我々は、長期にわたる紫外線への曝露に起因する損傷効果を軽減するために、個々の層パケットをフィルムの残部から連続シートの形態で離層又は剥離することができる新たな多層化ポリマーフィルムを開発した。ポリマー層積層体は、層パケットを形成するように配置又は編成されており、各層パケットは、ポリマー層のうちの少なくとも2つを有している。これらのフィルムは、積層体を構築するために別々に製造されたフィルム又は層を積層する必要なく、ポリマー層の全てを共押出して積層体にすることによって作製され得る。こうすることにより、各層は、個別に作製された後に一緒に積層された層と比べて、製造中の汚染による影響を受けにくくなる。更に、層を積層体に共押出することにより、個別の剥離可能な層パケットを別の方法で薄くされ得るよりもはるかに薄くすることができ、結果として、所与の全厚のフィルム内に個別の剥離可能なシートをより多く含ませることが可能になる。しかしながら、層及び層パケットがより薄く作製され得るにもかかわらず、各剥離可能な層パケットは、依然として、紫外線による劣化の実質的に全て、又はほとんど、又は少なくとも実質的に一部が、単一層パケット内で、つまり、積層体又はフィルム中の最上、最外、又は最前(すなわち、紫外線源に最も近い)層パケット内で阻止されるように十分な厚さであり得る。よって、紫外線曝露による損傷は、積層体の最外層パケットから離層又は剥離するだけで、実質的に全体的に又は少なくとも部分的に除去又は改善され得る。場合によっては、積層体中のポリマー層のうちの少なくとも1つ、又は複数の層パケット中のポリマー層のうちの少なくとも1つ、又は層パケットの各々中のポリマー層のうちの少なくとも1つ、又は層パケットの各々中のポリマー層のうちの正確に1つ(のみ)が、紫外線吸収剤、抗酸化剤、及び/又はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)などの1つ以上の紫外線安定剤を含有してもよい。
紫外線(UV)という用語は、本明細書で使用するとき、波長が可視スペクトルの青色下限未満であり、ポリマーフィルム及び同様の材料の実質的な光分解の原因となる、例えば、300〜400nmの範囲の短波長の電磁放射線を指す。この範囲内の波長は(更に、特に問題となるのは320〜360nmの範囲である)、ポリマー中における光分解に関連する発色団の生成と関連している場合が多い。
フィルム設計のコストと複雑性を低減するために、積層体中のポリマー層は、ABパターン(例えば、ABABAB...)、ABCパターン(例えば、ABCABCABC...)、ADBCパターン(例えば、ADBCADBC...)、又は他の所望のパターンなどの繰り返しパターンで配置され得、繰り返される積層体中の最小グループ又はセットが層パケットに対応する。多数の係る層パケットが、開示されるポリマー積層体及び多層化フィルム内に含まれてもよい。ポリマー層A、B、Cなどのポリマー組成物を適切に選択することにより、層間の接合強度(本明細書で剥離強度又は剥離力と呼ばれる場合がある)を、例えばユーザが被加工物に適用するときにフィルムを操作している間、フィルムが意図せずに分離又は離層しない程度に強いが、ユーザが種々の層パケットをフィルム残部から余分な力を使わずに離層できる程度に弱くすることができる。材料を適切に選択することにより、積層体内の他の層境界面の結合強度よりも、隣接する層パケット間の境界面沿いに層間の結合強度を弱くして、層パケットを一度に1つの層パケットずつフィルム残部から離層又は剥離しやすくすることができる。
上述のように、これらのフィルムは、積層体を構築するために別々に製造されたフィルム又は層を積層する必要なく、ポリマー層の全てを共押出して積層体にすることによって作製され得る。任意の流延後工程、例えば機械方向及び/又は横断方向に延伸することによる多層化押出品の配向を用いることもできる。フィルムは、如何なる感圧性接着剤、又は他の種類の接着剤を必要とすることなく、ポリマー層積層体中、又は少なくとも隣接する層パケット間の境界面に配設されたポリマー層内に作製され得る。これにより、製造の簡素化が可能になるだけでなく、初期の製造製品においてはフィルムの内側にあるが、その後、使用時に層パケットが剥離されると外側表面になるフィルム表面を生成することも可能となり、このフィルム表面は、別々の積層工程を使用して作製されたフィルムで達成されたものよりも新品である。所望する場合、積層体自体がPSA層又は他の接着剤層を含有するかにかかわらず、2つ以上の層積層体がPSA若しくは他の接着剤、又は他の好適な接合材料によって一緒に接合されて、複合フィルム製品を作製してもよい。
例示的な実施形態では、層積層体とその構成層パケットは、非多孔性であってもよい。更に、層積層体中の各ポリマー層も非多孔性であってもよい。非多孔性層パケットは、水、油、又は汚染物質を含有する他の液体若しくは物質に対する効果的なバリアを提供するため、有利である。したがって、係るバリア特性によって、層積層体の内側にある層パケット、即ち製品寿命内の所与の時点ではまだ空気に曝露されていない層パケットを実質的に汚染を含まない新品の状態のままにすることができる。
図1A〜図1Dは、剥離可能な多層化ポリマーフィルムが被加工物に接合され、普通であれば被加工物に衝突することになる少なくとも幾らかの紫外線を該剥離可能な多層化ポリマーフィルムが吸収することによって被加工物を紫外線曝露から保護するシステムを示す。これらの図は、紫外線曝露に起因する光分解が引き起こされた後に、フィルムの最外層パケットを離層することによってシステムを再生又は更新させる方法も示している。
上に述べたように、図1Aにおいて、例示の多層化ポリマーフィルム110aは、フィルム110aの一部であり得る接着剤層112によって被加工物102に接合又は別の方法で付着している。被加工物102は、例えば、紫外線曝露から損傷を受けやすい、及び/又は触られることが多い、及び/又は細菌若しくは他の病原菌が潜伏している若しくはそれらをまき散らすことが知られている若しくは疑われる、任意の有用なデバイス又は物体であり得る。多くの場合、フィルムを通して被加工物を容易に見ることができるように、フィルム110a(及び接着剤層112、又は接着剤層112を含むフィルム110a)は、可視光線に対して実質的に透過性であるのが望ましい。他の場合では、フィルム110a及び/又は着剤層112は実質的に透明でなくてもよく、例えば、フィルム110a及び着剤層112の一方又は両方は、不透明及び/又は高度に拡散性若しくは光散乱性であってもよい。フィルム110a及び被加工物102は、フィルム110aがx−y平面に平行な面内にあるとして、デカルトx−y−z座標系との関連において示されているが、フィルムが平面形状のみであることを意味すると解釈されるべきではない。
フィルム110aは、層パケット122、124に編成されたポリマー層積層体120aを有する。図1A〜図1Dには層パケットが示されているが、各層パケットを構成する個別ポリマー層はこれらの図に示されていない。各層パケット122、124は、表主面及び裏主面を特徴とし、個別ポリマー層のうちの少なくとも2つは、各層パケットの表主面と裏主面との間に配設されている。層パケット122は、表主面122a及び裏主面122bを有する。層パケット124は、表主面124a(パケット122の裏主面122bと密着している)及び裏主面124bを有する。
読者に理解されるように、用語「表(front)」、「裏(back)」、及びこれらに類するもの(例えば、最前、最後)は、便宜上、フィルム又は積層体の外側主表面に関して層の順序を特定するために本文書全体にわたって使用されており、限定するものと解釈されるべきではない。それ故、フィルム又はパケットが、1つの外側主表面が外方(前方)に面し、かつ他の外側主表面が内方(後方)に面するように使用する目的に意図された場合でも、これらの外側主表面のいずれか一方が「前方」と見なされる場合もあり、その場合、他の外側主表面は「後方」と見なされる。
積層体120aのポリマー材料は、積層体中の隣接する層パケットの全ての対について、層パケット間の付着が、層パケット内のポリマー層間の付着よりも弱くなるように選択される。このようにして、層パケット内でよりも層パケット間で不可逆的な離層が生じやすくなる。したがって、層パケット122は、フィルム残部110a又は積層体120aから連続シートの形態で不可逆的に離層されることができ、フィルム110aは、不可逆的な離層に適していると言うことができる。フィルム110a、又は少なくとも積層体120aは、既知の共押出製造法に適合しており、以下で更に論じられるように、積層体120aのポリマー材料を適切に選択することによって、層パケット間に接着剤層を使用することなく作製され得る。
図1Aには、紫外線103に曝露されているフィルム110aが示されている。紫外線103は、太陽光由来であってもよく、かつ/又は紫外線に富む天然に存在する光源若しくは人工の光源由来であってもよい。
紫外線の高エネルギー特性により、フィルムの光学的劣化が経時的に生じ得る。ポリマー材料において、光学的劣化は、ヘイズの増加、及び/又は色の変化(典型的には、色の黄変)といった様々な形で現れ得る。しかしながら、多くの場合、通常は紫外線を強く吸収するという理由から、光学的劣化は、問題となる光学体の最前面又はその近くに空間的又は物理的に局在する。よって、多層化ポリマーフィルム110aの場合、光学的劣化は、層パケット122の表主面122aの近くに局在する可能性があり、他の層パケット124は光学的劣化を殆ど又は全く受けない可能性がある。このことは図1Bに概略的に例示されており、図中、図1Aに関連して、同じ参照番号は同じ要素を示しており、更なる説明を必要としない。フィルム110aは、依然として接着剤層112によって被加工物102に接合又は別の方法で付着しているが、図1Aに例示される紫外線曝露により、フィルム110aは劣化領域122−1を含んでいる。層パケット122が層パケット124よりも紫外線103に近かったため、劣化122−1は表主面122aに最も近い。層パケット122はまた、劣化122−1を層パケット122内に実質的に阻止するのに十分に物理的に厚いものであると仮定される。劣化122−1は、例えば、ヘイズの増加及び/又はフィルム110a及びパケット120aの色の変化によって、光学的に明らかになり得る。
好都合には、フィルム110aの離層特性により、フィルムの残部から層パケット122を単に除去、離層、又は剥離することによって、紫外線曝露の損傷効果を実質的に排除することができる。このことは図1Cに概略的に例示されており、図中、損傷を受けた層パケット122はフィルム110aの残部から剥離されており、同じ参照番号は同じ要素を示している。層パケット122の除去により、ポリマー層の減少した積層体120cを有する減少したフィルムが得られ、(層パケット122が完全に除去された後の)減少したフィルムは、図1Dにおいて多層化ポリマーフィルム110dとラベル付けされている。このようにして、ポリマーフィルムと被加工物102の組み合わせは、損傷を受けた最前層パケットを除去することによって、効果的に更新又は再生される。フィルム110dが紫外線103に更に曝露されると、この場合も同様に、フィルムの新たな最外層パケット124が経時的に損傷を受ける可能性がある。フィルム/被加工物の組み合わせの係る更なる曝露が図1Dに示されている。
初期多層化ポリマーフィルムが複数の剥離可能な層パケットを有するように作製されている場合、図1A〜図1Dに例示される紫外線劣化後の離層による再生の単一サイクルが何度も繰り返され得る。係る開始フィルムの耐用年数は、従来の単層ポリマーフィルムの耐用年数、又は普通であれば連続離層に適合していないポリマーフィルムの耐用年数の複数倍であり得る。例えば、従来の単層のポリエチレンテレフタレート(PET)は、様々な屋外環境下で2〜3年耐えると予測されるが、開示される剥離可能な多層化ポリマーフィルムは、その2倍、3倍、又は更には、多層化フィルムが10個の剥離可能な層パケットを有すると仮定すると、10倍(例えば、潜在的に20〜30年)の耐用年数を潜在的に提供することが可能である。剥離可能な多層化ポリマーフィルムに延長された耐用年数を提供するために損傷を受けた(光学的にかつ/又は物理的に劣化した)層パケットを離層するという概念が、図2に理想的な形で例示されており、図2は、光学的劣化対フィルムの紫外線曝露時間のプロットである。この光学的劣化は、例えば、光学ヘイズ、色、ヘイズと色の組み合わせ、又は初期値に対する前述の尺度又はパラメータの変化といった、紫外線への曝露によってもたらされるフィルム又は光学体の光学的劣化の任意の好適な尺度を表すことができる。
図2の理想的な曲線202は、従来の単層ポリマーフィルム等に一般に予想され得る光学的劣化を表す。このグラフにおいて、光学的劣化は、初期パラメータ又は測定値に対して算出された微分値であると仮定される。したがって、曝露時間ゼロでの光学的劣化は、ゼロに等しい。例えば、光透過性フィルム又は光学体が製造時に2%の光学ヘイズを有する場合、長期にわたる紫外線への曝露は、2%を超えてヘイズを単調に増加させ、時間t=0での光学的劣化はゼロであり、任意の他の時間での光学的劣化は、フィルム又は光学体の実際のヘイズから2%(初期値)を減じることによって算出することができる。別の例として、光透過性フィルム又は光学体が製造時に−4のb*色座標(以下で更に論じられる)を有する場合、長期にわたる紫外線への曝露は、−4を超える値までb*値を単調に増加させ、時間t=0での光学的劣化はゼロであり、任意の他の時間での光学的劣化は、フィルム又は光学体の実際のb*値から−4を減じる(又は4を加える)ことによって算出することができる。これらのような微分に基づく光学的劣化は、曝露時間ゼロで、ゼロで始まるが、その後、曝露時間が増加するにつれて、例えば単調に増大し得る。ユーザは、光学的劣化が許容できなくなる閾値又は限界値(例えば図2の値Lim)を指定することができる。曲線202は、曝露時間tLimでこの閾値Limに達する。したがって、時間tLimは、曲線202と関連付けられた従来の単層フィルム又は光学体の耐用年数を表すことができる。
これとは対照的に、曲線204は、連続して不可逆的に離層されるように構成された開示の多層化ポリマーフィルムの光学的劣化を適正に表すことができる。多層化ポリマーフィルムは、合計でN個の層パケットを含んでいると仮定され、図4を精査すると、Nは少なくとも4である。曲線202と同様に、光学的劣化は初期パラメータ又は測定値に対して算出される微分値であると仮定されるため、曝露時間ゼロでの光学的劣化204は、この場合も同様にゼロである。多層化ポリマーフィルムの曲線204は、曲線202と同様に単調に増加してもよく、曝露時間tがt1と等しくなるまで曲線204と実質的に一致してもよい。
