JP2017513927A - 肺の漏出を治療するための自発組織化ペプチド - Google Patents

肺の漏出を治療するための自発組織化ペプチド Download PDF

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Abstract

肺の漏出を治療するための材料および方法が提供される。溶液中の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含むペプチドを標的部位に導入することができる。肺の漏出を治療するためにハイドロゲルバリアを標的部位にもたらすことができる。一局面において、被験体における肺の漏出を治療する方法が提供され、この方法は、上記被験体の上記肺の漏出の標的エリアに送達デバイスを導入するステップと、上記送達デバイスの末端を肺の漏出の治療が望まれる上記標的エリア内に配置するステップと、上記肺の漏出を治療するために、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む溶液を上記送達デバイスを通じて上記標的エリアに投与して上記標的エリアの生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するステップと、上記送達デバイスを上記標的エリアから除去するステップとを含む。

Description

配列表
この出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参考として本明細書に援用される配列表を含む。2015年3月10日に作成された上記ASCIIコピーは、T2071−7006WO_SL.txtという名称であり、サイズが1,751バイトである。
本開示は、一般に、医療、研究、および工業上の適用において使用することができる材料および方法に関する。より詳細には、本開示は、例えば、胸膜欠損、および気管支吻合の漏出に由来する胸膜の漏出を含めた、肺の漏出を治療するために使用することができる材料および方法に関する。
複数の実施形態では、被験体における肺の漏出を治療する方法が提供される。本方法は、被験体の肺の漏出の標的エリアに送達デバイスを導入するステップを含む。本方法はまた、送達デバイスの末端を、肺の漏出の治療が望まれる標的エリア内に配置するステップも含む。本方法はまた、肺の漏出を治療するために、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む溶液を、送達デバイスを通じて標的エリアに投与して、標的エリアの生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するステップも含む。本方法はまた、送達デバイスを標的エリアから除去するステップも含む。
被験体における肺の漏出を治療するためのキットが提供される。本キットは、肺の漏出の治療を可能にするために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効量の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む。本キットはまた、自己組織化ペプチドを被験体の肺の漏出の標的エリアに投与するための指示も含む。
肺の漏出を治療するために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成することにおいて使用するための、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む組成物が提供される。複数の実施形態では、被験体における肺の漏出の予防を容易にする方法が提供される。本方法は、肺の漏出の予防を可能にする生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む溶液を提供するステップを含む。本方法はまた、溶液を肺の漏出の標的エリアに、肺の漏出内に配置した送達デバイスを通じて溶液を導入することによって投与するための指示を提供するステップをさらに含む。
複数の自己組織化ペプチドから本質的になる肉眼で見える足場が提供される。自己組織化ペプチドのそれぞれは、肺の漏出の標的エリア内に配置することが可能な有効量の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む。
図1A〜1Bは、実施例1で考察されたデータを示すグラフである。 図2〜4は、実施例3で考察されたデータを示すグラフである。 図2〜4は、実施例3で考察されたデータを示すグラフである。 図2〜4は、実施例3で考察されたデータを示すグラフである。 図5A〜5Bは、実施例3で考察されたデータを示すグラフである。 図6A〜6Bは、実施例4で考察されたデータを示すグラフである。 図7A〜7Bは、実施例5で考察されたデータを示すグラフである。 図8A〜8Bは、実施例5で考察されたデータを示すグラフである。 図9A〜9Bは、実施例6で考察されたデータを示すグラフである。 図10〜12は、実施例8で考察されたデータを示すグラフである。 図10〜12は、実施例8で考察されたデータを示すグラフである。 図10〜12は、実施例8で考察されたデータを示すグラフである。 図13〜14は、実施例9で考察されたデータを示すグラフである。 図13〜14は、実施例9で考察されたデータを示すグラフである。 図15〜16は、実施例10で考察されたデータを示すグラフである。 図15〜16は、実施例10で考察されたデータを示すグラフである。 図17〜18は、実施例11で考察されたデータを示すグラフである。 図17〜18は、実施例11で考察されたデータを示すグラフである。 図19は、実施例12で考察されたデータを示すグラフである。 図20は、実施例13で考察されたデータを示すグラフである。 図21は、実施例14で考察されたデータを示すグラフである。 図22は、実施例15で考察されたデータを示すグラフである。 図23A〜23Bは、実施例16で考察されたデータを示すグラフである。 図24A〜24Cは、実施例18で考察されたデータを示すグラフである。 図24A〜24Cは、実施例18で考察されたデータを示すグラフである。 図25は、実施例19で考察されたデータを示す図である。図25には、配列番号5の「IEIK」が開示されている。 図26は、実施例19で考察されたデータを示すグラフである。 図27は、実施例19で考察されたデータを示すグラフである。 図28は、実施例19で考察されたデータを示すグラフである。 図29は、実施例19で考察されたデータを示すグラフである。 図30A〜30Cは、実施例19で考察されたデータを示すグラフである。図30には、配列番号5の「IEIK」が開示されている。
本開示のシステムおよび方法は、例えば胸膜欠損または気管支吻合の漏出の肺の漏出の予防を容易にすることができる。
胸膜欠損、例えば、胸膜実質欠損は、多くの場合、部分切除、癒着剥離術(synechotomy)、または葉間離断によって創出される。最大25%の患者において、7日を超える持続的な手術後の空気漏出が報告されている。これらの空気漏出を手術中に制御することにより、罹患率および入院の長さが低減される。
気管支吻合の漏出は、一般に、手術後、検査中に観察される。気管支吻合の漏出は重症の合併症を引き起こす恐れがあり、さらなる手術または手順が必要な場合がある。慣習的に、気管支吻合の漏出を予防するために、吻合部位を直接縫合し、その後、大網弁、肋間筋フラップ(intercostal muscle flap)、または心膜脂肪フラップ(pericardial fat flap)を用い軽くたたくことを実施する。現在、気管支吻合の漏出を予防するための臨床的使用が認可された材料は存在しない。
1つまたは複数の実施形態によると、自己組織化ペプチドにより、肺の漏出、例えば、胸膜欠損または気管支吻合の漏出を治療することができる。漏出は、手術後に創出され得る。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示されている材料、システムおよび方法は、粘膜上皮形成を容易にすることができる。
本開示の自己組織化ペプチドは、適用、例えば、所定のまたは所望の標的エリアへの自己組織化ペプチドの投与を含み得る。自己組織化ペプチドは、ペプチド溶液、ハイドロゲル、膜の形態または他の形態で標的エリアに投与することができる。標的エリアは、特定の治療を必要とする被験体の所定のエリアであってよい。一部の実施形態では、標的エリアは、手術部位(例えば、睡眠呼吸障害(sleep−breathing disorder)(SBD)の手術部位)に関連し得る。
自己組織化の間、ペプチドはナノファイバーを形成し得る。自己組織化により、溶液中のペプチドのゲル化を引き起こすことができる。ゲル化により、ハイドロゲルをもたらすまたは形成することができる。ペプチドは、溶液中、中性のpHレベルで自発的にベータ−シートを形成し得る。ペプチドは、溶液中、生理的条件下および/または陽イオンおよび/または陰イオンの存在下で自発的にベータ−シートを形成し得る。
本開示の方法および材料は、外科手技後に使用することができる。例えば、自己組織化ペプチドを含む溶液を外科手技後に投与することができる。
本開示の方法は、被験体の肺の漏出の標的エリアに送達デバイスを導入するステップを含み得る。本方法では、送達デバイスの末端を肺の漏出の治療が望まれる標的エリア内に配置するステップをもたらすことができる。
本開示の方法は、自己組織化ペプチドを所定のまたは所望の標的に投与するステップも含み得る。自己組織化ペプチドは、ペプチド溶液、ハイドロゲル、膜の形態または他の形態で標的エリアに投与することができる。標的エリアは、特定の治療を必要とする被験体の所定のエリアであってよい。一部の実施形態では、標的エリアは、手術部位または肺の漏出の部位に関連し得る。肺の漏出は、胸膜欠損の結果、または、気管支吻合の漏出であり得る。例えば、手術部位は、肺関連外科手術などの外科手術が行われた部位、または胸膜欠損もしくは気管支吻合の漏出が発生している部位であり得る。胸膜欠損は、針穿刺、ステープル線(staple line)、または縫合線に付随するものであり得る。胸膜欠損は、約5×5mm未満であり得る。
送達デバイスを通じて標的エリアへの投与を行ってハイドロゲルバリアを形成することができる。これは、肺の漏出を治療するために標的エリアの生理的条件下で行うことができる。
材料および方法は、肺の漏出の治療、予防、または閉塞を含み得る。
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」という用語は、漏出、例えば、空気漏出が起こっているエリアの部分的または完全な閉塞もしくは遮断を含むものとする。一般に、漏出は望ましくなく、したがって、治療により、漏出が矯正され、治療の標的エリアの治癒がもたらされる。被験体の治療とは、障害、例えば、漏出を有する被験体の、そのような治療の不在下で予測されるものを上回る治癒、緩和、軽減または改善のうちの1つまたは複数を含み得る。治療は、自己組織化ペプチドを含む溶液の低侵襲の適用または投与を含めた低侵襲治療であってよい。
本明細書で使用される場合、「被験体」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物、例えば、脊椎動物、大型動物、および霊長類を含むものとする。ある特定の実施形態では、被験体は哺乳動物被験体であり、特定の実施形態では、被験体はヒト被験体である。ヒトでの適用は明白に見越しているが、例えば、非ヒト動物を用いた獣医学的適用も本発明において予想される。本発明の「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、非哺乳動物(例えば、鳥類、例えばニワトリ;両生類;は虫類など)および哺乳動物、例えば、とりわけ、非ヒト霊長類、家畜、および農業上有用な動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ブタ、ラットなどを包含する。
治療、予防または閉塞は部分的なものであっても完全なものであってもよい。材料および方法は、例えば、胸膜欠損もしくは気管支吻合の漏出に由来する肺の漏出に対処することを含み得る。材料および方法は、自己組織化ペプチド、または自己組織化ペプチドを含む溶液、または自己組織化ペプチドを含む組成物を所定のまたは所望の標的エリアに投与、適用、または注射することを含み得る。
肺の漏出を治療する方法は、送達デバイスを標的エリアから除去するステップをさらに含み得る。本方法は、送達デバイスを導入するステップの前に、標的エリアを含む領域を可視化するステップをさらに含み得る。標的エリアを含む領域の可視化は、送達デバイスを標的エリアから除去するステップの後に行うことができる。標的エリアをモニタリングするステップも手順の間および手順の後、例えば、送達デバイスを除去するステップの後に行うことができる。
本治療方法は、自己組織化ペプチドを含む溶液を調製するステップをさらに含み得る。一部の実施形態では、治療方法は、肺の漏出を治療する必要性を決定するために被験体を評価するステップおよび評価するステップに基づいて溶液を調製するステップをさらに含み得る。
「自己組織化ペプチド」という用語は、水溶液中で、ベータ−シート構造が誘導される特定の条件の存在下でベータ−シート構造を示し得るペプチドを指し得る。これらの特定の条件は、自己組織化ペプチド溶液のpHを調整することを含んでよい。調整とは、自己組織化ペプチド溶液のpHを上昇または低下させることであってよい。pHを上昇させることとは、pHを生理的なpHに上昇させることであってよい。特定の条件は、一価陽イオンまたは二価陽イオンなどの陽イオンを自己組織化ペプチド溶液に添加することも含んでよい。特定の条件は、一価陰イオンまたは二価陰イオンなどの陰イオンを自己組織化ペプチド溶液に添加することも含んでよい。特定の条件は、外科手術の部位または肺の漏出の標的部位に関連する条件を含んでよい。自己組織化ペプチドは、組成物、ペプチド溶液、ペプチド粉末、ハイドロゲル、または足場として言及され得るか、またはその一部であってよい。
「自己組織化ペプチド」という用語は、自己組織化モチーフを含むペプチドを指し得る。自己組織化ペプチドは、これだけに限定されないが、肉眼で見える膜またはナノ構造を含めた構造に自己組織化することが可能なペプチドである。
「ハイドロゲル」という用語は、ポリマーと、高い百分率の水、例えば、少なくとも90%の水とで構成される材料を指し得る。
自己組織化ペプチドは、両親媒性自己組織化ペプチドであってよい。「両親媒性」とは、ペプチドが疎水性部分と親水性部分を含むことを意味する。一部の実施形態では、両親媒性ペプチドは、交互に現れる疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸を含んでもよく、それから本質的になってもよく、それからなってもよい。交互に現れるとは、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる一連の3つまたはそれ超のアミノ酸を包含するものとし、また、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れるペプチド配列内の各々全てのアミノ酸を含む必要はない。自己組織化ペプチドは、本明細書では「ペプチド」とも称され、自己組織化ペプチド溶液、組成物、ハイドロゲル、膜、足場の形態でまたは他の形態で所定のまたは所望の標的エリアに投与することができる。ハイドロゲルは、本開示全体を通して、膜または足場とも称することができる。所定のまたは所望の標的エリアは、肺の漏出(例えば、胸膜欠損もしくは気管支吻合の漏出)の場所にあってもその付近にあってもよい。所定のまたは所望の標的エリアは、外科手技、または故意でないもしくは故意の外傷を受けた可能性がある部位または他のエリアに基づいて確立することができる。
自己組織化ペプチドを含む溶液は、自己組織化ペプチド溶液とも称され、水性自己組織化ペプチド溶液であってよい。自己組織化ペプチドは、実質的に無細胞または細胞非含有の溶液で投与、適用、または注射することができる。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドは、無細胞または細胞非含有の溶液で投与、適用、または注射することができる。
自己組織化ペプチドはまた、実質的に薬物を使わないかまたは薬物を含まない溶液で投与、適用、または注射することもできる。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドは、薬物を使わないかまたは薬物を含まない溶液で投与、適用、または注射することができる。ある特定の他の実施形態では、自己組織化ペプチドは、実質的に無細胞であり実質的に薬物を使わない溶液で投与、適用、または注射することができる。さらなるある特定の他の実施形態では、自己組織化ペプチドは、無細胞であり薬物を使わない溶液で投与、適用、または注射することができる。
自己組織化ペプチド溶液は、自己組織化ペプチドを含んでよい、それからなってよい、またはそれから本質的になってよい。自己組織化ペプチドは、改変された形態であっても改変されていない形態であってもよい。改変されたとは、自己組織化ペプチドが、溶液中に単独で提供された場合に自己組織化しない1つまたは複数のアミノ酸を含む1つまたは複数のドメインを有し得ることを意味する。改変されていないとは、自己組織化ペプチドが、ペプチドの自己組織化をもたらすもの以外のいかなる他のドメインも有さなくてよいことを意味する。すなわち、改変されていないペプチドは、ベータ−シート、およびハイドロゲルなどの肉眼で見える構造に自己組織化し得る、交互に現れる疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸からなる。
自己組織化ペプチドを含む溶液を投与するステップにより、ハイドロゲルバリアを形成することができる。肺の漏出を治療するためにハイドロゲルバリアを標的エリア内に形成することができる。治療は、肺の漏出を少なくとも部分的に閉塞させることまたはシールすることによってもたらすことができる。これは、ハイドロゲルバリアの形成によって達成される。本開示全体を通して、ハイドロゲルへの言及は、ハイドロゲルバリアを指し得るまたはハイドロゲルバリアにも適用可能であり得る。
