の後から来院5まで(来院5を含む)(すなわち、23日目から64日目まで)許可され、患者は、残りの試験期間、低用量の試験薬のままである。用量調整を必要とする患者は、安全性評価を実行するために予定外に来院する必要がある。患者は、試験中のある時点でAVP−786を受ける少なくとも50%の機会を有する。
評価および来院
患者は、スクリーニング時、ベースライン時(1日目)、ならびに8日目(1週目)、22日目(3週目)、43日目(6週目)、64日目(9週目)、および85日目(12週目)に来診する。安全性を追跡するための電話の呼び出しを29日目(4週目)および71日目(10週目)に行う。試験の手順を、各来院時に、評価および来院のスケジュールに概説したように実行する(表10)。
反応の尺度
有効性の主要尺度:主要有効性を神経精神症状評価(NPI)の激越/攻撃性ドメインを使用して評価する。
有効性の副次的尺度:副次的有効性尺度は、変化の臨床全般印象(CGIC)激越、NPI−激越/攻撃性ドメインの世話人の苦悩スコア、NPI−異常な運動行動ドメイン、ザリット介護負担尺度(ZBI)、NPI−易刺激性/不安定性ドメイン、変化に対する患者の全般的印象(PGIC、世話人によって判定される)、認知症の生活の質(DEMQOL)、コーネル認知症抑うつ尺度(CSDD)、Resource Utilization in Dementia(RUD)、全体のNPI、CGIS激越、アルツハイマー病評価スケール−認知サブスケール(ADAS−cog)、全般的健康尺度(GMHR)、およびEuroQol 5−Dimension 5−Level(EQ−5D−5L)を含む。
薬物動態:d6−DMの血漿濃度、その代謝産物、およびQを測定する。
安全性および忍容性:AVP−786の安全性および忍容性を、報告された有害事象(AE)、身体検査および神経学的検査、バイタルサイン、臨床検査評価、安静時12誘導心電図(ECG)、シーハン自殺念慮追跡スケール(S−STS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、およびTimed Up and Go(TUG)検査によって評価する。妊娠検査は、出産の可能性がある女性に対して行う。
一般的な統計方法と解析のタイプ
分析集団:3つの分析集団を使用する;修正処置企図(mITT)、処置企図(ITT)、および安全性。mITT集団は、少なくとも1回、ベースライン後の有効性評価を有した、試験で無作為化された全ての患者を含み、有効性の全ての解析に使用する。mITT集団の患者は、受けた処置にかかわらず無作為化された処置群に含まれる。ITT集団は、試験で無作為化された全ての患者を含み、試験的有効性解析に使用する。安全性集団は、試験処置を受けた全ての患者を含み、安全性の全ての解析に使用する。患者は、実際に受けた処置に基づいて、処置群に含まれる。
有効性解析:主要有効性評価項目は、NPI激越/攻撃性ドメインのスコアのベースラインから12週目(85日目)までの変化である。処置比較は、線形混合効果反復測定モデル(MMRM)を使用して実行する。このモデルは、処置、来院、来院までの処置の相互作用、来院までのベースラインの相互作用、およびベースライン値と他の無作為層別化因子を含むベースライン共変数に対する固定効果を含む。非構造化共分散モデルを使用する。副次的有効性評価項目は、以下の有効性尺度に対するベースラインから12週目(85日目)までの変化を含む:CGIC激越、NPI−激越/攻撃性ドメインの世話人の苦悩スコア、NPI−異常な運動行動ドメイン、ZBI、NPI−易刺激性/不安定性ドメイン、PGIC、DEMQOL、CSDD、RUD、全体のNPI、CGIS激越、ADAS−cog、GMHR、およびEQ−5D−5L。
安全性解析:安全性解析は、生物学的パラメータおよびAEに対するデータの要約からなる。安全性解析は、処置ごとに作表する。
試料サイズの計算:検出力の計算を、主要有効性評価項目に対する2変量正規分布を仮定して実行した。完了した第2相試験における主要有効性尺度に対して観察された処置効果サイズは、ステージ1で−0.51、ステージ2で−0.34であった。この単一ステージの12週の試験に対して、処置効果サイズ(AVP−786対プラセボ)は、−0.40であると仮定される。325人の患者の計画された合計試料サイズ(約163人/群)は、試験の間の20%のドロップアウト率を考慮して、両側α=0.05での第一種過誤率で、90%の検出力を有する。