時間t1で、多層化ポリマーフィルムの最外又は最前層パケットがフィルムの残部から離層又は除去され得る。図1の教示によると、最外層パケットは、フィルムに対する紫外線に関連した損傷の全て又は少なくもほとんどを阻止することができる。したがって、係る層パケットを除去することによって、多層化ポリマーフィルムを再生又は更新させることができ、光学的劣化を、例えば、場合によってはゼロ又はゼロに近いレベルまで、即座にかつ実質的に低減させることができる。t=t1で最外層パケットを除去した後、曲線204の残りの多層化ポリマーフィルムは、N−1個の層パケットを含有する。更に、時間t1後、継続中の紫外線曝露が、フィルムに対する更なる単調な損傷をもたらし始めるが、この損傷はこの時点で、最初は多層化ポリマーフィルムに対して内側であったが、最外層パケットが離層されたことにより、この時点でフィルムの(新たな/第2の)最外層パケットである層パケットに実質的に又はほとんど限定される。時間t1後であり、かつフィルムの光学的劣化が、許容できないレベル、又はユーザによって別様に決定又は判定されたレベルに再度達した後に、ユーザは、フィルムからこの新たな/第2の最外層パケットを離層してもよい。
これは時間t=t2で示されている。この時点で、この場合も同様に、多層化ポリマーフィルムは再生又は更新され、光学的劣化は即座にかつ実質的に低減される。時間t2で新たな/第2の最外層を除去した後、曲線204の残りの多層化ポリマーフィルムは、N−2個の層パケットを含有する。また、時間t2後、継続中の紫外線曝露が、フィルムに対する更なる単調な損傷をもたらし始めるが、この損傷はこの時点で、最初は多層化ポリマーフィルムに対して内側であったが、最初の最外層パケット及び新たな/第2の最外層パケットが離層されたことにより、この時点でフィルムの(新たな/第3の)最外層パケットである層パケットに実質的に又はほとんど限定される。時間t2後であり、かつフィルムの光学的劣化が、許容できないレベル、又はユーザによって別様に決定又は判定されたレベルに再度達した後に、ユーザは、フィルムからこの新たな/第3の最外層パケットを離層してもよい。
これは時間t=t3で示されている。この時点で、この場合も同様に、多層化ポリマーフィルムは再生又は更新され、光学的劣化は即座にかつ実質的に低減される。時間t3で新たな/第3の最外層を除去した後、曲線204の残りの多層化ポリマーフィルムは、N−3個の層パケットを含有する。
読者は、多層化ポリマーフィルムの(現在の又は既存の)最外層パケットを繰り返し除去/離層することにより、光学的劣化を長期間にわたって所定の限度又は閾値未満に維持して、多層化ポリマーフィルムの耐用年数を、従来の単層ポリマーフィルムの耐用年数よりも大幅に延長させることができることを理解するであろう。多層化ポリマーフィルムの耐用年数を延長することができる期間は、元の多層化ポリマーフィルムに含まれる剥離可能な層パケットの数、ポリマー層積層体で使用される特定のポリマー材料、いずれかのポリマー層で使用される特定の紫外線安定剤(もしあれば)、及び光学的劣化限界の選択などのいくつかの設計パラメータに依存し得る。
例えば、所与のフィルムがその耐用年数の終了に達したとしてそのフィルムを廃棄するか、又はフィルムを更新若しくは再生させるために多層化ポリマーフィルムの最外層パケットを離層するというユーザの決定を支配する光学的劣化限界は、ユーザにとって興味深い任意の好適なパラメータであり得る。場合によっては、光学的劣化限界は、例えば、フィルムの光学ヘイズが3%、4%、5%、又は10%のヘイズといった特定の絶対値に達する絶対ヘイズ限界(absolute haze limit)であってもよく、又はこれを含んでもよい。ヘイズ又は光学ヘイズは、この点に関して、Haze−Gard Plusヘイズメータ(BYK instrumentsから市販)を使用して測定されたヘイズを指す。あるいは又はこれに加えて、光学的劣化限界は、例えば、フィルムの光学ヘイズがその元の値に対して特定の量だけ、例えば、少なくとも1%、又は少なくとも2%、又は少なくとも3%、又は少なくとも5%、又は少なくとも10%だけ変化する相対的又は示差的ヘイズ限界(relative or differential haze limit)であってもよく、又はそれを含んでもよい。あるいは又はこれに加えて、光学的劣化限界は、例えば、フィルムのb*色座標が元の値に対して特定の量だけ、例えば少なくとも2、又は少なくとも3、又は少なくとも4だけ増加する示差的色限界(differential color limit)であってもよく、又はそれを含んでもよい。
b*色座標は、この点に関して、1976年に国際照明委員会(CIE)によって開発された、CIE L*a*b*色空間として知られる表色系の座標の1つを指す。この系では、所与の色は、相互に直交するL*、a*、及びb*座標軸によって画定された3次元空間内の点として表わされる。L*は色の明るさの尺度であり、0(黒)から100までの範囲にわたる。用語a*及びb*は、色の色相及び彩度を定義する。用語a*は、負の数(緑)から正の数(赤)の範囲にわたり、用語b*は負の数(青)から正の数(黄)の範囲にわたる。長期にわたる紫外線曝露に対する多くの材料に共通した応答がその元の色と比較した材料の黄変であるため、b*座標は、紫外線曝露の分野で特に注目される。「黄変」は、この点に関して、元々負のb*値を有し、これが正のb*値へと変化する材料だけでなく、元の負のb*値が小さな負の値になる(例えば、元は−4であり、−1に変化する)材料、並びに元の正のb*値がより正の値になる(例えば、元は1であり、4に変化する)材料も指すことに留意されたい。
本明細書に記載される種類の例示的な多層化ポリマーフィルムが図3Aに概略的に示されている。この図において、フィルム310aは、連続した構成層パケットが、連続シートの形態でフィルム残部から離層され得るように構成された、多層化ポリマーフィルムである。フィルム310aは、ポリマー層積層体320a、及び積層体320aを目的とする被加工物(例えば被加工物302)に付着させる接着剤裏張り層312で構成されている。積層体320aが接着剤を使用して被加工物302に付着されるように示してあるが、積層体320a自体は接着剤を含有しないものであることが好ましい。フィルム310aは典型的には、平坦ではなく凹凸のある被加工物に適用され、かつ一致し得るように、比較的薄く可撓性である。例えば、フィルム310aは、約510マイクロメートル以下、又は380マイクロメートル以下、又は300マイクロメートル以下、又は200マイクロメートル以下、又は100マイクロメートル以下、又は50マイクロメートル以下、又は更には25マイクロメートル以下の全厚を有し得る。あるいは、場合によっては、フィルム310aが比較的厚く、可撓性のないか又は剛性であることが所望され得る。
積層体320aの個別ポリマー層は、図3Aには図示されていないが、個別層が層パケットと呼ばれる繰り返し層群に編成されており、これらのパケットは、層パケット322、324、326、及び328と示されかつラベル付けされている。各層パケットは表主面及び裏主面を特徴とし、以下に更に記述するように、個別ポリマー層のうちの少なくとも2つは、各層パケットの表主面と裏主面との間に配設されている。層パケット322は、表主面322a及び裏主面322bを有する。層パケット324は、表主面324a(裏主面322bと密着している)及び裏主面324bを有する。層パケット324は、表主面326a(裏主面324bと密着している)及び裏主面326bを有する。層パケット328は、表主面328a(裏主面326bと密着している)及び裏主面328bを有する。
層パケットの一部又は全部が、同じ又は同様の数の個別ポリマー層を有する場合もあれば、層パケット中の個別ポリマー層の配列が、層パケットの一部又は全部において同じ又は同様である場合もある。各層パケットは、最前ポリマー層と、最後ポリマー層と、場合によっては、層パケットの内部の最前ポリマー層と最後ポリマー層との間の1つ以上の追加のポリマー層とを備える。積層体中の隣接する層パケットの全ての対について、層パケット間の付着(剥離強度又は剥離力の観点から測定又は定量化され得る)は、意図しない離層を回避する程度に強いが、ユーザが余分な力を使わずに層パケットを離層できる程度に弱い。例えば、隣接する層パケット間の剥離力は、ゼロ超、例えば、例えば、少なくとも1グラム/インチ、又は少なくとも2グラム/インチ(0.4N/m、又は少なくとも0.8N/m)になるように調整され得る。剥離力の単位であるグラム/インチ(又はグラム/インチ幅)(略称:g/in)は、グラム/直線インチ(ニュートン/直線メートル)(略称:gli(N/m))と呼ばれることもある。1.0g/inは、0.3860886N/mに等しい。隣接する層パケット間の剥離力は、2〜100グラム/インチ(0.8〜38.6N/m)の範囲内に調整され得る。
各層パケットに組成の異なる少なくとも3つのポリマー層を含むように、層積層体が3種類以上のポリマー層を含む場合、積層体は、不可逆的な離層が任意の層パケットの内部ではなく隣接する層パケット間で生じる傾向を持つように、剥離力が積層体中の他の層境界面でよりも層パケット間の境界面で弱くなるように設計されてもよい。各層パケットに含まれる個別ポリマー層の数にかかわらず、層積層体には、層パケット内の境界面ではなく層パケット間の境界面で選択的にフィルムを離層することを促進又は更に促進するアクセスタブも設けられてもよい。したがって層パケット間の境界面はまた、フィルム積層体がそれらの境界面又は表面で優先的に剥離するように構成され得るという理由から、本明細書で離層表面と呼ばれる場合もある。
紫外線曝露に対してより頑強なフィルムを提供するために、積層体320a中の個別ポリマー層の少なくともいくつか、例えば、初期最終製品においてフィルムの内部にある少なくとも1つの(及び典型的には2つ以上の)ポリマー層などは、1つ以上の紫外線安定剤を含んでもよい。紫外線安定剤(1つ又は複数)は、紫外線曝露からの損傷を低減又は制限し、したがって、実質的に同じフィルム、積層体、又は層であるが、それらが紫外線安定剤(1つ又は複数)を含まない場合に受けることになる光学的劣化と比べて、目的とする光学的劣化(絶対ヘイズ、相対的ヘイズ変化、絶対b*色、相対的b*色変化、及びこれらの組み合わせなど)も低減するのに有効な量で、係る層(1つ又は複数)の中に存在する。コスト削減のために、積層体320a中のポリマー層のうちのいくつかが有効量の紫外線安定剤を含有する一方で、積層体中の他のポリマー層はそれを含有しないように、紫外線安定剤がポリマー層のうちのいくつかにのみ添加され得る。積層体320a中の有効量の紫外線安定剤を含有しているポリマー層は、好ましくは、層積層体の各々中の最前層又は最外層になるように選択され、それにより、例えば、特定の層積層体が、その層の真上又は前方の層積層体の離層及び除去後に空気及び物理的接触に曝露されると、問題となる特定の層積層体は、紫外線安定剤を含有する環境に最外ポリマー層を提示する。
1つ以上の紫外線安定剤は、紫外線吸収剤、抗酸化剤、及びヒンダードアミン系光安定剤(HALS)のうちのいずれか1つ、又はこれらの任意の組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよい。紫外線吸収剤は、可視光線などの他の電磁放射線と比較して、紫外線を優先的に吸収する物質又は剤である。開示される多層化ポリマーフィルムにおいて好適であり得る紫外線吸収剤の例としては、Tinuvin(商標)1577、Tinvuin(商標)1600、及びTinuvin(商標)900の製品コード(BASF製)、並びにCyasorb(商標)UV−1164及びCyasorb(商標)UV−3638の製品コード(Cytec Industries Inc.製)で販売されているものが挙げられる。抗酸化剤は、他の物質の酸化を阻止する物質又は剤である。開示されるフィルムにおいて好適であり得る抗酸化剤の例としては、BASFからIrganox(商標)1010及びIrganox(商標)1076の製品コードで販売されているものが挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体であり、この物質が組み込まれた材料の劣化を阻止するように機能する。開示されるフィルムにおいて好適であり得るHALSの例としては、BASFからTinuvin(商標)622及びTinuvin(商標)700の製品コードで販売されているものが挙げられる。
多層化ポリマーフィルム310aの各層パケット内の少なくとも1つのポリマー層が、1つ以上の紫外線安定剤を含有する場合、製造を容易にするために、係るポリマー層はそれぞれ、特定の(同じ)紫外線安定剤(例えば、特定の紫外線吸収剤、若しくは特定の抗酸化剤、又は特定のHALS)を含有してもよい。あるいは、フィルム内の異なるポリマー層において異なる紫外線安定剤を使用してもよい。例えば、第1の層パケット内のあるポリマー層は、第1の特定の紫外線吸収剤を含有してもよく、第2の層パケット内の別のポリマー層は、異なる第2の紫外線吸収剤及び/若しくは特定の抗酸化剤又は特定のHALSを含有してもよく、第3の層パケット内の更に別のポリマー層は、異なる第3の紫外線吸収剤及び/若しくは異なる抗酸化剤又は異なるHALSを含有してもよい。層パケットの各々中のポリマー層において同じ紫外線安定剤を使用するか否かにかかわらず、積層体320a中の各層パケットは、紫外線安定剤を実質的に含まない少なくとも1つのポリマー層を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、各層パケットは、1つ以上の紫外線安定剤を含むポリマー層を1つのみ有してもよい。
フィルム310aの離層特性が一連の図3B〜図3Eに例示されている。図3Bにおいて、図3Aのフィルム310aは、最前又は最外層パケット322を除去することによって、修正済みフィルム310bになる。層パケット322が有用な目的を果たした後、例えば紫外線で誘発されたフィルムの光学的劣化が、ユーザ指定の閾値又は限界に達した場合、積層体320aの残部から層パケット322が連続シートの形態で離層されて、減縮した層積層体320bが修正済みフィルム310bの一部として所定位置に留まる。離層は、層パケット322と層パケット324との間の境界面に対応する離層表面に沿って優先的に起こり、接着接触面を有するツール、又は他の粘着性器具、あるいはナイフ若しくは他の鋭利な器具をフィルム310aの縁部に適用することによって開始され得る。層パケット322が除去された後、層パケット324はフィルム310bの最外層パケットになり、層パケット324の表主面324aはフィルム310bの表主面になり、この表主面は典型的には、空気又は任意の他の所望の周囲環境(例えば、水面下で使用されるときには水)に曝露される。