ある特定の実施形態では、標的エリアにおいて適切なまたは所望の遮断またはシールをもたらすことが可能なハイドロゲルバリアを有することが望まれる。ハイドロゲルバリアは、適切なまたは所望の遮断またはシールを達成するための特定の性質を有するものであってよい。例えば、ハイドロゲルバリアは、1つまたは複数の所定の性質、例えば、機械的強度(貯蔵弾性率)、剛性、粘度、ゲル化動態、イオン強度、pH、または破裂圧(破裂圧耐性)を有するものであってよい。性質は、自己組織化ペプチドまたは自己組織化ペプチドを含む溶液への、特定の量および/または濃度での本明細書に開示されている構成成分の添加に基づいて調整することまたは適応させることができる。
ある特定の実施形態では、治療により、少なくとも20cmHO、少なくとも25cmHO、少なくとも30cmHO、および特定の例では少なくとも35cmHOの破裂圧をもたらすことができる。
例えば、肺の漏出の治療に関して、高い機械的強度、剛性、および高い破裂圧を有するハイドロゲルバリアをもたらすことが望ましい。迅速にゲル化する、すなわち、ゲル化動態が、投与されると、短い時間内でハイドロゲルバリアが形成されて漏出が治療されるようなものであるハイドロゲルバリアをもたらすことも望ましい。短い時間とは、即時であってもよく、例えば、5分未満、3分未満、2分未満、1分未満、または30秒未満、または本明細書に開示されている他の時間であってもよい。
溶液の投与は、少なくとも約7アミノ酸を含む、それからなる、またはそれから本質的になる自己組織化ペプチドを含む、それからなる、またはそれから本質的になる溶液の投与を含んでよい、それからなってよい、またはそれから本質的になってよい。溶液の投与は、約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む、それからなる、またはそれから本質的になる自己組織化ペプチドを含む、それからなる、またはそれから本質的になる溶液の投与を含んでよい、それからなってよい、またはそれから本質的になってよい。少なくとも約7アミノ酸を含むものではない、それからなるものではない、またはそれから本質的になるものではない他のペプチドも本開示で意図され得る。
自己組織化ペプチドは、約7〜約32アミノ酸を含んでよい、それからなってよい、またはそれから本質的になってよい。一部の実施形態では、自己組織化ペプチドは、約12〜約16アミノ酸を含んでよい、それからなってよい、またはそれから本質的になってよい。
交互に現れるとは、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる一連の3つまたはそれ超のアミノ酸を包含するものとし、また、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れるペプチド配列内の各々全てのアミノ酸を含む必要はない。
肺の漏出を治療する方法は、自己組織化ペプチドを標的エリアに投与するステップを含み得る。ペプチドは、ハイドロゲルとして投与することもでき、投与されるとハイドロゲルを形成するものであってもよい。肺の漏出を治療する方法は、自己組織化ペプチドを含む溶液を標的エリアに投与するステップを含み得る。
「投与する」という用語は、これだけに限定されないが、自己組織化ペプチドを、これだけに限定されないが、単独で、水溶液などの溶液として、または組成物、ハイドロゲル、もしくは足場としてを含めた種々の形態のうちの1つまたは複数で、追加的な構成成分を伴ってまたは伴わずに、適用、導入または注射することを含むものとする。
本方法は、被験体の肺の漏出の標的エリアに送達デバイスを導入するステップを含み得る。本方法は、シリンジ、チューブ、ピペット、カテーテル、カテーテルシリンジ、または他の針に基づくデバイスのうちの少なくとも1つを含む送達デバイスを被験体の標的エリアに導入するステップを含み得る。自己組織化ペプチドは、シリンジ、チューブ、ピペット、カテーテル、カテーテルシリンジ、または他の針に基づくデバイスによって被験体の標的エリアに投与することができる。シリンジ針のゲージは、シリンジから標的エリアへの組成物、溶液、ハイドロゲル、または液体の適切な流れがもたらされるように選択することができる。このことは、一部の実施形態では、投与される組成物、ペプチド溶液、またはハイドロゲル中の自己組織化ペプチドの量、組成物またはハイドロゲル中のペプチド溶液の濃度、およびペプチド溶液、組成物、またはハイドロゲルの粘度のうちの少なくとも1つに基づくものであってよい。送達デバイスは、従来のデバイスであってもよく、特定の標的エリアに到達すること、特定の投薬レジメンを達成すること、特定の標的体積、量、または濃度を送達すること、および標的エリアに正確に送達することの少なくとも1つを達成するために設計されたものであってもよい。
肺の漏出を治療する方法は、送達デバイスの末端を、肺の漏出の治療が望まれる標的エリア内に配置するステップを含み得る。標的エリアは、手術部位の一部、胸膜欠損の部位または気管支吻合の漏出部位などの、本明細書に記載のエリアであってよい。自己組織化ペプチドは、送達デバイスによって漏出の治療が望まれる標的エリアに投与することができる。自己組織化ペプチドは、溶液で送達デバイスによって標的エリアに投与することができる。一部の実施形態では、投与は、送達デバイスを標的エリアまたは漏出の極めて近傍に配置して自己組織化ペプチドを含む溶液を標的エリアの表面または漏出の場所にもたらすという点で、局所的に行うことができる。他の実施形態では、投与は、送達デバイスを標的エリアもしくは漏出に配置して、自己組織化ペプチドを含む溶液を、例えば標的エリアまたは漏出の場所に直接もたらすという点で、漏出に直接行うことができる。他の実施形態では、投与は、所定の標的エリアの体積を自己組織化ペプチドを含む溶液で満たすために、漏出の中にまたはそれを通して、標的エリアまたは漏出に対して行うことができる。溶液を投与するステップは、溶液を標的エリアに局所的に適用することを含んでよい。溶液を投与するステップは、溶液を標的エリア内に、標的エリアを局所的に覆うためにオーバーフローで注射することを含んでよい。
送達デバイスの使用により、ペプチドのより選択的な投与をもたらして、標的エリアへのより正確な送達をもたらすことができる。ペプチドの選択的な投与により、ペプチド溶液、組成物、またはハイドロゲルの、首尾よいものであり、所望の場所に正確に配置される、増強されより標的化された送達が可能になり得る。選択的な投与により、配置および治療の効果が別の送達デバイスの使用に対して著しく改善された、増強された、標的化された送達をもたらすことができる。本開示の系、方法、およびキットにおいて使用することができる送達デバイスとしては、シリンジ、チューブ、針、ピペット、シリンジカテーテル、他の針に基づくデバイス、またはカテーテルが挙げられる。
カテーテルなどの送達デバイスの使用は、カテーテルを位置にガイドするために使用するガイドワイヤー、またはカテーテルもしくは他のデバイスの適切な設置、ならびに標的エリアおよび/もしくは標的エリアへの経路の可視化を可能にする内視鏡などの付随的なデバイスの使用を含んでよい。内視鏡は、被験体の体の画像を見ることが可能になるための光およびカメラまたは他の可視化デバイスの少なくとも1つを含み得るチューブであってよい。ガイドワイヤーまたは内視鏡は、例えば、皮膚の切開によって被験体に導入することができる。内視鏡は、送達デバイスを標的エリアに導入するステップの前に標的エリアに導入することができる。
シリンジ、チューブ、針、ピペット、シリンジカテーテル、他の針に基づくデバイス、カテーテル、または内視鏡などの送達デバイスの使用には、シリンジ、チューブ、針、ピペット、シリンジカテーテル、他の針型デバイス、カテーテル、または内視鏡の少なくとも一部を、標的エリアが存在する開口部に侵入させてペプチド、ペプチド溶液、組成物、またはハイドロゲルを標的エリアに投与し得るように、その開口部の直径またはサイズを決定することが必要な場合がある。
ある特定の実施形態では、ハイドロゲルをin vitroで形成し、in vivoで所望の場所に投与することができる。特定の例では、この場所は標的エリアであり得る。他の例では、この場所は、エリアの上流、下流、または実質的にエリアの近くであり得る。ハイドロゲルが移動することが望まれるエリアへのハイドロゲルの移動を可能にすることが望ましい。あるいは、別の手順により、ハイドロゲルを所望のエリア内に配置することができる。所望の場所または標的エリアは、被験体における肺の漏出を治療することが望まれるエリアの少なくとも一部であり得る。
本開示のある特定の態様では、ハイドロゲルをin vivoで形成することができる。被験体における肺の漏出を治療するために、水溶液などの自己組織化ペプチドを含む溶液を被験体のin vivo場所またはエリアに挿入することができる。特定の例では、ハイドロゲルをin vivoにおいて1つの場所で形成し、被験体における肺の漏出に対する治療、例えば、肺の漏出(例えば、胸膜欠損または気管支吻合の漏出)またはその付近の遮断または閉塞を促進するまたはもたらすことが望まれるエリアに移動させることができる。あるいは、別の手順により、ハイドロゲルを肺の漏出の治療を促進するまたはもたらすことが望まれるエリア内に配置することができる。本開示のペプチドは、粉末、溶液、ゲル、などの形態であってよい。自己組織化ペプチドは、溶液のpHおよび塩濃度の変化に応答してゲル化するので、適用または投与の間に被験体に接触するとゲル化する液体として分布させることができる。
ある特定の環境では、ペプチド溶液は、弱いハイドロゲルであってよく、結果として、本明細書に記載の送達デバイスによって投与することができる。
一部の実施形態によると、自己組織化ペプチドは、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる、両親媒性であり得る。
1つまたは複数の実施形態によると、被験体を評価して、被験体における肺の漏出を治療する必要性を決定することができる。評価が完了したら、被験体に投与するペプチド溶液を、評価するステップに基づいて調製することができる。他の実施形態では、評価するステップを伴わずにペプチド溶液を調製することができる。
一部の実施形態では、生物学的に活性な薬剤は、本開示の材料および方法と共に使用することができる。生物学的に活性な薬剤は、被験体または実験室の状況における条件または他の活性のいくらかの活性、制御、調節、または調整を与え得るペプチド、DNA配列、化学化合物、または無機化合物もしくは有機化合物を含めた化合物を含み得る。生物学的に活性な薬剤は、別の構成成分と相互作用してそのような活性をもたらし得る。生物学的に活性な薬剤は、本明細書では一部の実施形態によると薬物と称することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤をペプチド系の外側に徐々に放出させることができる。例えば、1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤をハイドロゲルから徐々に放出させることができる。in vitroにおける試験とin vivoにおける試験のどちらでも、生物学的に活性な薬剤のこの段階的な放出が実証されている。生物学的に活性な薬剤は、自己組織化ペプチド溶液または組成物に、被験体への投与前に添加することもでき、自己組織化ペプチドと併せてまたは自己組織化ペプチドと別々に被験体に投与することもできる。1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤を系内に封入することができ、例えば、ハイドロゲル、溶液、組成物、またはナノファイバーの中に封入することができる。
本開示は、時には自己組織化オリゴペプチドと称される自己組織化ペプチドを含む水溶液、ハイドロゲル、足場、組成物および膜に関する。自己組織化ペプチドは、水溶液中、生理的なpHならびに/または一価陽イオンおよび/もしくは一価陰イオンなどの陽イオンおよび/もしくは陰イオン、または手術部位または肺の漏出部位もしくはその付近に適用可能な他の条件の存在下でベータ−シート構造を示し得る。ペプチドは、両親媒性の、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れるものであってよい。ある特定の実施形態では、ペプチドは、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる、両親媒性であり得る第1の部分と、両親媒性ではない別の部分または領域とを含んでよい。
ペプチドは、一般に、水溶液中で安定であり、選択された条件に暴露されると、大きな、肉眼で見える構造、足場、またはマトリックスに自己組織化するものであってよい。条件は、生理的条件、中性pH、選択された塩濃度、緩衝溶液、または塩の生理的レベルであってよい。ハイドロゲルが形成されたら、ハイドロゲルは分解されなくてもよく、ある期間後に分解または生分解されてもよい。分解の速度は、少なくとも一部において、アミノ酸配列およびその周囲の条件の少なくとも1つに基づくものであってよい。分解の速度は、肺の漏出の適切な治療をもたらすために、標的部位における治癒または成長の速度と関連付けることができる。
「肉眼で見える」とは、10倍またはそれ未満の拡大率の下で見ることができる十分に大きな寸法を有することを意味する。好ましい実施形態では、肉眼で見える構造は、裸眼で見ることができる。肉眼で見える構造は透明であってよく、また、2次元であっても3次元であってもよい。一般には、各寸法は、少なくとも10μmのサイズである。ある特定の実施形態では、少なくとも2つの寸法が少なくとも100μm、または少なくとも1000μmのサイズである。しばしば、少なくとも2つの寸法は少なくとも1〜10mmのサイズ、10〜100mmのサイズ、またはそれ超である。
ある特定の実施形態では、フィラメントのサイズは、約10ナノメートル(nm)〜約20nmであってよい。フィラメント間の距離は約50nm〜約80nmであってよい。
肉眼で見える構造は、肉眼で見える足場であってよい。肉眼で見える足場は、複数の自己組織化ペプチドから本質的になるものであってよい。自己組織化ペプチドのそれぞれは、肺の漏出を予防するために肺の系の標的エリア内に配置することが可能な有効量の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含んでもよく、それから本質的になってもよく、それからなってもよい。足場の自己組織化ペプチドは、約12〜約16アミノ酸を含んでよい。足場の自己組織化ペプチドは、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる約12〜約16アミノ酸を含んでよい。自己組織化ペプチドは、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、(KLDL)(配列番号3)を含んでもよく、それから本質的になってもよく、それからなってもよい。
「生理的条件」は、特定の生物体、細胞系、または被験体に関して天然に生じ得、人工的な実験室条件とは対照的であり得る。条件は、1つまたは複数の特定の性質または1つまたは複数の性質の範囲などの1つまたは複数の性質を含んでよい。例えば、生理的条件は、温度または温度の範囲、pHまたはpHの範囲、圧力または圧力の範囲、および特定の化合物、塩、および他の構成成分の1つまたは複数の濃度を含んでよい。塩は、一価の陰イオン、一価の陽イオン、二価の陰イオン、または一価の陽イオンのうちの1つまたは複数を含んでよい。
いくつかの例では、生理的条件は、約20〜約40摂氏温度の範囲の温度を含んでよい。いくつかの例では、気圧は、約1atmであってよい。pHは、中性pHの範囲内であってよい。例えば、pHは、約6〜約8の範囲であってよい。生理的条件は、膜またはハイドロゲルの形成を誘導し得る一価金属陽イオンおよび/または一価陰イオンなどの陽イオンおよび/または陰イオンを含んでよい。これらは、塩化ナトリウム(NaCl)を含んでよい。生理的条件は、約1mMから約20mMの間のグルコース濃度、スクロース濃度、または他の糖濃度も含んでよい。自己組織化ペプチド溶液はグルコース、スクロース、または他の糖を含むものであってもよく、糖または糖溶液を自己組織化ペプチド溶液に添加することもできる。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドは、少なくとも約7アミノ酸のペプチドであってよい。ある特定の別の実施形態では、自己組織化ペプチドは、少なくとも約7アミノ酸〜約32アミノ酸のペプチドであってよい。ある特定の別の実施形態では、自己組織化ペプチドは、約7〜約17アミノ酸のペプチドであってよい。ある特定の他の例では、自己組織化ペプチドは、少なくとも8アミノ酸、少なくとも約12アミノ酸、または少なくとも約16アミノ酸のペプチドであってよい。
上記の性質を特徴とするペプチドの均質な混合物および不均質な混合物はどちらも、安定な肉眼で見える膜、フィラメント、およびハイドロゲルを形成し得る。自己相補的で自己適合性のペプチドは、均質な混合物中で膜、フィラメント、およびハイドロゲルを形成し得る。互いに相補的であり、かつ/または構造的に適合性である、均質な溶液中で膜、フィラメント、およびハイドロゲルを形成することができないものを含めた不均質なペプチドも、肉眼で見える膜、フィラメント、およびハイドロゲルに自己組織化し得る。
膜、フィラメント、およびハイドロゲルは、非細胞傷害性であってよい。本開示のハイドロゲルは、被験体において消化および代謝されるものであってよい。ハイドロゲルは、30日またはそれ未満で生分解されるものであってよい。ハイドロゲルは、単純な組成を有し、浸透性であり、また、多量に作製するのが容易で比較的安価である。膜およびフィラメント、ハイドロゲルまたは足場は、滅菌条件下で作製および保管することもできる。膜の形成に最適な長さは、アミノ酸組成、溶液条件、および標的エリアにおける条件の少なくとも1つに伴って変動し得る。
自己組織化または両親媒性ペプチドのアミノ酸は、D−アミノ酸、L−アミノ酸、またはこれらの組合せから選択することができる。疎水性アミノ酸としては、Ala、Val、Ile、Met、Phe、Tyr、Trp、Ser、ThrおよびGlyを挙げることができる。親水性アミノ酸は、塩基性アミノ酸、例えば、Lys、Arg、His、Orn;酸性アミノ酸、例えば、Glu、Asp;または水素結合を形成するアミノ酸、例えば、Asn、Glnであってよい。酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸はペプチド上でクラスター化され得る。末端残基のカルボキシル基およびアミノ基は保護されていても保護されていなくてもよい。膜またはハイドロゲルは、自己相補的で自己適合性のペプチドの均質な混合物または互いに相補的であり構造的に適合性であるペプチドの不均質な混合物において形成することができる。上記の基準に当てはまるペプチドは、本明細書に記載の適切な条件下で、肉眼で見える膜に自己組織化し得る。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドに約8〜約32残基を使用することができ、他の実施形態では、自己組織化ペプチドは、約7〜約17残基を有してよい。ペプチドの長さは約5nmであってよい。
