JP2017518426A - 潤滑組成物 - Google Patents

Abstract

（ｉ）基油；（ｉｉ）１００〜１０００ｐｐｍｗのモリブデンを与えるのに十分なレベルの１種類以上の有機モリブデン化合物；及び（ｉｉｉ）潤滑組成物の重量基準で０．２重量％〜５．０重量％の１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤；を含み；１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤は、１０００〜３００００ダルトンの範囲の分子量を有し、（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；（ｃ）場合によっては、ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び（ｄ）場合によっては、連鎖停止基；の反応生成物である、エンジンのクランクケースにおいて用いるための潤滑組成物。本潤滑組成物は、改良された燃料経済性能に加えて、低減された摩擦及び摩耗の点での向上を与える。【選択図】図１

Description

本発明は、潤滑油組成物、特に内燃エンジンを潤滑するのに好適であり、向上した摩擦及び摩耗低減並びに向上した燃料経済性を有する潤滑油組成物に関する。

排気及び燃料効率に関する益々厳しくなっている自動車規制により、エンジンの製造者及び潤滑剤の配合者の両方に対して燃料経済性を向上させるための有効な解決策を与えるという要求が益々増大して突きつけられている。

高性能のベースストック及び新規な添加剤を用いることによって潤滑剤を最適化することは、高まる課題に対する柔軟な解決策を示している。
摩擦低減添加剤（摩擦調整剤としても知られている）は燃料の消費を減少させるのに重要な潤滑剤成分であり、種々のかかる添加剤が当該技術において既に知られている。

摩擦調整剤は、便宜上２つのカテゴリー、即ち金属含有摩擦調整剤及び無灰（有機）摩擦調整剤に分けることができる。
有機モリブデン化合物は、中でも最も通常的な金属含有摩擦調整剤である。代表的な有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）、モリブデンジチオホスフェート（ＭｏＤＴＰ）、モリブデンアミン、モリブデンアルコラート、及びモリブデンアルコールアミドが挙げられる。ＷＯ−Ａ−９８／２６０３０、ＷＯ−Ａ−９９／３１１１３、ＷＯ−Ａ−９９／４７６２９、及びＷＯ−Ａ−９９／６６０１３においては、潤滑油組成物中において用いるための三核モリブデン化合物が記載されている。

しかしながら、低灰分の潤滑油組成物が好まれる傾向によって、無灰の摩擦調整剤を用いて低い摩擦及び向上した燃料経済性を達成する動機付けが増加している。
過去において用いられている無灰（有機）摩擦調整剤は、通常は、脂肪酸と多価アルコールのエステル、脂肪酸アミド、脂肪酸と有機ジチオカルバメート又はジチオホスフェート化合物から誘導されるアミンを含む。

しかしながら、燃料経済的なオイルについての摩擦低減に関する現在の方策は、相手先商標製品製造会社（ＯＥＭ）によって設定されている更に増加している燃料経済性の目標を満足するのには十分ではない。無灰の摩擦調整剤のみを用いて同等のレベルの摩擦調整に近づける挑戦が行われているが、モリブデン摩擦調整剤は、通常は境界形態における無灰の摩擦調整剤よりも性能が優れている。

有機モリブデン化合物は高いレベルの摩擦調整を与えるためには有用であるが、これらの化合物にはまた公知の制限が存在する。例えば、モリブデンベースの摩擦調整剤は、シール及びＴＥＯＳＴ清浄性試験に悪影響を与える可能性がある。

エンジンに対して課されている増加する燃料経済性の要求を考慮すると、より低いレベルのモリブデンベースの摩擦調整剤を用いて内燃エンジンの摩擦低減及び燃料経済性を更に向上させる必要性が未だ存在する。

ＷＯ−２０１１／１０７７３９においては、ベースストック及び有機ポリマー摩擦低減添加剤を含む自動車エンジンオイル及び／又は燃料が開示されている。
ここで驚くべきことに、有機モリブデン化合物及び有機ポリマー摩擦低減添加剤の組合せを含む潤滑油組成物によって、有機モリブデン化合物の減少したレベルを達成しながら向上した摩擦及び摩耗低減並びに向上した燃料経済性が与えられることが本発明者らによって見出された。

ＷＯ−Ａ−９８／２６０３０ ＷＯ−Ａ−９９／３１１１３ ＷＯ−Ａ−９９／４７６２９ ＷＯ−Ａ−９９／６６０１３ ＷＯ−２０１１／１０７７３９

したがって、本発明は、（ｉ）基油；（ｉｉ）１００〜１０００ｐｐｍｗのモリブデンを与えるのに十分なレベルの１種類以上の有機モリブデン化合物；及び（ｉｉｉ）潤滑組成物の重量基準で０．２重量％〜５重量％の１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤；を含み；１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤は、１０００〜３００００ダルトンの範囲の分子量を有し、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
（ｃ）場合によっては、ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
（ｄ）場合によっては、連鎖停止基；
の反応生成物である、エンジンのクランクケースにおいて用いるための潤滑組成物を提供する。

図１は、表２に示す組成物に関する、速度の関数としての境界及び混合形態における摩擦係数の測定値のプロットを示す。 図２は、表４に示す組成物に関する、速度の関数としての境界及び混合形態における摩擦係数の測定値のプロットを示す。

本発明の潤滑組成物の１つの必須成分は、１００〜１０００ｐｐｍｗのモリブデンを与えるのに十分なレベル、好ましくは１００〜３００ｐｐｍｗのモリブデンを与えるのに十分なレベルの１種類以上の有機モリブデン化合物である。

本発明において用いるための有機モリブデン化合物は、好ましくは、モリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）、モリブデンジチオホスフェート（ＭｏＤＴＰ）、モリブデンアミン、モリブデンアルコラート、モリブデンアルコールアミド、及びこれらの混合物から選択される。本発明において用いるために好ましい有機モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）である。本発明における好ましい態様においては、有機モリブデン化合物は三核モリブデン（ここでは「モリ三量体」と呼ぶ）を含む。