その後、例えば層パケット324がその有用な目的を果たし、かつ紫外線で誘発された損傷を受けて、フィルムの光学的劣化がユーザ指定の閾値又は限界に再度達した後に、最外層パケット324をフィルム310bから除去して、図3Cに示されるように、新たな修正済みフィルム310cを形成することができる。層パケット324は、連続シートの形態で積層体320cの残部から離層されるため、減縮した層積層体320cが、修正済みフィルム310cの一部として所定位置に留まる。離層は、層パケット326と層パケット326との間の境界面に対応する離層表面に沿って優先的に起こり、接着接触面を有するツール、又は他の粘着性器具、あるいはナイフ若しくは他の鋭利器具をフィルム310bの縁部に適用することによって開始され得る。層パケット324が除去された後、層パケット326はフィルム310cの最外層パケットになり、層パケット326の表主面326aはフィルム310cの表主面になる。この表主面は典型的には、空気又は他の周囲環境に曝露される。層パケット326は、表主面326aに位置する個別の紫外線安定化層(図示せず)を含有してもよい。
その後、例えば層パケット326がその有用な目的を果たし、かつ紫外線で誘発された損傷を受けて、フィルムの光学的劣化がユーザ指定の閾値又は限界に再度達した後に、最外層パケット326をフィルム310cから除去して、図3Dに示されるように、新たな修正済みフィルム310dを形成することができる。層パケット326は、連続シートの形態で積層体320cの残部から離層されるため、減縮した層積層体320dが、修正済みフィルム310dの一部として所定位置に留まる。この場合、層積層体320dは、層パケットを1つのみ(即ち、層パケット328)形成するのに十分な個別ポリマー層を含有し得る。離層は、層パケット326と層パケット328との間の境界面に対応する離層表面に沿って優先的に起こり、接着接触面を有するツール、又は他の粘着性器具、あるいはナイフ若しくは他の鋭利器具をフィルム310cの縁部に適用することによって開始され得る。層パケットト326が除去された後、層パケット328はフィルム310dの最外層パケットになり、層パケット328の表主面328aはフィルム310dの表主面になる。この表主面は典型的には、空気に曝露される。層パケット328は、表主面328aに位置する個別の紫外線安定化層(図示せず)を含有してもよい。
図3Eにおいて図示されているフィルム310eは、層パケット326が完全に除去された後のフィルム310dと同じである。それ故、層積層体320dは、層パケット328のみを形成するのに十分な個別ポリマー層を含有しており、この層パケットは、接着剤裏張り層312を介して被加工物302に付着したままである。
読者に理解されるように、元のフィルム310aが4つの層パケットを有すると仮定されたが、他の事例では、元のフィルムは、4つより多くの層パケット、又は所望される場合、4つ未満であるが、少なくとも2つの層パケットを含有してもよい。1回の共押出操作で為され得るように個々のポリマー層及び層パケットを極度に薄くすることの利益の1つは、連続シートの形態で連続して除去され得る、4つをはるかに超える層パケットを、元のフィルムに所望により組み入れることが可能になるという点である。
一度に1つのシート(層パケット)のみの連続した除去を容易にし、かつ離層が層パケット間の境界面で生じることを確実にするために、フィルム310a、並びに本明細書に開示されている他の多層化ポリマーフィルムは、フィルムの端部付近に深度の異なるキスカットタブ状の特徴部と共に作製されてもよい。これらの特徴が、目的とする離層表面にアクセスすることをもたらし、したがって本明細書ではアクセスタブとも呼ばれる。いくつかの特定の実施形態が以下で更に論じられる。更に、公開済み国際出願第WO 2012/092478号(Wuら)は、レーザーカットされた縁線において実質的な離層を一切引き起こすことなくレーザー放射線を使用して高分子の多層フィルム本体の切断及び細分化を行えるようにする方法を例示している。本方法は、所望されるタブ状の特徴部を形成するうえで有用であり得る。レーザー放射は、少なくともフィルムの幾らかの材料がかなりの吸収度を有し、これにより吸収された電磁放射線が切断線に沿ってフィルム本体を効果的に気化又は削摩できるような波長を有するように選択される。レーザー放射は、適切な合焦光学機器によって成形され、かつ適切な出力レベルに制御されて、狭い切断線に沿った気化を達成する。レーザー放射は、予めプログラムされた命令に従って被加工物全体に迅速に走査することも、任意形状の切断線をたどれるように迅速にオン/オフ切り替えを行うことも可能である。あるいは、レーザー放射の代わりに機械的なブレード及び他の切断装置を使用して、タブ状の特徴部を形成することができる。
開示される多層化ポリマーフィルムは、紫外線曝露が問題となる環境下で特に有用であるのに加えて、様々な目的及び様々な最終用途に調整され得る。前述のように、別々に製造されたフィルムのハンドリング、アライメント、及び積層を要する製造操作を別途に行うのではなく、1回の共押出操作で個々のポリマー層及び層パケットを作製することにより利益が得られ、その利益は、層パケットの表主面が所与の層パケットの前部にある層パケットから剥離されることによって露出するまで、より容易に新品で滅菌の状態に維持できるようになるという点である。個々の層パケットの連続した剥離により係る特性を更新又は再生する能力により、フィルムは、無菌で実質的に細菌のいない環境が望ましい病院又は臨床現場に特に適したものになる。しかしながら、家庭、学校、デイケアセンター、オフィス、職場、キッチン、レストラン、食品加工場所、食品加工装置、並びに空港、飛行機、列車、バス、及び船舶などの往来の激しい公共区域又は場所といった他の多くの状況も、この製品の特徴から恩恵を受けることができる。また、開示される剥離可能なフィルムを用いて露出面の全て又は一部を覆うことによって、医療用装置の表面も利益を得ることができる。例としては、聴診器、血圧計の圧迫帯、装置制御画面及びノブ、手術室の天井照明、手術台などへの被覆が挙げられる。携帯電話及びスマートフォンのような携帯用電子デバイスのタッチスクリーンも、開示されるフィルムの特に好適な被加工物である。開示されるフィルムは、層パケット又はシートの剥離性により、無菌用途と直接的に関係しない他の目的に役立つことができる。例えば、開示されるフィルムは、落書き防止の目的、又は自動車、航空機、若しくは船舶用の防風にも有用であり得る。定期的に汚れる、汚染される、ないしは別の方法で損なわれる可能性のある他の表面、及び開示される剥離可能なフィルムを適用することができる他の表面としては、塗装ブースの電灯カバー、壁、及び他の表面、医療及び工業用途用のフェイスシールド、並びに赤ちゃんのおむつ交換台が挙げられる。
場合によっては、開示される多層化ポリマーフィルム、又はそれらの構成要素は、フィルムの存在がユーザにとって視覚的に明白でないように、可視スペクトルにわたって高透過性であり、かつ光学的に透明であることが重要であり得る。係るフィルムは、鏡、窓、又はタッチスクリーンを含む電子ディスプレイのような視覚性能を持つ被加工物に適用され得る。係る場合には、多層化ポリマーフィルム、並びに該フィルムの層パケット及び存在し得る任意の接着剤裏張り層(例えば接着剤層312)などの構成要素の全ては、実質的に透明であり得るため、それが適用される被加工物の外観又はその機能性は、任意の所与の時点で(例えば1回又は複数回の離層後に)被加工物上に存在する元のフィルムの量にかかわらず変化しない。したがって、開示される多層化ポリマーフィルム内のポリマー層積層体は、場合によっては、少なくとも80%及び/又は少なくとも88%の可視波長に対する平均透過率、並びに/又は15%未満及び/又は8%未満及び/又は4%未満の光学ヘイズを有するように作製され得る。
他の場合には、剥離可能な多層化ポリマーフィルムを通して被加工物を可視できることは重要でない場合がある、又は望ましくない場合がある。係る場合には、多層化フィルム、及びその1つ以上の構成ポリマー層は不透明であってもよい。したがって、フィルム又はその任意の層は、着色、染色、彩色されてもよく、又は別の方法で不透明性又は非透過特性を有するように構成されてもよい。(インク又は他の材料などの)印刷がフィルム又は積層体の露出面に施されてもよい。また、例えば、接着剤裏張り層と、ポリマー層積層体との間に配置された追加の不透明層を組み込むことにより、多層化フィルムに不透明性を付与し得る。付加的な不透明層は、「スキン層」として積層体と共押出しても、積層体の形成後に積層体上に積層してもよい。係る付加的層は、スキン層として共押出されるか、積層体の形成後に積層されるかにかかわらず、不透明性以外に、又は不透明性に加えて機能を付与するためにも含まれ得る。係る機能として、例えば、(所望される場合)帯電防止性又は剛性などが挙げられる。
フィルムが透明の場合でもフィルムが不透明の場合でも、開示される多層化ポリマーフィルムを使用して、被加工物の表面仕上げを制御することができる。例えば、高品質な平滑(低粗度の)表面仕上げの被加工物を効果的に提供することが所望される場合もある。被加工物自体の表面を研磨するのではなく、このフィルムが被加工物に適用されて、必要とされる平滑表面を提供すると同時に、長期にわたる紫外線曝露に対する保護も提供することができる。使用時に、多層化ポリマーフィルムの外側表面が摩耗ないしは別の方法で非平滑になった場合でも、繰り返される摩耗事象後に、層パケットを連続して剥離して、所望される平滑表面を回復させることができる。他の事例では、被加工物における粗度の制御が所望され得る。係る場合には、適切に寸法決めされたビーズ又は他の粒子の制御された量を、各層パケッの最前ポリマー層に供給して、フィルムの最前(露出)面が所望される量の表面粗さを有するようにしてもよい。露出面が、摺り減る、摩耗する、他の物質で汚染されるなどした場合、最外層パケットを単に剥離し、直接隣接した層パケットの無垢な表面を露出させることによって、所望される表面粗さを容易に回復させることができ、この新品の表面は、長期にわたる紫外線曝露に対する保護に加えて、所望される表面粗さを再び有する。
読者に理解されるように、上記の用途は単なる例示であり、滅菌フィルム、落書き防止フィルム、及び制御された表面仕上げを有するフィルムは、開示される多層化ポリマーフィルムの多くの可能な用途のうちのいくつかに過ぎない。
図1A〜図3Eに示される機能性を有する1つの可能なフィルムの構造詳細が図4に示されている。この図では、概略形態で、個別ポリマー層が一緒に積層化され、多層化ポリマーフィルム410の全部又は一部を形成し得る積層体420が形成されているのが分かる。図示されている実施形態では、積層体420は、ポリマー層A及びポリマー層Bの2種類のみのポリマー層から成り、これらのポリマー層が、それぞれ、別々のポリマー組成物A及びBから成ると仮定される。これら2通りの層タイプは、繰り返し層群A、B、A、Bなどに編成されており、最小繰り返し単位(A、B)は層パケットと呼ばれる。フィルム410は、少なくとも4つの層パケット422、424、426、及び428を有する。これらの層パケットはそれぞれ、表主面(表面422a、424a、426a、428aを参照)、並びに裏主面(表面422b、424b、426b、及び428bを参照)によって画定されている。隣接する層パケットの表主面及び裏主面は、互いに密接に接触している。層パケットはそれぞれ、表主面と裏主面との間に配設された正確に2つのポリマー層(1つのポリマー層A、及び1つのポリマー層B)を有する。図示されているように、所与のパケットのA層はパケット内の最前ポリマー層であり、B層はパケット内の最後ポリマー層である。
層の一部には、任意の添加剤419も示されている。例示的実施形態において、添加剤419は、上述の紫外線安定剤であるか、又は上述の紫外線安定剤を含む。任意の添加剤419は、その代わりに、又はそれに加えて、例えば、1つ以上の抗菌剤、好適に寸法決めされたビーズ若しくは他の粒子、及び/又は他の所望の添加剤であってもよいか、又はこれらを含んでもよい。添加剤419は、各層パケットの最前層Aに分散されてもよいが、他のポリマー層のうちのいずれの中にも存在しなくてもよい。図中、添加剤419は粒子形態で概略的に示されているが、添加剤の性質に応じて、任意の所望の形態で(例えば微粒子として、又は連続相若しくは共連続相物質として)所与のポリマー層内に存在してもよい。添加剤419はまた、例えば、ポリマー層Aの材料などを含む、層積層体の1つ、一部、又は全ての層に可溶性であってもよい。
例示的な実施形態では、ポリマー組成物AとBはいずれも感圧性接着剤層類(PSA)又は他の種類の接着剤ではない。ここでの「接着剤」とは、異なるコンポーネントの表面に塗布されているとき、又は塗布されると、表面を一緒に接合して分離を阻止すると共に、室温で粘着性である材料又は層を指す。更に、ポリマー組成物A及びBは互いに共押出可能で、層積層体420全体が、1回の操作で(別々の操作で為されるのではなく)共押出され得ると共に、後になってから接着剤と一緒に積層され得るものであることが好ましい。ポリマー組成物A及びBはまた、204℃(400°F)又はそれよりも高い溶融温度(すなわち、溶融ポリマー温度)で溶融加工可能であることが好ましい。場合によっては、元の多層化ポリマーフィルムは、ポリマー層A、及び/又はポリマー層Bが配向されるように共押出のみならず、1つ以上の延伸又は配向工程によっても作製され得る。係る配向のある層は、最小レベルの複屈折、例えば、少なくとも0.05の複屈折を有し得る。この点に関して、所与の材料又は材料層は、別の方向に沿って偏光した光の屈折率と異なる、一方向に沿って変更した光の屈折率を有する場合、複屈折性であると考えられる。よって、材料又は材料層の「複屈折」は、係る屈折率の極大差である。係る極大差は、場合によっては、共にフィルムの平面内にある2つの直交軸(例えば図1A及び図3Aのx軸及びy軸)の間で、他の場合では、一方がフィルムの面内にあり、他方がフィルムの面に垂直である2つの直交軸(例えば図1A及び図3Aのx軸及びz軸)の間で生じ得る。延伸はドローイングと呼ばれることもあり、単軸又は二軸が可能である。二軸の場合、延伸は同時又は連続であり得る。多層化フィルムの延伸操作又はプロセスの結果、使用する材料及び延伸中のフィルム温度などのプロセス条件に応じて、構成ポリマー層は全て又は一部のみ配向し、場合によっては全く配向しない場合もある。既知の延伸又はドローイング技術の更なる考察のために、米国特許第6,179,948号(Merrillら)を参照する。例えば、2工程の延伸プロセスを実施するとき、ある組の層(例えばポリマー層A)が両工程の延伸中に実質的に配向され、別の組の層(例えば、ポリマー層B)が1工程の延伸中にのみ実質的に配向されるようにすることができる。その結果、多層化フィルムは、延伸後に実質的に二軸的に配向されたある組の材料層を有し、かつ延伸後に実質的に一軸的に配向された別の組の材料層を有するものになる。
