JP2017503478A - Egfr阻害剤による治療に対する応答性を予測するための方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するためのin vitro法であって、前記患者の腫瘍サンプルにおけるhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなり、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子がDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される方法に関する。本発明はまた、DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現、ならびにEGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを測定するためのキットに関する。本発明はまた、前記EGFR阻害剤に応答すると予測された患者におけるEGFR阻害剤の治療的使用に関する。
Description
本発明は、hsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルに基づき、癌治療の化学療法を個人に合わせるため、特に、1以上の上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に対する患者の応答性をそのような薬剤による治療の前に評価するための方法を提供し、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子はDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される。
上皮成長因子受容体(EGFR)経路は、ヒト上皮癌の発生および進行において重要である。EGFR阻害剤との併用治療は、より効果的かつ持続的なAkt阻害を介して、機能的EGFRに依存する自己分泌増殖経路を有する種々のヒト癌細胞において、相乗的な増殖阻害活性およびアポトーシス誘導活性を有する。
EGFR阻害剤は、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部癌、結腸直腸癌、およびHer2陽性乳癌を含む様々な癌の治療に対して承認済みであるか、または試験されており、標準療法に加えられつつある。EGFR標的の細胞内チロシンキナーゼドメインか細胞外ドメインのいずれかを標的とし得るEGFR阻害剤は、一般に集団応答率の低さを悩みとし、多くの場合、効果のないまたは最適でない化学療法、ならびに不要な薬物毒性および出費をもたらす。例えば、セツキシマブ(EGFRの細胞外ドメインを標的とするキメラモノクローナル抗体)による結腸直腸癌治療に関して報告されている臨床応答率は約11%であり(Cunningham et al, N Engl Med 2004;351: 337-45)、エルロチニブによるNSCLC治療に関して報告されている臨床応答率は約8.9%である(Shepherd F A, et al, N Engl J Med 2005; 353:123-132)。
特に、KRAS突然変異の場合には耐性が認められている。
結腸直腸癌では、KRAS突然変異は抗EGFR抗体に対する耐性と明らかに関連があるので(Lievre et al, Cancer Res. 2006 66(8):3992-5)、非突然変異型KRAS患者において、この療法に対する応答の欠如を予測できる他のマーカーを同定することが大きな挑戦の1つである。中でも、癌遺伝子の増幅または活性化突然変異、および上記の腫瘍抑制遺伝子の不活性化突然変異は、例えば、EGFR下流リンタンパク質発現の測定により評価されるEGFR下流シグナル伝達経路の活性化レベルなど、関連のある候補である。
肺癌では、3群の患者が明らかになっており、第1群は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)の使用が転帰を改善することが分かっている、EGFR変異型腫瘍を有する患者であり、第2群は、抗EGFR療法がおそらく良好な選択肢とはならない、KRAS変異型腫瘍を有する患者であり、第3群は、応答が予測できない非EGFR変異型かつKRAS変異型腫瘍である。非変異型腫瘍群における薬物応答に関連するマーカーで、これまでに有益であることが分かっているものはない。
よって、特許療法のより良い個別化のためには、EGFR阻害剤に対する患者の応答性をそのような薬剤による治療の前に予測する必要がある。
従来技術において、種々の抗癌治療に対する感受性または耐性におけるマイクロRNA(miRNA)の関与に関する多数の文献が存在する。特に、PCT/EP2012/073535には、癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するためのin vitro法が記載され、その方法は、前記患者のサンプルにおけるhsa−miR−31−3p(旧称hsa−miR−31*、配列番号1)miRNAの発現レベルを決定することを含んでなる。より詳しくは、hsa−miR−31−3pの発現が低いほど、患者がEGFR阻害剤治療に応答する可能性は高い。
同様に、従来技術において、種々の抗癌治療に対する感受性または耐性における様々な遺伝子の関与に関する多数の文献が存在する。しかしながら、ほとんどの場合、研究は部分的であり、不完全であり、実際には、治療に対する臨床応答または非応答の真の予測を可能とするものではない。事実、多くの場合で、研究は、特定の治療に対して感受性もしくは耐性の細胞株におけるか、または患者腫瘍から単離された腫瘍細胞において、in vitroでの遺伝子の発現の分析に限定されている。さらに、多くの研究では、2つの細胞集団間または患者集団間での発現レベルの違いが示されるものの、新たな患者において応答または非応答の予測を実際に可能とする閾値またはスコアは示されていない。このことは、1つには、多くの研究が臨床現場で得られるデータを欠いているという第1の欠点に関連している。さらに、臨床現場で得られたデータをいくらか示している場合であっても、これらのデータはほとんどの場合で後向きでしかなく、独立したコホートにおける予測法をバリデートするデータを欠いている場合が多い。
従来技術の研究の様々な欠点を鑑みれば、このような療法がいくつかの選択肢のうちの1つとなる患者において、EGFR阻害剤に対する応答を予測するための真の、バリデートされた方法がなお必要である。本発明は、この必要に対する対応を提供する。
DBNDD2(ディスビンディン(ディストロブレビン結合タンパク質1)ドメイン含有2)(dysbindin (dystrobrevin binding protein 1) domain containing 2)はヒトカゼインキナーゼ−1の結合相手であることが開示されている(Yin H et al. Biochemistry. 2006 Apr 25;45(16):5297-308)。加えて、マイクロアレイグローバルプロファイリングを用い、DBNDD2は、種々の腫瘍細胞で(WO2010065940;WO2010059742;WO2009131710;WO2007112097)、またはラパマイシン(WO2011017106)もしくはタモキシフェン(WO2010127338)に感受性もしくは耐性の癌細胞の間で示差的に発現されることが判明している。しかしながら、この遺伝子は癌に特に関連しているとは思われず、EGFR阻害剤に対する応答の予測におけるこの遺伝子の関与は開示されていない。
EPB41L4B(赤血球膜タンパク質バンド4.1ライク4B)(erythrocyte membrane protein band 4.1 like 4B)は、膜貫通タンパク質を細胞骨格に連結するか、またはキナーゼおよび/もしくはホスファターゼ酵素活性を原形質膜に連結することができ、発癌および転移に関与することが記載されているFERMファミリータンパク質のタンパク質である。特に、EPB41L4B(EHM2としても知られる)は、前立腺癌(Wang J, et al. Prostate. 2006 Nov 1;66(15):1641-52; Schulz WA, et al. BMC Cancer.2010 Sep 22;10:505)および乳癌(Yu H et al. Mol Cancer Res 2010;8:1501-1512)の悪性度の高さと関連付けられている。従って、この遺伝子は少なくとも2種類の癌の悪性度と不良な予後に関連付けられている。さらに、タキソテール(ドセタキセル、WO2007072225およびWO2008138578参照)に感受性の癌細胞株と耐性の癌細胞株の間で示差的に発現されることが判明している。しかしながら、癌患者のEGFR阻害剤に対する応答能または応答しないことに対するその関与の開示は無かった。
本発明者らは、miRNAの名称に基づくか、または遺伝子名に基づいて応答指令信号を送ることができる6つのデータベースからの情報を組み込んだ新たなデータベースを実装した。1つ目の場合(miRNA名に基づくクエリー)、データベースは、公開情報または構造情報に基づいてクエリーmiRNAの候補標的と考えられる遺伝子名を答え、候補標的遺伝子は利用可能な情報に基づいて最も可能性が高いから可能性が低いまでの順位付けを行う。クエリーが遺伝子名に基づく場合、データベースは、そのクエリー遺伝子が標的とされる(またはされない)可能性のある候補miRNAを答える。
なぜhsa−miR−31−3pの高い発現がEGFR阻害剤治療に対ウイルスする低い応答に関連するのかを理解する目的で、本発明者らは、このmiRNAの標的遺伝子の同定を試みた。この目的で、本発明者らは、天然にはhsa−miR−31−3p発現が弱い3つの結腸直腸腺癌(CRC)細胞株をhsa−miR−31−3pミミックまたは陰性対照ミミックでトランスフェクトし、hsa−miR−31−3pを過剰発現するまたは発現の弱い細胞株間で示差的に発現される遺伝子を解析した。有意にダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションを受けていた合計74の遺伝子が同定された。miRNAは主としてそれらの標的遺伝子の発現を低下させることによって機能するので、本発明者らは47のダウンレギュレーション遺伝子に着目した。候補標的の数を限定し、誤った直接標的遺伝子を回避するために、本発明者らはさらに、miRNAおよび候補標的に関する6つのデータベースで入手可能な情報に基づいてin silico解析を行った。公開データベースで提供されるほとんどのmiRNA標的遺伝子はバリデートされておらず、構造データまたは断片的実験データに基づいた、多かれ少なかれあり得る候補に過ぎないことに留意することが重要である。これに基づき、hsa−miR−31−3pの25の候補標的遺伝子をさらなる分析のために選択した。本発明者らは、EGFR阻害剤で処置された患者の腫瘍サンプルにおけるこれらのhsa−miR−31−3p候補標的遺伝子の発現をさらに分析した(なお、RECIST判定基準に基づくそれらの治療応答状態は既知である)。
これらの分析に基づき、本発明者らは驚くことに、DBNDD2およびEPB41L4Bが両方とも、それらの発現が癌細胞株においてhsa−miR−31−3pの過剰発現により有意にダウンレギュレーションを受けていることから、hsa−miR−31−3p標的遺伝子であること、ならびにこれらの遺伝子はそれぞれ独立に癌患者のEGFR阻害剤治療に対する応答能に有意に関連していたことを見出した。本発明者らはさらに、これらの遺伝子がそれぞれ単独で癌患者におけるEGFR阻害剤に対する応答を、信頼性をもって予測するために使用可能であることを確認した。これらの遺伝子にはデータベースにおいて、HAUS4などのより高い確率でhsa−miR−31−3pの候補標的遺伝子と見なされているものやSTAT3、FEM1A、EHBP1およびSEC31Aなどの癌に関連していることが既知のものがいくつかあるものの、hsa−miR−31−3pの他の23の候補標的遺伝子には、癌患者のEGFR阻害剤治療応答能に有意に関連することが判明したものは無かった。このことは、遺伝子の癌との単なる関連では、その遺伝子が特定の癌治療に対する応答のバイオマーカーとして使用可能であるということを合理的に期待するには十分でないことを明らかに示している。これはまた、公開データベースに開示されている特定のmiRNAの多数の候補標的遺伝子のうち少数のものだけがこのmiRNAの真の標的であること、および真の標的は必ずしも最も上位の候補ではないことを示している。
驚くことに、EGFR阻害剤治療に応答しない患者で有意にダウンレギュレーションを受けていることが判明した2つの遺伝子は、癌に関連することが特に知られていない遺伝子(DBNDD2)と癌に関連することが知られている遺伝子(EPB41L4B)であるが、その高い発現レベルは不良な予後に関連していた。これに対し、本発明では、EGFR阻害剤に対する応答の欠如、従って不良な予後に関連しているのは、EPB41L4Bの低い発現である。これらの結果から、予後のバイオマーカーは(一般に)、特定の治療に対する応答のバイオマーカーでもあると合理的に期待され得ないことが確認される。
本発明者らによって得られた結果(実施例1参照)に基づき、本発明は、癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するためのin vitro法を提供し、その方法は、前記患者のサンプルにおけるhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなり、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子がDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される。