本発明の潤滑組成物の他の必須成分は、１０００〜３００００ダルトンの範囲の分子量を有し、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
（ｃ）場合によっては、ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
（ｄ）場合によっては、連鎖停止基；
の反応生成物である１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤である。

疎水性ポリマー亜単位は、好ましくは、ポリオレフィン又はポリα−オレフィン、より好ましくはポリオレフィンである疎水性ポリマーを含む。
ポリオレフィンは、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン、及びイソブテン、より好ましくはイソブテンのような２〜６個の炭素原子を有するモノオレフィンのポリマーから誘導され、かかるポリマーは１５〜５００、好ましくは５０〜２００炭素原子の鎖を含む。

親水性ポリマー亜単位は、ポリエーテル、ポリアミド、又はポリエステルから選択される親水性ポリマーを含む。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリラクチド、及びポリカプロラクトンが挙げられる。ポリエーテルの例としては、ポリグリセロール及びポリアルキレングリコールが挙げられる。特に好ましい態様においては、親水性ポリマー亜単位は、水溶性のアルキレングリコールのポリマーである親水性ポリマーを含む。好ましい親水性ポリマー亜単位は、ポリエチレングリコール（ＰＥＧ）、好ましくは３００〜５０００ダルトン、より好ましくは４００〜１０００ダルトン、特に４００〜８００ダルトンの分子量を有するＰＥＧである親水性ポリマーを含む。或いは、これらが所望の水溶性の基準を達成するならば、混合ポリ（エチレン−プロピレングリコール）又は混合（ポリ（エチレン−ブチレングリコール）を用いることができる。本発明において用いるための代表的な親水性ポリマー亜単位としては、ＰＥＧ４００、ＰＥＧ６００、及びＰＥＧ１０００が挙げられる。

他の好適な親水性ポリマー亜単位には、酸性基、例えばカルボン酸基、スルホニル基（例えばスルホニルスチレン基）、アミン基（例えばテトラエチレンペンタミン（ＴＥＰＡ）、又はポリエチレンイミン（ＰＥＩ））、或いはヒドロキシル基（例えば糖ベースのモノ又はコポリマー）を含む、ジオールおよびジアミンから誘導されるポリエーテル及びポリアミドである親水性ポリマーを含めることができる。

親水性ポリマー亜単位は線状又は分岐のいずれであってもよい。
反応の経過中において、疎水性及び親水性ポリマー亜単位の一部を結合させてブロックコポリマー単位を形成することができる。疎水性及び親水性ポリマー亜単位のいずれか又は両方に、それらを他の亜単位と結合させることを可能にする官能基を含ませることができる。例えば、疎水性ポリマー亜単位は、不飽和二酸又は無水物、例えば無水マレイン酸との反応によって二酸／無水物基を有するように誘導体化することができる。二酸／無水物は、エステル化によってヒドロキシル末端親水性ポリマー亜単位、例えばポリアルキレングリコールと反応させることができる。更なる例においては、疎水性ポリマー亜単位は、過酸、例えば過安息香酸又は過酢酸とのエポキシ化反応によって誘導体化することができる。エポキシドは、次にヒドロキシル及び／又は酸末端親水性ポリマー亜単位と反応させることができる。更なる例においては、ヒドロキシル基を有する親水性ポリマー亜単位を、不飽和モノカルボン酸、例えばビニル酸、具体的にはアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化によって誘導体化することができる。この誘導体化した親水性ポリマー亜単位は、次に遊離基共重合によってポリオレフィン疎水性ポリマー亜単位と反応させることができる。

特に好ましい疎水性ポリマー亜単位は、マレイン化にかけて、３００〜５０００ダルトン、好ましくは５００〜１５００ダルトン、特に８００〜１２００ダルトンの範囲の分子量を有するポリイソブチレン無水コハク酸（ＰＩＢＳＡ）を形成したポリイソブチレンポリマーを含む。ポリイソブチレン無水コハク酸は、末端不飽和基を有するポリ（イソブテン）と無水マレイン酸の間の付加反応によって製造される商業的に入手できる化合物である。

かかるブロックコポリマー単位は、存在する場合には互いと直接結合させることができ、及び／又はこれらは少なくとも１つの骨格部分によって結合させることができる。好ましくは、これらは少なくとも１つの骨格部分によって結合させる。ブロックコポリマー単位を結合することができる骨格部分の選択は、単位の結合が２つの疎水性ポリマー亜単位の間であるか、２つの親水性ポリマー亜単位の間であるか、或いは疎水性ポリマー亜単位と親水性ポリマー亜単位の間であるかによって決定される。一般に、ポリオールとポリカルボン酸が好適な骨格部分を形成する。ポリオールは、ジオール、トリオール、テトラオール、及び／又は関連する二量体又は三量体、或いはかかる化合物の連鎖延長ポリマーであってよい。好適なポリオールの例としては、グリセロール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、及びソルビトールが挙げられる。好ましい態様においては、ポリオールはグリセロールである。好適には、少なくとも１つの骨格部分は、ポリカルボン酸、例えばジ又はトリカルボン酸から誘導される。ジカルボン酸が好ましいポリカルボン酸であるが、分岐鎖ジカルボン酸も好適である可能性がある。２〜１０炭素原子の間の連鎖長を有する直鎖ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、又はセバシン酸が特に好適である。マレイン酸のような不飽和ジカルボン酸も好適である可能性がある。単位を結合させるのに特に好ましいポリカルボン酸骨格部分はアジピン酸である。別の結合性骨格部分は、Ｃ_１８ＡＳＡのような低分子量のアルケニル無水コハク酸（ＡＳＡ）である。

任意の有機ポリマー摩擦低減添加剤において、異なるか又は同じ骨格部分を用いてかかるブロックコポリマー単位を結合させることができる。存在する場合には、有機ポリマー摩擦低減添加剤中のブロックコポリマー単位の数は、通常は１〜２０単位、好ましくは１〜１５、より好ましくは１〜１０、特に１〜７単位の範囲である。

