JP2017507949A - マトリックスメタロプロテイナーゼ9に対する抗体およびその使用の方法 - Google Patents

マトリックスメタロプロテイナーゼ9に対する抗体およびその使用の方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP9)タンパク質(MMP9は、ゼラチナーゼ−Bとしても公知である)に結合する結合タンパク質、例えば、抗体およびその抗原結合断片を含む組成物および使用方法であって、例えば結合タンパク質が免疫グロブリン(Ig)重鎖(またはその機能性断片)およびIg軽鎖(またはその機能性断片)を含む組成物および使用方法を提供する。本開示は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP9)タンパク質(ゼラチナーゼ−Bとしても公知である)に結合する結合タンパク質、例えば、抗体およびその抗原結合断片を含む組成物および使用方法を提供する。

Description

関連出願への相互参照
該当せず。
分野
本開示は、細胞外酵素、細胞外マトリックス酵素、プロテアーゼおよび免疫学の分野に入る。
背景
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、細胞外マトリックスの形成およびリモデリングに関与する細胞外酵素のファミリーに属する。これらの酵素は、亜鉛原子が3つのヒスチジン残基によって配位されている保存された触媒ドメインを含有する。このファミリーのメンバーは20超が公知であり、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシン、マトリライシン、エナメリシンおよび膜MMPを含めたいくつもの群で構成されている。
MMP2およびMMP9は、マトリックスメタロプロテイナーゼのゼラチナーゼ群に属する。大多数のMMPに共通するシグナルペプチド、プロペプチド、触媒ドメイン、亜鉛結合ドメインおよびヘモペキシン(heamopexin)様ドメインを含有することに加えて、ゼラチナーゼは、複数のフィブロネクチン様ドメインおよびO−グリコシル化ドメインも含有する。MMPは、いくつもの疾患に関与する。MMPの阻害剤については、一部において特異性および有効性に関して、完全に十分であるとはいえない。したがって、特異的かつ有効なMMP阻害剤が必要とされている。
何十年にもわたって活発な薬物開発が行われており、2011年にCOPDに対する新しい治療クラス(ホスホジエステラーゼ−4阻害剤ロフルミラスト)がFDAにより承認されたにもかかわらず、症状、増悪、入院、および死亡率によって評価される通り、COPDにおけるまだ満たされていない必要性が残っている。疾患の進行または死亡率を変更する薬理学的療法は示されていない。COPDに対する非気管支拡張性機構を用いた多数の活発な開発プログラムが存在するが、許容される安全性を伴って炎症および疾患の進行の両方を変更する潜在力を有するものは殆どない。したがって、特に、利用可能な治療薬の効果がなかった被験体に対する、そのような疾患に有効な処置が必要とされている。
本明細書では、被験体における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置または防止するための方法であって、被験体に、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその機能性断片、および免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその機能性断片を含み、有効量の、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)に特異的に結合するMMP9結合タンパク質を投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP9)タンパク質(ゼラチナーゼ−Bとしても公知である)に結合する抗体またはその抗原結合断片である。MMP9またはその断片(例えば、抗原結合断片)に結合する抗体は、一般には、免疫グロブリン(Ig)重鎖(またはその機能性断片)およびIg軽鎖(またはその機能性断片)を含有する。重鎖は、一般には、IgG1もしくはIgG4などのIgGまたはその改変型である。軽鎖は、一般には、カッパ鎖である。
いくつかの実施形態では、MMP9結合タンパク質、例えば、抗体としては、MMP9に特異的に結合し、他の、関連するマトリックスメタロプロテイナーゼには結合しないものが挙げられる。そのようなMMP9結合タンパク質は、MMP9の特異的な調節(例えば、阻害)を、例えば、他のマトリックスメタロプロテイナーゼの活性には直接影響を及ぼすことなく得ることが必要である、またはそれが望ましい適用において使用される。したがって、本開示のある特定の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、MMP9の活性の特異的な阻害剤である。一部の態様では、本明細書に開示されているMMP9結合タンパク質は、MMP9を阻害する一方で、他の、関連するマトリックスメタロプロテイナーゼの正常な機能を可能にするために有用になる。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、MMP9のエピトープに特異的に結合し、該エピトープはMMP9の領域内のアミノ酸残基を含み、該領域は配列番号27の残基104〜119、残基159〜166または残基191〜202を含む。ある特定の実施形態では、領域は、配列番号27の残基104〜119、残基159〜166または残基191〜202からなる。一態様では、エピトープは、配列番号27のE111、D113、R162またはI198を含む。例えば、エピトープは、配列番号27の残基R162を含んでよい。ある特定の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。
抗体および断片は、それらのアミノ酸配列またはその一部、ならびに/または種々の機能、例えば、MMP9もしくはその特定のエピトープに対する結合特異性、または特定の抗体と結合について競合する能力、ならびに/または活性、例えば、MMP9を、例えば、非競合的に阻害する能力に関して記載することができる。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13、14、および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含むVH領域;ならびに配列番号16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを有するVL領域を含む。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13、14、および15のアミノ酸配列を含む3つのCDRを含むVH領域;ならびに配列番号16、17、および18のアミノ酸配列を含む3つのCDRを含むVL領域を含む。ある特定の実施形態では、VH領域は、配列番号3、5、6、7、および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、VL領域は配列番号4、9、10、11、および12からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体は、シグナルペプチドを伴わない配列番号49に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、およびシグナル配列を伴わない配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体は、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号48に記載のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体は、シグナルペプチドを伴わない配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖およびシグナルペプチドを伴わない配列番号46に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載の任意の抗体またはその抗原結合断片である。一実施形態では、被験体におけるCOPDを処置または防止するための方法は、被験体に、有効量の、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片を投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、MMP9のエピトープに結合し得、該エピトープは、配列番号27のアミノ酸残基104〜119、残基159〜166もしくは残基191〜202;または配列番号27のアミノ酸残基E111、D113、R162もしくはI198を含む。ある特定の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、タンパク質または抗体と、MMP9との結合について競合し得、該タンパク質または該抗体は、配列番号27のアミノ酸残基104〜119、残基159〜166もしくは残基191〜202;または配列番号27のアミノ酸残基E111、D113、R162もしくはI198に結合し得る。ある特定の他の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、タンパク質または抗体と、MMP9との結合について競合し得、該タンパク質または該抗体は、配列番号7、12、13、14、15、16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超の同一性(identify)を有する。さらなる実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13、14、および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域;配列番号16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを有する軽鎖可変(VL)領域;配列番号13、14、および15に記載のアミノ酸配列を含む3つのCDR(すなわち、CDR1〜3)を含むVH領域;または配列番号16、17、および18に記載のアミノ酸配列を含む3つのCDR(すなわち、CDR1〜3)を含むVL領域を含んでよい。一部のさらなる実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、配列番号3、5、6、7、および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVH領域;配列番号4、9、10、11、および12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL領域;配列番号56もしくは58に記載のアミノ酸配列を含む重鎖;または配列番号57もしくは59に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含んでよい。ある特定の別の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質、例えば、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片は、医薬組成物の状態である。
ある特定の実施形態では、MMP9結合タンパク質により、MMP9の酵素活性が阻害される。ある特定の実施形態では、酵素活性の阻害は非競合的である。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片またはその医薬組成物を、被験体に、約25mgから約800gまでの用量で投与する。いくつかの例では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片またはその医薬組成物を、被験体に、約200mg、約300mgまたは約400mgの投与量で、1週間、2週間または3週間の間隔で、または1週間毎に1回、2週間毎に1回または3週間毎に1回投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、被験体に、約400mgの投与量で2週間ごとに投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、被験体に、約200mgの投与量で2週間ごとに投与する。一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、被験体に、二段階手順:第1に、負荷投与量相(loading dose phase)(疾患に関連するMMP9の「標的シンク(target sink)」または高ベースライン濃度をカバーするためにより頻繁に投薬を行い、ここで、毎週約200mg、約300mgもしくは約400mgの投与量で、1週間、2週間もしくは3週間の間隔にわたる投薬範囲で被験体に投与する、または疾患に関連するMMP9の「標的シンク」もしくは高ベースライン濃度をカバーするためにより頻繁に投薬を行う)、および第2に、負荷投与量相後に予測可能なpKが確立されたら、より低い毎週の用量、例えば、150mg/週、125mg/週、100mg/週または50mg/週などで投与する。一部の実施形態では、より低い毎週の用量は、週ベースでより低い、例えば、150mg/週、125mg/週、100mg/週または50mg/週であってよい。一部の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片を約100mg、150mg、200mg、300mgまたは400mgの用量で投与する。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片またはその医薬組成物を、1週間、2週間または3週間の間隔、または1週間毎に1回、2週間毎に1回または3週間毎に1回投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片またはその医薬組成物を、静脈内、皮内または皮下に投与する。一実施形態では、抗MMP9抗体もしくはその抗原結合断片またはその組成物もしくは医薬製剤を皮下に投与する。他の実施形態では、抗MMP9抗体もしくはその抗原結合断片またはその組成物もしくは医薬製剤を静脈内に投与する。
ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片またはその医薬組成物を単独で、単独療法として投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片またはその医薬組成物を、併用療法の一部として、COPDを処置するための1種または複数種の他の治療剤と一緒に投与する。COPDを処置するための治療剤としては、これだけに限定されないが、1)短時間作用性β2刺激薬(例えば、サルブタモール(アルブテロール)、レバルブテロール(levalbuterol)、フェノテロール、テルブタリンなど)、2)短時間作用性抗コリン作用薬(例えば、イプラトロピウム臭化物、オキシトロピウム臭化物など)、3)長時間作用性β2刺激薬(例えば、ホルモテロール、アルホルモテロール(arfomoterol)、インダカテロール、サルメテロール、ツロブテロールなど)、4)長時間作用性抗コリン作用薬(例えば、アクリジニウム臭化物、グリコピロニウム臭化物、チオトロピウムなど)、5)短時間作用性β2刺激薬と抗コリン作用薬の組合せ(例えば、フェノテロール/イプラトロピウム、サルブタモール/イプラトロピウムなど)、6)吸入コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾンなど)、7)長時間作用性β2刺激薬とコルチコステロイドの組合せ(例えば、ホルモテロール/ブデソニド、ホルモテロール/モメタゾン、サルメテロール/フルチカゾンなど)、8)メチルキサンチン(例えば、アミノフィリン、テオフィリンなど)、9)ホスホジエステラーゼ−4(phosphosdiesterase-4)阻害剤(例えば、ロフルミラストなど)、10)全身性コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなど)が挙げられる。1種または複数種の他の治療剤は、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片と同時にまたは逐次的に投与することができる。一実施形態では、MMP9抗体またはその抗原結合断片は、短時間作用性β2刺激薬、短時間作用性抗コリン作用薬、長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性抗コリン作用薬、およびこれらの組合せからなる群から選択される治療剤と組み合わせることができる。抗MMP9抗体またはその抗原結合断片と1種または複数種の治療剤の組合せはいずれもβ2刺激薬、抗コリン作用薬、吸入コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、メチルキサンチン、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤またはこれらの組合せとさらに組み合わせることができる。
ある特定の実施形態では、被験体は、慢性気管支炎、気腫またはその両方を有する。ある特定の実施形態では、被験体はCOPDと診断されている。ある特定の実施形態では、被験体は、少なくとも6カ月間にGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)ガイドラインに従ってCOPDと診断されている。一部の実施形態では、被験体は、気管支拡張薬投与後の(post−bronchodilator)1秒間の努力呼気量(FEV)が予測値の≧40%である。一部の実施形態では、被験体は、気管支拡張薬投与後の1秒間の努力呼気量(FEV)が予測値の≧40%かつ≦80%である。一部の実施形態では、被験体は、30日以内にCOPDの薬物療法が変化していない。他の実施形態では、被験体は、1年で1回、2回またはそれ超の増悪を有する慢性気管支炎、気腫またはCOPDと診断される。一実施形態では、被験体は、本出願の処置前に、1年で2回またはそれ超の増悪、および肺機能の低下を有するCOPDと診断される。
ある特定の実施形態では、被験体は、臨床的に有意な活動性感染を有さない。ある特定の実施形態では、被験体は、QuantiFERON−TB GOLD検査陽性を有さない。ある特定の実施形態では、被験体は、6カ月以内に心筋梗塞、不安定なまたは生命にかかわる不整脈、心不全での入院などのあらゆる重篤な心臓事象、またはあらゆる有意なまたは新しい心電図(ECG)所見を有さない。ある特定の実施形態では、被験体は、ここ6カ月以内に、これだけに限定されないが、COPD、肺炎、細気管支炎などの呼吸器事象で入院していない。ある特定の実施形態では、被験体は、COPD以外の慢性肺疾患(例えば、喘息、嚢胞性線維症または線維性疾患、α1アンチトリプシン欠損症、間質性肺疾患、肺血栓塞栓性疾患または気管支拡張症など)を有さない。ある特定の実施形態では、被験体は、全身性コルチコステロイドの慢性使用および/または90日以内の、入院の必要がないCOPDの急性増悪(AECOPD)事象または他の医学的状態に対する全身性コルチコステロイドを用いた処置を示さない。ある特定の実施形態では、被験体は、無作為化の90日以内に、入院の必要がないAECOPD事象または他の医学的状態に対して、または、14日以内に、入院の必要がないあらゆる軽微な医学的事象に対して、抗生物質を用いた処置を受けていない。ある特定の実施形態では、被験体は、あらゆる販売されているまたは治験中の生物製剤による処置を、分子の5半減期以内に、または、未知の場合には90日以内に受けていない。ある特定の実施形態では、被験体は、これまでのところ、90日以内に、非生物学的免疫修飾薬物療法(アザチオプリン、シクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、トファシチニブなど)を受けていない。
本明細書に記載の種々の実施形態の性質の1つ、いくつかまたは全てを組み合わせて本発明の他の実施形態を形成できることが理解されるべきである。本発明のこれらおよび他の態様は、当業者には明らかである。本発明のこれらおよび他の実施形態を以下の発明の詳細な説明にさらに記載する。
図1は、マウスモノクローナル抗MMP9抗体(AB0041)の重鎖可変領域のアミノ酸配列を、重鎖(VH1〜VH4)のヒト化変異体のアミノ酸配列と一緒に示し、ヒト化によって生じるフレームワークのアミノ酸配列の差異を示すためにアラインメントした図である。CDRがイタリック体で示されており、ヒト化変異体において親マウスモノクローナルと比較して異なるアミノ酸に下線が引かれている。
図2は、マウスモノクローナル抗MMP9抗体(AB0041)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、この軽鎖(VH1〜VH4)のヒト化変異体のアミノ酸配列と一緒に示し、ヒト化によって生じるフレームワークのアミノ酸配列の差異を示すためにアラインメントした図である。CDRがイタリック体で示されており、ヒト化変異体において親マウスモノクローナルと比較して異なるアミノ酸に下線が引かれている。
図3は、MMP9タンパク質の概略図である。
図4は、AB0041、M4、およびM12と称される抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の間の比較を示す図である。
詳細な説明
本開示の実施には、別段の指定のない限り、細胞生物学、毒性学、分子生物学、生化学、細胞培養、免疫学、腫瘍学、組換えDNAの分野および当技術分野の技術の範囲内の関連する分野における標準の方法および従来の技法が使用される。そのような技法は、文献に記載されており、それにより、当業者が利用可能である。例えば、Alberts, B.ら、「Molecular Biology of the Cell」、第5版、Garland Science、New York、NY、2008年;Voet, D.ら、「Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level」、第3版、John Wiley & Sons、Hoboken、NJ、2008年;Sambrook, J.ら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年; Ausubel, F.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期的更新版; Freshney, R.I.、「Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique」、第4版、John Wiley & Sons、Somerset、NJ、2000年;および「Methods in Enzymology」シリーズ、Academic Press、San Diego、CAを参照されたい。例えば、「Current Protocols in Immunology」、(R. Coico、シリーズ編集者)、Wiley、2010年8月に最新更新されたものも参照されたい。