好ましくは、患者はKRAS野生型癌を有する。
癌は好ましくは、結腸直腸癌、好ましくは、転移性結腸直腸癌である。
最も好ましい実施態様では、本発明は、転移性結腸直腸癌を有する患者がセツキシマブまたはパニツムマブなどの上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するためのin vitro法を提供し、その方法は、前記患者の腫瘍サンプルにおけるhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなり、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子がDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される。
本発明はまた、癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定するためのキットであって、前記患者のサンプルにおいてhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定するための試薬(ここで、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子はDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される)、およびEGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定するための試薬を含んでなる、またはからなるキットを提供する。
本発明はさらに、癌に罹患している患者の治療に使用するためのEGFR阻害剤に関し、ここで、前記患者は本発明による方法によって応答する可能性が高いと分類されている。
本発明はまた、本発明の方法によって「応答者」と分類されている患者の癌治療における使用を意図した薬物を製造するためのEGFR阻害剤の使用に関する。
本発明はまた、癌に罹患している患者を治療するための方法であって、(i)本発明の方法により、前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定すること、および(ii)前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いと決定された場合に、前記患者にEGFR阻害剤を投与することを含んでなる方法に関する。
定義
「患者」は、齢または性を問わず、任意の哺乳動物 、好ましくは、ヒトであり得る。
患者は、癌に罹患している。患者は、任意の化学療法薬により治療をすでに受けていてもよいし、または未治療であってもよい。
「患者」は、齢または性を問わず、任意の哺乳動物 、好ましくは、ヒトであり得る。
患者は、癌に罹患している。患者は、任意の化学療法薬により治療をすでに受けていてもよいし、または未治療であってもよい。
癌は、好ましくは、EGFRを介したシグナル伝達経路が関与する癌である。特に、癌は、例えば、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、前立腺癌、頭頸部癌、腎臓癌、膵臓癌、膀胱癌、または脳癌であり得る(Ciardello F et al. N Engl J Med. 2008 Mar 13;358(11):1160-74; Wheeler DL et al. Nat Rev Clin Oncol. 2010 September; 7(9): 493-507; Zeineldin R et al. J Oncol. 2010;2010:414676; Albitar L et al. Mol Cancer 2010;9:166; Leslie KK et al. Gynecol Oncol. 2012 Nov;127(2):345-50; Mimeault M et al. PLoS One.2012;7(2):e31919; Liebner DA et al. Ther Adv Endocrinol Metab. 2011 Oct;2(5): 173-95; Leboulleux S et al. Lancet Oncol. 2012 Sep;13(9):897-905; Pan J et al. Head Neck. 2012 Sep 13; Chan SL et al. Expert OpinTher Targets. 2012 Mar;16 Suppl 1 :S63-8; Chu H et al. Mutagenesis.2012 Oct 15; Li Y et al. Oncol Rep. 2010 Oct;24(4): 1019-28; Thomasson M et al. Br J Cancer 2003, 89:1285-1289; Thomasson M et al. BMC Res Notes.2012 May 3;5:216)。特定の実施態様では、腫瘍は固形組織腫瘍および/または事実上、上皮のものである。例えば、患者は、結腸直腸癌患者、Her2陽性またはHer2陰性(特に、トリプルネガティブ、すなわち、Her2陰性、エストロゲン受容体陰性およびプロゲステロン受容体陰性)乳癌患者、非小細胞肺癌(NSCLC)患者、頭頸部癌患者(特に、頭頸部扁平上皮癌患者)、膵臓癌患者、または子宮内膜癌患者であり得る。より詳しくは、患者は、結腸直腸癌患者、Her2陽性またはHer2陰性(特に、トリプルネガティブ)乳癌患者、肺癌(特に、NSCLC)患者、頭頸部癌患者(特に、頭頸部扁平上皮癌患者)、または膵臓癌患者であり得る。
好ましい実施態様では、癌は結腸直腸癌であり、さらに好ましくは、癌は転移性結腸直腸癌である。実際に、実施例1に示したデータは、DBNDD2またはEPB41L4B発現レベルが結腸直腸癌におけるEGFR阻害剤(特に、抗EGFRモノクローナル抗体、例えば、セツキシマブおよびパニツムマブ)治療に対する応答の予測因子として使用可能であることを明らかに示している。
EGFRシグナル伝達経路が関与することが知られている癌において得られたこれらの結果は、DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルが、肺癌、卵巣癌、子宮内膜、甲状腺癌、鼻咽頭癌、前立腺癌、頭頸部癌、腎臓癌、膵臓癌、膀胱癌、または脳癌などの、EGFRシグナル伝達経路が関与することが知られている他のいずれの癌においても、EGFR阻害剤(特に、抗EGFRモノクローナル抗体、例えば、セツキシマブおよびパニツムマブ)に対する応答の予測因子として使用可能であることを明らかに示唆している。
従って、別の好ましい実施態様では、癌はHer2陽性またはHer2陰性(特に、トリプルネガティブ)乳癌、好ましくは、Her2陰性(特に、トリプルネガティブ)乳癌である。
さらに別の好ましい実施態様では、癌は肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)である。
さらに別の好ましい実施態様では、癌は膵臓癌である。
この予測はEGFR阻害剤治療に関するものであるので、患者の腫瘍は好ましくはEGFR陽性である。
好ましくは、患者は、KRAS野生型腫瘍を有し、すなわち、患者の腫瘍のKRAS遺伝子は、コドン12、13(エキソン1)、または61(エキソン3)で変異していない。言い換えれば、KRAS遺伝子は、コドン12、13および61において野生型である。
野生型、すなわち、非変異型のコドン12、13(エキソン1)、および61(エキソン3)はそれぞれグリシン(Gly、コドン12)、グリシン(Gly、コドン13)、およびグルタミン(Gln、コドン61)に相当する。野生型参照KRASアミノ酸配列は、Genbank受託番号NP_004976.2(配列番号24)に見出すことができる。
特に、患者の腫瘍のKRAS遺伝子は、以下の突然変異のいずれをも示さない(Bos. Cancer Res 1989;49:4682-4689; Edkins et al. Cancer Biol Ther. 2006 August; 5(8): 928-932; Demiralay et al. Surgical Science, 2012, 3, 111-115):
Gly12Ser(GGT>AGT)
Gly12Arg(GGT>CGT)
Gly12Cys(GGT>TGT)
Gly12Asp(GGT>GAT)
Gly12Ala(GGT>GCT)
Gly12Val(GGT>GTT)
Gly13Arg(GGC>CGC)
Gly13Cys(GGC>TGC)
Gly13Asp(GGC>GAC)
Gly13Ala(GGC>GCC)
Gly13Val(GGC>GTC)
Gly12Ser(GGT>AGT)
Gly12Arg(GGT>CGT)
Gly12Cys(GGT>TGT)
Gly12Asp(GGT>GAT)
Gly12Ala(GGT>GCT)
Gly12Val(GGT>GTT)
Gly13Arg(GGC>CGC)
Gly13Cys(GGC>TGC)
Gly13Asp(GGC>GAC)
Gly13Ala(GGC>GCC)
Gly13Val(GGC>GTC)
好ましくは、患者の腫瘍のKRAS遺伝子はまた、以下の突然変異のいずれをも示さない(Demiralay et al. Surgical Science, 2012, 3, 111-115):
Gly12Phe(GGT>TTT)
Gly13Ser(GGC>AGC)
Gly12Phe(GGT>TTT)
Gly13Ser(GGC>AGC)
好ましくは、患者の腫瘍のKRAS遺伝子はまた、以下の突然変異のいずれをも示さない(Bos. Cancer Res 1989;49:4682-4689; Tarn et al. Clin Cancer Res 2006;12:1647-1653; Edkins et al. Cancer Biol Ther. 2006 August; 5(8): 928-932; Demiralay et al. Surgical Science, 2012, 3, 111-115):
Gln61His(CAA>CAC)
Gln61His(CAA>CAT)
Gln61Arg(CAA>CGA)
Gln61Leu(CAA>CTA)
Gln61Glu(CAA>GAA)
Gln61Lys(CAA>AAA)
Gln61Pro(CAA>CCA)
Gln61His(CAA>CAC)
Gln61His(CAA>CAT)
Gln61Arg(CAA>CGA)
Gln61Leu(CAA>CTA)
Gln61Glu(CAA>GAA)
Gln61Lys(CAA>AAA)
Gln61Pro(CAA>CCA)
患者のKRASの状態を知るには、当技術分野で公知のいずれの方法を用いてもよい。
例えば、腫瘍組織を顕微解剖し、パラフィン包埋組織ブロックからDNAを抽出する。KRAS遺伝子のコドン12、13、および61を包含する領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅する。突然変異の状態は、PCRプローブを用いた対立遺伝子識別法(Laurent-Puig P, et al, J Clin Oncol. 2009, 27(35):5924-30)によるか、またはパイロシーケンス法(Ogino S, et al. J Mol Diagn 2008;7:413-21)などの他の任意の方法により判定する。
「サンプル」とは、患者に由来するいずれの生体サンプルであってもよく、核酸を含有する。このようなサンプルの例としては、体液(血液、血漿、唾液、尿、精液を含む)、組織、細胞サンプル、器官、生検などが挙げられる。好ましくは、サンプルは腫瘍サンプル、好ましくは、腫瘍組織生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部である。サンプルは、従来技術に従って採取してよく、そのまま診断に用いてもよいし、または保存してもよい。腫瘍サンプルは新鮮物、冷凍物またはパラフィン包埋物であってもよい。通常、利用可能な腫瘍サンプルは冷凍物またはパラフィン包埋物であり、ほとんどの場合、パラフィン包埋物である。本発明者らは、冷凍およびパラフィン包埋両方の腫瘍サンプルが使用可能であることを示した。
「参照サンプル」とは、EGFR阻害剤治療に対して陽性または陰性の応答が知られている患者の腫瘍サンプル(特に、腫瘍生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部)を意味する。好ましくは、参照サンプルのプールは、少なくとも1人(好ましくは数人、より好ましくは少なくとも5人、より好ましくは少なくとも6人、少なくとも7人、少なくとも8人、少なくとも9人、少なくとも10人)の応答患者と、少なくとも1人(好ましくは数人、より好ましくは少なくとも6人、少なくとも7人、少なくとも8人、少なくとも9人、少なくとも10人)の非応答患者を含んでなる。応答者(「陽性」とも称される)および非応答者(「陰性」とも称される)参照サンプルの数が多いほど、本発明による予測方法の信頼性が良好となる。
本発明に関して、「応答する可能性が高い」または「応答者」である患者は、抗EGFR阻害剤による治療に応答し得る、すなわち、その患者の症状の少なくとも1つが緩和されると期待される、またはその疾患の進展が停止される、もしくは緩徐化される患者を意味する。RECIST判定基準(Eisenhauer et al, European Journal of Cancer, 2009, 45:228-247)による完全応答者、部分応答者、または安定患者は、本発明に関して「応答する可能性が高い」または「応答者」とみなされる。