反応の生成物が（例えばＰＥＧにおけるＯＨのように）反応性基を末端に有する場合には、幾つかの状況においては反応の生成物の末端に連鎖停止基を導入することが望ましいか又は有用である可能性がある。例えば、エステル結合を介してＰＥＧ上の曝露されているヒドロキシル基にカルボン酸を付加することは特に普通のことである。この点に関しては、任意の脂肪カルボン酸が好適である。好適な脂肪酸としては、Ｃ_１２〜Ｃ_２２の線状飽和、分岐飽和、線状不飽和、及び分岐不飽和酸、例えば（これらに限定されないが）ラウリン酸、エルカ酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びリノール酸、好ましくはパルミチン酸、オレイン酸、及びリノール酸が挙げられる。界面活性剤と組み合わせるのに特に好ましい脂肪酸は、主としてオレイン酸であるトール油の誘導体であるトール油脂肪酸（ＴＯＦＡ）である。

本発明において用いる有機ポリマー摩擦低減添加剤は、１０００〜３００００ダルトン、好ましくは１５００〜２５０００、より好ましくは２０００〜２００００ダルトンの分子量を有する。一般に、有機ポリマー摩擦低減添加剤を含む組成物は、一定範囲の分子量が存在するような一定範囲の異なる長さのポリマー鎖を特定の組成で含む。かかる場合においては、有機ポリマー摩擦低減添加剤分子の相当部分が上述の寸法範囲内であることが望ましい。

本発明における有機ポリマー摩擦低減添加剤は、２０未満、好ましくは１５未満の所望の酸価を有する。
本発明の一態様においては、有機ポリマー摩擦低減添加剤は、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；及び
（ｄ）連鎖停止基；
の反応生成物である。

かかる態様に関しては、好ましい分子量範囲は１０００〜３０００ダルトンであり、所望の酸価は１５未満である。
本発明の別の態様においては、有機ポリマー摩擦低減添加剤は、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；及び
（ｃ）ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；
の反応生成物である。

かかる態様に関しては、好ましい分子量範囲は３０００〜２５０００、より好ましくは５０００〜２００００ダルトンである。所望の酸価は、好ましくは１０未満、より好ましくは７未満である。

他の態様においては、有機ポリマー摩擦低減添加剤は、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
（ｃ）ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
（ｄ）連鎖停止基；
の反応生成物である。

かかる態様に関しては、好ましい分子量範囲は２０００〜１００００、より好ましくは２０００〜５０００ダルトンである。所望の酸価は、好ましくは１５未満、より好ましくは１０未満である。

反応の成分の（ａ）、（ｂ）、及び存在する場合には（ｃ）、並びに存在する場合には（ｄ）は、単一工程のプロセスで混合することができ、或いはこれらは多段階プロセスで一緒に混合することができる。

上記に記載の有機ポリマー摩擦低減添加剤は、CrodaからPerfad 3050及びPerfad 3006の商品名で商業的に入手できる。
有機ポリマー摩擦低減添加剤は、潤滑組成物の重量基準で０．２重量％〜５．０重量％のレベル、好ましくは０．３重量％〜３．０重量％、より好ましくは０．２重量％〜１．５重量％のレベルで存在させる。

本発明の潤滑油組成物中に含ませる基油の総量は、好ましくは潤滑油組成物の全重量に対して６０〜９２重量％の範囲の量、より好ましくは７５〜９０重量％の範囲の量、最も好ましくは７５〜８８重量％の範囲の量で存在させる。

本発明において用いる基油に関しては特に制限はなく、種々の通常の公知の鉱油及び合成油を好都合に用いることができる。
本発明において用いる基油には、好都合には、１種類以上の鉱油及び／又は１種類以上の合成油の混合物を含ませることができる。

鉱油としては、パラフィン系、ナフテン系、又はパラフィン／ナフテン系混合タイプの液体石油系オイル及び溶媒処理又は酸処理鉱物系潤滑油が挙げられ、これらは、水素化精製プロセス及び／又は脱ロウによって更に精製することができる。

ナフテン系基油は、低い粘度指数（ＶＩ）（一般に４０〜８０）及び低い流動点を有する。かかる基油は、ナフテン類に富み、ワックス含量が低い供給材料から製造され、主として色及び色の安定性が重要で、ＶＩ及び酸化安定性があまり重要でない潤滑剤のために用いられる。

パラフィン系の基油は、より高いＶＩ（一般に＞９５）及び高い流動点を有する。かかる基油は、パラフィン類に富む供給材料から製造され、ＶＩ及び酸化安定性が重要である潤滑剤のために用いられる。

フィッシャー・トロプシュ誘導基油、例えばＥＰ−Ａ−７７６９５９、ＥＰ−Ａ−６６８３４２、ＷＯ−Ａ−９７／２１７８８、ＷＯ−００／１５７３６、ＷＯ−００／１４１８８、ＷＯ−００／１４１８７、ＷＯ−００／１４１８３、ＷＯ−００／１４１７９、ＷＯ−００／０８１１５、ＷＯ−９９／４１３３２、ＥＰ−１０２９０２９、ＷＯ−０１／１８１５６、及びＷＯ−０１／５７１６６に開示されているフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、本発明の潤滑油組成物中において基油として好都合に用いることができる。

合成プロセスによって、分子をより単純な物質から形成することが可能であり、或いはそれらの構造を変化させて正に求められている特性を与えることが可能である。
合成油としては、オレフィンオリゴマー（ＰＡＯ）、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、及び脱ロウワックス状ラフィネートのような炭化水素油が挙げられる。Royal Dutch/Shell Group of Companiesによって"XHVI"（登録商標）の名称で販売されている合成炭化水素基油を好都合に用いることができる。

好ましくは、基油は、ＡＳＴＭ−Ｄ２００７にしたがって測定して８０重量％より多く、好ましくは９０重量％より多い飽和化合物を含む鉱油及び／又は合成油を含む。
基油は、元素状イオウとして計算して、ＡＳＴＭ−Ｄ２６２２、ＡＳＴＭ−Ｄ４２９４、ＡＳＴＭ−Ｄ４９２７、又はＡＳＴＭ−Ｄ３１２０にしたがって測定して１．０重量％未満、好ましくは０．１重量％未満のイオウを含むことが更に好ましい。