本開示のペプチドは、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸およびアラニンの反復配列(Arg−Ala−Asp−Ala(RADA)(配列番号4))を有するペプチドを含んでもよく、それから本質的になってもよく、それからなってもよい。
他のペプチド配列は、イソロイシン、グルタミン酸、イソロイシンおよびリシンの反復配列(Ile−Glu−Ile−Lys(IEIK)(配列番号5))を含む、それから本質的になる、またはそれからなる自己組織化ペプチドで表すことができる。他のペプチド配列は、リシン、ロイシン、アスパラギン酸、およびロイシンの反復配列(Lys−Leu−Asp−Leu(KLDL)(配列番号6))を含む、それから本質的になる、またはそれからなる自己組織化ペプチドで表すことができる。本発明による自己組織化ペプチドの特定の例として、配列Arg−Ala−Asp−Ala−Arg−Ala−Asp−Ala−Arg−Ala−Asp−Ala−Arg−Ala−Asp−Ala(配列番号1)((RADA)(配列番号1))を有する「RADA16」と称される自己組織化ペプチド(本開示全体を通して「Puramatrix」とも称される)、配列Ile−Glu−Ile−Lys−Ile−Glu−Ile−Lys−Ile−Glu−Ile−Lys−Ile(配列番号2)((IEIK)I(配列番号2))を有する「IEIK13」と称される自己組織化ペプチド、または配列Lys−Leu−Asp−Leu−Lys−Leu−Asp−Leu−Lys−Leu−Asp−Leu(配列番号3)((KLDL)(配列番号3))を有する「KLDL12」と称される自己組織化ペプチド(本開示全体を通して「KLD12」とも称することができる)があり得る。
本明細書に開示されているペプチド配列のそれぞれにより、列挙されているアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、およびそれからなるペプチドを提供することができる。
本開示は、本明細書において列挙されているペプチドを含む、それから本質的になる、またはそれからなる溶液、ハイドロゲル、組成物、および足場のための材料、方法、およびキットを提供する。
1重量/体積(w/v)パーセントの水性(水)溶液および2.5w/vパーセントの(RADA)(配列番号1)が3−D Matrix Co.,Ltdによる製品PuraMatrix(商標)ペプチドハイドロゲルとして入手可能である。
ペプチドの自己組織化は、ペプチドを構成するアミノ酸によるペプチド分子間の水素結合および疎水性結合に起因するものであってよい。
本開示の自己組織化ペプチドのナノファイバーの直径は約10nm〜約20nmの範囲であり、平均孔径は約5nm〜約200nmの範囲である。ある特定の実施形態では、ナノファイバーの直径、孔径、およびナノファイバーの密度は、ペプチド溶液の体積などの、使用するペプチド溶液の濃度および使用するペプチド溶液の量の少なくとも1つによって制御することができる。
そのように、肺の漏出の治療を適切にもたらす、例えば、閉塞をもたらすための所望のナノファイバーの直径、孔径、および密度の少なくとも1つをもたらすために、溶液中のペプチドの特定の濃度およびペプチド溶液の特定の量の少なくとも1つを選択することができる。ペプチド溶液の特定の濃度および特定の量は、「有効濃度」および「有効量」と称することができる。
本明細書で使用される場合、被験体における肺の漏出を治療するのに有効なペプチド、ペプチド溶液またはハイドロゲルの量、「有効量」または「治療有効量」とは、障害を有する被験体の治療において、または治癒、緩和、軽減または改善において、被験体に単回投与または多数回投与(適用または注射)した際に、そのような治療の不在下で予測されるものを上回って有効であるペプチド、ペプチド溶液、組成物、またはハイドロゲルの量を指す。これは、ペプチド溶液、組成物、またはハイドロゲル中のペプチドの特定の濃度または濃度の範囲、それに加えてまたはその代わりに、ペプチド溶液、組成物、またはハイドロゲルの体積の特定の体積または範囲を含み得る。容易にする方法は、有効量および有効濃度の少なくとも一方を調製するための指示を提供するステップを含み得る。
投与(例えば、適用または注射)される投与量、例えば、体積または濃度は、ペプチドの形態(例えば、ペプチド溶液、ハイドロゲル、または凍結乾燥した形態などの乾燥した形態)および利用する投与経路に応じて変動し得る。正確な製剤、投与経路、体積、および濃度は、被験体の状態を考慮して、およびペプチド溶液、ハイドロゲル、または他の形態のペプチドを投与する特定の標的エリアまたは場所を考慮して選択することができる。本明細書において列挙されているものよりも低い用量または高い用量を使用することができるまたはそれが必要である。任意の特定の被験体に対する特定の投与量および治療レジメンは、使用される特定のペプチド(複数可)、治療されるエリアの寸法、所望の標的エリア内に配置することができる、結果として得られるハイドロゲルの所望の厚さ、および治療時間の長さを含み得る種々の因子に左右され得る。特定の投与量および治療レジメンに影響を及ぼす可能性がある他の因子としては、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、投与時間、分解の速度、疾患の重症度および経過、状態または症状、および治療を行う医師の判断が挙げられる。ある特定の実施形態では、ペプチド溶液は、単回用量で投与することができる。他の実施形態では、ペプチド溶液は、2回以上の用量、または複数回用量で投与することができる。
ペプチド溶液の有効量および有効濃度は、肺の漏出が少なくとも部分的に治療されるように、例えば被験体の胸膜欠損または気管支吻合の漏出またはその付近の閉塞が促進されるまたはもたらされるように選択することができる。一部の実施形態では、有効量および有効濃度の少なくとも一方は、標的エリアの寸法または直径に一部基づいてよい。他の実施形態では、有効量および有効濃度の少なくとも一方は、標的エリアまたはその付近における1つまたは複数の流体の流量に一部基づいている。さらに他の実施形態では、有効量および有効濃度の少なくとも一方は、肺の漏出または外科手術の部位の標的エリアの寸法または直径に一部基づいてよい。
さらに他の実施形態では、有効量および有効濃度の少なくとも一方は、標的エリアの寸法または直径、および標的エリアまたはその付近における1つまたは複数の流体の流量、および肺の漏出、例えば、胸膜欠損または気管支吻合の漏出または外科手術の部位の標的エリアの寸法または直径のうちの少なくとも1つに一部基づいてよい。
有効量は、約0.1ミリリットル(mL)から約100mLまでのペプチド溶液の体積を含み得る。有効量は、約0.1mLから約10mLまでのペプチド溶液の体積を含み得る。有効量は、約0.1から約5mLまでの体積を含み得る。ある特定の実施形態では、有効量は約0.4mLであり得る。ある特定の実施形態では、有効量は約0.5mLであり得る。他の実施形態では、有効量は約1.0mLであり得る。さらに他の実施形態では、有効量は約1.5mLであり得る。さらにまた他の実施形態では、有効量は約2.0mLであり得る。一部の他の実施形態では、有効量は約3.0mLであり得る。
ある特定の実施形態では、有効量は、標的エリア1cm当たりおよそ0.1mL〜1cm当たりおよそ5mLであり得る。有効量は、1cm当たり約0.1mL〜1cm当たり約3mlであり得る。ある特定の実施形態では、有効量は、標的エリア1cm当たりおよそ1mLであり得る。この有効量は、本開示のペプチド溶液の1.5重量/体積パーセントまたは2.5重量/体積パーセントなどの濃度と関連付けて使用することができる。
有効濃度は、本明細書に記載の通り、肺の漏出を治療することができる量であり得る。標的部位またはその付近における種々の性質が、標的エリアの寸法または直径、および標的エリアまたはその付近における1つまたは複数の流体の流量のうちの少なくとも1つを含めた有効濃度の選択または決定の一因となり得る。
有効濃度は、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約10w/vパーセントの範囲の溶液中のペプチド濃度を含み得る。有効濃度は、約0.1w/vパーセント〜約3.5w/vパーセントの範囲の溶液中のペプチド濃度を含み得る。ある特定の実施形態では、有効濃度は約1w/vパーセントであり得る。ある特定の他の実施形態では、有効濃度は約1.5w/vパーセントであり得る。他の実施形態では、有効濃度は約2.5w/vパーセントであり得る。さらに他の実施形態では、有効濃度は約3.0w/vパーセントであり得る。
ある特定の実施形態では、より高濃度のペプチドを有するペプチド溶液により、適当な位置に留まり、有効な治療をもたらすことが可能な、より有効なハイドロゲルをもたらすことができる。ペプチド溶液を送達するために、より高濃度のペプチド溶液は、有効であり選択的な溶液の投与を可能にするためには粘性が高くなりすぎる可能性がある。十分に高い濃度が選択されない場合には、ハイドロゲルは、標的エリアにおいて所望の期間にわたって有効性を有することができない可能性がある。
有効濃度は、特定の直径またはゲージのカテーテルまたは針を使用する注射または他の手段によって投与することができる溶液がもたらされるように選択することができる。
本開示の方法では、治療有効量の本明細書に記載のペプチド、組成物、ペプチド溶液、膜、フィラメント、およびハイドロゲルの単回投与ならびに多数回投与が意図されている。本明細書に記載のペプチドは、定期的な間隔で、被験体の状態の性質、重症度および程度に応じて投与することができる。一部の実施形態では、ペプチド、組成物、ペプチド溶液、膜、フィラメント、またはハイドロゲルは、単回投与で投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のペプチド、組成物、ペプチド溶液、またはハイドロゲルを多数回投与で投与する。一部の実施形態では、治療有効量のペプチド、組成物、ペプチド溶液、膜、フィラメント、またはハイドロゲルを、定期的な間隔で周期的に投与することができる。選択される定期的な間隔は、投与される溶液の最初のペプチド濃度、投与される量、および形成されるハイドロゲルの分解速度の任意の1つまたは複数に基づくものであってよい。例えば、最初の投与後、後続の投与を、例えば、30秒後、1分後、2分後、5分後、10分後、1日後、2日後、5日後、1週間後、2週間後、4週間後、6週間後、または8週間後に行うことができる。後続の投与は、ペプチドの濃度および体積が最初の投与と同じである溶液の投与を含んでもよく、ペプチドの濃度および体積がより低いまたはより高い溶液の投与を含んでもよい。適切な後続のペプチド溶液の投与の選択は、標的エリアおよび標的エリアの周囲のエリアのイメージングを行い、被験体の状態に基づいて必要性を確認することに基づくものであってよい。所定の間隔は、後続の投与のそれぞれについて同じであってもよく、異なってもよい。一部の実施形態では、被験体の生涯にわたって被験体における少なくとも部分的な胸膜欠損の閉塞または気管支吻合の漏出の予防を維持するために、ペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルを所定の間隔で長期にわたって投与することができる。所定の間隔は、後続の投与のそれぞれについて同じであってもよく、異なってもよい。これは、以前の投与から形成されるハイドロゲルが部分的に、または完全に破壊または分解されるかどうかに左右され得る。後続の投与は、ペプチドの濃度および体積が最初の投与と同じである溶液の投与を含んでもよく、ペプチドの濃度および体積がより低いまたはより高い溶液の投与を含んでもよい。適切な後続のペプチド溶液の投与の選択は、標的エリアおよび標的エリアの周囲のエリアのイメージングまたは可視化を行い、被験体の状態に基づいて必要性を確認することに基づくものであってよい。
自己組織化ペプチドの投与は、自己組織化ペプチドを含む溶液を標的エリアの表面に適用することを含んでよい。他の実施形態では、標的エリアを通してまたは標的エリア内に溶液を適用することができる。例えば、溶液を標的エリアの表面に適用するのではなく、溶液を漏出エリア内に投与する、例えば、注射するために、送達デバイスを漏出エリア内に配置することができる。
これらの投与手順は、送達デバイスを適切に配置することによって達成することができる。上記の通り、送達デバイスはシリンジであってよい。シリンジは、肺の漏出の治療を達成するために、溶液の標的エリア上または標的エリア内への適切な流れを可能にするための特定のゲージを有するものであってよい。
治療に関するさらなる手順は、自己組織化ペプチドを含む溶液を適用した後に塩類溶液を標的エリアに投与することを含んでよい。これにより、結果として得られるハイドロゲルバリアの機械的強度が増大すること、例えば、結果として得られるハイドロゲルバリアの貯蔵弾性率が、塩類溶液を用いたさらなる治療を含まないハイドロゲルバリアと比較して増大することに起因して、肺の漏出の優れた治療を提供することができる。
RADA16などの本開示の自己組織化ペプチドは、別個の生理的に活性なまたは生物学的に活性なモチーフまたは配列を欠き、したがって、内因性の細胞機能を損なわない可能性があるペプチド配列であり得る。生理的に活性なモチーフにより、転写などの多数の細胞内の現象を制御することができ、また、生理的に活性なモチーフが存在することにより、当該モチーフを認識する酵素による細胞質内タンパク質または細胞表面タンパク質のリン酸化が導かれる。ペプチド内に生理的に活性なモチーフが存在すると、種々の機能を有するタンパク質の転写を活性化または抑制することができる。本開示の自己組織化ペプチドは、そのような生理的に活性なモチーフを欠いてよく、したがって、このリスクを有さない。
肺の漏出の治療を低減させることなく溶液の浸透圧を低張性から等張性に改善するために、自己組織化ペプチド溶液に糖を添加し、それにより、生物学的安全性を上昇させることができる。特定の例では、糖は、スクロースまたはグルコースであってよい。
膜の形成に最適な長さは、アミノ酸組成に伴って変動し得る。本開示のペプチドにより意図される安定化因子は、ペプチド骨格間の一定の距離を維持する相補的なペプチドである。対形成した際に一定の距離を維持することが可能なペプチドは、本明細書では構造的に適合性であると称される。ペプチド間距離は、各イオン化または水素結合対について、対内の各アミノ酸の側鎖上の非分枝原子の数の合計を取ることによって算出することができる。例えば、リシンおよびグルタミン酸は、その側鎖上に非分枝原子をそれぞれ5つおよび4つ有する。ペプチドは、化学的に合成することもでき、天然の供給源および組換え供給源から精製することもできる。化学的に合成されたペプチドの使用により、ペプチド溶液が別の動物または微生物の細胞外マトリックスに由来する未同定の構成成分などの未同定の構成成分を有さないようにすることを可能にできる。したがって、この性質により、従来の組織由来のバイオマテリアルと比較して、ウイルス感染のリスクを含めた感染の懸念を排除することができる。これにより、牛海綿状脳症(BSE)などの感染を含めた感染の懸念を排除し、ペプチドを、肺の漏出の治療に関して高度に安全なものにすることができる。
ペプチドの最初の濃度は、形成される膜、ハイドロゲル、または足場のサイズおよび厚さに関する因子であり得る。一般に、ペプチド濃度が高いほど、膜またはハイドロゲルの形成の程度が高くなる。より高い最初のペプチド濃度(約10mg/ml)(約1.0w/vパーセント)で形成されるハイドロゲル、または足場は、より厚くなり得、したがって、より強力になる可能性がある。
膜、ハイドロゲル、組成物、または足場の形成は非常に速く、およそ数秒または数分であり得る。膜またはハイドロゲルの形成は不可逆的であってよい。ある特定の実施形態では、形成は可逆的であってよい。ハイドロゲルは、標的エリアに投与した際に即時的に形成させることができる。ハイドロゲルの形成は、投与後約1〜2分以内に生じさせることができる。他の例では、ハイドロゲルの形成は、投与後約3〜4分以内に生じさせることができる。ある特定の実施形態では、ハイドロゲルの形成にかかる時間は、少なくとも一部において、ペプチド溶液の濃度、適用されるペプチド溶液の体積、および適用または注射のエリアにおける条件(例えば、適用のエリアにおける一価金属陽イオンおよび/または陰イオンの濃度、エリアのpH、およびエリアまたはその付近における1つまたは複数の流体の存在、標的エリアへの投与前または投与後に溶液に添加される追加的な構成成分)のうちの1つまたは複数に基づくものであってよい。プロセスは、12未満またはそれと同等のpHによって、および温度によっては影響されない可能性がある。膜またはハイドロゲルは、1〜99摂氏温度の範囲の温度で形成され得る。
ハイドロゲルは、本開示の方法およびキットを使用して所望の効果をもたらすために十分な期間にわたって標的エリアの位置に留めることができる。本開示の材料、組成物、方法およびキットを使用した所望の効果は、エリアを治療すること、または外科手術の部位もしくはその付近の外科手技を実施したエリアもしくは気管支吻合の漏出部位の治癒を補助することであり得る。例えば、本開示の材料、組成物、方法およびキットを使用した所望の効果は、エリアを治療すること、または肺の外科手術を実施するエリアの治癒を補助することであり得る。
肺の漏出を治療するための、本明細書に記載の自己組織化ペプチドを含む溶液、ハイドロゲル、組成物、または膜の使用を含めた、本開示の材料および方法は、肺の漏出の標的エリアにおいてハイドロゲルバリアを作製するために提供される。治療の成功の妥当性を決定し得るハイドロゲルバリアの性質は、破裂圧、または破裂圧耐性である。破裂圧とは、ハイドロゲルバリアが機能しなくなる圧力を指し得る。例えば、これは、ハイドロゲルバリアがもはや標的エリアに対する適切な治療を提供するために所望の通り作動しない圧力であり得る。破裂圧は、ハイドロゲルバリアによってもたらされる遮断または閉塞が空気の通過を許す圧力であり得る。
