詳細な説明
本開示の実施には、別段の指定のない限り、細胞生物学、毒性学、分子生物学、生化学、細胞培養、免疫学、腫瘍学、組換えDNAの分野および当技術分野の技術の範囲内の関連する分野における標準の方法および従来の技法が使用される。そのような技法は、文献に記載されており、それにより、当業者が利用可能である。例えば、Alberts, B.ら、「Molecular Biology of the Cell」、第5版、Garland Science、New York、NY、2008年;Voet, D.ら、「Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level」、第3版、John Wiley &
Sons、Hoboken、NJ、2008年;Sambrook, J.ら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年; Ausubel, F.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、New
York、1987年および定期的更新版; Freshney, R.I.、「Culture of Animal Cells: A Manual of Basic
Technique」、第4版、John Wiley & Sons、Somerset、NJ、2000年;および「Methods in Enzymology」シリーズ、Academic Press、San Diego、CAを参照されたい。例えば、「Current Protocols in Immunology」、(R. Coico、シリーズ編集者)、Wiley、2010年8月に最新更新されたものも参照されたい。
ある特定のMMPは、腫瘍の成長、転移、炎症、自己免疫、および血管疾患において役割を果たす。例えば、Huら(2007年)Nature Reviews:Drug Discovery 6巻:48
0〜498頁を参照されたい。したがって、ある特定の治療的状況において1種または複数の特定のMMPの活性を阻害することが望ましい。配列レベルでは著しい相同性を有するが、2種のゼラチナーゼ、MMP9およびMMP2の発現および機能的役割は著しく異なる。MMP9発現は、いくつもの疾患に関連するサイトカインおよび増殖因子によって誘導される。また、MMP9ノックアウトマウスは種々の疾患モデルにおいて保護されるが、MMP2はより構成的に発現され、MMP2ノックアウト動物は、あまり保護されない傾向がある。いくつかの試験により、MMP2ノックアウトマウスが誘発モデル(challenge model)において疾患の悪化を示したことが示された。いくつかの疾患または障害に対しては、2種以上のMMPの活性が阻害される。臨床試験では、2種以上のMMPに対する阻害剤により、望ましくない毒性または有効性の欠如などの有害作用が引き起こされた。特定のMMP、例えば、MMP2の活性は、多くの場合、正常な組織恒常性のために必要であり、かつ/または疾患を防止することが示されている。ある特定の利用可能なMMP阻害剤では副作用が引き起こされている。
提供される実施形態としては、治療用試薬、例えば、単一のMMPまたは選り抜きの複数のMMP(a select plurality of MMPs)、例えば、MMP9の触媒活性を特異的に阻害する、および特定の他のMMPまたは任意の他のMMPとは反応しないまたはそれを阻害しない抗体およびその抗原結合断片を含めた作用剤が挙げられる。提供される実施形態としては、種々の疾患を処置するための、その方法および使用も挙げられる。
MMP9結合タンパク質
本開示は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP9)タンパク質(MMP9は、ゼラチナーゼ−Bとしても公知である)に結合する結合タンパク質、例えば、抗体およびその断片(例えば、抗原結合断片)、例えば、配列番号27または配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するヒトMMP9などのヒトMMP9を提供する。本開示の結合タンパク質は、一般には、免疫グロブリン(Ig)重鎖(またはその機能性断片)およびIg軽鎖(またはその機能性断片)を含む。
本開示は、さらに、MMP9に特異的に結合し、MMP1、MMP2、MMP3、MMP7、MMP9、MMP10、MMP12、およびMMP13などの他のマトリックスメタロプロテイナーゼには結合しないMMP9結合タンパク質を提供する。したがって、そのような特異的なMMP9結合タンパク質は、一般に、非MMP9マトリックスメタロプロテイナーゼとは有意にまたは検出可能に交差反応しない。MMP9に特異的に結合するMMP9結合タンパク質は、例えば、他のマトリックスメタロプロテイナーゼの活性には直接影響を及ぼすことなく、MMP9の特異的な調節(例えば、阻害)を得ることが必要である、またはそれが望ましい適用において使用される。
本開示のある特定の実施形態では、抗MMP9抗体は、MMP9の活性の阻害剤であり、MMP9の特異的な阻害剤であってよい。一実施形態では、本明細書に開示されているMMP9結合タンパク質は、MMP9を阻害するために有用であるが、他のマトリックスメタロプロテイナーゼには影響を及ぼさない。「MMPの阻害剤」または「MMP9活性の阻害剤」は、これだけに限定されないが、酵素的プロセシング、MMP9のその基質に対する作用を阻害すること(例えば、基質の結合、基質の切断などを阻害することによって)などを含め、直接的に、または間接的にMMP9の活性を阻害する抗体またはその抗原結合断片であってよい。
本開示は、ヒトMMP9、カニクイザルMMP9、およびラットMMP9などの非マウスMMP9に特異的に結合するMMP9結合タンパク質も提供する。
本開示は、非競合的な阻害剤としての機能を果たすMMP9結合タンパク質(例えば、抗MMP9抗体およびその機能性断片)も提供する。「非競合的な阻害剤」とは、酵素の基質結合部位から離れた部位に結合する、したがって、酵素がその基質と結合しているか否かにかかわらず酵素に結合し、阻害活性に影響を及ぼすことができる阻害剤を指す。非競合的な阻害またはアロステリックな阻害は、一般に、基質の会合または濃度に依存しない。そのような非競合的な阻害剤により、例えば、基質濃度に実質的に非依存性であり得る阻害のレベルをもたらすことができる。
本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)を有するものを包含する。
本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチド(light polypeptide)(またはその機能性断片)を有するものを包含する。
本開示のMMP9結合タンパク質(例えば、抗体およびその機能性断片)は、MMP9、特にヒトMMP9に結合し、本明細書に開示されている重鎖ポリペプチドの相補性決定領域(「CDR」)を有する重鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)および軽鎖ポリペプチド(またはその機能性断片)のCDRを有するものを包含する。
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、本明細書において核酸およびポリペプチドに関して使用される場合、それぞれ、アミノ酸配列または核酸配列のアラインメントに基づいた2つのポリペプチド間または2つの核酸分子間の関係を指す。相同性および同一性は、それぞれ比較するためにアラインメントすることができる各配列内の位置を比較することによって決定することができる。比較する配列内の同等の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有されていれば、それらの分子はその位置において同一であり、同等の部位が同じまたは類似したアミノ酸残基(例えば、立体的本質および/または電子的本質が類似している)によって占有されていれば、その分子は、その位置において相同である(類似した)と称することができる。相同性/類似性または同一性の百分率としての表示とは、比較される配列によって共有される位置における同一のまたは類似したアミノ酸の数の関数を指す。2つの配列の比較において、残基(アミノ酸または核酸)が存在しないことまたは余分の残基が存在することによっても、同一性および相同性/類似性が低下する。
本明細書で使用される場合、「同一性」とは、配列をアラインメントして配列マッチングを最大にした場合、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮に入れた場合に、2つ以上の配列内の対応する位置にある同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の百分率を意味する。配列は、一般に、指定の領域、例えば、少なくとも約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65またはそれ超のアミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたって、および参照アミノ酸またはヌクレオチドの全長に至ってよい領域にわたって一致が最大になるようにアラインメントされる。配列比較のために、一般には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータプログラムにインプットし、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムにより、試験配列(複数可)について、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列と比較してパーセント配列同一性を算出する。
パーセント配列同一性を決定するために適したアルゴリズムの例はBLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschulら(1990年)J. Mol. Biol. 215巻:403〜410頁およびAltschulら(1977年)Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)を通じて公的に入手可能である。別の例示的なアルゴリズムとしては、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.htmlにおいて入手可能なClustalW(Higgins D.ら(1994年)Nucleic Acids Res 22巻:4673〜4680頁)が挙げられる。
同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換によって異なり得る。保存的アミノ酸置換とは、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびトレオニンであり、アミドを含有する側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリシン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄を含有する側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。
2つの核酸の間の配列同一性を、2つの分子の、ストリンジェントな条件下での互いとのハイブリダイゼーションに関して記載することもできる。ハイブリダイゼーション条件は当技術分野における標準の方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(1989年)Cold Spring Harbor、N.Y.を参照されたい)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃以上、0.1×SSC(15mMの塩化ナトリウム/1.5mMのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、溶液:50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性せん断サケ精子DNA中、42℃で一晩インキュベートし、その後、フィルターを0.1×SSC中、約65℃で洗浄することである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、少なくとも上記の代表的な条件と同様にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、条件は、上記の特定のストリンジェントな条件と少なくとも約80%同様にストリンジェント、一般には、少なくとも90%同様にストリンジェントであれば、少なくとも同様にストリンジェントであるとみなされる。
