JP2017228434A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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馨 今野
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紘揮 三國
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Abstract

【課題】出力特性に優れ、高電圧(例えば、充電電圧4.4V)での充放電サイクル後における容量維持率の低下が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】正極と、負極と、を備え、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を有し、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極合材層と、を有し、前記正極合材層及び前記負極合材層の少なくとも一方の上に、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を含む炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有するリチウムイオン二次電池。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度の二次電池であり、その特性を活かして、ノート型PC(Personal Computer)、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。近年、スマートフォン及びタブレットPCを中心とした携帯用情報端末の高機能化に伴い、リチウムイオン二次電池の更なる高容量化が求められている。リチウムイオン二次電池の高容量化を達成する手段としては、電極活物質の高容量化、エネルギー密度の向上、電池の高電圧化等が考えられる。しかし、電池を高電圧化した場合は電池内部での構成材料間での反応が促進され、充放電サイクル後におけるリチウムイオン二次電池の容量低下が大きいという課題があった。
従来、充放電サイクル後におけるリチウムイオン二次電池の容量低下を抑制する方法として、(1)電解質として、フッ素含有リチウム塩電解質と特定のホスホノアセテート類化合物とを用い、正極活物質として、ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いる方法(例えば、特許文献1参照)、(2)電解液として、フッ素化環状炭酸エステルとフッ素化鎖状エステルとを用いる方法(例えば、特許文献2参照)、(3)正極活物質であるコバルト酸リチウムの表面の一部に希土類化合物を固着させる方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
特開2014−127256号公報 特開2014−110122号公報 特開2013−179095号公報
しかし、上記文献に記載された方法では、高電圧での充放電サイクル後における容量低下を十分に抑制することは困難であることが本発明者らの検討により明らかとなった。この理由として、リチウムイオン二次電池中に含まれる水分がヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)等のフッ素含有リチウム塩電解質と反応した際に生じるフッ化水素(HF)が原因となり、正極活物質から金属イオンが溶出し、この溶出した金属イオンが負極等で再析出することにより、容量低下が発生することが考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、出力特性に優れ、高電圧(例えば、充電電圧4.4V)での充放電サイクル後における容量低下が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 正極と、負極と、を備え、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を有し、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極合材層と、を有し、
前記正極合材層及び前記負極合材層の少なくとも一方の上に、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を含む炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有するリチウムイオン二次電池。
<2> 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さが、0.5μm〜30μmである、<1>に記載のリチウムイオン二次電池。
<3> 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)が0.1μm〜50μmである<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池。
<4> 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alが、0.3〜5.0である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
<5> 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、無定形アルミニウムケイ酸化合物を含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
本発明によれば、出力特性に優れ、高電圧(例えば、充電電圧4.4V)での充放電サイクル後における容量低下が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
負極又は正極の断面図の一例である。 リチウムイオン二次電池の一例を示す斜視断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。「A以上」又は「A以下」として示された数値範囲には、Aも最小値又は最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において各成分の含有率は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において各成分の粒径は、各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本明細書において「被覆」との語には、被覆する領域を観察したときに、当該領域の全体が被覆されている場合に加え、当該領域の一部のみが被覆されている場合も含まれる。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
<リチウムイオン二次電池>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、を備え、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を有し、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極合材層と、を有し、前記正極合材層及び前記負極合材層の少なくとも一方の上に、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を含む炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有する。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、セパレータ、電解液等を有していてもよい。
図1に、負極又は正極の断面図の一例を示す。負極又は正極は、負極集電体又は正極集電体9の上に、負極合材層又は正極合材層8を有し、負極合材層及び正極合材層8の少なくとも一方の上に、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層7を有する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上記構成により、出力特性に優れ、高電圧(例えば、充電電圧4.4V)での充放電サイクル後における容量低下が抑制されたものとなる。その理由は明確ではないが、例えば、以下のように考えることができる。
リチウムイオン二次電池内では、不可避的に混入した水分とフッ素含有リチウム塩電解質との反応により、フッ化水素(HF)が発生し得る。このフッ化水素(HF)により正極活物質からコバルトイオン等の金属イオンが溶出し、また、溶出した金属イオンが負極等で再析出することにより、容量低下の原因となりやすい。
そこで、本実施形態のリチウムイオン二次電池では、正極合材層及び負極合材層の少なくとも一方の上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成する。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、フッ化水素(HF)及び金属イオンの吸着能を有し、且つ、リチウムイオンよりもコバルトイオン等の他の金属イオンを吸着しやすいという性質を示す。これにより、高電圧での充放電サイクル後における容量低下が抑制されると考えられる。また、アルミニウムケイ酸化合物が炭素で被覆された炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、導電性が高いため、リチウムイオン二次電池の出力特性が向上すると考えられる。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物による出力特性の向上効果は、フッ素含有リチウム塩電解質の中でもヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を用いた場合に特に顕著である。
以下、リチウムイオン二次電池の正極、負極、電解液、セパレータ、及びその他の構成部材について説明する。
1.正極
正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層と、を有する。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層は、負極合材層及び正極合材層の少なくとも一方の上に設けられていればよく、正極合材層上に設けられていなくともよい。
1−1.正極集電体
正極集電体の材質は特に制限されない。正極集電体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料、及びカーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも、正極集電体の材質としては、金属材料が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
正極集電体の形状は特に制限されない。金属材料を用いる場合の正極集電体の形状としては、金属箔、金属薄膜、エキスパンドメタル等が挙げられる。炭素質材料を用いる場合の正極集電体の形状としては、炭素板、炭素薄膜等が挙げられる。中でも、正極集電体としては、金属薄膜を用いることが好ましい。なお、薄膜はメッシュ状に形成してもよい。