(実施例5)
アルツハイマー型認知症を有する患者における激越の処置に対するAVP−786(重水素化[d6]臭化水素酸デキストロメトルファン[d6−DM]/硫酸キニジン[Q])の安全性および有効性についての第3相、多施設、長期、延長試験。
試験の目的は、アルツハイマー型認知症を有する患者における激越の処置に対して、AVP−786の長期安全性および有効性の維持を評価することである。
試験集団
患者の数:およそ550人の患者が、米国のおよそ110の施設で登録される。
状態/疾患:アルツハイマー型認知症に続発する激越を有する患者。ほぼ確実なアルツハイマー病の診断は、米国国立老化研究所(NIA)−アルツハイマー病協会(AA)のワークグループによって発行された「2011 Diagnostic Guidelines for Alzheimer’s Disease」に基づく(McKhann GMら、Alzheimers Dement.2011年;7巻(3号):263〜269頁)。激越の診断は、国際老年精神医学会(IPA)のAgitation Definition Work Groupによって開発された、認知障害を有する患者における激越についての仮の共通定義に基づく(Cummings Jら、Mintzer J、Brodaty HらAgitation in cognitive disorders:International Psychogeriatric Association provisional consensus clinical and research definition. Int Psychogeriatr.2014年:1〜11頁)。
選択基準:患者が、試験15−AVP−786−301、15−AVP−786−302、または12−AVR−131を完了することに成功したこと。適格な患者は、試験の途中で、いかなる禁止医薬も投与しないことを含み、全ての要求される試験の手順に従うことができ、かつ進んで従う信頼できる世話人を有さなければならない。
除外基準:患者が、試験15−AVP−786−301および15−AVP−786−302を退いて以来、または試験12−AVR−131からの患者に対するベースライン前30日以内に、他の介入(薬物またはデバイス)臨床試験に現在参加しているか、またはこれらに参加したこと。試験の安全性の結果の解釈を混乱させ得る、共存する、臨床的に有意な、または不安定な全身疾患を有する患者。
試験デザイン
構造:これは、第2相試験12−AVR−131からの患者が含まれることも可能である、第3相試験15−AVP−786−301および15−AVP−786−302の第3相、多施設、長期、延長試験である。試験15−AVP−786−301および15−AVP−786−302からの患者は、先行する試験の最後の来院(来院6、85日目)から3日以内に現在の試験に登録する。登録した全ての患者はAVP−786を受けるが、割り振った処置用量は、患者、治験責任医師、試験スタッフ、および治験依頼者に隠される。
期間:患者は、およそ52週間の試験に登録する。
試験処置:治験製品はAVP−786(重水素化[d6]−臭化水素酸デキストロメトルファン[d6−DM]/硫酸キニジン[Q])である。用量設定による評価を2通りの用量のAVP−786ついて行う:d6−DM 28mg/Q 4.9mgおよびd6−DM 18mg/Q 4.9mgであり、以下、それぞれAVP−786−28/4.9およびAVP−786−18/4.9と称する。
AVP−786の組成:2用量のIPの定性的および定量的組成を以下の表11に列挙する。
対照:なし
処置の割振り:適格な患者は、先行する試験(15−AVP−786−301および15−AVP−786−302)で受けた最後の処置ならびに用量調整についての治験責任医師の評価によって、覆面法でAVP−786−28/4.9またはAVP−786−18/4.9のカプセル剤を受けるように割り振る。ウェブ自動応答システム(IWRS)を介して、試験薬を割り当てる。
先行する試験でプラセボを受けた患者および試験12−AVR−131からの患者は、現在の試験で、AVP−786−18/4.9に割り振る。以前にAVP−786−18/4.9を受けた患者は、用量調整が必要でない場合は同じ用量に、治験責任医師が用量を増加させることが必要であると考える場合はAVP−786−28/4.9に割り振る。以前にAVP−786−28/4.9を受けた患者は、AVP−786−28/4.9を受け続けるか、治験責任医師の裁量で低用量のAVP−786−18/4.9に割り振る。