したがって、本開示は、例えば、本明細書に記載の重鎖可変領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号1または配列番号5〜8)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域ポリペプチド、および本明細書に記載の軽鎖ポリペプチド(例えば、配列番号2または配列番号9〜12)のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。
本開示の抗MMP9抗体の例を、以下により詳細に記載する。
抗体
MMP9結合タンパク質は、MMP9に特異的に結合するものなどの抗体およびその機能性断片を含む。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原エピトープに特異的に結合するペプチド配列(例えば、可変領域の配列)を含む、単離された、または組換え型のポリペプチド結合作用剤を意味する。この用語は、その最も広範な意味で使用され、特にモノクローナル抗体(全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ、ダイアボディ(diabody)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに、所望の生物活性を示す限りは、これだけに限定されないが、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFab2を含めた抗体断片を包含する。「ヒト抗体」という用語は、可能な非ヒトCDR領域以外はヒト起源の配列を含有する抗体を指し、また、免疫グロブリン分子の完全な構造が存在することを意味するものではなく、抗体が、ヒトにおいて最小の免疫原性作用を有する(すなわち、それ自体に対する抗体の産生を誘導しない)ことのみを意味する。
「抗体断片」とは、全長の抗体の一部、例えば、全長の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。そのような抗体断片は、本明細書では、「機能性断片」または「抗原結合断片」とも称することができる。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体(Zapataら(1995年)Protein Eng. 8巻(10号):1057〜1062頁);単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と称される、それぞれが単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片、および残りの、容易に結晶化することができることが名称に反映された「Fc」断片が生じる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原と架橋することができるF(ab’)2断片がもたらされる。
「Fv」とは、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが密接に非共有結合で会合した二量体からなる。この立体配置では、各可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR)が相互作用してVH−VL二量体の表面上に抗原結合部位が確定される。集合的に、6つのCDRにより抗原との結合の特異性が抗体に付与される。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な6つのCDRのうちの3つしか含まない単離されたVH領域またはVL領域)でさえ、抗原を認識し、それに結合することができるが、一般に親和性はFv断片全体よりも低い。
「Fab」断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に加えて、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab断片は、抗体のパパイン消化後に最初に観察された。Fab’断片は、F(ab’)断片が重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含めたいくつかの追加の残基を含有するという点でFab断片とは異なる。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域の近くでジスルフィド結合によってつながった2つのFab断片を含有し、また、抗体のペプシン消化後に最初に観察された。Fab’−SHとは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離型のチオール基を担持するFab’断片に対する名称である。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと称される2つの明白に異なる種類の一方に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、sFvが抗原と結合するための所望の構造を形成することが可能になる。sFvの概説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻(RosenburgおよびMoore編)Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内で接続した重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)(VH−VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合が可能になるには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと対合させ、それにより、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、さらに、例えば、EP404,097;WO93/11161、およびHollingerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444〜6448頁に記載されている。
「単離された」抗体とは、その天然の環境の構成成分から同定され、分離および/または回収された抗体である。その天然の環境の構成成分は、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、(1)Lowry法によって決定したところ、抗体の95重量%超、例えば、99重量%超まで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用することによって少なくとも15残基のN末端または内部のアミノ酸配列を得るために十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー(Coomassie blue)または銀染色による検出を用いた、還元条件下または非還元条件下でのゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)によって均一になるまで、精製される。組換え細胞内のin situ抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないので、「単離された抗体」という用語に包含される。ある特定の実施形態では、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
本明細書で使用される場合、「免疫反応性の」とは、他のペプチド/タンパク質に対して交差反応性であっても、アミノ酸残基の配列(「結合部位」または「エピトープ」)に特異的であって、ヒトへの使用のために投与するために製剤化されるレベルにおいて毒性でない抗体またはその断片を指す。「エピトープ」とは、抗体またはその抗原結合断片との結合相互作用を形成することができる抗原の部分を指す。エピトープは、直鎖ペプチド配列(すなわち、「連続的」)であってもよく、連続していないアミノ酸配列で構成されてもよい(すなわち、「立体構造」または「不連続」)。「優先的に結合する」という用語は、結合作用剤が、結合部位に、無関係のアミノ酸配列に結合するよりも大きな親和性で結合することを意味する。
抗MMP9抗体は、重鎖および軽鎖のCDRに関して記載することができる。本明細書で使用される場合、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域において見出される連続していない抗原結合部位を意味するものとする。これらの特定の領域は、Kabatら、J. Biol. Chem. 252巻:6609〜6616頁(1977年);Kabatら、U.S.
Dept. of Health and Human Services、「Sequences of proteins of immunological interest」(1991年);Chothiaら、J. Mol. Biol. 196巻:901〜917頁(1987年);およびMacCallumら、J. Mol. Biol.262巻:732〜745頁(1996年)によって記載されており、定義は、互いに比較した場合にアミノ酸残基のオーバーラップまたはサブセットを含む。それにもかかわらず、いずれの定義を適用して抗体または移植抗体またはその変異体のCDRについて言及することも、本明細書において定義され、使用されるこの用語の範囲内であるものとする。上で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基は以下の表1に比較として記載されている。
本明細書で使用される場合、「フレームワーク」という用語は、抗体可変領域に関して使用される場合、抗体の可変領域内のCDR領域の外側の全てのアミノ酸残基を意味するものとする。可変領域フレームワークは、一般に、長さが約100アミノ酸から約120アミノ酸の間の不連続なアミノ酸配列であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを指すものとする。本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」という用語は、CDRによって分離されているフレームワークの各ドメインを意味するものとする。
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(immununoglobulin)(レシピエント抗体)を包含する。したがって、非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリンである。非ヒト配列は、主に可変領域、特に相補性決定領域(CDR)に位置する。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基で置き換えられている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDRやフレームワーク配列にも見出されない残基も含んでよい。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDRの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域に対応する。本開示の目的に関して、ヒト化抗体は、免疫グロブリン断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または他の抗体の抗原結合部分配列も含んでよい。
ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、一般には、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)も含んでよい。例えば、Jonesら(1986年)Nature 321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323〜329頁;およびPresta(1992年)Curr.