正極集電体の厚さは特に制限されない。正極集電体の厚さは、例えば、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、正極集電体の厚さは、例えば、1mm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。正極集電体の厚さが1μm以上であると、充分な強度が得られる傾向にあり、1mm以下であると、可撓性及び加工性に優れる傾向にある。
1−2.正極合材層
正極合材層は、正極集電体上に形成され、正極集電体の片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。正極合材層は、正極活物質を含有し、必要に応じて、導電材、結着材、増粘材等を含んでいてもよい。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リチウム塩、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられ、リチウム含有複合金属酸化物を含むことが好ましい。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物が挙げられ、さらに他の元素を含んでいてもよい。リチウム含有複合金属酸化物に含まれる遷移金属は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。リチウム含有複合金属酸化物に含まれる他の元素は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。リチウム含有複合金属酸化物が含んでいてもよい元素としては、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、及びMgが好ましい。
リチウム含有複合金属酸化物としては、LiCoO、LiNiO、LiCoNi1−y、LiCo 1−y(式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、及びBからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。)、LiNi1−y (式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、及びBからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。)、LiMPO、LiPOF(各式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、及びBからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。)等が挙げられる。ここで、各式中、xは0<x≦1.2であり、yは0≦y≦0.9であり、zは2.0≦z≦2.3である。リチウムのモル比を示すxの値は、充放電により増減する。
オリビン型リチウム塩としては、LiFePO等が挙げられる。
カルコゲン化合物としては、二硫化チタン、二硫化モリブデン等が挙げられる。
正極活物質が粒子状である場合、その形状としては、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。正極活物質は、一次粒子の凝集体である二次粒子の状態であることが好ましく、二次粒子の形状が球状又は楕円球状であることがより好ましい。
電池のような電気化学素子においては、その充放電に伴い、電極活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる電極活物質の破壊、導電パスの切断等の劣化が生じやすい。そのため、正極活物質は、一次粒子として存在するものを用いるよりも、一次粒子が凝集して二次粒子を形成して存在するものを用いる方が、膨張収縮のストレスを緩和し、上記劣化を防ぐことができる傾向にある。また、板状等の軸配向性の二次粒子よりも球状又は楕円球状の二次粒子を用いる方が、電極内における配向が少なくなるため、充放電時の電極の膨張収縮が小さくなる傾向にある。また、正極合材を調製する際に、導電材等の他の材料とも均一に混合しやすい傾向にある。
正極活物質の体積平均粒子径(D50)(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子の体積平均粒子径(D50))は、所望のタップ密度を得る観点から、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、3μm以上であることが特に好ましい。また、正極活物質の体積平均粒子径(D50)は、電極形成性及び電池性能をより向上させる観点から、例えば、20μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましく、16μm以下であることがさらに好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。ここで、正極活物質としては、異なる体積平均粒子径(D50)を有するものを2種以上混合することで、タップ密度(充填性)を向上させることができる。
なお、正極活物質の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱法により求めた粒度分布から求めることができる。レーザー回折散乱法には、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所、SALD3000J)を用いることができる。具体的には、正極活物質の粒子を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製する。この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒径(D50)を体積平均粒子径として求める。
正極活物質が二次粒子を形成している場合、二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径は、充放電の良好な可逆性を得る観点から、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.08μm以上であることがさらに好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましい。また、一次粒子の平均粒子径は、出力特性等の電池性能をより向上させる観点から、例えば、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.6μm以下であることが特に好ましい。なお、一次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により20万倍で撮影した画像内の粒子像の全てについて一次粒子の粒径を測定し、その算術平均値として求めることができる。
正極活物質のBET比表面積は、電池性能をより向上させる観点から、例えば、0.1m/g以上であることが好ましく、0.2m/g以上であることがより好ましく、0.3m/g以上であることがさらに好ましい。また、正極活物質のBET比表面積は、電極形成性をより向上させる観点から、4.0m/g以下であることが好ましく、2.5m/g以下であることがより好ましく、1.5m/g以下であることがさらに好ましい。
正極活物質のBET比表面積は、JIS Z 8830:2001に準じて、77Kでの窒素吸着能から測定する。評価装置としては、窒素吸着測定装置(例えば、QUANTACHROME社、AUTOSORB−1)等を用いることができる。
BET比表面積の測定を行う際には、試料表面及び構造中に吸着している水分がガス吸着能に影響を及ぼすと考えられることから、まず、加熱による水分除去の前処理を行う。前処理では、0.05gの測定試料を投入した測定用セルを、真空ポンプで10Pa以下に減圧する。その後、110℃で加熱し、3時間以上保持した後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却する。この前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満として測定する。
(導電材)
正極合材層は、電池性能をより向上させる観点から、導電材を含むことが好ましい。導電材としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、繊維状黒鉛等の黒鉛(グラファイト)及びアセチレンブラック等のカーボンブラックが挙げられる。導電材としては、カーボンブラックを含むことが好ましく、アセチレンブラックを含むことがより好ましい。導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電材としてカーボンブラックを用いる場合、正極合材の分散性及びリチウムイオン二次電池の入出力特性をより向上させる観点から、カーボンブラックとしては、例えば、平均粒子径が20nm〜100nmの粒子であることが好ましく、20nm〜80nmの粒子であることがより好ましく、30nm〜80nmの粒子であることがさらに好ましく、40nm〜60nmの粒子であることが特に好ましい。
粒子の形状としては、粒状、フレーク状、球状、柱状、不規則形状等が挙げられる。
「粒状」とは、不規則形状のものではなく、ほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000)。
「フレーク状(片状)」とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも称される。本実施形態においては、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果から解析を行い、アスペクト比(粒径a/平均厚さt)が2〜100の範囲である場合を片状とする。ここでいう粒径aは、片状の粒子を平面視したときの面積Sの平方根として定義するものとし、これを片状の粒子の粒径とする。
「球状」とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000)。また、形状は必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数又は真球度とも称される)が1.0〜1.2の範囲にあるものとし、粒径とは長径(DL)を指すものとする。
「柱状」とは、略円柱、略多角柱等の形状であり、粒径とは柱の高さを指すものとする。
導電材として黒鉛を用いる場合、黒鉛の平均粒子径は、例えば、1μm〜10μmであることが好ましい。黒鉛は、X線広角回折法における炭素網面層間(d002)が、例えば、0.3354nm〜0.337nmであることが好ましい。
導電材としてカーボンブラックと黒鉛とを併用する場合、カーボンブラックと黒鉛との割合は特に制限されない。カーボンブラックの含有量をA1、黒鉛の含有量をA2としたとき、その質量比[A1/(A1+A2)]は、充放電特性をより向上させる観点から、例えば、0.1〜0.9であることが好ましく、0.4〜0.85であることがより好ましい。