固形腫瘍では、RECIST判定基準は、少なくとも1つの測定可能な病巣の存在に基づく国際標準である。「完全応答」は、総ての標的病巣の消失を意味し、「部分応答」は、標的病巣の最大直径の合計における30%の減少を意味し、「進行性疾患」は、標的病巣の最大直径の合計における20%の増大を意味し、「安定疾患」は、上記の判定基準を満たさない変化を意味する。
より好ましくは、「応答者」患者は、良好な無進行生存期間(PFS)を示すと予測され、すなわち、前記患者は疾患の症状の悪化なく、少なくとも25週間生存する可能性があり、かつ/またはこのような患者は良好な全生存期間(OS)を示し、すなわち、前記患者は少なくとも14か月生存する可能性がある。
「予測」または「予後」とは、患者がEGFR阻害剤による治療に応答する確率または尤度を意味する。
本発明によれば、EGFR阻害剤による阻害に対する腫瘍細胞増殖の感受性は、腫瘍細胞がhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bを発現するかどうかおよびそのレベルによって予測される。
用語「治療する」または「治療」とは、癌の進行を安定化させる、緩和する、治癒する、または軽減することを意味する。
「miRNA」または「マイクロRNA」は、DNAから転写されるがタンパク質には翻訳されない遺伝子(非コードRNA)によりコードされている約21〜24、好ましくは21〜23ヌクレオチド長の一本鎖分子であり、その代わりとして、それらはプリmiRNAとして知られる一次転写産物から、プレmiRNAと呼ばれる短いステム−ループ構造へ、そして最終的には機能的miRNAへとプロセシングする。成熟過程で、各プレmiRNAは高い相補性を有する2つの異なるフラグメントを生じ、一方はプリmiRNAをコードする遺伝子の5’アームに起源し、他方は3’アームに起源する。成熟miRNA分子は1以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子と部分的に相補的であり、それらの主要な機能は遺伝子発現をダウンレギュレートすることである。
miRNAには国際命名法があり(Ambros V et al, RNA 2003 9(3):277-279; Griffiths-Jones S. NAR 2004 32(データベース公開):D109-D111; Griffiths-Jones S et al. NAR 2006 34(データベース公開):D140-D144; Griffiths-Jones S et al. NAR 2008 36(データベース公開):D154-D158;およびKozomara A et al. NAR 2011 39(データベース公開):D152-D157)、http://www.mirbase.org/においてmiRBaseから入手可能である。各miRNAは、下記のように所定の形式で独自の名称が割り当てられる。
・成熟miRNAの場合には、sss−miR−X−Y、ここで、
・sssはmiRNAの種を示す3文字コードであり、「has」はヒトを表す。
・miRの大文字「R」は、成熟miRNAを表すことを示す。しかしながら、文献の著者によっては、成熟miRNAに「mir」とも誤用している場合がある。この場合には、「−Y」に存在により成熟miRNAを表すと認識することができる。
・Xは、特定の種におけるmiRNAの配列に割り当てられた独自の任意の数字であり、相同性の高いいくつかのmiRNAが知られている場合には、この後に1文字が続き得る。例えば、「20a」および「20b」は、相同性の高いmiRNAを表す。
・Yは、プレmiRNAの切断により得られた成熟miRNAがプリmRNAをコードする遺伝子の5’アームに相当するか(その場合、Yは「5p」)または3’アームに相当するか(その場合、Yは「3p」)を示す。miRNAのこれまでの国際命名法においては、「−Y」は存在しない。その後、プリmiRNAをコードする遺伝子の5’アームまたは3’アームのいずれかから得られた2つの成熟miRNAは、nのすぐ後に「*」の印があるかないかによって識別された。「*」の印があれば、その配列はあまり頻繁に検出されないmiRNAに相当することを示した。このような分類が変化を受けたことから、「3p」および「5p」コードを用いた新たな分類が実施された。
・sssはmiRNAの種を示す3文字コードであり、「has」はヒトを表す。
・miRの大文字「R」は、成熟miRNAを表すことを示す。しかしながら、文献の著者によっては、成熟miRNAに「mir」とも誤用している場合がある。この場合には、「−Y」に存在により成熟miRNAを表すと認識することができる。
・Xは、特定の種におけるmiRNAの配列に割り当てられた独自の任意の数字であり、相同性の高いいくつかのmiRNAが知られている場合には、この後に1文字が続き得る。例えば、「20a」および「20b」は、相同性の高いmiRNAを表す。
・Yは、プレmiRNAの切断により得られた成熟miRNAがプリmRNAをコードする遺伝子の5’アームに相当するか(その場合、Yは「5p」)または3’アームに相当するか(その場合、Yは「3p」)を示す。miRNAのこれまでの国際命名法においては、「−Y」は存在しない。その後、プリmiRNAをコードする遺伝子の5’アームまたは3’アームのいずれかから得られた2つの成熟miRNAは、nのすぐ後に「*」の印があるかないかによって識別された。「*」の印があれば、その配列はあまり頻繁に検出されないmiRNAに相当することを示した。このような分類が変化を受けたことから、「3p」および「5p」コードを用いた新たな分類が実施された。
・プリmiRNAの場合には、sss−mir−X、ここで、
・sssはmiRNAの種を示す3文字コードであり、「has」はヒトを表す。
・mirの小文字「r」は、成熟miRNAではなく(「−Y」がないことで確認される)プリmiRNAを表すことを示す。
・nは、特定の種におけるmiRNAの配列に割り当てられた独自の任意の数字であり、相同性の高いいくつかのmiRNAが知られている場合には、この後に1文字が続き得る。
・sssはmiRNAの種を示す3文字コードであり、「has」はヒトを表す。
・mirの小文字「r」は、成熟miRNAではなく(「−Y」がないことで確認される)プリmiRNAを表すことを示す。
・nは、特定の種におけるmiRNAの配列に割り当てられた独自の任意の数字であり、相同性の高いいくつかのmiRNAが知られている場合には、この後に1文字が続き得る。
各miRNAにはまた、その配列に受託番号が割り当てられる。
本発明で検出する2つの遺伝子(DBNDD2およびEPB41L4B)により標的とされるmiRNAは、hsa−miR−31−3p(旧称hsa−miR−31*)である。この名称において、「hsa」はヒトmiRNAに関するものであることを意味し、「miR」は成熟miRNAを意味し、「31」はこの特定のmiRNAに割り当てられた任意の数字を意味し、「3p」はプリmiRNAをコードする遺伝子の3’アームから得られた成熟miRNAを意味する。
hsa−miR−31−3pは、UGCUAUGCCAACAUAUUGCCAU(配列番号1)である
(http://www.mirbase.orgにおいて受託番号MIMAT0004504)。
(http://www.mirbase.orgにおいて受託番号MIMAT0004504)。
「DBNDD2」は、ヒトの20番染色体(20q13.12)に位置する、NCBI Entrez遺伝子データベースで「ディスビンディン(ディストロブレビン結合タンパク質1ドメイン含有2)(dysbindin (dystrobrevin binding protein 1) domain containing 2)」の公式記号(HUGO遺伝子命名法委員会(HGNC)により承認された公式の名称および記号)である。それはUniGeneデータベース受託番号Hs.730643に相当する。この遺伝子に関して用いられるさらなる記号としては、CK1BP(「カゼインキナーゼ−1結合タンパク質」(casein kinase-1 binding protein))、HSMNP1、RP3−453C12.9、およびC20orf35がある。DBNDD2は、「SCFアポトーシス応答タンパク質1」としても知られる。下表1に詳細に示すように、このタンパク質にはいくつかのmRNA変異体によりコードされている5つのアイソフォーム(a〜e)が知られている。
「EPB41L4B」は、ヒトの9番染色体(9q31−q32)に位置する、NCBI Entrez遺伝子データベースで「赤血球膜タンパク質バンド4.1ライク4Bの公式記号(erythrocyte membrane protein band 4.1 like 4B)」(HGNにより承認された公式の名称および記号)である。それはUniGeneデータベース受託番号Hs.591901に相当する。この遺伝子に関して用いられるさらなる記号としては、CG1およびEHM2(「Expressed in Highly Metastatic cells 2」)がある。EPB41L4Bはまた、「FERM含有タンパク質CG1」としても知られる。下表2に詳細に示すように、このタンパク質には2つのmRNA変異体によりコードされている2つのアイソフォーム(1および2)が知られている。
サンプルにおいてDBNDD2および/またはEPB41L4B発現レベルを検出する方法
hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルは、当業者に公知のいずれの技術によって決定してもよい。特に、各遺伝子発現レベルは、in vitroにおいて、患者のサンプルから始め、ゲノムおよび/または核酸および/またはタンパク質レベルで測定し得る。好ましい実施態様では、発現プロファイルは、in vitroで各遺伝子の核酸転写産物の量を測定することにより決定される。別の実施態様では、発現プロファイルは、in vitroで各遺伝子によって産生されるタンパク質の量を測定することにより決定される。
hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルは、当業者に公知のいずれの技術によって決定してもよい。特に、各遺伝子発現レベルは、in vitroにおいて、患者のサンプルから始め、ゲノムおよび/または核酸および/またはタンパク質レベルで測定し得る。好ましい実施態様では、発現プロファイルは、in vitroで各遺伝子の核酸転写産物の量を測定することにより決定される。別の実施態様では、発現プロファイルは、in vitroで各遺伝子によって産生されるタンパク質の量を測定することにより決定される。
このような測定は、in vitroにおいて、患者のサンプル、特に、腫瘍サンプルから始めて行い、必ずサンプルの変換を含む。実際に、サンプルの何らかのタイプの変換なしに行うことのできる特定の遺伝子発現レベルの測定はない。
ほとんどの技術が遺伝子DNA、転写産物またはタンパク質に特異的に結合する試薬の使用に頼るものであり、従って、検出試薬をさらに含む改変サンプルとなる。
加えて、ほとんど技術が特定の試薬と結合する前に患者のサンプルからのDNA、mRNAまたはタンパク質の何らかの予備抽出も含む。従って、特許請求する方法もまた、患者のサンプルからDNA、mRNAまたはタンパク質を抽出する予備工程を含んでなり得る。さらに、mRNAが抽出される場合、それらは一般に、mRNAよりも安定なcDNAに逆転写される。従って、特許請求する方法もまた、患者のサンプルから抽出したmRNAをcDNAに逆転写する工程を含んでなり得る。
質量分析による検出は、特定の試薬との予備結合を必ずしも含まない。しかしながら、それは抽出されたDNA、mRNAまたはタンパク質に費やされる時間の大部分である。備抽出工程無しでサンプルに直接行う場合であっても、それはレーザー光によるサンプルからの分子の多少の抽出を含み、次に、抽出された分子が分光計により分析される。
いずれにせよ、どの技術を用いる場合でも、遺伝子発現レベルの測定後のサンプルの状態は患者から採取した最初のサンプルに比べて変換されている。
核酸転写産物の量は、当業者に公知のいずれの技術によっても測定することができる。特に、測定は、抽出されたメッセンジャーRNA(mRNA)サンプルに対して直接、または抽出されたmRNAから当業者に周知の技術によって調製した逆転写相補的DNA(cDNA)に対して行ってよい。mRNAまたはcDNAサンプルから、核酸転写産物の量は、核酸マイクロアレイ、定量的PCR、次世代シーケンシングおよび標識プローブとのハイブリダイゼーションを含む、当業者に公知のいずれの技術を用いて測定してもよい。
特に、リアルタイム定量的RT−PCR(qRT−PCR)が使用可能である。いくつかの実施態様では、qRT−PCRは、RNA標的の検出および定量の両方に使用することができる(Bustin et al., 2005, Clin. Sci., 109:365-379)。qRT−PCRにより得られた定量結果は定性データよりも情報量が多い場合があり、アッセイの標準化および品質管理を簡単にすることができる。よって、いくつかの実施態様では、qRT−PCRに基づくアッセイが、細胞に基づくアッセイの際にhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルを測定するために有用であり得る。qRT−PCR法はまた、患者の療法のモニタリングにも有用であり得る。qRT−PCRは周知であり、当業者には容易に利用可能な技術であり、厳密な記載を必要としない。qRT−PCRに基づく方法の例は、例えば、米国特許第7,101,663号に見出すことができる。市販のqRT−PCRに基づく方法(例えばTaqman(登録商標)アレイ)が例えば使用可能であり、プライマーおよび/またはプローブの設計は以下の表1および2に開示されているDBNDD2および/またはEPB41L4Bの配列に基づいて容易になされる。