ポリマー組成物A及びBはポリエステル系材料であってもよいが、他の好適な材料も使用することができる。例えば、組成物Aはポリエステル、ポリオレフィン、ポリαオレフィン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリカーボネート合金、ポリウレタン、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシコハク酸など)、スチレンコポリマー、シリコーン、又はこれらのコポリマー及び/若しくは混合物であるか又はそれを含んでよく、組成物Bは、例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリαオレフィン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリカーボネート合金、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシコハク酸塩、ポリ乳酸など)、スチレンコポリマー、シリコーン、又はこれらのコポリマー及び/若しくは混合物であるか又はそれを含み得るが、A及びBの組成物が異なることが想定される。コポリマーはブロック、ランダム、又はそれらの組み合わせであってもよい。
場合によっては、層積層体420がエチレンオキシド滅菌に適合性があることが望ましい場合がある。エチレンオキシドは、紙、多数のプラスチック類、及びゴムに浸透する能力を有する。エチレンオキシドは、使い捨て注射器、皮下注射針、包装済み材料、ペトリ皿、ピペット等を滅菌するために現在使用されている。エチレンオキシド滅菌の利点としては、滅菌を室温又は室温をわずかに上回る温度で行うことができるという理由から、熱不安定性の物質に適していること、低湿度のみが要件であるという理由から、感湿性物質及び器具に損傷を与えないこと、エチレンオキシドの浸透能力が高いという理由から、包装済み物品で使用することができること、エレンオキシドが反応性化合物であるが、比較的少ない材料しかこのプロセスによる損傷を受けないことなどを挙げることができる。エチレンオキシド滅菌の不利な点としては、滅菌中にエチレンオキシドがいくつかの物質によって強固に吸着される可能性があること、エチレンオキシドがいくつかの材料中でエチレンクロロヒドリンなどの有害物質を生成する可能性があることを挙げることができる。
ある実施形態において、ガンマ線又は電子ビームなどの電離放射線によってフィルムを滅菌することが望ましい場合がある。係る場合、フィルムの材料組成物は、この処理に耐えるものを選択する。ポリマー安定性を確実にするために、ヒンダードフェノール、亜リン酸塩、及びヒンダードアミンなどの1つ以上の抗酸化剤を添加する必要があり得る。
積層体420は、任意の層パケット内の境界面ではなく、層パケット間の境界面で、例えば、主表面424a/422b、426a/424bで、不可逆的な離層を促すように構成されていることが好ましい。単純なAB積層体では、積層体中の全ての境界面がポリマー層Aとポリマー層Bとの間である。したがって、ポリマーA及びBの組成物を適切に選択することにより層間の剥離強度が調整され得るが、全ての境界面での剥離強度は実質的に同じである。ただし、別の方法で、所望の境界面での離層を促進するように積層体を構成することができる。積層体には、例えば離層を促進する物理的構造が提供されてもよい。
係る物理的構造の例が図5A及び図5Bの層積層体に示されている。これらの図に示される層積層体は、本明細書で論じられる多層化ポリマーフィルムの一部であることが想定される。積層体420と同じ又は同様であり得る共押出ポリマー層積層体520の概略平面図が図5Aに示されており、切断線5Bー5Bに沿った概略断面図が図5Bに示されている。積層体520は、繰り返しABポリマー層構造を有し、対になる隣接層がABタイプの層パケット522、524、526、528、530を形成している。ポリマー層Aは、その中に分散された任意の添加剤519(例えば、紫外線安定剤など)を含んでいてもよく、ポリマー層Bは、係る添加剤を含んでいてもよく、又は含んでいなくてもよい。階層化された一連のキスカット孔522H、524H、526H、528H、530Hは、機械的なブレード、レーザー放射、又は他の任意の好適な手段によって形成され、アクセスタブ515を画定する。キスカット孔及びタブにより、図5Bに示されるように、階段状の断面形状が提供される。キスカット孔の深さは、ユーザが隣接する層パケット間の境界面にタブ515を介してアクセスできるように調整される。例えば、ユーザは、爪又は他の鋭利な物体を1つのタブに沿って別のタブ方向へとスライドさせ、最上部の層パケット(図5A及び図5Bの場合は層パケット522)全体を積層体520の残部から取り外すことにより、層パケット524のポリマー層Aを環境に曝露することができる。
同様に、最下「A」層を除く図5Bに示されるフィルム全体に、図で示されたものと逆向きの配置を用いてもよい。逆向きの配置では、層パケット530(付随する孔530Hを有する)が積層体中の最上部又は最外層パケットであり、層パケット522(付随する孔522Hを有する)が積層体中の最下又は最内層パケット(被加工物の最も近傍)である。また、(除外した「A」層を除く)フィルム全体を通じて、図に示したポリマー「A」層と[B]層の相対的な配置が入れ替わり、図5Bで「A」とラベル付けされた層がポリマーBから成り、添加剤を含有せず、図5Bで「B」とラベル付けされた層がポリマーAから成り、添加剤519を含有する。この配置では、爪又は他の鋭利な物体を1つのタブに沿ってスライドさせて、積層体の残部から層パケット522全体を取り外すのではなく、ユーザが層パケット530のタブ515を、例えば2本の指で摘み、層パケット530を積層体残部から剥離することにより、次の層パケット(層パケット528)の「A」層を環境に曝露させることになる。
ラベル、しるし、又は他のマーキング若しくは特徴部を積層体520の1つ以上の層の上又は中に設けることもできる。図示された層積層体520では、係るマーキングが2種類ある。マーキング516は、アクセスタブ515の領域のうちポリマー層Aのそれぞれに形成された浅い孔又はくぼみである。マーキング516は、平面視で英数字又は他のシンボルの形態に形成されてもよい。図示された実施形態では、マーキング516は、積層体中及び被加工物上に残っている剥離可能なシート数を示す便利な指標としてユーザが識別可能な数字である。例えば、最前層パケット522の離層及び除去の際、「6」の形態のマーキング516がパケット522と共に除去され、それにより「1」、「2」、「3」、「4」、及び「5」の形態のマーキング516のみがユーザに見えたままである。マーキング516は、ポリマー層A中に浅い孔又はくぼみとして示されているが、別のデザインを利用してもよい。例えば、マーキング516は、アクセスタブ515と同じ領域にインクで印刷された、単純な英数字又は他のシンボルであってもよい。
図5A及び図5Bに示される別の種類のマーキングが、マーキング517である。係るマーキングは、積層体520を通る種々の深度の孔である。これら孔は全て、最前層の露出面で開口し、異なる層パケットで終端してもよく、最も浅い孔が最前層パケット522で終端し、次に最も深い孔が次の層パケット524で終端し、次に最も深い孔が次の層パケット526で終端するといった具合である。孔は単純な円形の孔で示されており、積層体520の縁部近傍の直線に沿って互いに重複せず離間されているが、別のデザインを使用することもできる。例えば、孔は平面視でより複雑な輪郭(英数字形態のものなど)を有してもよい。マーキング517は、剥離可能なシート又は層パケットが積層体中及び被加工物上に何枚残っているかをユーザに示すこともできる。例えば、6個のマーキング517は、図5Aの平面図では可視であるが、最外層パケット522が剥離された後に、5個のマーキング517のみが残り、層パケット524が剥離された後に、4個のマーキング517のみが残るといった具合である。
図5A及び図5Bのものに代わる多くの代替実施形態を作製することができる。例えば、マーキング517を残してマーキング516を省略してもよく、マーキング516を残してマーキング517を省略してもよく、あるいはマーキング516及び517の両方を省略してもよい。更に、孔522H、524Hなど、及びアクセスタブ515も省略することができる。所望であれば、染料、顔料、又は他の色味剤若しくは着色剤を組み込むことにより、様々な色を有する種々の層を作製することができ、それにより、例えば、層パケット(又はその1つ以上の層)を1層おきに違う色にする、あるいは積層体中の最後の層パケット又は最後の数枚の層パケットを、係る染料、顔料などで着色し、離層する層パケットが残っていない(又は層パケットが1枚のみ若しくは数枚である)ことをユーザに可視的に示すことができるようにしてもよい。
図4の層パケットは、2層(A−B)の層パケットである。しかしながら、読者に理解されるように、変更された層積層体中の層パケットが2つより多くの個別ポリマー層を含有するように、他の層タイプ(例えば、ポリマー層C、D、Eなど)を積層体に追加することもできる。好ましくは、追加のポリマー層は、変更された積層体が接着剤又はPSAを含まないままであり、変更された積層体が単一の共押出プロセスによって作製されることができ、かつシート又は層パケットを多層化ポリマーフィルムの層積層の体残部から連続して不可逆的に離層できるような方法で追加されることが好ましい。3つ以上のポリマー層を含むように層パケットを設計することによる利益の1つは、ポリマー材料A、B、C等を適切に選択することによって、様々な異なる層間付着強度が可能となることである。このことにより、ひいては、1つ以上の層パケット内の層間の境界面ではなく、層パケット間の境界面で最も弱い層間付着が生じるように、A、B、C等の材料を選択することが可能となる。係る配置を使用して、層パケット内部ではなく層パケット間の不可逆的な離層を促進するように層積層体を構成することができる。次に、所望により、各層パケットの最前ポリマー層が有効量の所望の添加剤を含むことを確実にすることにより、積層体から1つの層パケットを剥離したとき、その下にある層パケットの新しい添加剤充填層がフィルムの新たな前面になる。
図1A〜図3Eに示される機能性を有する別の可能なフィルムの構造詳細が図6に示されている。この図では、概略形態で、個別ポリマー層が一緒に積層化され、多層化ポリマーフィルム610の全部又は一部を形成し得る積層体620が形成されているのが分かる。積層体620は、以下である限りにおいて、積層体420と同様であり得る、すなわち、積層体620のポリマー層が、1回の共押出操作、及び必要に応じて1つ以上の延伸又は配向工程によって作製されることができ、積層体620が接着剤層も感圧性接着剤も含有していなくてもよく、積層体620が、有効量の所望の添加剤619(紫外線安定剤など)を有するいくつかのポリマー層(例えば積層体の内部の少なくとも1つのポリマー層など)と、そうでないいくつかのポリマー層とを含んでいてもよく、積層体620が、層パケット内の境界面に沿ってではなく、層パケット間での離層を促進するように構成されていることができ、積層体620のポリマー組成物が、204℃(400°F)又はそれよりも高い溶融温度で溶融加工可能であり得る、限りにおいて、積層体420と同様であり得る。ただし、積層体620は、2種類を超える(3種類の)ポリマー層(ポリマー層A、ポリマー層B、及びポリマー層C)から成るという理由で、積層体420とは異なる。これらのポリマー層は、それぞれ異なるポリマー組成物A、B、及びCから構成されていることを想定したものである。これらの3通りの層タイプは、繰り返し層群A、B、C、A、B、Cなどに編成されており、最も小さい繰り返し単位(A、B、C)は層パケットと呼ばれる。フィルム610は、少なくとも4つの層パケット622、624、626、及び628を有する。これらの層パケットはそれぞれ、表主面(表面622a、624a、626a、628aを参照)、並びに裏主面(表面622b、624b、626b、及び628bを参照)によって画定されている。隣接する層パケットの表主面及び裏主面は、互いに密接に接触している。層パケットはそれぞれ、表主面と裏主面との間に配設された正確に3つのポリマー層(1つのポリマー層A、1つのポリマー層B、及び1つのポリマー層C)を有する。図示されているように、所与のパケットのA層はパケット内の最前ポリマー層であり、C層はパケット内の最後ポリマー層であり、B層は所与のパケット内の内側層(最前でも最後でもない)である。積層体620は、ポリマー層Aが有効量の任意の添加剤619(紫外線安定剤など)を含有する一方で、他のポリマー層(B及びC)はそれを含有しないように構成されている。代替実施形態では、層(A、B、及びC)の全てが任意の添加剤(1つ又は複数)を含んでもよい。
ポリマー組成物B及びA又はCのいずれか一方が、ポリエステル系材料であってもよい。この点に関して、我々は、積層体620中の層B、又は層A、又は層Cのそれぞれに適切に組み入れたときに、層パケット622、624などを、隣接する層パケット間の境界面(図6中の破線を参照)に対応する離層表面に沿って優先的に離層させ得るポリエステル及び非ポリエステル系の材料の組み合わせを開発した。図6の3構成層の実施形態に関して、A層に対するC層の付着を、B層に対するC層の付着より実質的に弱く、かつA層に対するB層の付着よりも弱くすることにより、ポリマーC層とポリマーA層との間の境界面が離層表面と一致し得ることを見出した。そして、このことは、ポリプロピレンコポリマーと好適な量の別の樹脂との配合物を組成物Cで使用することによって達成することができる。例えば、ポリマー組成物Cは、プロピレンコポリマーとスチレン系ブロックコポリマーとの混和可能な配合物、又はプロピレンコポリマーとエチレンαオレフィンコポリマーとの混和可能な配合物、又はプロピレンコポリマーとオレフィンブロックコポリマーとの混和可能な配合物であってもよい。ポリマー組成物Cがプロピレンコポリマーとスチレン系ブロックコポリマーとの混和可能な配合物である場合、ポリマー組成物Bはコポリエステルとオレフィンとの非混和性の配合物であってもよく、又はポリマー組成物Bは非晶質コポリエステル及びポリマーであってもよいし、かつ組成物Aは半結晶性ポリエステルであってもよい。場合によっては、ポリマー組成物Cはポリマー組成物Bと少なくとも部分的に混和可能であってもよく、ポリマー組成物Bはポリマー組成物Aと少なくとも部分的に混和可能であってもよいが、ポリマー組成物Cはポリマー組成物Aと混和可能でなくてもよい。これに関して、非混和性配合物の少なくとも1つの成分がもう一方のポリマー組成物と混和可能である場合[あるいはもう一方のポリマー組成物も非混和性の配合物又はブロックコポリマーである場合、もう一方のポリマー組成物の少なくとも1つの成分と混和可能である場合(ここでの「成分」とは、ブロックコポリマーの個々のブロックドメインを指す)]は、ポリマーの非混和性配合物である所与のポリマー組成物、例えば任意のポリマー組成物A、B、又はCなどが、もう一方のポリマー組成物と少なくとも部分的に混和可能であると言ってもよい。既に上述したように、ポリマーA層とポリマーC層との間の付着が最も弱くても、係る付着は依然としてゼロより大きくなり得る。例えば、A/C境界面での剥離力は、少なくとも1グラム/インチ、又は少なくとも2グラム/インチ(0.4N/m、又は少なくとも0.8N/m)であってもよい。