なお、導電材の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により20万倍で撮影した画像内の粒子像の全てについて測定した粒径の算術平均値である。
正極合材層が導電材を含む場合、導電材の含有率は、正極合材層の全量に対して、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電材の含有率は、正極合材層の全量に対して、例えば、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。導電材の含有率が上記範囲内であると、電池容量及び入出力特性がより向上する傾向にある。
また、導電材としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの含有率は、導電性及び電池容量をより向上させる観点から、正極合材層の全量に対して、例えば、0.1質量%〜15質量%であることが好ましく、0.2質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。カーボンブラックの含有率が上記範囲内であると、電池容量及び入出力特性がより向上する傾向にある。
(結着材)
正極合材層は、正極合材層と正極集電体との間の接着性、正極活物質同士の接着性、さらに正極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を設ける場合には、正極合材層と炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層との間の接着性を向上させる観点から、結着材を含有してもよい。結着材の種類は特に限定されない。例えば、湿式法により正極合材層を形成する場合には、分散溶媒に対する溶解性又は分散性が良好な材料を選択することが好ましい。
結着材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。結着材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極の安定性の観点からは、結着材としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子を用いることが好ましい。
正極合材層が結着材を含む場合、結着材の含有率は、正極合材層の全量に対して、例えば、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。また、結着材の含有率は、正極合材層の全量に対して、例えば、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。結着材の含有率が上記範囲内であると、サイクル特性等の電池性能がより向上する傾向にある。
(正極合材層の形成方法等)
正極集電体上に正極合材層を形成する方法は特に制限されず、乾式法、湿式法等が挙げられる。乾式法とは、正極合材の材料を乾式で混合してシート状にし、これを集電体に圧着する方法である。湿式法とは、正極合材の材料を分散溶媒に溶解又は分散させてスラリーとし、これを正極集電体に塗布し、乾燥する方法である。
スラリーを調製するための分散溶媒としては、正極合材の材料を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に制限はなく、水系溶媒及び有機系溶媒のいずれを用いてもよい。水系溶媒の例としては、水、アルコールと水との混合溶媒等が挙げられる。有機系溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘材を用いることが好ましい。分散溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘材としては特に制限されない。増粘材の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン、これらの塩等が挙げられる。増粘材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極集電体上に形成された正極合材層は、正極活物質の充填密度を向上させるため、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
正極合材層は、例えば、密度が3.0g/cm〜4.0g/cmであることが好ましい。正極合材層の密度が上記範囲内であると、入出力特性をより向上することができる傾向にある。このような観点から、正極合材層の正極集電体への片面塗布量は、100g/m〜300g/mであることが好ましく、150g/m〜250g/mであることがより好ましく、185g/m〜220g/mであることがさらに好ましい。
1−3.炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層は、正極合材層及び負極合材層の少なくとも一方の上に形成される。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層は、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を含有し、必要に応じて、結着材、導電材、増粘材等を含んでいてもよい。
(炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物)
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、アルミニウムケイ酸化合物の表面の一部又は全部が炭素で被覆された構造を有する。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alは、0.3〜5.0であることが好ましく、0.5〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.0であることがさらに好ましい。元素モル比が上記範囲であると、フッ化水素(HF)及び金属イオンの吸着能に優れ、サイクル特性が向上する傾向にある。
なお、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alは、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(例えば、株式会社日立製作所、P−4010)を用いて、常法により元素分析を行うことにより求めることができる。
また、正極の作製後においては、後述する実施例に記載の方法により、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alを求めることができる。
アルミニウムケイ酸化合物としては、例えば、アルミニウムケイ酸塩であるアロフェン、カオリン、ゼオライト、サポナイト、及びイモゴライト、並びに無定形アルミニウムケイ酸化合物が挙げられる。これらの中でも、サイクル特性向上のための比表面積の調整が容易な観点から、アルミニウムケイ酸化合物としては、無定形アルミニウムケイ酸化合物が好ましい。このような無定形アルミニウムケイ酸化合物は、例えば、nSiO・Al・mHO[n=0.6〜10.0、m=0以上]で示される組成を有するものが挙げられる。
無定形アルミニウムケイ酸塩は、X線源としてCuKα線を用いた粉末X線回折スペクトルにおいて、ムライト構造を示すピークが観測されず、2θ=10°〜30°近辺にブロードなピークを有する。X線回折装置としては、例えば、株式会社リガク製のGeigerflex RAD−2Xを用いることができる。具体的な測定条件は以下のとおりである。
−測定条件−
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.30mm
X線出力:40kV、40mA
無定形アルミニウムケイ酸化合物は、合成してもよく、市販品を購入して用いてもよい。
無定形アルミニウムケイ酸化合物の合成方法としては、例えば、ケイ酸イオンを含む溶液及びアルミニウムイオンを含む溶液を混合して反応生成物を得る工程と、反応生成物を、水性媒体中、酸の存在下で熱処理する工程と、を有する方法が挙げられる。上記の合成方法は、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
得られる無定形アルミニウムケイ酸化合物の収率、構造体形成等の観点から、少なくとも熱処理する工程の後、好ましくは、熱処理する工程の前及び後で、脱塩及び固体分離を行う工程を有することが好ましい。反応生成物である無定形アルミニウムケイ酸化合物を含む溶液から共存イオンを脱塩処理した後に、酸の存在下で熱処理することで、フッ化水素(HF)及び金属イオンの吸着能に優れる無定形アルミニウムケイ酸化合物を効率よく製造することができる。なお、共存イオンとしては、ナトリウムイオン、塩化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、アルミニウムケイ酸化合物の表面の一部又は全部が炭素で被覆されたものである。
アルミニウムケイ酸化合物の表面を炭素で被覆する方法は特に制限されない。例えば、熱処理により炭素質に変化する有機化合物(炭素前駆体)をアルミニウムケイ酸化合物に付着させ、これに対して熱処理を行って有機化合物を炭素質に変化させる方法が挙げられる。アルミニウムケイ酸化合物に有機化合物を付着させる方法としては、有機化合物を溶媒に溶解又は分散させた混合溶液に核となる粒子状のアルミニウムケイ酸化合物を添加した後、溶媒を加熱等で除去する湿式法;粒子状のアルミニウムケイ酸化合物と固体状の有機化合物とを混合して得られた混合物にせん断力を加えながら混練して被覆させる乾式法;CVD(Chemical Vapor Deposition)等の気相法;などが挙げられる。製造コスト及び製造プロセスの低減の観点からは、溶媒を使用しない乾式法及び気相法が好ましい。