核酸アッセイまたはアレイもまた、in vitroで患者のサンプル中の遺伝子転写産物の量を測定することによりin vitroでサンプル中の遺伝子の発現レベルを評価するために使用可能である。いくつかの実施態様では、核酸マイクロアレイは、作製または購入可能である。アレイは一般に、固相支持体とその支持体に接触した少なくとも1つの核酸(cDNAまたはオリゴヌクレオチド)を含み、このオリゴヌクレオチドが遺伝子の少なくとも一部に対応する。サンプル中のhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの存在を判定するために、いずれの好適なアッセイプラットフォームも使用可能である。例えば、アッセイは膜、チップ、ディスク、テストストリップ、フィルター、ミクロスフェア、マルチウェルプレートなどの形態であり得る。アッセイ系は、遺伝子に対応する核酸(cDNAまたはオリゴヌクレオチド)が結合された固相支持体を備え得る。固相支持体は例えば、プラスチック、ケイ素、金属、樹脂またはガラスを含んでなり得る。アッセイ成分は、遺伝子を検出するためのキットとして一緒に調製および包装することができる。標的核酸サンプルの発現プロファイルを決定するために、前記サンプルを標識し、ハイブリダイゼーション条件でマイクロアレイと接触させると、マイクロアレイ表面に結合されているプローブ配列と相補的な標的核酸間で複合体の形成が起こる。次に、標識されたハイブリダイズ複合体の存在を検出する。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変形が当業者に利用可能である。
別の実施態様では、in vitroにおけるhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルの測定は、患者のサンプルから抽出された遺伝子の転写産物(mRNAまたはcDNA)のシーケンシングによって行ってもよい。
さらに別の実施態様では、in vitroにおけるhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルの測定は、患者のサンプルから抽出された総タンパク質中の遺伝子コードタンパク質の量を測定するためのタンパク質マイクロアレイによって行ってもよい。
患者の分類
DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルに基づく分類
hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現が高いほど、患者にとって良好である。従って、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルが高いほど、患者がEGFR阻害剤治療に応答する可能性が高い。一つの実施態様では、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bが対照値よりも高い場合、患者は「応答者」、すなわち、EGFR阻害剤による治療に応答する可能性が高いとみなされる。
DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルに基づく分類
hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現が高いほど、患者にとって良好である。従って、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルが高いほど、患者がEGFR阻害剤治療に応答する可能性が高い。一つの実施態様では、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2および/またはEPB41L4Bが対照値よりも高い場合、患者は「応答者」、すなわち、EGFR阻害剤による治療に応答する可能性が高いとみなされる。
このような対照値は、上記で定義したように、参照サンプルのプールに基づいて決定することができる。特に、図6は、参照サンプルのプールに基づき、DBNDD2およびEPB41L4B発現レベルの対照値(DBNDD2:EPB41L4B発現レベルの対数)を定義することができ、これによりEGFR阻害剤治療に対する応答または非応答を予測可能であることを明らかに示す。
しかしながら、好ましい実施態様では、この方法は、少なくとも1つのhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの発現レベルに基づく予後スコアまたは指数を決定することをさらに含んでなり、その予後スコアは、患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを示す。特に、前記予後スコアは、それが所定の閾値よりも高いか低いか(二分結果)によって、その患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを示し得る。別の実施態様では、EGFR阻害剤に対する応答または非応答の離散確率は、予後スコアから導くことができる。
患者がEGFR阻害剤治療に応答する確率は、EGFR阻害剤治療が患者に投与される場合に、この患者が病勢の進行を伴ってまたは伴わずに生存する確率と関係している。
結果として、予後スコアは、上記で定義したようにhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つの発現レベルと参照サンプルのプールの無進行生存率(PFS)または全生存率(OS)の間の相関の分析に基づいて決定することができる。従って、PFSまたはOSをhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つの発現レベルと相関させる関数であるPFSおよび/またはOSスコアは、EGFR阻害剤に対する応答の予測のための予後スコアとして使用することができる。好ましくは、病勢進行の不在はEGFR阻害剤治療に対する応答の明らかな指標となるので、PFSスコアが使用される。
本発明者らによって得られた実験データは、患者のEGFR阻害剤治療に応答する確率がDBNDD2およびEPB41L4Bの発現レベルの対数に直線的な負の相関があることを示す(図1、2および5参照)。好ましい実施態様では、前記予後スコアは、従って、下式で表される:
予後スコア=a*x+b、式中、xは、患者のサンプルで測定されたDBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルの対数(好ましくは、「log2」と表される2を底とする対数)であり、かつ、aおよびbは、上記で定義されたように、参照サンプルのプールに基づいて事前に決定されたパラメーターである。
予後スコア=a*x+b、式中、xは、患者のサンプルで測定されたDBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルの対数(好ましくは、「log2」と表される2を底とする対数)であり、かつ、aおよびbは、上記で定義されたように、参照サンプルのプールに基づいて事前に決定されたパラメーターである。
aが正/負であるかによって、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以上/以下であればEGFR阻害剤に応答する、その予後スコアが閾値cより小さければ/大きければEGFR阻害剤に応答しないと予測することができ、ここで、cの値も同じ参照サンプルプールに基づいて決定されたものであり、
aが正であるとき、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以上であればEGFR阻害剤に応答すると予測し、その患者の予後スコアが閾値cより小さければEGFR阻害剤に応答しないと予測することができ、
あるいは、aが負であるとき、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以下であればEGFR阻害剤に応答すると予測し、その患者の予後スコアが閾値cより大きければEGFR阻害剤に応答しないと予測することができる。
aが正であるとき、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以上であればEGFR阻害剤に応答すると予測し、その患者の予後スコアが閾値cより小さければEGFR阻害剤に応答しないと予測することができ、
あるいは、aが負であるとき、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以下であればEGFR阻害剤に応答すると予測し、その患者の予後スコアが閾値cより大きければEGFR阻害剤に応答しないと予測することができる。
別の実施態様では、EGFR阻害剤に対する応答または不応答の離散確率は、a*x+b予後スコアから導くことができる。予後スコアとEGFR阻害剤治療に対する応答の確率の間の厳密な相関は、同じ参照サンプルセットに基づいて決定することができる。aが正/負であるかによって、予後スコアが高い/低いほど、高いEGFR阻害剤治療に対する応答確率を示す:
aが正であれば、予後スコアが高いほどEGFR阻害剤治療に応答する確率が高く(すなわち、PFSスコアの場合には、疾患進行の確率が低く)、
あるいは、aが負であれば、予後スコアが低いほどEGFR阻害剤治療に応答する確率が高い(すなわち、PFSスコアの場合には、疾患進行の確率が低い)。
aが正であれば、予後スコアが高いほどEGFR阻害剤治療に応答する確率が高く(すなわち、PFSスコアの場合には、疾患進行の確率が低く)、
あるいは、aが負であれば、予後スコアが低いほどEGFR阻害剤治療に応答する確率が高い(すなわち、PFSスコアの場合には、疾患進行の確率が低い)。
癌を有する患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかというこの予測はまた、ノモグラムを使用して行うこともできる。ノモグラムでは、対象とするスコアの各変数に対して点数スケールが設定される。ある患者について、各変数の点数スケールから対応する点数を選択することにより、それぞれの変数に点数を割り当てる。離散変数の場合(例えば、遺伝子発現レベル)、ある変数に帰属する点数は、その変数の値と直線的に相関させる。二分変数の場合(とり得る値が2つだけ)、とり得る2つの値または変数のそれぞれに異なる2つの値が帰属する。次に、各変数に割り当てられた点数を加算することで対象スコアを算出する(合計点数)。このスコアの値に基づき、次に、総合スコアが閾値(二分スコア)よりも劣っているか優れているかによって良好な応答予後か不良な応答予後かを、または治療に対する応答もしくは非応答の確率を患者に与えることができる。
ノモグラムは主としていくつかの異なる変数を合わせて総合スコアとする際に有用であることは明らかである(DBNDD2とEPB41L4Bの発現レベル;DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルとhsa−miR−31−3p発現レベル;またはDBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルとBRAFの状態を合わせた総合スコアを使用する可能性については下記を参照)。しかしながら、ノモグラムはまた、DBNDD2またはEPB41L4B発現レベルなどの1つの変数だけに基づく予後スコアを表すために使用してもよい。この場合、合計点数は単一の変数に割り当てられた点数に相当する。
DBNDD2の対数(log2)発現レベルに基づき結腸直腸癌患者で進行リスク(すなわち、EGFR阻害剤に対する不応答リスク)の決定を可能とするノモグラムの一例を図3に示す(以下の実施例2も参照)。
よって、本発明に従い、癌を有する患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法の一実施態様では、その方法は、参照サンプルのプールに基づいて較正されたノモグラムに基づき不応答リスクを決定することをさらに含んでなる。ノモグラムはOSまたはPFSデータに基づいて較正することができる。OSに基づいて較正された場合、不応答リスクは死亡リスクに相当する。PFSに基づいて較正された場合、不応答リスクは疾病進行リスクに相当する(図3参照)。
上記で説明したように、DBNDD2およびEPB41L4Bはそれぞれhsa−miR−31−3pの標的遺伝子であること、およびEGFR阻害剤に対する応答に独立に有意に関連することが分かっているので、DBNDD2およびEPB41L4Bのうち1つだけの発現レベルを測定し、本発明による方法における予測のために使用してもよい。
しかしながら、本発明による方法はまた、患者のサンプルにおいてDBNDD2とEPB41L4Bの両方の発現レベルを決定し、DBNDD2とEPB41L4Bの発現の組合せに基づいて応答または不応答を予測することも含んでなり得る。DBNDD2とEPB41L4Bの発現レベルを組み合わせた総合スコアは、特に、参照サンプルのプールに基づいて作成することができる。ノモグラムもまたDBNDD2とEPB41L4Bの発現レベルを組み合わせて総合スコアを得るために使用可能であり、次にこの総合スコアを不応答リスク(すなわち、PFSスコアについては、疾患進行リスク)と相関させることができる。
DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルとEGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関があるさらなるパラメーターに基づく分類
EGFR阻害剤に対する応答は、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つの発現レベルのみに基づいて予測することができ(実施例1、2および3参照)、本発明による方法はまた、EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定することも含んでなり得る。
EGFR阻害剤に対する応答は、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つの発現レベルのみに基づいて予測することができ(実施例1、2および3参照)、本発明による方法はまた、EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定することも含んでなり得る。
この場合、DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルと他のパラメーターを組み合わせた総合スコアが特に、参照サンプルのプールに基づいて作成することができる。
点数スケールが総合スコアの各変数に対して設定されているノモグラムもまた、DBNDD2および/またはEPB41L4Bの発現レベルと他のパラメーターを組み合わせて総合スコアを得るために使用可能であり、次にこの総合スコアを不応答リスク(すなわち、PFSスコアについては、疾患進行リスク)と相関させることができる。ある患者について、各変数の点数スケールから対応する点数を選択することにより、それぞれの変数に点数を割り当てる。離散変数の場合(例えば、DBNDD2またはEPB41L4B発現レベルまたは年齢)、ある変数に帰属する点数は、その変数の値と直線的に相関させる。二分変数の場合(BRAF突然変異の状態または性別など、とり得る値が2つだけ)、とり得る2つの値または変数のそれぞれに異なる2つの値が帰属する。
次に、各変数に割り当てられた点数を加算することで総合スコアを算出する(合計点数)。この総合スコアの値に基づき、次に、総合スコアが閾値(二分スコア)よりも劣っているか優れているかによって良好な応答予後か不良な応答予後かを、または治療に対する応答もしくは非応答の確率を患者に与えることができる。
各変数の点数スケールは、それを上回る/下回ると応答予後が良好または不良であるという閾値、または総合スコアと応答もしくは非応答の確率との間の相関と同様に、参照サンプルの同じプールに基づいて決定することができる。
このようなEGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある他のパラメーターは特に以下のものから選択することができる:
・年齢;
・性別;
・DBNDD2およびEPB41L4Bの発現レベルを測定するために上記で開示した方法により、ゲノムレベルおよび/または核酸レベル(特に、各遺伝子の核酸転写産物の量を測定することによる)および/またはタンパク質レベルで測定され得る、hsa−miR−31−3pの発現レベル;および/または
・EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの突然変異の存在または不在。
・年齢;
・性別;
・DBNDD2およびEPB41L4Bの発現レベルを測定するために上記で開示した方法により、ゲノムレベルおよび/または核酸レベル(特に、各遺伝子の核酸転写産物の量を測定することによる)および/またはタンパク質レベルで測定され得る、hsa−miR−31−3pの発現レベル;および/または
・EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの突然変異の存在または不在。
このような突然変異は、当業者に公知のいずれの方法によって検出してもよく、特に下表3に記載のものを含む。
EGFR阻害剤
本発明は、1以上の上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に対する患者の応答性を、そのような薬剤による治療の前に予測することを可能とする。
本発明は、1以上の上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に対する患者の応答性を、そのような薬剤による治療の前に予測することを可能とする。
EGRF阻害剤はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であってよく、あるいはEGFR標的の細胞外ドメインを標的とするものであってもよい。特定の実施態様では、EGFR阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ、もしくはラパチニブ、またはEGFR細胞外ドメインを標的とする分子、例えば、セツキシマブまたはパニツムマブである。
好ましくは、EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体、好ましくは、モノクローナル抗体、特に、セツキシマブまたはパニツムマブである。
EGFR細胞外ドメインを標的とする分子(抗EGFRモノクローナル抗体、例えば、セツキシマブまたはパニツムマブを含む)は、主として結腸直腸癌の治療または乳癌治療に使用される。結果として、患者の癌が結腸直腸癌(特に、転移性結腸直腸癌)または乳癌であれば、本発明による方法は、EGFR細胞外ドメインを標的とする分子、特に、抗EGFRモノクローナル抗体、例えば、セツキシマブまたはパニツムマブに対する応答を予測するために使用可能であることが好ましい。
これに対して、チロシンキナーゼEGFR阻害剤は主として肺癌(特に、非小細胞肺癌、NSCLC)の治療に使用されるので、患者の癌が肺癌(特に、非小細胞肺癌、NSCLC)であれば、本発明による方法は、チロシンキナーゼEGFR阻害剤、例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブに対する応答を予測するために使用可能であることが好ましい。
膵臓癌または頭頸部癌(特に、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN))では、チロシンキナーゼEGFR阻害剤および抗EGFRモノクローナル抗体が療法として試験されているので、患者の癌が膵臓癌または頭頸部癌(特に、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN))であれば、本発明による方法は、チロシンキナーゼEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ、もしくはラパチニブ)または抗EGFRモノクローナル抗体(例えば、セツキシマブもしくはパニツムマブ)のいずれかに対する応答を予測することが可能である。
セツキシマブおよびパニツムマブは、現在、臨床で主として使用されている抗EGFRモノクローナル抗体である。しかしながら、ニモツズマブ(TheraCIM−h−R3)、マツズマブ(EMD72000)、およびザルツムマブ(HuMax−EGFr)などのさらなる抗EGFRモノクローナル抗体が開発中である。本発明による方法はまた、特に、患者が結腸直腸癌(特に、転移性結腸直腸癌)、乳癌、膵臓癌または頭頸部癌(特に、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN))に罹患している場合には、これらの抗EGFRモノクローナル抗体またはさらに開発され得るであろう他の任意の抗EGFRモノクローナル抗体(フラグメントを含む)に対する応答を予測するために使用可能である。
同様に、エルロチニブ、ゲフィチニブ、およびラパチニブは、現在、臨床で主として使用されているチロシンキナーゼEGFR阻害剤である。しかしながら、カネルチニブ(CI−1033)、ネラチニブ(HKI−272)、アファチニブ(BIBW2992)、ダコミチニブ(PF299804,PF−00299804)、TAK−285、AST−1306、ARRY334543、AG−1478(チルホスチンAG−1478)、AV−412、OSI−420(デスメチルエルロチニブ)、AZD8931、AEE788(NVP−AEE788)、ペリチニブ(EKB−569)、CUDC−101、AG490、PD153035HCl、XL647、およびBMS−599626(AC480)などのさらなるチロシンキナーゼEGFR阻害剤が開発中である。本発明による方法はまた、特に、患者が肺癌(特に、非小細胞肺癌、NSCLC)、膵臓癌、または頭頸部癌(特に、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN))に罹患している場合には、これらのチロシンキナーゼEGFR阻害剤またはさらに開発され得るであろう他の任意のチロシンキナーゼEGFR阻害剤に対する応答を予測するために使用可能である。
キット
本発明はまた、癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定するためのキットであって、
a)前記患者のサンプル(好ましくは、腫瘍生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部などの腫瘍サンプル)においてhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定するための試薬(ここで、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子はDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される)、および
b)EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定するための試薬(このような試薬は特に、
i)前記患者のサンプル(好ましくは、腫瘍生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部などの腫瘍サンプル)において、EGFR阻害剤と正または負の相関がある少なくとも1つのmiRNA、特に、hsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAまたはhsa−miR−31−5p(配列番号34)miRNAの発現レベルを決定するための試薬、および/または
ii)上記表3に記載されたものなど、EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの突然変異を検出するため
の試薬を含み得る)
を含んでなる、またはからなるキットに関する。
本発明はまた、癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定するためのキットであって、
a)前記患者のサンプル(好ましくは、腫瘍生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部などの腫瘍サンプル)においてhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定するための試薬(ここで、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子はDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される)、および
b)EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定するための試薬(このような試薬は特に、
i)前記患者のサンプル(好ましくは、腫瘍生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部などの腫瘍サンプル)において、EGFR阻害剤と正または負の相関がある少なくとも1つのmiRNA、特に、hsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAまたはhsa−miR−31−5p(配列番号34)miRNAの発現レベルを決定するための試薬、および/または
ii)上記表3に記載されたものなど、EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの突然変異を検出するため
の試薬を含み得る)
を含んでなる、またはからなるキットに関する。
前記患者のサンプルにおいて、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つ、またはEGFR阻害剤、特に、hsa−miR−31−3pそれ自体もしくはhsa−miR−31−5pに対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを決定するための試薬は、特に、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つに特異的なプライマー対(フォワードおよびリバースプライマー)および/もしくはプローブ、またはhsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つに特異的な配列を含んでなるマイクロアレイを含み得る。プライマーおよび/またはプローブの設計は、当業者ならば、上記の表1および2に開示されているDBNDD2および/またはEPB41L4Bの配列に基づいて容易に行うことができる。
EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの突然変異を検出するための試薬としては、シーケンシング前に対象遺伝子の全体もしくは一部を増幅するための少なくとも1つのプライマー対、または例えば、ABI 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems、フォスターシティ、CA)での対立遺伝子識別アッセイにおいて使用するための5’末端がリポーター色素で標識された特異的プローブのセット(BRAF突然変異V600の検出に関しては、Laurent-Puig P, et al, J ClinOncol. 2009, 27(35):5924-30およびLievre et al. J ClinOncol. 2008 Jan 20;26(3):374-9を参照)を含み得る。
本発明のキットは、hsa−miR−31−3p標的遺伝子DBNDD2およびEPB41L4Bの少なくとも1つの発現レベルおよび他の供試パラメーターに基づいて、患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定するための説明書をさらに含んでなり得る。特に、総合スコアおよび総合スコア(合計点数)と予測(応答/非応答または応答もしくは非応答の確率)との間の相関に含まれる総ての変数の点数スケールを含んだノモグラムが含まれてよい。
薬物、治療的使用および治療方法
本発明の方法は、EGFR阻害剤に関して報告されている臨床応答率に見合う率でEGFR阻害剤に対する患者の応答性を予測する。
本発明の方法は、EGFR阻害剤に関して報告されている臨床応答率に見合う率でEGFR阻害剤に対する患者の応答性を予測する。
よって、癌を有する患者を治療するための方法がさらに提供され、その方法は、患者に少なくとも1種類のEGFR阻害剤を投与することを含んでなり、この場合、前記患者は上記のような方法によって「応答者」または「応答する可能性が高い」と予測(または分類)されている。
特に、本発明は、癌に罹患している患者を治療するための方法に関し、その方法は、(i)本発明による方法によって、患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定すること、および(ii)前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いと決定された場合に、前記患者にEGFR阻害剤を投与することを含んでなる。
本方法は、患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が低いと決定された場合に、前記患者に別の抗癌治療を投与する工程(iii)をさらに含んでなり得る。このような別の抗癌治療は具体的な癌およびそれまでに試されている治療にもよるが、特に、放射線療法、他の化学療法分子、または他の抗原に対するモノクローナル抗体(抗Her2、抗VEGF、抗EPCAM、抗CTLA4など)などの他の生物工学製品から選択されてよい。
特に、結腸直腸癌の場合、患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が低いと決定された場合には、工程(iii)で投与される別の抗癌治療は、
・VEGF阻害剤、特に、抗VEGFモノクローナル抗体(例えば、ベバシズマブ)、有利には、FOLFOX(ロイコボリン(フォリン酸)、5−フルオロウラシル(5−FU)、およびオキサリプラチンの合剤)またはFOLFIRI(ロイコボリン(フォリン酸)、5−フルオロウラシル(5−FU)、およびイリノテカンの合剤)化学療法との併用から選択してよく、
・あるいは、患者がすでにVEGF阻害剤により、場合により、FOLFOXまたはFOLFIRI化学療法と併用して上手く治療できなかった場合には、5−FUとともに、場合により、マイトマイシンBも併用して投与することができる。特定の抗腫瘍薬投与計画なしで生活の質を最大化することを意図して投与される治療と定義されるベストサポーティブケア(すなわち、抗癌治療ではない)を患者にさらに投与してもよい。
・VEGF阻害剤、特に、抗VEGFモノクローナル抗体(例えば、ベバシズマブ)、有利には、FOLFOX(ロイコボリン(フォリン酸)、5−フルオロウラシル(5−FU)、およびオキサリプラチンの合剤)またはFOLFIRI(ロイコボリン(フォリン酸)、5−フルオロウラシル(5−FU)、およびイリノテカンの合剤)化学療法との併用から選択してよく、
・あるいは、患者がすでにVEGF阻害剤により、場合により、FOLFOXまたはFOLFIRI化学療法と併用して上手く治療できなかった場合には、5−FUとともに、場合により、マイトマイシンBも併用して投与することができる。特定の抗腫瘍薬投与計画なしで生活の質を最大化することを意図して投与される治療と定義されるベストサポーティブケア(すなわち、抗癌治療ではない)を患者にさらに投与してもよい。
本発明のもう1つの目的は、上記で定義した方法によって患者が応答する可能性が高いと分類された場合に、癌に罹患している患者の治療に使用するためのEGFR阻害剤である。本発明はまた、癌に罹患している患者の治療に使用するためのEGFR阻害剤に関し、前記治療は、上記で定義した方法によって前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測する予備工程を含んでなり、前記EGFR阻害剤は、上記で定義した方法によって前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いと予測された場合にのみ患者に投与される。前記患者は、結腸直腸癌、より詳しくは、転移性結腸直腸癌患者であり得る。あるいは、前記患者は、乳癌、特に、トリプルネガティブ乳癌患者であり得る。あるいは、前記患者は、肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)患者であり得る。あるいは、前記患者は、頭頸部癌、特に、頭頸部扁平上皮癌患者であり得る。あるいは、前記患者は、膵臓癌患者であり得る。本発明はまた、上記のような本発明の方法によって「応答者」と分類された患者における癌の治療に使用することを意図した薬剤の製造のためのEGFR阻害剤の使用に関する。
好ましい実施態様では、EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体、好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブである。あるいは、EGFR阻害剤は、チロシンキナーゼEGFR阻害剤、特に、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブであり得る。
好ましい実施態様では、
・患者は結腸直腸癌、特に、転移性結腸直腸癌に罹患しており、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体、好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブであり;
・患者は乳癌、特に、トリプルネガティブ乳癌に罹患しており、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体、好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブであり;
・患者は肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、EGFR阻害剤はチロシンキナーゼEGFR阻害剤、特に、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブであり;
・患者は頭頸部癌、特に、頭頸部扁平上皮癌、または膵臓癌に罹患しており、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体(好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブ)またはチロシンキナーゼEGFR阻害剤(特に、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブ)である。
・患者は結腸直腸癌、特に、転移性結腸直腸癌に罹患しており、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体、好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブであり;
・患者は乳癌、特に、トリプルネガティブ乳癌に罹患しており、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体、好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブであり;
・患者は肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、EGFR阻害剤はチロシンキナーゼEGFR阻害剤、特に、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブであり;
・患者は頭頸部癌、特に、頭頸部扁平上皮癌、または膵臓癌に罹患しており、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体(好ましくは、セツキシマブまたはパニツムマブ)またはチロシンキナーゼEGFR阻害剤(特に、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブ)である。
実施例および図面は本発明を例示するものであり、その範囲を限定しない。
実施例1:DBNDD2およびEPB41L4Bはhsa−miR−31−3pの標的であり、EGFR阻害剤に対する応答を独立に予測する
患者および方法
患者
患者セットは、男性14名と女性6名の20名のmCRC(転移性結腸直腸癌)患者から構成された。年齢の中央値は66.49±11.9歳であった。全患者がイリノテカンとセツキシマブの組合せを受容した。セツキシマブの導入前の化学療法系統の数を記録した。進行までの経過観察の中央値は20週であり、全生存期間の中央値は10か月であった。総ての腫瘍サンプルは切除片に由来し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した(FFPE)。
患者および方法
患者
患者セットは、男性14名と女性6名の20名のmCRC(転移性結腸直腸癌)患者から構成された。年齢の中央値は66.49±11.9歳であった。全患者がイリノテカンとセツキシマブの組合せを受容した。セツキシマブの導入前の化学療法系統の数を記録した。進行までの経過観察の中央値は20週であり、全生存期間の中央値は10か月であった。総ての腫瘍サンプルは切除片に由来し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した(FFPE)。
細胞培養およびトランスフェクション
本発明者らは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、マナサス、CA)からhsa−miR−31−3p発現の弱い3つの結腸直腸腺癌細胞株:HTB−37、CCL−222およびCCL−220−1を選択した。HTB−37細胞は、安定なグルタミンを20%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンとともに含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)の培養培地で維持した。CCL−222細胞およびCCL−220−1細胞は、安定なグルタミンを10%ウシ胎仔血清とともに含むRPMI 1640培養培地で維持した。これらの細胞を温度37℃、5%CO2でインキュベートした。
本発明者らは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、マナサス、CA)からhsa−miR−31−3p発現の弱い3つの結腸直腸腺癌細胞株:HTB−37、CCL−222およびCCL−220−1を選択した。HTB−37細胞は、安定なグルタミンを20%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンとともに含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)の培養培地で維持した。CCL−222細胞およびCCL−220−1細胞は、安定なグルタミンを10%ウシ胎仔血清とともに含むRPMI 1640培養培地で維持した。これらの細胞を温度37℃、5%CO2でインキュベートした。
総ての細胞をmiRVana miRNAミミック陰性対照またはhsa−miR−31−3p miRVana miRNAミミック(Ambion)でトランスフェクトした。CCL−222については、トランスフェクションは、2μlのリポフェクタミンRNAiMaxを用い、製造者のプロトコールに従い、リバーストランスフェクションプロトコールで、12ウェルプレートにて25pmolのMiRNAミミックおよび60000細胞を用いて行った。CCL−220−1およびHBT27については、トランスフェクションは、4μlのRiboCellin(BioCellChallenge、トゥーロン、フランス)を製造者のプロトコールに従って用い、12ウェルプレートにて12.5pmolのmiRNAミミックおよび100000細胞を用いて行った。総ての細胞株について、トランスフェクション24時間後に細胞を採取し、miRNeasy抽出キット(Qiagen)で全RNAの抽出を行うまでにQiazolを用いてRNAを保護した。トランスフェクションの有効性を評価するために、下記のようにmiRNA hsa−miR−31−3p発現レベルの特異的定量を行った。