一部の実施形態では、本開示の材料および方法を使用することによって、正常な組織(例えば、損傷を受けていない組織または漏出が存在しない組織)で達成されるものと同様またはそれよりも高い破裂圧をもたらすことが望ましい。本開示の材料および方法を使用することによって、通常または平均の肺機能により示される圧力と同様の破裂圧をもたらすことが望ましい。正常な、健康な組織については、一般に観察される破裂圧は約20〜約20cmHOであり得る。ある特定の実施形態では、35cmHOまたはそれ超の破裂圧が、肺の漏出(例えば、胸膜欠損または気管支吻合の漏出)を治療するためのハイドロゲルバリアについて望ましいまたは許容される破裂圧である。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液を投与するステップの後に破裂圧を上昇させることができる。例えば、1分から2分まで、10分まで、破裂圧を上昇させることができる。一部の実施形態では、約0分から1分の間、1分〜2分、または2分〜5分の破裂圧が少なくとも35cmHOであることが望ましい。ある特定の実施形態では、肺の漏出の治療を可能にするために適した期間で少なくとも35cmHOの破裂圧を達成することができる。この期間は、臨床医による適切な治療のためにも適切であり得る。約5分未満、約3分未満、約2分未満、約1分未満、または約30秒未満で少なくとも35cmHOの破裂圧を達成することができる。
適用後のゲル化時間の影響がある。破裂圧は、1分、2分、および10分の間で、時間が増すほど上昇する。2分は、シールをもたらすために好ましい場合がある。ハイドロゲルバリアは、標的エリアのサイズにかかわらず、少なくとも35cmHOの有効な破裂圧をもたらすために適し得る。例えば、14g、16g、18g、または22gの針を用いて表面を穿刺することによって創出した欠損は破裂圧35cmHOに劇的に影響を及ぼすことはない。
膜またはハイドロゲルを所望のエリアに留めることができる期間は、約10分であり得る。特定の例では、膜またはハイドロゲルを所望のエリアに約35分にわたって留めることができる。ある特定のさらなる例では、膜またはハイドロゲルを所望のエリアに1日または複数日、最大1週間または複数週間にわたって留めることができる。他の例では、膜またはハイドロゲルを所望のエリアに最大30日、またはそれ超にわたって留めることができる。膜またはハイドロゲルを所望のエリアに無制限に留めることができる。他の例では、膜またはハイドロゲルを所望のエリアにより長い期間にわたって、それが自発的に分解されるか意図的に取り出されるまで留めることができる。ハイドロゲルがある期間にわたって自発的に分解される場合、同じまたは異なる場所へのハイドロゲルのその後の適用または注射を実施することができる。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドは、自己組織化ペプチドの効果の増強をもたらすことができるか、または別の作用、治療、療法をもたらすもしくは他のやり方で被験体の1つまたは複数の構成成分と相互作用することができる1つまたは複数の構成成分と共に調製することができる。1つまたは複数の他の構成成分により、貯蔵弾性率、G’によって測定されるより高い機械的強度、およびゲル化動態の改善、例えば、ハイドロゲルまたはハイドロゲルバリアへのより急速なゲル化をもたらすことができる。
例えば、自己組織化ペプチド溶液または組成物の形態の自己組織化ペプチドのpHを調整することができる。自己組織化ペプチド溶液または組成物の形態の自己組織化ペプチドのpHを上昇または低下させることができる。これは、pH調整剤を添加することによって自己組織化ペプチド溶液のpHを調整することにより行うことができる。pH調整剤は、例えば、塩、塩類溶液または緩衝溶液であってよい。pH調整剤は、自己組織化ペプチドのアミノ酸配列、塩(複数可)の型、1つまたは複数の塩の濃度、およびpH調整剤のpHに基づいて選択することができる。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液のpHは約2.5から約4.0の間である。
本開示により提供される自己組織化ペプチドを含む溶液および組成物は、追加的な構成成分、例えば、1つまたは複数の塩と共に調製することができる。溶液の調製は、例えばペプチド粉末またはペプチド溶液の形態の自己組織化ペプチドを塩類溶液に添加することを含んでよい。他の実施形態では、溶液の調製は、塩または塩類溶液をペプチド粉末またはペプチド溶液の形態の自己組織化ペプチドに添加することを含んでよい。他の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液の調製は、自己組織化ペプチドのペプチド粉末に水を添加して水性ペプチド溶液を提供することを含む。水は脱イオン水またはペプチド溶液の調製に適した任意の精製水であってよい。水は、医療機器に許容されるグレードまたは薬学的に許容されるグレードのものであってよい。ペプチド粉末と水を場合によって混合することができる。次いで、塩または塩類溶液を水性ペプチド溶液に添加することができる。次いで、塩または塩類溶液と水性ペプチド溶液を混合することができる。
塩類溶液は、自己組織化ペプチドを含む溶液に使用するため、自己組織化ペプチドを含む溶液に添加するため、または自己組織化ペプチドを含むハイドロゲルまたは組成物に添加するために提供することができる。塩類溶液は、自己組織化ペプチドを含む溶液、または結果として得られるハイドロゲル、またはハイドロゲルバリアに所望の性質を付与するために、特定の陰イオンおよび陽イオンと共に、特定の濃度で提供することができる。例えば、塩類溶液は、機械的強度(貯蔵弾性率)、剛性、粘度、ゲル化動態、イオン強度、pH、または破裂圧(破裂圧耐性)を有するように提供することができる。
塩類溶液は、一価および/または二価陽イオンおよび/または陰イオンを含んでよい。塩類溶液は、アンモニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウム(pyrimidium)イオン、第四級アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1つの陽イオンを含んでよい。塩類溶液は、塩化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含んでよい。
一部の実施形態では、塩類溶液は塩化カルシウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムのうちの少なくとも1つを含む。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、(RADA)(配列番号1)を約0.5w/vパーセントの濃度で含んでよい。この溶液は、約0.125Mの塩化カルシウム濃度をさらに含んでよい。この溶液は、さらに、約25Paの貯蔵弾性率をもたらすものであってよい。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、(RADA)(配列番号1)を約0.5w/vパーセントの濃度で含んでよい。この溶液は、約0.250Mの塩化カルシウム濃度をさらに含んでよい。この溶液は、さらに、約44Paの貯蔵弾性率をもたらすものであってよい。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、(RADA)(配列番号1)を約0.5w/vパーセントの濃度で含んでよい。この溶液は、約0.500Mの塩化カルシウム濃度をさらに含んでよい。この溶液は、さらに、約52Paの貯蔵弾性率をもたらすものであってよい。
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、(RADA)(配列番号1)を約2.5w/vパーセントの濃度で含んでよい。この溶液は、約0.125Mの塩化カルシウム濃度をさらに含んでよい。この溶液は、さらに、約600Paの貯蔵弾性率をもたらすものであってよい。
複数の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、約0.005Mから約1Mの間の塩濃度を有するものであってよい。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、約0.125Mから約0.500Mの間の塩濃度を有するものであってよい。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、約0.25Mの塩濃度を有するものであってよい。
複数の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、等張性溶液を含んでよいまたは等張性溶液を添加されたものであってよい。等張性溶液は被験体、例えば被験体の体液または標的エリアにおける局部的な生理的条件に対するものであってよい。等張性溶液は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび水の少なくとも1つを含んでよい。この溶液は、pHを調整するために使用することができる塩酸または水酸化ナトリウムを含有してよい。この溶液を調製するために、NaCl8.6g、KCl0.3g、CaCl0.33gを蒸留水1リットルに溶解させることができる。この溶液のpHは約5.4であってよい。この溶液のpHは、酸もしくは塩基、またはpH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤は炭酸水素ナトリウムであってよい。この溶液は、リンゲル液と称することができる。
複数の実施形態では、自己組織化ペプチドを含む溶液は、造影剤を含んでよいまたは造影剤を添加されたものであってよい。造影剤は、自己組織化ペプチドを含む溶液またはハイドロゲルまたはハイドロゲルバリアを可視化するために利用することができる。造影剤により、医師に自己組織化ペプチドを含む溶液またはハイドロゲルまたはハイドロゲルバリアの場所をもたらすまたは確信させることができる。造影剤は、硫酸イオンおよびナトリウムイオンのうちの少なくとも1つを含んでよい。
複数の実施形態では、これだけに限定されないが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、(KLDL)(配列番号3)を含めた種々の自己組織化ペプチドの性質は、それらの塩濃度を、塩が沈殿し始める前の臨界イオン強度レベル未満で維持することによって増強することができる。塩の臨界イオン強度レベルは、各ペプチドにおける内因性のアミノ酸特性および組成に応じて変動する。ペプチドは、それらの塩のイオン強度を塩が沈殿し始める前の臨界イオン強度レベル未満で維持するために、純水の代わりに、種々の塩を伴う水に溶解させることができる。
これにより、種々の塩濃度の自己組織化ペプチド溶液およびハイドロゲルに比較的堅い性質またはより高い機械的強度を有益に付与し、それらをゼロ塩濃度レベルで維持したペプチドハイドロゲルと比較してより広範囲の適用に適するものにすることができる。同様にこれにより、ペプチド溶液を生理的条件、例えば、被験体の標的エリアに投与すると起こり得る、環境塩イオン強度が、生理的イオン強度などの塩が沈殿する前の臨界イオン強度を上回るイオン強度に変化すると、ペプチド溶液からペプチドハイドロゲルへの急速なゲル化動態も有益に付与することができる。
1つまたは複数の態様によると、これだけに限定されないが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、(KLDL)(配列番号3)を含めた種々のペプチドハイドロゲルの性質は、それらのpHレベルを約3.5またはそれ未満の高値に維持し、同時に、それらの塩濃度を塩が沈殿する前の臨界イオン強度レベル未満に維持することによって増強することができる。
一部の実施形態では、(RADA)(配列番号1)を含む溶液のpHは約3.5である。一部の実施形態では、(KLDL)(配列番号3)を含む溶液のpHは約3.5である。一部の実施形態では、(IEIK)I(配列番号2)を含む溶液のpHは約3.7である。
一部の実施形態では、緩衝溶液などの緩衝液を自己組織化ペプチド溶液または自己組織化ペプチドに添加することができる。
緩衝液は、弱酸とその共役塩基、またはその逆の混合物からなる水溶液であってよい。緩衝液のpHは、少ないまたは中程度の量の強酸または強塩基を添加してもほとんど変化せず、したがって、緩衝液を使用して溶液のpHの変化を予防することができる。緩衝溶液は、多種多様な化学的適用においてpHをほぼ一定の値に維持する手段として使用され、本明細書に開示されている自己組織化ペプチドおよび自己組織化ペプチド溶液および組成物に適用可能である。
緩衝液は、少なくとも2種の塩を含んでよい。緩衝液は、例えばPBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)など、pHが約7.4であってよい。緩衝液は、例えばDMEM緩衝液など、pHが約7.2であってよい。一部の実施形態では、緩衝液は、アルカリ緩衝液であってよい。
一部の実施形態では、自己組織化ペプチドの溶液または組成物は、約0.15Mの塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムのうちの少なくとも1つで緩衝化されていてもよい。自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)である場合、緩衝液は、約0.6Mから約1.2Mの間の塩を含んでよい。自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である場合、緩衝液は、約0.6Mから約1.2Mの間の塩を含んでよい。自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)である場合、緩衝液は、約0.02Mから約0.04Mの間の塩を含んでよい。自己組織化ペプチドが(KLDL)(配列番号3)である場合、緩衝液は、約0.1Mから約0.4Mの間の塩を含んでよい。
ある特定の実施形態では、溶液に所定の機械的強度をもたらすための塩を選択するステップをさらに含む治療方法が提供される。本方法は、溶液に所定の機械的強度をもたらすための塩の濃度を選択するステップをさらに含み得る。本方法は、溶液に所定のイオン強度をもたらすための塩を選択するステップを含み得る。本方法は、溶液に所定のイオン強度をもたらすための塩の濃度を選択するステップをさらに含み得る。本方法は、溶液に所定のpHをもたらすための塩を選択するステップを含み得る。本方法は、溶液に所定のpHをもたらすための塩の濃度を選択するステップをさらに含み得る。
1つまたは複数の生物学的に活性なまたは生理的に活性なアミノ酸配列またはモチーフを含む追加的なペプチドを構成成分の1つとして自己組織化ペプチドと共に含めることができる。他の構成成分は被験体に薬物または他の治療などのいくらかの利益をもたらし得る生物学的に活性な化合物を含み得る。例えば、がん治療薬または抗がん薬を自己組織化ペプチドと共に投与することもでき、別々に投与することもできる。
ペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルは、被験体を治療するためまたは溶血、炎症、および感染を予防するための小分子薬物を含んでよい。小分子薬物は、グルコース、サッカロース、精製サッカロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、デキストラン、ヨウ素、塩化リゾチーム、ジメチルイソプロピルアズレン(dimethylisoprpylazulene)、トレチノイン、トコフェリル(tocoferil)、ポピドンヨード、アルプロスタジルアルファデクス、アニスアルコール、サリチル酸イソアミル、α,α−ジメチルフェニルエチルアルコール、バクダノール(bacdanol)、ヘリオナール(helional)、スルファジアジン銀(sulfazin silver)、ブクラデシンナトリウム、アルプロスタジルアルファデクス、硫酸ゲンタマイシン、塩酸テトラサイクリン、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム水和物および安息香酸イソアミルからなる群より選択することができる。他の小分子薬物も意図され得る。タンパク質に基づく薬物を投与される構成成分として含めることができ、それらとして、エリスロポエチン、組織型プラスミノーゲン活性化因子、合成ヘモグロビンおよびインスリンが挙げられる。
自己組織化ペプチド、自己組織化ペプチドを含む溶液、または組成物を、迅速なまたは即時のハイドロゲルへの形成から保護するための構成成分を含めることができる。これは、ペプチド溶液を標的エリアに時間制御放出させてハイドロゲルを所望の所定の期間にわたって形成させることを可能にするために時間をわたり分解させることができる封入送達系を含み得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。
本明細書に記載の構成成分はいずれも、自己組織化ペプチド、自己組織化ペプチドを含む溶液、組成物、またはキットに含めることもでき、自己組織化ペプチド、自己組織化ペプチドを含む溶液、組成物、またはキットとは別に投与することもできる。さらに、本明細書において提供される方法および容易にする方法はいずれも、1つまたは複数の関係者によって実施されてよい。
本開示のペプチド、ペプチド溶液、組成物またはハイドロゲルは、肺の漏出(例えば、胸膜欠損または気管支吻合の漏出)を治療するためのキットで提供することができる。キットは、被験体における肺の漏出を治療するためのものであってよい。溶液自己組織化ペプチドを被験体の肺の漏出の標的エリアに投与するための指示もこのキットで提供することができる。自己組織化ペプチドは、肺の漏出の治療を可能にするために、ハイドロゲルバリアを形成するための有効量の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含んでよい。一部の実施形態では、自己組織化ペプチドは、約12アミノ酸〜約16アミノ酸を含んでよい、それからなってよい、またはそれから本質的になってよい。自己組織化ペプチドは、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、(KLDL)(配列番号3)を含んでもよく、それから本質的になってもよく、それからなってもよい。溶液中の自己組織化ペプチドの濃度は、本明細書に開示されている濃度のいずれであってもよい。