好ましくは、基油の粘度指数は、ＡＳＴＭ−Ｄ２２７０にしたがって測定して８０より高く、より好ましくは１２０より高い。
好ましくは、本潤滑油組成物は、１００℃において２〜８０ｍｍ^２／秒、より好ましくは３〜７０ｍｍ^２／秒、最も好ましくは４〜５０ｍｍ^２／秒の範囲の動粘度を有する。

本発明の潤滑油組成物中におけるリンの総量は、好ましくは、潤滑油組成物の全重量を基準として０．０４〜０．１２重量％の範囲、より好ましくは０．０４〜０．０９重量％の範囲、最も好ましくは０．０４５〜０．０８重量％の範囲である。

本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量を基準として２．０重量％以下、より好ましくは１．０重量％以下、最も好ましくは０．８重量％以下の硫酸灰分含量を有する。

本発明の潤滑油組成物は、好ましくは、潤滑油組成物の全重量を基準として１．２重量％以下、より好ましくは０．８重量％以下、最も好ましくは０．２重量％以下のイオウ含量を有する。

本発明の潤滑油組成物には、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、洗浄剤、分散剤、更なる摩擦調節剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食抑制剤、消泡剤、及びシール固定剤又はシール適合薬剤のような更なる添加剤を更に含ませることができる。

本発明において上記記載の有機モリブデン化合物及び有機ポリマー摩擦低減添加剤と組み合わせて用いるのに特に好ましい更なる添加剤は、AdekaからAdeka FM926の商品名で商業的に入手できるもののようなヒドロキシアルキルアミン摩擦調整剤である。存在させる場合には、ヒドロキシアルキルアミン摩擦調整剤は、潤滑組成物の重量基準で０．２重量％〜３．０重量％のレベル、より好ましくは０．３重量％〜１．０重量％のレベルで存在させる。

好都合に用いることができる酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤及び／又はフェノール系酸化防止剤の群から選択されるものが挙げられる。
好ましい態様においては、かかる酸化防止剤は、潤滑油組成物の全重量を基準として０．１〜５．０重量％の範囲の量、より好ましくは０．３〜３．０重量％の範囲の量、最も好ましくは０．５〜１．５重量％の範囲の量で存在させる。

好都合に用いることができるアミン系酸化防止剤の例としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、及びアルキル化α−ナフチルアミンが挙げられる。

好ましいアミン系酸化防止剤としては、ｐ，ｐ’−ジオクチルジフェニルアミン、ｐ，ｐ’−ジ−α−メチルベンジルジフェニルアミン、及びＮ−ｐ−ブチルフェニル−Ｎ−ｐ’−オクチルフェニルアミンのようなジアルキルジフェニルアミン類、モノ−ｔ−ブチルジフェニルアミン、及びモノオクチルジフェニルアミンのようなモノアルキルジフェニルアミン類、ジ−（２，４−ジエチルフェニル）アミン、及びジ（２−エチル−４−ノニルフェニル）アミンのようなビス（ジアルキルフェニル）アミン類、オクチルフェニル−１−ナフチルアミン、及びｎ−ｔ−ドデシルフェニル−１−ナフチルアミンのようなアルキルフェニル−１−ナフチルアミン類、１−ナフチルアミン、フェニル−１−ナフチルアミン、フェニル−２−ナフチルアミン、Ｎ−ヘキシルフェニル−２−ナフチルアミン、及びＮ−オクチルフェニル−２−ナフチルアミンのようなアリールナフチルアミン類、Ｎ，Ｎ’−ジイソプロピル−ｐ−フェニレンジアミン、及びＮ，Ｎ’−ジフェニル−ｐ−フェニレンジアミンのようなフェニレンジアミン類、並びにフェノチアジン及び３，７−ジオクチルフェノチアジンのようなフェノチアジン類が挙げられる。

好ましいアミン系酸化防止剤としては、次の商品名："Sonoflex OD-3"（Seiko Kagaku Co.製）、"Inganox L-57"（Ciba Specialty Chemicals Co.製）、及びフェノチアジン（Hodogaya Kagaku Co.製）で入手できるものが挙げられる。

好都合に用いることができるフェノール系酸化防止剤の例としては、３，５−ビス（１，１−ジメチルエチル）−４−ヒドロキシベンゼンプロパン酸のＣ_７〜Ｃ_９分岐アルキルエステル、２−ｔ−ブチルフェノール、２−ｔ−ブチル−４−メチルフェノール、２−ｔ−ブチル−５−メチルフェノール、２，４−ジ−ｔ−ブチルフェノール、２，４-ジメチル−６−５−ブチルフェノール、２−ｔ−ブチル−４−メトキシフェノール、３−ｔ−ブチル−４−メトキシフェノール、２，５−ジ−５−ブチルヒドロキノン、２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−アルキルフェノール類、例えば２，６−ジ−ｔ−ブチルフェノール、２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−メチルフェノール、及び２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−エチルフェノール、２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−アルコキシフェノール類、例えば２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−メトキシフェノール、及び２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−エトキシフェノール、３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシベンジルメルカプトオクチルアセテート、アルキル−３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート類、例えばｎ−オクタデシル−３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート、ｎ−ブチル−３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート、及び２’−エチルヘキシル−３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート、２，６−ｄ−ｔ−ブチル−α−ジメチルアミノ−ｐ−クレゾール、２，２’−メチレンビス（４-アルキル−６−ｔ−ブチルフェノール）、例えば２，２’−メチレンビス（４−メチル−６−ｔ−ブチルフェノール、及び２，２−メチレンビス（４−エチル−６−ｔ−ブチルフェノール）、ビスフェノール類、例えば４，４’−ブチリデンビス（３−メチル−６−ｔ−ブチルフェノール、４，４’−メチレンビス（２，６−ジ−ｔ−ブチルフェノール）、４，４’−ビス（２，６−ジ−ｔ−ブチルフェノール）、２，２−（ジ−ｐ−ヒドロキシフェニル）プロパン、２，２-ビス（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロパン、４，４’−シクロヘキシリデンビス（２，６−ｔ−ブチルフェノール）、ヘキサメチレングリコールビス［３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］、トリエチレングリコールビス［３−（３−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシ−５−メチルフェニル）プロピオネート］、２，２’−チオ［ジエチル−３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］、３，９−ビス｛１，１−ジメチル−２−［３−（３−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシ−５−メチルフェニル）プロピオニルオキシ］エチル｝２，４，８，１０−テトラオキサスピロ［５，５］ウンデカン、４，４’−チオビス（３-メチル−６−ｔ−ブチルフェノール）、及び２，２’−チオビス（４，６−ジ−ｔ−ブチルレゾルシノール）、ポリフェノール類、例えばテトラキス［メチレン−３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］メタン、１，１，３−トリス（２-メチル−４−ヒドロキシ−５−ｔ−ブチルフェニル）ブタン、１，３，５−トリメチル−２，４，６−トリス（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシベンジル）ベンゼン、ビス［３，３’−ビス（４’−ヒドロキシ−３’−ｔ−ブチルフェニル）酪酸］グリコールエステル、２−（３’，５’−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニル）メチル−４−（２”，４”−ジ−ｔ−ブチル−３”−ヒドロキシフェニル）メチル−６−ｔ−ブチルフェノール、及び２，６−ビス（２’−ヒドロキシ−３’−ｔ−ブチル−５’−メチルベンジル）−４−メチルフェノール、及びｐ−ｔ−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド縮合体、並びにｐ−ｔ−ブチルフェノール−アセトアルデヒド縮合体が挙げられる。