特定のMMPの異常な活性が腫瘍の成長、転移、炎症、自己免疫、および血管疾患において役割を果たす。例えば、Huら(2007年)Nature Reviews:Drug Discovery 6巻:480〜498頁を参照されたい。特定の治療的状況において1種または複数種のMMPの活性を阻害することが望ましい場合がある。しかし、特定の他のMMP、例えばMMP2の活性は、多くの場合、正常な機能のために必要であり、かつ/または疾患を防止する。大多数のMMP阻害剤は保存された触媒ドメインを標的とし、結果として、いくつもの異なるMMPを阻害するので、利用可能なMMP阻害剤を使用することにより、必須な、病原として関連しないMMPが阻害されることに起因する副作用が引き起こされている。これらの副作用は、より広範に亜鉛要求性酵素の阻害を含めた、これらの阻害剤の多くによって引き起こされる一般的な亜鉛キレート化にも起因する可能性がある。
特定のMMPに特異的なまたはMMPを選択する阻害剤の開発に伴う難題は、基質競合機構による酵素活性の阻害には、一般に、阻害剤を触媒ドメインにターゲティングすることが必要であるという事実に関連する。MMP触媒ドメインの相同性により、阻害剤が1つ超のMMPとの反応を引き起こし得る。提供される実施形態としては、単一のMMPの触媒活性を特異的に阻害するまたはMMP9などの複数のMMPを選択し、また、ある特定の他のMMPまたはあらゆる他のMMPとは反応しないまたはそれを阻害しない抗体およびその抗原結合断片などの治療用試薬を含めた作用剤がある。提供される実施形態としては、慢性閉塞性肺障害(COPD)を処置するための方法およびその使用もある。ある特定の実施形態では、本開示のMMP9結合タンパク質(複数可)は、一般的な大きな触媒ドメインに結合するが、基質ポケットには結合せず、他のアロステリックな機構によって作用するようである(例えば、本開示のMMP9結合タンパク質は、基質と結合について競合せず、基質の存在または基質濃度に依存せずに阻害する)。
本明細書では、被験体における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置または防止するための方法であって、被験体に、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその機能性断片、および免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその機能性断片を含み、有効量の、MMP9に特異的に結合するマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)結合タンパク質を投与するステップを含む方法が提供される。COPDの処置または防止において使用するための組成物であって、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその機能性断片、および免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその機能性断片を含み、MMP9に特異的に結合するマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)結合タンパク質を含む組成物も提供される。COPDを処置または防止するための医薬の製造における、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)結合タンパク質の使用であって、該MMP9タンパク質が、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその機能性断片、および免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその機能性断片を含み、該MMP9結合タンパク質がMMP9に特異的に結合する使用も提供される。本明細書に記載の任意のMMP9結合タンパク質(例えば、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片)を本明細書に記載の方法において使用することができる。
本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、別段の指定のない限り、複数への言及を包含する。
「約」値またはパラメータへの言及は、本明細書では、本技術分野の当業者には容易に分かる、それぞれの値についての通常の誤差範囲を指す。「約」値またはパラメータへの言及は、本明細書では、その値またはパラメータそれ自体を対象とする態様を包含する(および記載する)。例えば、「約X」に関する記載は、「X」についての記載を包含する。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、示されている量±1%〜10%を包含する。他の実施形態では、「約」という用語は、示されている量±5%を包含する。ある特定の他の実施形態では、「約」という用語は、示されている量±1%を包含する。ある特定の他の実施形態では、「約」という用語は、示されている量±10%を包含する。
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、および「から本質的になる(consisting essentially of)」態様および実施形態を包含することが理解される。
特許出願および刊行物を含めた、本明細書において引用された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
MMP9結合タンパク質
MMP9により、基底膜コラーゲンおよび他の細胞外マトリックス(ECM)構成成分が分解される。Kessenbrock Kら、「Matrix metalloproteinases: regulators of the tumor microenvironment」、Cell(2010年);141巻(1号):52〜67頁。マトリックス分解は、関節炎、がん、および潰瘍性大腸炎を含めた複数の疾患における病理に寄与する。Roy Rら、「Matrix metalloproteinases as novel biomarkers and potential therapeutic targets in human cancer」、J Clin Oncol (2009年);27巻(31号):5287〜97頁。炎症およびがんの動物モデルでは、マリマスタットなどの広範囲にわたるマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が効果的である(Watson SAら、「Inhibition of tumour growth by marimastat in a human xenograft model of gastric cancer: relationship with levels of circulating CEA」、Br J Cancer (1999年);81巻(1号):19〜23頁;Sykes APら、「The effect of an inhibitor of matrix metalloproteinases on colonic inflammation in a trinitrobenzenesulphonic acid rat model of inflammatory bowel disease」、Aliment Pharmacol Ther (1999年);13巻(11号):1535〜42頁)。しかし、そのような汎阻害剤により、一般には、ヒトでは、マリマスタットの効果的な用量レベルまたはその付近で、集合的に筋骨格症候群(MSS)と称される手、腕、および肩の関節の凝り、炎症、および疼痛を含めた筋骨格の副作用が引き起こされる恐れがある。Peterson JT. 「The importance of estimating the therapeutic index in the development of matrix metalloproteinase inhibitors」、Cardiovasc Res (2006年);69巻(3号):677〜87頁;Tierney GMら 「A pilot study of the safety and effects of the matrix metalloproteinase inhibitor marimastat in gastric cancer」、Eur J Cancer (1999年);35巻(4号):563〜8頁;Wojtowicz−Praga Sら、「Phase I trial of Marimastat、a novel matrix metalloproteinase inhibitor, administered orally to patients with advanced lung cancer」、J Clin Oncol (1998年);16巻(6号):2150〜6頁。症状は用量依存性かつ時間依存性であり、汎MMP阻害剤を用いた処置を休止したすぐ後には可逆的である。Wojtowicz−Praga S、1998年;Nemunaitis Jら、「Combined analysis of studies of the effects of the matrix metalloproteinase inhibitor marimastat on serum tumor markers in advanced cancer: selection of a biologically active and tolerable dose for longer−term studies」、Clin Cancer Res (1998年);4巻(5号):1101〜9頁;Hutchinson JWら、「Dupuytren’s disease and frozen shoulder induced by treatment with a matrix metalloproteinase inhibitor」、The Journal of bone and joint surgery. British volume (1998年);80巻(5号):907〜8頁。マリマスタットおよび他の同じクラスの汎MMP阻害剤は亜鉛キレート化剤である。Peterson JT、2006年。ホモ接合性MMP9ノックアウトマウスは、MSS様症状もMSS様組織変化も示さない。Vu THら、「MMP−9/gelatinase B is a key regulator of growth plate angiogenesis and apoptosis of hypertrophic chondrocytes」、Cell (1998年);93巻(3号):411〜22頁。
本開示は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP9)タンパク質(MMP9は、ゼラチナーゼ−Bとしても公知である)に結合する結合タンパク質、例えば、抗体およびその断片(例えば、抗原結合断片)、例えば、配列番号27または配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するヒトMMP9などのヒトMMP9を提供する。本開示の結合タンパク質は、一般には、免疫グロブリン(Ig)重鎖(またはその機能性断片)およびIg軽鎖(またはその機能性断片)を含む。
本開示は、さらに、MMP9に特異的に結合し、MMP1、MMP2、MMP3、MMP7、MMP9、MMP10、MMP12、およびMMP13などの他のマトリックスメタロプロテイナーゼには結合しないMMP9結合タンパク質を提供する。したがって、そのような特異的なMMP9結合タンパク質は、一般に、非MMP9マトリックスメタロプロテイナーゼとは有意にまたは検出可能に交差反応しない。MMP9に特異的に結合するMMP9結合タンパク質は、例えば、他のマトリックスメタロプロテイナーゼの活性には直接影響を及ぼすことなく、MMP9の特異的な調節(例えば、阻害)を得ることが必要である、またはそれが望ましい適用において使用される。
本開示のある特定の実施形態では、抗MMP9抗体は、MMP9の活性の阻害剤であり、MMP9の特異的な阻害剤であってよい。具体的には、本明細書に開示されているMMP9結合タンパク質は、MMP9の阻害に有用である一方で、他の、関連するマトリックスメタロプロテイナーゼの正常な機能を可能にする。「MMPの阻害剤」または「MMP9活性の阻害剤」とは、これだけに限定されないが、酵素的プロセシング(enzymatic processing)、MMP9のその基質に対する作用の阻害(例えば、基質の結合、基質の切断などを阻害することによる)などを含め、直接的に、または間接的にMMP9の活性を阻害する抗体またはその抗原結合断片であってよい。
いくつかの実施形態では、本明細書の実施例において実証されている通り、汎MMP阻害剤、例えばマリマスタットなどの小分子汎阻害剤などを使用して処置することにより、歩行、姿勢および動く意欲に対する実質的な影響、ならびに関節への甚大な組織学的損傷を含めた、筋骨格症候群(MSS)などの筋骨格疾患の症状が生じるが、MMP9の特異的な阻害、例えば、本出願における抗体またはその抗原結合断片などでは、そのような症状は引き起こされず、MSSは誘導されない。
本開示は、ヒトMMP9、カニクイザルMMP9、およびラットMMP9などの非マウスMMP9に特異的に結合するMMP9結合タンパク質も提供する。
本開示は、非競合的な阻害剤としての機能を果たすMMP9結合タンパク質(例えば、抗MMP9抗体およびその機能性断片)も提供する。「非競合的な阻害剤」とは、酵素の基質結合部位から離れた部位に結合する、したがって、酵素がその基質と結合するか否かにかかわらず酵素に結合し、阻害活性に影響を及ぼすことができる阻害剤を指す。そのような非競合的な阻害剤により、例えば、基質濃度に実質的に非依存性であり得る阻害のレベルをもたらすことができる。
本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)を有するものを包含する。一部の例では、本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドに対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)を有するものを包含する。
本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチド(light polypeptide)(またはその機能性断片)を有するものを包含する。本開示のMMP9結合タンパク質は、MMP9、特に、ヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている軽鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)を有するものを包含する。一部の例では、本開示のMMP9結合タンパク質は、MMP9、特に、ヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている軽鎖ポリペプチドに対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)を有するものを包含する。
本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドの相補性決定領域(「CDR」)を有する重鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)および軽鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)のCDRを有するものを包含する。
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、本明細書において核酸およびポリペプチドに関して使用される場合、それぞれ、アミノ酸配列または核酸配列のアラインメントに基づいた2つのポリペプチド間または2つの核酸分子間の関係を指す。相同性および同一性は、それぞれ比較するためにアラインメントすることができる各配列内の位置を比較することによって決定することができる。比較する配列内の同等の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有されていれば、それらの分子はその位置において同一であり、同等の部位が同じまたは類似したアミノ酸残基(例えば、立体的本質および/または電子的本質が類似している)によって占有されていれば、その分子は、その位置において相同である(類似した)と称することができる。相同性/類似性または同一性の百分率としての表示とは、比較される配列によって共有される位置における同一のまたは類似したアミノ酸の数の関数を指す。2つの配列の比較において、残基(アミノ酸または核酸)が存在しないことまたは余分の残基が存在することによっても、同一性および相同性/類似性が低下する。
本明細書で使用される場合、「同一性」とは、配列をアラインメントして配列マッチングを最大にした場合、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮に入れた場合に、2つ以上の配列内の対応する位置にある同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の百分率を意味する。配列は、一般に、指定の領域、例えば、少なくとも約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65またはそれ超のアミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたって、および参照アミノ酸またはヌクレオチドの全長に至ってよい領域にわたって一致が最大になるようにアラインメントされる。配列比較のために、一般には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータプログラムにインプットし、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムにより、試験配列(複数可)について、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列と比較してパーセント配列同一性を算出する。
パーセント配列同一性を決定するために適したアルゴリズムの例はBLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschulら(1990年)J. Mol. Biol. 215巻:403〜410頁およびAltschulら(1977年)Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)を通じて公的に入手可能である。別の例示的なアルゴリズムとしては、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.htmlにおいて入手可能なClustalW(Higgins D.ら(1994年)Nucleic Acids Res 22巻:4673〜4680頁)が挙げられる。
同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換によって異なり得る。保存的アミノ酸置換とは、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびトレオニンであり、アミドを含有する側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリシン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄を含有する側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。
2つの核酸の間の配列同一性を、2つの分子の、ストリンジェントな条件下での互いとのハイブリダイゼーションに関して記載することもできる。ハイブリダイゼーション条件は当技術分野における標準の方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(1989年)Cold Spring Harbor、N.Y.を参照されたい)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃以上、0.1×SSC(15mMの塩化ナトリウム/1.5mMのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、溶液:50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性せん断サケ精子DNA中、42℃で一晩インキュベートし、その後、フィルターを0.1×SSC中、約65℃で洗浄することである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、少なくとも上記の代表的な条件と同様にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、条件は、上記の特定のストリンジェントな条件と少なくとも約80%同様にストリンジェント、一般には、少なくとも90%同様にストリンジェントであれば、少なくとも同様にストリンジェントであるとみなされる。
したがって、本開示は、例えば、本明細書に記載の重鎖可変領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号1または配列番号5〜8)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域ポリペプチド、および本明細書に記載の軽鎖ポリペプチド(例えば、配列番号2または配列番号9〜12)のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。一実施形態では、本開示は、配列番号7に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域ポリペプチド、および配列番号12に記載の軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。さらなる例では、本開示は、配列番号32、40または47に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域ポリペプチド、および配列番号33、41または48に記載の軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号32、40または47に記載の重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域ポリペプチド、および配列番号33、41または48に記載の軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。さらなる実施形態では、本出願は、配列番号7、12、13、14、15、16、17または18に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質または抗体との結合について競合し得る抗体またはその抗原結合断片を提供する。
本開示の抗MMP9抗体の例を、以下により詳細に記載する。
抗体