Op. Struct. Biol. 2巻:593〜596頁を参照されたい。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野で公知である。一般に、ヒト化抗体には、非ヒトである供給源から1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」または「ドナー」残基と称され、一般には、「移入」または「ドナー」可変ドメインから得られる。例えば、ヒト化は、基本的にWinterおよび共同研究者の方法に従って、げっ歯類CDRまたはCDR配列で対応するヒト抗体の配列を置換することによって実施することができる。例えば、Jonesら、上記;Riechmannら、上記およびVerhoeyenら(1988年)Science 239巻:1534〜1536頁を参照されたい。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、実質的にインタクトなヒト可変ドメイン未満が非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)を包含する。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、いくつかのCDR残基、および必要に応じていくつかのフレームワーク領域残基がげっ歯類抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)の類似の部位由来の残基で置換されているヒト抗体である。
ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリーを使用することによっても産生することができる。Hoogenboomら(1991年)J. Mol. Biol、227巻:381頁;Marksら(1991年)J. Mol. Biol. 222巻:581頁。ヒトモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、Coleら(1985年)「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss、77頁およびBoernerら(1991年)J. Immunol. 147巻:86〜95頁に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に、または完全に不活性化されたトランスジェニック動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。免疫学的に攻撃するとヒト抗体産生が観察され、これはヒトにおいて見られるものと、遺伝子再構成、集合、および抗体レパートリーを含めたあらゆる点でよく似ている。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、および以下の科学的刊行物に記載されている:Marksら(1992年)Bio/Technology 10巻:779〜783頁(1992年);Lonbergら(1994年)Nature 368巻:856〜859頁;Morrison(1994年)Nature 368巻:812〜813頁;Fishwaldら(1996年)Nature Biotechnology 14巻:845〜851頁;Neuberger(1996年)Nature Biotechnology 14巻:826頁;およびLonbergら(1995年)Intern. Rev. Immunol. 13巻:65〜93頁。
抗体は、上記の公知の選択方法および/または変異誘発方法を使用して親和性成熟させることができる。いくつかの実施形態では、親和性成熟した抗体は、成熟抗体を調製する出発抗体(一般にマウス、ウサギ、ニワトリ、ヒト化またはヒト)の親和性よりも5倍以上、10倍以上、20倍以上、または30倍以上の親和性を有する。
抗体は二重特異性抗体であってもよい。二重特異性抗体はモノクローナルであり、少なくとも2種の異なる抗原に対して結合特異性を有するヒト抗体またはヒト化抗体であってよい。この場合、2つの異なる結合特異性は、2つの異なるMMP、または単一のMMP(例えば、MMP9)上の2つの異なるエピトープに対するものであってよい。
本明細書に開示されている抗体は、免疫コンジュゲートであってもよい。そのような免疫コンジュゲートは、第2の分子、例えば、レポーターにコンジュゲートした抗体(例えば、MMP9に対する)を含む。免疫コンジュゲートは、細胞傷害性薬剤、例えば、化学療法剤、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはその断片)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート(radioconjugate))とコンジュゲートした抗体も含んでよい。
特定のポリペプチドまたはエピトープに「特異的に結合する」または「特異的な」抗体とは、抗体と標的抗原またはエピトープの選択的結合を指し、これらの用語および特異的な結合を決定するための方法は当技術分野においてよく理解されている。抗体は、標的抗原またはエピトープと、他の物質よりも大きな親和性、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い持続時間で結合する場合に、特定の標的抗原またはエピトープに対する「特異的な結合」を示す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはエピトープに特異的に結合する抗体とは、他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープのいずれにも実質的に結合することなく特定のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体である。
いくつかの実施形態では、提供される抗体は、ヒトMMP9に、約4℃、25℃、37℃または42℃の温度で測定して、モノクローナル抗体、scFv、Fabの形態、または抗体の他の形態で、100nM以下、必要に応じて10nM未満、必要に応じて1nM未満、必要に応じて0.5nM未満、必要に応じて0.1nM未満、必要に応じて0.01nM未満、または必要に応じて0.005nM未満、特定の例では、0.1nMから0.2nMまでの間、または0.1pMから10pMの間、例えば、0.4pMから9pMの間、例えば、0.4pMから8.8pMの間の解離定数(Kd)で特異的に結合する。
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、MMP9の1つまたは複数のプロセシング部位(例えば、タンパク質分解的切断の部位)に結合し、それにより、プロ酵素またはプレプロ酵素がプロセシングされて触媒として活性な酵素になることを有効に遮断し、したがって、MMP9のタンパク質分解活性を低下させる。
ある特定の実施形態では、本開示による抗体は、MMP9に、別のMMPに対するその結合親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍大きな親和性で結合する。結合親和性は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができ、例えば、会合速度(on−rate)、解離速度(off−rate)、解離定数(Kd)、平衡定数(Keq)または当技術分野における任意の用語として表すことができる。
ある特定の実施形態では、本開示による抗体は、MMP9の酵素(すなわち、触媒)活性を阻害する抗体、例えば、MMP9の触媒活性の非競合的な阻害剤である。ある特定の実施形態では、本開示による抗体は、MMP9の触媒ドメイン内に結合する。さらなる実施形態では、本開示による抗体は、MMP9の触媒ドメインの外側に結合する。
本明細書に記載の抗MMP9抗体またはその抗原結合断片の任意の1つまたは複数と、MMP9との結合について競合する抗体またはその抗原結合断片も提供される。したがって、本開示は、例えば、配列番号1または配列番号5〜8のいずれかの重鎖ポリペプチド、配列番号2または配列番号9〜12の軽鎖ポリペプチド、またはそれらの組合せを有する抗体との結合について競合する抗MMP9抗体およびその機能性断片を意図している。一実施形態では、抗MMP9抗体またはその機能性断片は、本明細書においてAB0041と記載されている抗体と、ヒトMMP9との結合について競合する。
エピトープ結合
本明細書に記載の抗体の任意の1つまたは複数と同じエピトープ、例えば、MMP9エピトープに結合する抗体およびその断片も提供される。MMP9のエピトープに特異的に結合する抗体および断片も提供され、エピトープは、MMP9の特定の領域またはMMP9の複数の領域内のアミノ酸残基を含む。そのような領域は、例えば、MMP9の構造ループおよび/または他の構造ドメイン、例えば、本明細書に記載の例示的な抗体と結合するために重要であることが示されているものを含んでよい。一般には、領域は、全長のMMP9配列、例えば、配列番号27におけるアミノ酸残基の位置に従って定義される。いくつかの例では、エピトープは、配列番号27のシステインスイッチ活性ポケットの外側にある。いくつかの例では、エピトープは、配列番号27の残基104〜202である領域内のアミノ酸残基(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸残基)を含有する。一例では、エピトープは、配列番号27の残基104〜119、残基159〜166、または残基191〜202である領域内のアミノ酸残基(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸残基)を含有する。一部の態様では、エピトープは、配列番号27の残基104〜119であるMMP9の領域内のアミノ酸残基(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸残基)、配列番号27の残基159〜166であるMMP9の領域内のアミノ酸残基、および配列番号27の残基191〜202であるMMP9の領域内のアミノ酸残基を含む。一部の場合には、エピトープは、配列番号27のE111、D113、R162、またはI198を含む。一部の場合には、エピトープは配列番号27のR162を含む。一部の場合には、エピトープは、配列番号27のE111、D113、R162、およびI198を含む。