好ましいフェノール系酸化防止剤としては、次の商品名："Irganox L-135"（Ciba Specialty Chemicals Co.製）、"Yoshinox SS"（Yoshitomi Seiyaku Co.製）、"Antage W-400"（Kawaguchi Kagaku Co.製）、"Antage W-500"（Kawaguchi Kagaku Co.製）、"Antage W-300"（Kawaguchi Kagaku Co.製）、"Irganox L109"（Ciba Specialty Chemicals Co.製）、"Tominox 917"（Yoshitomi Seiyaku Co.製）、"Irganox L115"（Ciba Specialty Chemicals Co.製）、"Sumilizer GA80"（Sumitomo Kagaku製）、"Antage RC"（Kawaguchi Kagaku Co.製）、"Irganox L101"（Ciba Specialty Chemicals Co.製）、"Yoshinox 930"（Yoshitomi Seiyaku Co.製）で入手できるものが挙げられる。

本発明の潤滑油組成物には、１種類以上のフェノール系酸化防止剤と１種類以上のアミン系酸化防止剤の混合物を含ませることができる。
好ましい態様においては、本潤滑油組成物に、単一の亜鉛ジチオホスフェート、或いは２種類以上の亜鉛ジチオホスフェートの組合せを耐摩耗添加剤として含ませることができ、この亜鉛ジチオホスフェート又はそれぞれの亜鉛ジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキル、ジアリール、又はアルキルアリールジチオホスフェートから選択される。

亜鉛ジチオホスフェートは当該技術において周知の添加剤であり、一般式ＩＩ：

（式中、Ｒ^２〜Ｒ^５は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、１〜２０個の炭素原子、好ましくは３〜１２個の炭素原子を含む第１級アルキル基、３〜２０個の炭素原子、好ましくは３〜１２個の炭素原子を含む第２級アルキル基、アリール基、又はアルキル基で置換されているアリール基（かかるアルキル置換基は、１〜２０個の炭素原子、好ましくは３〜１８個の炭素原子を含む）である）
によって好都合に表すことができる。

Ｒ^２〜Ｒ^５が全て互いと異なっている亜鉛ジチオホスフェート化合物を、単独か、又はＲ^２〜Ｒ^５が全て同一である亜鉛ジチオホスフェート化合物と混合して用いることができる。

好ましくは、本発明において用いるこの亜鉛ジチオホスフェート又はそれぞれの亜鉛ジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートである。
商業的に入手できる好適な亜鉛ジチオホスフェートの例としては、Lubrizol Corporationから"Lz 1097"及び"LZ 1395"の商品名で入手できるもの、Chevron Oroniteから"OLOA 267"及び"OLOA 269R"の商品名で入手できるもの、及びAfton Chemicalから"HITEC 7197"の商品名で入手できるもの；Lubrizol Corporationから"Lz 677A"、"Lz 1095"、及び"Lz 1371"の商品名で入手できるもの、Chevron Oroniteから"OLOA 262"の商品名で入手できるもの、及びAfton Chemicalから"HITEC 7169"の商品名で入手できるもののような亜鉛ジチオホスフェート；並びに、Lubrizol Corporationからから"Lz 1370"及び"Lz 1373"の商品名で入手できるもの、及びChevron Oroniteから"OLOA 260"の商品名で入手できるもののような亜鉛ジチオホスフェート；が挙げられる。

本発明による潤滑油組成物には、一般に潤滑油組成物の全重量を基準として０．４〜１．２重量％の範囲の亜鉛ジチオホスフェートを含ませることができる。
本発明の組成物中において、更なる又は別の耐摩耗添加剤を好都合に用いることができる。

本発明の潤滑油中において用いることができる代表的な洗浄剤としては、１種類以上のサリチレート及び／又はフェネート及び／又はスルホネート洗浄剤が挙げられる。
しかしながら、洗浄剤として用いる金属の有機及び無機ベースの塩は本発明の好ましい態様における潤滑油組成物の硫酸灰分含量の一因となる可能性があるので、かかる添加剤の量は最小にする。

低いイオウレベルを維持するために、サリチレート洗浄剤を用いることができる。
而して一態様においては、本発明の潤滑油組成物には１種類以上のサリチレート洗浄剤を含ませることができる。

本発明の潤滑油組成物の全硫酸灰分含量を、潤滑油組成物の全重量を基準として好ましくは２．０重量％以下のレベル、より好ましくは１．０重量％以下のレベル、最も好ましくは０．８重量％以下のレベルに維持するためには、洗浄剤は、好ましくは潤滑油組成物の全重量を基準として０．０５〜２０．０重量％、より好ましくは１．０〜１０．０重量％の範囲、最も好ましくは２．０〜５．０重量％の範囲の量で用いる。