MMP9結合タンパク質は、MMP9に特異的に結合するものなどの抗体およびその機能性断片を含む。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原エピトープに特異的に結合するペプチド配列(例えば、可変領域の配列)を含む、単離された、または組換え型のポリペプチド結合作用剤を意味する。この用語は、その最も広範な意味で使用され、特にモノクローナル抗体(全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ、ダイアボディ(diabody)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに、所望の生物活性を示す限りは、これだけに限定されないが、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)およびFabを含めた抗体断片を包含する。「ヒト抗体」という用語は、可能な非ヒトCDR領域以外はヒト起源の配列を含有する抗体を指し、また、免疫グロブリン分子の完全な構造が存在することを意味するものではなく、抗体が、ヒトにおいて最小の免疫原性作用を有する(すなわち、それ自体に対する抗体の産生を誘導しない)ことのみを意味する。
「抗体断片」とは、全長の抗体の一部、例えば、全長の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。そのような抗体断片は、本明細書では、「機能性断片」または「抗原結合断片」とも称することができる。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体(Zapataら(1995年)Protein Eng. 8巻(10号):1057〜1062頁);単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と称される、それぞれが単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片、および残りの、容易に結晶化することができることが名称に反映された「Fc」断片が生じる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原と架橋することができるF(ab’)断片がもたらされる。
「Fv」とは、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが密接に非共有結合で会合した二量体からなる。この立体配置では、各可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR)が相互作用してV−V二量体の表面上に抗原結合部位が確定される。集合的に、6つのCDRにより抗原との結合の特異性が抗体に付与される。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な6つのCDRのうちの3つしか含まない単離されたV領域またはV領域)でさえ、抗原を認識し、それに結合することができるが、一般に親和性はFv断片全体よりも低い。
「Fab」断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に加えて、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH)も含有する。Fab断片は、抗体のパパイン消化後に最初に観察された。Fab’断片は、F(ab’)断片が重鎖CHドメインのカルボキシ末端に抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含めたいくつかの追加の残基を含有するという点でFab断片とは異なる。F(ab’)断片は、ヒンジ領域の近くでジスルフィド結合によってつながった2つのFab断片を含有し、また、抗体のペプシン消化後に最初に観察された。Fab’−SHとは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離型のチオール基を担持するFab’断片に対する名称である。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと称される2つの明白に異なる種類の一方に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVドメインおよびVドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、sFvが抗原と結合するための所望の構造を形成することが可能になる。sFvの概説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻(RosenburgおよびMoore編)Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内で接続した重鎖可変ドメイン(V)と軽鎖可変ドメイン(V)(V−V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合が可能になるには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと対合させ、それにより、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、さらに、例えば、EP404,097;WO93/11161、およびHollingerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444〜6448頁に記載されている。
「単離された」抗体とは、その天然の環境の構成成分から同定され、分離および/または回収された抗体である。その天然の環境の構成成分は、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、(1)Lowry法によって決定したところ、抗体の95重量%超、例えば、99重量%超まで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用することによって少なくとも15残基のN末端または内部のアミノ酸配列を得るために十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー(Coomassie blue)または銀染色による検出を用いた、還元条件下または非還元条件下でのゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)によって均一になるまで、精製される。組換え細胞内のin situ抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないので、「単離された抗体」という用語に包含される。ある特定の実施形態では、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
本明細書で使用される場合、「免疫反応性の」とは、他のペプチド/タンパク質に対して交差反応性であっても、アミノ酸残基の配列(「結合部位」または「エピトープ」)に特異的であって、ヒトへの使用のために投与するために製剤化されるレベルにおいて毒性でない抗体またはその断片を指す。「エピトープ」とは、抗体またはその抗原結合断片との結合相互作用を形成することができる抗原の部分を指す。エピトープは、直鎖ペプチド配列(すなわち、「連続的」)であってもよく、連続していないアミノ酸配列で構成されてもよい(すなわち、「立体構造」または「不連続」)。「優先的に結合する」という用語は、結合作用剤が、結合部位に、無関係のアミノ酸配列に結合するよりも大きな親和性で結合することを意味する。
抗MMP9抗体は、重鎖および軽鎖のCDRに関して記載することができる。本明細書で使用される場合、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域において見出される連続していない抗原結合部位を意味するものとする。これらの特定の領域は、Kabatら、J. Biol. Chem. 252巻:6609〜6616頁(1977年);Kabatら、U.S. Dept. of Health and Human Services、「Sequences of proteins of immunological interest」(1991年);Chothiaら、J. Mol. Biol. 196巻:901〜917頁(1987年);およびMacCallumら、J. Mol. Biol.262巻:732〜745頁(1996年)によって記載されており、定義は、互いに比較した場合にアミノ酸残基のオーバーラップまたはサブセットを含む。それにもかかわらず、いずれの定義を適用して抗体または移植抗体またはその変異体のCDRについて言及することも、本明細書において定義され、使用されるこの用語の範囲内であるものとする。上で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基は以下の表1Aに比較として記載されている。
本明細書で使用される場合、「フレームワーク」という用語は、抗体可変領域に関して使用される場合、抗体の可変領域内のCDR領域の外側の全てのアミノ酸残基を意味するものとする。可変領域フレームワークは、一般に、長さが約100アミノ酸から約120アミノ酸の間の不連続なアミノ酸配列であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを指すものとする。本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」という用語は、CDRによって分離されているフレームワークの各ドメインを意味するものとする。
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含する。したがって、非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリンである。非ヒト配列は、主に可変領域、特に相補性決定領域(CDR)に位置する。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基で置き換えられている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDRやフレームワーク配列にも見出されない残基も含んでよい。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDRの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域に対応する。本開示の目的に関して、ヒト化抗体は、免疫グロブリン断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または他の抗体の抗原結合部分配列も含んでよい。
ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、一般には、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)も含んでよい。例えば、Jonesら(1986年)Nature 321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323〜329頁;およびPresta(1992年)Curr. Op. Struct. Biol. 2巻:593〜596頁を参照されたい。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野で公知である。一般に、ヒト化抗体には、非ヒトである供給源から1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」または「ドナー」残基と称され、一般には、「移入」または「ドナー」可変ドメインから得られる。例えば、ヒト化は、基本的にWinterおよび共同研究者の方法に従って、げっ歯類CDRまたはCDR配列で対応するヒト抗体の配列を置換することによって実施することができる。例えば、Jonesら、上記;Riechmannら、上記およびVerhoeyenら(1988年)Science 239巻:1534〜1536頁を参照されたい。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、実質的にインタクトなヒト可変ドメイン未満が非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)を包含する。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、いくつかのCDR残基、および必要に応じていくつかのフレームワーク領域残基がげっ歯類抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)の類似の部位由来の残基で置換されているヒト抗体である。
ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリーを使用することによっても産生することができる。Hoogenboomら(1991年)J. Mol. Biol、227巻:381頁;Marksら(1991年)J. Mol. Biol. 222巻:581頁。ヒトモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、Coleら(1985年)「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss、77頁およびBoernerら(1991年)J. Immunol. 147巻:86〜95頁に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に、または完全に不活性化されたトランスジェニック動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。免疫学的に攻撃するとヒト抗体産生が観察され、これはヒトにおいて見られるものと、遺伝子再構成、集合、および抗体レパートリーを含めたあらゆる点でよく似ている。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、および以下の科学的刊行物に記載されている:Marksら(1992年)Bio/Technology 10巻:779〜783頁(1992年);Lonbergら(1994年)Nature 368巻:856〜859頁;Morrison(1994年)Nature 368巻:812〜813頁;Fishwaldら(1996年)Nature Biotechnology 14巻:845〜851頁;Neuberger(1996年)Nature Biotechnology 14巻:826頁;およびLonbergら(1995年)Intern. Rev. Immunol. 13巻:65〜93頁。
抗体は、上記の公知の選択方法および/または変異誘発方法を使用して親和性成熟させることができる。いくつかの実施形態では、親和性成熟した抗体は、成熟抗体を調製する出発抗体(一般にマウス、ウサギ、ニワトリ、ヒト化またはヒト)の親和性よりも5倍以上、10倍以上、20倍以上、または30倍以上の親和性を有する。
抗体は二重特異性抗体であってもよい。二重特異性抗体はモノクローナルであり、少なくとも2種の異なる抗原に対して結合特異性を有するヒト抗体またはヒト化抗体であってよい。この場合、2つの異なる結合特異性は、2つの異なるMMP、または単一のMMP(例えば、MMP9)上の2つの異なるエピトープに対するものであってよい。
本明細書に開示されている抗体は、免疫コンジュゲートであってもよい。そのような免疫コンジュゲートは、第2の分子、例えば、レポーターにコンジュゲートした抗体(例えば、MMP9に対する)を含む。免疫コンジュゲートは、細胞傷害性薬剤、例えば、化学療法剤、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはその断片)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート(radioconjugate))とコンジュゲートした抗体も含んでよい。
特定のポリペプチドまたはエピトープに「特異的に結合する」または「特異的な」抗体とは、抗体と標的抗原またはエピトープの選択的結合を指し、これらの用語および特異的な結合を決定するための方法は当技術分野においてよく理解されている。抗体は、標的抗原またはエピトープと、他の物質よりも大きな親和性、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い持続時間で結合する場合に、特定の標的抗原またはエピトープに対する「特異的な結合」を示す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはエピトープに特異的に結合する抗体とは、他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープのいずれにも実質的に結合することなく特定のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、提供される抗体は、ヒトMMP9に、約4℃、25℃、37℃または42℃の温度で測定して、モノクローナル抗体、scFv、Fabの形態、または抗体の他の形態で、100nM以下、必要に応じて10nM未満、必要に応じて1nM未満、必要に応じて0.5nM未満、必要に応じて0.1nM未満、必要に応じて0.01nM未満、または必要に応じて0.005nM未満、特定の例では、0.1nMから0.2nMまでの間、または0.1pMから10pMの間、例えば、0.4pMから9pMの間、例えば、0.4pMから8.8pMの間の解離定数(K)で特異的に結合する。
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、MMP9の1つまたは複数のプロセシング部位(例えば、タンパク質分解的切断の部位)に結合し、それにより、プロ酵素またはプレプロ酵素がプロセシングされて触媒として活性な酵素になることを有効に遮断し、したがって、MMP9のタンパク質分解活性を低下させる。
ある特定の実施形態では、本開示による抗体は、MMP9に、別のMMPに対するその結合親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍大きな親和性で結合する。結合親和性は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができ、例えば、会合速度(on−rate)、解離速度(off−rate)、解離定数(K)、平衡定数(Keq)または当技術分野における任意の用語として表すことができる。
ある特定の実施形態では、本開示による抗体は、MMP9の酵素(すなわち、触媒)活性を阻害する抗体、例えば、MMP9の触媒活性の非競合的な阻害剤である。ある特定の実施形態では、本開示による抗体は、MMP9の触媒ドメイン内に結合する。さらなる実施形態では、本開示による抗体は、MMP9の触媒ドメインの外側に結合する。
本明細書に記載の抗MMP9抗体またはその抗原結合断片の任意の1つまたは複数と、MMP9との結合について競合する抗体またはその抗原結合断片も提供される。したがって、本開示は、例えば、配列番号1または配列番号5〜8のいずれかの重鎖ポリペプチド、配列番号2または配列番号9〜12の軽鎖ポリペプチド、またはそれらの組合せを有する抗体との結合について競合する抗MMP9抗体およびその機能性断片を意図している。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその機能性断片は、本明細書においてAB0041と記載されている抗体と、ヒトMMP9との結合について競合する。一部の実施形態では、抗MMP9抗体またはその機能性断片は、AB0045として本明細書に記載されている抗体と、ヒトMMP9との結合について競合する。ある特定の実施形態では、抗MMP9抗体またはその機能性断片は、AB0046として本明細書に記載されている抗体と、ヒトMMP9との結合について競合する。さらなる実施形態では、抗MMP9抗体またはその機能性断片は、M4として本明細書に記載されている抗体と、ヒトMMP9との結合について競合する。他の実施形態では、抗MMP9抗体またはその機能性断片は、M12として本明細書に記載されている抗体と、ヒトMMP9との結合について競合する。
本明細書に記載の抗体の任意の1つまたは複数と同じエピトープ、例えば、MMP9エピトープに結合する抗体およびその断片も提供される。MMP9のエピトープに特異的に結合する抗体および断片も提供され、エピトープは、MMP9の特定の領域またはMMP9の複数の領域内のアミノ酸残基を含む。さらに、本明細書に記載のエピトープまたは領域に結合するタンパク質または抗体との結合について競合する抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が提供される。そのような領域は、例えば、MMP9の構造ループおよび/または他の構造ドメイン、例えば、本明細書に記載の例示的な抗体と結合するために重要であることが示されているものを含んでよい。一般には、領域は、全長のMMP9配列、例えば、配列番号27におけるアミノ酸残基の位置に従って定義される。一部の例では、エピトープは、配列番号27のアミノ酸残基104〜202を含有する。一例では、エピトープは、配列番号27の残基104〜119、残基159〜166、または残基191〜202である領域内のアミノ酸残基(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸残基)を含有する。一部の態様では、エピトープは、配列番号27の残基104〜119であるMMP9の領域内のアミノ酸残基(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸残基)、配列番号27の残基159〜166であるMMP9の領域内のアミノ酸残基、および配列番号27の残基191〜202であるMMP9の領域内のアミノ酸残基を含む。一部の場合には、エピトープは、配列番号27のE111、D113、R162、またはI198を含む。一部の場合には、エピトープは配列番号27のR162を含む。一部の場合には、エピトープは、配列番号27のE111、D113、R162、およびI198を含む。
MMP9配列
ヒトMMP9タンパク質のアミノ酸配列は以下の通りである:
タンパク質ドメインは、図3に概略的に示されており、また、以下に示されている:
アミノ酸番号 特徴
1〜19 シグナルペプチド
38〜98 ペプチドグリカン結合ドメイン
R98/C99 システインスイッチ活性ポケット
112〜445 Zn依存性メタロプロテイナーゼドメイン
223〜271 フィブロネクチンII型ドメイン(ゼラチン結合ドメイン)
281〜329 フィブロネクチンII型ドメイン(ゼラチン結合ドメイン)
340〜388 フィブロネクチンII型ドメイン(ゼラチン結合ドメイン)
400〜411 Zn結合領域
521〜565 ヘモペキシン様ドメイン
567〜608 ヘモペキシン様ドメイン
613〜659 ヘモペキシン様ドメイン
661〜704 ヘモペキシン様ドメイン
成熟全長ヒトMMP9のアミノ酸配列(シグナルペプチドを伴わない配列番号27のプロポリペプチドのアミノ酸配列である)は:

である。
シグナルペプチドのアミノ酸配列はMSLWQPLVLVLLVLGCCFA(配列番号29)である。
ミュータントMMP9ポリペプチドを含めた、MMP9ポリペプチドも提供される。そのようなペプチドは、例えば、本明細書において提供される抗体および断片を生成および選択することにおいて有用である。例示的なポリペプチドとしては、配列番号27の残基111〜198を含有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、および配列番号27の残基111〜198を含有するアミノ酸配列を有し、配列番号27の残基111、113、162、もしくは198にアミノ酸置換を有する、またはそのような残基全てにアミノ酸置換を有するポリペプチドが挙げられる。そのようなポリペプチドは、例えば、本明細書に記載のものなどの、そのような残基を含有するエピトープおよび/またはMMP9のそのような残基が結合のために重要であるエピトープに結合する抗体を選択することにおいて使用が見出される。
本開示は、MMP9、例えば、ヒトMMP9の任意の部分に結合するMMP9結合タンパク質を意図しており、他のMMPと比較してMMP9に優先的に結合するMMP9結合タンパク質が特に興味深い。
抗MMP9抗体およびその機能性断片は、当技術分野で周知の方法に従って生成することができる。例示的な抗MMP9抗体が以下に提供される。
マウスモノクローナル抗MMP9抗体
ヒトMMP9に対するマウスモノクローナル抗体を同様に得た。この抗体は、マウスIgG2b重鎖およびマウスカッパ軽鎖を含有し、AB0041と称される。
AB0041重鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
シグナル配列に下線が引かれており、IgG2b定常領域の配列がイタリック体で示されている。シグナルペプチドを伴わないAB0041抗体の重鎖は配列番号58に記載されている配列を有する。
AB0041軽鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
シグナル配列に下線が引かれており、カッパ定常領域の配列がイタリック体で示されている。シグナルペプチドを伴わないAB0041抗体の軽鎖は配列番号59に記載されている配列を有する。
以下のアミノ酸配列は、AB0041のIgG2b重鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
以下のアミノ酸配列は、AB0041のカッパ軽鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
他の例示的なマウス抗ヒトMMP9抗体(例えば、M4およびM12)が本明細書に記載されている。例示的な抗マウスMMP9抗体(AB0046)が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、そのような抗マウス抗体の、本明細書において提供されるMMP9−阻害方法、例えば、処置方法を試験し、評価するための代理抗体としての使用が提供される。
重鎖変異体
AB0041重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域の配列を変更することによって、別々に改変した。これらの配列変更の効果は、ヒトT細胞エピトープの抗体を枯渇させ、それにより、ヒトにおけるその免疫原性を低下させるまたは無効にすることであった(Antitope、Babraham、UK)。
ヒンジドメインを安定化するS241Pアミノ酸変化(Angalら(1993年)Molec. Immunol. 30巻:105〜108頁)を含有するヒトIgG4重鎖バックグラウンドで、4種の重鎖変異体を構築し、VH1、VH2、VH3およびVH4と名付けた。それらのフレームワーク領域およびCDRのアミノ酸配列は、以下の通りである:
図1に、ヒト化重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアラインメントが示され、4種の変異体の間のフレームワーク領域内のアミノ酸配列の差異が示されている。
軽鎖変異体
ヒトカッパ鎖バックグラウンドで、4種の軽鎖変異体を構築し、Vk1、Vk2、Vk3およびVk4と名付けた。それらのフレームワーク領域およびCDRのアミノ酸配列は以下の通りである:
図2に、ヒト化軽鎖の可変領域のアミノ酸配列のアラインメントが示され、4種の変異体の間のフレームワーク領域内のアミノ酸配列の差異が示されている。
ヒト化重鎖および軽鎖を、可能性のある対組合せの全てに組み合わせて、いくつもの機能的なヒト化抗MMP9抗体を生成する。例えば、配列番号3、5、6、7、および8のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域を有する抗体;配列番号4、9、10、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗体;および配列番号3、5、6、7、および8のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域および配列番号4、9、10、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗体、ならびにそのような抗体とMMP9との結合について競合する抗体、およびそのような抗体に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有する抗体が提供される。一例では、抗体は、配列番号7に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域および配列番号12と少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域、または配列番号7のVH領域および配列番号12のVL領域を有する。さらなる例では、抗体は、配列番号7に対して少なくともまたは約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域を有する。別の例では、抗体は、配列番号12に対して少なくともまたは約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域を有する。一部の例では、抗体は、配列番号7のVH領域および配列番号12のVL領域を有する。
本明細書に開示されている重鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有する追加の重鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。さらに、本明細書に開示されている軽鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有する追加の軽鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。
本明細書に開示されている重鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の配列同一性を有する追加の重鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。さらに、本明細書に開示されている軽鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の配列同一性を有する追加の軽鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。
相補性決定領域(CDR)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている例示的な提供される抗MMP9抗体の重鎖のCDRは以下のアミノ酸配列を有する:
CDR1:GFSLLSYGVH(配列番号13)
CDR2:VIWTGGTTNYNSALMS(配列番号14)
CDR3:YYYGMDY(配列番号15)
したがって、提供される抗MMP9抗体としては、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1領域を有する抗体、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2領域を有する抗体、および配列番号15に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3領域を有する抗体、およびMMP9上のそのような抗体と同じエピトープとの結合について競合する、またはそれに結合する抗体が挙げられる。一部の場合には、抗体は、配列番号15に記載の配列を有するVH CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号13および14に記載の配列を有するVH CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号13および15に記載の配列を有するVH CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号14および15に記載の配列を有するVH CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号13、14および15に記載の配列を有するVH CDRを含有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている例示的な抗MMP9抗体の軽鎖のCDRは以下のアミノ酸配列を有する:
CDR1:KASQDVRNTVA(配列番号16)
CDR2:SSSYRNT(配列番号17)
CDR3:QQHYITPYT(配列番号18)
したがって、提供される抗MMP9抗体としては、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1領域を有する抗体、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2領域を有する抗体、および配列番号18に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3領域を有する抗体、およびMMP9上のそのような抗体と同じエピトープとの結合について競合する、またはそれに結合する抗体が挙げられる。一部の場合には、抗体は、配列番号18に記載の配列を有するVL CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号16および17に記載の配列を有するVL CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号16および18に記載の配列を有するVL CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号17および18に記載の配列を有するVL CDRを含有する。一部の場合には、抗体は、配列番号16、17および18に記載の配列を有するVL CDRを含有する。
例示的なヒト化変異体抗MMP9抗体AB0045(ヒト化、改変IgG4(S241P))は、ヒト化AB0041重鎖変異体VH3(配列番号7