本開示の目的のために、用語「混和可能」、「混和性」などは、問題となる2つ以上のポリマーが、空間的に一定した組成の1つの均質相を形成することの必要性を絶対的に意味するものではなく、むしろ2つ以上のポリマーに、相間の境界面(あるいは層間の「界面相」と文献で呼ばれる場合もある)にわたって絡み合いによる著しい相互作用がもたされる程度に十分な相互拡散性があることを相対的に意味するものである。相対的な意味での混和性は、ポリマー科学の文献において「相溶性」又は「部分混和性」と呼ばれる場合もある。更に、ホモポリマー又はランダムコポリマーが、例えば、ブロックコポリマーの1ブロックのみのドメインと相互作用する機能を有する場合、このホモポリマー又はコポリマーがブロックコポリマーの別のブロックのドメインと完全に非混和性であっても、この意味ではブロックコポリマーとの混和性を示すと言ってもよい。
A−B対、B−C対、及びA−C対の層間の混和度を相違させることは、層対間の剥離力の相対値に影響を及ぼすための唯一の手段ではない。例えば、層Aの少なくとも1つのコンポーネントが層Bの少なくとも1つのコンポーネントと少なくとも部分的に混和する場合、これらの2つの層間の境界面にまたがって分子間の絡み合いが増加するため、A−B対の剥離力が増強される傾向にある。あるいは、層A及びBのうちの少なくとも一方の少なくとも1つの構成成分中に、高分子の配向、若しくは結晶化度、又はこれらの両方が存在する場合、層のA−B、B−C、及び/又はA−C対の剥離力が低下する傾向にあり得る。これは2つの層間の境界面にわたる分子間の絡み合いの減少に起因し、この絡み合いの減少は、(ランダムコイル構成ではなく)分子的に配向されたポリマー分子の可動性の低下によって引き起こされ得るか、(非晶質状態ではなく)構造化結晶子に関与し得るか、又はこれらの両方であり得る。フィルム作製過程における1つ以上の単軸又は二軸延伸工程(単数又は複数)は、分子の配向、結晶化、又はこれらの両方をもたらし得る。それ故、延伸下で配向、結晶化、又はこれらの両方の傾向を呈するポリマーから少なくとも部分的に成る層の場合、フィルム延伸は、層対間の剥離力の相対値に影響を及ぼす手段としての層の組成物を変更する代替案又は補足案であり得る。つまり、組成物のほかにモルホロジー(結晶性の度合いなど)も用いて、層対間の相対的な剥離力に影響を与えることも可能である。
したがって、層パケット間の付着が層パケット内の層間の付着よりも弱くなるように積層体620を設計することにより、このように所望の境界面での剥離を促進するように積層体620を構成することができる。しかしながら、追加的にあるいは代替的に、離層を促進する物理的構造、特に図5A及び/又は図5Bとの関連で論じられるアクセスタブ及び/又は任意の他の機構などを積層体620に設けることにより、所望の境界面での離層を促進するように積層体620を構成することもできる。
図6の層パケットは、3層(A−B−C)の層パケットである。しかしながら、読者に理解されるように、A、B、C層の編成方法はそれぞれ異なる場合があり、かつ/又は層パケットが3つより多くの個別ポリマー層を含有するように、他の層タイプ(例えば、ポリマー層D、Eなど)を積層体に追加することもできる。例えば、A、B、C層は、層パケットのそれぞれがポリマー層の5層群(A−B−A−B−C)になるように、A、B、A、B、C、A、B、A、B、Cなどの配列に配列され得る。この事例において、A層に対するC層の付着は、この場合もやはり、B層に対するC層の付着よりも実質的に弱く、かつA層に対するB層の付着よりも弱いため、離層表面はC層とA層との間の境界面に形成される。A層とC層との弱い付着はゼロより大きくてもよい。例えば、剥離力は、少なくとも1グラム/インチ、又は少なくとも2グラム/インチ(0.4N/m、又は少なくとも0.8N/m)であってもよい。この実施形態では、ポリマー層Aの全てに1つ以上の添加剤(例えば1つ以上の紫外線安定剤など)が付与されもよく、ポリマーB及びC層には付与されても、又は付与されなくてもよい。あるいは、任意の添加剤(1つ又は複数)は、ポリマー層Aのうちのいくつかにのみ、例えば各層パケットの最前ポリマー層であるポリマー層Aにのみ付与され、残りのA層及びB又はC層には一切付与されなくてもよい。
所与の剥離可能なフィルムでは、(AB、又はABC、又はそれ以外を問わない)種々の層パケット内の指定された層(例えばポリマーA層)が、同じ添加剤又は異なる添加剤を含有してもよい。単純な場合において、フィルム内の指定された層は、全てが同じ添加剤を含有してもよい。代替実施形態では、フィルムの種々の層パケット内の少なくとも2つのポリマー層は、異なる添加剤を含有することができる。また、場合によっては、フィルム内の各ポリマー層は、異なる添加剤を含有することができる。すなわち、各ポリマー層は、他のポリマー層のいずれにも含有されていない添加剤を含有することができる。
別の実施例において、ポリマー層Dは、組成物A、B、及びCとは異なるポリマー組成物Dから作製されており、層積層体に追加できることを想定したものである。係る実施形態が図7に概略的に示されている。図中、多層化ポリマーフィルム710にはポリマー層積層体720が含まれるが、その一部のみが図示されている。層積層体720は、4つの異なる種類のポリマー層(ポリマー層A、B、C、及びD)で構成されており、それぞれ異なるポリマー組成物A、B、C、及びDから成る。組成物A、B、C、Dはいずれも、感圧性接着剤(PSA)でも他のタイプの接着剤でもなく、これらのポリマー組成物は、互いに共押出可能で、ひいては層積層体720全体を1回の操作で共押出することが可能であることが好ましい。ポリマー組成物A、B、C、Dはまた、204℃(400°F)又はそれよりも高い溶融温度で溶融加工可能なものであることが好ましい。また、ポリマー層A、B、C、及び/又はDは、その一部又は全部が配向可能であり、かつ少なくとも0.05の複屈折を有し得る。積層体720は、ポリマー層Aが有効量の任意の添加剤719を含有し、他のポリマー層(B、C、及びD)は含有しないように構成されている。
ポリマー層は、繰り返しシーケンスA、D、B、C、A、D、B、Cなどに編成されていて、A層に対するC層の付着が、図6の実施形態に類似した積層体720中の他の如何なる隣接する層対の付着よりも弱くなるように、ポリマー組成物が微調整される。このようにして、ポリマー層は、4層(A−D−B−C)の層パケットに編成されるため、隣接する層パケット間の境界面に対応する離層表面、すなわち、ポリマーC層とポリマーA層との間の境界面(図7の破線を参照)に沿って優先的に離層が起こる。
したがって、層パケット間の付着が層パケット内の層間の付着よりも弱くなるように積層体720を設計することにより、このように所望の境界面での剥離を促進するように積層体720を構成することができる。しかしながら、追加的にあるいは代替的に、積層体720は、離層を促進する物理的構造、特に図5A及び/又は図5Bとの関連で論じられるアクセスタブ及び/又は任意の他の機構などを積層体720に設けることにより、所望の境界面での離層を促進するように構成されてもよい。
図8及び図9は、開示される多層化ポリマーフィルムの製造に使用することができる製造システムの略図である。図8に概略的に図示してあるように、本明細書の他の箇所に記載されている3つのポリマー組成物A、B、Cの共押出によって多層化ポリマーフィルム810が形成される。代替実施形態では、2つのポリマー組成物のみ(例えばA、B)を使用してもよく、他の実施形態では、4つ以上のポリマー組成物(例えばA、B、C、D)を使用してもよい。組成物は、二軸スクリュー押出機又は他の好適な手段を介して、溶融ポリマーの流路を交互配置するフィードブロック830へと給送することより、多層化押出物809を形成することができる。3つのポリマー組成物が使用されている場合、A、B、及びCのポリマー層が、完成フィルムにおいて所望される繰り返しパターンで押出物809に配置され得る。場合によっては、押出物809は、1つ以上の層増倍器ユニット内に給送され、複数(例えば、2x、3x、又は4x)の層を有する出力の押出物を元の押出物809中に形成し得る。層増倍器を利用するかにかかわらず、その後に多層化押出物をフィルムダイ832内に給送することができ、その出力を鋳造ホイール上で急冷することによって流延多層化ポリマーフィルムを形成することが可能である。場合によっては、流延フィルムは、一切の構成要素又は機能を追加することなく、多層化ポリマーフィルム810になり得る。場合によっては、追加の機能性を得るために、追加の層及びコーティングが流延フィルムに適用されてもよい。例えば、流延フィルムの露出主面の一方又は両方に、剥離性ライナーが適用され得る。また、接着剤裏張り層は、流延フィルムの露出主面の一方にコーティングすることが可能であり、そのため、目的とする被加工物に容易に適用され得る。物理的な構造、例えば特に本明細書で論じられるアクセスタブ及び/又は特徴部を設けてもよい。適用される追加の層及びコーティングの数にかかわらず、多層化ポリマーフィルム810は、フィードブロック830、所望により層増倍器(複数可)、及びダイ832を使用して共押出により形成されたポリマー層積層体を含む。本明細書の他の箇所で論じられるように、積層体中の層は、互いから不可逆的に離層されるように調整された層パケットに編成され得る。
場合によっては、フィルム内の個別層の一部又は全部に複屈折を与えるかどうか、又は個別ポリマー層の一部又は全部の他の材料特性を変えるかにかかわらず、多層化流延フィルムを延伸させるか又は配向させることが所望され得る。係る延伸又は配向は、図9に略図的に図示してある。多層化流延フィルム908は、図8の流延フィルム810と同じ又は同様であり得、完成したフィルムにおいて所望される繰り返しパターンで配置された少なくとも2つ、3つ、又はそれ以上の別々のポリマー層タイプを備え、下方ウェブ方向及び/又はウェブ交差方向にフィルムを延伸させる1つ以上の公知のフィルムハンドリングデバイス内に給送され得、連続して、同時に、又はそれらを組み合わせるかにかかわらず、配向された多層化ポリマーフィルム910に、本明細書に記述されている離層特性が備わり得る。図9では、多層化流延フィルム908が、最初に長さオリエンター(L.O.)934の中に給送されているところが示されている。この長さオリエンターは、フィルムを下方ウェブ方向に延伸させて予備的な配向フィルム909を提供し、続いてフィルムをウェブ交差方向に延伸させる幅出機936に供給して、配向多層化ポリマーフィルム910を得る。代替実施形態において、長さオリエンター934を省略することも、又は幅出機936を省略することも、又は追加の長さオリエンター(単数又は複数)及び/又は幅出機(単数又は複数)を追加することもできる。フィルムを同時に下方ウェブ方向及びウェブ交差方向の両方向に(図示せず)延伸できるように設計された幅出機は、単独で、又は上述の延伸デバイスと組み合わせて使用することもできる。特別に設計された幅出機、例えば、いわゆるパラボリック幅出機は、単独で、又は他の延伸ユニットと組み合わせて使用することもできる。例えば、米国特許第7,104,776号(Merrillら)、第7,153,122号(Jacksonら)、及び第7,153,123号(Jacksonら)を参照のこと。他の実施形態(図示せず)において、流延フィルムは、扁平ではなくチューブ状のフィルム構成に形成してもよく、続いて、チューブ状の流延フィルムを、インフレーションフィルム成形(blown film process)又はそれに類するものを用いて延伸させてもよい。流延フィルムを延伸フィルムに延伸/配向させる目的に使用され得る方法は、限定されない。
図8に関する上の考察と同様に、配向フィルム910は、一切の構成要素又は機能を追加することなく、本明細書で論じられる剥離特性を有する多層化ポリマーフィルムになり得る。他の事例において、追加の層及びコーティング、例えば剥離性ライナー(単数又は複数)、並びに接着剤裏張り層(単数又は複数)を配向フィルムに適用することによって、追加の機能性を得ることが可能になる。物理的な構造、例えば特に本明細書で論じられるアクセスタブ及び/又は特徴部を設けてもよい。本明細書の他の箇所で論じられるように、適用された追加の層及びコーティングの数にかかわらず、多層化ポリマーフィルムは、最初に共押出により形成された後、延伸により任意選択的に配向された、ポリマー層積層体を備えており、積層体中の層は、相互に不可逆的に離層されるように調整された層パケットに編成されている。
層積層体中のポリマー層は、図8に図示されているような共押出による同時形成と好適に適合した結果として、個々に剥離され得る層パケットを別途に作製してから相互に積層させた場合よりも薄くすることが可能になる。積層体中の層パケットはそれぞれ、好ましくは、約2ミル(約50マイクロメートル)以下の厚さを有し得る。更にまた、層積層体は合計N個の層パケットを含有することができ、Nは少なくとも5又は少なくとも10であってもよく、フィルムは約15又は20ミル(それぞれ約380又は510マイクロメートル)以下の全厚を有し得る。少なくともN−1個の層パケットは同数M個のポリマー層を有することが可能であり、Mは少なくとも2、又は少なくとも3であり得る。M個のポリマー層は、N−1個の層パケット又はN個全ての層パケットに対して同じ順序で配列され得る。