溶液を投与するための指示は、本明細書において提供されるペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルを、例えば本明細書に記載の投与経路によって、ある用量、体積または濃度、または投与スケジュールで投与するための方法を含んでよい。ペプチドは両親媒性であってよく、ペプチドの少なくとも一部は疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れるものであってよい。
キットは、自己組織化ペプチドを、自己組織化ペプチドを含む溶液および自己組織化ペプチドを含む溶液として調製される粉末のうちの一方として提供することができるものである。肺の漏出の治療を可能にするために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効濃度を有する自己組織化ペプチドを含む溶液を調製するための指示も提供することができる。
キットは、情報材料も含んでよい。情報材料は、本明細書に記載の方法に関する説明材料、教材、マーケティング材料または他の材料であってよい。一実施形態では、情報材料は、本明細書に開示されているペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルの作製、ペプチド、組成物、ペプチド溶液またはハイドロゲルの物理特性、濃度、体積、サイズ、寸法、有効期限、およびバッチまたは作製場所に関する情報を含んでよい。
キットは、場合によって、ペプチドまたはペプチド溶液を所望のエリアに投与することを可能にするためのデバイスまたは材料も含んでよい。例えば、シリンジ、ピペット、カテーテル、または他の針に基づくデバイスをキットに含めることができる。それに加えて、またはその代わりに、キットは、標的エリアへのペプチド溶液の選択的な投与をもたらすためのガイドワイヤー、内視鏡、または他の付随的な設備を含んでよい。
キットは、それに加えてまたはその代わりに、ペプチド溶液、ハイドロゲルまたは足場を配置することを補助し得る構成成分などの他の構成成分または成分を含んでよい。十分な量または体積のペプチド溶液と、キットと共に提供されてもされなくてもよいスクロース溶液を合わせるための指示をこのキットで提供することができる。有効濃度の溶液を標的エリアに投与するためにペプチド溶液を希釈するための指示を提供することができる。指示は、希釈剤または溶媒を用いてペプチド溶液を希釈することを記載するものであってよい。希釈剤または溶媒は水であってよい。標的エリアに対する溶液の有効濃度および溶液の有効量の少なくとも1つを決定するための指示をさらに提供することができる。これは、本明細書で考察されている種々のパラメータに基づくものであってよく、標的エリアにおける気管支吻合の漏出または創傷の病変または部位の直径を含んでよい。
他の構成成分または成分をペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルと同じまたは異なる組成物または容器においてキットに含めることができる。1つまたは複数の構成成分としては、自己組織化ペプチドの効果の増強をもたらすことができるか、または別の作用、治療、療法をもたらすもしくは他のやり方で被験体の1つまたは複数の構成成分と相互作用することができる構成成分を挙げることができる。例えば、1つまたは複数の生物学的に活性な配列または生理的に活性な配列またはモチーフを含む追加的なペプチドを構成成分の1つとして自己組織化ペプチドと共に含めることができる。他の構成成分は、被験体に薬物または他の治療などのいくらかの利益をもたらし得る生物学的に活性な化合物を含んでよい。例えば、がん治療薬または抗がん薬を、自己組織化ペプチドと一緒に投与することもでき、別々に投与することもできる。ペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルは、本明細書に開示されている通り、被験体を治療するためまたは溶血、炎症、および感染を予防するための小分子薬物を含んでよい。スクロース溶液などの糖溶液をキットと共に提供することができる。スクロース溶液は、20%スクロース溶液であってよい。
本開示全体を通して本明細書に開示されている他の構成成分もキットに含めることができる。例えば、キットは、塩類溶液を自己組織化ペプチドとは別々にまたは自己組織化ペプチドと組み合わせてさらに含んでよい。キットは、自己組織化ペプチドとは別々にまたは自己組織化ペプチドと一緒に提供される、例えば糖または糖溶液、例えばスクロースをさらに含んでよい。塩類溶液と自己組織化ペプチドを含む溶液またはペプチド粉末のうちの1つを組み合わせるための指示を提供することができる。キットは、自己組織化ペプチド溶液または粉末に添加されるものとして、または自己組織化ペプチド溶液の一部として、等張性溶液または造影剤をさらに含んでよい。
一部の実施形態では、キットの構成成分を、例えばゴムまたはシリコーンのふた(例えば、ポリブタジエンまたはポリイソプレンのふた)を有する密閉バイアル中に保管する。一部の実施形態では、キットの構成成分を不活性条件下で(例えば、窒素またはアルゴンなどの別の不活性ガスの下で)保管する。一部の実施形態では、キットの構成成分を無水条件下で(例えば、乾燥剤を用いて)保管する。一部の実施形態では、キットの構成成分をアンバーバイアルなどの遮光容器中に保管する。
キットの一部としてまたはキットとは別に、シリンジまたはピペットに、本明細書に開示されているペプチド、ペプチド溶液、またはハイドロゲルを予め充填することができる。使用者に、他のデバイスの使用を伴ってまたは伴わずに自己組織化ペプチド溶液をシリンジまたはピペットに供給し、他のデバイスの使用を伴ってまたは伴わずに自己組織化ペプチド溶液をシリンジまたはピペットによって標的エリアに投与するよう指示する方法が提供される。他のデバイスとしては、例えば、ガイドワイヤーを伴うまたは伴わないカテーテルを挙げることができる。
キットの自己組織化ペプチドは、本開示で提供される任意のペプチドであってよく、本開示に記載されている任意の構成成分、例えば、種々の塩、pH調整剤、緩衝液、アルカリ緩衝液を、このキット内に、キット内の自己組織化ペプチドと一緒に、またはキット内の自己組織化ペプチドとは別に提供することができる。
複数の実施形態では、肺の漏出を治療するために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成することにおいて使用するための、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む組成物が提供される。組成物のハイドロゲルバリアにより、少なくとも35HOの破裂圧耐性をもたらすことができる。組成物の自己組織化ペプチドは、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)からなる群より選択することができる。肺の漏出の治療を可能にするために有効な濃度は、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約3w/vパーセントの範囲の自己組織化ペプチド濃度を含む。組成物は細胞を実質的に含まないものであってよい。組成物は、薬物を実質的に含まないものであってよい。組成物は、本明細書に開示されている構成成分の任意の1つまたは複数をさらに含んでよい。例えば、組成物は、本明細書に開示されている陽イオン、陰イオン、塩、緩衝液、造影剤、等張性溶液、pH調整剤、および糖の任意の1つまたは複数を、本明細書に開示されている種々の濃度で含んでよい。組成物は、本明細書において開示されている、機械的強度、pH、ゲル化動態、およびイオン強度などの性質を有してよい。組成物は、肺の漏出(例えば、胸膜欠損または気管支吻合の漏出)の治療に使用することができるものであり、および哺乳動物またはヒトなどの被験体に対する治療になり得るものである。
被験体における肺の漏出の治療を容易にする方法も提供することができる。本方法は、肺の漏出の予防を可能にするために、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む溶液を提供して生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するステップと、肺系の標的エリアに、肺の漏出内に配置した送達デバイスを通じて溶液を導入することによって溶液を投与するための指示を提供するステップとを含み得る。
本方法は、本明細書に開示されている肺の漏出の少なくとも一部を含む領域を可視化するための指示を提供するステップをさらに含み得る。肺の漏出の少なくとも一部を含む領域を可視化するための指示であって、肺系の標的エリアを同定すること;送達デバイスを導入すること;送達デバイスの末端を標的エリア内に配置すること;溶液を投与すること;送達デバイスを肺の漏出から除去すること;および送達デバイスを除去した後に肺の漏出をモニタリングすることの少なくとも1つを含む指示も提供することができる。溶液を投与するステップの後約1分〜約5分の時間内に領域を可視化するための指示を提供することができる。本方法は、本開示で考察された通り、肺の漏出の標的エリアの寸法に一部基づいて、有効量および有効濃度の少なくとも一方を調製するための指示を提供するステップをさらに含み得る。
自己組織化ペプチドは、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)からなる群より選択される。本方法は、標的エリアの周囲のエリアをモニタリングするための指示を提供するステップをさらに含み得る。本方法は、外科手技後に溶液および使用のための指示を提供するステップをさらに含み得る。自己組織化ペプチドを含む溶液を提供するステップを含む方法は、肺の漏出の予防を可能にするために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効濃度を有する、本明細書に開示されているペプチド溶液を調製するための指示を提供するステップを含んでよい。
(実施例1)
ペプチドハイドロゲルのレオロジー的性質に対するpHレベルの影響
IEIK13、KLD12、およびPuraMatrix(登録商標)のレオロジー的性質に対するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(pH7.4)の影響を、40mmプレートを伴うレオメーター(AR500、TA Instruments)で評価した。DMEMは、一般に、6.4g/LのNaCl、3.4g/LのNaHCO(炭酸水素ナトリウム)、微量の他の塩、種々のアミノ酸、および4.5g/Lのグルコースを含有する細胞培養培地である。DMEMのpHレベルは一般に7.2±0.2であり、質量オスモル濃度は335±30mOsm/KgHOである;どちらの測定値も血液などのヒト生理的流体と近いものである。
ペプチド溶液(1%)を4℃で少なくとも48時間維持した後に試験した。実験を実施するために、ペプチド溶液1mLを穏やかにピペットで取り、レオメーターのプレート上に置いた。DMEM溶液2mLをペプチド溶液の周りに穏やかに添加した。ペプチド溶液をDMEMで2分処理し、次いで、培地を除去し、プレートをおよそ450μmの測定用幾何学的形状ギャップに置いた。2分の緩和時間後に37℃で測定を実施した。周波数試験を振動応力1Paで1rad/sから100rad/sまで実施した。
図1Aに示されている通り、ペプチド(1%)のレオロジー的性質を2分にわたるDMEM処理の前後で比較した。2分にわたるDMEM処理後の貯蔵弾性率の上昇倍率(fold increase)が図1Bに示されている。ペプチドのそれぞれでDMEM処理後に貯蔵弾性率の大きな上昇が示された。PuraMatrix(登録商標)、KLD12、およびIEIK13の間のDMEM処理後の貯蔵弾性率間の差異倍率(fold difference)はDMEM処理前のものと比べて比較的わずかであった。同様に、DMEM処理後、より堅いペプチド溶液(すなわち、IEIK13)で示された貯蔵弾性率の上昇倍率は、より弱いペプチド溶液(すなわち、PuraMatrix(登録商標))よりも低かった。この観察により、DMEM処理後に、DMEM処理後の最終的な剛性を決定する決定的な分子間相互作用が生じることが示唆される。
(実施例2)
ペプチド溶液のpHレベルの最適化
例としてペプチド溶液のpHレベルを調整するために、0.1NのNaOHを2.5%ペプチド溶液2mLに添加し、それらのpHおよび外観を測定した。結果が表1に示されている。特に、およそ3.5またはそれ未満までのpH上昇では、PuraMatrix(登録商標)溶液、IEIK13溶液、およびKLD12溶液の透明色は変化しなかったが、それらの見かけの剛性は増大した。
(実施例3)
pH調整したペプチド溶液のレオロジー的性質
ペプチド溶液の性質に対するpHレベルの影響の視覚的な観察に基づいて、ペプチド溶液のpHレベルを3.4(PuraMatrix(登録商標)およびKLD12)または3.7(IEIK13)に調整した後の、ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響を評価した。ペプチド溶液のpHレベルが3.5(PuraMatrix(登録商標)およびKLD12)または3.7(IEIK13)よりも高い場合、ペプチド溶液は相分離し始め、濁ったものになる。PuraMatrix(登録商標)溶液、KLD12溶液およびIEIK13溶液のレオロジー的性質は、pH3.4においてより高いものであった。結果がそれぞれKLD12 1%については図2に、IEIK13 1%については図3に、およびPuraMatrix(登録商標)1%および2.5%については図4〜5に示されている。応力掃引試験を10rad/sで実施した。周波数掃引試験を1Paで実施した。
(実施例4)
pH調整したペプチド溶液のさらなるレオロジー的性質
ペプチド溶液のpHレベルを3.4(PuraMatrix(登録商標)およびKLD12)または3.7(IEIK13)に調整した後の、ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響の結果に基づいて、種々のpHレベルでのペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響を評価した。PuraMatrix(登録商標)溶液およびIEIK13溶液のレオロジー的性質は、pHを3.4まで調整すると増大する。20mmのプレートを伴うレオメーター(DHR−1、TA Instruments)を使用してペプチドのレオロジー的性質を様々な濃度において評価した。結果がそれぞれPuraMatrix(登録商標)2.5%溶液については図6Aに、IEIK13 1.5%溶液については図6Bに示されている。周波数掃引試験を1Paで1rad/秒から10rad/秒まで実施し、1rad/秒における貯蔵弾性率をデータ用に選択した。
(実施例5)
DMEM処理前/後の、様々な濃度におけるペプチドハイドロゲルのレオロジー的性質に対するpHレベルの影響
ペプチド溶液のpHレベルを調整した後の、ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響の結果に基づいて、DMEM処理後の種々のpHのペプチドハイドロゲルのレオロジー的性質に対する影響を評価し、DMEM処理前の種々のpHのペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響と比較した。DMEM処理後のPuraMatrix(登録商標)ハイドロゲルおよびIEIK13ハイドロゲルのレオロジー的性質は、3.4までのpHの調整で増大する。結果がそれぞれ、PuraMatrix(登録商標)については図7A〜7Bに、IEIK(配列番号5)は図8A〜8Bに示されている。周波数掃引試験を1Paで1rad/秒から10rad/秒まで実施し、1rad/秒における貯蔵弾性率をデータ用に選択した。
(実施例6)
pH調整したペプチドハイドロゲルのゲル化動態に対する影響
本明細書に記載のペプチドについて最適化されたpHレベルを同定するために、ゲル化動態の性質に対するpHレベルの影響を評価した。体液中のPuraMatrix(登録商標)および他のペプチドの急速なゲル化動態により、一般に、種々の臨床的適用に関するその機能および応答時間を改善することができる。pHレベルにより、これだけに限定されないが、DMEMを含めたシミュレートされた体液を用いて処理した際にゲル化が開始されるまでの応答時間が付与され得る。pHを調整していない(pH2.2)PuraMatrix(登録商標)では最初の13秒にわたって貯蔵弾性率の上昇は示されなかったが、pHを調整したPuraMatrix(登録商標)では、急速なゲル化に起因した即時の貯蔵弾性率の上昇が示された。体液中のPuraMatrix(登録商標)および他のペプチドの急速な応答時間により、一般に、種々の臨床的適用に関するその機能および応答時間を改善することができる。
時間掃引試験を、20mmのプレートおよび500μmのギャップ距離を用い、1rad/秒および1Paで実施した。PuraMatrix(登録商標)2.5%溶液の時間掃引試験の間、0時点において測定プレート周囲のチャンバー内にDMEMを添加して、PuraMatrix(登録商標)溶液を浸漬した。結果がPuraMatrix(登録商標)2.5%溶液について図9Aに示されている。
pHを調整していないIEIK(配列番号5)では、即時の貯蔵弾性率の上昇が示されたが、pHを調整していない(pH2.2)PuraMatrix(登録商標)では最初の13秒にわたって貯蔵弾性率の上昇は示されなかった。pHを調整したIEIK13でも、急速なゲル化に起因した即時の貯蔵弾性率の上昇が示された。体液中のIEIK13の急速な応答時間により、一般に、種々の臨床的適用に関するその機能および応答時間を改善することができる。
時間掃引試験を、20mmのプレートおよび500μmのギャップ距離を用い、1rad/秒および1Paで実施した。IEIK13 1.5%溶液の時間掃引試験の間、0時点において測定プレート周囲のチャンバー内にDMEMを添加して、IEIK13 1.5%溶液を浸漬し、継続的にデータを記録した。結果がIEIK13 1.5%溶液について図9Bに示されている。
(実施例7)
ペプチド溶液およびハイドロゲルに対する塩イオン強度レベルの影響