熱処理により炭素質に変化する有機化合物(炭素前駆体)としては特に制限されない。有機化合物としては、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等の熱分解により生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製される合成ピッチ等のピッチ;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂;などが挙げられる。これらの有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機化合物を表面に付着させたアルミニウムケイ酸化合物を熱処理する際の条件は、有機化合物の炭素化率を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。例えば、800℃〜1300℃の熱処理温度であることが好ましい。熱処理温度が800℃以上であると、有機物の焼成が充分に進み、比表面積が高すぎることによる初回の不可逆容量の増大が抑制される傾向にある。また、熱処理温度が1300℃以下であると、比表面積が低すぎて抵抗が上昇するのが抑制される傾向にある。また、熱処理は不活性雰囲気で行うことが好ましい。不活性雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のBET比表面積は、例えば、80m/g以下であることが好ましく、サイクル特性及び保存特性をより向上させる観点から、40m/g以下であることがより好ましく、20m/g以下であることがさらに好ましい。また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のBET比表面積は、フッ化水素(HF)及び金属イオンの吸着能をより向上させる観点から、1m/g以上であることが好ましく、2m/g以上であることがより好ましく、3m/g以上であることがさらに好ましい。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のBET比表面積は、正極活物質のBET比表面積と同様に、JIS Z 8830:2001に準じて、77Kでの窒素吸着能から測定する。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、電池容量及びサイクル特性をより向上させる観点から、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス、TG−DTA−6200)を用いて測定される25℃〜350℃の範囲での重量減少率(D1)が、例えば、5質量%未満であることが好ましく、4質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることがさらに好ましい。重量減少率(D1)は、実用的な観点から、例えば、0.01質量%以上であることが好ましい。
また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、入出力特性及びサイクル特性をより向上させる観点から、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス、TG−DTA−6200)を用いて測定される350℃〜850℃の範囲での重量減少率(D2)が、例えば、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、2質量%〜25質量%であることがより好ましく、5質量%〜20質量%であることがさらに好ましい。重量減少率(D2)が上記範囲内であると、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物と電解液とが反応することによる抵抗の上昇がより抑制される傾向にあり、また、フッ化水素(HF)、金属イオン等の吸着能がより向上する傾向にある。
重量減少率(D1)は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、25℃から350℃まで昇温することで測定できる。重量減少率(D1)は、下式(1)にて求められた値とする。式中のW0は25℃での質量であり、W1は350℃での質量である。
D1(%)={(W0−W1)/W0}×100・・・式(1)
重量減少率(D2)は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、350℃から850℃まで昇温し、850℃で20分間保持した際の質量から測定できる。重量減少率(D2)は、下式(2)にて求められた値とする。式中のW1は350℃での質量であり、W2は850℃での質量である。
D2(%)={(W1−W2)/W1}×100・・・式(2)
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)は特に制限されず、最終的な所望の大きさに合わせて選択できる。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)は、例えば、0.1μm〜50μmであることが好ましく、0.5μm〜10μmであることがより好ましい。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)が0.1μm以上であると、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成する際のスラリーの粘度の上昇が抑制され、作業性が良好に維持される傾向にある。また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)が50μm以下であると、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成する際のスジの発生が抑制される傾向にある。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)は、フッ化水素(HF)、金属イオン等の吸着能をより向上させる観点からは、8μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
なお、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)は、正極活物質の体積平均粒子径(D50)と同様に、レーザー回折散乱法により求めた粒度分布から求めることができる。
(結着材、導電材及び増粘材)
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層は、結着材、導電材、増粘材等を含有していてもよく、正極合材層で挙げた結着材、導電材及び増粘材を同様に用いることができる。
(炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の形成方法等)
正極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成する方法は特に制限されず、乾式法、湿式法等が挙げられる。乾式法とは、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の材料を乾式で混合してシート状にし、これを正極合材層に圧着する方法である。湿式法とは、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の材料を分散溶媒に溶解又は分散させてスラリーとし、これを正極合材層に塗布し、乾燥する方法である。
スラリーを調製するための分散溶媒としては、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の材料を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に制限はなく、水系溶媒及び有機系溶媒のいずれを用いてもよい。水系溶媒及び有機系溶媒としては、正極合材層の形成方法で挙げたものと同様のものが挙げられる。また、増粘材を用いてもよく、増粘材としては、正極合材層の形成方法で挙げたものと同様のものが挙げられる。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さは、0.5μm〜30μmであることが好ましく、0.6μm〜28μmであることがより好ましく、0.7μm〜26μmであることがさらに好ましい。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さは、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を有する負極または正極の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)によって10箇所の厚さを測定し、算術平均値として算出する。
2.負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極合材層と、を有する。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層は、負極合材層及び正極合材層の少なくとも一方の上に設けられていればよく、負極合材層上に設けられていなくともよい。負極合材層上のアルミニウムケイ酸化合物層は、正極合材層上のアルミニウムケイ酸化合物層と同様のものが挙げられ、好ましい形態についても同様である。
2−1.負極集電体
負極集電体の材質は特に制限されない。負極集電体の材質としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、負極集電体の材質としては、加工のし易さ及びコストの観点から、銅が好ましい。
負極集電体の形状は特に制限されない。負極集電体の形状としては、例えば、金属箔及び金属薄膜が挙げられる。中でも、負極集電体としては、金属箔が好ましく、銅箔がより好ましい。銅箔としては、圧延法により形成された圧延銅箔、及び電解法により形成された電解銅箔のいずれであってもよい。
負極集電体の厚さは、例えば、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、負極集電体の厚さは、例えば、1mm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
なお、負極集電体が銅製で、且つ厚さが25μm未満である場合は、純銅よりも強度に優れる銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることが、負極集電体の強度向上の観点から好ましい。
2−2.負極合材層
負極合材層は、負極集電体上に形成され、負極集電体の片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。負極合材層は、負極活物質を含有し、必要に応じて、導電材、結着材、増粘材等を含んでいてもよい。
(負極活物質)
負極活物質としては、炭素質材料;金属複合酸化物;リチウム金属;リチウムアルミニウム合金等のリチウム合金;Sn、Si、Ge等のリチウムと合金を形成可能な元素の酸化物又は窒化物;などが挙げられる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、炭素質材料又は金属複合酸化物が安全性の観点から好ましい。
炭素質材料としては、非晶質炭素;天然黒鉛;天然黒鉛に乾式のCVD法又は湿式のスプレー法で形成される被膜を形成した複合炭素質材料;エポキシ化合物、フェノール化合物等の樹脂原料、又は石油、石炭等から得られるピッチ材料を焼成して得られる人造黒鉛;などが挙げられる。
金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能なものであれば特に制限されない。金属複合酸化物の中でも、Ti(チタン)及びLi(リチウム)の少なくとも一方を含有するものが、高電流密度充放電特性の観点から好ましい。
特に、負極活物質として、炭素質材料は、導電性が高く、リチウムイオン二次電池の低温特性及びサイクル安定性の面から優れた材料である。
炭素質材料としては、入出力特性をより向上させる観点からは、炭素網面層間(d002)の広い(例えば、d002が0.34nm以上)材料(非晶質炭素)が好ましく、電池特性をより向上させる観点からは、炭素網面層間(d002)が、例えば、0.39nm以下の材料が好ましい。このような炭素質材料を、擬似異方性炭素と称する場合がある。炭素網面層間(d002)の広い材料(非晶質炭素)としては、ハードカーボン及びソフトカーボンが挙げられ、サイクル特性をより向上させる観点からは、ソフトカーボンが好ましい。ソフトカーボンは、X線広角回折法における炭素網面層間(d002)が、例えば、0.34nm〜0.36nmであることが好ましく、0.341nm〜0.355nmであることがより好ましく、0.342nm〜0.35nmであることがさらに好ましい。