更に、かかる洗浄剤は、独立して、ＩＳＯ−３７７１によって測定して１０〜５００ｍｇ−ＫＯＨ／ｇの範囲、より好ましくは３０〜３５０ｍｇ−ＫＯＨ／ｇの範囲、最も好ましくは５０〜３００ｍｇ−ＫＯＨ／ｇの範囲のＴＢＮ（全塩基価）値を有する。

本発明の潤滑油組成物には無灰分散剤を更に含ませることができ、これは好ましくは潤滑油組成物の全重量を基準として５〜１５重量％の範囲の量で混合する。
用いることができる無灰分散剤の例としては、日本国特許１３６７７９６、１６６７１４０、１３０２８１１、及び１７４３４３５に開示されているポリアルケニルスクシンイミド及びポリアルケニルコハク酸エステルが挙げられる。好ましい分散剤としてはホウ素化スクシンイミドが挙げられる。

本発明の潤滑油組成物中において好都合に用いることができる粘度指数向上剤の例としては、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレン星型コポリマー、並びにポリメタクリレートコポリマー及びエチレン−プロピレンコポリマーが挙げられる。かかる粘度指数向上剤は、潤滑油組成物の全重量を基準として１〜２０重量％の範囲の量で好都合に用いることができる。

ポリメタクリレートは、本発明の潤滑油組成物中において有効な流動点降下剤として好都合に用いることができる。
更に、アルケニルコハク酸又はそのエステル部分、ベンゾトリアゾールベースの化合物、及びチオジアゾールベースの化合物のような化合物を、本発明の潤滑油組成物中において腐食抑制剤として好都合に用いることができる。

ポリシロキサン、ジメチルポリシクロヘキサン、及びポリアクリレートのような化合物を、本発明の潤滑油組成物中において消泡剤として好都合に用いることができる。
本発明の潤滑油組成物中においてシール固定剤又はシール適合薬剤として好都合に用いることができる化合物としては、例えば商業的に入手できる芳香族エステルが挙げられる。

本発明の潤滑組成物は、通常の配合技術を用いて、基油に有機モリブデン化合物及びポリマー摩擦低減添加剤を、１種類以上の他の随意的な添加剤と一緒に６０℃の温度で混合することによって好都合に製造することができる。

本発明の他の態様においては、上記に記載した潤滑油組成物をそれに適用することを含む、内燃エンジンを潤滑する方法が提供される。
本発明は更に、摩擦を低減するための本明細書に記載の潤滑組成物の使用を提供する。

本発明は更に、摩耗を低減するための本明細書に記載の潤滑組成物の使用を提供する。
本発明は更に、燃料経済性を向上させるための本明細書に記載の潤滑組成物の使用を提供する。

下記において、以下の実施例を参照して本発明を記載するが、これらはいかなるようにも本発明の範囲を限定することは意図しない。

下表１に示す組成を有する通常の潤滑剤ブレンド手順を用いて潤滑組成物（基準油Ａ）を配合した。
成分の量は、組成物の全重量を基準とする重量％で与える。

基準油Ａは、８．０２ｍｍ^２／秒のｋＶ１００（ＡＳＴＭ−Ｄ４４５にしたがって測定）、３５．１８ｍｍ^２／秒のｋＶ４０（ＡＳＴＭ−Ｄ４４５にしたがって測定）、４３３０ｍＰａ・秒の−３５℃におけるＣＣＳ（ＡＳＴＭ−Ｄ５２９３にしたがって測定）、及び２．７４ｍＰａ・秒のＨＴＨＳ（ＡＳＴＭ−Ｄ４７４１にしたがって測定）を有していた。

種々の摩擦調整剤を、下表２に示す量で基準油Ａに加えて複数の試験油を調製した。基準油Ａに加えた摩擦調整剤は、有機モリブデン化合物（三核モリブデンを含むモリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）：表２及び図１において「モリ三量体」と示す）、ポリマー摩擦低減添加剤（Crodaから商業的に入手できるPerfad 3006）、及び周知であり、一般的に入手できる摩擦調整剤であるグリセロールモノオレエートであった。

PCS Instrumentsによって製造された小型摩擦機（ＭＴＭ）を用いて、表２に示す組成物に関して摩擦の測定を行った。
ＭＴＭ試験は、２００２年１月の第１３回国際摩擦学会議において発表されたR.I. Taylor, E. Nagatomi, N.R. Horswill, D.M. Jamesによる"A screener test for the fuel economy potential of engine lubricants"によって記載された。

「ボールオンディスク」構成を用いて、小型摩擦機によって摩擦係数を測定した。
ボール試験片は、直径１９．０５ｍｍの研磨した鋼製ボールベアリングであった。ディスク試験片を、モーター駆動シャフト上に同心状に固定した。ディスク試験片を他のモーター駆動シャフト上に同心状に固定した。ボールをディスクに押し付けて、部品の回転及び歪曲が最小の点接触領域を生起させた。接触点において、ボール及びディスクの表面速度を調節することによって１００％のスライド／ロール比を維持した。

試験は、１．２５ＧＰａの圧力（７１Ｎの荷重）、１１５℃の温度において、図１及び２に示すように２６００ｍｍ／秒から５ｍｍ／秒までの種々の速度において行った。
新しいボール及び新しいディスクを用いて、それぞれの油を合計で２０の試験スキャンだけ試験し、最後の３回のスキャンから摩擦の結果をとった。

関連する試験油（表２に示す）の摩擦係数を測定した。結果を下表２に詳述する。表２において、境界摩擦係数は０．０５ｍ／秒〜０．０５ｍ／秒の低い速度における平均値であり、混合摩擦係数は１．０ｍ／秒〜２．６ｍ／秒のより高い速度における平均値である。

図１は、表２に示す組成物に関する速度の関数としての境界及び混合形態における摩擦係数の測定値のプロットを示す。
通常の潤滑剤ブレンド手順を用いて、下表３に示す組成を有する更なる潤滑組成物（基準油Ｂ）を配合した。