本明細書に記載のペプチドについて最適化された塩イオン強度レベルを同定するために、ペプチド溶液の性質に対する塩イオン強度レベルの影響を評価した。PuraMatrix(登録商標)および他のペプチドの塩イオン強度レベルの上昇により、一般に、種々の臨床的適用に関するその機能および機械的強度を改善することができる。例としてペプチド溶液の塩イオン強度を調整するために、NaCl、KCl、MgCl、CaClおよびDPBS(10×)を含めた種々の塩緩衝溶液を1.5%ペプチド溶液2mLに添加した。
PuraMatrix(登録商標)についての結果が表2aに示されている。特に、およそ0.85〜1.15Mまで(種々の塩に応じて)の塩イオン強度の増大によってPuraMatrix(登録商標)溶液の透明色の顕著な変化はなかったが、それらの見かけの剛性は増大した。KLD12についての結果が表2bに示されている。特に、およそ0.25〜0.35Mまで(種々の塩に応じて)の塩イオン強度の増大により、KLD12溶液の透明色の顕著な変化はなかったが、それらの見かけの剛性は増大した。IEIK13についての結果が表2cに示されている。特に、およそ0.025〜0.035Mまでの(種々の塩に応じて)塩イオン強度の増大によってIEIK13溶液の透明色に変化はなかったが、それらの見かけの剛性は増大した。
表1a〜1cからの結果から、3つのペプチドが濁り始める臨界塩イオン強度が以下の通り示されることが示される:PuraMatrix(登録商標)(0.9〜1.2M)>KLD13(0.3〜0.4M)>IEIK13(0.03〜0.04M)。
(実施例8)
ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する塩イオン強度レベルの影響
ペプチド溶液の性質に対する塩イオン強度の影響の視覚的な観察に基づいて、ペプチド溶液のイオン強度レベルを、NaClを用いて、各ペプチドが濁り始める臨界イオン強度をわずかに下回る0.7M(PuraMatrix(登録商標))、0.2M(KLD12)または0.02M(IEIK13)に調整した後の、ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響を評価した。NaClを用いたペプチド溶液のイオン強度レベルが0.9M(PuraMatrix(登録商標))、0.3M(KLD12)または0.03M(IEIK13)よりも高いと、ペプチド溶液が相分離し始め、濁った、弱いものになる。PuraMatrix(登録商標)溶液、KLD12溶液およびIEIK13溶液のレオロジー的性質は、ペプチド溶液のイオン強度レベルを、NaClを用いて0.7M(PuraMatrix(登録商標))、0.2M(KLD12)または0.02M(IEIK13)に調整した後、より高かった。結果がそれぞれKLD12 1%については図10に、IEIK13 1%については図11に、およびPuraMatrix(登録商標)1%については図12に示されている。周波数掃引試験を1Paで1rad/sから10rad/sまで実施した。
(実施例9)
ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する塩イオン強度レベルのさらなる影響
ペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響の結果に基づいて、ペプチド溶液のイオン強度レベルを、NaClを用いて0.7M(PuraMatrix(登録商標))、0.2M(KLD12)または0.02M(IEIK13)に調整した後の、種々の塩イオン強度でのペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響を評価した。PuraMatrix(登録商標)1%溶液のレオロジー的性質は、イオン強度の調整が0.7Mまでは増大するが、0.7Mを超えると低下する。IEIK13 1%溶液のレオロジー的性質は、イオン強度の調整が0.03Mまでは増大するが、0.03Mを超えると低下する。これらの結果は、種々の塩イオン強度のペプチド溶液の目視検査とよく一致する。結果がPuraMatrix(登録商標)1%溶液については図13に、およびIEIK13 1%溶液については図14に示されている。周波数掃引試験を1Paで1rad/秒から10rad/秒まで実施し、1rad/秒における貯蔵弾性率をデータ用に選択した。
(実施例10)
DMEM処理後のペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響
ペプチド溶液のイオン強度レベルを調整した後のペプチド溶液のレオロジー的性質に対する影響の結果に基づいて、10分間のDMEM処理後のペプチドハイドロゲルのレオロジー的性質に対する影響を評価した。DMEM処理後のPuraMatrix(登録商標)ハイドロゲルのレオロジー的性質はイオン強度の調整が0.7Mまでは増加したが、0.7Mを超えると低下する。DMEM処理後のIEIK13ハイドロゲルのレオロジー的性質は、イオン強度の調整が0.025Mまでは有意な変化はなかったが、0.03Mを超えると低下する。PuraMatrix(登録商標)溶液が濁り始める0.9MのNaClイオン強度を超えると、PuraMatrix(登録商標)のレオロジー的性質はDMEM処理によって変化せず、これにより、ゲル化が生じていないことが実証される。結果がPuraMatrix(登録商標)1%ハイドロゲルについては図15に、およびIEIK13 1%ハイドロゲルについては図16に示されており、どちらも10分にわたるDMEM処理後のものである。周波数掃引試験を1Paで1rad/秒から10rad/秒まで実施し、1rad/秒における貯蔵弾性率をデータ用に選択した。
(実施例11)
種々の塩の影響
ペプチド溶液およびハイドロゲルのイオン強度レベルを、NaClを用いて調整した後のペプチド溶液およびハイドロゲルのレオロジー的性質に対する影響結果に基づいて、種々の塩(KCl、MgCl、およびCaCl)の影響についても評価した。PuraMatrix(登録商標)溶液のレオロジー的性質は、全ての塩に関して、イオン強度を0.15Mに調整すると増大する。種々の塩を用いたPuraMatrix(登録商標)溶液のレオロジー的性質の増大は大きくは異ならなかった。しかし、PuraMatrix(登録商標)溶液のレオロジー的性質の増大は各塩の塩析定数、Kに応じて変動し得る。定数Kは、コーエンの方程式:logS=B−KI(式中、Sは溶解度であり、Bは理想的な溶解度であり、Kは塩析定数であり、Iはイオン強度である)における定数である。定数Kおよび塩のイオン強度の値が高くなるにつれ、ペプチドの溶解度は低下し、その結果、疎水性効果の増大およびより高いペプチド溶液のレオロジー的性質を伴って強力なペプチド自己組織化がもたらされる。NaClの定数Kは他の塩よりも高い可能性がある。したがって、NaClを用いたPuraMatrix(登録商標)溶液のレオロジー的性質は、KClを用いたものおよびCaClを用いたものよりもわずかに高かった。10分間のDMEM処理後のPuraMatrix(登録商標)ハイドロゲルのレオロジー的性質も種々の塩を用い、イオン強度を調整して評価し、結果は、種々の塩((NaCl、KCL、MgCl、およびCaCl)、0.15Mのイオン強度)を用いたPuraMatrix(登録商標)溶液のレオロジー的性質の増大と同等であった。結果がDMEM処理前のPuraMatrix(登録商標)1%溶液については図17に、および10分間のDMEM処理後のPuraMatrix(登録商標)1%ハイドロゲルについては図18に示されている。周波数掃引試験を1Paで1rad/秒から10rad/秒まで実施し、1rad/秒における貯蔵弾性率をデータ用に選択した。*は、データが、PuraMatrix(登録商標)対照データよりも有意に高いことを示す(P<0.05)。#は、データがPuraMatrix(登録商標)1% NaCL 0.15M(イオン強度)データよりも有意に低いことを示す(P<0.05)。
(実施例12)
ゲル化動態に対する種々の塩の影響
ペプチド溶液を塩イオン強度レベルが高い環境に置いた場合のペプチドゲル化の可能性を同定するために、ペプチド溶液の性質に対するペプチド溶液周囲の塩イオン強度レベルの影響を評価した。例えば、ハイドロゲルを、生理食塩水緩衝液(0.15MのNaCl)に相当する等張性体液中に置くことができる。前に実証された通り、これだけに限定されないが、PuraMatrix(登録商標)、KLD12およびIEIK13を含めた自己組織化ペプチドは、中性pHで処理されるとハイドロゲルを形成する。pHの影響を伴わず、ペプチド溶液のゲル化に対する生理食塩水処理の影響を評価した。ペプチド溶液を生理食塩水緩衝液で処理した場合、それらのpHは変化しなかった。生理食塩水緩衝液で処理した後、IEIK13でのみ急速なゲル化が示され、PuraMatrix(登録商標)およびKLD13ではゲル化が示されなかったか、無視できる程度であった。これは、IEIK13が塩イオン強度レベルに対してはるかに感受性が高いことに起因する。体液と等張性の塩レベルと同様の塩イオン強度レベルにおけるIEIK13の急速なゲル化により、一般に、種々の臨床的適用に関してその機能およびゲル化速度を改善することができる。IEIK13溶液、KLD12溶液およびPuraMatrix(登録商標)溶液についての結果が図19に示されている。時間掃引試験を、20mmのプレートおよび500μmのギャップ距離を用い、1rad/秒および1Paで実施した。IEIK13 1.5%溶液、KLD12 1.5%溶液、およびPuraMatrix(登録商標)2.5%溶液の時間掃引試験の間、0時点において測定プレート周囲のチャンバー内にDMEMを添加して、PuraMatrix(登録商標)溶液を浸漬した。
(実施例13)
レオロジー的性質に対する塩イオン強度およびpHの調整の影響
1つまたは複数の実施形態によると、IEIK13、KLD12、およびPuraMatrix(登録商標)を、NaClなどの塩緩衝液中、および塩イオン強度を臨界塩点未満に維持し、pHレベルを約2.5〜4.0に維持するためにNaOHなどのアルカリ塩緩衝液を用いて調整した上昇したpHレベルで溶解させることができ、したがって、それらは、より堅い性質を有し得る。PuraMatrix(登録商標)、KLD13およびIEIK13に関して、0.9%NaCl(イオン強度:0.15M)をNaOHで調整したpH3.4で用いて、ペプチド溶液はなお透明である。0.9%NaCl(イオン強度:0.15M)をpH3.4で用いたPuraMatrix(登録商標)のレオロジー的性質は、PuraMatrix対照およびNaCl0.9%のみで用いたPuraMatrixのものよりも堅かった。PuraMatrix(登録商標)2.5%溶液のレオロジー的性質に対する塩イオン強度およびpHの調整の影響が図20に示されている。周波数掃引試験を1Paで1rad/秒から10rad/秒まで実施し、1rad/秒における貯蔵弾性率をデータ用に選択した。
(実施例14)
陽イオンの影響
2.5%RADA16ならびに2.5%RADA16+NaCl、KCl、およびCaCl2のレオロジー的な比較において、0.005M、0.05M、0.125M、0.25M、0.5M、および1MのNaCl、KCl、およびCaCl2と混合した0.5%RADA16の溶液を調製した。陽イオン、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、およびカルシウムイオン(Ca2+)の影響を観察するために、陰イオン、塩化物イオン(Cl−)を同じく維持した。図21に、塩類溶液の陽イオンの変動が自己組織化ペプチドの粘弾性および剛性にどのように影響を及ぼすかに関する基本的理解を提示する。Caにより、同じモル濃度のNaまたはKのいずれと比較しても最良の剛性の増強がもたらされた。これは、Caのイオン強度が同じモル濃度のNaおよびKの4倍であることに起因するはずである。したがって、図17〜18および表2a〜cに示されている通り、ペプチド溶液に対する塩の影響は、それらのモル濃度ではなくそれらのイオン強度により関連する。一部の実施形態では、ペプチド溶液の性質と塩の間に、塩の濃度に基づいて相関がある。
(実施例15)
機械的強度
2.5%RADA16および2.5%RADA16+0.25M CaCl2の剛性のレオロジー的測定値を評価した。図22は、RADA16の高濃縮溶液の剛性と、0.125MのCaCl2を添加した別のRADA16の高濃縮溶液を比較し、ペプチドおよびペプチド混合物の粘弾性に関する基本的理解を提示するものである。陽イオン溶液を添加したところ2つの溶液間の剛性に注目すべき増大があった。Caにより、最適な濃度範囲を使用し、高濃度であってさえ、RADA16の機械的増強がもたらされることが示された。
(実施例16)
可逆性
+0.125M、0.25M、および0.5MのCaCl2を伴う0.5%RADA16溶液の可逆性のレオロジー的測定値を評価した。0.125M、0.25M、および0.5MのCaCl2と混合した0.5%RADA16の溶液を調製した。ボルテックスおよび超音波処理によって機械的応力を適用することにより、自己組織化したペプチド溶液の構造を徹底的に破壊した。混合物を室温で48時間置いて自己組織化を生じさせた。図23A〜23Bは、ペプチド混合物の基本的な粘弾性を提示し、また、2.5%RADA16+0.5MのCaCl2対照と撹乱させた試料の間の有意差によって具体的に示される通り、塩を伴うペプチド溶液の可逆性を、構造を撹乱させた後でさえ制御し維持することができることを示すものである。最適な塩濃度範囲内の混合物は可逆的なままであった。*は、有意に異なる対照試料および撹乱させた試料を示す。図23aは、塩を伴う対照ペプチド溶液および撹乱させた塩を伴うペプチド溶液の未加工のレオロジー的データを示し、図23bは、対照ペプチド溶液と撹乱させたペプチド溶液の剛性の比較を提示するものである。
(実施例17)
ゲル化動態
0.5%RADA16+NaCl、KCl、およびCaCl2のゲル化動態のレオロジー的測定値を評価した。0.5%RADA16の溶液を調製し、いくつかの陽イオン(例えばNa、Cl、K)および陰イオン(例えばCl、CO3、PO4、SO4)を用いて処理することによってゲル化動態を観察した。ペプチド混合物のゲル化にかかる時間および陽イオン/陰イオン型および濃度を変動させることによるゲル化時間の制御の仕方を決定した。塩化物イオン(chlorine)により最も迅速なゲル化が示され、硫酸イオンにより最も遅いゲル化が示された。in vivoおよびin vitroにおける定性的実験および結果得られた知見は、これらの結論を裏付けるものであった。
(実施例18)
種々の陽イオン
機械的性質に影響を及ぼした陽イオン/陰イオン溶液と混合したペプチドハイドロゲルと、さらに、機械的性質に影響を及ぼさなかった非常に低い濃度の造影剤と混合した別のペプチドハイドロゲルの両方を設計した。2つのゲルは、(1)自己組織化ペプチドと、医学分野で使用されている周知の陽イオン/陰イオン溶液であるリンゲル液(pH5.3)の組合せ、および(2)自己組織化ペプチドと、周知の造影剤である、硫酸イオン(陰イオン)およびナトリウムイオン(陽イオン)を含有する色素溶液であるインジゴカルミンの組合せであった。インジゴカルミンは、pHを調整するために、インジゴジスルホネートナトリウム(indigoindisulfonate sodium)(C16Na)、水、およびクエン酸ナトリウム(C)を含有する。インジゴカルミン粉末を使用して、実験に使用するための1%溶液を調製した。これは、水1ml当たり10mgに対応する。実験に使用したインジゴカルミン溶液の濃度は水中0.00585%であった。
インジゴカルミン粉末を使用して脱イオン(DI)水中1%溶液を調製した。IEIK13粉末を使用して、DI水を使用して2パーセント溶液を調製した。IEIKの量を秤量し、適量のDI水を容器の側面に穏やかに流して添加した。約30秒にわたってボルテックスし、次いで30秒にわたって超音波処理することによって混合を達成した。次いで、溶液を3000ppmで約10〜約15分にわたって遠心分離した。溶液が透明になり、泡がなくなるまで、溶液をさらにボルテックスおよび遠心分離することができる。
0.00585%インジゴカルミンの最終濃度を得るために、必要量の1%ICを適量のDI水に添加して、2%IEIKを1.5%IEIKまで希釈する。次いで、溶液を約30秒にわたってボルテックスし、3000rpmで約10〜約15分にわたって遠心分離する。溶液が透明になり、泡がなくなるまで、溶液をさらにボルテックスおよび遠心分離することができる。
溶液を、使用する前に室温で一晩置いた。調製の間のより効率的な泡の除去を可能にするために、キャップは容器から外しておくことができる。
これらの混合物のレオロジー的な比較およびゲルの可視化は、図24a〜24cにおいて観察することができる。可逆性が維持される、より急速なゲル化動態を有する、より堅いゲルを得た。剛性、可逆性、およびゲル化動態が維持されるが、組織学のために組織死が許容される別のゲルも得た。造影剤または陽イオン/陰イオン混合物および混合したペプチドハイドロゲルの濃度は、本明細書に記載の陽イオンおよび陰イオンの使用に関する理解に基づくものであった。これらのRADA16+リンゲル液およびIEIK13+インジゴカルミンの適応させたペプチドハイドロゲルに関するデータから、これらの制御された自己組織化ハイドロゲルを、等張性の注射可能なゲルおよび可視化用の機械的に増強されていないゲルの必要性に適うように適応させることができることが示される。図24Aに、IEIK(配列番号5)およびインジゴカルミンと混合したIEIK(配列番号5)の未加工のレオロジー的データを示す。図24Bに、IEIK(配列番号5)の剛性と、インジゴカルミンと混合したIEIK(配列番号5)の剛性の比較を示す。図24Cに、RADA16の剛性と、リンゲル液と混合したRADA16の剛性の比較を示す。
(実施例19)
肺の漏出の予防
注射可能な自己組織化ペプチドハイドロゲル系は、胸膜欠損に対する空気シーラントとして使用した。35cmHOまたはそれ超の破裂圧(すなわち、空気がシーラントの表面を破る圧力)が達成された。
材料および方法
実験の設定
新たに安楽死させたブタからブタ肺を得た。気管および主気管支を通じて目的の肺内に気管内チューブを挿入した。手動の気管内挿管ポンプを使用して肺に圧力を供給した。チューブ周辺の空気漏出を防ぐために気管を結紮した。他の肺の主気管支をクランプして、全ての気流を目的の肺に導いた。マノメーターを用いて、膨張を誘導するために肺に誘導した空気の圧力を測定した。
自己組織化ペプチドハイドロゲルの調製