また、炭素質材料としては、電池容量をより向上させる観点からは、黒鉛が好ましい。黒鉛は、X線広角回折法における炭素網面層間(d002)が、例えば、0.34nm未満であることが好ましく、0.335nm〜0.337nmであることがより好ましい。
さらに、負極活物質として、黒鉛質、非晶質、活性炭等の導電性の高い炭素質材料を混合して用いてもよい。
(導電材)
負極合材層は、導電材を含んでいてもよい。例えば、負極活物質として用いる第1の炭素質材料とは異なる性質の第2の炭素質材料を導電材として含んでいてもよい。上記性質とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンスペクトル解析から得られるR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量等が挙げられ、これらから選択される1つ以上の性質が第1の炭素質材料と異なる炭素質材料を導電材として用いることができる。
導電材としては、黒鉛質、非晶質、活性炭等の導電性の高い炭素質材料を用いることができる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素などを用いることができる。導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。負極合材層が導電材を含むことにより、電極の抵抗をより低減することができる傾向にある。
負極合材層が導電材を含む場合、導電材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。導電材の含有率が1質量%以上であると、導電性の向上効果が得られやすい傾向にあり、45質量%以下であると、初期不可逆容量の増大が抑制される傾向にある。
(結着材)
負極合材層は、負極合材層と負極集電体との接着性、負極活物質同士の接着性、さらに負極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を設ける場合には、負極合材層と炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層との間の接着性を向上させる観点から、結着材を含むことが好ましい。結着材の種類は特に制限されず、例えば、正極合材層に用いられる結着材として例示したものを用いることができる。
負極合材層が結着材を含む場合、結着材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、結着材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。結着材の含有率が0.1質量%以上であると、負極合材層の強度の低下が抑制される傾向にあり、20質量%以下であると、電池容量の低下が抑制される傾向にある。
結着材として、SBR等のゴム状高分子を用いる場合、結着材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、結着材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
結着材として、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系高分子を用いる場合、結着材の含有量は、負極合材層の全量に対して、例えば、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、結着材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましい。
(負極合材層の形成方法等)
負極集電体上に負極合材層を形成する方法は特に制限されず、乾式法、湿式法等が挙げられる。
負極合材層を湿式法で形成する場合、スラリーを形成するための分散溶媒及び増粘材は特に制限されず、正極合材層に使用可能な分散溶媒及び増粘材として例示したものから選択できる。
増粘材を用いる場合、増粘材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、増粘材の含有率は、負極合材層の全量に対して、例えば、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。増粘材の含有率が0.1質量%以上であると、スラリーの塗布性が良好に維持される傾向にあり、5質量%以下であると、電池容量の低下及び負極活物質間の抵抗の上昇が抑制される傾向にある。
3.電解液
電解液としては特に制限されず、リチウム塩電解質が非水系溶媒に溶解したものを用いることができる。リチウム塩電解質としては、フッ素含有リチウム塩電解質が挙げられる。電解液は、必要に応じて、添加剤等を含んでもよい。
出力特性の観点から、フッ素含有リチウム塩電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含むことが好ましい。ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の含有率は、電池性能の観点から、リチウム塩電解質の全量に対して、例えば、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)以外のリチウム塩電解質をさらに含んでいてもよい。ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)以外のリチウム塩電解質としては、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩;LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl等の無機塩化物塩;LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩;リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩などが挙げられる。ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)以外のリチウム塩電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電解液中のリチウム塩電解質の濃度は特に制限されない。電解液中のリチウム塩電解質の濃度は、例えば、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.6mol/L以上であることがより好ましく、0.7mol/L以上であることがさらに好ましい。また、電解液中のリチウム塩電解質の濃度は、例えば、2.0mol/L以下であることが好ましく、1.8mol/L以下であることがより好ましく、1.7mol/L以下であることがさらに好ましい。リチウム塩電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、充分な電気伝導率が得られる傾向にある。また、リチウム塩電解質の濃度が2.0mol/L以下であると、粘度が上昇して電気伝導度が低下するのが抑制され、リチウムイオン二次電池の性能の低下が抑制される傾向にある。
非水系溶媒の種類は特に制限されない。非水系溶媒としては、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、環状エーテル、及び鎖状エーテルが挙げられる。非水系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
環状カーボネートとしては、環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数が2〜6であるものが好ましく、2〜4であるものがより好ましい。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましい。環状カーボネートは、ビニレンカーボネート等の分子内に炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネート、フルオロエチレンカーボネート等のハロゲン原子を含む環状カーボネートなどであってもよい。負極活物質として炭素質材料を用いる場合は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の観点から、非水系溶媒は、ビニレンカーボネートを含むことが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、2つのアルキル基の炭素数がそれぞれ独立に1〜5であるものが好ましく、1〜4であるものがより好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等の対称鎖状カーボネート;メチルエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネートなどが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びメチルエチルカーボネートが好ましい。
鎖状エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。中でも、低温特性をより向上させる観点から、酢酸メチルが好ましい。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。中でも、入出力特性をより向上させる観点から、テトラヒドロフランが好ましい。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
非水系溶媒は、2種以上を併用することが好ましい。例えば、環状カーボネート等の高誘電率の溶媒と、鎖状カーボネート、鎖状エステル等の低粘度の溶媒とを併用することが好ましい。
好ましい組み合わせの1つとしては、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを非水系溶媒の主体とする組み合わせである。中でも、非水系溶媒の全体に占める環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、80体積%以上であることが好ましく、85体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。このとき、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対する環状カーボネートの割合は、例えば、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましく、15体積%以上であることがさらに好ましい。また、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対する環状カーボネートの割合は、例えば、50体積%以下であることが好ましく、35体積%以下であることがより好ましく、30体積%以下であることがさらに好ましい。このような非水系溶媒の組み合わせを用いることで、サイクル特性及び保存特性がより向上する傾向にある。