積層体内の様々な層タイプのポリマー組成物を適切に選択することは、開示されるフィルムの一部がポリマー層積層体全体にわたって繰り返される特定のタイプの境界面で優先的に離層するうえで幾分重要である。係るフィルムでは、積層体は、層パケットに編成された個別ポリマー層を備え、各層パケットは、最前ポリマー層と、最後ポリマー層と、少なくとも1つの内側ポリマー層とを有すると想定することができる。更に、層積層体は、隣接する層パケットの最前層と最後層との間の境界面に対応する離層表面で優先的に離層されるように調整されていると想定することができる。係る場合には、慨して、最前層に適した組成物は、ポリエステル、コポリエステル類、アクリル類、及びシリコーン熱可塑性物質から選択され得る。更に、オレフィン類の配合物(例えば、ポリプロピレン若しくはポリエチレンと、好適な量のスチレン系ブロックコポリマー、若しくはエチレンαオレフィンコポリマー、又はオレフィンブロックコポリマーとの配合物)から、最後層に適した組成物を選択することが可能である。また更に、内側ポリマー層に適した組成物は、様々なポリマー及びポリマー配合物(限定されないが、コポリエステル類、PMMA、co−PMMA、スチレン系ブロックコポリマー類、ポリプロピレン、及びシリコーンポリオキサミド類を含む)から選択され得る。ここで注意すべき点は、それぞれ異なる層タイプに対して前述した好適な組成物の全ての組み合わせが必ずしも所望される結果をもたらすとは限らず、所望される機能性及び離層特性を得るためには、別々の層タイプに使用されるポリマー材料の適切な組み合わせを識別するための判断が必要となることである。例えば、最前層は、半結晶性ポリエステルであっても又は半結晶性ポリエステルを含んでもよく、最後層は、ポリプロピレンとスチレン系ブロックコポリマー、エチレンαオレフィンコポリマー、又はオレフィンブロックコポリマーとの配合物であっても又はこれらを含んでもよく、内側層はコポリエステルであっても又はコポリエステルを含んでもよい。別の例では、最前層は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はco−PMMAであっても又はこれらを含んでもよく、最後層は、ポリプロピレンとスチレン系ブロックコポリマーの配合物あっても又はこれらを含んでもよく、内側層は、PMMA又はco−PMMAとスチレン系ブロックコポリマー又はポリプロピレンとの配合物であってもよい。更に別の例では、最前層は、シリコーンポリオキサミドであっても又はシリコーンポリオキサミドを含んでもよく、最後層は、ポリプロピレン及びスチレン系ブロックコポリマーであっても又はこれらを含んでもよく、内側層は、スチレン系ブロックコポリマーであってもよい。
層積層体中のあるポリマー層と別のポリマー層との付着強度を調整するための一手法では、ポリプロピレンといくつかのコポリマー樹脂類のうちの1つとの配合物から成るポリマー組成物は、他のポリプロピレン層への付着強度が配合済み原料の比率に対し相関性を呈する。この手法は、本願と同一譲渡人に譲渡された米国特許出願第13/596,425号(代理人整理番号69685US002)、「Coextruded Polymer Film Configured For Successive Irreversible Delamination」(2012年8月28日出願)に詳細に論じられている。
ここで図10を参照すると、本明細書に開示される任意の多層化ポリマーフィルムを目的とする被加工物にどのように適用され得るかを示す概略図がそこに示されている。電子デバイス1001、例えば携帯電話又はスマートフォンのような携帯用電子デバイスは、タッチスクリーンも具備するディスプレイ1002を有している。タッチスクリーンはディスプレイを覆い、かつディスプレイが見えるような透明である。ディスプレイ1002は、アイコン、英数字、又は他の任意の既知の形態で情報を提供し得る。ユーザは、ディスプレイ1002上に現れる、変化する像又は他の変化する情報に応答して、タッチスクリーン上で1回又は複数回、接触すること(タッチ式ジェスチャなど)によりデバイス1001と対話し得る。あるいは、ディスプレイ1002がタッチスクリーンを具備しない場合もあるが、それでもなお頻繁な接触又は他の外的影響による汚染を受けやすい場合がある。デバイス1001の反復使用は、タッチスクリーン又はディスプレイ1002の露出面への、細菌及び/又は他の微生物の繁殖及び成長に繋がり得る。更に、デバイス1001、又はそのディスプレイ1002の紫外線への長期曝露は、懸念事項であり得る。
デバイス1001を紫外線曝露による損傷から保護し、更にデバイス1001が細菌又は他の微生物の温床となる可能性を低減するために、本明細書に記載される光透過性の実施形態の任意のもののような、連続して剥離可能な多層化ポリマーフィルム1010を、タッチスクリーン又はディスプレイ1002に付着させることができる。フィルム1010は、各層パケット内の最前ポリマー層が、紫外線安定化添加剤及び抗菌添加剤を含むように構成されてもよい。フィルム1010は、図に示されたようにディスプレイ1002の形状と一致した形状にダイカットされてもよい。本出願によるフィルム1010は、好ましくは透過的で、所望により透明であり、ディスプレイ1002によって提供される像の詳細が識別可能であることを妨害するような著しい光学的欠陥をほとんど又は全く含まない。フィルム1010は、好ましくは閉じ込められた気泡がほとんど又は全くない状態でタッチスクリーン又はディスプレイ1002にフィルム1010を付着させるように機能する、光学的に透明な感圧性接着剤層(図1A〜図1Dの層112を参照)を更に含んでもよい。フィルム1010は、図5A〜図5Bのアクセスタブ515と同じ又は同様であり得るアクセスタブ1015を更に含んでいてもよい。アクセスタブ1015は、次の層パケットの新しい又は新品のポリマー層を露出させるために、フィルム残部から個々の層パケットを不可逆的に離層又は剥離するのを容易にする。ユーザは、太陽光等への長期曝露によって紫外線で誘発された過度なヘイズ又は過度な色変化がフィルム1010に生じた場合に、係る離層を行うことができる。フィルム1010は、本明細書に記載する他の任意の構造又は特徴を更に含んでよい。ここで注意すべき点は、アクセスタブがフィルムに設けられている場合、各内部層パケットの最前層の小さい部分(係る小さい部分は、それぞれのアクセスタブの領域に相当する)がユーザによる接触、ひいては汚染に曝露されることである。しかしながら、係る最前内側層の各々の表面の大半、例えば主表面の面積の少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%は、1つ以上の他の共押出層パケットにより覆われることによって、新品であり、汚染から保護される。図5Bと関連して上述される逆向きの配置をタブ装備式フィルムに用いる場合、係る汚染はある程度制限され得る。なぜなら、汚染を受けやすい主表面の領域の小さい部分(例えば、10%若しくはそれよりも低い、又は5%若しくはそれよりも低い、又は2%若しくはそれよりも低い)が逆向きの配置になることにより、空気媒介汚染及び/又は水媒介汚染などは尚も受けやすいもの、手指による接触又は他の直接的な接触からは保護される。
上述の原理を利用して、本明細書で論じられる離層特性及び紫外線軽減特性を有するいくつかの多層化ポリマーフィルムを製作し、試験した。
2つの非剥離性ポリマーフィルムも作製又は入手し、比較する目的で試験した。第1の係るフィルム(本明細書では「比較例1」と呼ぶ」)は、ヘイズの低いポリエチレンテレフタレート(PET)の単一層であった。単一層の比較例1フィルムは3.8ミル(97マイクロメートル)の物理的厚さを有した。比較例1のフィルムは紫外線安定剤を含有していなかった。
第2の比較用フィルム(本明細書では「比較例2」と呼ぶ」)もまたPETの単一層であったが、PETは紫外線安定化され、具体的には、2.3重量%のトリアジン紫外線吸収剤(特に、BASFから入手可能な製品コードTinuvin(商標)1577)を含有していた。比較例2の単一層フィルムは2ミル(50マイクロメートル)の物理的厚さを有した。
多層化ポリマーフィルム1(本明細書では「MPF 1」と呼ぶ)は、図6に示される配置と同様のABC層繰り返し配置を有するポリマー層積層体を使用した。このMPF 1フィルムでは、A、B、及びC層は、それぞれ、下記の通りのポリマー組成物A、B、及びCから成った。
・ポリマー組成物A:ポリエチレンテレフタレート(PET)、具体的には、Nan Ya Plastics Corp.(USA,Livingston,NJ)製の製品コード1N404、
・ポリマー組成物B:PETgコポリエステル、具体的には、Eastman Chemical Co.(Kingsport,TN)製の製品コードEASTAR GN071、及び
・ポリマー組成物C:90重量%のポリプロピレン(LyondellBasell Company製の製品コードSR549M)と10重量%のスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー樹脂(Kraton Performance Polymers Inc.(Houston,TX)製の製品コードKRATON G1657)との配合物。
これら材料はいずれも互いに共押出可能であり、かついずれも204℃(400°F)又はそれよりも高い温度で溶融加工可能である。これら材料を加熱し、共押出し、3つの押出成形機により供給される単一のフィードブロックを使用して43層積層体を形成した。3つの押出成形機のうちの1つはポリマー組成物Aを含有し、1つはポリマー組成物Bを含有し、1つはポリマー組成物Cを含有していた。43層の押出物を8インチ(約203mm)のダイに流し込み、静電密着を用いて冷却された鋳造ホイール上にキャストし、MPF 1フィルムを製造した。このフィルムサンプルを押出成形する間、押出成形機、ダイ、及びフィードブロックを500〜530°F(260〜277℃)の温度まで加熱した。キャスト後、KARO(商標)バッチ式オーブン延伸装置(Bruckner Inc.(Greenville,SC)から入手可能)を105℃で使用して、MPF 1フィルムを300%×300%に2軸延伸配向した。
MPF 1フィルム中の合計で43のポリマー層のうち、42のポリマー層でポリマー層積層体を形成し、各層は、図6に示されるパターンと同様の繰り返しABCパターンで配置され、層パケットの数は14個であった。1つのA層は各層パケットの上部又は前部にあり、1つのB層は各層パケットの内部にあり、1つのC層は各層パケットの下部又は後部にあった。各ABC層パケットの(配向された)物理的厚さは0.3ミル(7.6マイクロメートル)であり、そのうち、各A層の物理的厚さは0.12ミル(3マイクロメートル)、各B層の物理的厚さは0.06ミル(1.5マイクロメートル)、及び各C層の物理的厚さは0.11ミル(2.8マイクロメートル)であった。この14個のABC層パケットの積層体の最後又は最下C層に、ポリマー組成物Aの追加の(共押出)層を1つ加え、この追加のA層は0.3ミル(7.6マイクロメートル)の物理的厚さを有した。MPF 1フィルムのキャリパー又は物理的厚さの合計は4.5ミル(114マイクロメートル)であった。43個のポリマー層積層体を有するMPF 1フィルは、透明で光透過性の外観を有していた。
多層化ポリマーフィルム2(本明細書では「MPF 2」と呼ぶ)は、15個のA層が全て、比較例2のフィルムで使用した98重量%のPET及び2重量%のトリアジン紫外線吸収剤(BASFから入手可能な製品コードTinuvin(商標)1577)から成ったことを除いて、MPF 1フィルムと実質的に同じであり、同じ方法で作製された。このこと以外は、MPF 2フィルムはMPF 1フィルムと同じ構造及び構成を有した。すなわち、MPF 2フィルムは、14個のABC層パケットと1つの追加のA層とを有し、105℃で300%×300%に2軸配向され、4.5ミル(114マイクロメートル)の全物理的厚さを有し、透明で光透過性の外観を有していた。
多層化ポリマーフィルム3(本明細書では「MPF 3」と呼ぶ)は、15個のA層が全て、99重量%のPET及び1重量%のトリアジン紫外線吸収剤(BASFから入手可能な製品コードTinuvin(商標)1577)から成ったことを除いて、MPF 1フィルムと実質的に同じであり、同じ方法で作製された。このこと以外は、MPF 3フィルムは、MPF 1及びMPF 2フィルムと同じ構造及び構成を有した。すなわち、MPF 3フィルムは、14個のABC層パケットと1つの追加のA層とを有し、105℃で300%×300%に2軸配向され、4.5ミル(114マイクロメートル)の物理的厚さを有し、透明で光透過性の外観を有していた。
3つの多層化ポリマーフィルムMPF 1、MPF 2、及びMPF 3はそれぞれ、層パケット内の境界面に沿ってではなく、層パケット間での離層を促進するように構成され(隣接するA層とC層との間の結合強度が、A層とB層との間の結合強度よりも弱く、かつB層とC層との間の結合強度よりも弱いため)、積層体のポリマー層が、1回の共押出操作、並びに延伸工程によって作製され、かつ積層体のポリマー組成物が204℃(400°F)又はそれよりも高い溶融温度で溶融加工可能である、ポリマー層積層体を有し、接着剤層も感圧性接着剤も含有しておらず、かつ可視波長にわたって80%超、85%超、90%超の平均透過率、及び8%未満、及び5%未満の光学ヘイズを有した。更に、MPF 2及びMPF 3フィルムに関し、各層パケットは、有効量の紫外線安定剤を含有する1つのポリマー層と、紫外線安定剤を含有しない又は実質的に含有しない2つのポリマー層とを有した。MPF 1フィルムに関し、各層パケット中の3つのポリマー層は全て、紫外線安定剤を含有しないか、又は実質的に含有しなかった。
次に、2つの比較フィルムサンプルと、3つの剥離可能な多層化ポリマーフィルムサンプルを、加速風化試験の一環として、強い紫外線に長時間にわたって曝露させた。これらの試験では、光学的に透明な転写接着剤を使用して各フィルムサンプルを厚いガラス板に付着させ、紫外線を、ガラス板を介してではなく、フィルムサンプルに直接衝突させた。試験したフィルム自体の(ガラス板に付着したままの状態の)光学特性を、紫外線曝露の前及び紫外線曝露中の選択された間隔で測定した。測定した光学特性には、Haze−Gard Plusヘイズメータ(BYK instrumentsより市販)を用いて測定した光学ヘイズ、市販の分光光度計(GretagMacbeth LLCの製品コードColor−Eye 2180)の測定値に基づいて算出されたb*色彩値、及び市販の分光光度計(Shimadzu Corporationの製品コードUV−255)の測定値に基づいて算出されたスペクトル吸収(波長の関数としての光学密度によって表わされる)が含まれる。