用法:試験薬は、試験全体を通して、1日に2回(BID、午前中に1カプセル剤および夕方に1カプセル剤をおよそ12時間離して)経口投与する。先行する試験でプラセボを受けた患者および試験12−AVR−131からの患者に対して、1から7日目の間の夕方用量はAVP−786のプラセボカプセル剤であり、22日目(3週目)から先は、用量調整が必要でなければ、AVP−786−28/4.9BIDを受ける。治験責任医師の裁量で、試験薬の用量は、安全性の理由で、試験中いつでも減量することができる。
評価および来院
試験には、8回の予定された来院がある。患者は、ベースライン時(1日目)、ならびに15日目(2週目)、43日目(6週目)、85日目(12週目)、169日目(24週目)、253日目(36週目)、337日目(48週目)、および365日目(52週目)に来診する。安全性を追跡するための電話の呼び出しを29日目(4週目)、127日目(18週目)、211日目(30週目)、および295日目(42週目)に行う。用量調整を必要とする患者は、治験責任医師の裁量で、安全性評価のために予定されていない来院を有してもよい。試験の手順を、各来院時に、評価および来院のスケジュールに概説したように実行する(表12)。
安全性および忍容性:AVP−786の安全性および忍容性を、報告された有害事象(AE)、身体検査および神経学的検査、バイタルサイン、臨床検査評価、安静時12誘導心電図(ECG)、シーハン自殺念慮追跡スケール(S−STS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、アルツハイマー病評価スケール−認知サブスケール(ADAS−cog)、およびTimed Up and Go(TUG)検査によって評価する。妊娠検査は、出産の可能性がある女性に対して行う。
有効性:有効性を、神経精神症状評価(NPI)、変化の臨床全般印象(CGIC)−激越、臨床全般重症度尺度(CGIS)−激越、ザリット介護負担尺度(ZBI)、変化に対する患者の全般的印象(PGIC、世話人によって判定される)、認知症の生活の質(DEMQOL)、コーネル認知症抑うつ尺度(CSDD)、Resource Utilization in Dementia(RUD)、全般的健康尺度(GMHR)、EuroQol 5−Dimension 5−Level(EQ−5D−5L)、および手段的日常生活動作(IADL)を使用して評価する。
一般的な統計方法と解析のタイプ
分析集団:試験処置を受けた全ての患者を含む安全性集団を、全ての有効性および安全性データの要約のために使用する。3つの処置群を、安全性および有効性両方のために提示する:AVP−786−28/4.9、AVP−786−18/4.9、および組み合わせた全ての患者。処置比較は実行しない。
安全性解析:報告されたAE、バイタルサイン、臨床検査評価、安静時12誘導ECG、S−STS、MMSE、ADAS−cog、およびTUGを含む安全性および忍容性の尺度を、記述統計学および/または度数分布表を使用してまとめる。
有効性解析:来院ごとの観察された有効性データに対し、簡易統計を提供する。観察された実体値とベースラインからの変化を、適宜表す。
試料サイズの計算:登録した550人の患者の試料サイズは、規制要件を満たすのに十分な試験薬曝露をもたらす。
(実施例6)
健康な対象におけるAVP−786(重水素化[d6]臭化水素酸デキストロメトルファン[DM]/硫酸キニジン[Q])とパロキセチンの間、およびAVP−786とデュロキセチンの間の、第1相、単一施設、オープンラベル、逐次薬物相互作用試験。
この試験の主要目的は、健康な対象におけるパロキセチンの定常状態の薬物動態についてAVP−786(d6−DM/Q)の効果を決定すること、健康な対象におけるデュロキセチンの定常状態の薬物動態についてAVP−786の効果を決定すること、および健康な対象におけるAVP−786の定常状態の薬物動態についてパロキセチンとデュロキセチンの効果を決定することであった。この試験の副次的な目的は、健康な対象におけるAVP−786のパロキセチンおよびデュロキセチンとの同時投与についての安全性および忍容性を評価することであった。パロキセチンおよびデュロキセチンは、アルツハイマー病を有する対象に、おそらく投与することができる抗うつ剤である。