に記載の配列を有する)およびヒト化AB0041軽鎖変異体VH4(Vk4(配列番号12

に記載の配列を有する)に記載の軽鎖配列を有する)を含有する。
AB0045抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成される1312アミノ酸長を含有し、理論的pIは約7.90であり、吸光係数は1g/Lについて280nmにおいて約1.50AU/cmであり、分子量は約144kDaであり、密度は製剤緩衝液中約1g/mL(製品濃度50〜100mg/mL)である。
AB0045抗体の重鎖は、配列番号49(

(シグナル配列に下線が引かれており、定常領域の配列がイタリック体で示されている))に記載の配列を有し、AB0045抗体の軽鎖は配列番号50(

(シグナル配列に下線が引かれており、定常領域の配列がイタリック体で示されている))に記載の配列を有する。シグナルペプチドを伴わないAB0045抗体の重鎖は配列番号56に記載されている配列を有し、

AB0045抗体の軽鎖は配列番号57に記載されている配列を有する

(定常領域がイタリック体で示されている)。
抗体は、M4と称される、ハイブリドーマによって産生された抗体、すなわち、重鎖(IgG2b)配列:

(配列番号30)(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)、および軽鎖(カッパ)配列:

(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)(配列番号31)を含有する抗体をさらに含む。M4抗体は、アミノ酸配列:

(CDR1、CDR2、およびCDR3(それぞれ配列番号34、35、および36)下線が引かれている)(配列番号32)を有する可変重鎖およびアミノ酸配列

(CDR1、CDR2、およびCDR3(それぞれ配列番号37、38、および39)、下線が引かれている)(配列番号33)を有する可変軽鎖を有する。抗体は、M12と称される、ハイブリドーマによって産生された抗体、すなわち、配列:

(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)(配列番号40)を有するカッパ鎖のみを有する抗体をさらに含む。M12抗体は、アミノ酸配列

(CDR1、CDR2、およびCDR3(それぞれ配列番号42、43、および44)、下線が引かれている)(配列番号41)を有する可変軽鎖を有する。M4、AB0041、およびM12と称される抗体の重鎖の部分(それぞれ配列番号51、52、および53)とM4およびAB0041と称される抗体の軽鎖の部分(それぞれ配列番号54および55)の配列比較が図4に示されている。M4の部分的な軽鎖(すなわち、定常領域が短縮された軽鎖)のアミノ酸配列は、

であり、AB0041の部分的な軽鎖(すなわち、定常領域が短縮された軽鎖)は、

であり、M12の部分的な軽鎖(すなわち、定常領域が短縮された軽鎖)は、

であり、M4の部分的な重鎖(すなわち、定常領域が短縮された重鎖)は、

であり、AB0041の部分的な重鎖(すなわち、定常領域が短縮された重鎖)は、

である。
抗体は、アミノ酸配列

(配列番号45)(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)を有するカッパ軽鎖およびアミノ酸配列

(配列番号46)(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)を有するIgG1重鎖を有するAB0046と称されるマウス抗体をさらに含む。
以下のアミノ酸配列は、AB0046のIgG1重鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
以下のアミノ酸配列は、AB0046のカッパ軽鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
現在提供される方法、組成物、および組合せと共に使用するための抗体は、種々の例示されている重鎖および軽鎖、重鎖可変領域および軽鎖可変領域、およびCDRの任意の組合せを含有するものを含めた抗体および抗体断片を含めた本明細書に記載の抗体のいずれを含んでもよい。例として、現在提供される方法、組成物、および組合せは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のいずれかのアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合断片を含む。一部の実施形態では、配列番号7および12のアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合断片を含む方法、組成物、および組合せが提供される。ある特定の実施形態では、配列番号13、14、15、16、17、および18のアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合断片を含む方法、組成物、および組合せが提供される。
抗MMP9抗体をコードする核酸
本開示は、抗MMP9抗体およびその機能性断片をコードする核酸を提供する。したがって、本開示は、本明細書に記載の抗体または抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド(核酸)、そのようなポリヌクレオチドを含有するベクター、ならびにそのようなポリヌクレオチドをポリペプチドへと転写し、翻訳するための宿主細胞および発現系を提供する。
本開示は、上記の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写カセットもしくは発現カセットの形態の構築物も意図している。
本開示は、上記の1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞、ならびに本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を産生する方法も提供し、該方法は、組換え宿主細胞において重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドをコードする核酸を発現させること(同じ宿主細胞において、または異なる宿主細胞において、同じ構築物から、または異なる構築物から)を含む。発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成することができる。発現によって産生した後、抗体または抗原結合断片を、任意の適切な技法を使用して単離し、かつ/または精製し、次いで適切に使用することができる。
種々の異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングし、発現させるための系が周知である。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物の細胞、酵母およびバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドを発現させるために当技術分野において利用可能な哺乳動物の細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウスメラノーマ細胞およびその他の多くの細胞が挙げられる。一般的な細菌宿主はE.coliである。
作動可能に連結したプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および/または適宜他の配列を含めた適切な調節配列を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルス性の例えばファージまたはファージミドであってよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual:第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、DNAの細胞への導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析において核酸を操作するための多くの公知の技法およびプロトコールは、Short Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992年に詳しく記載されている。SambrookらおよびAusubelらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
対象のポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込むか、あるいは安定なまたは一過性のエピソームエレメントとして維持することができる。
多種多様な発現制御配列−作動可能に連結したDNA配列の発現を制御する配列−のいずれも、DNA配列を発現させるためにこれらのベクターに使用することができる。例えば、対象のポリペプチドをコードする核酸は、プロモーターに作動可能に連結させ得、組換えMMP9タンパク質またはその一部を産生する方法において使用するための発現構築物中に提供することができる。
本明細書に開示されている抗体鎖をコードする核酸を分子生物学における標準の知識および手順を使用して合成することができることは、当業者には知られている。
本明細書に開示されている重鎖および軽鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の例は、以下の通りである:

可変領域内のCDRおよびフレームワーク領域の近位(juxtaposition)、フレームワーク領域の構造および重鎖定常領域および軽鎖定常領域の構造を含めた抗体の構造は当技術分野で周知であるので、抗MMP−9抗体をコードする関連する核酸を得ることは、十分に当技術分野の技術の範囲内である。したがって、本明細書に開示されているヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および少なくとも99%の相同性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドも提供される。したがって、本明細書に開示されているヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および少なくとも99%同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドも提供される。一例では、ポリヌクレオチドは、配列番号21に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有するか、または配列番号21を含むもしくは配列番号21であり、かつ/または配列番号26に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有する、または配列番号26を含むもしくは配列番号26である。
医薬組成物
MMP9結合タンパク質、ならびにMMP9結合タンパク質をコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)は、例えば、薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤と組み合わせた医薬組成物として提供することができる。そのような医薬組成物は、例えば、被験体にin vivoまたはex vivoで投与するため、および、被験体を、例えば本明細書において提供される処置方法または診断方法のいずれにおいてもMMP9結合タンパク質を使用して診断し、かつ/または処置するために有用である。
薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤は、投与される患者に生理的に許容され、一緒に投与される抗体またはペプチドの治療的性質を保持する。薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤およびそれらの製剤は、一般に、例えば、Remington’ pharmaceutical Sciences(第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA 1990年)に記載されている。1つの例示的な医薬キャリアは生理食塩水である。キャリアまたは賦形剤のそれぞれは、製剤の他の成分と適合し、患者に対して実質的に傷害性ではないという意味で「薬学的に許容される」。
医薬組成物は、全身的または局所的な特定の投与経路と適合するように製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、種々の経路によって投与するために適したキャリア、希釈剤、または賦形剤を含む。
医薬組成物は、薬学的に許容される添加剤を含んでよい。添加剤の例としては、これだけに限定されないが、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、ブドウ糖、フルクトース、ラクトースならびにそれらの混合物などの糖が挙げられる。薬学的に許容される添加剤は、ブドウ糖などの薬学的に許容されるキャリアおよび/または賦形剤と組み合わせることができる。添加剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80などの界面活性物質も包含する。
製剤および送達方法は、一般に、処置される部位および疾患に応じて適合させる。例示的な製剤としては、これだけに限定されないが、非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、もしくは皮下投与、または経口投与に適した製剤が挙げられる。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を静脈内投与(静脈内注入と称することができる)によって送達する。一部の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を皮下投与(皮下注射と称することができる)によって送達する。
非経口的送達用の医薬組成物としては、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ハンクス液、リンゲル液、ブドウ糖/食塩水、およびグルコース溶液が挙げられる。製剤は、生理的条件に近づけるための補助的な物質、例えば、緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、界面活性剤などを含有してよい。添加剤は、殺菌剤または安定剤などの追加の活性成分も含んでよい。例えば、液剤は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレートまたはオレイン酸トリエタノールアミンを含有してよい。追加の非経口的な製剤および方法は、Bai(1997年)J. Neuroimmunol.80巻:65〜75頁;Warren(1997年)J. Neurol. Sci. 152巻:31〜38頁;およびTonegawa(1997年)J. Exp. Med. 186巻:507〜515頁に記載されている。非経口的調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投薬バイアルに封入することができる。
静脈内投与、皮内投与または皮下投与用の医薬組成物は滅菌した希釈剤、例えば、水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、グルタチオンまたは亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度を調整するための作用剤、例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖を含んでよい。
注射用の医薬組成物としては、滅菌注射用溶液または分散液を即時調製するための水性液剤(水溶性の場合)または分散製剤および滅菌粉剤を含む。静脈内投与に関して、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール(polyetheylene glycol)など)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であってよい。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散製剤の場合では必要な粒度を維持することによって、および界面活性物質を使用することによって維持することができる。抗細菌剤および抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールが挙げられる。等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムを組成物に含めることができる。生じた溶液は、そのまま使用するために包装することもでき、凍結乾燥させることもできる。凍結乾燥した調製物は、後で投与する前に滅菌溶液と組み合わせることができる。
薬学的に許容されるキャリアは、吸収またはクリアランスを安定化する、増加させるまたは遅延させる化合物を含有してよい。そのような化合物としては、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン;低分子量のタンパク質;ペプチドのクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物;または賦形剤または他の安定剤および/もしくは緩衝剤が挙げられる。吸収を遅延させる作用剤としては、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンが挙げられる。医薬組成物の吸収を安定化するため、または増加もしくは減少させるために、リポソームキャリアを含めた界面活性剤も用いることができる。化合物を消化から保護するために、組成物と複合体化させて(complexed)、酸性および酵素による加水分解に対して抵抗性にすることもできるか、または化合物をリポソームなどの適切に抵抗性のキャリアに複合体化させることもできる。化合物を消化から保護する手段は当技術分野で公知である(例えば、Fix(1996年)Pharm Res. 13巻:1760〜1764頁;Samanen(1996年)J. Pharm. Pharmacol. 48巻:119〜135頁;および治療剤を経口送達するための脂質組成物が記載されている米国特許第5,391,377号を参照されたい)。
本発明の組成物は、本明細書において提供される他の治療用部分またはイメージング/診断用部分と組み合わせることができる。治療用部分および/またはイメージング用部分は、別々の組成物として、またはMMP9結合タンパク質上に存在するコンジュゲートした部分として提供することができる。
in vivo投与用の製剤は、一般に、無菌である。一実施形態では、医薬組成物は、発熱物質を含まず、したがってヒト患者への投与が許容されるように製剤化される。
種々の他の医薬組成物およびそれらを調製および使用するための技法は、本開示を考慮すると当業者に公知である。適切な薬理学的組成物および関連する管理技法の詳細な一覧については、本明細書における詳細な教示を参照することができ、これは、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 第20版(Lippincott、Williams & Wilkins 2003年)などのテキストによってさらに補充することができる。
医薬組成物は、処置を必要としている患者/被験体の身体特性、投与経路などに基づいて製剤化することができる。そのような医薬組成物は、病院および診療所に配布するために適切なラベルを伴う適切な医薬用パッケージに包装することができ、ラベルは、被験体における本明細書に記載の障害の処置を表示するためのものである。医薬品は、単一単位として包装することもでき、複数の単位として包装することもできる。本発明の医薬組成物の投与量および投与についての指示を医薬用パッケージおよび下記のキットに含めることができる。
使用方法
本開示の抗MMP9抗体およびその断片を含めたMMP9結合タンパク質は、例えば、治療方法および診断方法、例えば、試料中のMMP9を検出する方法、処置の方法(例えば、血管新生を阻害する方法など)、ならびに診断および予後判定の方法において使用することができる。したがって、診断方法および治療方法ならびに抗MMP9抗体の使用が提供される。使用方法の例は下に記載されている。
処置の方法
本明細書では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置および/または防止の方法が提供される。
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、COPDの臨床病理の過程中に処置される個体または細胞の自然経過が変更されるように設計された臨床的介入(例えば、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質の投与など)を指す。処置の望ましい効果としては、疾患の進行の速度または死亡率を低下させること、病態を軽減するまたは和らげること、および寛解または予後の改善が挙げられる。一部の実施形態では、処置により、COPD症状が改善される、COPD増悪の頻度または重症度が低下する、肺機能、患者から報告されるCOPD症状(運動耐容能および生活の質など)が改善される。応答は、患者が、特に、これだけに限定することなく、生存の延長および生活の質の改善を含めた、疾病の徴候または症状の部分的もしくは完全な緩和、または減少を経験したときに実現される。被験体は、例えば、COPDに関連する1つまたは複数の症状が沈静したまたは排除された場合、首尾よく「処置された」。
本明細書で使用される場合、「と併せて」とは、ある1つの処置モダリティを別の処置モダリティに加えて投与することを指す。そのように、「と併せて」とは、ある1つの処置モダリティ(例えば、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質)を他の処置モダリティを個体に投与する前、その間またはその後に投与することを指す。
本明細書で使用される場合、「防止」という用語は、個体におけるCOPDの出現または再発に対する予防法をもたらすことを包含する。個体は、COPDの素因がある、COPDにかかりやすい、またはCOPDが発生するリスクがある可能性があるが、まだその障害の診断がついていない。一部の実施形態では、COPDの発生を遅延させるために、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質を使用する。一部の実施形態では、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質により、COPD増悪を防止し、かつ/または肺機能または肺組織の破壊を減少させる。
本明細書で使用される場合、COPDが発生する「リスクがある」個体は、本明細書に記載の処置方法の前に、検出可能な疾患または疾患の症状を有していても有していなくてもよく、また、検出可能な疾患または疾患の症状が示されていても示されていなくてもよい。「リスクがある」とは、個体が、当技術分野で公知の通りCOPDの発生と相関する測定可能なパラメータである1つまたは複数の危険因子を有することを示す。これらの危険因子のうちの1つまたは複数を有する個体では、これらの危険因子のうちの1つまたは複数を有さない個体よりもCOPDが発生する確率が高い。
「有効量」とは、治療的または予防的結果を含めた所望のまたは指示された効果を実現するために必要な投与量で、および必要な期間にわたって、少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回または複数回の投与でもたらすことができる。
「治療有効量」とは、特定の障害の測定可能な改善を実現するために必要な少なくとも最小の濃度である。本明細書では、治療有効量は、患者の病態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を引き出す抗体の能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、抗体のいかなる毒性の影響または有害な影響よりも治療的に有益な影響が上回る量でもある。
したがって、有効量の作用剤は、被験体に投与されると(指定され得る通り単独でまたは別の治療剤と組み合わせてのいずれかで)疾患の状態もしくは疾患の進行を防止もしくは軽減する、または症状の軽減、例えば、関連する医学的状態の処置、治癒、防止もしくは軽減をもたらすもしくはそのような状態の処置、治癒、防止もしくは軽減の速度を上昇させるために有効である。単独で、投与される個々の活性成分に適用される場合、治療有効用量とは、その成分単独について指す。組合せに適用される場合、治療有効用量とは、組み合わせて、段階的にまたは同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす、活性成分を全部合わせた量を指す。
「予防有効量」とは、所望の予防的結果を実現するために必要な投与量で、および必要な期間にわたって有効な量を指す。必ずではないが、一般には、予防用量は、被験体において疾患の前またはより早い段階で使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少なくてよい。
一般に、MMP9結合タンパク質は、治療有効量で、例えば、MMP9活性の阻害を実現するためまたはCOPDを処置するための量で投与する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質(例えば、MMP9に結合する抗体またはその機能性断片)を、1週間、2週間または3週間の間隔、または1週間ごとに1回、2週間ごとに1回または3週間ごとに1回投与する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質(例えば、MMP9に結合する抗体またはその機能性断片)は、毎日または毎日よりも少ない頻度で、例えば、週に6回、週に5回、週に4回、週に3回、週に2回、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回または6カ月ごとに1回、投与することができる。一部の実施形態では、処置は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回または少なくとも10回の投与を含む。組成物は、ある期間にわたって使用するために組成物が徐々に放出される埋め込み物などの、および、組成物を、1カ月に1回、2〜6カ月ごとに1回、1年ごとに1回または、さらには単回投与などのより低頻度で投与することが可能になる持続放出製剤として投与することもできる。また、処置は継続的なものである。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を週に1回投与する。ある特定の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を2週間ごとに1回投与する。
MMP9結合タンパク質は、個体に、これだけに限定されないが、静脈内(例えば、注入ポンプによって)、腹腔内、動脈内、肺内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、髄腔内、経皮、経胸膜、局所的、吸入(例えば、噴霧剤のミストとして)、粘膜(例えば、鼻粘膜を介してなど)、皮下、経皮、胃腸管、関節内、大槽内または脳室内を含めた任意の経路によって投与することができる。一部の実施形態では、組成物を全身的に投与する(例えば静脈内注射によって)。一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質を局所的に投与する(例えば動脈内にまたは注射によって)。一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質を皮下に投与する。一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質を皮内に投与する。一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質を吸入によって投与する。一部の実施形態では、MMP9結合タンパク質を粘膜を通じて投与する。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を、2週間ごとに2回、静脈内投与(すなわち、静脈内注入)によって送達する。ある特定の実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を、毎週1回、皮下投与によって送達する。
一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を被験体当たり約25mg〜被験体当たり約800mgで投与する。一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、被験体当たり約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mgまたは約800mg(これらの値の間の任意の範囲を含む)で投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体(すなわち、抗MMP9抗体)またはその抗原結合断片を、被験体当たり約150mg、約250mg、約350mg、約450mg、約550mg、約650mgまたは約750mg(これらの値の間の任意の範囲を含む)で投与する。一部の実施形態では、上記の投与量の抗体またはその抗原結合断片を1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回または6カ月ごとに1回、投与する。一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、2週間ごとに約400mg投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、2週間ごとに約200mgの投与量で被験体に投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、週に1回、約150mgで投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、週に1回、約300mgで投与する。ある特定の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を、被験体に、二段階手順:第1に、負荷投与量相(疾患に関連するMMP9の「標的シンク」/「組織および血清シンク(tissue and serum sink)」または高ベースライン濃度をカバーするためにより頻繁に投薬を行い、ここで、毎週約200mg、約300mgもしくは約400mgの投与量で、1週間、2週間もしくは3週間の間隔にわたる投薬範囲で被験体に投与する、または疾患に関連するMMP9の「標的シンク」もしくは高ベースライン濃度をカバーするためにより頻繁に投薬を行う)、および第2に、負荷投与量相後に予測可能なpKが確立されたら、より低い毎週の用量、例えば、150mg/週、125mg/週、100mg/週または50mg/週などで投与する。一部の実施形態では、より低い毎週の用量は、週ベースでより低い用量、例えば、150mg/週、125mg/週、100mg/週または50mg/週であってよい。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を、2週間ごとに、約400mgで静脈内に投与する(すなわち、静脈内注入)。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を、2週間ごとに、約200mgで静脈内に投与する。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を、週に1回、約150mgで皮下に投与する(すなわち、皮下注射)。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片、その組成物または製剤を、2週間ごとに、約300mgで皮下に投与する。
選択された投与レジメンは、MMP9結合タンパク質の活性、投与経路、投与の時間、使用されている特定の化合物の排出速度、処置の持続時間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康ならびに以前の病歴、ならびに同様に医学の分野で周知の因子を含めた種々の因子に依存する。
いくつかの実施形態では、標的媒介性体内動態(target−mediated disposition)を示す抗体についての薬物動態モデルに基づいて投与量を決定する。可溶性受容体標的を対象とする抗体について観察される比較的線形の薬物動態とは対照的に、組織に基づく標的受容体を対象とする抗体では、非線形薬物動態が頻繁に実証される。Mager, D. E.(2006年)、Adv Drug Deliv Rev 58巻(12〜13号):1326〜1356頁。非線形体内動態についての基礎は、抗体と標的の高親和性結合および結合の程度(用量と比較して)に関し、したがって、相互作用が抗体の薬物動態特性に反映される。Mager, D. E.およびW. J. Jusko(2001年)、J Pharmacokinet Pharmacodyn 28巻(6号):507〜532頁。抗体−受容体複合体の受容体媒介性エンドサイトーシス(内部移行)が標的媒介性薬物体内動態に含まれる。Wang, W.、E.
Q. Wangら(2008年)、Clin Pharmacol Ther 84巻(5号):548〜558頁。
薬物(抗体)の不在下で標的媒介性体内動態を有する抗体についての薬物動態モデルでは、標的受容体は一定の速度で合成され、一次プロセスによって排除される。結果として、標的受容体は、薬物(抗体)の不在下では定常状態の濃度で存在する。薬物を体に加える場合、薬物を標的受容体と2分子反応で相互作用させること、あまりよく灌流されない組織に分布させること、または一次プロセスによって排除することができる。低薬物濃度で、薬物は、高親和性結合に起因して受容体上を優勢に移動する。体に進入する薬物の量が利用可能な受容体の塊に結合するために十分になるに従い、薬物は、組織内外に分布し、排除される。薬物濃度が低下し、薬物が組織と平衡化するに従い、新しく合成された受容体に結合する追加のレザバーがもたらされる。
当技術分野における通常の技術を有する臨床医は、必要な医薬組成物の有効量(ED50)を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物に使用する本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、投与量を所望の効果が達成されるまで徐々に上昇させることができる。
一部の場合には、処置の方法は、作用剤、例えば、抗MMP9抗体またはそれを含有する組成物を非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、もしくは皮下投与すること、または経口投与することを含む。
本明細書で使用される場合、「被験体」という用語は、哺乳動物の被験体を意味する。例示的な被験体としては、これだけに限定されないが、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジが挙げられる。一部の実施形態では、被験体はCOPDを有し、下記の通り本発明の作用剤を用いて処置することができる。ある特定の実施形態では、被験体は、COPDと診断された患者またはCOPDを有する疑いがある患者である。必要であれば、処置のために、方法は、以下に列挙されているものなどの追加的な療法をさらに含んでよい。他の抗COPD作用剤の投与または処置は、本明細書に開示されている組成物の投与と同時であっても逐次的であってもよい。また、COPDを有する被験体は、任意の先のCOPDの処置を受けたことがあっても受けたことがなくてもよい。
一部の実施形態では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片を単独で、単独療法として投与する。他の実施形態では、抗体を、COPDを処置するための1種または複数種の他の治療剤との併用療法の一部として投与する。治療剤としては、これだけに限定されないが、1)短時間作用性β2刺激薬(例えば、サルブタモール(アルブテロール)、レバルブテロール、フェノテロール、テルブタリンなど)、2)短時間作用性抗コリン作用薬(例えば、イプラトロピウム臭化物、オキシトロピウム臭化物など)、3)長時間作用性β2刺激薬(例えば、ホルモテロール、アルホルモテロール、インダカテロール、サルメテロール、ツロブテロールなど)、4)長時間作用性抗コリン作用薬(例えば、アクリジニウム臭化物、グリコピロニウム臭化物、チオトロピウムなど)、5)短時間作用性β2刺激薬と抗コリン作用薬の組合せ(例えば、フェノテロール/イプラトロピウム、サルブタモール/イプラトロピウムなど)、6)吸入コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾンなど)、7)長時間作用性β2刺激薬とコルチコステロイドの組合せ(例えば、ホルモテロール/ブデソニド、ホルモテロール/モメタゾン、サルメテロール/フルチカゾンなど)、8)メチルキサンチン(例えば、アミノフィリン、テオフィリンなど)、9)ホスホジエステラーゼ−4阻害剤(例えば、ロフルミラストなど)、10)全身性コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなど)が挙げられる。併用療法では、本出願の抗体を、それを必要とする患者の処置において一次的なまたは第一線の作用剤として使用することもでき、二次的または追加的な作用剤として使用することもできる。一部の実施形態では、本出願の抗体を、それを必要とする患者の処置において、二次的または追加的な作用剤として使用することができる。一実施形態では、MMP9抗体またはその抗原結合断片を、短時間作用性β2刺激薬、短時間作用性抗コリン作用薬、長時間作用性β2刺激薬、および長時間作用性抗コリン作用薬からなる群から選択される治療剤と組み合わせることができ、また、抗MMP9抗体またはその抗原結合断片と1種または複数種の治療剤の組合せはいずれも、β2刺激薬、抗コリン作用薬、吸入コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、メチルキサンチンまたはホスホジエステラーゼ−4阻害剤とさらに組み合わせることができる。例として、MMP9抗体またはその抗原結合断片をβ2刺激薬(長時間作用性または短時間作用性のいずれか)およびメチルキサンチンと組み合わせることができる。