基準油Ｂは、８．９３ｍｍ^２／秒のｋＶ１００（ＡＳＴＭ−Ｄ４４５にしたがって測定）、４５．２０ｍｍ^２／秒のｋＶ４０（ＡＳＴＭ−Ｄ４４５にしたがって測定）、１８３のＶＩ、２．５２ｃＰｓの１５０℃におけるＨＴＨＳ（ＡＳＴＭ−Ｄ４７４１にしたがって測定）、５．５５ｃＰｓの１００℃におけるＨＴＨＳ（ＡＳＴＭ−Ｄ４７４１にしたがって測定）を有していた。

種々の摩擦調整剤を、下表４に示す量で基準油Ｂに加えて複数の試験油を調製した。基準油Ｂに加えた摩擦調整剤は、有機モリブデン化合物（モリブデンジチオカルバメート：表４及び図２において「モリ三量体」と示す）、ポリマー摩擦低減添加剤（Crodaから商業的に入手できるPerfad 3050）、及びAdeka FM926（Adekaから商業的に入手できるヒドロキシアルキルアミン摩擦調整剤）であった。

上記に記載したＭＴＭ試験法を用いて、関連する試験油（表４に示す）の摩擦係数を測定した。結果を下表４に詳述する。表４において、境界摩擦係数は０．０５ｍ／秒〜０．０５ｍ／秒の低い速度における平均値であり、混合摩擦係数は１．０ｍ／秒〜２．６ｍ／秒のより高い速度における平均値である。

図２は、表４に示す組成物に関する速度の関数としての境界及び混合形態における摩擦係数の測定値のプロットを示す。
議論：
潤滑形態は４つの主要なカテゴリーに分類される：（１）流体力学的形態：表面が完全に流体膜によって分離されている；（２）弾性流体力学的形態：表面が非常に薄い流体膜によって分離されている；（３）混合形態：表面が多少凸凹した接触状態で部分的に分離されている；（４）境界形態：流体膜が存在していたとしても、表面が大部分接触している。混合及び境界形態は、摩耗及び摩擦を低減させるためには化学的耐摩耗添加剤及び／又は摩擦調整剤などに頼る。

モリブデン含有摩擦調整剤は、一般に境界摩擦の低減において良好に機能すると期待され、有機摩擦調整剤は混合条件下においてより有効であると考えられている。
表２から分かるように、０．７５％のポリマー有機摩擦調整剤を単独で基準油Ａに加えると、混合形態における摩擦が減少するが、境界摩擦は増加するように見える。

１７０ｐｐｍのＭｏ（３重量％のＭｏＤＴＣ）を、０．７５％の通常的な有機摩擦調整剤であるＧＭＯと共に基油Ａに加えると、境界摩擦における僅かな低減及び混合摩擦における大きな低減が見られる。

１４０ｐｐｍのみのＭｏ（０．２５重量％のＭｏＤＴＣ）を０．７５％のポリマー有機摩擦調整剤と共に加えると、驚くべきことに、境界摩擦における劇的な低減及び混合摩擦における更なる低減が見られる。これは正に相乗効果であり、表２における他の結果からは予測できなかった。

ポリマー有機摩擦調整剤は、単独では境界摩擦を増大させるように思われるが、モリブデン含有摩擦調整剤と組み合わせると非常に低い境界摩擦が可能であり、これはモリブデン含有摩擦調整剤を通常の有機摩擦調整剤であるＧＭＯと組み合わせた場合よりも非常に低い。

０．５％の別のポリマー有機摩擦調整剤（Perfad 3050）を基準油Ｂに加えると、境界及び混合摩擦が大きく低減する。
ヒドロキシアルキルアミン摩擦調整剤（Adeka FM926）は、混合形態においてより有効であるが、境界摩擦の低減においては僅かに有効性が低いと思われる。

３００ｐｐｍのＭｏ（０．５５重量％の三核モリブデンを含むモリブデンジチオカーボネート（表２及び４並びに図１及び２において「モリ三量体」と示す）を基準油Ｂに加えると、境界及び混合摩擦の両方において非常に大きな低下が見られるが、混合摩擦は有機摩擦調整剤によって与えられるものよりも僅かに大きいと思われる。

２００ｐｐｍのＭｏ（０．３６重量％のモリ三量体）を、１％のPerfad 3050及び０．１％のヒドロキシアルキルアミン（Adeka FM925）摩擦調整剤と組み合わせて基準油Ｂに加えると、境界及び混合形態の両方において非常に低い摩擦が見られる。驚くべきことに、境界摩擦は、この組合せにおいては僅か２００ｐｐｍのＭｏを用いた場合に、３００ｐｐｍのＭｏ単独を用いて測定されるものと比べてより低い。