MMP9配列
ヒトMMP9タンパク質のアミノ酸配列は以下の通りである:
タンパク質ドメインは、図3に概略的に示されており、また、以下に示されている:
アミノ酸番号 特徴
1〜19 シグナルペプチド
38〜98 ペプチドグリカン結合ドメイン
R98/C99 システインスイッチ活性ポケット
112〜445 Zn依存性メタロプロテイナーゼドメイン
223〜271 フィブロネクチンII型ドメイン(ゼラチン結合ドメイン)
281〜329 フィブロネクチンII型ドメイン(ゼラチン結合ドメイン)
340〜388 フィブロネクチンII型ドメイン(ゼラチン結合ドメイン)
400〜411 Zn結合領域
521〜565 ヘモペキシン様ドメイン
567〜608 ヘモペキシン様ドメイン
613〜659 ヘモペキシン様ドメイン
661〜704 ヘモペキシン様ドメイン
成熟全長ヒトMMP9のアミノ酸配列(シグナルペプチドを伴わない配列番号27のプロポリペプチドのアミノ酸配列である)は:
である。
シグナルペプチドのアミノ酸配列はMSLWQPLVLVLLVLGCCFA(配列番号29)である。
ミュータントMMP9ポリペプチドを含めた、MMP9ポリペプチドも提供される。そのようなペプチドは、例えば、本明細書において提供される抗体および断片を生成および選択することにおいて有用である。例示的なポリペプチドとしては、配列番号27の残基104〜202を含有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、および配列番号27のアミノ酸配列を有し、配列番号27の残基111、113、162、もしくは198にアミノ酸置換を有する、またはそのような残基全てにアミノ酸置換を有するポリペプチドが挙げられる。その他の例示的なポリペプチドとしては、配列番号27の残基111〜198を含有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、および配列番号27の残基111〜198を含有するアミノ酸配列を有し、配列番号27の残基111、113、162、もしくは198にアミノ酸置換を有する、またはそのような残基全てにアミノ酸置換を有するポリペプチドが挙げられる。そのようなポリペプチドは、例えば、本明細書に記載のものなどの、そのような残基を含有するエピトープおよび/またはMMP9のそのような残基が結合のために重要であるエピトープに結合する抗体を選択することにおいて使用が見出される。
本開示は、MMP9、例えば、ヒトMMP9の任意の部分に結合するMMP9結合タンパク質を意図しており、他のMMPと比較してMMP9に優先的に結合するMMP9結合タンパク質が特に興味深い。
抗MMP9抗体およびその機能性断片は、当技術分野で周知の方法に従って生成することができる。例示的な抗MMP9抗体が以下に提供される。
マウスモノクローナル抗MMP9抗体
ヒトMMP9に対するマウスモノクローナル抗体を実施例1に記載のとおりに得た。この抗体は、マウスIgG2b重鎖およびマウスカッパ軽鎖を含有し、AB0041と称される。
AB0041重鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
シグナル配列に下線が引かれており、IgG2b定常領域の配列がイタリック体で示されている。
AB0041軽鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
シグナル配列に下線が引かれており、カッパ定常領域の配列がイタリック体で示されている。
以下のアミノ酸配列は、AB0041のIgG2b重鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
以下のアミノ酸配列は、AB0041のカッパ軽鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
他の例示的なマウス抗ヒトMMP9抗体(例えば、M4およびM12)は実施例1Bに記載されている。例示的な抗マウスMMP9抗体(AB0046)は、実施例1Cに記載されている。他の例示的なマウス抗ヒトMMP9抗体としては、配列番号3の配列を有する可変領域、およびIgG2b定常領域の配列に対して95%の類似性を有する定常領域を含む抗体が挙げられる。さらに、例示的なマウス抗ヒトMMP9抗体としては、配列番号4の配列を有する可変領域、およびIgG2b定常領域の配列に対して95%の類似性を有する定常領域を含む抗体が挙げられる。他の例示的なマウス抗ヒトMMP9抗体としては、配列番号3および4の配列を有する可変領域、およびIgG2b定常領域の配列に対して95%の類似性を有する定常領域を含む抗体が挙げられる。そのような抗マウス抗体は、MMP9阻害方法を試験および評価するために適している。
重鎖変異体
AB0041重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域の配列を変更することによって、別々に改変した。これらの配列変更の効果は、ヒトT細胞エピトープの抗体を枯渇させ、それにより、ヒトにおけるその免疫原性を低下させるまたは無効にすることであった。
ヒンジドメインを安定化するS241Pアミノ酸変化(Angalら(1993年)Molec. Immunol. 30巻:105〜108頁)を含有するヒトIgG4重鎖バックグラウンドで、4種の重鎖変異体を構築し、VH1、VH2、VH3およびVH4と名付けた。それらのフレームワーク領域およびCDRのアミノ酸配列は、以下の通りである:
図1に、ヒト化重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアラインメントが示され、4種の変異体の間のフレームワーク領域内のアミノ酸配列の差異が示されている。
軽鎖変異体
ヒトカッパ鎖バックグラウンドで、4種の軽鎖変異体を構築し、Vk1、Vk2、Vk3およびVk4と名付けた。それらのフレームワーク領域およびCDRのアミノ酸配列は以下の通りである:
図2に、ヒト化軽鎖の可変領域のアミノ酸配列のアラインメントが示され、4種の変異体の間のフレームワーク領域内のアミノ酸配列の差異が示されている。
ヒト化重鎖および軽鎖を、可能性のある対組合せの全てに組み合わせて、いくつもの機能的なヒト化抗MMP9抗体を生成する。例えば、配列番号3、5、6、7、および8のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域を有する抗体;配列番号4、9、10、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗体;および配列番号3、5、6、7、および8のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域および配列番号4、9、10、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗体、ならびにそのような抗体とMMP9との結合について競合する抗体、およびそのような抗体に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有する抗体が提供される。一例では、抗体は、配列番号7に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域および配列番号12と少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域、または配列番号7のVH領域および配列番号12のVL領域を有する。
本明細書に開示されている重鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有する追加の重鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。さらに、本明細書に開示されている軽鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有する追加の軽鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。
本明細書に開示されている重鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の配列同一性を有する追加の重鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。さらに、本明細書に開示されている軽鎖可変領域の配列に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の配列同一性を有する追加の軽鎖可変領域アミノ酸配列も提供される。
相補性決定領域(CDR)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている例示的な提供される抗MMP9抗体の重鎖のCDRは以下のアミノ酸配列を有する:
CDR1:GFSLLSYGVH(配列番号13)
CDR2:VIWTGGTTNYNSALMS(配列番号14)
CDR3:YYYGMDY(配列番号15)