遺伝子発現の測定
遺伝子発現マイクロアレイは、AffymetrixHuman Gene 1.0を用いて行った。50ngの全RNAをOvation PicoSL WTA System V2(Nugen、サンカルロス、CA)に従って逆転写した。次に、SPIA技術に基づいて増幅を行った。Nugenプロトコールに従って精製した後、2.5μgの一本鎖DNAを断片化およびEncore Biotin Module(Nugen)を用いたビオチン標識のために使用した。Bioanalyzer 2100を用いて断片化の制御を行った後、次に、cDNAを45℃で17時間、GeneChip(登録商標)human Gene 1.0 ST(Affymetrix)とハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、チップをフルイディックステーションFS450にて特定のプロトコール(Affymetrix)に従って洗浄し、GCS3000 7Gを用いてスキャンした。次に、画像をExpression Consoleソフトウエア(Affymetrix)で解析して生データ(CELファイル)および品質管理のためのメトリクスを得た。
遺伝子発現マイクロアレイは、AffymetrixHuman Gene 1.0を用いて行った。50ngの全RNAをOvation PicoSL WTA System V2(Nugen、サンカルロス、CA)に従って逆転写した。次に、SPIA技術に基づいて増幅を行った。Nugenプロトコールに従って精製した後、2.5μgの一本鎖DNAを断片化およびEncore Biotin Module(Nugen)を用いたビオチン標識のために使用した。Bioanalyzer 2100を用いて断片化の制御を行った後、次に、cDNAを45℃で17時間、GeneChip(登録商標)human Gene 1.0 ST(Affymetrix)とハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、チップをフルイディックステーションFS450にて特定のプロトコール(Affymetrix)に従って洗浄し、GCS3000 7Gを用いてスキャンした。次に、画像をExpression Consoleソフトウエア(Affymetrix)で解析して生データ(CELファイル)および品質管理のためのメトリクスを得た。
細胞株およびFFPE患者サンプルでの標的発現のqRT−PCRバリデーションは、FFPEサンプルでは20ngの全RNAまたは50ngの全RNA細胞培養サンプルに対し、ABI7900HTリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)を用いて行った。総ての反応を3反復で行った。発現レベルは、ΔΔCt方法によってRNA18SおよびGAPDHレベルに対して正規化した。
in silico分析
本発明者らは、6つの個々の予測データベース(PITA、picTar 5−way、Targetscan、microRNA.org、MicroCosmおよびmiRDB)からの最新のmicroRNA標的予測を統合したデータポータルを開発した。このポータルは、各マイクロRNA/標的の関係を予測するマイクロRNA予測データベースの数と個々の予測データベースからの各miRNAの予測の順位を考慮して、候補遺伝子のリストによって共標的される可能性のあるマイクロRNAを決定することを可能とする。このデータベースは、報告した分析を行うために2012年11月に更新したものである。
本発明者らは、6つの個々の予測データベース(PITA、picTar 5−way、Targetscan、microRNA.org、MicroCosmおよびmiRDB)からの最新のmicroRNA標的予測を統合したデータポータルを開発した。このポータルは、各マイクロRNA/標的の関係を予測するマイクロRNA予測データベースの数と個々の予測データベースからの各miRNAの予測の順位を考慮して、候補遺伝子のリストによって共標的される可能性のあるマイクロRNAを決定することを可能とする。このデータベースは、報告した分析を行うために2012年11月に更新したものである。
統計分析
生存の統計分析は、Rパッケージ‘survival’および‘rms’を用いて行った。単変量および多変量解析はコックス比例回帰ハザードモデルを用い、ハザード比(HR)を生成した。ノモグラムはコックス比例回帰ハザードモデルに基づいて開発されたものであり、無進行生存の確率を予測する。
生存の統計分析は、Rパッケージ‘survival’および‘rms’を用いて行った。単変量および多変量解析はコックス比例回帰ハザードモデルを用い、ハザード比(HR)を生成した。ノモグラムはコックス比例回帰ハザードモデルに基づいて開発されたものであり、無進行生存の確率を予測する。
偽陽性率(FDR)補正p値は、多重検定補正のためのBenjaminiおよびHochberg法を用いて算出した。cor.test関数を用い、発現値間のピアソン相関を適合するp値とともに算出した。統計的有意性は、総ての解析でp<0.05で設定した。
結果
hsa−miR−31−3p発現の弱い3つのCRC細胞株をhsa−miR−31−3pミミックまたはミミック対照でトランスフェクトした。トランスフェクションの有効性は、死亡または増殖欠陥なく、hsa−miR−31−3pレベルの1500倍の平均上昇により証明した。トランスフェクト細胞の発現プロファイル解析により、本発明者らは、下表4に記載の通り、hsa−miR−31−3pにより有意にダウンレギュレーションを受けた47の遺伝子(fc<0.77、p<0.05)と有意にアップレギュレーションを受けた27の遺伝子(fc<1.3、p<0.05)の同定が可能であった。
hsa−miR−31−3p発現の弱い3つのCRC細胞株をhsa−miR−31−3pミミックまたはミミック対照でトランスフェクトした。トランスフェクションの有効性は、死亡または増殖欠陥なく、hsa−miR−31−3pレベルの1500倍の平均上昇により証明した。トランスフェクト細胞の発現プロファイル解析により、本発明者らは、下表4に記載の通り、hsa−miR−31−3pにより有意にダウンレギュレーションを受けた47の遺伝子(fc<0.77、p<0.05)と有意にアップレギュレーションを受けた27の遺伝子(fc<1.3、p<0.05)の同定が可能であった。
マイクロRNAの役割はその転写産物標的の分解を含むので、6つのウェブで利用可能なものからの情報を含むデータベースが54のダウンレギュレーションを受けた遺伝子をhsa−miR−31−3p推定標的として予測するかどうか検討した。このデータベースはmiRNA名または遺伝子名のいずれかをクエリーとし得る。miRNA名をクエリーとする場合、データベースは、データベースに含まれる構造データおよび潜在的実験データに基づき、それらの遺伝子がクエリーmiRNAの真の標的である確率の序列によって順位付けされた(最も可能性が高いから可能性が低いまで)候補標的遺伝子の一覧を答える。これに対して、遺伝子名をクエリーとする場合には、データベースは、データベースに含まれる構造データおよび潜在的実験データに基づき、それらのmiRNAがクエリー遺伝子の真の標的である確率の序列によって順位付けされた(最も可能性が高いから可能性が低いまで)miRNA候補の一覧を答える。このデータベースはhsa−miR−31−3p名とhsa−miR−31−3pを過剰発現するCRC細胞株でダウンレギュレーションを受けていることが判明した遺伝子の名称をクエリーとした(47遺伝子、表4参照)。
下表5は、has−miR−31−3pの推定直接標的として同定された、DBNDD2およびEPB41L4Bを含む表4のダウンレギュレーション遺伝子を示す。それはまた、データベースが遺伝子名を用いて照会された場合にはhsa−miR−31−3pの順位を示し、データベースがhsa−miR−31−3p名を用いて照会された場合には、遺伝子の順位を示す。
47のダウンレギュレーションを受けた遺伝子のうち、25がhsa−miR−31−3pの推定直接標的であると予測され、この予測データベースで上位を示した。この数および遺伝子の順位は有意である(並べ替え検定による両検定でP<0.0001)。予想されたように、miR−31−3pでトランスフェクトされた細胞において27のアップレギュレーションを受けた遺伝子のうち1つを除いて、hsa−miR−31−3pの標的であると予測されたものは無く、唯一予測されたものも最低位の標的順位であった。
qRT−PCRで25の推定直接標的遺伝子と27の間接標的遺伝子のバリデーションを行ったところ、これらの47遺伝子のうち45が、アレイで得られたレベルに匹敵する発現レベルを示した。
最後に、これらの遺伝子の発現を患者のFFPE腫瘍サンプルで分析したところ、それらのうち2つがhsa−miR−31−3p発現レベルとの有意な負の相関を示した:DBNDD2およびEPB41L4B(図1Aおよび1B参照)。
加えて、ノンパラメトリック層別解析を用い、これら2つの遺伝子は無進行生存期間に関連することが判明した(DBNDD2ではp=0.004、EPB41L4Bではp=0.025)。これらの結果を考え合わせると、DBNDD2およびEPB41L4Bの発現は不良または良好な予後を有するmCRC患者間、すなわち、不応答と応答mCRC患者の間を識別できたことが示唆される。
実施例2:EGFR阻害剤に対する応答を予測するためのDBNDD2およびEPB41L4B発現を用いるツールの作出
患者および方法
患者
患者のセットは、男性13名と女性7名の20名のmCRC患者から構成された。年齢の中央値は67±11.2歳であった。総てが登録時に転移性疾患を有していた。これらの全患者は、KRAS野生型転移性結腸癌を発症していた。全患者がイリノテカンおよびオキサリプラチンと組み合わせた5−フルオロウラシルに基づく治療計画に不応であると見られた。これらの患者に抗EGFRに基づく化学療法を施し、8名の患者はパニツムマブ、10名の患者はセツキシマブ、2名の患者はパニツムマブとセツキシマブの組合せを受容した。セツキシマブおよびパニツムマブの導入前の化学療法系統の数を記録した。進行までの経過観察の中央値は21週であり、全生存期間の中央値は8.9か月であった。
患者および方法
患者
患者のセットは、男性13名と女性7名の20名のmCRC患者から構成された。年齢の中央値は67±11.2歳であった。総てが登録時に転移性疾患を有していた。これらの全患者は、KRAS野生型転移性結腸癌を発症していた。全患者がイリノテカンおよびオキサリプラチンと組み合わせた5−フルオロウラシルに基づく治療計画に不応であると見られた。これらの患者に抗EGFRに基づく化学療法を施し、8名の患者はパニツムマブ、10名の患者はセツキシマブ、2名の患者はパニツムマブとセツキシマブの組合せを受容した。セツキシマブおよびパニツムマブの導入前の化学療法系統の数を記録した。進行までの経過観察の中央値は21週であり、全生存期間の中央値は8.9か月であった。
遺伝子発現の測定
FFPE患者サンプルに対するDBNDD2およびEPB41L4B発現のqRT−PCRを、20ngの全RNAについて、ABI7900HTリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)を用いて行った。総ての反応を3反復で行った。発現レベルは、ΔΔCt方法によってGAPDHレベルに対して正規化した。
FFPE患者サンプルに対するDBNDD2およびEPB41L4B発現のqRT−PCRを、20ngの全RNAについて、ABI7900HTリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)を用いて行った。総ての反応を3反復で行った。発現レベルは、ΔΔCt方法によってGAPDHレベルに対して正規化した。
統計分析
生存の統計分析は、Rパッケージ‘survival’および‘rms’を用いて行った。単変量および多変量解析はコックス比例回帰ハザードモデルを用い、ハザード比(HR)を生成した。ノモグラムはコックス比例回帰ハザードモデルに基づいて開発されたものであり、無進行生存の確率を予測する。
生存の統計分析は、Rパッケージ‘survival’および‘rms’を用いて行った。単変量および多変量解析はコックス比例回帰ハザードモデルを用い、ハザード比(HR)を生成した。ノモグラムはコックス比例回帰ハザードモデルに基づいて開発されたものであり、無進行生存の確率を予測する。
遺伝子およびmiRNA発現値比較分析は、ノンパラメトリック検定(クラスカル・ウォリス検定)を、pRを用いたペアワイズウィルコクソン検定とともに用いて行った。
cor.test関数を用い、発現値間のピアソン相関を適合するp値とともに算出した。統計的有意性は、総ての解析でp<0.05で設定した。
結果
DBNDD2およびEPB41L4Bの発現を腫瘍サンプルで分析した。統計分析は、hsa−miR−31−3p発現レベルとの有意な負の相関を示した:(DBNDD2に関して図2参照)。加えて、ノンパラメトリック層別解析を用い、これら2つの遺伝子は無進行生存期間に関連することが判明した(DBNDD2ではp=0.025)。これらの結果に基づき、抗EGFRで処置されたmCRC患者の応答を予測するためツールを得るために、共変量としての多変量コックス比例ハザードモデルの状態と遺伝子発現のlog2を用いてPFSに基づくノモグラムを構築したところ、進行リスク(すなわち、不応答リスク、図3および4参照)を予測することが可能であった。