d6−DMのPK、安全性、および忍容性を調査するための2つの試験が完了した。12−AVR−132は、健康な対象において、単独およびQと組み合わせて、種々の経口用量を投与した後の血漿中のAVP786の単一および複数回用量のPKを評価するための、第1相無作為化、二重盲検、単一および複数回用量試験であった。13−AVR−134は、健康なボランティアにおいて、AVP−786の薬物動態、安全性および忍容性を評価するための、第1相、単一施設、無作為化、オープンラベル試験であった。
方法論
この試験は、単一施設で行い、パロキセチンおよびデュロキセチンのPKに対するAVP−786の効果、ならびにAVP−786のPKに対するパロキセチンおよびデュロキセチンの効果を決定するために、オープンラベル逐次デザインからなった。56人の対象を4つの処置群の1つに登録した:
群1:n=14
・ パロキセチン20mg、1日1回で1〜20日目
・ 20日目の午前まで、AVP−786−30/4.75(d6−DM 30mg/Q 4.75mg)、BID 13日目
群2:n=14
・ 20日目の午前まで、AVP−786−30/4.75(d6−DM 30mg/Q 4.75mg)、BID 1日目
・ パロキセチン20mg、1日1回で9〜20日目
群3:n=14
・ 13日目の午前まで、デュロキセチン20mg、BID 1日目
・ 13日目の午前まで、AVP−786−30/4.75(d6−DM 30mg/Q 4.75mg)、BID 6日目
群4:n=14
・ 13日目の午前まで、AVP−786−30/4.75(d6−DM 30mg/Q 4.75mg)、BID 1日目
・ 13日目の午前まで、デュロキセチン20mg、BID 9日目
対象は、登録(1日目)の14日前以内にスクリーニングのために来診した。適格ならば、対象は、1日目に4群のうちの1つに登録した(1日目は、これらの日付のユニットにおけるベッドの利用可能性を保証するために、異なる群に対する異なる日である)。対象は、PKサンプリング(この日は、処置群間で異なった)の2日目(午前)まで、外来患者の投与のために、毎日診療所に戻った。2日目(午前)のPKサンプリングの後、対象を、次の日の(完全な)PKサンプリングの前の夜に診療所に収容した。対象は、PKサンプリングの最終日まで(時間の長さは、試験薬が定常状態に到達するまでの時間量に基づき、処置群間で異なった)、入院患者のユニットに滞在した。
試料は、試験薬の最終投与後36時間までに、PK評価のために収集した。全ての試料を、適宜、d6−DM、d3−デキストロメトルファン(d3−DX)、Q、パロキセチン、およびデュロキセチンについてアッセイした。
安全性は、試験全体を通して全ての対象において評価され、有害事象(AE)の報告、心電図(ECG)、実験室評価、身体検査、およびバイタルサインを含んだ。コロンビア自殺重症度評価尺度(C−SSRS)を使用して、試験全体を通して、自殺念慮および自殺行為を将来的に評価した。
対象は、試験薬の最終投与後7〜10日で安全性を追跡するために再来診した。
計画された(および解析された)対象の数
群1:計画されたn=14;登録されたn=14(安全性集団);解析されたn=11(PK集団)。群2:計画されたn=14;登録されたn=14(安全性集団);解析されたn=14(PK集団)。群3:計画されたn=14;登録されたn=14(安全性集団);解析されたn=14(PK集団)。群4:計画されたn=14;登録されたn=14(安全性集団);解析されたn=11(PK集団)。
診断および選択のための基準
健康な成人の男性および女性の対象であって、年齢は18〜50歳で、肥満度指数(BMI)18〜300kg/m2を含み、広い代謝型プロファイルを与えるCYP2D6遺伝子型を示す対象。
試験処置
試験製品:AVP−786−30/4.75(d6−DM 30mg/Q 4.75mg)のカプセル剤。パロキセチン20mgの錠剤。デュロキセチン20mgのカプセル剤。対象は、上記方法論に与えられた試験計画に従って試験薬を受けた。
各用量(1つのカプセル剤/錠剤からなる)を室温の水240mLで経口投与した。午前投与は終夜(すなわち、少なくとも8時間)絶食(水は含まない)した後であり、夕方投与は少なくとも2時間絶食した後であった。全ての投与は、投与後少なくとも2時間の絶食(水は含まない)の後であった。