したがって、提供される抗MMP9抗体としては、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1領域を有する抗体、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2領域を有する抗体、および配列番号15に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3領域を有する抗体、およびMMP9上のそのような抗体と同じエピトープとの結合について競合する、またはそれに結合する抗体が挙げられる。一部の場合には、抗体は、配列番号13、14および15に記載の配列を有するVH CDRを含有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている例示的な抗MMP9抗体の軽鎖のCDRは以下のアミノ酸配列を有する:
CDR1:KASQDVRNTVA(配列番号16)
CDR2:SSSYRNT(配列番号17)
CDR3:QQHYITPYT(配列番号18)
したがって、提供される抗MMP9抗体としては、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1領域を有する抗体、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2領域を有する抗体、および配列番号18に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3領域を有する抗体、およびMMP9上のそのような抗体と同じエピトープとの結合について競合する、またはそれに結合する抗体が挙げられる。一部の場合には、抗体は、配列番号16、17および18に記載の配列を有するVL CDRを含有する。
抗MMP9抗体をコードする核酸
本開示は、抗MMP9抗体およびその機能性断片をコードする核酸を提供する。したがって、本開示は、本明細書に記載の抗体または抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド(核酸)、そのようなポリヌクレオチドを含有するベクター、ならびにそのようなポリヌクレオチドをポリペプチドへと転写し、翻訳するための宿主細胞および発現系を提供する。
本開示は、上記の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写カセットもしくは発現カセットの形態の構築物も意図している。
本開示は、上記の1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞、ならびに本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を産生する方法も提供し、該方法は、組換え宿主細胞において重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドをコードする核酸を発現させること(同じ宿主細胞において、または異なる宿主細胞において、同じ構築物から、または異なる構築物から)を含む。発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成することができる。発現によって産生した後、抗体または抗原結合断片を、任意の適切な技法を使用して単離し、かつ/または精製し、次いで適切に使用することができる。
種々の異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングし、発現させるための系が周知である。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物の細胞、酵母およびバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドを発現させるために当技術分野において利用可能な哺乳動物の細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウスメラノーマ細胞およびその他の多くの細胞が挙げられる。一般的な細菌宿主はE.coliである。
作動可能に連結したプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および/または適宜他の配列を含めた適切な調節配列を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルス性の例えばファージまたはファージミドであってよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual:第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、DNAの細胞への導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析において核酸を操作するための多くの公知の技法およびプロトコールは、Short Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992年に詳しく記載されている。SambrookらおよびAusubelらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
対象のポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込むか、あるいは安定なまたは一過性のエピソームエレメントとして維持することができる。
多種多様な発現制御配列−作動可能に連結したDNA配列の発現を制御する配列−のいずれも、DNA配列を発現させるためにこれらのベクターに使用することができる。例えば、対象のポリペプチドをコードする核酸は、プロモーターに作動可能に連結させ得、組換えMMP9タンパク質またはその一部を産生する方法において使用するための発現構築物中に提供することができる。
本明細書に開示されている抗体鎖をコードする核酸を分子生物学における標準の知識および手順を使用して合成することができることは、当業者には知られている。
本明細書に開示されている重鎖および軽鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の例は、以下の通りである:
可変領域内のCDRおよびフレームワーク領域の近位(juxtaposition)、フレームワーク領域の構造および重鎖定常領域および軽鎖定常領域の構造を含めた抗体の構造は当技術分野で周知であるので、抗MMP−9抗体をコードする関連する核酸を得ることは、十分に当技術分野の技術の範囲内である。したがって、本明細書に開示されているヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および少なくとも99%の相同性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドも提供される。したがって、本明細書に開示されているヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および少なくとも99%同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドも提供される。一例では、ポリヌクレオチドは、配列番号21に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有するか、または配列番号21を含むもしくは配列番号21であり、かつ/または配列番号26に対して少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ超の配列同一性を有する、または配列番号26を含むもしくは配列番号26である。
医薬組成物
MMP9結合タンパク質、ならびにMMP9結合タンパク質をコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)は、例えば、薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤と組み合わせた医薬組成物として提供することができる。そのような医薬組成物は、例えば、被験体にin vivoまたはex vivoで投与するため、および、被験体を、例えば本明細書において提供される処置方法または診断方法のいずれにおいてもMMP9結合タンパク質を使用して診断し、かつ/または処置するために有用である。
薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤は、投与される患者に生理的に許容され、一緒に投与される抗体またはペプチドの治療的性質を保持する。薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤およびそれらの製剤は、一般に、例えば、Remington’ pharmaceutical Sciences(第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA 1990年)に記載されている。1つの例示的な医薬キャリアは生理食塩水である。キャリアまたは賦形剤のそれぞれは、製剤の他の成分と適合し、患者に対して実質的に傷害性ではないという意味で「薬学的に許容される」。
医薬組成物は、全身的または局所的な特定の投与経路と適合するように製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、種々の経路によって投与するために適したキャリア、希釈剤、または賦形剤を含む。
医薬組成物は、薬学的に許容される添加剤を含んでよい。添加剤の例としては、これだけに限定されないが、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、ブドウ糖、フルクトース、ラクトースならびにそれらの混合物などの糖が挙げられる。薬学的に許容される添加剤は、ブドウ糖などの薬学的に許容されるキャリアおよび/または賦形剤と組み合わせることができる。添加剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80などの界面活性物質も包含する。