一部の態様では、MMP9に結合する抗体またはその抗原結合断片の投与量を調整し、体重1kg当たり約133mg、約267mg、約400mg、約600mgまたは約1200mg(これらの値の間の任意の範囲を含む)投与することができる。各治療サイクル後に、患者をMMP9抗体、MMP9または他の適切なバイオマーカーのレベルについてモニタリングする。
併用療法における作用剤は、上記の適切な経路によって、同時に(同じ組成物中で、もしくは別々に)、または逐次的に、任意の順序で投与することができる。
一部の実施形態では、処置方法は、薬力学的活性などの有効性または活性をモニタリングすることを含めた、処置をモニタリングするステップを含む。いくつかの例では、そのような方法は、上記方法および組成物を使用して処置される被験体から得た試験生体試料中の、処置の有効性を示し、さらに、MMP9活性により切断によって直接または細胞外マトリックス内の貯蔵物から血清中に放出されるMMP9の基質として作用し得る、サイトカインおよび他の炎症マーカーなどのマーカーの存在、非存在、レベル、および/または発現を検出または測定することを含む。試料は、一般には、血液試料または血清試料であるが、本明細書に記載の他の生体試料も含めることができる。一実施形態では、試験生体試料は、本出願の方法を使用してCOPDと診断されたまたはCOPDを有する疑いがある被験体から得た痰である。そのような方法において使用するためのマーカーとしては、組織メタロプロテイナーゼ阻害物質1(TIMP−1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)、マクロファージ炎症性タンパク質−2(MIP−2)、インターロイキン−17A(IL−17A)、CXCL10、リンホタクチン、マクロファージ炎症性タンパク質−1ベータ(MIP−1ベータ)、オンコスタチン−M(OSM)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、単球走化性タンパク質3(MCP−3)、血管内皮増殖因子A(VEGF−A)、単球走化性タンパク質−5(MCP−5)、インターロイキン−1アルファ(IL−1アルファ)、マクロファージコロニー刺激因子−1(M−CSF−1)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、成長調節アルファタンパク質(Growth−Regulated Alpha Protein)(KC/GRO)、インターロイキン−7(IL−7)、白血病抑制因子(LIF)、アポリポタンパク質A−I(Apo A−I)、C反応性タンパク質(CRP)、顆粒球走化性タンパク質−2(GCP−2)、インターロイキン−11(IL−11)、単球走化性タンパク質1(MCP−1)、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)、RANKリガンド、CCL−5、および幹細胞因子(SCF)遺伝子産物がある。そのような方法において使用する他のマーカーとしては、MMP9活性によって生成するデスモシン、エラスチンおよびコラーゲン断片が挙げられる。これらのマーカーは、疾患プロセスによって引き起こされる局所的な組織破壊を反映する。そのような局所的な組織破壊の産物は、最後には血清中に入る可能性があり、血清中で検出可能になり得る。
いくつかの実施形態では、各処置サイクルの後に、患者をMMP9抗体、MMP9、または他の適切なバイオマーカーのレベルについてモニタリングする。
提供される方法としては、利用可能な処置および治療レジメンと比較して改善された安全性プロファイルおよび/またはそのような疾患および状態の処置における持続的な長期有効性をもたらす方法が挙げられる。
慢性閉塞性肺障害(COPD)
MMP9に結合する抗体およびその断片などの本明細書に記載のMMP9結合タンパク質を、例えば、慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する被験体におけるMMP9を阻害することによる、COPDの処置または防止において使用する。
COPDは、慢性閉塞性肺疾患(COLD)または慢性閉塞性気道疾患(COAD)としても公知であり、不十分な気流(気流制限)および十分に息を吐き出せないこと(エアトラッピング)を特徴とする進行性の閉塞性肺疾患(例えば、気腫および慢性気管支炎)の群を指す。不十分な気流は、肺の結合組織が破壊され、次いでそれが、不十分な気流および不十分な呼吸ガスの吸収および放出に寄与した結果である。COPDの徴候および症状としては、これだけに限定されないが、例えば、特に身体活動中の息切れ、喘鳴、胸部絞扼感、肺内の粘液過剰、透明、白色、黄色または緑がかった痰が生じる慢性咳、チアノーゼ(すなわち、唇および爪床が青いこと)、頻繁な呼吸器感染症、疲労、および、後期には、意図していない体重減少が挙げられる。COPDを有する被験体では、症状が悪化し、数日間またはそれ超持続する、増悪と称されるエピソードが生じる可能性がある。頻繁な増悪が生じる被験体では、肺機能がより速く劣化する。
COPDは、吸入された刺激物に対する著しい慢性炎症性応答として生じる。COPDの公知の原因としては、タバコ喫煙、大気汚染(例えば、多くの場合、木炭または木材もしくは動物の糞などのバイオマス燃料を燃料とする換気不十分の調理の火、都市大気汚染、排気ガスへの曝露)、および職業性曝露(例えば、作業場における粉塵、化学物質、およびヒュームへの持続的曝露など)が挙げられる。遺伝的特質がCOPDの発生に役割を果たす場合がある。現在、遺伝性危険因子はアルファ−1抗トリプシン(AAT)欠損症のみである。増悪(すなわち、症状の突発的悪化)は、一般には、感染、環境汚染物質または薬物の不適切な使用によって誘発される。
COPDは、一般には、肺活量測定(すなわち、肺機能、特に、吸い込み、吐き出すことができる空気の量およびまたはスピードを測定する肺機能検査)を使用して診断される。診断を行うために測定される肺活量測定要素は、a)呼吸の最初の1秒で吐き出すことができる空気の最大体積である1秒間の努力呼気量(FEV);b)1回の深呼吸で吐き出すことができる最大体積である努力肺活量(FVC)である。COPDの症状を有する人においてFEV/FVC比が70%未満であることにより、人がCOPDの疾患を有すると定義される。高齢者では、診断基準にはFEVが予測値の80%未満であることがさらに必要である。
被験体におけるCOPDの重症度を評価するために、追加的な検査が使用される。例えば、改変British Medical Research Council questionnaire(mMRC)またはCOPD評価検査(CAT)は、症状の重症度を決定するために使用することができる単純な質問票である。CATのスコアは0〜40にわたり、スコアが高いほど疾患の重症度が高い。気流制限の重症度を決定するためには肺活量測定が役立ち得る。これは、一般には、その人の年齢、性別、身長および体重に関して予測される「正常値」に対する百分率として表されるFEVに基づく。体重減少および筋肉の衰弱ならびに他の疾患の存在も考慮に入れるべきである。被験体におけるCOPDの重症度を評価するための追加的な基準は、Vestbo(2013年)「Diagnosis and Assessment」、Global Strategy for the Diagnosis、Management、and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. 9〜17頁に記載されている。
診断時に他の状態を排除するために、胸部X線および/または胸部CTスキャンおよび動脈血ガス検査が一般に実施される。X線での特徴的な徴候は、肺の過膨張、横隔膜の平低化、胸骨後方の気腔の拡大、および胞(bullae)(体液が充満した肺内の嚢)である。動脈血ガス分析は、酸素の必要性を決定するために使用され、一般には、FEVが予測値の35%未満である被験体、末梢酸素飽和が92%未満である被験体、およびうっ血性心不全の症状を有する被験体において実施される。世界の複数の地域でアルファ−1アンチトリプシン欠損症が一般的であり、COPDを有する人(特に、45歳未満であり、肺の下部に影響を及ぼす気腫を伴う人)に検査が考えられる。
一部の実施形態では、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質を用いて処置される被験体は、以下の症状の任意の1つまたは複数を有する:特に身体活動中の息切れ、喘鳴、胸部絞扼感、肺内の粘液過剰、透明、白色、黄色または緑がかった痰が生じる慢性咳、チアノーゼ(すなわち、唇および爪床が青いこと)、頻繁な呼吸器感染症、疲労、および意図していない体重減少。一部の実施形態では、処置される被験体はCOPD増悪を有する。一部の実施形態では、被験体は、FEVが予測値の40%以上80%未満である。一部の実施形態では、被験体は、FEV/FVC比が70%未満である。一部の実施形態では、被験体は、改変British Medical Research Council questionnaire(mMRC)の結果に基づいてCOPDと診断されている。一部の実施形態では、被験体は、COPD評価検査(CAT)に基づいてCOPDと診断されている。一部の実施形態では、被験体は、Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)ガイドラインに基づいてCOPDと診断されている。一部の実施形態では、被験体は、以下の1つまたは複数に基づいてCOPDと診断されている:胸部X線、胸部CTスキャン、および動脈血ガス分析。一実施形態では、被験体は、本出願の処置前1年間に2回またはそれ超の増悪を有するCOPDと診断される。一部の実施形態では、被験体は、処置前1年間に2回またはそれ超の増悪、および肺機能の低下を有するCOPDと診断される。肺機能の低下は、本明細書に記載の臨床的指標によって決定することができる。一部の実施形態では、肺機能の低下は、FEVが80%未満であることによって決定することができる。1年間に2回またはそれ超の増悪を有するCOPDと診断された被験体が罹患率、死亡率ならびに増悪関連入院に伴う費用の大部分を占める。いかなる仮説にも縛られることなく、そのような患者では、気道内のMMP9のレベルまたは活性が、健康な被験体または増悪が1回またはそれ未満のCOPD被験体と比較して上昇している場合がある。気道内のMMP9のレベルまたは活性は、当業者が、一般に使用される方法を使用して決定することができる。一部の実施形態では、気道内のMMP9のレベルまたは活性は、イムノアッセイおよび試験生体試料を使用して決定することができる。ある特定の実施形態では、気道内のMMP9のレベルまたは活性は、被験体由来の痰試料においてELISAを使用して決定することができる。一実施形態では、被験体は、1年間に2回またはそれ超の増悪、肺機能の低下、および気道内のMMPのレベルまたは活性の上昇を有するCOPDと診断される。
一部の実施形態では、被験体は、長期タバコ喫煙者であるまたは長期タバコ喫煙者であった。一部の実施形態では、被験体は、副流煙に曝露されてきた。一部の実施形態では、被験体は、仕事場の化学的ヒューム、塵、および/または蒸気に曝露されているまたは曝露されてきた。一部の実施形態では、被験体は、大気汚染に曝露されているまたは曝露されてきた。一部の実施形態では、被験体はCOPDの家族歴を有する。
MMP9を検出する方法
本開示は、例えば、COPDに関連する組織または体液または他の生体試料を検出するために、被験体におけるMMP9を検出する方法も意図している。したがって、COPDを有する患者由来の試料中のMMP9活性を診断、モニタリング、病期分類または検出する方法が提供される。
被験体(例えば、COPDを有する疑いがあるまたはCOPDを有することが分かっている個体)由来の試料(例えば、試験生体試料)を、MMP9の存在、非存在、発現、および/またはレベルについて分析することができる。また、COPDを有する疑いがある被験体由来の試料を、MMP9の存在、非存在、発現、および/またはレベルについて分析することができる。例えば、そのような試料を収集し、本明細書に記載の抗体または断片などのMMP9結合タンパク質と本試料中の物質(例えば、タンパク質)の結合が存在するかしないかを検出することによって分析することができる。いくつかの例では、該方法は、検出された結合の量を対照試料との結合の量と比較すること、またはMMP9の検出レベルをMMP9の対照レベルと比較することをさらに含む。一部の場合には、該方法により、本明細書に記載の疾患または状態の存在、非存在、または重症度が示される。
この分析は、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質を使用した処置を開始する前に実施することができ、COPD処置の進行のモニタリングの一部として行うこともできる。いくつかの実施形態では、検出アッセイを実施し、例えば、診断アッセイの結果に基づいて被験体の処置を開始、変更、または中止することによって行われる処置の方法が提供される。そのような診断分析は、これだけに限定されないが、組織、そのような組織から単離された細胞などを含めた任意の試料を使用して実施することができる。一部の場合には、該方法を、血液、血漿、血清、全血、唾液、尿、または精液などの液体試料に対して実施する。組織試料としては、例えば、ホルマリン固定したまたは凍結させた組織切片が挙げられる。
MMP9を検出および分析するための任意の適切な方法を使用することができる。当技術分野で公知の種々の診断アッセイ技法、例えば、競合結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイおよび不均一相または均一相のいずれかで行われる免疫沈降アッセイが、そのような目的に適し得る。
検出方法において使用するためのMMP9結合タンパク質は、検出可能部分を用いて標識することができる。検出可能部分により、直接的に、または間接的に、検出可能なシグナルが生じる。例えば、検出可能部分は、例えば、放射性同位元素、例えば、3H、14C、32P、35S、もしくは125I、蛍光化合物もしくは化学発光化合物、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Texas Red、シアニン、フォトシアン、ローダミン、もしくはルシフェリン、または酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの本明細書に記載のもののいずれであってもよい。
検出は、MMP9結合タンパク質とMMP9との結合に適した条件下で試料を接触させ、MMP9結合タンパク質−MMP9複合体が存在すること(例えば、レベル)または存在しないことを評価することによって達成することができる。参照試料のレベルと比較した試料中のMMP9のレベルにより、MMP9活性を有するCOPDに関連する組織が存在することが示され得る。参照試料は、被験体から以前に取得した試料であっても別の個体由来の試料であってもよい。
一部の態様では、MMP9 mRNAを、例えば、ハイブリダイゼーションによって、例えば、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)によって検出する。一部の態様では、高レベルの炎症細胞由来のMMP9が、他の検出方法による所望の細胞型におけるシグナル、例えばIHCによるシグナルを不明瞭にする場合に、そのような検出方法を使用する。
本発明の種々の態様が、以下のいくつかの実施例を介してさらに記載され、例示されており、これはいずれも本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
第I相試験におけるAB0045の評価
この試験は、第I相二重盲検式無作為化プラセボ対照多施設試験である。この試験の主要な目的は、ベースラインから29日目プラス30日までの有害事象(AE)および検査異常によって評価される、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する被験体におけるAB0045(すなわち、MMP9に結合する抗体)の安全性、忍容性および薬物動態(PK)を評価することである。主要評価項目は、有害事象の発生率、検査所見およびバイタルサインのスクリーニングからの変化、ならびに投薬後の免疫原性の発生である。この複合エンドポイントにより、AB0045の安全性および忍容性プロファイルが測定される。副次的評価項目は、ベースラインから29日目までの、血漿中濃度を経時的に比較することによる体に吸収される薬物の総量であるAUC、および、薬物の最大濃度であるCmaxによって測定されるAB0045のPKパラメータである。以下のAB0045のPKパラメータを測定する:ベースラインから29日目までのTmax(すなわち、Cmaxの時間)、Clast(すなわち、薬物の最後の観察可能な濃度)、Tlast(すなわち、Clastの時間)、Ctau(すなわち、投薬間隔の最後に観察された薬物濃度)、λz(すなわち、終末相の消失速度定数)、CL(すなわち、静脈内投与後の全身クリアランス)、およびVz(すなわち、静脈内投与後の見かけの分布体積)。
試験は、各参加者がAB0045 400mgを2週間ごとに、1日目、15日目、および29日目に合計3回の注入で受ける実験群(experimental arm)を有する。試験には、参加者がAB0045に対応するプラセボを2週間ごとに、1日目、15日目、および29日目に合計3回の注入で受けるプラセボ群を含める。AB0045 400mgは静脈内に投与する。AB0045に対応するプラセボも静脈内に投与する。
参加者は40歳から75歳の間である。男性、または妊娠しておらず授乳中でない女性が本試験に適格である。男性被験体および異性との性交を行う出産可能性がある女性被験体はプロトコールにより指定された避妊方法(複数可)の使用に同意しなければならない。男性被験体は、試験薬の最後の注入後90日間にわたって精子提供を控えなければならない。組み入れ基準には、以下が含まれる:a)スクリーニング時の体重が≧45kg〜<120kgであること;b)スクリーニング前少なくとも6カ月間にGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)ガイドラインに従ってCOPDと診断され(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD). Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease.2013年更新、ワールドワイドウェブ−goldcopd.org/guidelines-global-strategy-for-diagnosis-management.htmlで入手可能)、試験期間中、安定療法のままであることが予測されること;c)気管支拡張薬投与後の1秒間の努力呼気量(FEV1)が予測値の≧40%(かつ、一部の実施形態では、予測値の≦80%)であること;d)無作為化の前30日以内にCOPDの薬物療法に変化がないこと;e)肝臓パネル[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、総ビリルビン、直接ビルビリン、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)]が正常範囲の上限(ULN)の2倍以下であること;f)血清クレアチニンが≦2.0であること;g)ヘモグロビンが≧8.5g/dLであること(男性および女性どちらも);h)絶対好中球数(ANC)が≧1.5×10/L(1,500mm)であること;ならびにi)血小板が≧100×10/Lであること。
除外基準には以下が含まれる:a)スクリーニングの間に治験責任医師によって判断される臨床的に有意な活動性感染;b)スクリーニングの間に分かっているHIV、B型肝炎またはC型肝炎の病歴(B型肝炎表面抗原陽性であるが、上首尾の一連のB型肝炎ワクチン接種を受け、疾患を有したことがない被験体は適格の被験体のままである);c)スクリーニングの間にQuantiFERON−TB GOLD検査陽性;d)ここ5年以内の悪性腫瘍の病歴、非黒色腫皮膚がんまたはある特定の上皮内癌に対する局所的な処置を受けた患者以外;e)無作為化の前6カ月以内の心筋梗塞、不安定なもしくは生命にかかわる不整脈、心不全での入院などのあらゆる重篤な心臓事象、または、来診1の時点に治験責任医師によって判断されるあらゆる有意なまたは新しい心電図(ECG)所見;f)無作為化の前の先の6カ月以内の、これだけに限定されないが、COPD、肺炎、細気管支炎などの呼吸器事象での入院;g)喘息、嚢胞性線維症または線維性疾患、α1アンチトリプシン欠損症、間質性肺疾患、肺血栓塞栓性疾患または気管支拡張症などの、COPD以外の慢性肺疾患;g)全身性コルチコステロイドの慢性使用および/または無作為化の90日以内の、入院の必要がないCOPDの急性増悪(AECOPD)事象または他の医学的状態に対する全身性コルチコステロイドを用いた処置;h)無作為化の90日以内に、入院の必要がないAECOPD事象もしくは他の医学的状態、または、無作為化の14日以内の、入院の必要がないあらゆる軽微な医学的事象に対する抗生物質を用いた処置;i)あらゆる販売されているまたは治験中の生物製剤を用いた、分子の5半減期以内、または、未知の場合にはスクリーニングの90日以内の処置;ならびにj)これまでのところ、無作為化の90日以内に、アザチオプリン、シクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、トファシチニブなどの非生物学的免疫修飾薬物療法を受けている被験体。
本明細書に記載の種々の実施形態の性質の1つ、いくつかまたは全てを組み合わせて本発明の他の実施形態を形成できることが理解されるべきである。本発明のこれらおよび他の態様は、当業者には明らかである。本発明のこれらおよび他の実施形態を以下の発明の詳細な説明にさらに記載する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置または防止するための方法であって、該被験体に、有効量の、抗マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)抗体またはその抗原結合断片を投与するステップを含む方法。
(項目2)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片がMMP9のエピトープに結合し、該エピトープが配列番号27のアミノ酸残基104〜119、残基159〜166または残基191〜202を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記エピトープが配列番号27のE111、D113、R162またはI198を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号27のアミノ酸残基104〜119、残基159〜166または残基191〜202に結合するタンパク質と、MMP9との結合について競合する、項目1から3までのいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記タンパク質が、配列番号7、12、13、14、15、16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超の同一性を有する抗体である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13、14、および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域を含む、項目1から5までのいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖可変(VL)領域を含む、項目1から6までのいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号3、5、6、7、および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVH領域を含む、項目1から7までのいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号4、9、10、11、および12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL領域を含む、項目1から8までのいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むVL領域を含む、項目1から9までのいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目1から10までのいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、ヒト化、キメラまたはヒト抗MMP9抗体またはその抗原結合断片である、項目1から11までのいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、MMP9の酵素活性を阻害する、項目1から12までのいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記阻害が非競合的である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、約100mg、150mg、200mg、300mgまたは400mgの用量で投与される、項目1から14までのいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、毎週1回、2週間ごとに1回または3週間ごとに1回投与される、項目1から15までのいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、静脈内、皮内または皮下に投与される、項目1から16までのいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、COPDを処置するための1種または複数種の治療剤と同時にまたは逐次的に投与される、項目1から17までのいずれかに記載の方法。
(項目19)
COPDを処置するための前記1種または複数種の治療剤が、短時間作用性β2刺激薬、短時間作用性抗コリン作用薬、長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性抗コリン作用薬、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
β2刺激薬、抗コリン作用薬、吸入コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、メチルキサンチン、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤またはこれらの組合せをさらに含む、項目19に記載の方法。