評価に対する基準
安全性:安全性は、試験全体を通して全ての対象において評価され、有害事象(AE)の報告、心電図(ECG)、実験室評価、身体検査、およびバイタルサインを含んだ。コロンビア自殺重症度評価尺度(C−SSRS)を使用して、FDAのガイドライン、「Suicidal Ideation and Behavior: Prospective Assessment of Occurrence in Clinical Trials」に従う安全性評価の一部として、試験全体を通して、自殺念慮および自殺行為を将来的に評価した。
薬物動態:血漿d6−DM、d3−DX、Q、パロキセチン、およびデュロキセチンの決定のために、血液試料(単一投与に対して6mLおよび組合せ投与に対して12mL)を以下の時点で収集した:
投与前ならびに単一薬品投与の最終日の午前投与の0.5、1、2、3、4、6、8、および12時間後。群1に対してのみ、パロキセチンを1日に1回投与したので、追加の試料は、単一投与の最終日の24時間後に採取した(最初の組合せ投与の前)。
投与前ならびに組合せ投与の最終日の午前投与の0.5、1、2、3、4、6、8、12、24、および36時間後。
4日目の午前投与の前(群2および4に対してのみ)、ならびに単一薬品投与の最終日および組合せ投与の最終日の2日前のそれぞれ。
非コンパートメント法を使用して、AUC0〜12、AUC0〜24、Cmax、Tmax、kel、t1/2、Cmin、およびTminを含む、薬物動態パラメータを決定した。
統計法
安全性:有害事象の発生率、バイタルサイン、ECGパラメータ、および臨床検査結果を含む安全性変数を、処置ごとにまとめた。C−SSRSの質問事項に対する反応を、各対象について列挙した。個々の対象のプロファイルを、異常な反応を有する任意の質問に対して表した。
薬物動態:d6−DM、d3−DX、Q、およびパロキセチンまたはデュロキセチンの血漿濃度に対して(適用できる場合)、記述的統計を処置ごとに各時点で作表した。平均血漿濃度−時間プロファイルを、線形の片対数スケールで、処置ごとにプロットした。さらに、非コンパートメントPKパラメータを導いた。組合せ処置間の比較(群1対群2、AVP−786およびパロキセチン;群3対群4、AVP−786およびデュロキセチン)を、90%信頼区間を用いるCmaxおよびAUC0〜12(パロキセチンについてはAUC0〜24)の幾何平均比として表した。点推定と信頼限界を、対数変換後のデータを使用して決定し、次いで元のスケールに変換しなおした。解析は、対象と処置のタームを用いる分散分析を使用して実行した。
結果
薬物動態:
パロキセチンとAVP−786の相互作用:種々の分析物について、処置群ごとの経時的な平均複数回用量の血漿濃度を図7および8に示す。処置ごとの平均(CV%)および分析物(#Tmaxに対する中央値(範囲))(表13):
対数変換ANOVAによる組合せ投与対単一処置投与の比較(表14):
デュロキセチンとAVP−786の相互作用:種々の分析物について、処置群ごとの経時的な平均複数回用量の血漿濃度を図9および10に示す。処置ごとの平均(CV%)および分析物(#Tmaxに対する中央値(範囲))(表15):
対数変換ANOVAによる組合せ投与対単一処置投与の比較(表16):
安全性:
死亡はなかった。2つの同時に起こる重大な有害事象(SAE)を経験した対象が1人存在した(対象R112、パロキセチン/AVP−786):パロキセチン20mgQD(1〜16日目)およびAVP−786−30/4.75BID(13〜16日目)を受けた後の低カリウム血症および低クロール血症。両者は、重症度において中等度と考えられた。対象は、15日目に起立性低血圧を伴うめまい、および16日目にピリピリ感を有する両足の筋力低下を呈した。臨床症状を評価する助けとなる17日目に得た血液検査とECGにより、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、およびQTcの延長が明らかになった。症状は、水分と電解質の補給で十分に回復した。これらのSAEの詳細についての出願人のメディカルレビューと、心臓専門医による第三者評価に基づき、病像は、パロキセチンまたはAVP−786のいずれについての公知の薬効と一致しなかった。