環状カーボネートと鎖状カーボネートとの好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート等が挙げられる。
また、サイクル特性及び入出力特性の観点から、鎖状カーボネートとして、対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方を含んでもよい。具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートの組み合わせが挙げられる。中でも、非対称鎖状カーボネートがメチルエチルカーボネートである組み合わせが好ましい。また、対称鎖状カーボネートが、アルキル基の炭素数が1〜2であるジアルキルカーボネートである組み合わせが好ましい。
添加剤としては、リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる添加剤であれば特に制限されない。添加剤としては、例えば、窒素及び硫黄の少なくとも一方を含有する複素環化合物、環状カルボン酸エステル、フッ素含有環状カーボネート、及び分子内に不飽和結合を有する化合物が挙げられる。また、上記添加剤以外に、求められる機能に応じて、過充電防止材、負極皮膜形成材、正極保護材、高入出力材等の他の添加剤を用いてもよい。
4.セパレータ
セパレータは、正極と負極との間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、正極側における酸化性及び負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物等が用いられる。
樹脂としては、オレフィン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。中でも、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選択することが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンがより好ましい。セパレータの形状としては、多孔性シート、不織布等が挙げられる。
無機物としては、アルミナ、二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、ガラスなどが挙げられる。例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。薄膜形状の基材としては、孔径が0.01μm〜1μm、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。また、例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、樹脂等の結着材を用いて複合多孔層としたものをセパレータとして用いることができる。さらに、この複合多孔層を、正極又は負極の表面に形成し、セパレータとしてもよい。例えば、90%粒径(D90)が1μm未満のアルミナ粒子が結着材としてのフッ素樹脂により結着された複合多孔層を、正極の表面に形成してもよい。
5.その他の構成部材
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、その他の構成部材として、開裂弁を備えていてもよい。開裂弁が開放することで、電池内部の圧力上昇を抑制でき、安全性をより向上させることができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、温度上昇に伴い不活性ガス(二酸化炭素等)を放出する構成部を備えていてもよい。リチウムイオン二次電池がこのような構成部を備えることで、電池内部の温度が上昇した場合に、不活性ガスの発生により速やかに開裂弁を開けることができ、安全性をより向上させることができる。上記構成部に用いられる材料としては、炭酸リチウム、ポリアルキレンカーボネート樹脂等が挙げられる。
6.リチウムイオン二次電池の構成
本実施形態のリチウムイオン二次電池がラミネート型のリチウムイオン二次電池である場合の構成について説明する。
ラミネート型のリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして作製できる。まず、正極と負極とを角形に切断し、それぞれの電極にタブを溶接して、正負極端子を作製する。正極、セパレータ、及び負極をこの順番に積層した積層体を作製し、その状態でアルミニウム製のラミネートパック内に収容し、正負極端子をラミネートパックの外に出して密封する。次いで、電解液をアルミラミネートパック内に注液し、ラミネートパックの開口部を密封する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
次に、図2を参照して、本実施形態のリチウムイオン二次電池が18650型の円柱状リチウムイオン二次電池である場合の構成について説明する。なお、図2における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。以下の説明における「上」、「下」は図2における「上」、「下」を示すものであり、リチウムイオン二次電池の「上」、「下」を限定するものではない。
図2に示すように、リチウムイオン二次電池1は、ニッケルメッキが施されたスチール製で有底円筒状の電池容器6を有している。電池容器6には、帯状の正極板2及び負極板3がセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回された電極群5が収容されている。電極群5は、正極板2及び負極板3がポリエチレン製多孔質シートのセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回されている。セパレータ4は、例えば、幅が58mm、厚さが30μmに設定される。電極群5の上端面には、一端部を正極板2に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子が導出されている。正極タブ端子の他端部は、電極群5の上側に配置され、正極外部端子となる円盤状の電池蓋の下面に超音波溶接で接合されている。一方、電極群5の下端面には、一端部を負極板3に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子が導出されている。負極タブ端子の他端部は、電池容器6の内底部に抵抗溶接で接合されている。したがって、正極タブ端子及び負極タブ端子は、それぞれ電極群5の両端面の互いに反対側に導出されている。なお、電極群5の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。電池蓋は、絶縁性の樹脂製ガスケットを介して電池容器6の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池1の内部は密封されている。また、電池容器6内には、図示しない電解液が注液されている。
リチウムイオン二次電池を充電する際には、正極と負極との間に充電器を接続する。充電時には、正極活物質内に挿入されているリチウムイオンが脱離し、電解液中に放出される。電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、セパレータを通過して、負極に到達する。負極に到達したリチウムイオンは、負極を構成する負極活物質内に挿入される。
リチウムイオン二次電池を放電する際には、正極と負極との間に外部負荷を接続する。放電時には、負極活物質内に挿入されていたリチウムイオンが脱離して電解液中に放出される。このとき、負極から電子が放出される。そして、電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、セパレータを通過して、正極に到達する。正極に到達したリチウムイオンは、正極を構成する正極活物質内に挿入される。このとき、正極活物質内にリチウムイオンが挿入することにより、正極に電子が流れ込む。このようにして、負極から正極に電子が移動することにより放電が行われる。
このように、正極活物質と負極活物質との間でリチウムイオンを挿入及び脱離することにより、充放電が行われる。
(リチウムイオン二次電池の負極と正極との容量比)
本実施形態において、負極と正極との容量比(負極容量/正極容量)は、安全性及びエネルギー密度をより向上させる観点から、例えば、1.03〜1.8であることが好ましく、1.05〜1.4であることがより好ましい。
ここで、負極容量とは、「負極の放電容量」を示し、正極容量とは、「正極の初回充電容量Aから負極又は正極のどちらか大きい方の不可逆容量Bを減算した値(A−B)」を示す。「負極の放電容量」とは、負極活物質に挿入されているリチウムイオンが脱離されるときに充放電装置で算出されるものと定義する。また、「正極の初回充電容量」とは、正極活物質からリチウムイオンが脱離されるときに充放電装置で算出されるものと定義する。
負極と正極との容量比は、例えば、「リチウムイオン二次電池の放電容量/負極の放電容量」からも算出することができる。リチウムイオン二次電池の放電容量は、例えば、4.35V、0.1C〜0.5C、終止時間を2時間〜15時間とする定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1C〜0.5Cで2.5Vまで定電流(CC)放電したときの条件で測定できる。負極の放電容量は、リチウムイオン二次電池の放電容量を測定した負極を所定の面積に切断し、対極としてリチウム金属を用い、電解液を含浸させたセパレータを介して単極セルを作製し、0V、0.1C〜0.5C、終止電流0.01Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1C〜0.5Cで1.5Vまで定電流(CC)放電したときの条件で所定面積当たりの放電容量を測定し、これをリチウムイオン二次電池の負極として用いた総面積に換算することで算出できる。この単極セルにおいて、負極活物質にリチウムイオンが挿入される方向を充電、負極活物質に挿入されているリチウムイオンが脱離する方向を放電、と定義する。なお、Cは「電流値(A)/電池の放電容量(Ah)」を意味する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
<アルミニウムケイ酸化合物の作製>
Al濃度:1mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液(500mL)に、Si濃度:2mol/Lの水ガラス(珪酸ソーダ3号、NaO・nSiO・mHO)(500mL)を加え、30分間撹拌した。この溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液890mLを加え、pHを7に調整した。pHを調整した溶液を30分間撹拌した後、加圧濾過により脱塩を行った。脱塩処理後の沈殿物に、濃度:1mol/Lの硫酸水溶液100mLを加えてpHを4に調整し、30分間撹拌した。次に、この溶液を乾燥器に入れ、98℃で48時間(2日間)加熱した。加熱後の溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液235mLを添加し、pHを9に調整した。pH調整を行うことにより溶液中の塩を凝集させ、上記同様の加圧濾過によってこの凝集体を沈殿させ、次いで上澄み液を排出して脱塩を行った。脱塩処理後に得た沈殿物を、110℃で16時間乾燥して粒子塊を回収した。その粒子塊を媒体撹拌ミルで粉砕し、分級することで平均粒子径がそれぞれ0.2μm、2.0μm、及び3.3μmのアルミニウムケイ酸化合物を得た。