２００ｐｐｍのＭｏ（０．３６重量％のモリ三量体）を、１％のPerfad 3050及び０．１％のヒドロキシアルキルアミン（Adeka FM925）摩擦調整剤と組み合わせて基準油Ｂに加えると、境界及び混合形態の両方において非常に低い摩擦が見られる。驚くべきことに、境界摩擦は、この組合せにおいては僅か２００ｐｐｍのＭｏを用いた場合に、３００ｐｐｍのＭｏ単独を用いて測定されるものと比べてより低い。
以下に出願時の特許請求の範囲の内容を記載する。
［１］
（ｉ）基油；（ｉｉ）１００〜１０００ｐｐｍｗのモリブデンを与えるのに十分なレベルの１種類以上の有機モリブデン化合物；及び（ｉｉｉ）潤滑組成物の重量基準で０．２重量％〜５．０重量％の１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤；を含み；１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤は、１０００〜３００００ダルトンの範囲の分子量を有し、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
（ｃ）場合によっては、ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
（ｄ）場合によっては、連鎖停止基；
の反応生成物である、エンジンのクランクケースにおいて用いるための潤滑組成物。
［２］
１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤が、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
（ｃ）ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
（ｄ）連鎖停止基；
の反応生成物である、前記１に記載の潤滑組成物。
［３］
１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤が、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；及び
（ｃ）ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；
の反応生成物である、前記１に記載の潤滑組成物。
［４］
１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤が、
（ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
（ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；及び
（ｄ）連鎖停止基；
の反応生成物である、前記１に記載の潤滑組成物。
［５］
疎水性ポリマー亜単位が、ポリオレフィンである疎水性ポリマーを含む、前記１〜４のいずれかに記載の潤滑組成物。
［６］
疎水性ポリマー亜単位が、マレイン化にかけて３００〜５０００ダルトンの範囲の分子量を有するポリイソブチレン無水コハク酸を形成したポリイソブチレンポリマーを含む、前記１〜５のいずれかに記載の潤滑組成物。
［７］
親水性ポリマー亜単位が、ポリエチレングリコールである親水性ポリマーを含む、前記１〜６のいずれかに記載の潤滑組成物。
［８］
骨格部分が、ポリオール、ポリカルボン酸、及びこれらの混合物から選択される、前記１〜７のいずれかに記載の潤滑組成物。
［９］
連鎖停止基が任意の脂肪カルボン酸である、前記１〜８のいずれかに記載の潤滑組成物。
［１０］
反応生成物が、疎水性及び親水性ポリマー亜単位の一部の反応中において結合することによって形成される若干のブロックコポリマー単位を含む、前記１〜９のいずれかに記載の潤滑組成物。
［１１］
ブロックコポリマー単位の数が、１〜２０、好ましくは１〜１５、より好ましくは１〜７単位の範囲である、前記１０に記載の潤滑組成物。
［１２］
１種類以上の有機モリブデン化合物が、モリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）、モリブデンジチオホスフェート（ＭｏＤＴＰ）、モリブデンアミン、モリブデンアルコラート、及びモリブデンアルコールアミド、並びにこれらの混合物から選択される、前記１〜１１のいずれかに記載の潤滑組成物。
［１３］
１種類以上の有機モリブデン化合物がモリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）である、前記１２に記載の潤滑組成物。
［１４］
ヒドロキシアルキルアミンを更に含む、前記１〜１３のいずれかに記載の潤滑組成物。
［１５］
基油がフィッシャー・トロプシュ誘導基油である、前記１〜１４のいずれかに記載の潤滑組成物。
［１６］
摩擦を低減させるための、エンジンのクランクケースにおける前記１〜１５のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
［１７］
摩耗を低減させるための、エンジンのクランクケースにおける前記１〜１５のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
［１８］
燃料経済性を向上させるための、エンジンのクランクケースにおける前記１〜１５のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。

Claims (18)

1. （ｉ）基油；（ｉｉ）１００〜１０００ｐｐｍｗのモリブデンを与えるのに十分なレベルの１種類以上の有機モリブデン化合物；及び（ｉｉｉ）潤滑組成物の重量基準で０．２重量％〜５．０重量％の１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤；を含み；１種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤は、１０００〜３００００ダルトンの範囲の分子量を有し、
   （ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
   （ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
   （ｃ）場合によっては、ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
   （ｄ）場合によっては、連鎖停止基；
   の反応生成物である、エンジンのクランクケースにおいて用いるための潤滑組成物。
2. １種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤が、
   （ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
   （ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；
   （ｃ）ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；及び
   （ｄ）連鎖停止基；
   の反応生成物である、請求項１に記載の潤滑組成物。
3. １種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤が、
   （ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
   （ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；及び
   （ｃ）ポリマー亜単位を結合することができる少なくとも１つの骨格部分；
   の反応生成物である、請求項１に記載の潤滑組成物。
4. １種類以上の有機ポリマー摩擦低減添加剤が、
   （ａ）ポリオレフィン、ポリアクリル酸、及びポリスチレニルから選択される疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー亜単位；
   （ｂ）ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択される親水性ポリマーを含む親水性ポリマー亜単位；及び
   （ｄ）連鎖停止基；
   の反応生成物である、請求項１に記載の潤滑組成物。
5. 疎水性ポリマー亜単位が、ポリオレフィンである疎水性ポリマーを含む、請求項１〜４のいずれかに記載の潤滑組成物。
6. 疎水性ポリマー亜単位が、マレイン化にかけて３００〜５０００ダルトンの範囲の分子量を有するポリイソブチレン無水コハク酸を形成したポリイソブチレンポリマーを含む、請求項１〜５のいずれかに記載の潤滑組成物。
7. 親水性ポリマー亜単位が、ポリエチレングリコールである親水性ポリマーを含む、請求項１〜６のいずれかに記載の潤滑組成物。
8. 骨格部分が、ポリオール、ポリカルボン酸、及びこれらの混合物から選択される、請求項１〜７のいずれかに記載の潤滑組成物。
9. 連鎖停止基が任意の脂肪カルボン酸である、請求項１〜８のいずれかに記載の潤滑組成物。
10. 反応生成物が、疎水性及び親水性ポリマー亜単位の一部の反応中において結合することによって形成される若干のブロックコポリマー単位を含む、請求項１〜９のいずれかに記載の潤滑組成物。
11. ブロックコポリマー単位の数が、１〜２０、好ましくは１〜１５、より好ましくは１〜７単位の範囲である、請求項１０に記載の潤滑組成物。
12. １種類以上の有機モリブデン化合物が、モリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）、モリブデンジチオホスフェート（ＭｏＤＴＰ）、モリブデンアミン、モリブデンアルコラート、及びモリブデンアルコールアミド、並びにこれらの混合物から選択される、請求項１〜１１のいずれかに記載の潤滑組成物。
13. １種類以上の有機モリブデン化合物がモリブデンジチオカルバメート（ＭｏＤＴＣ）である、請求項１２に記載の潤滑組成物。
14. ヒドロキシアルキルアミンを更に含む、請求項１〜１３のいずれかに記載の潤滑組成物。
15. 基油がフィッシャー・トロプシュ誘導基油である、請求項１〜１４のいずれかに記載の潤滑組成物。
16. 摩擦を低減させるための、エンジンのクランクケースにおける請求項１〜１５のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
17. 摩耗を低減させるための、エンジンのクランクケースにおける請求項１〜１５のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
18. 燃料経済性を向上させるための、エンジンのクランクケースにおける請求項１〜１５のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。