自己組織化ペプチドハイドロゲルは、Ac−RADARADARADARADA−NH(すなわち、RADA16)(配列番号1)、Ac−KLDLKLDLKLDL−NH(すなわち、KLD12)(配列番号3)、またはAc−IEIKIEIKIEIKI−NH(すなわち、IEIK13)(配列番号2)で構成され、RADA16またはKLD12は、単独で、または0.250Mの塩化カルシウムと混合した。単独の場合、ペプチドを脱イオン水中に再構成した。しかし、ペプチドを0.250Mの塩化カルシウム溶液と共に再構成した場合には、ペプチドをまず脱イオン水中に再構成し、その後、塩化カルシウムの0.500M溶液を1:1の比で混合した。
胸膜欠損の創出
自己組織化ペプチドハイドロゲルの有効性を測定するために、3つの異なる方法によって胸膜欠損を創出した:(1)16ゲージの針を使用して肺および胸膜を穿刺した、(2)5×5mmのエリアを測定し、1つの外科はさみを使用して肺および胸膜を切った、および(3)肺葉切除術(すなわち、目的の肺の1つの葉の完全な切除)。0.9%生理食塩水溶液を欠損エリアの上に流し、空気を導入し、気泡の放出を観察するための気管内挿管ポンプ系を使用することによって欠損の場所を同定した。
自己組織化ペプチドハイドロゲルの適用
欠損の場所が同定されたら、欠損エリアにハイドロゲルを2つの異なる方法によって適用した:(1)ハイドロゲルを、シリンジによって欠損エリアに注射することによって局所的に適用した、および(2)ハイドロゲルを、18ゲージの針によって欠損エリアを局所的に覆うようにオーバーフローで欠損に注射した。2分の緩和期間後、破裂圧が同定されるまで気管内挿管ポンプを通じて圧力を適用した。任意の追加的な試験のために、予め試験した欠損への気流を、外科的クランプを使用して切断した。図25に、胸膜欠損を同定し、針を挿入し、ハイドロゲルを注射し、破裂圧を同定する手順の流れを示す:A)胸膜欠損の同定、B)胸膜欠損への針の挿入、C)ハイドロゲルの注射(1.5%IEIK13)、D)破裂圧に達したことを示す気泡の同定。
結果
様々な針のサイズを用い、2.5%RADA16を使用して、胸膜欠損の破裂圧に対する影響を決定した。14ゲージ、16ゲージ、18ゲージ、および22ゲージの針を使用して胸膜欠損を創出した。2.5%RADA16を局所的に適用し、各欠損について、上記の方法を使用して破裂圧を同定した。図26は、2.5%RADA16を使用した場合、針ゲージの変動によって胸膜欠損の破裂圧は著しくは変更されないことを示す。様々な針ゲージによって引き起こした胸膜欠損で示された破裂圧の変化は無視できるものであった。
2.5%RADA16を使用して、RADA16の胸膜欠損部位への曝露時間の増大により破裂圧が上昇するか否かを決定した。16G胸膜欠損を創出し、2.5%RADA16を適用した。様々な時点で破裂圧を試験した。図27は、RADA16の欠損部位への曝露が増大することにより、破裂圧が上昇したことを示す。しかし、破裂圧は一般に曝露時間に伴って上昇し得るが、肺の外科医は、シーラントを適用する前に胸膜欠損の修復中の所定の期間、例えば、約2分だけしか待てない可能性がある。星印は、現実的な外科手術において割り当てられる最大の可能性のある待ち時間を示す。
局所的に適用した0.154MのNaCl(0.9%NaCl)の溶液を使用して、塩類溶液の局所的な添加により2.5%RADA16の破裂圧が変更されるか否かを決定した。16G胸膜欠損を創出し、2.5%RADA16を上記の通り局所的に適用した。0.154MのNaClの溶液をRADA16に局所的に適用し、その組合せを穏やかにこすって軽い混合を誘導した。図28は、NaClの塩に基づく溶液を2.5%RADA16に局所的に添加し、穏やかにマッサージすると、破裂圧がわずかに上昇することを示す。塩類溶液を2.5%RADA16に局所的に適用することにより破裂圧が上昇した。
NaClの溶液を2.5%RADA16に局所的に添加して穏やかにマッサージすることによる2.5%RADA16の破裂圧の上昇が成功したので、他の塩に基づく溶液をRADA16と完全に混合し、それらの機械的特性を測定した。より優れた機械的特性を有するゲルでは破裂圧の上昇が示されることが理論づけられた。様々な濃度のNaCl、KCl、またはCaClと混合した0.5%PuraMatrix(RADA16)の貯蔵弾性率(すなわち、機械的強度)に関する結果を図29において見ることができる。塩化カルシウムとRADA16を混合することにより、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムのいずれかと混合するよりも優れた機械的特性が示された。
3種のハイドロゲル−RADA16、KLD12、およびIEIK13の全てを様々な濃度で使用し、RADA16およびKLD12は単独で、および0.250Mの塩化カルシウムと組み合わせて使用した。ハイドロゲルを胸膜欠損に上記の通り適用した。図31に、空気漏出の予防におけるこれらのハイドロゲルの有効性を決定するために使用したCaClとのいくつかの組合せを示す。図31Aは、0.250MのCaClを伴う2.5%RADA16、2.5%IEIK13、および1.5%IEIK13は全て、16G胸膜欠損をシールする注射方法を使用して、35cm HOの破裂圧を超えたことを示す。図31Bおよび31Cは、いずれのハイドロゲル溶液も、それぞれ5×5mmの胸膜欠損または肺葉切除術に対するシーラントとして使用した場合、35cm HOの破裂圧に達しなかったことを示す。16G胸膜欠損に関しては、2.5%RADA16+0.25MのCaClおよび1.5%IEIK13で最良の破裂圧が示された。星印は、16G胸膜欠損に対する最適なゲルを示す。
結論
注射可能な、自己組織化ペプチドハイドロゲル系の空気シーラントとしての使用は、特定の胸膜欠損への適用に関して実行可能である。本明細書に記載の実験から決定される通り、0.25MのCaClを伴う2.5%RADA16、2.5%IEIK13、および1.5%IEIK13のハイドロゲルは、35cm HOの破裂圧を超えるので、針穿刺、ステープル線、および縫合線に伴う空気漏出を予防するために使用することができる。

Claims (167)

  1. 被験体における肺の漏出を治療する方法であって、
    前記被験体の前記肺の漏出の標的エリアに送達デバイスを導入するステップと、
    前記送達デバイスの末端を肺の漏出の治療が望まれる前記標的エリア内に配置するステップと、
    前記肺の漏出を治療するために、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む溶液を前記送達デバイスを通じて前記標的エリアに投与して前記標的エリアの生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するステップと、
    前記送達デバイスを前記標的エリアから除去するステップと
    を含む、方法。
  2. 前記送達デバイスを導入するステップの前に、前記標的エリアを含む領域を可視化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記送達デバイスを前記標的エリアから除去するステップの後に、前記標的エリアを含む領域を可視化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記送達デバイスを除去するステップの後に、前記標的エリアをモニタリングするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記溶液を投与するステップが、前記溶液を前記標的エリアに局所的に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記溶液を投与するステップが、前記溶液を前記標的エリア内に、前記標的エリアを局所的に覆うためにオーバーフローで注射することを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記溶液を投与するステップが、前記溶液を単回用量で投与することを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記溶液を投与するステップが、前記溶液を少なくとも2回の用量で投与することを含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記ハイドロゲルバリアが、少なくとも35cm HOの破裂圧耐性をもたらす、請求項1に記載の方法。
  10. 前記ハイドロゲルバリアが約3分未満で形成される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記ハイドロゲルバリアが約2分未満で形成される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ハイドロゲルバリアが約1分未満で形成される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記ハイドロゲルバリアが約2秒から約30秒の間に形成される、請求項1に記載の方法。
  14. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液を調製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  15. 肺の漏出を治療する必要性を決定するために前記被験体を評価するステップおよび前記評価するステップに基づいて前記溶液を調製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  16. 前記溶液のpHを調整するステップをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
  17. 前記溶液のpHを上昇させるステップをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
  18. 前記有効量および前記有効濃度の少なくとも一方が、前記肺の漏出の前記標的エリアの寸法に一部基づく、請求項1に記載の方法。
  19. 前記有効量が標的エリア1cm当たりおよそ1mLである、請求項18に記載の方法。
  20. 前記肺の漏出の治療を可能にするために有効な量が、約0.1mL〜約5mLの範囲の体積を含む、請求項18に記載の方法。
  21. 前記溶液が、細胞を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
  22. 前記溶液が、薬物を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
  23. 外科手技後に前記溶液を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  24. 前記外科手技により前記肺の漏出がもたらされた、請求項23に記載の方法。
  25. 前記肺の漏出が胸膜欠損である、請求項1に記載の方法。
  26. 前記肺の漏出が気管支吻合の漏出である、請求項1に記載の方法。
  27. 前記自己組織化ペプチドが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  28. 前記肺の漏出の治療を可能にするために有効な濃度が、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約3w/vパーセントの範囲の自己組織化ペプチド濃度を含む、請求項27に記載の方法。
  29. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液を調製するステップが、前記自己組織化ペプチドを塩類溶液に添加することを含む、請求項27に記載の方法。
  30. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液を調製するステップが、
    前記自己組織化ペプチドのペプチド粉末に水を添加して水性ペプチド溶液を提供することと、
    前記水性ペプチド溶液に塩類溶液を添加することと、
    前記塩類溶液と前記水性ペプチド溶液とを混合することと
    を含む、請求項27に記載の方法。
  31. 前記塩類溶液が、アンモニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1つの陽イオンを含む、請求項29または30に記載の方法。
  32. 前記塩類溶液が、塩化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む、請求項29または30に記載の方法。
  33. 前記塩類溶液が、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項31に記載の方法。
  34. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が(RADA)(配列番号1)を約0.5重量/体積(w/v)パーセントの濃度で含む、請求項28に記載の方法。
  35. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.125Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項34に記載の方法。
  36. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約25Paの貯蔵弾性率を有する、請求項35に記載の方法。
  37. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.250Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項34に記載の方法。
  38. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約44Paの貯蔵弾性率を有する、請求項37に記載の方法。
  39. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.500Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項34に記載の方法。
  40. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約52Paの貯蔵弾性率を有する、請求項39に記載の方法。
  41. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が(RADA)(配列番号1)を約2.5重量/体積(w/v)パーセントの濃度で含む、請求項27に記載の方法。
  42. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.125Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項41に記載の方法。
  43. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約600Paの貯蔵弾性率を有する、請求項42に記載の方法。
  44. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.005Mから約1Mの間の塩濃度を有する、請求項28に記載の方法。
  45. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.125Mから約0.500Mの間の塩濃度を有する、請求項44に記載の方法。
  46. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約0.25Mの塩濃度を有する、請求項45に記載の方法。
  47. 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および炭酸水素ナトリウムを含む溶液をさらに含む、請求項28に記載の方法。
  48. 造影剤を含む溶液をさらに含む、請求項28に記載の方法。
  49. 前記造影剤が、硫酸イオンおよびナトリウムイオンを含む、請求項48に記載の方法。
  50. 前記溶液が約2.5〜約4.0のpHを有する、請求項28に記載の方法。
  51. 前記溶液が約3.5のpHを有し、前記自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)および(KLDL)(配列番号3)のうちの1つである、請求項50に記載の方法。
  52. 前記溶液が約3.7のpHを有し、前記自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である、請求項50に記載の方法。
  53. 前記自己組織化ペプチドを含む溶液を調製するステップが、前記自己組織化ペプチドを緩衝液に添加することおよび緩衝液を前記溶液に添加することのうちの一方を含む、請求項14または15に記載の方法。
  54. 前記緩衝液が、少なくとも2種の塩を含む、請求項53に記載の方法。
  55. 前記緩衝液がpH7.2である、請求項54に記載の方法。
  56. 前記緩衝液がpH7.4である、請求項54に記載の方法。
  57. 前記緩衝液がアルカリ緩衝液である、請求項53に記載の方法。
  58. 前記溶液が、約0.15Mの塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムのうちの少なくとも1つで緩衝化されている、請求項53に記載の方法。
  59. 前記緩衝液が約0.6Mから約1.2Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)である、請求項58に記載の方法。
  60. 前記緩衝液が約0.02Mから約0.04Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である、請求項58に記載の方法。
  61. 前記緩衝液が約0.1Mから約0.4Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(KLDL)(配列番号3)である、請求項58に記載の方法。
  62. 前記溶液に所定の機械的強度をもたらすための塩を選択するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  63. 前記溶液に前記所定の機械的強度がもたらされるように前記塩の濃度を選択するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