得られたアルミニウムケイ酸化合物について、粉末X線回折装置(株式会社リガク、Geigerflex RAD−2X)を用いて、以下の測定条件で粉末X線回折分析を行った。その結果、ムライト構造を示すピークは観測されず、2θ=10°〜30°近辺にブロードなピークが観測されたことから、得られたアルミニウムケイ酸化合物は、無定形アルミニウムケイ酸化合物であることが確認された。
−測定条件−
・X線源:CuKα線
・発散スリット:1°
・散乱スリット:1°
・受光スリット:0.30mm
・X線出力:40kV、40mA
<炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の作製>
上記の平均粒子径がそれぞれ0.2μm、2.0μm、及び3.3μmのアルミニウムケイ酸化合物とポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とをそれぞれ100:100、100:80、及び100:70の質量比で混合して混合物を得た。この混合物を窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成した後、解砕及び分級することによって平均粒子径がそれぞれ0.3μm、2.2μm、及び3.6μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を作製した。
[製造例2]
<アルミニウムケイ酸化合物の作製>
Al濃度:1mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液(800mL)に、Si濃度:2mol/Lの水ガラス(珪酸ソーダ3号、NaO・nSiO・mHO)(200mL)を加え、30分間撹拌した。その後、製造例1と同様の操作(pH調整、脱塩、98℃でのエージング、乾燥、粉砕等)によって、平均粒子径が3.3μmのアルミニウムケイ酸化合物を得た。
得られたアルミニウムケイ酸化合物について、製造例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。その結果、ムライト構造を示すピークは観測されず、2θ=10°〜30°近辺にブロードなピークが観測されたことから、得られたアルミニウムケイ酸化合物は、無定形アルミニウムケイ酸化合物であることが確認された。
<炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の作製>
上記のアルミニウムケイ酸化合物を用いて、製造例1と同様の方法で炭素被覆を行い、平均粒子径が3.5μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を作製した。
[製造例3]
<アルミニウムケイ酸化合物の作製>
Al濃度:1mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液(334mL)に、Si濃度:2mol/Lの水ガラス(珪酸ソーダ3号、NaO・nSiO・mHO)(666mL)を加え、30分間撹拌した。その後、製造例1と同様の操作(pH調整、脱塩、98℃でのエージング、乾燥、粉砕等)によって、平均粒子径が3.3μmのアルミニウムケイ酸化合物を作製した。
得られたアルミニウムケイ酸化合物について、製造例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。その結果、ムライト構造を示すピークは観測されず、2θ=10°〜30°近辺にブロードなピークが観測されたことから、得られたアルミニウムケイ酸化合物は、無定形アルミニウムケイ酸化合物であることが確認された。
<炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の作製>
上記のアルミニウムケイ酸化合物を用いて、製造例2と同様の方法で炭素被覆を行い、平均粒子径が3.4μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を作製した。
(実施例1A)
[正極の作製]
正極を以下のようにして作製した。正極活物質であるコバルト酸リチウム(95.0質量%)に、導電材として繊維状の黒鉛(1.0質量%)及びアセチレンブラック(AB)(1.0質量%)と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(3.0質量%)とを順次添加し、混合することにより、正極材料の混合物を得た。
さらに、上記混合物に対し、分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面に実質的に均等、且つ均質に塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化して、正極合材層を形成した。た。正極合材層の密度は3.6g/cmとし、正極合材層の片面塗布量は190g/mとした。
[負極の作製]
負極を以下のようにして作製した。負極活物質として平均粒子径22μmの人造黒鉛を用いた。この負極活物質に結着材としてSBR(スチレン・ブタジエンゴム)、増粘材としてカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム株式会社、CMC、品番2200)を添加した。これらの質量比は、負極活物質:結着材:増粘材=98:1:1とした。これに分散溶媒である水を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを厚さ10μmの圧延銅箔(負極集電体)の片面に実質的に均等、且つ均質に塗布して、負極合材層を形成した。負極合材層の密度は1.65g/cmとし、負極合材層の片面塗布量は113g/mとした。
また、製造例1で作製した平均粒子径が0.3μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(85質量%)とPVDF(15質量%)を混合し、スラリーを調製した。このスラリーを上記負極合材層上に塗布して、厚さ1.9μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成した。
[ラミネート型のリチウムイオン二次電池の作製]
13.5cmの角形に切断した正極をポリエチレン製多孔質シートのセパレータ(旭化成株式会社、ハイポア(登録商標)、厚さ:30μm)で挟み、さらに14.3cmの角形に切断した負極を重ね合わせて積層体を作製した。この積層体をアルミニウムのラミネート容器(大日本印刷株式会社、アルミラミネートフィルム)に入れ、電解液を1mL添加した。電解液としては、1.0mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=2.5/6/1.5(体積比)の混合溶液に、混合溶液全量に対してビニレンカーボネートを1.0質量%添加したもの(宇部興産株式会社)を使用した。アルミニウムのラミネート容器を熱溶着させ、ラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例1Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。元素モル比Si/Alの測定方法については後述する。
(実施例2A)
製造例1で作製した平均粒子径が2.2μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(90質量%)とPVDF(10質量%)を混合したスラリーを調製し、このスラリーを負極合材層の上に塗布して平均厚さ11μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を作製したこと以外は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例2Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。
(実施例3A)
製造例1で作製した平均粒子径が3.6μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(95質量%)とPVDF(5質量%)を混合したスラリーを調製し、このスラリーを負極合材層上に塗布して平均厚さ25μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を作製したこと以外は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例3Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。
(実施例4A)
製造例2で作製した平均粒子径が3.5μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(95質量%)とPVDF(5質量%)を混合したスラリースラリーを調製し、このスラリーを負極合材層上に塗布して平均厚さ25μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を作製したこと以外は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例4Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。
(実施例5A)
製造例3で作製した平均粒子径が3.4μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(95質量%)とPVDF(5質量%)を混合したスラリーを調製し、このスラリーを負極合材層上に塗布して平均厚さ25μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を作製したこと以外は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例5Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。
(実施例6A)
製造例1で作製した平均粒子径が3.6μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(95質量%)とPVDF(5質量%)を混合したスラリーを調製し、このスラリーを負極合材層上に塗布して厚さ45μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を作製したこと以外は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例6Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。
(実施例7A)