DBNDD2およびEPB41L4Bの発現を腫瘍サンプルで分析した。統計分析は、hsa−miR−31−3p発現レベルとの有意な負の相関を示した:(DBNDD2に関して図2参照)。加えて、ノンパラメトリック層別解析を用い、これら2つの遺伝子は無進行生存期間に関連することが判明した(DBNDD2ではp=0.025)。これらの結果に基づき、抗EGFRで処置されたmCRC患者の応答を予測するためツールを得るために、共変量としての多変量コックス比例ハザードモデルの状態と遺伝子発現のlog2を用いてPFSに基づくノモグラムを構築したところ、進行リスク(すなわち、不応答リスク、図3および4参照)を予測することが可能であった。
実施例3:新しい独立したコホートにおけるEGFR阻害剤に対するDBNDD2およびEPB41L4Bの予測値の再現
患者および方法
患者
患者のセットは、男性27名と女性15名の42名のmCRC(転移性結腸直腸癌)患者から構成された。年齢の中央値は59±12.1歳であった。総てが登録時に転移性疾患を有していた。全患者が、オキサリプラチンおよびイリノテカン化学療法に基づく治療計画下での進行の後、イリノテカンおよびパニツムマブの組合せにより第3系統の治療で処置された。進行までの経過観察の中央値は23週であり、全生存期間の中央値は9.6か月であった。26サンプルがFFPEで、16サンプルが冷凍組織で入手できた。
患者および方法
患者
患者のセットは、男性27名と女性15名の42名のmCRC(転移性結腸直腸癌)患者から構成された。年齢の中央値は59±12.1歳であった。総てが登録時に転移性疾患を有していた。全患者が、オキサリプラチンおよびイリノテカン化学療法に基づく治療計画下での進行の後、イリノテカンおよびパニツムマブの組合せにより第3系統の治療で処置された。進行までの経過観察の中央値は23週であり、全生存期間の中央値は9.6か月であった。26サンプルがFFPEで、16サンプルが冷凍組織で入手できた。
遺伝子発現の測定
冷凍またはFFPE患者サンプルに対する標的発現のqRT−PCRバリデーションを、20ngの全RNAについて、ABI7900HTリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)を用いて行った。総ての反応を3反復で行った。発現レベルは、ΔΔCt方法によってRNA18SまたはGAPDHレベルに対して正規化した。
冷凍またはFFPE患者サンプルに対する標的発現のqRT−PCRバリデーションを、20ngの全RNAについて、ABI7900HTリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)を用いて行った。総ての反応を3反復で行った。発現レベルは、ΔΔCt方法によってRNA18SまたはGAPDHレベルに対して正規化した。
統計分析
生存の統計分析は、Rパッケージ‘survival’および‘rms’を用いて行った。単変量および多変量解析はコックス比例回帰ハザードモデルを用いて生成した。遺伝子およびmiRNA発現値比較分析は、ノンパラメトリック検定(クラスカル・ウォリス検定)を、pRを用いたペアワイズウィルコクソン検定とともに用いて行った。
生存の統計分析は、Rパッケージ‘survival’および‘rms’を用いて行った。単変量および多変量解析はコックス比例回帰ハザードモデルを用いて生成した。遺伝子およびmiRNA発現値比較分析は、ノンパラメトリック検定(クラスカル・ウォリス検定)を、pRを用いたペアワイズウィルコクソン検定とともに用いて行った。
統計的有意性は、総ての分析についてp<0.05で設定した。
結果
DBNDD2およびEPB41L4Bの発現を患者腫瘍FFPEサンプルで分析した。それらはhsa−miR−31−3p発現レベルとの有意な負の相関を示した:(図5Aおよび5B参照)。これら2つの遺伝子の発現と特許出願PCT/EP2012/073535に記載の通りにhsa−miR−31−3pの発現レベルに基づいて算出された応答/不応答の予測の間に相関が見られた(図6参照)。
DBNDD2およびEPB41L4Bの発現を患者腫瘍FFPEサンプルで分析した。それらはhsa−miR−31−3p発現レベルとの有意な負の相関を示した:(図5Aおよび5B参照)。これら2つの遺伝子の発現と特許出願PCT/EP2012/073535に記載の通りにhsa−miR−31−3pの発現レベルに基づいて算出された応答/不応答の予測の間に相関が見られた(図6参照)。
コックスモデルを用い、これら2つの遺伝子は無進行生存期間と関連することが見出された(GAPDH正規化を用いたDBNDD2でp=0.004、RNA 18S正規化を用いたEPB41L4Bでp=0.027)。
これらの結果から、DBNDD2およびEPB41L4Bの発現は不良または良好な予後を有するmCRC患者、すなわち、不応答と応答mCRC患者の間を識別できたことが確認される。
参照文献
Claims (19)
- 癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するためのin vitro法であって、前記患者の腫瘍サンプルにおけるhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなり、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子がDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される、方法。
- 前記患者がKRAS野生型癌を有する、請求項1に記載の方法。
- 前記患者が、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、前立腺癌、頭頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、膀胱癌および脳癌から選択される癌に罹患している、請求項1または2に記載の方法。
- 前記癌が結腸直腸癌、特に、転移性結腸直腸癌である、請求項3に記載の方法。
- 前記EGFR阻害剤が抗EGFR抗体、特に、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記サンプルが腫瘍組織生検または腫瘍外科切除片の全体もしくは一部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- hsa−miR−31−3pの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルが、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子により産生される転写産物の量をin vitroで、好ましくは定量的RT−PCRにより測定することにより核酸レベルで決定される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記hsa−miR−31−3pisの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルが高いほど、患者がEGFR阻害剤治療に応答する可能性が高い、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記hsa−miR−31−3pの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルに基づいて予後スコアを決定することをさらに含んでなり、該予後スコアが、患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを示すものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記予後スコアが式:
予後スコア=a*x+b
であり、式中、
xは、患者のサンプルで測定されたDBNDD2の発現レベルの対数であり、
aおよびbは、参照サンプルのプールに基づいて事前に決定されたパラメーターであり、かつ、
患者は、その患者の予後スコアが閾値cよりも大きければまたは小さければEGFR阻害剤に応答するまたは応答しないと予測され、ここで、前記cの値は参照サンプルの同じプールに基づいて決定されたものであり、
aが正であるとき、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以上であればEGFR阻害剤に応答すると予測され、その予後スコアが閾値cより小さければEGFR阻害剤に応答しないと予測され、
aが負であるとき、その患者は、その患者の予後スコアが閾値c以下であればEGFR阻害剤に応答すると予測され、その患者の予後スコアが閾値cより大きければEGFR阻害剤に応答しないと予測される、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 - 前記予後スコアが式:
予後スコア=a*x+b
であり、式中、
xは、患者のサンプルで測定されたDBNDD2の発現レベルの対数であり、
aおよびbは、参照サンプルのプールに基づいて事前に決定されたパラメーターであり、かつ、
aが正であるか負であるかによって、
aが正であれば、予後スコアが高いほどEGFR阻害剤治療に応答する確率が高く、
aが負であれば、予後スコアが低いほどEGFR阻害剤治療に応答する確率が高い、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 - 参照サンプルのプールに基づいて較正されたノモグラムに基づき、応答しないリスクを決定することをさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定すること、および前記hsa−miR−31−3pの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルと前記他のパラメーターを考慮した総合スコアを算出することをさらに含んでなり、前記総合スコアは前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを示す、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 癌を有する患者が上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定するためのキットであって、
a)前記患者のサンプルにおいてhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを決定するための試薬であって、前記hsa−miR−31−3pの標的遺伝子がDBNDD2およびEPB41L4Bから選択される、試薬、および
b)EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの他のパラメーターを決定するための試薬であって、
i)EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つのmiRNA、特にhsa−miR−31−3p(配列番号1)miRNAまたはhsa−miR−31−5p(配列番号34)miRNA、の発現レベルを決定するための試薬、および/または
ii)EGFR阻害剤に対する応答と正または負の相関がある少なくとも1つの突然変異を検出するための試薬
から選択される、試薬
を含んでなる、またはからなる、キット。 - 癌に罹患している患者の治療に使用するためのEGFR阻害剤であって、該患者が請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によりEGFR阻害剤に対して応答する可能性が高いと分類された患者である、EGFR阻害剤。
- 癌に罹患している患者の治療に使用するためのEGFR阻害剤であって、該治療が、前記患者が請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によりEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを予測する予備工程を含んでなり、前記患者が請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によりEGFR阻害剤に応答する可能性が高いと予測された場合にのみ、その患者に前記EGFR阻害剤が投与される、EGFR阻害剤。
- 癌に罹患している患者を治療するための方法であって、
(i)本発明による方法により、前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いかどうかを決定すること、および
(ii)前記患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が高いと決定された場合に、前記患者にEGFR阻害剤を投与すること
を含んでなる、方法。 - 患者がEGFR阻害剤に応答する可能性が低いと決定された場合に、前記患者に別の抗癌治療を投与する工程(iii)をさらに含んでなる、請求項17に記載の方法。
- 前記別の抗癌治療が
a)VEGF阻害剤、
b)VEGF阻害剤とFOLFOXの組合せ、
c)VEGF阻害剤とFOLFIRIの組合せ、
d)5−FU、および
e)5−FUとマイトマイシンBの組合せ
から選択される、請求項18に記載の方法。
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