第1の加速風化試験(風化試験「A」と指定)において、試験フィルムサンプルのそれぞれを、ASTM G155、サイクル1(水噴霧なし、ブラックパネル温度70℃)と同様の人工加速風化試験に曝露し、次いで、340nmで1170kJ/m2の紫外線線量レベルに相当する間隔をあけて評価した。表1は、紫外線曝露前(0時間)に測定したヘイズ値、及び340nmで1170kJ/m2の増分で、すなわち、総曝露線量1170、2340、及び3510kJ/m2で測定したヘイズ値を列挙する。「1170AD」、「2340AD」、及び「3510aD」とラベル付けされた欄は、それぞれ、剥離可能な多層化ポリマーフィルムの最外(最前)層パケットが離層された後の曝露線量1170、2340、及び3510kJ/m2を指す。(これらの欄は、比較フィルムである比較例1及び比較例2に関して該当なしとなっているが、これは、該フィルムは離層不可能だからであり、したがってこれらの箇所には値「(n/a)」が表示されている。)各多層化ポリマーフィルムに対して行なわれた3回の離層手順のそれぞれに関し、離層は、1つの最外(最前)層パケットのみではなく、(いずれの場合にも)2つの最外(最前)層パケットが、場合によっては単一ユニット又はシートとして一緒に離層されてもよいように行われた。
表に示されるように、例えば、MPF 1フィルムの測定された光学ヘイズは、340nmの紫外線への曝露で、紫外線曝露が0線量で2.5%、1170kJ/m2で1.9%であった。ヘイズ測定値が1.9%になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 1フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 1フィルム中の(ABC)層パケットの数を14から13又はそれよりも少ない数に(1つの層パケットを離層したか、又は2つの層パケットを離層したかに応じて)減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 1フィルムの光学ヘイズを再度測定すると、2.2%であることが分かった。次に、このMPF 1フィルムを、340nmで更に1170kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を2340kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると2.3%のヘイズを有していた。ヘイズ測定値が2.3%になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 1フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 1フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 1フィルムの光学ヘイズを再度測定すると、1.7%であることが分かった。次に、このMPF 1フィルムを、340nmで更に1170kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を3510kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると2.3%のヘイズを有していた。ヘイズ測定値が1.9%になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 1フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 1フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 1フィルムの光学ヘイズを再度測定すると、2.6%であることが分かった。
同じ加速風化試験Aに関連して、かつ同じ2つの比較フィルムサンプル及び3つの多層化ポリマーフィルムサンプルに関連して、各フィルムサンプルのb*色座標又は色彩値を測定した。色検査は、D65光源2度視野を用いて透過モードでCIE L*a*b*座標に関して測定した。結果を、表1の形式に一致する形式で表2に示す。
表に示されるように、例えば、MPF 1フィルムの測定されたb*色彩値は、340nmの紫外線への曝露で、紫外線曝露が0線量で−5.2、1170kJ/m2で−2.3であった。b*測定値が−2.3になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 1フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 1フィルム中の(ABC)層パケットの数を14から13又はそれよりも少ない数に(1つの層パケットを離層したか、又は2つの層パケットを離層したかに応じて)減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 1フィルムのb*色彩値を再度測定すると、−4.1であることが分かった。次に、このMPF 1フィルムを、340nmで更に1170kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を2340kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると−3.5のb*色彩値を有していた。b*測定値が−3.5になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 1フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 1フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 1フィルムのb*色彩値を再度測定すると、−4.6.であることが分かった。次に、このMPF 1フィルムを、340nmで更に1170kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を3510kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると−4.2のb*色彩値を有していた。b*測定値が−4.2になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 1フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 1フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 1フィルムのb*色彩値を再度測定すると、−4.3であることが分かった。
データにわずかな変動はあるもの(変動は、例えばサンプルの取り扱い、ウォータスポット等に起因し得る)、フィルム間に実質的な性能差があることが表1及び2から明らかである。紫外線線量の累積が3510kJ/m2になると(340nmで測定)、比較例1のフィルムは実質的に黄変し(b*が8増加する)、ヘイズは実質的に増加する(ヘイズは4%増加する)。同じ曝露期間にわたり、紫外線安定化された比較例2のフィルムの黄変の程度は小さく(b*は1.1増加する)、ヘイズの増加は小さいが、それでもヘイズの増加(3.6%)は2%超、及び3%超である。これらフィルムと比較して、剥離可能な多層化フィルムが同じ曝露期間にわたって示すヘイズの増加はずっと小幅(すなわち、3%未満、及び2%未満、及び1%未満)であり、これは、上述のように最外層パケットを連続して離層した結果である。黄変に関しては、3つの剥離可能な多層化フィルムのうちの1つのみ(すなわち、MPF 1フィルム)が、総紫外線曝露にわたってb*の増加を示した。MPF 2及びMPF 3フィルムのb*座標は、総紫外線曝露にわたって低下した。すなわち、これらフィルムの透過色は、試験の過程にわたって、黄色に向かってではなく、青色に向かって移動した。理論に束縛されるものではないが、これは、元のフィルムからの最上層パケットの離層(1170kJ/m2の曝露間隔毎に剥離)の結果である可能性がある。それらの離層された層パケットは紫外線吸収剤を含有しており、紫外線吸収剤が可視青色波長に対して残余吸収を示し得る限りにおいて、これらの層の離層により、単にフィルム中の紫外線吸収剤の量が少なくなった結果として、より多くの可視青色光を(減縮した)多層化フィルムに透過させることになる。
表1及び2に示されているヘイズ及びb*測定値に加えて、加速風化試験A用に同じ1170kJ/m2の線量間隔でいくつかの光学スペクトルを測定し(340nmで測定)、フィルムの吸光度を測定した。吸光度が光学密度(O.D.)で表されている比較例1のフィルムの結果を図11Aに示す。光学密度は対数パラメータであり、O.D.1が透過率10%に対応し、O.D.2が透過率1%に対応し、O.D.3が透過率0.1%に対応するといった具合である。図11Bは、図11Aのグラフの一部の単純な拡大図であり、同じ曲線を特定するために同じ参照番号を使用している。これらの図において、曲線1102は、紫外線線量ゼロに関して測定された比較例1のフィルムの吸光度であり、曲線1104、1106、及び1108は、紫外線線量(340nmで測定)1170、2340、及び3510kJ/m2(それぞれ)での同じフィルムの吸光度である。
曲線1102〜1108の精査及び比較から、紫外線曝露が増加するにつれて、約320〜360nmの範囲の波長における光学密度が増加することが明らかであり、このことは光分解に伴う発色団の発生を実証している。
第2の加速風化試験において、風化試験Aと同じ試験フィルムの異なるサンプルを、昼光フィルターを用いてSAE J2527と同様の加速人工風化試験に曝露し、次いで、340nmでの紫外線線量レベル780kJ/m2に対応する間隔で評価した。表3は、紫外線曝露前(0線量)に測定したヘイズ値、及び340nmで780kJ/m2の増分で、すなわち、総曝露線量780、1560、及び2340kJ/m2で測定したヘイズ値を列挙し、この表は表1と同じ形式を用いている。よって、表3も「780AD」、「1560AD」、及び「2340AD」とラベル付けされた欄を有し、これらは同様に、剥離可能な多層化ポリマーフィルムの最外層パケットが離層された後の曝露線量780、1560、及び2340kJ/m2(340nmで)をそれぞれ指す。(これらの欄は、比較フィルムである比較1及び比較2に関して該当なしとなっているが、これは、該フィルムは離層不可能だからであり、したがってこれらの箇所にはここでも同様に値「(n/a)」が表示されている。)前述同様に、各多層化ポリマーフィルムに対して行われた3回の離層手順のそれぞれに関し、離層は、1つの最外(最前)層パケットのみではなく、(いずれの場合にも)2つの最外(最前)層パケットが、場合によっては単一ユニット又はシートとして一緒に離層されてもよいように行われた。
表に示されるように、例えば、MPF 3フィルムの測定された光学ヘイズは、(340nmで測定した)紫外線曝露の、紫外線曝露が0線量で1.3%、780kJ/m2で1.4%であった。ヘイズ測定値が1.4%になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 3フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 3フィルム中の(ABC)層パケットの数を14から13又はそれよりも少ない数に(1つの層パケットを離層したか、又は2つの層パケットを離層したかに応じて)減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 3フィルムの光学ヘイズを再度測定すると、1.7%であることが分かった。次に、このMPF 3フィルムを、340nmで更に780kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を1560kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると1.9%のヘイズを有していた。ヘイズ測定値が1.9%になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 3フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 3フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 3フィルムの光学ヘイズを再度測定すると、1.8%であることが分かった。次に、このMPF 3フィルムを、340nmで更に780kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を2340kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると2.9%のヘイズを有していた。ヘイズ測定値が2.9%になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 3フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 3フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 3フィルムの光学ヘイズを再度測定すると、3.2%であることが分かった。
同じ加速風化試験Bに関連して、かつ同じ2つの比較フィルムサンプル及び3つの多層化ポリマーフィルムサンプルに関連して、各フィルムサンプルのb*色座標又は色彩値を、上記の表2に関するのと同様に測定した。結果を、表3の形式に一致する形式で表4に示す。