製造例1で作製した平均粒子径が3.6μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物(95質量%)とPVDF(5質量%)を混合したスラリーを調製し、このスラリーを負極合材層上に塗布して平均厚さ32μmの炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を作製したこと以外は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例7Aにおける炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の平均粒子径(μm)、元素モル比Si/Al、及び炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さ(μm)を表1に示す。
(比較例1)
負極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層は形成せず、その他は実施例1Aと同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。表1中の「−」は、負極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成していないことを意味する。
[元素モル比Si/Alの測定方法]
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alは、以下の方法で測定した。
複合ビーム加工観察装置(日本電子株式会社、JIB−4501)を用いて、実施例1A〜7A及び比較例2A及び3Aの負極及び正極から透過型電子顕微鏡(TEM)観察用の薄膜試料を作製し、透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(TEM−EDX)(日本電子株式会社、JEM−2100F(HR))を用いて、薄膜試料の元素分析を行った。
具体的には、ケイ素及びアルミニウムのEDX測定(加速電圧:200kV)を行い、測定された元素比率から以下の式に従って元素モル比Si/Alを求めた。測定は各薄膜試料について5回ずつ行い、その算術平均値を炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の元素モル比Si/Alとした。
元素モル比Si/Al=(EDXにて測定したSiの元素比率(%))/(EDXにて測定したAlの元素比率(%))
[電池容量の評価]
実施例1A〜7A及び比較例1のリチウムイオン二次電池の電池容量は、以下に示す方法で評価した。
まず、25℃の環境下において0.1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.4Vまで行い、続いて4.4Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.01Cとした。その後、0.1Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行った。この充放電サイクルを3回繰り返した。さらに、0.2Cの定電流充電を上限電圧4.4Vまで行い、続いて4.4Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.02Cとした。その後、0.2Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行い、この放電時の容量を電池容量とした。
[出力特性の評価]
実施例1A〜7A及び比較例1のリチウムイオン二次電池の出力特性は、以下に示す方法で評価した。
上記電池容量を測定後、0.2Cの定電流充電を上限電圧4.4Vまで行い、続いて4.4Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.02Cとした。その後、0.2Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行い、この放電時の容量を電流値0.2Cにおける放電容量とした。次に、0.2Cの定電流充電を上限電圧4.4Vまで行い、続いて4.4Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.02Cとした。その後、2Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行い、この放電時の容量を電流値2Cにおける放電容量とした。そして、以下の式に従って出力特性を算出した。実施例1A〜7A及び比較例1のリチウムイオン二次電池の出力特性を表1に示す。
出力特性(%)=(電流値2Cにおける放電容量/電流値0.2Cにおける放電容量)×100
[サイクル容量維持率の評価]
実施例1A〜7A及び比較例1のリチウムイオン二次電池のサイクル特性は、以下に示す方法でサイクル容量維持率として評価した。
上記に示す条件で出力特性を評価した後、充放電を繰り返すサイクル試験にてサイクル容量維持率を評価した。充電パターンは、45℃の環境下において1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.4Vまで行い、続いて4.4Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.1Cとした。放電は、1Cの電流値で定電流放電を2.5Vまで行った。そして、以下の式に従ってサイクル容量維持率を算出した。実施例1A〜7A及び比較例1のリチウムイオン二次電池のサイクル容量維持率を表1に示す。
サイクル容量維持率(%)=(電流値1Cにおける300サイクル後の放電容量/電流値1Cにおける1サイクル後の放電容量)×100

[実施例1B〜7B]
負極合材層の上には炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成せず、一方、正極合材層の上に、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を設けた以外は、実施例1と同様の方法でラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
このように、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を設ける位置を、負極合材層上から正極合材層上に変えて、実施例1A〜7Aに対応する実施例1B〜7Bのラミネート型のリチウムイオン二次電池をそれぞれ作製し、同様の電池特性を評価した。その結果を表2に示す。表2には、比較例1についても併せて掲載する。
表1の実施例1A〜3Aに示されるように、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を負極合材層上に有するリチウムイオン二次電池の電池特性は、負極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有していない比較例1と比較してサイクル容量維持率が同等以上であり、サイクル試験後の出力特性が著しく向上することが確認された。
これは、炭素被覆されたアルミニウムケイ酸化合物が電解液中のフッ化水素(HF)を吸着することによって抵抗成分となるフッ化リチウムの析出及び正極活物質の結晶構造の変化が抑えられ、サイクル試験後の容量の低下及び出力特性の低下が抑制されたためと推定される。または、負極合材層上に配置された炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層が、正極活物質から溶出したコバルト等の金属イオンを吸着し、負極上での金属の析出が抑制されたことによって、サイクル試験後の容量の低下及び出力特性の低下が抑制されたためと推定される。
また、製造例2又は3で作製した炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を負極合材層上に有する実施例4A及び5Aのリチウムイオン二次電池においても、負極合材層上に炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有していない比較例1と比較して、サイクル容量維持率が同等以上であり、サイクル試験後の出力特性が著しく向上することが確認された。これも実施例1A〜3Aと同様の理由によるものと推定される。
また、表2に示されるように、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層が正極合材層上に形成された場合でも、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有していない比較例1と比較してサイクル容量維持率が同等以上であり、サイクル試験後の出力特性が著しく向上することが確認された。
なお、実施例1A〜3Aと実施例6A及び7Aとの比較、実施例1B〜3Bと実施例6B及び7Bとの比較によれば、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さが30μm以下の実施例1A〜3A及び実施例1B〜3Bにおいて、出力特性がより優れていた。
1…リチウムイオン二次電池、2…正極板、3…負極板、4…セパレータ、5…電極群、6…電池容器、7…炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層、8…負極合材層又は正極合材層、9…負極集電体又は正極集電体

Claims (5)

  1. 正極と、負極と、を備え、
    前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を有し、
    前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極合材層と、を有し、
    前記正極合材層及び前記負極合材層の少なくとも一方の上に、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物を含む炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を有するリチウムイオン二次電池。
  2. 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層の平均厚さが、0.5μm〜30μmである、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物の体積平均粒子径(D50)が0.1μm〜50μmである請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alが、0.3〜5.0である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、無定形アルミニウムケイ酸化合物を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108539147A (zh) * 2018-03-21 2018-09-14 同济大学 一种锂离子电池负极材料SiO@Al@C的制备方法及应用
CN113422157A (zh) * 2021-06-02 2021-09-21 西南大学 提升高镍正极循环稳定性的陶瓷纤维隔膜及电池应用
CN114171715A (zh) * 2021-12-08 2022-03-11 深圳市量能科技有限公司 一种可吸附hf的正极极片、制备方法及其锂电池

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