製剤および送達方法は、一般に、処置される部位および疾患に応じて適合させる。例示的な製剤としては、これだけに限定されないが、非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、もしくは皮下投与、または経口投与に適した製剤が挙げられる。
非経口的送達用の医薬組成物としては、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ハンクス液、リンゲル液、ブドウ糖/食塩水、およびグルコース溶液が挙げられる。製剤は、生理的条件に近づけるための補助的な物質、例えば、緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、界面活性剤などを含有してよい。添加剤は、殺菌剤または安定剤などの追加の活性成分も含んでよい。例えば、液剤は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレートまたはオレイン酸トリエタノールアミンを含有してよい。追加の非経口的な製剤および方法は、Bai(1997年)J. Neuroimmunol.80巻:65〜75頁;Warren(1997年)J. Neurol. Sci. 152巻:31〜38頁;およびTonegawa(1997年)J. Exp. Med. 186巻:507〜515頁に記載されている。非経口的調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投薬バイアルに封入することができる。
皮内投与または皮下投与用の医薬組成物は滅菌した希釈剤、例えば、水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、グルタチオンまたは亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度を調整するための作用剤、例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖を含んでよい。
注射用の医薬組成物としては、滅菌注射用溶液または分散液を即時調製するための水性液剤(水溶性の場合)または分散製剤および滅菌粉剤を含む。静脈内投与に関して、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール(polyetheylene glycol)など)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であってよい。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散製剤の場合では必要な粒度を維持することによって、および界面活性物質を使用することによって維持することができる。抗細菌剤および抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールが挙げられる。等張化剤、例えば、糖、マンニトール(manitol)、ソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムを組成物に含めることができる。生じた溶液は、そのまま使用するために包装することもでき、凍結乾燥させることもできる。凍結乾燥した調製物は、後で投与する前に滅菌溶液と組み合わせることができる。
薬学的に許容されるキャリアは、吸収またはクリアランスを安定化する、増加させるまたは遅延させる化合物を含有してよい。そのような化合物としては、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン;低分子量のタンパク質;ペプチドのクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物;または賦形剤または他の安定剤および/もしくは緩衝剤が挙げられる。吸収を遅延させる作用剤としては、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンが挙げられる。医薬組成物の吸収を安定化するため、または増加もしくは減少させるために、リポソームキャリアを含めた界面活性剤も用いることができる。化合物を消化から保護するために、組成物と複合体化させて(complexed)、酸性および酵素による加水分解に対して抵抗性にすることもできるか、または化合物をリポソームなどの適切に抵抗性のキャリアに複合体化させることもできる。化合物を消化から保護する手段は当技術分野で公知である(例えば、Fix(1996年)Pharm Res. 13巻:1760〜1764頁;Samanen(1996年)J. Pharm. Pharmacol. 48巻:119〜135頁;および治療剤を経口送達するための脂質組成物が記載されている米国特許第5,391,377号を参照されたい)。
本発明の組成物は、本明細書において提供される他の治療用部分またはイメージング/診断用部分と組み合わせることができる。治療用部分および/またはイメージング用部分は、別々の組成物として、またはMMP9結合タンパク質上に存在するコンジュゲートした部分として提供することができる。
in vivo投与用の製剤は、一般に、無菌である。一実施形態では、医薬組成物は、発熱物質を含まず、したがってヒト患者への投与が許容されるように製剤化される。
種々の他の医薬組成物およびそれらを調製および使用するための技法は、本開示を考慮すると当業者に公知である。適切な薬理学的組成物および関連する管理技法の詳細な一覧については、本明細書における詳細な教示を参照することができ、これは、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 第20版(Lippincott、Williams & Wilkins 2003年)などのテキストによってさらに補充することができる。
医薬組成物は、処置を必要としている患者/被験体の身体特性、投与経路などに基づいて製剤化することができる。そのような医薬組成物は、病院および診療所に配布するために適切なラベルを伴う適切な医薬用パッケージに包装することができ、ラベルは、被験体における本明細書に記載の障害の処置を表示するためのものである。医薬品は、単一単位として包装することもでき、複数の単位として包装することもできる。本発明の医薬組成物の投与量および投与についての指示を医薬用パッケージおよび下記のキットに含めることができる。
使用方法
本開示の抗MMP9抗体およびその断片を含めたMMP9結合タンパク質は、例えば、治療方法および診断方法、例えば、試料中のMMP9を検出する方法、処置の方法(例えば、血管新生を阻害する方法など)、ならびに診断および予後判定の方法において使用することができる。したがって、診断方法および治療方法ならびに抗MMP9抗体の使用が提供される。使用方法の例は下に記載されている。
処置の方法
本明細書では、MMP9の発現および/または活性に関連する疾患および障害の処置の方法を含めた処置の方法、ならびに、そのような方法における、提供される抗体および組成物の使用が提供される。疾患および障害としては、これだけに限定されないが、がん、例えば、腫瘍(例えば、原発性腫瘍または転移性腫瘍)、例えば、MMP9を発現する組織において発現するまたは配置されるもの、ならびに炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患、関節リウマチおよび炎症性ミオパチーが挙げられる。
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」または「処置(treatment)」とは、本明細書に記載の疾患または障害に関連する1つまたは複数の症状の発生を停滞もしくは延期させること、または現存する制御されていないまたは望ましくない症状を改善すること、さらなる症状を予防すること、または症状の根底にある代謝的原因を改善もしくは予防することを意味する。したがって、この用語は、疾患もしくは症状を有する、またはそのような疾患もしくは症状が発生する潜在性がある哺乳動物の被験体に有益な結果が付与されたことを示す。応答は、患者が、これだけに限定することなく、生存の延長を含み得る、疾病の徴候または症状の部分的もしくは完全な緩和、または低減を経験したときに達成される。予測無増悪生存時間は、再発の数、疾患の病期、および他の因子を含めた予後因子に応じて、数か月から数年の単位で測定することができる。
そのような方法と併せて使用するための医薬組成物、例えば、本明細書に記載の抗体またはその断片のいずれかを含有する医薬組成物も提供される。組成物は、任意の適切な経路によって局所的または全身的に投与するために適したものであってよい。
一般に、MMP9結合タンパク質は、治療有効量、例えば、被験体における腫瘍の成長の阻害に影響を及ぼす量、転移を阻害する量、炎症を阻害する量、組織破壊を阻害する量、MMP9活性を阻害する量、またはMMP9に関連する特定の疾患または状態を治療する量で投与される。