表に示されるように、例えば、MPF 2フィルムの測定されたb*色彩値は、(340nmで測定した)紫外線曝露の、紫外線曝露が0線量で−0.7、780kJ/m2で−0.8であった。b*測定値が−0.8になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 2フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 2フィルム中の(ABC)層パケットの数を14から13又はそれよりも少ない数に(1つの層パケットを離層したか、又は2つの層パケットを離層したかに応じて)減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 2フィルムのb*色彩値を再度測定すると、−1.7であることが分かった。次に、このMPF 2フィルムを、340nmで更に780kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を1560kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると−0.3のb*色彩値を有していた。b*測定値が−0.3になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 2フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 2フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 2フィルムのb*色彩値を再度測定すると、−1.5であることが分かった。次に、このMPF 2フィルムを、340nmで更に780kJ/m2の線量の紫外線に曝露し、合計線量を2340kJ/m2とし、この時点でフィルムを測定すると−1.2のb*色彩値を有していた。b*測定値が−1.2になった後であるが、依然として同じ曝露線量であるときに、MPF 2フィルムの最外層パケットをフィルムの残部から離層し、それによりMPF 2フィルム中の(ABC)層パケットの数を更に減らした。この層パケットの数が減った状態で、MPF 2フィルムのb*色彩値を再度測定すると、−2.1であることが分かった。
表1及び2と同様に、表3及び4もわずかな変動を含んでいるが、フィルム間に同様の実質的な性能差があることが明らかである。両方のタイプの紫外線曝露試験において、比較例1のフィルムは、3回の紫外線線量間隔後に、大幅なヘイズの増加(最大36%)及び大幅なb*の増加(5〜8ポイントの増加)を示す。同様に、比較例2のフィルムは、実質的なヘイズの増加(3.6〜4.6%)及びb*のより小幅な増加(0.5〜1)を示す。これら比較フィルムに対して、MPF 1、MPF 2、及びMPF 3が示すヘイズの変化は非常に限定的であり(0〜3%)、同様に、同じ蓄積紫外線曝露に関するb*の増加も、もしあったとしてもわずか(<1)である。理論に束縛されるものではないが、MPF 2及びMPF 3フィルムに関するb*の減少は、上で説明したように、元のフィルムからの最上層パケットの離層(曝露間隔毎の剥離)の結果である可能性がある。
表3及び4に示されているヘイズ及びb*測定値に加えて、加速風化試験B用に同じ紫外線曝露間隔でいくつかの光学スペクトルを測定し、フィルムの吸光度を算出した。吸光度が(対数)光学密度(O.D.)で表されているMPF 1フィルムの結果を図12Aに示す。図12Bは、図12Aのグラフの一部単純な拡大図であり、同じ曲線を特定するために同じ参照番号を使用している。これらの図において、曲線1202は、紫外線曝露0でのMPF 1フィルムの測定された吸光度であり、曲線1204は、紫外線曝露(340nmで測定)780kJ/m2でのMPF 1フィルムの測定された吸光度であり、曲線1204ADは、紫外線曝露780kJ/m2でのMPF 1フィルムの測定された吸光度であるが、フィルムの最外層パケットが離層された後のものであり、それによりMPF 1フィルム中の層パケットの数を、14から13又はそれよりも少ない数に(1つの層パケットを離層したか、又は2つの層パケットを離層したかに応じて)減らした)、曲線1206は、紫外線曝露線量1560kJ/m2での(層パケット数が減った)MPF 1フィルムの測定された吸光度であり、曲線1206ADは、紫外線曝露1560kJ/m2でのMPF 1フィルムの測定された吸光度であるが、フィルムの最外層パケットが離層された後のものであり(したがって、MPF 1フィルム中の層パケットの数が、離層された層パケットの数に応じて、13(又はそれよりも少ない数)から12(又はそれよりも少ない数)に減った)、曲線1208は、紫外線曝露線量2340kJ/m2での(層パケット数が更に減少した)MPF 1フィルムの測定された吸光度であり、曲線1208ADは、紫外線曝露2340kJ/m2でのMPF 1フィルムの測定された吸光度であるが、フィルムの最外層パケットが離層された後のものである(したがって、MPF 1フィルム中の層パケットの数が更に減っている)。
図12A及び図12Bの精査により、長期にわたる紫外線曝露の過程で起こる光分解の多くは、層パケットを繰り返し離層することによって排除することができ、この手順によってフィルムを更新させることができることが示されている。
本明細書の教示は、本願と同一譲渡人に譲渡された、剥離可能な多層化ポリマーフィルムに関する以下の特許出願:2012年8月28日出願の米国特許出願第13/596,425号(代理人整理番号69685US002)「Coextruded Polymer Film Configured for Successive Irreversible Delamination」、2013年6月6日出願の米国特許出願第61/831,939号(代理人整理番号74169US002)「Successively Peelable Coextruded Polymer Film With Embedded Antimicrobial Layer(s)」、及び、2013年12月30日出願の米国特許出願第14/144,097号(代理人整理番号74824US002)「Post−Formed Successively Peelable Coextruded Polymer Film」のうちの1つ、いくつか、又は全ての教示と組み合わされてもよい。これらの特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。よって、例えば、紫外線で誘発されたフィルムの劣化を軽減するために使用される、開示される剥離可能な多層化ポリマーフィルムはまた、‘939特許出願に記載されているように1つ以上の好適な抗菌剤を含んでもよく、及び/又は‘097特許出願に記載されているように、自立した輪郭形状を与えるように二次形成(post-formed)又は成形されてもよい。
特に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用する、数量、特性の測定値などを表す全ての数値は、「約」という語で修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本願の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは、少なくとも記載される有効桁数を考慮し、一般的な四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広義の範囲を示す数値的範囲及びパラメータは近似的な値ではあるが、任意の数値が本明細書に述べられる具体例に記載される限りにおいて、これらは妥当な程度に可能な範囲で正確に記載されるものである。しかしながら、いかなる数値も、試験又は測定の限界に伴う誤差を含み得る。
当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の様々な改変及び変更が明らかであり、本発明は本明細書に記載される例示的な実施形態に限定されない点が理解されるはずである。読者は、1つの開示される実施形態の特徴は、特に断らない限りは他のすべての開示される実施形態にも適用することが可能であると仮定すべきである。本明細書で触れた全ての米国特許、米国特許出願公開、並びに他の特許及び非特許文献を、これらが上記の開示と矛盾しない限りにおいて本明細書に援用するものである。
本出願は、過度な紫外線曝露による光学的劣化を軽減するために使用することができる多層化ポリマーフィルムに関する種々の項目を開示する。これらは以下の番号付けされた項目を含むが、これらに限定されない。
項目1は、ポリマー層積層体を備えるフィルムであって、前記ポリマー層が層パケットに編成されており、前記層パケットの各々が前記ポリマー層のうちの少なくとも2つを有しており、
隣接する層パケット間の付着が、前記層パケットが前記積層体の残部から個別に不可逆的に離層できる程度に弱く、前記積層体が、係るパケット間の係る不可逆的な離層を促進するように構成され、
前記ポリマー層積層体中の前記ポリマー層の全てが、互いに共押出可能なそれぞれのポリマー組成物を有し、
複数の前記層パケット中の前記ポリマー層のうちの少なくとも1つが、1つ以上の紫外線安定剤を含む、フィルムである。
項目2は、前記層パケットの各々中の前記ポリマー層のうちの少なくとも1つが、前記1つ以上の紫外線安定剤を含む、項目1に記載のフィルムである。
項目3は、前記1つ以上の紫外線安定剤が第1の紫外線安定剤を含み、前記1つ以上の紫外線安定剤を含む各層パケット中の前記少なくとも1つのポリマー層が、前記第1の紫外線安定剤を含む、項目2に記載のフィルムである。
項目4は、前記積層体中の各層パケットについて、前記1つ以上の紫外線安定剤を含む前記少なくとも1つのポリマー層が、係る層パケットの前部に配設される、項目2に記載のフィルムである。
項目5は、前記積層体中の各層パケットが、紫外線安定剤を実質的に含まない少なくとも1つのポリマー層を更に含む、項目2〜4のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目6は、各層パケットが、前記1つ以上の紫外線安定剤を含むポリマー層を1つのみ有する、項目2〜5のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目7は、前記1つ以上の紫外線安定剤が、紫外線吸収剤を含む、項目1〜6のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目8は、前記1つ以上の紫外線安定剤が、抗酸化剤を含む、項目1〜7のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目9は、前記1つ以上の紫外線安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含む、項目1〜8のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目10は、任意の2つの隣接する層パケット間の付着が、2〜100グラム/インチ(0.8〜38.6N/m)の範囲の剥離力を特徴とする、項目1〜9のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目11は、前記積層体が、隣接する層パケット間の境界面へのアクセスを提供するアクセスタブと共に構成されている、項目1〜10のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目12は、前記ポリマー層がAB繰り返し配列で配置されている、項目1〜11のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目13は、前記ポリマー層がABC繰り返し配列で配置されている、項目1〜11のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目14は、前記積層体が、前記積層体中の隣接する層パケットの全ての対で、前記層パケット間の付着が前記層パケット内の前記ポリマー層間の付着よりも弱く、これにより不可逆的な離層が前記層パケット内部ではなく前記層パケット間で生じやすくなるように構成されている、項目11又は13に記載のフィルムである。
項目15は、隣接する層パケット間の付着が、第1の剥離力を特徴とし、各層パケット内のポリマー層の最も弱い付着が、第2の剥離力を特徴とし、前記第2の剥離力が前記第1の剥離力の少なくとも2倍である、項目14に記載のフィルムである。
項目16は、前記ポリマー層が、ABC繰り返し配列で配置されている、項目14に記載のフィルムである。
項目17は、ポリマー層AとCとの間の付着が、ポリマー層AとBとの間の付着よりも弱く、ポリマー層BとCとの間の付着よりも弱い、項目16に記載のフィルムである。
項目18は、前記ポリマー層積層体中の前記ポリマー層の全てが、204℃(400°F)又はそれよりも高い溶融温度で溶融加工可能なそれぞれのポリマー組成物を有する、項目1〜17のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目19は、前記積層体中の前記ポリマー層のうちの少なくともいくつかが配向されており、かつ少なくとも0.05の複屈折を有する、項目1〜18のいずれか1つに記載のフィルムである。
項目20は、隣接する層パケットの境界面に配設されている前記ポリマー層がいずれも室温で粘着性ではない、項目1〜19いずれか1つに記載のフィルムである。
項目21は、前記積層体中の前記層パケットの各々が、2ミル(50マイクロメートル)以下の厚さを有する、項目1〜20いずれか1つに記載のフィルムである。
項目22は、前記ポリマー層が少なくともN個の層パケットに編成されており、Nが少なくとも5である、項目1〜21いずれか1つに記載のフィルムである。
項目23は、Nが少なくとも10であり、前記フィルムが15ミル(380マイクロメートル)以下の全厚を有する、項目22に記載のフィルムである。
項目24は、前記ポリマー層積層体が、少なくとも80%の可視波長に対する平均透過率及び15%未満の光学ヘイズを有する、項目1〜23いずれか1つに記載のフィルムである。
項目25は、前記ポリマー層積層体が、8%未満、又は5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満の光学ヘイズを有する、項目24に記載のフィルムである。
項目26は、方法であって、
ポリマー層積層体を備えるフィルムを提供する工程であって、前記ポリマー層が層パケットに編成され、各層パケットは前記ポリマー層のうちの少なくとも2つを有し、前記積層体が係る層パケット間の不可逆的な離層を促進するように構成されており、前記積層体中の前記ポリマー層の全てが互いに共押出可能なそれぞれのポリマー組成物を有する、工程と、
前記フィルムが紫外線曝露に起因する光学的劣化を示すように、前記フィルムを十分な量の紫外線(UV)に曝露する工程であって、前記光学的劣化は、主に、前記層パケットのうちの第1の層パケットと関連している、工程と、
前記第1の層パケットを前記積層体の残部から離層する工程と、を含む方法。
項目27は、複数の前記層パケットの中の前記ポリマー層のうちの少なくとも1つが、1つ以上の紫外線安定剤を含む、項目26に記載の方法である。
項目28は、前記光学的劣化が、1%若しくはそれよりも大きい、又は2%若しくはそれよりも大きい、又は3%若しくはそれよりも大きい、又は5%若しくはそれよりも大きい、又は10%若しくはそれよりも大きい光学ヘイズの増加、及び/又は2若しくはそれよりも大きいCIE b*色座標の増加を含む、項目26又は27に記載の方法である。