Claims (20)

  1. 被験体における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置または防止するための方法であって、該被験体に、有効量の、抗マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)抗体またはその抗原結合断片を投与するステップを含む方法。
  2. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片がMMP9のエピトープに結合し、該エピトープが配列番号27のアミノ酸残基104〜119、残基159〜166または残基191〜202を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記エピトープが配列番号27のE111、D113、R162またはI198を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号27のアミノ酸残基104〜119、残基159〜166または残基191〜202に結合するタンパク質と、MMP9との結合について競合する、請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
  5. 前記タンパク質が、配列番号7、12、13、14、15、16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超の同一性を有する抗体である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13、14、および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域を含む、請求項1から5までのいずれかに記載の方法。
  7. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16、17、および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖可変(VL)領域を含む、請求項1から6までのいずれかに記載の方法。
  8. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号3、5、6、7、および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVH領域を含む、請求項1から7までのいずれかに記載の方法。
  9. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号4、9、10、11、および12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL領域を含む、請求項1から8までのいずれかに記載の方法。
  10. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むVL領域を含む、請求項1から9までのいずれかに記載の方法。
  11. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から10までのいずれかに記載の方法。
  12. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、ヒト化、キメラまたはヒト抗MMP9抗体またはその抗原結合断片である、請求項1から11までのいずれかに記載の方法。
  13. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、MMP9の酵素活性を阻害する、請求項1から12までのいずれかに記載の方法。
  14. 前記阻害が非競合的である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、約100mg、150mg、200mg、300mgまたは400mgの用量で投与される、請求項1から14までのいずれかに記載の方法。
  16. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、毎週1回、2週間ごとに1回または3週間ごとに1回投与される、請求項1から15までのいずれかに記載の方法。
  17. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、静脈内、皮内または皮下に投与される、請求項1から16までのいずれかに記載の方法。
  18. 前記抗MMP9抗体またはその抗原結合断片が、COPDを処置するための1種または複数種の治療剤と同時にまたは逐次的に投与される、請求項1から17までのいずれかに記載の方法。
  19. COPDを処置するための前記1種または複数種の治療剤が、短時間作用性β2刺激薬、短時間作用性抗コリン作用薬、長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性抗コリン作用薬、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
  20. β2刺激薬、抗コリン作用薬、吸入コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、メチルキサンチン、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤またはこれらの組合せをさらに含む、請求項19に記載の方法。
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