自殺念慮(対象R107、8用量のパロキセチン後)、低カリウム血症および低クロール血症(対象R112、上記を参照のこと)、尿路感染(対象R411、12用量のAVP−786後)、および嘔吐(対象R412、9用量のAVP−786後)というAEにより4人が退いた。
パロキセチンとAVP−786の相互作用:
群1および2において、処置下で発現したAEが、パロキセチン後に14人の対象のうち7人(50%)について(12日間の投与中)、AVP−786後に14人の対象のうち9人(64%)について(8日間の投与中)、パロキセチン/AVP−786の組合せ後に12人の対象のうち10人(83%)について(8日間の投与中)、およびAVP−786/パロキセチンの組合せ後に14人の対象のうち13人(93%)について(12日間の投与中)報告された。
ほとんどのAE(115のAEのうち104、90%)が(おそらくまたはほぼ確実に)試験処置に関連すると考えられた。最も一般的に関連する有害事象は、めまいおよび体位性めまい、頭痛、下痢、吐き気、悪夢、および注意力障害であった。悪夢および注意力障害という有害事象は、パロキセチンとAVP−786の組合せを受けた対象においてのみ報告された。めまいは、対象が組合せ療法を受けた場合に、パロキセチンまたはAVP−786の単一処置と比較して、高い発生率で報告された。頭痛と吐き気は、パロキセチン後、またはパロキセチンとAVP−786の組合せ後の対象においてのみ報告され、AVP−786単独後では報告されなかったことに留意されたい。
ほとんどのAEは、重症度において軽度に分類され、重度に分類されたAEはなかった。試験処置に関連すると考えられる中等度の重症度の有害事象は、自殺念慮、低カリウム血症および低クロール血症、およびうつ病であった。
デュロキセチンとAVP−786の相互作用:
群3および4において、処置下で発現したAEが、デュロキセチン後に14人の対象のうち6人(43%)について(5日間の投与中)、AVP−786後に14人の対象のうち7人(50%)について(8日間の投与中)、デュロキセチン/AVP−786の組合せ後に14人の対象のうち7人(50%)について(8日間の投与中)、およびAVP−786/デュロキセチンの組合せ後に11人の対象のうち5人(45%)について(5日間の投与中)報告された。
ほとんどのAE(50のAEのうち40、80%)が(おそらくまたはほぼ確実に)試験処置に関連すると考えられた。最も一般的な関連する有害事象は、疲労および筋緊張であった。デュロキセチンまたはAVP−786の単一処置と比較して、AVP−786とデュロキセチンの組合せ後の対象において高い発生率を有する一般的なAEは存在しなかった。疲労は、群4のAVP−786単独後の対象においてのみ報告され、群2の対象ではAVP−786後に報告されなかったことに留意されたい。
ほとんどのAEは、重症度において軽度に分類され、1つのAEが重度に分類された。重度のAEは嘔吐(1人の対象、AVP−786)であり、試験処置におそらく関連すると考えられた。試験処置に関連すると考えられる中等度の重症度の有害事象は、嘔吐、冷や汗、頭痛、めまい、および下腹部痛であった。
各群に対する重症度ごとのAEをまとめたところ、処置間で差は認められなかった。処置間の臨床検査、バイタルサイン、およびECG評価によって評価された安全性に明確な差はなかった。
結論
AVP−786とパロキセチンまたはデュロキセチンとの複数回用量の組合せに対する安全性評価において、複数回用量の単一処置と比較して、臨床的に有意な差はなかった。
パロキセチンの定常状態の全身曝露は、パロキセチン単独と比較して、AVP−786と組み合わせた場合に有意に増加した(およそ150%まで)。AVP−786単独と比較して、パロキセチンと同時投与した場合、AVP−786の分析物の定常状態の全身曝露において有意な変化があり、d6−DMの全身曝露はおよそ2倍増加し、d3−DXでは実質的に減少し(およそ75%まで)、AVP−786をパロキセチンと組み合わせて投与すると、d6−DMのd3−DXへの代謝速度が低下することが示された。Qの全身曝露においては中等度の増加(およそ130%まで)があった。
デュロキセチンの定常状態の全身曝露は、デュロキセチン単独と比較して、AVP−786と同時投与した場合に有意に増加した(およそ180%まで)。AVP−786単独と比較して、デュロキセチンと同時投与した場合、AVP−786の分析物の定常状態の全身曝露において有意な変化はなかった。