  64. 前記溶液に所定のイオン強度をもたらすための塩を選択するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  65. 前記溶液に前記所定のイオン強度がもたらされるように前記塩の濃度を選択するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
  66. 前記溶液に所定のpHをもたらすための塩を選択するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  67. 前記溶液に前記所定のpHがもたらされるように前記塩の濃度を選択するステップをさらに含む、請求項66に記載の方法。
  68. 前記被験体が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
  69. 前記被験体がヒトである、請求項68に記載の方法。
  70. 前記自己組織化ペプチドが、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる約12〜約16アミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
  71. 前記溶液が、少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  72. 被験体における肺の漏出を治療するためのキットであって、
    肺の漏出の治療を可能にするために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効量の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドと、
    前記自己組織化ペプチドを前記被験体の肺の漏出の標的エリアに投与するための指示と
    を含む、キット。
  73. 前記自己組織化ペプチドが、自己組織化ペプチドを含む溶液および自己組織化ペプチドを含む溶液として調製される粉末のうちの一方として提供される、請求項72に記載のキット。
  74. 前記自己組織化ペプチドが、自己組織化ペプチドを含む溶液として提供される、請求項73に記載のキット。
  75. 前記自己組織化ペプチドが、自己組織化ペプチドを含む溶液として調製される粉末として提供される、請求項73に記載のキット。
  76. 前記肺の漏出の治療を可能にするために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効濃度を有する自己組織化ペプチドを含む溶液を調製するための指示をさらに含む、請求項73に記載のキット。
  77. 前記自己組織化ペプチドを前記肺の漏出の標的エリアに導入するための送達デバイスをさらに含む、請求項72に記載のキット。
  78. 前記肺の漏出が胸膜欠損である、請求項72に記載のキット。
  79. 前記肺の漏出が気管支吻合の漏出である、請求項72に記載のキット。
  80. 前記自己組織化ペプチドが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)からなる群より選択される、請求項73に記載のキット。
  81. 前記肺の漏出の治療を可能にするために有効な濃度が、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約3w/vパーセントの範囲の自己組織化ペプチドの濃度を含む、請求項80に記載のキット。
  82. 塩類溶液をさらに含む、請求項72に記載のキット。
  83. 前記塩類溶液と前記自己組織化ペプチドを含む溶液およびペプチド粉末のうちの1つとを組み合わせるための指示をさらに含む、請求項82に記載のキット。
  84. 前記塩類溶液が、アンモニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1つの陽イオンを含む、請求項82に記載のキット。
  85. 前記塩類溶液が、塩化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む、請求項82に記載のキット。
  86. 前記塩類溶液が、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項84に記載のキット。
  87. 前記自己組織化ペプチドを含む溶液が、約0.005Mから約0.500Mの間の塩濃度を含む、請求項84に記載のキット。
  88. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が、約25Paから約600Paの間の貯蔵弾性率を有する、請求項87に記載のキット。
  89. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が、約0.25Mの塩濃度を有する、請求項87に記載のキット。
  90. 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および炭酸水素ナトリウムを含む溶液をさらに含む、請求項72に記載のキット。
  91. 造影剤を含む溶液をさらに含む、請求項72に記載のキット。
  92. 前記造影剤が、硫酸イオンおよびナトリウムイオンを含む、請求項91に記載のキット。
  93. 前記自己組織化ペプチドを含む溶液が、約2.5〜約4.0のpHを有する、請求項72に記載のキット。
  94. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約3.5のpHを有し、前記自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)および(KLDL)(配列番号3)のうちの1つである、請求項93に記載のキット。
  95. 前記自己組織化ペプチドを含む前記溶液が約3.7のpHを有し、前記自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である、請求項93に記載のキット。
  96. 前記キットまたは自己組織化ペプチドを含む溶液の一方が緩衝液を含む、請求項72に記載のキット。
  97. 前記緩衝液が少なくとも2種の塩を含む、請求項96に記載のキット。
  98. 前記緩衝液がpH7.2である、請求項96に記載のキット。
  99. 前記緩衝液がpH7.4である、請求項96に記載のキット。
  100. 前記緩衝液がアルカリ緩衝液である、請求項96に記載のキット。
  101. 前記溶液が、約0.15Mの塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムのうちの少なくとも1つで緩衝化されている、請求項96に記載のキット。
  102. 前記緩衝液が約0.6Mから約1.2Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)である、請求項101に記載のキット。
  103. 前記緩衝液が約0.02Mから約0.04Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である、請求項101に記載のキット。
  104. 前記緩衝液が約0.1Mから約0.4Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(KLDL)(配列番号3)である、請求項101に記載のキット。
  105. 前記被験体が哺乳動物である、請求項72に記載のキット。
  106. 前記被験体がヒトである、請求項105に記載のキット。
  107. 前記自己組織化ペプチドが、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる約12〜約16アミノ酸を含む、請求項72に記載のキット。
  108. 少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤をさらに含む、請求項72に記載のキット。
  109. 溶液が、細胞および薬物を実質的に含まない、請求項72に記載のキット。
  110. スクロース溶液をさらに含む、請求項72に記載のキット。
  111. 肺の漏出を治療するために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成することにおいて使用するための、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む組成物。
  112. 前記ハイドロゲルバリアが、少なくとも35HOの破裂圧耐性をもたらす、請求項111に記載の組成物。
  113. 前記自己組織化ペプチドが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)からなる群より選択される、請求項111に記載の組成物。
  114. 前記肺の漏出の治療を可能にするために有効な濃度が、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約3w/vパーセントの範囲の自己組織化ペプチド濃度を含む、請求項113に記載の組成物。
  115. 溶液が、細胞を実質的に含まない、請求項111に記載の組成物。
  116. 溶液が、薬物を実質的に含まない、請求項111に記載の組成物。
  117. アンモニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1つの陽イオンをさらに含む、請求項111に記載の組成物。
  118. 塩化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンをさらに含む、請求項111に記載の組成物。
  119. 塩化カルシウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項117に記載の組成物。
  120. (RADA)(配列番号1)を約0.5重量/体積(w/v)パーセントの濃度で含む、請求項114に記載の組成物。
  121. 約0.125Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項120に記載の組成物。
  122. 約25Paの貯蔵弾性率を有する、請求項121に記載の組成物。
  123. 約0.250Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項120に記載の組成物。
  124. 約44Paの貯蔵弾性率を有する、請求項123に記載の組成物。
  125. 約0.500Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項120に記載の組成物。
  126. 約52Paの貯蔵弾性率を有する、請求項125に記載の組成物。
  127. (RADA)(配列番号1)を約2.5重量/体積(w/v)パーセントの濃度で含む、請求項114に記載の組成物。
  128. 約0.125Mの塩化カルシウム濃度を含む、請求項127に記載の組成物。
  129. 約600Paの貯蔵弾性率を有する、請求項128に記載の組成物。
  130. 約0.005Mから約1Mの間の塩濃度を含む、請求項114に記載の組成物。
  131. 約0.125Mから約0.500Mの間の塩濃度を含む、請求項130に記載の組成物。
  132. 約0.25Mの塩濃度を含む、請求項131に記載の組成物。
  133. 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および炭酸水素ナトリウムを含む溶液をさらに含む、請求項114に記載の組成物。
  134. 造影剤を含む溶液をさらに含む、請求項114に記載の組成物。
  135. 前記造影剤が、硫酸イオンおよびナトリウムイオンを含む、請求項134に記載の組成物。
  136. 約2.5〜約4.0のpHを有する、請求項111に記載の組成物。
  137. 溶液が約3.5のpHを有し、前記自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)および(KLDL)(配列番号3)のうちの1つである、請求項136に記載の組成物。
  138. 溶液が約3.7のpHを有し、前記自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である、請求項136に記載の組成物。
  139. 緩衝液をさらに含む、請求項111に記載の組成物。
  140. 前記緩衝液が少なくとも2種の塩を含む、請求項139に記載の組成物。
  141. 前記緩衝液がpH7.2である、請求項139に記載の組成物。
  142. 前記緩衝液がpH7.4である、請求項139に記載の組成物。
  143. 前記緩衝液がアルカリ緩衝液である、請求項139に記載の組成物。
  144. 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムのうちの少なくとも1つを約0.15Mで含む、請求項111に記載の組成物。
  145. 約0.6Mから約1.2Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(RADA)(配列番号1)である、請求項144に記載の組成物。
  146. 約0.02Mから約0.04Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(IEIK)I(配列番号2)である、請求項144に記載の組成物。
  147. 約0.1Mから約0.4Mの間の塩を含み、前記自己組織化ペプチドが(KLDL)(配列番号3)である、請求項144に記載の組成物。
  148. 被験体における肺の漏出を治療するために使用される、請求項111に記載の組成物。
  149. 前記被験体が哺乳動物である、請求項111に記載の組成物。
  150. 前記被験体がヒトである、請求項149に記載の組成物。
  151. 前記自己組織化ペプチドが、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸が交互に現れる約12〜約16アミノ酸を含む、請求項111に記載の組成物。
  152. 少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤をさらに含む、請求項111に記載の組成物。
  153. 被験体における肺の漏出の治療を容易にする方法であって、
    前記肺の漏出の治療を可能にするために、有効量および有効濃度の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む自己組織化ペプチドを含む溶液を提供して生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するステップと、
    前記溶液を前記肺の漏出の標的エリアに、前記肺の漏出に配置した送達デバイスを通じて前記溶液を導入することによって投与するための指示を提供するステップと
    を含む、方法。
  154. 前記肺の漏出の少なくとも一部を含む領域を可視化するための指示を提供するステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
  155. 前記肺の漏出の少なくとも一部を含む領域を可視化するための指示を提供するステップが、
    前記肺の漏出の前記標的エリアを同定するステップ;
    前記送達デバイスを導入するステップ;
    前記送達デバイスの末端を前記標的エリア内に配置するステップ;
    前記溶液を投与するステップ;
    前記送達デバイスを前記肺の漏出から除去するステップ;および
    前記送達デバイスを除去するステップの後に前記肺の漏出をモニタリングするステップ、
    のうちの少なくとも1つの間に前記領域を可視化するための指示を提供することを含む、請求項154に記載の方法。
  156. 前記溶液を投与するステップの後約1分〜約5分の時間内に前記領域を可視化するための指示を提供するステップをさらに含む、請求項154に記載の方法。
  157. 前記肺の漏出の標的エリアの寸法に一部基づいて前記有効量および前記有効濃度の少なくとも一方を調製するための指示を提供するステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
  158. 前記有効量が標的エリア1cm当たりおよそ1mLである、請求項157に記載の方法。
  159. 前記自己組織化ペプチドが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)からなる群より選択される、請求項153に記載の方法。
  160. 前記肺の漏出の予防を可能にするために有効な濃度が、約0.1重量/体積パーセント〜約3重量/体積パーセントペプチドの範囲の濃度を含む、請求項159に記載の方法。
  161. 前記肺の漏出の予防を可能にするために有効な量が、約0.1mL〜約5mLの範囲の体積を含む、請求項160に記載の方法。
  162. 前記標的エリアの周囲のエリアをモニタリングするための指示を提供するステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
  163. 外科手技後に前記溶液および使用のための指示を提供するステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
  164. 自己組織化ペプチドを含む溶液を提供するステップが、前記肺の漏出の予防を可能にするために生理的条件下でハイドロゲルバリアを形成するための有効濃度を有するペプチド溶液を調製するための指示を提供することを含む、請求項153に記載の方法。
  165. 複数の自己組織化ペプチドから本質的になる肉眼で見える足場であって、前記自己組織化ペプチドのそれぞれが、肺の漏出の標的エリア内に配置することが可能な有効量の約7アミノ酸〜約32アミノ酸を含む、肉眼で見える足場。
  166. 前記複数のペプチドのそれぞれが、(RADA)(配列番号1)、(IEIK)I(配列番号2)、および(KLDL)(配列番号3)のうちの1つを含む、請求項165に記載の肉眼で見える足場。
  167. 約10ナノメートル〜約20ナノメートルの直径を有するナノファイバーを含む、請求項166に記載の肉眼で見える足場。
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