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「治療有効量」または「有効量」という用語は、被験体に投与されると(単独で、または別の治療剤と組み合わせてのいずれかで、場合により指定の通り)疾患の状態または疾患の進行を予防または改善するために有効である、または症状の改善、例えば、関連性のある医学的状態の処置、治癒、予防もしくは改善、またはそのような状態の処置、治癒、予防または改善の割合の増大をもたらす作用剤または化合物または組成物の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に適用する場合、治療有効用量とは、その成分単独を指す。組合せに適用する場合、治療有効用量とは、組み合わせて投与されるか、段階的に投与されるか、または同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす、活性成分を組み合わせた量を指す。一例では、抗MMP9抗体のin vivo投与を使用する場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、1日当たり哺乳動物の体重1kg当たり約10ngから約100mgもしくはそれ超に至るまで、好ましくは1日当たり1kg当たり約1μg〜1日当たり1kg当たり50mg、必要に応じて1日当たり1kg当たり約100μg〜1日当たり1kg当たり20mg、1日当たり1kg当たり500μg〜1日当たり1kg当たり10mg、または1日当たり1kg当たり1mg〜1日当たり1kg当たり10mgの範囲であり得る。一実施形態では、静脈内投与量は、約1mg/kgから約30mg/kgまでにわたる。いくつかの実施形態では、静脈内投与量は、q14d、14日ごとに1回、約1mg/kgから約14mg/kgまで、例えば、約2mg/kgから約14mg/kgまでにわたる。他の実施形態では、皮下投与量は、q14d、14日ごとに1回、約1mg/kgから約28mg/kgまで、例えば、約2mg/kgから約28mg/kgまでにわたる。いくつかの実施形態では、有効投与量を7日〜28日ごとに1回投与する。一実施形態では、有効投与量を7日ごとに1回投与する。別の実施形態では、有効投与量を28日ごとに1回投与する。
選択された投与レジメンは、MMP9結合タンパク質の活性、投与経路、投与の時間、使用されている特定の化合物の排出速度、処置の持続時間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康ならびに以前の病歴、ならびに同様に医学の分野で周知の因子を含めた種々の因子に依存する。
当技術分野における通常の技術を有する臨床医は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物に使用する本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、投与量を所望の効果が達成されるまで徐々に上昇させることができる。
一部の場合には、処置の方法は、作用剤、例えば、抗MMP9抗体またはそれを含有する組成物を非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、もしくは皮下投与すること、または経口投与することを含む。
本明細書で使用される場合、「被験体」という用語は、哺乳動物の被験体を意味する。例示的な被験体としては、これだけに限定されないが、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジが挙げられる。いくつかの実施形態では、被験体は、がん、炎症性の疾患もしくは状態、または自己免疫性の疾患もしくは状態を有し、下記の通り本発明の作用剤を用いて処置することができる。
必要であれば、処置のために、方法は、追加の療法、例えば、がんの場合では、MMP9結合タンパク質に加えて、がんの外科的除去および/または抗がん剤の投与または処置をさらに含んでよい。そのような抗がん剤の投与または処置は、本明細書に開示されている組成物の投与と同時であってもよい。
MMP9の検出方法
本開示は、被験体におけるMMP9を検出する方法、例えば、MMP9を発現している腫瘍もしくは腫瘍に関連する組織、または自己免疫疾患または炎症性疾患などの本明細書に記載の疾患に関連する組織もしくは体液もしくは他の生体試料を検出するための、方法も意図している。したがって、MMP9活性を有する腫瘍を診断する、モニタリングする、病期分類するまたは検出する方法が提供される。
被験体(例えば、MMP9発現と関連する腫瘍を有する疑いがある、もしくはそれを有することが分かっている個体、または別の疾患または状態を有する疑いがある、もしくはそれを有することが分かっている個体)由来の試料(例えば、試験生体試料)を、MMP9の存在、非存在、発現、および/またはレベルについて分析することができる。例えば、そのような試料を収集し、本明細書に記載の抗体または断片などのMMP9結合タンパク質と試料中の物質(例えば、タンパク質)との結合が存在するかしないかを検出することによって分析することができる。いくつかの例では、該方法は、検出された結合の量を対照試料との結合の量と比較すること、またはMMP9の検出レベルをMMP9の対照レベルと比較することをさらに含む。一部の場合には、該方法により、MMP9関連疾患または状態(例えば、本明細書に記載のもの)の存在、非存在、または重症度が示される。
この分析は、本明細書に記載のMMP9結合タンパク質を使用した処置を開始する前に実施することができ、がん処置の進行のモニタリングの一部として行うこともできる。いくつかの実施形態では、検出アッセイを実施し、例えば、診断アッセイの結果に基づいて被験体の処置を開始、変更、または中止することによって行われる処置の方法が提供される。そのような診断分析は、これだけに限定されないが、組織、そのような組織から単離された細胞などを含めた任意の試料を使用して実施することができる。一部の場合には、該方法を、血液、血漿、血清、全血、唾液、尿、または精液などの液体試料に対して実施する。組織試料としては、例えば、ホルマリン固定したまたは凍結させた組織切片が挙げられる。
MMP9を検出および分析するための任意の適切な方法を使用することができる。当技術分野で公知の種々の診断アッセイ技法、例えば、競合結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイおよび不均一相または均一相のいずれかで行われる免疫沈降アッセイが、そのような目的に適し得る。
検出方法において使用するためのMMP9結合タンパク質は、検出可能部分を用いて標識することができる。検出可能部分により、直接的に、または間接的に、検出可能なシグナルが生じる。例えば、検出可能部分は、例えば、放射性同位元素、例えば、3H、14C、32P、35S、もしくは125I、蛍光化合物もしくは化学発光化合物、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Texas Red、シアニン、フォトシアン、ローダミン、もしくはルシフェリン、または酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの本明細書に記載のもののいずれであってもよい。
検出は、MMP9結合タンパク質とMMP9との結合に適した条件下で試料を接触させ、MMP9結合タンパク質−MMP9複合体が存在すること(例えば、レベル)または存在しないことを評価することによって達成することができる。参照試料のレベルと比較した試料中のMMP9のレベルにより、MMP9活性を有する腫瘍または腫瘍に関連する組織が存在することが示され得る。参照試料は、被験体から以前に取得した試料であっても別の個体由来の試料であってもよい。
本発明の種々の態様が、以下のいくつかの実施例を介してさらに記載され、例示されており、これはいずれも本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1A)
ヒトMMP−9に対する抗体の調製
シグナルペプチドを含まない全長のヒトMMP9タンパク質(配列番号28)を用いてマウスを免疫した。免疫したマウス由来の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマライブラリーを生成した。モノクローナル培養物を調製し、スクリーニングして、抗MMP9モノクローナル抗体を発現している培養物を同定した。
抗体(AB0041)を培養物のうちの1つから精製し、特徴付けた。この抗体は、IgG2b重鎖およびカッパ軽鎖を含有した。特徴付けは、AB0041の、他のヒトMMPおよびカニクイザル、ラットおよびマウスを含めた他の種由来のMMP9タンパク質との結合について試験することを含んだ。表2に示されているように、AB0041抗体はヒトMMP9およびカニクイザルMMP9に対する親和性がより大きく、ラットMMP9に対する親和性がより低かった。さらに、AB0041抗体は、マウスMMP9にも多くのヒト非MMPマトリックスメタロプロテイナーゼにも結合しなかった。
追加の特徴付けは、AB0041とミュータントマウスMMP9タンパク質およびヒトMMP9タンパク質との結合をアッセイすることを含んだ。マウスMMP9タンパク質およびヒトMMP9タンパク質の触媒ドメインにおける同一でない残基を同定し、46の同一でないアミノ酸残基を変異誘発のために選択した。大部分の変異をマウスMMP9において生成した:マウスアミノ酸残基を変異させて、ヒトMMP9のアミノ酸残基とマッチさせた。他の変異をヒトMMP9において生成した:ヒトアミノ酸残基を変異させて、マウスMMP9のアミノ酸残基とマッチさせた。変異させたマウスMMP9タンパク質またはヒトMMP9タンパク質をELISAアッセイにおいて使用した。
ELISAアッセイにおいて、AB0041抗体を一次抗体として使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体を使用して結合を検出した。野生型ヒトMMP9を陽性対照として使用し、野生型マウスMMP9を陰性対照として使用した。ELISAアッセイの結果により、MMP9アミノ酸配列の162位のアルギニン残基(R162)がAB0041抗体のMMP9との結合に重要であることが示された。結果により、アミノ酸残基E111、D113、およびI198がAB0041抗体のMMP9との結合に重要であることも示された。MMP9の結晶構造に基づいて、E111、D113、R162、およびI198が、互いに近く、MMP9のCa2+イオン結合ポケット周辺に集まっていた。この試験では、AB0041抗体は、アミノ酸残基104〜119、159〜166、および191〜202を含有するMMP9の領域内のアミノ酸残基を含有するエピトープに特異的に結合することが示された。
MMP9についての酵素アッセイにより、AB0041抗体がMMP9の非競合的阻害剤としての機能を果たすことが見出された。
(実施例1B)
ヒトMMP−9に対する追加の抗体の調製
追加のハイブリドーマを生成し、それによりAB0041と同一性を有する可変領域を有する抗体を産生した。M4と称される1つのそのようなハイブリドーマは重鎖(IgG2b)配列:
(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)、および軽鎖(カッパ)配列:
(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)(配列番号31)を含有する抗体を発現した。
M4抗体は、アミノ酸配列:
(CDR1、CDR2、およびCDR3(それぞれ配列番号34、35、および36)下線が引かれている)(配列番号32)を有する可変重鎖
およびアミノ酸配列
(CDR1、CDR2、およびCDR3(それぞれ配列番号37、38、および39)下線が引かれている)(配列番号33)を有する可変軽鎖を有した。
M12と称される別のそのようなハイブリドーマは、配列:
(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)(配列番号40)を有するカッパ鎖のみを発現した。
M12抗体は、アミノ酸配列
(CDR1、CDR2、およびCDR3(それぞれ配列番号42、43、および44)下線が引かれている)(配列番号41)を有する可変軽鎖を有した。
M4の重鎖および軽鎖とM12の重鎖および軽鎖の間の差がAB0041抗体と比較して示されている配列比較が図4に示されている。
酵素アッセイを行った。結果により、M4ハイブリドーマおよびM12ハイブリドーマによって産生される抗体がMMP9の非競合的阻害剤として作用することが実証された(データは示していない)。
(実施例1C)
マウスMMP−9に対する抗体の調製
別のマウス抗体AB0046を生成した。実施例1Aに記載のものと同様のプロセスを使用し、MMP9ノックアウトマウス(B6.FVB(Cg)−Mmp9tmlTvu/J系統)を、マウスMMP9のプロ/触媒ドメイン断片の標的化ドメインを使用して免疫した。AB0046抗体は、アミノ酸配列
(配列番号45)(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)を有するカッパ軽鎖およびアミノ酸配列
(配列番号46)(シグナルペプチドが、下線が引かれたテキストで記載されており、可変領域がプレーンテキストで記載されており、定常領域がイタリック体で記載されている)を有するIgG1重鎖を有した。
以下のアミノ酸配列は、AB0046のIgG1重鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
(配列番号47)。
以下のアミノ酸配列は、AB0046のカッパ軽鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRに下線が引かれている):
(配列番号48)
追加の特徴付けにより、AB0046抗体がマウスMMP9に非競合的に結合した、またはその結合がマウスMMP9の濃度に依存しなかったことが示された。AB0046抗体はヒトMMP9およびMMP2、マウスMMP2、3、7、8、および12に結合しなかった。実施例1Aに記載のエピトープ分析を使用して、マウスMMP9アミノ酸配列の162位のプロリン残基(P162)(ヒトMMP9のR162に対応する)がAB0046抗体のMMP9との結合のために重要であることが示された。結果により、AB0046抗体が、ヒトMMP9のアミノ酸159〜166を含有する部分に対応するマウスMMP9の一部内の残基を含有するエピトープに特異的に結合したことが示唆された。したがって、AB0046抗体はマウスMMP9に特異的な阻害性の抗体であり、AB0041と同様の結合および阻害のカイネティクスを有した。AB0046はマウスMMP9に特異的であり、AB0041/AB0045と同様のエピトープに結合するので、AB0046は、AB0041またはAB0045のいずれかを使用するアッセイのために適している。
さらに特徴付けることにより、AB0046抗体がマウスIgG1アイソタイプであり、マウスにおいて限られたエフェクター機能を有することが示された。
非阻害性であり、P162が結合のために重要である3種の他のマウス抗MMP9抗体を、同様の方法を使用して生成した。
(実施例2)
ヒトMMP9に対する抗体のヒト化
マウスAB0041抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を、それらの可変領域のフレームワーク(すなわち、非CDR)部分の特定の位置で変更して、ヒトにおいて免疫原性の少ないタンパク質を生成した。これらのアミノ酸配列の変化を図1および図2に示した。AB0045と称される1つのヒト化抗体の交差反応性が上の表2Aに示されている。
ヒト化変異体抗MMP9抗体AB0045(ヒト化、改変IgG4(S241P);上の実施例2を参照されたい)は、ヒト化AB0041重鎖変異体VH3(配列番号7
に記載の配列を有する)
およびヒト化AB0041軽鎖変異体VH4(Vk4(配列番号12
に記載の配列を有する)に記載の軽鎖配列を有する)
を含んだ。
AB0045抗体の重鎖は、配列番号49(
(シグナル配列に下線が引かれている;定常領域の配列がイタリック体で示されている))に記載の配列を有し、AB0045抗体の軽鎖は、配列番号50(
(シグナル配列に下線が引かれている;定常領域の配列がイタリック体で示されている))に記載の配列を有する。抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成される1312アミノ酸長を含有し、理論的pIは約7.90であり、吸光係数は1g/Lについて280nmにおいて約1.50AU/cmであり、分子量は約144kDaであり、密度は製剤緩衝液中約1g/mL(製品濃度1mLあたり50〜100mg)である。
この抗体のさらなる特徴付けは、下の実施例3に記載されている。
(実施例3)
変異体MMP9抗体AB0045の特徴付け、ならびにAB0041およびAB0046との比較
上記の通り、AB0045抗体およびAB0041抗体はMMP9の非競合的阻害剤である。したがって、どちらの抗体も、基質濃度に非依存的にMMP9酵素活性を阻害する。AB0045抗体は、直接結合アッセイおよび表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって示された通り、AB0041抗体の場合と同じMMP9エピトープに、1×10〜12モル濃度の範囲の親和性で結合する。どちらの抗体もMMP9に特異的であり、MMP酵素の精製されたドメインおよび全長の形態を含めた他の精製タンパク質標的に対する有意な非特異的結合は観察されなかった。AB0045抗体およびAB0041抗体はどちらも、ネイティブヒトMMP9および組換えヒトMMP9ならびに組換えラットMMP9および組換えカニクイザルMMP9と交差反応性である。
ヒトおよび非ヒト起源のMMP9に対する抗体AB0045、AB0041およびAB0046のin vitroにおける結合親和性、阻害特性、および特異性を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびMMP9酵素アッセイを使用して決定した。AB0045およびAB0041の解離定数(Kd)を生成するためにSPR分析も使用した。
ELISAアッセイでは、ELISAから得られたヒトMMP9、カニクイザルMMP9、およびラットMMP9に対するAB0045抗体およびAB0041抗体のKd値は、全て<400pMであることが見出された。ELISAのデータにより、AB0045抗体およびAB0041抗体がどちらも、試験した関連する毒性学的種の全て由来のMMP9と交差反応することが例証された。AB0046抗体は、マウスMMP9に特異的であり、したがって、マウス有効性モデルにおいて代理抗体として使用することができることが示された。結果により、ヒトMMP9に対するAB0045抗体のKd値は0.168±0.117nMであり、AB0041抗体のKd値は0.133±0.030nMであることが示された。AB0046抗体に関する結果により、AB0046抗体がマウスMMP9に0.218±0.097nMのKd値で結合したことが示された。SPR分析では、結果により、ヒトMMP9に対するAB0045抗体およびAB0041抗体のKd値がそれぞれ8.8pMおよび0.4pMであることが示された。
AB0045抗体、AB0041抗体、およびAB0046抗体の酵素阻害活性を、蛍光発生ペプチド基質Mca−PLGL−Dpa−AR−NH2のMMP9媒介性切断を評価するアッセイにおいて評価した。3種の抗体全てがMMP9酵素活性を阻害した。ヒトMMP9に対するAB0045のIC
50値(0.691±0.097nM)およびAB0041のIC
50値(0.569±0.185nM)は統計的に差がなかった。マウスMMP9のAB0046による阻害についてのIC
50値は0.352±0.03nMであった。値は、調製中に生成した活性な酵素の濃度について調整しなかった。定常状態下での追加のMMP9酵素アッセイを使用して、IC
50および阻害の様式を決定した。このアッセイでは、AB0045のIC
50値は、20倍の範囲の基質濃度で0.148nM〜0.161nMにわたり、一例では、0.158nmであった。結果により、AB0045のMMP9阻害活性が非競合的であることが示された。
結果により、AB0045とAB0041が同等の結合性および阻害性を有すること、およびAB0046が、例えば、ヒト疾患のマウスモデルにおいて関連するマウス代理抗体としての機能を果たし得ることが確認された。